JP2023147602A - 回路装置及び発振器 - Google Patents
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Abstract
【課題】サンプリング電圧の変動を抑制して適正なチャージポンプ動作を実現する回路装置等の提供。【解決手段】回路装置20は、スロープ信号生成回路22と、サンプリング電圧を出力する第1位相比較回路30と、パルス信号を出力するパルサー回路24と、サンプリング電圧に応じた電流を出力する第1チャージポンプ回路40と、基準クロック信号RFCKとフィードバッククロック信号FBCKとの位相比較を行う第2位相比較回路と、第2チャージポンプ回路60と、第1チャージポンプ回路40又は第2チャージポンプ回路60の出力に基づき制御される周波数のクロック信号CKを生成するクロック信号生成回路70と、クロック信号CKの分周クロック信号DVCKを出力する分周回路80と、分周クロック信号DVCKのパルス幅を伸長してフィードバッククロック信号FBCKとして出力するパルス幅伸長回路90を含む。【選択図】図1
Description
本発明は、回路装置及び発振器等に関する。
従来より、サンプリングPLLやサブサンプリングPLLなどの電圧サンプリング型のPLLが知られている。例えば非特許文献1には、サンプリングPLLにおいて、LSG (Linear Slope Generator)によってサンプリング対象のクロックのエッジを傾けることで、DTC(Digital-to-Time converter)を用いずに高精度なフラクショナルPLLを実現することが開示されている。
J. Tao et al, "A 2.2-GHz 3.2-mW DTC-Free Sampling ΔΣFractional-N PLL With -110-dBc/Hz In-Band Phase Noise and -246-dB FoM and -83-dBc Reference Spur", IEEE Transactions on Circuits and Systems-I: Regular Papers, vol. 66, No. 9, pp. 3317-3328, Sep. 2019
PLLにおいては、フィードバック経路にある分周回路からのフィードバッククロック信号のデューティー比が50%よりも小さくなることが多く、回路構成によっては狭パルス幅になってしまう。またクロック信号の周波数が高くなることにより、フィードバッククロック信号のパルス幅も小さくなってしまう。このため回路装置が適正に動作しないというおそれがあることが判明した。
本開示の一態様は、クロック信号のフィードバッククロック信号に基づきスロープ信号を生成するスロープ信号生成回路と、基準クロック信号に基づき前記スロープ信号をサンプリングするサンプリング回路を有し、前記サンプリング回路のサンプリング電圧を出力する第1位相比較回路と、前記基準クロック信号に基づいてパルス信号を出力するパルサー回路と、前記パルス信号のアクティブ期間において、前記サンプリング電圧に応じた電流を出力する第1チャージポンプ回路と、前記基準クロック信号と前記フィードバッククロック信号との位相比較に基づく位相差信号を出力する第2位相比較回路と、前記位相差信号に応じたチャージポンプ動作を行う第2チャージポンプ回路と、前記第1チャージポンプ回路の出力又は前記第2チャージポンプ回路の出力に基づき制御される周波数の前記クロック信号を生成するクロック信号生成回路と、前記クロック信号を分周して分周クロック信号を出力する分周回路と、前記分周クロック信号のパルス幅を伸長して前記フィードバッククロック信号として出力するパルス幅伸長回路と、を含む回路装置に関係する。
また本開示の他の態様は、上記に記載の回路装置と、前記基準クロック信号を生成するための振動子と、を含む発振器に関係する。
以下、本実施形態について説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲の記載内容を不当に限定するものではない。また本実施形態で説明される構成の全てが必須構成要件であるとは限らない。
1.回路装置
図1に本実施形態の回路装置20の構成例を示す。回路装置20は、スロープ信号生成回路22、パルサー回路24、第1位相比較回路30、第1チャージポンプ回路40、第2位相比較回路50、第2チャージポンプ回路60、クロック信号生成回路70、分周回路80、パルス幅伸長回路90を含む。この構成の回路装置20によりPLL(Phase Locked Loop)回路が実現される。回路装置20は、例えばIC(Integrated Circuit)と呼ばれる集積回路装置である。例えば回路装置20は、半導体プロセスにより製造されるICであり、半導体基板上に回路素子が形成された半導体チップである。
図1に本実施形態の回路装置20の構成例を示す。回路装置20は、スロープ信号生成回路22、パルサー回路24、第1位相比較回路30、第1チャージポンプ回路40、第2位相比較回路50、第2チャージポンプ回路60、クロック信号生成回路70、分周回路80、パルス幅伸長回路90を含む。この構成の回路装置20によりPLL(Phase Locked Loop)回路が実現される。回路装置20は、例えばIC(Integrated Circuit)と呼ばれる集積回路装置である。例えば回路装置20は、半導体プロセスにより製造されるICであり、半導体基板上に回路素子が形成された半導体チップである。
スロープ信号生成回路22は、クロック信号CKのフィードバッククロック信号FBCKに基づきスロープ信号SLPを生成する。スロープ信号生成回路22は例えばLSG (Linear Slope Generator)と呼ばれる回路である。フィードバッククロック信号FBCKは、クロック信号CKをフィードバックしたクロック信号である。例えば図1では、クロック信号生成回路70が生成するクロック信号CKを、分周回路80等を介して入力側にフィードバックしたクロック信号が、フィードバッククロック信号FBCKになっている。フィードバッククロック信号FBCKは矩形波のクロック信号であり、スロープ信号生成回路22は、この矩形波のフィードバッククロック信号FBCKから、線形の傾きを有するスロープ信号SLPを生成する。なおスロープ信号SLPの傾きは略線形であればよい。例えばスロープ信号生成回路22は、矩形波のフィードバッククロック信号FBCKのエッジを傾かせたスロープ信号SLPを生成する。
第1位相比較回路30は、基準クロック信号RFCKに基づきスロープ信号SLPをサンプリングするサンプリング回路32を有し、サンプリング回路32のサンプリング電圧VSAを出力する。例えばサンプリング回路32は、基準クロック信号RFCKのエッジのタイミングで、スロープ信号SLPをサンプリングする。そして第1位相比較回路30は、サンプリング回路32によりスロープ信号SLPをサンプリングした電圧を、サンプリング電圧VSAとして出力する。基準クロック信号RFCKは例えば後述するように振動子を振動させることなどにより生成されるクロック信号である。
パルサー回路24は、基準クロック信号RFCKに基づいてパルス信号PLSを出力する。例えばパルサー回路24は、基準クロック信号RFCKがアクティブになる毎にアクティブになる所定のパルス幅のパルス信号PLSを出力する。例えばパルサー回路24は、第1遅延回路と第2遅延回路を有する。そしてパルサー回路24は、基準クロック信号RFCKがアクティブになったタイミングから、第1遅延回路の第1遅延時間だけ遅れたタイミングでアクティブになり、第2遅延回路の第2遅延時間の間、アクティブとなるパルス信号PLSを出力する。なおアクティブのレベルは、ハイレベル又はローレベルの一方であり、非アクティブのレベルはハイレベル又はローレベルの他方である。
第1チャージポンプ回路40は、パルス信号PLSのアクティブ期間において、サンプリング電圧VSAに応じた電流を出力する。例えば第1チャージポンプ回路40は、パルス信号PLSがアクティブになるアクティブ期間において、サンプリング電圧VSAが大きくなるほど大きくなる電流を、チャージポンプ電流としてクロック信号生成回路70に出力する。これによりクロック信号生成回路70は、このチャージポンプ電流に応じた周波数のクロック信号CKを出力するようになる。
第2位相比較回路50は、基準クロック信号RFCKとフィードバッククロック信号FBCKとの位相比較に基づく位相差信号PDSを出力する。例えば第2位相比較回路50は、基準クロック信号RFCKとフィードバッククロック信号FBCKとの位相比較に基づいて、位相差信号PDSとして、アップ信号又はダウン信号を出力する。例えば第2位相比較回路50は、フィードバッククロック信号FBCKが基準クロック信号RFCKよりも位相が遅れている場合には、アップ信号を出力し、フィードバッククロック信号FBCKが基準クロック信号RFCKよりも位相が進んでいる場合には、ダウン信号を出力する。
第2チャージポンプ回路60は、第2位相比較回路50からの位相差信号PDSに応じたチャージポンプ動作を行う。例えば第2チャージポンプ回路60は、位相差信号PDSとしてアップ信号が入力された場合には、アップ信号のアクティブ期間において、高電位側電源から第2チャージポンプ回路60への出力ノードへと流れるアップ電流を、チャージポンプ電流として生成する。また第2チャージポンプ回路60は、位相差信号PDSとしてダウン信号が入力された場合には、ダウン信号のアクティブ期間において、第2チャージポンプ回路60の出力ノードから低電位側電源へと流れるダウン電流を、チャージポンプ電流として生成する。
クロック信号生成回路70は、第1チャージポンプ回路40の出力又は第2チャージポンプ回路60の出力に基づき制御される周波数のクロック信号CKを生成する。例えばクロック信号生成回路70は、第1チャージポンプ回路40のチャージポンプ電流や、第2チャージポンプ回路60のチャージポンプ電流に基づき制御される周波数のクロック信号CKを生成する。例えば回路装置20は、第1位相比較回路30と第1チャージポンプ回路40とクロック信号生成回路70を含む第1フィードバックループでの第1同期動作と、第2位相比較回路50と第2チャージポンプ回路60とクロック信号生成回路70を含む第2フィードバックループでの第2同期動作を行う。第1同期動作は例えばSPLL(Sampling Phase Locked Loop)動作であり、第2同期動作は例えばFLL(Frequency Locked Loop)動作である。そしてクロック信号生成回路70は、第1同期動作のときには第1チャージポンプ回路40のチャージポンプ電流に基づき制御される周波数のクロック信号CKを生成し、第2同期動作のときには第2チャージポンプ回路60のチャージポンプ電流に基づき制御される周波数のクロック信号CKを生成する。
分周回路80は、クロック信号CKを分周して分周クロック信号DVCKを出力する。例えばクロック信号生成回路70は、基準クロック信号RFCKの周波数を逓倍した周波数のクロック信号CKを生成する。この場合の逓倍数は分周回路80の分周比により設定される。そして分周回路80は、例えば分周比が小数を含む小数点分周が可能な小数点分周回路であり、例えば分周回路80としては位相補間型の分周回路などを用いることができる。これによりフラクショナル-N型のPLL回路の実現が可能になる。なお分周回路80は分周比が整数である整数分周回路であってもよい。
パルス幅伸長回路90は、分周クロック信号DVCKのパルス幅を伸長してフィードバッククロック信号FBCKとして出力する。例えば分周クロック信号DVCKのクロックのパルス幅をPW1とし、フィードバッククロック信号FBCKのクロックのパルス幅をPW2とした場合に、パルス幅伸長回路90は、PW2>PW1が成り立つようにパルス幅が伸長されたフィードバッククロック信号FBCKを出力する。例えば分周クロック信号DVCKのデューティー比をDTY1とし、フィードバッククロック信号FBCKのデューティー比をDTY2とした場合に、パルス幅伸長回路90は、DTY2>DTY1が成り立つフィードバッククロック信号FBCKを出力する。そしてこのフィードバッククロック信号FBCKが、スロープ信号生成回路22等に入力される。
