JP2023169886A - 敷板 - Google Patents

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JP2023169886A
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祐喜 酒井
Yuki Sakai
昌樹 小林
Masaki Kobayashi
宗一郎 小田
Soichiro Oda
俊暁 唐澤
Toshiaki Karasawa
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Abstract

【課題】木製やプラスチック製の敷板と同等の圧縮強度を有しつつも軽量であり、使い勝手及び作業性に優れた敷板を提供すること。【解決手段】一対のハニカム板を含む、敷板であって、前記ハニカム板が一主面にハニカム構造を形成するリブを有するハニカム面を備え、前記ハニカム板が繊維強化プラスチック製であり、前記一対のハニカム板が、各ハニカム板の前記ハニカム面が互いに向かい合うように配置される、敷板。【選択図】図2

Description

本開示は敷板に関する。
敷板は各種物品や車両等の底に敷かれるものであり、敷板上に配置された物品や車両等を安定させる目的、床や地面の損傷を防止する目的等で用いられる。
特開2012-12173号公報
建設現場における移動式クレーン、高所作業車、建柱車等の作業車の転倒を防止するためにアウトリガーが用いられるが、アウトリガーの使用の際にはアウトリガーと地盤との間に敷板が敷かれる。特許文献1においては、敷板本体の表裏いずれか片面に、ジャッキのフロートの外形に合わせた形状の外形を有したフロート位置決め用の凹部を形成していることを特徴とするアウトリガジャッキの敷板が開示されている(図1参照)。アウトリガー用の敷板としては、高荷重に耐えるために、厚みが大きく、かつ、木製やプラスチック製のものが使用されることが一般的であるため、スペースを取る、重たい等の問題があり、使い勝手や作業性の観点から問題があった。特許文献1においては、このような問題点は記載も示唆もされていない。本開示は、木製やプラスチック製の敷板と同等の圧縮強度を有しつつも軽量であり、使い勝手及び作業性に優れた敷板を提供することにある。
本開示は以下の態様を含む:
[項1]
一対のハニカム板を含む、敷板であって、
前記ハニカム板が一主面にハニカム構造を形成するリブを有するハニカム面を備え、
前記ハニカム板が繊維強化プラスチック製であり、
前記一対のハニカム板が、各ハニカム板の前記ハニカム面が互いに向かい合うように配置される、敷板。
[項2]
前記ハニカム構造が六角ハニカム構造である、項1に記載の敷板。
[項3]
前記リブの存在比率が、前記ハニカム面の垂直投影面積に対して20%以上60%以下である、項1又は2に記載の敷板。
[項4]
前記リブの肉厚が、前記ハニカム構造のセルのそれぞれにおいて、前記セルの最大内径に対して3%以上30%以下である、項1~3のいずれか一項に記載の敷板。
[項5]
前記リブの占有体積が、前記ハニカム構造のセルのそれぞれにおいて、前記セルの中空体積に対して10%以上60%以下である、項1~4のいずれか一項に記載の敷板。
[項6]
前記リブの存在比率が、前記ハニカム面の垂直投影面積に対して20%以上60%以下であり;
前記リブの肉厚が、前記ハニカム構造のセルのそれぞれにおいて、前記セルの最大内径に対して3%以上40%以下であり;
前記リブの占有体積が、前記ハニカム構造のセルのそれぞれにおいて、前記セルの中空体積に対して10%以上60%以下である、項1~5のいずれか一項に記載の敷板。
[項7]
前記リブが0.5°以上30°以下の抜き勾配がつけられているテーパー形状である、項1~6のいずれか一項に記載の敷板。
[項8]
前記リブの先端がR面取り加工されている、項1~7のいずれか一項に記載の敷板。
[項9]
前記リブの根元がR面取り加工されている、項1~8のいずれか一項に記載の敷板。
[項10]
前記ハニカム板の厚みが50mm以下であり、前記リブの高さが前記ハニカム板の厚みの30%以上90%以下である、項1~9のいずれか一項に記載の敷板。
[項11]
前記敷板の最外面が複数の溝を有する、項1~10のいずれか一項に記載の敷板。
[項12]
前記繊維強化プラスチックがガラス繊維強化熱可塑性樹脂である、項1~11のいずれか一項に記載の敷板。
[項13]
前記ガラス繊維強化熱可塑性樹脂がガラスマット強化熱可塑性樹脂である、項12に記載の敷板。
[項14]
前記繊維強化プラスチックが炭素繊維強化熱可塑性樹脂である、項1~13のいずれか一項に記載の敷板。
[項15]
前記ハニカム板が一方向プリプレグのランダム積層体の成形体である、項1~14のいずれか一項に記載の敷板。
[項16]
中板を含み、前記中板が前記一対のハニカム板の間に配置される、項1~15のいずれか一項に記載の敷板。
[項17]
筐体を含み、前記筐体が前記ハニカム板の側面を囲うように配置される、項1~16のいずれか一項に記載の敷板。
[項18]
取手を含み、前記取手が前記中板又は前記筐体と結合する、項16又は17に記載の敷板。
[項19]
アウトリガー用敷板である、項1~18のいずれか一項に記載の敷板。
本開示における敷板は木製やプラスチック製の敷板と同等の圧縮強度を有しつつも軽量であり、使い勝手及び作業性に優れる。
以下にて、必要により図面を参照しながら、本開示の一実施形態に係る敷板をより詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細な説明、あるいは実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
出願人は、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面及び以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。なお、図面における各種の要素は、本開示の理解のために模式的かつ例示的に示したにすぎず、外観や寸法比等は実物と異なり得る。
<敷板の全体構成>
本開示の敷板は積層構造をとっており、少なくとも一対のハニカム板を含み、一対のハニカム板はハニカム面が互いに向かい合うように配置される。本開示の敷板はさらに、ゴム板、中板、筐体、取手等から選択される少なくとも一を含んでいてもよい。本開示の敷板はその他の部材を含んでいてもよい。これらの各部材同士の一部又は全部は接着剤、ビス止め等により固定されていてもよい。
敷板の形状は、長方形、正方形、ひし形、円形等の平面の積層構造であるが、典型的には矩形の積層構造である。敷板の厚みは1cm以上、2cm以上、3cm以上、4cm以上、又は5cm以上であってよい。敷板の厚みは10cm以下、8cm以下、6cm以下、4cm以下、又は2cm以下であってよい。敷板の厚みは小さい方が軽量化の観点から好ましい。なお、縦横サイズは特に限定されず、敷板の用途により異なるが、例えば20cm~80cm×20cm~80cm程度であってよい。
<ハニカム板>
本開示の敷板は一対のハニカム板を含む。ハニカム板は一主面にハニカム構造を形成するリブを有するハニカム面を備え、ハニカム板は繊維強化プラスチック製であり、一対のハニカム板が、各ハニカム板の前記ハニカム面が互いに向かい合うように配置される。一対のハニカム板を含むことにより敷板の静的圧縮に対しての強度を担保でき、同時に敷板の軽量化を図れる。また、一対のハニカム板を含むことにより、敷板全体で圧縮に対しての耐性ムラを低減できる。従来の敷板では、敷板における荷重(例えばアウトリガーの荷重)位置による局所的な荷重の集中の影響が大きく、圧縮耐性ムラが発生しやすく問題であったが、本開示の敷板の場合どの位置(例えば、荷重位置が敷板の真ん中に対して上下左右にずれたとしても)でも同様な静的圧縮に対しての強度を担保しやすい。
本開示の敷板は一対のハニカム板を含むが、一枚のハニカム板のみを含む場合と比較して、リブの高さを小さくすることができ、リブの座屈を抑制でき、耐衝撃性が高め、圧縮強度を強化することができる。また、一対のハニカム構造を互いにハニカム面が向かい合うように配置されることで、敷板が上下対称の構造となり、面の向きを気にする必要がなくなり、作業性の観点からも有利である。なお、敷板が追加で一対又は複数対のハニカム板を含んでよいが、その場合、圧縮強度は高まるが、軽量化を図る観点からは、追加のハニカム板は含まずに一対のハニカム板のみを含むことが好ましい。
[ハニカム面]
本開示におけるハニカム板は一主面にハニカム面を備える。
ハニカム面においてリブがハニカム構造を形成する。ハニカム構造は複数の中空状のセル(小部屋)の集合体が面上に形成されてなる構造である。ハニカム構造としては、セル形状が六角形となっている六角ハニカム構造が一般的であるが、これに限定されない。セル形状の例としては、多角形(例えば3~12角形、具体例としては三角形、四角形、五角形、七角形、八角形)、真円、楕円状、ダイヤ、ヘリンボン、不定形状等が挙げられる。セル形状は1種類でも、複数の形やサイズが組み合わされていてもよい。敷板の圧縮強度の観点から、セルの形状が多角形である多角ハニカム構造、特にセルの形状が六角形である六角ハニカム構造が好ましい。六角ハニカム構造のハニカム面を備えるハニカム板の模式図が図3に示される。なお、一方のハニカム板と他方のハニカム板とで、それぞれのリブが垂直方向に一致するように配置されていてもよいし、ずれて配置されていてもよい。
各セルの最大内径は0.5cm以上、1cm以上、1.5cm以上、2cm以上、又は2.5cm以上であってよい。各セルの最大内径は10cm以下、8cm以下、6cm以下、4cm以下、又は2cm以下であってよい。上記範囲にあることにより、各セルの最大内径が上記範囲にあることが、敷板が圧縮強度と軽量性とを良好に兼ね備える観点から好適である。
リブの存在比率は、ハニカム面の垂直投影面積に対して20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、又は45%以上であってよく、好ましくは30%以上である。リブの存在比率は、ハニカム面の垂直投影面積に対して60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、又は35%以下であり、好ましくは50%以下である。リブの存在比率が上記範囲にあることが、敷板が圧縮強度と軽量性とを良好に兼ね備える観点から好適である。
