JP2023137000A - 検体分析装置、検体分析方法およびプログラム - Google Patents

検体分析装置、検体分析方法およびプログラム Download PDF

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Abstract

【課題】検体の測定で得られたデータを人工知能アルゴリズムによって分析するコンピュータの負荷を軽減可能な検体分析装置、検体分析方法およびプログラムを提供する。【解決手段】検体中の分析物を分析するための検体分析装置4000は、検体から光学的信号を取得するための光学式検出部を含む測定ユニット4000と、光学的信号に対応する第1および第2データを分析する分析ユニット300と、を備える。分析ユニット300は、第1データに対し、人工知能アルゴリズムによる第1分析動作を実行し、第2データのうち、分析物の特徴に対応する代表値を処理する第2分析動作を実行する。【選択図】図1

Description

本発明は、検体を分析する検体分析装置、検体分析方法およびプログラムに関する。
特許文献1には、細胞をフローサイトメータによって測定して得られた信号を人工知能アルゴリズムによって解析し、細胞を種別に応じて分類する方法が記載されている。
国際公開第2018/203568号
人工知能アルゴリズムを用いてデータを処理する場合、データの容量が増えるほどデータを処理するコンピュータの負荷が増大する。例えば、分類精度を向上するために、検体中の成分(例えば、細胞、有形成分)の分類に用いる情報量を増やすと、複数の成分を含む血液や尿などの検体においては、1つの成分から得られる情報量が増えることで検体単位でのデータ容量は増大する。検査対象の検体数が増大した場合にも、データ容量は増大する。特許文献1には、人工知能アルゴリズムを用いてデータ処理する場合のコンピュータ負荷を軽減可能な技術は開示されていない。
かかる課題に鑑み、本発明は、検体の測定で得られたデータを人工知能アルゴリズムによって分析するコンピュータの負荷を軽減可能な検体分析装置、検体分析方法およびプログラムを提供することを目的とする。
本発明の検体分析装置(4000)は、検体中の分析物を分析するための検体分析装置に関する。本発明の検体分析装置(4000)は、検体から光学的信号(80a、80b、80c)を取得するための光学式検出部(410、470)を含む測定ユニット(400)と、光学的信号(80a、80b、80c)に対応する第1および第2データ(82a、82b、82c)を分析する分析ユニット(300、600)と、を備える。分析ユニット(300、600)は、第1データ(82a、82b、82c)に対し、人工知能アルゴリズム(60)による第1分析動作を実行し、第2データ(82a、82b、82c)のうち、分析物の特徴に対応する代表値を処理する第2分析動作を実行する。
本発明の検体分析装置によれば、検体から取得された光学的信号に対応するデータの分析処理を、人工知能アルゴリズムによる第1分析動作と、分析物の特徴に対応する代表値を処理する第2分析動作とで分担することで、光学的信号に対応するデータを一律、人工知能アルゴリズムのみを用いて分析する場合と比較して、データを処理するコンピュータである分析ユニットの負荷を軽減できる。
本発明の検体分析方法は、検体中の分析物を分析するための検体分析方法に関する。本発明の検体分析方法は、検体から光学的信号(80a、80b、80c)を取得する工程(S1、S11、S121、S131、S141、S302)と、光学的信号(80a、80b、80c)に対応する第1および第2データ(82a、82b、82c)を分析する分析工程(S2、S3、S14、S16、S71、S74、S81、S84、S91、S95、S122、S124、S132、S134、S142、S143、S201、S202)と、を含む。分析工程(S2、S3、S14、S16、S71、S74、S81、S84、S91、S95、S122、S124、S132、S134、S142、S143、S201、S202)において、第1データ(82a、82b、82c)に対し、人工知能アルゴリズム(60)による第1分析動作を実行し、第2データ(82a、82b、82c)のうち、分析物の特徴に対応する代表値を処理する第2分析動作を実行する。
本発明の検体分析方法によれば、検体から取得された光学的信号に対応するデータの分析処理を、人工知能アルゴリズムによる第1分析動作と、分析物の特徴に対応する代表値を処理する第2分析動作とで分担することで、光学的信号に対応するデータを一律、人工知能アルゴリズムのみを用いて分析する場合と比較して、データを処理するコンピュータの負荷を軽減できる。
本発明のプログラムは、検体中の分析物を分析する処理をコンピュータ(300、600、3001、3002、6001、6002)に実行させるプログラムに関する。本発明のプログラムは、検体から取得された光学的信号(80a、80b、80c)に対応する第1および第2データ(82a、82b、82c)を分析する処理を含む。この処理は、第1データ(82a、82b、82c)に対し、人工知能アルゴリズム(60)による第1分析動作を実行し、第2データ(82a、82b、82c)のうち、分析物の特徴に対応する代表値を処理する第2分析動作を実行する。
本発明のプログラムによれば、検体から取得された光学的信号に対応するデータの分析処理を、人工知能アルゴリズムによる第1分析動作と、分析物の特徴に対応する代表値を処理する第2分析動作とで分担することで、光学的信号に対応するデータを一律、人工知能アルゴリズムのみを用いて分析する場合と比較して、データを処理するコンピュータの負荷を軽減できる。
本発明の検体分析装置(4000)は、検体中の分析物を分析するための検体分析装置に関する。本発明の検体分析装置(4000)は、検体から光学的信号(80a、80b、80c)を取得するための光学式検出部(410、470)を含む測定ユニット(400)と、光学的信号(80a、80b、80c)に対応するデータ(82a、82b、82c)を分析する分析ユニット(300、600)と、を備える。分析ユニット(300、600)は、データ(82a、82b、82c)の分析モードに応じて、人工知能アルゴリズム(60)による第1分析、または、データ(82a、82b、82c)のうち、分析物の特徴に対応する代表値を処理する第2分析により、データ(82a、82b、82c)を分析する。
本発明の検体分析装置によれば、検体から取得された光学的信号に対応するデータの分析処理を、人工知能アルゴリズムによる第1分析、または、分析物の特徴に対応する代表値を処理する第2分析により実行することで、光学的信号に対応するデータを一律、人工知能アルゴリズムのみを用いて分析する場合と比較して、データを処理するコンピュータである分析ユニットの負荷を軽減できる。
本発明の検体分析方法は、検体中の分析物を分析するための検体分析方法に関する。本発明の検体分析方法は、検体から光学的信号(80a、80b、80c)を取得する工程(S1、S11、S121、S131、S141、S302)と、光学的信号(80a、80b、80c)に対応するデータ(82a、82b、82c)を分析する分析工程(S2、S3、S14、S16、S71、S74、S81、S84、S91、S95、S122、S124、S132、S134、S142、S143、S201、S202)と、を含む。分析工程(S2、S3、S14、S16、S71、S74、S81、S84、S91、S95、S122、S124、S132、S134、S142、S143、S201、S202)において、データ(82a、82b、82c)の分析モードに応じて、人工知能アルゴリズム(60)による第1分析、または、データ(82a、82b、82c)のうち、分析物の特徴に対応する代表値を処理する第2分析により、データ(82a、82b、82c)を分析する。
本発明の検体分析方法によれば、検体から取得された光学的信号に対応するデータの分析処理を、人工知能アルゴリズムによる第1分析、または、分析物の特徴に対応する代表値を処理する第2分析により実行することで、光学的信号に対応するデータを一律、人工知能アルゴリズムのみを用いて分析する場合と比較して、データを処理するコンピュータの負荷を軽減できる。
本発明のプログラムは、検体中の分析物を分析する処理をコンピュータ(300、600、3001、3002、6001、6002)に実行させるプログラムに関する。本発明のプログラムは、検体から取得された光学的信号(80a、80b、80c)に対応するデータ(82a、82b、82c)を分析する処理を含む。この処理は、データ(82a、82b、82c)の分析モードに応じて、人工知能アルゴリズム(60)による第1分析、または、データ(82a、82b、82c)のうち、分析物の特徴に対応する代表値を処理する第2分析により、データ(82a、82b、82c)を分析する。
本発明のプログラムによれば、検体から取得された光学的信号に対応するデータの分析処理を、人工知能アルゴリズムによる第1分析、または、分析物の特徴に対応する代表値を処理する第2分析により実行することで、光学的信号に対応するデータを一律、人工知能アルゴリズムのみを用いて分析する場合と比較して、データを処理するコンピュータの負荷を軽減できる。
本発明によれば、検体の測定で得られたデータを人工知能アルゴリズムによって分析するコンピュータの負荷を軽減できる。
