JP2023151630A - ゼオライト膜複合体 - Google Patents

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Abstract

【課題】長尺化した場合であっても、混合ガスからのアンモニアの分離回収を可能とするゼオライト膜複合体を提供すること。【解決手段】多孔質支持体上にゼオライト膜を有するゼオライト膜複合体10であって、管状構造を有し、管の長さが40cm以上であり、下記に示す部位(A)12におけるアンモニア/窒素の比、部位(B)13におけるアンモニア/窒素の比及び部位(B’)13’におけるアンモニア/窒素の比が、いずれも50以上であることを特徴とするゼオライト膜複合体である。部位(A):ゼオライト膜複合体の管の長さ方向の中心11から両側に4cmの幅の部分部位(B):ゼオライト膜複合体の管の一方の端部から8~12cmの部分部位(B’):ゼオライト膜複合体の管の他方の端部から8~12cmの部分【選択図】図1

Description

本発明は、ゼオライト膜複合体に関する。詳しくは、少なくともアンモニアガスと、窒素ガスを含む複数の成分からなる混合ガスからアンモニアガスを選択的に透過させてアンモニアを分離するゼオライト膜複合体に関する。
近年、気体(ガス)の混合物の分離方法として、高分子膜やゼオライト膜などの膜を用いた膜分離、濃縮方法が提案されている。これらの方法のうち、高分子分離膜は加工性に優れる特徴をもつが、燃焼性を有する点に課題がある。一方、ゼオライト膜等の無機膜は、耐薬品性、耐酸化性、耐熱安定性、耐圧性が良好であることから、種々の無機膜が提案されている。
その中でも、ゼオライト膜はサブナノメートルの規則的な細孔を有し、分子ふるいとしての機能をもつため、選択的に特定の分子を透過させることができるばかりでなく、広い温度範囲での分離、濃縮が可能な高耐久性分離膜として期待されている。このようなゼオライト膜は、通常、無機材料よりなる支持体上に膜状にゼオライトを形成させたゼオライト膜複合体として用いられる。
本発明のアンモニアガスの窒素ガスからの分離に関しても膜分離の適用、例えば、工業的に重要なプロセスの一つであるハーバー・ボッシュ法によるアンモニア製造プロセスへの膜分離の適用が近年期待されている。ハーバー・ボッシュ法のプロセスの特徴としては、このアンモニア生成反応が平衡反応であり、熱力学的には高圧、低温条件下での反応が好ましいとされるが、触媒反応速度を確保するために、一般に高圧、高温の製造条件が強いられる点が挙げられる。また、生成する混合ガス中には未反応の水素ガスと窒素ガスとがアンモニアガスと共存するために、生成物となるアンモニアガスを生成混合ガスから回収する工程では、-20℃~-5℃程度に混合ガスを冷却してアンモニアを凝縮分離する必要がある。一方、精製工程時の冷却凝縮分離法を、無機膜を用いた分離方法に代替して効率的に高濃度のアンモニアガスを回収するプロセスが提案されている(特許文献1、2)。
特許文献1では、気体分離膜を用いて未精製アンモニアから水素を分離する第1分離工程と、別の気体分離膜を用いて、第1分離工程後の未精製アンモニアからアンモニアを分離する第2分離工程とを含む膜分離工程が開示されている。この方法は、水素ガス、窒素ガスおよびアンモニアガスの混合ガスからアンモニアガスを、少なくとも2段で分離する煩雑なプロセスとなるばかりでなく、経済性のあるプロセスとするためには、1段目の分離膜により透過したアンモニアガスを含有する高濃度の水素混合ガス、ならびに透過しなかった窒素ガスとアンモニアガスの混合ガスからアンモニアガスを分離する工程が必須となる。ここで、2段目の膜の窒素ガスとアンモニアガスの分離ではアンモニアガスの透過度は十分でなく、膜面積が大きくなる恐れもある。
また、特許文献2で提案されている酸素8員環を有する特定のゼオライトを用いてアンモニアガスと水素ガスおよび/または窒素ガスの混合ガスからアンモニアガスを分離する手法は、工業プロセスに適用できる有効な手法と成り得る。しかしながら、特許文献2で提案されているゼオライトの細孔径を利用した分子篩作用によるアンモニアの分離方法では、アンモニアガスと窒素ガスのパーミエンス比(理想分離係数)は、14程度であり、その透過性能は十分とは必ずしも言い難い。
これらの問題を解決すべく特許文献3には、ゼオライト膜を用いて、少なくとも、アンモニアガスと、水素ガスと、窒素ガスと、を含有する混合ガスからアンモニアガスを選択的に透過させてアンモニアを分離する方法であって、前記混合ガス中のアンモニアガス濃度が1.0体積%以上である、アンモニアの分離方法が提案され、ゼオライト膜を構成するゼオライトとして、RHO型ゼオライトまたはMFI型ゼオライトが好ましい旨、開示されている。
特開2008-247654号公報 特開2014-058433号公報 国際公開2018/230737パンフレット
上記特許文献3に開示される手法によれば、少なくともアンモニアガスと窒素ガスを含有する混合ガス(以下、単に「混合ガス」と記載することがある。)からアンモニアガスを効率的に分離回収することが可能である。この手法を利用してさらに効率的にアンモニアガスを分離回収する手法としては、無機材料よりなる支持体上に膜状にゼオライトを形成させたゼオライト膜複合体を管状構造とし、該管状構造を長尺化して、混合ガスとの接触面積を大きくすることによって、混合ガスからアンモニアガスをより効率的に分離回収する手法が考えられる。
しかしながら、ゼオライト膜複合体を長尺化することによって、窒素の透過量が増大し、その結果としてアンモニアガスの分離能力、すなわち窒素とアンモニアの透過性能の差が小さくなることが判明した。この原因を調査したところ、長尺化したゼオライト膜複合体の両端部又は少なくとも両端の一方の端部において窒素の透過量が増大することで、複合体全体としてのアンモニア分離能が大きく低下していることがわかった。
そこで、本発明の課題は、ゼオライト膜複合体を長尺化した場合であっても、アンモニアガスの分離能力を落とすことなく、混合ガスからのアンモニアの分離回収を可能とするゼオライト膜複合体を提供することにある。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定のゼオライト膜複合体により上記課題を解決し得ることを見出し、本発明に到達した。
即ち、本発明の要旨は、次の[1]~[12]に存する。
[1]多孔質支持体上にゼオライト膜を有するゼオライト膜複合体であって、管状構造を有し、管の長さが40cm以上であり、下記に示す部位(A)におけるアンモニア/窒素の比、部位(B)におけるアンモニア/窒素の比及び部位(B’)におけるアンモニア/窒素の比が、いずれも50以上であることを特徴とするゼオライト膜複合体。
部位(A):ゼオライト膜複合体の管の長さ方向の中心から両側に4cmの幅の部分
部位(B):ゼオライト膜複合体の管の一方の端部から8~12cmの部分
部位(B’):ゼオライト膜複合体の管の他方の端部から8~12cmの部分
但し、アンモニア/窒素の比とは、少なくとも窒素ガスとアンモニアガスを含有する混合ガスをゼオライト膜複合体を透過させて得られるガス中の比をいう。
[2]前記管状構造の管の長さが80cm以上である上記[1]に記載のゼオライト膜複合体。
[3]前記管状構造の管の長さが100cm以上である上記[1]に記載のゼオライト膜複合体。
[4]前記ゼオライトが、CHA型、FAU型、MFI型、LTA型又はRHO型のいずれかである上記[1]~[3]のいずれかに記載のゼオライト膜複合体。
[5]前記ゼオライトが、CHA型、MFI型、LTA型又はRHO型のいずれかである上記[1]~[3]のいずれかに記載のゼオライト膜複合体。
[6]前記ゼオライトが、MFI型又はRHO型のいずれかである上記[1]~[3]のいずれかに記載のゼオライト膜複合体。
[7]前記ゼオライトが、MFI型である上記[1]~[3]のいずれかに記載のゼオライト膜複合体。
[8]前記アンモニア/窒素の比が70以上である上記[1]~[7]のいずれかに記載のゼオライト膜複合体。
[9]前記アンモニア/窒素の比が100以上である上記[1]~[7]のいずれかに記載のゼオライト膜複合体。
[10]上記[1]~[9]のいずれかに記載のゼオライト膜複合体の製造方法であって、水熱合成用原料混合物のケイ素に対する水のモル比が45以上300以下であることを特徴とするゼオライト膜複合体の製造方法。
[11]ケイ素に対する水のモル比が60以上200以下である上記[10]に記載のゼオライト膜複合体の製造方法。
[12]ケイ素に対する水のモル比が70以上150以下である上記[10]又は[11]に記載のゼオライト膜複合体の製造方法。
本発明によれば、ゼオライト膜複合体を長尺化した場合であっても、アンモニアガスの分離能力を低下させることなく、混合ガスからのアンモニアの分離回収を可能とするゼオライト膜複合体を提供することができる。
本発明のゼオライト膜複合体の模式図である。 本発明のゼオライト膜複合体の断面構造を示す模式図である。 アンモニアガスの分離試験装置を示す模式図である。 実施例1で製造したゼオライト膜複合体の模式図である。 SEM-EDS測定のサンプルの状態を説明するための図である。
以下、本発明の実施の形態について更に詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例であり、本発明はこれらの内容に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
なお、本明細書におけるゼオライトとは、International Zeolite Association(IZA、以下「IZA」と記載する。)が定めるゼオライトである。その構造はX線回折データにより特徴付けられる。また、本明細書において、「ゼオライト膜が多孔質支持体上に形成されてなる多孔質支持体-ゼオライト膜複合体」を、単に「ゼオライト膜複合体」と称することがある。また、「多孔質支持体」を単に「支持体」と略称し、「アルミノ珪酸塩のゼオライト」を単に「ゼオライト」と略称することがある。更に、本明細書において、「水素ガス」、「窒素ガス」ならびに「アンモニアガス」を、それぞれ、単に「水素」、「窒素」、「アンモニア」と称することがある。一方、本発明でのアンモニア分離とは、アンモニアガスを含有する混合ガスからより高濃度のアンモニアガスを含有する混合ガスを得ることを意味する。
[ゼオライト膜複合体]
本発明のゼオライト膜複合体とは、多孔質支持体上にゼオライト膜を有し、好ましくは結晶化して固着しているものであり、ゼオライトの一部が、支持体の内部にまで固着している状態のものを含む。
ゼオライト膜複合体としては、例えば、多孔質支持体の表面等にゼオライトを水熱合成により膜状に結晶化させたものが好ましい。
ゼオライト膜の多孔質支持体上の位置は特に限定されず、管状の支持体の外表面にゼオライト膜を形成してもよいし、内表面に形成してもよく、さらに適用する系によっては両面に形成してもよい。また、支持体の表面に積層させて形成してもよいし、支持体の表面層の細孔内を埋めるように結晶化させてもよい。この場合、結晶化した膜層の内部に亀裂や連続した微細孔が無いことが重要であり、いわゆる緻密な膜を形成させることが、分離性の向上の面で好ましい。
本発明のゼオライト膜複合体について、図1及び図2を用いて詳細に説明する。図1は本発明のゼオライト膜複合体を示す模式図であり、図2はゼオライト膜複合体の断面を示す模式図である。本発明のゼオライト膜複合体10は、図1に示すように管状構造(以下、単に「管」と記載することがある。)を有しており、管の長さは40cm以上であることを要する。なお、ここで管の長さとは、一方の末端から他方の末端までの長さをいう。
また、本発明のゼオライト膜複合体は、図2に示すような断面構造を有しており、多孔質支持体101上にゼオライト膜103を有している。また、管は中心に空隙部102を有している。なお、図2の断面構造は、多孔質支持体101の外表面にゼオライト膜103を有する態様を示しているが、多孔質支持体10の内表面にゼオライト膜を有していてもよいし、多孔質支持体の外表面及び内表面の両面にゼオライト膜を有していてもよい。
図1において、管の長さ方向の中心11から両側に4cm、すなわち中心11から左右の方向に±2cm(右側をプラス、左側をマイナス)幅の部分が部位(A)(図1中の12)である。また、一方の端部から8~12cmの部分が部位(B)(図1中の13)であり、他の端部から8~12cmの部分が部位(B’)(図1中の13’)である。
本発明では、上述のように、管の長さは40cm以上である。管の長さは長いほど、1本あたりの混合ガスの分離処理量を多くすることができるために、設備コストを低減することができる。以上の観点から、管の長さは80cm以上であることが好ましく、100cm以上であることがより好ましく、120cm以上であることがさらに好ましい。
上限値については、特に制限はないが、使用時の振動等により折れやすい等の問題が生じるのを防ぐことができることから、500cm以下が好ましく、300cm以下がより好ましく、200cm以下がさらに好ましい。
管の内径は通常0.1cm以上、好ましく0.2cm以上、より好ましくは0.3cm以上、特に好ましくは0.4cm以上であり、通常2cm以下、好ましくは1.5cm以下、より好ましくは1.2cm以下、特に好ましくは1.0cm以下である。外径は、通常0.2cm以上、好ましくは0.3cm以上、より好ましくは0.6cm以上、特に好ましくは1.0cm以上であり、通常2.5cm以下、好ましくは1.7cm以下、より好ましくは1.3cm以下である。
管の内径及び外径がそれぞれ上記上限値以下であれば、アンモニアの分離に伴う設備のサイズを小さくすることができ、経済的に有利になる。
本発明では、部位(A)におけるアンモニア/窒素の比、部位(B)におけるアンモニア/窒素の比及び部位(B’)におけるアンモニア/窒素の比のいずれもが、それぞれ50以上である。ここで、アンモニア/窒素の比とは、少なくとも窒素ガスとアンモニアガスを含有する混合ガスを、本発明のゼオライト膜複合体を透過させて得られるガス中の比(モル比)のことである。なお、ガスであるため、モル比と体積比は同じとなる。
ゼオライト膜複合体の、アンモニア/窒素の比が、上述の3か所のいずれもそれぞれ50以上であることで、長尺化したときのゼオライト複合膜全体のアンモニアガスと窒素ガスの分離が十分となり、アンモニアガスの透過能力が維持できる。したがって、ゼオライト膜複合体を長尺化した場合であっても、アンモニアガスの透過能力を低下させることなく、混合ガスからのアンモニアガスの分離回収を効率的に行うことができる。
以上の観点から、アンモニア/窒素の比が、上述の3か所のいずれもそれぞれ70以上であることがより好ましく、それぞれ100以上であることがさらに好ましい。
<多孔質支持体>
本発明において用いられる多孔質支持体は、表面にゼオライトを膜状に結晶化できるような化学的安定性を有することが好ましい。好適な多孔質支持体としては、ポリスルフォン、酢酸セルロース、芳香族ポリアミド、フッ化ビニリデン、ポリエーテルスルフォン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミドなどのガス透過性の多孔質高分子;シリカ、α-アルミナ、γ-アルミナ、ムライト、ジルコニア、チタニア、イットリア、窒化珪素、炭化珪素などのセラミックス焼結体;鉄、ブロンズ、ステンレス等の焼結金属やメッシュ状の成形体;ガラス、カーボン成型体などの無機多孔質が挙げられる。なかでも、高温領域でのアンモニア分離用の多孔質支持体としては、該支持体の高温時の機械強度、耐変形性、熱安定性、耐反応性が優れる理由から、セラミックス焼結体や金属焼結体、ガラス、カーボン成型体などの無機多孔質支持体が好ましい。
無機多孔質支持体は、基本的成分あるいはその大部分が無機の非金属物質から構成されている固体材料であるセラミックスを焼結したものが好ましい。