リブの肉厚が、ハニカム構造のセルのそれぞれにおいてセルの最大内径に対して3%以上、6%以上、9%以上、12%以上、15%以上、18%以上、21%以上、又は24%以上であってよく、好ましくは6%以上であってよい。リブの肉厚が、ハニカム構造のセルのそれぞれにおいてセルの最大内径に対して40%以下、35%以下、30%以下、27%以下、24%以下、21%以下、18%以下、15%以下、12%以下、又は9%以下であってよく、好ましくは24%以下である。ここで、リブの肉厚は、リブをリブの延在方向に対して垂直に切断してできる断面の最大肉厚であってよく、典型的には当該断面の底の長さである。リブの肉厚が上記範囲にあることが、敷板が圧縮強度と軽量性とを良好に兼ね備える観点から好適である。リブの肉厚を厚め(例えば、セルの最大内径に対して9%以上、12%以上、15%以上等)に設定してもよい。厚めに設定することにより、成形加工時における繊維のマトリックス樹脂に対する追従性を高め、リブ内部の材料の均質性を高め、敷板の圧縮強度や耐久性等を向上させ得る。例えば、ガラス繊維(例えばガラスマット)を繊維成分として用いる場合においてリブの肉厚を厚めに設定してもよい。使用する材料強度(曲げ強度、引張強度、及び弾性率等)に応じてリブの肉厚を変更してもよい。例えば、高強度の材料を用いる場合リブの肉厚を薄く設定してもよく、低強度の材料を用いる場合リブの肉厚を厚く設定してもよい。
リブの占有体積が、ハニカム構造のセルのそれぞれにおいて、セルの中空体積に対して10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、又は50%以上であってよく、好ましくは20%以上である。リブの占有体積が、ハニカム構造のセルのそれぞれにおいて、セルの中空体積に対して60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、又は20%以下であってよく、好ましくは50%以下である。リブの占有体積が上記範囲にあることが、敷板が圧縮強度と軽量性とを良好に兼ね備える観点から好適である。
リブは根元から先端にかけて肉厚が小さくなるようにテーパー形状であってよい。テーパー形状における抜き勾配は0.5°以上、1.5°以上、2.5°以上、4.5°以上、7.5°以上、又は10°以上であってよい。テーパー形状における抜き勾配は35°以下、30°以下、25°以下、20°以下、17.5°以下、15°以下、10°以下、7.5°以下、5°以下、又は2.5°以下であってよく、好ましくは15°以下、又は10°以下である。リブをテーパー形状、特に上記範囲の抜き勾配を有するテーパー形状とすることにより、リブの座屈の発生を抑制でき、圧縮強度が向上し得、軽量化の観点からも有利である。また、リブをテーパー形状とすることにより、脱型の際に成形品と金型の間に隙間ができやすく、スムーズに成形品を取り出すことが出来るため、生産性の観点からも有利である。テーパー形状のリブを有するハニカム板の断面図を図4に示している。
リブの先端は面取り加工されていてもよい。面取りはR面取り加工又はC面取り加工であってよく、好ましくはR面取り加工である。面取り加工されていることにより、リブの損傷を防止でき、敷板の圧縮強度や耐久性を向上させ得る。一例としてリブの先端をR面取り加工したハニカム板の断面図を図4に示している。
に示している。
リブの根元は面取り加工されていてもよい。面取りはR面取り加工又はC面取り加工であってよく、好ましくはR面取り加工である。面取り加工されていることにより、リブの損傷を防止でき、敷板の圧縮強度や耐久性等を向上させ得る。また、面取り加工されていることにより、成形加工時における繊維のマトリックス樹脂に対する追従性を高め、リブ内部の材料の均質性を高め、敷板の圧縮強度や耐久性を向上させ得る。例えば、ガラス繊維(例えばガラスマット)を繊維成分として用いる場合において、リブの根元が面取り加工されていてもよい。リブの先端と根元の両方が面取り加工されていてもよい。一例としてリブの先端及び根元をR面取り加工したハニカム板の断面図(リブ部分拡大図)を図4-2に示している。
リブの先端における、面取り寸法(R面であれば曲率半径。C面であれば切り取り辺の長さ。)は、0.3mm以上、0.5mm以上、0.7mm以上、1.0mm以上、1.2mm以上、又は1.5mm以上であってよく、好ましくは0.7mm以上、又は1.0mm以上である。面取り寸法は、9.0mm以下、7.5mm以下、6.0mm以下、4.5mm以下、4.0mm以下、3.0mm以下、2.5mm以下、2.0mm以下、又は1.5mm以下であってよく、好ましくは3.0mm以下、より好ましくは2.0mm以下である。上記範囲にあることが、敷板の圧縮強度や耐久性の観点から好適である。
リブの根元における、面取り寸法(R面であれば曲率半径。C面であれば切り取り辺の長さ。)は、0.5mm以上、1.0mm以上、1.5mm以上、2.0mm以上、2.5mm以上、又は3.0mm以上であってよく、好ましくは1.5mm以上、又は2.5mm以上である。リブの根元における面取り寸法は、9.0mm以下、7.5mm以下、6.0mm以下、4.5mm以下、4.0mm以下、3.5mm以下、又は3.0mm以下であってよく、好ましくは4.5mm以下、より好ましくは3.5mm以下である。上記範囲にあることが、敷板の圧縮強度や耐久性の観点から好適である。
ハニカム板の厚みは、1mm以上、3mm以上、5mm以上、8mm以上、又は10mm以上であってよい。ハニカム板の厚みは、50mm以下、40mm以下、30mm以下、25mm以下、20mm以下、又は15mm以下であってよい。ここで、ハニカム板の厚みとはハニカム板の基板の厚みとリブの高さとの合計である。ハニカム板の厚みが小さいほど、軽量化の観点から好ましい。
リブの高さは、ハニカム板の厚みの30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、又は80%以上であってよい。リブの高さは、ハニカム板の厚みの90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、又は40%以下であってよい。リブの高さが上記下限以上であることが軽量化の観点から好ましく、リブの高さが上記上限以下であることがリブの座屈を防止し圧縮強度を向上させる観点から好ましい。
非ハニカム面(リブを有しない主面)は平面であってよいが、非ハニカム面(特に敷板の最外面を構成する非ハニカム面)が複数の溝を有していてもよい。複数の溝の形状は限定されないが、典型的には、ストライプ上又は網目状である。網目状の複数の溝を有する敷板の模式図が図2に示される。溝と溝との溝間隔は3mm以上、5mm以上、8mm以上、又は10mm以上であってよい。溝と溝との溝間隔は50mm以下、40mm以下、30mm以下、20mm以下、10mm以下であってよい。溝幅は限定されないが、例えば0.1mm以上、0.3mm以上、0.5mm以上、又は0.7mm以上であってよく、5mm以下、3mm以下、1mm以下であってよい。非ハニカム面が複数の溝を有することにより、グリップ力を高め敷板使用時の敷板の滑りやずれを防止することができる。
[繊維強化プラスチック]
ハニカム板は繊維強化プラスチック製である。繊維強化プラスチックは、熱硬化性樹脂及び/又は熱可塑性樹脂をマトリックス成分としさらに該樹脂中に炭素繊維やガラス繊維等の繊維を含む複合材料である。
〔マトリックス樹脂成分〕
繊維強化プラスチックにおけるマトリックス樹脂成分の例としては、熱可塑性エポキシ樹脂、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリハロゲン化オレフィン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、テフロン(登録商標)、ABS樹脂、AS樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエーテル、ポリエステル、熱可塑性ポリイミド、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステル樹脂、熱可塑性アクリル樹脂等の熱可塑性樹脂;熱硬化性エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、熱硬化性ポリイミド、及び熱硬化性アクリル樹脂等の熱硬化性樹脂;が挙げられる。高い成形性を有し、生産性に優れ得ることから、本開示におけるマトリックス樹脂成分として、熱可塑性樹脂、例えば、エポキシ樹脂(特に後述する重合物(x))、ポリオレフィン(特にポリプロピレン)等が挙げられる。例えば、繊維成分として炭素繊維を用いる場合にはマトリックス樹脂成分としてエポキシ樹脂を採用してもよく、繊維成分としてガラス繊維を用いる場合にはマトリックス樹脂成分としてポリオレフィンを用いてもよい。
〔繊維成分〕
繊維強化プラスチックにおける繊維の例としては、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール(PBO)繊維などの有機繊維、ガラス繊維、炭素繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、チラノ繊維、玄武岩繊維、セラミックス繊維などの無機繊維、ステンレス繊維やスチール繊維などの金属繊維、その他、ボロン繊維、天然繊維、変性した天然繊維などを繊維として用いた強化繊維などが挙げられる。これら強化繊維としては、数千本以上のフィラメントで構成される強化繊維が好ましい。例えば、繊維強化熱可塑性樹脂シートを製造するための一方向プリプレグを製造するにあたり3000~60000本のフィラメントで構成される強化繊維が好適に利用される。本開示における敷板の強度の観点から、強化繊維はガラス繊維又は炭素繊維であることがより好ましい。繊維は一種の強化繊維を用いてもよいし、二種以上の繊維を組み合わせて用いてもよい。
