JP2023156941A - 発光装置 - Google Patents

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俊介 村井
Shunsuke Murai
宏之 柏木
Hiroyuki Kashiwagi
康之 川上
Yasuyuki Kawakami
要介 前村
Yosuke Maemura
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Abstract

【課題】狭角化された配光特性を有するとともに、高効率で高出力の混色光を出射する発光装置を提供する。【解決手段】フォトニック結晶層を有する半導体発光構造層20と、半導体発光構造層20の出射面上に載置され、半導体発光構造層20の出射面上に光学フィルタ40が配され、光学フィルタ40上にナノアンテナ蛍光体30が配されている。ナノアンテナ蛍光体30は、波長変換体である蛍光体プレート31と、蛍光体プレート31上に形成され、複数のナノアンテナ32Aからなるアンテナアレイ32と、を有する。【選択図】図1B

Description

本発明は、発光装置、特にフォトニック結晶を備えた発光素子及び蛍光体を備えた発光装置に関する。
近年、自動車等の乗り物又は移動体の自動運転についての取り組みは急速に進んでおり、ヘッドランプ等の灯具に求められる要求も変化している。例えば、ヘッドランプは、ランプ単体ではなく、センサなども取り込んだランプシステムとしての価値が求められる。ところが、例えば自動車のヘッドランプではLED(Light emitting diode)素子を並列に配置して高出力化させて使用することがあるが、センサ等を設置するスペースを取りにくいという問題がある。
一般に、自然放出光のLEDでは、発光分布がランバーシアンであり、配光が広がってしまうため、ヘッドランプ内のレンズから外れた光による損失が生じる。光の損失を減らして、さらに光量を上げるためには、レンズを大きくする(すなわち、開口率NAを大きくする)必要があるが、ヘッドランプのスペースの観点から好ましくない。レンズのNAを変えずに、LEDの取り込み量を多くするためには、LED光源自体の発光分布を狭角化する必要がある。
小型で狭角化された白色光源を形成する技術として、表面にナノアンテナを形成した蛍光体へレーザ光を照射する構成が開示されている。
例えば、特許文献1には、フォトンエミッタからのフォトンがプラズモニックアンテナアレイから放出される照明装置が開示されている。また、特許文献2には、入射レーザ光の波長を変換する波長変換体と、波長変換体の出射面上に形成されたアンテナアレイとを有する波長変換装置が開示されている。
しかしながら、さらに、狭角化された配光分布を有するとともに高い光出力を有する光源が求められている。
本発明は、狭角化された配光特性を有するとともに、高効率で高出力の混色光を出射する発光装置を提供することを目的としている。
本発明の1実施形態による発光装置は、
フォトニック結晶層を有する半導体発光構造層と、
前記半導体発光構造層の出射面上に載置され、前記半導体発光構造層の放射光の波長を変換して波長変換光を生成する波長変換体及び前記波長変換体上に複数のナノアンテナが周期的に配列されたアンテナアレイからなるナノアンテナ蛍光体と、を有している。
特許6381645号公報 特許6789536号公報
本発明の第1の実施形態の発光装置10の上面を模式的に示す平面図である。 図1Aに示すA-A線に沿った断面構造を模式的に示す断面図である。 光学フィルタ40の反射率の入射角(θ)依存性をシミュレーションした結果を示す図である。 横軸を波数kx(=ksinθ)、縦軸を規格化周波数a/λとした分散関係を示す図である。 TE0モードの極大値部分を拡大して示す図である。 ナノアンテナ蛍光体30の断面図である。 ナノアンテナ蛍光体30の上面図である。 周期Pが360nmのときのアンテナアレイ32の放出角(θem)と波長との関係のシミュレーション結果を示すグラフである。 周期Pが400nmのときのアンテナアレイ32の放出角(θem)と波長との関係のシミュレーション結果を示すグラフである。 周期Pが440nmのときのアンテナアレイ32の放出角(θem)と波長との関係のシミュレーション結果を示すグラフである。 周期Pが480nmのときのアンテナアレイ32の放出角(θem)と波長との関係のシミュレーション結果を示すグラフである。 LED構造層20からの青色光の配光特性を示す図である。 ナノアンテナ蛍光体30からの蛍光(黄色光)の配光特性を示す図である。 発光装置10からの白色光の配光特性を示す図である。 LED構造層20により生成される狭角LED光を模式的に示す図である。 本発明の第2の実施形態の発光装置50の断面構造を模式的に示す断面図である。
