JP2023142308A - 積層ポリエステルフィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】優れた防曇性能を有し、テープが密着する易接着性をも有する積層ポリエステルフィルムを提供することにある。【解決手段】ポリエステルフィルムと、前記ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、樹脂組成物により形成された樹脂層とを備える積層ポリエステルフィルムであって、前記樹脂組成物が(A)バインダー樹脂及び(B)親水性化合物を含み、下記式(1)及び(2)の関係を満たす、積層ポリエステルフィルムである。γ1p≧20.0mN/m・・・(1)(γ2d/γ2p)≧0.91・・・(2)(ただし、γ1pは、前記樹脂層表面に液体が接触した1秒後の接触角より算出される、前記樹脂層表面の表面自由エネルギーの極性成分を表し、γ2d及びγ2pは、それぞれ、前記樹脂層表面に液体が接触した30秒後の接触角より算出される、前記樹脂層表面の表面自由エネルギーの分散成分及び極性成分を表す。)【選択図】なし

Description

本発明は、積層ポリエステルフィルムに関する。
ポリエチレンテレフタレートフィルムやポリエチレンナフタレートフィルムに代表されるポリエステルフィルムは、機械的特性、寸法安定性、平坦性、耐熱性、耐薬品性、光学特性等に優れた特性を有し、コストパフォーマンスに優れるため、各種用途に使用されている。
ポリエステルフィルムの用途の一例として、防曇性を付与した防曇フィルムが提案されており、窓、鏡、レンズ、ゴーグル、マスク、シールド等に使用されている。
これらの用途で使用する場合、ポリエステルフィルム表面に、防曇性に優れた樹脂層を積層する方法が検討されている(例えば、特許文献1)。
ところで、医療現場においては、治療中に患者の体液、血液、飛沫等が飛散し、これが誤って医療従事者の眼、口、鼻に接触することがある。治療を受ける患者が伝染性の病原菌を保有している場合には、この病原菌を含む体液が医療従事者の眼、口、鼻に接触することにより、医療従事者が病原菌に感染する場合もあった。
特に、近年の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行により、感染している患者の治療に際して、医療従事者が感染しないように、医療従事者の眼、口等とウイルスとの接触を確実に防止する必要性が高まっている。そのため、医療用顔面保護具、いわゆるフェイスシールドの開発が盛んに行われている。
例えば特許文献2には、フェイスシールドの一例として、不織布マスクを装着する使用者の目元を保護するシールドが開示されている。このシールドは、シールドの下縁部側に形成され、不織布マスクに重ね合わせられると共に、不織布マスクに取り付けられる取付部と、シールドの上縁部側に形成され、使用者の目元を保護可能な目元保護部と、を備え、取付部には、不織布マスクに着脱可能に固定される連結部が形成されている。
特表2011-513513号公報 特開2015-142654号公報
特許文献2のシールドをはじめとするフェイスシールドは、顔を覆うように用いると、使用者の呼気によって、シールドが曇る場合があり、使用者の視認性が低下するといった問題があった。このことから、シールドには、優れた防曇性の付与が求められている。
また、特許文献2に開示されるようなシールドを含め、防曇性を有する面の一部を両面テープ等で何かに貼り付ける場合には、テープに密着しやすいといった特性も必要である。
特に、特許文献1に開示のフィルムは、防曇性は有するものの、テープへの密着については検討されておらず、使用形態が制限されてしまう場合があった。
そこで、本発明は、上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、優れた防曇性能を有し、テープが密着する易接着性をも有する積層ポリエステルフィルムを提供することにある。
本発明者は、鋭意検討の結果、次の構成を有することで、上記課題を解決できることを見出した。
本発明は、以下の態様を有する。
[1]ポリエステルフィルムと、前記ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、樹脂組成物により形成された樹脂層とを備える積層ポリエステルフィルムであって、前記樹脂組成物が(A)バインダー樹脂と(B)親水性化合物を含み、下記式(1)及び(2)の関係を満たす、積層ポリエステルフィルム。
γ ≧20.0mN/m・・・(1)
(γ /γ )≧0.91・・・(2)
(ただし、γ は、前記樹脂層表面に液体が接触した1秒後の接触角より算出される、前記樹脂層表面の表面自由エネルギーの極性成分を表し、γ 及びγ は、それぞれ、前記樹脂層表面に液体が接触した30秒後の接触角より算出される、前記樹脂層表面の表面自由エネルギーの分散成分及び極性成分を表す。)
[2]さらに、下記式(3)の関係を満たす、上記[1]に記載の積層ポリエステルフィルム。
(γ /γ )-(γ /γ )≧0.02・・・(3)
(ただし、γ は、前記樹脂層表面に液体が接触した1秒後の接触角より算出される、前記樹脂層表面の表面自由エネルギーの分散成分を表す。)
[3]前記樹脂層表面に水滴が接触した1秒後の水滴接触角が45度以下である、上記[1]又は[2]に記載の積層ポリエステルフィルム。
[4]前記樹脂層表面に水滴が接触した30秒後の水滴接触角が36度以下である、上記[1]~[3]のいずれか1つに記載の積層ポリエステルフィルム。
[5]前記(A)バインダー樹脂が、ポリウレタン樹脂及びポリエステル樹脂からなる群から選ばれる1種以上を含む、上記[1]~[4]のいずれか1つに記載の積層ポリエステルフィルム。
[6]前記(B)親水性化合物が、ジアルキルスルホコハク酸塩を含む、上記[1]~[5]のいずれか1つに記載の積層ポリエステルフィルム。
[7]前記(A)バインダー樹脂の含有量が、不揮発成分として30~97質量%である、上記[1]~[6]のいずれか1つに記載の積層ポリエステルフィルム。
[8]前記樹脂組成物が、さらに、(C)粒子を含む、上記[1]~[7]のいずれか1つに記載の積層ポリエステルフィルム。
[9]前記樹脂組成物が、さらに、(D)フッ素系界面活性剤を含む、上記[1]~[8]のいずれか1つに記載の積層ポリエステルフィルム。
[10]前記樹脂層の少なくとも一部に粘着層を備える、上記[1]~[9]のいずれか1つに記載の積層ポリエステルフィルム。
[11]フェイスシールド用である、上記[1]~[10]のいずれか1つに記載の積層ポリエステルフィルム。
本発明によれば、優れた防曇性能を有し、テープが密着する易接着性をも有する積層ポリエステルフィルムが提供される。
本発明の実施形態に係るフェイスシールドの使用時の様子を示すイメージ図である。 本発明の実施形態に係るフェイスシールドの概略断面図である。
次に、本発明の実施形態の一例について説明する。ただし、本発明は、次に説明する実施形態に限定されるものではない。
本明細書において、「(メタ)アクリル」という表現を用いる場合、「(メタ)アクリル」は「アクリル」及び「メタクリル」の一方又は両方を意味するものとする。また、同様に「(メタ)アクリル酸」は「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の一方又は両方、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」及び「メタクリレート」の一方又は両方、「(メタ)アクリロイル」は「アクリロイル」及び「メタクリロイル」の一方又は両方を意味するものとする。その他についても、上記と同様である。
<<<積層ポリエステルフィルム>>>
本発明の積層ポリエステルフィルム(以下、「本積層ポリエステルフィルム」とも称する)は、ポリエステルフィルム(以下、「本ポリエステルフィルム」とも称する)と、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、樹脂組成物により形成された樹脂層(以下、「本樹脂層」とも称する)とを備える。
本積層ポリエステルフィルムの積層構成としては、ポリエステルフィルムの片面側に樹脂層を形成し、他方の面側はポリエステルフィルムの表面をそのままにした構成であってもよいし、該他方の面側に他の層を形成してなる構成であってもよい。
また、ポリエステルフィルムの両面側に樹脂層を形成してなる構成であってもよい。
さらにまた、樹脂層をポリエステルフィルムの上に直接形成してもよいが、ポリエステルフィルムと樹脂層との間に他の層を設けてもよい。
<<ポリエステルフィルム>>
本ポリエステルフィルムは、本積層ポリエステルフィルムの基材としての役割を果たすものである。本ポリエステルフィルムは、単層構造であっても多層構造であってもよい。本ポリエステルフィルムが多層構造の場合、本ポリエステルフィルムは2層構造、3層構造などでもよいし、本発明の要旨を逸脱しない限り、4層又はそれ以上の多層であってもよく、層数は特に限定されない。
なお、本ポリエステルフィルムが2層以上の多層構造である場合、2種3層、3種3層が特に好ましい。本ポリエステルフィルムは、多層構造である場合、中間層の両面に表層が設けられた構造を有することも好ましい。
また、本ポリエステルフィルムは、無延伸フィルム(シート)であっても延伸フィルムであってもよい。中でも、一軸方向又は二軸方向に延伸された延伸フィルムであることが好ましい。その中でも、力学特性のバランスや平面性に優れる点で、二軸延伸フィルムであることがより好ましい。
<ポリエステル>
本ポリエステルフィルムの原料であるポリエステルは、主鎖に連続してエステル結合を有する高分子化合物をいい、ホモポリエステルであっても共重合ポリエステルであってもよい。具体的には、ジカルボン酸成分とジオール成分とを重縮合反応させることによって得られるポリエステルを挙げることができる。また、ジカルボン酸成分を100モル%としたとき、芳香族ジカルボン酸又は脂肪族ジカルボン酸を50モル%よりも多く含有するポリエステルを使用することが好ましい。
