JP2023166118A - 有効電力計量装置、調整力計量装置、計量方法、およびプログラム - Google Patents

有効電力計量装置、調整力計量装置、計量方法、およびプログラム Download PDF

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Abstract

【課題】電力の計測の速応性を向上することができる有効電力計量装置を提供する。【解決手段】有効電力計量装置は、対象装置が電力系統との間で送電または受電する交流の電圧の時系列に基づいて、前記交流の周期と周波数とを推定する周波数推定器と、前記交流の周期毎に前記交流の複数の周期における瞬時電力の移動平均値を算出し、算出した前記移動平均値と、前回算出した移動平均値との差から、前記交流の1周期の間に前記対象装置が授受する有効電力を計量する有効電力計量器と、を備える。【選択図】図1

Description

本開示は、電力系統の需給調整や電気料金の精算に利用する有効電力計量装置、調整力計量装置、計量方法、およびプログラムに関する。
従来用いられている代表的な電力計は、電力系統の瞬時の電圧vおよび瞬時の電流iの積から瞬時電力pを求める。また、交流の瞬時の電圧と瞬時の電流は正弦波状に山と谷を伴って変動するので、瞬時電力は交流の周期より短い時間スケールでは一定値とならない。このため、交流の電力は時間平均値で表すことが一般的である。例えば、特許文献1に記載の電力計は、時刻tの有効電力Pを式(1)のように瞬時電力の移動平均値で計算し、出力する。
Figure 2023166118000002
移動平均のサンプルサイズNは、移動平均する時間窓の長さを交流の周期の整数倍にすることが理想的である。例えば、1つの周期について瞬時電力を32回サンプルとし、移動平均の窓の幅を10周期分とするなら、Nは320である。
移動平均する時間窓の始点が0秒であり、終点がt1である(これを[0,t1]と記す)とする。これに対し、交流の周期が[0,T]であるとする。例えば、t1<Tであれば、区間[t1,T]の瞬時電力は移動平均に算入されることはない。このため、区間[t1,Y]にて瞬時電力が山を迎えるなら、移動平均値は真値よりも小さい側にバイアスする。一方、区間[t1,T]にて瞬時電力が谷を迎えるなら、移動平均値は真値よりも大きい側にバイアスする。バイアスを防ぐ一つの方法は、t1=Tとすることである。しかし、電力需給の不均衡のせいで電力系統の周波数は絶えず変動するので、t1=Tとはならない。
そこで、従来技術では、移動平均の時間窓の幅を例えば10周期分に延ばして周期のズレによる誤差に対応してきた。具体的に、特許文献1では、10周期分の瞬時電力の移動平均を求め、この移動平均に基づき有効電力を算出している。
また、オフィスや工場、一般家庭等における電力需要は時々刻々と変動する。電力系統の需給調整に貢献するには、電力供給が不足しているならば電力供給を増やす(あるいは電力需要を減らす)ことが有効であり、電力供給が過剰であるならば電力供給を減らす(あるいは電力需要を増やす)ことが有効である。このように、電力供給を「増やす/減らす」(あるいは電力需要を「減らす/増やす」は、そのときに電力供給が不足しているか、それとも過剰であるかによって正負が逆になる。従って、既存の電力量計のように、単純に電力を積算するだけでは正負が相殺され、需給調整への貢献を計ることができない。電力の需給調整に貢献した電力を計るには、その時々の電力需給の過不足を勘案しなければならない。そのためには、より短い時間のスケールで有効電力を計る技術が求められる。
需給調整は、主に発電所が電力系統の周波数を一定に保つように発電量を調節して行っている。代表的には、式(2)で表されるガバナフリー運転によっている。
Figure 2023166118000003
式(2)のPnは定格の発電出力(kW)、fnは電力系統の周波数の基準周波数(Hz)である。Δfは、基準周波数(例えば、50Hz又は60Hz)に対する偏差であり、それに比例して発電する電力をΔPだけ減じる。δは調停率と呼ばれる値であり、発電所の制御装置に値が設定されている。一般に、調停率は0.04程度の値が設定される。これは、基準周波数に対する超過分Δfと、それに対して減じる電力ΔPとの関係を指定するものである。調停率が0.04のときには、周波数が0.04×fn(Hz)だけ増加すると、ΔPはPn(kW)だけ減じることを表している。例えば、定格の電気出力で運転中に、周波数が0.04×fn(基準周波数が50Hzであれば2.0Hz)だけ増加すると、発電出力はΔfを0まで下げるような調整が行われる。発電所が、このように急峻に発電を調整することによって、電力系統の周波数は一定に維持されている。
式(2)において、Δは基準値に対する偏差と説明した。例えば、Δfは現在の周波数と基準周波数の偏差であると説明した。しかし、Δを前回値としても同じことである。例えば、Δt秒周期で計量の演算をするとしよう。このとき、Δfを今の演算周期の周波数と前の制御周期の周波数の差、ΔPは今の制御周期の有効電力と前の演算周期の有効電力の差、とみなしても式(2)は成立する。従って、式(2)のように電力需給の過不足をΔfで計り、Δfが負のときにΔPが正であれば、そのΔPは需給調整に貢献したとしてΔPの絶対値を加算し、Δfが負であるにもかかわらずΔPが負であるならば、そのΔPは需給調整を阻害したとしてΔPの絶対を差し引く。例えば、式(3)によって需給調整に貢献する電力を計量することができる。
Figure 2023166118000004
式(3)の計算をするためには、有効電力の時間差分ΔPが必要となる。前述のように、従来技術では有効電力Pを電力系統の周波数の移動平均値として求めており、移動平均の区間は10周期程度が取られている。周波数が50Hzであれば10周期は200msであるので、式(3)は200ms毎に計算する。
特許第5000441号公報
ガバナフリー運転は電力系統の需給調整の中心的な役割を果たしている。今後、脱炭素社会に向けて太陽光発電や風力発電のような変動性の発電の占める割合が年々増えるが、それらの発電量の変動が受け入れられるよう、ガバナフリー運転の能力の向上も並行的に進めなければならない。
ガバナフリーによる調整は指令によらず各電源で自律的に行われるので、電源が短周期で発生した調整力は計量されず、精算されることもなく、電力事業者は対価を得ることもできない。ガバナフリーに限らず、発電機やそれに接続した外燃機関や内燃機関の運動エネルギーも重要な役割を果たしている。たとえば、電力系統の周波数が低下するとそれに合わせて発電機の回転速度も低下することになるが、回転速度の変動による運動エネルギーの減少が電力系統に供給されて調整力として機能する。
電力系統の需給調整力を充実するためには、ガバナフリーや運動エネルギーの調整力を計量し対価が与えられるようにすることは必須である。しかしながら、例えば特許文献1のような従来の電力計には、調整力を計量する機能が設けられていない。
また、電力系統の安定化のためには,周波数の変動に対して遅滞なく調整力を発揮することには価値があり、発電機が電力系統の周波数に同期するときに系統の変動を抑制する側に働く慣性エネルギーの変化も速い需給調整力(慣性力)として注目されている。慣性力のような速い調整力を計量するために、電力の計測周期は短いほど良い。しかしながら、現状は、上述のように計測周期の下限は200msである。
本開示の目的は、電力の計測の速応性を向上することができる有効電力計量装置、調整力計量装置、計量方法、およびプログラムを提供することにある。
本開示の一態様によれば、有効電力計量装置は、対象装置が電力系統との間で送電または受電する交流の電圧の時系列に基づいて、前記交流の周期と周波数とを推定する周波数推定器と、前記交流の周期毎に前記交流の複数の周期における瞬時電力の移動平均値を算出し、算出した前記移動平均値と、前回算出した移動平均値との差から、前記交流の1周期において前記対象装置が授受する有効電力を計量する有効電力計量器と、を備える。
本開示の一態様によれば、有効電力計量装置は、対象装置が電力系統との間で送電または受電する交流の電圧の時系列に基づいて、前記交流の周期と周波数とを推定する周波数推定器と、前記交流の1周期における瞬時電力の積算値から、前記対象装置が授受する有効電力を計量する有効電力計量器と、を備える。
