JP2023162735A - 合成スラブの施工方法及び合成スラブ - Google Patents
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Abstract
【課題】木質板とコンクリートとを一体化した合成スラブの施工性を向上させる。【解決手段】合成スラブ100の施工方法は、木質板110にむくりを形成するむくり形成工程と、むくりが形成された木質板110を梁10間に掛け渡して設置する木質板設置工程と、木質板110の上にデッキプレート120を載せてデッキプレート120を梁10間に掛け渡して設置するデッキプレート設置工程と、木質板110とデッキプレート120とをデッキプレート120の上からビス90で締結する締結工程と、デッキプレート120の上にコンクリートを打設する打設工程と、を備えている。【選択図】図5
Description
本発明は、合成スラブの施工方法及び合成スラブに関する。
特許文献1には、合成床版に於ける鉄筋トラスと型枠との接合方法に関する技術が開示されている。この先行技術では、鉄筋トラスには、予めむくりが設けられている。
特許文献2には、吸湿時における垂れ下がりを防止した鉱物質繊維板製天井材に関する技術が開示されている。この先行技術では、鉱物質繊維板製天井材は、上下二層の鉱物質繊維層を層着一体化して成っている。上層の鉱物質繊維層の吸湿線膨張率を下層の鉱物質繊維層の吸湿線膨張率よりも大きく形成して吸湿時に中央部が上方に反りを生じるように形成されている。
特許文献3には、裏溝加工を施してある化粧合板の裏面にクッション材を積層させる床材の製造方法に関する技術が開示されている。この先行技術では、裏溝を施してある化粧合板の裏面に、吸水により膨張させた吸水シートを挟む状態で接着剤によりクッション材を積層させ、その後に乾燥により吸水シートを収縮させている。
特許文献4には、建築物のコンクリートスラブの型枠に関する技術が開示されている。この先行技術では、コンクリートスラブの型枠は、木製の板と、木製の板上に配置された又は複数のデッキプレートと、デッキプレート上に配置された複数列の鉄筋付きトラスとを備えている。
木質板とコンクリートとを一体化した合成スラブが知られている。しかし、木質板は梁に掛け渡すと自重で撓むため、施工時に撓みを矯正する必要がある等、施工に手間がかかることが多く、改善の余地がある。
本発明の目的は、上記事実を鑑み、木質板とコンクリートとを一体化した合成スラブの施工性を向上することである。
第一態様は、木質板にむくりを形成するむくり形成工程と、むくりが形成された前記木質板を梁間に掛け渡して設置する木質板設置工程と、前記木質板の上にデッキプレートを載せて前記デッキプレートを前記梁間に掛け渡して設置するデッキプレート設置工程と、前記木質板と前記デッキプレートとを前記デッキプレートの上からビスで締結する締結工程と、前記デッキプレートの上にコンクリートを打設する打設工程と、を備えた合成スラブの施工方法である。
第一態様の合成スラブの施工方法では、梁間に掛け渡された木質板の上に載せられたデッキプレートの上にコンクリートを打設するので、木質板の上にコンクリートを打設する場合と比較し、木質板の防水処理等が不要又は簡易になるので、施工が容易である。
また、木質板にはむくりが形成されているので、木質板の自重により上面側が凹状に撓まない又は撓みが小さい。よって、木質板とデッキプレートとの隙間がなくなる又は殆どなくなり、デッキプレートの上からビスで容易に木質板に締結できるので、施工が容易である。
第二態様は、前記むくり形成工程は、前記木質板の一方の面に塗料を塗布して塗膜を形成する塗膜形成工程と、一方の面に前記塗膜が形成された前記木質板を放置し、前記木質板にむくりを形成する放置工程と、を有する、第一態様に記載の合成スラブの施工方法である。
第二態様の合成スラブの施工方法は、木質板の一方の面に塗料を塗布して塗膜を形成して放置することで、塗膜の反対の面から吸湿して膨張し、木質板にむくりが形成されるので、機械的に木質板にむくりを形成する場合と比較し、施工が容易である。
第三態様は、梁間に掛け渡たされた木質板と、前記木質板の上に載せられて前記梁間に掛け渡され、前記木質板とビスで締結されたデッキプレートと、前記デッキプレートの上に設けられたコンクリート部と、前記木質板の下面に形成された塗膜と、を備えた合成スラブである。
第三態様の合成スラブでは、梁間に掛け渡された木質板の上に載せられたデッキプレートの上にコンクリート部を設けるので、木質板の上に直接コンクリート部を設ける場合と比較し、木質板の防水処理等が不要又は簡易になるので、施工が容易である。
また、木質板の下面には塗膜が形成されているので、木質板の上面が吸湿して膨張し、木質板にはむくりを生じる方向に力が作用する。よって、合成スラブの自重等による撓みが抑制される。