以下においては、本発明の好適な実施形態について説明するが、これらを適宜改変し、組合せてもよい。また、以下の説明及び添付図面において、実質的に同一又は等価な部分には同一の参照符を付して説明する。
[第1の実施形態]
図1Aは、本発明の第1の実施形態の発光装置10の上面を模式的に示す平面図であり、図1Bは、図1Aに示すA-A線に沿った断面構造を模式的に示す断面図である。
図1A及び図1Bに示すように、発光装置10は、半導体発光構造層20と、ナノアンテナ蛍光体30と、光学フィルタ40とを有している。本実施形態の発光装置10においては、半導体発光構造層20の出射面上に光学フィルタ40が配され、光学フィルタ40上にナノアンテナ蛍光体30が配されている。
(1)半導体発光構造層
半導体発光構造層(以下、LED構造層と称する)20は、フォトニック結晶層21Pを備えた第1の半導体層21、活性層23及び第2の半導体層25を有する。
なお、本実施形態においては、LED構造層20が窒化物系半導体層(GaN系系半導体層)からなる場合について説明するが、LEDとして動作する他の結晶系の半導体発光構造層であってもよい。
また、以下に示す半導体構造層の各層の組成、層厚、不純物、ドーピング濃度などは例示に過ぎず、所望の特性に応じて適宜選択、改変等することができる。
図1A及び図1Bを参照して以下にLED構造層20について詳細に説明する。
LED構造層20は、第1の半導体層21上に活性層23及び第2の半導体層25を順次成長して形成されている。例えばMOCVD法(有機金属気相成長法)、MBE法(分子線エピタキシー法)などにより形成することができる。
第1の半導体層21は、n型の半導体層であるn-GaNからなる下層21A上に形成されたフォトニック結晶層21Pを有する。フォトニック結晶層21Pは、第1の半導体層21に平行な面内に2次元的に周期的に形成された微細な空孔(air hole)22を有し、屈折率が周期的に変化する構造層である。
フォトニック結晶層21P上には、フォトニック結晶層21Pを埋め込む埋込層21Bが形成されている。埋込層21Bは、n型の半導体層であるn-GaNからなり、120nmの層厚を有している。
より詳細には、本実施形態において、フォトニック結晶層21Pの空孔22は、正方格子位置に配され、円柱形状を有し、格子定数(周期)は185nm、高さは240nm、直径は92.5nmである。
ここで、フォトニック結晶の格子定数=a,発光波長=λ(真空中)、母体の屈折率=neffとおいたとき、正方格子2次元フォトニック結晶の場合はa≠mλ/neff(mは自然数)を、三角格子2次元フォトニック結晶の場合はa≠mλ×2/(3/2×neff)(mは自然数)を満たすようにしている。
なお、このときのλはピーク波長のみならず活性層23の発光スペクトルの半値全幅(FWHM)内の任意の波長λw(真空中)に対しても成立する。すなわち、発光スペクトルのピークが450nmで半値全幅が10nmの場合λは445nm~455nmの範囲を持つとして考える(445nm≦λw≦455nm)。本発明は非共振のLED光を照射する発光素子であることが好ましい。このような条件を満たすフォトニック結晶のみを形成することで、非共振の光のまま狭角化させている。
ただし、正方格子2次元フォトニック結晶の場合はa=mλ/neffを、三角格子2次元フォトニック結晶の場合はa=mλ×2/(3/2×neff)を満たす場合であっても、供給される電流値が一定の値以下であれば、非共振の光のまま狭角化された光とすることができる。この場合は、発光装置10に接続された不図示の電源が共振光を発生させない程度の電流値を供給することで、狭角光成分(出射角20°以内)も広角光成分(出射角20°を超える)と同様に非共振のLED光を照射する発光素子とすることができる。
第1の半導体層21上には、発光層23Aが形成されている。発光層23Aは、GaN障壁層とInGaN井戸層が交互に積層された5層構造の多重量子井戸構造層(以下、MQW層という。)である。