図1は、実施形態1に係る、検体分析装置の構成例を模式的に示す図である。 図2は、実施形態1に係る、光学式検出部がフローサイトメトリーに基づく検出部である場合の分析の概要を示す図である。 図3は、実施形態1に係る、波形データおよび代表値を模式的に示す図である。 図4は、実施形態1に係る、光学式検出部が測定試料からの透過光または散乱光を検出する検出部である場合の分析の概要を示す図である。 図5は、実施形態1に係る、検体分析方法の例を示すフローチャートである。 図6は、実施形態2に係る、分析ユニットに設定されたルールに基づいて分析動作を設定する例を示すフローチャートである。 図7は、実施形態3に係る、測定項目に応じて分析が実行される例を示すフローチャートである。 図8は、実施形態3に係る、測定項目ごとにAI分析または計算処理分析を設定するための画面を模式的に示す例示図である。 図9は、実施形態3に係る、測定オーダーに応じて分析が実行される例を示すフローチャートである。 図10は、実施形態3に係る、測定オーダーに対して分析モードを設定するための画面を模式的に示す例示図である。 図11は、実施形態3に係る、装置の分析モードに応じて分析が実行される例を示すフローチャートである。 図12は、実施形態3に係る、分析ユニットの分析モードを設定するための画面を模式的に示す例示図である。 図13は、実施形態3に係る、測定オーダーの種別に応じて分析が実行される例を示すフローチャートである。 図14は、実施形態3に係る、測定オーダーの種別ごとに分析モードを設定するための画面を模式的に示す例示図である。 図15は、実施形態3に係る、測定項目および測定オーダーの種別に応じて分析が実行される例を示すフローチャートである。 図16は、実施形態3に係る、測定項目および測定オーダーの種別ごとにAI分析または計算処理分析を設定するための画面を模式的に示す例示図である。 図17は、実施形態3に係る、計算処理分析によるフラグに基づいてAI分析の要否が決定される例を示すフローチャートである。 図18は、実施形態3に係る、分析結果のフラグごとにAI分析を設定するための画面を模式的に示す例示図である。 図19は、実施形態3に係る、計算処理分析で分類された特定の分析物に対してAI分析を実行する例を示すフローチャートである。 図20は、実施形態3に係る、分析物の種別ごとにAI分析を行うか否かを設定するための画面を模式的に示す例示図である。 図21は、実施形態3に係る、図19に示す処理で実行される計算処理分析およびAI分析による分類方法を説明する図である。 図22は、実施形態3に係る、計算処理分析で特定の分類が行われた場合にAI分析を実行する例を示すフローチャートである。 図23は、実施形態3に係る、特定の種別の分析物に対してAI分析を行うか否かを設定するための画面を模式的に示す例示図である。 図24は、実施形態4に係る、測定ユニットの構成を示すブロック図である。 図25は、実施形態4に係る、FCM検出部の光学系の構成を模式的に示す図である。 図26は、実施形態4に係る、分析ユニットの構成を示すブロック図である。 図27は、実施形態4に係る、検体分析装置が血液検体中の血球の計数および分類を実行する場合の、測定ユニットの構成を示すブロック図である。 図28は、実施形態4に係る、図27の測定ユニットにおける検体吸引部および試料調製部の構成を示すブロック図である。 図29は、実施形態4に係る、図28に示した試料調製部の他の構成を示すブロック図である。 図30は、実施形態4に係る、測定チャンネルに応じて分析が実行される例を示すフローチャートである。 図31は、実施形態4に係る、測定チャンネルごとにAI分析または計算処理分析を設定するための画面を模式的に示す例示図である。 図32は、実施形態4に係る、分析方法において用いられる波形データを説明するための模式図である。 図33は、実施形態4に係る、検体中の分析物の種別を判定するためのAIアルゴリズムを訓練するために使用される訓練データの生成方法の一例を示す模式図である。 図34は、実施形態4に係る、細胞種に対応するラベル値を示す図である。 図35は、実施形態4に係る、検体中の分析物の波形データをAIアルゴリズムにより分析する方法を模式的に示す図である。 図36は、実施形態4に係る、WDFチャンネルで取得される波形データに対してAI分析を実行する例を示すフローチャートである。 図37は、実施形態4に係る、WDFチャンネルで取得される波形データに基づいて、AI分析で有核赤血球と好塩基球を分類し、計算処理分析でその他を分類する例を示すフローチャートである。 図38は、実施形態4に係る、WDFチャンネルにおける計算処理の分析により特定された好中球/好塩基球に対してAI分析を実行する例を示すフローチャートである。 図39は、実施形態5に係る、測定ユニットの構成を模式的に示すブロック図である。 図40は、実施形態5に係る、検出ブロックによる測定を模式的に示す側面図である。 図41は、実施形態5に係る、分析例を示すフローチャートである。 図42は、実施形態6に係る、検体分析装置の構成を示すブロック図である。 図43は、実施形態6に係る、分析ユニットの構成を示すブロック図である。 図44は、実施形態6に係る、検体分析装置の他の構成を示すブロック図である。 図45は、実施形態6に係る、並列処理プロセッサの構成例を示す図である。 図46は、実施形態6に係る、並列処理プロセッサの搭載例を模式的に示す図である。 図47は、実施形態6に係る、並列処理プロセッサの搭載例を模式的に示す図である。 図48は、実施形態6に係る、並列処理プロセッサの搭載例を模式的に示す図である。 図49は、実施形態6に係る、並列処理プロセッサの他の搭載例を示す図である。 図50は、実施形態6に係る、演算処理を実行する並列処理プロセッサの構成例を示す図である。 図51は、実施形態6に係る、並列処理プロセッサが実行する行列演算の概要を示す図である。 図52は、実施形態6に係る、複数の演算処理が並列処理プロセッサで並列に実行されることを示す概念図である。 図53は、実施形態6に係る、畳み込み層に関する演算処理の概要を模式的に示す図である。 図54は、実施形態6に係る、分析ユニットおよび測定ユニットの分析動作を示すフローチャートである。 図55は、実施形態6に係る、図54のステップS201におけるAI分析の詳細を示すフローチャートである。 図56は、実施形態6に係る、図55のステップS2011の詳細を示すフローチャートである。 図57は、実施形態6に係る、測定ユニットの他の構成を示すブロック図である。 図58は、実施形態6に係る、分析ユニットの他の構成を示すブロック図である。 図59は、実施形態6に係る、測定ユニットの他の構成を示すブロック図である。 図60は、実施形態6に係る、分析ユニットの他の構成を示すブロック図である。 図61は、実施形態6に係る、検体分析装置の他の構成を示すブロック図である。 図62は、実施形態6に係る、測定ユニットの他の構成を示すブロック図である。 図63は、実施形態6に係る、分析ユニットの他の構成を示すブロック図である。 図64は、実施形態6に係る、演算処理を実行する並列処理プロセッサの構成例を示す図である。 図65は、実施形態6に係る、コンピュータの構成を示すブロック図である。 図66は、実施形態6に係る、測定ユニットの他の構成を示すブロック図である。 図67は、実施形態6に係る、分析ユニットの他の構成を示すブロック図である。 図68は、実施形態6に係る、測定ユニットの他の構成を示すブロック図である。 図69は、実施形態6に係る、分析ユニットの他の構成を示すブロック図である。 図70は、実施形態6に係る、測定ユニットの他の構成を示すブロック図である。 図71は、実施形態6に係る、分析ユニットの他の構成を示すブロック図である。 図72は、実施形態6に係る、測定ユニットの他の構成を示すブロック図である。 図73は、実施形態6に係る、分析ユニットの他の構成を示すブロック図である。 図74は、実施形態7に係る、波形データ分析システムの構成を模式的に示す図である。 図75は、実施形態7に係る、深層学習装置の構成を示すブロック図である。 図76は、実施形態7に係る、深層学習装置の機能ブロック図である。 図77は、実施形態7に係る、深層学習装置が行う処理を示すフローチャートである。 図78は、実施形態7に係る、ニューラルネットワークの構造を例示す模式図、各ノードにおける演算を示す模式図、および、ノード間の演算を示す模式図である。
以下、本発明の概要および実施の形態を、添付の図面を参照して詳細に説明する。以下の説明および図面において、同じ符号は、同じまたは類似の構成要素を示すこととし、便宜上、同じまたは類似の構成要素に関する説明を省略する。
[実施形態1]
本実施形態は、検体の測定によって取得されたデータに対して、人工知能アルゴリズム(AI(Artificial Intelligence)アルゴリズム)による分析と、AIアルゴリズムを用いない分析の双方を実行可能な検体分析装置、検体分析方法およびプログラムを開示する。
AIアルゴリズムによる分析では、例えば、多量の行列演算処理によってデータが分析される。以下、AIアルゴリズムによる分析を、便宜上、「AI分析」と称する。AI分析では、例えば、AIアルゴリズムによる畳み込み演算が行われる。
