JP2023157631A - テンショナ - Google Patents
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Abstract
【課題】安定した減衰力を発生させることの可能なテンショナを提供する【解決手段】テンショナは、張り部材を付勢するゼンマイばねを備えている。ゼンマイばねは、うず巻き状に巻かれた板ばね21a間が摺動する際の摩擦力によって減衰力を発生させる。板ばね21aの摺動面21a1は、端面が摺動部となる凸部31と、摺動部が摺動することによって発生する摩耗粉が排出される凹部41と、を備えている。【選択図】図5
Description
本発明は、無端状のチェーンやベルト等の張力を調整するテンショナに関する。
一般に、チェーン、ベルト等の巻掛け伝動体を用いた伝動装置には、その弛み側に巻掛け伝動体に張力を付与するテンショナが用いられている。従来、このようなテンショナにおいて、ゼンマイばねを用いたメカニカル式のテンショナが知られている(特許文献1参照)。
このゼンマイばねを用いたテンショナは、ゼンマイばねが巻解かれて拡がろうとする付勢力がプランジャに作用し、テンションアームを介して巻掛け伝動体に対して張力を付与する。また、テンションアームからの荷重がゼンマイばねの付勢力よりも大きくなると、ゼンマイばねは径が小さくなるように巻締められる。更に、ゼンマイばねが巻解かれる又は巻締められる際に板ばね間で発生する摩擦力によって減衰力を発生させ、滑らかに巻掛け伝動体からの荷重変動を吸収するように構成されている。
ところで、上記ゼンマイばねの拡径及び縮径により、板ばねの外周面及び内周面が往復摺動動作を繰り返すと、摺動部が摩耗して金属粉(以下、摩耗粉という)が発生する。摺動部に摩耗粉が存在すると、上述した板ばね間で発生する摩擦力が変化してしまい、安定した減衰力を発揮することができなくなってしまう虞がある。
そこで、本発明は、安定した減衰力を発生させることの可能なテンショナを提供することを目的とする。
本発明の一態様は、巻掛け伝動体からの荷重を受ける張り部材と、前記張り部材を付勢するゼンマイばねと、を備え、前記ゼンマイばねは、うず巻き状に巻かれた板ばね間が摺動する際の摩擦力によって減衰力を発生させ、前記板ばねの摺動面は、端面が摺動部となる凸部と、前記摺動部が摺動することによって発生する摩耗粉が排出される凹部と、を備えている、ことを特徴とするテンショナである。
安定した減衰力を発生させることの可能なテンショナを提供する。
<第1の実施の形態>
以下、図面に沿って本発明の実施の形態について説明する。エンジン内に配置されるタイミングチェーン伝動装置10は、図1に示すように、クランクシャフト11に固定されたスプロケット11aと、2個のカムシャフト12,12に固定されたスプロケット12a,12aと、前記クランクスプロケット11aとカムスプロケット12a,12aとの間に巻掛けられているタイミングチェーン13と、を有する。巻掛け伝動体である上記タイミングチェーン13には、その張り側2箇所にチェーンガイド14,15が摺接されており、その弛み側に張り部材であるテンショナアーム16が摺接されている。チェーンガイド14,15は、エンジンブロックに固定されており、テンショナアーム16は、一端が支軸16bにより揺動自在に支持され、他端側にチェーンテンショナ17のプランジャが当接している。なお、タイミングチェーン13は、サイレントチェーン、ローラチェーン、ブシュチェーンのいずれにも適用可能であり、またテンショナアーム16の支軸16bは、チェーンの走行方向上流側でも下流側でもよい。
以下、図面に沿って本発明の実施の形態について説明する。エンジン内に配置されるタイミングチェーン伝動装置10は、図1に示すように、クランクシャフト11に固定されたスプロケット11aと、2個のカムシャフト12,12に固定されたスプロケット12a,12aと、前記クランクスプロケット11aとカムスプロケット12a,12aとの間に巻掛けられているタイミングチェーン13と、を有する。巻掛け伝動体である上記タイミングチェーン13には、その張り側2箇所にチェーンガイド14,15が摺接されており、その弛み側に張り部材であるテンショナアーム16が摺接されている。チェーンガイド14,15は、エンジンブロックに固定されており、テンショナアーム16は、一端が支軸16bにより揺動自在に支持され、他端側にチェーンテンショナ17のプランジャが当接している。なお、タイミングチェーン13は、サイレントチェーン、ローラチェーン、ブシュチェーンのいずれにも適用可能であり、またテンショナアーム16の支軸16bは、チェーンの走行方向上流側でも下流側でもよい。
