JP2023149005A - バルブスプリングの振動抑制機構 - Google Patents
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Abstract
【課題】バルブスプリングの圧縮時の挙動の影響を受けることなく、バルブスプリングのサージングを効果的に抑制し得るバルブスプリングの振動抑制機構を提供すること【解決手段】カムシャフト120の回転に伴って内燃機関の燃焼室100を開閉する排気バルブ108を閉方向に付勢するバルブスプリング116の径方向外方に位置する弾性体12と、弾性体12をバルブスプリング116の径方向でバルブスプリング116に当接する当接位置と離反する離反位置との間で往復移動させる往復移動手段14と、を有するバルブスプリングの振動抑制機構10である。往復移動手段14は、排気バルブ108の開閉方向の移動に同期して弾性体12を往復移動させ、且つ排気バルブ108が閉方向に移動するときにのみ弾性体12を前記当接位置に移動させる。【選択図】図3
Description
本発明は、バルブスプリングの振動抑制機構に関し、特に、内燃機関の燃焼室を開閉する吸気または排気バルブを閉方向に付勢するバルブスプリングの振動抑制機構に関する。
車両の内燃機関に一般に設けられる吸気バルブまたは排気バルブは、コイルばねであるバルブスプリングによって閉方向に付勢されており、吸入および排気工程の時にバルブスプリングの付勢力に抗して燃焼室にバルブが押し込まれ、バルブが開状態となる。
これらのバルブは、例えばDOHC(ダブルオーバーヘッドカムシャフト)エンジンではカムシャフトに連動して回動するカムのカム山に押し下げられたロッカーアームによって燃焼室内に押し込まれて開状態となり、さらにカムが回動するとベースサークル位置までバルブスプリングの付勢力によってロッカーアームが押し上げられ、この時にバルブが閉位置に戻ることとなる。
このカムシャフトの回転に連動した吸気バルブおよび排気バルブの開閉は、エンジンの回転数が低いときには問題は生じないが、5000回転など回転数が高くなった場合には、バルブスプリングの固有振動数に近い振動数成分の外力が作用し、バルブスプリングの固有値と外力の周波数が一致すると、バルブスプリングに激しい振動(サージング)が発生し、バルブスプリングに過大なねじりせん断応力が発生する。これは、バルブスプリングによるバルブ閉じ荷重の抜け、動弁部品の挙動悪化、動弁部品の摩耗促進等の悪影響を与える。
特許文献1は、バルブスプリングのサージング抑制のための部品を開示する。具体的には、特許文献1は、吸気または排気バルブを閉方向に付勢するバルブスプリングの軸方向両端部に環状のプロテクタを介在させ、このプロテクタが、該プロテクタの外側の周縁部に立設されてバルブスプリングの巻線の一部にバルブスプリングの径方向外方位置で接触する防振板を有する構造を開示する。
特許文献1の防振板を有するプロテクタによれば、プロテクタの防振板がバルブスプリングの半径方向で接触するため、サージングによるバルブスプリングの横方向および縦方向の振動が抑制されるとされている。
特許文献1の防振板を有するプロテクタによれば、バルブスプリングの横方向および縦方向の振動が抑制されるものの、防振板はバルブスプリングの上下端に取り付けられたプロテクタの外周縁から立設された一部分であるため、バルブスプリングの挙動に追従してしまい、サージング抑制のための構造としては改善の余地がある。
また、防振板はバルブスプリングに直接取り付けられていることから、吸気バルブまたは排気バルブが開く時にはバルブスプリングが圧縮されて半径方向にわずかに拡大する挙動を示すので、防振板がバルブスプリングに接触する。この接触は、バルブスプリングの圧縮を阻害するうえ、この接触により防振板が変形すれば防振板によるバルブスプリングのサージング抑制作用も得られなくなる虞がある。
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、バルブスプリングの圧縮時の挙動の影響を受けることなく、バルブスプリングのサージングを効果的に抑制し得るバルブスプリングの振動抑制機構を提供することにある。
本発明の一実施の形態は、カムシャフトの回転に伴って内燃機関の燃焼室を開閉する吸気または排気バルブを閉方向に付勢するバルブスプリングの径方向外方に位置する弾性体と、該弾性体を前記バルブスプリングの径方向で該バルブスプリングに当接する当接位置と離反する離反位置との間で往復移動させる往復移動手段と、を有し、
前記往復移動手段は、前記吸気または排気バルブの開閉方向の移動に同期して前記弾性体を往復移動させ、且つ前記吸気または排気バルブが閉方向に移動するときにのみ前記弾性体を前記当接位置に移動させることを特徴とする。