前記ジカルボン酸成分としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸及び4,4’-ジフェニルスルホンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸や、例えばアジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ダイマー酸、ドデカンジオン酸、シクロヘキサンジカルボン酸及びこれらのエステル誘導体等の脂肪族ジカルボン酸を挙げることができる。
前記ジオール成分としては、例えばエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-ヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2-ビス(4-ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、イソソルベート及びスピログリコール等を挙げることができる。
上記ポリエステルがホモポリエステルである場合、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとを重縮合させて得られるものが好ましい。芳香族ジカルボン酸としては、好ましくはテレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族ジオールとしては、好ましくはエチレングリコール、ジエチレングリコール及び1,4-シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。代表的なホモポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレート(PEN)等を例示することができ、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
一方、共重合ポリエステルは、例えばジカルボン酸成分と脂肪族ジオールの重縮合ポリマーであることが好ましい。ジカルボン酸成分としては、好ましくはイソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸及びオキシカルボン酸(例えば、p-オキシ安息香酸等)等の1種又は2種以上が挙げられる。また、脂肪族ジオールとしては、好ましくはエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール及びネオペンチルグリコール等の1種又は2種以上が挙げられる。共重合ポリエステルは、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を含み、脂肪族ジオールとしてエチレングリコールを含むことがより好ましい。
上記ポリエステルが共重合ポリエステルの場合は、30モル%以下の第三成分を含有した共重合体であることが好ましい。第三成分とは、ポリエステルを構成するジカルボン酸成分の主成分(すなわち、最も含有量が多い成分)となる化合物と、ジオール成分の主成分となる化合物以外の成分であり、例えば共重合ポリエチレンテレフタレートではテレフタル酸及びエチレングリコール以外の成分である。
また、共重合ポリエステルは、ジカルボン酸成分及び脂肪族ジオール以外の二官能性化合物由来の構成単位を含んでもよい。ジカルボン酸成分及び脂肪族ジオール以外の二官能性化合物由来の構成単位は、ポリエステルを構成する全構成単位の総モルに対して、好ましくは20モル%以下、より好ましくは10モル%以下である。二官能性化合物としては、各種のヒドロキシカルボン酸、芳香族ジオール等が挙げられる。
本ポリエステルフィルムを構成する全ジカルボン酸成分中のテレフタル酸の含有量は、50モル%以上が好ましく、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上である。
また、本ポリエステルフィルムを構成する全ジオール成分中のエチレングリコールの含有量は、50モル%以上が好ましく、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上である。
なお、テレフタル酸及びエチレングリコールの含有量の上限値は、100モル%である。
また、上記ポリエステルは、再生ポリエステルであってもよく、バイオマス由来のポリエステルであってもよい。
<重縮合触媒>
上記ポリエステルを重縮合する際の重縮合触媒としては、特に制限はなく、従来公知の化合物を使用することができ、例えばチタン化合物、ゲルマニウム化合物、アンチモン化合物、マンガン化合物、アルミニウム化合物、マグネシウム化合物及びカルシウム化合物等が挙げられる。
これらの中では、チタン化合物及びアンチモン化合物の少なくともいずれかが好ましく、とりわけ、チタン化合物を用いて得られるポリエステルを使用することが好ましい。
したがって、本ポリエステルフィルムは、チタン化合物及びアンチモン化合物の少なくともいずれかを含むことが好ましい。
<固有粘度>
本ポリエステルフィルムを構成するポリエステルの固有粘度(IV)は、0.50dL/g以上であることが好ましく、より好ましくは0.55dL/g以上、さらに好ましくは0.60dL/g以上である。かかる範囲であれば、混錬中のせん断応力が増大することによって粒子が高分散する等の利点がある。また、該ポリエステルの固有粘度(IV)は、例えば、1.00dL/g以下である。
なお、「本ポリエステルフィルムを構成するポリエステルの固有粘度(IV)」とは、固有粘度(IV)が異なる2種以上のポリエステルを使用する場合には、これら混合ポリエステルの固有粘度(IV)を意味するものとする。
本ポリエステルフィルムが多層構造の場合には、表層を構成するポリエステルの固有粘度(IV)が上記範囲であることが好ましい。
<粒子>
本ポリエステルフィルム中には、易滑性の付与及び各工程での傷発生防止を主たる目的として、粒子を配合することも可能である。
本ポリエステルフィルム中に含有させる粒子の種類は、易滑性を付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、例えばシリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の無機粒子の他、架橋シリコーン樹脂粒子、架橋アクリル樹脂粒子、架橋スチレン-アクリル樹脂粒子、架橋ポリエステル粒子等の架橋高分子、シュウ酸カルシウム及びイオン交換樹脂等の有機粒子を挙げることができる。
さらに、ポリエステル製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
使用する粒子の形状に関しても特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれを用いてもよい。
また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
また、用いる粒子の平均粒径は、通常5μm以下、好ましくは0.01~3μmの範囲である。5μm以下であると、フィルムの表面粗度が粗くなりすぎず、後工程において樹脂層、及び樹脂層以外の各種の表面機能層を形成させる場合等に不具合が生じず好ましい。また、平均粒径がかかる範囲であれば、ヘーズが低く抑えられ、本積層ポリエステルフィルム全体として透明性を確保しやすい。
なお、粒子の平均粒径は、粒子が粉体の場合には、遠心沈降式粒度分布測定装置(例えば株式会社島津製作所製、「SA-CP3型」)を用いて粉体を測定した等価球形分布における積算体積分率50%の粒径(d50)を平均粒径とすることができる。フィルム、層又は樹脂中の粒子の平均粒径については、10個以上の粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)観察して粒子の直径を測定し、その平均値として求めることができる。その際、非球状粒子の場合は、最長径と最短径の平均値を各粒子の直径として測定することができる。
本ポリエステルフィルムに粒子を含有させる場合、例えば、表層と中間層を設けて、表層に粒子を含有させることが好ましい。この場合、より好ましくは、粒子を含有する表層、中間層、及び粒子を含有する表層をこの順に有する多層構造とするとよい。
粒子の含有量は、平均粒径にも依存するが、粒子を含有する層において、質量基準で、通常5000ppm以下、好ましくは30~800ppm、さらに好ましくは50~400ppmの範囲である。粒子を含有しない場合、あるいは粒子の含有量が少ない場合、滑り性を十分に付与することができず、ポリエステルフィルムの透明性が高くなるが、滑り性が不十分となる場合がある。そのため、後述する本樹脂層を積層させることにより、滑り性を向上させる等の工夫が必要である。また、5000ppm以下であれば、ポリエステルフィルムの透明性が十分担保できる。特に、本積層ポリエステルフィルムをフェイスシールド用として用いる場合には、使用者の視認性を確保する観点から、本ポリエステルフィルムの透明性は高い方が好ましい。
本ポリエステルフィルム中に粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用しうる。例えば、多層のポリエステルフィルムであれば、各層を構成するポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、エステル化又はエステル交換反応終了後、添加するのが好ましい。
<その他>
オリゴマー成分の析出量を抑えるために、オリゴマー成分の含有量が少ないポリエステルを原料としてフィルムを製造してもよい。オリゴマー成分の含有量が少ないポリエステルの製造方法としては、種々公知の方法を用いることができ、例えばポリエステル製造後に固相重合する方法等が挙げられる。
また、本ポリエステルフィルムを3層以上の構成とし、本ポリエステルフィルムの表層を、オリゴマー成分の含有量が少ないポリエステル原料を用いた層とすることで、オリゴマー成分の析出量を抑えてもよい。
また、ポリエステルは、エステル化又はエステル交換反応をした後に、さらに反応温度を高くして減圧下で溶融重縮合して得てもよい。