繊維における撚りの有無は特に限定されないが、マトリックス樹脂の浸透を高めやすい観点からは、撚りが少ないか又は撚りのない繊維が好ましい。繊維の撚り数は、同様の観点から、好ましくは1回/m以下、より好ましくは0.5回/m以下、さらにより好ましくは0.3回/m以下である。
繊維強化プラスチックは強度及び軽さを兼ね備える観点から炭素繊維強化プラスチック又はガラス繊維強化プラスチックであることが好ましい。
本開示で用いられる炭素繊維としては、ピッチ系の炭素繊維であってもよいし、PAN系の炭素繊維であってもよい。取扱性の観点からは、炭素繊維がPAN系の炭素繊維であることが好ましい。
炭素繊維は一定のトラバース幅で円筒状の管であるボビンに巻かれていることが多い。炭素繊維1本のフィラメント径は、通常5~8μmであり、複数の炭素繊維が所定のフィラメント数(具体的には1000本(1K)、3000本(3K)、6000本(6K)、12000本(12K)、15000本(15K)、18000本(18K)、24000本(24K)、30000本(30K)、60000本(60K))で扁平状に集合した繊維束(炭素繊維トウ)が好適に利用される。炭素繊維のフィラメント数は、繊維強化プラスチックの性状(例えば、開繊された炭素繊維や一方向プリプレグの所望される幅や厚み)に応じて適宜変更してよいが、生産性の観点から、好ましくは3000~60000本、より好ましくは6000~24000本である。フィラメント数が上記の上限以下であることが、繊維強化プラスチックのボイドの発生を抑制できるため好ましい。また、フィラメント数が上記の下限以上であることが、開繊する際の単糸切れによる毛羽立ち及び繊維強化プラスチックの割れを抑制しやすいため好ましい。
本開示で用いられるガラス繊維の例としては、例えば、Eガラス、ARガラス、Cガラス、Dガラス、Hガラス、Sガラス、Tガラス、Mガラス、NEガラス等のガラス繊維を挙げることができる。
ガラス繊維の直径は0.5μm以上、1μm以上、5μm以上、10μm以上、又は25μm以上であってよく、100μm以下、75μm以下、25μm以下、又は10μm以下であってよい。上記範囲にあることが繊維分散性及び敷板の圧縮強度等の観点から好ましい。
ガラス繊維長は、1mm以上、3mm以上、5mm以上、10mm以上、20mm以上、30mm以上、50mm以上、70mm以上であってよく;200mm以下、150mm以下、100mm以下、50mm以下、40mm以下、30mm以下、20mm以下、10mm以下、5mm以下、3mm以下、又は1mm以下であってよい。ガラス繊維は、長繊維タイプ(例えば5mm以上、30mm以上、又は50mm以上)や短繊維タイプ(例えば10mm以下、3mm以下、1mm以下))のいずれでもよく、圧縮強度の観点からは長繊維タイプが好ましい。長繊維は、ガラスを融解、牽引して繊維状にすることで製造でき、短繊維タイプは長繊維タイプを裁断することにより製造することができる。環境への配慮及び/又はコスト削減の観点から、使用するガラス繊維の一部又は全部がリサイクル材(例えば短繊維と長繊維が混合されたガラス繊維)であってもよい。
繊維強化プラスチックにおける繊維体積含有率Vfは、好ましくは10~80%、より好ましくは15~60%、さらに好ましくは20~55%、さらにより好ましくは25~45%さらにより好ましくは30~45%、さらにより好ましくは35~45%、特に好ましくは37.5~42.5%になるように制御される。上記範囲とすることが、繊維強化プラスチックの成形性及び成形体の強度の観点から好ましい。
[繊維強化熱可塑性樹脂]
繊維強化プラスチックは強化高い成形性を有し、生産性に優れ得ることから、繊維強化熱可塑性樹脂であってもよい。好ましくは、強度、軽さ、及び成形性を良好に兼ね備えることから、炭素繊維強化熱可塑性樹脂(例えば炭素繊維強化エポキシ樹脂)又はガラス繊維強化熱可塑性樹脂(例えばガラスマット強化ポリオレフィン樹脂)であってもよい。
ハニカム板は繊維強化熱可塑性樹脂の成形体であってよく、例えば一方向プリプレグのランダム積層体の成形体又はガラスマット強化熱可塑性樹脂の成形体であってよい。例えば、ハニカム板を製造する工程において、繊維強化プラスチックがハニカム板形状とするための成形工程に供されるが、成形工程に供される繊維強化プラスチックは、一方向プリプレグのランダム積層体(特にテープ状の一方向プリプレグのランダム積層体であってよい。ここで、テープ状の一方向プリプレグは開繊された強化繊維を含み、該繊維が一方向性を有するプリプレグである。)又は、ガラスマット強化熱可塑性樹脂であってもよい。
〔一方向プリプレグのランダム積層体〕
以下において、繊維強化プラスチックの例として、一方向プリプレグのランダム積層体である繊維強化熱可塑性樹脂シートについて説明する。本開示の繊維強化熱可塑性樹脂シートの単位厚みあたりの一方向プリプレグの層数は、好ましくは6層/mm以上、より好ましくは8層/mm以上、さらに好ましくは10層/mm以上、特に好ましくは11層/mm以上である。単位厚みあたりの一方向プリプレグの層数が上記の下限以上である場合、本開示の樹脂シートから得た成形体の強度を高めやすい。また、上記単位厚みあたりの一方向プリプレグの層数は、好ましくは40層/mm以下、より好ましくは25層/mm以下、特に好ましくは20層/mm以下である。単位厚みあたりの一方向プリプレグの層数が上記の上限以下である場合、繊維強化熱可塑性樹脂シートの等方性を向上させやすい。なお、本開示の繊維強化熱可塑性樹脂シートの単位厚みあたりの一方向プリプレグの層数は、繊維強化熱可塑性樹脂シートの断面を電子又は光学顕微鏡を用いて観察した画像から目視により測定される。
本開示の繊維強化熱可塑性樹脂シートのボイド率は、好ましくは平均厚み2mmを有する繊維強化熱可塑性シートにおいてJIS-7075に従い測定して、好ましくは0~1vol%、より好ましくは0~0.5vol%である。このように低いボイド率を有する繊維強化熱可塑性樹脂シートは、非常に優れた成形性を有し、得られる成形体の機械的強度も高めやすい。
本開示の繊維強化熱可塑性樹脂シートの引張強度等の機械的強度は、繊維強化熱可塑性樹脂シートに含まれる強化繊維の種類、樹脂の種類、シートの厚み、繊維体積含有率(Vf)等によって異なり、繊維強化熱可塑性樹脂シートから得た成形体に所望される強度に応じて、上記を適宜選択して設定することができる。本開示の繊維強化熱可塑性樹脂シートが好適に用いられる自動車の二次構造材等の分野において使用しやすい観点からは、本開示の繊維強化熱可塑性樹脂シートのASTM D790に従い測定される曲げ強度は、好ましくは300MPa以上、より好ましくは400MPa以上、さらに好ましくは440MPa以上、特に好ましくは450MPa以上、最も好ましくは460MPa以上である。なお、上記の曲げ強度は平均曲げ強度であってよい。本開示の繊維強化熱可塑性樹脂シートは、上記のような高い曲げ強度が要求される分野においても、強度、成形性および外観品質を達成することが可能である。また、同様の観点から、本開示の繊維強化熱可塑性樹脂シートの、ASTM D790に従い測定される曲げ弾性率は、好ましくは25GPa以上、より好ましくは28GPa以上であり、JIS K 7164(ISO527-4)に従い測定される引張強度は、好ましくは200MPa以上、より好ましくは250MPa以上であり、引張弾性率は、好ましくは25GPa以上、より好ましくは28GPa以上である。上記の物性値は、例えば2mmの平均厚みを有し、繊維体積含有率(Vf)が40%を有する強化繊維熱可塑性樹脂シートにおける物性値であることが好ましい。曲げ物性及び引張り物性は、島津製作所製万能試験機等の試験機を用いて測定される。曲げ強度は、例えば実施例に記載する方法で測定してよい。
本開示の好ましい一実施形態において、繊維強化熱可塑性樹脂シートに含まれる各一方向プリプレグにおける、厚み方向における強化繊維の平均含有数を所定の値以下とする場合、局所的に繊維配向が過多となる部分を減らしやすく、その結果、繊維を介した繊維軸方向と異にする方向への応力伝達が均一となりやすい。本開示の繊維強化熱可塑性樹脂シートが上記特徴を有する場合、繊維強化熱可塑性樹脂シートのあらゆる方向に対する強度
のばらつきがより少なくなると考えられる。そのため、この場合、本開示の繊維強化熱可塑性樹脂シートから成形体を製造する際に成形性がより良好となり、強度ばらつきの少ない等方性の成形体を製造しやすくなる。
本開示の繊維強化熱可塑性樹脂シートの形状は、所望される成形体の形状に応じて適宜変更してよく、特に限定されない。
(一方向プリプレグ)
テープ状の一方向プリプレグは、開繊された強化繊維を含み、該繊維が一方向性を有するプリプレグであってよい。本開示の繊維強化熱可塑性樹脂シートに含まれるプリプレグにおいて、繊維の一方向性は次のようにして評価することができる。まず、繊維方向に所定の長さ(例えば繊維方向に150mm)を有するように切断されたプリプレグの両切断端部のそれぞれにおいて幅長の中点を求め、一方の端部の中点と、他方の端部の中点とを結び、この線を基準線とする。当該基準線から片側のプリプレグについて、その幅方向の長さ(幅長の約半分となる長さ、以下において「半分幅」とも称する)を、繊維方向に沿って少なくとも10箇所測定する。少なくとも10箇所について得た半分幅の平均値と、標準偏差から算出される変動係数は、好ましくは10%以下、より好ましくは9%以下、さらに好ましくは7%以下、特に好ましくは5%以下である。
本明細書において、積層前の一方向プリプレグに関する、厚み方向における強化繊維の平均含有数、幅方向における強化繊維の平均含有密度、幅長の変動係数(CV値)、及び、繊維方向の平均長さは、一方向プリプレグから繊維強化熱可塑性樹脂シートを製造する前後で基本的には変化しない。そのため、これらについては、積層前の一方向プリプレグに関する好ましい範囲等に関する記載が、本開示の繊維強化熱可塑性樹脂シートに含まれる状態の一方向プリプレグに同様に当てはまる。
