JP2023144735A - 車両用駆動伝達装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】回転電機の回転を適切に減速する減速比を確保しつつ、より小型に車両用駆動伝達装置を構成する。【解決手段】差動歯車機構3と出力部材9との間に配置された一対の減速機5のそれぞれは、差動出力要素と一体的に回転するように連結されたサンギヤS5と、サンギヤS5に噛み合う大径ギヤ部P5aと小径ギヤ部P5bとを備えた段付遊星ギヤP6と、キャリヤC5と、大径リングギヤ及び小径リングギヤR5bの内の少なくとも小径リングギヤR5bとを備える。減速機5は、小径リングギヤR5bが非回転部材6に固定され、且つ、キャリヤC5が出力部材9と一体的に回転するように連結されて構成されている、又は、大径リングギヤが非回転部材6に固定され、且つ、小径リングギヤR5bが出力部材9と一体的に回転するように連結されて構成されている。【選択図】図2
Description
本発明は、回転電機のロータと一体的に回転する入力部材と、それぞれ車輪に駆動連結される一対の出力部材と、入力部材から伝達されたトルクを一対の出力部材のそれぞれに分配する差動歯車機構と、差動歯車機構と一対の出力部材との間にそれぞれ配置された一対の減速機とが同軸上に配置された車両用駆動伝達装置に関する。
特開2020-67183号公報には、駆動力源としてのモータと、当該モータのロータと一体的に回転する入力部材としての中空のロータシャフト(103)と、当該ロータシャフト(103)の径方向内側に配置された傘歯車式の差動歯車機構(101)とを備え、ロータシャフト(103)及び差動歯車機構(101)と同軸上に減速装置を構成する遊星歯車機構(105,107)が配置された車両用駆動伝達装置(100)が開示されている(背景技術において括弧内の符号は参照する文献のもの。)。
近年、車両の駆動力源としてモータ(回転電機)が用いられることが多くなってきているが、比較的小型の回転電機を用いて十分な車輪駆動トルクを得るために、回転電機から車輪までの減速比を大きくすることが求められることが多い。しかし、この減速比を大きくするためには、減速装置を含むギヤ機構のギヤ比を大きくする必要があり、これによって車両用駆動伝達装置が大型化する傾向がある。しかし、電動車両ではバッテリ等を搭載するためのスペースの確保も求められ、また、車両用駆動伝達装置の重量の増加はエネルギー効率も悪化させるため、車両用駆動伝達装置を小型に構成することが望ましい。
上記に鑑みて、回転電機の回転を適切に減速する減速比を確保しつつ、より小型に車両用駆動伝達装置を構成する技術の提供が望まれる。
上記に鑑みた、車両用駆動伝達装置は、ロータを備えた回転電機と、前記ロータと一体的に回転する入力部材と、第1車輪に駆動連結される第1出力部材と、第2車輪に駆動連結される第2出力部材と、前記入力部材と一体的に回転するように連結された差動入力要素、第1差動出力要素、及び、第2差動出力要素を備え、前記入力部材から前記差動入力要素に伝達されたトルクを前記第1差動出力要素と前記第2差動出力要素とに分配する差動歯車機構と、前記第1差動出力要素の回転を減速して前記第1出力部材に伝達する第1減速機と、前記第2差動出力要素の回転を減速して前記第2出力部材に伝達する第2減速機とを備え、前記ロータ、前記差動歯車機構、前記第1減速機、及び前記第2減速機が同軸上に配置された車両用駆動伝達装置であって、前記第1減速機及び前記第2減速機は、それぞれ、サンギヤと、前記サンギヤに噛み合う大径ギヤ部と前記大径ギヤ部よりも小径の小径ギヤ部とを備えた段付遊星ギヤと、前記段付遊星ギヤを回転自在に支持するキャリヤと、前記大径ギヤ部に噛み合う大径リングギヤ及び前記小径ギヤ部に噛み合う小径リングギヤの内の少なくとも前記小径リングギヤと、を備えた遊星歯車機構であり、前記遊星歯車機構は、前記サンギヤが、前記第1差動出力要素及び前記第2差動出力要素の何れか対応する方の差動出力要素と一体的に回転するように連結され、前記小径リングギヤが非回転部材に固定され、且つ、前記キャリヤが前記第1出力部材及び前記第2出力部材の何れか対応する方の出力部材と一体的に回転するように連結されて構成されている、又は、前記サンギヤが、前記第1差動出力要素及び前記第2差動出力要素の何れか対応する方の差動出力要素と一体的に回転するように連結され、前記大径リングギヤが非回転部材に固定され、且つ、前記小径リングギヤが前記第1出力部材及び前記第2出力部材の何れか対応する方の出力部材と一体的に回転するように連結されて構成されている。
段付き遊星ギヤを備えた遊星歯車機構は、高い減速比を備えて小型に構成し易い。このため、本構成によれば、第1減速機及び第2減速機を比較的小型で高減速比を確保し易い構成とすることができる。そして、第1減速機及び第2減速機の高減速比を確保することにより回転電機の小型化も図り易い。従って、ロータ、差動歯車機構、第1減速機、及び第2減速機が同軸上に配置された車両用駆動伝達装置の小型化を図り易い。即ち、本構成によれば、回転電機の回転を適切に減速する減速比を確保しつつ、より小型に車両用駆動伝達装置を構成する技術を提供することができる。
車両用駆動伝達装置のさらなる特徴と利点は、図面を参照して説明する例示的且つ非限定的な実施形態についての以下の記載から明確となる。
以下、車両用駆動伝達装置の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の説明における各部材についての方向は、車両用駆動伝達装置100が車両に組み付けられた状態(車両搭載状態)での方向を表す。また、各部材についての寸法、配置方向、配置位置等に関する用語は、誤差(製造上許容され得る程度の誤差)による差異を有する状態を含む概念である。構造については後述するが、本実施形態の車両用駆動伝達装置100は、回転電機8のロータ81、差動歯車機構3、第1減速機51、第2減速機52が同軸上に配置されている。ここで、ロータ81の回転軸心Xに沿う方向を軸方向Lとし、軸方向Lの一方側を軸方向第1側L1とし、軸方向Lの他方側を軸方向第2側L2とし、軸方向Lに直交する方向を径方向Rとする。さらに、径方向Rにおいて回転軸心Xの側を径方向内側R1、その反対側を径方向外側R2と称する。
また、本明細書では、2つの部材の配置に関して、「特定方向視で重複する」とは、その視線方向に平行な仮想直線を当該仮想直線に直交する各方向に移動させた場合に、当該仮想直線が2つの部材の双方に交わる領域が少なくとも一部に存在することを意味する。また、本明細書では、2つの部材の配置に関して、「軸方向における配置領域が重複する」とは、一方の部材の軸方向における配置領域内に、他方の部材の軸方向における配置領域の少なくとも一部が含まれることを意味する。
また、本明細書では、「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力(トルクと同義)を伝達可能に連結された状態を指し、当該2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いは当該2つの回転要素が1つ又は2つ以上の伝動部材(軸、ギヤなど)を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む。尚、伝導部材には、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合装置(例えば、摩擦係合装置、噛み合い式係合装置等)が含まれていてもよい。
図1から図3は、車両用駆動伝達装置100の一例である第1車両用駆動伝達装置100Aについての、軸方向断面図、スケルトン図、速度線図である。他の構成例(例えば後述する第2車両用駆動伝達装置100B)との区別が不要な場合などでは、単に車両用駆動伝達装置100と称する場合がある。
図1及び図2に示すように、車両用駆動伝達装置100は、車輪Wの駆動力源としての回転電機8と、一対の車輪Wにそれぞれ駆動連結された一対の出力部材9と、回転電機8と一対の出力部材9とを駆動連結するギヤ機構とを備えている。即ち、本実施形態の車両用駆動伝達装置100では、一対の出力部材9のそれぞれに向かって、入力部材1、差動歯車機構3、減速機5、出力部材9の順に動力伝達経路が形成されている。
ギヤ機構には、回転電機8のロータ81と一体的に回転する入力部材1と、入力部材1から伝達されたトルクを一対の出力部材9に向けて分配する差動歯車機構3と、差動歯車機構3と一対の出力部材9との間に配置された一対の減速機5とが含まれる。一対の車輪Wは第1車輪W1及び第2車輪W2であり、一対の出力部材9は第1出力部材91及び第2出力部材92である。一対の出力部材9のそれぞれは、ドライブシャフトDSを介して車輪Wに駆動連結されている。本実施形態では、第1車輪W1と第1出力部材91とが第1ドライブシャフトDS1を介して駆動連結され、第2車輪W2と第2出力部材92とが第2ドライブシャフトDS2を介して駆動連結されている。以下の説明では、ロータ軸10が入力部材1に相当する形態を例示するが、入力部材1は、例えばスプライン係合等によってロータ軸10に連結された部材であってもよい。