なお、本ポリエステルフィルム中には、上述の粒子以外に必要に応じて従来公知の紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、熱安定剤、潤滑剤、染料、顔料等を添加することができる。
本ポリエステルフィルムの厚みは、フィルムとして製膜可能な範囲であれば特に限定されるものではないが、機械的強度、ハンドリング性及び生産性などの観点から、好ましくは1μm以上、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは25μm以上、特に好ましくは50μm以上であり、そして、好ましくは500μm以下、より好ましくは300μm以下、さらに好ましくは250μm以下、特に好ましくは200μm以下である。
<ポリエステルフィルムの製造方法>
次に、本ポリエステルフィルムの製造例について具体的に説明するが、以下の製造例に何ら限定されるものではない。例えば二軸延伸フィルムを製造する場合、先に述べたポリエステル原料の乾燥したペレットを、押出機などの溶融押出装置を用いてダイから溶融シートとして押し出し、回転冷却ドラムなどの冷却ロールで冷却固化して未延伸シートを得る方法が好ましい。この場合、シートの平面性を向上させるためシートと冷却ロールとの密着性を高めることが好ましく、静電印加密着法及び/又は液体塗布密着法が好ましく採用される。
次に得られた未延伸シートは二軸方向に延伸される。その場合、まず、前記の未延伸シートを一方向にロール又はテンター方式の延伸機により延伸する。延伸温度は、通常70~120℃、好ましくは80~110℃であり、延伸倍率は通常2.5~7.0倍、好ましくは3.0~6.0倍である。
次いで、一段目の延伸方向と直交する方向に延伸するが、その場合、延伸温度は通常70~170℃であり、延伸倍率は通常3.0~7.0倍、好ましくは3.5~6.0倍である。
そして、引き続き、通常180~270℃の温度で、緊張下又は30%以内の弛緩下で熱処理を行い、二軸延伸フィルムを得る。この熱処理は、熱固定工程とも呼ばれる。熱処理は、温度の異なる2段以上の工程で行ってもよい。
上記の延伸においては、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を採用することもできる。その場合、最終的に二方向の延伸倍率がそれぞれ上記範囲となるように行うのが好ましい。
また、本ポリエステルフィルムの製造に同時二軸延伸法を採用することもできる。同時二軸延伸法は、前記の未延伸シートを通常70~120℃、好ましくは80~110℃で温度コントロールされた状態で機械方向(縦方向)及び幅方向(横方向)に同時に延伸し配向させる方法であり、延伸倍率としては、面積倍率で好ましくは4~50倍、より好ましくは7~35倍、さらに好ましくは10~25倍である。
そして、引き続き、通常170~250℃の温度で、緊張下又は30%以内の弛緩下で熱処理を行い、延伸配向フィルムを得る。上述の延伸方式を採用する同時二軸延伸装置に関しては、スクリュー方式、パンタグラフ方式及びリニアー駆動方式等、従来公知の延伸方式を採用することができる。
<<樹脂層>>
本積層ポリエステルフィルムは、ポリエステルフィルムの少なくとも片面側に、樹脂組成物から形成されてなる樹脂層を備えるものである。樹脂層は、硬化樹脂層であってもよい。
本樹脂層は、上述のとおり、樹脂組成物(以下、「本組成物」とも称する)から形成される。
<樹脂組成物>
本組成物は、下記化合物(A)及び(B)を含む。
(A)バインダー樹脂
(B)親水性化合物
((化合物(A)))
本組成物は、化合物(A)としてバインダー樹脂を含有する。
前記化合物(A)を含有する樹脂層を形成することで、親水性の樹脂層とすることができ、またテープの粘着剤に対する密着性も得ることができる。
前記(A)バインダー樹脂は、「高分子化合物安全性評価フロースキーム」(昭和60年11月、化学物質審議会主催)に準じて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による数平均分子量(Mn)が1000以上の高分子化合物で、かつ、造膜性を有するものと定義する。
そのような(A)バインダー樹脂としては、特に制限はなく、従来公知のバインダー樹脂を使用することができる。例えばポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル樹脂等を挙げることができる。中でも、後述する所望の表面自由エネルギーを達成し、粘着剤に対する高い密着性が得られるという観点から、ポリウレタン樹脂及びポリエステル樹脂からなる群から選ばれる1種以上を用いることが好ましい。本組成物において、(A)バインダー樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
(ポリウレタン樹脂)
ポリウレタン樹脂とは、ウレタン結合を分子内に有する高分子化合物で、水分散性又は水溶性のものが好ましい。本発明では、単独でも2種以上を併用してもよい。
水分散性又は水溶性を付与させるために、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、スルホニル基、リン酸基、エーテル基等の親水性基をポリウレタン樹脂に導入することが一般的であり好ましい。前記親水性基のなかでも、樹脂層とポリエステルフィルムの密着性の点から、カルボキシル基又はスルホン酸基が特に好ましい。
ポリウレタン樹脂を作製する方法の一つに、水酸基含有化合物とイソシアネートとの反応によるものがある。原料として用いられる水酸基含有化合物としては、ポリオールが好適に用いられ、例えば、ポリエーテルポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリカーボネート系ポリオール類、ポリオレフィンポリオール類、アクリルポリオール類が挙げられる。これらの化合物は単独で用いても、複数種用いてもよい。
ポリエーテルポリオール類としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール等が挙げられる。
ポリエステルポリオール類としては、多価カルボン酸又はそれらの酸無水物と多価アルコールの反応から得られるものが挙げられる。多価カルボン酸としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等が挙げられる。多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、1,8-オクタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-ヘキシル-1,3-プロパンジオール、シクロヘキサンジオール、ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン、ジメタノールベンゼン、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、ビスフェノールA、ビスフェノールAのアルキレングリコール変性体、アルキルジアルカノールアミン、ラクトンジオール等が挙げられる。
ポリカーボネート系ポリオール類としては、多価アルコール類とジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート等とから、脱アルコール反応によって得られるポリカーボネートジオール、例えばポリ(1,6-ヘキシレン)カーボネート、ポリ(3-メチル-1,5-ペンチレン)カーボネート等が挙げられる。
上記した中でもポリエステルフィルムや粘着剤との密着性の観点から、ポリエステルポリオール類やポリカーボネート系ポリオール類が好ましい。
ポリウレタン樹脂を得るために使用されるポリイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート;メチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシルジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート等が例示される。これらは単独で用いても、複数種併用してもよい。
ポリウレタン樹脂を合成する際に鎖延長剤を使用してもよく、鎖延長剤としては、イソシアネート基と反応する活性基を2個以上有するものであれば特に制限はなく、一般的には、水酸基又はアミノ基を2個有する鎖延長剤を主に用いることができる。
水酸基を2個有する鎖延長剤としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール等の脂肪族グリコール;キシリレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン等の芳香族グリコール;ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレート等のエステルグリコールといったグリコール類を挙げることができる。
アミノ基を2個有する鎖延長剤としては、例えばトリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン等の芳香族ジアミン;エチレンジアミン、プロパンジアミン、ヘキサンジアミン、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、トリメチルヘキサンジアミン、2-ブチル-2-エチル-1,5-ペンタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン等の脂肪族ジアミン;1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン等の脂環式ジアミン等が挙げられる。
また、ポリウレタン樹脂として、後述する(メタ)アクリル変性ポリウレタン樹脂を用いてもよい。
(ポリエステル樹脂)
ポリエステル樹脂としては、主な構成成分として例えば、下記のような多価カルボン酸及び多価ヒドロキシ化合物からなるものが挙げられる。