前記往復移動手段は、前記吸気または排気バルブの開閉方向の移動に同期して前記弾性体を往復移動させ、且つ前記吸気または排気バルブが閉方向に移動するときにのみ前記弾性体を前記当接位置に移動させることを特徴とする。
本発明によれば、弾性体はバルブスプリングに取り付けられた部材ではないので、バルブスプリングのサージングの抑制が必要なタイミングで弾性体をバルブスプリングの側部に当接させることができ、従来よりも効果的にバルブスプリングのサージングを抑制することができる。さらに、弾性体は吸気または排気バルブが閉位置に在るときのみバルブスプリングの側部に当接し、吸気または排気バルブが開位置に在るときにはバルブスプリングに当接しない。したがって、弾性体は、バルブスプリングの圧縮動作を阻害せず、かつその圧縮動作による影響を受けない。
本発明の実施の形態に係るバルブスプリングの振動抑制機構10を説明するにあたり、従来の内燃機関の燃焼室およびこの燃焼室に設けられるバルブシステムの構成を図4により説明する。図4は、従来のDOHCエンジンの燃焼室を、吸気および排気バルブ並びにそれらの開閉機構と共に縦断面で示す模式図である。
図示のように、燃焼室100には燃焼室100にガソリンと空気の混合気体を供給する吸気配管102と、燃え終わった排ガスを燃焼室100から排出する排気配管104とが接続されており、各配管と燃焼室100とは吸気バルブ106および排気バルブ108とで仕切られている。
吸気バルブ106および排気バルブ108は、バルブシステムにより開閉されるが、両者の構成は一致するので、排気バルブ108を開閉するバルブシステムについてここでは説明することとし、吸気バルブ106を開閉するバルブシステムについてはその説明を省略する。
排気バルブ108は、排気弁を形成するバルブヘッド108aと軸体部分であるステム108bとからなり、ステム108bの上端はリテーナ110に取り付けられ、リテーナ110とシリンダヘッド112の上部に固定されたスプリングシート114との間にコイルばねであるバルブスプリング116が圧縮状態で介装されている。
したがって、図4に示すように、ステム108bがバルブスプリング116のコイルの内部を挿通しており、バルブスプリング116の付勢力により排気バルブ108は閉方向に付勢されている。
リテーナ110の上部にはスイングアーム式のロッカーアーム118が設けられている。ロッカーアーム118の上部にはカム(第一カム122)の外周面が当接しており、カムはカムシャフト120と共に回転する。
したがって、カムシャフト120の回転によりカム山122aがロッカーアーム118を介してバルブスプリング116の付勢力に抗して排気バルブ108を開位置まで押し下げる。さらにカムシャフト120が回転し、カムのベースサークル122b部分がロッカーアーム118のローラー118aと当接するようになるとバルブスプリングの付勢力により排気バルブ108は閉位置まで上昇する。
吸気バルブ106についても同様である。したがって、カムシャフト120の回転に従って吸気バルブ106および排気バルブ108が時間差で開閉動作を行うことで、吸入、圧縮、爆発、排気の4工程を繰り返す4サイクルエンジンにおいて、的確なタイミングでその吸入工程でガソリンと空気の混合ガスを燃焼室に供給し、且つ排気工程で燃え終わった排ガスを燃焼室外に排出することができる。
次に、本発明の実施の形態に係るバルブスプリングの振動抑制機構10を、DOHCエンジンの燃焼室に設けられた排気バルブ108におけるバルブスプリングの振動抑制機構として、図1~3に基づいて説明する。図1は本発明の実施の形態に係るバルブスプリングの振動抑制機構10を示す模式図、図2は図1の一方のバルブスプリングの振動抑制機構10の拡大図、図3はバルブが閉位置に在る時の、バルブスプリングの振動抑制機構10を示す拡大図である。なお、図1は、図4の矢印A方向を見た矢視図であり、排気配管104の記載を省略している。また、図1および図2において、排気バルブ108は開位置に在る。
図1および図2に示すように、本発明のバルブスプリングの振動抑制機構10は、カムシャフト120の回転に伴ってエンジン(内燃機関)の燃焼室100を開閉する排気バルブ108を閉方向に付勢するバルブスプリング116の径方向外方に位置する弾性体12と、弾性体12をバルブスプリング116の径方向でこのバルブスプリング116に当接する当接位置と離反する離反位置との間で往復移動させる往復移動手段14と、を有する。
弾性体12は、往復手段14に取り付けられており、弾性を有する物体であればどのようなものであってもよく、例えば、樹脂、皮、繊維、木材、金属などが挙げられる。中でも、弾性体12がエラストマーであることが好ましい。
エラストマーとしては、例えば、天然ゴム、合成ゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどのゴム、ポリスチレン系、オレフィン/アルケン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系熱可塑性樹脂などが挙げられる。
