JP2023161714A - 脳機能活性化組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】脳機能の低下に起因する症状あるいは疾患の予防又は改善作用を有する従来の組成物よりも更に高い脳機能活性効果を示す組成物を提供する。【解決手段】脳機能活性化組成物が、ホスファチジルイノシトール含有素材と、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸及びアラキドン酸からなる群から選ばれた少なくとも1種とを有効成分として含有する。この脳機能活性化組成物は、好ましくは神経細胞の軸索及び樹状突起の伸長、並びに神経細胞新生作用を有する。【選択図】なし

Description

本発明は、脳機能活性化組成物に関する。
ホスファチジルイノシトール(以下、「PI」と略する場合がある。)は、ヒトをはじめとする真核生物の細胞膜を構成しているリン脂質である。ホスファチジルイノシトールは、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン等の他の細胞膜構成リン脂質同様、細胞内外の情報伝達機能に深く関わっていることが知られている。近年、脳内のPIとその関連リン脂質の含有量が加齢とともに減少することから、これらの脳内物質が、成人後の脳の構成と機能性に関して重要な役割を担うものと考えられている。特許文献1には、PIを有効成分として含有する経口用記憶学習能力改善用組成物が開示されている。
アラキドン酸(以下、「AA」と略する場合がある。)は、n-6系不飽和脂肪酸の一種で、体内ではリノール酸からγ-リノレン酸、ジ・ホモγ-リノレン酸を経て生合成され、細胞膜を構成する主要な成分のひとつで、脳、肝臓、皮膚等のあらゆる組織に存在する。アラキドン酸は乳児の脳と体の発達には欠かせない成分で、特に1歳未満の乳児では、体内でアラキドン酸を合成する力が弱いため、粉ミルク等にアラキドン酸を添加したものが販売されている。さらにアラキドン酸は、脳の神経細胞の主要成分であり、学習力と記憶力を向上させる効果がある。特許文献2には、アラキドン酸及び/又はアラキドン酸を構成脂肪酸とする化合物を含んで成る、脳機能の低下に起因する症状あるいは疾患の予防又は改善作用を有する組成物が開示されている。また、特許文献3には、アラキドン酸及び/又はアラキドン酸を構成脂肪酸とする化合物を有効成分として含有して成る神経再生剤が開示されている。
エイコサペンタエン酸(以下、「EPA」と略する場合がある。)は体内で合成されない必須脂肪酸の1つである。ドコサヘキサエン酸(以下、「DHA」と略する場合がある。)も体内でほぼ合成されない必須脂肪酸の1つである。体内でEPAからDHAに変換されるが、その変換率は低い。DHAは脳を中心とした神経組織にとても多く含まれ、n-3系脂肪酸の中で血液脳関門を通過できる唯一の脂肪酸である。特許文献4には、EPA、DHA等のn-3系脂肪酸を含む脂質を含有する、末梢神経障害の予防又は改善用組成物が開示されている。
国際公開第2021/039385号 特開2012-036214号公報 特開2014-058579号公報 特開2019-182881号公報
近年、特許文献2に開示されている、脳機能の低下に起因する症状あるいは疾患の予防又は改善作用を有する組成物よりも更に高い脳機能活性効果を示す組成物が希求されていたが、そのような組成物は提供されていなかった。本発明が解決しようとする課題は、従来の組成物よりも更に高い脳機能活性効果を示す組成物を提供することである。
本発明者らは上記課題に鑑み検討を重ね、ホスファチジルイノシトール含有素材と、EPA、DHA及びAAからなる群から選ばれた少なくとも1種とを有効成分として含有する組成物が、従来の組成物よりも更に高い脳機能活性効果を示すことを見出した。本発明はこれらの知見に基づき完成されるに至ったものである。