チェーンテンショナ(以下テンショナと呼ぶ)17は、図2に示すように、ボディ19を有しており、ボディ19はエンジンブロック等の固定部材に取付け孔19a,19a及びボルトにより固定されている。該ボディ19は、一側に貫通孔19bを有し、他側にケース部19cを有する。貫通孔19bにはプランジャ20がスライド自在に嵌挿しており、ケース部19cにはゼンマイばね21が収納されている。ゼンマイばね21は、長方形断面の帯状の鋼製板ばね21aを互いに接するようにうず巻き状に巻いて形成されており、その外端がプランジャ20の側面20bに併設された外端アンカー22により固定され、その内端がボディ19に固設された内端アンカー23に固定されている。
ケース部19cには、円弧状の板ばねからなるバックアップスプリング(部材)25がゼンマイばね21の内周面を支えるように配置されており、更に該バックアップスプリング25の一端(基端)側の内周面を支えるようにガイドピース26が固設されている。前記ゼンマイばね21の内端及びバックアップスプリング25の基端は、上記ケース部19cに固定されているガイドピース26に共締されており、ゼンマイばね21及びバックアップスプリング25の基端側内周面は共にガイドピース26に支えられている。従って、上記ガイドピース26の基端部が上記内端アンカー23となる。ゼンマイばね21は、プランジャ20とボディ19との間に所定量の巻数で巻締められて配置されており、プランジャ20の一端は、該ゼンマイばね21の付勢力により上記貫通孔19bから一部突出して、上記テンショナアーム(張り部材)16の当接部16aに当接する突出部(荷重受け部)20aとなる。
ついで、上記テンショナ17の作用について説明する。ゼンマイばね21は、その内端が内端アンカー23によりボディ19に固定され、巻解かれて拡がろうとする付勢力がプランジャ20に作用して、テンショナ17は、テンショナアーム16を介してタイミングチェーン13に所定の緊張力を付与する。タイミングチェーン13は、エンジン回転に伴うカムの負荷変動によりその張力が変化し、テンショナアーム16に作用する荷重もエンジン回転数に応じて常に振動するように変化する。該荷重が上記ゼンマイばね21に基づく荷重(付勢力)より小さくなると、即ちプランジャを介し上記ゼンマイばねの拡径を抑える力が小さくなると、図3(a)に示すように、プランジャ20は突出し(矢印a)、従って外端アンカー22が矢印b方向に移動して、ゼンマイばね21は矢印cに示すように径が拡がるように巻解かれる。この際、ゼンマイばね21は、拡径するので、うず巻き状に巻かれた板ばね間の摩擦力は小さく、抵抗荷重の低い状態でプランジャ20を突出する。
上記テンショナアーム16からの荷重がゼンマイばね21の付勢力より大きくなると、図3(b)に示すように、プランジャ20は押込まれ(矢印d)、従って外端アンカー22が矢印e方向に移動して、ゼンマイばね21は矢印fに示すように径が小さくなるように巻締められる。この際、ゼンマイばね21は、縮径するのでその板ばね間の摩擦力は大きく、プランジャ20には該摩擦力による大きな抵抗荷重が作用する。
テンショナ17は、プランジャの突出時(矢印a)と押込み時(矢印d)では荷重が相違し、ヒステリシス特性を有する。これにより、エンジン回転に伴うタイミングチェーン13の負荷振動に伴うテンショナアーム16の荷重変動は、テンショナ17のゼンマイばねにより緩衝され、更に上記突出時及び押込み時の摩擦力の相違によるヒステリシス特性により減衰されて、滑らかに吸収される。