本開示の一態様によれば、有効電力計量装置は、対象装置が電力系統との間で送電または受電する交流の電圧の時系列に基づいて、前記交流の周期と周波数とを推定する周波数推定器と、前記交流の瞬時電力を、前記交流の周波数の整数倍となる頻度で演算して、前記交流の1周期における前記瞬時電力の離散時間信号を出力する瞬時電力演算器と、タップ長を前記瞬時電力の演算頻度に一致させたハニング窓を係数とする有限インパルス応答フィルタとを有し、前記有限インパルス応答フィルタで前記瞬時電力の離散信号をフィルタリングして、前記対象装置が授受する有効電力を計量する有効電力計量器と、を備える。
本開示の一態様によれば、有効電力計量装置は、対象装置が電力系統との間で送電または受電する交流の電圧の時系列に基づいて、前記交流の周期と周波数とを推定する周波数推定器と、前記交流の瞬時電力を、前記交流の周波数の整数倍となる頻度で演算して、前記交流の1周期における前記瞬時電力の離散時間信号を出力する瞬時電力演算器と、前記交流の振動周波数に対応する成分を遮断する有限インパルス応答フィルタで前記瞬時電力の離散信号をフィルタリングして、前記対象装置が授受する有効電力を計量する有効電力計量器と、を備える。
本開示の一態様によれば、有効電力計量装置は、対象装置が電力系統との間で送電または受電する三相交流の電圧の時系列に基づいて、前記三相交流の少なくとも一つの相の交流の周波数を推定する周波数推定器と、前記三相交流の一つ一つの相の瞬時電力の和の移動平均値から、前記対象装置の三相全体での有効電力を計量する有効電力計量器と、を備える。
本開示の一態様によれば、有効電力計量装置は、対象装置が電力系統との間で送電または受電する交流の瞬時電圧を入力とし、前記対象装置が有する同期モータの回転数を演算し、前記交流の周波数を出力とする同期モータモデルと、前記交流の瞬時電流と、前記瞬時電圧と、前記同期モータモデルから出力された前記周波数とに基づいて、前記交流の1周期において前記対象装置が授受する有効電力を計量する有効電力計量器と、を備える。
本開示の一態様によれば、調整力計量装置は、上述の何れか一の態様に記載の有効電力計量装置と、前記有効電力の時間的な差分と、前記周波数の時間的な差分とに基づいて、前記対象装置の需給調整力を算出する調整電力量計量器と、を備える。
本開示の一態様によれば、計量方法は、対象装置が電力系統との間で送電または受電する交流の電圧の時系列に基づいて、前記交流の周期と周波数とを推定するステップと、前記交流の瞬時電力を、前記交流の周波数の整数倍となる頻度で演算して、前記交流の1周期における前記瞬時電力の離散時間信号を出力するステップと、タップ長を前記瞬時電力の演算頻度に一致させたハニング窓を係数とする有限インパルス応答フィルタで前記瞬時電力の離散信号をフィルタリングして、前記対象装置が授受する有効電力を計量するステップと、を有する。
本開示の一態様によれば、プログラムは、対象装置が電力系統との間で送電または受電する交流の電圧の時系列に基づいて、前記交流の周期と周波数とを推定するステップと、前記交流の瞬時電力を、前記交流の周波数の整数倍となる頻度で演算して、前記交流の1周期における前記瞬時電力の離散時間信号を出力するステップと、タップ長を前記瞬時電力の演算頻度に一致させたハニング窓を係数とする有限インパルス応答フィルタで前記瞬時電力の離散信号をフィルタリングして、前記対象装置が授受する有効電力を計量するステップと、を有効電力計量装置に実行させる。
上記態様によれば、電力の計測の速応性を向上することができる。
第1の実施形態に係る調整力計量装置の機能構成を示す図である。 第1の実施形態に係る有効電力計量装置の機能を説明するための第1の図である。 第1の実施形態に係る有効電力計量装置の機能を説明するための第2の図である。 第1の実施形態の変形例1に係る周波数推定器の機能構成を示す図である。 第1の実施形態の変形例2に係る調整力計量装置の機能構成を示す図である。 第1の実施形態の変形例2に係る有効電力計量装置の機能を説明するための図である。 第1の実施形態の変形例3に係る調整力計量装置の機能構成を示す図である。 第2の実施形態に係る有効電力計量器の機能構成を示す図である。 第2の実施形態に係る有効電力計量装置の機能を説明するための第1の図である。 第2の実施形態に係る有効電力計量装置の機能を説明するための第2の図である。 第2の実施形態に係る有効電力計量装置の機能を説明するための第3の図である。 第2の実施形態に係る有効電力計量装置の機能を説明するための第4の図である。 第3の実施形態に係る有効電力計量装置の機能を説明するための図である。 第4の実施形態に係る有効電力計量器の機能構成を示す図である。 第5の実施形態の変形例に係る有効電力計量器の機能構成を示す図である。 第6の実施形態に係る調整力計量装置の機能構成を示す図である。 第8の実施形態に係る調整力計量装置の機能構成を示す図である。 少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
<第1の実施形態>
以下、図1~図3を参照しながら第1の実施形態について詳しく説明する。
(調整力計量装置の機能構成)
図1は、第1の実施形態に係る調整力計量装置の機能構成を示す図である。
図1に示すように、交流電力系統Gには、調整力提供手段2が接続されている。調整力提供手段2は、発電機または負荷である。また、調整力計量装置1は、例えば、交流電力系統Gと、調整力提供手段2との接続点に設けられる。本実施形態に係る調整力計量装置1は、調整力提供手段2が交流電力系統Gに対して行う需給調整を調整電力量として計測する。
調整力計量装置1は、有効電力計量装置10と、調整電力量計量器15とを備える。有効電力計量装置10は、電圧検出器11と、電流検出器12と、周波数推定器13と、有効電力計量器14とを備える。
電圧検出器11は、調整力提供手段2が交流電力系統Gとの間で送電または受電する電力の電圧の計測値である電圧信号vを出力する。例えば、電圧検出器11は、交流電力系統Gと調整力提供手段2との接続点や、調整力提供手段2の交流電力系統G側の出入り口における電圧を計測する。
電圧を計測する。
電流検出器12は、調整力提供手段2が交流電力系統Gとの間で送電または受電する電力の電流の計測値である電流信号iを出力する。例えば、電流検出器12は、交流電力系統Gと調整力提供手段2との接続点や、調整力提供手段2の交流電力系統G側の出入り口における電流を計測する。
周波数推定器13は、電圧信号vの時系列に基づいて、調整力提供手段2が交流電力系統Gとの間で授受する交流の周期と周波数fとを推定する。
有効電力計量器14は、交流の複数の周期における瞬時電力の移動平均値から、調整力提供手段2が交流電力系統Gとの間で授受する電力の有効電力Pを計量する。
調整電力量計量器15は、有効電力の時間的な差分と、前記周波数の時間的な差分とに基づいて、電力の需給調整力Mを算出する。
(調整力計量装置の処理について)
次に、調整力計量装置1の処理について詳細に説明する。
有効電力計量器14は、少なくとも有効電力の演算周期毎に電圧信号vおよび電流信号iを読み取る。有効電力計量器14は、時刻tの電圧信号vと、時刻tの電流信号iとから、時刻tの瞬時の有効電力p(以下、単に「瞬時電力」とも記載する。)を計算する。また、有効電力計量器14は、上記した式(1)のように、各時刻における瞬時電力pを過去に遡って移動平均した値を、有効電力Pとして出力する。
本実施形態では、有効電力の演算周期は、交流の周期と一致するように設定される。例えば、交流電力系統Gの基準周波数が50Hzである場合、有効電力の演算周期は20msである。有効電力計量器14は、1周期につき瞬時電力pを32回計算する。また、有効電力計量器14は、演算周期毎に、10周期分の瞬時電力pを移動平均して有効電力Pを算出する。
周波数推定器13は、電圧信号vを入力し、電圧vが交番して零を横切る時間間隔から交流の周波数fを計算する。電圧vは一回の周期のなかで、正電圧から不電圧への交差と、不電圧から正電圧への交差との、二回の交差がある。式(1)の移動平均の時間的区間(10周期分の区間)において、最初の交差の時刻をtX,start-1、最後の交差の時刻をtX,start、交差の回数をnと記すと、式(1)の移動平均区間の周波数は次式(4)で計算することができる。交差の方向を考慮して、例えば電圧が零を正から負に横切るものだけを取り上げるならば、交差は一つの周期に一回であり、式(9)の右辺の1/2倍は不要である。
Figure 2023166118000005
調整電力量計量器15は、式(1)の移動平均の時間幅N毎に、前回(時刻t-1)の有効電力Pおよび周波数fとの差分を式(5)と式(6)により求める。
