JP2023168072A - フィルタ装置、波長可変レーザ、及び波長調整方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高速波長掃引、環境安定性、低コスト等の特性を有する波長可変レーザに適用可能であり、シンプルな設計のフィルタ装置を提供すること。【解決手段】フィルタ装置30は、フィルタ用偏波保持ファイバ31と、フィルタ用偏波保持ファイバ31のうち応力付与部31cに付与する応力を調整するストレッチャ32と、ストレッチャ32の出射側に配置される偏光子35と、を備える。【選択図】 図1
Description
本発明は、波長調整が可能なフィルタ装置、これを用いた波長可変レーザ、並びに波長調整方法に関する。
波長掃引モード同期レーザは、光計測、イメージング等、特に誘導ラマン散乱顕微鏡の分野において不可欠な光源である。当該レーザは、高速波長掃引、環境安定性、低コスト、シンプルな設計等の特性が求められている。
波長掃引モード同期レーザとして、全正常分散キャビティにおいて、帯域幅を調整可能なファイバベースのスペクトルフィルタを有するものが公知となっている(非特許文献1参照)。また、波長掃引モード同期レーザとして、ガルバノメータ駆動のキャビティ内フィルタを有するものが公知となっている(非特許文献2参照)。
非特許文献1及び2の装置では、複雑なキャビティ、自由空間部品、不安定な非偏波保持ファイバ構成等のため、上述した高速波長掃引、環境安定性、低コスト、シンプルな設計等の要求を十分に満たすものではない。
Ankita Khanolkar et al., "All normal dispersion fiber laser with a bandwidth tunable fiber based spectral filter," Opt. Lett. 45, 4555 4558 (2020)
Yasuyuki Ozeki et al., "Fast wavelength tunable picosecond pulses from a passively mode locked Er fiber laser using a galvanometer driven intracavity filter," Opt. Express 23, 15186 15194 (2015)
本発明は、上記背景技術に鑑みてなされたものであり、高速波長掃引、環境安定性、低コスト等の特性を有する波長可変レーザに適用可能であり、シンプルな設計のフィルタ装置を提供することを目的とする。
本発明は、上記のようなフィルタ装置によって、高速波長掃引可能な波長可変レーザ及び波長調整方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係るフィルタ装置は、偏波保持ファイバと、偏波保持ファイバのうち応力付与部に付与する応力を調整するストレッチャと、ストレッチャの出射側に配置される偏光子と、を備える。
上記フィルタ装置では、ストレッチャにより偏波保持ファイバの応力付与部に付与する応力を調整することにより、応力付与部における引張ひずみを調整する。これにより、応力付与部の複屈折の変化量を調整することができ、特定波長の光の透過性を高めるチューニングを行うことができる。
本発明の具体的な側面では、上記フィルタ装置において、ストレッチャの入射側に配置され、偏光を分岐させる偏光分岐部と、ストレッチャの出射側に配置され、ストレッチャを通過した偏光を復帰させる偏光復帰部と、をさらに備える。この場合、偏光分岐部及び偏光復帰部は、偏波コントローラとして機能し、フィルタ装置に入射及びフィルタ装置から出射する偏光の偏光方向を制御することができる。
本発明の別の側面では、偏光分岐部は、偏波保持ファイバの速軸を45°傾斜させたスプライスであり、偏光復帰部は、偏波保持ファイバの速軸を-45°傾斜させたスプライスである。
本発明のさらに別の側面では、偏波保持ファイバは、PANDAファイバ及びボウタイ型ファイバのいずれか一方である。
上記目的を達成するため、本発明に係る波長可変レーザは、偏波保持型のリング状の共振器と、共振器中に配置される光利得部と、共振器に周回方向に伝搬するように偏光を供給する光供給部と、上述のフィルタ装置と、を備える。
上記波長可変レーザでは、引張ひずみ制御されたフィルタ装置により透過性について波長調整を行うことができる。この波長調整は、複屈折の変化を利用するものであり、単に長さの調整を行う場合と比較して2桁程度効率的である。これにより、広いチューニング範囲と線形チューニング関係とを備えた波長可変レーザを実現できる。シンプルな偏波保持ファイバ構造により、出力は非常に安定する。
本発明の具体的な側面では、上記波長可変レーザにおいて、共振器中に配置された透過調整部をさらに備え、受動型のモード同期動作を行うモード同期レーザである。この場合、発振状態を安定化することができ、偏光を高効率で発生させ取り出すことができる。これにより、広いチューニング範囲と線形チューニング関係とを備えたフェムト秒パルスモード同期レーザを実現できる。ストレッチャが共振周波数で動作する場合、kHzオーダーの波長掃引フェムト秒パルスレーザの結果を達成することができる。
