JP2023168114A - 燃料電池スタック - Google Patents

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輝 長谷川
Teru Hasegawa
耕太郎 池田
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Abstract

【課題】トルネード構造の閉塞を抑制することができる燃料電池スタックを提供する。【解決手段】膜電極ガス拡散層接合体と、1対のセパレータと、セパレータ同士を接着させる枠状の樹脂シートと、を備える単セルを複数積層した燃料電池スタックであって、一方のセパレータにおいて、反応ガス供給孔及び反応ガス排出孔の少なくとも一方にトルネード構造が設けられており、トルネード構造は、反応ガス供給孔又は反応ガス排出孔の周囲を仕切る隔壁と、隔壁の周囲を囲み、反応ガスの流通が可能なトルネード部と、を有し、トルネード部は反応ガス流路と連通しており、隔壁は反応ガス供給孔又は反応ガス排出孔とトルネード部とを接続する複数の貫通孔を有しており、他方のセパレータは、樹脂シートを挟んで、一方の前記セパレータの前記トルネード部に対応する位置に空間を形成しており、樹脂シートは空間側に撓んでいる。【選択図】図6

Description

本願は燃料電池スタックに関する。
燃料電池スタックは燃料ガス及び酸化剤ガスとの電気化学反応によって電気エネルギーを取り出す発電装置であり、複数の単セルを積層して形成される。単セルは、電解質膜の両面に1対の触媒層及びガス拡散層が配置された膜電極ガス拡散層接合体(MEGA:Membrane Electrode Gass Diffusion Assembly)と、MEGAの両面を挟持する1対のセパレータとから形成されている。
セパレータは反応ガス(燃料ガス又は酸化剤ガス)を面方向に流通させる流路と、反応ガスを単セルの積層方向に流通させる反応ガス供給孔及び反応ガス排出孔を有している。そして、複数の単セルを反応ガス供給孔及び反応ガス排出孔が連通するように配置することにより、燃料電池スタックにおいて、反応ガスを内部に供給するための反応ガス入口マニホールドと、反応ガスを排出するための反応ガス出口マニホールドとを形成している。
ここで、単セルにおいて、燃料ガスはアノード側に流通し、酸化剤ガスはカソード側に流通する必要がある。そのため、一方の電極側を流通する反応ガスが他方の電極側に漏れることを防止する必要がある。そこで、単セルは、ガスバリア性を有する樹脂シートを1対のセパレータ間に配置し、樹脂シートで1対のセパレータ同士を接着することにより、上記の問題を防止している。
樹脂シートはガスバリア性を有するコア層とコア層の両面に配置される接着層とを有しており、セパレータの反応ガス供給孔及び反応ガス排出孔に対応する位置にそれぞれ貫通孔が設けられている。
このような燃料電池スタックの構造は例えば特許文献1に記載されている。特許文献1は、樹脂シートのマニホールド排水淵部に貫通孔を設け、貫通孔を介して発電により生成する液水の排出を促進する燃料電池スタックを開示している。
特開2021-180154号公報
セパレータは応反応ガス孔(反応ガス供給孔及び反応ガス排出孔)の周辺部にトルネード構造を有する場合がある。トルネード構造は、反応ガス孔の周囲を仕切る隔壁と、隔壁の周囲を囲むトルネード部とを有し、トルネード部は反応ガス流路と接続しており、隔壁は反応ガス孔とトルネード部とを接続する複数の貫通孔を有している。そして、反応ガスは貫通孔を介してトルネード部と反応ガス孔との間を流通することができる。
このように、セパレータがトルネード構造を有することにより、貫通孔を介した複数の反応ガスの流通経路を設けることができるため、例えばフラッディングにより1つの流通経路が閉塞されたとしても、その他の流通経路に反応ガスを流通させることができ、フラディングによる発電効率の低下を抑制することができる。