差動歯車機構3は、入力部材1と一体的に回転するように連結された差動入力要素E3、第1差動出力要素E31、及び、第2差動出力要素E32を備えている。差動歯車機構3は、入力部材1から差動入力要素E3に伝達されたトルクを第1差動出力要素E31と第2差動出力要素E32とに分配する。第1差動出力要素E31は、一対の減速機5の内の一方である第1減速機51の減速入力要素E5(第1減速入力要素E51)に駆動連結され、第2差動出力要素E32は、他方の減速機5である第2減速機52の減速入力要素E5(第2減速入力要素E52)に駆動連結されている。第1減速機51は、第1差動出力要素E31(第1減速入力要素E51)の回転を減速して減速出力要素E6(第1減速出力要素E61)を介して第1出力部材91に伝達する。第2減速機52は、第2差動出力要素E32(第2減速入力要素E52)の回転を減速して減速出力要素E6(第2減速出力要素E62)を介して第2出力部材92に伝達する。
車両用駆動伝達装置100は、これら、ロータ81、差動歯車機構3、第1減速機51、第2減速機52が同軸上に配置されて構成されている。尚、本実施形態では、差動歯車機構3は、ロータ81に対して径方向内側R1であって、径方向Rに沿う径方向視でロータ81と重複する位置に配置されている。つまり、差動歯車機構3とロータ81とは軸方向Lにおける配置領域が重複している。本実施形態の車両用駆動伝達装置100では、軸方向第1側L1から軸方向第2側L2に向かって、第1減速機51、差動歯車機構3及びロータ81(回転電機8)、第2減速機52が記載の順に配置されている。
尚、本実施形態では、車輪Wの駆動力源がロータ81を備えた回転電機8であり、入力部材1はロータ軸10(支持部材11)である。詳細は後述するが、本実施形態では、差動歯車機構3の差動入力要素E3(キャリヤ部材30により構成された差動キャリヤC3、図1、図4から図5等参照)は、ロータ軸10(入力部材1、支持部材11)と一体的に回転するように連結されている。また、後述するように、本実施形態では、第1減速機51と第2減速機52とは、互いに軸方向Lに直交する面を基準として鏡対称に配置されている以外は同一構成であり、両者を区別しない場合には、単に減速機5と称して説明する。
回転電機8は、インナーロータ型の回転電機であり、非回転部材としてのケース6に固定されたステータ82と、ステータ82の径方向内側R1に回転可能に支持されたロータ81とを有する。ステータ82は、ステータコアとステータコアに巻き回されたステータコイルとを含み、ロータ81は、ロータコアとロータコアに配置された永久磁石とを含む。回転電機8は、不図示の回転電機制御装置によって駆動制御されている。回転電機制御装置は、ロータ81の回転(磁極位置や回転速度)を検出するレゾルバなどの回転センサ88や、ステータコイルを流れる電流を検出する電流センサ(不図示)の検出結果に基づいて、例えば電流フィードバック制御を行って回転電機8を駆動制御する。
回転電機8では、ステータ82においてステータコアに巻き回されるステータコイルの端部であるコイルエンド部87が、ステータコアに対して軸方向Lの両側に突出するように配置されることが多い。本実施形態においても、ステータ82は、ステータコアに対して軸方向Lの両側に突出するようにコイルエンド部87を備えている。このようなコイルエンド部87は径方向Rにおいてロータ81と対向する必要はないため、コイルエンド部87に対して径方向内側R1には、デッドスペースが生じ易い。例えば、回転センサ88は、このようなデッドスペースを利用して配置されると好適であり、本実施形態においても回転センサ88はこのようなデッドスペースを利用して配置されている。図1に示すように、本実施形態では、軸方向第1側L1に突出したコイルエンド部87と径方向視で重複する(軸方向Lにおける配置領域が重複する)位置に回転センサ88が配置されている。
ロータ81は、ロータ軸10(入力部材1)により支持されている。また、本実施形態では、ロータ81は、トルクリミッタ2を介してロータ軸10に連結されている。トルクリミッタ2は、ロータ81とロータ軸10との間で伝達されるトルクが、規定のトルク(規定上限トルク)未満である場合には、ロータ81とロータ軸10とが相対回転しないように連結する。即ち、ロータ81とロータ軸10との間で伝達されるトルクが、規定上限トルク未満である場合には、ロータ81とロータ軸10とは一体的に回転する。つまり、トルクリミッタ2が作用しないような動作時、いわゆる通常動作時においては、ロータ軸10は、ロータ81と一体的に回転するようにロータ81に連結された入力部材1に相当する。当然ながら、トルクリミッタ2を備えていない場合においても、ロータ軸10は、当該入力部材1に相当する。ロータ軸10は、ロータ81に対してそれぞれ軸方向Lの両側に配置された一対の入力軸受B1を介して径方向内側R1からケース6に回転自在に支持されている。
上述したように、本実施形態の車両用駆動伝達装置100では、ロータ軸10とロータ81とが、トルクリミッタ2を介して連結されている。ロータ81とロータ軸10との間で伝達されるトルクが、規定上限トルク以上となった場合、トルクリミッタ2は、ロータ81とロータ軸10との相対回転を許容する。このように、ロータ軸10は常にロータ81と一体的に回転するものではなく、相対回転する場合もある。このロータ軸10はロータ81を支持する支持部材11に相当する。上述したように、差動歯車機構3の差動入力要素E3は、入力部材1(ロータ軸10)と一体的に回転するように連結されている。ロータ軸10が支持部材11に相当する場合、差動入力要素E3は、支持部材11と一体的に回転するように連結されている。
尚、このような構成に限らず、ロータ軸10とは別に支持部材11が備えられていてもよい。例えば、ロータ81とロータ軸10とが常時一体的に回転するように連結されており、ロータ軸10とは別の支持部材11とロータ軸10とが、トルクリミッタ2を介して連結されていてもよい。即ち、車両用駆動伝達装置100は、支持部材11がロータ81を径方向内側R1から支持しており、支持部材11とロータ81とが、規定のトルク(規定上限トルク)以上で相対回転を許容するトルクリミッタ2を介して連結されていればよい。また、差動入力要素E3が、支持部材11と一体的に回転するように連結されていればよい。
つまり、本実施形態のトルクリミッタ2は、駆動力源である回転電機8から車輪Wまでの動力伝達経路における上流側に設けられている。本実施形態における動力伝達経路においては、差動歯車機構3及び減速機5よりも上流にトルクリミッタ2が配置されている。つまり、車両用駆動伝達装置100の中で、減速前の伝達トルクが比較的小さい箇所にトルクリミッタ2が設けられている。これにより、トルクリミッタ2の規定上限トルクを低く設定することができるため、トルクリミッタ2の小型化を図り易い。
上述したように、本実施形態では、ロータ軸10が支持部材11に相当しており、支持部材11は、ロータ81に対して径方向内側R1を軸方向Lに貫通するように配置されている。そして、トルクリミッタ2は、支持部材11としてのロータ軸10に対して径方向外側R2且つロータ81に対して軸方向第2側L2であって、軸方向Lに沿う軸方向視でロータ81と重複し、径方向Rに沿う径方向視で回転電機8のステータ82と重複する位置に配置されている。
上述したように、回転電機8では、ステータ82においてステータコアに巻き回されるステータコイルの端部であるコイルエンド部87が、ステータコアに対して軸方向Lに突出するように配置されることが多い。このため、コイルエンド部87に対して径方向内側R1には、デッドスペースが生じ易い。本実施形態では、このようなデッドスペースを利用してトルクリミッタ2を配置しているので、トルクリミッタ2を配置することによって車両用駆動伝達装置100の規模が大きくなることが抑制され、トルクリミッタ2を備えていても車両用駆動伝達装置100の小型化を図り易い。
また、上述したように、支持部材11としてのロータ軸10に対して径方向外側R2且つロータ81に対して軸方向第1側L1であって、軸方向視でロータ81と重複し、径方向視でステータ82と重複する位置には、回転センサ88が配置されている。一般的に、コイルエンド部は、ステータコアに対して軸方向Lの両側に設けられるため、デッドスペースも、ステータコアに対して軸方向Lの両側に生じる。本実施形態では、ロータ81に対して軸方向第2側L2にトルクリミッタ2が配置され、ロータ81に対して軸方向第1側L1に、回転センサ88が配置される。即ち、デッドスペースを利用して、トルクリミッタ2並びに回転センサ88が配置されるので、車両用駆動伝達装置100の小型化を図り易い。
尚、上述したようなコイルエンド部87に起因するデッドスペースが十分に大きくないような場合には、コイルエンド部87と径方向視で重複するように、トルクリミッタ2や回転センサ88が配置されていなくてもよい。また、上述したようなデッドスペースが十分に大きい場合であっても、トルクリミッタ2や回転センサ88が、コイルエンド部87と径方向視で重複しないで配置される形態を妨げるものではない。また、ロータ81に対して軸方向Lの同じ側に、トルクリミッタ2と回転センサ88とが共に配置されていても良い。