図2に本実施形態の回路装置20の詳細な構成例を示す。なお回路装置20は図2の構成には限定されず、これらの一部の構成要素を省略したり、他の構成要素を追加したり、一部の構成要素を他の構成要素に置き換えるなどの種々の変形実施が可能である。
図2では第1位相比較回路30のサンプリング回路32は、サンプリング用のスイッチ回路SSと、サンプリング用のキャパシターCSを含む。サンプリング用のスイッチ回路SSは、スロープ信号生成回路22の出力ノードとサンプリング電圧VSAのサンプリングノードとの間に設けられ、基準クロック信号RFCKがアクティブのときにオンになる。サンプリング用のキャパシターCSは、サンプリング電圧VSAのサンプリングノードに一端が接続される。このようなサンプリング用のスイッチ回路SS、キャパシターCSを設けることで、基準クロック信号RFCKがアクティブから非アクティブになったタイミングでのスロープ信号SLPの電圧を、サンプリング電圧VSAとしてサンプリングできるようになる。
第1チャージポンプ回路40は、アンプ回路APとチャージポンプ用のスイッチ回路SPを含む。アンプ回路APは、トランスコンダクターとも呼ばれ、例えばトランスコンダクタンスGmに応じた電圧電流変換を行う回路である。例えばアンプ回路APは、サンプリング電圧VSAを電流に変換して出力する。例えばアンプ回路APは、サンプリング電圧VSAが高いほど大きくなる電流を出力する。チャージポンプ用のスイッチ回路SPは、パルサー回路24からのパルス幅TPのパルス信号PLSがアクティブになるアクティブ期間においてオンになる。これにより第1チャージポンプ回路40は、パルス信号PLSのアクティブ期間において、サンプリング電圧VSAに応じた電流をクロック信号生成回路70に出力するようになる。
第2位相比較回路50は、デッドゾーン検出回路52とイネーブル信号生成回路54を含む。デッドゾーン検出回路52は、基準クロック信号RFCKとフィードバッククロック信号FBCKとの位相差がデッドゾーンに入ったか否かを検出する。位相差は位相誤差と言うこともできる。デッドゾーンは不感帯のことであり、例えば、基準クロック信号RFCKとフィードバッククロック信号FBCKとの位相差が閾値以下となる範囲である。デッドゾーン検出回路52は、このようなデッドゾーンの生成処理を行い、基準クロック信号RFCKとフィードバッククロック信号FBCKとの位相差がデッドゾーンに入ったか否かを判定する処理を行う。デッドゾーンは、デッドゾーン検出回路52に設けられる遅延回路の遅延時間に基づき生成される。
イネーブル信号生成回路54は、パルサー回路24のイネーブル信号ENSPや第2チャージポンプ回路60のイネーブル信号ENCPを生成する。イネーブル信号ENSPは、例えば第1イネーブル信号であり、例えばパルサー回路24の動作のイネーブル又はディスエーブル等を行うための信号である。イネーブル信号ENCPは、例えば第2イネーブル信号であり、例えば第2チャージポンプ回路60の動作のイネーブル又はディスエーブル等を行うための信号である。イネーブル信号生成回路54は、デッドゾーンの検出結果に基づいて、イネーブル信号ENSPやイネーブル信号ENCPを生成する。イネーブル信号生成回路54は、イネーブル信号ENSPの反転信号をイネーブル信号ENCPとして生成してもよいし、イネーブル信号ENSPとイネーブル信号ENCPを別個に生成してもよい。
例えばイネーブル信号生成回路54は、基準クロック信号RFCKとフィードバッククロック信号FBCKとの位相差がデッドゾーンに入ったデッドゾーン期間において、アクティブになるイネーブル信号ENSPを生成する。このようにすれば、デッドゾーン期間においてイネーブル信号ENSPがアクティブになることで、パルサー回路24がパルス信号PLSを出力するようになる。これにより第1位相比較回路30と第1チャージポンプ回路40とクロック信号生成回路70を含む第1フィードバックループでの第1同期動作であるSPLL動作が可能になる。
クロック信号生成回路70は、ループフィルター回路72と電圧制御発振回路74とバッファー回路76を含む。ループフィルター回路72は、電圧制御発振回路74の発振周波数を制御する制御電圧を生成する。例えばループフィルター回路72は、第1チャージポンプ回路40からのチャージポンプ電流又は第2チャージポンプ回路60からのチャージポンプ電流を積分して平滑化することで、制御電圧を生成する。ループフィルター回路72は例えばキャパシターと抵抗により構成されるRCのローパスフィルターなどにより実現できる。VCOである電圧制御発振回路74は、ループフィルター回路72からの制御電圧により発振周波数が制御される発振信号を生成する。電圧制御発振回路74は、インダクターとキャパシターを用いたLC型の発振回路により実現してもよいし、複数のインバーター回路をループ状に接続したループ型の発振回路により実現してもよい。そしてバッファー回路76は、電圧制御発振回路74で生成された発振信号をバッファリングしてクロック信号CKを生成する。例えば電圧制御発振回路74が差動の発振信号を生成した場合に、バッファー回路76は、この差動の正弦波の発振信号に基づいて、矩形波のクロック信号CKを生成して出力する。そして出力回路78は、クロック信号CKをバッファリングして出力クロック信号CKQを外部に出力する。例えば出力回路78は、シングルエンドのCMOSの信号形式で出力クロック信号CKQを出力する。或いは出力回路78が、LVDS(Low Voltage Differential Signaling)、PECL(Positive Emitter Coupled Logic)などの信号形式で出力クロック信号CKQを出力するようにしてもよい。
このように本実施形態ではクロック信号生成回路70は、第1チャージポンプ回路40の出力又は第2チャージポンプ回路60の出力に基づいて発振周波数の制御電圧を出力するループフィルター回路72と、制御電圧に応じた発振周波数のクロック信号CKを生成する電圧制御発振回路74を含む。このようにすれば、第1位相比較回路30と第1チャージポンプ回路40とクロック信号生成回路70を含む第1フィードバックループでの第1同期動作の際には、ループフィルター回路72が、第1チャージポンプ回路40の出力に基づいて制御電圧を出力し、当該制御電圧に応じた発振周波数のクロック信号CKを電圧制御発振回路74が生成するようになる。また第2位相比較回路50と第2チャージポンプ回路60とクロック信号生成回路70を含む第2フィードバックループでの第2同期動作の際には、ループフィルター回路72が、第2チャージポンプ回路60の出力に基づいて制御電圧を出力し、当該制御電圧に応じた発振周波数のクロック信号CKを電圧制御発振回路74が生成するようになる。これにより第1フィードバックループでの第1同期動作によるクロック信号CKの生成と、第2フィードバックループでの第2同期動作によるクロック信号CKの生成が可能になる。
図3は本実施形態の回路装置20の動作を説明する信号波形図である。例えば電源投入後等においては、回路装置20は、第2フィードバックループでの第2同期動作であるFLL動作を行う。例えば第2位相比較回路50が基準クロック信号RFCKとフィードバッククロック信号FBCKとの位相比較に基づき出力するアップ信号UPとダウン信号DNとにより、第2チャージポンプ回路60がチャージポンプ動作を行う。そして、このチャージポンプ動作によるチャージポンプ電流がループフィルター回路72に入力されることで、制御電圧が生成され、この制御電圧に基づく電圧制御発振回路74の発振動作によりクロック信号CKが生成される。このクロック信号CKは、分周回路80等を介して第2位相比較回路50に対して、フィードバッククロック信号FBCKとしてフィードバックされる。これにより図3のA1に示すように、フィードバッククロック信号FBCKの周波数を基準クロック信号RFCKの周波数に近づけるFLL動作が行われる。なお分周回路80には、クロック信号CKを目標周波数に設定するための分周比設定コードが設定される。例えばクロック信号CKの周波数をfckとし、基準クロック信号RFCKの周波数をfrfとし、分周比をDVとした場合に、fck=DV×frfの関係が成り立つ。
具体的にはデッドゾーン検出回路52が、基準クロック信号RFCKとフィードバッククロック信号FBCKとの位相差がデッドゾーンに入ったか否かを検出し、位相差がデッドゾーンに入っていない非デッドゾーン期間においては、第2チャージポンプ回路60がチャージポンプ動作を行うことで、第2フィードバックループでのFLL動作が行われるようになる。なお図3のA2、A3では、SPLL動作のイネーブル信号ENSPが過渡的にアクティブになっているが、これは、基準クロック信号RFCKとフィードバッククロック信号FBCKが異なる周波数であっても、位相が360度回っている場合には、同じ周波数であると判断されるからである。
そして、このようなFLL動作により、A4に示すようにフィードバッククロック信号FBCKの周波数が基準クロック信号RFCKの周波数に近づいて、位相差がデッドゾーンに入ったことが検出される。このように位相差がデッドゾーンに入ったデッドゾーン期間においては、イネーブル信号ENSPがアクティブになる。これにより、パルサー回路24がパルス信号PLSを出力し、第1チャージポンプ回路40が、パルス信号PLSのアクティブ期間において、第1位相比較回路30のサンプリング回路32のサンプリング電圧VSAに応じたチャージポンプ電流を出力するようになる。そして、このチャージポンプ電流がループフィルター回路72に入力されることで、制御電圧が生成され、この制御電圧に基づく電圧制御発振回路74の発振動作によりクロック信号CKが生成される。これにより図3のA5に示すように、基準クロック信号RFCKとフィードバッククロック信号FBCKの位相を更に近づけるSPLLによる位相同期が行われるようになる。
このように図3では、基準クロック信号RFCKとフィードバッククロック信号FBCKの位相差がデッドゾーンに入るまでは、第2フィードバックループによるFLL動作が行われる。そして位相差がデッドゾーンに入ったことが検出されると、第2フィードバックループによるFLL動作から、第1フィードバックループによるSPLL動作に切り替わる。この第1フィードバックループでのSPLL動作によれば、第2フィードバックループでのFLL動作に比べて、PLLでのゲインを大きくすることが可能になり、PLLのインバンドノイズを低減できるようになる。即ちSPLL動作でのゲインは、スロープ信号SLPの傾きや、アンプ回路APのトランスコンダクタンスGmや、パルス信号PLSのアクティブ期間の長さなどにより設定される。例えばスロープ信号SLPの傾きを大きくしたり、トランスコンダクタンスGmを大きくしたり、パルス信号PLSのアクティブ期間を長くすることで、ゲインを高く設定することができる。これにより、例えば基準クロック信号RFCKとフィードバッククロック信号FBCKの位相差が増加した場合にも、高いPLLのゲインにより位相差を短時間で近づけることができ、FLL動作に比べて、インバンドノイズを低減することが可能になる。そしてインバンドノイズが低減されることで、クロック信号CKの位相ノイズを低減でき、ノイズ特性が良いクロック信号CKを生成できるようになる。
以上のように本実施形態によれば、第1位相比較回路30、第1チャージポンプ回路40、クロック信号生成回路70を含む第1フィードバックループでの第1同期動作や、第2位相比較回路50、第2チャージポンプ回路60、クロック信号生成回路70を含む第2フィードバックループでの第2同期動作を行うPLL回路を実現できる。この場合に本実施形態では、パルス幅伸長回路90が、分周回路80からの分周クロック信号DVCKのパルス幅を伸長してフィードバッククロック信号FBCKとして出力する。これにより、分周クロック信号DVCKが、例えばデューティー比が50%よりも小さいクロック信号であった場合にも、分周クロック信号DVCKのパルス幅を伸長したフィードバッククロック信号FBCKを、スロープ信号生成回路22に入力できるようになる。従って、スロープ信号生成回路22が、パルス幅が伸長されたフィードバッククロック信号FBCKに基づいてスロープ信号SLPを生成し、第1位相比較回路30のサンプリング回路32が、このスロープ信号SLPをサンプリングしたサンプリング電圧VSAを第1チャージポンプ回路40に出力できるようになる。これにより、分周クロック信号DVCKが狭パルス幅のクロック信号である場合にも、電圧変動が抑制されたサンプリング電圧VSAを第1チャージポンプ回路40に出力して、第1チャージポンプ回路40の適正なチャージポンプ動作を実現できるようになる。
