JP2023161418A - 積層シート、積層シートロール、剥離フィルムおよび積層シートの加工方法 - Google Patents

積層シート、積層シートロール、剥離フィルムおよび積層シートの加工方法 Download PDF

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Abstract

【課題】粘着面に剥離フィルムが積層された積層シートであって、熱成形性がよく、あらかじめ熱成形した後に上記剥離フィルムを剥がして上記粘着面を被着体に貼り付ける態様での使用に適し、かつ良好な外観を付与し得る積層シートを提供する。【解決手段】シート形状の粘着体と、上記粘着体の第一面に積層している第一フィルムと、上記粘着体の第二面に積層している第二フィルムと、を含む積層シートが提供される。上記第二フィルムは、樹脂フィルムおよび該樹脂フィルムの少なくとも上記粘着体側の表面に設けられた剥離処理層を含み、かつ次の条件:85℃におけるヤング率が500MPa以上である;および、120℃におけるヤング率が500MPa以下である;を満たす剥離フィルムである。また、上記粘着体の上記第二面の最大高さRzが1000nm以下である。【選択図】図1

Description

本発明は、剥離フィルム、該剥離フィルムを含む積層シート、該積層シートが巻回されたロールおよび該積層シートの加工方法に関する。
一般に粘着剤(感圧接着剤ともいう。以下同じ。)は、室温付近の温度域において柔らかい固体(粘弾性体)の状態を呈し、圧力により簡単に被着体に接着する性質を有する。かかる性質を活かして、粘着剤は、典型的には該粘着剤の層を含む粘着シートの形態で、家電製品から自動車、OA機器等の各種産業分野において広く利用されている。
粘着シートは、用途によっては非平面形状(三次元形状)の被着体表面に貼り付けられる。特許文献1は、このような非平面形状の被着体表面への粘着シートの貼付けにおいて、貼付け作業の円滑化を図りつつ貼付け時のしわ発生を防ぐために、非平面形状を有するようにあらかじめ賦形された両面粘着シートを被着体に貼り付けることを提案している。
特開2016-029139号公報
しかし、被着体に貼り付けられる前の粘着シートは、通常、粘着面(被着体への貼付け面)剥離ライナーを積層して保護した剥離ライナー付き粘着シートの形態で加工、流通、保管等が行われるところ、一般的な平面形状(フラットな形状)の剥離ライナー付き粘着シートを熱プレス等により非平面形状に成形すると、熱成形時の負荷によって剥離ライナーに破れ等の損傷が生じたり、熱成形時またはその後の経時により剥離ライナーが部分的に粘着面から浮くことで外観不良や粘着面の保護信頼性の低下を生じたりすることがある。
また、被着体に貼り付けられた状態で良好な外観を有することが求められる用途においては、ユズ肌や歪みが高度に抑制された高平滑な粘着面を有することが求められる。かかる高平滑粘着剤では、例えば、上記のように熱プレス等により非平面形状に成形した後の保管時において、歪みなく、良好な外観を提供し得る平滑な粘着面が保持されていることが望ましい。
そこで本発明は、粘着面に剥離フィルムが積層された積層シートであって、熱成形性がよく、あらかじめ熱成形した後に上記剥離フィルムを剥がして上記粘着面を被着体に貼り付ける態様での使用に適し、かつ良好な外観を付与し得る積層シートを提供することを目的とする。関連する他の目的は、上記積層シートが巻回された積層シートロールを提供することである。関連するさらに他の目的は、上記積層シートの構成要素として適した剥離フィルムを提供することである。関連するさらに他の目的は、上記積層シートを非平面形状に加工する方法の提供である。
この明細書によると、シート形状の粘着体と、上記粘着体の第一面に積層している第一フィルムと、上記粘着体の第二面に積層している第二フィルムと、を含む積層シートが提供される。上記第二フィルムは、樹脂フィルムおよび該樹脂フィルムの少なくとも上記粘着体側の表面に設けられた剥離処理層を含み、かつ次の条件:85℃におけるヤング率(以下、「ヤング率E85」または単に「E85」と表記することがある。)が500MPa以上である;および、120℃におけるヤング率(以下、「ヤング率E120」または単に「E120」と表記することがある。)が500MPa以下である;を満たす剥離フィルムである。また、上記粘着体の上記第二面の最大高さRzが1000nm以下である。
かかる構成の積層シートは、第二フィルム(剥離フィルム)のヤング率E120が500MPa以下に制限されていることにより熱成形性がよい。例えば、熱成形時において上記第二フィルムを変形させやすいので、該第二フィルムの損傷が生じにくい。また、上記第二フィルムがその粘着体側の表面に剥離処理層を有することにより、上記粘着体からの上記第二フィルムの剥離力を適切に制御することができる。そして、第二フィルムのヤング率E85が500MPa以上であることにより、該第二フィルムの作製に用いられる樹脂フィルム上に剥離処理層を適切に形成しやすい。よって、上記積層シートは、成形性がよく(易成形性であり)、かつ成形後の積層シートから上記剥離フィルムを剥がして上記粘着面を被着体に貼り付ける態様での使用に適している。さらに、上記粘着体の第二面は、最大高さRzが1000nm以下の平滑性を有するので、熱プレス等により非平面形状に成形した後、さらに被着体に貼り付けた後も、上記平滑性に基づき、良好な外観を提供することができる。
いくつかの好ましい態様において、上記粘着体は、温度23℃、引張速度200mm/分の条件で300%引っ張り、300%引っ張った位置で150秒保持後に測定される応力が50N/cm2以下である。かかる条件で測定される応力は、変形負荷後の残存応力に対応すると考えられる。上記応力(残存応力)が所定値以下となる粘着体は、熱プレス等により非平面形状に成形した後、応力緩和しやすいので、粘着体に歪みが生じにくく、良好な外観を保持しやすい。
ここに開示される積層シートは、120℃で1分間の熱プレス後において、上記第二フィルムの上記粘着体からの剥離力(以下、「剥離力P2A」ともいう。)が0.10N/50mm以上5N/50mm以下であることが好ましい。剥離力P2Aが上記範囲にある積層シートによると、粘着面からの第二フィルムの剥離性がよく、かつ熱成形時またはその後の経時により第二フィルムが部分的に粘着面から浮く事象を好適に抑制することができる。
いくつかの態様に係る積層シートでは、上記第一フィルムは、上記粘着体の上記第一面に固着している支持フィルムである。かかる態様の積層シートは、非剥離性基材としての上記支持フィルム上に粘着体を有する片面粘着シートと、該片面粘着シートの粘着面(粘着体の第二面)に剥離可能に積層された剥離フィルムとしての第二フィルムと、を含む剥離フィルム付き片面粘着シートとして把握され得る。
上記剥離フィルム付き片面粘着シートは、例えば、被着体の表面形状に応じた適切な形状(例えば、非平面形状)に熱成形した後、上記剥離フィルムを剥がして上記片面粘着シートを被着体表面に貼り付けることにより、上記支持フィルムが上記粘着体を介して被着体に接合された構造を容易に形成することができる。なお、上記被着体の表面形状が非平面形状である場合、上記「被着体の表面形状に応じた適切な非平面形状」は、平面形状よりも被着体表面の非平面形状に近づけた形状(すなわち、平面形状よりも被着体表面の非平面形状に沿わせることが容易な形状)であることを意味し、被着体表面の非平面形状と完全に同一形状であることのみに限定されない。以下の説明においても同様である。
いくつかの他の態様に係る積層シートでは、上記第一フィルムは剥離フィルムである。かかる態様の積層シートでは、粘着体の第一面に第一フィルムが、該粘着体の第二面に第二フィルムが、それぞれ剥離可能に積層されている。したがって、上記粘着体は、第一面および第二面がいずれも粘着面となっている両面粘着シートとして把握され得る。また、上記積層シートは、上記両面粘着シートの第一面および第二面が第一、第二フィルムにより保護された剥離フィルム付き両面粘着シートとして把握され得る。
上記剥離フィルム付き両面粘着シートは、例えば、被着体の表面形状に応じた適切な形状(例えば、非平面形状)に熱成形した後、上記第一フィルムを剥がして上記粘着体の第一面を第一の被着体表面に貼り付け、次いで上記第二フィルムを剥がして上記粘着体の第二面を第二の被着体表面に貼り付ける態様で好ましく用いられ得る。あるいは、上記剥離フィルム付き両面粘着シートは、上記第一フィルムを剥がして上記粘着体の第一面を非剥離性の部材(例えば樹脂フィルム)に貼り付けることにより、上記部材と上記粘着体と上記第二フィルムとがこの順に積層した構成を有する剥離フィルム付き片面粘着シートを作製し、該剥離フィルム付き片面粘着シートを被着体の表面形状に応じた適切な形状(例えば、非平面形状)に熱成形した後、上記第二フィルムを剥がして上記粘着体の第二面を被着体表面に貼り付けることにより、上記部材が上記粘着体を介して被着体に接合された構造を容易に形成することができる。なお、上記第一の被着体表面と上記第二の被着体表面とは、互いに異なる(別体の)2以上の被着体の表面であってもよく、一つの被着体の異なる位置にある表面であってもよい。
第一、第二フィルムがいずれも剥離フィルムである態様の積層シートにおいて、該積層シートは、上記第一フィルムの上記粘着体からの剥離力(以下、「剥離力P1B」ともいう。)が、上記第二フィルムの上記粘着体からの剥離力(以下、「剥離力P2B」ともいう。)より低いことが好ましい。このように構成された積層シートは、典型的には第二フィルムよりも先に第一フィルムを粘着体から剥離する態様で用いられて、第一フィルムを剥離する際に粘着体が第二フィルムから浮く事象を好適に抑制することができる。
いくつかの好ましい態様では、上記粘着体は、粘着剤により構成された粘着剤層である。一般に、基材(芯材)の両側に粘着剤を有する基材付き粘着体に比べて、上記粘着剤層からなる(基材を含まない、すなわち基材レスの)粘着体はより高い変形性や柔軟性を示す。このため、粘着体が基材レスであることは、積層シートの熱成形性の観点から有利であり、粘着体の被着体表面に対する密着性の観点からも好ましい。
また、ここに開示される積層シートは、当該積層シートが巻回された積層シートロール(単に「ロール体」ともいう。)の形態で提供され得る。このようなロール体は、保存、輸送時に取り扱いやすく、生産性の点でも有利である。
また、この明細書によると、樹脂フィルムおよび該樹脂フィルムの少なくとも上記粘着剤層側の表面に設けられた剥離処理層を含み、かつ次の条件:85℃におけるヤング率が500MPa以上である;および、120℃におけるヤング率が500MPa以下である;を満たし、上記剥離処理層表面の最大高さRzが1000nm以下である剥離フィルムが提供される。この剥離フィルムは、例えば、ここに開示されるいずれかの積層シートの構成要素として、より具体的には該積層シートの少なくとも第二フィルムとして好ましく用いられ得る。
さらに、この明細書によると、ここに開示されるいずれかの積層シートを用意することと、上記積層シートの少なくとも一部領域を加熱するとともに加圧して非平面形状に成形することと、を包含する積層シートの加工方法が提供される。ここに開示される積層シートは、かかる加工方法により所望の非平面形状に成形し、成形後の積層シートから上記剥離フィルムを剥がして上記粘着面を被着体に貼り付ける態様で好ましく使用され得る。
なお、本明細書に記載された各要素を適宜組み合わせたものも、本件特許出願によって特許による保護を求める発明の範囲に含まれ得る。
一実施形態に係る積層シートを示す模式的断面図である。 成形試験に使用する金型のうち下型の形状を説明する模式的斜視図である。 図2のIII-III線断面図である。 図2のIV-IV線断面図である。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、本明細書に記載された発明の実施についての教示と出願時の技術常識とに基づいて当業者に理解され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明することがあり、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、図面に記載の実施形態は、本発明を明瞭に説明するために模式化されており、実際に提供される製品のサイズや縮尺を必ずしも正確に表したものではない。
この明細書において「粘着剤」とは、前述のように、室温付近の温度域において柔らかい固体(粘弾性体)の状態を呈し、圧力により簡単に被着体に接着する性質を有する材料をいう。ここでいう粘着剤は、「C. A. Dahlquist, “Adhesion: Fundamental and Practice”, McLaren & Sons, (1966) P. 143」に定義されているとおり、一般的に、複素引張弾性率E(1Hz)<10dyne/cmを満たす性質を有する材料(典型的には、25℃において上記性質を有する材料)であり得る。
<積層シートの構成例>
ここに開示される積層シートは、シート形状の粘着体と、上記粘着体の第一面に積層している第一フィルムと、上記粘着剤層の第二面に積層している第二フィルムとを含む。上記第二フィルムは剥離フィルムである。ここで剥離フィルムとは、粘着体に積層される面が剥離性を有する表面(剥離面)となっているフィルムをいう。上記第一フィルムは、剥離フィルムであってもよく、非剥離性のフィルム(支持フィルム)であってもよい。
一実施形態に係る積層シートの構造を図1に模式的に示す。この積層シート50は、粘着体10と、粘着体10の第一面10Aに積層している第一フィルム31と、粘着体10の第二面10Bに積層している第二フィルム32とを含む。第二フィルム32は、少なくとも粘着体10側の表面が剥離面となっている剥離フィルムである。第一フィルム31の粘着体10側の表面は、剥離面であってもよく、非剥離面であってもよい。すなわち、第一フィルム1は、剥離フィルムであってもよく、非剥離性のフィルム(支持フィルム)であってもよい。なお、第一、第二フィルム31,32において、粘着体10側とは反対側の表面は、それぞれ独立に、剥離面であってもよく、非剥離面であってもよい。
粘着体10は、粘着剤により構成された粘着剤層(すなわち、基材レスの粘着体)であってもよく、基材(芯材)の両側に粘着剤を有する基材付き粘着体であってもよい。粘着体10に含まれる粘着剤は、例えば光硬化型粘着剤組成物の硬化物であり得る。
積層シートは、使用前においては、当該積層シートが巻回された積層シートロール(単に「ロール体」ともいう。例えば粘着シートロールともいう。)の形態であってもよい。かかる積層シートは、例えば、上記積層シート(第一フィルム/粘着体/第二フィルムの積層構造を有する積層シート)を、コア(巻芯)の周囲に巻回された形態で含んでいる。あるいは、上記ロール体は、コアを有しない形態、すなわち積層シートが単独で巻回された、いわゆるコアレスタイプのロール体の形態であってもよい。このようなロール体は、保存、輸送時に取り扱いやすく、生産性の点でも有利である。
<第二フィルム>
ここに開示される積層シートにおける第二フィルムは、ベースフィルムとしての樹脂フィルムと、該樹脂フィルムの少なくとも一方の表面に設けられた剥離処理層とを含む剥離フィルムである。上記第二フィルム(剥離フィルム)は、85℃におけるヤング率(E85)が500MPa以上であり、かつ、120℃におけるヤング率(E120)が500MPa以下である。
第二フィルムのベースフィルムとしては、公知のプラスチックフィルムのなかから上記ヤング率E85,E120の条件を満たすものを選択することができる。この明細書においてプラスチックフィルムとは、典型的には非多孔質のシートであって、例えば不織布とは区別される(すなわち、不織布を含まない)概念である。