上記目的を達成するため、本発明に係る波長調整方法は、偏波保持ファイバのうち応力付与部に付与する応力を調整するストレッチャと、ストレッチャの出射側に配置される偏光子とを備えるフィルタ装置において、応力付与部に所定応力を付与し、共振周波数間隔を変化させる。
〔第1実施形態〕
以下、図1(A)、1(B)、及び図2等を参照して、本発明に係るフィルタ装置の第1実施形態について説明する。図1(A)及び1(B)は、フィルタ装置30に所定の応力を付与し、所定の波長において、透過率が極大化する構成例を説明する図である。図2は、フィルタ装置30に所定の応力を付与し、所定の波長において、透過率が極小化する構成例を説明する図である。図1(A)及び1(B)に示すフィルタ装置30にそれぞれ入射する光の波長は異なるものとし、図1(A)及び図2に示すフィルタ装置30にそれぞれ入射する光の波長は同じものであるとしている。図1(A)等において、X、Y、及びZは、全体の座標系を示し、x及びyは着目する箇所の局在的な座標系を示している。x及びyは、フィルタ装置30の光軸AX上の点における座標を与えるものであり、光軸AXに対して直交する2方向に相当し、zは、光軸AXに平行な方向に相当する。
以下、図1(A)、1(B)、及び図2等を参照して、本発明に係るフィルタ装置の第1実施形態について説明する。図1(A)及び1(B)は、フィルタ装置30に所定の応力を付与し、所定の波長において、透過率が極大化する構成例を説明する図である。図2は、フィルタ装置30に所定の応力を付与し、所定の波長において、透過率が極小化する構成例を説明する図である。図1(A)及び1(B)に示すフィルタ装置30にそれぞれ入射する光の波長は異なるものとし、図1(A)及び図2に示すフィルタ装置30にそれぞれ入射する光の波長は同じものであるとしている。図1(A)等において、X、Y、及びZは、全体の座標系を示し、x及びyは着目する箇所の局在的な座標系を示している。x及びyは、フィルタ装置30の光軸AX上の点における座標を与えるものであり、光軸AXに対して直交する2方向に相当し、zは、光軸AXに平行な方向に相当する。
図1(A)、1(A)、及び図2は、フィルタ装置30において、右側から偏光P0が入射する場合を示している。図1(A)等の上部領域は、フィルタ装置30を通過する各位置での偏光状態又は偏光方向を紙面左側から光軸AXに沿って見た状態として説明するものである。
図1(A)、1(B)等に示すフィルタ装置30は、複屈折を利用して透過率が最大となる波長だけを透過させて狭い通過帯域を生成し、リオットフィルタ(Lyotフィルタ)の基本要素と同様のものであって可変波長型の光学デバイスとして機能する。フィルタ装置30は、フィルタ用偏波保持ファイバ31と、ストレッチャ32と、偏光子35と、偏光分岐部34と、偏光復帰部36とを備える。ストレッチャ32は、フィルタ用偏波保持ファイバ31の一部に付随して設けられている。つまり、フィルタ用偏波保持ファイバ31の一部は、ストレッチャ32に巻きつけられて固定されており、付与される応力が調整される。偏光分岐部34は、フィルタ用偏波保持ファイバ31の入射側、つまりストレッチャ32の入射側に配置されている。偏光復帰部36は、フィルタ用偏波保持ファイバ31の出射側、つまり、ストレッチャ32の出射側に配置されている。偏光子35は、フィルタ用偏波保持ファイバ31の出射端31bと偏光復帰部36との間に配置されている。フィルタ装置30は、入射端31a及び出射端31bにおいて、例えば、共振器を構成するファイバFOに接続される。ファイバFOには、偏波保持ファイバが用いられる。
フィルタ用偏波保持ファイバ31は、速軸方向における偏波の速度と遅軸方向における偏波の速度とが異なり、応力を付与することで複屈折率を変動させることができる。ひずみで誘起される複屈折変動は、透過率のピーク位置やピーク間隔の変化を引き起こす。フィルタ用偏波保持ファイバ31としては、例えば、PANDAファイバ及びボウタイ型ファイバのいずれかを用いる。PANDAファイバの複屈折のひずみ係数は、1.60×10-8/μεであり、ボウタイ型ファイバの複屈折のひずみ係数は、1.06×10-8/μεである。これらのファイバは、強い複屈折率を導入するために、断面視において、コアの周囲に一対の応力付与材を有している。PANDAファイバとボウタイファイバの複屈折率のひずみ係数は、同じオーダーであり、同じ効果を得られる。
図3は、フィルタ装置30のうち主にストレッチャ32の構造を説明する概念図である。ストレッチャ32は、フィルタ用偏波保持ファイバ31のうち応力付与部31cに付与する応力を調整する。ストレッチャ32は、例えば、PZTストレッチャ(圧電セラミックスストレッチャ)であり、ピエゾ駆動によりフィルタ用偏波保持ファイバ31に対して周期的に応力を付与する。図3に示すように、ストレッチャ32は、円形形状を有し、複数のPZT素子32aと、ファイバ収納部32bとを有する。ファイバ収納部32bは、径方向に大きさを変化させることができる円環状の部材であり、外側の溝32cにフィルタ用偏波保持ファイバ31を巻き取って収納することできる。ファイバ収納部32bの中心部には、複数のPZT素子32a、図示の例では3つのPZT素子32aが、PZT素子32aの伸縮による径方向の変動がファイバ収納部32bに均等に加わるように配置されている。ストレッチャ32は、波形発生器38によってPZT素子32aに電圧を加えることにより、径方向の大きさを周期的に変動させる。フィルタ用偏波保持ファイバ31の応力付与部31cは、フィルタ用偏波保持ファイバ31のうちファイバ収納部32bに所定回数だけ巻きつけられた部分に相当する。応力付与部31cのファイバの両端は、例えば、接着等によってストレッチャ32に固定されている。ストレッチャ32は、径方向の形状変化により、応力付与部31cに付与する応力を調整することができ、結果的に応力付与部31cでのひずみ(引張ひずみ)を制御することができる。