即ち分周回路80が出力する分周クロック信号DVCKは、デューティー比が50%よりも小さい狭パルスの信号になる場合が多く、回路構成によっては、パルス幅が非常に小さなクロック信号になってしまう。またクロック信号生成回路70の電圧制御発振回路74の発振周波数が高くなると、分周クロック信号DVCKのパルス幅は更に小さくなってしまう。例えば本実施形態の回路装置20によるPLL回路では、振動子等を用いて生成された例えば100~200MHz程度の周波数の基準クロック信号RFCKに基づいて、例えば数GHz程度のクロック信号CKを生成する。この場合に分周クロック信号DVCKのパルス幅は、分周回路80の回路構成によっては、クロック信号CKの数クロック分のパルス幅になる場合があり、例えば分周クロック信号DVCKが数nsの狭パルス幅のクロック信号になってしまう場合がある。このような狭パルス幅の分周クロック信号DVCKに基づきスロープ信号生成回路22がスロープ信号SLPを生成し、サンプリング回路32がスロープ信号SLPのサンプリング動作を行うと、サンプリング電圧VSAが変動するなどの問題が発生する。この場合にも本実施形態では、パルス幅伸長回路90が、分周回路80からの分周クロック信号DVCKのパルス幅を伸長し、パルス幅が伸長されたフィードバッククロック信号FBCKがスロープ信号生成回路22に入力されるため、上記のような問題の発生を防止することが可能になる。
2.パルス幅の伸長
次に本実施形態のパルス幅の伸長手法の詳細について説明する。図4にスロープ信号生成回路22、第1位相比較回路30の構成例を示す。
次に本実施形態のパルス幅の伸長手法の詳細について説明する。図4にスロープ信号生成回路22、第1位相比較回路30の構成例を示す。
図4に示すようにスロープ信号生成回路22は、高電位側電源ノードと低電位側電源ノードとの間に直列に設けられるP型のトランジスターTA1、可変抵抗RA及びN型のトランジスターTA2を含む。高電位側電源ノードは例えばVDDノードであり、低電位側電源ノードはGNDノードである。例えばP型のトランジスターTA1は、ソースがVDDノードに接続され、ドレインが可変抵抗RAの一端に接続される。可変抵抗RAの他端は、スロープ信号生成回路22の出力ノードNQ及びN型のトランジスターTA2のドレインに接続される。N型のトランジスターのソースはGNDノードに接続される。ここで、GNDの電圧はグランド電圧であり、GNDはVSSと呼ぶこともできる。また高電位側電源であるVDDの電圧は、回路装置20を構成する各回路に応じた異なった電圧とすることができる。例えば回路装置20に設けられた電源回路のレギュレーターが、外部からのVCCの電源電圧をレギュレートした電圧が、VDDとして各回路に供給される。
そしてP型のトランジスターTA1及びN型のトランジスターTA2のゲートはフィードバッククロック信号FBCKに基づき制御される。例えば図4では、フィードバッククロック信号FBCKを反転した負論理のフィードバッククロック信号XFBCKが、トランジスターTA1、TA2のゲートに入力されている。またサンプリング回路32は、サンプリング用のスイッチ回路SSとキャパシターCSを含む。サンプリング用のスイッチ回路SSは、スロープ信号生成回路22の出力ノードNQとサンプリング電圧VSAのサンプリングノードNSとの間に設けられ、基準クロック信号RFCKに基づきオン又はオフになる。例えば図4では、サンプリング用のスイッチ回路SSは、N型のトランジスターTA3により構成され、このN型のトランジスターTA3のゲートに対して、基準クロック信号RFCKを反転した負論理の基準クロック信号XRFCKが入力される。従って、基準クロック信号RFCKが非アクティブレベルであるローレベルのときに、スイッチ回路SSがオンになり、基準クロック信号RFCKがアクティブレベルであるハイレベルのときに、スイッチ回路SSがオフになる。またサンプリング用のキャパシターCSは、サンプリングノードNSに一端が接続される。サンプリング用のキャパシターCSの他端は、例えばGNDノードなどの所定電位のノードに接続される。
図5は、スロープ信号生成回路22、第1位相比較回路30の動作を説明する信号波形図である。図5のタイミングt1でフィードバッククロック信号FBCKがローレベルからハイレベルになると、スロープ信号生成回路22のP型のトランジスターTA1がオンになり、VDDノードからトランジスターTA1、可変抵抗RAを介して、スロープ信号生成回路22の出力ノードNQに対して電流が流れる。このとき、基準クロック信号RFCKがローレベルであるため、N型のトランジスターTA3により構成されるスイッチ回路SSはオンになり、出力ノードNQからの電流がサンプリング用のキャパシターCSに流れて充電されることで、出力ノードNQの出力電圧VQが所定の傾きで上昇する。これにより所定の傾きで電圧が変化するスロープ信号SLPが生成される。このとき、出力電圧VQの時間経過に対する傾きであるスロープ信号SLPの傾きは、可変抵抗RAの抵抗値やキャパシターCSの容量により設定できる。例えば可変抵抗RAの抵抗値を小さくしたり、キャパシターCSの容量を小さくすれば、傾きは大きくなり、抵抗値を大きくしたり、容量を大きくすれば、傾きは小さくなる。スロープ信号SLPの傾きを大きくすることで、PLLのループのゲインが高くなって、インバンドノイズを低減できるようになる。
図5のタイミングt2で基準クロック信号RFCKがローレベルからハイレベルになると、N型のトランジスターTA3により構成されるスイッチ回路SSがオフになる。そしてスイッチ回路SSがオフになるタイミングt2での出力電圧VQが、サンプリング電圧VSAとしてサンプリングノードNSにサンプリングされるようになる。この場合に、フィードバッククロック信号FBCKがハイレベルになるタイミングt1に対して、基準クロック信号RFCKがハイレベルになるタイミングt2が遅れるほど、サンプリング電圧VSAは大きくなる。従って、サンプリング電圧VSAは、基準クロック信号RFCKとフィードバッククロック信号FBCKの位相差に応じた電圧になり、位相差が大きいほどサンプリング電圧VSAは大きくなる。なお、スイッチ回路SSがオフになることで、サンプリング用のキャパシターCSが出力ノードNQと非接続になるため、出力電圧VQの傾きは大きくなる。そしてパルス信号PLSがハイレベルとなる期間において、図2のサンプリング用のスイッチ回路SPがオンになる。これにより、アンプ回路APがサンプリング電圧VSAを電圧電流変換することで生成されたチャージポンプ電流が、ループフィルター回路72に入力されて、制御電圧が生成され、電圧制御発振回路74によりクロック信号CKの周波数が制御される。そしてタイミングt3でフィードバッククロック信号FBCKがローレベルになると、スロープ信号生成回路22のP型のトランジスターTA1がオフになり、N型のトランジスターTA2がオンになることで、出力電圧VQが低下する。またタイミングt4で基準クロック信号RFCKがローレベルになることで、スイッチ回路SSがオンになり、サンプリング電圧VSAは出力電圧VQと略同一電位になる。
このように図4の構成によれば、スロープ信号生成回路22が、所定の傾きを有するスロープ信号SLPを生成し、このスロープ信号SLPを基準クロック信号RFCKに基づきサンプリングすることで、サンプリング電圧VSAを出力できるようになる。そして、このサンプリング電圧VSAは、基準クロック信号RFCKとフィードバッククロック信号FBCKの位相差に応じた電圧になるため、サンプリング電圧VSAに基づくチャージポンプ電流を第1チャージポンプ回路40が出力することで、位相差に応じたチャージポンプ電流をクロック信号生成回路70に出力できるようになる。
そして図5では、フィードバッククロック信号FBCKのパルス幅が十分に大きいため、電圧変動が抑制された適正なサンプリング電圧VSAを生成できる。しかしながら、図6に示すようにフィードバッククロック信号FBCKのパルス幅が小さい場合には、サンプリング電圧VSAが変動してしまい、適正なサンプリング電圧VSAを生成できないという問題が発生する。
例えば図6のタイミングt1でフィードバッククロック信号FBCKがハイレベルになり、出力電圧VQが所定の傾きで上昇する。そしてタイミングt2で基準クロック信号RFCKがハイレベルになることで、スイッチ回路SSがオフになり、タイミングt2での出力電圧VQがサンプリング電圧VSAとしてサンプリングされる。このとき、図6のフィードバッククロック信号FBCKは、図5に比べて狭パルス幅であるため、図5よりも早いタイミングt3でローレベルになる。即ちパルス信号PLSが入力される前に、フィードバッククロック信号FBCKがローレベルになっている。このようにフィードバッククロック信号FBCKがローレベルになることで、スロープ信号生成回路22のN型のトランジスターTA2がオンになり、図6のB1に示すように出力電圧VQが低下する。このとき、基準クロック信号RFCKがハイレベルであり、スイッチ回路SSがオフであるため、理想的にはサンプリングノードNSのサンプリング電圧VSAは変化しないはずである。しかしながら、出力ノードNQの電荷が、オンになったトランジスターTA2によりディスチャージされると、クロックフィードスルーや寄生容量の影響で、B2に示すようにサンプリング電圧VSAが変動してしまう。前述のようにPLLのループのゲインを高くするために、サンプリング用のキャパシターCSの容量は、例えば100fF~200fFというように小さな容量に設定されている。このためクロックフィードスルーや寄生容量の影響で、B2に示すようにサンプリング電圧VSAが容易に変動してしまう。そして、B2に示すようにサンプリング電圧VSAが変動した後に、パルス信号PLSがハイレベルになってアクティブになるため、変動後のサンプリング電圧VSAに基づくチャージポンプ電流が、第1チャージポンプ回路40から出力される事態が発生してしまう。またこの場合のサンプリング電圧VSAの変動幅は、寄生容量等に応じて変化するため、チャージポンプ電流も寄生容量等に応じて変化する。従って、誤ったチャージポンプ電流に基づく制御電圧により、クロック信号CKの周波数が制御されてしまい、PLLの適正な動作を実現できなくなる。
この点、本実施形態では、図1、図2に示すように例えば分周回路80の後段にパルス幅伸長回路90を設け、このパルス幅伸長回路90が、分周クロック信号DVCKのパルス幅を伸長したフィードバッククロック信号FBCKを出力するようにしている。これにより図5に示すように、フィードバッククロック信号FBCKのパルス幅が図6に比べて広くなり、パルス信号PLSがアクティブになる期間において、適正なサンプリング電圧VSAがサンプリングノードNSに出力されるようになる。従って、図6のようにクロックフィードスルー等により変動したサンプリング電圧VSAによりチャージポンプ電流が生成されて、PLLが適正に動作しなくなる事態を防止できるようになる。
例えば図7は本実施形態のパルス幅の伸長手法を説明する図である。本実施形態ではパルス幅伸長回路90は、パルス信号PLSがアクティブから非アクティブになるタイミング以降に、フィードバッククロック信号FBCKがアクティブから非アクティブになるように、フィードバッククロック信号FBCKのパルス幅を伸長する。ここではアクティブレベルがハイレベルであり、非アクティブレベルがローレベルであるとして説明する。