すなわち、多価カルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、フタル酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、2-カリウムスルホテレフタル酸、5-ソジウムスルホイソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、グルタル酸、コハク酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水フタル酸、p-ヒドロキシ安息香酸、トリメリット酸モノカリウム塩及びそれらのエステル形成性誘導体などを用いることができる。多価ヒドロキシ化合物としては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、p-キシリレングリコール、ビスフェノールA-エチレングリコール付加物、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリテトラメチレンオキサイドグリコール、ジメチロールプロピオン酸、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジメチロールエチルスルホン酸ナトリウム、ジメチロールプロピオン酸カリウムなどを用いることができる。これらの化合物の中から、それぞれ適宜1つ以上を選択し、常法の重縮合反応によりポリエステル樹脂を合成すればよい。
また、上記多価カルボン酸の一部として、5-ソジウムスルホイソフタル酸などのスルホイソフタル酸類を共重合して、ポリエステル骨格にスルホン酸基を導入し、中和して親水化した物が好ましく用いられる。共重合する量は、多価カルボン酸全体に対し通常1~13モル%、好ましくは3~10モル%、さらに好ましくは5~9モル%である。スルホン酸基を適量導入することで、樹脂の親水性を高め、防曇性を付与しやすくすることができる。さらに水分散安定性を向上させることができる。
また、ポリエステル樹脂として、後述する(メタ)アクリル変性ポリエステル樹脂を用いてもよい。本発明においては、粘着剤との密着性に優れるという観点から、ポリエステル樹脂として、(メタ)アクリル変性ポリエステル樹脂を用いることがより好ましい。
((メタ)アクリル樹脂)
(メタ)アクリル樹脂とは、アクリル系、メタクリル系のモノマーを含む重合性モノマーからなる重合体である。これらは、単独重合体あるいは共重合体、さらにはアクリル系、メタクリル系のモノマー以外の重合性モノマーとの共重合体のいずれでもよい。
(メタ)アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸アルキルエステル類由来の構成単位を有する重合体である。(メタ)アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルから選択される少なくとも1種の重合体でもよいし、これらから選択される少なくとも1種と、これら以外のモノマー類、例えば、スチレン又はスチレン誘導体、水酸基を含有するモノマーなどから選択される少なくとも1種との共重合体であってもよい。
また、それら重合体と他のポリマー(例えばポリエステル、ポリウレタン等)との共重合体も含まれる。例えばブロック共重合体、グラフト共重合体である。すなわち、それぞれ、(メタ)アクリル変性ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル変性ポリウレタン樹脂といえる。ただし、本明細書においては、(メタ)アクリル変性ポリエステル樹脂は、上記ポリエステル樹脂として、(メタ)アクリル変性ポリウレタン樹脂は、上記ポリウレタン樹脂として扱う。
あるいは、ポリエステル溶液、又はポリエステル分散液中で重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマーの混合物)も含まれる。同様にポリウレタン溶液、ポリウレタン分散液中で重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマーの混合物)及びポリウレタン合成中に重合性モノマーを合わせて重合して得られたポリマーも含まれる。同様にして他のポリマー溶液、又は分散液中で重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマー混合物)も含まれ、これらも本明細書では、(メタ)アクリル変性ポリエステル樹脂や、(メタ)アクリル変性ポリウレタン樹脂とし、それぞれ、上記ポリエステル樹脂、上記ポリウレタン樹脂として扱う。なお、(メタ)アクリル樹脂において使用される上記したポリエステル、ポリウレタンは、上述のバインダー樹脂に使用されるポリエステル、ポリウレタンとして例示されたものから適宜選択して使用できる。
また、(メタ)アクリル樹脂は、ポリエステルフィルムとの密着性をより向上させるために、ヒドロキシ基、アミノ基を含有することも可能である。
上記重合性モノマーとしては、特に限定はしないが、特に代表的な化合物としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸等の各種カルボキシル基含有モノマー類、及びそれらの塩;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、モノブチルヒドロキシフマレート、モノブチルヒドロキシイタコネート等の各種の水酸基含有モノマー類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートのような各種のアルキル(メタ)アクリル酸エステル類;1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の各種の他官能(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、又は(メタ)アクリロニトリル等の種々の窒素含有モノマー類;N-メチロール(メタ)アクリルアミドなどの水酸基含有の窒素含有モノマー類;スチレン、α-メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン等の各種スチレン誘導体;プロピオン酸ビニルのような各種のビニルエステル類;γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等の種々の珪素含有重合性モノマー類;燐含有ビニル系モノマー類;塩化ビニル、塩化ビニリデン等の各種のハロゲン化ビニル類;ブタジエン等の各種共役ジエン類が挙げられる。
上記の(メタ)アクリル樹脂の中では、アクリル系、メタクリル系のモノマーを含む重合性モノマーを重合してなる重合体が好ましく、重合性モノマーがアルキル(メタ)アクリル酸エステル類を含むことがより好ましい。
また、(メタ)アクリル樹脂を含む本組成物は、後述するように溶媒で希釈して塗布液とするのが好ましく、かかる溶媒が水を主溶媒(50質量%以上)とするのが好ましい。すなわち、塗布液を水系とした場合に溶解又は分散しやすくする観点から、重合性モノマーは水酸基やカルボキシル基などの親水性基を有することが好ましい。
したがって、アクリル樹脂は、アルキル(メタ)アクリル酸エステル類と、水酸基を含有するモノマー、カルボキシル基含有モノマーなどの親水性基含有モノマーを含む重合性モノマーを重合してなる重合体も好ましい。
また、アクリル樹脂は、例えば界面活性剤の存在下に重合性モノマーを重合した乳化重合体でもよい。
本組成物中の化合物(A)の含有量は、本組成物中の全不揮発成分に占める割合として、好ましくは30~97質量%、より好ましくは55~85質量%、さらに好ましくは60~79質量%の範囲である。当該含有量を30質量%以上とすることで、親水性のある樹脂層でありつつ、粘着剤に対する密着性を保つことができる。また、当該含有量を97質量%以下とすることで、(B)親水性化合物による防曇効果を得ることができる。
((化合物(B)))
本組成物は、化合物(B)として親水性化合物を含有する。
前記化合物(B)を含むことで、樹脂層表面の表面自由エネルギーが向上し、樹脂層表面に微小水滴が形成するのを抑制することができる。そして、結果として防曇性を付与することができる。
前記(B)親水性化合物としては、界面活性剤、エチレンオキサイド由来の構造単位を持つポリエーテル系ポリマー、4級アンモニウム塩含有化合物、ポリビニルアルコールなどの水酸基含有ポリマーなどが挙げられる。これらの中でも、樹脂層への水の浸透性を向上させ、透明で曇りのない表面を維持する観点、及び後述する表面自由エネルギーの変化を起こし、防曇特性を持ちながら粘着剤との密着性も得られるという観点から、界面活性剤が好ましい。
界面活性剤としては、従来公知のものを全て使用することができるが、例えば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性イオン系界面活性剤などが挙げられる。これらの中でも、(A)バインダー樹脂との親和性の点から、アニオン性界面活性剤がより好ましい。前記界面活性剤は、単独で用いてもよく、2種以上組み合わせてもよい。