上記プラスチックフィルムを形成するために用いられ得る樹脂材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン共重合体等のポリオレフィン系樹脂;ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系ポリマー;アセテート系樹脂;ポリカーボネート(PC);ナイロン6、ナイロン66、部分芳香族ポリアミド等のポリアミド(PA);透明ポリイミド(CPI)等のポリイミド;ポリアミドイミド(PAI);ポリエーテルエーテルケトン(PEEK);ポリスルホン系樹脂;ポリエーテルスルホン(PES)系樹脂;ノルボルネン系樹脂等の環状ポリオレフィン;(メタ)アクリル系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;ポリ塩化ビニリデン系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂;エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA);エチレン-ビニルアルコール共重合体;ポリアリレート系樹脂;ポリフェニレンサルファイド(PSS)等が挙げられる。これらの樹脂材料のいずれか1種または2種以上の混合物から形成されたプラスチックフィルムを、第二フィルムのベースフィルムとして用いることができる。好適例としては、ポリエステル系樹脂を主成分とするポリエステル系フィルム(例えばPET系フィルム)、ポリオレフィン系樹脂を主成分とするポリオレフィン系フィルム、等が挙げられる。
剥離処理層は、ベースフィルムに剥離処理剤を付与して硬化(乾燥、架橋、反応等)させることにより形成することができる。剥離処理剤としては、例えばシリコーン系剥離処理剤、長鎖アルキル系剥離処理剤、フッ素系剥離処理剤、硫化モリブデン(IV)等の、公知の剥離処理剤を用いることができる。剥離処理層の厚さは特に限定されず、所望の剥離性が発揮されるように設定することができる。いくつかの態様において、剥離処理層の厚さは、0.01μm以上であることが適当であり、0.05μm以上であることが好ましく、0.08μm以上でもよい。また、剥離処理層の厚さは、例えば3μm以下であってよく、1μm以下でもよく、0.5μm以下でもよい。
使用する剥離処理剤の形態は、溶剤型、無溶剤型、水性(水溶液型、水分散型)等のいずれでもよい。いくつかの態様において、粘度調節の容易性や、均質性の高い剥離処理層の形成しやすさ等の観点から、有機溶剤中に剥離処理層形成成分を含む溶剤型の剥離処理剤を好ましく採用し得る。上記有機溶剤は、例えばヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン等の脂環式炭化水素類;トルエン、キシレン等の芳香族化合物類(典型的には芳香族炭化水素類);1,2-ジクロロエタン等のハロゲン化アルカン類;tert-ブチルメチルエーテル等のエーテル類;メチルエチルケトン等のケトン類;等から選択されるいずれか1種の溶媒、または2種以上の混合溶媒であり得る。溶剤型の剥離処理剤を処理対象の樹脂フィルムに塗布して乾燥させることにより、該樹脂フィルム上に剥離処理層を形成することができる。上記乾燥に際しては、溶剤型剥離処理剤が塗布された樹脂フィルムを例えば40℃以上、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上で行うことが効率的である。また、上記乾燥温度は、好ましくは120℃未満、より好ましくは110℃以下であり、100℃以下または90℃以下でもよい。
剥離処理剤の一好適例として、シリコーン系剥離処理剤が挙げられる。シリコーン系剥離処理剤は、付加反応型、縮合反応型、紫外線硬化型、電子線硬化型等のいずれでもよい。反応性や性能安定性等の観点から、いくつかの態様において、付加反応型のシリコーン系剥離処理剤を好ましく採用し得る。付加反応型シリコーン系剥離処理剤は、通常、オルガノハイドロジェンポリシロキサンと脂肪族不飽和基を有するオルガノポリシロキサンとを含み、無溶剤型および溶剤型のいずれであってもよい。例えば、熱付加反応により架橋して硬化する熱硬化性付加反応型シリコーン系剥離処理剤を好ましく使用し得る。
熱硬化性付加反応型シリコーン剥離処理剤としては、例えば、分子中にケイ素原子(Si)に結合した水素原子(H)を有するポリシロキサン(Si-H基含有ポリシロキサン)と、分子中にSi-H結合(SiとHとの共有結合)に対して反応性を有する官能基(Si-H基反応性官能基)を含むポリシロキサン(Si-H基反応性ポリシロキサン)と、を含む剥離処理剤を使用することができる。かかる剥離処理剤は、Si-H基とSi-H基反応性官能基とが付加反応して架橋することにより硬化する。
上記Si-H基含有ポリシロキサンにおいて、Hが結合したSiは、主鎖中のSiおよび側鎖中のSiのいずれであってもよい。分子中にSi-H基を二個以上含むポリシロキサンが好ましい。二個以上のSi-H基を含有するポリシロキサンとして、ポリ(ジメチルシロキサン-メチルシロキサン)等のジメチルハイドロジェンシロキサン系ポリマーが挙げられる。
一方、上記Si-H基反応性ポリシロキサンとしては、Si-H基反応性官能基またはかかる官能基を含む側鎖が、シロキサン系ポリマーの主鎖(骨格)を形成するSi(例えば、主鎖末端のSi、主鎖内部のSi)に結合した態様のポリシロキサンを使用することができる。なかでも、Si-H基反応性官能基が主鎖中のSiに直接結合した態様のポリシロキサンが好ましい。また、分子中にSi-H基反応性官能基を二個以上含むポリシロキサンが好ましい。Si-H基反応性官能基としては、例えば、ビニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基等が挙げられる。
上記主鎖部分を形成するシロキサン系ポリマーとしては、例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、ポリメチルエチルシロキサン等のポリジアルキルシロキサン(2つのアルキル基は、同じでもよく、異なってもよい。);ポリアルキルアリールシロキサン;ポリ(ジメチルシロキサン-メチルシロキサン)等の、複数のSi含有モノマーを重合してなるポリマー;等が挙げられる。特に好適な主鎖ポリマーとして、ポリジメチルシロキサンが挙げられる。
いくつかの態様において、分子中にSi-H基を二個以上含むポリシロキサンと、分子中にSi-H基反応性官能基を二個以上含むポリシロキサンと、を含有する熱硬化性付加反応型シリコーン剥離処理剤を好ましく使用し得る。上記剥離処理剤に含まれるSi-H基含有ポリシロキサンとSi-H基反応性ポリシロキサンとの混合比は、該剥離処理剤が十分に硬化して上述のシリコーン移行量が実現され得る範囲であれば特に制限されないが、Si-H基のSiのモル数XとSi-H基反応性官能基のモル数Yとが、X≧Yとなるように選択されることが好ましく、通常、X:Yが、1:1~2:1(より好ましくは、1.2:1~1.6:1)程度とすることが好ましい。
付加反応型シリコーン系剥離処理剤は、架橋反応を速めるための触媒を含んでいてもよい。かかる触媒としては、例えば、白金微粒子、塩化白金酸およびその誘導体等の白金触媒が挙げられる。触媒の添加量は特に制限されないが、例えば、Si-H基反応性ポリシロキサン100重量部に対して0.005重量部~5重量部(好ましくは0.01重量部~1重量部)の範囲から選択される。
シリコーン系剥離処理剤としては、上述のような成分を適宜調製または入手して混合したもの、あるいは上述のような成分を含む市販品を使用することができる。また、上述のような成分以外に、必要に応じて、例えば充填剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、着色料(染料、顔料等)等、他の公知慣用の添加剤を適宜添加してもよい。
他のいくつかの態様において、長鎖アルキル系剥離処理剤による剥離処理層を有する剥離フィルムを好ましく採用し得る。長鎖アルキル系剥離処理剤としては、例えば、ポリビニルアルコール系重合体に長鎖(例えば、炭素原子数8~30の)アルキルイソシアネートを反応させて得られたポリビニルカーバメートや、ポリエチレンイミンに長鎖(例えば、炭素原子数8~30の)アルキルイソシアネートを反応させて得られたアルキル尿素誘導体等が用いられ得る。また、特開2016-145341号公報に記載されているような長鎖アルキル系材料を含む長鎖アルキル系剥離処理剤を、ここに開示される積層シートに用いられる剥離フィルムの剥離処理剤として採用することができる。なお、上記特開2016-145341号公報は、参照により本明細書に組み込まれている。
第二フィルムの120℃におけるヤング率(E120)は、上述のように500MPa以下であり、400MPa以下であることが好ましく、300MPa以下でもよく、200MPa以下でもよく、100MPa以下でもよく、20MPa以下でもよい。E120が小さくなると、熱成形性は向上する傾向にある。E120の下限は特に制限されない。いくつかの態様において、85℃におけるヤング率(E85)を所定以上としやすくする観点から、第二フィルムのE120は、2MPa以上であることが適当であり、4MPa以上であることが好ましく、10MPa以上でもよく、70MPa以上でもよく、150MPa以上でもよく、250MPa以上でもよく、350MPa以上でもよい。
第二フィルムのヤング率E120の好ましい範囲は、ベースフィルムの種類によっても異なり得る。例えば、第二フィルムのベースフィルムがポリエステル系フィルムである場合、いくつかの態様において、該第二フィルムのE120は、70MPa以上500MPa以下であることが好ましく、150MPa以上400MPa以下(例えば150MPa以上300MPa以下、250MPa以上400MPa以下等)であることがより好ましい。また、第二フィルムのベースフィルムがポリオレフィン系フィルムである場合、いくつかの態様において、該第二フィルムのE120は、2MPa以上100MPa以下であることが好ましく、2MPa以上20MPa以下であることがより好ましい。
第二フィルムの85℃におけるヤング率(E85)は、上述のように500MPa以上である。例えば、E85が500MPa以上であるベースフィルム上に剥離処理層を形成することにより、上記E85を満たす第二フィルムを好適に実現することができる。E85が500MPa以上の耐熱性を示すベースフィルムは、剥離処理剤の乾燥や架橋促進等の目的で加熱(例えば70℃~100℃程度の温度域への加熱)を行っても、変形(例えば波打ち、カール、収縮等)や白濁等の外観不良を生じにくいので好ましい。いくつかの態様において、第二フィルムのE85は、例えば600MPa以上であってよく、700MPa以上でもよく、900MPa以上でもよく、1100MPa以上でもよい。E85の上限は特に制限されない。いくつかの態様において、E120を所定以下としやすくする観点から、第二フィルムのE85は、例えば2000MPa以下であってよく、1700MPa以下でもよく、1500MPa以下でもよく、1200MPa以下でもよく、1000MPa以下でもよい。
第二フィルムのヤング率E85の好ましい範囲は、ベースフィルムの種類によっても異なり得る。例えば、第二フィルムのベースフィルムがポリエステル系フィルムである場合、いくつかの態様において、該第二フィルムのE85は、500MPa以上2000MPa以下であることが好ましく、600MPa以上1500MPa以下(例えば700MPa以上1200MPa以下、900MPa以上1500MPa以下等)であることがより好ましい。また、第二フィルムのベースフィルムがポリオレフィン系フィルムである場合、いくつかの態様において、該第二フィルムのE85は、500MPa以上1500MPa以下であることが好ましく、500MPa以上1200MPa以下(例えば700MPa以上1500MPa以下)であることがより好ましく、900MPa以上1200MPa以下でもよい。
第二フィルムのE120の値[MPa]に対するE85の値[MPa]の比、すなわち比(E85/E120)は、典型的には1より大きく、剥離処理による外観不良の発生抑制に適した耐熱性と熱成形時の変形容易性とを高レベルで両立する観点から3以上であることが好ましく、5以上でもよく、20以上でもよく、50以上でもよく、100以上でもよく、160以上でもよい。比(E85/E120)の上限は特に制限されず、例えば500以下または300以下であってよく、150以下でもよく、80以下でもよく、40以下でもよく、10以下でもよい。
第二フィルムの比(E85/E120)の好ましい範囲は、ベースフィルムの種類によっても異なり得る。例えば、第二フィルムのベースフィルムがポリエステル系フィルムである場合、いくつかの態様において、該第二フィルムの比(E85/E120)は、3以上40以下(例えば3以上10以下)であることが好ましい。また、第二フィルムのベースフィルムがポリオレフィン系フィルムである場合、いくつかの態様において、該第二フィルムの比(E85/E120)は、20以上500以下であることが好ましく、50以上300以下(例えば100以上300以下)であることがより好ましい。
いくつかの態様において、第二フィルムの120℃における破断時伸び(以下、「破断時伸びL120」または単に「L120」と表記することがある。)は、熱変形時の破れを防止する観点から、230%以上であることが適当であり、250%以上であることが好ましく、300%以上でもよく、400%以上でもよく、500%以上でもよい。第二フィルムの破断時伸びL120の上限は特に制限されない。いくつかの態様において、第二フィルムのL120は、例えば1000%以下であってよく、700%以下でもよく、500%以下でもよく、400%以下でもよい。
上述した第二フィルムの比(E85/E120)の下限および上限は、第一フィルム(支持フィルムまたは剥離フィルムであり得る。)の比(E85/E120)の下限および上限にも好ましく適用され得る。また、上述した第二フィルムの破断時伸びの下限および上限は、第一フィルムが剥離フィルムである場合における該第一フィルムの破断時伸びの下限および上限にも好ましく適用され得る。
なお、この明細書において、フィルム(第一フィルム、第二フィルム、それらのベースフィルム等であり得る。)のヤング率および破断時伸びは、後述の実施例に記載の方法で測定される。ヤング率および破断時伸びは、フィルムの組成や製造方法により調節することができる。
いくつかの態様において、第二フィルムの剥離処理層表面の最大高さRzは、凡そ1000nm以下である。これにより、粘着体の粘着面(第二面)の平滑性を高めることができる。上記最大高さRzは、好ましくは凡そ900nm以下、より好ましくは凡そ800nm以下である。いくつかの好ましい態様において、上記最大高さRzは、凡そ700nm以下であり、凡そ600nm以下であってもよく、凡そ500nm以下(例えば450nm以下)でもよい。また、剥離フィルムの製造容易性や取扱い性等の観点から、いくつかの態様において、上記最大高さRzは、例えば凡そ10nm以上であってよく、凡そ100nm以上でもよく、凡そ200nm以上でもよく、凡そ300nm以上でもよい。最大高さRzが所定値以上であることにより、粘着面からの剥離が軽くなる傾向がある。
ここで、本明細書において最大高さRzとは、特記しない場合、非接触式の表面粗さ測定装置を用いて得られる最大高さ粗さをいう。非接触式の表面粗さ測定装置としては、光干渉方式の表面粗さ測定装置が用いられ、例えばVeeco社製のWyko NT-9100またはその相当品を使用することができる。具体的な測定操作および測定条件は、後述する実施例に記載の測定条件に従って、または該測定条件に従う場合と同等もしくは対応する結果が得られるように設定することができる。最大高さRzは、上記表面粗さ測定により得られた粗さ曲線について、該粗さ曲線の平均線から上側に最も高い山の高さRpと、上記平均線から下側に最も深い谷の深さRvとの和として求められる。