例えば図7ではタイミングt1で、フィードバッククロック信号FBCKがハイレベルになった後、タイミングt2で、パルス信号PLSがハイレベルからローレベルになっている。この場合に本実施形態では、パルス信号PLSがローレベルになるタイミングt2以降のタイミングt3で、フィードバッククロック信号FBCKが、ハイレベルからローレベルになるように、フィードバッククロック信号FBCKのパルス幅を伸長している。このようにすれば、パルス信号PLSのアクティブ期間においては、フィードバッククロック信号FBCKの電圧レベルが変化しないようになるため、フィードバッククロック信号FBCKの電圧レベルの変化に起因する図6のB2に示すようなサンプリング電圧VSAの変動の発生を抑制できる。従って、パルス信号PLSのアクティブ期間において、適正なサンプリング電圧VSAが第1チャージポンプ回路40に出力されて、適正なサンプリング電圧VSAに基づく適正なチャージポンプ電流が、クロック信号生成回路70に出力されるようになる。従って、図6のようにサンプリング電圧VSAの変動によりPLLが適正に動作しなくなる事態の発生を防止できるようになる。
3.パルス幅伸長回路
図8はパルス幅伸長回路90の構成例を示す図であり、図9はパルス幅伸長回路90の遅延回路92の構成例を示す図である。また図10はパルス幅伸長回路90の動作を説明する信号波形図である。図8ではパルス幅伸長回路90は、遅延回路92と論理和回路93を含む。遅延回路92は、入力信号INを遅延させた信号DLQを出力し、論理和回路93は、入力信号INと信号DLQの論理和の信号を、出力信号OUTとして出力する。また図9に示すように遅延回路92は、例えば複数のインバーター回路IVD1、IVD2と、各インバーター回路の出力ノードに設けられるキャパシターCD1、CD2を含む。キャパシターCD1、CD2は例えば容量が可変のキャパシターであり、容量の調整により遅延回路92の遅延時間が調整される。
図8はパルス幅伸長回路90の構成例を示す図であり、図9はパルス幅伸長回路90の遅延回路92の構成例を示す図である。また図10はパルス幅伸長回路90の動作を説明する信号波形図である。図8ではパルス幅伸長回路90は、遅延回路92と論理和回路93を含む。遅延回路92は、入力信号INを遅延させた信号DLQを出力し、論理和回路93は、入力信号INと信号DLQの論理和の信号を、出力信号OUTとして出力する。また図9に示すように遅延回路92は、例えば複数のインバーター回路IVD1、IVD2と、各インバーター回路の出力ノードに設けられるキャパシターCD1、CD2を含む。キャパシターCD1、CD2は例えば容量が可変のキャパシターであり、容量の調整により遅延回路92の遅延時間が調整される。
図10に示すように、入力信号INと、入力信号INを遅延させた信号DLQの論理和の信号を生成することで、入力信号INのパルス幅を伸長した出力信号OUTを出力できるようになる。従って、パルス幅伸長回路90に、入力信号INとして分周クロック信号DVCKを入力することで、分周クロック信号DVCKのパルス幅を伸長したフィードバッククロック信号FBCKを、出力信号OUTとして出力できるようになる。
ここで図8の構成例では、遅延回路92の遅延時間の分だけしか、入力信号INのパルス幅を伸長できないという問題がある。一方、遅延回路92の遅延時間を、入力信号INのパルス幅よりも長くすると、適正な信号波形の出力信号OUTを出力できなくなるという問題がある。
そこで図11の具体的な構成例では、パルス幅伸長回路90は、1段目の伸長ユニット94-1に対して分周クロック信号DVCKが入力され、各伸長ユニットが、前段の伸長ユニットから入力される信号のパルス幅を伸長して後段の伸長ユニットに出力する複数の伸長ユニット94-1~94-3を含む。またパルス幅伸長回路90は、複数の伸長ユニット94-1~94-3から出力される信号DLQ1、DLQ2、DLQ3の論理和の信号をフィードバッククロック信号FBCKとして出力する論理和回路95を含む。
例えば図11では、1段目の伸長ユニット94-1は、分周クロック信号DVCKが入力されて、分周クロック信号DVCKのパルス幅を伸長した信号DLQ1を後段の伸長ユニット94-2に出力する。2段目の伸長ユニット94-2は、前段の伸長ユニット94-1から入力される信号DLQ1のパルス幅を伸長した信号DLQ2を、後段の伸長ユニット94-3に出力する。3段目の伸長ユニット94-3は、前段の伸長ユニット94-2から入力される信号DLQ2のパルス幅を伸長した信号DLQ3を出力する。そして論理和回路95は、伸長ユニット94-1、94-2、94-3から出力される信号DLQ1、DLQ2、DLQ3と分周クロック信号DVCKの論理和の信号を、フィードバッククロック信号FBCKとして出力している。なお伸長ユニット94-1、94-2、94-3としては、例えば図8に示すような構成の回路を採用できる。また図11では、伸長ユニットの段数が3段の場合の構成例を示しているが、伸長ユニットの段数はこれに限定されず、2段や4段以上であってもよい。
図12は図11のパルス幅伸長回路90の動作を説明する信号波形図である。伸長ユニット94-1が出力する信号DLQ1は、分周クロック信号DVCKのパルス幅を伸長した信号になっており、伸長ユニット94-2が出力する信号DLQ2は、前段の伸長ユニット94-1から入力された信号DLQ1のパルス幅を伸長した信号になっている。また伸長ユニット94-3が出力する信号DLQ3は、前段の伸長ユニット94-2から入力された信号DLQ2のパルス幅を伸長した信号になっている。そして論理和回路95は、これらの信号DLQ1、DLQ2、DLQ3や分周クロック信号DVCKの論理和の信号を、フィードバッククロック信号FBCKとして出力する。
図11の構成のパルス幅伸長回路90によれば、複数の伸長ユニット94-1、94-2、94-3の各伸長回路が、入力される信号のパルス幅を伸長させた信号DLQ1、DLQ2、DLQ3を出力する。例えば各伸長回路は、各伸長回路に設けられる遅延回路の遅延時間の分だけパルス幅を伸長させた信号を出力する。そして、これらの信号DLQ1、DLQ2、DLQ3や分周クロック信号DVCKの論理和の信号を生成することで、各伸長回路での伸長幅の総和に対応する伸長幅でパルス幅を伸長した、フィードバッククロック信号FBCKを出力できるようになる。従って、分周クロック信号DVCKのパルス幅が非常に小さい場合にも、各伸長回路において少しずつパルス幅を伸長することで、例えば分周クロック信号DVCKのパルス幅の数倍のパルス幅のフィードバッククロック信号FBCKを生成できるようになる。
次にパルス幅伸長回路90の他の構成例について説明する。この他の構成例では、図13に示すように、パルス幅伸長回路90に対して、パルサー回路24からのパルス信号PLSが入力される。また図13では、パルス幅伸長回路90に対してイネーブル信号ENSPも入力されている。
図14はパルス幅伸長回路90の他の構成例を示す図であり、図15はその動作を説明する信号波形図である。図14のパルス幅伸長回路90は論理回路96を含む。そして論理回路96は、分周クロック信号DVCKとパルス信号PLSが入力され、分周クロック信号DVCKがアクティブになったタイミングでアクティブになり、パルス信号PLSがアクティブから非アクティブになったタイミングで非アクティブになるフィードバッククロック信号FBCKを出力する。このような構成のパルス幅伸長回路90によれば、論理回路96に対してパルス信号PLSを入力することで、図7で説明したように、パルス信号PLSがアクティブから非アクティブになるタイミング以降に、フィードバッククロック信号FBCKがアクティブから非アクティブになるように、パルス幅を伸長できるようになる。このようにすれば、パルス信号PLSのアクティブ期間においては、フィードバッククロック信号FBCKの電圧レベルが変化しないようになるため、フィードバッククロック信号FBCKの電圧レベルの変化に起因するサンプリング電圧VSAの変動の発生を抑制できる。従って、パルス信号PLSのアクティブ期間において、適正なサンプリング電圧VSAが第1チャージポンプ回路40に出力されて、適正なサンプリング電圧VSAに基づく適正なチャージポンプ電流が、クロック信号生成回路70に出力されるようになり、PLLを適正に動作させることが可能になる。
具体的には図14のパルス幅伸長回路90は、論理回路96として、フリップフロップ回路FF1、FF2と、NAND回路NA1と、NOR回路NOR1と、OR回路OR1と、インバーター回路IV1を含む。またパルス幅伸長回路90は、遅延回路97、98を含むことができる。
図15に示すように、タイミングt1で分周クロック信号DVCKがハイレベルになると、D端子にVDDが入力されたフリップフロップ回路FF1のQ端子の電圧VAがハイレベルになる。またフリップフロップ回路FF2のXQ端子の電圧VBはハイレベルになっているため、NAND回路NA1からのローレベルの信号が、NOR回路NOR1の一方の端子に入力される。また図3に示すSPLL動作時には、イネーブル信号ENSPがハイレベルになっているため、インバーター回路IV1によりローレベルの信号がNOR回路NOR1の他方の端子に入力される。これにより、NOR回路NOR1の出力がハイレベルになるため、図15のタイミングt1において、フィードバッククロック信号FBCKはハイレベルになる。次にパルス信号PLSが入力されて、タイミングt2においてパルス信号PLSがローレベルになると、D端子にVDDが入力されたフリップフロップ回路FF2のXQ端子の電圧がローレベルになる。これによりNAND回路NA1の出力がハイレベルになり、NOR回路NORの出力がローレベルになることで、タイミングt2において、フィードバッククロック信号FBCKはハイレベルからローレベルに変化する。その後、タイミングt3において、遅延回路97が出力するイネーブル信号ENFF1がローレベルになることで、フリップフロップ回路FF1がリセットされる。またタイミングt4において、遅延回路98が出力するイネーブル信号ENFF2がローレベルになることで、フリップフロップ回路FF2がリセットされる。
図14の構成のパルス幅伸長回路90によれば、タイミングt2でパルス信号PLSがハイレベルからローレベルにタイミングt2以降に、フィードバッククロック信号FBCKがハイレベルからローレベルになる。実際には論理回路96の回路素子での信号の遅延時間により、パルス信号PLSがローレベルになってから、遅延時間の分だけ遅れて、フィードバッククロック信号FBCKがローレベルになる。これにより図7で説明したように、パルス信号PLSのハイレベル期間であるアクティブ期間においては、フィードバッククロック信号FBCKの信号レベルは変化しないようになる。従って、図6のB2に示すようなサンプリング電圧VSAの変動の発生が抑制されるようになり、正確なサンプリング電圧VSAに基づくチャージポンプ電流により、PLLを適正に動作させることが可能になる。
また図14では、パルス幅伸長回路90は、基準クロック信号RFCKとフィードバッククロック信号FBCKの位相差がデッドゾーンに入っていない非デッドゾーン期間では、分周クロック信号DVCKをフィードバッククロック信号FBCKとして出力する。一方、パルス幅伸長回路90は、位相差がデッドゾーンに入ったデッドゾーン期間では、分周クロック信号DVCKのパルス幅を伸長してフィードバッククロック信号FBCKとして出力する。例えば図3に示すように、FLL動作が行われる非デッドゾーン期間においては、図14のイネーブル信号ENSPがローレベルになることで、NOR回路NOR1の出力がローレベルになる。従って、この場合には分周クロック信号DVCKが、OR回路OR1を介して、そのままフィードバッククロック信号FBCKとして、パルス幅伸長回路90から出力されて、第2位相比較回路50に入力されるようになる。一方、SPLL動作が行われるデッドゾーン期間においては、イネーブル信号ENSPがハイレベルになることで、NOR回路NOR1の一方の端子には、ローレベルの信号が入力されるようになる。従って、この場合には、図15に示すように分周クロック信号DVCKのパルス幅を伸長した信号が、フィードバッククロック信号FBCKとしてパルス幅伸長回路90から出力されるようになる。