前記アニオン性界面活性剤としては、ナトリウムドデシルサルフェート、カリウムドデシルサルフェート、アンモニウムドデシルサルフェート等のアルキルサルフェート類;ナトリウムドデシルポリグリコールエーテルサルフェート、アンモニウムポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェート等のポリオキシエチレンエーテルサルフェート類;ナトリウムスルホリシノレート;スルホン化パラフィンのアルカリ金属塩、スルホン化パラフィンのアンモニウム塩等のアルキルスルホネート;ナトリウムラウレート、トリエタノールアミンオレート、トルエタノールアミンアビエテート等の脂肪酸塩;ナトリウムベンゼンスルホネート、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルカリフェノールヒドロキシエチレンのアルカリ金属サルフェート等のアルキルアリールスルホネート;高アルキルナフタレンスルホン酸塩;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ビス(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホコハク酸ナトリウム塩等のアルキルスルホコハク酸塩及びジアルキルスルホコハク酸塩;ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩;ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩;ポリオキシエチレンエーテルリン酸塩;ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩;N-アシルアミノ酸塩;N-アシルメチルタウリン塩等が挙げられる。本組成物において、(B)親水性化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
中でも、樹脂層の透明性や親水性、粘着剤に対する密着性などを両立できる観点から、化合物(B)としてジアルキルスルホコハク酸塩を含むことが好ましい。
本組成物中の化合物(B)の含有量は、本組成物中の全不揮発成分に占める割合として、好ましくは3~70質量%、より好ましくは15~45質量%、さらに好ましくは21~40質量%の範囲である。当該含有量を3質量%以上とすることで、十分な防曇性が得られる。また、当該含有量を70質量%以下とすることで、粘着剤との密着性を保つことができる。
((化合物(C)))
本組成物は、ブロッキング、滑り性などの取り扱い性改良を目的として、さらに、(C)粒子を含むことが好ましい。
本組成物が(C)粒子を含有することで、樹脂層の少なくとも一部の面が、露出した状態で使用される用途(例えば、フェイスシールド)においても優れた取り扱い性を有する。より具体的にいえば、フェイスシールドの加工工程には、シート状に裁断する工程、所定の形状に打ち抜く工程、折り曲げる工程等があり、一連の工程において、製造途中の中間製品や最終製品を積み重ねて保管することがあるため、こうした場合にはシート同士の適度な取り扱い性が求められる。
前記(C)粒子の具体例としては、前述のポリエステルフィルム中に含有させることができる粒子と同様であり、それらの中でも、透明性の観点から、シリカを含むことが好ましい。本組成物において、(C)粒子は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
使用する(C)粒子の形状は、球状、塊状、棒状、扁平状、鎖状等が挙げられる。これらの中でも、本組成物中に均一に分布しやすいという観点から、球状であることが好ましい。
前記(C)粒子の平均粒径は、5~500nmであることが好ましく、より好ましくは10~300nm、さらに好ましくは20~150nmである。当該平均粒径が、500nm以下であれば、フィルムの透明性が良好となり、使用者の視認性向上につながる。一方、当該平均粒径が、5nm以上であれば、取り扱い性をより効果的に向上させることができる。
本組成物が粒子を含む場合、本組成物中の化合物(C)の含有量は、本組成物中の全不揮発成分に占める割合として、好ましくは0.05~15質量%、より好ましくは0.1~10質量%、さらに好ましくは0.5~8質量%の範囲である。当該含有量を0.05質量%以上とすることで、取り扱い性を適切に改良できる。また、当該含有量を15質量%以下とすることで、フィルムの透明性が良好となり、使用者の視認性向上につながる。
((化合物(D)))
本組成物は、レベリング目的で、さらに、(D)フッ素系界面活性剤を含むことが好ましい。
本組成物が(D)フッ素系界面活性剤を含有することで、ポリエステルフィルムへの濡れ性を向上させることができ、均一にコートできる等の塗布性が改良する。そして、結果として塗布によってできるスジやムラの形成を抑制することができる。このようなスジやムラが少なければ、本積層ポリエステルフィルムを窓ガラス用やフェイスシールド用といった視認性が重要な用途に用いた際に、視認性の低下を防ぐことができる。
前記(D)フッ素系界面活性剤としては、その構造中に(ポリ)アルキレンオキサイドや(ポリ)グリセリン、これらの誘導体を含むノニオン系のものが好ましく、さらに疎水性部分にフッ素置換アルキル基又は炭素-炭素三重結合構造を有するものがより好ましい。
本組成物がフッ素系界面活性剤を含む場合、本組成物中の化合物(D)の含有量は、本組成物中の全不揮発成分に占める割合として、好ましくは0.01~10質量%、より好ましくは0.05~7質量%、さらに好ましくは0.1~5質量%の範囲である。当該含有量を0.01質量%以上とすることで、ポリエステルフィルムへの濡れ性を向上させることができ、塗布によってできるスジやムラの形成を抑制することができる。また、当該含有量を10質量%以下とすることで、防曇性能と易接着性能への影響を低減することができる。
((その他))
また、本発明の主旨を損なわない範囲において、上記化合物以外にも、架橋剤、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、有機系潤滑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、発泡剤、染料、顔料等の添加剤をさらに適宜配合してもよい。
((溶媒))
本組成物は、溶媒で希釈して塗布液としてもよい。すなわち、本組成物は、液状の塗布液として、例えば本ポリエステルフィルムに塗布し、必要に応じて乾燥、かつ、硬化させて樹脂層を形成させるとよい。
なお、本組成物を構成する各成分(化合物(A)及び(B)、任意に添加される化合物(C)及び(D)、その他成分等)は、溶媒に溶解させてもよいし、溶媒中に分散させてもよい。
塗布液とした場合、塗布液中における本組成物の全不揮発成分の濃度は、0.1~50質量%であることが好ましい。0.1質量%以上であれば、効率的に所望の厚みの樹脂層を形成することができる。一方、50質量%以下であれば、塗工時の粘度を抑えることで樹脂層の外観を向上させることができ、また、塗布液中の安定性を高めることができる。
前記溶媒としては、特に制限はなく、水及び有機溶剤のいずれも使用することができる。環境保護及び人体への影響の観点から、水を主溶媒(全溶媒の50質量%以上)として水性塗布液とすることが好ましい。水の含有量に関して、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上であるのがよい。水性塗布液には、少量の有機溶剤を含有していてもよい。有機溶剤の具体的な量は、質量基準で水の量以下とするとよく、例えば、溶媒中の50質量%以下、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下とするのがよい。
水と併用する有機溶剤としては、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、グリセリン等のアルコール類;エチルセロソルブ、t-ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類;ジメチルエタノールアミン等のアミン類等を例示することができる。これらは単独、もしくは複数を組み合わせて用いることができる。水性塗布液に、必要に応じてこれらの有機溶剤を適宜選択し、含有させることで、塗布液の安定性、塗工性を良好にできる場合がある。
また、上記溶媒として有機溶剤のみを使用する場合、かかる有機溶剤としては、トルエン等の芳香族炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;エチルメチルケトン、イソブチルメチルケトン等のケトン類;エタノール、2-プロパノール等のアルコール類;ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル類などを挙げることができる。これらは、溶解性、塗工性や沸点等を考慮して単独で使用してもよいし、複数種を混合して使用してもよい。
樹脂層中には、本組成物を構成する各成分(化合物(A)及び(B)、任意に添加される化合物(C)及び(D)、その他成分等)の未反応物、反応後の化合物、あるいはそれらの混合物が存在しているものと推測できる。
なお、樹脂層中の各成分の分析は、例えば、TOF-SIMS、ESCA、蛍光X線等によって行うことができる。
<樹脂層の形成方法>
次に、本積層ポリエステルフィルムを構成する樹脂層の形成方法について説明する。
本樹脂層は、本組成物をポリエステルフィルムに塗布し、必要に応じて、塗布した本組成物に対して乾燥、硬化、熱処理等などの処理を行って形成すればよく、少なくとも熱処理を行うことが好ましい。樹脂組成物を塗布する方法は、特に限定されず、例えばリバースグラビアコート、ダイレクトグラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート、カーテンコート等、従来公知の塗工方式を用いることができる。
また、樹脂層の形成方法としては、インラインコーティング及びオフラインコーティングがある。塗布した樹脂組成物を熱処理する方法は、特に限定されるわけではなく、例えばオフラインコーティングにより樹脂層を設ける場合、通常、80~200℃で3~40秒間、好ましくは100~180℃で3~40秒間を目安として熱処理を行うのがよい。一方、インラインコーティングにより樹脂層を設ける場合、通常、70~280℃で3~200秒間を目安として熱処理を行うのがよい。
また、熱処理は、上記温度範囲内において温度の異なる2段以上の工程で行ってもよい。熱処理の少なくとも一部は、延伸時の加熱により行ってもよい。また、乾燥及び硬化は、上記熱処理における加熱により合わせて行うとよい。
本発明では、樹脂層は、ポリエステルフィルムの製膜工程中にフィルム表面を処理する、インラインコーティングにより形成されるのが好ましい。