上記ゼンマイばね21による摩擦力相違では減衰効果が充分でない場合、本実施の形態のようにバックアップスプリング(バックアップ部材)25が配置される。該バックアップスプリング25は、その基端部をガイドピース26で支持されて、1巻きされた、または複数回巻かれた先端側が自由端からなる板ばねからなり、ゼンマイばね21の内周面に接触して該ゼンマイばね21を矢印gに示すように外径方向の付勢力を作用して支えている。これにより、図3(a)に示すように、プランジャ20の突出時には、ゼンマイばね21は、バックアップスプリング25により矢印gに示すように支えられた状態で、同方向である矢印cに示すように拡径するので、その板間摩擦力は小さい。図3(b)に示すように、プランジャ20の押込み時には、ゼンマイばね21は、バックアップスプリング25による矢印g方向の支え力と、縮径する方向fのゼンマイばね21の変形力とに挟まれて大きな板間摩擦力が作用する。これにより、突出時と押込み時での大きな板間摩擦力の差を得て、必要とする減衰効果を得ることができる。
<ゼンマイばねの表面テクスチャ>
ついで、上記ゼンマイばね21の表面テクスチャについて説明をする。図4は摩耗粉の発生プロセスを説明するための図であり、比較例に係るゼンマイばねの外周面21a1’と内周面21a2’との摺動状態を模式的に拡大して示している。図4に示すように、プランジャの荷重変動に応じてゼンマイばねの巻解き及び巻締めが繰り返されると、うず巻き状に巻かれたゼンマイばねの板ばね21a’は、その外周面21a1’と内周面21a2’とが図中の矢印に示すように往復摺動をする。
ついで、上記ゼンマイばね21の表面テクスチャについて説明をする。図4は摩耗粉の発生プロセスを説明するための図であり、比較例に係るゼンマイばねの外周面21a1’と内周面21a2’との摺動状態を模式的に拡大して示している。図4に示すように、プランジャの荷重変動に応じてゼンマイばねの巻解き及び巻締めが繰り返されると、うず巻き状に巻かれたゼンマイばねの板ばね21a’は、その外周面21a1’と内周面21a2’とが図中の矢印に示すように往復摺動をする。
板ばね21a’は、高い弾性を有する金属材料によって形成されており、外周面21a1’と内周面21a2とが摺動すると、金属接触によって摩耗し、金属の粉である摩耗粉FDが発生する。上述したように、ゼンマイばね式のテンショナは、板ばね間の摩擦力によって減衰力を発生させているため、このような摩耗粉FDが板ばねの摺動部に存在すると、摩擦力に変化が生じ、減衰力が安定しなくなる虞がある。
また、摺動部に摩耗粉FDが存在した状態で摺動を繰り返すと、摩耗粉FDによって摺動部の摩耗が促進されてしまい、また、これに伴い摩耗粉FDの大きさも成長してしまう。このため、摩耗粉FDは摺動部からできるだけ早く排出することが望ましいが、平面によって形成された外周面21a1’と内周面21a2’とが密着して往復摺動する場合、摩耗粉FDは周方向において前後に移動を繰り返すだけで大きく移動せず、また、密着した外周面21a1’と内周面21a2’との間には潤滑油が供給され辛いため、摩耗粉FDが排出されにくい。
このため、本実施の形態では、図5(a)に示すように、摺動面となる板ばね21aの外周面21a1に凹凸状の表面テクスチャを付与している。具体的には、本実施の形態では、板ばね21aの外周面21a1の少なくとも一部の領域に、複数の凸部31と、凹部41とが設けられている。なお、本実施の形態においては、外周面21a1の相手方の摺動面となる板ばね21aの内周面21a2は平面(平板)状に形成されており、内周面21a2には凹凸状の表面テクスチャは付与されていない。しかしながら、内周面21a2に対しても、外周面21a1と同様に凹凸状の表面テクスチャを付与しても良い。また、上記凹凸状の表面テクスチャは、例えば、エッチング、ショットピーニング、レーザ加工、タイリングなどの機械加工によって付与される。
複数の凸部31は、それぞれ柱状の突起(凸状ブロック)によって構成されており、板ばね21aの周方向C(板ばね21aの長手方向)に凸部31が整列した凸部列(周方向凸部列、縦列)が複数、板ばね21aの幅方向D(板ばね21aの短手方向)に並ぶ形では配列されている。より詳しくは、本実施の形態では、上記複数の凸部列は、凸部31aが周方向Cに整列した第1凸部列311と、第1凸部列311とは凸部31bの位置が周方向Cにおいてずれるようにして整列した第2凸部列312とが、幅方向Dに交互に並んでいる。