図4は、フィルタ装置30における、波形発生器38の出力電圧とストレッチャ32によるマイクロひずみ量との関係を説明する図である。図4に示すように、波形発生器38の出力電圧とストレッチャ32によるマイクロひずみ量とは、線形に近い相関関係にある。これにより、フィルタ装置30の応力変動によって、応力付与部31cのひずみ制御が容易となっている。
フィルタ用偏波保持ファイバ31のうち応力付与部31cは、ストレッチャ32によって、もとの大きさに対する直径の変動量について0~88μmの範囲で変化する。波形発生器38の電圧は、0~10Vの範囲であり、周波数は、最大300Hzである。
図1(A)に戻って、偏光分岐部34は、フィルタ用偏波保持ファイバ31に入射する偏光P0の偏光方向をファイバの断面に対して回転させ、偏光P0を第1偏光成分P1と第2偏光成分P2とに分岐させる。偏光分岐部34は、独立した部材ではなく、フィルタ用偏波保持ファイバ31の端面がその機能を兼ねている。具体的には、偏光分岐部34は、ファイバFOの速軸、つまりx軸に対してフィルタ用偏波保持ファイバ31の速軸、つまりx軸を45°傾斜させたスプライスであり、フィルタ用偏波保持ファイバ31とファイバFOとを融着接続したものである。
偏光復帰部36は、ストレッチャ32を通過しフィルタ用偏波保持ファイバ31に出射する偏光P0の偏光方向をファイバの断面に対して回転させ、偏光P0を復帰させる。偏光復帰部36は、独立した部材ではなく、フィルタ用偏波保持ファイバ31の端面がその機能を兼ねている。偏光復帰部36は、フィルタ用偏波保持ファイバ31の速軸、つまりx軸に対してファイバFOを-45°傾斜させたスプライスであり、フィルタ用偏波保持ファイバ31とファイバFOとを融着接続したものである。
図1(A)等では、偏光分岐部34及び偏光復帰部36において、時計方向を基準にファイバを傾斜又は回転させたが、反時計方向を基準にファイバを傾斜又は回転させてもよい。つまり、偏光分岐部34に入射する偏光P0の偏光方向と偏光復帰部36から出射する偏光P0(Pm)の偏光方向とが一致していればよい。
偏光子35は、吸収型のポーラライザであり、偏光子35を通過する光を特定の偏光方向の直線偏光に制限する。偏光子35は、例えば誘電体多層膜で形成されるが、カプラに同様の機能を持たせることができる。例えばヨウ素化合物や染料を含有させた高分子材料を特定方向に延伸することによって得た偏光膜を平行平板の基板上に接着したものであってもよい。偏光子35の偏光軸は、-x方向と+y方向との間に設定され、-x方向に対しても+y方向に対しても45°をなしている。偏光子35の偏光軸は、偏光復帰部36又はファイバFOに入射させる偏光P0の偏光方向に対して45°傾いている。
図1(A)等を参照して、フィルタ装置30の動作について説明する。図1(A)は、フィルタ装置30に比較的小さな応力を付与し、所定の波長λ0において透過率が極大化する構成例である。図1(B)は、フィルタ装置30に比較的大きな応力を付与し、図1(A)の場合とは異なる所定の波長λ1において透過率が極大化する構成例である。図2は、フィルタ装置30に比較的大きな応力を付与し、所定の波長λ0において透過率が極小化する構成例である。なお、波長λ0は波長λ1より小さいとしている。図中において、フィルタ用偏波保持ファイバ31の前後に描かれたサイン波形E1は、第1偏光成分P1の電場の振動を示し、サイン波形E2は、第2偏光成分P2の電場の振動を示す。
図1(A)及び1(B)の場合、偏光P0がフィルタ装置30の右側から入射する。フィルタ装置30の入口に接続されるファイバFOを通過する偏光P0は、速軸方向すなわちx方向に平行な偏光面を有している。フィルタ装置30の入口、つまり、フィルタ用偏波保持ファイバ31の入射端31aでは、偏光分岐部34により、フィルタ用偏波保持ファイバ31の入射端31aのx軸がファイバFOのx軸に対して45°回転しているため、偏光POの偏光方向は、+x方向と+y方向との間に偏光面を有している。フィルタ用偏波保持ファイバ31に入射する偏光P0は、偏光分岐部34により、第1偏光成分P1及び第2偏光成分P2に分岐される。第1偏光成分P1は、速軸方向すなわち+x方向に平行となり、第2偏光成分P2は、遅軸方向すなわち+y方向に平行となり、第1偏光成分P1と第2偏光成分P2とは直交する。図1(A)及び1(B)の構成例では、所定の波長λ0,λ1の光において、ストレッチャ32での応力調整によりフィルタ装置30の透過率が極大となっており、偏光P0が偏光子35を通過し、導光する。