好ましいセラミックス焼結体としては、上述の通り、α-アルミナ、γ-アルミナ、シリカ、ムライト、ジルコニア、チタニア、イットリア、窒化珪素、炭化珪素などを含むセラミックス焼結体が挙げられるが、これらは単独の焼結体であってもよく、複数のものを混合して焼結したものであってもよい。これらセラミックス焼結体は、その表面の一部がゼオライト膜合成中にゼオライト化することがあるため、これにより、多孔質支持体とゼオライト膜との密着性が高くなるため、ゼオライト膜複合体の耐久性を向上させることができる。
特に、アルミナ、シリカ、ムライトのうち少なくとも1種を含む無機多孔質支持体は、無機多孔質支持体の部分的なゼオライト化が容易であるため、無機多孔質支持体とゼオライトの結合が強固になり、緻密で分離性能の高いゼオライト膜が形成されやすくなるのでより好ましい。
本発明において用いられる多孔質支持体は、その表面(以下「多孔質支持体表面」ともいう。)において、多孔質支持体上に形成されるゼオライトを結晶化させる作用を有することが好ましい。
また、上記多孔質支持体表面は、細孔径が制御されていることが好ましい。多孔質支持体表面付近における多孔質支持体の平均細孔径は、通常0.02μm以上、好ましくは0.05μm以上、さらに好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.15μm以上、さらに好ましくは0.5μm以上であり、とりわけ好ましくは0.7μm以上、最も好ましくは1.0μm以上であり、通常20μm以下、好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下特に好ましくは2μm以下である。このような範囲の細孔径を有する多孔質支持体を使用することにより、アンモニアの透過選択性を向上させる緻密なゼオライト膜を形成させることができる。
なお、多孔質支持体の表面は滑らかであることが好ましく、必要に応じて表面をやすり等で研磨してもよい。
本発明において用いられる多孔質支持体の、多孔質支持体表面付近以外の部分の細孔径は制限されるものではなく、また特に制御される必要は無いが、その他の部分の気孔率は通常20%以上、より好ましくは30%以上、通常60%以下、好ましくは50%以下である。多孔質支持体表面付近以外の部分の気孔率は、気体や液体を分離する際の透過流量を左右し、上記下限以上であることにより透過物が拡散しやすくなる傾向があり、上記上限値以下では多孔質支持体の強度が低下するのを防ぎやすくなる傾向がある。また透過流量を制御する方法として、気孔率の異なる多孔質体を層状に組み合わせた多孔質支持体を用いてもよい。
本発明において用いられる多孔質支持体の形状は管状である。管状の多孔質支持体の長さは、上述のゼオライト膜複合体の長さを担保できるものであればよい。したがって、多孔質支持体の管の長さは、前述のゼオライト膜複合体と同様に、40cm以上であり、80cm以上であることが好ましく、100cm以上であることがより好ましく、120cm以上であることがさらに好ましい。また、500cm以下が好ましく、300cm以下がより好ましく、200cm以下がさらに好ましい。上記上限値以下であると、上述のように、使用時の振動等により折れやすい等の問題がなく、また、ゼオライト膜複合体の製造を簡略化できる。
管状の多孔質支持体の内径についても、上述のゼオライト膜複合体の内径及び外形を担保し得るものであればよく、通常0.1cm以上、好ましく0.2cm以上、より好ましくは0.3cm以上、特に好ましくは0.4cm以上であり、通常2cm以下、好ましくは1.5cm以下、より好ましくは1.2cm以下、特に好ましくは1.0cm以下である。外径は、通常0.2cm以上、好ましくは0.3cm以上、より好ましくは0.6cm以上、特に好ましくは1.0cm以上であり、通常2.5cm以下、好ましくは1.7cm以下、より好ましくは1.3cm以下である。
管状の多孔質支持体の肉厚は、通常0.1mm以上、好ましくは0.3mm以上、より好ましくは0.5mm以上、さらに好ましくは0.7mm以上、さらに好ましくは1.0mm以上、特に好ましくは1.2mm以上であり、通常4mm以下、好ましくは3mm以下、より好ましくは2mm以下である。
管状の多孔質支持体の内径、外径及び肉厚がそれぞれ、上記下限値以上であれば、支持体の強度を向上させて折れにくくすることができる。また、管状の支持体の内径及び外径がそれぞれ上記上限値以下であれば、アンモニアの分離に伴う設備のサイズを小さくすることができるために、経済的に有利になりうる。また、管状の支持体の肉厚が上記上限値以下であれば、透過性能が向上する傾向がある。
多孔質支持体の30℃における熱膨張率に対する300℃における熱膨張率の変化率は、その絶対値として、0.25%以下、好ましくは0.20%以下、更に好ましくは0.15%以下、とりわけ好ましくは0.10%以下、最も好ましくは0.05%以下である。
すなわち、多孔質支持体の30℃における熱膨張率に対する300℃における熱膨張率の変化率は、±0.25%以内であり、好ましくは±0.20%以内、更に好ましくは±0.15%以内、とりわけ好ましくは±0.10%以内、最も好ましくは±0.05%以内である。
また、多孔質支持体の30℃の熱膨張率に対する400℃の熱膨張率の変化率は、その絶対値として、通常0.30%以下、好ましくは0.25%以下、更に好ましくは、0.20%以下、とりわけ好ましくは0.15%以下、最も好ましくは0.10%以下である。
すなわち、多孔質支持体の30℃の熱膨張率に対する400℃の熱膨張率の変化率は、±0.30%以内、好ましくは±0.25%以内、更に好ましくは、±0.20%以内、とりわけ好ましくは±0.15%以内、最も好ましくは±0.10%以内である。このような低い熱膨張率を示す多孔質支持体上に成膜したゼオライト膜複合体は、例えば、200℃を超える温度条件下で、更には300℃を超える温度条件下でも、アンモニアと窒素を少なくとも含む複数の成分からなる混合ガスからアンモニアを透過させる目的で該複合体を昇温した際に、多孔質支持体の熱膨張(収縮)に追従してゼオライト膜の亀裂が発生しにくいため、高温条件下でも安定してアンモニアを高い透過度で効率的に透過側に分離することができる。
また、多孔質支持体の30℃の熱膨張率に対する300℃の熱膨張率の変化率に対する、30℃の熱膨張率に対する400℃における該熱膨張率の変化率は、その比として絶対値で、通常120%以下、好ましくは115%以下、更に好ましくは110%以下、とりわけ好ましくは105%以下、最も好ましくは103%以下である。このような特定の温度間の特定の熱膨張率比を示す多孔質支持体上に成膜したゼオライト膜複合体は、例えば、アンモニア製造において反応器内で不均質な発熱が起こった際にも、局所的な多孔質支持体の熱膨張(収縮)に追従したゼオライト膜の亀裂の発生を抑制できるため、高温条件下でも安定してアンモニアを高い透過度で効率的に透過側に分離することができる。
(熱膨張率の変化率の測定方法)
本発明において、多孔質支持体の30℃の熱膨張率に対する所定温度における熱膨張率の変化率は、以下の条件下での昇温XRD測定法により30℃及び所定温度で測定した結晶格子定数を求め、下記式(1)により求めることができる。
(昇温XRD測定装置仕様)
(測定条件)
測定雰囲気:大気
昇温条件 :20℃/min
測定方法 :測定温度で5分間保持後にXRD測定を実施する。
測定データには、可変スリットを用いて固定スリット補正を行う。
熱膨張率の変化率=(所定温度で測定した結晶格子定数)÷(30℃で測定した結晶格子定数)-1・・・(1)
<ゼオライト>
本発明において、ゼオライト膜を構成するゼオライトはアルミノ珪酸塩であることが好ましい。アルミノ珪酸塩は、SiとAlの酸化物を主成分とするものであり、本発明の効果を損なわない限り、それ以外の元素が含まれていてもよい。本発明のゼオライト中に含まれるカチオン種としては、ゼオライトのイオン交換サイトに配位しやすいカチオン種が望ましく、例えば、周期律表の第1族、第2族、第8族、第9族、第10族、第11族、及び、第12族の元素群から選ばれるカチオン種、NH 、ならびにこれらの二種以上のカチオン種であり、より好ましくは、周期律表の第1族、第2族の元素群から選ばれるカチオン種、NH 、ならびにこれらの二種以上のカチオン種である。
アルミノ珪酸塩のSiO/Alモル比は、特段の制限はないが、通常6以上、好ましくは7以上、より好ましくは8以上であり、一方、通常500以下、好ましくは100以下、より好ましくは80以下、さらに好ましくは50以下、とりわけ好ましくは45以下、さらに好ましくは30以下、最も好ましくは25以下である。このような特定の領域のSiO/Alモル比のゼオライトを使用することにより、ゼオライト膜の緻密性ならびに耐化学反応性や耐熱性等の耐久性を向上させることができる。
また、アンモニアと窒素を少なくとも含む複数の成分からなる混合ガスからアンモニアを透過させる分離性能の観点からは、Al元素などに起因する酸点がアンモニアの吸着サイトになる理由から、ゼオライトの構造を維持しやすい範囲でより多くのAlを含有するゼオライトを用いることが好ましく、上記のSiO/Alモル比を示すゼオライトを使用することにより、アンモニアを高い透過度で高選択的に分離することができる。
なお、ゼオライトのSiO/Alモル比は、後に述べる水熱合成の反応条件により調整することができ、特に長尺化した場合にその全長にわたって安定したSiO/Alモル比のゼオライト複合膜を得ることができる。
本明細書において、SiO/Alモル比は、走査型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分光法(SEM-EDX)により決定される数値である。この場合、厚さ数ミクロンのゼオライト膜のみの情報を得るために、通常はX線の加速電圧を10kVとして測定が行われる。
本発明で使用するゼオライトの構造としては、IZAが規定するコードで表すと、例えば、ABW、ACO、AEI、AEN、AFI、AFT、AFX、ANA、ATN、ATT、ATV、AWO、AWW、BIK、CHA、DDR、DFT、EAB、EPI、ERI、ESV、FAU、GIS、GOO、ITE、JBW、KFI、LEV、LTA、MER、MON、MTF、OWE、PAU、PHI、RHO、RTE、RWR、SAS、SAT、SAV、SIV、TSC、UFI、VNI、YUG、AEL、AFO、AHT、DAC、FER、HEU、IMF、ITH、MEL、MFS、MWW、OBW、RRO、SFG、STI、SZR、TER、TON、TUN、WEI、MFI、MON、PAU、PHI、MOR等が挙げられる。
その中でもフレームワーク密度が18.0T/nm以下であるゼオライトが好ましく、より好ましくはCHA、FAU、MFI、LTA、RHOであり、さらに好ましくは、MFI、RHOである。フレームワーク密度が低いゼオライトを使用することでアンモニアを含む混合ガス中にアンモニア以外の透過成分が存在する場合、それらの透過成分が透過する際の抵抗を小さくすることができ、アンモニアの透過量を大きくしやすくなる。
ここでフレームワーク密度(単位:T/nm)とは、ゼオライトの単位体積(1nm)当たりに存在するT原子(ゼオライトの骨格を構成する原子のうち、酸素以外の原子)の個数を意味し、この値はゼオライトの構造により決まるものである。なお、フレームワーク密度とゼオライト構造の関係は、ATLAS OF ZEOLITE FRAMEWORK TYPES Fifth Revised Edition 2007 ELSEVIERに示されている。
本発明におけるアンモニアと窒素との膜分離においてはアンモニアのゼオライトへの吸着を利用し、ゼオライト細孔内でのアンモニアのホッピング機構に基づくアンモニアの分離を特徴とする。したがって、特に限定はされないが、アンモニアの分子径に近い細孔径を有するゼオライトの方がアンモニア分離選択性が向上しやすいため、好ましい場合がある。以上の観点からすると、ゼオライトの構造としては酸素8員環細孔を有するものが好ましい。
一方、酸素8員環よりも大きなサイズの細孔ではアンモニアの透過度が高くなる点で好ましいが、窒素との分離性能が低くなる場合がある。しかしながら、酸素8員環よりも大きなサイズの細孔を有するゼオライトを使用する際にも、前記のSiO/Alモル比を低下させたゼオライトを使用すると、Alサイトに吸着したアンモニアによりゼオライト膜の細孔径が制御されるために、アンモニアを高い透過度で高選択的に分離することができる。
したがって、膜分離に用いるゼオライトの有効細孔径は、アンモニアが吸着したゼオライト膜の細孔径に大きく影響を与えるため、重要な設計因子の一つとなる。ゼオライトの有効細孔径は、ゼオライトに導入する金属種やイオン交換、酸処理、シリル化処理などによっても制御することが可能である。また、その他の手法で有効細孔径を制御することによって、分離性能を向上させることも可能である。
例えば、ゼオライト骨格に導入する金属種の原子径によって、ゼオライトの細孔径はわずかに影響を受ける。ケイ素よりも原子径が小さな金属、具体的には、例えばホウ素(B)等を導入した場合には細孔径は小さくなり、ケイ素よりも大きな原子径の金属、具体的には、例えばスズ(Sn)等を導入した場合には細孔径は大きくなる。また、酸処理によって、ゼオライト骨格に導入されている金属を脱離させることによって、細孔径が影響される場合がある。
また、イオン交換により、ゼオライト中のイオンをイオン半径の大きな1価のイオンで交換した場合には、有効細孔径は小さくなり、一方イオン半径の小さな1価のイオンでイオン交換した場合には有効細孔径は、ゼオライト構造がもつ細孔径に近い値となる。
さらに、シリル化処理によっても、ゼオライトの有効細孔径を小さくすることが可能である。例えば、ゼオライト膜の外表面の末端シラノールをシリル化し、さらに、シリル化層を積層することによって、ゼオライトの外表面に面した細孔の有効細孔径は小さくなる。
本発明で用いられるゼオライト膜複合体の分離機能は、特に限定されないが、ゼオライトの表面物性の制御により、気体分子のゼオライト膜への親和性や吸着性を制御することにより発現する。すなわち、ゼオライトの極性を制御することによりアンモニアのゼオライトへの吸着性を制御して、透過させやすくすることができる。
例えば、窒素原子を存在させてゼオライトの極性を制御することによりアンモニアのゼオライトへの親和性を制御して、透過させやすくすることもできる。
また、ゼオライト骨格のSi原子をAl原子で置換することにより極性を大きくすることが可能であり、これにより、アンモニアのような極性の大きい気体分子を積極的にゼオライト細孔に吸着、透過させることができる。また、Ga、Fe、B、Ti、Zr、Sn、ZnなどのAl原子源以外の他の原子源を水熱合成の水性反応混合物に添加して、得られるゼオライトの極性を制御することも可能である。
このほか、イオン交換によって、ゼオライトの細孔径だけでなく、分子の吸着性能を制御して、透過速度をコントロールすることもできる。
<ゼオライト膜>
本発明におけるゼオライト膜とは、ゼオライトにより構成される膜状物のことであり、好ましくは、多孔質支持体の表面にゼオライトを結晶化させて形成されたものである。膜を構成する成分として、ゼオライト以外にシリカ、アルミナなどの無機バインダー、ポリマーなどの有機物、あるいはゼオライト表面を修飾するシリル化剤などを必要に応じて含んでいてもよい。
本発明で用いられるゼオライト膜に含まれる好ましいゼオライトは上述の通りであるが、ゼオライト膜に含まれるゼオライトは1種でもよいし、複数種含まれていてもよい。また、ANA、GIS、MERのような混相で生成しやすいゼオライトや、結晶以外にもアモルファス成分などが含有されていてもよい。