本開示の繊維強化熱可塑性樹脂シートに含まれる開繊された強化繊維は、本開示の繊維強化熱可塑性樹脂シートにおいて、ランダムに積層している各一方向プリプレグに含まれている。各一方向プリプレグに含まれる開繊された強化繊維において、厚み方向における強化繊維の平均含有数は、好ましくは20本以下、より好ましくは15本以下、さらに好ましくは10本以下、さらに好ましくは8本以下、さらに好ましくは7本以下、特に好ましくは6本以下である。該厚み方向における平均含有数の下限値は、樹脂の浸透を高めやすい観点からは少ないほどよく、特に限定されないが、好ましくは1本以上、より好ましくは2本以上、さらにより好ましくは3本以上である。厚み方向における該平均含有数が上記の上限以下である場合、一方向プリプレグに含まれる重合物の原料となる化合物(例えば、式(1)で表されるビスフェノールA型エポキシ化合物及びビスフェノール化合物、ならびに場合により1分子中に1個のエポキシ基又は水酸基である反応性基を有する化合物)を繊維中に十分均一に含浸させやすく、繊維と繊維の間に樹脂が含浸されていない隙間(ボイド)が生じにくい。プリプレグにボイドが含まれていると、このボイドは、プリプレグから製造したランダム積層体(繊維強化熱可塑性樹脂シート)中に残り、さらに該シートから製造した成形体中にも残る。その結果、成形体の十分な強度が得られない場合がある。あるいは、成形体の十分な強度を達成するために、プリプレグからランダム積層体(繊維強化熱可塑性樹脂シート)や成形品を製造する工程においてボイドが除去されるように、高温及び/又は高圧を適用することや、長いプレス時間を適用するなどの厳しい条件が必要になる。このような厳しい条件は、樹脂の劣化や生産効率の低下をもたらすため好ましくない。また、厚み方向における該平均含有数が上記の上限以下である場合、局所的に繊維配向が過多となる部分を低減しやすいため、繊維を介した繊維軸方向と異にする方向への応力伝達もしやすく、その結果、本来繊維が持つ強度を十分に活かしやすい。
開繊された強化繊維が上記の構成を有する場合、本開示の繊維強化熱可塑性樹脂シートに含まれる各一方向プリプレグの、厚み方向における強化繊維の平均含有数等も、上記の上限以下又は下限以上とすることができる。そのため、本開示の繊維強化熱可塑性樹脂シートに含まれる一方向プリプレグの厚み方向における強化繊維の平均含有数は同様に、好ましくは20本以下、より好ましくは15本以下、さらに好ましくは10本以下、さらに好ましくは8本以下、さらに好ましくは7本以下、特に好ましくは6本以下である。また、該厚み方向における平均含有数の下限値は、樹脂の浸透を高めやすい観点からは少ないほどよく、特に限定されないが、好ましくは1本以上、より好ましくは2本以上、さらにより好ましくは3本以上である。
一方向プリプレグに含まれる厚み方向における強化繊維の含有数は、プリプレグを厚み方向に切断した断面を樹脂等で包埋して電子顕微鏡等を用いて観察し、得られた画像において厚み方向に存在する繊維の本数を数えることにより測定する。このようにして、少なくとも5箇所の断面画像において厚み方向に存在する繊維の本数を数え、その平均値を厚み方向における強化繊維の平均含有数とする。上記断面観察において、切断時の外力によるプリプレグへの影響を最小限にするために、例えばプリプレグの両面を金属等の剛性の
ある板で挟み固定した状態で切断し、断面観察を行ってもよい。なお、上記少なくとも5箇所の測定は、一方向プリプレグがある程度の長さを有する場合(例えばボビンに巻き取られた形態のテープ状である場合)には、繊維軸方向に例えば50cm程度の間隔で少なくとも5箇所について測定を行ってもよいし、一方向プリプレグがカットされたテープの形態である場合には、カットされた複数のプリプレグの中から任意に少なくとも5つのプリプレグを取り出して測定を行ってもよい。以下、複数箇所について測定する場合には、上記と同様にして複数箇所の測定を行ってよい。
一方向プリプレグに含まれる厚み方向における強化繊維の含有数の変動係数(CV値)は、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下である。本開示において、上記変動係数は、各一方向プリプレグに含まれる開繊された強化繊維の厚み方向における強化繊維の含有数を少なくとも10箇所において測定し、この結果から得た平均値及び標準偏差から、変動係数(CV値)=標準偏差/平均値×100(%)の式により算出される。厚み方向における強化繊維の含有数の変動係数が上記の上限以下である場合、一方向プリプレグからランダム積層体を製造する際に、積層ムラが生じにくくなり、本開示の繊維強化熱可塑性樹脂シートの等方性を確保しやすくなる。
一方向プリプレグに含まれる開繊された強化繊維の、式(2)より算出される幅方向における強化繊維の平均含有密度(以下において「平均含有密度A」とも称する)は、好ましくは150~2,000本/mm、より好ましくは500~1,500本/mm、さらにより好ましく700~1,000本/mmである。幅方向における強化繊維の平均含有密度が上記の上限以下である場合、原料化合物を含浸させその後固化させる際に、プリプレグ内部にボイドが生じにくくなり、この一方向プリプレグから製造される繊維強化熱可塑性樹脂シートの機械的強度を高めやすい。また、幅方向における強化繊維の平均含有密度が上記の下限以上である場合、プリプレグの割れの発生を防止しやすく、本開示の繊維強化熱可塑性樹脂シートの強度を高めやすい。
一方向プリプレグあたりの幅方向における平均含有密度を上記の範囲内にすることにより、一方向プリプレグを薄層でありながらも割れが生じにくくし、かつ、ボイドが低減されやすくなる。そして、このような一方向プリプレグを用いて本開示の繊維強化熱可塑性樹脂シートを製造することにより、シートとしての成形性及び強度を高めやすく、また、本開示の繊維強化熱可塑性樹脂シートから製造した成形体の品質も向上させやすい。
幅方向における前記強化繊維の平均含有密度は、式(2)より算出される。なお、式(2)中の厚み方向における強化繊維の平均含有数の測定方法は上記に述べたとおりである。また、式(2)中の(1/強化繊維の単糸直径[mm])は、幅方向1mmあたりの単位積層内に含まれ得る強化繊維の本数を表す。
Figure 2023169886000002
一方向プリプレグを製造する際に、開繊された強化繊維に拘束剤を付着させてもよい。拘束剤を付着させることにより、開繊された強化繊維の幅の拘束性を高めやすく、また、一方向プリプレグを製造する際に発生し得る割れを抑制することができる。拘束剤の付着量は、最終的に得られるプリプレグの物性低下への影響を考慮して、強化繊維の質量に基づいて0~0.8質量%であることが好ましく、より好ましくは0.3~0.5質量%である。拘束剤の付着量を上記の下限以上とすることが、開繊された強化繊維の幅の拘束性を高めることができるため好ましい。拘束剤の付着量を上記の範囲とすることで、プリプレグから得られる成形体の物性低下及び一方向プリプレグを製造する際に発生し得る割れを抑制しやすい。使用する拘束剤の種類としては特に限定されないが、乳化させたエポキシ樹脂や乳化させた変性ポリオレフィン樹脂等が好適に利用される。
(重合物(x))
一方向プリプレグ及び繊維強化熱可塑性樹脂シートは、開繊された強化繊維及び重合物(x)を含んでよい。重合物(x)は、少なくとも式(1):
Figure 2023169886000003
[式中、nは1~4の整数を表す]
で表されるビスフェノールA型エポキシ化合物と、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールB、ビスフェノールE及びビスフェノールPからなる群から選択されるビスフェノール化合物との重合物である。
重合物(x)の重量平均分子量Mは、25,000以上であり、好ましくは25,000~140,000、より好ましくは26,000~100,000、さらに好ましくは27,000~80,000、さらにより好ましくは28,000~75,000である。重合物(x)の重量平均分子量Mが25,000未満である場合、得られる成形体の強度を十分に高めることができない。重量平均分子量Mが上記の下限以上である場合、繊維強化熱可塑性樹脂シートの機械的強度を高めやすく、成形体としての十分な機械的強度を得やすい。また、重量平均分子量Mが上記の上限以下である場合、本開示の繊維強化熱可塑性樹脂シートの成形性を向上させやすい。上記の範囲の割合Mと、上記の範囲の重量平均分子量Mとを満たす場合、繊維強化熱可塑性樹脂シートから得た成形体の機械的強度等の物性と、繊維強化熱可塑性樹脂シートの成形性の両方を向上させやすいため、好ましい。また、得られる成形体の外観品質も向上させやすい。成形性の観点から、重合物(x)の重量平均分子量Mは、50,000以下、40,000以下等であってもよい。繊維強化熱可塑性樹脂シート及び成形体の機械的強度の観点から、重合物(x)の重量平均分子量Mは、30,000以上、40,000以上等であってもよい。繊維強化熱可塑性樹脂シートからプレス等により成形体を製造する際には、繊維強化熱可塑性樹脂シートが加熱される場合がある。加熱された状態の繊維強化熱可塑性樹脂シートがたゆみやすい場合には搬送性が悪くなり、シートの取扱性が低下する。シートの成形性と取扱性を高めやすい観点からは、重合物(x)の重量平均分子量Mは、好ましくは35,000~140,000、より好ましくは40,000~100,000、さらに好ましくは40,000~80,000である。
重合物(x)の数平均分子量Mは、好ましくは8,000~20,000である。数平均分子量Mが上記の範囲内である場合、下記に示すM/M(分散比)が小さくなるため成形体の機械的強度のばらつきを抑制しやすい。
重合物(x)の重量平均分子量Mと数平均分子量Mとの比である分子量分布M/Mは、好ましくは3~10、より好ましくは3.1~8、さらに好ましくは3.2~7、さらにより好ましくは3.2~6、特に好ましくは3.2~5である。分子量分布M/Mが上記の範囲内である場合、成形体の機械的強度のばらつきを抑制しやすい。
本明細書において、重合物の重量平均分子量及び数平均分子量は、繊維強化熱可塑性樹脂シートに含まれる熱可塑性樹脂(例えば重合物(x))を測定試料とし、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定される。具体的な測定条件は樹脂の種類により適宜変更されてよいが、次のとおりであってよい。