なお、第二フィルムの剥離処理層表面の最大高さRzは、ベースフィルムの種類や製造方法、剥離処理層の組成、塗布方法等によって調節され得る。例えば、平滑面と粗面を有するベースフィルム(例えばポリオレフィン系フィルム)を用いる場合、剥離性のため、通常、粗面側を剥離面とするところ、平滑面側に剥離処理層を形成して当該剥離処理層表面を剥離面として用いることにより、上記最大高さRzを得ることができる。
<第一フィルム>
ここに開示される積層シートにおける第一フィルムは、該積層シートを構成する粘着体の第一面に固着している支持フィルム(非剥離性のフィルム)であってもよく、上記粘着体の第一面側が剥離面となっている剥離フィルムであってもよい。
第一フィルムが支持フィルムである態様において、該支持フィルムのベースフィルムとしては、各種のプラスチックフィルムを用いることができる。上記プラスチックフィルムを形成するために用いられ得る樹脂材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン共重合体等のポリオレフィン系樹脂;ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系ポリマー;アセテート系樹脂;ポリカーボネート(PC);ナイロン6、ナイロン66、部分芳香族ポリアミド等のポリアミド(PA);透明ポリイミド(CPI)等のポリイミド;ポリアミドイミド(PAI);ポリエーテルエーテルケトン(PEEK);ポリスルホン系樹脂;ポリエーテルスルホン(PES)系樹脂;ノルボルネン系樹脂等の環状ポリオレフィン;(メタ)アクリル系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;ポリ塩化ビニリデン系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂;エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA);エチレン-ビニルアルコール共重合体;ポリアリレート系樹脂;ポリフェニレンサルファイド(PSS)等が挙げられる。これらの樹脂材料のいずれか1種または2種以上の混合物から形成されたプラスチックフィルムを、支持フィルムのベースフィルムとして用いることができる。なかでも好ましいプラスチックフィルムとして、ジアセチルセルロースフィルムやトリアセチルセルロース(TAC)フィルム等のセルロース系フィルム、PET系フィルム等のポリエステル系フィルム、透明ポリイミド(CPI)フィルム等のポリイミド系フィルム、ポリエーテルスルホン(PES)系フィルム、等が例示される。
支持フィルムの粘着体側表面には、下塗り剤の塗布、コロナ放電処理、プラズマ処理等の表面処理が施されていてもよい。このような表面処理は、上記粘着体側表面と粘着体との密着性向上(投錨破壊の防止)に役立ち得る。
第一フィルムが剥離フィルムである態様において、該剥離フィルムの構成は特に限定されない。第一フィルムとして使用し得る剥離フィルムの例としては:ベースフィルムとしての樹脂フィルムと、該樹脂フィルムの少なくとも一方の表面に設けられた剥離処理層とを含む剥離フィルム;フッ素系ポリマー(ポリテトラフルオロエチレン等)やポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)の低接着性樹脂からなる剥離フィルム;等が挙げられる。いくつかの態様において、ベースフィルムとしての樹脂フィルムと、該樹脂フィルムの少なくとも一方の表面に設けられた剥離処理層とを含む剥離フィルムを、第一フィルムとして好ましく用いることができる。ここに開示される積層シートに含まれる第一フィルムは、該積層シートに含まれる第二フィルムと同じ樹脂フィルムまたは厚さのみが異なる樹脂フィルムに、上記第二フィルムと同じかまたは異なる剥離処理層を設けたものであり得る。第一フィルムが剥離フィルムである態様において、第一フィルムの剥離面(例えば剥離処理層形成面)の最大高さRzは、特に限定されず、例えば、上記第二フィルムの剥離処理層表面の最大高さRzの範囲が採用され得る。
第一フィルムの120℃におけるヤング率(E120)は、特に限定されず、500MPa以下であってもよく、500MPaより大きくてもよい。いくつかの態様では、第一フィルムのE120は、500MPa以下であることが適当である。例えば、第一フィルムが支持フィルムである積層シートや、第一フィルムが剥離フィルムであって該第一フィルムが粘着体の第一面に積層された状態で熱成形を行うことが想定される積層シートでは、第一フィルムのE120が500MPa以下であることが適当であり、400MPa以下であることが好ましく、300MPa以下でもよく、200MPa以下でもよく、100MPa以下でもよく、20MPa以下でもよい。第一フィルムのE120の下限は特に制限されず、例えば2MPa以上、4MPa以上、10MPa以上、70MPa以上、150MPa以上、250MPa以上または350MPa以上であり得る。
第一フィルムの85℃におけるヤング率(E85)は、特に限定されず、500MPa以上であってもよく、500MPa未満であってもよい。第一フィルムが、ベースフィルムとしての樹脂フィルムと、該樹脂フィルムの少なくとも一方の表面に設けられた剥離処理層とを含む剥離フィルムである態様では、ベースフィルム上に剥離処理層を形成することによる外観不良を防ぐ観点から、第一フィルムのE85は500MPa以上であることが好ましく、600MPa以上でもよく、700MPa以上でもよく、900MPa以上でもよく、1100MPa以上でもよい。第一フィルムのE85の上限は特に制限されず、例えば2000MPa以下であってよく、1700MPa以下でもよく、1500MPa以下でもよく、1200MPa以下でもよく、1000MPa以下でもよい。
ここに開示される積層シートにおいて支持フィルムまたは剥離フィルムのベースフィルムとして用いられるプラスチックフィルムは、無延伸フィルム、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルムのいずれであってもよい。また、上記プラスチックフィルムは、単層構造であってもよく、二層以上のサブ層を含む多層構造(例えば三層構造)であってもよい。上記プラスチックフィルムには、酸化防止剤、老化防止剤、耐熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料や染料等の着色剤、滑剤、充填剤、帯電防止剤、核剤等の、粘着シートの支持フィルムまたは剥離フィルムに用いられ得る公知の添加剤が配合されていてもよい。多層構造のプラスチックフィルムにおいて、各添加剤は、すべてのサブ層に配合されていてもよく、一部のサブ層にのみ配合されていてもよい。
<粘着体>
ここに開示される積層シートにおける粘着体は、粘着剤により構成された粘着剤層からなる基材レス粘着体であってもよく、基材(芯材)の両側に粘着剤を有する基材付き粘着体であってもよい。
ここに開示される粘着体の粘着面(第二面)は、最大高さRzが凡そ1000nm以下である。このように平滑な表面を有する粘着体によると、熱プレス等により非平面形状に成形した後、さらに被着体に貼り付けた後も、上記平滑性に基づき、良好な外観を提供することができる。上記最大高さRzは、好ましくは凡そ900nm以下、より好ましくは凡そ800nm以下である。いくつかの好ましい態様において、上記最大高さRzは、凡そ700nm以下であり、凡そ600nm以下であってもよく、凡そ500nm以下(例えば450nm以下)でもよい。また、製造容易性や取扱い性等の観点から、いくつかの態様において、上記最大高さRzは、例えば凡そ10nm以上であってよく、凡そ100nm以上でもよく、凡そ200nm以上でもよく、凡そ300nm以上でもよい。最大高さRzが所定値以上であることにより、剥離フィルムからの剥離が軽くなる傾向がある。
なお、粘着体の粘着面の最大高さRzは、主に、当該粘着面に積層される剥離フィルムの表面性状によって調節され得る。粘着体の粘着面の最大高さRzは、具体的には、後述の実施例に記載の方法で測定される。また、その具体的な測定操作および測定条件は、後述する実施例に記載の測定条件に従って、または該測定条件に従う場合と同等もしくは対応する結果が得られるように設定することが可能である。
いくつかの態様において、粘着体(典型的には粘着剤層)は、温度23℃、引張速度200mm/分の条件で300%引っ張り、300%引っ張った位置で150秒保持後に測定される応力が50N/cm2以下であることが好ましい。上記条件で測定される応力は、変形負荷後の残存応力に対応すると考えられる。上記応力(残存応力)が所定値以下となる粘着体は、熱プレス等により非平面形状に成形した後、応力緩和しやすいので、保管時において、粘着体に歪みが生じにくく、良好な外観を保持しやすい。上記残存応力は、49N/cm2以下であってもよく、48N/cm2以下でもよく、47N/cm2以下でもよく、46N/cm2以下でもよく、45N/cm2以下でもよい。いくつかの好ましい態様において、上記残存応力は、40N/cm2以下であり、より好ましくは35N/cm2以下、さらに好ましくは30N/cm2以下である。上記残存応力の下限値は、特に限定されず、適度な凝集力を有して良好な粘着特性を発揮する観点から、通常、1N/cm2以上が適当であり、5N/cm2以上であってもよく、10N/cm2以上でもよく、15N/cm2以上でもよく、20N/cm2以上でもよく、25N/cm2以上でもよい。
上記残存応力は、粘着剤成分(例えばベースポリマーのモノマー組成や分子量、重合方法、多官能モノマーや架橋剤の種類の選定や使用量等)により調節することができる。上記残存応力は、具体的には、後述の実施例に記載の方法で測定される。
粘着体に含まれる粘着剤の種類は特に限定されず、例えばアクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤(天然ゴム系、合成ゴム系、これらの混合系等)、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエーテル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、フッ素系粘着剤等の公知の各種粘着剤から選択される1種または2種以上の粘着剤であり得る。透明性や耐候性等の観点から好ましい粘着体として、該粘着体に含まれる粘着剤のうちアクリル系粘着剤の割合が50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上である粘着体が挙げられる。アクリル系粘着剤の割合が98重量%超であってもよく、実質的にアクリル系粘着剤からなる粘着体であってもよい。
ここで、この明細書においてアクリル系粘着剤とは、アクリル系ポリマーをベースポリマー(ポリマー成分のなかの主成分、すなわち50重量%を超えて含まれる成分)とする粘着剤をいう。ゴム系粘着剤その他の粘着剤についても同様の意味である。
また、この明細書において「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよびメタクリルを包括的に指す意味である。同様に、「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイルおよびメタクリロイルを、「(メタ)アクリレート」とはアクリレートおよびメタクリレートを、それぞれ包括的に指す意味である。
また、この明細書においてアクリル系ポリマーとは、該アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分として(メタ)アクリル系モノマーを含む重合物をいう。すなわち、(メタ)アクリル系モノマーに由来するモノマー単位を含む重合物をいう。ここで(メタ)アクリル系モノマーとは、1分子中に少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基を有するモノマーをいう。
特に限定するものではないが、ここに開示される技術の一態様において、上記粘着体は、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分を含む粘着剤組成物を用いて好適に調製することができる。以下、このような粘着剤組成物を「アクリル系粘着剤組成物」ということがある。ここで「アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分」とは、アクリル系粘着剤組成物から得られる粘着剤において、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分をいう。上記モノマー成分は、アクリル系粘着剤組成物中に、未反応モノマーとして(すなわち、重合性官能基が未反応である原料モノマーの形態で)含まれてもよく、重合物の形態で(すなわち、モノマー単位として)含まれていてもよく、これらの両方の形態で含まれていてもよい。
ここに開示される技術の一態様において、上記粘着体は、上記アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分として以下の(A)成分を含む粘着剤組成物を用いて形成することができる。好ましい一態様において、上記粘着体は、上記アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分として少なくとも以下の(A)成分を含み、必要に応じて以下の(B)成分および以下の(C)成分の一方または両方をさらに含むアクリル系粘着剤組成物を用いて好適に形成され得る。
((A)成分)
上記(A)成分は、炭素数2~18のアルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレートである。以下、炭素数がX以上Y以下のアルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレートを「CX-Yアルキル(メタ)アクリレート」と表記することがある。C2-18アルキル(メタ)アクリレートにおけるC2-18アルキル基の構造は特に限定されず、上記アルキル基が直鎖であるものおよび分岐鎖であるもののいずれも使用可能である。(A)成分としては、このようなC2-18アルキル(メタ)アクリレートの1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
直鎖アルキル基をエステル末端に有するC2-18アルキル(メタ)アクリレートとして、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-へプチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、n-ウンデシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート、n-トリデシル(メタ)アクリレート、n-テトラデシル(メタ)アクリレート、n-ペンタデシル(メタ)アクリレート、n-ヘキサデシル(メタ)アクリレート、n-ヘプタデシル(メタ)アクリレートおよびn-オクタデシル(メタ)アクリレートが挙げられる。また、分岐鎖アルキル基をエステル末端に有するC3-18アルキル(メタ)アクリレートとして、イソプロピル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、t-ペンチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、イソヘキシル(メタ)アクリレート、イソへプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、2-プロピルヘプチル(メタ)アクリレート、イソウンデシル(メタ)アクリレート、イソドデシル(メタ)アクリレート、イソトリデシル(メタ)アクリレート、イソミスチリル(メタ)アクリレート、イソペンタデシル(メタ)アクリレート、イソヘキサデシル(メタ)アクリレート、イソヘプタデシル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレートなどが例示される。ここに開示される技術は、(A)成分がC4-9アルキルアクリレートから選択される1種または2種以上を含む態様で好ましく実施され得る。C4-9アルキルアクリレートの好適例としては、n-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレートおよびイソノニルアクリレートが挙げられる。