ゼオライト膜複合体を構成するゼオライト及び多孔質支持体には特段の制限はなく、上述のゼオライト及び多孔質支持体を任意で組み合わせて使用することが好ましいが、これらのなかでも、特に好ましいゼオライトと多孔質支持体の組み合わせは、具体的には、MFI型ゼオライト-多孔質アルミナ支持体、RHO型ゼオライト-多孔質アルミナ支持体、DDR型ゼオライト-多孔質アルミナ支持体、AFI型ゼオライト-多孔質アルミナ支持体、CHA型ゼオライト-多孔質アルミナ支持体、AEI型ゼオライト-多孔質アルミナ支持体が挙げられ、好ましくは、CHA型ゼオライト-多孔質アルミナ支持体、MFI型ゼオライト-多孔質アルミナ支持体、RHO型ゼオライト-多孔質アルミナ支持体、より好ましくは、MFI型ゼオライト-多孔質アルミナ支持体、RHO型ゼオライト-多孔質アルミナ支持体である。
(アルカリ金属とアルミニウムのモル比)
本発明においては、SEM-EDS(走査型電子顕微鏡エネルギー分散型X線分析)測定により決定されるゼオライト膜断面に含まれるアルカリ金属原子の含有量を特定の範囲に制御すると、アンモニアと窒素を少なくとも含む複数の成分からなる混合ガスから、アンモニアを分離する際のアンモニア透過度が向上する傾向がある。そのため、必要に応じてアルカリ金属原子の含有量を制御するのは好ましい態様の一つである。
このようにゼオライト膜断面に、必要に応じて、アルカリ金属原子を存在させる場合のアルカリ金属原子としては、Li、Na、K、Rb、Cs、ならびにこれらの二種以上の金属原子が例示され、これらの中では、Li、Na、Csが好ましく、アンモニアの分離性能が優れ、且つ汎用のアルカリ金属である理由から、Naがより好ましい。
なお、SEM-EDSの測定条件は以下の通りである。
(測定条件)
(SEM-EDS測定)
装置:FE-SEM(日本電子JSM-7900F)
EDS(Oxford ULTim MAX)
条件:5kV(照射電流500pA、高真空モード)
観察倍率:5000倍、10000倍、20000倍
(SEM-EDS測定のための観察範囲)
20000倍で像を取得し、図5(実施例で実際に使用した一例を転用)に示すように膜部分を囲い、上記の条件で120秒間測定を実施し、Si/Al比、Na/Al比を算出する。
(原子濃度の算出)
各元素の原子数濃度の算出は、AZtec(Oxford Instruments)のソフトを使用した。Si/Al比の算出は、Siの原子数濃度をAlの原子数濃度で除算して算出した。Na/Si比の算出は、Naの原子数濃度をSiの原子数濃度で除算して算出するした。
アルカリ金属原子は、ゼオライト膜を構成するゼオライト中のAlサイトのイオン対としてカチオンの形態で存在し、通常、後述するように、合成されたゼオライト膜のイオン交換処理によりゼオライト中に導入される。必要に応じて、ゼオライト膜表面にアルカリ金属原子を存在させる場合のアルカリ金属原子、特に好適なナトリウム原子の含有量は、ゼオライト膜表面のAl原子に対して、モル比で、2.0以下であることが好ましく、1.8以下であることがより好ましく、1.5以下であることがさらに好ましく、1.0以下であることが特に好ましい。下限値については、特に制限はないが、0.01以上が好ましく、0.05以上であることがより好ましく、0.1以上であることがさらに好ましい。
アルカリ金属原子の含有量を、上記の範囲に制御すると、アンモニアの分離選択性を高めたまま、アンモニアの透過度を向上させることができる傾向があり、好ましい。
なお、ゼオライト膜中のAl原子に対するアルカリ金属原子のモル比は、後述するように、ゼオライトのイオン交換処理時のイオンの交換量を調整することにより制御することができる。
本発明においては、未だ詳らかではなく特に限定はされないが、アンモニアのゼオライトへの吸着を利用して膜分離に用いるゼオライトの有効細孔径を制御するとともに、ゼオライト細孔内でのアンモニアのホッピング機構に基づいてアンモニアを分離することを特徴とする。このようにゼオライトへのアンモニアの吸着/脱離が伴う細孔内ホッピング機構を主に活用してアンモニアの分離を行う本発明においては、先ずはアンモニアを含む供給混合ガス中のアンモニアとゼオライト膜表面との吸着親和性を、該混合ガス中に含まれるその他の水素や窒素等のガスよりも如何に高めるかが重要な設計因子となる。この視点から、Al原子をゼオライト膜表面により多く存在させるとゼオライト膜表面の極性が変化し、供給ガス中のアンモニアとの吸着親和性が高まるためにアンモニア分離性能が向上する。また、本発明においては、ゼオライト膜表面のAl原子の含有量は、ゼオライト膜を構成するゼオライトのSiO/Al比やゼオライト膜形成後のアルミニウム塩処理等により制御されるが、特に後者のアルミニウム塩処理は、ゼオライト膜表面に存在する微細な欠陥を封止する効果もあり、ゼオライト膜の緻密性ならびに耐化学反応性や耐熱性等の耐久性を向上させることができると共に、本発明の課題の一つであるゼオライト膜の高温時の分離熱安定性の向上に大きく貢献する。
アンモニアと窒素を少なくとも含む混合ガスからのアンモニア分離選択性は、ゼオライト細孔内のAlサイトへのアンモニアの吸着によるブロッキング効果により向上する。
一般に、アンモニアのAlサイトへの吸着力が高いために、透過性能(透過度)が損なわれる傾向にある。本発明では、アルカリ金属原子を、ゼオライト膜を構成するゼオライト中のAlサイトのイオン対としてカチオンの形態で特定量存在させることで、Alサイトへのアンモニアの吸着量を制御することができ、一方、アルカリ金属カチオンのサイズによりアンモニアの分離選択性を保持することができる。これらの機構により、アンモニア分離選択性を保持したまま、透過性能を高めることができる。すなわち、ゼオライト中のAl原子に対するナトリウム等のアルカリ金属原子の含有量を、モル比で2.0以下に制御することが好ましく、2.0を超える量が含有されるとAlサイトへのアンモニアの吸着によるブロッキング効果が薄れるためかアンモニアの分離選択性が低下するようである。また、ゼオライト中のAl原子に対するアルカリ金属原子の含有量が0.01以上であることが好ましく、アンモニアのAlサイトへの吸着によりアンモニアの透過度が低下することがない。
(アルカリ金属とケイ素のモル比)
本発明においては、SEM-EDSにより決定されるゼオライト膜断面に含まれるアルカリ金属原子の含有量を特定の範囲に制御すると、アンモニアと窒素を含む複数の成分からなる混合ガスからアンモニアを分離する際のアンモニア透過度が向上する傾向がある。そのため、必要に応じてそれらの含有量を制御するのは好ましい態様の一つである。
このようにゼオライト膜断面に、必要に応じて、アルカリ金属原子を存在させる場合のアルカリ金属原子としては、Li、Na、K、Rb、Cs、ならびにこれらの二種以上の金属原子が例示され、これらの中では、Li、Na、Csが好ましく、アンモニアの分離性能が優れ、且つ汎用のアルカリ金属である理由から、Naがより好ましい。
なお、測定条件は(アルカリ金属とアルミニウムのモル比)の欄に記載の通りである。
ゼオライト膜断面にアルカリ金属原子を存在させる場合のアルカリ金属原子の含有量は、ゼオライト膜断面のケイ素(Si原子)に対して、モル比で、0.20以下であることが好ましく、0.18以下であることがより好ましく、0.16以下であることがさらに好ましく、0.14以下であることが特に好ましい。下限値については、特に制限はないが、0.001以上であることが好ましく、0.005以上であることがより好ましく、0.01以上であることがさらに好ましい。
アルカリ金属原子の含有量を、上記の範囲に制御すると、アンモニアの分離選択性を高めたまま、アンモニアの透過度を向上させることができる傾向があり、好ましい。
なお、ゼオライト膜中のSi原子に対するアルカリ金属原子のモル比は、後述するように、ゼオライトのイオン交換処理時のイオンの交換量を調整することにより制御することができる。
(ゼオライト膜表面に含まれる窒素原子の含有量)
本実施形態においては、上記のゼオライト膜表面のアルカリ金属原子の含有量を制御するとともに、必要に応じて、XPS測定により決定されるゼオライト膜表面に含まれる窒素原子の含有量を特定の領域に制御すると、混合ガスからアンモニアを分離する際の分離選択性が著しく向上する傾向があるため、ゼオライト膜表面にアルカリ金属原子と窒素原子とを共存させ、それらの含有量を適切に制御するのが好ましい。
このようにゼオライト膜表面に窒素原子を存在させる場合、その窒素原子の含有量は、ゼオライト膜表面のAl原子に対して、モル比で、通常、0.01以上、好ましくは、0.05以上、より好ましくは、0.10以上であり、更に好ましくは0.20以上、特に好ましくは0.30以上、とりわけ好ましくは0.50以上であり、その上限は、ゼオライト膜に含まれるゼオライト中の窒素原子を含むカチオン種の構造や必要に応じてゼオライト膜の硝酸塩処理を行う際に残留する硝酸イオン量に依存するために特に制限されないが、通常4以下、好ましくは、3以下、より好ましくは、1以下である。
このような特定の窒素原子/Al原子比の表面組成を有するゼオライトを使用すると、ゼオライト膜の緻密性ならびに耐化学反応性や耐熱性等の耐久性を向上させることができると共に、アンモニアと水素および/または窒素を含む複数の成分からなる混合ガスからアンモニアを高選択的に分離することができるため、好ましい。
なお、上記の上限ならびに下限の記載値は有効数字範囲内で有効とするものである。すなわち、上限4以下とは4.5未満を、一方0.01以上とは0.005以上を意味する。
本発明においてゼオライト膜に窒素原子を含有させる際の窒素原子は、後述するゼオライト中に含まれるアンモニウムイオン(NH )やメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、ジメチルエチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、アニリン、メチルアニリン、ベンジルアミン、ならびにメチルベンジルアミン、ヘキサメチレンジアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、N,N,N-トリメチル-1-アダマンタンアミン、ピリジン、ならびにピペリジン等の炭素数1~20の有機アミンがプロトン化されたカチオン種由来の窒素原子、ゼオライト膜を製造する際に窒素原子を含有する有機テンプレート(構造規定剤)を使用した際の有機テンプレート由来の窒素原子、後述する必要に応じて実施するゼオライト膜の硝酸塩処理時に残留する硝酸イオン由来の窒素原子等である。
(ゼオライト膜の厚さ)
本発明において用いられるゼオライト膜の厚さは、特に制限されるものではないが、通常、0.1μm以上であり、好ましくは0.3μm以上、より好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは0.7μm以上、さらに好ましくは1.0μm以上、特に好ましくは1.5μm以上である。また通常100μm以下であり、好ましくは60μm以下、より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは15μm以下、さらに好ましくは10μm以下、特に好ましくは5μm以下の範囲である。ゼオライト膜の厚さが上記下限値以上であれば、欠陥が生じにくく、分離性能が良好になる傾向がある。また、ゼオライト膜の厚さが上記上限値以下であれば、透過性能が向上する傾向があり、さらには、高温領域において、昇温によりゼオライト膜に亀裂が発生しにくくなるために高温時の透過選択性の低下を抑制できる傾向がある。
ゼオライト膜を形成するゼオライトの平均一次粒子径は特に限定されないが、通常30nm以上、好ましくは50nm以上、より好ましくは100nm以上であり、その上限は膜の厚さ以下である。ゼオライトの平均一次粒子径が上記下限値以上であれば、ゼオライトの粒界を小さくすることができるために良好な透過選択性を得ることができる。従って、ゼオライトの平均一次粒子径がゼオライト膜の厚さと同じである場合が最も好ましい。この場合、ゼオライトの粒界を最も小さくすることができる。後に述べる水熱合成で得られるゼオライト膜は、ゼオライトの粒子径と膜の厚さが同じになる場合があるので好ましい。
なお、本発明においては、平均一次粒子径は、本発明のゼオライト膜複合体の表面、あるいは破断面を走査型電子顕微鏡による観察において、任意に選択した30個以上の粒子について一次粒子径を測定し、平均値として求められる。
<ゼオライト膜複合体の製造方法>
本発明において、ゼオライト膜複合体の製造方法は、上記したゼオライト膜を多孔質支持体上に形成可能な方法であれば特に制限されず、公知の方法により製造することができる。例えば、(1)支持体上にゼオライトを膜状に結晶化させる方法、(2)支持体にゼオライトを無機バインダーあるいは有機バインダーなどで固着させる方法、(3)ゼオライトを分散させたポリマーを支持体に固着させる方法、(4)ゼオライトのスラリーを支持体に含浸させ、場合によっては吸引することによりゼオライトを支持体に固着させる方法、などの何れの方法も用いることができる。
これらの中で、多孔質支持体にゼオライトを膜状に結晶化させる方法が特に好ましい。結晶化の方法に特に制限はないが、多孔質支持体を、ゼオライト製造に用いる水熱合成用の反応混合物(以下これを「水性反応混合物」ということがある。)中に入れて、直接水熱合成することで多孔質支持体表面などにゼオライトを結晶化させる方法が好ましい。
この場合、ゼオライト膜複合体は、例えば、組成を調整して均一化した水性反応混合物を、内部に多孔質支持体を入れたオートクレーブなどの耐熱耐圧容器に入れて密閉し、一定時間加熱することにより製造することができる。
水性反応混合物は、Si原子源、Al原子源、アルカリ源および水を含み、さらに必要に応じて有機テンプレート(構造規定剤)を含むものである。
ゼオライト膜複合体の製造方法について、特に好適な例である、RHO型ゼオライト膜複合体ならびにMFI型ゼオライト膜複合体の製造方法について後に詳細に説明する。なお、本発明のゼオライト膜及び該製造方法はこれに限定されるものではない。
(RHO型ゼオライト膜)
本発明において用いられるRHO型ゼオライトとは、IZAが定めるゼオライトの構造を規定するコードでRHO構造のものを示す。RHO型ゼオライトは3.6×3.6Åの径を有する酸素8員環からなる3次元細孔を有することを特徴とする構造をとり、その構造はX線回折データにより特徴付けられる。
本発明において用いられるRHO型ゼオライトのフレームワーク密度は、14.1(単位:T/nm)である。
(MFI型ゼオライト膜)
本発明において用いられるMFI型ゼオライトとは、IZAが定めるゼオライトの構造を規定するコードでMFI構造のものを示す。MFI型ゼオライトは5.1×5.5Åあるいは5.3×5.6Åの径を有する酸素10員環からなる3次元細孔を有することを特徴とする構造をとり、その構造はX線回折データにより特徴付けられる。
本発明において用いられるMFI型ゼオライトのフレームワーク密度は、17.9(単位:T/nm)である。
(CHA型ゼオライト膜)
本発明において用いられるCHA型ゼオライトとは、IZAが定めるゼオライトの構造を規定するコードでCHA構造のものを示す。CHA型ゼオライトは3.8×3.8Åの径を有する酸素8員環からなる3次元細孔を有することを特徴とする構造をとり、その構造はX線回折データにより特徴付けられる。
本発明において用いられるCHA型ゼオライトのフレームワーク密度は、14.5(単位:T/nm)である。
(FAU型ゼオライト膜)
本発明において用いられるFAU型ゼオライトとは、IZAが定めるゼオライトの構造を規定するコードでFAU構造のものを示す。FAU型ゼオライトは7.4×7.4Åの径を有する酸素6員環からなる3次元細孔を有することを特徴とする構造をとり、その構造はX線回折データにより特徴付けられる。
本発明において用いられるFAU型ゼオライトのフレームワーク密度は、12.7(単位:T/nm)である。
(LTA型ゼオライト膜)
本発明において用いられるLTA型ゼオライトとは、IZAが定めるゼオライトの構造を規定するコードでLTA構造のものを示す。LTA型ゼオライトは4.1×4.1Åの径を有する酸素8員環からなる3次元細孔を有することを特徴とする構造をとり、その構造はX線回折データにより特徴付けられる。