インラインコーティングは、ポリエステルフィルム製造の工程内でコーティングを行う方法であり、具体的には、ポリエステルを溶融押し出ししてから延伸後、熱固定して巻き上げるまでの任意の段階でコーティングを行う方法である。通常は、溶融、急冷して得られる未延伸シート、延伸された一軸延伸フィルム、熱固定前の二軸延伸フィルム、熱固定後で巻き上げ前のフィルムのいずれかにコーティングする。
以下に限定するものではないが、例えば逐次二軸延伸においては、特に長手方向(縦方向)に延伸された一軸延伸フィルムにコーティングした後に幅方向(横方向)に延伸する方法が優れている。かかる方法によれば、製膜と樹脂層形成を同時に行うことができるため、製造コスト上のメリットがあり、また、コーティング後に延伸を行うために、樹脂層の厚みを延伸倍率により変化させることもでき、オフラインコーティングフィルムに比べ、薄膜コーティングをより容易に行うことができる。
また、延伸前にフィルム上に樹脂層を設けることにより、樹脂層をポリエステルフィルムと共に延伸することができ、それにより樹脂層をポリエステルフィルムに強固に密着させることができる。
さらに、二軸延伸ポリエステルフィルムの製造において、クリップ等によりフィルム端部を把持しつつ延伸することで、フィルムを縦及び横方向に拘束することができ、その後の熱処理(熱固定工程)において、しわ等が入らず平面性を維持したまま高温をかけることができる。
それゆえ、塗布後に施される熱処理が他の方法では達成されない高温とすることができるために、樹脂層の造膜性が向上し、樹脂層とポリエステルフィルムをより強固に密着させることができる。さらには、強固な樹脂層とすることができ、樹脂層上に形成され得る各種の機能層への耐移行性や耐湿熱性等の性能を向上させることができる。
また、オフラインコーティングあるいはインラインコーティングにかかわらず、必要に応じて熱処理と紫外線照射等の活性エネルギー線照射とを併用してもよい。本積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルムにはあらかじめ、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を施してもよい。
本樹脂層の厚みは、最終的に得られる積層ポリエステルフィルムにおける樹脂層の厚さとして、好ましくは0.005μm以上、より好ましくは0.01μm以上、さらに好ましくは0.02μm超である。また、当該樹脂層の厚さは、1μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.5μm以下、さらに好ましくは0.2μm以下である。当該樹脂層の厚さがかかる範囲であれば、優れた防曇性及び易接着性を付与することができる。
なお、当該樹脂層の厚さは、実施例に記載の方法で測定できる。
<<<積層ポリエステルフィルムの物性>>>
次に、本積層ポリエステルフィルムの物性について説明する。
<<表面自由エネルギー>>
表面自由エネルギーは、分子間力の成分の和で構成されている。
前記分子間力は、分散力、配向力、誘起力、水素結合力に分類され、それぞれ、分散成分(Dispersion)、極性成分(Polar)、誘起成分(Induction)、水素結合成分(Hydrogen)として表面自由エネルギーを構成する。
これら成分のうち、誘起成分は非常に弱いことから無視することができ、水素結合成分は極性成分内にまとめることができる。
本発明では、樹脂層表面の表面自由エネルギーγSVの各成分(分散成分γSV 及び極性成分γSV )は、以下の測定方法及び算出方法によって求められる値である。
まず、下記γLV1、γLV1 及びγLV1 が既知である第1の液体と、測定対象の樹脂層表面との接触角(θ)を測定し、下記γLV2、γLV2 及びγLV2 が既知である第2の液体と、測定対象の樹脂層表面との接触角(θ)を測定する。
次いで、これらの値を下記式(I-1)及び(I-2)に代入し、下記式(I-1)及び(I-2)の連立方程式から、測定対象の樹脂層表面の表面自由エネルギーγSVの分散成分γSV と極性成分γSV を求める。なお、いずれも単位はmN/mである。
(γSV ・γLV1 1/2+(γSV ・γLV1 1/2=γLV1(1+cosθ)/2・・・(I-1)
(γSV ・γLV2 1/2+(γSV ・γLV2 1/2=γLV2(1+cosθ)/2・・・(I-2)
γSV :樹脂層表面の表面自由エネルギーγSVの分散成分
γSV :樹脂層表面の表面自由エネルギーγSVの極性成分
γLV1:第1の液体の表面張力
γLV2:第2の液体の表面張力
θ:第1の液体の接触角
θ:第2の液体の接触角
γLV1 :第1の液体の表面張力の分散成分
γLV1 :第1の液体の表面張力の極性成分
γLV2 :第2の液体の表面張力の分散成分
γLV2 :第2の液体の表面張力の極性成分
なお、上記式(I-1)及び(I-2)は、下記Owens-Wendt-Rable-Kaelble(OWRK)の理論式と下記Youngの式から導かれる式である。
OWRKの理論式:
γSL=γSV+γLV-2(γSV ・γLV 1/2-2(γSV ・γLV 1/2
Youngの式:
γSV=γSL+γLV・cosθ
(ただし、式中、γSLは樹脂層表面と液体の界面の張力である。)
ここで、本発明では、樹脂層表面に液体が接触した1秒後の接触角より算出される表面自由エネルギーγの各成分を、それぞれ、分散成分γ 、極性成分γ とした。
そして、樹脂層表面に液体が接触した30秒後の接触角より算出される表面自由エネルギーγの各成分を、それぞれ、分散成分γ 、極性成分γ とした。
本積層ポリエステルフィルムは、下記式(1)及び(2)の関係を満足する。
γ ≧20.0mN/m・・・(1)
(γ /γ )≧0.91・・・(2)
(ただし、γ は、前記樹脂層表面に液体が接触した1秒後の接触角より算出される、前記樹脂層表面の表面自由エネルギーの極性成分を表し、γ 及びγ は、それぞれ、前記樹脂層表面に液体が接触した30秒後の接触角より算出される、前記樹脂層表面の表面自由エネルギーの分散成分及び極性成分を表す。)
上記式(1)について説明するが、樹脂層表面に液体が接触した1秒後の接触角より算出される、樹脂層表面の表面自由エネルギーの極性成分γ が、20.0mN/m以上であれば、表面自由エネルギーが十分となり、樹脂層表面に水滴が濡れ広がり、微小水滴が形成するのを抑制することができる。すなわち、優れた防曇性を発現できる。呼気に対する曇りは、呼気の水滴が樹脂層に接触した直後の現象であることから、1秒後の表面自由エネルギーが重要であること推定される。
かかる観点から、当該極性成分γ は、25.0mN/m以上であることが好ましく、より好ましくは28.0mN/m以上である。
また、粘着剤との密着性を両立しやすくする観点から、当該極性成分γ は、50.0mN/m以下であることが好ましく、より好ましくは45.0mN/m以下、さらに好ましくは40.0mN/m以下である。
上記式(2)について説明するが、樹脂層表面に液体が接触した30秒後の接触角により算出される、樹脂層表面の表面自由エネルギーの分散成分γ と極性成分γ の比(γ /γ )が、0.91以上であれば、優れた易接着性能を発現できる。
当該成分比(γ /γ )を0.91以上とすることで、優れた易接着性を発現できる機構については定かではないが、樹脂層上に積層され得る粘着層の表面自由エネルギーの分散成分と極性成分の比と関係していると推定している。具体的に述べると、樹脂層の表面自由エネルギーの分散成分γ と極性成分γ の比(γ /γ )と、粘着層の表面自由エネルギーの分散成分と極性成分の比が、近ければ近いほど類似性があるといえ、樹脂層と粘着剤との密着性を高めることができると推定している。粘着層の表面自由エネルギーは分散成分の方が高い場合が多く、そのため本樹脂層の当該成分比(γ /γ )も高いことが好ましいと推定される。また、粘着剤との密着性は、貼り付け直後では無く、より長い時間の接触の現象であることから、特に、液体が接触した直後の1秒後ではなく、30秒後の値を考慮することで樹脂層の易接着性を評価できると考えている。
かかる観点から、当該比(γ /γ )は、0.93以上であることが好ましく、より好ましくは0.95以上である。
また、防曇性能との両立の観点から、当該比(γ /γ )は、2.0以下であることが好ましく、より好ましくは1.6以下、さらに好ましくは1.4以下である。
本積層ポリエステルフィルムは、さらに、下記式(3)の関係を満たすことが好ましい。
(γ /γ )-(γ /γ )≧0.02・・・(3)
(ただし、γ は、前記樹脂層表面に液体が接触した1秒後の接触角より算出される、前記樹脂層表面の表面自由エネルギーの分散成分を表す。)
通常、親水性化合物を有する防曇性樹脂層は、水の接触後から水滴が塗れ広がるため、γ よりもγ の方が高くなり、((γ /γ )-(γ /γ ))は負の値になる。一方で、本樹脂層は、上述の成分構成とすることにより、γ よりもγ の方が小さくなり、式(3)を満たすことが可能となる。このことにより、防曇性能を持ちつつ、粘着剤に対して優れた密着性を得られることが分かった。
かかる観点から、上記の((γ /γ )-(γ /γ ))は、より好ましくは0.04以上、さらに好ましくは0.06以上である。
また、前記((γ /γ )-(γ /γ ))は、防曇性と易接着性を両立する観点から、0.5以下であることが好ましく、より好ましくは0.3以下、さらに好ましくは0.2以下である。
樹脂層表面に液体が接触した1秒後の接触角より算出される、樹脂層表面の表面自由エネルギーの分散成分γ は、樹脂層の表面自由エネルギーを高める観点から、10.0mN/m以上であることが好ましく、より好ましくは20.0mN/m以上、さらに好ましくは25.0mN/m以上である。当該分散成分γ の上限値は、特に制限されず、50.0mN/m程度である。
また、樹脂層表面に液体が接触した1秒後の接触角により算出される、樹脂層表面の表面自由エネルギーの分散成分γ と極性成分γ の比(γ /γ )は、粘着剤の短時間でのなじみやすさの観点から、0.5以上であることが好ましく、より好ましくは0.6以上、さらに好ましくは0.7以上である。当該比(γ /γ )の上限値は、特に制限されず、1.5程度である。