本発明は、ホスファチジルイノシトール含有素材と、EPA、DHA及びAAからなる群から選ばれた少なくとも1種とを有効成分として含有する脳機能活性化組成物である。
前記脳機能活性化組成物は、好ましくは神経細胞の軸索及び樹状突起の伸長、並びに神経細胞新生作用を有する。
前記脳機能活性化組成物は、好ましくはホスファチジルイノシトール含有素材と、アラキドン酸とを有効成分として含有する。
前記ホスファチジルイノシトール含有素材は、好ましくは大豆由来である。
前記ホスファチジルイノシトール含有素材は、好ましくは大豆リン脂質の酵素処理物であって、ホスファチジルイノシトールの含有量が40質量%以上であり、且つ、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、及びホスファチジン酸からなる群からなる群から選ばれた少なくとも1種のリン脂質を含む。
さらに前記脳機能活性化組成物は、好ましくは飲食品、食品添加物、医薬品、サプリメント、又は動物飼料の形態である。
本発明の脳機能活性化組成物は、従来の組成物よりも更に高い脳機能活性効果を示す組成物を提供する。
PI、脂肪酸、若しくはPI及び脂肪酸を含む培地で培養された細胞の軸索及び樹状突起の伸長を示す顕微鏡写真。 PI、脂肪酸、若しくはPI及び脂肪酸を含む培地で培養された細胞から抽出された全タンパク質の含有量を示すグラフ。 PI、脂肪酸、若しくはPI及び脂肪酸を含む培地で培養された細胞の細胞新生を示すグラフ。
本発明について更に詳細に説明する。
<ホスファチジルイノシトール含有素材>
PIは細胞外からのシグナルが細胞膜中の特異的受容体に結合することにより遊離される情報伝達物質の前駆体であるホルモン、神経伝達物質、光などの刺激が細胞膜のレセプターに結合することにより、ホスホリパーゼC(PLC)が働き、膜の微量成分であるホスファチジルイノシトール-4,5-ニリン酸(PIP2)のグリセロールとリン酸の間のエステル結合を切断し、イノシトール-1,4,5-三リン酸とジアシルグリセロールを産生する。イノシトール-1,4,5-三リン酸は細胞内小胞体に蓄えられているCa2+を遊離させ、Ca2+依存性酵素を活性化する。また、ジアシルグリセロールはCa2+依存性プロテインキナーゼCを活性化させる。このような生体情報伝達に関わるPIは、一般にそのグリセロール骨格のsn-2位に高度不飽和脂肪酸、特にAAが結合しているものであることが知られている。また、脳内に存在するPIは転写因子のNrf2 ( Nuclear factor-erythroid 2-related factor 2)を介して細胞の抗酸化システムを活性化するため、脳内に取り込まれた脂肪酸を酸化ストレスから保護し、安定性を高める機能が期待される。
本発明に用いるホスファチジルイノシトールとしては、天然物由来であってよく、合成のものであってもよい。飲食品等の形態で提供するためには、天然物由来であることが好ましい。例えば、国際公開第2007/010892号には、大豆等の天然物に由来する粗製リン脂質を、微生物由来酵素(ホスホリパーゼ)で処理して、ホスファチジルイノシトール以外のリン脂質の分解及び除去により、ホスファチジルイノシトールの含有量を高めたホスファチジルイノシトール含有素材の調製が記載されている。したがって、このような公知の方法又はこれに準じた方法により、天然物由来のホスファチジルイノシトール含有素材を調製して、本発明の脳機能活性組成物に用いることができる。あるいは、市販のホスファチジルイノシトール含有素材を利用してもよい。なお、ホスファチジルイノシトールは、イノシトール環を有するリン脂質の総称であり、例えば天然には7種類程度が知られている。使用できるホスファチジルイノシトールとしては、特にその種類に制限はなく、また、複数種類の混合物ないしは組み合わせであってもよい。また、ホスファチジルイノシトールの量的な特定は、検知し得る各種類の1又は複数の総量として取り扱うことができる。