((B)成分)
上記(B)成分は、脂環式モノマーおよびヘテロ環含有モノマーからなる群から選択されるモノマーである。この(B)成分は、典型的には上記(A)成分と組み合わせて用いられて、粘着剤の凝集性の向上、透明性の向上、耐熱性の向上等に役立ち得る。
脂環式モノマーとしては、(メタ)アクリロイル基またはビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有し、かつ脂環構造含有基を有するものを、特に制限なく用いることができる。脂環式モノマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。ここで「脂環構造含有基」とは、少なくとも一つの脂環構造を含む部分をいう。また、「脂環構造」とは、芳香族性を有しない飽和または不飽和の炭素環構造をいう。この明細書では、脂環構造含有基を単に「脂環式基」ということがある。脂環式基の好適例としては、脂環構造を含む炭化水素基や炭化水素オキシ基が挙げられる。
ここに開示される技術において好ましい脂環式モノマーの例として、脂環式基と(メタ)アクリロイル基とを有する脂環式(メタ)アクリレートが挙げられる。脂環式(メタ)アクリレートの具体例としては、シクロプロピル(メタ)アクリレート、シクロブチル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘプチル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートなどのほか、下記化学式に示すHPMPA、TMA-2、HCPAなどが挙げられる。
Figure 2023161418000002
脂環式モノマーにおける脂環式基(脂環式(メタ)アクリレートの場合、該脂環式(メタ)アクリレートから(メタ)アクリロイル基を除いた部分)の炭素数は特に限定されない。例えば、脂環式基の炭素数が4~24(好ましくは5~18、より好ましくは5~12)である脂環式モノマーを用いることができる。なかでもシクロヘキシルアクリレート(CHA)、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルアクリレート(IBXA)およびイソボルニルメタクリレートが好ましく、CHAおよびIBXAがより好ましく、CHAが特に好ましい。
ヘテロ環含有モノマーの例としては、環状窒素含有モノマーや環状エーテル基含有モノマー等が挙げられる。ヘテロ環含有モノマーは、脂環式モノマーと同様、粘着剤の凝集性の向上、透明性の向上、耐熱性の向上等に役立ち得る。また、粘着剤の接着力や凝集力の向上にも役立ち得る。ヘテロ環含有モノマーは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
環状窒素含有モノマーとしては、(メタ)アクリロイル基またはビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有し、かつ環状窒素構造を有するものを特に制限なく用いることができる。環状窒素構造は、環状構造内に窒素原子を有するものが好ましい。環状窒素含有モノマーとしては、例えば、N-ビニルピロリドン、N-ビニル-ε-カプロラクタム、メチルビニルピロリドン等のラクタム系ビニルモノマー;2-ビニル-2-オキサゾリン、2-ビニル-5-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリンのようなオキサゾリン基含有モノマー;ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルモルホリン等の窒素含有複素環を有するビニル系モノマー等が挙げられる。環状窒素含有モノマーの他の例として、モルホリン環、ピペリジン環、ピロリジン環、ピペラジン環、アジリジン環等の窒素含有複素環を含有する(メタ)アクリルモノマーが挙げられる。具体的には、N-アクリロイルモルホリン、N-アクリロイルピペリジン、N-メタクリロイルピペリジン、N-アクリロイルピロリジン、N-アクリロイルアジリジン等が挙げられる。上記環状窒素含有モノマーのなかでも、凝集性等の点からは、ラクタム系ビニルモノマーが好ましく、N-ビニルピロリドンがより好ましい。
環状エーテル基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリロイル基またはビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有し、かつエポキシ基またはオキセタン基等の環状エーテル基を有するものを特に制限なく用いることができる。エポキシ基含有モノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル等が挙げられる。オキセタン基含有モノマーとしては、例えば、3-オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、3-メチル-オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、3-エチル-オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、3-ブチル-オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、3-ヘキシル-オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、等が挙げられる。
((C)成分)
上記(C)成分は、ヒドロキシ基およびカルボキシ基の少なくともいずれかを有するモノマーである。
ヒドロキシ基含有モノマーとしては、(メタ)アクリロイル基またはビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有し、かつヒドロキシ基を有するものを特に制限なく用いることができる。ヒドロキシ基含有モノマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。ヒドロキシ基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;(4-ヒドロキシメチルシクロへキシル)メチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキルシクロアルカン(メタ)アクリレート;その他、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、アリルアルコール、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル等が挙げられる。これらのなかでもヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。例えば、エステル末端に炭素数2~6のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを好ましく使用し得る。好ましい一態様において、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)および4-ヒドロキシブチルメタクリレートから選択される1種または2種以上をヒドロキシ基含有モノマーとして用いることができる。ここに開示される技術の好適な態様において使用されるヒドロキシ基含有モノマーは、4HBA単独、HEA単独、または4HBAとHEAとの組合せであり得る。
カルボキシ基含有モノマーとしては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有し、かつカルボキシ基を有するものを特に制限なく用いることができる。カルボキシ基含有モノマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。カルボキシ基含有モノマーの例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和モノカルボン酸;イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸;これらの金属塩(例えばアルカリ金属塩);無水マレイン酸、無水イタコン酸等の、上記エチレン性不飽和ジカルボン酸の無水物等;が挙げられる。これらのなかでも、アクリル酸、メタクリル酸が好ましく、特にアクリル酸が好ましい。
ここに開示される技術は、(C)成分がヒドロキシ基含有モノマーを含む態様で好ましく実施することができる。すなわち、(C)成分がヒドロキシ基含有モノマーのみを含むか、ヒドロキシ基含有モノマーおよびカルボキシ基含有モノマーを含むことが好ましい。(C)成分がヒドロキシ基含有モノマーおよびカルボキシ基含有モノマーを含む場合、(C)成分全体に占めるヒドロキシ基含有モノマーの割合は、凡そ50重量%超であることが好ましく、凡そ80重量%以上(例えば凡そ90重量%以上)であることがより好ましい。(C)成分に占めるヒドロキシ基含有モノマーの割合を多くすることは、カルボキシ基に起因する金属腐食等を低減する観点等から好ましい。ここに開示される技術は、モノマー成分がカルボキシ基含有モノマーを実質的に含有しない態様で好ましく実施され得る。例えば、モノマー成分に占めるカルボキシ基含有モノマーの割合を、凡そ1重量%未満、好ましくは凡そ0.5重量%未満、より好ましくは凡そ0.2重量%未満とすることができる。
上記(A)成分がモノマー成分全体に占める割合は特に限定されない。粘着剤に適度な凝集性を付与する観点から、上記(A)成分の割合は、通常、凡そ90重量%以下であることが適当であり、凡そ85重量%以下であることが好ましく、凡そ75重量%以下であることがより好ましい。好ましい一態様において、上記(A)成分の割合を凡そ70重量%以下(より好ましくは凡そ60重量%以下、さらには凡そ50重量%以下、例えば凡そ45重量%以下)としてもよい。また、被着体に対する初期接着性等の観点から、上記(A)成分の割合は、凡そ30重量%以上であることが好ましく、凡そ35重量%以上であることがより好ましい。一態様において、モノマー成分全体に占める(A)成分の割合を例えば30~75重量%程度とすることができる。
上記モノマー成分が(B)成分を含む場合、モノマー成分全体に占める(B)成分の割合は特に限定されない。粘着特性のバランスを考慮して、上記(B)成分の割合は、通常、凡そ3重量%以上であることが適当であり、凡そ5重量%以上であることが好ましく、凡そ8重量%以上であることがより好ましく、凡そ10重量%以上であってもよい。また、被着体に対する初期接着性等の観点から、上記(B)成分の割合は、凡そ65重量%以下であることが適当であり、凡そ60重量%以下であることが好ましく、凡そ55重量%以下(さらには凡そ50重量%以下、例えば凡そ50重量%未満)であることがより好ましい。好ましい一態様において、モノマー成分全体に占める(B)成分の割合を凡そ15重量%以上としてもよく、凡そ20重量%以上としてもよく、凡そ25重量%以上、さらには凡そ30重量%以上(例えば凡そ35重量%以上)としてもよい。一態様において、モノマー成分全体に占める(B)成分の割合を例えば20~50重量%程度とすることができる。
上記モノマー成分が(C)成分を含む場合、モノマー成分全体に占める(C)成分の割合は特に限定されない。被着体に対する初期接着性等の観点から、上記(C)成分の割合は、典型的には凡そ3重量%以上であり、凡そ5重量%以上であることが好ましく、凡そ8重量%以上(例えば凡そ10重量%以上)であることがより好ましい。また、粘着剤に適度な凝集性を付与する観点から、上記(C)成分の割合は、通常、凡そ35重量%以下であることが好ましく、凡そ30重量%以下であることがより好ましく、凡そ25重量%以下であることがさらに好ましい。一態様において、上記(C)成分の割合を例えば15~30重量%程度とすることができる。
(任意モノマー)
上記アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分は、必要に応じて、上述した(A)成分、(B)成分および(C)成分以外のモノマー(以下「任意モノマー」ともいう。)を含んでいてもよい。
上記任意モノマーの例として、(A)成分に属しないアルキル(メタ)アクリレート、すなわちアルキル基の炭素数が1であるかまたは19以上(例えば19~24)のアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。そのようなアルキル(メタ)アクリレートの具体例として、メチル(メタ)アクリレート、n-ノナデシル(メタ)アクリレート、イソノナデシル(メタ)アクリレート、n-エイコシル(メタ)アクリレート、イソエイコシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記任意モノマーの他の例として、ヒドロキシ基およびカルボキシ基以外の官能基を含有するモノマーが挙げられる。このような官能基含有モノマーは、アクリル系ポリマーに架橋点を導入したり、アクリル系ポリマーの凝集力を高めたりする目的で使用され得る。官能基含有モノマーとしては、例えば(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマー;例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノ基含有モノマー;例えばスチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー;例えば2-ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等のリン酸基含有モノマー;例えばジアセトン(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリレート、ビニルメチルケトン、ビニルアセトアセテート等のケト基含有モノマー;例えば2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート等のイソシアネート基含有モノマー;例えばメトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、等のアルコキシ基含有モノマー;例えば3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシリル基含有モノマー;等が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