Figure 2023166118000006
Figure 2023166118000007
図2は、第1の実施形態に係る有効電力計量装置の機能を説明するための第1の図である。
例えば、図2に示すように、有効電力Pは時刻tから過去の10周期(周期1,0,-1,-2,…,-8)における瞬時電力pの移動平均値であり、有効電力Pt-1は1つ前の周期から過去の10周期分(周期0,-1,-2,-3,…,-9)における瞬時電力pの移動平均値である。また、周波数fは、時刻tから過去の10周期分(周期1,0,-1,-2,…,-8)における周波数の平均値である。周波数ft-1は、1つ前の周期から過去の10周期分(周期0,-1,-2,-3,…,-9)における周波数の平均値である。つまり、調整電力量計量器15は、1周期分ずらした2つの期間における有効電力Pの移動平均値の差分ΔP、および周波数fの平均値の差分Δfをそれぞれ求める。
そして、調整電力量計量器15は、式(3)により調整電力量Mを計算する。
図3は、第1の実施形態に係る有効電力計量装置の機能を説明するための第2の図である。
電圧が交差する時刻tの計算を図3を参照しながら説明する。図3に示すように、隣り合う時刻で電圧の符号が反転する時刻tと時刻tの間で電圧は0Vを交差する。交差する時刻tは次式(7)で計算する。
Figure 2023166118000008
(作用、効果)
第1の実施形態に係る調整力計量装置1は、調整力提供手段2が送電または受電する交流の電圧vの時系列に基づいて、交流の周期と周波数とを推定する周波数推定器13と、交流の複数周期(例えば、10周期)における瞬時電力pの移動平均値から、有効電力Pを計量する有効電力計量器14と、有効電力Pおよび周波数それぞれの時間的な差分(1周期の差分)に基づいて、電力の需給調整力Mを算出する調整電力量計量器15と、を備える。
このようにすることで、調整力計量装置1は、有効電力Pおよび周波数fについて、交流の1周期毎の差分を求め、これら差分から1周期毎の需給調整力Mを算出することができる。例えば、交流の基準周波数が50Hzである場合、1周期は20msである。したがって、調整力計量装置1は、計測の速応性を向上させることができる。これにより、調整力計量装置1は、慣性力のような早い調整力を計量することができる。
なお、図1には、有効電力計量装置10が調整力計量装置1の内部に設けられる例が示されているが、これに限られることはない。他の実施形態では、有効電力計量装置10は、調整力計量装置1とは別の装置として独立に設けられてもよい。例えば、有効電力計量装置10は、発電機の出口に接続される電力線に設けられ、発電機が送電する電力の有効電力Pを計測する。また、さらに他の実施形態では、有効電力計量装置10は、負荷の入口に接続される電力線に設けられ、負荷が受電する電力の有効電力Pを計測する。発電機または負荷は、有効電力計量装置10が有効電力を計量する対象装置の一例である。また、この場合、有効電力計量装置10の有効電力計量器14は、式(5)により、対象装置が交流の1周期の間に授受する有効電力を計量する。これにより、有効電力の計測の速応性を向上することができる。なお、有効電力計量装置10が計量した1周期分の有効電力は、例えば、発電機の制御装置において出力の自動制御に用いられる。有効電力計量装置10によって発電機の有効電力を遅滞なく計測することができるので、発電機の制御性能も向上することができる。
(変形例1)
図4は、第1の実施形態の変形例1に係る周波数推定器の機能構成を示す図である。
また、周波数推定器13は、図4に示すように、ゼロクロス検出器131(以下、「ZC検出器」とも記載する。)を使って交差する時刻tを求めてもよい。
ZC検出器131は、電圧信号が0Vを横切る瞬間に出力がステップ変化する。サンプラ132にはZC検出器131の出力とタイマ130の時刻が入力される。サンプラ132はZC検出器131の出力がステップ変化する瞬間のタイマ130の時刻を出力する。これがtに相当する。1回の周期で2回のゼロクロスがある。従って、前々回のtと今回のtの差分が1周期に相当する。周波数算出部133は、前々回と今回のtの差分をΔと記すと、その逆数を周波数fとして計算する。
(変形例2)
図5は、第1の実施形態の変形例2に係る調整力計量装置の機能構成を示す図である。
図5に示すように、有効電力計量器14は、瞬時電力積算器142、サンプラ143、有効電力算出部144により構成されてもよい。また、周波数推定器13は、変形例1のものを使用する。
瞬時電力は、交流周波数fの2倍の2fで振動する。従って、瞬時電力を、その振動周期である1/2f秒、またはその整数倍の時間だけ移動平均すると、振動成分は相殺され、瞬時電力の平均値であるところの有効電力を得ることがきる。
従来技術によると、例えば、基準周波数の10周期分の期間、瞬時電力を移動平均して有効電力としている。交流電力系統の周波数は絶えず変動するので、1周期の期間も絶えず変動する。そこで、従来技術では、10周期分の期間で均して近似している。このように均すと,有効電力検出の速応性は劣化する。電力計を、電気代の課金の目的に利用する限りにおいては、速応性は重要でない。例えば、電力をひと月分積算した値さえわかれば充分である。しかし、ガバナフリーや慣性または系統安定化装置が発揮する調整力を正確に計量するには、交流の1周期を推定して、正確に1周期の有効電力を算出することに意味がある。
第1の実施形態は、例えば、交流の10周期分の移動平均から有効電力を算出していた。交流の基準周波数が50Hzであれば移動平均の時間窓の幅は200msである。本変形例2では、移動平均の時間窓の幅を1周期分(20ms)にすることができる。これにより、電力需給の調整力の速い成分を計量することが可能となる。
具体的な処理の内容を、図5を参照しながら説明する。第1の実施形態との違いは、有効電力を1周期毎に計量することである。本変形例2では、1周期毎に計量することを強調するために、有効電力はPで表している。
1周期にゼロクロスが2回あるので、有効電力Pはゼロクロス2回毎の電力量の差分から、次式(8)で積算する。
Figure 2023166118000009
ここで、tは直近のゼロクロスの時刻、tX,prev2はその2回前のゼロクロスの時刻、WtXは時刻tにおける電力量である。
図6は、第1の実施形態の変形例2に係る有効電力計量装置の機能を説明するための図である。
図6に示すように、tはゼロクロス直前の積算演算の時刻、tはゼロクロス直後の積算演算の時刻とすると、WtXは次式(9)で定める。
Figure 2023166118000010
ゼロクロス2回毎の差分をΔと記すと、交差2回毎に(すなわち1周期に一度)調整電力量は次式(10)で計算してもよい。
Figure 2023166118000011
または、交差一回ごとに次式(11)で計算してもよい。Δはゼロクロス一回ごとの差分である。
Figure 2023166118000012
変形例2によれば、交流の1周期当たりの有効電力を正確に計算することができる。これによって、電力需給の調整力を交流の1周期毎に計量することが可能となる。その結果、例えば慣性力に由来する、調整力の速い成分を計量することが可能となる。
(変形例3)
図7は、第1の実施形態の変形例3に係る調整力計量装置の機能構成を示す図である。
変形例2の瞬時電力積算器142の演算は、交流の周期と厳密には同期しない。このため、式(9)の内挿近似を行ってゼロクロスする時刻tにおける電力量WtXを推定した。変形例3は、瞬時電力積算器142の演算を交流の周期に一致させ内挿近似を不要とする。図7に示すように、瞬時電力積算器142_1は逓倍ZC信号を入力する。逓倍ZC信号は、逓倍器145によりZC信号の周波数を逓倍した信号である。例えば、ZC信号が100Hzであれば、逓倍ZC信号は320Hzである。さらに,ZC検出部146により逓倍ZC信号はZC信号がONのタイミングで同時にONとなるように位相調整されている。
瞬時電力積算器142_1では、逓倍ZC信号に基づき電圧vと電流iから瞬時電力pを演算し、有効電力の積算値WtXm/2を出力する。積算計算には、逓倍ZC信号の周期が必要となるが、それは、タイマ147とサンプラ148が出力する逓倍ZC信号がONとなる時刻tXmから求める。このような演算処理によると、交流の周期と有効電力の積算値WtXm/2の演算周期が同期するので、式(8)の内挿近似が不要となり、演算が簡単である。
<第2の実施形態>