天然物由来のホスファチジルイノシトール含有素材を用いる場合には、その基原等に特に制限はない。例えば、大豆由来のリン脂質、コーン由来のリン脂質、ヒマワリ由来のリン脂質、アブラナ由来のリン脂質、牛由来のリン脂質等を使用することができるが、原料リン脂質の安定供給の面で大豆由来のリン脂質、ヒマワリ由来のリン脂質が好ましく、大豆由来のリン脂質がより好ましい。
大豆等の天然物からホスファチジルイノシトール含有素材を調製して用いる場合、例えばホスファチジルイノシトールの含有量(純度)が20質量%以上に高められた素材を用いることが好ましく、30質量%以上に高められた素材を用いることがより好ましく、40質量%以上に高められた素材を用いることが更に好ましく、50質量%以上に高められた素材を用いることが特に好ましい。あるいは、ホスファチジルイノシトール以外の他のリン脂質の合計の含有量としては、例えば、40質量%以下の素材を用いることが好ましく、30質量%以下の素材を用いることがより好ましく、20質量%以下の素材を用いることが更に好ましい。
前記ホスファチジルイノシトール含有素材は大豆リン脂質の酵素処理物であってよい。この場合、前記ホスファチジルイノシトール含有素材は、ホスファチジルイノシトールの含有量が40質量%以上であり、且つ、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、及びホスファチジン酸からなる群からなる群から選ばれた少なくとも1種のリン脂質を含むことが好ましい。
ここで、リン脂質含有量は、当業者に周知の方法で測定することができる。特に測定方法としては日本油化学協会制定の測定法として定められている高速液体クロマトグラフィーによるリン脂質組成の定量分析を行うことが望ましい。例えば、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸等の特定のリン脂質について、それらの濃度の知れた標準品を指標試料に用いた、HPLC定量分析等により測定することができる。また、近年では31P-NMRを用いたリン脂質の定量分析を行うこともできる。
<脂肪酸>
本発明に用いるEPA、DHA及びAAとしては、天然物由来であってよく、合成のものであってもよい。これらの脂肪酸は市販されている。添加する脂肪酸は遊離脂肪酸以外に、消化管内でリパーゼ、ホスホリパーゼなどの酵素によって加水分解を受けて遊離脂肪酸を産生する分子構造が対象となる。対象となる分子構造はアシルグリセリド(トリアシルグリセロール、ジアシルグリセロール、モノアシルグリセロール)、脂肪酸エステル(エチルエステル)、sn-2位脂肪酸エステル化グリセロリン脂質にコリンが結合したホシファチジルコリンおよびリゾホシファチジルコリンとホスファチジルセリン、ステロールエステル体などがある。また、前記脂肪酸は精製形態を含んでいても、粗抽出物形態を含んでいてもよい。
前述の通り、DHAは正常な脳の発達と認知機能に必須の脂肪酸であり、脳リン脂質に豊富に存在している。脳リン脂質の主要脂肪酸であるにも関わらずDHAの脳内での新生合成はわずかである。そのため、DHAは血液より脳血液関門(BBB)を通過して脳内に運び込まれる必要がある。脳内へのDHA取り込み用の主要な輸送体として、既報のオーファン輸送体でメジャーファシリテーター・スーパーファミリー(Major Facilitator Super family:MFS;膜貫通領域を12個~14個持つという構造的共通点を持つ膜輸送体)のメンバーであるMFS領域含有蛋白質2a(MFS domain-containing protein 2a:Mfsd2a)が報告されている(Christer Betsholtz,Nature, 2014年, 509号, p. 432-433)。Mfsd2aは中枢神経系の脳毛細血管内皮細胞(BBBの本体)含有血管壁の内皮に選択的及び独占的に発現していることが見出されている。DHAはリゾホスファチジルコリン体としてMfsd2aで輸送されてBBBを通過して脳実質に取り込まれる。