このようにすれば、非デッドゾーン期間においては、基準クロック信号RFCKと、パルス幅が伸長されていないフィードバッククロック信号FBCKとの位相比較が、第2位相比較回路50において行われるようになる。一方、デッドゾーン期間においては、パルス幅が伸長されたフィードバッククロック信号FBCKがスロープ信号生成回路22に入力されて、第1位相比較回路30でのサンプリング電圧VSAが生成されるようになる。従って、フィードバッククロック信号FBCKの電圧レベルの変化に起因するサンプリング電圧VSAの変動の発生を抑制して、第1チャージポンプ回路40での適正なチャージポンプ動作を実現できるようになる。
4.スロープ信号生成回路、第1位相比較回路、第1チャージポンプ回路
図16にスロープ信号生成回路22、第1位相比較回路30、第1チャージポンプ回路40の具体的な構成例を示し、図17にこれらの回路の動作を説明する信号波形図を示す。なおスロープ信号生成回路22の構成、動作については、図4において説明したため、ここでは詳細な説明を省略する。
図16にスロープ信号生成回路22、第1位相比較回路30、第1チャージポンプ回路40の具体的な構成例を示し、図17にこれらの回路の動作を説明する信号波形図を示す。なおスロープ信号生成回路22の構成、動作については、図4において説明したため、ここでは詳細な説明を省略する。
図16では、第1位相比較回路30のサンプリング回路32では、スイッチ回路SSとして2つのトランジスターTA4、TA5が設けられている。例えばスロープ信号生成回路22の出力ノードNQとノードNQ2との間に、N型のトランジスターTA4が設けられ、ノードNQ2とサンプリングノードNSとの間に、N型のトランジスターTA5が設けられている。トランジスターTA5のゲートには、基準クロック信号RFCKが入力され、トランジスターTA4のゲートには、基準クロック信号RFCKを反転した負論理の基準クロック信号XRFCKが入力される。そしてサンプリング回路32には、キャパシターCSに加えてキャパシターCS2が設けられ、キャパシターCS2の一端がノードNQ2に接続される。キャパシターCS2の他端は例えばGNDノード等の所定電位のノードに接続される。
また第1チャージポンプ回路40は、アンプ回路APと、チャージポンプ用のスイッチ回路SPを含む。アンプ回路APの第1入力端子にはサンプリング電圧VSAが入力され、アンプ回路APの第2入力端子には基準電圧VRFが入力される。そしてトランスコンダクターであるアンプ回路APは、サンプリング電圧VSAと基準電圧VRFの差分に応じた電流を出力し、この電流が、パルス信号PLSのアクティブ期間においてチャージポンプ電流ISPとして、第1チャージポンプ回路40から出力されるようになる。
次に図16の回路の動作について図17を用いて説明する。図17のタイミングt1において、フィードバッククロック信号FBCKがローレベルからハイレベルになると、スロープ信号生成回路22のトランジスターTA1がオンになって、VDDノードからの電流が、トランジスターTA1及び可変抵抗RAを介して出力ノードNQに流れることで、出力電圧VQが上昇する。このとき基準クロック信号RFCKがローレベルであるため、トランジスターTA4がオンになり、トランジスターTA5がオフになる。これにより、出力電圧VQの上昇に伴い、キャパシターCS2の一端が接続されるノードNQ2の電圧VQ2も上昇する。そしてタイミングt2において、基準クロック信号RFCKがローレベルからハイレベルになると、トランジスターTA4がオンからオフになり、トランジスターTA5がオフからオンになる。このようにトランジスターTA4がオフになることで、ノードNQ2においてスロープ信号SLPをサンプリングした電圧VQ2が、サンプリング電圧VSAとしてキャパシターCSにサンプリングされて保持されるようになる。そしてパルス信号PLSのアクティブ期間において、アンプ回路APが、サンプリング電圧VSAと基準電圧VRFの差分に基づく電流を出力することで、オンになったスイッチ回路SPを介してチャージポンプ電流ISCPが、第1チャージポンプ回路40から出力されるようになる。そしてタイミングt3においてフィードバッククロック信号FBCKがハイレベルからローレベルになると、N型のトランジスターTA2がオンになることで、出力電圧VQが低下する。このとき、基準クロック信号RFCKがハイレベルであり、トランジスターTA4がオフになっているため、出力電圧VQが低下しても、電圧VQ2は変化しない。そしてタイミングt4において、基準クロック信号RFCKがハイレベルからローレベルになると、トランジスターTA4がオフからオンになり、トランジスターTA5がオンからオフになる。これにより電圧VQ2が低下して、出力電圧VQと略同一の電位になる。このように図16では、サンプリング回路32のスイッチ回路SSとして2つのトランジスターTA4、TA5を設けると共に、トランジスターTA4とトランジスターTA5の間のノードNQ2にキャパシターCS2を接続することで、より安定したサンプリング電圧VSAのサンプリング動作が可能になる。
5.デッドゾーン検出回路
図18に図2のデッドゾーン検出回路52の構成例を示し、図19にイネーブル信号生成回路54の構成例を示す。また図20に、これらの回路の動作を説明するための信号波形図を示す。
図18に図2のデッドゾーン検出回路52の構成例を示し、図19にイネーブル信号生成回路54の構成例を示す。また図20に、これらの回路の動作を説明するための信号波形図を示す。
図2において説明したように、デッドゾーン検出回路52は、基準クロック信号RFCKとフィードバッククロック信号FBCKとの位相差がデッドゾーンに入ったか否かを検出する。そして第2位相比較回路50は、デッドゾーン検出回路52により、位相差がデッドゾーンに入っていないことが検出された場合に、基準クロック信号RFCKとフィードバッククロック信号FBCKとの位相比較に基づく位相差信号PDSを出力する。このようにすれば、基準クロック信号RFCKとフィードバッククロック信号FBCKとの位相差がデッドゾーンに入っていない場合には、第2位相比較回路50と第2チャージポンプ回路60とクロック信号生成回路70を含む第2フィードバックループでの第2同期動作により、基準クロック信号RFCKとフィードバッククロック信号FBCKの位相や周波数を近づけることが可能になる。そして位相差がデッドゾーンに入った場合には、第1位相比較回路30と第1チャージポンプ回路40とクロック信号生成回路70を含む第1フィードバックループでの第1同期動作により、基準クロック信号RFCKとフィードバッククロック信号FBCKの位相を更に近づけることが可能になる。これにより、ゲインが高い第1フィードバックループでのSPLL動作が行われるようになるため、インバンドノイズを低減でき、位相ノイズが低減されたクロック信号CKを生成できるようになる。
具体的には図18のデッドゾーン検出回路52は、フリップフロップ回路FFE1、FFE2、FFE3、FFE4と、AND回路ANE1、ANE2、ANE3と、遅延回路56、57等を含む。フリップフロップ回路FFE1は、D端子にVDDが入力され、CK端子に基準クロック信号RFCKが入力され、Q端子から信号UPIを出力する。フリップフロップ回路FFE2は、D端子にVDDが入力され、CK端子にフィードバッククロック信号FBCKが入力され、Q端子から信号DNIを出力する。そしてAND回路ANE1は、信号UPI、DNIの論理積の信号をリセット信号RESとして、フリップフロップ回路FFE1、FFE2のリセット端子に出力する。
遅延回路56は基準クロック信号RFCKを遅延させた信号RFCKDLを出力し、遅延回路57はフィードバッククロック信号FBCKを遅延させた信号FBCKDLを出力する。そしてフリップフロップ回路FFE3は、D端子に信号UPIが入力され、CK端子に信号RFCKDLが入力され、Q端子から信号FFUPを出力する。またフリップフロップ回路FFE4は、D端子に信号DNIが入力され、CK端子に信号FBCKDLが入力され、Q端子から信号FFDNを出力する。そしてAND回路ANE2は、信号UPIを遅延させた信号と、信号FFUPの論理積の信号を、アップ信号UPとして出力する。またAND回路ANE3は、信号DNIを遅延させた信号と、信号FFDNの論理積の信号を、ダウン信号DNとして出力する。
また図19に示すように、イネーブル信号生成回路54は、フリップフロップ回路FFE7とNOR回路NOE1とインバーター回路IVE1、IVE2を含む。NOR回路NOE1には、信号FFUP、FFDNが入力される。フリップフロップ回路FFE7のD端子には、NOR回路NOE1の出力信号が入力され、CK端子には、基準クロック信号RFCKをインバーター回路IVE1により反転した信号が入力される。そしてフリップフロップ回路FFE7のQ端子からイネーブル信号ENSPが出力される。またイネーブル信号ENSPをインバーター回路IVE2により反転した信号がイネーブル信号ENCPとして出力される。
次に図20を用いて、アップ側の動作について説明する。ダウン側の動作についてはアップ側と同様であるため詳細な説明を省略する。
基準クロック信号RFCKがローレベルからハイレベルになると、D端子にVDDが入力され、CK端子に基準クロック信号RFCKが入力されるフリップフロップ回路FFE1のQ端子の信号UPIが、ハイレベルになる。また遅延回路56は、基準クロック信号RFCKを遅延時間TDだけ遅延させた信号RFCKDLを出力する。そして信号RFCKDLがローレベルからハイレベルに変化するタイミングで、D端子にハイレベルの信号UPIが入力され、CK端子に信号RFCKDLが入力されるフリップフロップ回路FFE3のQ端子の信号FFUPが、ローレベルからハイレベルに変化する。
その後、フィードバッククロック信号FBCKがローレベルからハイレベルになると、D端子にVDDが入力され、CK端子にフィードバッククロック信号FBCKが入力されるフリップフロップ回路FFE2のQ端子の信号DNIが、ハイレベルになる。これにより、ハイレベルの信号UPIとハイレベルの信号DNIが入力されるAND回路ANE2が出力するリセット信号RESがハイレベルになり、フリップフロップ回路FFE1がリセットされることで、信号UPIがハイレベルからローレベルに変化する。このようにしてパルス幅がPD1となる信号UPIが生成される。このパルス幅PD1の長さは、基準クロック信号RFCKとフィードバッククロック信号FBCKの位相差に対応する。そして信号UPIを遅延させた信号と信号FFUPの論理積の信号が、パルス幅PD1のアップ信号UPとして出力されるようになる。
そして第2フィードバックループでの第2同期動作により、基準クロック信号RFCKとフィードバッククロック信号FBCKの位相差が小さくなると、図20に示すように信号UPIのパルス幅PD2も小さくなる。例えば図20では、基準クロック信号RFCKとフィードバッククロック信号FBCKの位相差が、遅延回路56での遅延時間TDよりも小さくなっている。即ち、位相差に対応する信号UPIのパルス幅PD2が、遅延時間TDよりも小さくなっている。この場合には、信号UPIを遅延させた信号と信号FFUPとのAND回路ANE2での論理積の信号がローレベルになり、図20のC1に示すようにアップ信号UPのパルスが非出力になる。即ち、基準クロック信号RFCKとフィードバッククロック信号FBCKの位相差がデッドゾーンに入ったことが検出されて、アップ信号UPのパルスが非出力になる。
また図20のC1においては、信号FFUP、FFDNが共にローレベルになっているため、基準クロック信号RFCKがハイレベルからローレベルに変化したときに、図19のフリップフロップ回路FFE7のQ端子から出力されるイネーブル信号ENSPが、C2に示すようにローレベルからハイレベルに変化する。これにより、第1位相比較回路30と第1チャージポンプ回路40とクロック信号生成回路70を含む第1フィードバックループでの第1同期動作であるSPLL動作がイネーブルになる。またC3に示すようにイネーブル信号ENCPがハイレベルからローレベルに変化する。これにより第2チャージポンプ回路60の動作がディスエーブル又は低消費電力モードに設定される。