支持部材11としてのロータ軸10の外周面1bとロータ81の内周面8aとの間には、支持部材11に対してロータ81を相対回転自在に支持するロータ軸受B2が配置されている。これにより、トルクリミッタ2が相対回転を許容する場合に、ロータ軸受B2により適切にロータ81を支持しつつ、ロータ81と支持部材11とを相対回転させることができる。即ち、ロータ軸10(支持部材11)外周面1bとロータ81の内周面8aとの間には、隙間が形成されており、当該隙間にロータ軸受B2が配置されている。
本実施形態では、ロータ軸受B2としては、樹脂ブッシュや金属ブッシュ等の滑り軸受を用いている。より好適には、樹脂ブッシュのような弾性部材によりロータ軸受B2を構成することで、ロータ81及び差動入力要素E3(本実施形態では差動キャリヤC3)の回転軸心Xの位置を弾性拘束することができ、回転軸心Xの位置を高精度に保って組み付け等を容易に行うこともできる。また、ロータ軸受B2は、ニードルベアリングやボールベアリング等の転がり軸受を用いて構成されていてもよい。
また、ロータ軸10は、ロータ81に対して軸方向第1側L1から当接する当接部1tを備えている。後述するように、本実施形態では、トルクリミッタ2が軸方向第2側L2から軸方向第1側L1に向かって、ロータ81と支持部材11とが軸方向Lに相対移動する力を付加している。当接部1tを備えることにより、いわゆるストッパ機能が実現されて、ロータ81の軸方向第1側L1への移動が規制され、ロータ81を定位置に保持することができる。尚、本実施形態では、支持部材11であるロータ軸10に当接部1tが設けられている形態を例示したが、当然ながらロータ81にストッパ機能を有する当接部等が設けられていてもよいし、ロータ81及び支持部材11の双方にストッパ機能を有する当接部等が設けられていてもよい。
また、トルクリミッタ2は、ロータ81と一体的に回転する第1摩擦部材21と、支持部材11と一体的に回転する第2摩擦部材22と、第1摩擦部材21と第2摩擦部材22とを軸方向Lに互いに押し付けるように軸方向第2側L2から押圧する押圧機構23とを備えている。ロータ81は、第1摩擦部材21を径方向外側R2から支持する第1摩擦部材支持部89を備えている。本実施形態では、第1摩擦部材支持部89は、第1摩擦部材21を径方向外側R2から支持する筒状支持部として構成されている。第1摩擦部材支持部89は、第1摩擦部材21の相対回転及び径方向Rの移動規制しつつ、軸方向Lの移動を許容するように構成されている。具体的には、第1摩擦部材支持部89の内周面には、軸方向Lに延在する凹溝と凸条とが周方向(回転軸心Xを中心とした周方向、以下同じ)に交互に設けられ、第1摩擦部材21の外周面に形成された凹凸に係合している。本実施形態では、第1摩擦部材支持部89は、ロータ81のロータコアに固定されている。また、支持部材11は、その外周面1bに第2摩擦部材22を径方向内側R1から支持する第2摩擦部材支持部26を備えている。第2摩擦部材支持部26も同様に、第2摩擦部材22の相対回転及び径方向Rの移動規制しつつ、軸方向Lの移動を許容するように構成されている。具体的には、第2摩擦部材支持部26の外周面には、軸方向Lに延在する凹溝と凸条とが周方向に交互に設けられ、第2摩擦部材22の内周面に形成された凹凸に係合している。本実施形態では、第2摩擦部材支持部26は、差動入力要素E3を構成する差動キャリヤC3と一体的に回転する支持部材11と一体的に形成されている。
即ち、第1摩擦部材21はロータ81に対して軸方向Lにのみ相対移動可能であり、ロータ81に対して周方向(回転軸心Xを中心とした周方向)、及び径方向Rには、相対移動不能である。また、第2摩擦部材22は支持部材11に対して軸方向Lにのみ相対移動可能であり、支持部材11に対して周方向、及び径方向Rには、相対移動不能である。
押圧機構23は、押圧部材24と、押圧部材24を軸方向第1側L1に向けて付勢する状態で支持部材11に固定された固定部材25(例えばナット)を備えて構成されている。固定部材25がナットの場合、ナットの締め込みによって、押圧部材24による軸方向第1側L1への押圧力を調整することができる。この場合、固定部材25は、押圧荷重調整機構として機能することができる。当然ながら、固定部材25は、そのような押圧荷重調整機能を有することなく、単に支持部材11に固定されていてもよい。例えば、押圧機構23は、固定部材25としてのナット又はスナップリングと、当該固定部材25と押圧部材24との軸方向Lの間に挟まれた皿ばね等の弾性部材とを用いて構成されていてもよい。
上述したように、支持部材11に対するロータ81の軸方向第1側L1への相対移動は、支持部材11としてのロータ軸10に形成された当接部1tによって規制される。従って、押圧機構23が、押圧部材24を軸方向第1側L1に向けて付勢することで、第1摩擦部材21と第2摩擦部材22とが軸方向Lに互いに押し付け合い、ロータ81と支持部材11との間でトルクが伝達される。トルクリミッタ2の規定上限トルクは、押圧部材24の押圧力、第1摩擦部材21及び第2摩擦部材22の摩擦係数等によって決定される。
このような構成により、支持部材11とロータ81とは、トルクリミッタ2が伝達するトルクが規定上限トルク以上となった場合に、相対回転が許容される。そして、上述したように、支持部材11としてのロータ軸10の外周面1bとロータ81の内周面8aとの間には、支持部材11に対してロータ81を相対回転自在に支持するロータ軸受B2が配置されている。このようなロータ軸受B2を用いることにより、支持部材11とロータ81とを相対回転可能としつつ、適切にトルクリミッタ2を設けることができる。
上述したように、本実施形態では、支持部材11としてのロータ軸10は、筒状に形成されている。そして、支持部材11としてのロータ軸10は、一対の入力軸受B1により、径方向内側R1から支持されている。入力軸受B1は、支持部材11を非回転部材(本実施形態ではケース6)に対して回転自在に支持する支持軸受に相当する。従って、支持軸受(入力軸受B1)は、中空筒状の支持部材11の内周面1aを径方向内側R1から支持するように配置されている。そして、トルクリミッタ2は、径方向視で支持軸受(入力軸受B1)と重複するように配置されている。本実施形態では、一対の支持軸受(入力軸受B1)のうち、軸方向第2側L2に配置されている方の支持軸受(入力軸受B1)が径方向視でトルクリミッタ2と重複している。これにより、トルクリミッタ2が径方向視で支持軸受と重複しないように配置されている場合に比べて、車両用駆動伝達装置100の軸方向Lの寸法の小型化を図り易い。当然ながら、軸方向Lの寸法の小型化は限定的となるが、トルクリミッタ2が径方向視で支持軸受と重複しないように配置されている形態を妨げるものではない。
次に、図1から図3に加えて図4から図6も参照して、差動歯車機構3について説明する。差動入力要素E3、第1差動出力要素E31、及び第2差動出力要素E32を備えた差動歯車機構3は、第1差動出力要素E31、差動入力要素E3、及び第2差動出力要素E32の回転速度の順が記載の順となるように構成された遊星歯車機構である(図3の速度線図参照)。
本実施形態では、差動入力要素E3、第1差動出力要素E31、及び第2差動出力要素E32の内、1つはサンギヤ(後述する第1差動サンギヤS31)、1つはキャリヤ(後述する差動キャリヤC3)、残り1つは前述のサンギヤ(第1差動サンギヤS31)とは別のサンギヤ(後述する第2差動サンギヤS32)である。即ち、遊星歯車機構により構成された差動歯車機構3は、回転要素としてリングギヤを備えていない。リングギヤを備えないことによって、差動歯車機構3は径方向Rに小型化し易く、差動歯車機構3を中空筒状のロータ軸10に対して径方向内側R1に配置し易い。
尚、図示及び詳細な説明は省略するが、3つの回転要素の内、1つがサンギヤ、1つがキャリヤ、残り1つはこのキャリヤとは別のキャリヤであってもよい。この場合も、回転要素としてリングギヤを備えていない遊星歯車機構により差動歯車機構3を構成することができる。
本実施形態では、第1差動出力要素E31が第1差動サンギヤS31(第1サンギヤ)であり、差動入力要素E3が差動キャリヤC3(キャリヤ)であり、第2差動出力要素E32が第2差動サンギヤS32(第2サンギヤ)である。そして、さらに図4から図6に示すように、差動キャリヤC3は、第1差動ピニオンギヤP31及び第2差動ピニオンギヤP32をそれぞれ回転自在に支持している。第1差動ピニオンギヤP31は、第1差動サンギヤS31及び第2差動ピニオンギヤP32に噛み合っており、第2差動ピニオンギヤP32は、第1差動ピニオンギヤP31及び第2差動サンギヤS32に噛み合っている。