本発明において用いられるLTA型ゼオライトのフレームワーク密度は、12.9(単位:T/nm)である。
<<RHO型ゼオライト膜の製造方法>>
(ケイ素原子源)
水性反応混合物に用いるケイ素(Si)原子源としては特に限定されないが、例えば、アルミノシリケートゼオライト、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ、無定型シリカ、珪酸ナトリウム、珪酸メチル、珪酸エチル、トリメチルエトキシシラン等のシリコンアルコキシド、テトラエチルオルトシリケート、アルミノシリケートゲルなどが挙げられ、好ましくは、アルミノシリケートゼオライト、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ、無定型シリカ、珪酸ナトリウム、珪酸メチル、珪酸エチル、シリコンアルコキシド、アルミノシリケートゲルが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
(アルミニウム原子源)
多孔質支持体-RHO型ゼオライト膜複合体の製造に用いられるアルミニウム(Al)原子源は、特に限定されないが、アルミノシリケートゼオライト、アモルファスの水酸化アルミニウム、ギブサイト構造を持つ水酸化アルミニウム、バイヤーライト構造を持つ水酸化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、酸化アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、ベーマイト、擬ベーマイト、アルミニウムアルコキシド、アルミノシリケートゲルなどが挙げられ、アルミノシリケートゼオライト、アモルファスの水酸化アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、ベーマイト、擬ベーマイト、アルミニウムアルコキシド、アルミノシリケートゲルが好ましく、アルミノシリケートゼオライト、アモルファスの水酸化アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、アルミノシリケートゲルが特に好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
アルミノシリケートゼオライトは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。アルミノシリケートゼオライトをAl原子源として用いる場合には、全Al原子源の50質量%以上、特に70~100質量%、とりわけ90~100質量%を上述のアルミノシリケートゼオライトとすることが好ましい。また、アルミノシリケートゼオライトをSi原子源として用いる場合には、全Si原子源の50質量%以上、特に70~100質量%、とりわけ90~100質量%を上述のアルミノシリケートゼオライトとすることが好ましい。アルミノシリケートゼオライトの割合がこの範囲にあるときRHO型ゼオライト膜のSi原子/Al原子モル比が高くなり、耐酸性、耐水性に優れた適用範囲の広いゼオライト膜となる。
(Al原子/Si原子比)
種結晶以外の原料混合物に含まれるケイ素(Si原子)に対するAl原子源(前述のアルミノシリケートゼオライトおよび、そのほかのAl原子源を含む。)の使用量(Al原子/Si原子比)の好ましい範囲は、通常0.01以上、好ましくは0.02以上、より好ましくは0.04以上であり、さらに好ましくは0.06以上であり、通常1.0以下、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.2以下、さらに好ましくは0.1以下である。この使用量の範囲に制御することによりゼオライト中の窒素原子やアルカリ金属元素の含有量を本発明の好ましい範囲に制御しやすくなる。また、Al原子/Si原子比率を大きくするためには、アルミニウム原子源に対するケイ素原子源の使用量を少なくすればよく、一方、当該比率を小さくするためには、アルミニウム原子源に対するケイ素原子源の使用量を増やせばよい。
なお、Al原子/Si原子比が1.0超であると、得られたRHO型ゼオライト膜の耐水性、耐酸性が低く、ゼオライト膜としての用途が限定されることがある。一方、Al原子/Si原子比が0.01よりも小さいと、RHO型ゼオライト膜が得られにくくなることがある。
また、水性反応混合物には、ケイ素原子源、アルミニウム原子源以外に他の原子源、例えばガリウム(Ga)、鉄(Fe)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)などの原子源を含んでいてもよい。
(アルカリ源)
アルカリ源として用いるアルカリの種類は特に限定されずアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物を用いることができる。
これら金属水酸化物の金属種は通常ナトリウム(Na)、カリウム(K)、リチウム(Li)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、好ましくはNa、K、Csであり、より好ましくはNa、Csである。また、金属酸化物の金属種は2種類以上を併用してもよく、具体的には、NaとCsを併用するのが好ましい。
金属水酸化物としては、具体的には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属水酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム等のアルカリ土類金属水酸化物等を用いることができる。
また、水性反応混合物に用いるアルカリ源として、次に述べる有機テンプレートのカウンターアニオンの水酸化物イオンを用いることができる。
なお、本発明に係るゼオライトの結晶化において、有機テンプレート(構造規定剤)は、必ずしも必要とされるものではないが、各構造に応じた種類の有機テンプレートを用いることにより、結晶化したゼオライトのアルミニウム原子に対するケイ素原子の割合が高くなり、結晶性が向上することから、有機テンプレートを用いることが好ましい。
(有機テンプレート)
有機テンプレートとしては、所望のゼオライト膜を形成しうるものであれば種類は問わず、如何なるものであってもよい。また、テンプレートは1種類でも、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
反応に適する有機テンプレートの種類は合成するゼオライト構造によって異なり、有機テンプレートは所望のゼオライト構造が得られるものを使用すればよい。具体的には、例えば、RHO構造であれば、18-クラウン-6-エーテル等を使用してもよい。
有機テンプレートがカチオンの場合には、ゼオライトの形成に害を及ぼさないアニオンを伴う。このようなアニオンを代表するものには、Cl、Br、Iなどのハロゲンイオンや水酸化物イオン、酢酸塩、硫酸塩、およびカルボン酸塩が含まれる。これらの中で、水酸化物イオンが特に好適に用いられ、水酸化物イオンの場合には上記のようにアルカリ源として機能する。
水性反応混合物中のSi原子源と有機テンプレートの比は、SiOに対する有機テンプレートのモル比(有機テンプレート/SiO比)で、通常0.005以上、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.02以上、さらに好ましくは0.05以上、特に好ましくは0.08以上、最も好ましくは0.1以上であり、通常1以下、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.4以下、さらに好ましくは0.35以下、特に好ましくは0.30以下、最も好ましくは0.25以下である。水性反応混合物の有機テンプレート/SiO比がこの範囲にあるとき、緻密なゼオライト膜が生成し得ることに加えて、耐酸性に優れ、Al原子が脱離しにくいゼオライトが得られる。また、この条件において、特に緻密で耐酸性に優れたRHO型のアルミノ珪酸塩のゼオライトを形成させることができる。
アルカリ金属原子源は、その適当量を使用することにより、アルミニウムに後述の有機構造規定剤が好適な状態に配位しやすくなるため、結晶構造を作りやすくできる。アルカリ金属原子源(R)と、種結晶以外の水熱合成用原料混合物に含まれるケイ素(Si原子)とのモル比(R/Si原子)は、通常0.1以上、好ましくは0.15以上、より好ましくは0.20以上、さらに好ましくは0.25以上、とりわけ好ましくは、0.30以上、特に好ましくは0.35以上であり、通常2.0以下、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.0以下、さらに好ましくは0.8以下、特に好ましくは0.6以下、最も好ましくは0.5以下である。
アルカリ金属原子源のケイ素に対するモル比(R/Si原子)が上記上限値よりも大きいと、生成したゼオライトが溶解しやすく、ゼオライトが得られなかったり収率が著しく低くなったりする場合がある。R/Si原子が上記下限値よりも小さいと、原料のAl原子源やSi原子源が十分に溶解せず、均一な水熱合成用原料混合物が得られず、RHO型ゼオライトが生成しにくくなる場合がある。
(水の量)
水熱合成用原料混合物中の水の量は、通常の水熱合成に比較して多いことが好ましい。水の量が多いことで、部位(A)におけるアンモニア/窒素の比、部位(B)におけるアンモニア/窒素の比及び部位(B’)におけるアンモニア/窒素の比を、いずれも50以上にしやすくなる。
具体的には、水の量は、種結晶以外の原料混合物に含まれるケイ素(Si原子)に対するモル比で45以上であることが好ましく、50以上であることがより好ましく、60以上であることがさらに好ましい。
水の量の上限値については、種結晶以外の原料混合物に含まれるケイ素(Si原子)に対するモル比で300以下であることが好ましく、200以下であることがより好ましく、150以下であることがさらに好ましい。上記上限よりも小さくすることで、反応混合物の濃度が十分なものになり、欠陥のない緻密な膜ができやすくなる。
(種結晶)
本発明において、「ゼオライト」製造原料(原料化合物)の一成分として種結晶を用いてもよい。
水熱合成に際して、必ずしも反応系内に種結晶を存在させる必要は無いが、種結晶を存在させることで、多孔質支持体上でのゼオライトの結晶化を促進できる。反応系内に種結晶を存在させる方法としては特に限定されず、粉末のゼオライトの合成時のように、水性反応混合物中に種結晶を加える方法や、多孔質支持体上に種結晶を付着させておく方法などを用いることができるが、本発明では、多孔質支持体上に種結晶を付着させておくことが好ましい。支持体上に予め種結晶を付着させておくことで緻密で分離性能の高いゼオライト膜が生成しやすくなる。
使用する種結晶としては、結晶化を促進するゼオライトであれば種類は問わないが、効率よく結晶化させるためには、形成するゼオライト膜と同じ結晶型であることが好ましい。例えば、RHO型アルミノ珪酸塩のゼオライト膜を形成する場合は、RHO型ゼオライトの種結晶を用いることが好ましい。
種結晶の粒子径は多孔質支持体の細孔径に近いことが望ましく、必要に応じて粉砕して用いても良い。粒径は、通常20nm以上、好ましくは50nm以上、より好ましくは100nm以上、さらに好ましくは0.15μm以上、特に好ましくは0.5μm以上、最も好ましくは0.7μm以上であり、通常5μm以下、好ましくは、3μm以下、より好ましくは2μm以下、特に好ましくは1.5μm以下である。
多孔質支持体の細孔径によっては種結晶の粒子径が小さいほうが望ましい場合があり、必要に応じて粉砕して用いても良い。種結晶の粒径は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上、より好ましくは20nm以上であり、通常5μm以下、好ましくは3μm以下、より好ましくは2μm以下である。
多孔質支持体上に種結晶を付着させる方法は特に限定されず、例えば、種結晶を水などの溶媒に分散させてその分散液に多孔質支持体を浸けて表面に種結晶を付着させるディップ法や、種結晶を水などの溶媒に分散させてその分散液に一端を封止した支持体を浸漬したのちに支持体を他端から吸引することで多孔質支持体表面に強固に種結晶を付着させる吸引法や種結晶を水などの溶媒と混合してスラリー状にしたものを支持体上に塗りこむ方法などを用いることができる。種結晶の付着量を制御し、再現性良くゼオライト膜を製造するにはディップ法および吸引法が望ましく、種結晶を多孔質支持体に密着させる点ではスラリー上の種結晶を塗りこむ方法および吸引法が望ましい。また、種結晶を多孔質支持体に密着させる目的および/または過剰な種結晶を取り除く目的で、ディップ法や吸引法に続きラテックス手袋を着用した指などで種結晶が付着した支持体をこすって押し込むことも好適に行われる。
種結晶を分散させる溶媒は特に限定されないが、特に水、アルカリ性水溶液が好ましい。アルカリ性水溶液の種類は特に限定されないが、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液が好ましい。またこれらのアルカリ種は混合されていてもよい。アルカリ性水溶液のアルカリ濃度は特に限定されず、通常0.0001mol%以上、好ましくは0.0002mol%以上、より好ましくは0.001mol%以上、さらに好ましくは0.002mol%以上である。また、通常1mol%以下、好ましくは0.8mol%以下、より好ましくは0.5mol%以下、さらに好ましくは0.2mol%以下である。
分散させる種結晶の量は特に限定されず、分散液の全重量に対して、通常0.05質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上、特に好ましくは2質量%以上、最も好ましくは3質量%以上である。また、通常20質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは4質量%以下である。
分散させる種結晶の量が少なすぎると、多孔質支持体上に付着する種結晶の量が少ないため、水熱合成時に多孔質支持体上に部分的にゼオライトが生成しない箇所ができ、欠陥のある膜となる可能性がある。一方で、例えば、ディップ法によって多孔質支持体上に付着する種結晶の量は分散液中の種結晶の量がある程度以上でほぼ一定となるため、分散液中の種結晶の量が多すぎると、種結晶の無駄が多くなりコスト面で不利である。
多孔質支持体にディップ法、吸引法あるいはスラリーの塗りこみによって種結晶を付着させたのち、乾燥した後にゼオライト膜の形成を行うことが望ましい。乾燥温度は通常50℃以上、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上であり、通常200℃以下、好ましくは180℃以下、より好ましくは150℃以下である。乾燥時間は十分に乾燥していれば制限はないが通常10分以上、好ましくは30分以上である。一方、上限は特に指定しないが、経済的な観点から通常5時間以下である。
乾燥後の種結晶付着支持体に対し、種結晶を支持体に密着させる目的および/または過剰な種結晶を取り除く目的で、ラテックス手袋を着用した指などで種結晶が付着した支持体をこすって押し込むことも好適に行われる。
多孔質支持体上に予め付着させておく種結晶の量は特に限定されず、多孔質支持体の膜形成面1mあたりの質量で、通常0.1g以上、好ましくは0.3g以上、より好ましくは0.5g以上、さらに好ましくは0.8g以上、最も好ましくは1.0g以上であり、通常100g以下、好ましくは50g以下、より好ましくは10g以下、更に好ましくは8g以下、最も好ましくは5g以下である。
種結晶の付着量が上記下限値以上であると、結晶が形成されやすく、膜の成長が十分になり、また膜の成長が均一になる傾向がある。また、種結晶の量が上記上限値以下であると、表面の凹凸が種結晶によって増長されることがなく、支持体から落ちた種結晶によって自発核が成長しやすくなって支持体上の膜成長が阻害されたりすることがない。したがって、上記範囲であると、緻密なゼオライト膜が生成する傾向となる。