つまり、DHAはPIによって培養神経芽細胞腫に取り込み易い分子形態に改変され、PIがDHAのBBB輸送のキャリアー輸送体となることによりBBB通過性が高まると推測される。
また、軸索の伸長は神経細胞の細胞体による栄養物質(DHA)輸送によって賄われているが、その神経細胞のDHAはキャリアー輸送体によりBBBを経由して全てグリア細胞より補給されている。軸索を取り囲むミエリン鞘はDHA含量が非常に高いことから、DHAの取り込みをPIが促進することによりミエリン鞘や軸索の発達に貢献すると推測される。
DHAの由来は特に制限がなく、寒冷水の魚の魚油、マグロ油(26質量%)、イワシ油(13質量%)、オキアミ油(10質量%)、タラ油、ニシン油、サバ油、サケ油、マグロ眼窩油、イクラ油(リン脂質70質量%の内DHAは20~30質量%、トリアシルグリセロール30質量%の内DHAは20質量%)、微細藻類による植物性DHA油、DHA摂取蓄積鶏卵油、微細藻類(ユーグレナ藻)、食用藍藻スピルリナ、ラビリンチュラ、シゾキトリウム(Shizochytrium sp.)由来の藻類DHA油等が挙げられる。
EPAは上述の魚油のDHAと併存しており、両者はクロマトグラフィーで分離される。EPAもDHAの菌体油脂を生産する糸状菌モルティエレラ属アルピン1S-4 Mu48の菌株を培養で生産が可能である。
Mortriella sp.以外の菌株の、Phyium sp.、Saprolegnie diclina、Phyium irregulare、Shewnella purefaciens、又はEnglena gracilisを培養した菌体油脂も対象となる。EPAは脳内に取り込まれないと考えられているが、EPAは赤血球の変形能を改善することが知られているので、BBBの本体である脳毛細血管を通過する赤血球から脳への酸素供給能を向上させることが期待される。
n-3脂肪酸含有精製油脂(例えば精製魚油、精製藻類油)は市販されており、例えば日油株式会社製サンオメガDHA27、不二製油株式会社製DHA/EPA高含有組成物、日本水産株式会社製DDオイル、BASF社製DHAアルガオイルを使用することができる。
AAは豚レバー、牛レバー、鶏ハツ、豚バラ肉、鶏モモ、肉、卵黄油、母乳脂に存在する。AAの好ましい起源は、土壌より分離した接合菌類かび目の糸状菌モルティエレラ属アルピン1S-4の菌株を培養することに由来するAA含有油脂である。その他にはペニシリウム属、クラドスポリウム属、ムコール属、フザリウム属、ホルモデンドラス属、アスペルギルス属、ロードトルラ属が発酵で産生する菌体油脂も挙げられる。
脳内に取り込まれる血漿中のAAは18mg/日で、脳内におけるAAの半減期は147日である。AAは細胞膜にある脂肪酸トランスポーターと脂肪酸結合蛋白質により脳内に取り込まれると考えられている。脳内ではAA生合成が活発でないが、その一方でAAが結合しているアナンダマイド、sn-2アラキドニルグリセロール、sn-2AA結合リン脂質が豊富に存在することから、AAの脳内移行が推測されている。
<脳機能活性化>
本発明において、脳機能活性化作用は、神経細胞の軸索及び樹状突起の伸長、及び神経細胞新生作用を少なくとも含む。神経細胞の軸索及び樹状突起の伸長、及び神経細胞新生作用により、脳機能が活性化され、脳機能の低下に起因する症状あるいは疾患の予防又は改善作用、より具体的には、記憶及び学習能力の低下、認知能力の低下、感情障害(例えば、うつ病など)、知的障害(例えば、アルツハイマー型認知障害、脳血管性認知障害)の予防・改善、物忘れ予防、ボケ予防、記憶力の維持及び向上、集中力の維持及び向上、注意力の維持及び向上、学習機能の向上などの効果が期待される。
<軸索及び樹状突起の伸長>
神経ネットワークの構成単位である神経細胞は高度に分化した細胞であり、情報の出力を担う軸索と入力を担う樹状突起という2種類の神経突起を持つ。