ここに開示される技術におけるモノマー成分は、アクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)の調整や凝集力の向上等の目的で、上記任意モノマーとして、上記(A),(B),(C)成分と共重合可能であって上記で例示した以外の共重合性モノマーを含んでいてもよい。そのような共重合性モノマーとしては、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル;例えばスチレン、置換スチレン(α-メチルスチレン等)、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物;例えばアリール(メタ)アクリレート(例えばフェニル(メタ)アクリレート)、アリールオキシアルキル(メタ)アクリレート(例えばフェノキシエチル(メタ)アクリレート)、アリールアルキル(メタ)アクリレート(例えばベンジル(メタ)アクリレート)等の芳香族性環含有(メタ)アクリレート;例えばエチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、イソブチレン等のオレフィン系モノマー;例えば塩化ビニル、塩化ビニリデン等の塩素含有モノマー;例えばメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル系モノマー;その他、ビニル基を重合したモノマー末端にラジカル重合性ビニル基を有するマクロモノマー等が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの任意モノマーの使用量は特に限定されず、適宜決定することができる。通常、任意モノマーの合計使用量は、モノマー成分の凡そ50重量%未満とすることが適当であり、凡そ30重量%以下とすることが好ましく、凡そ20重量%以下とすることがより好ましい。ここに開示される技術は、任意モノマーの合計使用量がモノマー成分の凡そ10重量%以下(例えば凡そ5重量%以下)である態様で好ましく実施され得る。任意モノマーを使用する場合には、接着力や凝集力を高める効果を適切に発揮する観点から、該任意モノマーの使用量をモノマー成分の凡そ0.5重量%以上とすることが適当であり、凡そ0.8重量%以上とすることが好ましい。また、ここに開示される技術は、任意モノマーを実質的に使用しない態様(例えば、任意モノマーの使用量がモノマー成分の凡そ0.3重量%以下、典型的には凡そ0.1重量%以下である態様)でも好ましく実施され得る。
上述した(A)成分、(B)成分、(C)成分および任意モノマーは、典型的には単官能モノマーである。上記モノマー成分は、このような単官能モノマーの他に、粘着剤の貯蔵弾性率調整等の目的で、必要に応じて適切な量の多官能モノマーを含有することができる。ここで、本明細書において単官能モノマーとは、(メタ)アクリロイル基やビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性官能基(典型的にはラジカル重合性官能基)を1つのみ有するモノマーを指す。これに対して多官能モノマーとは、後述するように、このような重合性官能基を少なくとも2つ有するモノマーを指す。
(多官能モノマー)
多官能モノマーは、(メタ)アクリロイル基やビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性官能基(典型的にはラジカル重合性官能基)を少なくとも2つ有するモノマーである。多官能モノマーの例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2-エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート,1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート等の、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル;アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート等が挙げられる。これらのうちの好適例として、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートおよびジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。なかでも好ましい例として、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)が挙げられる。多官能性モノマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。反応性等の観点から、通常は、2以上のアクリロイル基を有する多官能モノマーが好ましい。
多官能モノマーの使用量は特に限定されず、該多官能モノマーの使用目的が達成されるように適切に設定することができる。いくつかの態様において、多官能モノマーの使用量は、上記モノマー成分の凡そ3重量%以下とすることができ、凡そ2重量%以下とすることが好ましく、凡そ1重量%以下とすることがより好ましい。いくつかの好ましい態様において、多官能モノマーの使用量は、上記モノマー成分の1重量%未満であり、0.8重量%未満であってもよく、0.6重量%未満でもよく、0.5重量%未満でもよく、0.4重量%未満でもよい。多官能モノマーの使用量を上記範囲で制限することにより、粘着剤の成型後残存応力は低下する傾向がある。多官能モノマーを使用する場合における使用量の下限は、0重量%より大きければよく、特に限定されない。通常は、多官能モノマーの使用量をモノマー成分の凡そ0.001重量%以上(例えば凡そ0.01重量%以上)とすることが適当であり、0.05重量%以上としてもよく、0.1重量%以上としてもよい。
特に限定するものではないが、上記モノマー成分全体に占める(A)成分、(B)成分および(C)成分の合計量の割合は、典型的には凡そ50重量%超であり、好ましくは凡そ70重量%以上、より好ましくは凡そ80重量%以上、さらに好ましくは凡そ90重量%以上である。ここに開示される技術は、上記合計量の割合が凡そ95重量%以上(例えば凡そ99重量%以上)である態様で好ましく実施され得る。上記合計量の割合が100重量%であってもよい。ここに開示される技術は、上記モノマー成分全体に占める上記合計量の割合が99.999重量%以下(例えば99.99重量%以下)である態様で好ましく実施され得る。
上記モノマー成分の組成に対応する共重合体のTgは、特に限定されず、例えば凡そ-70℃以上であり得る。いくつかの態様において、上記共重合体のTgは、例えば凡そ-60℃以上であってよく、凡そ-55℃以上であることが好ましく、凡そ-50℃以上であることがより好ましく、凡そ-45℃以上であってもよい。ここに開示される技術は、上記共重合体のTgが凡そ-40℃以上(例えば凡そ-35℃以上)であるか、さらには凡そ-30℃以上である態様でも好適に実施され得る。また、上記共重合体のTgは、通常、凡そ0℃以下であることが適当であり、粘着体の被着体への接着性や低温特性等の観点から、凡そ-10℃以下であることが好ましい。いくつかの態様において、上記共重合体のTgは、凡そ-15℃以下であってもよく、-20℃以下であってもよい。ここに開示される技術は、例えば、上記共重合体のTgが凡そ-30℃以上かつ凡そ-10℃以下である態様で好ましく実施され得る。
ここで、モノマー成分の組成に対応する共重合体のTgとは、上記モノマー成分の組成に基づいて、Foxの式により求められるTgをいう。Foxの式とは、以下に示すように、共重合体のTgと、該共重合体を構成するモノマーのそれぞれを単独重合したホモポリマーのガラス転移温度Tgiとの関係式である。
1/Tg=Σ(Wi/Tgi)
なお、上記Foxの式において、Tgは共重合体のガラス転移温度(単位:K)、Wiは該共重合体におけるモノマーiの重量分率(重量基準の共重合割合)、Tgiはモノマーiのホモポリマーのガラス転移温度(単位:K)を表す。ただし、本明細書において、Tgの計算は単官能モノマーのみを考慮して行うものとする。したがって、モノマー成分が多官能モノマーを含む場合には、該モノマー成分に含まれる単官能モノマーの合計量を100重量%として、各単官能モノマーのホモポリマーのTgおよび該単官能モノマーの上記合計量に対する重量分率に基づいてTgを算出する。
Tgの算出に使用するホモポリマーのガラス転移温度としては、公知資料に記載の値を用いるものとする。例えば、以下に挙げるモノマーについては、該モノマーのホモポリマーのガラス転移温度として、以下の値を使用する。
n-ブチルアクリレート -55℃
2-エチルヘキシルアクリレート -70℃
シクロヘキシルアクリレート 15℃
イソボルニルアクリレート 94℃
2-ヒドロキシエチルアクリレート -15℃
4-ヒドロキシブチルアクリレート -40℃
N-ビニルピロリドン 54℃
アクリル酸 106℃
メタクリル酸 228℃
上記で例示した以外のモノマーのホモポリマーのガラス転移温度については、「Polymer Handbook」(第3版、John Wiley & Sons, Inc., 1989)に記載の数値を用いるものとする。上記文献に複数種類の値が記載されているモノマーについては、最も高い値を採用する。公知資料にホモポリマーのガラス転移温度が記載されていない場合は、特開2007-51271号公報に記載された測定方法により得られる値を用いるものとする。メーカー等によりホモポリマーのガラス転移温度の公称値が提供されているモノマーについては、その公称値を採用してもよい。
(粘着剤組成物)
ここに開示される技術における粘着体は、上述のような組成のモノマー成分を、重合物、未重合物(すなわち、重合性官能基が未反応である形態)、あるいはこれらの混合物の形態で含む粘着剤組成物を用いて形成され得る。上記粘着剤組成物は、有機溶媒中に粘着剤(粘着成分)を含む形態の組成物(溶剤型粘着剤組成物)、粘着剤が水性溶媒に分散した形態の組成物(水分散型粘着剤組成物)、紫外線や放射線等の活性エネルギー線により硬化して粘着剤を形成するように調製された組成物(活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物)、加熱溶融状態で塗工され、室温付近まで冷えると粘着剤を形成するホットメルト型粘着剤組成物等の、種々の形態であり得る。
ここで、本明細書において「活性エネルギー線」とは、重合反応、架橋反応、開始剤の分解等の化学反応を引き起こし得るエネルギーをもったエネルギー線を指す。ここでいう活性エネルギー線の例には、紫外線、可視光線、赤外線のような光や、α線、β線、γ線、電子線、中性子線、X線のような放射線等が含まれる。
上記粘着剤組成物は、典型的には、該組成物のモノマー成分のうち少なくとも一部(モノマーの種類の一部であってもよく、分量の一部であってもよい。)を重合物の形態で含む。上記重合物を形成する際の重合方法は特に限定されず、従来公知の各種重合方法を適宜採用することができる。例えば、溶液重合、エマルション重合、塊状重合等の熱重合(典型的には、熱重合開始剤の存在下で行われる。);紫外線等の光を照射して行う光重合(典型的には、光重合開始剤の存在下で行われる。);β線、γ線等の放射線を照射して行う放射線重合;等を適宜採用することができる。なかでも光重合が好ましい。これらの重合方法において、重合の態様は特に限定されず、従来公知のモノマー供給方法、重合条件(温度、時間、圧力、光照射量、放射線照射量等)、モノマー以外の使用材料(重合開始剤、界面活性剤等)等を適宜選択して行うことができる。
重合にあたっては、重合方法や重合態様等に応じて、公知または慣用の光重合開始剤や熱重合開始剤を使用し得る。このような重合開始剤は、1種を単独でまたは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
光重合開始剤としては、特に限定されるものではないが、例えばケタール系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、α-ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤等を用いることができる。
熱重合開始剤としては、特に限定されるものではないが、例えばアゾ系重合開始剤、過酸化物系開始剤、過酸化物と還元剤との組合せによるレドックス系開始剤、置換エタン系開始剤等を使用することができる。なお、熱重合は、例えば20~100℃(典型的には40~80℃)程度の温度で好ましく実施され得る。
このような熱重合開始剤または光重合開始剤の使用量は、重合方法や重合態様等に応じた通常の使用量とすることができ、特に限定されない。例えば、重合対象のモノマー100重量部に対して重合開始剤凡そ0.001~5重量部(典型的には凡そ0.01~2重量部、例えば凡そ0.01~1重量部)を用いることができる。
(モノマー成分の重合物と未重合物とを含む粘着剤組成物)
好ましい一態様に係る粘着剤組成物は、該組成物のモノマー成分(原料モノマー)の少なくとも一部を含むモノマー混合物の重合反応物を含む。典型的には、上記モノマー成分の一部を重合物の形態で含み、残部を未重合物(未反応のモノマー)の形態で含む。モノマー成分の重合物と未重合物とを含む粘着剤組成物は、例えば、活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物として好ましく用いられ得る。上記モノマー混合物の重合反応物は、該モノマー混合物を少なくとも部分的に重合させることにより調製することができる。
上記重合反応物は、好ましくは上記モノマー混合物の部分重合物である。このような部分重合物は、上記モノマー混合物に由来する重合物と未反応のモノマーとの混合物であって、典型的にはシロップ状(粘性のある液状)を呈する。以下、かかる性状の部分重合物を「モノマーシロップ」または単に「シロップ」ということがある。
上記重合反応物を得る際の重合方法は特に制限されず、上述のような各種重合方法を適宜選択して用いることができる。効率や簡便性の観点から、光重合法を好ましく採用し得る。光重合によると、光の照射量(光量)等の重合条件によって、上記モノマー混合物の重合転化率を容易に制御することができる。
上記部分重合物におけるモノマー混合物の重合転化率(モノマーコンバーション)は、特に限定されない。上記重合転化率は、例えば凡そ70重量%以下とすることができ、凡そ60重量%以下とすることが好ましい。上記部分重合物を含む粘着剤組成物の調製容易性や塗工性等の観点から、通常、上記重合転化率は、凡そ50重量%以下が適当であり、凡そ40重量%以下(例えば凡そ35重量%以下)が好ましい。重合転化率の下限は特に制限されないが、典型的には凡そ1重量%以上であり、通常は凡そ5重量%以上とすることが適当である。
上記モノマー混合物の部分重合物を含む粘着剤組成物は、例えば、原料モノマーの全部を含むモノマー混合物を適当な重合方法(例えば光重合法)により部分重合させることにより容易に得ることができる。上記部分重合物を含む粘着剤組成物には、必要に応じて用いられる他の成分(例えば、光重合開始剤、多官能モノマー、架橋剤等)が配合され得る。そのような他の成分を配合する方法は特に限定されず、例えば上記モノマー混合物にあらかじめ含有させてもよく、上記部分重合物に添加してもよい。
また、ここに開示される粘着剤組成物は、モノマー成分(原料モノマー)のうち一部の種類のモノマーを含むモノマー混合物の部分重合物または完全重合物が、残りの種類のモノマーまたはその部分重合物に溶解した形態であってもよい。このような形態の粘着剤組成物も、モノマー成分の重合物と未重合物とを含む粘着剤組成物の例に含まれる。なお、本明細書において「完全重合物」とは、重合転化率が95重量%超であることをいう。