これら第1凸部列311と第2凸部列312とは、互いの凸部31a,31bが周方向Cから視て幅方向Dに重ならないように、幅方向Dに所定の間隔を存して並んでいる。また、周方向Cにおいては、一方の凸部列の隣接する凸部の間に他方の凸部列の凸部が位置するように凸部31が位置しており、例えば、第1凸部列311の凸部31aは、周方向Cにおいて、隣接する第2凸部列312の凸部31b, 31bの間に位置するように配設され、第2凸部列312の凸部31bは、周方向Cにおいて、隣接する第1凸部列311の凸部31a, 31aの間に位置するように配設されている。
また、凹部41は、上記複数の凸部31の間に形成された複数の溝41a,41bによって構成されている。本実施の形態では、第1凸部列311と第2凸部列312とが幅方向Dに凸部31a,31bが重ならないように配設されているため、これら第1凸部列311と第2凸部列312との間にて周方向Cに直線上に延びる周方向溝41aが形成されている。また、第1凸部列311の凸部31a,31aの間、及び、第2凸部列312の凸部31b,31bの間が幅方向Dに延びる幅方向溝41bとなっており、幅方向溝41bによって隣接する周方向溝41a,41a同士が接続されている。
このため、本実施の形態においては、図5(b)に示すように、外周面21a1では、凸部31の端面(先端面)33が内周面21a2と摺動する摺動部となっており、複数の凸部31の端面33によって荷重が支持される。また、複数の凸部31の間に形成された周方向溝41a及び幅方向溝41b(即ち、凹部41)は、板ばね21aの外周面21a1と内周面21a2との間の板間空間外の外部空間と連通した解放空間となっており、ゼンマイばね21の潤滑油(本実施の形態ではエンジンオイル)Lの流路となっている。
従って、板ばね21aの外周面21a1と内周面21a2とが摺動すると、周方向溝41a及び幅方向溝41bに保持されている潤滑油に動圧が発生し、摺動部となる凸部31の端面33に潤滑油が供給される。特に、周方向溝41a及び幅方向溝41bは、外周面21a1の幅方向中央部にまで張り巡らされているため、板間空間に外部空間から潤滑油Lが循環し、例え、境界潤滑になり易い外周面21a1の幅方向D中央部に存在する凸部31の端面33に対しても油流れが確保されて、油切れが生じることを防止している。これにより、板ばね21aの外周面21a1と内周面21a2と間の接触抵抗が低減されている。また、周方向溝41a及び幅方向溝41bにおいて潤滑油が円滑に流れるため、冷却性も良い。
更に、図6(a)に示すように、板ばね21aの内周面21a2と、凸部31の端面33との間に摩耗粉FDが発生した場合であっても、一つ一つの凸部31の端面33の面積は小さく(周方向長さL1が短い)、また、摺動動作に伴って潤滑油Lには動圧が発生して、端面33における油流れが確保されているため、摩耗粉FDは大きく成長する前に摺動に伴う移動及び潤滑油Lに押し流されて周方向溝41aもしくは幅方向溝41bへと排出される(図6(b)参照)。なお、上記凸部31の端面33の周方向長さL1と板ばね21aの往復摺動距離L2との関係は、L1≧L2でもよいし、L1<L2でもよい。
このように、本実施の形態では、板ばね21aの外周面21a1に凹凸状の表面テクスチャを付与したことによって、摺動面となる外周面21a1と内周面21a2とが全面的にて密着することを防止し、内周面21a2と摺動する凸部31の端面33に十分な潤滑油を供給できるように構成されている。
また、凸部31の端面33に対する油流れが確保されるため、上記凸部31の端面33に発生した摩耗粉FDは、周方向溝41aもしくは幅方向溝41bへと排出され、潤滑油Lの循環に伴ってテンショナ外部へと排出される。そして、これらの機能が相俟って、ゼンマイばね21の板間における摩耗が低減され、また、一定の減衰力を安定して発揮することができるようになっている。