発光層23A上には、スペーサ層23Bが形成されている。スペーサ層23Bは、GaNからなり、6nmの層厚を有している。
スペーサ層23B上には、第2の半導体層25が形成されている。より詳細には、第2の半導体層25は電子ブロック層(Electron Blocking Layer)25Aと電子ブロック層25A上に形成されたp型の半導体層であるp-GaN層25Bとからなる。
電子ブロック層25Aは、AlGaNからなり、例えば10nmの層厚を有している。p-GaN層25Bは、例えば116nmの層厚を有している。
なお、本明細書において、発光層23A及びスペーサ層23Bからなる層を活性層(コア層)23と称する。また、活性層23を両側から挟む第1の半導体層21及び第2の半導体層25は、それぞれ第1のクラッド層及び第2のクラッド層として機能する。
第1の半導体層(第1のクラッド層)21は、フォトニック結晶層21P、すなわち空孔22を含むため、母体の半導体(本実施形態においてはGaN)よりも屈折率が小さく、従って、活性層(コア層)23の実効屈折率よりも実効屈折率は小さい。
また、電子ブロック層25Aは活性層23(すなわち、活性層23のスペーサ層23B)よりもバンドギャップが大きく屈折率が小さい半導体(本実施形態においてはAlGaN)で構成されており、第2の半導体層(第2のクラッド層)25の実効屈折率は活性層23の実効屈折率よりも小さい。
第1の半導体層21及び第2の半導体層層25は、例えば光ファイバのクラッドと同様の機能、すなわち活性層(コア層)23中を導波する光を閉じ込める機能を有する。なお、第1の半導体層21は、互いに異なる組成の複数の半導体層から構成されていてもよい。また、第2の半導体層層25も、互いに異なる組成の複数の半導体層から構成されていてもよい。
また、第1の半導体層21はn型の半導体層であり、第2の半導体層25はp型(第1の半導体層21とは反対導電型)の半導体層であるが、第1の半導体層21及び第2の半導体層25は、i層又はアンドープ層を有していてもよい。例えば、第2の半導体層25中の電子ブロック層25Aがアンドープ層として構成されていてもよい。
p-GaN層25B上にはp電極28Aが設けられている。p電極28Aは、例えばp-GaN層25B上に形成されたNi(ニッケル)及びNi上に形成されたAu(金)からなるNi/Au構造(Auが表面層)として形成されている。
なお、p電極28Aは、p-GaN層25Bとオーミック接触された金属層を用いることができる。例えば、高反射率を持つITO電極/Ag反射膜を用いた構成である。また、p-GaN層25B上に金属層とのオーミック接触の取りやすい半導体層(例えば高ドープ層)が設けられていてもよい。
また、エッチングによって埋込層21Bが一部露出した第1の半導体層21の露出面上にはn電極28Bが設けられている。n電極28Bは、第1の半導体層21とオーミック接触している。n電極28Bは、例えばAl(アルミニウム)/Pt(プラチナ)/Au構造(Auが表面層)を有する。
図1Aに示すように、発光装置10は、p電極28A及びn電極28Bを下面として、配線回路が設けられた基板やブロック上に載置される。p電極28A及びn電極28B間に通電することにより、発光装置10は発光する。
(2)光学フィルタ
本実施形態の発光装置10においては、LED構造層20の出射面とナノアンテナ蛍光体30の入射面S1との間に光学フィルタ40が挿入されている。光学フィルタ40は、LED構造層20の出射面及びナノアンテナ蛍光体30の入射面S1に密着して設けられている。
光学フィルタ40は、透光性の基板であるサファイヤ基板40B上に、ダイクロイックミラーであるフィルタ膜40Aが形成されている。フィルタ膜40Aは、例えばSiO及びNbOを交互に積層した多層膜(SiO/NbO膜)又はSiO/TiO多層膜などで形成することができる。
光学フィルタ40は、LED構造層20からの放射光(青色光)を透過し、蛍光体プレート31のからの波長変換光(黄色光)を反射するショートパスフィルタ(SPF)として構成されている。
まず、LED構造層20からの放射光がナノアンテナ蛍光体30に効率よく入射するための光学フィルタ40への入射角について説明する。
図2は、光学フィルタ40の反射率の入射角(θ)依存性をシミュレーションした結果を示す図である。図2には、光学フィルタ40に入射する光の入射角がθ=30°,15°,0°における反射率が示されている。なお、ここでは、狭角光を出射するLED構造層20の発光波長(λ)として450nm±5nmを考える。