神経細胞は1本の軸索と複数本の樹状突起を伸ばし、標的細胞と接続することで情報のやり取りを行う。
軸索と次のニューロンの樹状突起の間には隙間があり、電気信号が軸索の終末部(シナプス前部)に到達すると、終末部から神経伝達物質が放出される。
この神経伝達物質が、次のニューロンの樹状突起や樹状突起上の棘突起(シナプス後部)に存在する受容体に結合することにより、再び電気信号に変換される。
大脳皮質で起きる変化の中心はシナプスであることが報告されている(Kleim et al. 2002)。大脳皮質の厚みやシナプス密度はほとんど差がないが、1個の神経細胞あたりのシナプスの数が増加する。つまり、シナプスで起きる変化は、このシナプスの数の増加(側枝形成)とスパイン(樹状突起棘)の変化によると考えられる。なかでもグルタミン酸作動性シナプスの多くは樹状突起スパインという小突起構造上に形成される。
シナプスでは、信号伝達が長期間にわたって起こりやすくなる長期増強と、逆に信号伝達が起きにくくなる長期抑圧が起こり、その結果、学習と忘却が起こる(シナプス可塑性)。スパインは興奮性神経細胞の接続部の大部分を形成するため、スパインが新しく形成されたり、またその大きさが変化したりすることにより、どの脳神経回路にどの程度の電気信号が流れるかが大きく左右される。よって、樹状突起や軸索が伸長することでスパイン形成も促進すると考えられる。
<細胞新生>
以前、脳神経細胞は一度死ぬと再生しないと考えられてきたが、1990年代に入り脳内でも神経細胞が新生していることが明らかになった。なかでも脳内にある海馬の歯状回では、正常な脳でも神経細胞の新生が毎日起こっていることがわかってきている(Ming & Song, Annual Review of Neuroscience, 2005; Zhao et al., Cell, 2008)。一度海馬内で形成された学習と記憶は、徐々に大脳新皮質に移行し、その後はその学習と記憶の内容を想起する際には海馬を必要としなくなる(記憶固定)。
なお、神経細胞の新生は運動や記憶課題のような神経系の活動の程度に依存して増減する。しかしながら加齢とともに神経幹細胞数は減少し、記憶学習能力が低下することが分かっている。
細胞新生による効果として、(1)新たに学習と記憶を習得し、形成する際に新生した神経細胞が既存の神経ネットワークに組み込まれ、より多くの情報を保持し、処理できるようになる、(2)大脳皮質に記憶固定が起これば、当該記憶は海馬の中に存在している必要はないと考えられ、新生した神経細胞が過去の記憶とは別のメモリとなり、新たな学習と記憶をしやすくしているなどが考えられている。
実際に、成体の海馬神経新生が増加したマウスは、正常な物体認識、空間学習、恐怖条件付けなどを示し、自発的な運動と組み合わせると、探索行動が活発になると報告されている(Sahay et al., Nature, 2011; Stone et al., Journal of Neuroscience, 2011)。
<組成物の形態>
本発明にかかる組成物は、適当な添加物や製剤的素材等ととともに、例えば、飲食品、食品添加物、医薬品、サプリメント、動物飼料の等の形態に調製してもよい。
典型的に、飲食品の形態としては、例えば、ゼリー、プリン、グミ、ガム、チョコレート、クッキー、キャンデー等の菓子類、パン類、食用油類、マヨネーズ、ドレッシング、バター、クリーム、マーガリン等の油脂食品類、ケチャップ、ソース等の調味料類、牛乳、ヨーグルト、チーズ等の乳製品類、うどん、そば、ラーメン、パスタ、やきそば、きしめん、そーめん、ひやむぎ、ビーフン等の麺類、味噌汁、コーンスープ、コンソメスープ等のスープ類、お茶、炭酸飲料、乳酸飲料、スポーツ飲料等の飲料類、流動食、ふりかけ等の形態が挙げられる。
また、典型的に、サプリメント及び医薬品の形態としては、例えば散剤、顆粒剤、ソフトカプセル、ハードカプセル、錠剤、チュアブル錠、速崩錠、シロップ、液剤等の形態が挙げられる。