なお、表面テクスチャを付与していない場合、摩耗粉FDは、数十μmまで成長する可能性あるが、本実施の形態では、成長する前に摩耗粉FDを排出するため、凸部31の高さh(図5参照)は0.5[μm]以上としており、本実施形態では、約5[μm]に設定している。また、図5(b)に示すように、凸部31の端面33と周面34とで形成される角部35はR面によって形成されており、角部35におけるエッジの欠落や応力集中を防止し、摺動部33の摩耗及び摩耗粉FDの発生を更に低減させている。
加えて、ゼンマイばね21は場所によって摩耗度合いが異なることから、面圧の大きさや油の入りやすさによって凸部31の配置もしくは形状を異ならせても良い。例えば、摺動面である板ばね21aの外周面21a1は、第1領域と、周方向Cにおいて第1領域とは異なる領域であり、かつ、第1領域よりも面圧の低い第2領域と、を備えている場合、単位面積あたりに存在する凸部31の端面33の面積の総和が、第1領域の方が前記第2領域よりも大きくなるように凸部31を構成しても良い。
<第2の実施の形態>
ついで、第2の実施の形態について説明をする。なお、第2の実施の形態は、第1の実施の形態と、ゼンマイばね21の表面テクスチャの構成が異なっている点において相違している。このため、以下の説明において、第1の実施の形態との相違点についてのみ説明をし、同様の構成について、その説明を省略する。
ついで、第2の実施の形態について説明をする。なお、第2の実施の形態は、第1の実施の形態と、ゼンマイばね21の表面テクスチャの構成が異なっている点において相違している。このため、以下の説明において、第1の実施の形態との相違点についてのみ説明をし、同様の構成について、その説明を省略する。
本実施の形態においては、図7に示すように、板ばね21aの幅方向中央部と幅方向端部において、周方向溝の溝幅を変更することによって、これら幅方向中央部と幅方向端部において、周方向溝を流れる潤滑油Lの流速が異なるように構成されている。
具体的には、図7(a)の例では、板ばね21aの幅方向両端部においては、第1の実施の形態と同様に第1凸部列311と第2凸部列312とが幅方向Dに交互に並んでいる。一方、板ばね21aの幅方向中央部では、これら第1凸部列311及び第2凸部列312を構成する凸部32aよりも円形の端面(先端面)33の径の大きな凸部32bが周方向Cに整列した第3凸部列313を形成している。
第1凸部列311と第2凸部列312との間の間隔は、第1の実施の形態と同様となっており、これら第1凸部列311と第2凸部列312との間にて第1周方向溝41a1が形成されている。一方で、板ばね21aの幅方向端部の凸部列(図7(a)では第1凸部列311)と幅方向中央部の凸部列である第3凸部列313との間には、第2周方向溝41a2が形成されている。
上記第3凸部列313と第1凸部列311との間の幅方向Dにおける間隔は、第1凸部列311と第2凸部列312との間の幅方向の間隔よりも広くなるように配列されており、このため、第2周方向溝41a2の溝幅は、第1周方向溝41a1の溝幅よりも広くなっている。
すると、第2周方向溝41a2を流れる潤滑油Lの流速は、第1周方向溝41a1を流れる潤滑油Lの流速よりも速くなるため、幅方向外側から第2周方向溝41a2に向かって潤滑油Lが吸引される。このように、流速の速い第2周方向溝41a2を、流速の遅い第1周方向溝41a1よりも板ばね21aの幅方向中央側に配置することによって、より多くの潤滑油を効率的にゼンマイばね21の板間に呼び込むことが可能となる。
一方、図7(b)のように、板ばね21aの幅方向両端部に第3凸部列313を配置し、幅方向中央部に第1凸部列311及び第2凸部列312を配置し、流速の速い第2周方向溝41a2を、流速の遅い第1周方向溝41a1よりも板ばね21aの幅方向外側に配置しても良い。別の言い方をすれば、図7(b)の例では、第1周方向溝41a1が、板ばね21aの幅方向中央部において、板ばね21aの周方向Cに延びる第3周方向溝となっており、また、第2周方向溝41a2が、上記第3周方向溝よりも板ばね21aの幅方向外側において、周方向に延びる第4周方向溝となっていると言うことができる。この場合、板間空間にある潤滑油Lが板間空間外に向かって排出され易くなるため、効率良く摩耗粉FDを外部に排出することができる。
<第3の実施の形態>