入射角θ=30°のとき、入射光の99%以上が光学フィルタ40のフィルタ膜40Aによって反射される。しかしながら、θ=15°(=θth)以下の条件においては、上記波長範囲における反射率はほぼ0%であり、LED構造層20の青色LED光をナノアンテナ蛍光体30に効率よく入射させることができる。すなわち、θth≦15°の狭角光を効率よく出射することが可能なフォトニック結晶を有するLED構造層20が有効であることが理解される。
また、フォトニック結晶の空孔の深さは100nmのため、物理的な大きさにはほとんど影響を与えない。これにより、LEDを光源とするナノアンテナ蛍光体の小型狭角白色光源をはじめて実現することができる。
すなわち、本実施形態においては、上記したように活性層23の発光スペクトルは半値全幅10nmを有し、当該半値全幅内の光が反射率0%で光学フィルタ40を透過するように、光学フィルタ40のフィルタ膜40A(SPF)の特性が設定されている。
このように、LED構造層20及び光学フィルタ40の特性は、LED構造層20の発光スペクトルの半値全幅内の光が反射率0%で光学フィルタ40を透過するように設定されている。
なお、上記の場合、入射角θ=30°以上の入射光(上記例においては青色光)に対し、当該入射光のピーク波長において10%未満の透過率を有していることが好ましい。また、入射角θ=15°以下の入射光に対し、当該入射光のピーク波長において90%以上の透過率を有していることが好ましい。
(3)フォトニック結晶の狭角化構造
次に、波長λ=450nm(半値全幅10nm)の青色LEDを例として、フォトニック結晶の狭角化のための構成について述べる。
フォトニック結晶におけるバンドギャップ計算を行うが、計算方法などについては、参考文献として「フォトニック結晶入門(著:迫田和彰、森北出版)」などを参照することができる。
なお、フォトニック結晶は、一定の周波数の光を結晶内から排除する能力を持ち、その周波数の領域は自在に設定することが可能である。当該領域はフォトニックバンドギャップと呼ばれる。
ここで、フォトニックバンドギャップ計算から分散関係を求める。フォトニック結晶の媒質屈折率をn=2.5(例えば、GaN)、フォトニック結晶空孔(air hole)の媒質(air)の屈折率を大気n=1、格子定数a(又は周期)及び空孔の直径dについては、d/a=0.5とし、正方格子で空孔が配置された場合のTEモード(Transverse Electric mode)の分散関係を計算する。
図3Aは、横軸を波数kx(=ksinθ)、縦軸を規格化周波数a/λとした分散関係を示す図である。ただし、回折角をθ、波数k=2π/λとしている。ここでは、複数のTEモードのうち、最も低次のTE0に着目している。
図3Bは、TE0モードの極大値部分を拡大して示す図である。図2Bに示すように、光モード端部(図中、白丸)に規格化周波数を合わせることは、0°方向の狭角光を取り出すことに相当する。
ここで、ナノアンテナ蛍光体30への入射を考慮し、狭角光をθ=-15°~15°(すなわち、放出角度が30°以内)まで許容されるとして、フォトニック結晶層21Pの設計を考える。図3Bには、効果が見込まれる範囲の代表的な設計値としてθ=-10°,θ=10°で得られる回折線をプロットしている。
光モード(TE0)と回折線の交点を満たす箇所(図中、黒丸)の規格化周波数0.415から、格子定数設計値185nmを得る。このため、空孔径d=92.5nm、格子定数a=185nmの正方格子で空孔22を配列してフォトニック結晶層21Pを構成し、例えば1mm角の面内領域に配置すればよい。
なお、フォトニック結晶層21Pの空孔配列は、正方格子に限ることなく、三角格子又は六方格子などから適宜選択し、同様の手順で得ることが可能である。
設計値は回折線の交点と理論値で決定してもよいが、格子定数をわずかにずらした複数のフォトニック結晶構造体を実際に作製した上で、条件出しした上で決定してもよい。
例えば、フォトニック結晶を有するLEDを形成し、軸上のPL(Photo-luminescence )強度を計測することで、強度のピーク値が所望の範囲内であるように格子定数a、空孔22の径dの最適値を得ることもできる。