AIアルゴリズムを用いない分析では、例えば、分析物の特徴に対応する代表値に対する計算処理によってデータが分析される。以下、AIアルゴリズムを用いずに、分析物の特徴に対応する代表値に対する計算処理によってデータを分析する分析方法を、便宜上、「計算処理分析」または「非AI分析」と称する。計算処理分析において処理される代表値は、AI分析においてAIアルゴリズムに入力されるデータよりもデータ量が小さい。計算処理分析では、処理対象のデータ量と演算処理量がAI分析と比較して少ないため、AI分析に比べて、分析を行うコンピュータに対する負荷が少ない。これにより、測定結果の分析のTAT(Turn Around Time)を短くすることができる。
実施形態1の検体分析装置、検体分析方法およびプログラムによれば、検体の測定によって取得されたデータの分析を、AI分析と計算処理分析とで分担して実行することで、分析を行うコンピュータの負荷を軽減できる。
図1は、実施形態1の検体分析装置4000の構成例を模式的に示す図である。図1において、上段の図は、実施形態の検体分析装置4000の構成例を示しており、下段の図は、実施形態1の構成の変更例を示している。
図1の上段の図に示すように、実施形態1の検体分析装置4000は、例えば、測定ユニット400および分析ユニット300を備える。なお、図1の下段の図に示すように、検体分析装置4000は、一体的に構成された測定ユニット400および分析ユニット300により構成されてもよい。検体分析装置4000は、例えば、血球分析装置、尿分析装置、血液凝固測定装置、免疫測定装置、生化学測定装置、および遺伝子測定装置などである。検体分析装置4000の分析対象となる分析物は、例えば、細胞、有形成分、たんぱく、遺伝子などである。
測定ユニット400は、検体を測定し、検体に関するデータを取得する。分析ユニット300は、測定ユニット400によって取得されたデータを分析する。分析ユニット300は、測定ユニット400における測定試料の測定条件の設定や測定実行のための制御を行う機能を備えてもよい。分析ユニット300は、測定ユニット400と別の装置(例えばコンピュータ)として構成され、測定ユニット400に接続される。分析ユニット300および測定ユニット400は、有線または無線により接続される。
測定ユニット400は、検体から調製された測定試料を測定するための光学式検出部を備える。
光学式検出部は、例えば、フローサイトメトリーに基づく検出部であり、血液検体や尿検体の測定に用いられる。光学式検出部は、フローセルを流れる測定試料に光を照射することで、光学的信号を取得する。例えば、光学式検出部は、フローセルを流れる分析物(例えば細胞や有形成分)を含む測定試料に光を照射して、分析物から前方散乱光、側方散乱光および蛍光を生じさせる。光学式検出部に設けられた光検出器は、生じた光を受光し、受光した光の強度に対応する光学的信号を出力する。光学的信号は、前方散乱光、側方散乱光および蛍光の時間変化に対応する波形状のアナログ信号である。光学式検出部に設けられたA/D変換部は、光学的信号をデジタル変換し、分析物の各々に対応する波形状のデジタルデータ(以下、「波形データ」と称する)を取得する。この場合の波形データは、例えば、血液検体中の白血球種の分類、血液検体中の赤血球および白血球数の分類や、尿検体中の有形成分の分類などに用いられる。
光学式検出部は、容器に収容された測定試料に光を照射し、測定試料から透過された光または測定試料から散乱された散乱光を光検出器で検出する構成でもよい。この場合、光学式検出部は、容器に収容された状態で静置された分析物を含む測定試料に光を照射する。光学式検出部に設けられた光検出器は、測定試料を透過した透過光または測定試料により生じた散乱光を所定期間受光し、受光した光の強度に対応する光学的信号を出力する。この場合の光学的信号は、測定試料の凝固に伴う透過光または散乱光の経時変化に対応する波形状のアナログ信号である。光学式検出部に設けられたA/D変換部は、光学的信号をデジタル変換し、透過光または散乱光の経時変化に対応する波形状のデジタルデータ(以下、「凝固波形データ」と称する)を取得する。この場合の凝固波形データは、例えば、血液検体の凝固能の分析などに用いられる。
次に、測定ユニット400により取得されたデータを用いて分析ユニット300が行う分析の例を説明する。
図2は、光学式検出部がフローサイトメトリーに基づく検出部である場合の分析の概要を示す図である。
図2において、左側の図は計算処理分析の概要を示しており、右側の図はAI分析の概要を示している。図2中のFSC、SSCおよびFLは、それぞれ、測定ユニット400の光学式検出部が取得した前方散乱光強度、側方散乱光強度および蛍光に対応する光学的信号を示している。
測定ユニット400は、光学的信号をデジタル変換したデジタルデータにおいて、図3の上段のグラフに示すように、所定の閾値より大きい値の領域を、検体中の分析物に対応する領域として特定する。光学的信号がデジタル変換されたデジタルデータの閾値より値が大きい領域は、検体中の分析物の各々に対応する領域である。図3の各グラフには、デジタルデータにおいて特定された、検体中の1つの分析物に対応する領域(例えば、図3の上段のグラフにおける「波形データ」の領域)が模式的に示されている。なお、所定の閾値より値が大きい領域の特定は、光学的信号に対して行われてもよい。
測定ユニット400は、光学的信号がデジタル変換されたデジタルデータから、検体中の分析物の各々に対応する領域を波形データとして取得する。波形データは、検体中の複数の分析物に対応して取得される。分析ユニット300は、波形データのうち、分析物の特徴に対応する代表値を計算処理によって算出する。図3の各グラフに示すように、分析ユニット300は、代表値として、例えば、波形データのピーク値、幅および面積などの量を算出する。ピーク値は、波形データの最大値であり、幅は、波形データの時間軸方向の幅であり、面積は、波形データによって囲まれる面積である。
計算処理分析では、分析物の特徴に対応する代表値は予め定められている。例えば、分析物である血球の分類と計数を行う場合、計算処理分析のアルゴリズムで予め定められている代表値はピーク値である。分析ユニット300は、波形データから、予め定められた代表値を所定の計算によって取得し、分析物を分析するために取得した代表値を処理する。分析ユニット300は、測定ユニット400で得られた複数の波形データのそれぞれについて、予め定められた代表値を取得する。つまり、分析ユニット300による所定の計算によって、複数の波形データのそれぞれから同一種類の代表値(例えばピーク値)が取得される。予め定められた代表値は、測定ユニット400によって取得され、取得された代表値と波形データが分析ユニット300に送信されてもよい。
一方、AI分析では、AIアルゴリズムが波形データの特徴を抽出するため、代表値は予め定められていない。AIアルゴリズムが抽出する波形データの特徴(すなわち、分析物に対応する特徴)はAIアルゴリズムの学習内容に応じて変わりうるため、AI分析において代表値を予め定める必要はない。AIアルゴリズムは、学習内容に応じて波形データの多様な特徴を抽出しうるため、代表値のみではなく波形データ自体がAIアルゴリズムに入力される。波形データ自体がAIアルゴリズムに入力されるため、AI分析では、計算処理分析に比べて、データの演算のためのコンピュータ負荷が高くなり、演算に要するTAT(Turn Around Time)も長くなる。
図2の左側の図に示すように、分析ユニット300は、計算処理分析において、分析物に対応して取得された波形データから代表値を取得し、取得した代表値に基づいて、例えば、スキャッタグラムSCを生成する。図2に例示するスキャッタグラムSCにおいて、横軸のSSCPは、側方散乱光に基づく波形データのピーク値であり、縦軸のFLPは、蛍光に基づく波形データのピーク値である。スキャッタグラムSCには、複数の分析物がプロットされる。分析ユニット300は、スキャッタグラムSCに基づいて、検体中の分析物の分類および分析を実行する。
図2の右側の図に示すように、分析ユニット300は、AI分析において、分析物に対応する波形データをAIアルゴリズム60に入力し、検体中の分析物の分類および分析を実行する。AIアルゴリズム60は、学習済みのAIアルゴリズムであり、訓練前のAIアルゴリズムに上記のような波形データを入力して学習させることで生成される。計算処理分析において取得される代表値は、AI分析においてAIアルゴリズムに入力される波形データよりもデータ量が小さい。
計算処理分析およびAI分析によって分類される分析物の種別は、例えば、血液検体中の血球の種別や、尿検体中の有形成分の種別などである。例えば、分析ユニット300は、血液検体中の白血球の種別を分類する測定項目についてAI分析を実行し、その他の測定項目について計算処理分析を実行する。
図4は、光学式検出部が測定試料からの透過光または散乱光を検出する検出部である場合の分析の概要を示す図である。
測定ユニット400は、光学的信号をデジタル変換したデジタルデータを、凝固波形データとして取得する。1回の測定において、1つの測定試料から1つの凝固波形データが取得される。
図4のグラフは、測定試料に光を照射して検出された透過光に基づく凝固波形データの例である。横軸は経過時間を示し、縦軸は吸光度を示している。吸光度は、測定試料に対して照射された光が、測定試料によりどの程度吸収されるかを示す値である。吸光度が0%の状態は、測定試料に照射された光がほぼ光検出器に到達している状態を示しており、吸光度100%の状態は、測定試料に照射された光がほぼ光検出器に到達していない状態を示している。