ついで、第3の実施の形態について説明をする。なお、第3の実施の形態は、第1の実施の形態と、ゼンマイばね21の表面テクスチャの構成が異なっている点において相違している。このため、以下の説明において、第1の実施の形態との相違点についてのみ説明をし、同様の構成について、その説明を省略する。
ついで、第3の実施の形態について説明をする。なお、第3の実施の形態は、第1の実施の形態と、ゼンマイばね21の表面テクスチャの構成が異なっている点において相違している。このため、以下の説明において、第1の実施の形態との相違点についてのみ説明をし、同様の構成について、その説明を省略する。
本実施の形態では、図8(a)に示すように、複数の凸部31は、板ばね21aの幅方向Dに凸部31が整列した凸部列(幅方向凸部列、横列)314,315が複数、板ばね21aの周方向Dに並ぶ形で配列されている。より詳しくは、本実施の形態では、上記複数の凸部列は、凸部31cが幅方向に整列した第4凸部列314と、第4凸部列314とは凸部31dの位置が幅方向においてずれるようにして整列した第5凸部列315とが、周方向Cに交互に並んでいる。
これら第4凸部列314と第5凸部列315とは、互いの凸部31c,31dが幅方向Dから視て周方向Cに重ならないように、周方向Cに所定の間隔を存して並んでいる。また、幅方向Dにおいては、一方の凸部列の隣接する凸部の間に他方の凸部列の凸部が位置するように凸部31が位置している。
また、凹部41は、上記複数の凸部31の間に形成された複数の溝41a,41bによって構成されている。本実施の形態では、第4凸部列314と第5凸部列315とが周方向Cに凸部31c,31dが重ならないように配設されているため、これら第4凸部列314と第5凸部列315との間にて幅方向に直線上に延びる幅方向溝41bが形成されている。また、第4凸部列314の凸部31c,31cの間、及び、第5凸部列315の凸部31d,31dの間が周方向に延びる周方向溝41aとなっており、周方向溝41aによって隣接する幅方向溝41b,41b同士が接続されている。
このように、本実施の形態では、幅方向溝41bが板ばね21a幅方向端部まで直線状に連続して形成されているため、より良好に板間空間外との間で潤滑油を循環させることができる。
なお、上述した実施の形態では、凸部31は、平面視円形状となる柱状の凸部によって形成していたが、これに限らず、例えば、図8(b)~(d)に示すように、平面視多角形状となる凸部によって形成しても良い。例えば、図8(b)及び(c)に示すように、凸部31は三角柱形状であっても良く、また、例えば、三角柱の一辺の途中が内側に屈曲して形成された四角柱形状であっても良い。このようにすることによって、周方向Cにおける潤滑油Lの流動方向に応じて、潤滑油の流れやすさに異方性を生じさせることができる。
また、その他にも、図9(a)~(f)に示すように、凸部31は、楕円形状をするように構成されていても良く、例えば、図9(a)に示すように、楕円形状の長軸が板ばね21aの周方向Cと平行となるように形成すると、潤滑油の流れを安定化することができる。また、図9(b)に示すように、凸部31を楕円形状の長軸が板ばね21aの幅方向Dと平行となるように形成しても良い。この場合、33の周方向長さが短くなるため、摩耗粉FDを摺動部から排出しやすくすることができる。更に、図9(c)に示すように、楕円形状の長軸が周方向Cに対して傾斜するように構成しても良く、また、その配列も図9(d)に示すように千鳥状にしても良い。更に、楕円形状の凸部31の長軸の傾き方向を位置によって異ならせても良く、例えば、図9(e)及び図9(f)のように、V字状になるように楕円形状の凸部31を配設しても良い。
<第4の実施の形態>
ついで、第4の実施の形態について説明をする。なお、第4の実施の形態は、第1の実施の形態と、ゼンマイばね21の表面テクスチャの構成が異なっている点において相違している。このため、以下の説明において、第1の実施の形態との相違点についてのみ説明をし、同様の構成について、その説明を省略する。