このようにモノマー成分の重合物と未重合物とを含む粘着剤組成物から粘着剤を形成する際の硬化方法(重合方法)としては、光重合法を好ましく採用することができる。光重合法によって調製された重合反応物を含む粘着剤組成物では、その硬化方法として光重合法を採用することが特に好適である。光重合法により得られた重合反応物は、すでに光重合開始剤を含むので、この重合反応物を含む粘着剤組成物をさらに硬化させて粘着剤を形成する際、新たな光重合開始剤を追加しなくても光硬化し得る。あるいは、光重合法により調製された重合反応物に、必要に応じて光重合開始剤を追加した組成の粘着剤組成物であってもよい。追加する光重合開始剤は、重合反応物の調製に使用した光重合開始剤と同じでもよく、異なってもよい。光重合以外の方法で調製された粘着剤組成物は、光重合開始剤を添加することにより光硬化性とすることができる。光硬化性の粘着剤組成物は、厚手の粘着剤層であっても容易に形成し得るという利点を有する。好ましい一態様において、粘着剤組成物から粘着剤を形成する際の光重合は、紫外線照射により行うことができる。紫外線照射には、公知の高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプなどを用いることができる。
(モノマー成分を完全重合物の形態で含む粘着剤組成物)
好ましい他の一態様に係る粘着剤組成物は、該剤組成物のモノマー成分を完全重合物の形態で含む。このような粘着剤組成物は、例えば、モノマー成分の完全重合物であるアクリル系ポリマーを有機溶媒中に含む溶剤型粘着剤組成物、上記アクリル系ポリマーが水性溶媒に分散した水分散型粘着剤組成物、等の形態であり得る。
(架橋剤)
ここに開示される粘着剤組成物は、架橋剤を含有することができる。架橋剤としては、粘着剤の分野において公知ないし慣用の架橋剤を使用することができる。例えば、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、シリコーン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、シラン系架橋剤、アルキルエーテル化メラミン系架橋剤、金属キレート系架橋剤等を挙げることができる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
架橋剤の含有量(2種以上の架橋剤を含む場合にはそれらの合計量)は特に限定されない。接着力や凝集力等の粘着特性をバランスよく発揮する粘着剤を実現する観点から、架橋剤の含有量は、粘着剤組成物に含まれるモノマー成分100重量部に対して、通常は凡そ5重量部以下とすることが適当であり、凡そ0.001~5重量部とすることが好ましく、凡そ0.001~4重量部とすることがより好ましく、凡そ0.001~3重量部とすることがさらに好ましい。あるいは、上述のような架橋剤を含まない粘着剤組成物であってもよい。
(オリゴマー)
ここに開示される粘着剤組成物には、接着力向上等の観点から、オリゴマー(例えばアクリル系オリゴマー)を含有させることができる。アクリル系オリゴマーとしては、上記モノマー成分の組成に対応する共重合体のTg(典型的には、粘着剤組成物から形成される粘着剤に含まれるアクリル系ポリマーのTgに概ね対応する。)よりもTgが高い重合体を用いることが好ましい。オリゴマーを含有させることにより、粘着剤の接着力を向上させ得る。
上記オリゴマー(例えばアクリル系オリゴマー)は、Tgが約0℃以上約300℃以下、好ましくは約20℃以上約300℃以下、さらに好ましくは約40℃以上約300℃以下であることが望ましい。Tgが上記範囲内であることにより、接着力を好適に向上することができる。なお、オリゴマーのTgは、上記モノマー成分の組成に対応する共重合体のTgと同じく、Foxの式に基づいて計算される値である。
オリゴマー(例えばアクリル系オリゴマー)の重量平均分子量(Mw)は、典型的には約1000以上約30000未満であり、好ましくは約1500以上約20000未満、さらに好ましくは約2000以上約10000未満であり得る。Mwが上記範囲内にあることで、良好な接着力や保持特性が得られるため好ましい。オリゴマーのMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定し、標準ポリスチレン換算の値として求めることができる。具体的には、東ソー株式会社製のHPLC8020に、カラムとしてTSKgelGMH-H(20)×2本を用いて、テトラヒドロフラン溶媒で流速約0.5ml/分の条件にて測定される。
オリゴマー(具体的には、アクリル系オリゴマー)を構成するモノマーとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレートのようなアルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートのような(メタ)アクリル酸と脂環族アルコールとのエステル;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートのようなアリール(メタ)アクリレート;テルペン化合物誘導体アルコールから得られる(メタ)アクリレート;等を挙げることができる。このような(メタ)アクリレートは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
アクリル系オリゴマーとしては、イソブチル(メタ)アクリレートやt-ブチル(メタ)アクリレートのようなアルキル基が分岐構造を有するアルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレートやイソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートのような(メタ)アクリル酸と脂環式アルコールとのエステル;フェニル(メタ)アクリレートやベンジル(メタ)アクリレートのようなアリール(メタ)アクリレートなどの環状構造を有する(メタ)アクリレート;等に代表される、比較的嵩高い構造を有するアクリル系モノマーをモノマー単位として含んでいることが、粘着剤層の接着性をさらに向上させることができる観点から好ましい。また、アクリル系オリゴマーの合成の際や粘着剤層の作製の際に紫外線を採用する場合には、重合阻害を起こしにくいという点で、飽和結合を有するものが好ましく、アルキル基が分岐構造を有するアルキル(メタ)アクリレート、または脂環式アルコールとのエステルを、アクリル系オリゴマーを構成するモノマーとして好適に用いることができる。
このような点から、好適なアクリル系オリゴマーとしては、例えば、ジシクロペンタニルメタクリレート(DCPMA)、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)、イソボルニルメタクリレート(IBXMA)、イソボルニルアクリレート(IBXA)、ジシクロペンタニルアクリレート(DCPA)、1-アダマンチルメタクリレート(ADMA)、1-アダマンチルアクリレート(ADA)の各単独重合体のほか、CHMAとイソブチルメタクリレート(IBMA)との共重合体、CHMAとIBXMAとの共重合体、CHMAとアクリロイルモルホリン(ACMO)との共重合体、CHMAとジエチルアクリルアミド(DEAA)との共重合体、ADAとメチルメタクリレート(MMA)の共重合体、DCPMAとIBXMAとの共重合体、DCPMAとMMAの共重合体、等を挙げることができる。
ここに開示される粘着剤組成物にオリゴマー(例えばアクリル系オリゴマー)を含有させる場合、その含有量は特に限定されない。オリゴマーの添加効果を効果的に発現させる観点から、オリゴマーの含有量は、該粘着剤組成物に含まれるモノマー成分100重量部に対して凡そ1重量部以上とすることが好ましく、凡そ3重量部以上とすることがより好ましく、凡そ5重量部以上であってもよい。また、好ましい貯蔵弾性率を有する粘着剤層を実現しやすくする観点から、オリゴマーの含有量は、通常、該粘着剤組成物に含まれるモノマー成分100重量部に対して凡そ20重量部以下とすることが好ましく、凡そ15重量部以下とすることがより好ましく、凡そ10重量部以下とすることがさらに好ましい。また、ここに開示される技術は、オリゴマー(例えばアクリル系オリゴマー)を使用しない態様でも実施され得る。
その他、ここに開示される粘着剤組成物には、粘着剤の分野において公知の各種添加剤を必要に応じて含有させることができる。例えば、染料や顔料等の着色剤、帯電防止剤、界面活性剤、可塑剤、粘着付与剤、表面潤滑剤、レベリング剤、軟化剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、無機または有機の充填剤、金属粉、粒子状物、箔状物などを、用途に応じて適宜添加することができる。
ここに開示される技術において、粘着体の形成に用いられる粘着剤組成物としては、活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物(典型的には光硬化型粘着剤組成物)を好ましく使用し得る。環境衛生等の観点から、無溶剤型の粘着剤組成物が好ましい。ここで、本明細書において無溶剤型の粘着剤組成物とは、溶媒を実質的に含まない粘着剤組成物をいう。例えば、溶媒の含有量が約5重量%以下(より好ましくは約3重量%以下、例えば約0.5重量%以下)である無溶剤型粘着剤組成物が好ましい。なお、上記溶媒とは、粘着体の形成過程で除去されるべき揮発性成分、すなわち最終的に形成される粘着体の構成成分となることが意図されていない揮発性成分をいう。
(基材レス粘着体)
いくつかの好ましい態様では、上記粘着体は、粘着剤により構成された粘着剤層からなる基材レス粘着体である。一般に、基材レスの粘着体は、基材(芯材)の両側に粘着剤を有する基材付き粘着体に比べて、より高い変形性や柔軟性を示す。このため、基材レス粘着体を有する積層シートは、該積層シートの熱成形性の観点から有利であり、上記粘着体の被着体表面に対する密着性の観点からも好ましい。ここに開示される積層シートは、基材レス粘着体の第一面が非剥離性の支持フィルム(第一フィルム)に固着し、該基材レス粘着体の第二面に上記第二フィルム(剥離フィルム)が積層した形態であってもよく、基材レス粘着体の第一面に剥離フィルムである第一フィルムが積層し、該基材レス粘着体の第二面に上記第二フィルム(剥離フィルム)が積層した形態であってもよい。
基材レス粘着体を構成する粘着剤層の厚さは、特に限定されない。粘着剤層の厚さは、例えば1μm~1000μm程度であってよく、5μm~250μm程度とすることが適当である。いくつかの態様において、粘着剤層の厚さは、例えば10μm以上であってよく、20μm以上であることが好ましく、25μm以上であることがより好ましく、25μm超であってもよく、30μm以上でもよく、35μm以上でもよく、40μm以上でもよく、45μm以上でもよい。粘着剤層の厚さが大きくなると、該粘着剤層における応力分散能は高くなる傾向にある。このことは、熱成形時またはその後の経時により粘着剤層の表面から剥離フィルムが部分的に浮く事象を抑制する観点から有利である。一方、粘着剤層の厚さが過度に大きくなると、積層シートに熱成形や裁断等の加工を施す際に、積層シートの外縁から粘着剤がはみ出すことによる不都合が発生し得る。このため、いくつかの態様において、粘着剤層の厚さは、例えば200μm以下であることが適当であり、150μm以下であってもよく、100μm以下でもよく、70μm以下でもよい。
(基材付き粘着体)
ここに開示される積層シートは、基材(芯材)の両側に粘着剤を有する基材付き粘着体を備える形態であってもよい。このような基材付き粘着体は、例えば、基材に直接付与した粘着剤組成物を硬化(乾燥、架橋、反応等)させて粘着剤を形成する手法や、剥離性表面上(第二フィルムまたは第一フィルムの剥離面上であり得る。)上に形成した粘着剤を基材に貼り合わせる手法や、これらを組み合わせた手法等により作製することができる。
基材付き粘着体における基材としては、特に限定されず、例えば樹脂フィルム、紙、布、金属箔、これらの複合体等を用いることができる。樹脂フィルムの例としては、第一フィルムまたは第二フィルムのベースフィルムとして例示した各種のプラスチックフィルムが挙げられる。紙の例としては、和紙、クラフト紙、グラシン紙、上質紙、合成紙、トップコート紙等が挙げられる。布の例としては、各種繊維状物質の単独または混紡等による織布や不織布等が挙げられる。上記繊維状物質としては、綿、スフ、マニラ麻、パルプ、レーヨン、アセテート繊維、ポリエステル繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維等が例示される。金属箔の例としては、アルミニウム箔、銅箔等が挙げられる。熱成形による形状付与性の観点から、基材として樹脂フィルムを好ましく採用し得る。強度や熱成形性の観点から好ましい基材として、ポリエステル系フィルム(PET系フィルム等)、ポリオレフィン系フィルム等が挙げられる。基材の一方または両方の表面には、支持フィルムの粘着体側表面と同様に、下塗り剤の塗布、コロナ放電処理、プラズマ処理等の表面処理が施されていてもよい。
基材の厚さは特に限定されず、積層シートの使用目的や使用態様に応じて選択し得る。いくつかの態様において、基材の厚さは、例えば0.5μm以上であってよく、基材の取扱い性等の観点から2μm以上であることが好ましく、5μm以上でもよい。また、基材の厚さは、例えば200μm以下であってよく、粘着体の薄型化や積層シートの成形性の観点から150μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましく、50μm以下でもよく、25μm以下でもよく、10μm以下でもよい。また、基材付き粘着体において、基材の両側に配置される粘着剤層の厚さ(基材の片側あたりの厚さ)としては、上述した基材レス粘着体の厚さと同様の範囲から選択し得る。
<積層シート>
ここに開示される積層シートを製造する方法は特に限定されない。例えば、第二フィルムの剥離面に粘着剤組成物を塗布して硬化(乾燥、架橋、反応等)させることにより粘着体(粘着剤層)を形成し、この粘着体に第一フィルムを積層することにより、積層シートを得ることができる。また、第一フィルムに粘着剤組成物を塗布して硬化(乾燥、架橋、反応等)させることにより粘着体を形成し、この粘着体に第二フィルムの剥離面を積層することによっても積層シートを得ることができる。あるいは、第二フィルムの剥離面と第一フィルムの剥離面との間に挟まれた粘着剤組成物を乾燥または硬化させて粘着体を形成することにより積層シートを作製してもよい。また、第二フィルムの剥離面と別の剥離フィルム(工程材)の剥離面との間に挟まれた粘着剤組成物を乾燥または硬化させて粘着体を形成した後、上記工程材を剥がして露出した粘着面に第一フィルムを積層することによって積層シートを作製してもよい。粘着剤組成物の塗布方法としては、従来公知の各種の方法を使用可能である。具体的には、例えば、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコーターなどによる押出しコート法などの方法が挙げられる。
第一フィルムの厚さは特に限定されず、例えば2μm~500μm程度の範囲から選択し得る。積層シートの製造時や使用時における第一フィルムの取扱い性等の観点から、第一フィルムの厚さは、5μm以上であることが有利であり、10μm以上であることが好ましく、25μm以上であることがより好ましい。いくつかの態様において、第一フィルムの厚さは、35μm以上であることが好ましく、40μm以上であることがより好ましく、45μm以上でもよく、50μm以上でもよく、60μm以上でもよく、70μm以上でもよい。また、積層シートの厚さが必要以上に大きくなることを避ける観点から、第一フィルムの厚さは、通常、300μm以下であることが適当であり、250μm以下であることが好ましく、200μm以下でもよく、190μm以下でもよく、150μm以下でもよく、130μm以下でもよく、110μm以下でもよく、90μm以下でもよく、80μm以下でもよい。