このように図18のデッドゾーン検出回路52では、基準クロック信号RFCKとフィードバッククロック信号FBCKの位相差が、遅延回路56、57での遅延時間TDよりも大きい場合には、デッドゾーンに入ってないことが検出されて、アップ信号UPやダウン信号DNのパルスが出力されるようになる。これにより第2位相比較回路50と第2チャージポンプ回路60とクロック信号生成回路70を含む第2フィードバックループでの第2同期動作であるFLL動作が行われる。
そして、このFLL動作により、基準クロック信号RFCKとフィードバッククロック信号FBCKの位相差が、遅延回路56、57での遅延時間TDよりも小さくなり、位相差がデッドゾーンに入ったことが検出されると、図20のC1に示すようにアップ信号UPのパルスが非出力になる。これにより第2フィードバックループでのFLL動作が行われなくなる。またC2に示すようにイネーブル信号ENSPがハイレベルになり、第1フィードバックループでのSPLL動作が開始する。これにより、ループゲインが高いSPLLの動作により、基準クロック信号RFCKとフィードバッククロック信号FBCKの位相を更に近づける位相同期が行われて、位相ノイズが低減されたクロック信号CKが生成されるようになる。
6.分周回路
図21に分周回路80の構成例を示し、図22に分周回路80の動作を説明する信号波形図を示す。図21は位相補間型の分周回路80の構成例である。分周回路80は、多相クロック信号生成回路82とマルチプレクサー86と位相補間回路88を含む。多相クロック信号生成回路82は、分周器83、84と5個のフリップフロップ回路FFを含む。
図21に分周回路80の構成例を示し、図22に分周回路80の動作を説明する信号波形図を示す。図21は位相補間型の分周回路80の構成例である。分周回路80は、多相クロック信号生成回路82とマルチプレクサー86と位相補間回路88を含む。多相クロック信号生成回路82は、分周器83、84と5個のフリップフロップ回路FFを含む。
分周器83は2分周の分周回路である。具体的には分周器83は、クロック信号CKと、クロック信号CKを反転したクロック信号XCKが入力されて、これらの信号を2分周した信号I、Q、IB、QBを出力する。クロック信号CKの周期をTVCOとした場合に、図22に示すように、2分周された信号I、Q、IB、QBの周期は2×TVCOになる。即ち信号I、Q、IB、QBの周波数はクロック信号CKの周波数の1/2になる。また信号Iに対して、信号Q、IB、QBは、各々、位相が90度、180度、270度だけ遅れた信号になっている。このように信号I、Q、IB、QBは90度ずつ位相がずれた信号になっている。
分周器84は、フィードバックディバイダー(FDIV)と呼ばれる分周回路である。具体的には分周器84は、設定された整数分周比Nで信号QBを分周して、信号FDIVCLKを出力する。そして信号I、Q、IB、QBがD端子に入力されるフリップフロップ回路FFのCK端子に信号FDIVCLKを入力してサンプリングすることで、フリップフロップ回路FFのQ端子から、図22に示すような分周クロック信号P0、P90、P180、P270が出力される。また分周クロック信号P0がD端子に入力されるフリップフロップ回路FFのCK端子に信号FDIVCLKを入力してサンプリングすることで、フリップフロップ回路FFのQ端子から、分周クロック信号P360が出力される。
図22に示すように、分周クロック信号P0、P90、P180、P270、P360は、信号I、Q、IB、QB、Iを、分周器84により、整数分周比Nで分周した信号になっている。例えば信号I、Q、IB、QB、Iの周期を2×TVCOとした場合に、分周クロック信号P0、P90、P180、P270、P360の周期は、N×2×TVCOになる。また分周クロック信号P0、P90、P180、P270、P360は、信号I、Q、IB、QB、Iのエッジに対応するエッジで信号レベルが変化する信号になっている。そしてP0とP90の位相差はIとQの位相差に対応し、P90とP180の位相差はQとIBの位相差に対応する。P180とP270の位相差はIBとQBの位相差に対応し、P270とP360の位相差はQBとIの位相差に対応する。
このように多相クロック信号生成回路82は、クロック信号CK、XCKを、整数分周比であるN×2で分周したクロック信号であって、位相が異なる複数の分周クロック信号P0、P90、P180、P270、P360を出力する。
例えば本実施形態の回路装置20は不図示の制御回路を含み、この制御回路は、分周比設定コードに基づくデルタシグマ変調を行うデルタシグマ変調器と、デルタシグマ変調器の出力を積算する積算器を含む。デルタシグマ変調器は、分周比設定コードの分周比の小数部に基づいてデルタシグマ変調を行い、積算器は、デルタシグマ変調器の出力値の積算処理を行う。そして制御回路は、整数分周比Nを設定する整数分周制御コードを、分周器84に出力する。また制御回路は、積算器の積算値に基づく補間制御コードを、位相補間回路88やマルチプレクサー86に出力する。この制御回路は例えば後述の図23、図24の制御回路160、260に対応し、デルタシグマ変調器、積算器は、図23、図24のデルタシグマ変調器162、262、積算器164、264に対応する。
マルチプレクサー86は、制御回路からの補間制御コードであるM[4:0]の上位ビットである例えばM[4:3]に基づいて、分周クロック信号P0、P90、P180、P270、P360の中から、第iの分周クロック信号PCK1と第i+1の分周クロック信号PCK2を選択する。例えば補間制御コードの上位ビットであるM[4:3]に基づいて、0~90度の第1象限であると判断された場合には、分周クロック信号P0、P90がPCK1、PCK2として選択され、90~180度の第2象限であると判断された場合には、P90、P180がPCK1、PCK2として選択される。また補間制御コードの上位ビットであるM[4:3]に基づいて、180~270度の第3象限であると判断された場合には、P180、P270がPCK1、PCK2として選択され、270~360度の第4象限であると判断された場合には、P270、P360がPCK1、PCK2として選択される。
そして位相補間回路88は、第iの分周クロック信号PCK1と第i+1の分周クロック信号PCK2に基づく位相補間により生成された複数の補間クロック信号から、補間制御コードであるM[4:0]の下位ビットである例えばM[2:0]に基づき選択された補間クロック信号を、分周クロック信号DVCKとして出力する。ここでiは1以上の整数である。またPCK1、PCK2も選択対象となる補間クロック信号に含まれる。例えば補正制御コードの上位ビットであるM[4:3]に基づいて第1象限であると判断され、分周クロック信号P0、P90が、PCK1、PCK2として選択されたとする。この場合に位相補間回路88は、第iの分周クロック信号PCK1=P0と、第i+1の分周クロック信号PCK2=P90に基づく8分割の位相補間により生成された複数の補間クロック信号から、補間制御コードの下位ビットであるM[2:0]に基づき選択された補間クロック信号を、分周クロック信号DVCKとして出力する。例えば第mの補間クロック信号と第nの補間クロック信号の間の第kの補間クロック信号は、第mの補間クロック信号のバッファリングするバッファーの出力端子と第nの補間クロック信号をバッファリングするバッファーの出力端子を短絡して、信号を衝突させることで生成できる。ここでm、k、nはm<k<nの関係を満たす1以上の整数である。例えばPCK1をバッファリングするバッファーの出力端子とPCK2をバッファリングするバッファーの出力端子を接続して信号を衝突させることで、位相分割の4番目の補間クロック信号を生成できる。PCK1をバッファリングするバッファーの出力端子と、位相分割の4番目の補間クロック信号をバッファリングするバッファーの出力端子を接続して信号を衝突させることで、位相分割の2番目の補間クロック信号を生成できる。このようにして生成された補間クロック信号は、狭パルスの信号になる場合が多い。
このように位相補間回路88は、補間制御コードに基づいて、複数の分周クロック信号P0、P90、P180、P270、P360の第iの分周クロック信号PCK1と第i+1の分周クロック信号PCK2に基づく位相補間により生成された複数の補間クロック信号から、基準クロック信号RFCKとの位相の比較用のクロック信号である分周クロック信号DVCKを選択する。このようにすることで位相補間型の分周回路80を実現できるようになる。位相補間型の分周回路80によれば、高い分解能で位相分割された補間クロック信号が用いられることで、デルタシグマ変調による周波数のばたつきの幅を小さくすることができ、位相ノイズが低減されたクロック信号CKを生成できるようになる。
例えば図21では多相クロック信号生成回路82により位相が4分割され、位相補間回路88により位相が8分割されることで、32分割の位相分割が行われる。そしてデルタシグマ変調器の出力を積算する積算器の積算値に基づく補間制御コードにより、これらの32分割された位相のクロック信号のいずれかが選択されて、分周クロック信号DVCKとして出力される。この場合にデルタシグマ変調器の出力を積算する積算器により、位相が積算されていき、例えば32分割の位相分割のうちの31から0に遷移するタイミング、即ち位相が一周するタイミングにおいて、図22のH1に示すように、制御回路から分周器84にキャリー信号が出力される。これによりH2に示すように、分周器84の整数分周比がNからN+1にキャリーアップされるようになる。なお、32分割の位相分割のうちの0から31に遷移するタイミングにおいては、制御回路から分周器84にキャリーダウン信号が出力され、分周器84の整数分周比がキャリーダウンされることになる。
7.発振器
図23に本実施形態の発振器4の第1構成例を示す。本実施形態の発振器4は、本実施形態の回路装置20と、基準クロック信号RFCKを生成するための振動子10を含む。例えば図23において、振動子10は回路装置20に電気的に接続されている。例えば振動子10及び回路装置20を収納するパッケージの内部配線、ボンディングワイヤー又は金属バンプ等を用いて、振動子10と回路装置20は電気的に接続されている。
図23に本実施形態の発振器4の第1構成例を示す。本実施形態の発振器4は、本実施形態の回路装置20と、基準クロック信号RFCKを生成するための振動子10を含む。例えば図23において、振動子10は回路装置20に電気的に接続されている。例えば振動子10及び回路装置20を収納するパッケージの内部配線、ボンディングワイヤー又は金属バンプ等を用いて、振動子10と回路装置20は電気的に接続されている。
振動子10は、電気的な信号により機械的な振動を発生する素子である。振動子10は、例えば水晶振動片などの振動片により実現できる。例えば振動子10は、カット角がATカットやSCカットなどの厚みすべり振動する水晶振動片、音叉型水晶振動片、又は双音叉型水晶振動片などにより実現できる。例えば振動子10は、SPXO(Simple Packaged Crystal Oscillator)の発振器に内蔵される振動子であってもよいし、恒温槽を備えない温度補償型水晶発振器(TCXO)に内蔵されている振動子や、恒温槽を備える恒温槽型水晶発振器(OCXO)に内蔵されている振動子であってもよい。なお本実施形態の振動子10は、例えば厚みすべり振動型、音叉型又は双音叉型以外の振動片や、水晶以外の材料で形成された圧電振動片などの種々の振動片により実現することも可能である。例えば振動子10として、SAW(Surface Acoustic Wave)共振子や、シリコン基板を用いて形成されたシリコン製振動子としてのMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)振動子等を採用することも可能である。
図23の回路装置20は、発振回路130、PLL回路150、制御回路160、出力回路180を含む。