繊維強化熱可塑性樹脂シートに含まれる熱可塑性樹脂の重量平均分子量、数平均分子量の測定においては、各繊維強化熱可塑性樹脂シートからテトラヒドロフランを用いて熱可塑性樹脂を抽出し、抽出液の樹脂の濃度が1質量%となるように調整し、測定試料を得て、下記条件にて測定してもよい。
カラム:GPC KF803L(昭和電工製)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
流量:1ml/分
検出器:SPD-M20A(島津製作所製)
分子量標準:標準ポリスチレン
例えば後述する工程(b)において、原料として使用するビスフェノールA型エポキシ化合物とビスフェノール化合物とを、好ましくは40:60~60:40、より好ましくは45:65~55:45、さらに好ましくは48:52~52:48のモル比で含浸させると共に、1分子中に1個の反応性基を有する化合物を含浸させる場合、重合物(x)
の加熱前後の重量平均分子量の変化率(割合M)を所定の範囲に調整しやすい。
重合物(x)は、現場重合型の重合物であり、熱可塑性樹脂シートから成形体を製造する工程において、さらに重合する。具体的には、例えば、該重合物(x)と熱可塑性樹脂シート中になお含まれるビスフェノール化合物とのさらなる重合が進行する。このため、熱可塑性樹脂シートの強度、最終的な成形品を製造する際の成形性、成形品の強度等を高めやすい。特に現場重合型の熱可塑性樹脂をマトリックス樹脂とする繊維強化熱可塑性樹脂シートにおいては、金型でプレスして成形品を製造する際に、予備加熱条件下でも速い重合速度で熱可塑性樹脂の重合が進行し得るために、十分な成形性、賦形性が得られない場合があった。また、成形品の連続的な製造工程において、製造開始時からの経過時間、特に熱履歴の違いによって、成形性及び/又は強度について一定品質の成形体が得られない場合があった。本開示の繊維強化熱可塑性樹脂シートに含まれる重合物(x)の加熱前後の重量平均分子量の変化率(割合M)を所定の範囲となるように調整することにより、上記のような課題が解決され、繊維強化熱可塑性樹脂シートの成形性及び強度が向上する。
本開示の繊維強化熱可塑性樹脂シートに含まれる重合物(x)は、原料として使用する、少なくともビスフェノールA型エポキシ化合物とビスフェノール化合物との重合物であり、重合前の原料として使用するビスフェノールA型エポキシ化合物の分子量は、通常2,000以下である。ビスフェノールA型エポキシ化合物は、ビスフェノールAとエピクロロヒドリンとの縮合反応より製造される。従来、ビスフェノールA型エポキシ樹脂は、熱硬化型の合成樹脂として代表的な樹脂であり、各種の硬化剤と反応させることにより三次元に硬化し、様々な特性を持つ硬化樹脂が得られる。一方、本開示で使用するビスフェノールA型エポキシ化合物は、式(1)に示されるように、分子鎖の両末端のみに官能基であるエポキシ基を有し、分子鎖の繰り返し単位nが1~4である。なお、nが1~4である場合、ビスフェノールA型エポキシ化合物の分子量は594~1416である。また、原料として使用するビスフェノール化合物の1つであるビスフェノールAは、フェノールとアセトンの反応によって合成され、式(3):
Figure 2023169886000004
で表される構造を有している。ビスフェノールAは、式(3)に示されるように、分子の両末端に官能基であるフェノール性水酸基を有しており、分子量は228である。なお、本開示におけるその他のビスフェノール化合物である、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールB、ビスフェノールE及びビスフェノールPはいずれも、ビスフェノールAと同様に、分子の両末端に官能基であるフェノール性水酸基を有しており、分子量は200~346である。このように、低分子量の原料を使用することによりプリプレグ製造の際に開繊された強化繊維間に原料化合物が浸透しやすくなり、得られるプリプレグは繊維間にボイドが含まれることなく樹脂が均一に含浸した状態(フル含浸)となる。また、同様の観点から、プリプレグ製造工程において、繊維に原料化合物を含浸させた後に重合させることが好ましい。
原料として使用する式(1)で示されるビスフェノールA型エポキシ化合物の官能基はエポキシ基であり、例えば式(3)で示されるようなビスフェノール化合物の官能基はフェノール性水酸基である。そのため、これらの重合反応は、式(1)中のエポキシ基と式(3)中のフェノール性水酸基との求電子置換反応により逐次的に進行する。両方の化合物において、官能基が両末端に存在するため、例えば原料含浸工程・シート製造工程において開繊された強化繊維に原料化合物の混合物を含浸・固化させる際、及び、ランダム積層体を加熱・プレス成形させる際に、得られる重合物は直鎖状となる。これにより、一方向プリプレグ及び本開示の繊維強化熱可塑性樹脂シートに含まれる、上記原料化合物の重合物は、熱可塑性の特性を有する。
このような重合物は、一方向プリプレグの製造工程での取扱い性に優れている。具体的には、原料となるビスフェノールA型エポキシ化合物とビスフェノール化合物とは、プリプレグ及びシートの製造工程を経て逐次的に重合が進行する。この反応は不可逆反応であり、縮合反応(例えば脱水反応)のように副生成物が脱離することもない。これにより、オープン系の設備を使用してプリプレグ及びシートを製造することができる。また、プリプレグを製造する際に使用する原料化合物が低分子量であり、低粘度であることから、これら原料を室温でも繊維に含浸させやすい。さらに容易に含浸させやすいことから、後述するプリプレグ製造工程において強化繊維にかかる張力を抑えることができ、繊維の毛羽立ちや切断を防止して繊維に優しく加工でき、プリプレグの品質を安定させることができる。ここで、高分子量の樹脂を含浸させて一方向プリプレグを製造する場合、樹脂の粘性が高いため繊維間に十分含浸させることが難しく、プリプレグ内部にボイドが残存しやすくなり、シート物性において強度低下を引き起こす。また、含浸できる樹脂量も制限されてしまうため、プリプレグ製造における汎用性に欠ける。
本開示の繊維強化熱可塑性樹脂シートに含まれる、少なくともビスフェノールA型エポキシ化合物とビスフェノール化合物との重合反応により得られる重合物(x)は、現場重合型の熱可塑性樹脂であり非晶性の樹脂となることに加えて、樹脂自体のガラス転移温度を維持したまま、所定の範囲の割合Mを有するため、過度な重合が抑制されると共に、強化繊維とマトリックス樹脂とのなじみが良好である。そのため、本開示の繊維強化熱可塑性樹脂シートの成形温度領域において低粘度でのプレスが可能となり、良好な成形性を有すると共に、金型に対する表面転写性に優れ、外観品質に優れる成形体を得ることができる。
本開示の繊維強化熱可塑性樹脂シートは、上記の他に任意の添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば有機溶媒、反応促進剤、単官能性エポキシ化合物、カップリング剤、硬化剤(反応促進剤)、顔料、消泡剤、防カビ剤、劣化防止剤等が挙げられる。これらの添加剤を加える場合、その量は添加の目的等に応じて適宜変更してよい。例えば、上記の原料化合物の重合反応を促進させるために反応促進剤を使用してもよい。原料化合物であるビスフェノールA型エポキシ化合物とビスフェノール化合物は、上記に述べたように求電子置換反応により逐次的に重合する。そのため、これらを重合させる際に、求電子置換反応が進みやすい塩基性のリン系・アミン系の反応促進剤を使用することが好ましく、生産速度の観点から有機リン化合物を使用することが特に好ましい。
有機リン化合物としては、トリフェニルホスフィン、トリパラトリルホスフィン、ジフェニルシクロヘキシルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド、1,4-ビスジフェニルホスフィノブタノン等が好適に利用される。
上記の原料化合物の重合物の重量平均分子量を上記好ましい範囲にしやすい観点からは、反応促進剤を、一方向プリプレグに含まれる上記重合物100質量部に対して2~3質量部の量で使用することが好ましい。
単官能性エポキシ化合物は過度な重合を抑制する観点から添加されてもよい。単官能エポキシ化合物としては、特に限定されないが、例えば芳香族型単官能エポキシ化合物(特にアルキルフェノール型単官能エポキシ化合物)、脂肪族炭化水素型単官能エポキシ化合物等が挙げられる。工程(b)において、1種類の単官能エポキシ化合物を用いてもよいし、2種類以上の単官能エポキシ化合物を組み合わせて用いてもよい。
(繊維強化熱可塑性樹脂シートの製造方法)
次に本開示の繊維強化熱可塑性樹脂シートの製造方法の一例について説明する。
本開示の繊維強化熱可塑性樹脂シートの製造方法は、
(a)強化繊維を開繊する工程、
(b)開繊された強化繊維に、式(1):
Figure 2023169886000005
[式中、nは1~4の整数を表す]
で表されるビスフェノールA型エポキシ化合物と、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールB、ビスフェノールE及びビスフェノールPからなる群から選択されるビスフェノール化合物と、1分子中に1個の反応性基を有する少なくとも1種の化合物とを含浸させる工程、ここで、該反応性基は水酸基又はエポキシ基である、
(c)前記化合物を含浸させた強化繊維を加熱して、強化繊維に含浸させた化合物を、得られる重合物の重量平均分子量が5,000~25,000となるまで重合させ、一方向プリプレグを得る工程、
(d)該一方向プリプレグをランダムに積層し積層物を得る工程、ならびに
(e)該積層物を100~200℃の温度で加熱し、繊維強化熱可塑性樹脂シートを得る工程
を少なくとも含んでよい。
上記、工程(a)で使用する強化繊維は、特に限定されないが、通常「原糸」とも称される未開繊の強化繊維である。このような強化繊維は、一定のトラバース幅で円筒状の管であるボビンに巻かれており、これを解舒して使用することが多い。
ここで、通常、円筒状のボビンにトラバース巻きされた原糸を単に解舒しただけでは、繊維束は進行方向に対して蛇行した状態で送り出されることとなる。上記に述べた本開示の繊維強化熱可塑性樹脂シートを得やすい観点からは、原糸由来のトラバースを解消し、繊維束が蛇行することなく進行方向に対して真っ直ぐに送り出されるような装置を使用することが好ましい。