しかしながら、高出力時において、発電により生成される生成水の量は通常運転時よりも増加するため、多量に生成された生成水によりフラッディングが発生し、反応ガスの流通が阻害され、発電効率が低下する問題がある。
そこで、本開示の主な目的は、フラッディングを抑制することができる燃料電池スタックを提供することである。
本開示は上記課題を解決するための一つの態様として、膜電極ガス拡散層接合体と、膜電極ガス拡散層接合体を挟持する1対のセパレータと、1対のセパレータの間、且つ、膜電極ガス拡散層接合体の周囲に配置されセパレータ同士を接着させる枠状の樹脂シートと、を備える単セルを複数積層した燃料電池スタックであって、セパレータは、反応ガスをセパレータの面方向に流す反応ガス流路と、反応ガスを単セルの積層方向に流通させるための反応ガス供給孔及び反応ガス排出孔とを有し、樹脂シートは、膜電極ガス拡散層接合体を収容する開口部と、樹脂シート反応ガス供給孔及び樹脂シート反応ガス排出孔とを有し、燃料電池スタックは、反応ガス供給孔及び樹脂シート反応ガス供給孔が連通するように配置されることにより形成された反応ガス供給マニホールド、並びに、反応ガス排出孔及び樹脂シート反応ガス排出孔が連通するように配置されることにより形成された反応ガス排出マニホールドを有し、一方のセパレータにおいて、反応ガス供給孔及び反応ガス排出孔の少なくとも一方にトルネード構造が設けられており、トルネード構造は、反応ガス供給孔又は反応ガス排出孔の周囲を仕切る隔壁と、隔壁の周囲を囲み、反応ガスの流通が可能なトルネード部と、を有し、トルネード部は反応ガス流路と連通しており、他方のセパレータは、樹脂シートを挟んで、一方のセパレータのトルネード部に対応する位置に空間を形成しており、樹脂シートは空間側に撓んでいる、燃料電池スタックを提供する。
本開示の燃料電池スタックは、フラッディングを抑制することができる。
燃料電池スタック100の斜視図である。 単セル50の分解斜視図である。 アノード側セパレータ20aのMEGA10と接する面を積層方向から観察した概略図である。 カソード側セパレータ30bのMEGA10と接する面を積層方向から観察した概略図である。 樹脂シート30を積層方向から観察した概略図である。 アノード側セパレータ20aの燃料ガス供給孔22aにトルネード構造40が設けられている場合の、単セル50の燃料ガス供給マニホールドに着目した拡大図である。 図6のVII-VIIで切断した断面図である。 図6のVIII―VIIIで切断した断面図である。 生成水Wにより反応ガスの流通が阻害されている様子を表す断面図である。
[燃料電池スタック]
本開示の燃料電池スタックについて、一実施形態である燃料電池スタック100を用いて説明する。図1に燃料電池スタック100の斜視図を示した。図2に単セル50の分解斜視図を示した。
図1に示した通り、燃料電池スタック100は、単セル50が複数積層されて形成されている。燃料電池スタック100において、セル50の積層数は特に限定されないが、典型的には2~200である。燃料電池スタック100は、積層方向の両端にエンドプレートを備えていてもよい。燃料電池スタック100は、隣接する単セル50の間にガスケットを配置してもよい。ガスケットの材料は、例えばシリコーンゴム等が挙げられる。
<単セル50>
図2に示した通り、単セル50は、膜電極ガス拡散層接合体10(以下、「MEGA10」ということがある。)と、膜電極ガス拡散層接合体10を挟持する1対のセパレータ(アノード側セパレータ20a、カソード側セパレータ20b)と、1対のセパレータの間、且つ、膜電極ガス拡散層接合体10の周囲に配置され、1対のセパレータ同士を接着させる枠状の樹脂シート30と、を備えている。
(膜電極ガス拡散層接合体)
MEGA10は、アノードに燃料ガスが供給され、カソードに酸化剤ガスが供給されることにより生じる電気化学反応により、電気エネルギーを取り出す発電装置である。燃料ガスとは、水素や改質ガス等である。酸化剤ガスとは、酸素や空気等である。