次に、図8~図12を参照しながら第2の実施形態について詳しく説明する。上述の実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
(有効電力計量器の機能構成)
図8は、第2の実施形態に係る有効電力計量器の機能構成を示す図である。
図8に示すように、本実施形態に係る調整力計量装置1において、有効電力計量器14は、瞬時電力演算器140と、有限インパルス応答フィルタ141(以下、「FIRフィルタ」とも記載する。)とを備えることを特徴とする。
瞬時電力演算器140は、交流の瞬時電力を、交流の周波数fの整数倍mの頻度f(サンプリング周波数)で演算して、交流の1周期における瞬時電力の離散時間信号を出力する。
FIRフィルタ141は、タップ長を瞬時電力の演算頻度mに1を加えた(m+1)に一致させたハニング窓を係数とする。FIRフィルタ141は、瞬時電力演算器140から入力された瞬時電力の離散時間信号をフィルタリングして、有効電力を出力する。
(有効電力計量器の処理について)
第2の実施形態は、有効電力計量器14が演算頻度fを交流電力の周波数fの整数倍mにすること、かつ、移動平均に変えてタップ長がm+1のハニング窓を係数とするFIRフィルタ141を用いる点において、第1の実施形態と異なっている。なお、本実施形態では、交流電力の周波数fとして、基準周波数(例えば、50Hz)を用いる。
第1の実施形態で用いた式(1)の移動平均の処理は、瞬時電力に矩形窓関数を掛けることと同じである。したがって、式(1)は、式(12)に示す長さNの矩形窓の重み係数w∈Rにより、式(13)のように表すことができる。
Figure 2023166118000013
Figure 2023166118000014
1周期について瞬時電力を32回サンプルし、すなわちmを32とし、移動平均の窓の幅を10周期分とするなら、Nの値は320である。1周期あたりの瞬時電力のサンプル回数を整数mに設定するならば、サンプルの頻度fは周波数fのm倍である。
第2の実施形態では、ハニング窓を使う。ハニング窓の長さはm+1とする。ハニング窓の重み係数h∈Rm+1は次式(14)で表される。
Figure 2023166118000015
ハニング窓により信号の定常ゲインが下がるので、式(15)のように補正係数cで補正する。
Figure 2023166118000016
最終的に、ハニング窓の重み係数は次式(16)である。
Figure 2023166118000017
また、ハニング窓による有効電力は次式(17)となる。
Figure 2023166118000018
図9は、第2の実施形態に係る有効電力計量装置の機能を説明するための第1の図である。
図9は、ゲイン補正後のハニング窓関数hと移動平均の矩形窓関数wとの比較例である。ハニング窓の長さは時間ステップ数でm+1=33であり、矩形窓の長さN=320のおおよそ1/10である。
図10は、第2の実施形態に係る有効電力計量装置の機能を説明するための第2の図である。
図10は、ハニング窓と矩形窓の瞬時電力pに対する有効電力Pの応答の周波数特性の比較例である。矩形窓では、2Hz付近から応答ゲインが低下している。一方、ハニング窓では、30Hz程度までゲイン低下がしないので、矩形窓よりもハニング窓の方が速応性に優れている。
さらに、矩形窓では5Hz,10Hz,15Hz,20Hz,25Hz,…に応答の谷がある。これは、瞬時電力が例えば5Hzで変動しても、それが有効電力の変動として観測されないことを意味しており、電力の需給調整力の計量においては好ましくない。
図11は、第2の実施形態に係る有効電力計量装置の機能を説明するための第3の図である。
また、ハニング窓と矩形窓の違いを、単に窓関数の長短の違いによるものでないと示す目的で、矩形窓を1周期の長さに相当するN=32に変えて評価する。図11は長さをN=32にした矩形窓関数wと、長さm+1=33のハニング窓関数hとの比較例である。
図12は、第2の実施形態に係る有効電力計量装置の機能を説明するための第4の図である。
図12は、矩形窓wの長さをN=32に変えたときの、矩形窓wとハニング窓hとの周波数特性の比較例である。矩形窓wが20Hzからゲインが下がるのに対し、ハニング窓hは30Hzからである。したがって、矩形窓よりもハニング窓の方が高周波数まで計測できる。
さらに、単相交流の瞬時電力は交流周波数の2倍で振動する。50Hzの交流電力系統Gでは、瞬時電力の振動は100Hzに相当する。ハニング窓および矩形窓のいずれも100Hz付近に応答ゲインの谷を有しているので、同振動を除去する機能が認められる。両者を比較すると、矩形窓よりもハニング窓の方が谷の幅が広いので、交流周波数が変動したときにも同振動をより良く除去することができる。さらに、100Hzとその前後の周波数での応答ゲインも、矩形窓よりもハニング窓が10dB程度小さい(ゲインで1/3倍程度)ので、有効電力の計測にはハニング窓の方が適している。
(作用、効果)
第2の実施形態に係る調整力計量装置1は、第1の実施形態の有効電力計量器に代えて、交流の瞬時電力を交流の周波数の整数倍となる頻度で演算して、交流の1周期における瞬時電力の離散時間信号を出力する瞬時電力演算器140と、タップ長を瞬時電力演算器140の演算頻度に一致させたハニング窓を係数とするFIRフィルタ141とを有し、FIRフィルタで瞬時電力の離散信号をフィルタリングして、有効電力Pを計量する有効電力計量器14を備える。
第1の実施形態に係る有効電力計量器は、例えば、交流の周期10回分を移動平均しなければならなかった。これに対し、第2の実施形態に係る有効電力計量器14は、有効電力の演算を1周期分のみで済ませることができるので、有効電力計量の速応性をさらに改善することができる。これにより、調整力計量装置1は、電力の需給調整力の速い成分を計量することが可能となる。
また、第2の実施形態に係る調整力計量装置1は、第1の実施形態よりも瞬時電力の変動を効果的に除去することができる。これにより、調整力計量装置1は、電力の需給調整力を精度よく計量することができる。
<第3の実施形態>
次に、図13を参照しながら第3の実施形態について詳しく説明する。上述の実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
第2の実施形態では、タップ長を瞬時電力の演算頻度(m+1)に一致させたハニング窓を係数とするFIRフィルタを用いる例について説明した。これに対し、第3の実施形態では、交流の周波数fの2倍の周波数2f(振動周波数)に対応する成分を遮断するFIRフィルタ141を用いることを特徴とする。なお、本実施形態では、交流電力の周波数fとして、基準周波数(例えば、50Hz)を用いる。
(有効電力計量器の処理について)
周波数fで離散化されたFIRシステムを考える。FIRシステムは式(18)の伝達関数H(z)で表されるとする。mはFIRフィルタ141のタップ長である。mの決定は後述する。
Figure 2023166118000019
伝達関数からFIRフィルタ141の周波数応答が分る。例えば、周波数fに対するゲインを求めるには、式(19)のように、z=exp(±j2πff -1)をHに代入して得られる複素数の絶対値をとればよい。
Figure 2023166118000020
単相の瞬時電力は、交流の周波数fの2倍の2fを基本周波数として振動することが予め分かっている。以下、2fを交流の振動周波数とも記載する。例えば、電流iと電圧vが共にcоs(2πft)で表されるとする。このとき、瞬時電力は、式(20)であり、1/2を中心に周波数2fで振動する。
Figure 2023166118000021
有効電力とは、右辺第一項が表す時間平均値である。FIRフィルタ141の目的は、右辺第二項を除去し、右辺第一項を残すことである。右辺第二項を除去するには、伝達関数H(z)の分子多項式の値がz=exp(±2πjff -1)において0になれば充分である。伝達関数の分子多項式=0の解は零点と呼ばれている。複素平面の単位円上のexp(±j2πff -1)に零点を配置すると、2π・2fHzにおいて伝達関数が0となり、2π・2fHzの成分を遮断することができる。
図13は、第3の実施形態に係る有効電力計量装置の機能を説明するための図である。
遮断周波数を複数設定するには、図13に示すように、FIRフィルタ141の複素平面の単位円上の位置である{a±jb,a±jb,…,am/2±jbm/2}に零点を配置すればよい。例えば、瞬時電力の2倍、4倍、6倍の高調波成分である{2f,4f,6f}Hzを遮断するならば、零点は以下の式(21)のように定める。