なお、吸光度に代えて透過光強度であってもよい。この場合、上に進むにつれて縦軸の比率(透過光強度)が高くなるように設定されると、凝固波形データは、図4と同様、時間の経過と共に低下する形状となる。
凝固波形データは、少なくとも、検体の凝固開始を示すタイミングT2から、検体の凝固終了を示すタイミングT3までに取得された光学的信号に対応するデータを含んでいる。凝固波形データは、測定ユニット400による測光の開始タイミングT1から測光の終了タイミングT4までに取得された光学的信号に対応するデータを含んでもよい。
分析ユニット300は、計算処理分析において、凝固波形データのうち、分析物の特徴に対応する代表値を計算処理によって算出し、算出した代表値に基づいて分析を実行する。分析ユニット300は、計算処理分析において、検出した光の強度が所定の条件を満たしたときの凝固波形データを、代表値として特定する。例えば、分析ユニット300は、凝固波形データの吸光度が所定値(例えば、50%)まで下がるのに要した時間(T-T2)を代表値として取得し、取得した代表値を、血液検体が凝固するまでの時間を示す結果として提供する。
分析ユニット300は、AI分析において、凝固波形データをAIアルゴリズム60(図2参照)に基づいて分析する。分析ユニット300は、例えば、凝固波形データからAIアルゴリズム60が抽出した特徴量に基づいて、測定に関する異常の有無を取得する。分析ユニット300は、測定に関する異常の有無に基づいて、非特異反応の発生の疑いを判定する。
例えば、分析ユニット300は、血液検体中の干渉物質に起因する異常の有無を分析する。具体例として、分析ユニット300は、凝固因子であるプロトロンビンに関する凝固能を測定するための項目であるPT(プロトロンビン時間)に関する凝固波形データを用いて、異常の有無を分析する。
なお、分析ユニット300は、AI分析において、凝固波形データをAIアルゴリズム60に入力し、血液検体が凝固するまでの時間を取得してもよい。また、分析ユニット300は、AI分析において、凝固波形データをAIアルゴリズム60に入力し、凝固時間が延長した場合の延長の原因を取得してもよい。
図5は、実施形態1の検体分析方法の例を示すフローチャートである。
ステップS1において、測定ユニット400は、光学式検出部によって光学的信号を取得し、取得した光学的信号から波形データを取得する。
ステップS2において、分析ユニット300は、測定ユニット400で取得された波形データのうち、AI分析の対象となる波形データ(第1データ)に対してAI分析を実行する。例えば、分析ユニット300は、AI分析の対象である測定項目に対応する波形データを第1データとして特定し、特定した第1データに対してAI分析を実行する。
ステップS3において、分析ユニット300は、測定ユニット400で取得された波形データのうち、計算処理分析の対象となる波形データ(第2データ)に対して計算処理分析を実行する。例えば、分析ユニット300は、計算処理分析の対象である測定項目に対応する波形データを第2データとして特定し、特定した第2データに対して計算処理分析を実行する。
上記ステップS2、S3において、血液検体中の白血球の種類を分類する測定がAI分析の対象となっている場合を例として説明する。測定ユニット400は、例えば、白血球分類の測定に対応した試薬で血液検体を調製し、調製した測定試料をフローサイトメトリーに基づく光学式検出部で測定する。分析ユニット300は、例えば、白血球分類に関する測定はAI分析の対象であるため、白血球分類の測定試料に基づく波形データを第1データとして特定する。分析ユニット300は、AIアルゴリズム60によって当該第1データを分析し、白血球を分類する。一方、分析ユニット300は、例えば、白血球分類以外の測定試料に基づく波形データを第2データとして特定する。分析ユニット300は、第2データから分析物の特徴に対応する代表値を特定し、特定した代表値を処理する計算処理分析を実行し、白血球以外の血球を分類する。
ステップS4において、分析ユニット300は、ステップS2、S3で取得された分析結果を提供する。ステップS4において、例えば、分析ユニット300は、表示部への分析結果の表示や、他のコンピュータに対する分析結果の送信などを行う。
なお、ステップS1において、測定ユニット400は、1つの測定試料から、光学式検出部によって光学的信号を取得し、取得した光学的信号から波形データを取得してもよい。この場合、第1データおよび第2データは、それぞれが複数のデータであり、一部のデータが互いに同じデータであってもよい。
また、ステップS1において、同一の被検者から採取した検体を含む複数の測定試料のそれぞれから、光学式検出部によって光学的信号を取得し、取得した光学的信号のそれぞれから波形データを取得してもよい。この場合、分析ユニット300は、ステップS2において、一の測定試料から取得された波形データ(第1データ)に対してAI分析を実行し、ステップS3において、他の測定試料から取得された波形データ(第2データ)に対して計算処理分析を実行する。同一の被検者から採取した検体を含む複数の測定試料は、互いに同種の試薬を用いて調製されてもよいし、互いに異種の試薬を用いて調製されてもよい。
また、ステップS1において、互いに異なる被検者から採取した検体を含む複数の測定試料のそれぞれから、光学式検出部によって光学的信号を取得し、取得した光学的信号のそれぞれから波形データを取得してもよい。この場合、分析ユニット300は、ステップS2において、一の測定試料から取得された波形データ(第1データ)に対してAI分析を実行し、ステップS3において、他の測定試料から取得された波形データ(第2データ)に対して計算処理分析を実行する。互いに異なる被検者から採取した検体を含む複数の測定試料は、互いに同種の試薬を用いて調製されてもよいし、互いに異種の試薬を用いて調製されてもよい。
なお、上記実施形態1では、計算処理分析として、ステップS3において、分析ユニット300が、第2データから分析物の特徴に対応する代表値を特定し、特定した代表値を処理しているが、これには限定されない。例えば、ステップS1において、測定ユニット400が波形データから代表値を取得し、波形データおよび代表値を分析ユニット300に出力し、計算処理分析として、ステップS3において、分析ユニット300が、測定ユニット400から取得した代表値を処理してもよい。
[実施形態2]
実施形態2では、分析ユニット300に設定されたルールに基づいて、AI分析および計算処理分析が選択される。
分析動作の選択のためのルールは、例えば、分析ユニット300を介してユーザにより設定される。ユーザは、例えば、検査室の運用方針に応じたルールを分析ユニット300に設定することができる。これにより、検査室の運用方針に応じて、AI分析と計算処理分析の分担を適宜変更することが可能となる。
分析動作のためのルールが設定可能であることにより、分析ユニット300の負荷を軽減させながら、AI分析と計算処理分析の分担を柔軟に変更することが可能となる。例えば、AIアルゴリズム60に追加の学習をさせることによってAI分析の精度が向上した場合、AI分析の対象となるデータが増えるようにルールを設定することが可能となる。また、例えば、測定結果の分析のTAT(Turn Around Time)を短くすることを優先する場合、計算処理分析の対象となるデータが増えるようにルールを設定することも可能となる。
図6は、分析ユニット300に設定されたルールに基づいて分析動作を設定する例を示すフローチャートである。
ステップS11において、測定ユニット400は、光学式検出部によって光学的信号を取得し、取得した光学的信号から波形データを取得する。ステップS12において、分析ユニット300は、分析動作を選択するためのルールを参照し、参照したルールに基づいて、ステップS11で取得された波形データに対して、AI分析および計算処理分析の対象となる波形データをそれぞれ特定する。
ステップS13において、分析ユニット300は、ステップS12で特定した波形データに、AI分析の対象となる波形データが含まれているか否かを判定する。AI分析の対象となる波形データが含まれている場合(S12:YES)、ステップS14において、分析ユニット300は、ステップS12で特定したAI分析の対象となる波形データに対して、AI分析を実行する。
続いて、ステップS15において、分析ユニット300は、AI分析された波形データの他に、計算処理分析の対象となる波形データがあるか否かを判定する。計算処理分析の対象となる波形データがある場合(S15:YES)、ステップS16において、分析ユニット300は、ステップS12で特定した計算処理分析の対象となる波形データに対して、計算処理分析を実行する。
測定ユニット400は、ステップS12において、AI分析の対象となる波形データと計算処理分析の対象となる波形データの両方を取得する場合がある。例えば、測定ユニット400は、測定オーダーに応じて、白血球分類に関する測定および網状赤血球(レチクロサイト)に関する測定を実行した場合、白血球分類のための波形データおよび網状赤血球測定のための波形データを取得する。白血球分類がAI分析の対象であり、網状赤血球測定が計算処理分析の対象である場合、分析ユニット300は、AI分析の対象である白血球分類用の波形データが含まれていると判定し(S13:YES)、当該波形データに対してAI分析を実行する。さらに、分析ユニット300は、計算処理分析の対象である網状赤血球分類用の波形データも含まれていると判定し(S15:YES)、当該波形データに対して計算処理分析を実行する。