差動キャリヤC3は、ロータ軸10の内周面1aから径方向内側R1に突出するように、ロータ軸10に固定されている。差動キャリヤC3をロータ軸10と一体的に回転するようにロータ軸10の径方向内側R1に適切に連結固定することができるため、差動歯車機構3を小型化し易い。尚、差動キャリヤC3は、ロータ軸10の内周面1aから径方向内側R1に突出することなく、例えばロータ軸10がピニオンギヤを収容可能な肉厚を有した筒状に形成され、ロータ軸10の径方向内側R1に差動キャリヤC3がロータ軸10と一体的に形成されている形態を妨げるものではない。
第1差動ピニオンギヤP31は、第1ギヤ部P31aと第2ギヤ部P31bとを有している。そして、図2、図4、図5に示すように、第1ギヤ部P31aは、第1差動サンギヤS31に噛み合っており、第2ギヤ部P31bは、第2差動ピニオンギヤP32に噛み合っている。従って、第1ギヤ部P31aと第2ギヤ部P31bとを有する第1差動ピニオンギヤP31は、第1差動サンギヤS31及び第2差動ピニオンギヤP32に噛み合っている。第2差動ピニオンギヤP32は、第2差動サンギヤS32に噛み合っている。第2差動ピニオンギヤP32は、第1差動ピニオンギヤP31と第2差動サンギヤS32との間において回転方向を反転させるアイドラギヤとして機能している。図1等に示すように、軸方向Lにおける第1差動サンギヤS31と第2差動サンギヤS32との間には、第2スラスト軸受J2が配置されている(第2スラスト軸受J2については後述する)。
図5及び図6に示すように、第1差動ピニオンギヤP31の第1ギヤ部P31aは、差動キャリヤC3を形成するキャリヤ部材30に形成された第1ギヤ収納部31に収納されている。また、第1差動ピニオンギヤP31の第2ギヤ部P31bは、キャリヤ部材30に形成された第2ギヤ収納部32に収納されている。第1ギヤ部P31a及び第2ギヤ部P31bは、第1差動ピニオンギヤP31として一体的に回転する。第1差動ピニオンギヤP31は、第1ギヤ部P31aの外周面が第1ギヤ収納部31の内周面31aに対して摺動し、第2ギヤ部P31bの外周面が第2ギヤ収納部32の内周面32aに対して摺動する状態でキャリヤ部材30(差動キャリヤC3)に支持されている。また、第2差動ピニオンギヤP32は、キャリヤ部材30に形成された差動第2ピニオンギヤ収納部33に収納されている。そして、第2差動ピニオンギヤP32は、その外周面が差動第2ピニオンギヤ収納部33の内周面33aに対して摺動する状態でキャリヤ部材30(差動キャリヤC3)に支持されている。
差動サンギヤS3(第1差動サンギヤS31、第2差動サンギヤS32)は、キャリヤ部材30の径方向内側R1に配置されている。第1差動ピニオンギヤP31及び第2差動ピニオンギヤP32とは異なり、差動サンギヤS3は、キャリヤ部材30の内周面30aに接することなく回転可能なように、当該内周面30aと隙間を有して配置されている。
上述したように、ロータ軸10は、差動歯車機構3に対して軸方向Lの両側に分かれて配置された一対の入力軸受B1により径方向内側R1から支持されている。これにより、ロータ軸10に対して径方向内側R1に差動歯車機構3が配置されていても、ロータ軸10及び差動歯車機構3をケース6に対して適切に回転自在に支持することができる。また、入力軸受B1は、ロータ軸10の径方向内側R1からロータ軸10を支持しているため、ロータ軸10の径方向外側R2に軸受を配置するための軸方向スペースを確保する必要がなく、車両用駆動伝達装置100の軸方向Lの寸法を短くし易い。当然ながら、ロータ軸10が、本実施形態とは異なる位置、例えば、径方向外側R2から支持されている構成を妨げるものではない。
上述したように、車両用駆動伝達装置100は、第1差動出力要素E31の回転を減速して第1出力部材91に伝達する第1減速機51と、第2差動出力要素E32の回転を減速して第2出力部材92に伝達する第2減速機52とを備えている。第1減速機51は、ロータ81及びロータ軸10に対して軸方向第1側L1に配置され、第2減速機52は、ロータ81及びロータ軸10に対して軸方向第2側L2に配置されている。本実施形態では、ロータ81に対して径方向内側R1であって径方向視でロータ81と重複する位置に配置された差動歯車機構3において回転電機8のトルクが軸方向第1側L1と軸方向第2側L2とに分配される。分配された回転が、それぞれ第1減速機51又は第2減速機52により減速されることによって、増幅されたトルクを一対の出力部材9のそれぞれに適切に伝達することができる。従って、必要なトルクを車輪Wに伝達できるように構成しつつ、比較的小型の回転電機8を用いて軸方向L及び径方向Rの寸法を小さく抑えた電動車両用の駆動伝達装置を実現することができる。即ち、ロータ81に対して径方向内側R1であって径方向視でロータ81と重複する位置に差動歯車機構3が配置されているため、車両用駆動伝達装置100の軸方向寸法を小型化し易い。また、第1減速機51及び第2減速機52がロータ81と同軸であってロータ81に対して軸方向Lの両側に分かれて配置されているため、車両用駆動伝達装置100の径方向寸法の小型化を図り易い。
以下、本実施形態の減速機5について説明する。第1減速機51及び第2減速機52は、それぞれ、サンギヤ(減速サンギヤS5)と、サンギヤ(減速サンギヤS5)に噛み合う大径ギヤ部(減速第1ピニオンギヤP5a)と大径ギヤ部(減速第1ピニオンギヤP5a)よりも小径の小径ギヤ部(減速第2ピニオンギヤP5b)とを備えた段付遊星ギヤP6(減速ピニオンギヤP5)と、段付遊星ギヤP6を回転自在に支持するキャリヤ(減速キャリヤC5)と、大径ギヤ部(減速第1ピニオンギヤP5a)に噛み合う大径リングギヤR5a及び小径ギヤ部(減速第2ピニオンギヤP5b)に噛み合う小径リングギヤR5bの内の少なくとも小径リングギヤR5bとを備えた遊星歯車機構である。
第1車両用駆動伝達装置100Aが備える減速機5は、大径リングギヤR5aは備えず、小径リングギヤR5bのみを備えている。即ち、第1車両用駆動伝達装置100Aの減速機5は、サンギヤ(減速サンギヤS5)と、大径ギヤ部(減速第1ピニオンギヤP5a)と小径ギヤ部(減速第2ピニオンギヤP5b)とを備えた段付遊星ギヤP6(減速ピニオンギヤP5)と、キャリヤ(減速キャリヤC5)と、小径リングギヤR5bとを備えた遊星歯車機構である。減速機5は、サンギヤ(減速サンギヤS5)が、第1差動出力要素E31及び第2差動出力要素E32の何れか対応する方の差動出力要素と一体的に回転するように連結され、小径リングギヤR5bが非回転部材(本実施形態ではケース6)に固定され、且つ、キャリヤ(減速キャリヤC5)が第1出力部材91及び第2出力部材92の何れか対応する方の出力部材9と一体的に回転するように連結されて構成されている。ここで、減速サンギヤS5は、減速機5の減速入力要素E5であり、減速キャリヤC5は、減速出力要素E6である。
第1減速機51は、サンギヤ(第1減速サンギヤS51)と、大径ギヤ部(第1の減速第1ピニオンギヤP51a)と小径ギヤ部(第1の減速第2ピニオンギヤP51b)とを備えた第1段付遊星ギヤP61(第1減速ピニオンギヤP51)と、キャリヤ(第1減速キャリヤC51)と、第1小径リングギヤR51bとを備えた遊星歯車機構である。第1減速機51は、第2減速機52に対して軸方向第1側L1に配置されている。第1減速機51は、サンギヤ(第1減速サンギヤS51)が、対応する方(軸方向第1側L1)の差動出力要素である第1差動出力要素E31と一体的に回転するように連結され、第1小径リングギヤR51bが非回転部材(本実施形態ではケース6)に固定され、且つ、キャリヤ(第1減速キャリヤC51)が対応する方(軸方向第1側L1)の出力部材9である第1出力部材91と一体的に回転するように連結されて構成されている。ここで、第1減速サンギヤS51は、第1減速機51の第1減速入力要素E51であり、第1減速キャリヤC51は、第1減速出力要素E61である。
第2減速機52は、サンギヤ(第2減速サンギヤS52)と、大径ギヤ部(第2の減速第1ピニオンギヤP52a)と小径ギヤ部(第2の減速第2ピニオンギヤP52b)とを備えた第2段付遊星ギヤP62(第2減速ピニオンギヤP52)と、キャリヤ(第2減速キャリヤC52)と、第2小径リングギヤR52bとを備えた遊星歯車機構である。第2減速機52は、第1減速機51に対して軸方向第2側L2に配置されている。第2減速機52は、サンギヤ(第2減速サンギヤS52)が、対応する方(軸方向第2側L2)の差動出力要素である第2差動出力要素E32と一体的に回転するように連結され、第2小径リングギヤR52bが非回転部材(ケース6)に固定され、且つ、キャリヤ(第2減速キャリヤC52)が対応する方(軸方向第2側L2)の出力部材9である第2出力部材92と一体的に回転するように連結されて構成されている。ここで、第2減速サンギヤS52は、第2減速機52の第2減速入力要素E52であり、第2減速キャリヤC52は、第2減速出力要素E62である。