具体的には、第1偏光成分P1と第2偏光成分P2とは、応力付与部31cを通過することで、位相がmλ0+λ0/2又はmλ1+λ1/2ずれる。ここで、mは自然数である。つまり、フィルタ用偏波保持ファイバ31の出射側の第1偏光成分P1は、入射側と同じ+x方向に平行となっている。一方、フィルタ用偏波保持ファイバ31の出射側の第2偏光成分P2は、+y方向を基準として、入射側に対して時計方向に180°回転し、-y方向に平行となっている。結果的に、応力付与部31cを通過した直線偏光P0は、y軸に対して90°反転させた状態となり、+x方向と-y方向との間に偏光面を有している。応力付与部31c通過後の直線偏光P0は、偏光子35に入射する。入射した直線偏光P0の偏光方向は、偏光子35の偏光軸と一致しており、偏光子35を低損失で通過する。フィルタ装置30の出口、つまり、ファイバFOでは、偏光復帰部36により、ファイバFOのx軸がフィルタ用偏波保持ファイバ31の出射端31bのx軸に対して-45°回転しているため、フィルタ用偏波保持ファイバ31及び偏光子35を通過した偏光Pmの偏光方向は、+y方向に平行な偏光面を有している。
図2の場合、図1(A)に対応する波長λ0の光において、ストレッチャ32での応力調整によりフィルタ装置30の透過率が極小となっており、偏光P0が偏光子35を通過せず、遮断される。具体的には、第1偏光成分P1と第2偏光成分P2とは、応力付与部31cを通過することで、位相がmλ0+λ0ずれる。つまり、フィルタ用偏波保持ファイバ31の出射側の第1偏光成分P1は、入射側と同じ+x方向に平行となっている。また、フィルタ用偏波保持ファイバ31の出射側の第2偏光成分P2は、入射側と同じ+y方向に平行となっている。結果的に、応力付与部31cを通過した直線偏光P0は、ストレッチャ32に入射する直線偏光P0と同じように、+x方向と+y方向との間に偏光面を有している。応力付与部31c通過後の直線偏光P0の偏光方向は、偏光子35の偏光軸と異なり、偏光子35を通過しない。
図5は、フィルタ装置30の透過率の特性を説明する図である。フィルタ装置30により、所定の波長において、透過率が極大となる。
フィルタ装置30が前提とするリオットフィルタは、偏光コントローラ、複屈折材料、及び偏光子で構成されるものである。本実施形態のフィルタ装置30において、偏光分岐部34及び偏光復帰部36は、固定偏光コントローラとして機能する。フィルタ用偏波保持ファイバ31は、複屈折材料として機能する。フィルタ装置30は、波長に依存する周期フィルタであり、リオットフィルタの機能は以下の式で定義される。
FSR=Δλ≒λ2/Δn×L
ここで、FSRは、共振周波数間隔であり、λは波長であり、Δnはフィルタ用偏波保持ファイバ31の複屈折率の値(具体的には、ファイバの遅軸の屈折率と速軸の屈折率との差)であり、Lは複屈折材料、つまりフィルタ用偏波保持ファイバ31の長さである。フィルタ装置30の周期的なフィルタの性質により、FSRのわずかな変動が大きな透過率ピークシフトを引き起こす。したがって、上記の式において、Δnの値を微調整することにより、出力波長可変特性を達成することができ、波長掃引を実現できる。
FSR=Δλ≒λ2/Δn×L
ここで、FSRは、共振周波数間隔であり、λは波長であり、Δnはフィルタ用偏波保持ファイバ31の複屈折率の値(具体的には、ファイバの遅軸の屈折率と速軸の屈折率との差)であり、Lは複屈折材料、つまりフィルタ用偏波保持ファイバ31の長さである。フィルタ装置30の周期的なフィルタの性質により、FSRのわずかな変動が大きな透過率ピークシフトを引き起こす。したがって、上記の式において、Δnの値を微調整することにより、出力波長可変特性を達成することができ、波長掃引を実現できる。
図6(A)は、フィルタ装置30の透過率ピークシフトを説明する図であり、図6(B)は、応力に対するフィルタ装置30の出力波長を説明する図である。フィルタ装置30は、ストレッチャ32がかけた応力によって透過率のピークが移動する。つまり、位相ずれが発生する波長が変化する。フィルタ装置30のフィルタ効果の強度は、偏光分岐部34及び偏光復帰部36におけるファイバFOとフィルタ用偏波保持ファイバ31との融着角度(45°基準)によって決定される。つまり、フィルタ装置30における透過率の極値、つまり最小位相ずれ(例えば、ゼロ)及び最大位相ずれの透過率は、応力の強度によって変化しない。ただし、一定の大きさの位相ずれが発生する場所(波長)は変化する。なお、フィルタ効果は、融着角度を変更することによって調整することができる。
図6(A)において、実線M1は、フィルタ装置30に第1応力S0が付与され、応力が最小、具体的には、初期値又はゼロの場合の波長と透過率との関係を示し、破線M2は、フィルタ装置30に第2応力が付与され、応力がS0+δSの場合の波長と透過率との関係を示し、一点鎖線M3は、フィルタ装置30に第3応力が付与され、応力がS0+2δSの場合の波長と透過率との関係を示す。図6(A)の例では、青色領域、緑色領域、赤色領域において、透過率のピークがそれぞれシフトしているが、以下では、主に青色領域について説明し、他の領域についても同様の原理とする。