第二フィルムの厚さは特に限定されず、例えば2μm~500μm程度の範囲から選択し得る。第一フィルムと同様の観点から、第二フィルムの厚さは、有利には5μm以上、好ましくは10μm以上、より好ましくは25μm以上であり、いくつかの態様では35μm以上であることが好ましく、40μm以上であることがより好ましく、45μm以上でもよく、50μm以上でもよく、60μm以上でもよく、70μm以上でもよい。また、第二フィルムの厚さは、通常、300μm以下であることが適当であり、250μm以下であることが好ましく、200μm以下でもよく、190μm以下でもよく、150μm以下でもよく、130μm以下でもよく、110μm以下でもよい。いくつかの態様において、第二フィルムの厚さは、90μm以下でもよく、80μm以下でもよい。
(剥離力)
ここに開示される積層シートは、120℃で1分間の熱プレス後において、粘着体からの第二フィルムの剥離力(すなわち、剥離力P2A)が10N/50mm未満であることが適当であり、5N/50mm以下であることが好ましい。剥離力P2Aが5N/50mm以下である積層シートは、該積層シートが熱成形されることを想定した上記熱プレスの後においても第二フィルムの粘着体からの剥離性がよいので、該粘着体から上記第二フィルムを剥離する際の作業性がよい。いくつかの態様において、剥離力P2Aは、3N/50mm以下であることが好ましく、2N/50mm以下であることがより好ましく、1.5N/50mm以下でもよく、1.0N/50mm以下でもよい。剥離力P2Aを低減することは、粘着体から第二フィルムを剥離することによって上記粘着体第二面の形状が乱れたり、粘着体の第一面が第一フィルムまたは該第一面が貼り付けられている被着体から浮いたりする事象を避ける観点からも好ましい。
一方、熱成形時またはその後の経時により(例えば、成形後の積層フィルムの保管中に)、成形された積層フィルムの粘着面から第二フィルムが部分的に粘着面から浮く事象を抑制する観点からは、剥離力P2Aが過度に小さすぎないことが有利である。かかる観点から、いくつかの態様において、剥離力P2Aは、0.05N/50mm以上(例えば0.05N/50mm超)であることが適当であり、0.10N/50mm以上であることが好ましく、0.15N/50mm以上でもよく、0.30N/50mm以上でもよく、0.50N/50mm以上でもよい。
ここに開示される積層シートの第一フィルムが剥離フィルムである場合、120℃で1分間の熱プレス後において、第一フィルムの粘着体からの剥離力(剥離力P1A)は、例えば0.01N/50mm~3N/50mm程度であり得る。いくつかの態様において、剥離力P1Aは、剥離力P2Aより低いことが好ましい。すなわち、上記熱プレス後における上記第一フィルムの上記粘着体からの剥離力は、上記第二フィルムの上記粘着体からの剥離力より低いことが好ましい。このように構成された積層シートは、例えば熱成形後、第二フィルムよりも先に第一フィルムを粘着体から剥離する態様で用いられて、第一フィルムを剥離する際に粘着体が第二フィルムから浮く事象を好適に抑制することができる。かかる事象をより確実に抑制する観点から、いくつかの態様において、剥離力P2A[N/50mm]と剥離力P1A[N/50mm]との差(P2A-P1A)は、0.02N/50mm以上であることが適当であり、0.05N/50mm以上であることが好ましく、0.10N/50mm以上であってもよい。
ここに開示される積層シートの第一フィルムが剥離フィルムである場合、いくつかの態様では、該積層シートの常態での(すなわち、熱プレス前の)評価において、第一フィルムの粘着体からの剥離力(剥離力P1B)は、第二フィルムの粘着体からの剥離力(剥離力P2B)より低いことが好ましい。このように構成された積層シートは、例えば熱成形前に第一フィルムを粘着体から剥がす使用態様(例えば、第一フィルムを剥がして露出した粘着面に別の剥離フィルムまたは非剥離性の部材を積層することを含む使用態様)において、第一フィルムを剥離する際に粘着体が第二フィルムから浮く事象を好適に抑制することができる。かかる事象をより確実に抑制する観点から、いくつかの態様において、剥離力P2B[N/50mm]と剥離力P1B[N/50mm]との差(P2B-P1B)は、0.02N/50mm以上であることが適当であり、0.05N/50mm以上であることが好ましく、0.10N/50mm以上であってもよい。剥離力P1BおよびP2Bの好適範囲は、上述した剥離力P1AおよびP2Aとそれぞれ同様であり得る。
なお、熱プレス後の第二フィルムの剥離力P2Aは、後述の実施例に記載の方法により測定される。熱プレス後の第一フィルムの剥離力P1Aも同様にして測定される。第一フィルムが剥離フィルムである積層シートにおける剥離力P2Aの測定は、まず第一フィルムを剥がして露出した粘着面に非剥離性の樹脂フィルム(例えば、厚さ50μm程度のPETフィルム)を積層し、その積層体を120℃で1分間熱プレスした後に測定するとよい。常態剥離力P2B,P1Bは、評価対象の積層シートに熱プレスを行わない他は、熱プレス後剥離力P2A,P1Aと同様にして測定される。
<用途>
ここに開示される積層シートは、熱成形した後に上記剥離フィルムを剥がして上記粘着面を被着体に貼り付ける態様での使用に適する。かかる特長を生かして、上記積層シートは、例えば、該積層シートに含まれる粘着体(第一面が第一フィルムまたは他の部材の非剥離性表面に固着している粘着体であり得る。)が非平面形状の被着体表面、例えば各種の携帯機器(ポータブル機器)を構成する部材に貼り付けられる態様で、該部材の固定、接合、放熱、伝熱、成形、装飾、保護、支持等の用途に好ましく用いられ得る。ここで「携帯」とは、単に携帯することが可能であるだけでは充分ではなく、個人(標準的な成人)が相対的に容易に持ち運び可能なレベルの携帯性を有することを意味するものとする。また、ここでいう携帯機器の例には、携帯電話、スマートフォン、タブレット型パソコン、ノート型パソコン、各種ウェアラブル機器、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、音響機器(携帯音楽プレーヤー、ICレコーダー等)、計算機(電卓等)、携帯ゲーム機器、電子辞書、電子手帳、電子書籍、車載用情報機器、携帯ラジオ、携帯テレビ、携帯プリンター、携帯スキャナ、携帯モデム等の携帯電子機器の他、機械式の腕時計や懐中時計、懐中電灯、手鏡等が含まれ得る。上記携帯電子機器を構成する部材の例には、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の画像表示装置に用いられる光学フィルムや表示パネル等が含まれ得る。ここに開示される積層シートは、該積層シートに含まれる粘着体が自動車、家電製品等における各種部材に貼り付けられる態様で、該部材の固定、接合、放熱、伝熱、成形、装飾、保護、支持等の用途にも好ましく用いられ得る。
ここに開示される積層シートは、該積層シートの少なくとも一部領域を加熱するとともに加圧して非平面形状(三次元形状)に成形したうえで、該積層シートに含まれる粘着体を被着体に貼り付ける態様で好ましく用いられ得る。上記成形から上記粘着体の貼付けまでの時間は、例えば1分以上、5分以上、30分以上、1時間以上、6時間以上、または1日以上であり得る。上記成形から上記粘着体の貼付けまでの時間の上限は特に制限されず、例えば1年以内、6か月以内等であり得る。積層シートを非平面形状に成形する際の加熱温度は、例えば90℃以上、100℃以上、110℃以上、120℃以上とすることができる。また、上記加熱温度は、例えば250℃以下、220℃以下、200℃以下、180℃以下または160℃以下とすることができる。上記加熱とともに加圧を行う時間は、例えば0.5秒以上、1秒以上または5秒以上とすることができ、また、30分以下、5分以下、60秒以下または40秒以下とすることができる。
この明細書により開示される事項には以下のものが含まれる。
〔1〕 シート形状の粘着体と、上記粘着体の第一面に積層している第一フィルムと、上記粘着体の第二面に積層している第二フィルムと、を含み、
上記第二フィルムは、樹脂フィルムおよび該樹脂フィルムの少なくとも上記粘着体側の表面に設けられた剥離処理層を含み、かつ以下の条件:
85℃におけるヤング率が500MPa以上である;および、
120℃におけるヤング率が500MPa以下である;
を満たす剥離フィルムであり、
前記粘着体の前記第二面の最大高さRzが1000nm以下である、積層シート。
〔2〕 上記第二フィルムに含まれる上記樹脂フィルムがポリエステル系フィルムである、上記〔1〕に記載の積層シート。
〔3〕 上記第二フィルムは、85℃におけるヤング率が500MPa以上2000MPa以下であり、120℃におけるヤング率が70MPa以上500MPa以下である、上記〔2〕に記載の積層シート。
〔4〕 上記第二フィルムに含まれる上記樹脂フィルムがポリオレフィン系フィルムである、上記〔1〕に記載の積層シート。
〔5〕 上記第二フィルムは、85℃におけるヤング率が500MPa以上1500MPa以下であり、120℃におけるヤング率が2MPa以上100MPa以下である、上記〔4〕に記載の積層シート。
〔6〕 上記第二フィルムは、120℃におけるヤング率に対する85℃におけるヤング率の比が3以上である、上記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の積層シート。
〔7〕 上記粘着体は、温度23℃、引張速度200mm/分の条件で300%引っ張り、300%引っ張った位置で150秒保持後に測定される応力が50N/cm2以下である、上記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の積層シート。
〔8〕 120℃で1分間の熱プレス後において、上記第二フィルムの上記粘着体からの剥離力が0.10N/50mm以上5N/50mm以下である、上記〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の積層シート。
〔9〕 上記第一フィルムは、上記粘着体の上記第一面に固着している支持フィルムである、上記〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の積層シート。
〔10〕 上記第一フィルムは剥離フィルムである、上記〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の積層シート。
〔11〕 上記第一フィルムの上記粘着体からの剥離力は、上記第二フィルムの上記粘着体からの剥離力より低い、上記〔10〕に記載の積層シート。
〔12〕 上記粘着体は、粘着剤により構成された粘着剤層である、上記〔1〕~〔11〕のいずれかに記載の積層シート。
〔13〕 ロール状に巻回されていてもよい平面形状である、上記〔1〕~〔12〕のいずれかに記載の積層シート。
〔14〕 上記〔1〕~〔13〕のいずれかに記載の積層シートが巻回された積層シートロール。
〔15〕 上記〔1〕~〔13〕のいずれかに記載の積層シートにおける第二フィルムである、剥離フィルム。
〔21〕 樹脂フィルムおよび該樹脂フィルムの少なくとも一方の表面に設けられた剥離処理層を含み、かつ以下の条件:
85℃におけるヤング率が500MPa以上である;および、
120℃におけるヤング率が500MPa以下である;
を満たし、
前記剥離処理層表面の最大高さRzが1000nm以下である、剥離フィルム。
〔22〕 上記樹脂フィルムがポリエステル系フィルムである、上記〔21〕に記載の剥離フィルム。
〔23〕 85℃におけるヤング率が500MPa以上2000MPa以下であり、120℃におけるヤング率が70MPa以上500MPa以下である、上記〔22〕に記載の剥離フィルム。
〔24〕 上記樹脂フィルムがポリオレフィン系フィルムである、上記〔21〕に記載の剥離フィルム。
〔25〕 85℃におけるヤング率が500MPa以上1500MPa以下であり、120℃におけるヤング率が2MPa以上100MPa以下である、上記〔24〕に記載の剥離フィルム。
〔26〕 120℃におけるヤング率に対する85℃におけるヤング率の比が3以上である、上記〔21〕~〔25〕のいずれかに記載の剥離フィルム。
〔27〕 120℃における破断時伸びが230%以上である、上記〔21〕~〔26〕のいずれかに記載の剥離フィルム。
〔28〕 上記〔1〕~〔13〕のいずれかに記載の積層シートの第二フィルムとして用いられる、上記〔21〕~〔27〕のいずれかに記載の剥離フィルム。
〔29〕 上記〔21〕~〔28〕のいずれかに記載の剥離フィルムを製造する方法であって、上記樹脂フィルムの一方の表面に剥離処理剤を塗布することと、上記剥離処理剤が塗布された樹脂フィルムを40℃以上110℃以下の温度に加熱することと、を包含する、剥離フィルムの製造方法。
〔31〕 上記〔1〕~〔13〕のいずれか一項に記載の積層シートを用意することと、
上記積層シートの少なくとも一部領域を加熱するとともに加圧して非平面形状に成形することと、を包含する、積層シートの加工方法。
〔32〕 上記加熱を90℃以上250℃以下の温度で行う、上記〔31〕に記載の加工方法。
〔33〕 上記非平面形状は、上記積層シートの一方の面に凹または凸を有し、他方の面に該一方の面の凹に対応する凸または該一方の面の凸に対応する凹を有する湾曲形状を含む、上記〔31〕または〔32〕に記載の加工方法。
〔34〕 上記〔31〕~〔33〕のいずれかに記載の加工方法により加工された、非平面形状に成形された領域を含む積層シート。
〔35〕 非平面形状を有する第一の被着体表面と、上記第一の被着体表面に対応する(相補的な)非平面形状を有する第二の被着体表面と、を接合する方法であって:
上記第一の被着体表面の非平面形状に応じた適切な非平面形状に成形された積層シートを用意すること、ここで、上記積層シートは、シート形状の粘着体と、上記粘着体の第一面に積層している剥離フィルムである第一フィルムと、上記粘着体の第二面に積層している剥離フィルムである第二フィルムとを含み、上記第二フィルムは樹脂フィルムおよび該樹脂フィルムの少なくとも上記粘着体側の表面に設けられた剥離処理層を含み、上記第二フィルムは85℃におけるヤング率が500MPa以上、120℃におけるヤング率が500MPa以下であり、上記粘着体の第二面の最大高さRzが1000nm以下である;
上記粘着体から上記第一フィルムを剥がして上記粘着体の第一面を第一の被着体表面に貼り付けること;および、
上記第二フィルムを剥がして上記粘着体の第二面を第二の被着体表面に貼り付けること;
を包含する、接合方法。
〔36〕 上記非平面形状に成形された積層シートとして、上記〔1〕~〔13〕のいずれかに記載の積層シートのうち上記第一フィルムが剥離フィルムである積層シートを上記非平面形状に成形したものを使用する、上記〔35〕に記載の接合方法。
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる具体例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明中の「部」および「%」は、特に断りがない限り重量基準である。
<測定および評価>
(ヤング率)
評価対象のフィルムを全長120mm、平行部幅10mmのダンベル形状にカットして試験片を作製する。この試験片を、チャック間距離30mmで引張試験機にセットし、85℃または120℃の測定雰囲気に投入して2分後に、50mm/分の引張速度で引張試験を開始する。得られた応力(縦軸)-歪(横軸)曲線から微小変形領域(歪5%以内)の5点を選定し、線形近似式より求められる傾きからヤング率を求める。
(破断時伸び)
上記ヤング率の測定において120℃の測定雰囲気で引張試験を行った際の結果から破断時伸びを求める。
(粘着面の最大高さRz)
粘着体の第二面(第二フィルム側粘着面)の最大高さRzは、以下のようにして測定する。積層シートを20mm×50mmのサイズにカットして評価用サンプルとする。この評価用サンプルから第二フィルムを剥がして粘着面(第二面)を露出させ、スライドガラスS1214(松浪硝子工業製)上に水を1滴滴下し、その上に評価用サンプルの第一フィルム側(第一フィルム側背面)を載せて第一フィルム側をスライドガラスに密着させ、上記粘着面(第二面)の最大高さRzを下記の条件で測定する。