(水熱合成)
水熱合成により多孔質支持体上にゼオライト膜を形成する場合、多孔質支持体の固定化方法に特に制限はなく、縦置き、横置きなどあらゆる形態をとることができる。この場合、静置法でゼオライト膜を形成させてもよいし、水性反応混合物の攪拌下にゼオライト膜を形成させてもよい。
水熱合成は、上記のようにして種結晶を担持した多孔質支持体と、調製された水熱合成用混合物ないしはこれを熟成して得られる水性ゲルを耐圧容器に入れ、自己発生圧力下、又は結晶化を阻害しない程度の気体加圧下で、撹拌下、又は、容器を回転ないしは揺動させながら、或いは静置状態で、所定温度を保持することにより行われる。静置状態での水熱合成が、支持体上の種結晶からの結晶成長を阻害しないという点で望ましい。
水熱合成によりゼオライト膜を形成させる際の反応温度は特に限定されず、目的のゼオライト構造の膜を得るために適した温度であればよいが、通常100℃以上、好ましくは110℃以上、更に好ましくは120℃以上、とりわけ好ましくは130℃以上であり、特に好ましくは140℃以上であり、最も好ましくは150℃以上であり、通常200℃以下、好ましくは190℃以下、より好ましくは180℃以下、さらに好ましくは170℃以下である。反応温度が低すぎると、ゼオライトが結晶化し難くなることがある。また、反応温度が高すぎると、目的とするゼオライトとは異なるタイプのゼオライトが生成し易くなることがある。
水熱合成によりゼオライト膜を形成させる際の加熱(反応)時間は特に限定されず、目的のゼオライト構造の膜を得るために適した時間であればよいが、通常3時間以上、好ましくは8時間以上、更に好ましくは12時間以上であり、とりわけ好ましくは15時間以上であり、通常10日以下、好ましくは5日以下、より好ましくは3日以下、さらに好ましくは2日以下、とりわけ好ましくは1.5日以下である。反応時間が短すぎるとゼオライトが結晶化し難くなることがある。反応時間が長すぎると、目的とするゼオライトとは異なるタイプのゼオライトが生成し易くなることがある。
水熱合成時の圧力は特に限定されず、密閉容器中に入れた水性反応混合物を、上記の温度範囲に加熱したときに生じる自生圧力で十分である。さらに必要に応じて、窒素などの不活性ガスを加えても差し支えない。
水熱合成を複数回繰り返すことでゼオライト膜の緻密性を向上させることも可能である。水熱合成を複数回繰り返す場合には1回目の水熱合成で得られたゼオライト膜複合体を水洗して加熱乾燥したのちに、新たに用意した水性反応混合物に再び浸漬して水熱合成を行えばよい。1回目の水熱合成後得られたゼオライト膜複合体は必ずしも水洗や乾燥を行う必要はないが、水洗し乾燥することで水性反応混合物の組成を意図した組成に保つことができる。複数回合成する場合の合成回数は通常2回以上であり通常10回以下、好ましくは5回以下、より好ましくは3回以下である。水洗は、1回でも複数回繰り返してもよい。
(水洗、加熱処理、乾燥)
水熱合成により得られたゼオライト膜複合体は、水洗した後に、加熱処理して、乾燥させる。ここで、加熱処理とは、熱をかけてゼオライト膜複合体を乾燥させ、また、有機テンプレートを使用した場合に該有機テンプレートを焼成して除去することを意味する。
加熱処理の温度は、乾燥を目的とする場合は、通常50℃以上、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上、通常200℃以下、好ましくは150℃以下である。加熱処理の温度は、有機テンプレートの焼成除去を目的とする場合は、通常250℃以上、好ましくは300℃以上、より好ましくは350℃以上、更に好ましくは400℃以上であり、通常800℃以下、好ましくは600℃以下、さらに好ましくは550℃以下、特に好ましくは500℃以下である。
有機テンプレートの焼成除去を目的とする場合には、加熱処理の温度が低すぎると有機テンプレートの残留割合が多くなる傾向があり、ゼオライトの細孔が少なくなって、そのためにアンモニアの分離に使用した際の透過量が減少する可能性がある。加熱処理温度が高すぎると支持体とゼオライトの熱膨張率の差が大きくなるため、ゼオライト膜に亀裂が生じやすくなる可能性があり、ゼオライト膜の緻密性が失われて分離性能が低くなることがある。
加熱処理の時間は、ゼオライト膜が十分に乾燥され、また有機テンプレートが焼成除去される時間であれば特に限定されず、乾燥を目的とする場合は、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは1時間以上であり、有機テンプレートの焼成除去を目的とする場合は、昇温速度や降温速度によっても変動するが、好ましくは1時間以上、より好ましくは5時間以上である。加熱時間の上限は特に限定されず、通常200時間以下、好ましくは150時間以下、より好ましくは100時間以下である。
テンプレートの焼成を目的とする場合の加熱処理は空気雰囲気で行えばよいが、窒素などの不活性ガスや酸素を付加した雰囲気で行ってもよい。
水熱合成を有機テンプレートの存在下で行った場合、得られたゼオライト膜複合体を、水洗した後に、例えば、加熱処理や抽出などにより、好ましくは上記の加熱処理、すなわち焼成により有機テンプレートを取り除くことが適当である。
有機テンプレートの焼成除去を目的とする加熱処理の際の昇温速度は、多孔質支持体とゼオライトの熱膨張率の差に起因してゼオライト膜に亀裂を生じさせることを防止するために、なるべく遅くすることが望ましい。昇温速度は、通常5℃/分以下、好ましくは2℃/分以下、より好ましくは1℃/分以下、さらに好ましくは0.5℃/分以下、特に好ましくは0.3℃/分以下である。昇温速度の下限は、通常、作業性を考慮して0.1℃/分以上である。
また、有機テンプレートの焼成除去を目的とする加熱処理においては、加熱処理後の降温速度もゼオライト膜に亀裂が生じることを避けるためにコントロールする必要があり、降温速度も昇温速度と同様、遅ければ遅いほど望ましい。降温速度は、通常5℃/分以下、好ましくは2℃/分以下、より好ましくは1℃/分以下、さらに好ましくは0.5℃/分以下、特に好ましくは0.3℃/分以下である。降温速度の下限は、通常、作業性を考慮して0.1℃/分以上である。
<<MFI型ゼオライト膜の製造方法>>
(ケイ素原子源)
水性反応混合物に用いるケイ素(Si)原子源としては、上述のRHO型ゼオライトで記載したものが挙げられ、中でも、好ましくは、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ、無定型シリカ、珪酸ナトリウム、ケイ酸メチル、ケイ酸エチル、シリコンアルコキシド、アルミノシリケートゲルが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
Si原子源は、Si原子源に対する他の原料の使用量がそれぞれ前述ないしは後述の好適範囲となるように用いられる。
(アルミニウム原子源)
多孔質支持体-MFI型ゼオライト膜複合体の製造に用いられるアルミニウム(Al)原子源は、特に限定されず、上述のRHO型ゼオライトで記載したものと同様のものが挙げられる。これらのうち、アモルファスの水酸化アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、ベーマイト、擬ベーマイト、アルミニウムアルコキシド、アルミノシリケートゲルが好ましく、アモルファスの水酸化アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、アルミノシリケートゲルが特に好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
(Al原子/Si原子比)
種結晶以外の原料混合物に含まれるケイ素(Si原子)に対するアルミニウム原子源(前述のアルミノシリケートゼオライトおよび、そのほかのアルミニウム原子源を含む。)の使用量(Al原子/Si原子比)の好ましい範囲は、モル比として、通常0.001以上、好ましくは0.002以上、より好ましくは0.003以上であり、さらに好ましくは0.004以上であり、通常1.0以下、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.2以下、さらに好ましくは0.1以下である。この使用量の範囲に制御することによりゼオライト中の窒素原子やアルカリ金属元素の含有量を本発明の好ましい範囲に制御しやすくなる。Al原子/Si原子比率を大きくするためには、アルミニウム原子源に対するケイ素原子源の使用量を少なくすればよく、一方、当該比率を小さくするためには、アルミニウム原子源に対するケイ素原子源の使用量を増やせばよい。
なお、水性反応混合物には、Si原子源、Al原子源以外に他の原子源、例えばGa、Fe、B、Ti、Zr、Sn、Znなどの原子源を含んでいてもよい。
(アルカリ源)
アルカリ源として用いるアルカリの種類は特に限定されずアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物を用いることができ、具体的には、上述のRHO型ゼオライトで記載したものと同様のものが挙げられる。
また、水性反応混合物に用いるアルカリ源として、次に述べる有機テンプレートのカウンターアニオンの水酸化物イオンを用いることができる。
なお、本発明に係るゼオライトの結晶化において、有機テンプレートは、必ずしも必要とされるものではないが、各構造に応じた種類の有機テンプレート(構造規定剤)を用いることにより、結晶化したゼオライトのアルミニウム原子に対するケイ素原子の割合が高くなり、結晶性が向上することから、有機テンプレートを用いることが好ましい。
(有機テンプレート)
有機テンプレートとしては、所望のゼオライト膜を形成しうるものであれば種類は問わず、如何なるものであってもよい。また、テンプレートは1種類でも、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
反応に適する有機テンプレートの種類は合成するゼオライト構造によって異なり、有機テンプレートは所望のゼオライト構造が得られるものを使用すればよい。具体的には、例えば、MFI構造であればテトラプロピルアンモニウムヒドロキシド等を使用してもよい。
有機テンプレートがカチオンの場合には、ゼオライトの形成に害を及ぼさないアニオンを伴う。このようなアニオンを代表するものには、Cl、Br、Iなどのハロゲンイオンや水酸化物イオン、酢酸塩、硫酸塩、およびカルボン酸塩が含まれる。これらの中で、水酸化物イオンが特に好適に用いられ、水酸化物イオンの場合には上記のようにアルカリ源として機能する。
水性反応混合物中のSi原子源と有機テンプレートの比は、SiOに対する有機テンプレートのモル比(有機テンプレート/SiO比)で、通常0.005以上、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.02以上、とりわけ好ましくは0.05以上、特に好ましくは0.1以上であり、通常1以下、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.3以下、とりわけ好ましくは0.25以下、特に好ましくは0.2以下である。水性反応混合物の有機テンプレート/SiO比がこの範囲にあるとき、緻密なゼオライト膜が生成し得ることに加えて、耐酸性に優れ、Alが脱離しにくいゼオライトが得られる。また、この条件において、特に緻密で耐酸性に優れたMFI型のアルミノ珪酸塩のゼオライトを形成させることができる。
アルカリ金属原子源は、その適当量を使用することにより、アルミニウムに後述の有機構造規定剤が好適な状態に配位しやすくなるため、結晶構造を作りやすくできる。アルカリ金属原子源(R)と、種結晶以外の水熱合成用原料混合物に含まれるケイ素(Si)とのモル比R/Siは、通常0.01以上、好ましくは0.02以上、より好ましくは0.03以上、さらに好ましくは0.04以上、特に好ましくは0.05以上であり、通常1.0以下、好ましくは0.6以下、より好ましくは0.4以下、さらに好ましくは0.2以下、特に好ましくは0.1以下である。
アルカリ金属原子源のケイ素に対するモル比(R/Si)が上記上限値よりも大きいと、生成したゼオライトが溶解しやすく、ゼオライトが得られなかったり収率が著しく低くなったりする場合がある。R/Siが上記下限値よりも小さいと、原料のAl原子源やSi原子源が十分に溶解せず、均一な水熱合成用原料混合物が得られず、MFI型ゼオライトが生成しにくくなる場合がある。
(水の量)
水熱合成用原料混合物中の水の量は、通常の水熱合成に比較して多いことが好ましく、上述のRHO型ゼオライトで記載したものと同様である。
(種結晶)
本発明において、「ゼオライト」製造原料(原料化合物)の一成分として種結晶を用いてもよい。種結晶については、前述のRHO型ゼオライトで記載したのと同様であり、MFI型アルミノ珪酸塩のゼオライト膜を形成する場合は、MFI型ゼオライトの種結晶を用いることが好ましい。
種結晶の粒子径は支持体の細孔径に近いことが望ましく、必要に応じて粉砕して用いても良い。粒径は、通常1nm以上、好ましくは10nm以上、より好ましくは50nm以上、さらに好ましくは0.1μm以上、特に好ましくは0.5μm以上、とりわけ好ましくは0.7μm以上であり、最も好ましくは1μm以上であり、通常5μm以下、好ましくは、3μm以下、より好ましくは2μm以下、最も好ましくは1.5μm以下、特に好ましくは1.2μm以下である。
支持体の細孔径によっては種結晶の粒子径が小さいほうが望ましい場合があり、必要に応じて粉砕して用いてもよい。種結晶の粒径は、通常0.5nm以上、好ましくは1nm以上、より好ましくは2nm以上であり、通常5μm以下、好ましくは3μm以下、より好ましくは2μm以下である。
支持体上に種結晶を付着させる方法については、上述のRHO型ゼオライトで記載したものと同様である。また、種結晶を分散させる溶媒および濃度についても、上述のRHO型ゼオライトで記載したものと同様である。さらに、ラテックス手袋を着用した指などで種結晶が付着した支持体をこすって押し込むこと、多孔質支持体上に予め付着させておく種結晶の量、水熱合成により多孔質支持体上にゼオライト膜を形成する場合の支持体の固定化方法についても、上述のRHO型ゼオライトで記載したものと同様である。
(水熱合成)
水熱合成によりゼオライト膜を形成させる際の反応温度は特に限定されず、目的のゼオライト構造の膜を得るために適した温度であればよいが、通常100℃以上、好ましくは120℃以上、更に好ましくは130℃以上、とりわけ好ましくは140℃以上、特に好ましくは150℃以上、最も好ましくは160℃以上であり、通常210℃以下、好ましくは200℃以下、さらに好ましくは190℃以下、特に好ましくは180℃以下である。反応温度が低すぎると、ゼオライトが結晶化し難くなることがある。また、反応温度が高すぎると、目的とするゼオライトとは異なるタイプのゼオライトが生成し易くなることがある。
水熱合成によりゼオライト膜を形成させる際の加熱(反応)時間は特に限定されず、目的のゼオライト構造の膜を得るために適した時間であればよいが、通常1時間以上、好ましくは5時間以上、更に好ましくは10時間以上であり、通常10日間以下、好ましくは5日以下、より好ましくは3日以下、さらに好ましくは2日以下、とりわけ好ましくは1日以下である。反応時間が短すぎるとゼオライトが結晶化し難くなることがある。反応時間が長すぎると、目的とするゼオライトとは異なるタイプのゼオライトが生成し易くなることがある。
水熱合成時の圧力は特に限定されず、密閉容器中に入れた水性反応混合物を、上記の温度範囲に加熱したときに生じる自生圧力で十分である。さらに必要に応じて、窒素などの不活性ガスを加えても差し支えない。
なお、水熱合成を複数回繰り返すことでゼオライト膜の緻密性を向上させる手法については、上述のRHO型ゼオライトで記載したものと同様である。