青色領域において、応力S0の場合、透過率が極大となる波長は、図1(A)に例示す波長λ0に対応する。応力S0+δSの場合、透過率が極大となる波長は、図1(B)に示す波長λ1に対応する。応力S0+2δSの場合、透過率が極大となる波長は、波長λ2に対応する。応力S0からδSずつ増やすと、フィルタ装置30の特性曲線は、第1応力S0に対応する曲線から第2応力に対応する曲線及び第3応力に対応する曲線に順次変化する。この場合、波長λ0の光に関しては、透過率は、例えば100%から50%、50%から0%に変化する。一方、波長λ1の光に関しては、透過率は、例えば0%から50%、50%から100%に変化する。図6(B)に示すように、応力が増加すると、透過率のピークがシフトして出力波長が長くなる。
以上のように、フィルタ装置30に応力をかける場合、フィルタ装置30の透過率のピークが移動する。具体的には、フィルタ用偏波保持ファイバ31の応力付与部31cに応力をかける際には、ストレッチャ32により、最小ひずみ(ゼロひずみ)から最大ひずみまでに対応して、透過率のピークが連続的に移動する。つまり、特定波長の光に対して、応力強度によって、透過率は連続的に変化する。換言すれば、一定の応力強度に対して、波長によって透過率が異なる。
本実施形態のフィルタ装置30を用いた波長調整は、応力付与部31cにストレッチャ32を用いて所定応力を付与して応力付与部31cの複屈折率の値Δnを変化させ、FSR(共振周波数間隔)を変化させることによって行うことができる。
フィルタ装置30において、応力を調整することにより、応力付与部31cのひずみを制御する。Δnの値はファイバの変形の影響を受けるため、上述のように引張ひずみを利用して、複屈折率の値Δnを微調整する。Δnを微調整することにより、フィルタ装置30の出力波長を調整することができる。
フィルタ装置30において、ひずみ(Strain)は、ΔL/Lで定義される。Lはフィルタ用偏波保持ファイバ31のうち応力付与部31cの長さであり、ΔLは応力を付与したときの応力付与部31cの長さの変化量である。例えば、ファイバが1mから1.1mに伸びる場合、ひずみは、0.1である。ファイバ長さの1マイクロひずみΔL/Lは、10-6である。偏波保持ファイバの複屈折率のひずみ係数は、10-8/μεのオーダーである。ここで、μεは、マイクロひずみ(micro strain)を意味する。一方、標準偏波保持ファイバの場合、複屈折率の値、つまりもともとの複屈折率の値は10-4のオーダーである。したがって、ファイバ長さの1マイクロひずみΔL/L(10-6)は、10-8/10-4=10-4のオーダーの複屈折率変化を与えることができる。具体的には、一般的な複屈折率を1.6×10-4とした場合、変化量は、1.6×10-8である。すなわち、複屈折率の変化量をΔ(Δn)として、1マイクロひずみによって誘起されるひずみ変化Δ(Δn)/Δnは、10-4のオーダーである。これは、ひずみ変化量Δ(Δn)/Δnのオーダーと1マイクロひずみΔL/Lのオーダーとの比において、10-4/10-6となり、約100倍の倍率制御関係となる。したがって、従来のリオットフィルタの複屈折材料の温度や長さを変化させて波長を調整する手法と比較すると、上記倍率制御関係を前提として、波長掃引速度は数百倍になり、共振器に及ぼす影響を2桁変化させることができる。さらに、後述する全偏波保持ファイバで構成される共振器と波形発生器38で制御されるストレッチャ32とを使用することによって、kHzオーダーの波長掃引速度とさまざまなチューニングモードとを備えた安定性と実用性があるフェムト秒パルスレーザを実現できる。つまり、本実施形態のフィルタ装置30を全偏波保持ファイバで構成される共振器に組み込むことによって、高安定性、低コスト、及び実用性を持つ波長掃引モード同期レーザを実現できる。また、周期性ファイバリオットフィルタとひずみ制御に構成される100倍以上の倍率制御関係とによって、高速波長掃引ができる。
以上で説明したフィルタ装置では、ストレッチャ32によりフィルタ用偏波保持ファイバ31の応力付与部31cに付与する応力を調整することにより、応力付与部31cにおける引張ひずみを調整する。これにより、応力付与部31cの複屈折の変化量を調整することができ、特定波長の光の透過性を高めるチューニングを行うことができる。
〔第2実施形態〕
以下、第2実施形態の波長可変レーザについて説明する。なお、第2実施形態の波長可変レーザは、第1実施形態のフィルタ装置を組み込んだものである。
以下、第2実施形態の波長可変レーザについて説明する。なお、第2実施形態の波長可変レーザは、第1実施形態のフィルタ装置を組み込んだものである。
図7は、波長可変レーザ100の構成を説明する概念図である。図7に示すように、波長可変レーザ100は、受動モード同期レーザであり、共振器10と、光増幅部20と、フィルタ装置30と、透過調整部40と、アイソレータ付カプラ50とを備える。波長可変レーザ100は、偏波保持型のリング状の共振器10に、光増幅部20、フィルタ装置30、透過調整部40、及びアイソレータ付カプラ50を融着等によって接合したものである。