他方、測定ユニット400によって取得された波形データに、AI分析の対象となる波形データが含まれていない場合(S13:NO)、ステップS16において、分析ユニット300は、ステップS12で特定した計算処理分析の対象となる波形データに対して、計算処理分析を実行する。また、AI分析が実行され、計算処理分析の対象となる波形データが含まれていない場合(S15:NO)、計算処理分析は実行されず、処理がステップS17に進められる。
ステップS17において、分析ユニット300は、分析結果を提供する。
なお、分析ユニット300は、ステップS13において計算処理分析の対象となる波形データが含まれているか否かを判定し、ステップS15においてAI分析の対象となる波形データが含まれているか否かを判定してもよい。この場合、分析ユニット300は、ステップS13で計算処理分析の対象となる波形データが含まれていると判定すると、ステップS14で計算処理分析を実行する。さらに、分析ユニット300は、ステップS15でAI分析の対象となる波形データが含まれていると判定すると、ステップS16でAI分析を実行する。
[実施形態3]
実施形態3では、AI分析と計算処理分析とが分担される種々の例を説明する。
例えば、AI分析と計算処理分析の分担は、分析ユニット300が波形データの分析を実行するためのソフトウェアプログラムが決定する。分析ユニット300のソフトウェアプログラムは、AI分析の対象となる波形データと計算処理分析の対象となる波形データとをそれぞれ特定し、分析を実行する。ソフトウェアプログラムは、例えば、検査に関する要件(例えば、TATを向上させる、分析精度を高める)に応じて設計される。
図7は、測定項目に応じて分析が実行される例を示すフローチャートである。
図7では、図6と比較して、ステップS12、S13、S15に代えて、それぞれステップS21、S22、S23が追加されている。以下、図6からの変更点について説明する。
ステップS21において、分析ユニット300は、測定項目に基づいてAI分析および計算処理分析の何れを行うかを含むルールを参照し、参照したルールに基づいて、ステップS11で取得された波形データに対して、AI分析の対象となる測定項目の波形データと、計算処理分析の対象となる測定項目の波形データとをそれぞれ特定する。
図8は、測定項目ごとにAI分析または計算処理分析を設定するための画面を模式的に示す例示図である。図8に例示する測定項目は、血球分析装置に関するものである。
図8の画面は、例えば、分析ユニット300が備える表示部に表示される。図8の画面は、測定項目ごとに、AI分析を設定するためのチェックボックスおよび計算処理分析を設定するためのチェックボックスを備える。1つの測定項目に対するAI分析のチェックボックスおよび計算処理分析のチェックボックスは、いずれか一方のみを選択可能に構成されている。ユーザは、チェックボックスを操作して測定項目ごとにAI分析と計算処理分析の何れの分析を行うかを選択し、設定ボタンを操作する。これにより、分析ユニット300の記憶部にルールが記憶される。
なお、ユーザは、図8に示した画面を介して各測定項目に対してAI分析および計算処理分析のいずれか一方を設定したが、AI分析および計算処理分析の両方が設定可能となるよう画面が構成されてもよい。これにより、AI分析の結果と計算処理分析の結果とを比較することができる。また、各測定項目に対する分析の選択は、あらかじめ装置の出荷時に設定されてもよく、管理者のみが設定を変更可能であってもよい。
図7に戻り、ステップS22において、分析ユニット300は、ステップS21で特定した波形データに、AI分析の対象となる測定項目の波形データが含まれているか否かを判定する。AI分析の対象となる測定項目の波形データが含まれている場合(S22:YES)、ステップS14において、分析ユニット300は、ステップS21で特定したAI分析の対象となる測定項目の波形データに対して、当該測定項目に関するAI分析を実行する。
例えば、測定ユニット400は、白血球(例えば、好中球、リンパ球、単球、好酸球、好塩基球の5分類)を分類する測定オーダーに応じて、当該分類に対応する試薬と検体を混合し、白血球測定試料を調製する。測定ユニット400は、光学式検出部によって白血球測定試料に対応する光学的信号を取得する。測定ユニット400は、取得した光学的信号に対応する波形データを取得する。白血球の分類に関する測定項目(例えば、好中球、リンパ球、単球、好酸球、好塩基球の各々の計数と割合)がAI分析の対象となっている場合、分析ユニット300は、測定ユニット400が白血球測定試料の測定により取得した波形データに対して、AI分析を実行する。
続いて、ステップS23において、分析ユニット300は、ステップS12で特定した波形データに、計算処理分析の対象となる測定項目の波形データがあるか否かを判定する。計算処理分析の対象となる波形データがある場合(S23:YES)、ステップS16において、分析ユニット300は、ステップS21で特定した計算処理分析の対象となる波形データに対して、当該測定項目に関する計算処理分析を実行する。
例えば、測定ユニット400は、網状赤血球を分類する測定オーダーに応じて、当該分類に対応する試薬と検体を混合し、網状赤血球測定試料を調製する。測定ユニット400は、光学式検出部によって網状赤血球測定試料に対応する光学的信号を取得する。測定ユニット400は、取得した光学的信号に対応する波形データを取得する。網状赤血球の分類に関する測定項目(例えば、網状赤血球の計数と割合)が計算処理分析の対象となっている場合、分析ユニット300は、測定ユニット400が網状赤血球測定試料の測定により取得した波形データに対して、計算処理分析を実行する。
なお、検体分析装置4000は、血球分析装置であることに限らず、尿分析装置や血液凝固測定装置でもよい。例えば、検体分析装置4000が尿分析装置である場合、分析ユニット300は、一部の測定項目についてAI分析を実行し、残りの測定項目について計算処理分析を行う。また、検体分析装置4000が血液凝固測定装置である場合、分析ユニット300は、全ての測定項目について計算処理分析を実行し、一部の測定項目については、計算処理分析に加えて、AI分析を実行して非特異反応の発生の疑いを判定する。
図9は、測定オーダーに応じて分析が実行される例を示すフローチャートである。
図9では、図6と比較して、ステップS12、S13に代えて、それぞれステップS31、S32が追加され、ステップS15が削除されている。以下、図6からの変更点について説明する。
ステップS31において、分析ユニット300は、測定オーダーに基づいて、ステップS11で取得した波形データが、AI分析の対象となる波形データおよび計算処理分析の対象となる波形データの何れであるかを特定する。測定オーダーに対する分析モードは、AI分析モードおよび計算処理分析モードのいずれかであり、測定オーダーに対応付けて分析ユニット300の記憶部に記憶されている。
図10は、測定オーダーに対して分析モードを設定するための画面を模式的に示す例示図である。
図10の画面は、例えば、分析ユニット300が備える表示部に表示される。図10の画面において、各行は、検体番号によって識別される測定オーダーに対応している。図10の画面は、測定オーダーごとに、AI分析モードを設定するためのチェックボックスおよび計算処理分析モードを設定するためのチェックボックスを備える。ユーザは、チェックボックスを操作して、測定オーダーごとに、分析ユニット300に対してAI分析と計算処理分析の何れの分析を行わせるかを選択し、設定ボタンを操作する。これにより、分析ユニット300の記憶部に、測定オーダーに対応づけて分析モードが記憶される。
なお、各測定オーダーに関連付けられる分析モードは、ユーザによって分析ユニット300を介して設定されることに限らず、ホストコンピュータ等で測定オーダーの設定時にあらかじめ設定されてされてもよい。
図9に戻り、ステップS32において、分析ユニット300は、ステップS31で特定した波形データが、AI分析対象の測定オーダーの波形データであるか否かを判定する。特定した波形データがAI分析の対象の測定オーダーの波形データである場合(S32:YES)、ステップS14において、分析ユニット300は、当該測定オーダーの波形データに対してAI分析を行う。他方、特定した波形データが計算処理分析の対象の測定オーダーの波形データである場合(S32:NO)、ステップS16において、分析ユニット300は、当該測定オーダーの波形データに対して計算処理分析を行う。
図11は、装置の分析モードに応じて分析が実行される例を示すフローチャートである。
図11では、図6と比較して、ステップS12、S13に代えて、それぞれステップS41、S42が追加され、ステップS15が削除されている。以下、図6からの変更点について説明する。
ステップS41において、分析ユニット300は、分析ユニット300の分析モードを含むルールを参照し、参照したルールに基づいて、ステップS11で取得された波形データが、AI分析の対象となる波形データおよび計算処理分析の対象となる波形データの何れであるかを特定する。上記ルールにおいてAI分析モードが設定されている場合、全ての波形データはAI分析の対象となり、上記ルールにおいて計算処理分析モードが設定されている場合、全てのデータは計算処理分析の対象となる。