MEGA10は電解質膜の両面にそれぞれ触媒層(アノード触媒層、カソード触媒層)及びガス拡散層(アノードガス拡散層、カソードガス拡散層)が形成されたものである。アノード触媒層及びアノードガス拡散層がアノードとして機能し、カソード触媒層及びカソードガス拡散層がカソードとして機能する。
電解質膜としては、例えばフッ素系樹脂等の固体高分子型電解質膜が挙げられる。触媒層は、電気化学反応を促進する触媒金属、プロトン伝導性を有する電解質、及び、電子伝導性を有するカーボン粒子等を備えていてもよい。触媒金属としては、例えば、白金(Pt)、及び、Ptと他の金属とから成る合金(例えばコバルト、及び、ニッケル等を混合したPt合金)等を用いることができる。ガス拡散層は、ガス透過性を有する導電性部材等であればよい。導電性部材としては、例えば、カーボンクロス、及びカーボンペーパー等のカーボン多孔質体、並びに、金属メッシュ、及び、発泡金属などの金属多孔質体等が挙げられる。
<セパレータ>
セパレータはアノード側セパレータ20a及びカソード側セパレータ20bを有している。単セル50において、1対のセパレータはMEGA10を挟持している。1対のセパレータはいずれも、MEGA10と接する面に反応ガスの流路である溝が形成されており、反応ガスをMEGA10に供給可能な構造を有している。また、1対のセパレータは導電性を有し、MEGA10により発電された電気を集電する集電体としての機能を有する。
セパレータは反応ガスを面方向に流通させる流路(反応ガス流路)と、反応ガスを単セル50の積層方向に流通させる反応ガス供給孔及び反応ガス排出孔を有している。反応ガス流路とセパレータ側反応ガスマニホールドとは連通しており、反応ガスが流通可能なように構成されている。また、セパレータは、冷媒を単セル50の積層方向に流通させる冷媒供給孔及び冷媒排出孔を有している。ここで、反応ガスとは、燃料ガスと酸化剤ガスとを合わせた概念である。冷媒とは冷却水又は冷却空気等である。
図3にアノード側セパレータ20aのMEGA10と接する面を積層方向から観察した概略図を示した。また、図4にカソード側セパレータ20bのMEGA10と接する面を積層方向から観察した概略図を示した。
反応ガス流路はセパレータのうちMEGA10と接する面に設けられている。反応ガスは反応ガス流路を通り、MEGA10とセパレータとの間を流通する。これにより、MEGA10において電気化学反応が生じる。アノード側セパレータ20aには燃料ガス流路21aが設けられており、カソード側セパレータ20bには酸化剤ガス流路21bが設けられている。
反応ガス供給孔及び反応ガス排出孔は反応ガスが積層方向に流通する貫通孔であり、反応ガスが外部から供給される方向に流通する方を反応ガス供給孔とし、反応ガスが外部に排出される方向に流通する方を反応ガス排出孔とする。反応ガス供給孔は、燃料ガスが流通する燃料ガス供給孔と、酸化剤ガスが流通する酸化剤ガス供給孔とを有する。反応ガス排出孔は、燃料ガスが流通する燃料ガス排出孔と、酸化剤ガスが流通する酸化剤ガス排出孔とを有する。
これらの反応ガス供給孔及び反応ガス排出孔は、アノード側セパレータ20a及びカソード側セパレータ20bのいずれにも形成されている。図3に示した通り、アノード側セパレータ20aは燃料ガス供給孔22a、燃料ガス排出孔23a、酸化剤ガス供給孔24a、及び酸化剤ガス排出孔25aを有する。図4に示した通り、カソード側セパレータ20bは燃料ガス供給孔22b、燃料ガス排出孔23b、酸化剤ガス供給孔24b、及び酸化剤ガス排出孔25bを有する。
冷媒流路は、セパレータのうちMEGA10と接する面とは反対の面、すなわち、反応ガス流路が設けられていない側の面に設けられる。一例として、図2にアノード側セパレータ20aに設けられた冷媒流路31cを示した。図示していないが、カソード側セパレータ20bも冷媒流路を有している。冷媒は冷媒流路を通り、隣接する単セル50間を流通する。これにより、発電等により温度が上昇した単セル50を冷却することができる。