Figure 2023166118000022
零点から、仮のFIRフィルタを定める。仮のFIRフィルタは伝達関数の分子多項式をN(z)、分母多項式をD(z)とし、全体をN(z)/D(z)で表すことにする。
零点の数をmとすると、仮のFIRフィルタのタップ長はm+1である。この事例ではm=6であり、仮のFIRのタップ長はm+1=7である。仮のFIRフィルタの分子は零点に従って定まる。FIRフィルタの分子の多項式は次式(22)である。
Figure 2023166118000023
仮のFIRフィルタの分母の多項式は次式(23)である。
Figure 2023166118000024
仮に瞬時電力の値が定常的に1であったならば、有効電力も1である。そうなるためには、FIRフィルタは直流信号に対するゲインが1でなければならない。仮のFIRフィルタの直流ゲインは、N(z)/D(z)にz=1を代入した値である。まず、分子多項式N(z)の直流信号に対する値N0を以下の式(24)で計算する。
Figure 2023166118000025
分母多項式の直流信号に対する値Dは次式(25)である。
Figure 2023166118000026
最終的なFIRフィルタH(z)は、仮のFIRフィルタをその直流ゲインが1になるよう次式(26)で補正したものである。
Figure 2023166118000027
本実施例では零点の数が6の場合を説明した。これは一例であり零点の数は6に限定しない。零点の数が奇数の場合、零点を実軸に奇数個、例えば-1+j0に設定し、残った偶数個の零点に対して本実施形態を適用すればよい。さらに、本実施形態では零点は交流周波数の2倍、4倍、6倍を例に説明したが、これに限られることはない。他の実施形態では、零点を、これ以外に8倍、10倍等に追加しても良い。さらに、3倍、5倍、7倍などに追加しても良い。
(作用、効果)
第3の実施形態に係る調整力計量装置1において、有効電力計量器14は、第2の実施形態のFIRフィルタに代えて、交流の振動周波数に対応する成分を遮断するFIRフィルタ141を有する。交流の振動周波数は、交流の基準周波数の2倍の値である。具体的には、FIRフィルタ141は、複素平面の単位円上であって、偏角が振動周波数の1倍に対応する位置に零点を有する。
このようにすることで、調整力計量装置1は、第2の実施形態と同様に瞬時電力の振動を効果的に除去することができるので、電力の需給調整力を精度よく計量することができる。
また、FIRフィルタ141は、振動周波数の2倍以上の整数倍の周波数に対応する成分を遮断してもよい。具体的には、FIRフィルタ141は、複素平面の単位円上であって、偏角が振動周波数の2倍、3倍、もしくはそれ以上の整数倍に対応する位置に零点を有する。
このようにすることで、例えば、振動周波数の2倍、3倍、もしくはそれ以上の高調波成分についても同様に遮断することができる。
<第4の実施形態>
次に、図14を参照しながら第4の実施形態について詳しく説明する。上述の実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
(有効電力計量器の機能構成)
図14は、第4の実施形態に係る有効電力計量器の機能構成を示す図である。
第4の実施形態では、図14に示すように、有効電力計量器14は、複数の低次FIRフィルタ141_1、141_2、…、141_mを直列結合して、有効電力Pを計算することを特徴とする。また、これら低次FIRフィルタ141_1~141_mは、それぞれ、係数のタップ長が3であり、複素平面の単位円上に零点の共役対を一つずつ有することを特徴とする。
(有効電力計量器の処理について)
本実施形態では、FIRフィルタH(z)を以下の式(27)のようにタップ長3の低次FIRフィルタ141_1~141_mの積として表現する。
Figure 2023166118000028
例えば、低次FIRフィルタ141_1は振動周波数の1倍の応答を遮断し、低次FIRフィルタ141_2は振動周波数の2倍の応答を遮断し、低次FIRフィルタ141_mは振動周波数のm倍の応答を遮断する。このように、各低次FIRフィルタを順次通していくことにより、振動周波数の1倍、2倍、…、m倍の周波数における瞬時電力の振動を効果的に除去することができる。
(作用、効果)
第4の実施形態に係る調整力計量装置1において、有効電力計量器14は、係数のタップ長が3であり、複素平面の単位円上に零点の共役対を一つずつ有する、複数の低次FIRフィルタを直列に結合して、有効電力Pを計算する。
第3の実施形態では、FIRフィルタの係数はm個、記憶変数は2m個が必要であった。これに対し、第4の実施形態では、低次FIRフィルタ141の係数はm/2個(本実施形態の例では3個)、記憶変数はm個(本実施形態の例では6個)となり、それぞれ1/2で済むので簡単である。
<第5の実施形態>
第2~第4の実施形態では、交流電力の周波数fとして、基準周波数(例えば、50Hz)を用いる例について説明した。これに対し、第5の実施形態では、交流の実際の周波数fに基づいてFIRフィルタ141の係数を可変とすることを特徴とする。
(有効電力計量器の処理について)
本実施形態では、有効電力計量器14は、瞬時電力が有する周波数2fの振動成分を、FIRフィルタ141の遮断周波数を常に2fに同調させることにより除去する。
具体的には、第2の実施形態に係る調整力計量装置1において、式(14)に代えて、次式(28)のfに、周波数推定器13が推定したfの値を代入して、ハニング窓の重み係数を再計算する。
Figure 2023166118000029
式(28)によれば、周波数fが基準周波数(例えば、50Hz)よりも高い(例えば、50.1Hz)場合に、係数ωが2πを超えないよう(次の周期のデータを含まないように)に調整される。また、周波数fが基準周波数よりも低い(例えば、49.9Hz)場合に、波形が延びた分、1周期分のサンプルを取りこぼすことがないように、タップ長を第2の実施形態よりも長め(例えば、34など)に設定してもよい。このとき、周波数fが50Hzであり、取得できたサンプル数が32個であった場合には、33、34個目のサンプルの値は0にする。これにより、周波数fが変動しても、必要なサンプルを適切に取得することができる。
また、第3および第4の実施形態に係る調整力計量装置1において、式(21)に代えて、次式(29)のfに周波数推定器13が推定したfの値を代入して、零点を定める。
Figure 2023166118000030
(作用、効果)
第5の実施形態に係る調整力計量装置1において、有効電力計量器14は、FIRフィルタ141の係数を周波数推定器13が推定した周波数に基づいて変更する。
このようにすることで、調整力計量装置1は、時々刻々と変動する周波数fに応じて、FIRフィルタ141の係数を変えることにより、より精度よく有効電力を計量することができる。
(変形例1)
図15は、第5の実施形態の変形例に係る有効電力計量器の機能構成を示す図である。
変形例1では、FIRフィルタ141の演算を、交流の周期に同期させることにより、ハニング窓の重み係数の再計算を不要とする。図15を用いて説明する。変形例1の瞬時電力演算器140_1は、図7に示した逓倍ZC信号を入力し、逓倍ZC信号に基づき、電圧vと電流iから瞬時電力pの離散時間信号を演算して出力する。FIRフィルタ141は第5の実施形態と同様である。FIRフィルタ141は、前記瞬時電力pの離散時間信号を入力して有効電力Pを演算する。
<第6の実施形態>
次に、図16を参照しながら第6の実施形態について詳しく説明する。上述の実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
(調整力計量装置の機能構成)
図16は、第6の実施形態に係る調整力計量装置の機能構成を示す図である。
図16に示すように、第6の実施形態に係る交流電力系統Gでは、三相交流が用いられる。
電圧検出器11は、三相交流の一つ一つの相の相電圧を計測して出力する。
電流検出器12は、三相交流のうち二つの相の電流を検出して出力する。
周波数推定器13は、三相交流の少なくとも1つの相の周波数fを推定する。
有効電力計量器14は、三相交流の各相の瞬時電力の和の移動平均値から、三相全体での有効電力Pを推定する。
調整電力量計量器15は、三相全体での有効電力Pの時間的な差分ΔPと、周波数fの時間的な差分Δfとに基づいて、電力の需給調整力Mを算出する。