発振回路130は振動子10を発振させる回路である。例えば発振回路130は、振動子10を発振させることで発振信号を生成する。例えば発振回路130は、振動子10の一端及び他端に電気的に接続される発振用の駆動回路と、キャパシターや抵抗などの受動素子により実現できる。駆動回路は、例えばCMOSのインバーター回路やバイポーラートランジスターにより実現できる。駆動回路は、発振回路130のコア回路であり、駆動回路が、振動子10を電圧駆動又は電流駆動することで、振動子10を発振させる。発振回路130としては、例えばインバーター型、ピアース型、コルピッツ型、又はハートレー型などの種々のタイプの発振回路を用いることができる。なお本実施形態における接続は電気的な接続である。電気的な接続は、電気信号が伝達可能に接続されていることであり、電気信号による情報の伝達が可能となる接続である。電気的な接続は受動素子等を介した接続であってもよい。
PLL回路150は、図1等で説明した本実施形態の各回路により実現されるPLL回路である。PLL回路150には、発振回路130により振動子10を発振させた発振信号に基づくクロック信号が、基準クロック信号RFCKとして入力される。そしてPLL回路150は、振動子10の発振信号に基づく基準クロック信号RFCKと、フィードバッククロック信号FBCKとの位相比較を行って、チャージポンプ動作等によりクロック信号CKを生成する。そしてPLL回路150は、基準クロック信号RFCKとフィードバッククロック信号FBCKの位相差がデッドゾーンに入っていない場合には、第2フィードバックループのFLL動作による同期動作を行い、位相差がデッドゾーンに入った場合には、第1フィードバックループのSPLL動作による同期動作を行う。
制御回路160は、ロジック回路であり、種々の制御処理や演算処理を行う。例えば制御回路160は、回路装置20の全体の制御を行ったり、回路装置20の動作シーケンスの制御を行う。また制御回路160は、発振回路130の制御のための各種の処理を行う。制御回路160は、例えばゲートアレイ等の自動配置配線によるASIC(Application Specific Integrated Circuit)の回路により実現できる。
そして制御回路160は、デルタシグマ変調器162と演算回路163を含み、演算回路163は積算器164を含む。例えば本実施形態の分周回路80が位相補間型の分周回路などである場合に、デルタシグマ変調器162は、分周比設定コードの分周比の小数部に基づいてデルタシグマ変調を行い、演算回路163の積算器164は、デルタシグマ変調器の出力値の積算処理を行う。そして積算器164の積算結果に基づく補間制御コードに基づいて、複数の補間クロック信号から分周クロック信号DVCKを選択する処理などが行われる。また分周比設定コードの分周比の整数部に基づいて、分周回路80の整数分周器での整数分周が行われる。
出力回路180は、PLL回路150からのクロック信号CKをバッファリングして出力クロック信号CKQを出力する。この出力クロック信号CKQが発振器4の外部出力クロック信号になる。この出力回路180は図2の出力回路78に対応する。また出力回路180は、外部からの出力イネーブル信号OEが入力され、出力イネーブル信号OEがアクティブである場合に、出力クロック信号CKQを出力する。これにより発振器4の外部に対して出力クロック信号CKQが出力されるようになる。一方、出力イネーブル信号OEが非アクティブである場合には、出力クロック信号CKQの出力端子は、例えばローレベル等の固定電圧に設定される。
なお図23では温度補償回路が設けられておらず、この場合には発振器4はSPXOの発振器になる。具体的には発振器4は、PLL回路150に設定される分周比設定コードにより任意の周波数の出力クロック信号CKQを出力できるプログラマブルのSPXOになる。但し図23の構成において、温度センサーの温度検出結果に基づいて温度補償処理を行う温度補償回路を設けて、TCXOの発振器4の構成としてもよい。この場合には、温度補償回路からの温度補償電圧により容量が制御される可変容量回路を、発振回路130に設ければよい。
図24に発振器4の第2構成例を示す。図24の発振器4は、振動子10と、第1回路装置である回路装置21と、第2回路装置である本実施形態の回路装置20を含む。
回路装置21は、発振回路130、温度補償回路140、温度センサー148、制御回路160、出力回路180を含む。なお制御回路160、出力回路180の構成は図23と同様であるため詳細な説明は省略する。
発振回路130は可変容量回路132を含む。可変容量回路132は、振動子10の一端及び他端の少なくとも一方に設けられ、振動子10の負荷容量を調整するための回路である。可変容量回路132の容量の調整により、発振回路130の発振周波数が調整される。可変容量回路132は、例えばバラクターなどの可変容量素子により実現できる。例えば可変容量回路132は、温度補償電圧に基づいて容量が制御される可変容量素子により実現できる。或いは可変容量回路132を、キャパシターアレイと、キャパシターアレイに接続されるスイッチアレイとにより実現してもよい。この場合にはスイッチアレイが含む複数のスイッチを例えばデジタルの制御信号によりオン又はオフにすることで、可変容量回路132の容量が制御される。
温度補償回路140は、発振回路130の発振周波数の温度補償を行う回路である。例えば温度補償回路140は、温度センサー148の温度検出結果に基づいて、発振回路130の発振周波数を温度補償する温度補償信号を出力する。温度補償は、例えば温度変動による発振周波数の変動を抑制して補償する処理である。即ち温度補償回路140は、温度変動があった場合にも発振周波数が一定になるように、発振回路130の発振周波数の温度補償を行う。具体的には温度補償回路140は温度補償信号として温度補償電圧を生成する。そしてこの温度補償電圧を容量制御電圧として可変容量回路132の容量が制御されることで、発振周波数の温度補償処理が実現される。温度補償回路140としては、例えば多項式近似によるアナログ方式の温度補償を行う温度補償回路を用いることができる。例えば振動子10の周波数温度特性を補償する温度補償電圧が多項式により近似される場合に、温度補償回路140は、当該多項式の係数情報に基づいてアナログ方式の温度補償を行う。アナログ方式の温度補償は、例えばアナログ信号である電流信号や電圧信号の加算処理等により実現される温度補償である。
温度センサー148は温度を検出するセンサーである。具体的には温度センサー148は、環境の温度に応じて変化する温度依存電圧を、温度検出信号である温度検出電圧として出力する。例えば温度センサー148は、温度依存性を有する回路素子を利用して温度検出信号である温度検出電圧を生成する。具体的には温度センサー148は、例えばPN接合の順方向電圧が有する温度依存性を用いることで、温度に依存して電圧が変化する温度検出電圧を出力する。
そして図24では温度補償回路140は、温度センサー148での温度検出結果に基づいて第1温度補償処理を行う。これにより、発振回路130により振動子10を発振させることで生成されたクロック信号CK1に対して第1温度補償処理が行われ、第1温度補償処理後のクロック信号CK1が回路装置21から出力される。そして第1温度補償処理後のクロック信号CK1は、回路装置20に入力される。
回路装置20は、PLL回路250、制御回路260、温度センサー248、出力回路280を含む。
PLL回路250は、図1等で説明した本実施形態の各回路により実現されるPLL回路である。PLL回路250には、振動子10の発振信号に基づくクロック信号CK1が、回路装置21から、基準クロック信号RFCKとして入力される。そしてPLL回路250は、振動子10の発振信号に基づく基準クロック信号RFCKと、フィードバッククロック信号FBCKとの位相比較を行って、チャージポンプ動作等によりクロック信号CKを生成する。そしてPLL回路250は、基準クロック信号RFCKとフィードバッククロック信号FBCKの位相差がデッドゾーンに入っていない場合には、第2フィードバックループのFLL動作による同期動作を行い、位相差がデッドゾーンに入った場合には、第1フィードバックループのSPLL動作による同期動作を行う。
そして出力回路280は、PLL回路250からのクロック信号CKをバッファリングして、出力クロック信号CKQを出力する。この出力クロック信号CKQが発振器4の外部出力クロック信号になる。
制御回路260は、デルタシグマ変調器262と演算回路263を含み、演算回路263は積算器264を含む。デルタシグマ変調器262、積算器264の構成、動作は図23のデルタシグマ変調器162、積算器164と同様であるため、詳細な説明を省略する。
また回路装置20は第2温度補償処理を行う。この第2温度補償処理は、例えば制御回路260の演算回路263により行われる。即ち回路装置20は、回路装置21により行われた第1補償処理後のクロック信号CK1に対して、第2温度補償処理を行う。例えば回路装置20は、温度センサー248等の温度検出結果に基づいて、第2温度補償処理を行う。具体的には回路装置20の演算回路263は、温度センサー248や温度センサー148での温度検出結果と、学習済みモデルの情報とに基づいて、ニューラルネットワーク演算等による第2温度補償処理を行う。例えば不図示の記憶回路は、温度計測結果に対して、対応する温度補償値が得られるように機械学習させた学習済みモデルの情報を記憶する。演算回路263は、温度検出結果と記憶回路の学習済みモデルの情報とに基づいて、各温度に対応する温度補償値を求める第2温度補償処理を行う。
このように図24では、回路装置21が第1温度補償処理を行ってクロック信号CK1を回路装置20に出力し、回路装置20が第2温度補償処理を行って出力クロック信号CKQを出力する。これにより、回路装置21による第1温度補償処理と回路装置20による第2温度補償処理が行われた出力クロック信号CKQが、発振器4から出力されるようになる。このようにすることで、より高精度な温度補償処理を実現しながら、位相ノイズ等が低減された出力クロック信号CKQを、発振器4から出力できるようになる。なお回路装置20に、恒温槽の温度を制御するヒーター制御回路を設けて、OCXOの発振器4を実現するようにしてもよい。
以上に説明したように本実施形態の回路装置は、クロック信号のフィードバッククロック信号に基づきスロープ信号を生成するスロープ信号生成回路と、基準クロック信号に基づきスロープ信号をサンプリングするサンプリング回路を有し、サンプリング回路のサンプリング電圧を出力する第1位相比較回路を含む。また回路装置は、基準クロック信号に基づいてパルス信号を出力するパルサー回路と、パルス信号のアクティブ期間において、サンプリング電圧に応じた電流を出力する第1チャージポンプ回路を含む。また回路装置は、基準クロック信号とフィードバッククロック信号との位相比較に基づく位相差信号を出力する第2位相比較回路と、位相差信号に応じたチャージポンプ動作を行う第2チャージポンプ回路と、第1チャージポンプ回路の出力又は第2チャージポンプ回路の出力に基づき制御される周波数のクロック信号を生成するクロック信号生成回路と、クロック信号を分周して分周クロック信号を出力する分周回路を含む。そして回路装置は、分周クロック信号のパルス幅を伸長してフィードバッククロック信号として出力するパルス幅伸長回路を含む。
本実施形態によれば、パルス幅伸長回路が、分周回路からの分周クロック信号のパルス幅を伸長してフィードバッククロック信号として出力する。従って、分周クロック信号のパルス幅を伸長したフィードバッククロック信号を、スロープ信号生成回路に入力できるようになる。これにより、スロープ信号生成回路が、パルス幅が伸長されたフィードバッククロック信号に基づいてスロープ信号を生成し、第1位相比較回路のサンプリング回路が、このスロープ信号をサンプリングしたサンプリング電圧を第1チャージポンプ回路に出力できるようになる。従って、分周クロック信号が、パルス幅が狭いクロック信号である場合にも、電圧変動が抑制されたサンプリング電圧を第1チャージポンプ回路に出力して、第1チャージポンプ回路の適正なチャージポンプ動作を実現できるようになる。