ホスファチジルイノシトールは、リポソームの形態をとってもよい、すなわち、リポソームの脂質二重膜の構成脂質となり得る。リポソーム化することで、経口摂取したとき腸管等からの吸収率が高められる。吸収率を高める手段としてはリポソームの形態のほかに、乳化あるいはマイクロ乳化等を行ってもよい。
本発明の脳機能活性化組成物の好ましい投与量としては、被投与者又は被投与動物の年齢、健康状態、投与継続期間、投与頻度などによって、適宜決定することができる。一般的な投与量を例示すれば、例えば、ホスファチジルイノシトールにして2.0~3000.0mg/kg(体重)/1日、EPAにして10~30mg/kg(体重)/1日、DHAにして10~20mg/kg(体重)/1日、AAにして3~20mg/kg(体重)/1日の量で投与することができる。2020年の日本人の食事摂取基準によれば、n-3系脂肪酸の摂取量は0.7~2.2g/日、n-6系脂肪酸の摂取量は4~13g/日とされている。臨床投与試験では、健常高齢者には0.5~1.7g/日、軽度認知障害者には0.2~1.7g/日で記憶改善効果があったという報告もある。n-3系脂肪酸は3g以上/日で凝血能低下による出血傾向があらわれた例も報告されている。なお、EPAのエチルエステルが抗動脈硬化の治療薬として使用される場合は、投与量1800mg/日と指定されている。
また、所定期間にわたって継続的に摂取するように用いられてもよく、例えば1ヶ月以上にわたって継続的に摂取するように用いられることも可能である。なお、ホスファチジルイノシトールを50質量%以上高含有する素材を用いてin vitroの変異原性試験とラットを用いた単回及び90日間の反復投与試験において安全性が確認されており、ラットにおける単回投与によるLD50値は、2,000mg/kg(体重)/1日の量以上であると報告されている(Honda et al., The Journal of Toxicological Sciences, 2009年, 34巻3号, p. 265-280)。
本発明の脳機能活性化組成物に含まれる、ホスファチジルイノシトール、EPA、DHA及びAAのそれぞれの含有量は、特に限定されないが、1日当たりに無理なく摂取できる量で、各成分が上記有効投与量となるように調整された含有量であることが好ましい。例えば、本発明の脳機能活性化組成物中の固形分換算で、ホスファチジルイノシトールの含有量は20~60質量%が好ましく、40~60質量%がより好ましい。また、EPAの含有量は5~80質量%が好ましく、60~80質量%がより好ましい。また、DHAの含有量は5~80質量%が好ましく、60~80質量%がより好ましい。更に、AAの含有量は10~80質量%が好ましく、60~80質量%がより好ましい。本発明の脳機能活性化組成物が、EPA、DHA及びAAからなる群から選ばれた2種又は3種の脂肪酸を含む場合、これらの脂肪酸の含有量は、好ましくは、本発明の脳機能活性化組成物中の固形分換算で20質量%以上、より好ましくは70質量%以上である。
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例及び比較例において、各種物性は以下のとおりに測定ないし算出された。
<Neuro2a細胞のプレーティング>
Neuro2a細胞(脳組織から分離されたニューロン及びアメーバ幹細胞の形態を備えたマウス神経芽細胞であり、微小管タンパク質のビンブラスチン沈殿のメカニズム、単離されたタンパク質へのGTP結合の動態、in vivoでの微小管の代謝回転、及び微小管タンパク質の合成と集合に関する研究に使用されてきた。)を、24ウェルプレート(AGCテクノグラス株式会社製IWAKIマイクロプレート 24well/Flat Bottom)、カルチャースライド8ウェル(Corning社製BioCoat(登録商標))、96ウェルプレート(Colorimetric)の各ウェルの細胞培養液(E-MEM)中に1.0×105細胞/300μlとなるようにプレーティングした。