・装置:光干渉方式の表面粗さ測定装置(Veeco社製、Wyko NT-9100)
・測定面積/回:622μm×467μm
(対物レンズ:10倍、FOV(内部レンズ):1.0倍)
・測定モード:VSI(Vertical Scan Interferometry、垂直走査型干渉方式)
・バックスキャン:5μm
・測定距離:10μm
・閾値:0.1%
・スキャンスピード:1倍(Single scan)
測定により得られたデータセットから、粗さ曲線の平均線から上側に最も高い山の高さRpおよび上記平均線から下側に最も低い谷の深さRvを求め、上記Rpと上記Rvとの和を最大高さRzとする。測定は5回行い(すなわちN=5)、それらの平均値を採用する。
なお、第一フィルムが剥離フィルムの場合は、第一フィルムを剥がして、露出した粘着面(第一面)を上記スライドガラスに貼り付け、次いで該サンプルから第二フィルムを剥がし、これにより露出した粘着面(第二面)の最大高さRzを測定するとよい。
(第二フィルムの剥離処理層表面の最大高さRz)
また、第二フィルムの剥離処理層表面(剥離処理面)の最大高さRzは、上記粘着面の最大高さRzの測定条件と同様の条件で測定することができる。具体的には、23℃、50%RHの環境下において、スライドガラスS1214(松浪硝子工業製)上に1滴の水を滴下し、その上に測定対象の第二フィルムを、測定対象面(具体的には剥離処理層表面)の反対面をスライドガラス側として載せることにより、該第二フィルムの非測定対象面をスライドガラスに密着させて配置する。次いで、スライドガラス上に配置した上記第二フィルムの剥離処理層表面の最大高さRzを測定する。測定条件は、粘着体の最大高さRzの測定条件と同様である。なお、各例に係る第二フィルムの剥離処理層表面の最大高さRz[nm]を上記の方法で測定したところ、対応する例の粘着体の第二面の最大高さRz[nm]の±10%の範囲内であった。
(残存応力)
粘着体(粘着剤層)を4cm×4cmのサイズに切り出し、剥離フィルムを適宜剥がしながら、気泡が噛みこまないように粘着体を1cm幅まで折りたたむ。このようにして得た評価用サンプルを、23℃、50%RHの測定環境下において、引張試験機にチャック間距離2cmの設定でセットし、引張速度200mm/分で300%まで引っ張る(引張後のチャック間距離は8cmとなる)。300%引っ張った位置で150秒固定(保持)し、150秒保持後の応力値[N]を読み取り、粘着体の断面積[cm2]で除する。これを残存応力[N/cm2]とする。上記粘着体の断面積は、具体的には、4×粘着体厚さ[cm]から求められる。また、上記引張試験中、伸び300%に達するまでにサンプルが破断した場合は、「破断」と記録する。
(第二フィルムの剥離力(P2A))
評価対象の積層シートを、120℃に加熱された2枚の平坦な金属板の間に挟んで1分間熱プレスし、室温に戻した後に幅50mmの短冊状にカットして試験片を調製する。23℃、50%RHの測定環境下において、上記試験片を引張試験機にセットし、剥離角度180°、引張速度300mm/分の条件で、粘着体(粘着剤層)からの第二フィルムの剥離力を測定する。
(剥離処理後の外観)
剥離処理により樹脂フィルムに明らかな変形(収縮、波打ち等)や白濁等の外観異常が発生した場合には「不良」、外観異常が認められなかった場合には「良好」と評価する。
(積層シートの成形試験)
図2~4に示すように、凹部622を有する下型62と、凹部622に対応する形状の凸部642を有する上型64(図2では表示を省略している。)とを備える金型60を用意する。図4において、凸部642の左右端は曲率半径65mmの円弧形状となっている。
評価対象の積層シートを幅100mm、長さ200mmの長方形状にカットしてなる試験片70を下型62の上に、試験片70の長手方向の両端が下型62の凹部622の長手方向の両端からはみ出し、平面視において試験片70の幅中央が凹部622の幅中央に一致するように位置合わせして配置する(図4の仮想線参照)。上型64を下降させて120℃で1分間の熱プレス成形を行い、金型60を40℃まで冷却した後、上型64を上昇させて試験片70を取り出す。
得られた成形シート(成形後の試験片)を目視で観察し、第二フィルムに破れが発生していた場合には「破れあり」、破れが認められなかった場合には「破れなし」と評価する。また、試験片が凹部622の長手方向の両端からはみ出していた箇所や、凸部642の円弧形状に沿って成形された箇所において、粘着剤層からの第二フィルムの剥がれや浮きが発生していた場合には「剥がれあり」、剥がれや浮きが認められなかった場合には「剥がれなし」と評価する。
(成形後の保管試験)
上記成形試験により得られた成形シート(成形後の試験片)を23℃、50%RHの環境で24時間保管した後、粘着体(粘着剤層)からの第二フィルムの剥がれや浮きの有無を観察する。剥がれや浮きが認められた場合は「外観保持性不良」、剥がれや浮きが認められなかった場合には「外観保持性良好」と評価する。
(ユズ肌の有無)
積層シートをA4サイズに切り出したものを評価用サンプルとする。この評価用サンプル(第一フィルム/粘着剤層/第二フィルムの構成を有する積層シート)を平面状に保持し、点光源とスクリーンとの間に、該サンプルの第二フィルム側を上記点光源側として、該点光源からの光線に対する角度が約90度となるように配置する。点光源からスクリーンまでの距離は約100cmとし、その距離の約半分の位置にサンプルを配置する。23℃、50%RHの環境の暗室にて、上記点光源を点灯し、上記サンプルを透過して上記スクリーンに投影された像を目視で観察することにより、ユズ肌の有無を評価する。点光源としては、例えば、浜松ホトニクス社製のキセノンランプC2577を使用することができる。
(歪み外観)
積層シートを4cm×8cmに切り出したものを評価用サンプルとする。この評価用サンプル(第一フィルム/粘着剤層/第二フィルムの構成を有する積層シート)を23℃、50%RHの測定環境下において、引張試験機にチャック間距離4cmの設定でセットし、引張速度200mm/分で300%まで引っ張る(引張後のチャック間距離は12cmとなる)。300%引っ張った位置で150秒固定(保持)し取り出す。また、上記引張試験中、伸び300%に達するまでにサンプルが破断した場合は、「破断」と記録する。
上記引張試験後かつ150秒保持後の評価用サンプルを平面状に保持し、点光源とスクリーンとの間に、該サンプルの第二フィルム側を上記点光源側として、該点光源からの光線に対する角度が約45度となるように配置する。点光源からスクリーンまでの距離は約100cmとし、その距離の約半分の位置にサンプルを配置する。23℃、50%RHの環境の暗室において、上記点光源を点灯し、上記サンプルを透過して上記スクリーンに投影された像を目視で観察することにより、歪み外観を評価する。像に歪みがない場合は「良好」と評価し、像に歪みが認められた場合は「不良」と評価する。点光源としては、例えば、浜松ホトニクス社製のキセノンランプC2577を使用することができる。
<積層シートの作製>
(例1)
n-ブチルアクリレート(BA)40部と、シクロヘキシルアクリレート(CHA)40部と、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)20部と、光重合開始剤としての2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(IGM Regins社製、商品名「オムニラッド651」)0.05部および1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニル-ケトン(IGM Regins社製、商品名「オムニラッド184」)0.05部とを混合し、窒素雰囲気下で紫外線を照射して部分重合物(モノマーシロップ)を作製した。得られたモノマーシロップ100部に1,6-ヘキサンジオールジアクリレート0.3部を添加し、均一に混合して粘着剤組成物C1を調製した。
ビニル基含有シリコーン系剥離剤(信越化学工業株式会社製、KS-3703)92部、剥離コントロール剤(信越化学工業株式会社製、KS-3800)8部および白金触媒(信越化学工業株式会社製、CAT-PL-50T)0.2部を、合計2.0%の濃度でヘプタン(希釈溶媒)中に含む、シリコーン系剥離処理剤S1を用意した。また、一方の面が粗面であり、他の面が平滑面である厚さ100μmのポリオレフィン系フィルムPOL-1(東レ株式会社製、Q16CK)を用意した。このポリオレフィン系フィルムPOL-1の平滑面に、マイヤーバー#5を用いて剥離処理剤S1を塗布し、80℃で3分間加熱して乾燥させた後、40℃の環境下で72時間エージングした。このようにして、ポリオレフィン系フィルムPOL-1の平滑面にシリコーン系剥離処理剤S1から形成された剥離処理層を有する剥離フィルムR1を得た。
この剥離フィルムR1を第二フィルムとして使用して、粘着剤層からなる粘着体の第一面に第一フィルム(支持フィルム)が固着して積層し、該粘着剤の第二面に第二フィルムが積層している積層シートを作製した。具体的には、剥離フィルムR1の剥離処理面に上記粘着剤組成物C1を塗布し、厚さ75μmの透明なポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの片面にシリコーン系剥離剤による剥離処理が施された剥離フィルムR0(東レフィルム加工株式会社製、セラピールTKA07(07))を被せて空気を遮断し、UV照射により上記粘着剤組成物を硬化させて、厚さ50μmの粘着剤層を形成した。上記粘着剤層から剥離フィルムR0を剥がし、露出した粘着面に厚さ80μmのトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(富士フィルム株式会社製)を貼り合わせた。このようにして、TACフィルム(支持フィルム)と粘着剤層と剥離フィルムR1(第二フィルム)とがこの順に積層した構成の積層シートを得た。この積層シートにつき、第二フィルムの剥離力(P2A)を測定したところ、0.10~5N/50mmの範囲内であった。
(例2)
HDDAの使用量を0.3部から0.7部に変更した他は粘着剤組成物C1の調製と同様にして粘着剤組成物C2を調製した。得られた粘着剤組成物C2を用いた他は例1と同様にして、本例に係る積層シートを得た。
(例3)
ビニル基含有シリコーン系剥離剤(信越化学工業株式会社製、KS-3703)88部、剥離コントロール剤(信越化学工業株式会社製、KS-3800)12部および白金触媒(信越化学工業株式会社製、CAT-PL-50T)0.2部を、合計2.0%の濃度でヘプタン中に含む、シリコーン系剥離処理剤S2を用意した。厚さ19μmのPET系フィルムPET-1(東洋紡株式会社製、TF8)の片面に、マイヤーバー#5を用いてシリコーン系剥離処理剤S2を塗布し、80℃で3分間加熱して乾燥させた後、40℃の環境下で72時間エージングして、剥離フィルムR2を得た。この剥離フィルムR2を第二フィルムとして用いた他は例1に係る積層シートの作製と同様にして、本例に係る積層シートを得た。
(例4)
粘着剤組成物C1に替えて、粘着剤組成物C2を用いた。その他は例3と同様にして本例に係る積層シートを得た。
(例5)
厚さ100μmのポリオレフィン系フィルムPOL-1(東レ株式会社製、Q16CK)を用意し、このポリオレフィン系フィルムPOL-1の粗面に、マイヤーバー#5を用いて剥離処理剤S1を塗布し、80℃で3分間加熱して乾燥させた後、40℃の環境下で72時間エージングした。このようにして、ポリオレフィン系フィルムPOL-1の粗面にシリコーン系剥離処理剤S1から形成された剥離処理層を有する剥離フィルムR3を得た。
この剥離フィルムR3を第二フィルムとして使用した他は例1と同様にして、本例に係る積層シートを得た。
(例6)
HDDAの使用量を0.3部から1.0部に変更した他は粘着剤組成物C1の調製と同様にして粘着剤組成物C3を調製した。得られた粘着剤組成物C3を用いた他は例5と同様にして、本例に係る積層シートを得た。
(例7)
PET系フィルムPET-1に替えて、厚さ100μmのPET系フィルムPET-2(東レ株式会社製、R41)を使用した。その他は剥離フィルムR2の作製と同様にして、剥離フィルムR4を得た。この剥離フィルムR4を第二フィルムとして用いた他は例3に係る積層シートの作製と同様にして、本例に係る積層シートを得た。
(例8)
粘着剤組成物C3を用いた他は例7と同様にして本例に係る積層シートを得た。
各例に係る積層シートについて上述の測定および評価を行って得られた結果を表1に示す。
Figure 2023161418000003
表1に示されるように、例1~4の積層シートはいずれも成形試験において良好な熱成形性を示し、成形後の保管中における第二フィルム(剥離フィルム)の浮きや剥がれも抑制されていた。また、例1~4の積層シートの粘着面(第二面)はユズ肌がなく、歪み外観も良好であった。これに対して、粘着面のRzが高すぎる例5~6では、ユズ肌が認められ、良好な外観を有するものではなかった。また、第二フィルムの120℃ヤング率が高すぎる例7~8では成形時に破れや剥がれが発生した。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
10 粘着体
10A 第一面(第一粘着面)
10B 第二面(第二粘着面)
31 第一フィルム
32 第二フィルム(剥離フィルム)
50 積層シート
60 金型
62 下型
622 凹部
64 上型
642 凸部
70 試験片

Claims (9)

  1. シート形状の粘着体と、前記粘着体の第一面に積層している第一フィルムと、前記粘着体の第二面に積層している第二フィルムと、を含み、
    前記第二フィルムは、樹脂フィルムおよび該樹脂フィルムの少なくとも前記粘着体側の表面に設けられた剥離処理層を含み、かつ以下の条件:
    85℃におけるヤング率が500MPa以上である;および、
    120℃におけるヤング率が500MPa以下である;
    を満たす剥離フィルムであり、
    前記粘着体の前記第二面の最大高さRzが1000nm以下である、積層シート。
  2. 前記粘着体は、温度23℃、引張速度200mm/分の条件で300%引っ張り、300%引っ張った位置で150秒保持後に測定される応力が50N/cm2以下である、請求項1に記載の積層シート。
  3. 前記第一フィルムは、前記粘着体の前記第一面に固着している支持フィルムである、請求項1または2に記載の積層シート。
  4. 前記第一フィルムは剥離フィルムである、請求項1または2に記載の積層シート。
  5. 前記第一フィルムの前記粘着体からの剥離力は、前記第二フィルムの前記粘着体からの剥離力より低い、請求項4に記載の積層シート。
  6. 前記粘着体は、粘着剤により構成された粘着剤層である、請求項1~5のいずれか一項に記載の積層シート。
  7. 請求項1~6のいずれか一項に記載の積層シートが巻回された積層シートロール。
  8. 樹脂フィルムおよび該樹脂フィルムの少なくとも一方の表面に設けられた剥離処理層を含み、かつ以下の条件:
    85℃におけるヤング率が500MPa以上である;および、
    120℃におけるヤング率が500MPa以下である;
    を満たし、
    前記剥離処理層表面の最大高さRzが1000nm以下である、剥離フィルム。
  9. 請求項1~6のいずれか一項に記載の積層シートを用意することと、
    前記積層シートの少なくとも一部領域を加熱するとともに加圧して非平面形状に成形することと、を包含する、積層シートの加工方法。
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