本発明によれば、木質板とコンクリートとを一体化した合成スラブの施工性を向上することができる。
<実施形態>
本発明の一実施形態の合成スラブ及び合成スラブの施工方法について説明する。なお、水平方向の直交する二方向をX方向及びY方向とし、それぞれ矢印X及び矢印Yで示す。X方向及びY方向と直交する鉛直方向をZ方向として、矢印Zで示す。
本発明の一実施形態の合成スラブ及び合成スラブの施工方法について説明する。なお、水平方向の直交する二方向をX方向及びY方向とし、それぞれ矢印X及び矢印Yで示す。X方向及びY方向と直交する鉛直方向をZ方向として、矢印Zで示す。
[構造]
まず、本実施形態の合成スラブの構造について説明する。
まず、本実施形態の合成スラブの構造について説明する。
図1、図2及び図3に示すように、建物50を構成する本実施形態の合成スラブ100は、木質板110とデッキプレート120とコンクリート部130とが一体となった構造である。
本実施形態の木質板110は、直交集成材(Cross Laminated Timber(CLT))で構成されているが、これに限定されるものではない。木質板110は、例えば、単板積層材(Laminated Veneer Lumber(LVL))であってもよいし、無垢材であってもよい。
合成スラブ100は、梁10(図1参照)及び梁20(図2参照)に支持されている。梁10(図1参照)及び梁20(図2及び図3参照)は、平面視で格子状に配置され、建物50を構成する図示されていない柱に端部が接合されている。
図1に示す梁10は、Y方向に沿って配置されると共にX方向に間隔をあけて設けられている。図2に示す梁20は、X方向に沿って配置されると共にY方向に間隔をあけて設けられている。図1に示すように、本実施形態の梁10は、上下のフランジ14、16とウエブ12とを有するH形鋼で構成された鉄骨梁である。同様に図2に示すように、本実施形態の梁20は、上下のフランジ24、26とウエブ22とを有するH形鋼で構成された鉄骨梁である。なお、梁10、20は、耐火被覆されている。
図1に示すように、木質板110は、梁10と梁10とに掛け渡されている(図6(A)及び図6(B)も参照)。また、図2に示すように、木質板110は、梁10の梁方向であるY方向に間隔Lをあけて並べられている(図6(A)及び図6(B)も参照)。
図1及び図4に示すように、本実施形態では、H形鋼で構成された梁10の上側のフランジ16とウエブ12とに、L字アングルで構成された支持部材30が接合されている。そして、木質板110の端面110T(図4参照)が、支持部材30に載せ掛けられている。支持部材30は、梁10と同様に耐火被覆されている。なお、図1及び図4に示す支持部材30の構成は一例であって、この構成に限定されるものではない。
図4に示すように、木質板110の端面110Tと梁10の上側のフランジ16との間は若干の隙間が形成されるが、隙間は耐火被覆材32で埋められている。
図1~図4に示すように、木質板110の下面110Lには、塗料M(図1、図2及び図4参照)が塗布され不透水性の塗膜112が形成されている。なお、本実施形態の塗膜112は木質板110の下面110Lと端面110T(図3及び図5(A)参照)に形成され、上面110Uには形成されていない。塗料Mとしては、ニューブリード、GAF、バトン、WG5及びオスモカラー等の透明なものを使用しているが、これに限定されるものではない。また、塗料Mは、水性塗料であってもよいが、乾燥後の塗膜112は不透水性である。なお、本実施形態では、木質板110は、塗膜112以外の防水処理は行っていない。
図1~図4に示すように、梁10及び木質板110の上には、デッキプレート120が載せ掛けられている。本実施形態では、図2及び図6(C)に示すように、デッキプレート120は、隙間なく並べられており、上方から見た場合、木質板110は露出していない。なお、図2及び図3に示すように、本実施形態のデッキプレート120は、上側が開口側の凹状部122と上側が突出側の凸状部124とがY方向に交互に形成された角波型の鋼板材とされているが、これに限定されるものではない。デッキプレート120は、どのような構造のものであってもよい。
そして、デッキプレート120の凹状部122の底部123(図3参照)と木質板110とは、ビス90(図3参照)で締結されている(図1も参照)。なお、本実施形態のビス90は木ねじである。また、図2ではビス90の図示を省略している。
図1~図4に示すように、デッキプレート120の上には、コンクリートが打設されて固化することでコンクリート部130が形成されている。図1に示すように、コンクリート部130には、鉄筋60、62が配筋されている。本実施形態における鉄筋60は主筋で、鉄筋62は配力筋である。なお、図1以外では図が煩雑になるので、鉄筋60、62の図示を省略している。また、配筋する鉄筋は、どのような構成であってもよい、例えば、主筋と配力筋とがトラス筋で支持されている構成であってもよい。