<軸索染色>
上記プレーティングされたNeuro2a細胞がカルチャースライド8ウェルに付着した24時間後、ソイブレイン(登録商標)PI50(ユニテックフーズ株式会社製、ホスファチジルイノシトール含有量が50質量%以上)、DHA、EPA、及びAA(これら3つの脂肪酸は東京化成工業株式会社製)それぞれを、図1に示す濃度及び組み合わせとなるようにエタノールに溶解させ、各細胞培養液に添加し、24時間培養を続けた。その後PBSにて洗浄後、0.3質量%過酸化水素加メタノールを用いて内因性ペルオキシダーゼの阻害を行った。ニチレイ抗原賦活化液(pH9)を使用し、抗原賦活化(スチームクッカーを使用)後、2.5質量%Normal Horse Serumにてブロッキングを行った。その後、1次抗体としては抗rabbit Myelin Basic Protein抗体(Cell Signaling社製)、抗mouse Neurofilament-H抗体(Cell Signaling社製)、2次抗体としてImmPRESS Horse Anti-Rabbit IgG Polymer Kit(VECTOR LABORATORIES社製)とImmPRESS Horse Anti-mouse IgG Polymer Kit(VECTOR LABORATORIES社製)を使用し反応させた後、最後にDABで発色させた。結果を図1に示す。図1(a)~(e)と(f)~(h)を比較すると、PIと、EPA、DHA及びAAからなる群から選ばれた少なくとも1種との組み合わせを含む培地で培養されたNeuro2a細胞の樹状突起及び軸索は、エタノール、PI、EPA、DHA、AAそれぞれを含む培地で培養されたNeuro2a細胞の樹状突起及び軸索より伸長したことが確認された。
<タンパク質の濃度>
上記プレーティングされたNeuro2a細胞が24ウェルプレートに付着した24時間後、ソイブレイン(登録商標)PI50(ユニテックフーズ株式会社製、ホスファチジルイノシトール含有量が50質量%以上)、DHA、EPA、及びAA(これら3つの脂肪酸は東京化成工業株式会社製)それぞれを、図1に示す濃度及び組み合わせとなるようにエタノールに溶解させ、各細胞培養液に添加し、72時間培養を続けた。その後0.25質量%トリプシン/PBSを少量(φ50mmディッシュ:0.5ml、φ35mmディッシュ:0.2ml程度)加え、37℃で約5分間程度培養した。その後光学顕微鏡で培養された細胞が剥がれたことを確認し、血清入り培地を加えトリプシンの活性を止めた。次いでピペッティングで培養された細胞をプレートから剥がし、各細胞浮遊液を各遠心チューブに移し、各遠心チューブ1300rpm、室温で5分間遠心分離し、上液を吸引除去した。PBSを加え遠心分離を2回程度行った後、Thermo Scientific社製T-per(Protein Extraction Reagent)を用いて細胞を溶解し、全タンパク質を抽出した。抽出された全タンパク質の濃度を、Unchained Labs社製LUNATICを用いて専用チップのキャピラリー中で測定した。当該濃度が大きいほど、神経細胞の樹状突起及び軸索が伸長したことを示す。結果を図2に示す。
図2の左側の4本のバーが示す通り、0.1mg/mlのPI及び30μMのDHAを含む培地で培養されたNeuro2a細胞から抽出された全タンパク質の濃度は、エタノール、0.1mg/mlのPI、30μMのDHAそれぞれを含む培地で培養されたNeuro2a細胞から抽出された全タンパク質の濃度より高かった。すなわちPI及びDHAを含む培地で培養されたNeuro2a細胞の樹状突起及び軸索は、エタノール、PI、DHAそれぞれを含む培地で培養されたNeuro2a細胞の樹状突起及び軸索より伸長したことが確認された。
また、図2の中央の4本のバーが示す通り、PI及びEPAを含む培地で培養されたNeuro2a細胞の樹状突起及び軸索は、エタノール、PI、EPAそれぞれを含む培地で培養されたNeuro2a細胞の樹状突起及び軸索より伸長したことが確認された。