波長可変レーザ100のうち、共振器10は、光ファイバ11によってリング状に形成されている。光ファイバ11は、偏波保持型の光ファイバ(PMF:Polarization Maintaining Fiber)である。
フィルタ装置30は、偏光分岐部34及び偏光復帰部36によるスプライス接続で共振器10の光ファイバ11の光路上に挿入されている。偏光分岐部34及び偏光復帰部36は、励起光源21aから出力される励起光PLについて偏光方向の回転を可能にしている。フィルタ装置30は、図1(A)等に例示する構造と同様の構造を有する。
光増幅部20は、共振器10に付随して共振器10中に配置され、光供給部21と、ゲインファイバ22とを有する。
光供給部21は、励起光源21aと、合波部22bとを有する。光供給部21は、共振器10に一方向から偏光P0の励起光PLを供給する。偏光P0すなわち励起光PLは、第1周回方向(具体的には共振器10のループの時計方向)に伝搬する。励起光源21aは、例えば半導体レーザで構成され、例えば波長980nmの励起光PLを出力する。合波部22bは、アイソレータ付カプラ50の一部であり、共振器10において例えば波長1550nmの光が伝搬し周回することを妨げないものとなっている。光供給部21から共振器10に導入された励起光PLは、ゲインファイバ22であるドープファイバに添加されたドーパントを励起し、出力用の共振光の波長での誘導放出を可能にする。
ゲインファイバ22は、共振器10中に配置される光利得部である。ゲインファイバ22は、共振器10を構成する光ファイバ11にインラインで接続される。ゲインファイバ22は、増幅機能を備えるようにドープされた偏波保持型の光ファイバである。具体的には、ゲインファイバ22は、例えばエルビウム(Er)等の希土類元素を添加したドープファイバであり、共振器10を時計回りに周回する周回光B1を増幅する。
フィルタ装置30は、図1(A)等に示すものと同様の構成を有し、応力に依存するフィルタ効果により、特定波長の光に調整する。図7の例では、フィルタ装置30の偏光子35は、アイソレータ付カプラ50の一部となっている。フィルタ装置30において、ストレッチャ32の動作は、波形発生器38による周期的な電圧の変動によって制御される。ストレッチャ32は、出力パルスの中心波長を掃引するために使用される。
透過調整部40は、共振器10中に配置され、非線形に透過率が変化する可飽和吸収特性によって超短パルスの生成を可能にし、モードロック出力を形成する。透過調整部40は、可飽和吸収体40aを光路上に配置したものである。可飽和吸収体40aとしては、カーボンナノチューブ等を用いることができる。
アイソレータ付カプラ50は、速軸成分ブロック偏波保持波長分割多重カプラ(PM-IWDM)であり、アイソレータ、波長分割多重カプラ、偏光子、及び50%の出力カプラとして機能する。アイソレータ付カプラ50のうち波長分割多重カプラは、光供給部21の合波部22bに対応する。偏光子は、図1(A)に示すフィルタ装置30の偏光子35に対応する。アイソレータは、共振器10内において、一方向のみに偏光P0又は偏光Pmを透過させる。出力カプラは、共振器10から一部の偏光P0又は偏光Pmを取り出す。出力カプラは、出力ポート51aを有し、共振器10に結合されている。出力カプラの出力ポート51aから偏光P0のパルス光として出力光BOが出力される。
フィルタ装置30において、偏光分岐部34及び偏光復帰部36のフィルタ用偏波保持ファイバ31との融着ポイント間のフィルタ用偏波保持ファイバ31の長さ、つまり2つの45°スプライス間のファイバの長さは、リオットフィルタに対応するフィルタ装置30の長さを決定するために、例えば0.21mに設定されている。共振器10を構成する偏波保持型の光ファイバ11は、例えば2.5mであり、ゲインファイバ22は、例えば1mである。共振器10のキャビティ長は、例えば5.5mである。フィルタ装置30のFSRが影響を受けないようにするため、フィルタ装置30とアイソレータ付カプラ50との間の光ファイバ11は中央で切断され、偏光直交部37において、例えば90°の角度で融着接続される。偏光直交部37は、接続ファイバ11aの速軸を90°傾斜させたスプライスである。具体的には、フィルタ装置30とアイソレータ付カプラ50との間の光ファイバ11(以下、接続ファイバ11aとする)の長さを2Lとした場合に、接続ファイバ11aの半分の長さLで2分割し、フィルタ装置30側の第1ファイバ11bの端部とアイソレータ付カプラ50側の第2ファイバ11cの端部とにおいて接続ファイバ11aの速軸を90°傾斜させたスプライスで接続する。これにより、共振器10の光ファイバ11においてウォークオフを補正している。
図8は、図7に示す波長可変レーザ100の出力光BOの光スペクトルを示すチャートである。図9は、出力光BOの出力パルスの中心波長と波形発生器38の出力電圧との関係示すチャートである。