(水洗、加熱処理、乾燥)
水熱合成により得られたゼオライト膜複合体は、水洗した後に、加熱処理して、乾燥させる。ここで、加熱処理とは、熱をかけてゼオライト膜複合体を乾燥させ、また、有機テンプレートを使用した場合に該有機テンプレートを焼成して除去することを意味する。
加熱処理の温度は、乾燥を目的とする場合は、通常50℃以上、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上、通常200℃以下、好ましくは150℃以下である。加熱処理の温度は、有機テンプレートの焼成除去を目的とする場合は、通常350℃以上、好ましくは400℃以上、より好ましくは450℃以上、更に好ましくは500℃以上であり、通常900℃以下、好ましくは800℃以下、さらに好ましくは700℃以下、特に好ましくは600℃以下である。
有機テンプレートの焼成除去を目的とする場合には、加熱処理の温度が低すぎると有機テンプレートの残留割合が多くなる傾向があり、ゼオライトの細孔が少なくなって、そのためにアンモニアの分離に使用した際の透過量が減少する可能性がある。加熱処理温度が高すぎると支持体とゼオライトの熱膨張率の差が大きくなるため、ゼオライト膜に亀裂が生じやすくなる可能性があり、ゼオライト膜の緻密性が失われて分離性能が低くなることがある。有機テンプレートとして、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシドを使用する場合は、この加熱処理温度を調整することにより、ゼオライト中の窒素原子の含有量を制御することができる。
なお、加熱処理の時間、雰囲気、昇温速度、降温速度については、上述のRHO型ゼオライトで記載したものと同様である。
<<イオン交換>>
合成されたゼオライト膜は、必要に応じてイオン交換してもよい。ゼオライトの熱膨張特性、アンモニアの分離熱安定性は、ゼオライト中のカチオン種により大きく影響を受けるため、本イオン交換が重要な制御法となる。また、後述するように、用いるカチオン種によりゼオライト膜のアンモニアの透過性能および/または分離性能が向上する場合がある。すなわち、本発明で用いるカチオン種は、上記のゼオライトの熱膨張特性、アンモニアの分離熱安定性を確保しながら、アンモニアの透過性能と分離性能を加味して適宜選定される。
イオン交換は、有機テンプレートを用いてゼオライト膜を合成した場合は、通常、有機テンプレートを除去した後に行う。イオン交換するイオンとしては、本発明においては、ゼオライト膜表面の窒素含有量を増やすために、NH やメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、ジメチルエチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、アニリン、メチルアニリン、ベンジルアミン、メチルベンジルアミン、ヘキサメチレンジアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、N,N,N-トリメチル-1-アダマンタンアミン、ピリジン、ピペリジン等の炭素数1~20の有機アミンがプロトン化されたカチオン種のいずれかが好ましく、その他、プロトン、Na、K、Li、Rb、Csなどのアルカリ金属イオン、Ca2+、Mg2+、Sr2+、Ba2+などのアルカリ土類金属イオン、ならびにFe、Cu、Zn、Ga、Laなどの遷移金属のイオンなどを共存させてもよい。
これらの中では、プロトン、NH 、Na、Li、Cs、Feイオン、Gaイオン、Laイオンが好ましい。これらのイオンは、ゼオライト中に複数種混在していてもよく、上記のゼオライトの熱膨張特性とアンモニア透過性能のバランスをとる上で、上記イオンを混在させる手法は好適に採用される。このようにイオン交換するカチオン種ならびにそれらの量を制御する事で、ゼオライトのアンモニア親和性ならびにゼオライト細孔内の有効細孔径を制御することが可能となり、アンモニアの透過選択性を上げ、かつアンモニアの透過速度も向上させることができる。これらの中でアンモニアの透過選択性を上げるイオン種としては、NH やメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、ジメチルエチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、アニリン、メチルアニリン、ベンジルアミン、メチルベンジルアミン、ヘキサメチレンジアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、N,N,N-トリメチル-1-アダマンタンアミン、ピリジン、ならびにピペリジン等の炭素数1~20の有機アミンがプロトン化されたカチオン種が好ましく、その中では、NH や炭素数1~6の有機アミンのような分子サイズの小さなアミンがプロトン化されたカチオン種が上記の理由からより好ましく、その中でも特にNH が好ましい。
一方、アンモニアの透過速度を向上させるイオン種としては、プロトン、Na、Li、Cs、Feイオン、Gaイオン、Laイオンが好ましく、Na、Li、Csイオンが特に好ましく、Naイオンを共存させるのが最も好ましい。本発明においては、このように窒素原子を含有するイオン種を必須とするイオンの交換量を調整することにより、ゼオライト膜中のAl原子に対する窒素原子のモル比を制御することができる。
なお、本発明のゼオライト中にNaイオンを含有させる場合、その含有量は、ゼオライト中のAl原子に対して、モル比で、通常、0.01以上、好ましくは、0.02以上、より好ましくは、0.03以上であり、更に好ましくは0.04以上であり、特に好ましくは0.05以上である。一方、上限値については、特に限定されないが、通常0.10モル当量以下、好ましくは0.070モル当量以下、より好ましくは0.065モル当量以下、更に好ましくは、0.060モル当量以下、特に好ましくは、055モル当量以下である。このような特定の領域のNa/Al原子比のゼオライトを使用することにより、アンモニアと水素および/または窒素を含む複数の成分からなる混合ガスからアンモニアを高い透過度で分離することができる。
イオン交換は、焼成後(有機テンプレートを使用した場合など)のゼオライト膜を、イオン交換する上記カチオンの硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、有機酸塩、水酸化物ならびにClやBrのハロゲン塩、場合によっては塩酸などの酸で、通常、室温から100℃の温度で処理後、水洗、あるいは40℃から100℃のお湯で湯洗する方法などにより行えばよい。イオン交換処理に用いる溶媒は、上記イオン交換する塩が溶解すれば水であっても有機溶媒であってもよく、処理する塩の濃度は通常10mol/L以下、下限は、0.1mol/L以上、好ましくは、0.5mol/L以上、より好ましくは、1mol/L以上である。これらの処理条件は、用いる塩、溶媒種に応じて適宜設定すればよい。塩酸などの酸を用いる場合は、酸がゼオライトの結晶構造を破壊するため、通常は処理する酸の濃度を5mol/L以下とし、温度や時間を適宜設定すればよい。また、イオン交換処理は繰り返し処理を行うことによりイオン交換率が高くなるため、イオン交換処理の回数は特に限定されることはなく、目的とする効果が得られるまで処理を繰り返してよい。さらに、イオン交換されたゼオライト膜は、イオン交換処理後にイオン交換処理原料由来の残存物がゼオライト細孔内に存在するとガスの透過性を妨げるため、必要に応じて200~500℃で焼成することにより、イオン交換処理後の残存物を除去してもよい。
<<硝酸塩処理>>
本発明のゼオライト膜複合体においては、ゼオライト膜中の窒素原子の含有量を調整する方法として、硝酸塩処理を併用することが好ましいため、以下、硝酸塩処理について説明する。
本発明においては、合成されたゼオライト膜は、必要に応じて硝酸塩処理を施しても良い。硝酸塩処理は、有機テンプレートを含む状態でも、焼成により有機テンプレートを除去した後に実施しても構わない。硝酸塩処理は、ゼオライト膜複合体を、例えば硝酸塩を含む溶液に浸漬して行う。これにより、膜表面に存在する微細な欠陥を硝酸塩がふさぐ効果が得られるために好ましい場合がある。
更に、硝酸塩がゼオライト細孔に存在する場合はゼオライト膜のアンモニアとの親和性を向上させる効果があり、アンモニアの透過性を向上させる手法として好適に採用される。硝酸塩処理に用いる溶媒は、塩が溶解すれば水であっても有機溶媒であってもよく、用いる硝酸塩に制限はないが、例えば、硝酸マグネシウム、硝酸カルシウム、硝酸バリウム、硝酸アルミニウム、硝酸ガリウム、硝酸インジウム、硝酸鉄、硝酸コバルト、硝酸ニッケル、硝酸銅、硝酸亜鉛などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
これらの中では、硝酸マグネシウム、硝酸カルシウム、硝酸バリウム、硝酸アルミニウム、硝酸ガリウム、硝酸インジウム、その中でも硝酸マグネシウム、硝酸カルシウム、硝酸バリウム、硝酸アルミニウムがより好ましく、特に硝酸アルミニウムがゼオライト膜表面に存在する微細な欠陥をふさぐ効果が顕著でアンモニアの分離性能が高まる理由から好ましい。
硝酸塩の濃度は通常10mol/L以下であり、下限は、0.1mol/L以上、好ましくは、0.5mol/L以上、より好ましくは、1mol/L以上である。処理温度は通常、室温から150℃以下であり、処理は10分から48時間程度行えばよく、これらの処理条件は、用いる硝酸塩、溶媒種に応じて適宜設定すればよい。硝酸塩処理後のゼオライト膜は、水洗を行ってもよく、水洗を繰り返すことによってゼオライト膜の窒素原子含有量を好ましい範囲に調整することができる。
<<アルミニウム塩処理>>
本発明のゼオライト膜複合体は、必要に応じてアルミニウム塩処理を施してもよい。アルミニウム塩処理は、有機テンプレートを含む状態でも、焼成により有機テンプレートを除去した後に実施しても構わない。アルミニウム塩処理は、ゼオライト膜複合体を、例えばアルミ塩を含む溶液に浸漬して行う。これにより、膜表面に存在する微細な欠陥をアルミニウム塩がふさぐ効果が得られることがある。更に、アルミニウム塩がゼオライト細孔に存在する場合はアンモニアガスを引き寄せる効果があり、アンモニアガスの透過性を向上させる手法として好適に採用される。
アルミニウム塩処理に用いる溶媒は、塩が溶解すれば水であっても有機溶媒であってもよく、用いるアルミ塩に制限はないが、例えば、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、リン酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、炭酸アルミニウム、水酸化アルミニウムなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
アルミニウム塩の濃度は通常10mol/L以下であり、下限は、0.1mol/L以上、好ましくは、0.5mol/L以上、より好ましくは、1mol/L以上である。処理温度は通常、室温から150℃以下であり、処理は10分から48時間程度行えばよく、これらの処理条件は、用いるアルミニウム塩、溶媒種に応じて適宜設定すればよい。
アルミニウム塩処理後のゼオライト膜は、水洗を行ってもよく、水洗を繰り返すことによってゼオライト膜のAl原子含有量を調整することができる。本発明のSi原子/Al原子比率を大きくするためには、処理するアルミニウム塩の濃度や処理量を減らしたり、アルミニウム塩処理後の水洗の回数を増やすことが好ましく、一方、当該比率を小さくするためには、処理するアルミニウム塩の濃度や処理量を増やしたり、アルミニウム塩処理後の水洗の回数を減らすことが好ましい。
<<シリル化処理>>
本発明のゼオライト膜複合体は、必要に応じてシリル化処理を施してもよい。シリル化処理は、ゼオライト膜複合体を、例えばSi化合物を含む溶液に浸漬して行う。これにより、ゼオライト膜表面がSi化合物により修飾されて、特定の物理化学的性質を有するものとすることができる。例えば、ゼオライト膜表面にSi-OHを多く含む層を確実に形成することで膜表面の極性が向上し、極性分子の分離性能を向上させることができる。
また、ゼオライト膜表面をSi化合物により修飾することで膜表面に存在する微細な欠陥をふさぐ効果が得られることがある。更に、シリル化処理によりゼオライトの細孔径の制御が可能であり、該処理を行うことでアンモニアの透過選択性を向上させる手法も好適に採用される。
シリル化処理に用いる溶媒は、水であっても有機溶媒であってもよい。また溶液は酸性、塩基性であってもよく、この場合には酸、塩基によってシリル化反応が触媒される。用いるシリル化剤に制限はないが、アルコキシシランが好ましい。処理温度は通常、室温から150℃以下であり、処理は10分から30時間程度行えばよく、これらの処理条件は、用いるシリル化剤、溶媒種に応じて適宜設定すればよい。
<<ゼオライト膜表面に含まれる窒素原子の含有量>>
本発明においては、本発明のゼオライト膜表面に含まれる窒素原子の含有量は、上記のように、ゼオライト膜に含まれるゼオライト中の窒素原子を含むカチオン種を選定してゼオライトのAl原子/Si原子比を調整する方法、イオン交換法によるイオン交換量を調整して窒素原子の含有量を調整する方法、必要に応じてゼオライト膜を製造する際に窒素原子を含有する有機テンプレート(構造規定剤)を使用してその添加量や有機テンプレートを焼成除去する際の加熱温度や加熱する時間を調整する方法、ゼオライト膜を硝酸塩で処理する方法、硝酸処理をしたゼオライト膜を水洗する際の水洗回数を調整する方法、ならびにこれらの方法を適宜組み合わせることにより制御することができる。
<<ゼオライト膜複合体の表面に含まれるAl原子の含有量>>
本発明のゼオライト膜複合体の表面に含まれるAl原子の含有量は、上記のように、ゼオライト膜に含まれるゼオライト中のAl原子/Si原子比を調整する方法、ゼオライト膜をアルミニウム塩で処理する方法、アルミニウム塩処理をしたゼオライト膜を水洗する際の水洗回数を調整する方法、ならびにこれらの方法を適宜組み合わせることにより制御することができる。
<<ゼオライト膜複合体の表面に含まれるアルカリ金属元素の含有量>>
本発明のゼオライト膜複合体の表面に含まれるアルカリ金属元素の含有量は、上記のように、ゼオライト膜に含まれるゼオライト中のAl原子/Si原子比を調整する方法、イオン交換法によるイオン交換量を調整してアルカリ金属元素の含有量を調整する方法、ゼオライト膜を水洗する際の水洗回数を調整する方法、ならびにこれらの方法を適宜組み合わせることにより制御することができる。
このようにして製造されるゼオライト膜複合体は、優れた特性をもつものであり、本発明における混合ガスからのアンモニアの膜分離手段として好適に用いることができる。
<アンモニアの分離方法>
本発明のゼオライト膜複合体は、少なくとも窒素ガスとアンモニアガスを含有する混合ガスから、アンモニアを選択的に透過させて分離することができる。
このような本発明のゼオライト膜複合体を用いるアンモニアの分離方法は、少なくとも、アンモニアと、窒素と、さらには水素とを含む混合ガスからアンモニアを効率的に分離する際に効果的に用いることができるため、このような混合ガスが得られるアンモニアの製造方法と組み合わせて使用することが効果的である。
すなわち、水素と窒素からアンモニアを製造する第一工程、および第一工程で得られるアンモニアを分離する第二工程を含む、アンモニアの製造方法が好ましい態様である。さらには、上記第一工程および上記第二工程が一つの反応器内で進行する、アンモニアの製造方法も本発明を適用した好ましい態様の一つである。第一工程および第二工程が一つの反応器内で進行するとは、第一工程および第二工程が同時に進行するということである。つまり、本発明の一実施形態では、容器内で水素ガスと窒素ガスからアンモニアガスを製造し、該容器内において、製造されたアンモニアガスを含む混合ガスからアンモニアを分離しながらアンモニアを効率良く製造する方法である。