また、第1減速機51では、第1の減速第2ピニオンギヤP51b(小径ギヤ部(減速第2ピニオンギヤP5b))が第1の減速第1ピニオンギヤP51a(大径ギヤ部(減速第1ピニオンギヤP5a))に対して軸方向第1側L1に配置されている。第2減速機52では、第2の減速第2ピニオンギヤP52b(小径ギヤ部(減速第2ピニオンギヤP5b))が第2の減速第2ピニオンギヤP52b(大径ギヤ部(減速第1ピニオンギヤP5a))に対して軸方向第2側L2に配置されている。また、図1に示すように、第1出力部材91は、第1車輪W1と一体的に回転するように連結された第1ドライブシャフトDS1の外周面9cに嵌合する第1筒状内周面9aを備え、第2出力部材92は、第2車輪W2と一体的に回転するように連結された第2ドライブシャフトDS2の外周面9cに嵌合する第2筒状内周面9bを備えている。第1筒状内周面9aは、第1減速機51の大径ギヤ部である第1の減速第1ピニオンギヤP51aに対して軸方向第1側L1であって、径方向Rに沿う径方向視で第1減速機51の小径ギヤ部である第1の減速第2ピニオンギヤP51bと重複する位置に配置されている。また、第2筒状内周面9bは、第2減速機52の大径ギヤ部である第2の減速第1ピニオンギヤP52aに対して軸方向第2側L2であって、径方向視で第2減速機52の小径ギヤ部である第2の減速第2ピニオンギヤP52bと重複する位置に配置されている。
段付遊星ギヤP6の大径ギヤ部(減速第1ピニオンギヤP5a)に噛み合うサンギヤ(減速サンギヤS5)の径は小さくし易いので、減速機5の減速比を大きくし易い。また、小径ギヤ部(減速第2ピニオンギヤP5b)に対して径方向内側R1には、大径ギヤ部に対して径方向内側R1よりも広い空間を確保し易い。本実施形態によれば、そのような空間を利用して、第1筒状内周面9a及び第2筒状内周面9bを、径方向視で小径ギヤ部と重複する位置に配置したことにより、車両用駆動伝達装置100の径方向Rの大型化を抑制しつつ、第1ドライブシャフトDS1と第2ドライブシャフトDS2との間の軸方向Lの距離を小さく抑えることができる。従って、車両用駆動伝達装置100の車両への搭載性を高め易い。
尚、第1車両用駆動伝達装置100Aの減速機5においては、段付遊星ギヤP6の大径ギヤ部(減速第1ピニオンギヤP5a)と小径ギヤ部(減速第2ピニオンギヤP5b)とは、斜歯の向きが互いに同じ向きの斜歯歯車である。
このような構成により、サンギヤ(減速サンギヤS5)と大径ギヤ部(減速第1ピニオンギヤP5a)との噛み合いにより生じる軸方向荷重(いわゆるスラスト力)と、小径リングギヤR5bと小径ギヤ部との噛み合いにより生じる軸方向荷重とが互いに反対側を向くことになる。このため、減速機5のキャリヤ(減速キャリヤC5)に作用する軸方向荷重を小さく抑えることができる。従って、減速キャリヤC5及び出力部材9を支持する軸受(出力軸受B9)の小型化を図り易い。また、軸受によって軸方向荷重を支持する場合に生じるトルクの損失を低減して伝達効率を高め易い。
大径ギヤ部(減速第1ピニオンギヤP5a)と小径ギヤ部(減速第2ピニオンギヤP5b)とは、段付遊星ギヤP6として一体的に形成されている。大径ギヤ部(減速第1ピニオンギヤP5a)は、減速サンギヤS5とは噛み合っているが、リングギヤには噛み合っていない(大径リングギヤR5aが存在しないため)。一方、小径ギヤ部(減速第2ピニオンギヤP5b)は、サンギヤには噛み合っておらず、小径リングギヤR5bにのみ噛み合っている。そして、減速キャリヤC5が減速出力要素E6であるから、減速入力要素E5から減速出力要素E6までの動力伝達経路におけるギヤの噛み合いは、減速サンギヤS5と大径ギヤ部(減速第1ピニオンギヤP5a)との噛み合い、小径ギヤ部(減速第2ピニオンギヤP5b)と小径リングギヤR5bとの噛み合いの2箇所となる。
ここで、上述したように、大径ギヤ部(減速第1ピニオンギヤP5a)と小径ギヤ部(減速第2ピニオンギヤP5b)とが、斜歯の向きが互いに同じ向きの斜歯歯車であると、減速入力要素E5から減速出力要素E6までの動力伝達経路における2箇所の噛み合い箇所におけるスラスト力が互いに逆向きとなり、スラスト力を相殺し易くなる。従って、出力軸受B9に掛かるスラスト力が軽減され、トルクの損失が軽減される。詳細は後述するが、図7から図9を参照して例示する第2車両用駆動伝達装置100Bにおける減速機5は、大径リングギヤR5aを備えており、大径ギヤ部は減速サンギヤS5及び大径リングギヤR5aの双方に噛み合う。このため、第1車両用駆動伝達装置100Aの減速機5のように、減速機5におけるスラスト力を打ち消しにくい。高い減速比を実現しようとすると、多くの場合、ギヤの多段化によって、構造の大型化や噛み合いの増加による損失の増加を招く。しかし、第1車両用駆動伝達装置100Aの減速機5は、複合的な遊星歯車機構により構成されることによって、高い減速比を実現しつつ構造が大型化することや噛み合いの増加を抑制し、さらに高い減速比にも拘わらずスラスト荷重を抑制することができる。
また、本実施形態の車両用駆動伝達装置100は、軸方向Lに沿う軸方向視で、第1減速機51及び第2減速機52の全体が、回転電機8の外縁8eよりも径方向内側R1に配置されている。即ち、第1減速機51及び第2減速機52が回転電機8の外縁8eよりも外側(径方向外側R2)にはみ出すことがないため、車両用駆動伝達装置100の径方向寸法の小型化を図り易い。
また、本実施形態の車両用駆動伝達装置100では、例えば差動歯車機構3と減速機5との間、減速機5と出力部材9との間、など、異なる機構の間で駆動力を伝達する部材が適切に一体化されている。具体的には、第1差動出力要素E31と第1減速機51の入力要素である第1減速入力要素E51とが一体的に形成されて第1連結体41を構成している。また、第1減速機51の出力要素である第1減速出力要素E61と第1出力部材91とが一体的に形成されて第1出力体43を構成している。さらに、第2差動出力要素E32と第2減速機52の入力要素である第2減速入力要素E52とが一体的に形成されて第2連結体42を構成している。また、第2減速機52の出力要素である第2減速出力要素E62と第2出力部材92とが一体的に形成されて第2出力体44を構成している。ここで、「一体的」とは、同一部材により構成されている形態に限らず、例えば、溶接により一体化された構造や、ボルトなどの締結部材により固定された形態も含む。
これら、第1出力体43、第1連結体41、第2連結体42、及び、第2出力体44は、同軸上に、軸方向第1側L1から軸方向第2側L2へ向かって記載の順に配置されている。本実施形態では、第1差動出力要素E31及び第2差動出力要素E32が、差動入力要素E3が連結される入力部材1に対して径方向内側R1に配置されている。従って、第1出力体43、第1連結体41、第2連結体42、及び、第2出力体44は、入力部材1としてのロータ軸10に対して径方向内側R1を貫通して配置されている。そして、軸方向Lにおいて、それぞれの部材の間には下記のようにそれぞれ荷重伝達部が設けられている。
具体的には、第1出力体43と第1連結体41との間には、これらの相対回転を許容すると共に軸方向Lに互いに押し合う向きの荷重を伝達する第1荷重伝達部F1が設けられている。また、第1連結体41と第2連結体42との間には、これらの相対回転を許容すると共に軸方向Lに互いに押し合う向きの荷重を伝達する第2荷重伝達部F2が設けられている。そして、第2連結体42と第2出力体44との間には、これらの相対回転を許容すると共に軸方向Lに互いに押し合う向きの荷重を伝達する第3荷重伝達部F3が設けられている。本実施形態では、第1荷重伝達部F1、第2荷重伝達部F2、第3荷重伝達部F3は、それぞれスラスト軸受によって構成されている。第1スラスト軸受J1が第1荷重伝達部F1に相当し、第2スラスト軸受J2が第2荷重伝達部F2に相当し、第3スラスト軸受J3が第3荷重伝達部F3に相当する。また、第1出力体43は、第1支持部47によって軸方向第1側L1への移動が規制された状態で回転自在に支持されており、第2出力体44は、第2支持部48によって軸方向第2側L2への移動が規制された状態で回転自在に支持されている。
本実施形態では、第1支持部47は第1出力軸受B91を用いて構成され、第1出力軸受B91はケース6に支持されている。これにより、第1出力体43は、非回転部材であるケース6に対して回転自在に支持されている。また、第2支持部48は第2出力軸受B92を用いて構成され、第2出力軸受B92はケース6に支持されている。これにより、第2出力体44は、非回転部材であるケース6に対して回転自在に支持されている。
本実施形態の車両用駆動伝達装置100は、第1荷重伝達部F1、第2荷重伝達部F2、第3荷重伝達部F3により軸方向荷重を伝達することにより、第1出力体43、第1連結体41、第2連結体42、及び第2出力体44のそれぞれに作用する軸方向荷重を、第1支持部47と第2支持部48との2つの支持部のみで、軸方向Lの両側から支持している。そのため、第1出力体43、第1連結体41、第2連結体42、及び第2出力体44のそれぞれに、軸方向荷重を支持するための支持部を設ける場合に比べて、軸方向荷重を支持するための支持部を少なくすることができる。