波形発生器38のオフセットとピーク電圧とは、1.6Vと5.9Vとにそれぞれ設定されており、1つの波長掃引サイクルに対応している。電圧ののこぎり波を利用してフィルタ装置30のストレッチャ32の動作を制御し、応力付与部31cの応力を調整することにより、図8に示す調整可能な光スペクトルが得られる。図示の例の波長可変レーザ100の掃引周波数は、例えば、光スペクトラムアナライザの速度によって制限される10Hzである。図9に示すように、出力パルスの中心波長は、波形発生器38の電圧を1.5~6Vの範囲で変化させた場合、1543nmから1568nmまで単調かつ直線的にシフトする。波形発生器38の電圧とレーザの中心波長とは、線形、つまり相関関係があり、波長調整の制御が容易である。
図8に示すように、各サイクルにおいて、電圧が増加すると、出力波長は紙面の左から右(短波長から長波長へ)に掃引される。そして、1サイクルが終わると、出力波長は左へ飛び戻る。
以上説明した波長可変レーザ100において、リオットフィルタに相当する、ひずみ制御されるフィルタ装置30を組み込むことにより、透過性について波長調整が可能となっている。フィルタ装置30による波長調整は、従来の複屈折材料の温度や長さを変化させる波長調整よりも約100倍効率的である。この制御システムを利用することにより、1543nmから1568nmまでの25nmの広いチューニング範囲と線形チューニング関係とを備えた全偏波保持フェムト秒パルスモード同期レーザを実現できる。シンプルな偏波保持ファイバ構造により、出力は非常に安定する。また、ストレッチャ32が共振周波数で動作する場合、kHzオーダーの波長掃引フェムト秒パルスレーザの結果を達成することができる。
本発明の応用として、例えば誘導ラマン散乱顕微鏡(以下、SRS顕微鏡)に利用される波長掃引モード同期レーザを想定している。従来の顕微鏡では、蛍光染料を用いてたんぱく質等の高分子を染色する。そのため、小分子を検出することができず、分子レベルの生命活動を深く理解することが困難である。さらに、蛍光染料は細胞の活動に影響が出ることもある。SRS顕微鏡は、分子の振動を検出することができる。SRS顕微鏡は、他の顕微鏡アプローチと比較して、ラベルフリー検出、小分子検出、リアルタイムイメージング等、いくつかの利点を持っている。様々な種類の物質を捕捉してリアルタイムイメージングを実現するには、SRS顕微鏡用の波長可変パルスレーザ光源にいくつかの要件、例えば、(i)効率的な信号生成のためのフェムト秒パルス幅、(ii)0.8~1.5μmの近赤外波長領域、(iii)長期安定で再現性のある動作、(iv)実用的なシステムの小型化、(v)高速波長調整可能性がある。従来の波長掃引レーザでは、掃引速度が遅く、不安定性であるという問題があり、SRS顕微鏡への実用性は低い。本実施形態の波長可変レーザ100を適用することで、高安定性かつ高波長掃引速度が確保できる。さらに、全偏波保持ファイバの設計によって、構成が簡単となり、価格を低く抑えることができる。本実施形態のレーザにおいて、利得媒質、ファイバの長さ、波形発生器のモード等を変えると、様々な波長掃引範囲、モードを実現することができる。よって、SRS顕微鏡への実用と産業化も可能になる。
〔第3実施形態〕
以下、第3実施形態の波長可変レーザについて説明する。なお、第3実施形態の波長可変レーザは、第1実施形態のフィルタ装置を組み込んだものである。また、第3実施形態の波長可変レーザは、第2実施形態の波長可変レーザを変形したものであり、特に説明しない事項は第2実施形態と同様である。
以下、第3実施形態の波長可変レーザについて説明する。なお、第3実施形態の波長可変レーザは、第1実施形態のフィルタ装置を組み込んだものである。また、第3実施形態の波長可変レーザは、第2実施形態の波長可変レーザを変形したものであり、特に説明しない事項は第2実施形態と同様である。
図10は、第3実施形態の波長可変レーザ100の構成を説明する概念図である。図10に示すように、波長可変レーザ100は、受動モード同期レーザであり、1つのフィルタ装置30を2つの共振器10,110で兼用する構成となっている。すなわち、フィルタ装置30は、共同ストレッチャとなっており、2つの共振器10,110においてそれぞれの応力付与部31cを同時制御することができる。波長可変レーザ100は、第1共振器10と第2共振器110とを有している。第1共振器10は、図7に示す共振器10と同様のものである。第2共振器110に接続される光増幅部20、透過調整部40、及びアイソレータ付カプラ50は、図7に示す共振器10に接続される光増幅部20、透過調整部40、及びアイソレータ付カプラ50と同様の構成及び機能を有する。
第3実施形態では、第1共振器10中の光増幅部20のゲインファイバ22と、第2共振器110中の光増幅部20のゲインファイバ122とは、異なる希土類元素を添加したドープファイバとなっている。具体的には、第1共振器10中の光増幅部20のゲインファイバ22は、エルビウム(Er)を添加したドープファイバであり、第2共振器110中の光増幅部20のゲインファイバ122は、イッテルビウム(Yb)を添加したドープファイバである。
第1共振器10は、ゲインファイバ22について例えばエルビウム(Er)を添加したドープファイバを用いて、1500nm波長範囲で動作する。第2共振器110は、ゲインファイバ122について例えばイッテルビウム(Yb)を添加したドープファイバを用いて、1000nm波長範囲で動作する。