工程(a)において、開繊時に強化繊維に負荷される張力は、好ましくは0.02~0.1g/本、より好ましくは0.04~0.06g/本である。このような範囲の張力をかけることにより、開繊性を高めやすく、かつ、単糸切れによる毛羽立ちを抑制しやすい。張力が0.02g/本より低い場合、繊維束が十分に押し広げられず、得られる開繊された強化繊維の厚み方向における平均含有数が高くなりすぎる場合がある。また、0.1g/本より高い場合、単糸切れによる毛羽立ちが発生しやすくなる場合がある。強化繊維の開繊性を向上させるために、超音波開繊法、静電開繊法、プレス開繊法、ジェット開繊法、通気式開繊法等の少なくとも1つを用いてもよい。
開繊された強化繊維に拘束剤を付着させてもよい。拘束剤を付着させることにより、開繊された強化繊維の幅の拘束性を高めやすく、また、一方向プリプレグを製造する際に発生し得る割れを抑制することができる。拘束剤は上記の開繊槽内に含ませてもよいし、強化繊維に含まれるサイジング剤を取り除くための開繊槽(デサイズ槽)とは別に、拘束剤を付着させる槽(リサイズ槽)を設けてもよい。拘束剤を付着させることにより、続く工程(b)において、開繊された強化繊維の幅方向の収縮を抑制しやすい。拘束剤の付着量は、最終的に得られるプリプレグの物性低下への影響を考慮して、強化繊維の質量に基づいて0.8質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.3~0.5質量%であ
る。拘束剤の例としては、特に限定されないが、乳化させたエポキシ樹脂や変性ポリオレフィン樹脂等が好適に利用される。
上記のようにして開繊された強化繊維に、次いで、該強化繊維に含まれる水分等を除去する工程、乾燥させる工程、及び巻き取る工程を必要に応じて実施してもよい。
開繊された強化繊維を乾燥させる工程では、例えば、温度調節可能な複数の乾燥ロールを使用してよい。繊維束が乾燥ロールと接触するように送り出されることにより、繊維束を完全に乾燥させることができる。乾燥ロールの温度は、テープ幅、巻き取り速度、開繊槽内の溶液の揮発性等に応じて適宜変更してよいが、80~200℃の温度域が好適に利用される。また、各乾燥ロールの温度は同じであっても異なっていてもよい。
また、工程(a)から直接工程(b)を実施してもよいが、設備上や各工程の生産速度が違う場合は、開繊された強化繊維を巻き取る工程を含んでもよい。
巻き取る工程において、開繊された強化繊維を巻き取る機構(巻き取り軸、モーターなど)とリールが使用される。巻き取り軸に取り付けられたリールが回転することにより、開繊された強化繊維をリールに巻き取ることができる。巻き取り速度は、繊維束の開繊性・開繊された強化繊維の幅等に応じて適宜変更してよい、好ましくは50m/分以下であり、より好ましくは5~30m/分である。上記範囲の速度で巻き取りを行うことが、幅の精度を高めやすいため好ましい。
開繊された強化繊維を巻き取る工程において、各ローラーとの接触により発生する単糸切れによる毛羽立ちを取り除くために、例えばスクレーパー、ブラシ等をローラーと接触するように設けてもよい。
強化繊維の繊維と繊維の間への樹脂の含浸性を高めやすい観点からは、厚み方向における平均含有数が、好ましくは20本以下、より好ましくは15本以下、さらに好ましくは10本以下、さらに好ましくは8本以下、さらに好ましくは7本以下、特に好ましくは6本以下になるまで開繊することが好ましい。また、該厚み方向における平均含有数の下限値は、樹脂の浸透を高めやすい観点からは少ないほどよく、特に限定されないが、例えば1本以上、ある場合には2本以上、別の場合には3本以上であってもよい。
上記工程を経て開繊された強化繊維は、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下の幅長の変動係数(CV)を有する。かかる変動係数の算出方法は、一方向プリプレグに含まれる開繊された強化繊維について、上記に述べたと
おりである。幅長の変動係数を上記の上限以下とすることにより、本開示のプリプレグからランダム積層体を製造する際に、積層ムラが生じにくく、ランダムシートの等方性を確保しやすくなる。本開示の製造方法によれば、原料化合物を含浸後の繊維の幅方向への収縮も抑制されやすいため、上記の幅長の変動係数を低下させやすい。
上記工程(a)に続く工程(b)において、開繊された強化繊維に、式(1):
Figure 2023169886000006
[式中、nは1~4の整数を表す]
で表されるビスフェノールA型エポキシ化合物と、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールB、ビスフェノールE及びビスフェノールPからなる群から選択されるビスフェノール化合物とを含浸させてもよい。
工程(b)で含浸させる、原料として使用するビスフェノールA型エポキシ化合物、及びビスフェノール化合物の分子量は、それぞれ、好ましくは2,000以下である。このように、低分子量であり、低粘度の原料を使用することにより、プリプレグ製造の際に開繊された強化繊維間に原料となる化合物が浸透しやすくなり、得られるプリプレグは、繊維間にボイドが含まれることなくこれらの化合物の重合物である熱可塑性樹脂が均一に含浸した状態(フル含浸)となる。
工程(b)において、得られる成形体の強度、剛性及び耐熱性の観点から、原料として使用するビスフェノールA型エポキシ化合物とビスフェノール化合物とを、好ましくは50:50~90:10、より好ましくは60:40~80:20の質量比で含浸させる。質量比におけるビスフェノールA型エポキシ化合物の割合が上記の下限以上であると、プリプレグから得られる成形体の耐熱性を高めやすいために好ましい。また、質量比におけるビスフェノールA型エポキシ化合物の割合が上記の上限以下であると、開繊された強化繊維にビスフェノールA型エポキシ化合物とビスフェノール化合物とを良好な分散状態で含浸させやすいため好ましい。
工程(b)において、上記の他に任意の添加剤を含浸させてもよい。添加剤としては、例えば有機溶媒、反応促進剤、単官能性エポキシ化合物、カップリング剤、硬化剤、顔料、消泡剤、防カビ剤、劣化防止剤等が挙げられる。これらの添加剤を加える場合、その量は添加の目的等に応じて適宜変更してよい。例えば、樹脂の重合反応を促進させるために反応促進剤を使用してもよい。現場重合型の熱可塑性樹脂の原料であるビスフェノールA型エポキシ化合物とビスフェノール化合物とは、求電子置換反応により逐次的に重合する。そのため、求電子置換反応が進みやすい塩基性のリン系・アミン系の反応促進剤を使用することが好ましく、生産速度の観点から有機リン化合物を使用することが特に好ましい。
有機リン化合物としては、トリフェニルホスフィン、トリパラトリルホスフィン、ジフェニルシクロヘキシルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド、1,4-ビスジフェニルホスフィノブタノン等が好適に利用される。
上記の原料化合物の重合物の重量平均分子量を好ましい範囲としやすい観点から、反応促進剤を、一方向プリプレグに含まれる上記重合物100質量部に対して2~3質量部の量で使用することが好ましい。また、反応促進剤は、工程(b)において、原料であるビスフェノールA型エポキシ化合物等を含む混合物と共に開繊された強化繊維に含浸させることが好ましい。
単官能性エポキシ化合物は過度な重合を抑制する観点から添加されてもよい。単官能エポキシ化合物としては、特に限定されないが、例えば芳香族型単官能エポキシ化合物(特にアルキルフェノール型単官能エポキシ化合物)、脂肪族炭化水素型単官能エポキシ化合物等が挙げられる。工程(b)において、1種類の単官能エポキシ化合物を用いてもよいし、2種類以上の単官能エポキシ化合物を組み合わせて用いてもよい。
工程(b)において現場重合型の熱可塑性樹脂の原料となるビスフェノールA型エポキシ化合物と、ビスフェノール化合物とを含浸させる方法としては、開繊された強化繊維に上記原料をそのまま用いて含浸させてもよいし、原料と有機溶媒とを含むワニスを用いて含浸させてもよい。樹脂の粘性を低くすることで強化繊維に対する透過性を高め、強化繊維間にボイドが生じることなく含浸させやする観点から、ワニスを用いて含浸を行うことが好ましい。ワニスに含まれ得る有機溶媒としては、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノール化合物に対する溶解性が高い有機溶媒が好ましく、DNP・NMP等の極性溶媒がより好ましく、ケトン系溶媒がさらにより好ましく、メチルエチルケトンが特に好ましい。有機溶媒の含有量は原料となる化合物の含浸性、生産性の観点から使用する原料100質量部に対して10~20質量部とすることが好ましい。
含浸方法は特に限定されず、吐出ダイを用いて開繊された強化繊維の上下面に現場重合型の熱可塑性樹脂の原料となる化合物又はその溶液を塗工することにより行ってもよいし、開繊された強化繊維に現場重合型の熱可塑性樹脂の原料となる化合物を含有する溶液に浸漬させて行ってもよい。ここで、上記化合物又は上記化合物の溶液が含浸した強化繊維は、該化合物又は該溶液の表面張力により幅方向に収縮しやすい。この収縮により、厚みの増大や、繊維の方向性の乱れ、割れの発生などが起こり得る。このような収縮を防止するために、工程(b)において、例えば塗工装置を用いることが好ましい。
開繊された強化繊維を、原料化合物を含有する溶液に浸漬させる場合、原料化合物を含浸させた後、強化繊維に、ローラーによる絞りで脱液する絞り工程を施してよい。ローラーに掛ける絞り圧Pは、好ましくは0.05MPa~0.3MPa、より好ましくは0.1MPa~0.25MPaである。これにより、ボイド除去と含浸された化合物の量の制御を行うことができる。絞り圧が上記の下限より低くなると、樹脂付着量が安定せず一方向プリプレグ内部にボイドが残存する場合がある。また、絞り圧が上記の上限を越えると、一方向プリプレグの樹脂量を増やすことが困難となる場合がある。