図3に示すように、本実施形態では、吊りボルト70の上端部72がデッキプレート120の凸状部124の上面部125に貫通しナット74で締結されていると共にコンクリート部130に定着されている。吊りボルト70は、木質板110と木質板110との間隔Lを通って吊り下げられている(図2も参照)。この吊りボルト70の下端部には、図示されていない天井板及びTバー等が取り付けられている。
[施工方法]
次に、本実施形態の合成スラブの施工方法の一例について説明する。なお、木質板110の上下面は、梁10に掛け渡した状態で説明する。
次に、本実施形態の合成スラブの施工方法の一例について説明する。なお、木質板110の上下面は、梁10に掛け渡した状態で説明する。
図5(A)に示すように、木質板110の下面110L及び端面110Tに塗料Mを塗布して塗膜112を形成する。木質板110の上面110Uには、塗膜112は形成しない。なお、図5では、判り易くするため塗膜112は、木質板110と間隔をあけ且つ破線で図示している。
図5(B)に示すように、塗膜112が形成された木質板110を一定時間以上、例えば、24時間以上放置する。これより木質板110に塗膜112が形成されていない上面110Uが凸となるむくりが発生する。なお、本実施形態の木質板110のむくりは、2cm~3cm程度であるが、これに限定されるものではない。
ここで、木質板110の塗膜112が形成された面からは吸湿しないが、塗膜112が形成されていない面からは吸湿する。よって、木質板110の塗膜112が形成されていない上面110Uからのみ吸湿するので、上面110U側が吸湿して膨張し、これによりむくりが形成される。
なお、本実施形態の木質板110である直交集成材は、絶乾とされているので、冬場の低温低湿の環境であっても木質板110の塗膜112が形成されていない上面110Uから吸湿して膨張し、むくりが形成される。
図5(C)及び図6(A)に示すように、むくりが形成された木質板110を、クレーン等で梁10に接合された支持部材30に載せ掛け梁10に掛け渡す(図4も参照)。図6(A)に示すように、木質板110は、Y方向に間隔Lをあけて並べる。なお、図5(C)に示すように、本実施形態では、木質板110を梁10に掛け渡すと、木質板110の自重によってむくりは1cm程度になる。
図5(D)、図6(B)及び図6(C)に示すように、梁10及び木質板110の上にデッキプレート120をクレーン等で載せ掛ける。このとき、木質板110にはむくりが形成されているので、デッキプレート120の凹状部122の底部123は木質板110に接触する。なお、本実施形態では、デッキプレート120には、吊りボルト70(図3参照)が取り付けられている。
図5(E)に示すように、デッキプレート120の上から図示されていない作業員がビス90でデッキプレート120と木質板110と締結し一体化する。次に、デッキプレート120の上に、鉄筋60、62(図1参照)を配筋し、コンクリートを打設してコンクリート部130(図1~図3を参照)を形成する。
[作用及び効果]
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
合成スラブ100は、木質板110とデッキプレート120とコンクリート部130とで構成されている。よって、デッキプレート120とコンクリート部130とで構成されている合成スラブと比較し、軽量である。
合成スラブ100では、梁10間に掛け渡された木質板110の上に載せられたデッキプレート120の上にコンクリートを打設してコンクリート部130を形成するので、木質板110の上面110Uに直接コンクリートを打設する場合と比較し、木質板110の上面110Uの防水処理が不要になるため、施工が容易である。なお、仮に木質板110の上面110Uに防水処理が必要であったとしても、上面110Uに直接コンクリートを打設する場合よりも簡易でよいので、施工が容易である。
また、木質板110にはむくりが形成されているので、木質板110の自重による上面110U側が凹状に撓まない。よって、デッキプレート120の凹状部122の底部123は木質板110に接触し隙間がない。したがって、デッキプレート120の上からビス90で容易にデッキプレート120と木質板110とを締結できるので、施工が容易である。なお、木質板110とデッキプレート120との間に隙間があったとしても、その隙間は小さく殆どないので、デッキプレート120の上からビス90で容易に締結できる。
また、木質板110は、下面110L(となる一方の面)に塗料Mを塗布して塗膜1112を形成して放置することで、木質板110にむくりを形成している。よって、機械的に木質板110にむくりを形成する場合と比較し、施工が容易である。