本実施形態の波長可変レーザ100は、2つの共振器10,110を有することにより、デュアル出力レーザ又はデュアルコムレーザとして利用することができる。
〔第4実施形態〕
以下、第4実施形態のフィルタ装置について説明する。なお、第4実施形態のフィルタ装置は、第1実施形態のフィルタ装置を変形したものであり、特に説明しない事項は第1実施形態と同様である。
以下、第4実施形態のフィルタ装置について説明する。なお、第4実施形態のフィルタ装置は、第1実施形態のフィルタ装置を変形したものであり、特に説明しない事項は第1実施形態と同様である。
本実施形態のフィルタ装置30では、複数の応力付与部31cを有している。例えば、図11に示すように、ストレッチャ32において、フィルタ用偏波保持ファイバ31の巻き取り数が異なるように応力付与部31cを複数形成する。
また、図示は省略するが、ストレッチャ32を複数設けて、各ストレッチャ32において、各応力付与部31cの応力を調整してもよい。例えば、各応力付与部31cでフィルタ用偏波保持ファイバ31の巻き取り数を同じにし、各ストレッチャ32で応力が異なるように調整したり、各応力付与部31cでフィルタ用偏波保持ファイバ31の巻き取り数を異なるようにし、各ストレッチャ32で応力を調整したりする。
〔その他〕
以上実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。
以上実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。
第2実施形態において、ストレッチャ32を特定の応力に固定すれば、波長可変レーザ100をデュアルコムモードとして2つの波長で発振させることができる。具体的には、図8に示す境界状態で、図12に示す二重波長モード同期が得られる。二重波長モード同期の場合、例えば、ゲイン調整や波長特性フィルタによって、2つのピークの高さを調整する。図8に示すシングルスイープモードと図12に示すデュアルコムモードとを切り替えることで、波長可変レーザ100を2つのモードで利用することができ、高速切り替えが可能である。
上記実施形態において、透過調整部40は、偏波依存を持たせることができる。例えば、透過調整部40に偏光P0に適合する透過特性を持たせることができる。
また、上記実施形態において、共振器10が光ファイバ11を含む構成であるとしたが、波長可変レーザ100は、光ファイバを用いない他の導波路式光デバイスにも適通用することができる。導波路式光デバイスとしては、例えば、PLC(Photonics Lightwave Circuits)、シリコンフォトニクス導波路(Silicon Photonics Waveguides)、半導体式導波路(InP、GaAs、InGaAsP等)が挙げられる。
10,110…共振器、11…光ファイバ、11a…接続ファイバ、20…光増幅部、21…光供給部、21a…励起光源、22,122…ゲインファイバ、22b…合波部、30…フィルタ装置、31…フィルタ用偏波保持ファイバ、31a…入射端、31b…出射端、31c…応力付与部、32…ストレッチャ、32a…PZT素子、32b…ファイバ収納部、32c…溝、34…偏光分岐部、35…偏光子、36…偏光復帰部、37…偏光直交部、38…波形発生器、40…透過調整部、40a…可飽和吸収体、50…アイソレータ付カプラ、51a…出力ポート、100…波長可変レーザ、AX…光軸、B1…周回光、BO…出力光、FO…ファイバ、P0,Pm…偏光、P1,P2…偏光成分、PL…励起光
Claims (7)
- 偏波保持ファイバと、
前記偏波保持ファイバのうち応力付与部に付与する応力を調整するストレッチャと、
前記ストレッチャの出射側に配置される偏光子と、
を備えるフィルタ装置。 - 前記ストレッチャの入射側に配置され、偏光を分岐させる偏光分岐部と、
前記ストレッチャの出射側に配置され、前記ストレッチャを通過した前記偏光を復帰させる偏光復帰部と、
をさらに備える、請求項1に記載のフィルタ装置。 - 前記偏光分岐部は、前記偏波保持ファイバの速軸を45°傾斜させたスプライスであり、前記偏光復帰部は、前記偏波保持ファイバの速軸を-45°傾斜させたスプライスである、請求項2に記載のフィルタ装置。
- 前記偏波保持ファイバは、PANDAファイバ及びボウタイ型ファイバのいずれか一方である、請求項1に記載のフィルタ装置。
- 偏波保持型のリング状の共振器と、
前記共振器中に配置される光利得部と、
前記共振器に周回方向に伝搬するように偏光を供給する光供給部と、
請求項1~4のいずれか一項に記載のフィルタ装置と、
を備える波長可変レーザ。 - 前記共振器中に配置された透過調整部をさらに備え、
受動型のモード同期動作を行うモード同期レーザである、請求項5に記載の波長可変レーザ。 - 偏波保持ファイバのうち応力付与部に付与する応力を調整するストレッチャと、前記ストレッチャの出射側に配置される偏光子とを備えるフィルタ装置において、前記応力付与部に所定応力を付与し、共振周波数間隔を変化させる波長調整方法。
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