往復移動手段14は、排気バルブ108の開閉方向の移動に同期して弾性体12を往復移動させ、且つ排気バルブ108が閉方向に移動するときにのみ弾性体12を前記当接位置に移動させる。
本実施の形態において、バルブスプリングの振動抑制機構10はさらにリンク機構20を有し、往復移動手段14は、先端に弾性体12が取り付けられ、基端がこのリンク機構20に接続されたピストン16である。
さらに、本実施の形態において、ピストン16は、内燃機関の構成部材であるシリンダヘッド112上部に固定されたシリンダ18内を摺動する。
本実施の形態において、バルブスプリングの振動抑制機構10はさらにカムシャフト120の排気バルブ108の開閉用の第一カム122に隣接する第二カム30を有し、リンク機構20は、第二カム30のカムロブ30aに起因した上下動をバルブスプリング116の径方向への往復移動へと変換する。
リンク機構20は、本実施の形態では、図2に示すように、ピン20aがシリンダヘッド112の上部に固定され、ハンドル20bに上下方向(矢印210参照)の力を作用させることで従動ピン20cを水平方向、すなわち、バルブスプリング116の径方向(矢印200参照)に移動させるスコットラッセルリンク機構である。ハンドル20bとシリンダヘッド112との間にはコイルばね20dが設けられており、したがって、ハンドル20bはこのコイルばね20dにより図示上方へと付勢されている。なお、このリンク機構は一例にすぎず、第二カム30のカムロブ30aに起因した上下動をバルブスプリング116の径方向への往復移動へと変換するリンク機構であれば、周知の任意のリンク機構を採用することができる。
したがって、図2に示すように、排気バルブ108の開閉方向の移動に同期して弾性体12のバルブスプリング116の径方向への往復移動が、第二カム30のカムロブ30aに起因した上下動がリンク機構20を介して先端に弾性体12が取り付けられたピストン16のバルブスプリング116の径方向への往復移動へと変換されることによりなされる。
したがって、本発明のバルブスプリングの振動抑制機構10によれば、弾性体12はバルブスプリング116に取り付けられた部材ではないので、バルブスプリング116のサージングの抑制が必要なタイミングで弾性体12をバルブスプリング116の側部に当接させることができ、従来よりも効果的にバルブスプリング116のサージングを抑制することができる。
さらに、図3に示すように、弾性体12は排気バルブ108が閉位置に在るときのみバルブスプリング116の側部に当接し、図2に示すように、バルブスプリング108が開位置に在るときには第二カム30のカムロブ30aがハンドル20aから離れることから、コイルばね20dの作用によりハンドルが上方へと移動し、したがって弾性体12はピストン16と共にバルブスプリング116の径方向外方へと移動し、バルブスプリング116に当接しない。よって、弾性体12は、バルブスプリング116の圧縮動作を阻害せず、かつその圧縮動作による影響を受けない。
さらに、クランクシャフト(図示せず)の回転に連動するカムシャフト120に設けた第二カム30およびリンク機構20を介して往復移動手段14が、弾性体12がバルブスプリング116に当接する当接位置と離反する離反位置との間で往復移動するので、バルブスプリング116に適切なタイミングで弾性体12を当接させることが容易であり、且つ動力もエンジンから得ることができるので、前記往復移動のために追加の動力装置を設ける必要もない。
そのうえ、ピストン16が内燃機関の構成部材であるシリンダヘッド112上部に固定されたシリンダ18内を摺動することから、ピストン16の往復移動がより安定する。
また、弾性体12がエラストマーであることで、金属製のばねなどの弾性体を利用する場合と比べてバルブスプリング116の振動をより効果的に吸収でき、サージングを効果的に抑制することができる。
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることはなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
例えば、上記実施の形態においては、バルブスプリングの振動抑制機構10が第二カム30およびリンク機構20を有し、ピストン16(往復移動手段14)が第二カム30およびリンク機構20を介して弾性体12を往復移動させるが、第二カム30およびリンク機構20の構成は必須ではない。
すなわち、本発明のバルブスプリングの振動抑制機構が、第二カム30およびリンク機構20を有する代わりに、アクチュエータと、排気バルブの開閉を検知するセンサと、アクチュエータの作動を制御する制御部とを有し、このアクチュエータにより弾性体12が取り付けられたピストン16(往復移動手段14)を往復移動させることとしてもよい。