さらに、図2の右側の4本のバーが示す通り、PI及びAAを含む培地で培養されたNeuro2a細胞の樹状突起及び軸索は、エタノール、PI、AAそれぞれを含む培地で培養されたNeuro2a細胞の樹状突起及び軸索より伸長したことが確認された。
上記される通り、神経細胞の樹状突起及び軸索が伸長に対する、PIと上記3つの脂肪酸のいずれか1つの併用による相乗効果が示された。
<細胞新生>
上記プレーティングされたNeuro2a細胞が96ウェルプレートに付着した24時間後、大豆リン脂質の酵素処理物であるソイブレイン(登録商標)PI50(ユニテックフーズ株式会社製、ホスファチジルイノシトール含有量が50質量%以上)、DHA、EPA、及びAA(これら3つの脂肪酸は東京化成工業株式会社製)それぞれを、表2に示す濃度と組み合わせとなるようにエタノールに溶解させ、各細胞培養液に添加し、24時間培養を続けた。その後BrdU Cell Proliferation ELISA Kit(Abcam社製ab126556)にて処理を行った後、450/550nmの2波長に設定した分光光度計付きマイクロタイタープレートリーダー(iMark社製BIO RAD)を用いてプレートを読み取った。結果を図3に示す。
0.1mg/mlのPI並びに30μMのDHA、EPA又はAAを含む培地で培養されたNeuro2a細胞の細胞新生(図3の右側の3本のバー)は、コントロール培地、0.1mg/mlのPIを含む培地、30μMのDHAを含む培地、30μMのEPAを含む培地、30μMのAAを含む培地それぞれで培養されたNeuro2a細胞の細胞新生(図3の左側の5本のバー)より多かった。特にPI及びAAを含む培地で培養されたNeuro2a細胞の細胞新生は多かった。
上記される通り、神経細胞の細胞新生に対する、PIと上記3つの脂肪酸のいずれか1つの併用による相乗効果が示された。特にPIとAAの併用が最も高い値を示した。前述の通り、一般的に神経系細胞にはPIにAAが多く結合していることから、併用添加により細胞内でAA-PIの産生が促進され、BrdU陽性細胞が増加し、神経新生が促進されたと考えられる。
前述のようにDHAなどは遊離脂肪酸の状態ではBBBの通過性が悪く、AAも専用の輸送体が見出されていない。よって、PIと組み合わせることにより短期にこれらの脂肪酸の脳への取り込みを促進できると考えられる。

Claims (6)

  1. ホスファチジルイノシトール含有素材と、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸及びアラキドン酸からなる群から選ばれた少なくとも1種とを有効成分として含有することを特徴とする脳機能活性化組成物。
  2. 神経細胞の軸索及び樹状突起の伸長、並びに神経細胞新生作用を有する、請求項1記載の脳機能活性化組成物。
  3. ホスファチジルイノシトール含有素材と、アラキドン酸とを有効成分として含有する、請求項1記載の脳機能活性化組成物。
  4. 前記ホスファチジルイノシトール含有素材は、大豆由来である、請求項1記載の脳機能活性化組成物。
  5. 前記ホスファチジルイノシトール含有素材は、大豆リン脂質の酵素処理物であって、ホスファチジルイノシトールの含有量が40質量%以上であり、且つ、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、及びホスファチジン酸からなる群からなる群から選ばれた少なくとも1種のリン脂質を含む該素材である、請求項1記載の脳機能活性化組成物。
  6. 飲食品、食品添加物、医薬品、サプリメント、又は動物飼料の形態である、請求項1~5のいずれか1つに記載の脳機能活性化組成物。
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