また本実施形態では、パルス幅伸長回路は、パルス信号がアクティブから非アクティブになるタイミング以降に、フィードバッククロック信号がアクティブから非アクティブになるように、パルス幅を伸長してもよい。
このようにすれば、パルス信号のアクティブ期間においては、フィードバッククロック信号の電圧レベルが変化しないようになるため、フィードバッククロック信号の電圧レベルの変化に起因するサンプリング電圧の変動の発生を抑制できるようになる。
また本実施形態では、パルス幅伸長回路は、1段目の伸長ユニットに対して分周クロック信号が入力され、各伸長ユニットが、前段の伸長ユニットから入力される信号のパルス幅を伸長して後段の伸長ユニットに出力する複数の伸長ユニットと、複数の伸長ユニットの出力の論理和の信号をフィードバッククロック信号として出力する論理和回路を含んでもよい。
このようにすれば、複数の伸長ユニットの各伸長回路が、入力される信号のパルス幅を、伸長させた信号を出力し、これらの信号の論理和の信号を生成することで、各伸長回路での伸長幅の総和に対応する伸長幅でパルス幅を伸長した、フィードバッククロック信号を出力できるようになる。
また本実施形態では、パルス幅伸長回路は、分周クロック信号とパルス信号が入力され、分周クロック信号がアクティブになったタイミングでアクティブになり、パルス信号がアクティブから非アクティブになったタイミングで非アクティブになるフィードバッククロック信号を出力する論理回路を含んでもよい。
このようにすれば、論理回路に対してパルス信号を入力することで、パルス信号がアクティブから非アクティブになるタイミング以降に、フィードバッククロック信号がアクティブから非アクティブになるように、パルス幅を伸長できるようになる。従って、パルス信号のアクティブ期間においては、フィードバッククロック信号の電圧レベルが変化しないようになるため、フィードバッククロック信号の電圧レベルの変化に起因するサンプリング電圧の変動の発生を抑制できる。
また本実施形態では、第2位相比較回路は、基準クロック信号とフィードバッククロック信号との位相差がデッドゾーンに入ったか否かを検出するデッドゾーン検出回路を含み、位相差がデッドゾーンに入っていない場合に、基準クロック信号とフィードバッククロック信号との位相比較に基づく位相差信号を出力してもよい。
このようにすれば、基準クロック信号とフィードバッククロック信号との位相差がデッドゾーンに入っていない場合には、第2位相比較回路と第2チャージポンプ回路とクロック信号生成回路を含む第2フィードバックループにより、基準クロック信号とフィードバッククロック信号の位相等を近づける同期動作が可能になる。
また本実施形態では、パルス幅伸長回路は、位相差がデッドゾーンに入っていない非デッドゾーン期間では、分周クロック信号をフィードバッククロック信号として出力し、位相差がデッドゾーンに入ったデッドゾーン期間では、分周クロック信号のパルス幅を伸長してフィードバッククロック信号として出力してもよい。
このようにすれば、非デッドゾーン期間においては、基準クロック信号と、パルス幅が伸長されていないフィードバッククロック信号との位相比較が、第2位相比較回路において行われるようになる。一方、デッドゾーン期間においては、パルス幅が伸長されたフィードバッククロック信号がスロープ信号生成回路に入力されることで、電圧変動が抑制されたサンプリング電圧を生成できるようになる。
また本実施形態では、スロープ信号生成回路は、高電位側電源ノードと低電位側電源ノードとの間に直列に設けられるP型のトランジスター、可変抵抗及びN型のトランジスターを含み、P型のトランジスター及びN型のトランジスターのゲートはフィードバッククロック信号に基づき制御されてもよい。そしてサンプリング回路は、スロープ信号生成回路の出力ノードとサンプリング電圧のサンプリングノードとの間に設けられ、基準クロック信号に基づきオン又はオフになるサンプリング用スイッチ回路と、サンプリングノードに一端が接続されるサンプリング用キャパシターとを含んでもよい。
このようにすれば、スロープ信号生成回路が、傾きを有するスロープ信号を生成し、このスロープ信号を基準クロック信号に基づきサンプリングすることで、サンプリング電圧を出力できるようになる。そして、このサンプリング電圧は、基準クロック信号とフィードバッククロック信号の位相差に応じた電圧になるため、位相差に応じたチャージポンプ電流をクロック信号生成回路に出力できるようになる。
また本実施形態では、クロック信号生成回路は、第1チャージポンプ回路の出力又は第2チャージポンプ回路の出力に基づいて発振周波数の制御電圧を出力するループフィルター回路と、制御電圧に応じた発振周波数のクロック信号を生成する電圧制御発振回路と、を含んでもよい。
このようにすれば、第1位相比較回路と第1チャージポンプ回路とクロック信号生成回路を含む第1フィードバックループでの第1同期動作によるクロック信号の生成と、第2位相比較回路と第2チャージポンプ回路とクロック信号生成回路を含む第2フィードバックループでの第2同期動作によるクロック信号の生成とが可能になる。
また本実施形態の発振器は、上記に記載の回路装置と、基準クロック信号を生成するための振動子を含む。
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本開示の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本開示の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また本実施形態及び変形例の全ての組み合わせも、本開示の範囲に含まれる。また回路装置、発振器の構成・動作等も本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
4…発振器、10…振動子、20、21…回路装置、22…スロープ信号生成回路、24…パルサー回路、30…第1位相比較回路、32…サンプリング回路、40…第1チャージポンプ回路、50…第2位相比較回路、52…デッドゾーン検出回路、54…イネーブル信号生成回路、56、57…遅延回路、60…第2チャージポンプ回路、70…クロック信号生成回路、72…ループフィルター回路、74…電圧制御発振回路、76…バッファー回路、78…出力回路、80…分周回路、82…多相クロック信号生成回路、83、84…分周器、86…マルチプレクサー、88…位相補間回路、90…パルス幅伸長回路、92…遅延回路、93…論理和回路、94-1~94-3…伸長ユニット、95…論理和回路、96…論理回路、97、98…遅延回路、130…発振回路、132…可変容量回路、140…温度補償回路、148…温度センサー、150…PLL回路、160…制御回路、162…デルタシグマ変調器、163…演算回路、164…積算器、180…出力回路、248…温度センサー、250…PLL回路、260…制御回路、262…デルタシグマ変調器、263…演算回路、264…積算器、280…出力回路、AP…アンプ回路、CK、CK1…クロック信号、CKQ…出力クロック信号、CS、CS2…キャパシター、DN…ダウン信号、DVCK…分周クロック信号、ENSP、ENCP…イネーブル信号、FBCK…フィードバッククロック信号、NS…サンプリングノード、PDS…位相差信号、PLS…パルス信号、RFCK…基準クロック信号、SLP…スロープ信号、SP、SS…スイッチ回路、UP…アップ信号、VSA…サンプリング電圧
Claims (9)
- クロック信号のフィードバッククロック信号に基づきスロープ信号を生成するスロープ信号生成回路と、
基準クロック信号に基づき前記スロープ信号をサンプリングするサンプリング回路を有し、前記サンプリング回路のサンプリング電圧を出力する第1位相比較回路と、
前記基準クロック信号に基づいてパルス信号を出力するパルサー回路と、
前記パルス信号のアクティブ期間において、前記サンプリング電圧に応じた電流を出力する第1チャージポンプ回路と、
前記基準クロック信号と前記フィードバッククロック信号との位相比較に基づく位相差信号を出力する第2位相比較回路と、
前記位相差信号に応じたチャージポンプ動作を行う第2チャージポンプ回路と、
前記第1チャージポンプ回路の出力又は前記第2チャージポンプ回路の出力に基づき制御される周波数の前記クロック信号を生成するクロック信号生成回路と、
前記クロック信号を分周して分周クロック信号を出力する分周回路と、
前記分周クロック信号のパルス幅を伸長して前記フィードバッククロック信号として出力するパルス幅伸長回路と、
を含むことを特徴とする回路装置。 - 請求項1に記載の回路装置において、
前記パルス幅伸長回路は、
前記パルス信号がアクティブから非アクティブになるタイミング以降に、前記フィードバッククロック信号がアクティブから非アクティブになるように、前記パルス幅を伸長することを特徴とする回路装置。 - 請求項1又は2に記載の回路装置において、
前記パルス幅伸長回路は、
1段目の伸長ユニットに対して前記分周クロック信号が入力され、各伸長ユニットが、前段の伸長ユニットから入力される信号のパルス幅を伸長して後段の伸長ユニットに出力する複数の伸長ユニットと、
前記複数の伸長ユニットの出力の論理和の信号を前記フィードバッククロック信号として出力する論理和回路と、
を含むことを特徴とする回路装置。 - 請求項1又は2に記載の回路装置において、
前記パルス幅伸長回路は、
前記分周クロック信号と前記パルス信号が入力され、前記分周クロック信号がアクティブになったタイミングでアクティブになり、前記パルス信号がアクティブから非アクティブになったタイミングで非アクティブになる前記フィードバッククロック信号を出力する論理回路を含むことを特徴とする回路装置。 - 請求項1乃至4のいずれか一項に記載の回路装置において、
前記第2位相比較回路は、
前記基準クロック信号と前記フィードバッククロック信号との位相差がデッドゾーンに入ったか否かを検出するデッドゾーン検出回路を含み、前記位相差が前記デッドゾーンに入っていない場合に、前記基準クロック信号と前記フィードバッククロック信号との位相比較に基づく前記位相差信号を出力することを特徴とする回路装置。 - 請求項5に記載の回路装置において、
前記パルス幅伸長回路は、
前記位相差が前記デッドゾーンに入っていない非デッドゾーン期間では、前記分周クロック信号を前記フィードバッククロック信号として出力し、
前記位相差が前記デッドゾーンに入ったデッドゾーン期間では、前記分周クロック信号の前記パルス幅を伸長して前記フィードバッククロック信号として出力することを特徴とする回路装置。 - 請求項1乃至6のいずれか一項に記載の回路装置において、
前記スロープ信号生成回路は、
高電位側電源ノードと低電位側電源ノードとの間に直列に設けられるP型のトランジスター、可変抵抗及びN型のトランジスターを含み、
前記P型のトランジスター及び前記N型のトランジスターのゲートは前記フィードバッククロック信号に基づき制御され、
前記サンプリング回路は、
前記スロープ信号生成回路の出力ノードと前記サンプリング電圧のサンプリングノードとの間に設けられ、前記基準クロック信号に基づきオン又はオフになるサンプリング用スイッチ回路と、
前記サンプリングノードに一端が接続されるサンプリング用キャパシターと、
を含むことを特徴とする回路装置。 - 請求項1乃至7のいずれか一項に記載の回路装置において、
前記クロック信号生成回路は、
前記第1チャージポンプ回路の出力又は前記第2チャージポンプ回路の出力に基づいて発振周波数の制御電圧を出力するループフィルター回路と、
前記制御電圧に応じた前記発振周波数の前記クロック信号を生成する電圧制御発振回路と、
を含むことを特徴とする回路装置。 - 請求項1乃至8のいずれか一項に記載の回路装置と、
前記基準クロック信号を生成するための振動子と、
を含むことを特徴とする発振器。
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