(調整力計量装置の処理について)
単相交流の場合、交流の電流と電圧が一定であっても、瞬時有効電力は交流の2倍の周波数で周期的に変動する。従って、有効電力の計算において、移動平均の時間窓の幅は交流の周期の整数倍にしなければならなかった。例えば50Hzの交流の場合、有効電力の計測には移動平均を窓の幅を2msの整数倍にしなければならず、従って、ある時刻に有効電力の値を計算したとして、新規に計測した瞬時電力で有効電力の値を計算できるまで2ms待たなければならなかった。なお、交流が上下対称であるときには、交流の半周期の1msでよい。
しかし、計測対象が三相交流の場合は、電流と電圧が一定であれば、三相の瞬時有効電力の和は時間的に一定である。従って、移動平均の窓の長さを単相の有効電力のときのように、交流の周期と無関係に定めることができる。
本実施形態では、電圧検出器11は、三相交流の一つ一つの相の相電圧vを計測する。電流検出器12は、三相のうち二つの相の電流iを検出する。三相の一つ一つを記号{a,b,c}で表すと、式(30)のように、三相を合計した瞬時電力pabcはブロンデルの定理から二つの電力の和を計算すれば充分である。
Figure 2023166118000031
前述のとおり、三相の瞬時有効電力の和は時間的に一定であるので、三相を合計した瞬時電力pabcは有効電力を表している。よって、三相の有効電力は瞬時有効電力の演算の頻度で値がわかる。
一方、周波数推定器13は、電圧のゼロクロスの時刻から周波数fを算出する。一つの相について1周期毎にゼロクロスは2回ある。三相では、1周期あたり6回のゼロクロスがあるので周波数は周期毎に6回の頻度で値が分る。相を区別することなく、また、正から負へのゼロクロスであるか負から正のそれであるかを区別することなく、ゼロクロスの時刻をtと記すと、周波数の演算は、式(31)、式(32)、式(33)などの方法が考えられる。
Figure 2023166118000032
Figure 2023166118000033
Figure 2023166118000034
式(31)は周波数を1回前のゼロクロスの時間差から算出する。式(32)は、3回前のゼロクロスとの時間差から算出する。これは、相を区別して、同じ相の半周期前のゼロクロスとの時間差から周波数を計算する。式(33)は、相を区別して、同じ相の1周期前のゼロクロスとの時間差から周波数を算出する。周波数の計算は、これらの式の外に、様々なものが考えられる。一般化すると、荷重係数βを用いて、式(34)で表される。tX,0は直近のゼロクロスの時刻を表す。tX,-1は1回前のゼロクロスの時刻である。例えば、β={6,-6,0,0,0,0,0,0,…}とすれば式(22)と同じになる。
Figure 2023166118000035
周波数推定器13は、ゼロクロスの発生を表すZC信号、ゼロクロスの時刻t、および周波数fを出力する。
有効電力計量器14は、周波数推定器13の出力信号に基づき、周波数計算に同期して周波数計算の時間間隔の平均有効電力を計算する。周波数を式(31)で計算するならば、平均有効電力の計算は式(35)で表される。
Figure 2023166118000036
調整電力量計量器15は、式(11)と同様に、次式(36)で調整電力量を計量する。
Figure 2023166118000037
(作用、効果)
第6の実施形態に係る調整力計量装置1は、三相交流の少なくとも一つの相の交流の周波数を推定する周波数推定器13と、三相交流の一つ一つの相の瞬時電力の和の移動平均値から、三相全体での有効電力を計量する有効電力計量器14と、有効電力の時間的な差分と、周波数の時間的な差分とに基づいて、電力の需給調整力を算出する調整電力量計量器15とを備える。
このようにすることで、調整力計量装置1は、第1の実施形態とは異なり、移動平均の窓の長さを交流の周期と無関係に定めることができる。
<第7の実施形態>
第7の実施形態では、調整力計量装置1において、調整電力量計量器15は、交流の周波数の時間的な差分と、周波数の時間的な二階差分と、周波数の基準周波数との偏差の荷重和と、有効電力の時間的な差分とに基づいて、電力の需給調整力を算出してもよい。なお、他の構成については、上述の第1~第6の実施形態の何れかを適用する。
従来技術の説明において、電力系統の需給調整の具体例として、式(2)のガバナフリー運転を説明した。ガバナフリー運転は、周波数の時間差分と有効電力の時間差分は比例関係にあるので、比例制御器で実現できる。比例制御器として、一般にはPID制御器が知られている。PIDのPは比例、Iは積分、Dは微分を表している。PID制御器を電力の需給調整に適用すると、その出力は、比例制御器、積分制御器、そして微分制御器の出力の荷重和として、式(37)で表される。Δ2は時間的な二階差分の意味である。
Figure 2023166118000038
式(37)が与えるΔPを調整力の式(3)に適用して、PID制御器に対する需給調整力として次式(38)を得る。
Figure 2023166118000039
α,β,γは、それぞれ、比例制御、積分制御、微分制御の荷重係数である。比例、積分、微分の他に、伝達関数を用いても良い。
このようにすることで、調整力計量装置1は、各種パラメータに基づいて、周波数の変動に対し応答すべき方向と、実際の電力需給の変化の方向とが一致しているかを、正確に評価することができる。
<第8の実施形態>
次に、図17を参照しながら第8の実施形態について詳しく説明する。上述の実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
従来技術では、前述のとおり交流のn周期(例えば、10周期)分の瞬時電力pの移動平均より有効電力Pを計算した。n周期の時間的長さは交流の周波数とともに変動し、その結果、有効電力にはリップルが残る。リップルの影響をより確実に除去するためには、移動平均する周期を、例えば50周期、100周期のように大きくすることが考えられる。しかし、この場合、移動平均値は時間的に遅れたものになり、1秒以下の速応成分を計量することができない。
このような課題を踏まえ、上述の各実施形態では、リップルを小さくするために、交流の1周期毎の有効電力を計算し、この有効電力に基づいて調整力を計量する技術について説明した。これに対し、本実施形態では、有効電力の計算を行わず、交流の瞬時電力と、同期モータモデル17で計算した交流の周波数とに基づいて調整力を計量する技術について説明する。
図17は、第8の実施形態に係る調整力計量装置の機能構成を示す図である。
図17に示すように、本実施形態に係る調整力計量装置1は、瞬時電力演算器16および同期モータモデル17を備える。
瞬時電力演算器16は、電圧検出器11および電流検出器12が計測した瞬時電圧vおよび瞬時電流iより、交流電力系統Gと調整力提供手段2との間で授受される交流の瞬時電力pを算出する。
同期モータモデル17は、瞬時電圧vを入力とし、調整力提供手段2が有する同期モータの回転数を演算し、さらに交流の周波数ft’を出力とする数値モデルである。従来、同期モータの回転数はゼロクロスを検出して求めていたので、回転数を間欠的(1周期に1回または2回)にしか計測することができなかった。しかし、本実施形態では、同期モータの回転数は瞬時電圧vを入力する頻度で事実上連続的に計算することが可能であり、さらに回転数は周波数に換算できるので、同期モータモデル17を使うことにより、交流の周波数を事実上連続的に計測することができる。事実上連続的にとは、1周期に例えば32回またはそれ以上に時間的に密な離散信号であり、1周期に1回または2回との対比で連続的であるとの意味である。
また、本実施形態に係る調整電力量計量器15は、前述の式(3)に代えて、次式(39)により時刻tの調整力Mを算出する。
Figure 2023166118000040
このようにすることで、調整力計量装置1は、調整力の計測の速応性を向上させることができる。
なお、本実施形態では、同期モータモデル17が瞬時電圧vを入力として同期モータの交流の周波数ft’を出力する例について説明したが、他の実施形態では、同期モータモデル17は同期モータの回転数を出力し、調整電力量計量器15が同期モータの回転数から交流の周波数ft’を計算してもよい。