図12は、分析ユニット300の分析モードを設定するための画面を模式的に示す例示図である。
図12の画面は、例えば、分析ユニット300が備える表示部に表示される。図12の画面は、分析ユニット300に対して、AI分析モードを設定するためのチェックボックスおよび計算処理分析モードを設定するためのチェックボックスを備える。ユーザは、チェックボックスを操作して、分析ユニット300に対してAI分析と計算処理分析の何れの分析を行わせるかを選択し、設定ボタンを操作する。これにより、分析ユニット300の記憶部にルールが記憶される。
図11に戻り、ステップS42において、分析ユニット300は、ステップS41で特定した波形データが、AI分析の対象となる波形データであるか否かを判定する。特定した波形データがAI分析の対象のデータである場合(S42:YES)、すなわち分析ユニット300の分析モードがAI分析モードである場合、ステップS14において、分析ユニット300は、当該波形データに対してAI分析を行う。他方、特定した波形データが計算処理分析の対象の波形データである場合(S42:NO)、すなわち分析ユニット300の分析モードが計算処理分析モードである場合、ステップS16において、分析ユニット300は、当該波形データに対して計算処理分析を行う。
図13は、測定オーダーの種別に応じて分析が実行される例を示すフローチャートである。
図13では、図6と比較して、ステップS12、S13に代えて、それぞれステップS51、S52が追加され、ステップS15が削除されている。以下、図6からの変更点について説明する。
ステップS51において、分析ユニット300は、測定オーダーの種別に対応する分析モードを含むルールを参照し、測定オーダーの種別と参照したルールとに基づいて、ステップS11で取得された波形データが、AI分析の対象となる波形データおよび計算処理分析の対象となる波形データの何れであるかを特定する。測定オーダーの種別には、初検等の通常の測定に対応する「Normal」と、初検と同一の測定項目が設定された再検に対応する「Rerun」と、初検から測定項目が変更された再検に対応する「Reflex」とが含まれる。上記ルールには、測定オーダーの種別ごとにAI分析モードおよび計算処理分析モードのいずれかが設定されている。
図14は、測定オーダーの種別ごとに分析モードを設定するための画面を模式的に示す例示図である。
図14の画面は、例えば、分析ユニット300が備える表示部に表示される。図14の画面は、測定オーダーの種別(Normal、Rerun、Reflex)ごとにAI分析モードを設定するためのチェックボックスおよび計算処理分析モードを設定するためのチェックボックスを備える。ユーザは、チェックボックスを操作して、測定オーダーの種別ごとにAI分析と計算処理分析の何れの分析を行わせるかを選択し、設定ボタンを操作する。これにより、分析ユニット300の記憶部にルールが記憶される。
なお、各測定オーダーの種別に関連付けられる分析モードは、ユーザによって分析ユニット300を介して設定されることに限らず、ホストコンピュータ等で測定オーダーの種別に応じてあらかじめ設定されてされてもよい。
図13に戻り、ステップS52において、分析ユニット300は、ステップS51で特定した波形データが、AI分析の対象となる波形データであるか否かを判定する。特定した波形データがAI分析の対象の波形データである場合(S52:YES)、すなわち測定オーダーの種別に応じた分析モードがAI分析モードである場合、ステップS14において、分析ユニット300は、当該波形データに対してAI分析を行う。他方、特定した波形データが計算処理分析の対象の波形データである場合(S52:NO)、すなわち測定オーダーの種別に応じた分析モードが計算処理分析モードである場合、ステップS16において、分析ユニット300は、当該波形データに対して計算処理分析を行う。
図15は、測定項目および測定オーダーの種別に応じて分析が実行される例を示すフローチャートである。
図15では、図6と比較して、ステップS12に代えてステップS61が追加されている。以下、図6からの変更点について説明する。
ステップS61において、分析ユニット300は、分析動作を選択するためのルールを参照し、測定項目および測定オーダーの種別に基づいて、ステップS11で取得された波形データに対して、AI分析の対象となる波形データおよび計算処理分析の対象となる波形データをそれぞれ特定する。
図16は、測定項目および測定オーダーの種別ごとにAI分析または計算処理分析を設定するための画面を模式的に示す例示図である。
図16の画面は、例えば、分析ユニット300が備える表示部に表示される。図16の画面は、図8と同様、測定項目ごとに、AI分析および計算処理分析のいずれかを設定するためのチェックボックスおよび計算処理分析を設定するためのチェックボックスを備え、図14と同様、測定オーダーの種別(Normal、Rerun、Reflex)ごとにAI分析と計算処理分析のいずれかを設定するためのチェックボックスを備える。ユーザは、上段のリストのチェックボックスを操作して、測定項目ごとにAI分析と計算処理分析の何れの分析を行わせるかを選択し、下段のリストのチェックボックスを操作して、測定オーダーの種別ごとにAI分析と計算処理分析の何れの分析を行わせるかを選択し、設定ボタンを操作する。これにより、分析ユニット300の記憶部にルールが記憶される。
図16に示すように設定が行われると、測定オーダーの種類が「Normal」である場合、分析ユニット300は、測定ユニット400で取得された波形データを計算処理分析の対象として特定する。例えば、測定オーダーの種類が「Normal」である場合、測定項目ごとの分析の設定にかかわらず、当該測定オーダーに基づく全ての測定項目に対して、計算処理分析が実行される。また、測定オーダーの種類が「Rerun」または「Reflex」である場合、分析ユニット300は、測定項目ごとに設定された分析設定に応じて、測定ユニット400で取得された波形データをAI分析または計算処理分析の対象として設定する。例えば、測定オーダーの種別が「Rerun」および「Reflex」である場合、有核赤血球(NRBC)および好塩基球(BASO)に関する測定項目はAI分析の対象となり、他の測定項目は計算処理分析の対象となる。
図15に戻り、ステップS13において、分析ユニット300は、ステップS61で特定した波形データに、AI分析の対象となるデータが含まれているか否かを判定する。AI分析の対象となる波形データがある場合(S13:YES)、ステップS14において、分析ユニット300は、ステップS61で特定したAI分析の対象となる波形データに対して、AI分析を実行する。
続いて、ステップS15において、分析ユニット300は、ステップS61で特定した波形データに、計算処理分析の対象となる波形データが含まれているか否かを判定する。計算処理分析の対象となる波形データがある場合(S15:YES)、ステップS16において、分析ユニット300は、ステップS61で特定した計算処理分析の対象となる波形データに対して、計算処理分析を実行する。
図17は、計算処理分析によるフラグに基づいてAI分析の要否が決定される例を示すフローチャートである。
図17では、図6と比較して、ステップS11の後段にステップS71~S74が追加され、ステップS12~S16が削除されている。以下、図6からの変更点について説明する。
ステップS71において、分析ユニット300は、ステップS11で取得された波形データに対して計算処理分析を実行し、計算処理分析の結果に基づいて、検体中の分析物に関する異常を示唆するフラグを設定する。フラグは、例えば、所定の異常細胞が検出されたことを示すフラグや、所定の血球の計数値が異常値であることを示すフラグなどである。ステップS72において、分析ユニット300は、フラグの分析結果についてAI分析を行うか否かを含むルールを参照する。
図18は、分析結果のフラグごとにAI分析を設定するための画面を模式的に示す例示図である。
図18の画面は、例えば、分析ユニット300が備える表示部に表示される。図18の画面は、計算処理分析による分析結果に付与されたフラグごとに、AI分析を設定するためのチェックボックスを備える。検体分析装置4000が血球分析装置である場合、計算処理分析により分析結果に付与されるフラグには、血球の減少および増多や、異常な細胞の出現などが含まれる。ユーザは、チェックボックスを操作してフラグごとにAI分析を行うかを選択し、設定ボタンを操作する。これにより、分析ユニット300の記憶部にルールが記憶される。
フラグに対するチェックボックスがオンになると、当該分析結果に対応する波形データに対してAI分析が実行される。図18に示す例では、芽球/異常リンパ球、芽球、異常リンパ球、および異型リンパ球の分析結果に対してチェックボックスがオンになっており、計算処理分析によってこれらの血球が存在するとのフラグが設定された場合に、これらの血球に対してAI分析が実行される。
図17に戻り、ステップS73において、分析ユニット300は、ステップS71で取得した分析結果に付与されたフラグと、ステップS72で参照したルールとに基づいて、検体がAI分析対象であるか否かを判定する。検体がAI分析対象であると(S73:YES)、ステップS74において、分析ユニット300は、各波形データに対して、AI分析を実行する。例えば、計算処理分析で芽球が検出されたことを示すフラグが出た場合、図18に例示したルールによれば、ステップS11で取得した各波形データに対してAI分析が実行される。