上述したように、本実施形態では、第1支持部47は、軸方向第2側L2からの荷重を支持する向きに配置され、径方向荷重と軸方向荷重の双方を支持する軸受、すなわち第1出力軸受B91を用いて構成されている。また、第2支持部48は、軸方向第1側L1からの荷重を支持する向きに配置され、径方向荷重と軸方向荷重の双方を支持する軸受、すなわち第2出力軸受B92を用いて構成されている。そして、本実施形態では、第1出力軸受B91及び第2出力軸受B92は、いわゆるアンギュラ軸受により構成されている。当然ながら、径方向荷重と軸方向荷重の双方を支持することが可能な軸受であれば、アンギュラ軸受に限らず、円錐ころ軸受等であってもよい。
第1減速機51及び第2減速機52により、ロータ81のトルクが増幅されて第1出力部材91及び第2出力部材92に伝達されるため、第1支持部47及び第2支持部48により支持する軸方向荷重の大きさは、第1出力部材91及び第2出力部材92に伝達されるトルクに比べて小さい。そのため、第1支持部47及び第2支持部48が荷重を支持することにより発生する損失の内、軸方向荷重に起因する損失の割合は比較的小さく、第1支持部47及び第2支持部48に径方向荷重と軸方向荷重の双方を支持する軸受を用いても、当該軸受における損失を比較的小さく抑えることができる。また、1つの軸受で径方向と軸方向の双方の荷重を支持できるため、第1支持部47及び第2支持部48の小型化を図り易く、その結果、車両用駆動伝達装置100の小型化も図り易い。
上述したように、第1減速機51及び第2減速機52は遊星歯車機構であり、第1減速入力要素E51は第1減速サンギヤS51であり、第2減速入力要素E52は第2減速サンギヤS52である。第1出力体43は、軸方向Lに沿う軸方向視で第1減速入力要素E51と重複する位置において、第1減速入力要素E51に対して軸方向第1側L1から対向する第1対向面45を備える。また、第2出力体44は、軸方向視で第2減速入力要素と重複する位置において、第2減速入力要素E52に対して軸方向第2側L2から対向する第2対向面46を備える。
これにより、軸方向Lにおける第1出力体43の第1対向面45と第2出力体44の第2対向面46との間に、第1連結体41と第2連結体42とを配置することができるので、第1連結体41と第2連結体42との軸方向Lの移動を適切に規制することができる。
第1減速入力要素E51としての第1減速サンギヤS51は、第1遊星ギヤ(ここでは第1の減速第1ピニオンギヤP51a)に噛み合う斜歯歯車である。また、第2減速入力要素E52としての第2減速サンギヤS52は、第2遊星ギヤ(ここでは第2の減速第1ピニオンギヤP52a)に噛み合う斜歯歯車である。これらの斜歯歯車の斜歯の向きは、第1車輪W1及び第2車輪W2を車両の前進方向に駆動するトルクが伝達されている状態(車両前進状態)における軸方向荷重との関係で以下のように設定されている。即ち、第1減速サンギヤS51の斜歯の向きは、車両前進状態において、第1減速サンギヤS51と第1遊星ギヤ(第1の減速第1ピニオンギヤP51a)との噛み合いにより第1減速サンギヤS51に軸方向第2側L2を向く軸方向荷重が作用するように設定されている。また、第2減速サンギヤS52の斜歯の向きは、車両前進状態において、第2減速サンギヤS52と第2遊星ギヤ(第2の減速第1ピニオンギヤP52a)との噛み合いにより第2減速サンギヤS52に軸方向第1側L1を向く軸方向荷重が作用するように設定されている。
このような構成により、前進方向のトルクが伝達されている状態で、第1減速サンギヤS51に作用する軸方向荷重と第2減速サンギヤS52に作用する軸方向荷重とが、第1連結体41と第2連結体42との間の第2荷重伝達部F2において互いに打ち消し合うようにすることができる。その結果、第1支持部47及び第2支持部48に作用する軸方向荷重を軽減させることができる。通常、前進方向のトルクが伝達される期間の方が後進方向のトルクが伝達される期間よりも長いため、車両用駆動伝達装置100のライフサイクルにおいて、第1支持部47及び第2支持部48の負荷をより長い期間軽減することができる。また、第1支持部47及び第2支持部48において支持する軸方向荷重を小さく抑えられることにより、当該軸方向荷重を支持することによるエネルギー損失も少なく抑えることができる。
当然ながら、斜歯の向きは、量産効果によるコストダウンを含め、スラスト荷重以外の要素も加味して決定される。従って、第1減速サンギヤS51及び第2減速サンギヤS52の斜歯の向きは、上述したように設定されていなくてもよい。
図7から図9は、車両用駆動伝達装置100の一例である第2車両用駆動伝達装置100Bについての、軸方向断面図、スケルトン図、速度線図である。上述した第1車両用駆動伝達装置100Aと同様の構成については適宜説明を省略する。第1車両用駆動伝達装置100Aと第2車両用駆動伝達装置100Bとは、回転電機8、差動歯車機構3については基本構造が同一であり、減速機5の構成が異なっている。以下、第2車両用駆動伝達装置100Bの減速機5について説明する。
第2車両用駆動伝達装置100Bにおいても、第1車両用駆動伝達装置100Aと同様に、第1減速機51及び第2減速機52は、それぞれ、サンギヤ(減速サンギヤS5)と、サンギヤ(減速サンギヤS5)に噛み合う大径ギヤ部(減速第1ピニオンギヤP5a)と大径ギヤ部(減速第1ピニオンギヤP5a)よりも小径の小径ギヤ部(減速第2ピニオンギヤP5b)とを備えた段付遊星ギヤP6と、段付遊星ギヤP6を回転自在に支持するキャリヤ(減速キャリヤC5)と、大径ギヤ部(減速第1ピニオンギヤP5a)に噛み合う大径リングギヤR5a及び小径ギヤ部(減速第2ピニオンギヤP5b)に噛み合う小径リングギヤR5bの内の少なくとも小径リングギヤR5bとを備えた遊星歯車機構である。
第2車両用駆動伝達装置100Bが備える減速機5は、大径リングギヤR5a及び小径リングギヤR5bの双方を備えている。即ち、第2車両用駆動伝達装置100Bの減速機5は、サンギヤ(減速サンギヤS5)と、大径ギヤ部(減速第1ピニオンギヤP5a)と小径ギヤ部(減速第2ピニオンギヤP5b)とを備えた段付遊星ギヤP6と、キャリヤ(減速キャリヤC5)と、大径リングギヤR5aと、小径リングギヤR5bとを備えた遊星歯車機構である。減速機5は、サンギヤ(減速サンギヤS5)が、第1差動出力要素E31及び第2差動出力要素E32の何れか対応する方の差動出力要素と一体的に回転するように連結され、大径リングギヤR5aが非回転部材(ケース6)に固定され、且つ、小径リングギヤR5bが第1出力部材91及び第2出力部材92の何れか対応する方の出力部材9と一体的に回転するように連結されて構成されている。ここで、減速サンギヤS5は、減速機5の減速入力要素E5であり、小径リングギヤR5bは、減速出力要素E6である。
第1車両用駆動伝達装置100Aの減速機5では、減速キャリヤC5が減速出力要素E6であり、出力部材9と一体的に回転するように連結された減速キャリヤC5は出力軸受B9と減速第1軸受B5とによって回転自在に支持されていた。しかし、第2車両用駆動伝達装置100Bの減速機5では、小径リングギヤR5bが減速出力要素E6であるから、減速キャリヤC5は、出力軸受B9とは別の減速第2軸受B6と減速第1軸受B5とにより回転自在に支持されている。
上述したように、第1車両用駆動伝達装置100Aの減速機5では、段付遊星ギヤP6の大径ギヤ部(減速第1ピニオンギヤP5a)は、減速サンギヤS5とは噛み合っているが、大径リングギヤR5aが存在しないため、リングギヤには噛み合っていない。小径ギヤ部(減速第2ピニオンギヤP5b)は、一体回転する大径ギヤ部からトルクが入力されているためサンギヤには噛み合っておらず、小径リングギヤR5bにのみ噛み合っている。減速入力要素E5(減速サンギヤS5)から減速出力要素E6(減速キャリヤC5)までの動力伝達経路におけるギヤの噛み合いは、減速サンギヤS5と大径ギヤ部(減速第1ピニオンギヤP5a)との噛み合い、小径ギヤ部(減速第2ピニオンギヤP5b)と小径リングギヤR5bとの噛み合いの2箇所となる。このため、第1車両用駆動伝達装置100Aの減速機5では、段付遊星ギヤP6の大径ギヤ部(減速第1ピニオンギヤP5a)と小径ギヤ部(減速第2ピニオンギヤP5b)とが、斜歯の向きが互いに同じ向きの斜歯歯車により構成されることによって、減速機5におけるスラスト力を低減することができる。
一方、第2車両用駆動伝達装置100Bの減速機5は、大径リングギヤR5aを備えており、大径ギヤ部は減速サンギヤS5及び大径リングギヤR5aの双方に噛み合う。また、小径ギヤ部は小径リングギヤR5bに噛み合っている。減速入力要素E5(減速サンギヤS5)から減速出力要素E6(小径リングギヤR5b)までの動力伝達経路におけるギヤの噛み合いは、減速サンギヤS5と大径ギヤ部(減速第1ピニオンギヤP5a)との噛み合い、大径ギヤ部(減速第1ピニオンギヤP5a)と大径リングギヤR5aとの噛み合い、小径ギヤ部(減速第2ピニオンギヤP5b)と小径リングギヤR5bとの噛み合いの3箇所となる。噛み合い箇所が奇数となるため、第1車両用駆動伝達装置100Aの減速機5のように、減速機5におけるスラスト力を打ち消しにくい。このため、減速キャリヤC5を回転自在に支持する減速第1軸受B5及び減速第2軸受B6は、径方向荷重と軸方向荷重の双方を支持することができるように、アンギュラ軸受により構成されている。