フォトニック結晶の空孔配列、格子定数a、空孔22の径dを決定することにより、フォトニック結晶による狭角光の角度が決定される。
(4)ナノアンテナ蛍光体
(4.1)ナノアンテナ蛍光体の構造
図4Aは、ナノアンテナ蛍光体30の断面図である。また、図4Bは、ナノアンテナ蛍光体30の上面図である。なお、 図4Aは、図4BのV-V線に沿った断面図である。図4Aに示すように、ナノアンテナ蛍光体30は、波長変換体である蛍光体プレート31と、蛍光体プレート31上に形成され、複数のナノアンテナ32A(以下、単にアンテナ32Aとも称する。)からなるアンテナアレイ32と、を有する。
蛍光体プレート31は、光学フィルタ40を経たLED構造層20からの光である一次光L1が入射する入射面S1と、二次光L2が出射する出射面S2とを有する。本実施形態においては、蛍光体プレート31は、平行平板形状を有し、主面の一方を入射面S1とし、主面の他方を出射面S2とする。すなわち、一次光L1は、蛍光体プレート31の主面の一方(裏面)である入射面S1から入射され、蛍光体プレート31の主面の他方(表面)である出射面S2から出射される。
蛍光体プレート31の出射面S2から出射される二次光L2は、蛍光体プレート31によって波長が変換された波長変換光L21と、蛍光体プレート31を通過した透過光(波長が変換されていない一次光)L22とを含む。すなわち、蛍光体プレート31は、入射面S1から入射された一次光L1の一部の波長を変換して波長変換光L21を生成する。なお、本実施例においては、蛍光体プレート31は、その入射面S1が入射光L1の光軸に垂直となるように配置されている。
以下においては、一次光L1を蛍光体プレート31への入射光と称する場合がある。換言すれば、蛍光体プレート31は、入射面S1及び出射面S2を含み、入射面S1から入射された入射光L1の波長を変換して波長変換光L21を生成し、波長変換光L21及び通過光L22を出射面S2から出射するように構成されている。なお、本実施例においては、蛍光体プレート31は、LED構造層20に平行に配置されている。
本実施形態においては、蛍光体プレート31は、セリウムを発光中心としたイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG:Ce)の単相からなるセラミックス蛍光体プレートである。
また、上記したように、LED構造層20は、InGaN系半導体を発光層とし、一次光L1は約450nmの波長の青色光である。また、波長変換光L21は約460~750nmの波長の黄色光であり、二次光L2は黄色光と青色光とが混色された白色光である。
なお、蛍光体プレート31の蛍光体として種々の蛍光体を用いることができるが、単相の蛍光体であることが好ましい。単相蛍光体は、入射励起光を散乱させずにそのまま狭角光として取り出すことが可能だからである。
また、蛍光体プレート31は、安定した白色化(混色化)を行うことを考慮すると、40~200μmの範囲内の厚さTを有することが好ましい。
なお、光反射膜が蛍光体プレート31の側面に設けられていてもよい。例えば、当該光反射膜は、蛍光体プレート31の側面上に設けられた白色塗料の膜である。なお、当該光反射膜は、例えば黒色塗料などの光吸収膜に置換されることができる。
次に、アンテナアレイ32について説明する。本実施形態においては、アンテナアレイ32は、蛍光体プレート31の出射面S2上に形成されている。アンテナアレイ32は、LED構造層20の放射光のピーク波長よりも大きな周期で、蛍光体プレート31内における波長変換光の実効波長程度の周期Pで各アンテナが配置された複数のアンテナ32Aを有している。
これら複数のアンテナ32Aの各々は、本実施形態においては、表面プラズモンを励起可能な柱状又は錐状の金属突起(ピラー)である。また、本実施形態においては、アンテナ32Aの各々は、円柱形状を有し、Au(金)、Ag(銀)、Cu(銅)、Pt(プラチナ)、Pd(パラジウム)、Al(アルミニウム)及びNi(ニッケル)等の紫外から可視光領域にプラズマ周波数を有する材料、並びにこれらを含む合金又は積層体からなる。
また、図4Bに示すように、本実施形態においては、アンテナ32Aの各々は実質的に同一のアンテナ高さH及びアンテナ幅(直径)W1を有する。なお、アンテナ32Aが柱状又は錐状の形状を有する場合、アンテナ幅W1とはアンテナ32Aの最大幅をいう。