アンモニアの工業製造方法としては、特段の制限はないが、ハーバー・ボッシュ法が挙げられる。この方法においては、基本的には酸化鉄を触媒とし、300℃~500℃、10~40MPaという高温高圧下で、窒素及び水素ガスを触媒上で反応させてアンモニアを生成させ、反応器出口ガス中に含まれる生成アンモニアを冷却して凝縮分離して製品として回収する一方、未反応の窒素及び水素ガスは分離され原料ガスとしてリサイクルされるプロセスが採用されている。また、ハーバー・ボッシュ法の改良方法として、より低圧条件下でアンモニアが製造可能なRu系担持触媒が1980年代に開発され、上記ハーバー・ボッシュプロセスと組み合わせたプロセスも工業化されているが、その基本製造プロセスは100年に亘り変わっていない。このように、一般にアンモニア製造工業触媒は鉄系触媒とRu系触媒に大別される。アンモニア製造時に用いる原料ガスのモル比は、理論比となる水素/窒素=3が好ましいが、Ru系触媒では水素による触媒被毒が起こりやすいために、このモル比を下げた製造条件が好ましく用いられる。この点を考慮すると、特に制限はされないが、本発明に係るアンモニア分離技術と組み合わせるアンモニア製造触媒プロセスとしては、後述するアンモニア分離における供給ガス中に含有される水素ガス/窒素ガスの好ましい体積比に近づくため、Ru系触媒を用いるプロセスが好ましく、この組み合わせにより、生成するアンモニア分離において水素の透過量を低減することができる。
本発明のゼオライト膜複合体を用いたアンモニアの分離方法は、特定のゼオライト膜を用いて、アンモニアと水素および/または窒素を含む複数の成分からなる混合ガスを該ゼオライト膜に接触させ、該混合ガスから、アンモニアを選択的に透過させて分離するものである。
なお、上述の通り、本発明によれば、反応器内で水素ガスと窒素ガスからアンモニアガスを製造し、上記反応器内において、ゼオライト膜を用いて製造されたアンモニアガスを透過させながら効率よくアンモニアを製造・回収することができる。
(混合ガス)
本発明において、混合ガスとは、少なくともアンモニアガスと窒素ガスを含有するガスであり、その他、水素ガスを含むことが好ましい。
(混合ガス中のアンモニア濃度)
混合ガス中のアンモニア濃度については、特に限定されないが、アンモニアの透過速度の観点からは、アンモニアガス濃度は1.0体積%以上であることが好ましい。1.0体積%以上であると、アンモニアガスの透過速度が向上する。以上の観点から、供給ガス中のアンモニアガス濃度は、好ましくは2.0体積%以上、より好ましくは3.0体積%以上、特に好ましくは5.0体積%以上である。
一方、上限は、特に制限されないが、供給ガス中のアンモニアガス濃度が高いほど分離性能は向上するため、通常100体積%未満となるが、アンモニアを分離する必要性の理由から、一般には、80体積%以下、好ましくは、60体積%以下、より好ましくは、40体積%以下である。なお、供給ガス中のアンモニアの濃度は、供給ガスを採取し、その成分を分析し、アンモニアのモル分率をもって体積%と同じであるとみなす。他の気体の体積%も同様にモル分率をもって、体積%とみなす。
また、アンモニア製造プロセスと組み合わせてアンモニアを分離する場合は、該製造プロセス条件で生成するアンモニア平衡濃度以下である。本発明を用いたアンモニアの分離技術は、公知の水素と、窒素と、アンモニアとの混合ガスから水素ガスおよび/または窒素ガスを選択的に透過させる方法に対して、供給ガスからアンモニアを分離するプロセスとなるため、高濃度のアンモニアを含む混合ガスからのアンモニア分離が有利である。
さらに、その後、必要に応じて膜を透過しなかった非透過側の混合ガスから水素ガスを回収する工程を採用する場合でも、アンモニアガス濃度が十分に下がった該混合ガスから水素を回収する設計となるため、公知の供給ガスから水素および/または窒素を分離してアンモニアの濃縮を行うプロセスでの上記の課題は生じにくい特徴がある。
なお、例えば、特許文献1に対しては、顕著にアンモニアの分離性能が向上し、且つ高温での操業時や長期操業時の分離安定性も高いといった特徴がある。
アンモニア及び窒素を少なくとも含む混合ガス中のアンモニアガス濃度が特定量以上になるとゼオライト膜を透過するアンモニアの透過選択性が著しく向上する要因は、未だ詳らかではないが、該混合ガス中のアンモニアガス濃度を高めると、上記のアンモニアガスとゼオライトとの吸着平衡の理由からゼオライトへの吸着が起こりやすくなり、先ずアンモニアが細孔内に吸着されたゼオライト膜が生成する。このようにして生成したアンモニアが吸着したゼオライト膜は、ゼオライト膜内の細孔径を狭めるために、分子サイズの小さな水素の透過速度を低減することができる。この作用は、水素、窒素、アンモニアの分子サイズより細孔径が大きなゼオライトを用いても同様にゼオライト膜の細孔を狭めるため、水素の透過阻害が顕著に発現する。
一方、ゼオライト細孔内に吸着されたアンモニアは、膜内外の圧力差により細孔内でアンモニアの吸着/脱離によるホッピング移動を起こすことができ、この挙動によりアンモニアの選択的な分離が発現する。
すなわち、本発明は、先ずゼオライトへのアンモニアの吸着を積極的に行って、ゼオライト膜の細孔径を制御して、アンモニアの分離選択性を高めながら、一方、細孔内ではアンモニアの吸着/脱離によるホッピング移動を用いてアンモニアを選択的に透過させる技術となる。これに対して、特許文献2では、このようなアンモニア吸着ゼオライト膜はアンモニア透過において閉塞の原因となるため、このような吸着を起こらないゼオライトを設計し、ゼオライトの細孔径を利用した分子篩によりアンモニアを分離する技術を提案している点で大きく異なる。
また、特許文献1で提案されているようなシリカ膜では、アンモニアの吸着が起こりにくく、また、アンモニアが吸着されても熱安定性が低いために、本発明のような効果は発現しない。
一方、ゼオライトへのアンモニアの吸着/脱離が伴う細孔内ホッピング機構を主に活用してアンモニアの分離を行う本発明においては、アンモニア分離の際の温度は、使用するゼオライト膜の長期耐久性、ゼオライト膜のアンモニアの分離性能、ならびに、アンモニア製造設備と組み合わせる際のプロセス全体の製造エネルギー収支に大きく影響を与えるため、重要な設計因子の一つとなる。これらの視点からすると、本発明においては、アンモニア合成における生成ガスを分離する場合には、アンモニア分離の際の温度は、通常、アンモニアの合成温度と同じかそれ以下の温度であり、アンモニア分離の際の温度は、アンモニア分離を行う分離器内の温度、すなわち、分離に供する混合ガスの温度、分離されたアンモニアガスの温度である。また、分離膜の温度は分離器内の温度と略同じであるとみなすことができる。
アンモニアの製造プロセス設計からは合成温度と同じ温度で分離を行うと反応器にリサイクルする水素、窒素の昇温が不要となるため好ましい。このため、アンモニア分離の際の好ましい温度はアンモニア合成反応における反応温度にもよるが、通常500℃以下、好ましくは450℃以下、さらに好ましくは400℃以下である。
本発明のゼオライト膜を用いてこれらの温度条件下でアンモニアの分離を行うと、該ゼオライト膜は安定性が高いため、長期に亘り連続的な操業が可能となるばかりでなく、高いアンモニアの透過選択性が発現する。
一方、その下限は通常50℃を超える温度、好ましくは100℃以上、より好ましくは150℃以上、特に好ましくは200℃以上、その中でも、好ましくは250℃以上、とりわけ好ましくは300℃以上である。これらの温度条件下でアンモニアの分離をおこなうと、ゼオライト細孔内に吸着されたアンモニアの脱離速度が向上し、その結果ゼオライト膜のアンモニア透過速度が向上する。
また、アンモニア製造プロセスとして、原料ガスのリサイクルを行う際には、水素、窒素の昇温にかかるエネルギーが低減されるために、より高温条件下でのアンモニア分離が好ましく、その観点からは、その下限は、好ましくは250℃以上、より好ましくは300℃以上である。
混合ガス(供給ガス)は、アンモニア及び窒素を含有していればよく、アンモニアの合成を考慮すると、水素は含有されていることが好ましい。混合ガス中に含有される水素ガス/窒素ガスの体積比は、通常3以下、より好ましくは、2以下である。この体積比に調整することにより、アンモニア分離時の水素の透過量が低減され、アンモニアの分離選択性が向上する。
このような理由から、本発明のアンモニア分離プロセスの供給ガスをアンモニア製造プロセスから得る場合には、特に限定はされないが、原料ガス中の水素ガス/窒素ガスの体積比を低くしたRu系アンモニア製造触媒プロセスと組み合わせるのが好ましい。一方、その下限は、少なければ少ないほどアンモニア分離選択性が向上するため、特に限定されないが、通常0.2以上、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.5以上である。
ここで、上限ならびに下限の記載値は有効数字の範囲内で有効とするもので、すなわち、上限3以下とは2.5以上3.5未満を、一方0.2以上とは0.15以上0.25未満を、1.0以上とは0.95以上1.05未満を意味する。
本発明において混合ガス(供給ガス)の圧力は、高圧であるほどゼオライト膜の分離性能が向上し、用いるゼオライト膜の面積を低減できるため、好ましい態様であるが、大気圧以上の圧力であれば特段制限はなく、適宜圧力を減圧調整して所望の圧力にして用いてもよい。分離対象のガスが、分離に用いる圧力より低い場合は、圧縮機などで増圧して用いることができる。
混合ガス(供給ガス)の圧力は、通常大気圧若しくは大気圧より大きく、好ましくは0.1MPa以上、より好ましくは0.2MPa以上である。また上限値は、通常20MPa以下、好ましくは10MPa以下、より好ましくは5MPa以下であって、3MPa以下であってもよい。
透過側の圧力は供給側のガスの圧力より低ければ特に限定されないが、通常10MPa以下、好ましくは5MPa以下、より好ましくは1MPa以下、さらに好ましくは0.5MPa以下であり、場合によっては大気圧以下の圧力まで低下させてもよい。供給ガス中のアンモニアの濃度が低い値となるまで分離する場合には、透過側は低い圧力であることが好ましく、大気圧以下の圧力まで低下させると、供給ガス中のアンモニアガス濃度がより低い濃度となるまでアンモニアを分離することが可能である。
供給側のガスと透過側のガスの差圧は特に制限されないが、通常20MPa以下、好ましくは10MPa以下、より好ましくは5MPa以下、さらに好ましくは1MPa以下である。また、通常0.001MPa以上、好ましくは0.01MPa以上、より好ましくは0.02MPa以上である。
ここで、差圧とは、当該ガスの供給側の分圧と透過側の分圧の差をいう。また、圧力[Pa]は、特に断りのない限り、絶対圧を指す。
混合ガス(供給ガス)の流速は、透過するガスの減少を補うことが可能な程度の流速で、また供給ガスにおいて透過性の小さなガスの膜のごく近傍における濃度とガス全体における濃度が一致するように、供給ガスを混合できるだけの流速であればよく、ゼオライト膜複合体の管径、膜の分離性能にもよるが、線速として通常0.001mm/sec以上、好ましくは0.01mm/sec以上、より好ましくは0.1mm/sec以上、その中でも、好ましくは0.5mm/sec以上、より好ましくは1mm/sec以上であり、上限は特に制限なく、通常1m/sec以下、好ましくは0.5m/sec以下である。
本発明のゼオライト膜複合体を用いた、混合ガスからのアンモニアの分離方法においては、スイープガスを用いてもよい。スイープガスとは、分離膜により透過されたアンモニアを効率よく回収するために供給するガスを意味し、分離透過前の供給ガス側に導入するガスではなく、分離膜の透過側に供給するガスである。つまり、スイープガスは、分離透過前の供給ガスとは別個に供給されるガスであって、透過側に供給ガスとは異なる種類のガスを流し、膜を透過したガスを回収するものである。本発明で用いるスイープガスとは、例えば、図3に示すライン342から供給されるガス39のことを言う。スイープガスの圧力は通常大気圧であるが、特に大気圧に制限されるものではなく、好ましくは20MPa以下、より好ましくは10MPa以下、さらに好ましくは1MPa以下であり、下限は、好ましくは0.09MPa以上、より好ましくは、0.1MPa以上である。場合によっては、減圧して用いてもよい。
スイープガスの流速は、特に制限はないが、線速として通常0.5mm/sec以上、好ましくは1mm/sec以上であり、上限は特に制限なく、通常1m/sec以下、好ましくは0.5m/sec以下である。
ガス分離に用いる装置は、特に限定されないが、通常はゼオライト膜複合体を膜モジュールにして用いる(以下、「ゼオライト膜複合体および/またはゼオライト膜複合体を用いた分離装置」を単に「膜モジュール」と称することがある。)。膜モジュールは、例えば、図3に模式的に示したような装置でもよいし、例えば「ガス分離・精製技術」(株)東レリサーチセンター2007年発行22頁等に例示されている膜モジュールを用いてもよい。
図3の装置における混合ガスの分離操作については、実施例の項において説明する。
混合ガスからのアンモニアの膜分離を行う際には膜モジュールを多段にして用いてもよい。この場合、1段目の膜モジュールに分離を行うガスを供給して、膜を透過しなかった非透過側のガスをさらに2段目の膜モジュールに供給してもよいし、透過したガスを2段目の膜モジュールに供給してもよい。前者の方法では、非透過側の透過性の低い成分の濃度をさらに上げることができ、後者の方法では透過したガス中の透過性の高い成分の濃度をさらに上げることができる。また、これらの方法を組み合わせた方法も好適に使用できる。
多段に設けた膜モジュールで分離する場合には、後段の膜モジュールにガスを供給する際に、必要に応じて供給ガスの圧力を昇圧器などで調整してもよい。
また、膜モジュールを多段で使用する場合には、各段に性能が異なる膜を設置してもよい。通常、膜の性能として、透過性能が高い膜では分離性能が低く、一方、分離性能が高い膜では透過性能が低い傾向がある。このため、分離あるいは濃縮したいガス成分が所定の濃度になるまで処理する際に、透過性が高い膜では、必要膜面積は小さくなる一方、透過性の低い成分も透過側へ透過しやすく、このため、透過側ガス中の透過性の高い成分の濃度が低くなる傾向がある。逆に、分離性能が高い膜では、透過性の低い成分の透過側への透過は起こりにくく、このため、透過側ガス中の透過性の高い成分の濃度は高いが、必要膜面積が大きくなる傾向がある。1種類の膜による分離では、必要膜面積と濃縮または分離目的ガスの透過、非透過量の関係は制御しにくいが、異なる性能の膜を使用することで、制御が容易になる。膜コストと分離・回収するガスの価格によって、最適な膜面積と濃縮、分離目的ガスの透過、非透過量の関係になるよう膜を設置し、全体としてのメリットを最大化できる。
例えば、1段の膜分離で、アンモニアが十分分離できない場合には、非透過側のガスをさらに数段の膜で分離することができる。また1段の膜分離で、膜のアンモニア/水素の分離が十分でなく、透過側にアンモニアと共に水素が多く含まれる場合には、透過ガスをアンモニアと水素の分離性能が高い膜で分離することもできる。
本発明で用いるゼオライト膜は、耐薬品性、耐酸化性、耐熱安定性、耐圧性に優れ、かつ、アンモニアの高い透過性能、分離性能を発揮し、耐久性に優れた性能を持つ。
ここでいう高い透過性能とは、十分な処理量を示し、例えば、膜を透過する気体成分のパーミエンス(Permeance)[mol/(m・s・Pa)]が、例えばアンモニアを、温度200℃、差圧0.3MPaで透過させた場合、通常1×10-9以上、好ましくは5×10-9以上、より好ましくは1×10-8以上、さらに好ましくは2×10-8以上、とりわけ好ましくは5×10-8以上、特に好ましくは1×10-7以上、最も好ましくは2×10-7以上である。上限は特に限定されず、通常3×10-4以下である。