樹脂層表面に液体が接触した30秒後の接触角より算出される、樹脂層表面の表面自由エネルギーの分散成分γ は、上記式(2)を満たし、粘着剤との密着性を高める観点から、28.0mN/m以上であることが好ましく、より好ましくは30.0mN/m以上、さらに好ましくは31.0mN/m以上である。一方、より長期間の防曇性能の観点から、当該分散成分γ は、50.0mN/m以下であることが好ましく、より好ましくは45mN/m以下、さらに好ましくは40mN/m以下である。
また、樹脂層表面に液体が接触した30秒後の接触角より算出される、樹脂層表面の表面自由エネルギーの極性成分γ は、より長期間の防曇性能の観点から、18.0mN/m以上であることが好ましく、より好ましくは23.0mN/m以上、さらに好ましくは26.0mN/m以上である。一方、上記式(2)を満たし、粘着剤との密着性を得る観点から、当該極性成分γ は、45.0mN/m以下であることが好ましく、より好ましくは40.0mN/m以下、さらに好ましくは35.0mN/m以下である。
樹脂層表面の表面自由エネルギーは、本組成物中の組成や含有量、本樹脂層の厚みなどによって調整することができる。
なお、樹脂層表面の表面自由エネルギーは、実施例に記載の方法で測定できる。
<<水滴接触角>>
樹脂層表面に水滴が接触した1秒後の水滴接触角は、45度以下であることが好ましく、より好ましくは43度以下、さらに好ましくは40度以下である。当該水滴接触角が、45度以下であれば、樹脂層表面が親水性となり、防曇性能が良好となる。当該水滴接触角の下限値は、特に制限されないが、1度以上が好ましく、より好ましくは5度以上である。
また、樹脂層表面に水滴が接触した30秒後の水滴接触角は、36度以下であることが好ましく、より好ましくは35度以下、さらに好ましくは34度以下である。当該水滴接触角が、36度以下であれば、一定時間経過後も防曇性能を維持できる。当該水滴接触角の下限値は、特に制限されないが、5度以上が好ましく、より好ましくは20度以上である。
水滴接触角は、本組成物中の組成や含有量、本樹脂層の厚みなどによって調整することができる。
なお、水滴接触角は、実施例に記載の方法で測定できる。
<<テープ密着力>>
本積層ポリエステルフィルムの樹脂層とテープの間の密着力(テープ密着力)は、4000mN/cm以上であることが好ましく、より好ましくは4100mN/cm以上、さらに好ましくは4200mN/cm以上である。当該テープ密着力が、4000mN/cm以上であれば、テープ(粘着剤、粘着層)との密着性が良好といえ、本積層ポリエステルフィルムが良好な易接着性能を有するといえる。当該テープ密着力の上限値は、特に制限されないが、6000mN/cm以下であることが好ましい。
テープ密着力は、本組成物中の組成や含有量、本樹脂層の厚みなどによって調整することができる。
なお、テープ密着力は、実施例に記載の方法で測定できる。
<<<積層ポリエステルフィルムの用途>>>
本樹脂層は、樹脂層表面の表面自由エネルギーに関する特定の関係式を満たすことにより、優れた防曇性及び易接着性を発現できる点に特徴がある。
特に、表面自由エネルギーの各成分(分散成分及び極性成分)をも考慮することで、防曇性能と易接着性能の両立が可能となった。
本積層ポリエステルフィルムは、防曇性を向上させる目的で各種用途に使用することができ、その用途は特に制限されないが、例えば、窓、鏡、レンズ、ゴーグル、マスク、シールド等に使用することができる。
中でも、テープが密着する易接着性も併せ持つことから、樹脂層の少なくとも一部に粘着剤の層(粘着層)を備えるといった使用形態に好適に用いることができる。このような使用形態、より具体的には、樹脂層表面の一部を両面テープ等で何かに貼り付けるといった使用形態としては、フェイスシールドが挙げられる。
したがって、本積層ポリエステルフィルムは、フェイスシールド用として特に好ましく用いられる。
本発明の実施形態に係るフェイスシールド1の一例としては、図1が挙げられる。図1に示すように、フェイスシールド1は、使用者の口及び鼻周辺を覆うためのマスク2、好ましくは不織布マスクに、連結部14を介して着脱可能に取り付けられ、使用者の目周辺を覆うように使用されることが好ましい。
フェイスシールド1は、図2に示すように、ポリエステルフィルム13の上に樹脂層12が積層され、樹脂層12の少なくとも一部に粘着層11を備えていることが好ましい。
また、図2の点線部で示すように、粘着層11は、マスク2に取りつけるための連結部14の一部としても機能させることが好ましい。この連結部14は、粘着層11を備えるテープとすることが好ましく、当該テープは両面テープであることがより好ましい。両面テープのマスク2側表面の形状は、例えば特開2015-142654号公報(特に、当該公報の図3、図5及び図6参照)等に記載されている面ファスナー(メカニカルファスナー)のような、フック状であることが好ましい。なお、粘着層11の具体的な態様は、特に制限されず、例えば、アクリル系粘着層、ウレタン系粘着層、シリコーン系粘着層、合成ゴム系粘着層が挙げられる。これらの中でも、好適な粘着力や耐久力を発揮し得る観点から、アクリル系粘着剤が好ましい。
ただし、本発明の実施形態に係るフェイスシールドは、図1や図2に限定されない。
<<<語句の説明>>>
本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
本発明において、「X~Y」(X,Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」あるいは「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。
また、「X以上」(Xは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
ただし、本発明は、その要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
<評価方法>
(1)ポリエステルの固有粘度(IV)
ポリエステルに非相溶な成分を除去したポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(質量比)の混合溶媒100mLを加えて溶解させ、粘度測定装置「VMS-022UPC・F10」(株式会社離合社製)を用いて、30℃で測定した。
(2)粒子の平均粒径
粒子の平均粒径は、10個以上の粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して粒子の直径を測定し、その平均値を平均粒径として求めた。その際、非球状粒子の場合は、最長径と最短径の平均値を各粒子の直径として測定した。
(3)樹脂層の厚み
樹脂層の表面をRuOで染色し、エポキシ樹脂中に包埋した。その後、超薄切片法により作成した切片をRuOで染色し、樹脂層断面を透過型電子顕微鏡(TEM)(株式会社日立ハイテク製、H-7650、加速電圧100kV)を用いて測定した。
(4)樹脂層表面の表面自由エネルギー
23℃、50%RHの環境下で24時間以上調湿したフィルムサンプルの樹脂層表面の接触角を、自動接触角計(DataPhysics社製、型式「OCA20」)を使用して、水、ヨウ化メチレン、n-ヘキサデカンの静的接触角を測定した。なお、液滴は2μLとした。
得られた接触角と各液体の表面張力成分値(表1)を用いて、Owens-Wendt-Rable-Kaelble(OWRK)の理論式により樹脂層表面の表面自由エネルギーの極性成分及び分散成分を算出した。
なお、接触角は、樹脂層表面に液体が接触した1秒後及び30秒後をそれぞれ測定した。
(5)樹脂層表面の水滴接触角
23℃、50%RHの環境下で24時間以上調湿したフィルムサンプルの樹脂層表面の接触角を、自動接触角計(DataPhysics社製、型式「OCA20」)を使用して、2μLの水滴を樹脂層表面へ接触後、1秒後及び30秒後の水滴接触角を測定した。
(6)防曇性試験(呼気)
23℃、50%RHの環境下で、顔から約5cmの位置にフィルムを保持し、息を吐きかけ、目視で曇り具合を、以下の評価基準で評価した。
○:フィルムの曇りを視認出来なかった
×:フィルムの曇りを視認出来た
(7)防曇性試験(40℃湯上)
40℃の湯煎上に樹脂層を10秒間及び1分間晒し、以下の評価基準で評価した。
〇:フィルムを通した視界に影響はなかった
△:形成された水膜でにじみが見えたが、フィルムを通した視界は良好だった
×:形成された水滴で曇り、フィルムを通した視界が遮られた
(8)テープ密着力
表面処理のされていない厚み100μmのポリエステルフィルム(三菱ケミカル社製T100-100)に、幅24mmの両面粘着テープ(3M社製、「スコッチ665-3-24」、アクリル系粘着剤)を貼り合わせ、両面粘着テープのもう一方の面を樹脂層表面に2kgゴムローラーにて1往復圧着し、室温にて1時間放置後の剥離力を測定した。剥離力は、株式会社島津製作所製、「AGX-plus」を使用し、引張速度300mm/分の条件下、180°剥離を行った。
なお、上記両面粘着テープの粘着面の表面自由エネルギーを、上記(4)と同様の手法で、各液体が接触した30秒後の接触角より算出した。上記両面粘着テープの粘着面の表面自由エネルギーは下記の数値だった。
分散成分:28.2mN/m
極性成分:1.9mN/m
分散成分/極性成分:14.84
<使用した材料>
実施例及び比較例において使用したポリエステルは、以下のとおりである。
[ポリエステル(A)]
テレフタル酸ジメチル100質量部とエチレングリコール55質量部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム・四水塩0.04質量部を反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物にエチルアシッドフォスフェート0.02質量部を添加した後、三酸化アンチモン0.04質量部を加えて、4時間重縮合反応を行った。温度は230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、固有粘度0.65dL/gに相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させ、固有粘度0.65dL/gのポリエステル(A)を得た。