また、本実施形態においては、これら複数のアンテナ32Aは、蛍光体プレート31の出射面S2上に六方格子状に周期Pで配列されている。また、アンテナアレイ32は、出射面S2の中央部の縦及び横の幅(アレイ幅)がW2で正方領域内に形成されている。
本実施形態においては、アンテナ幅W1は150±20nm、アレイ幅W2は6mmである。また、YAG:Ce蛍光体は約1.82の屈折率を有し、460nm~750nmの波長の光を発する。ここで、光学波長は(発光波長/屈折率)で計算される。
アンテナアレイ32の各アンテナ32Aに光が照射されると、アンテナ32Aの表面での局在表面プラズモン共鳴によりアンテナ32A近傍の電場強度が増大する。また、アンテナ32Aの配置周期Pを波長変換光L21の光学波長程度とすることで、隣接する個々のアンテナ32Aの局在表面プラズモン共鳴が光回折を介した共振を起こし、さらなる電場強度の増大が生じ、波長変換光L21の光取り出し効率が向上する。なお、本明細書においては、蛍光体プレート31内での光学波長程度とは、例えば蛍光体プレート31内における蛍光体の発光波長帯に前後50nmを加えた波長帯域をいう。
これらによって、蛍光体プレート31からの波長変換光L21が増幅され、また、狭角な配光分布(低エタンデュ)となってアンテナアレイ32から出射される。すなわち、アンテナアレイ32は、蛍光体プレート31内の光を増強し、また、二次光L2(波長変換光L21)の出射方向を絞る機能を有する。
(4.2)ナノアンテナ蛍光体の狭角化構造
次に、ナノアンテナ蛍光体30の狭角化のための構造について説明する。ここで、プラズモン共鳴は回折モードと共調して発生するため、アンテナアレイ32におけるアンテナ32A(ピラー)の周期Pは、回折角(放出角)と波長の関係をシミュレーションし、放出角度が30°以内の光が増加する領域を算出することによって決定される。
ここでは、アンテナ32Aが六方格子配置されたアンテナアレイ32をモデルとして、周期Pが360nm~480nmの条件において、放出角と波長の関係をシミュレーションした。
図5A~図5Dは、アンテナアレイ32の放出角(θem)に対する波長変換光の波長のシミュレーション結果を示している。なお、周期Pをパラメータとして示している。より具体的には、図5A~図5Dは、アンテナ32Aの周期Pが360nm,400nm,440nm,480nmのそれぞれの場合において、指向性の特徴を表す回折次数(1,0)の成分YAG(1,0)(図中、実線で示す)と、回折次数(-1,0)(図中、一点鎖線で示す)とを示している。
ここで、回折次数(-1,0)はナノアンテナ蛍光体30から大気側へ放出することを表す線であり、ここではAir(-1,0)と呼ぶことにする。Air(-1,0)線を境に、図の左上部側に伝播モードが存在する場合には、当該伝播モードは大気側に取り出すことが可能な光であることを示している。
また、Air(-1,0)線を境に、図の右下の範囲に光モードが存在する場合には、当該光はエバネッセント光であり、光がナノアンテナ蛍光体30の外に出てこないと考えて差支えがない。
また、図5A~図5Dにおいて、蛍光体プレート31からの蛍光は、波長が500nmから650nmの光が支配的であるため、この波長範囲内(図中、点線で示す)の回折光が30°以内で放出することが条件とされる。
光がナノアンテナ蛍光体30から放出されるためには、上記のAir(-1,0)線を考慮すると、点線で囲まれた範囲のうち、YAG(1,0)の成分(破線で囲まれた領域)の光を取り出すことが可能である。
周期Pが400nmから440nmの範囲では、30°以内で取り出される光が多いことが判明した。 このため、アンテナアレイ32による波長変換光の放出角度範囲を所定の範囲、例えば30°以内としたときには、アンテナ32Aの周期Pは400nmから440nmの範囲が望ましい。上記周期以外の条件では、光取り出しと関わる回折線の領域が大幅に減少することがわかる。
すなわち、アンテナ32Aの周期Pは、アンテナアレイ32による波長変換光の放出角度範囲に基づいて決定することができる。
なお、アンテナ32Aが六方格子配置されたアンテナアレイ32について説明したが、アンテナアレイ32の格子構造はこれに限定されない。例えば、正方格子、三角格子等の周期構造を有するアンテナアレイを用いてもよい。
(5)発光装置10の配光特性