他方、検体がAI分析対象ではない場合(S73:NO)、分析ユニット300は、ステップS74をスキップする。
図19は、計算処理分析で分類された特定の分析物に対してAI分析を実行する例を示すフローチャートである。
図19では、図6と比較して、ステップS11の後段にステップS81~S84が追加され、ステップS12~S16が削除されている。以下、図6からの変更点について説明する。
ステップS81において、分析ユニット300は、ステップS11で取得された波形データに対して計算処理分析を実行し、分析物を分類する。ステップS82において、分析ユニット300は、分析物の種別ごとにAI分析を行うか否かを含むルールを参照する。
図20は、分析物の種別ごとにAI分析を行うか否かを設定するための画面を模式的に示す例示図である。
図20の画面は、例えば、分析ユニット300が備える表示部に表示される。図20の画面は、分析物の種別ごとに、AI分析を設定するためのチェックボックスを備える。検体分析装置4000が血球分析装置である場合、計算処理分析によって分類される種別には、好酸球、好中球、リンパ球および単球などが含まれる。ユーザは、チェックボックスを操作して分析物の種別ごとにAI分析を行うか否かを選択し、設定ボタンを操作する。これにより、分析ユニット300の記憶部にルールが記憶される。
分析物の種別に対するチェックボックスがオンになると、当該種別に分類された波形データに対してAI分析が実行される。図20に示す例では、単球およびリンパ球に対してAI分析が実行される。
図19に戻り、ステップS83において、分析ユニット300は、ステップS81で分類した分析物の種別と、ステップS82で参照したルールとに基づいて、特定分類に分類された分析物(例えば、図20に示すルールの場合は単球およびリンパ球)に対応する波形データを特定する。ステップS84において、分析ユニット300は、特定した波形データに対して、AI分析を実行する。
図21は、図19に示す処理で実行される、計算処理分析およびAI分析による分類方法を説明する図である。
計算処理分析では、波形データから算出された2種類の代表値を軸とするスキャッタグラムが用いられる。例えば、図20に示したように、単球およびリンパ球に対してAI分析を実行するよう設定された場合、ステップS81において、計算処理分析により、スキャッタグラム上の単球およびリンパ球に対応する破線の囲み領域のプロットが特定される。そして、ステップS83において、囲み領域のプロットに対応する波形データが特定され、ステップS84において、特定された波形データに対してAI分析が実行される。
図19に戻り、ステップS17において、分析ユニット300は、計算処理分析およびAI分析による分析結果を提供する。このとき、分析ユニット300は、ステップS81において計算処理分析によって得られた分析結果のうち、AI分析の対象となった種別の分析結果を、AI分析で得られた分析結果に置き換えて提供する。なお、計算処理分析による分析結果と、AI分析による分析結果とが、合わせて提供されてもよい。
図22は、計算処理分析で特定の分類が行われた場合にAI分析を実行する例を示すフローチャートである。
図22では、図6と比較して、ステップS11の後段にステップS91~S95が追加され、ステップS12~S16が削除されている。以下、図6からの変更点について説明する。
ステップS91において、分析ユニット300は、ステップS11で取得された波形データに対して計算処理分析を実行し、分析物を分類する。ステップS92において、分析ユニット300は、特定の種別の分析物、例えば、健常者の末梢血には存在しない細胞に対してAI分析を行うか否かを含むルールを参照する。
図23は、特定の種別の分析物に対してAI分析を行うか否かを設定するための画面を模式的に示す例示図である。
図23の画面は、例えば、分析ユニット300が備える表示部に表示される。図23の画面は、特定の分析物の種別ごとに、AI分析を設定するためのチェックボックスを備える。検体分析装置4000が血球分析装置である場合、計算処理分析によって分類される種別には、芽球、異常リンパ球、異型リンパ球、および幼若顆粒球などが含まれ得る。ユーザは、チェックボックスを操作して特定の分析物の種別ごとにAI分析を行うか否かを選択し、設定ボタンを操作する。これにより、分析ユニット300の記憶部にルールが記憶される。
特定の分析物の種別に対するチェックボックスがオンになると、当該種別に分類された波形データに対してAI分析が実行される。図23に示す例では、芽球、異常リンパ球、および異型リンパ球に対してAI分析が実行される。
図22に戻り、ステップS93において、分析ユニット300は、ステップS91で分類した分析物の種別と、ステップS92で参照したルールとに基づいて、特定分類に分類された分析物(例えば、図23に示すルールの場合は芽球、異常リンパ球、および異型リンパ球)が検出されているか否かを判定する。特定分類に分類された分析物が検出されていると(S93:YES)、ステップS94において、分析ユニット300は、特定分類に分類された分析物に対応する波形データを特定する。ステップS95において、分析ユニット300は、特定した波形データに対して、AI分析を実行する。
ステップS17において、分析ユニット300は、計算処理分析およびAI分析による分析結果を提供する。このとき、分析ユニット300は、ステップS91において計算処理分析によって得られた分析結果のうち、AI分析の対象となった種別の分析結果を、AI分析で得られた分析結果に置き換えて提供する。なお、計算処理分析による分析結果と、AI分析による分析結果とが、合わせて提供されてもよい。
[実施形態4]
実施形態4では、フローサイトメトリーに基づいて検体を分析する検体分析装置4000において、計算処理分析およびAI分析を分担して実行する詳細な構成例を示す。
実施形態4の検体分析装置4000が測定する検体として、被検者から採取された生体試料を挙げることができる。検体は、例えば、静脈血、動脈血等の末梢血、尿、血液および尿以外の体液を含み得る。血液および尿以外の体液は、例えば、骨髄液、腹水、胸水、脳脊髄液等を含み得る。以下、血液および尿以外の体液を単に「体液」という場合がある。血液試料は、細胞数の計数および細胞種別の判定ができる状態である限り、制限されない。血液は、好ましくは末梢血である。例えば、血液は、エチレンジアミン四酢酸塩ナトリウム塩またはカリウム塩)、ヘパリンナトリウム等の抗凝固剤を使用して採血された末梢血を挙げることができる。末梢血は、動脈から採取されても静脈から採取されてもよい。
本実施形態において判定しようとする細胞種別は、形態学的な分類に基づく細胞種別を基準とするものであり、検体の種類に応じて異なる。検体が血液である場合であって、血液が健常者から採血されたものである場合、本実施形態において判定しようとする細胞種別には、例えば、有核赤血球、白血球等の有核細胞、赤血球、血小板等が含まれる。有核細胞には、例えば、好中球、リンパ球、単球、好酸球、好塩基球が含まれる。好中球には、例えば、分葉核好中球および桿状核好中球が含まれる。血液が非健常者から採血されたものである場合、有核細胞には、例えば、幼若顆粒球および異常細胞からなる群から選択される少なくとも一種が含まれる場合がある。このような細胞も本実施形態において判定しようとする細胞種別に含まれる。幼若顆粒球には、例えば、後骨髄球、骨髄球、前骨髄球、骨髄芽球等の細胞が含まれ得る。
また、有核細胞には、正常細胞の他、健常人の末梢血には含まれない異常細胞が含まれていてもよい。異常細胞の例は、所定の疾患に罹患した際に出現する細胞であり、例えば腫瘍細胞である。造血系の場合、所定の疾患は、例えば、骨髄異型性症候群、急性骨髄芽球性白血病、急性前骨髄球性白血病、急性骨髄単球性白血病、急性単球性白血病、赤白血病、急性巨核芽球性白血病、急性骨髄性白血病、急性リンパ球性白血病、リンパ芽球性白血病、慢性骨髄性白血病、または慢性リンパ球性白血病等の白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫等の悪性リンパ腫、および多発性骨髄腫よりなる群から選択される疾患であり得る。
さらに、異常細胞には、例えば、リンパ芽球、形質細胞、異型リンパ球、反応性リンパ球、前赤芽球、好塩基性赤芽球、多染性赤芽球、正染性赤芽球、前巨赤芽球、好塩基性巨赤芽球、多染性巨赤芽球、および正染性巨赤芽球等の有核赤血球である赤芽球、およびミクロメガカリオサイトを含む巨核球等の健常人の末梢血では通常認められない細胞が含まれ得る。
また、検体が尿である場合、本実施形態において判定しようとする細胞種別には、例えば、移行上皮、扁平上皮等の上皮細胞、赤血球、白血球等が含まれ得る。異常細胞としては、例えば、細菌、糸状菌、酵母等の真菌、腫瘍細胞等が含まれ得る。
検体が腹水、胸水、髄液等の通常血液成分を含まない体液である場合、細胞種別には、例えば、赤血球、白血球、大型細胞を含み得る。ここで挙げた大型細胞とは、体腔内膜または内臓の腹膜から剥がれた細胞で白血球より大きいものを指し、例えば、中皮細胞、組織球、腫瘍細胞等が該当する。