冷媒供給孔及び冷媒排出孔は冷媒が流通する貫通孔であり、冷媒が外部から供給される方向に流通する方を冷媒供給孔とし、冷媒が外部に排出される方向に流通する方を冷媒排出孔とする。これらの冷媒供給孔及び冷媒排出孔は、アノード側セパレータ20a及びカソード側セパレータ20bのいずれにも形成されている。図3に示した通り、アノード側セパレータ20aは冷媒供給孔26a及び冷媒排出孔27aを有する。図4に示した通り、カソード側セパレータ20bは冷媒供給孔26b及び冷媒排出孔27bを有する。
セパレータはガス不透過の導電性部材から構成される。導電性部材としては、例えば、カーボンを圧縮してガス不透過とした緻密質カーボンや、プレス成形した金属(例えば、鉄、アルミニウム、チタン及び、ステンレス等)の板等が挙げられる。
<樹脂シート>
樹脂シート30は1対のセパレータの間、且つ、膜電極ガス拡散層接合体10の周囲に配置され、1対のセパレータ同士を接着させる枠状の部材である。樹脂シート30、MEGA10に供給される反応ガスのクロスリークや発電要素の触媒層同士の電気的な短絡を防止するための部材である。図5に樹脂シート30を積層方向から観察した概略図を示した。
樹脂シート30は、MEGA10を収納する開口部31と、反応ガスが流通する樹脂シート反応ガス供給孔及び樹脂シート反応ガス排出孔とを有する。また、樹脂シート30は、冷媒が流通する樹脂シート冷媒供給孔36及び樹脂シート冷媒排出孔37を有してもよい。
開口部31はMEGA10を収納するための貫通孔であり、MEGA10の周囲を囲うように形成されている。開口部31の大きさはMEGA10の大きさに合わせて適宜設定する。
樹脂シート反応ガス供給孔及び樹脂シート反応ガス排出孔は、反応ガスが積層方向に流通する貫通孔である。燃料ガスが外部から供給される方向に流通する方を樹脂シート反応ガス供給孔とし、酸化剤ガスが外部に排出される方向に流通する方を樹脂シート反応ガス排出孔とする。図5に示したとおり、樹脂シート30は、樹脂シート燃料ガス供給孔32、樹脂シート燃料ガス排出孔33、樹脂シート酸化剤ガス供給孔34、及び樹脂シート酸化剤ガス排出孔35を有している。
樹脂シート冷媒供給孔36及び樹脂シート冷媒排出孔37は、冷媒が積層方向に流通する貫通孔である。冷媒が外部から供給される方向に流通する方を樹脂シート冷媒供給孔36とし、冷媒が外部に排出される方向に流通する方を樹脂シート冷媒排出孔37とする。
樹脂シート30は、樹脂シートはガスバリア性を有するコア層と、コア層の両面に配置される接着層とを有する。
コア層はガスシール性及び絶縁性を有する部材であればよく、燃料電池の製造工程での熱圧着時の温度条件下でも構造が変化しない樹脂により形成されていてもよい。コア層の材料は特に限定されず、公知の樹脂を用いることができる。例えば、コア層はポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂及びポリフェニルエーテル系樹脂から選択される少なくとも1種の樹脂を含んでいてもよい。また、コア層は上記樹脂のうち、軟化温度が140℃以上の樹脂を50重量%以上含有してもよい。軟化温度が140℃以上の樹脂とは、例えばポリフェニルエーテル系樹脂である。
コア層の厚さは、ガスシール性及び絶縁性を担保する観点から、5μm以上であってもよく、30μm以上であってもよく、セル厚さを低減する観点から、100μm以下であってもよく、90μm以下であってもよい。
接着層は、樹脂シート30を介して、1対のセパレータ同士を接着する部材である。接着層は、セパレータと接触する部分にのみ設けられていてもよい。通常、接着層は樹脂シート30の外枠に沿って設けられている。
接着層は、樹脂シート30とセパレータとを接着してシール性を確保するために、他の物質との接着性が高く、熱圧着時の温度条件下で軟化し、樹脂シート30よりも粘度及び融点が低い性質を有していてもよい。具体的には接着層は、ポリエステル系及び変性オレフィン系等の熱可塑性樹脂であってもよく、変性エポキシ樹脂である熱硬化性樹脂であってもよい。例えば、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、エポキシ変性ポリエチレン、エポキシ変性ポリプロピレン、酸変性ポリエチレン、及び、酸変性ポリプロピレン等であってもよい。