ついで、第4の実施の形態について説明をする。なお、第4の実施の形態は、第1の実施の形態と、ゼンマイばね21の表面テクスチャの構成が異なっている点において相違している。このため、以下の説明において、第1の実施の形態との相違点についてのみ説明をし、同様の構成について、その説明を省略する。
本実施の形態では、図10に示すように、図1の凸部31と凹部41の凹凸を反転してゼンマイばね21の表面テクスチャを形成している。即ち、図5において凸部だった部分が複数の凹部410となっており、また、凹部41だった部分が凸部310となっている。このため、本実施の形態では、各凹部410は、その周囲が凸部310によって囲われた閉じた空間となり、これら複数の凹部410に潤滑油Lを保持することができる。また、凹部410が異物トラップとして機能し、摩耗粉FDを凹部410に排出することができる。
なお、本実施の形態の場合、図12に示すように、相手方の摺動面となる板ばね21aの内周面21a2に例えば周方向Cに延びるレール状の溝を設けると、凹部410間における潤滑油Lの循環が良好となるため、好ましい。
また、図11(a)~図11(d)に示すように、上記凹部410を溝411~414によって板間空間外と連通して外部に対して解放するように構成しても良い。例えば、図11(a)に示すように、周方向に対して傾斜した溝411によって、斜め方向に隣接した凹部410同士を連通させると共に、この溝411が板ばね21aの端部まで延びて凹部410と板間空間外とが連通するようにしても良い。また、図11(b)に示すように、傾斜角度の異なる溝412a,412bによって斜め方向に隣接した凹部410同士及び凹部410と板間空間外とを連通するようにしても良い。更に、図11(c)に示すように、周方向Cに延びる溝413によって周方向に隣接した凹部410同士及び凹部410と板間空間外とを連通するようにしても良い。また、図11(d)に示すように、幅方向に延びる溝414によって幅方向に隣接した凹部410同士及び凹部410と板間空間外とを連通するようにしても良い。
なお、上述実施の形態では、ゼンマイばね21は、板ばね21aの外周面21a1と内周面21a2とが直接摺動する構成であったが、例えば、板ばねの外周面21a1と内周面21a2との間に板ばね間が摺動する際の摩擦力を高めるために、高い摩擦係数を有する摩擦材(高μ材)を介在させても良い。また、その他にも、耐摩耗性を向上するものや、発熱を抑制するもの等の他の機能性異素材(材料)などを介在させても良い。
また、例えば、バックアップスプリング25の外周面にも上述した表面テクスチャを付与するようにしても良い。更に、上述した実施の形態では、本願発明をタイミングチェーンのテンショナに適用したが、これに限らず、バランサ、油圧ポンプ等のエンジンで駆動される他のチェーンに適用してもよく、また補機駆動用のベルト等のベルトにも適用可能である。ベルト張力用としては、本テンショナは張り用プーリに適用可能であり、あらゆる巻掛け伝動体の張力を調整するテンショナに適用可能である。即ち、上記実施の形態では、テンショナアーム16は、上述したチェーン13に摺り面を有する弓形状のものに限らず、テンションプーリを先端に備えたテンショナアームでよく、要は、巻掛け伝動体を張るどのような張り部材でもよい。また、上述した実施の形態において説明された発明は、どのように組み合わされても良い。
13:巻掛け伝動体(タイミングチェーン)
16:張り部材(テンショナアーム)
21:ゼンマイばね
31:凸部
41:凹部
16:張り部材(テンショナアーム)
21:ゼンマイばね
31:凸部
41:凹部
Claims (13)
- 巻掛け伝動体からの荷重を受ける張り部材と、
前記張り部材を付勢するゼンマイばねと、を備え、
前記ゼンマイばねは、うず巻き状に巻かれた板ばね間が摺動する際の摩擦力によって減衰力を発生させ、
前記板ばねの摺動面は、
端面が摺動部となる凸部と、
前記摺動部が摺動することによって発生する摩耗粉が排出される凹部と、を備えている、
ことを特徴とするテンショナ。 - 前記凹部は、複数の前記凸部の間に形成された複数の溝を備えており、
前記複数の溝は、前記ゼンマイばねの潤滑油の流路となっている、
ことを特徴とする請求項1記載のテンショナ。 - 前記複数の凸部は、前記板ばねの周方向に凸部が整列して形成された凸部列が複数、前記板ばねの幅方向に並ぶ形で配設されており、