発光装置10の配光特性について以下に説明する。図6A、図6Bは、それぞれLED構造層20からの青色光の配光特性、ナノアンテナ蛍光体30からの蛍光(黄色光)の配光特性を示している。また、図6Cは、発光装置10からの白色光の配光特性、すなわち青色光及び蛍光(黄色光)の合成光の配光特性を示している。
なお、図6A~図6Cには、従来のLED、蛍光体からのランバーシアン配光特性(図中、破線)示している。
図6Aに示すように、LED構造層20からの青色光は、±15°以内に相当する光が増加し、ランバーシアンに対して狭角化された配光が形成されていることがわかる。また、図6Bに示すように、ナノアンテナ蛍光体30を励起した際に得られる黄色光に対しても、ランバーシアンに対して狭角化する機能があることがわかる。
そして、図6Cに示すように、発光装置10からの合成光(白色光)についても狭角化された配光特性が得られていることが分かる。
より詳細には、従来のランバーシアン配光においては、±30°以内の光束(出力割合)は25%であるが、発光装置10においては、±30°以内の光束は40%であり、ランバーシアン配光よりも15%向上することが分かった。また、中心輝度が20%以上増加することが判明した。
すなわち、フォトニック結晶21Pを有するLED構造層20と、ナノアンテナ蛍光体30により形成される狭角青色光と狭角黄色光の合成によって、はじめて狭角白色光を形成することができる。
(6)発光装置10のメカニズム及び構成
上記においては、本発明の発光装置10について詳細に説明したが、発光装置10は、フォトニック結晶により狭角光が形成され、当該狭角光が効率よくナノアンテナ蛍光体に入射するように構成されていればよい。
図7は、LED構造層20により生成される狭角LED光を模式的に示す図である。より具体的には、図7に示すように、本発明の発光装置10において、LED構造層20は、フォトニック結晶層21Pが内部に埋め込まれたフォトニック結晶LEDであり、狭角LED光(狭角青色光)が生成されるように構成されている。
より詳細には、光学フィルタ40のフィルタ膜40Aの反射率の入射角依存性に応じてフォトニック結晶層21Pの空孔22の周期が定められる。すなわち、フィルタ膜40A(例えば、ダイクロイックミラー)の反射角が0(ゼロ)となる角度θthを算出し、フォトニック結晶の回折角θがθ≦θthを満たすようにフォトニック結晶層21Pの空孔22の周期が定められる。
すなわち、LED構造層20は、角度θth(上記実施形態においてはθth=15°)以下の狭角光LNが生成されるように構成されている。そして当該狭角光LN0は、SPFである光学フィルタ40を透過し、高い入射効率でナノアンテナ蛍光体30に入射する。
ナノアンテナ蛍光体30の蛍光体プレート31に入射し、蛍光体によって波長変換された波長変換光(黄色光)はナノアンテナ32Aによって狭角光LN1として出射される。また、当該波長変換光は光学フィルタ40によって出射方向に反射される。
したがって、蛍光体プレート31を透過した狭角青色光と狭角黄色光とによって狭角白色光が出射され、発光装置10は狭角白色光源として機能する。
なお、フォトニック結晶層21Pが単一格子構造を有する場合を例に説明したが、二重格子構造など多重格子構造を有していてもよい。
また、光学フィルタ40がダイクロイックミラーによって構成されている場合を例に説明したが、これに限らない。LED構造層20からの光を透過し、蛍光体プレート31のからの波長変換光を反射するショートパスフィルタ(SPF)等の光学フィルタで構成されていればよい。
この場合、LED構造層20からの発光に対する反射率の角度依存性が小さな光学フィルタ40を用いることによって光取り出し効率を高めることができる。具体的には、入射角依存性の小さな広帯域のバンドパスフィルタを用いてもよい。
[第2の実施形態]
図8は、本発明の第2の実施形態の発光装置50の断面構造を模式的に示す断面図である。
第2の実施形態の発光装置50は、光学フィルタ40が設けられていない点において第1の実施形態の発光装置10とは異なる。
より具体的には、発光装置50は、LED構造層20と、LED構造層20上に配されたナノアンテナ蛍光体30とを有する。LED構造層20及びナノアンテナ蛍光体30は第1の実施形態の発光装置10と同一の構成を有している。
すなわち、LED構造層20はフォトニック結晶層21Pを有し、所定の挟角光(例えば、LED構造層20の法線方向に対して15°以内)が出射されるように構成されている。