さらに、本実施形態に係る調整力計量装置1は、有効電力計量器14を有する有効電力計量装置10として機能してもよい。この場合、同期モータが出力する交流の周波数ft’から、ZC信号と逓倍ZC信号を生成してもよい。周波数は位相速度を表すものであり、それを時間的に積分すると位相の角度が得られる。例えば、電圧vがゼロクロスするときの位相角度を0度と定めるならば電圧vの位相角度がわかる。電圧vの位相角度が0度をクロスする度に信号を発信すればZC信号の代用となる。さらに、例えば位相角度が0度、90度、180度、270度を超える度にZC信号を発信すれば逓倍ZC信号の代用となる。図17の逓倍ZC信号発生器146_1は、交流の周波数ft’を入力し、前述の処理を行い、逓倍ZC信号を出力する。逓倍ZC信号を瞬時電力演算器140に入力するとFIRフィルタ141でリップルを除去して有効電力Pを算出することができる。同期モータモデル17を用いると逓倍ZC信号の逓倍率を自由に定めることができる。例えば、モータ回転角度1度毎に逓倍ZC信号を発信することも可能となるので、有効電力の計量の速応性を改善することができる。
<コンピュータ構成>
図18は、少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
図18に示すように、コンピュータ90は、プロセッサ91、メインメモリ92、ストレージ93、および、インタフェース94を備える。
上述の調整力計量装置1は、コンピュータ90に実装される。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式でストレージ93に記憶されている。プロセッサ91は、プログラムをストレージ93から読み出してメインメモリ92に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、プロセッサ91は、プログラムに従って、上述した各記憶部に対応する記憶領域をメインメモリ92に確保する。
プログラムは、コンピュータ90に発揮させる機能の一部を実現するためのものであってもよい。例えば、プログラムは、ストレージに既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせ、または他の装置に実装された他のプログラムとの組み合わせによって機能を発揮させるものであってもよい。なお、他の実施形態においては、コンピュータは、上記構成に加えて、または上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等が挙げられる。この場合、プロセッサによって実現される機能の一部または全部が当該集積回路によって実現されてよい。
ストレージ93の例としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ93は、コンピュータ90のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース94または通信回線を介してコンピュータ90に接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ90に配信される場合、配信を受けたコンピュータ90が当該プログラムをメインメモリ92に展開し、上記処理を実行してもよい。少なくとも1つの実施形態において、ストレージ93は、一時的でない有形の記憶媒体である。
以上のとおり、本開示に係るいくつかの実施形態を説明したが、これら全ての実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態及びその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
<付記>
上述の各実施形態は、例えば以下のように把握される。
(1)第1の態様によれば、有効電力計量装置10は、対象装置2が電力系統との間で送電または受電する交流の電圧の時系列に基づいて、交流の周期と周波数とを推定する周波数推定器13と、交流の周期毎に交流の複数の周期における瞬時電力の移動平均値を算出し、算出した移動平均値と、前回算出した移動平均値との差から、交流の1周期において対象装置2が授受する有効電力を計量する有効電力計量器14と、を備える。
このようにすることで、有効電力計量装置10は、有効電力を1周期毎の短い間隔で計量することができる。例えば、交流の基準周波数が50Hzである場合、1周期は20msである。したがって、有効電力計量装置10は、10周期(200ms)毎にしか計測ができない従来技術と比較して、計測の速応性を大幅に向上させることができる。
(2)第2の態様によれば、有効電力計量装置10は、対象装置2が電力系統との間で送電または受電する交流の電圧の時系列に基づいて、交流の周期と周波数とを推定する周波数推定器13と、交流の1周期における瞬時電力の積算値から、対象装置2が授受する有効電力を計量する有効電力計量器14と、を備える。
このようにすることで、有効電力計量装置10は、交流の1周期当たりの有効電力を正確に計算することができる。
(3)第3の態様によれば、有効電力計量装置10は、対象装置2が電力系統との間で送電または受電する交流の電圧の時系列に基づいて、交流の周期と周波数とを推定する周波数推定器13と、交流の瞬時電力を、交流の周波数の整数倍となる頻度で演算して、交流の1周期における瞬時電力の離散時間信号を出力する瞬時電力演算器140と、タップ長を瞬時電力の演算頻度に一致させたハニング窓を係数とする有限インパルス応答フィルタ141とを有し、有限インパルス応答フィルタ141で瞬時電力の離散信号をフィルタリングして、対象装置2が授受する有効電力を計量する有効電力計量器14と、を備える。
このようにすることで、有効電力計量器14は、有効電力の演算を1周期分のみで済ませることができるので、有効電力計量の速応性をさらに改善することができる。
(4)第4の態様によれば、有効電力計量装置10は、対象装置2が電力系統との間で送電または受電する交流の電圧の時系列に基づいて、交流の周期と周波数とを推定する周波数推定器13と、交流の瞬時電力を、交流の周波数の整数倍となる頻度で演算して、交流の1周期における瞬時電力の離散時間信号を出力する瞬時電力演算器140と、交流の振動周波数に対応する成分を遮断する有限インパルス応答フィルタ141で瞬時電力の離散信号をフィルタリングして、対象装置2が授受する有効電力を計量する有効電力計量器14と、を備える。
このようにすることで、有効電力計量装置10は、瞬時電力の振動を効果的に除去することができるので、有効電力を精度よく計量することができる。
(5)第5の態様によれば、第4の態様に係る有効電力計量装置10において、有限インパルス応答フィルタ141は、複素平面の単位円上であって、偏角が振動周波数の1倍または2倍以上の整数倍に対応する位置に零点を有する。
このようにすることで、例えば、振動周波数の2倍、3倍などの高調波成分についても同様に遮断することができる。
(6)第6の態様によれば、第4の態様に係る有効電力計量装
置10において、有限インパルス応答フィルタ141は、係数のタップ長が3であり、複素平面の単位円上に零点の共役対を一つずつ有する複数の低次有限インパルス応答フィルタを直列に結合して構成される。
このようにすることで、低次FIRフィルタ141の係数はm/2個(上述の実施形態の例では3個)、記憶変数はm個(上述の実施形態の例では6個)となり、それぞれ1/2で済むので簡単である。
(7)第7の態様によれば、有効電力計量装置10は、対象装置2が電力系統との間で送電または受電する三相交流の電圧の時系列に基づいて、三相交流の少なくとも一つの相の交流の周波数を推定する周波数推定器13と、三相交流の一つ一つの相の瞬時電力の和の移動平均値から、三相全体での対象装置2の有効電力を計量する有効電力計量器14と、を備える。
このようにすることで、有効電力計量装置10は、有効電力の移動平均の窓の長さを交流の周期と無関係に定めることができる。
(8)第8の態様によれば、第3から第6の何れか一の態様に係る有効電力計量装置10において、有効電力計量器14は、有限インパルス応答フィルタ141の係数を周波数推定器13が推定した周波数に基づいて変更する。
このようにすることで、有効電力計量装置10は、時々刻々と変動する周波数fに応じて、FIRフィルタ141の係数を変えることにより、より精度よく有効電力を計量することができる。
(9)第9の態様によれば、有効電力計量装置10は、対象装置2が電力系統との間で送電または受電する交流の瞬時電圧vを入力とし、対象装置2が有する同期モータの回転数を演算し、交流の周波数fを出力とする同期モータモデル17と、交流の瞬時電流iと、瞬時電圧vと、同期モータモデル17から出力された周波数fとに基づいて、交流の1周期において対象装置2が授受する有効電力Pを計量する有効電力計量器14と、を備える。