接着層の厚さは、接着性を担保する観点から、5μm以上であってもよく、30μm以上であってもよく、セル厚さを低減する観点から、100μm以下であってもよく、40μm以下であってもよい。
セル化時の温度において、樹脂シート30の弾性率は700MPa以下でもよい。後述するように、樹脂シート30を撓ませ易くするためである。より撓ませ易くする観点から、樹脂シート30の弾性率は500MPa以下でもよい。下限は特に限定されないが、例えば樹脂シート30の弾性率は100MPa以上でもよい。ここで、セル化温度は実際に用いるセル化温度を意味する。セル化温度は接着層の融点以上であればよい。例えば、120℃以上でもよく、150℃以上でもよい。ただし、樹脂シートの圧縮クリープを防止する観点から、200℃以下とする。
<マニホールド>
燃料電池スタック100は、反応ガス供給孔及び樹脂シート反応ガス供給孔が連通するように配置されることにより形成された反応ガス供給マニホールド、及び、反応ガス排出孔及び樹脂シート反応ガス排出孔が連通するように配置されることにより形成された反応ガス排出マニホールドを有する。図1に示した通り、反応ガス供給マニホールドは燃料ガス供給マニホールド102及び酸化剤ガス供給マニホールド104を有する。反応ガス排出マニホールドは燃料ガス排出マニホールド103及び酸化剤ガス排出マニホールド105を有する。
燃料ガス供給マニホールド102は燃料ガス供給孔22a、22b及び樹脂シート燃料ガス供給孔32が連通するように配置されることにより形成されている。燃料ガス排出マニホールド103は燃料ガス排出孔23a、23b及び樹脂シート燃料ガス排出孔33が連通するように配置されることにより形成されている。酸化剤ガス供給マニホールド104は酸化剤ガス供給孔24a、24b及び樹脂シート酸化剤ガス供給孔34が連通するように配置されることにより形成されている。酸化剤ガス排出マニホールド104は酸化剤ガス排出孔24a、24b及び樹脂シート酸化剤ガス排出孔34が連通するように配置されることにより形成されている。
また、燃料電池スタック100は、冷媒供給孔26a、26b及び樹脂シート冷媒供給孔36が連通するように配置されることにより形成された冷媒供給マニホールド106、並びに、冷媒排出孔27a、27b及び樹脂シート冷媒排出孔37が連通するように配置されることにより形成された冷媒排出マニホールド107を有していてもよい。
これらのマニホールドに反応ガス又は冷媒が流通することにより、各単セル50に反応ガス又は冷媒を供給することができる。
<トルネード構造>
図6に一例として、アノード側セパレータ20a(上述の一方のセパレータ)の燃料ガス排出孔23aにトルネード構造40が設けられている場合の、単セル50の燃料ガス供給マニホールドを積層方向から観察した拡大図を示した。なお、図6では、アノード側セパレータ20の内部構造を便宜的に透過して、実線で示している。また、図7に図6のVII-VIIで切断した断面図、図8に図6のVIII―VIIIで切断した断面図を示した。
図6~図8に示したように、アノード側セパレータ20aの燃料ガス排出孔23aにトルネード構造40が設けられている。トルネード構造40は、燃料ガス排出孔23aの周囲を仕切る隔壁41と、隔壁41の外側の周囲を囲み、燃料ガスの流通が可能なトルネード部42と、を有している。また、隔壁41は燃料ガス排出孔23aとトルネード部42とを接続する複数の貫通孔43を有している。
隔壁41は燃料ガス排出孔23aの周囲を仕切り、燃料ガスが周囲に漏れないようにする部材である。一方で、隔壁41は複数の貫通孔43を有しており、貫通孔43を介して、燃料ガスは燃料ガス排出孔23aとトルネード部42との間を流通する。