工程(b)における当該樹脂含浸量は、好ましくは繊維強化熱可塑性樹脂シートにおける強化繊維体積含有率Vfが好ましくは10~80%、より好ましくは15~60%、さらに好ましくは20~55%、さらにより好ましくは25~45%さらにより好ましくは30~45%、さらにより好ましくは35~45%、特に好ましくは37.5~42.5%になるように制御される。上記した範囲とすることが、繊維強化熱可塑性樹脂シートの成形性の観点から好ましい。体積含有率が上記の上限以下である場合、繊維相互の交絡箇所(未含浸部)の発生を抑制しやすく、ボイドを低減しやすい。体積含有率が上記の下限以上である場合、繊維強化熱可塑性樹脂シート及び成形体の強度を高めやすい。
次いで、工程(c)において、前記化合物を含浸させた強化繊維を加熱して、強化繊維に含浸させた原料化合物を固化させる。固化方法は加熱により行われる。加熱温度は、用いる強化繊維の種類や、原料化合物の溶液を用いた場合には溶媒の種類等によって適宜変更してよいが、得られる熱可塑性樹脂のガラス転移温度よりも高く原料の反応性基、反応促進剤が失活しない温度域で行うことが好ましく、100~200℃の温度域で加熱することが好ましい。加熱方法は特に限定しないが、近赤外線、遠赤外線、中赤外線による加熱方法が好適に用いられる。
この固化により、ビスフェノールA型エポキシ化合物と、ビスフェノール化合物とが、直鎖状に重合し、例えば5,000~25,000、好ましくは5,000~20,000、より好ましくは7,000~15,000の重量平均分子量を有する現場重合型の熱可塑性樹脂を含む一方向プリプレグが得られる。また、原料と有機溶媒とを含むワニスを用いて含浸させる場合、溶剤の揮発とともにビスフェノールA型エポキシ化合物と、ビスフェノール化合物との重合反応が進行する。
次に、工程(d)において、上記のようにして製造した一方向プリプレグを所望の繊維長となるように切断し、例えば所望の大きさを有する金型にランダムに積層するように配置させ、積層物を得る。ランダムに積層する方法としては、繊維強化熱可塑性樹脂シートを連続的に製造する場合、上記のようにして裁断した一方向プリプレグを高い位置から自然落下させ、スチールベルト等のコンベア上に積層させる方法や、落下経路にエアーを吹き込むか、又は、邪魔板を取り付ける方法等が好適に使用される。また、バッチ式で製造する場合には、上記のようにして裁断した一方向プリプレグを容器に蓄積しておき、この容器の下面に搬送装置を取り付け、シート製造のための金型等へ分散させる方法等が好適に使用される。
一方向プリプレグをランダムに積層し積層物を得る工程では、所定の大きさ(例えば300mm角や600mm角等)を有する金型に一方向プリプレグをランダムに積層させる。この場合、得られる積層物の嵩高さは使用する一方向プリプレグの繊維方向の長さによって異なるが20~50mm程度となり、金型面に対して略均一となることが好ましい。これにより、得られる繊維強化熱可塑性樹脂シートの厚み方向における一方向プリプレグの積層数が一定となり、機械的強度が等方性となる。
次いで、工程(e)において、該積層物を好ましくは100~200℃の温度で加熱し、繊維強化熱可塑性樹脂シートを得てもよい。加熱することにより、熱可塑性樹脂が一体化し、本開示の繊維強化熱可塑性樹脂シートが得られる。加熱と共に加圧を行ってもよい。本開示の繊維強化熱可塑性樹脂シートを製造する際の加熱温度は、好ましくは100~200℃、より好ましくは150~180℃である。加圧を行う場合、加圧時の圧力は、好ましくは0.1~10MPa、より好ましくは1~5MPaである。具体的には、例えばスチールベルト等のコンベア上に積層させた一方向プリプレグの積層物を、スチールベルトごと熱ロール間に通過させ、加熱、加圧、あるいは間欠プレスする方法や、ベルトプレスにより加熱及び冷却を連続して行う方法、遠赤外線ヒーターによって予熱した後、コールドプレスする方法、あるいは、加熱冷却プレスを用いるバッチ方式などが挙げられる。本開示の繊維強化熱可塑性樹脂シートを製造する際の加熱温度は、現場重合型の熱可塑性樹脂のガラス転移温度よりも高く、原料の反応性基、反応促進剤が失活しない温度域で行うことが好ましく、好ましくは100~200℃、より好ましくは150~180℃の温度域で加熱することが好ましい。これにより、樹脂の重合を進めながら樹脂の流動性を維持し、さらに加圧することで積層されたプリプレグ間に存在する隙間を埋めることが可能となる。この結果、得られる成形体のボイドを低減させやすくなる。
シートは得られた積層物を仮留めした状態の凝集物(プリフォーム)であってもよい。例えば、得られた積層物を、加熱(例えば100~200℃の温度)して軟化させ、所定の隙間(例えば5~10mm)に設定した上下の加圧ローラー間を通過させて加圧することで積層物に含まれるプリプレグ同士を仮留めすることでプリフォームが得られる。
本開示の繊維強化熱可塑性樹脂シートを上記(a)~(e)の工程を含む製造方法により製造する場合、工程(b)において5,000~25,000の比較的低い重量平均分子量を有する、現場重合型の熱可塑性樹脂を含有する一方向プリプレグを使用するため、積層物を加熱する工程(e)において、現場重合型の熱可塑性樹脂のさらなる重合が進行する。この重合は、繊維強化熱可塑性樹脂シートに含まれる1つの一方向プリプレグ内においてのみならず、隣接する一方向プリプレグ間でも行われる。その結果、繊維強化熱可塑性樹脂シート中の一方向プリプレグは、互いにより強固に結合され、高い強度が達成される。積層物を加熱する工程において、得られる重合物の重量平均分子量が26,000以上となるまで重合させることが好ましい。
〔ガラス繊維強化熱可塑性樹脂〕
以下において、繊維強化プラスチックの例として、ガラス繊維強化熱可塑性樹脂について説明する。
ガラス繊維強化熱可塑性樹脂とは、マトリックス樹脂成分として熱可塑性樹脂を、繊維成分としてガラス繊維を含む、複合材料である。
ガラス繊維強化熱可塑性樹脂におけるマトリックス樹脂成分としては、〔樹脂成分〕において説明した樹脂成分を用いることができるが、好ましくはポリオレフィンを含む。ポリオレフィンの例としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、および1-ドデセンなどの、1つ以上のα-オレフィンから誘導された繰り返し単位を有するホモポリマー及びコポリマーが挙げられ、好ましくはポリエチレン又はポリプロピレン、特にポリプロピレンが好ましい。
ガラス繊維強化熱可塑性樹脂におけるガラス繊維としては、〔繊維成分〕において説明したガラス繊維を用いることができる。特にガラス繊維は長繊維(例えば5mm以上、30mm以上、又は50mm以上)であってよい。
ガラス繊維強化熱可塑性樹脂は、ガラスマット強化熱可塑性樹脂であることが好ましいい。ガラスマット強化熱可塑性樹脂は、ガラス繊維がランダム状(不織状)又は織物状に集積されてなるガラスマットに対して、熱可塑性樹脂を含侵させたシート状の材料である。ガラスマットにおいてガラス繊維は等方性に配置されていることが好ましい。
ガラスマット強化熱可塑性樹脂は市販されており、例えば三菱ケミカルアドバンスドマテリアルズ社のGMTシリーズが挙げられる。
ガラス繊維強化熱可塑性樹脂(例えばガラスマット強化熱可塑性樹脂)における繊維体積含有率Vfは、好ましくは10~80%、より好ましくは15~60%、さらに好ましくは20~55%、さらにより好ましくは25~45%さらにより好ましくは30~45%、さらにより好ましくは35~45%、特に好ましくは37.5~42.5%になるように制御される。上記した範囲とすることが、ガラス繊維強化熱可塑性樹脂の成形性及び成形体の強度の観点から好ましい。
ガラス繊維強化熱可塑性樹脂(特にガラスマット強化熱可塑性樹脂)を一方向プリプレグの代わりに用いて、上述したランダム積層体である繊維強化熱可塑性樹脂シートの製造方法と同様の方法にて、シートを作製して、当該シートをハニカム板製造の成形工程に供してもよい。すなわち、(繊維強化熱可塑性樹脂シートの製造方法)における(d)及び(e)の説明を、ガラス繊維強化熱可塑性樹脂(特にガラスマット強化熱可塑性樹脂)を一方向プリプレグの代わりに用いた場合に援用できる。上述したランダム積層体である繊維強化熱可塑性樹脂シートに代えて、ガラス繊維強化熱可塑性樹脂をシート状としたもの(ガラス繊維強化熱可塑性樹脂シート)をハニカム板の原料として用いることができる。ガラス繊維強化熱可塑性樹脂シートの例として、例えば、三菱ケミカルアドバンスドマテリアルズ社製のガラスマット強化熱可塑性プラスチック(GMT)等を利用することができる。
[ハニカム板の製造方法]
本開示におけるハニカム板の製造方法は各種繊維強化プラスチックの成形方法を採用でき、例えば、プレス成形が挙げられる。プレス成形は、加工装置及び型等を用いて、必要により所定のサイズにカットした繊維強化プラスチック(例えば、繊維強化熱可塑性樹脂シート、特に、上述した、ランダム積層体である繊維強化熱可塑性樹脂シート、ガラス繊維強化熱可塑性樹脂シート)に対して、曲げ、剪断、圧縮等の変形を加え、成形体を製造する方法である。成形形態としては、例えば深絞り、フランジ、コールゲート、エッジカーリング、型打ちなどが挙げられる。プレス成形の方法としては、金型を加熱させて成形した後冷却するヒート&クール法や、シートを加熱し軟化させた状態で低温の金型で成形を行うコールドプレス(スタンピング)法等を好適に使用することができる。
ハニカム板を製造する際の条件は、用いる原料となる樹脂の流動性の観点等から適宜調節できる。プレス温度は、例えば、100~300℃、150~250℃、又は180~220℃であってよい。プレス圧は、例えば、0.1~10MPa、1~8Mpa、又は2~7MPaであってよい。プレス時間は、例えば、10秒~10分、20秒~5分、又は30秒~3分であってよい。なお、この条件は所望される成形体の厚み、形状等によって適宜変更され得る。
<一対のゴム板>
本開示の敷板は一対のゴム板を含んでもよい。一対のゴム板が一対のハニカム板を挟みこむように一対のハニカム板が一対のゴム板の間に配置される。