なお、第1の実施形態の発光装置10において述べたように、当該挟角光の角度はフォトニック結晶の空孔配列、格子定数a、空孔22の径dによって決定することができる。
本実施形態において、LED構造層20からの挟角光は直接ナノアンテナ蛍光体30に入射される。ナノアンテナ蛍光体30の挟角化構造は、フォトニック結晶層21Pからの挟角光の角度に応じて設定されていることが好ましい。
第1の実施形態の発光装置10において述べたように、ナノアンテナ蛍光体30のプラズモン共鳴は回折モードと共調して発生するため、アンテナアレイ32におけるアンテナ32Aの周期Pは、当該回折角と波長の関係をシミュレーションし、所定の放出角度(例えば、30°)以内の光が増加する領域を算出することによって決定することができる。
以上説明した構成の発光装置50によって、挟角の配光特性及び高い出射光を有する混色光源を実現することができる。
なお、上記した実施例においては、半導体発光構造層が窒化物半導体からなるフォトニック結晶発光ダイオードである場合について説明したが、これに限らず、他の結晶系の半導体からなるフォトニック結晶発光ダイオードについても適用が可能である。
また、蛍光体プレートが青色光を黄色光に変換する蛍光体からなる場合について説明したが、これに限らない。用いられるフォトニック結晶発光ダイオードの波長等に応じて適宜蛍光体を選択して適用することができる。
また、上記した実施例における数値は例示に過ぎず、用いられる半導体の組成、発光波長等に応じて適宜改変して適用することができる。
10,50:発光装置、20:半導体発光構造層、21:第1の半導体層、21P:フォトニック結晶層、22:空孔(air hole)、23:活性層、23A:発光層、23B:スペーサ層、25:第2の半導体層、28A:p電極、28B:n電極、30:ナノアンテナ蛍光体、31:蛍光体プレート、32:アンテナアレイ、32A、ナノアンテナ、40:光学フィルタ、40A:フィルタ膜、40B:透光性基板

Claims (9)

  1. フォトニック結晶層を有する半導体発光構造層と、
    前記半導体発光構造層の出射面上に載置され、前記半導体発光構造層の放射光の波長を変換して波長変換光を生成する波長変換体及び前記波長変換体上に複数のナノアンテナが周期的に配列されたアンテナアレイからなるナノアンテナ蛍光体と、を有する発光装置。
  2. 前記複数のナノアンテナは、前記半導体発光構造層の前記放射光ピーク波長よりも大きな周期で、かつ前記波長変換体内における前記波長変換光の実効波長程度の周期で配されている請求項1に記載の発光装置。
  3. 前記複数のナノアンテナの周期は、前記アンテナアレイによる前記波長変換光の放出角度範囲に基づいて設定されている請求項1に記載の発光装置。
  4. 前記半導体発光構造層は、ピーク波長が445nmから455nmの範囲内の青色光を放射し、
    前記波長変換体は前記半導体発光構造層からの放射光の波長を変換して黄色光を生成し、
    前記複数のナノアンテナの前記周期は、400nm~440nmの範囲内である、請求項1に記載の発光装置。
  5. 前記半導体発光構造層及び前記ナノアンテナ蛍光体間に配された光学フィルタを備え、
    前記光学フィルタは、前記半導体発光構造層の前記放射光を透過し、前記ナノアンテナ蛍光体の前記波長変換光を反射する、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の発光装置。
  6. 前記光学フィルタは、前記半導体発光構造層からの入射角が30°以上の前記放射光に対し、前記放射光のピーク波長において10%未満の透過率を有し、入射角が15°以下の前記放射光に対し、前記ピーク波長において90%以上の透過率を有する、請求項5に記載の発光装置。
  7. 前記半導体発光構造層は、前記半導体発光構造層の前記放射光がランバーシアン配光特性と比較して15°以下の放射光成分が大である配光特性を有し、
    前記ナノアンテナ蛍光体は、前記ナノアンテナ蛍光体の出射光がランバーシアン配光特性と比較して15°以下の出射光成分が大である配光特性を有する、請求項5に記載の発光装置。
  8. 前記波長変換体は単相蛍光体である請求項1ないし4のいずれか一項に記載の発光装置。
  9. 前記波長変換体は単相蛍光体である請求項5に記載の発光装置。
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