貫通孔43の配置位置は特に限定されず、いずれの位置に設けられていてもよい。貫通孔を複数設けることにより、フラッディングにより1つの流通経路が閉塞されたとしても、他の流通経路を確保することができるためである。図6では、隔壁41の燃料ガス流路21a側及びこれとは反対側にそれぞれ複数の貫通孔43が配置されている。
トルネード部42は反応ガス流路21aと連通しており、燃料ガスが流通可能である。従って、反応ガスは、図6の矢印で示したように、燃料ガス排出孔23aから貫通孔43を介してトルネード部42に流れ、トルネード部42を流通して燃料ガス流路21aに到達する。ここで、トルネード部42の燃料ガス流路21a側を除く外側の周囲に隔壁(不図示)が設けられており、トルネード部42に燃料ガスが流通しやすいように工夫されていてもよい。
アノード側セパレータ20aはトルネード構造40を有する場合、対となるカソード側セパレータ20b(上述の他方のセパレータ)は、樹脂シート30を挟んで、アノード側セパレータ20aのトルネード部42に対応する位置に空間44を形成している(図7、図8参照)。空間44はアノード側セパレータ20aのトルネード部42に対応する位置であって、カソード側セパレータ20bと樹脂シート30とに囲まれることにより形成される。具体的には、空間44は底部44aと、底部44aから立設する側壁44b、44cと、樹脂シート30とに囲まれることにより形成された空間である。通常、側壁44b、44cの端部44d、44eと樹脂シート30とが接着しているため、空間44は閉塞している。図7、図8では、側壁44b、44cの端部44d、44eと樹脂シート30とが接着している部分をシールライン45a、45bとして表した。
上述した通り、セパレータがトルネード構造を有することにより、貫通孔を介した複数の反応ガスの流通経路を設けることができる。例えばフラッディングにより1つの流通経路が閉塞されたとしても、その他の流通経路に反応ガスを流通させることができる。従って、トルネード構造によりフラディングによる発電効率の低下を抑制することができる。しかしながら、高出力時において、発電により生成される生成水の量は通常運転時よりも増加するため、多量に生成された生成水によりフラッディングが発生し、反応ガスの流通が阻害され、発電効率が低下する問題がある。図9に生成水Wにより反応ガスの流通が阻害されている様子を表す断面図を示した。
そこで、樹脂シート30は、このような問題を抑制するために、空間44側に撓んでいる。これにより、トルネード部42の断面積を確保し、高出力時においても、反応ガスの流通を担保することができる。また、図7、図8に示した通り、撓んだ部分に生成水Wを貯留することができる。これらの効果が相まって、フラディングを抑制することができる。
樹脂シート30は、トルネート部42に対応する部分のうち少なくとも一部が撓んでいればよく、全体が撓んでいてもよい。樹脂シートの撓みはカソード側セパレータ20b(底部44a)に接触するまで撓ませてもよい。これにより、樹脂シートを安定に保持することができる。また、生成水Wの貯留量を増加することができる。樹脂シート30の撓みは、トルネート部42に対応する空間44にのみ生じさせてもよい。
樹脂シートを撓ませる方法は、例えば次のとおりである。1対のセパレータと樹脂シート30とを接着して、単セル50を作製する際に(セル化時に)、セル内部にガス圧をかけながら、加圧接着させる。あるいは、樹脂シート30を撓ませてから単セル50を組み立てる。
(補足)
上記では、アノード側セパレータ20aにトルネード構造が設けられている例を示したが、本開示はこれに限定されない。トルネード構造はカソード側セパレータ20bに設けられていてもよい。また、上記では、燃料ガス排出孔にトルネード構造が設けられている例を示したが、本開示はこれに限定されない。トルネード構造は、燃料ガス供給孔に設けられていてもよく、酸化剤ガス供給孔に設けられていてもよく、酸化剤ガス排出孔に設けられていてもよい。フラディングによる問題をより抑制する観点から、トルネード構造は反応ガス排出孔(燃料ガス排出孔、酸化剤ガス排出孔)に設けられていてもよい。樹脂シート30の撓みが設けられる位置も同様である。