前記複数の凸部列は、隣接する凸部列と前記板ばねの周方向から視て前記幅方向に重ならないように配設されている、
ことを特徴とする請求項2記載のテンショナ。 - 前記複数の凸部は、前記板ばねの幅方向に凸部が整列して形成された凸部列が複数、前記板ばねの周方向に並ぶ形で配設されており、
前記複数の凸部列は、隣接する凸部列と前記板ばねの幅方向から視て前記周方向に重ならないように配設されている、
ことを特徴とする請求項2記載のテンショナ。 - 前記複数の溝は、
前記板ばねの幅方向中央部において、前記板ばねの周方向に延びる第1周方向溝と、
前記第1周方向溝よりも前記板ばねの幅方向外側において、前記周方向に延びる第2周方向溝と、を備え、
前記第1周方向溝は、前記第2周方向溝よりも幅が広く形成されている、
ことを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項記載のテンショナ。 - 前記複数の溝は、
前記板ばねの幅方向中央部において、前記板ばねの周方向に延びる第3周方向溝と、
前記第3周方向溝よりも前記板ばねの幅方向外側において、前記周方向に延びる第4周方向溝と、を備え、
前記第4周方向溝は、前記第3周方向溝よりも幅が広く形成されている、
ことを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項記載のテンショナ。 - 前記凸部は、平面視で円形状、楕円形状、多角形状のいずれかの形状をしている、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のテンショナ。 - 前記凸部は、平面視で楕円形状をしており、前記楕円形状の長軸が前記板ばねの周方向と平行となるように形成されている、
ことを特徴とする請求項7記載のテンショナ。 - 前記凸部は、平面視で楕円形状をしており、前記楕円形状の長軸が前記板ばねの幅方向と平行となるように形成されている、
ことを特徴とする請求項7記載のテンショナ。 - 前記凸部は、平面視で楕円形状をしており、前記楕円形状の長軸が前記板ばねの周方向に対して傾斜するように形成されている、
ことを特徴とする請求項7記載のテンショナ。 - 前記凸部は、前記端面と側面とによって形成される角部がR面となっている、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のテンショナ。 - 前記摺動面は、第1領域と、前記板ばねの周方向において前記第1領域とは異なる領域であり、かつ、前記第1領域よりも面圧の低い第2領域と、を備えており、
前記凸部は、単位面積あたりに存在する前記凸部の端面の面積の総和が、前記第1領域の方が前記第2領域よりも大きくなるように構成されている、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のテンショナ。 - 前記凸部及び凹部は、前記ゼンマイばねの外周面に形成され、前記ゼンマイばねの内周面には形成されていない、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のテンショナ。
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JP2022067662A JP2023157631A (ja) | 2022-04-15 | 2022-04-15 | テンショナ |
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2022
- 2022-04-15 JP JP2022067662A patent/JP2023157631A/ja active Pending
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2023
- 2023-04-14 WO PCT/JP2023/015205 patent/WO2023200010A1/ja unknown
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