ゴム板は敷板の最外面を構成する部材であってよい。ゴム板はその表面(特に敷板の最外面を構成する面)に複数の溝を有していてもよい。複数の溝の形状は限定されないが、典型的には、ストライプ上又は網目状である。網目状の複数の溝を有する敷板の模式図が図2に示される。溝と溝との溝間隔は3mm以上、5mm以上、8mm以上、又は10mm以上であってよい。溝と溝との溝間隔は50mm以下、40mm以下、30mm以下、20mm以下、10mm以下であってよい。溝幅は限定されないが、例えば0.1mm以上、0.3mm以上、0.5mm以上、又は0.7mm以上であってよく、5mm以下、3mm以下、1mm以下であってよい。ゴム板の表面が複数の溝を有することにより、グリップ力を高め敷板使用時の敷板の滑りやずれを防止することができる。なお、ゴム板ではなく、その他の部材の面(例えばハニカム板の非ハニカム面)が敷板における最外面となる場合、当該面が上述したような複数の溝を有してもよい。
ゴム板の厚みは、0.5mm以上、1mm以上、3mm以上、又は5mm以上であってよい。ゴム板の厚みは、30mm以下、25mm以下、20mm以下、15mm以下、10mm以下、5mm以下、又は3mm以下であってよい。圧縮強度を強化する観点からは上記下限以上であることが好ましく、軽量化の観点から上記上限以下であることが好ましい。
ゴム板の材料としては、例えば、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、エチレンプロピレンゴム、エピクロロヒドリンゴム等の合成ゴムや天然ゴム等が挙げられる。
<中板>
本開示の敷板は中板を含んでもよい。一対の中板がハニカム板を挟みこむように中板が一対のハニカム版の間に配置される。中板を含むことにより荷重を分散させ、リブが接することによる局所的な荷重の伝達を抑制でき、敷板の耐久性や圧縮強度を向上させ得る。中板を含まない場合の敷板の断面図及び中板を含む場合の敷板の断面図がそれぞれ図5及び図6に示される。なお、図5~7に係る敷板はゴム板を有しなくてもよい。
中板の厚みは、0.5mm以上、1mm以上、3mm以上、又は5mm以上であってよい。中板の厚みは、30mm以下、25mm以下、20mm以下、15mm以下、10mm以下、5mm以下、又は3mm以下であってよい。圧縮強度を強化する観点からは上記下限以上であることが好ましく、軽量化の観点から上記上限以下であることが好ましい。
<筐体>
本開示の敷板は筐体を含んでもよい。筐体はハニカム板の側面を覆うように配置される。ゴム板及び/又は中板が存在する場合、ゴム板の側面及び/又は中板の側面を覆うように筐体が配置されてもよい。
中板の厚みは、0.5mm以上、1mm以上、3mm以上、又は5mm以上であってよい。中板の厚みは、30mm以下、25mm以下、20mm以下、15mm以下、10mm以下、5mm以下、又は3mm以下であってよい。圧縮強度を強化する観点からは上記下限以上であることが好ましく、軽量化の観点から上記上限以下であることが好ましい。
中板の材料としては、特に限定されず、樹脂、金属、セラミック等のある程度の合成を有する各種材料を用いてもよいが、軽量化及び圧縮強度の観点から、アルミ、カーボン、繊維強化プラスチック(例えば、ハニカム板と同様の材料)等を採用することができる。
<取手>
本開示の敷板は取手を含んでもよい。取手は中板又は筐体と結合してもよい。取手が筐体と結合している場合の模式図が図2に示される。取手が中板と結合している場合、中板が延在することにより、中板の一部が取手として機能してよい(図7参照)。
<敷板の用途>
本開示における敷板は、軽量かつ圧縮強度に優れるため、各種分野の従来の敷板の代替品として用いられる。好適には本開示における敷板はアウトリガー用敷板として用いることができる。好適には本開示における敷板はアウトリガー用敷板として用いることができる。例示的には、社会インフラ設備関連に関する工事(例えば、道路付帯設備工事、通信ケーブル工事等)における高所作業車用の敷板として好適に利用される。
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
以下、実施例を挙げて本開示を詳しく説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
一対のハニカム板、一対のゴム板、及び中板を含む敷板を用いて、圧縮試験(10mm/minにて0~7tまで圧縮)を行い得られた荷重-変位曲線を図8に示す。図8の荷重-変位曲線から明らかなように、70kNの荷重で変位が0.8mmであり、木製の敷板と比較しても遜色ない圧縮強度を示すことが示された。用いた敷板の詳細は次のとおりである。
ハニカム板高さ:約10mm(基板厚み:4mm)
ハニカム板材料:一方向プリプレグの繊維方向の長さを25mmとした以外は文献(特許第6176691号公報)の実施例10と同様に製造した繊維強化熱可塑性樹脂シートから成形
ハニカム形状:六角ハニカム構造(セルの最大内径約20mm)
リブ形状(テーパー形状(抜き角度約10°)、リブ先端R面加工あり(R約1.5mm)、リブ底の肉厚約6mm)
ゴム板厚み約4mm
(実施例2)
一対のハニカム板、及び中板を含む敷板を用いて、圧縮試験(10mm/minにて0~7tまで圧縮)を行った。荷重-変位曲線は図示しないが、70kNの荷重で変位が0.6mmとなり、木製の敷板と比較しても遜色ない圧縮強度を示すことが示された。用いた敷板の詳細は次のとおりである。
ハニカム板高さ:約10mm(基板厚み4mm、表面に間隔6mmの網目状の溝)
ハニカム板材料:一方向プリプレグの繊維方向の長さを25mmとした以外は文献(特許第6176691号公報)の実施例10と同様に製造した繊維強化熱可塑性樹脂シートから成形
ハニカム形状:六角ハニカム構造(セルの最大内径約40mm)
リブ形状(テーパー形状(抜き角度約10°)、リブ先端R面加工あり(R約1.5mm)、リブ底の肉厚約6mm)
(実施例3)
一対のハニカム板、及び中板を含む敷板を用いて、圧縮試験を行った。圧縮試験(10mm/minにて0~7tまで圧縮除荷を繰り返す)を行い、1年間の使用を想定した2400回後の圧縮試験後に得られた荷重-変位曲線を図9に示す。2400回後の圧縮試験後においても、図9の荷重-変位曲線から明らかなように、70kNの荷重で変位が0.8mmであり、木製の敷板と比較しても遜色ない圧縮強度を示すことが示された。用いた敷板の詳細は次のとおりである。
ハニカム板高さ:約10mm(基板厚み4mm、表面に間隔6mmの網目状の溝)
ハニカム板材料:ガラスマット強化熱可塑性樹脂(三菱ケミカルアドバンスドマテリアルズ社製)
ハニカム形状:六角ハニカム構造(セルの最大内径約37mm)
リブ形状(テーパー形状(抜き角度約14°)、リブ先端及びリブ根元にR面加工あり(先端R約1.5mm、根元R約3mm)、リブ底の肉厚約9mm)
本開示における一態様のアウトリガー用敷板の模式図。 本開示における一態様の敷板の斜視図。 本開示における一態様のハニカム板の斜視図。 図3のハニカム板のzx又はzy平面における斜視断面図。 本開示における一態様のリブの先端及び根元をR面取り加工したハニカム板の断面図(リブ部分拡大図)。 本開示における一態様の敷板のzx又はzy平面における断面図。 本開示における一態様の敷板のzx又はzy平面における断面図。 本開示における一態様の敷板の端部のzx又はzy平面における断面図。 本開示における一態様の敷板について圧縮試験を行い得られた荷重-変位曲線。 本開示における一態様の敷板について圧縮試験を行い得られた荷重-変位曲線。
1 敷板
2 ハニカム板
3 ゴム板
4 中板
5 筐体
6 取手
7 ビス止め
10 高所作業車
11 アウトリガー

Claims (19)

  1. 一対のハニカム板を含む、敷板であって、
    前記ハニカム板が一主面にハニカム構造を形成するリブを有するハニカム面を備え、
    前記ハニカム板が繊維強化プラスチック製であり、
    前記一対のハニカム板が、各ハニカム板の前記ハニカム面が互いに向かい合うように配置される、敷板。
  2. 前記ハニカム構造が六角ハニカム構造である、請求項1に記載の敷板。
  3. 前記リブの存在比率が、前記ハニカム面の垂直投影面積に対して20%以上60%以下である、請求項1に記載の敷板。
  4. 前記リブの肉厚が、前記ハニカム構造のセルのそれぞれにおいて、前記セルの最大内径に対して3%以上30%以下である、請求項1に記載の敷板。
  5. 前記リブの占有体積が、前記ハニカム構造のセルのそれぞれにおいて、前記セルの中空体積に対して10%以上60%以下である、請求項1に記載の敷板。
  6. 前記リブの存在比率が、前記ハニカム面の垂直投影面積に対して20%以上60%以下であり;
    前記リブの肉厚が、前記ハニカム構造のセルのそれぞれにおいて、前記セルの最大内径に対して3%以上40%以下であり;
    前記リブの占有体積が、前記ハニカム構造のセルのそれぞれにおいて、前記セルの中空体積に対して10%以上60%以下である、請求項1に記載の敷板。
  7. 前記リブが0.5°以上30°以下の抜き勾配がつけられているテーパー形状である、請求項1に記載の敷板。
  8. 前記リブの先端がR面取り加工されている、請求項1に記載の敷板。
  9. 前記リブの根元がR面取り加工されている、請求項1に記載の敷板。
  10. 前記ハニカム板の厚みが50mm以下であり、前記リブの高さが前記ハニカム板の厚みの30%以上90%以下である、請求項1に記載の敷板。
  11. 前記敷板の最外面が複数の溝を有する、請求項1に記載の敷板。
  12. 前記繊維強化プラスチックがガラス繊維強化熱可塑性樹脂である、請求項1に記載の敷板。
  13. 前記ガラス繊維強化熱可塑性樹脂がガラスマット強化熱可塑性樹脂である、請求項12に記載の敷板。
  14. 前記繊維強化プラスチックが炭素繊維強化熱可塑性樹脂である、請求項1に記載の敷板。
  15. 前記ハニカム板が一方向プリプレグのランダム積層体の成形体である、請求項1に記載の敷板。
  16. 中板を含み、前記中板が前記一対のハニカム板の間に配置される、請求項1に記載の敷板。
  17. 筐体を含み、前記筐体が前記ハニカム板の側面を囲うように配置される、請求項1に記載の敷板。
  18. 取手を含み、前記取手が前記中板又は前記筐体と結合する、請求項16又は17に記載の敷板。
  19. アウトリガー用敷板である、請求項1に記載の敷板。
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