但し、限定的ではあっても、スラスト力が打ち消されるように斜歯の向きが設定されることは好適である。従って、第2車両用駆動伝達装置100Bの減速機5においても、段付遊星ギヤP6の大径ギヤ部(減速第1ピニオンギヤP5a)と小径ギヤ部(減速第2ピニオンギヤP5b)とは、斜歯の向きが互いに同じ向きの斜歯歯車である。
第1減速機51は、サンギヤ(第1減速サンギヤS51)と、大径ギヤ部(第1の減速第1ピニオンギヤP51a)と小径ギヤ部(第1の減速第2ピニオンギヤP51b)とを備えた第1段付遊星ギヤP61と、キャリヤ(第1減速キャリヤC51)と、第1大径リングギヤR51aと、第1小径リングギヤR51bとを備えた遊星歯車機構である。第1減速機51は、第2減速機52に対して軸方向第1側L1に配置されている。第1減速機51は、サンギヤ(第1減速サンギヤS51)が、対応する方(軸方向第1側L1)の差動出力要素である第1差動出力要素E31と一体的に回転するように連結され、第1大径リングギヤR51aが非回転部材(ケース6)に固定され、且つ、第1小径リングギヤR51bが対応する方(軸方向第1側L1)の出力部材9である第1出力部材91と一体的に回転するように連結されて構成されている。ここで、第1減速サンギヤS51は、第1減速機51の第1減速入力要素E51であり、第1小径リングギヤR51bは、第1減速出力要素E61である。
第2減速機52は、サンギヤ(第2減速サンギヤS52)と、大径ギヤ部(第2の減速第1ピニオンギヤP52a)と小径ギヤ部(第2の減速第2ピニオンギヤP52b)とを備えた第2段付遊星ギヤP62と、キャリヤ(第2減速キャリヤC52)と、第2大径リングギヤR52aと、第2小径リングギヤR52bとを備えた遊星歯車機構である。第2減速機52は、第1減速機51に対して軸方向第2側L2に配置されている。第2減速機52は、サンギヤ(第2減速サンギヤS52)が、対応する方(軸方向第2側L2)の差動出力要素である第2差動出力要素E32と一体的に回転するように連結され、第2大径リングギヤR52aが非回転部材(ケース6)に固定され、且つ、第2小径リングギヤR52bが対応する方(軸方向第2側L2)の出力部材9である第2出力部材92と一体的に回転するように連結されて構成されている。ここで、第2減速サンギヤS52は、第2減速機52の第2減速入力要素E52であり、第2小径リングギヤR52bは、第2減速出力要素E62である。
また、第2車両用駆動伝達装置100Bにおいても、第1出力部材91の第1筒状内周面9aは、第1減速機51の大径ギヤ部である第1の減速第1ピニオンギヤP51aに対して軸方向第1側L1であって、径方向Rに沿う径方向視で第1減速機51の小径ギヤ部である第1の減速第2ピニオンギヤP51bと重複する位置に配置されている。また、第2出力部材92の第2筒状内周面9bは、第2減速機52の大径ギヤ部である第2の減速第1ピニオンギヤP52aに対して軸方向第2側L2であって、径方向視で第2減速機52の小径ギヤ部である第2の減速第2ピニオンギヤP52bと重複する位置に配置されている。
また、第2車両用駆動伝達装置100Bにおいても、軸方向Lに沿う軸方向視で、第1減速機51及び第2減速機52の全体が、回転電機8の外縁8eよりも径方向内側R1に配置されている。
尚、第2車両用駆動伝達装置100Bにおいても、第1差動出力要素E31と第1減速入力要素E51とが一体的に形成されて第1連結体41が構成され、第1減速出力要素E61と第1出力部材91とが一体的に形成されて第1出力体43が構成されている。また、第2差動出力要素E32と第2減速入力要素E52とが一体的に形成されて第2連結体42が構成され、第2減速出力要素E62と第2出力部材92とが一体的に形成されて第2出力体44が構成されている。そして、第1出力体43、第1連結体41、第2連結体42、及び、第2出力体44は、同軸上に、軸方向第1側L1から軸方向第2側L2へ向かって記載の順に配置されている。第1車両用駆動伝達装置100Aと同様に、第1出力体43と第1連結体41との間には、第1荷重伝達部F1が設けられ、第1連結体41と第2連結体42との間には、第2荷重伝達部F2が設けられ、第2連結体42と第2出力体44との間には、第3荷重伝達部F3が設けられている。
第1車両用駆動伝達装置100Aでは、第1荷重伝達部F1、第2荷重伝達部F2、第3荷重伝達部F3が、スラスト軸受によって構成されている。第2車両用駆動伝達装置100Bでは、スラスト軸受を用いることなく、第1荷重伝達部F1、第2荷重伝達部F2、第3荷重伝達部F3が構成されている。ここで、第1荷重伝達部F1、第2荷重伝達部F2、及び第3荷重伝達部F3の少なくとも1つを対象荷重伝達部とする。
第1出力体43、第1連結体41、第2連結体42、及び第2出力体44の回転軸心Xを基準軸心として、対象荷重伝達部が、軸方向Lに対向して当接する一対の当接面である第1当接面t1と第2当接面t2とを備えて構成される。本実施形態では、第1荷重伝達部F1、第2荷重伝達部F2、及び第3荷重伝達部F3の全てが対象荷重伝達部であり、それぞれが第1当接面t1と第2当接面t2とを備えて構成されている形態を例示している。第1当接面t1は、基準軸心と同心の凸球面状に形成され、第2当接面t2は、第1当接面t1の曲率半径よりも大きい曲率半径であって基準軸心と同心の凹球面状に形成されている。尚、本実施形態では、第1当接面t1に球体Qが配置されている形態を例示しているが、球体Qを備えることなく、単に凸球面状の当接面が形成される形態であってもよい。
この態様では、スラスト軸受を用いることなく対象荷重伝達部を構成することができる。また、軸方向Lに押し付け合う荷重を用いて2つの部材の軸心を一致させる方向に付勢することができるので、対象荷重伝達部にいわゆる自動調心機能を持たせることができる。
尚、第2車両用駆動伝達装置100Bにおいても、第1出力体43は、軸方向Lに沿う軸方向視で第1減速入力要素E51と重複する位置において、第1減速入力要素E51に対して軸方向第1側L1から対向する第1対向面45を備える。また、第2出力体44は、軸方向視で第2減速入力要素と重複する位置において、第2減速入力要素E52に対して軸方向第2側L2から対向する第2対向面46を備える。本実施形態では、第1対向面45が、第2当接面t2の1つ、具体的には、第1荷重伝達部F1における第2当接面t2に相当する。また、第2対向面46も、第2当接面t2の1つ、具体的には第3荷重伝達部F3における第2当接面t2に相当する。
〔その他の実施形態〕
以下、その他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用されるものに限られず、矛盾が生じない限り、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
以下、その他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用されるものに限られず、矛盾が生じない限り、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
(1)上記においては、差動歯車機構3が、ロータ81に対して径方向内側R1であって、径方向Rに沿う径方向視でロータ81と重複する位置に配置されている形態を例示した。つまり、差動歯車機構3とロータ81とが軸方向Lにおける配置領域が重複している形態を例示した。しかし、差動歯車機構3は、軸方向Lにおける配置領域がロータ81と重複しないように配置されていてもよい。例えば、図10に示す第3車両用駆動伝達装置100Cのように、差動歯車機構3は、軸方向Lにおいて回転電機8(ロータ81)に隣接して配置されていてもよい。ここでは、ロータ81に対して軸方向第1側L1に、差動歯車機構3が配置されている形態を例示している。
図11のスケルトン図に示すように、この差動歯車機構3は、差動入力要素E3、第1差動出力要素E31、及び第2差動出力要素E32を備え、第1差動出力要素E31、差動入力要素E3、及び第2差動出力要素E32の回転速度の順が記載の順となるように構成されたダブルピニオン遊星歯車機構である。差動入力要素E3は、差動リングギヤR3であり、第1差動出力要素E31は、差動キャリヤC3であり、第2差動出力要素E32は、差動サンギヤS3である。当業者であれば容易に理解可能であるから詳細な説明については省略する。
(2)上記においては、差動歯車機構3が、遊星歯車機構により構成されている形態を例示した。しかし、差動歯車機構3は、遊星歯車機構に限らず、例えば傘歯車機構によって構成されていてもよい。
(3)上記においては、互いに噛み合うギヤとして斜歯歯車を例示して説明した箇所がある。しかし、斜歯歯車によりギヤが構成されている場合の効果を求めない場合などでは、適宜、平歯車によって各ギヤが構成されることを妨げるものではない。