また、本発明で用いるゼオライト膜複合体のパーミエンス[mol/(m・s・Pa)]は、例えば窒素を同様の条件で透過させた場合、通常5×10-8以下、好ましくは3×10-8以下、より好ましくは1×10-8以下、とりわけ好ましくは5×10-9以下、最も好ましくは1×10-9以下であり、理想的にはパーミエンスは0であるが、実用上1×10-10~1×10-14程度のオーダーとなる場合がある。
ここで、パーミエンス(Permeance、「透過度」ともいう)とは、透過する物質量を、膜面積と時間と透過する物質の供給側と透過側の分圧差の積で割ったものであり、単位は、[mol/(m2・s・Pa)]であり、実施例の項において述べる方法により算出される値である。
また、ゼオライト膜の選択性は理想分離係数、分離係数により表される。理想分離係数、分離係数は膜分離で一般的に用いられる選択性を表す指標であり、理想分離係数は実施例の項において述べる方法により、分離係数は下記の算出される値である。
分離係数αを求める場合は下記式により算出する。
α=(Q’1/Q’2)/(P’1/P’2)
〔上記式中、Q’1およびQ’2は、それぞれ、透過性の高いガスおよび透過性の低いガスの透過量[mol/(m・s・Pa)]を示し、P’1およびP’2は、それぞれ、供給ガス中の透過性の高いガスおよび透過性の低いガスの分圧[Pa]を示す。〕
分離係数αは次のように求めることもできる。
α=(C’1/C’2)/(C1/C2)
〔上記式中、C’1およびC’2は、それぞれ、透過ガス中の透過性の高いガスおよび透過性の低いガスの濃度[体積%]を示し、C1およびC2は、それぞれ、供給ガス中の透過性の高いガスおよび透過性の低いガスの濃度[体積%]を示す。〕
理想分離係数は、例えば、アンモニアと窒素を温度200℃、差圧0.3MPaで透過させた場合、通常15以上、好ましくは20以上、より好ましくは25以上、最も好ましくは30以上である。またアンモニアと水素を温度200℃、差圧0.3MPaで透過させた場合、通常2以上、好ましくは3以上、より好ましくは5以上、さらに好ましくは7以上、とりわけ好ましくは8以上、特に好ましくは10以上、最も好ましくは15以上である。理想分離係数の上限は完全にアンモニアしか透過しない場合でありその場合は無限大となるが、実用上、分離係数は10万程度以下となる場合がある。
本発明で用いられるゼオライト膜の分離係数は、例えば、アンモニアと窒素の体積比1:1の混合ガスを、温度50℃、差圧0.1MPaで透過させた場合、通常2以上、好ましくは3以上、より好ましくは4以上、さらに好ましくは5以上である。分離係数の上限は完全にアンモニアしか透過しない場合でありその場合は無限大となるが、実用上、分離係数は10万程度以下となる場合がある。
本発明で用いられるゼオライト膜は、上記のとおり、耐薬品性、耐酸化性、耐熱安定性、耐圧性に優れ、かつ高い透過性能、分離性能を発揮し、耐久性に優れるものであり、このようなゼオライト膜を用いる本発明のアンモニアの分離方法は、アンモニア合成の生成物からのアンモニアの分離に適用することができる。また、本発明のアンモニアの分離方法は、アンモニア合成反応器内にゼオライト膜を設け、反応器内で、アンモニアを選択的に透過させて分離することにより反応系内の水素ガスおよび窒素ガスとアンモニアガスとの平衡をずらし、高転化率で効率的にアンモニアを合成する膜反応器としても利用できる。
以下、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。なお、以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限または下限の好ましい値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は、前記上限または下限の値と下記実施例の値または実施例同士の値との組合せで規定される範囲であってもよい。
<分離性能の測定>
(1)アンモニア分離試験
図3に模式的に示す装置において、以下のとおりアンモニア分離試験を行った。図3に示す装置において、供給ガスとしてアンモニアガス(NH)と、窒素ガス(N)と、を含む混合ガスを126SCCMの流量で耐圧容器32とゼオライト膜複合体31との間に供給し、背圧弁36により供給側のガスと膜内を透過したガスの圧力差が0.3MPaで一定になるように調整し、配管340から排出される排出ガスをマイクロガスクロマトグラフで分析し、透過ガスの濃度、及び流量を算出した。
なお、アンモニア分離試験においては、耐圧容器から、水分や空気などの成分を除去するため、測定温度以上での乾燥及び排気のために、使用する試料ガスによるパージ処理をした後、試料ガス温度及びゼオライト膜複合体の供給ガス側と透過ガス側の差圧を一定として、透過ガス流量が安定した後に、ゼオライト膜複合体を透過した試料ガス(透過ガス)の流量を測定し、ガスのパーミエンス[mol/(m2・s・Pa)]を算出した。パーミエンスを計算する際の圧力は、供給ガスの供給側と透過側の圧力差(差圧)を用いた。混合ガスの場合には分圧差を用いた。
また、この測定結果に基づいて、下記式(2)により理想分離係数α’を算出した。
α’=(Q1/Q2)/(P1/P2)・・・(2)
〔式(2)中、Q1およびQ2は、それぞれ、透過性の高いガスおよび透過性の低いガスの透過量[mol・(m・s)-1]を示し、P1およびP2は、それぞれ、透過性の高いガスおよび透過性の低いガスの、供給側と透過側の圧力差[Pa]を示す。〕
これは、各ガスのパーミエンスの比率を示しており、従って、各ガスのパーミエンスを算出し、その比率から求めることができる。
(2)アンモニア分離試験サンプルの作製
実施例および比較例で合成したゼオライト膜複合体(図4参照)の下端から8~12cm(ゼオライト膜複合体1の部位B)、56~60cm(ゼオライト膜複合体1の部位A)、108~112cm(ゼオライト膜複合体1の部位B’)をダイヤモンドカッターで切り出しアンモニア分離評価用サンプルとした。なお、図4は実施例1で製造したゼオライト膜複合体の模式図である。
実施例1
[MFI型ゼオライト膜複合体の製造]
(水熱合成用原料混合物)
93質量%水酸化ナトリウム(Wako社製、顆粒状)32.7g、脱塩水2739.8gを混合したものにアルミン酸ナトリウム(キシダ化学社製、Al-62.2質量%含有)5.3gを加えて50℃で30分間撹拌した。これにコロイダルシリカ(日産化学社製、スノーテックス40)238.5gを加えて、50℃で4時間撹拌し、水熱合成用原料混合物とした。この水熱合成用原料混合物の組成(モル比)はSiO/Al/NaOH/HO=1/0.020/0.54/100であった。
(多孔質支持体)
多孔質支持体としては、120cmの岩尾磁器工業社製のアルミナチューブ(外径12mm、内径9mm)を脱塩水で流通洗浄し、その後乾燥させたものを用いた。
(種結晶分散液)
MFI型ゼオライトを乳鉢ですりつぶしたものを用意し、この種結晶濃度が0.1質量%となるように種結晶を分散させて、種結晶分散液を調製した。
(ゼオライト膜複合体の製造)
真空ポンプで吸引した多孔質支持体を上述の種結晶分散液中に10秒間浸した後、室温で12時間乾燥させ、多孔質支持体に種結晶を付着させた。付着した種結晶の質量は約0.04gであった。このような手法により、種結晶が付着した多孔質支持体を4本用意した。
種結晶を付着させた4本の多孔質支持体を、それぞれ上述の水熱合成用原料混合物の入ったテフロン(登録商標)製内筒に垂直方向に浸漬して、オートクレーブを密閉し、恒温槽内で180℃まで3時間で昇温後、12時間静置状態で、自生圧力下で加熱した。所定時間経過後、放冷した後に多孔質支持体-ゼオライト膜複合体を反応混合物から取り出し、洗浄後、再度脱塩水を加えオートクレーブで120℃、20時間加熱した。所定時間経過後、放冷した後に多孔質支持体―ゼオライト膜複合体を脱塩水から取り出し、100℃で3時間乾燥させて、MFI型ゼオライト膜複合体1を得た(図4参照)。なお、多孔質支持体上に結晶化したMFI型ゼオライトの質量は1.3gであった。また、焼成後のゼオライト膜複合体の空気透過量は4cm/分であった。
比較例1
[MFI型ゼオライト膜複合体の製造]
(水熱合成用原料混合物)
93質量%水酸化ナトリウム(Wako社製、顆粒状)77.6g、脱塩水2398.3gを混合したものにアルミン酸ナトリウム(キシダ化学社製、Al-62.2質量%含有)12.5gを加えて50℃で30分間撹拌した。これにコロイダルシリカ(日産化学社製、スノーテックス40)566.5gを加えて、50℃で4時間撹拌し、水熱合成用原料混合物とした。この水熱合成用原料混合物の組成(モル比)はSiO/Al/NaOH/HO=1/0.020/0.54/40であった。
(多孔質支持体)
多孔質支持体としては、120cmの岩尾磁器工業社製のアルミナチューブ(外径12mm、内径9mm)を脱塩水で流通洗浄し、その後乾燥させたものを用いた。
(種結晶分散液)
MFI型ゼオライトを乳鉢ですりつぶしたものを用意し、この種結晶濃度が0.1質量%となるように種結晶を分散させて、種結晶分散液を調製した。
(ゼオライト膜複合体の製造)
真空ポンプで吸引した多孔質支持体を上述の種結晶分散液中に10秒間浸した後、室温で12時間乾燥させ、多孔質支持体に種結晶を付着させた。付着した種結晶の質量は約0.038gであった。このような手法により、種結晶が付着した多孔質支持体を4本用意した。
種結晶を付着させた4本の多孔質支持体を、それぞれ上述の水熱合成用原料混合物の入ったテフロン(登録商標)製内筒に垂直方向に浸漬して、オートクレーブを密閉し、恒温槽内で180℃まで3時間で昇温後、14時間静置状態で、自生圧力下で加熱した。所定時間経過後、放冷した後に多孔質支持体-ゼオライト膜複合体を反応混合物から取り出し、洗浄後、再度脱塩水を加えオートクレーブで120℃20時間加熱した。所定時間経過後、放冷した後に多孔質支持体―ゼオライト膜複合体を脱塩水から取り出し、100℃で3時間乾燥させて、MFI型ゼオライト膜複合体2を得た。なお、多孔質支持体上に結晶化したMFI型ゼオライトの質量は0.77gであった。また、焼成後のゼオライト膜複合体2の50Torrにおける空気透過量は1cm/分であった。
(評価結果)
上記にて製造したMFI型ゼオライト膜複合体の温度を250℃とした条件下において、上述の方法により、アンモニア分離試験を行った。
なお、実験を簡易に行うため、混合ガスとして、9.5体積%NH/90.5体積%Nの混合ガスを使用した。得られた透過ガスのアンモニアの濃度とアンモニア/窒素(NH/N)のパーミエンス比を表1に示す。表1中、透過ガスのアンモニアの濃度は小数第一位を四捨五入した値である。
また、各部分の元素の比に関しては、後述する走査型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分光法(SEM-EDS)、により、ケイ素/アルミニウム比及びナトリウム/ケイ素比を求め、それぞれ測定回数n=5回として、測定値の平均値を記載した。
(SEM-EDS分析サンプルの作製)
(前処理)
NH分離測定を実施した4cmのゼオライト膜複合体を5mm角の試験片となるようダイヤモンドカッターで切断し、さらに断面切削後、Ptを2nm蒸着し、観察を実施した。
装置:ブロードイオンビーム(日本電子 IB-19520CCP)
方法:支持体側をヤスリで削り、厚みを1mm以下とし、多孔質支持体側からイオンビームを加速電圧4kVで照射して、4時間断面切削を実施した。
(SEM-EDS測定)
装置:FE-SEM(日本電子JSM-7900F)
EDS(Oxford ULTim MAX)
条件:5kV(照射電流500 pA、高真空モード)
観察倍率:5000倍、10000倍、20000倍
(SEM-EDS測定のための観察範囲)
20000倍で像を取得し、図5に示すように膜部分を囲い、上記の条件で120秒間測定を実施しSi/Al比、Na/Al比を算出した。
(原子濃度の算出)
各元素の原子数濃度の算出は、AZtec(Oxford Instruments)のソフトを使用した。Si/Al比の算出は、Siの原子数濃度をAlの原子数濃度で除算して算出した。Na/Si比の算出は、Naの原子数濃度をSiの原子数濃度で除算して算出した。
本発明の実施例のゼオライト膜複合体は、どの部位でも高いアンモニアと水素の分離能力を発揮し、どこでもアンモニアと窒素の比が100以上になっている。一方、従来の典型的な方法で製造された比較例1のゼオライト膜複合体は、その一端(部位B)で著しく分離性能が低下している。これにより、比較例1のゼオライト複合膜は、長尺化して表面積を大きくして単位時間に通過させることができるガスの量を増やすことはできても、分離したガスには大量に窒素が混じってしまい、アンモニアを分離する能力としては大きく低下してしていることが判る。一方、本発明の、通常よりかなり水分を多くして製造した実施例1のゼオライト膜複合体は、1m以上の長尺であるにもかかわらず、どの部位でもアンモニアと窒素の透過率の差が100倍以上になっており、長尺化による絶対的な通過ガス量の多さと、高いアンモニアの分離能力を兼ね備えていることが判る。
10.ゼオライト膜複合体
11.管の長さ方向の中心
12.部位(A)
13.部位(B)
13’.部位(B’)
31.ゼオライト膜複合体
32.耐圧容器
33.エンドピン
34.接続部
35.圧力計
36.背圧弁
37.供給気体(混合気体)
38.透過気体
39.スイープガス
340.排出ガス
341.配管
342.配管
101.多孔質支持体
102.空隙部
103.ゼオライト膜

Claims (12)

  1. 多孔質支持体上にゼオライト膜を有するゼオライト膜複合体であって、管状構造を有し、管の長さが40cm以上であり、下記に示す部位(A)におけるアンモニア/窒素の比、部位(B)におけるアンモニア/窒素の比及び部位(B’)におけるアンモニア/窒素の比が、いずれも50以上であることを特徴とするゼオライト膜複合体。
    部位(A):ゼオライト膜複合体の管の長さ方向の中心から両側に4cmの幅の部分
    部位(B):ゼオライト膜複合体の管の一方の端部から8~12cmの部分
    部位(B’):ゼオライト膜複合体の管の他方の端部から8~12cmの部分
    但し、アンモニア/窒素の比とは、少なくとも窒素ガスとアンモニアガスを含有する混合ガスをゼオライト膜複合体を透過させて得られるガス中の比をいう。
  2. 前記管状構造の管の長さが80cm以上である請求項1に記載のゼオライト膜複合体。
  3. 前記管状構造の管の長さが100cm以上である請求項1に記載のゼオライト膜複合体。
  4. 前記ゼオライトが、CHA型、FAU型、MFI型、LTA型、又はRHO型のいずれかである請求項1~3のいずれか1項に記載のゼオライト膜複合体。
  5. 前記ゼオライトが、CHA型、MFI型、LTA型、又はRHO型のいずれかである請求項1~3のいずれか1項に記載のゼオライト膜複合体。
  6. 前記ゼオライトが、MFI型、又はRHO型のいずれかである請求項1~3のいずれか1項に記載のゼオライト膜複合体。
  7. 前記ゼオライトが、MFI型である請求項1~3のいずれか1項に記載のゼオライト膜複合体。
  8. 前記アンモニア/窒素の比が70以上である請求項1~7のいずれか1項に記載のゼオライト膜複合体。
  9. 前記アンモニア/窒素の比が100以上である請求項1~7のいずれか1項に記載のゼオライト膜複合体。
  10. 請求項1~9のいずれか1項に記載のゼオライト膜複合体の製造方法であって、水熱合成用原料混合物のケイ素に対する水のモル比が45以上300以下であることを特徴とする、ゼオライト膜複合体の製造方法。
  11. ケイ素に対する水のモル比が60以上200以下である、請求項10に記載のゼオライト膜複合体の製造方法。
  12. ケイ素に対する水のモル比が70以上150以下である請求項10又は11に記載のゼオライト膜複合体の製造方法。
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