制御部は、CPUなどを備えたコンピュータであり、プログラムを展開して対応する処理をCPUに実行させる。この場合、プログラムは、例えば、センサが排気バルブが閉位置に来たことを検知した時にアクチュエータに信号を送り、アクチュエータを作動させるプログラムである。
これにより、排気バルブが閉位置にあるタイミングでピストン16(往復移動手段14)がバルブスプリング116の径方向でバルブスプリングに当接する当接位置に弾性体12を移動させ、バルブスプリング116のサージングを抑制することができる。
さらに、上記実施の形態において、本発明の実施の形態に係るバルブスプリングの振動抑制機構10を、排気バルブ108のバルブスプリングの振動抑制機構として説明しているが、吸気バルブ106のバルブスプリングの振動抑制機構についても同様に適用可能である。
また、上記実施の形態において、弾性体12は、排気バルブ108が閉位置に来る度にバルブスプリング116の側部に毎回当接しているが、例えば、排気バルブ108が閉位置に3回来る度にバルブスプリング116の側部に1回当接することとしてもよい。
具体的には、カムシャフト120とリンク機構との間にギヤ比1:3でギヤを介在させることで、排気バルブ108が閉位置に3回来る度にバルブスプリング116の側部に1回当接する機構を機械的に実現できる。また、アクチュエータを用いる場合には、排気バルブ108が閉位置に3回来る度にアクチュエータに信号を送り、アクチュエータを作動させて弾性体12を当接位置に移動させるプログラムを制御部が備えることとすればよい。
そのうえ、上記実施の形態において、DOHCエンジンの燃焼室に設けられた排気バルブ108のバルブスプリングの振動抑制機構として説明しているが、この形態に限られるものではない。例えば、SOHC(シングルオーバーヘッドカムシャフト)エンジンなどの他のOHC(オーバーヘッドカムシャフト)エンジン、SV(サイドバルブ)エンジン、およびOHV(オーバーヘッドバルブ)エンジンなど、バルブシステムにより吸気および排気を行う全てのエンジンに対して本発明のバルブスプリングの振動抑制機構を適用することができる。
10 バルブスプリングの振動抑制機構
12 弾性体
16(14) ピストン(往復移動手段)
18 シリンジ
20 リンク機構
30 第二カム
30a カムロブ
100 燃焼室
120 カムシャフト
106 吸気バルブ
108 排気バルブ
112 シリンダヘッド(内燃機関の構成部材)
116 バルブスプリング
122 第一カム
12 弾性体
16(14) ピストン(往復移動手段)
18 シリンジ
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30 第二カム
30a カムロブ
100 燃焼室
120 カムシャフト
106 吸気バルブ
108 排気バルブ
112 シリンダヘッド(内燃機関の構成部材)
116 バルブスプリング
122 第一カム
Claims (4)
- カムシャフトの回転に伴って内燃機関の燃焼室を開閉する吸気または排気バルブを閉方向に付勢するバルブスプリングの径方向外方に位置する弾性体と、該弾性体を前記バルブスプリングの径方向で該バルブスプリングに当接する当接位置と離反する離反位置との間で往復移動させる往復移動手段と、を有し、
前記往復移動手段は、前記吸気または排気バルブの開閉方向の移動に同期して前記弾性体を往復移動させ、且つ前記吸気または排気バルブが閉方向に移動するときにのみ前記弾性体を前記当接位置に移動させることを特徴とするバルブスプリングの振動抑制機構。 - 前記カムシャフトの前記吸気または排気バルブの開閉用の第一カムに隣接して設けられた第二カムと、
該第二カムのカムロブに起因した上下動を、前記バルブスプリングの径方向への往復移動へと変換するリンク機構と、をさらに有し、
前記往復移動手段は、先端に前記弾性体が取り付けられ、基端が前記リンク機構に接続されたピストンであり、
前記吸気または排気バルブの開閉方向の移動に同期した前記弾性体の前記バルブスプリングの径方向への往復移動が、前記第二カムのカムロブに起因した上下動が前記リンク機構を介して先端に前記弾性体が取り付けられた前記ピストンの前記バルブスプリングの径方向への往復移動へと変換されることによりなされることを特徴とする請求項1に記載のバルブスプリングの振動抑制機構。 - 前記ピストンが、前記内燃機関の構成部材に固定されたシリンダ内を摺動することを特徴とする請求項2に記載のバルブスプリングの振動抑制機構。
- 前記弾性体がエラストマーであることを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載のバルブスプリングの振動抑制機構。
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