[ポリエステル(B)]
テレフタル酸ジメチル100質量部とエチレングリコール45質量部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム・四水塩0.06質量部を反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物にエチルアシッドフォスフェート0.03質量部を添加した後、エチレングリコールに分散させた平均粒径2.7μmのシリカ粒子を0.2質量部、三酸化アンチモン0.03質量部を加えて、4時間重縮合反応を行った。温度は230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、固有粘度0.65dL/gに相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させ、固有粘度0.65dL/gのポリエステル(B)を得た。
下記表2に示す組成にて撹拌混合して得られる樹脂組成物を水で希釈して、塗布液1~11を調製した。使用した化合物は、以下のとおりである。
[化合物(A):バインダー樹脂(IA)]
下記組成で重合したポリエステル系ウレタン樹脂の水分散体
イソホロンジイソシアネートユニット:テレフタル酸ユニット:イソフタル酸ユニット:エチレングリコールユニット:ジエチレングリコールユニット:ジメチロールプロピオン酸ユニット=12:19:18:21:25:5(mol%)
[化合物(A):バインダー樹脂(IB)]
下記組成で重合したポリエステル系ウレタン樹脂の水分散体
ヘキサメチレンジイソシアネート:アジピン酸:ヘキサンジオール:プロピレングリコール変性ビスフェノールA:ジメチロールプロピオン酸=31:16:31:20:2(mol%)
[化合物(A):バインダー樹脂(IC)]
下記組成のポリカーボネート系ウレタン樹脂及び(メタ)アクリレート化合物の混合物の水分散体
分子量1100のポリヘキサメチレンカーボネートジオールユニット:ジメチロールプロピオン酸ユニット:水添キシリレンジイソシアネートユニット:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートユニット=11:7:40:42(mol%)から形成されるポリウレタン(メタ)アクリレート樹脂が50質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートが27質量部、トリメチロールプロパントリアクリレート23質量部で混合
[化合物(A):バインダー樹脂(ID)]
下記組成のアクリル変性ポリエステル樹脂の水分散体
(酸成分)イソフタル酸//(ジオール成分)ジエチレングリコール/ネオペンチルグリコール=100//70/30(mol%)から形成されるポリエステル樹脂42質量部とポリメタクリル酸メチル58質量部から形成されるアクリル変性ポリエステル樹脂の水分散体
[化合物(A):バインダー樹脂(IE)]
エチルアクリレート/メチルメタクリレート=35/65(mol%)の乳化重合体(乳化剤:ノニオン系界面活性剤)であるアクリル樹脂
[化合物(A):バインダー樹脂(IF)]
下記組成で共重合したポリエステル樹脂の水分散体
モノマー組成:(酸成分)テレフタル酸/イソフタル酸/5-ソジウムスルホイソフタル酸//(ジオール成分)エチレングリコール/1,4-ブタンジオール/ジエチレングリコール=56/40/4//70/20/10(mol%)
[化合物(A):バインダー樹脂(IG)]
下記組成で重合したアクリル樹脂の水分散体
エチルアクリレート/n-ブチルアクリレート/メチルメタクリレート/N-メチロールアクリルアミド/アクリル酸=65/21/10/2/2(質量%)の乳化重合体(乳化剤:アニオン系界面活性剤)
[化合物(B):親水性化合物(II)]
ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム
[化合物(C):粒子(III)]
平均粒径0.07μmの球状シリカ粒子
[化合物(D):フッ素系界面活性剤(IV)]
疎水性基に分岐パーフルオロアルケニル基、親水性基にポリエチレンオキサイド鎖(平均鎖長12単位)を有する構造のフッ素系ノニオン性界面活性剤
(実施例1)
ポリエステル(A)、(B)をそれぞれ92質量%、8質量%の割合で混合した混合原料を最外層(表層)の原料とし、ポリエステル(A)のみを中間層の原料とした。最外層及び中間層の原料の各々を2台の押出機に供給し、各々285℃で溶融した後、40℃に設定した冷却ロール上に、2種3層(表層/中間層/表層=8/84/8の吐出量)の層構成で共押出し冷却固化させて未延伸シートを得た。
次いで、このフィルムを85℃の加熱ロール群を通過させながら長手方向に3.3倍延伸し、一軸延伸フィルムとした。この一軸延伸フィルムの片面に、下記表2に示す組成を有する塗布液1を塗布し、次いでこのフィルムをテンター延伸機に導き、100℃で幅方向に4.3倍延伸し、さらに235℃で熱処理を施した後、幅方向に2%の弛緩処理を行い、樹脂層の厚みが0.02μm、樹脂層を除いたポリエステルフィルムの厚みが50μmの積層ポリエステルフィルムを得た。評価結果を表3に示す。
(実施例2~11)
表2に示す塗布液を用いると共に、樹脂層の厚みを表3に示す値に変更した以外は、実施例1と同様にして、積層ポリエステルフィルムを得た。評価結果を表3に示す。
(比較例1)
樹脂層を設けなかったこと以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルフィルムを得た。評価結果を表3に示す。
(比較例2~4)
表2に示す塗布液を用いると共に、樹脂層の厚みを表3に示す値に変更した以外は、実施例1と同様にして、積層ポリエステルフィルムを得た。評価結果を表3に示す。
表3の結果が示す通り、本積層ポリエステルフィルムは、式(1)、(2)及び(3)を満たしており、呼気に対する防曇性に優れ、テープ密着力も優れた特性を有していた。さらに30秒後の水滴接触角が36度以下である実施例1~3及び10は、1分後の長時間経過後も防曇性に優れたフィルムであった。
一方、樹脂層を有さず、式(1)も満たさない比較例1は、防曇性を有さなかった。また、式(2)を満たさない比較例2~4は、防曇性には優れるものの、テープ密着力が劣るフィルムであった。
本発明の積層ポリエステルフィルムは、優れた防曇性能を有することから、窓、鏡、レンズ、ゴーグル、マスク、シールド等に使用することができる。
また、本発明の積層ポリエステルフィルムは、テープが密着する易接着性をも有することから、樹脂層表面の一部を両面テープ等で何かに貼り付けるといった使用形態にも用いることができる。
したがって、本発明の積層ポリエステルフィルムは、フェイスシールドとして好適に用いることができる。
1 フェイスシールド
2 マスク
11 粘着層
12 樹脂層
13 ポリエステルフィルム
14 連結部

Claims (11)

  1. ポリエステルフィルムと、前記ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、樹脂組成物により形成された樹脂層とを備える積層ポリエステルフィルムであって、
    前記樹脂組成物が(A)バインダー樹脂と(B)親水性化合物を含み、
    下記式(1)及び(2)の関係を満たす、積層ポリエステルフィルム。
    γ ≧20.0mN/m・・・(1)
    (γ /γ )≧0.91・・・(2)
    (ただし、γ は、前記樹脂層表面に液体が接触した1秒後の接触角より算出される、前記樹脂層表面の表面自由エネルギーの極性成分を表し、γ 及びγ は、それぞれ、前記樹脂層表面に液体が接触した30秒後の接触角より算出される、前記樹脂層表面の表面自由エネルギーの分散成分及び極性成分を表す。)
  2. さらに、下記式(3)の関係を満たす、請求項1に記載の積層ポリエステルフィルム。
    (γ /γ )-(γ /γ )≧0.02・・・(3)
    (ただし、γ は、前記樹脂層表面に液体が接触した1秒後の接触角より算出される、前記樹脂層表面の表面自由エネルギーの分散成分を表す。)
  3. 前記樹脂層表面に水滴が接触した1秒後の水滴接触角が45度以下である、請求項1又は2に記載の積層ポリエステルフィルム。
  4. 前記樹脂層表面に水滴が接触した30秒後の水滴接触角が36度以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の積層ポリエステルフィルム。
  5. 前記(A)バインダー樹脂が、ポリウレタン樹脂及びポリエステル樹脂からなる群から選ばれる1種以上を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の積層ポリエステルフィルム。
  6. 前記(B)親水性化合物が、ジアルキルスルホコハク酸塩を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の積層ポリエステルフィルム。
  7. 前記(A)バインダー樹脂の含有量が、不揮発成分として30~97質量%である、請求項1~6のいずれか1項に記載の積層ポリエステルフィルム。
  8. 前記樹脂組成物が、さらに、(C)粒子を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の積層ポリエステルフィルム。
  9. 前記樹脂組成物が、さらに、(D)フッ素系界面活性剤を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の積層ポリエステルフィルム。
  10. 前記樹脂層の少なくとも一部に粘着層を備える、請求項1~9のいずれか1項に記載の積層ポリエステルフィルム。
  11. フェイスシールド用である、請求項1~10のいずれか1項に記載の積層ポリエステルフィルム。
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