(4)上記においては、車両用駆動伝達装置100が、トルクリミッタ2を介してロータ軸10とロータ81とが連結されている形態を例示した。しかし、車両用駆動伝達装置100は、トルクリミッタ2を備えていなくてもよく、その場合、ロータ軸10は、ロータ軸10(入力部材1或いは支持部材11)の外周面1bがロータ81(ロータコア)の内周面に当接する状態で、ロータ81と一体的に回転するように連結されていてもよい。
(5)上記においては、第1出力体43、第1連結体41、第2連結体42、及び第2出力体44が構成され、これらが同軸上に、軸方向第1側L1から軸方向第2側L2へ向かって記載の順に配置され、軸方向Lにおいて、それぞれの間に荷重伝達部(第1荷重伝達部F1、第2荷重伝達部F2、第3荷重伝達部F3)が設けられている形態を例示した。しかし、そのような荷重伝達部を備えることなく、車両用駆動伝達装置100が構成されていてもよい。その場合、第1出力体43、第1連結体41、第2連結体42、及び第2出力体44のそれぞれに、軸方向荷重を支持するための支持部が設けられてもよい。また、第1出力体43、第1連結体41、第2連結体42、及び第2出力体44の少なくとも1つが形成されることなく、車両用駆動伝達装置100が構成されていてもよい。即ち、第1差動出力要素E31と第1減速入力要素E51とが少なくとも別体で形成される形態、第1減速出力要素E61と第1出力部材91とが少なくとも別体で形成される形態、第2差動出力要素E32と第2減速入力要素E52とが少なくとも別体で形成される形態、第2減速出力要素E62と第2出力部材92とが少なくとも別体で形成される形態を妨げるものではない。
1:入力部材、1a:内周面、1b:外周面、3:差動歯車機構、3B:第2差動歯車機構(差動歯車機構)、5:減速機、6:ケース(非回転部材)、8a:ロータの内周面、9:出力部材、9c:外周面、10:ロータ軸(入力部材)、30a:内周面、51:第1減速機、52:第2減速機、80:回転電機、8e:回転電機の外縁、81:ロータ、91:第1出力部材、9a:第1筒状内周面、92:第2出力部材、9b:第2筒状内周面、100:車両用駆動伝達装置、100A:第1車両用駆動伝達装置(車両用駆動伝達装置)、100B:第2車両用駆動伝達装置(車両用駆動伝達装置)、100C:第3車両用駆動伝達装置(車両用駆動伝達装置)、DS1:第1ドライブシャフト、DS2:第2ドライブシャフト、E3:差動入力要素、E31:第1差動出力要素、E32:第2差動出力要素、L:軸方向、L1:軸方向第1側、L2:軸方向第2側、P5:減速ピニオンギヤ(段付遊星ギヤ)、P51:第1減速ピニオンギヤ(段付遊星ギヤ)、P51a:第1の減速第1ピニオンギヤ(大径ギヤ部)、P51b:第1の減速第2ピニオンギヤ(小径ギヤ部)、P52:第2減速ピニオンギヤ(段付遊星ギヤ)、P52a:第2の減速第1ピニオンギヤ(大径ギヤ部)、P52b:第2の減速第2ピニオンギヤ(小径ギヤ部)、P5a:減速第1ピニオンギヤ(大径ギヤ部)、P5b:減速第2ピニオンギヤ(小径ギヤ部)、P6:段付遊星ギヤ、P61:第1段付遊星ギヤ(段付遊星ギヤ)、P62:第2段付遊星ギヤ(段付遊星ギヤ)、R:径方向、R1:径方向内側(径方向の内側)、R2:径方向外側(径方向の外側)、R51a:第1大径リングギヤ(大径リングギヤ)、R51b:第1小径リングギヤ(小径リングギヤ)、R52a:第2大径リングギヤ(大径リングギヤ)、R52b:第2小径リングギヤ(小径リングギヤ)、R5a:大径リングギヤ、R5b:小径リングギヤ、S5:減速サンギヤ(減速機の遊星歯車機構のサンギヤ)、S51:第1減速サンギヤ(減速機の遊星歯車機構のサンギヤ)、S52:第2減速サンギヤ(減速機の遊星歯車機構のサンギヤ)、W:車輪、W1:第1車輪、W2:第2車輪、X:回転軸心
Claims (5)
- ロータを備えた回転電機と、
前記ロータと一体的に回転する入力部材と、
第1車輪に駆動連結される第1出力部材と、
第2車輪に駆動連結される第2出力部材と、
前記入力部材と一体的に回転するように連結された差動入力要素、第1差動出力要素、及び、第2差動出力要素を備え、前記入力部材から前記差動入力要素に伝達されたトルクを前記第1差動出力要素と前記第2差動出力要素とに分配する差動歯車機構と、
前記第1差動出力要素の回転を減速して前記第1出力部材に伝達する第1減速機と、
前記第2差動出力要素の回転を減速して前記第2出力部材に伝達する第2減速機と、を備え、
前記ロータ、前記差動歯車機構、前記第1減速機、及び前記第2減速機が同軸上に配置された車両用駆動伝達装置であって、
前記第1減速機及び前記第2減速機は、それぞれ、サンギヤと、前記サンギヤに噛み合う大径ギヤ部と前記大径ギヤ部よりも小径の小径ギヤ部とを備えた段付遊星ギヤと、前記段付遊星ギヤを回転自在に支持するキャリヤと、前記大径ギヤ部に噛み合う大径リングギヤ及び前記小径ギヤ部に噛み合う小径リングギヤの内の少なくとも前記小径リングギヤと、を備えた遊星歯車機構であり、
前記遊星歯車機構は、
前記サンギヤが、前記第1差動出力要素及び前記第2差動出力要素の何れか対応する方の差動出力要素と一体的に回転するように連結され、
前記小径リングギヤが非回転部材に固定され、且つ、前記キャリヤが前記第1出力部材及び前記第2出力部材の何れか対応する方の出力部材と一体的に回転するように連結されて構成されている、又は、
前記サンギヤが、前記第1差動出力要素及び前記第2差動出力要素の何れか対応する方の差動出力要素と一体的に回転するように連結され、
前記大径リングギヤが非回転部材に固定され、且つ、前記小径リングギヤが前記第1出力部材及び前記第2出力部材の何れか対応する方の出力部材と一体的に回転するように連結されて構成されている、車両用駆動伝達装置。 - 前記ロータの回転軸心に沿う方向を軸方向とし、前記回転軸心に直交する方向を径方向とし、前記軸方向の一方側を軸方向第1側とし、前記軸方向の他方側を軸方向第2側として、
前記第1減速機は、前記第2減速機に対して前記軸方向第1側に配置され、
前記第1減速機では、前記小径ギヤ部は前記大径ギヤ部に対して前記軸方向第1側に配置され、
前記第2減速機では、前記小径ギヤ部は前記大径ギヤ部に対して前記軸方向第2側に配置され、
前記第1出力部材は、前記第1車輪と一体的に回転するように連結された第1ドライブシャフトの外周面に嵌合する第1筒状内周面を備え、
前記第2出力部材は、前記第2車輪と一体的に回転するように連結された第2ドライブシャフトの外周面に嵌合する第2筒状内周面を備え、
前記第1筒状内周面は、前記第1減速機の前記大径ギヤ部に対して前記軸方向第1側であって、前記径方向に沿う径方向視で前記第1減速機の前記小径ギヤ部と重複する位置に配置され、
前記第2筒状内周面は、前記第2減速機の前記大径ギヤ部に対して前記軸方向第2側であって、前記径方向視で前記第2減速機の前記小径ギヤ部と重複する位置に配置されている、請求項1に記載の車両用駆動伝達装置。 - 前記小径リングギヤが非回転部材に固定され、且つ、前記キャリヤが前記第1出力部材及び前記第2出力部材の何れか対応する方の出力部材と一体的に回転するように連結された構成において、
前記段付遊星ギヤの前記大径ギヤ部と前記小径ギヤ部とは、斜歯の向きが互いに同じ向きの斜歯歯車である、請求項1又は2に記載の車両用駆動伝達装置。 - 前記ロータの回転軸心に沿う方向を軸方向とし、前記回転軸心に直交する方向を径方向とし、前記軸方向の一方側を軸方向第1側とし、前記軸方向の他方側を軸方向第2側として、
前記差動歯車機構は、前記ロータに対して前記径方向の内側であって、前記径方向に沿う径方向視で前記ロータと重複する位置に配置され、
前記第1減速機は、前記ロータに対して前記軸方向第1側に配置され、
前記第2減速機は、前記ロータに対して前記軸方向第2側に配置されている、請求項1から3の何れか一項に記載の車両用駆動伝達装置。 - 前記軸方向に沿う軸方向視で、前記第1減速機及び前記第2減速機の全体が、前記回転電機の外縁よりも前記径方向の内側に配置されている、請求項4に記載の車両用駆動伝達装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2022051860A JP2023144735A (ja) | 2022-03-28 | 2022-03-28 | 車両用駆動伝達装置 |
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JP2022051860A Pending JP2023144735A (ja) | 2022-03-28 | 2022-03-28 | 車両用駆動伝達装置 |
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- 2022-03-28 JP JP2022051860A patent/JP2023144735A/ja active Pending
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