また、合成スラブ100の木質板110の下面110Lに塗膜112が形成されているので、木質板110の上面110U側が吸湿して膨張し、木質板110にはむくりを生じる方向に力が作用する。よって、合成スラブ100の自重等による撓みが抑制される。
ここで、図7に示す比較例の合成スラブ900について説明する。
比較例の合成スラブ900は、木質板110と、断面ハット形状のハット形金物920と、鉄筋960が配筋されたコンクリート部930と、を有して構成されている。ハット形金物920はY方向を長手方向として配置されると共にX方向に間隔をあけて配置され、木質板110とビス90で締結されている。
このように、比較例の合成スラブ900では、コンクリート部930と木質板110とを一体化してせん断力を伝達させるシアキーとして、ハット形金物920を木質板110にビス90で締結している。
これに対して本実施形態の合成スラブ100では、デッキプレート120とコンクリート部130とは一体化しているので、デッキプレート120と木質板110とをビス90で一体化するだけでよい。
また、比較例の合成スラブ900では、木質板110の上面110Uに直接コンクリートを打設するので、木質板110の上面110Uに吸水止めが必要である。
これに対して本実施形態の合成スラブ100では、デッキプレート120の上にコンクリートを打設するので、木質板110の上面110Uには吸水止めが必要無い、或いは仮に吸水止めが必要であっても簡易的なものでよい。
また、比較例の合成スラブ900では、コンクリート部930を構築する際にコンクリートが固化して強度が発現するまでの間、木質板110をトラス形状のビーム材950及び支保工970等で支持する必要がある。
これに対して、本実施形態の合成スラブ100では、木質板110とデッキプレート120とでコンクリート部130を支持するので、支保工970等が必要ない、或いは仮に支保工970等が必要であったとしても設置数を削減することができる。
<その他>
尚、本発明は上記実施形態に限定されない。
尚、本発明は上記実施形態に限定されない。
例えば、上記実施形態では、木質板110は、梁10の梁方向であるY方向に間隔Lをあけて並べられ、間隔Lには吊りボルト70が通っているが、これに限定されるものではない。吊りボルト70は無くてもよい。また、木質板110は、間隔Lをあけずに並べられていてもよい。また、木質板110の下面110Lを天井面としてもよい。
また、例えば、上記実施形態では、木質板110は、下面110Lと端面110Tとに塗料Mを塗布して塗膜112を形成したが、これに限定されるものではない。木質板110の下面110Lにのみ塗料Mを塗布して塗膜112を形成してもよい。また、木質板110にむくりを形成したのち、上面110Uにも塗膜を形成してもよい。
また、例えば、上記実施形態では、木質板110の下面110Lに塗膜112を形成して放置することで、むくりを形成したが、これに限定されるものではない。どのような方法で木質板110にむくりを形成してもよい。例えば、プレス加工等で機械的に木質板110にむくりを形成してもよい。
また、例えば、上記実施形態では、梁10はH形鋼で構成された鉄骨梁であったが、これに限定されるものではない。梁10は、H形鋼以外の鉄骨梁であってもよし、鉄骨梁以外の梁、例えば、鉄筋コンクリート造又は鉄骨鉄筋コンクリート造の梁であってもよい。
更に、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得る。
10 梁
90 ビス
100 合成スラブ
110 木質板
112 塗膜
120 デッキプレート
130 コンクリート部
M 塗料
90 ビス
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Claims (3)
- 木質板にむくりを形成するむくり形成工程と、
むくりが形成された前記木質板を梁間に掛け渡して設置する木質板設置工程と、
前記木質板の上にデッキプレートを載せて前記デッキプレートを前記梁間に掛け渡して設置するデッキプレート設置工程と、
前記木質板と前記デッキプレートとを前記デッキプレートの上からビスで締結する締結工程と、
前記デッキプレートの上にコンクリートを打設する打設工程と、
を備えた合成スラブの施工方法。 - 前記むくり形成工程は、
前記木質板の一方の面に塗料を塗布して塗膜を形成する塗膜形成工程と、
一方の面に前記塗膜が形成された前記木質板を放置し、前記木質板にむくりを形成する放置工程と、
を有する、
請求項1に記載の合成スラブの施工方法。 - 梁間に掛け渡たされた木質板と、
前記木質板の上に載せられて前記梁間に掛け渡され、前記木質板とビスで締結されたデッキプレートと、
前記デッキプレートの上に設けられたコンクリート部と、
前記木質板の下面に形成された塗膜と、
を備えた合成スラブ。
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