従って、本開示においては、1対のセパレータのうち一方のセパレータにおいて、反応ガス供給孔及び反応ガス排出孔の少なくとも一方にトルネード構造が設けられており、トルネード構造は、反応ガス供給孔又は反応ガス排出孔の周囲を仕切る隔壁と、隔壁の周囲を囲み、反応ガスの流通が可能なトルネード部と、を有し、トルネード部は反応ガス流路と接続しており、隔壁は反応ガス供給孔又は反応ガス排出孔とトルネード部とを接続する複数の貫通孔を有しており、他方のセパレータは、樹脂シートを挟んで、一方のセパレータのトルネード部に対応する位置に空間を形成しており、樹脂シートは空間側に撓んでいる。
以上、本開示の燃料電池スタックについて、一実施形態を用いて説明した。本開示の燃料電池スタックは、樹脂シートが所定の撓みを有しているため、フラディングを抑制することができる。
10 発電要素
20a アノード側セパレータ
20b カソード側セパレータ
21a 燃料ガス流路
21b 酸化剤ガス流路
21c 冷媒流路
22a、22b 燃料ガス供給孔
23a、23b 燃料ガス排出孔
24a、24b 酸化剤ガス供給孔
25a、25b 酸化剤ガス排出孔
26a、26b 冷媒供給孔
27a、27b 冷媒排出孔
30 樹脂シート
31 開口部
32 樹脂シート燃料ガス供給孔
33 樹脂シート燃料ガス排出孔
33a 切り込み
34 樹脂シート酸化剤ガス供給孔
35 樹脂シート酸化剤ガス排出孔
36 樹脂シート冷媒供給孔
37 樹脂シート冷媒排出孔
40 トルネード構造
41 隔壁
42 トルネード部
43 貫通孔
44 空間
44a 底部
44b、44c 側壁
44d、44e 端部
45a、45b シールライン
50 単セル
100 燃料電池スタック
102 燃料ガス供給マニホールド
103 燃料ガス排出マニホールド
104 酸化剤ガス供給マニホールド
105 酸化剤ガス排出マニホールド
106 冷媒供給マニホールド
107 冷媒排出マニホールド

Claims (1)

  1. 膜電極ガス拡散層接合体と、前記膜電極ガス拡散層接合体を挟持する1対のセパレータと、1対の前記セパレータの間、且つ、前記膜電極ガス拡散層接合体の周囲に配置され前記セパレータ同士を接着させる枠状の樹脂シートと、を備える単セルを複数積層した燃料電池スタックであって、
    前記セパレータは、反応ガスを前記セパレータの面方向に流す反応ガス流路と、前記反応ガスを前記単セルの積層方向に流通させるための反応ガス供給孔及び反応ガス排出孔とを有し、
    前記樹脂シートは、前記膜電極ガス拡散層接合体を収容する開口部と、樹脂シート反応ガス供給孔及び樹脂シート反応ガス排出孔とを有し、
    前記燃料電池スタックは、前記反応ガス供給孔及び前記樹脂シート反応ガス供給孔が連通するように配置されることにより形成された反応ガス供給マニホールド、並びに、前記反応ガス排出孔及び前記樹脂シート反応ガス排出孔が連通するように配置されることにより形成された反応ガス排出マニホールドを有し、
    一方の前記セパレータにおいて、前記反応ガス供給孔及び前記反応ガス排出孔の少なくとも一方にトルネード構造が設けられており、
    前記トルネード構造は、前記反応ガス供給孔又は前記反応ガス排出孔の周囲を仕切る隔壁と、前記隔壁の周囲を囲み、反応ガスの流通が可能なトルネード部と、を有し、
    前記トルネード部は前記反応ガス流路と連通しており、
    他方の前記セパレータは、前記樹脂シートを挟んで、一方の前記セパレータの前記トルネード部に対応する位置に空間を形成しており、
    前記樹脂シートは前記空間側に撓んでいる、
    燃料電池スタック。
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