このようにすることで、有効電力計量装置10は、リップルの影響を確実に除去できるとともに、計測の速応性を向上させることができる。
(10)第10の態様によれば、調整力計量装置1は、第1から第9の何れか一の態様に係る有効電力計量装置10と、有効電力の時間的な差分と、周波数の時間的な差分とに基づいて、対象装置2の需給調整力を算出する調整電力量計量器15と、を備える。
このようにすることで、調整力計量装置1は、有効電力Pおよび周波数fについて、交流の1周期毎の差分を求め、これら差分から1周期毎の需給調整力Mを算出することができるので、調整力計測の速応性を向上させることができる。これにより、調整力計量装置1は、慣性力のような早い調整力を計量することができる。
(11)第11の態様によれば、第10の態様に係る調整力計量装置1において、調整電力量計量器15は、交流の周波数の時間的な差分と、周波数の時間的な二階差分と、周波数の基準周波数との偏差の荷重和と、有効電力の時間的な差分とに基づいて、需給調整力を算出する。
このようにすることで、調整力計量装置1は、各種パラメータに基づいて、周波数の振動に対し応答すべき方向と、実際の電力需給の変化の方向とが一致しているかを、正確に評価することができる。
(12)第12の態様によれば、計量方法は、対象装置2が電力系統との間で送電または受電する交流の電圧の時系列に基づいて、交流の周期と周波数とを推定するステップと、交流の瞬時電力を、交流の周波数の整数倍となる頻度で演算して、交流の1周期における瞬時電力の離散時間信号を出力するステップと、タップ長を瞬時電力の演算頻度に一致させたハニング窓を係数とする有限インパルス応答フィルタ141で瞬時電力の離散信号をフィルタリングして、対象装置2が授受する有効電力を計量するステップと、を有する。
(13)第13の態様によれば、プログラムは、対象装置2が電力系統との間で送電または受電する交流の電圧の時系列に基づいて、交流の周期と周波数とを推定するステップと、交流の瞬時電力を、交流の周波数の整数倍となる頻度で演算して、交流の1周期における瞬時電力の離散時間信号を出力するステップと、タップ長を瞬時電力の演算頻度に一致させたハニング窓を係数とする有限インパルス応答フィルタ141で瞬時電力の離散信号をフィルタリングして、対象装置が授受する有効電力を計量するステップと、を有効電力計量装置10に実行させる。
1 調整力計量装置
2 調整力提供手段
10 有効電力計量装置
11 電圧検出器
12 電流検出器
13 周波数推定器
130 タイマ
131 ゼロクロス検出器(ZC検出器)
132 サンプラ
133 周波数算出部
14 有効電力計量器
140 瞬時電力演算器
141 有限インパルス応答フィルタ(FIRフィルタ)
141,141_1,141_2,141_m 低次FIRフィルタ
142 瞬時電力積算器
143 サンプラ
144 有効電力算出部
15 調整電力量計量器
16 瞬時電力演算器
17 同期モータモデル

Claims (13)

  1. 対象装置が電力系統との間で送電または受電する交流の電圧の時系列に基づいて、前記交流の周期と周波数とを推定する周波数推定器と、
    前記交流の周期毎に前記交流の複数の周期における瞬時電力の移動平均値を算出し、算出した前記移動平均値と、前回算出した移動平均値との差から、前記交流の1周期において前記対象装置が授受する有効電力を計量する有効電力計量器と、
    を備える有効電力計量装置。
  2. 対象装置が電力系統との間で送電または受電する交流の電圧の時系列に基づいて、前記交流の周期と周波数とを推定する周波数推定器と、
    前記交流の1周期における瞬時電力の積算値から、前記対象装置が授受する有効電力を計量する有効電力計量器と、
    を備える有効電力計量装置。
  3. 対象装置が電力系統との間で送電または受電する交流の電圧の時系列に基づいて、前記交流の周期と周波数とを推定する周波数推定器と、
    前記交流の瞬時電力を、前記交流の周波数の整数倍となる頻度で演算して、前記交流の1周期における前記瞬時電力の離散時間信号を出力する瞬時電力演算器と、タップ長を前記瞬時電力の演算頻度に一致させたハニング窓を係数とする有限インパルス応答フィルタとを有し、前記有限インパルス応答フィルタで前記瞬時電力の離散信号をフィルタリングして、前記対象装置が授受する有効電力を計量する有効電力計量器と、
    を備える有効電力計量装置。
  4. 対象装置が電力系統との間で送電または受電する交流の電圧の時系列に基づいて、前記交流の周期と周波数とを推定する周波数推定器と、
    前記交流の瞬時電力を、前記交流の周波数の整数倍となる頻度で演算して、前記交流の1周期における前記瞬時電力の離散時間信号を出力する瞬時電力演算器と、
    前記交流の振動周波数に対応する成分を遮断する有限インパルス応答フィルタで前記瞬時電力の離散信号をフィルタリングして、前記対象装置が授受する有効電力を計量する有効電力計量器と、
    を備える有効電力計量装置。
  5. 前記有限インパルス応答フィルタは、複素平面の単位円上であって、偏角が前記振動周波数の1倍または2倍以上の整数倍に対応する位置に零点を有する、
    請求項4に記載の有効電力計量装置。
  6. 前記有限インパルス応答フィルタは、係数のタップ長が3であり、複素平面の単位円上に零点の共役対を一つずつ有する複数の低次有限インパルス応答フィルタを直列に結合して構成される、
    請求項4に記載の有効電力計量装置。
  7. 対象装置が電力系統との間で送電または受電する三相交流の電圧の時系列に基づいて、前記三相交流の少なくとも一つの相の交流の周波数を推定する周波数推定器と、
    前記三相交流の一つ一つの相の瞬時電力の和の移動平均値から、前記対象装置の三相全体での有効電力を計量する有効電力計量器と、
    を備える有効電力計量装置。
  8. 前記有効電力計量器は、前記有限インパルス応答フィルタの係数を前記周波数推定器が推定した周波数に基づいて変更する、
    請求項3に記載の有効電力計量装置。
  9. 対象装置が電力系統との間で送電または受電する交流の瞬時電圧を入力とし、前記対象装置が有する同期モータの回転数を演算し、前記交流の周波数を出力とする同期モータモデルと、
    前記交流の瞬時電流と、前記瞬時電圧と、前記同期モータモデルから出力された前記周波数とに基づいて、前記交流の1周期において前記対象装置が授受する有効電力を計量する有効電力計量器と、
    を備える有効電力計量装置。
  10. 請求項1から9の何れか一項に記載の有効電力計量装置と、
    前記有効電力の時間的な差分と、前記周波数の時間的な差分とに基づいて、前記対象装置の需給調整力を算出する調整電力量計量器と、
    を備える調整力計量装置。
  11. 前記調整電力量計量器は、前記交流の前記周波数の時間的な差分と、前記周波数の時間的な二階差分と、前記周波数の基準周波数との偏差の荷重和と、前記有効電力の時間的な差分とに基づいて、前記需給調整力を算出する、
    請求項10に記載の調整力計量装置。
  12. 対象装置が電力系統との間で送電または受電する交流の電圧の時系列に基づいて、前記交流の周期と周波数とを推定するステップと、
    前記交流の瞬時電力を、前記交流の周波数の整数倍となる頻度で演算して、前記交流の1周期における前記瞬時電力の離散時間信号を出力するステップと、
    タップ長を前記瞬時電力の演算頻度に一致させたハニング窓を係数とする有限インパルス応答フィルタで前記瞬時電力の離散信号をフィルタリングして、前記対象装置が授受する有効電力を計量するステップと、
    を有する計量方法。
  13. 対象装置が電力系統との間で送電または受電する交流の電圧の時系列に基づいて、前記交流の周期と周波数とを推定するステップと、
    前記交流の瞬時電力を、前記交流の周波数の整数倍となる頻度で演算して、前記交流の1周期における前記瞬時電力の離散時間信号を出力するステップと、
    タップ長を前記瞬時電力の演算頻度に一致させたハニング窓を係数とする有限インパルス応答フィルタで前記瞬時電力の離散信号をフィルタリングして、前記対象装置が授受する授受される有効電力を計量するステップと、
    を有効電力計量装置に実行させるプログラム。
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