検体が骨髄液である場合、本実施形態において判定しようとする細胞種別は、正常な細胞として、成熟した血球細胞と幼若な血球系細胞を含み得る。成熟した血球細胞には、例えば、有核赤血球、白血球等の有核細胞、赤血球、血小板等が含まれる。白血球等の有核細胞には、例えば、好中球、リンパ球、形質細胞、単球、好酸球、好塩基球が含まれる。好中球には、例えば、分葉核好中球および桿状核好中球が含まれる。幼若な血球系細胞には、例えば、造血系幹細胞、幼若顆粒球系細胞、幼若リンパ球系細胞、幼若単球系細胞、幼若赤血球系細胞、巨核球系細胞、間葉系細胞等が含まれる。幼若顆粒球には、例えば、後骨髄球、骨髄球、前骨髄球、骨髄芽球等の細胞が含まれ得る。幼若リンパ球系細胞には、例えば、リンパ芽球等が含まれる。幼若単球系細胞には、単芽球等が含まれる。幼若赤血球系細胞には、例えば、前赤芽球、好塩基性赤芽球、多染性赤芽球、正染性赤芽球、前巨赤芽球、好塩基性巨赤芽球、多染性巨赤芽球、および正染性巨赤芽球等の有核赤血球が含まれる。巨核球系細胞には、例えば、巨核芽球等が含まれる。
骨髄に含まれ得る異常細胞としては、例えば、上述した骨髄異型性症候群、急性骨髄芽球性白血病、急性前骨髄球性白血病、急性骨髄単球性白血病、急性単球性白血病、赤白血病、急性巨核芽球性白血病、急性骨髄性白血病、急性リンパ球性白血病、リンパ芽球性白血病、慢性骨髄性白血病、または慢性リンパ球性白血病等の白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫等の悪性リンパ腫、および多発性骨髄腫よりなる群から選択される造血系腫瘍細胞、骨髄以外の器官に発生した悪性腫瘍の転移腫瘍細胞を挙げることができる。
上記で例示された検体中の分析物(例えば、細胞や有形成分)から得られる信号として、フローセルを流れる細胞に光を照射して得られるアナログの光学的信号である前方散乱光信号、側方散乱光信号および蛍光信号を例示しているが、分析物の特徴を表し、分析物を種別ごとに分類できる信号であれば特に制限されない。
光学的信号は、好ましくは、細胞に光を照射することで光学的な応答として得られる光信号である。光信号は、光散乱に基づく信号、光吸収に基づく信号、透過光に基づく信号、および蛍光に基づく信号から選択される少なくとも一種を含み得る。
光散乱に基づく信号は、光照射によって生じる散乱光信号および光照射によって生じる光損失信号を含み得る。散乱光信号は、照射光の進行方向に対する散乱光の受光角度に応じて、検体中の分析物の特徴を表す。前方散乱光信号は、分析物の大きさを表す代表値の算出に用いられる。側方散乱光信号は、検体中の分析物が細胞である場合に、当該細胞の核の複雑さを表す代表値の算出に用いられる。
前方散乱光の「前方」は、光源から発せられた光の進行方向を意図する。「前方」には、照射光の角度を0度とした場合に、受光角度が0°から5°付近である前方低角、および/または受光角度が5°から20°付近である前方高角を含み得る。「側方」は、「前方」と重ならない限り制限されない。「側方」には、照射光の角度を0°とした場合、受光角度が25°から155°付近、好ましくは45°から135°付近、より好ましくは90°付近を含み得る。本実施形態の蛍光は、側方散乱光と同様の受光角度において検出される。
光散乱に基づく信号は、偏光または偏光解消を信号の成分として含んでもよい。例えば、検体中の分析物に光を照射して生じる散乱光を、偏光板を通して受光することで、特定角度に偏光した散乱光のみを受光することができる。また、偏光板を通して光を検体中の分析物に照射し、生じた散乱光を照射用の偏光板と異なる角度の偏光のみを透過する偏光板を通して受光することで、偏光解消散乱光のみを受光することができる。
光損失信号は、光が分析物に照射されて散乱することで受光部における受光量が減少することに基づく、受光量の損失量を表す。光損失信号は、好ましくは、照射光の光軸方向における光損失(軸方向光損失)として得られる。光損失信号は、測定試料がフローセルを流れていない状態で受光部における受光量を100%としたときの、測定試料がフローセルを流れた時の受光量の割合として表すことができる。軸方向光損失は、前方散乱光信号と同様に分析物の大きさを表す代表値の算出に用いられるが、細胞が透光性を有する場合とそうでない場合とで得られる信号は異なる。
蛍光に基づく信号は、蛍光物質によって標識した分析物に対して光を照射することで励起される蛍光であってもよいし、非染色の分析物から生じる自家蛍光であってもよい。検体中の分析物が細胞である場合、蛍光物質は、核酸や膜タンパクに結合する蛍光色素であってもよいし、細胞の特定のタンパク質に結合する抗体を蛍光色素で修飾した標識抗体であってもよい。
光学的信号は、検体中の分析物に対して光を照射し、光が照射された分析物を撮像することによって得られる画像データの形式で取得されてもよい。画像データは、フローセルの流路を流れる個々の分析物をTDIカメラやCCDカメラ等の撮像素子によって撮像することで得ることができる。または、スライドガラス上に細胞を含む検体または測定試料を塗布し、散布し、または点着し、スライドガラスを撮像素子によって撮像することで細胞の画像データが取得されてもよい。
検体中の分析物から得られる信号は、光学的信号に限られず、細胞から得られる電気的信号であってもよい。電気的信号は、例えば、フローセルに直流電流を印加し、分析物がフローセルを流れることによって生じるインピーダンスの変化を電気的信号として用いてもよい。このようにして得られる電気的信号は分析物の容積を反映する代表値の算出に用いられる。あるいは、電気的信号は、フローセルを流れる分析物に無線周波を印加したときのインピーダンスの変化でもよい。このようにして得られる電気的信号は分析物の伝導度を反映する代表値の算出に用いられる。
検体中の分析物から得られる信号は、上述の信号のうち少なくとも2種類以上の信号を組み合わせてもよい。複数の信号を組み合わせることで、分析物の特徴を多面的に分析することができ、より高精度な細胞の分類が可能になる。組み合わせは、複数の光学的信号、例えば、前方散乱光信号、側方散乱光信号、および蛍光信号のうち少なくとも2つを組み合わせてもよく、角度の異なる散乱光信号、例えば、低角度散乱光信号および高角度散乱光信号を組み合わせてもよい。または光学的信号および電気的信号を組み合わせてもよく、組み合わせる信号の種類および数は特に制限されない。
本実施形態においてAI分析に用いられるAIアルゴリズム60は、例えば、深層学習アルゴリズムである。深層学習アルゴリズムは、人工知能アルゴリズムの1つであり、多層の中間層を含むニューラルネットワークで構成される。ニューラルネットワークに入力されたデータは、多量の行列演算によって処理される。上述の図2に例示されたアナログの光学的信号をA/D変換することで取得されたデジタルデータから、分析物の各々に対応する波形データが取得され、取得された波形データがAIアルゴリズム60に入力され分析される。例えば、AIアルゴリズム60により、入力された波形データに対応する分析物の種別が分類される。
本実施形態において、検体中の分析物の種別は、AIアルゴリズム60によって分類されることに限定されない。流路内の所定位置を通過する個々の分析物から、当該分析物ごとに、分析物が所定位置を通過している間の複数の時点において信号強度を取得し、取得した個々の分析物に関する複数の時点における信号強度をパターンとして認識した結果に基づいて各分析物の種別を判定してもよい。パターンは、複数時点の信号強度の数値パターンとして認識されてもよく、複数時点の信号強度をグラフとしてプロットした場合の形状パターンとして認識されてもよい。数値パターンとして認識する場合には、分析物の数値パターンと、既に種別が既知である数値パターンとを比較することにより、分析物の種別を判定することができる。分析物の数値パターンと対照の数値パターンとの比較は、例えばスピアマンの順位相関、zスコア等を用いることができる。分析物のグラフ形状のパターンと、既に種別が既知であるグラフ形状のパターンとを比較することにより、分析物の種別を判定することができる。分析物のグラフ形状のパターンと、既に種別が既知であるグラフ形状のパターンとの比較は、例えば、幾何学形状パターンマッチングを用いてもよいし、SIFT Descriptorに代表されるフィーチャーディスクリプターを用いてもよい。
(構成例)
測定ユニット400が検体(例えば、血液検体、尿検体、体液、骨髄液)を測定するためのFCM検出部(フローサイトメトリーに基づく検出部)を備える場合の、検体分析装置4000の構成例を説明する。
図24は、測定ユニット400の構成を示すブロック図である。
図24に示されるように、測定ユニット400は、検体中の分析物を検出するFCM検出部410と、FCM検出部410から出力されるアナログの光学的信号を処理するアナログ処理部420と、装置機構部430と、試料調製部440と、検体吸引部450と、測定ユニット制御部460と、を備える。
検体吸引部450は、例えば、検体容器から検体を吸引し、吸引した検体を反応容器(例えば、反応チャンバ、反応キュベット)に吐出する。試料調製部440は、例えば、測定試料を調製するための試薬を吸引し、検体が収容された反応容器に試薬を吐出する。反応容器内で検体および試薬が混合されることにより、測定試料が調製される。装置機構部430は、測定ユニット400内の機構を含む。
図25は、FCM検出部410の光学系の構成を模式的に示す図である。
光源4111から出射された光は、照射レンズ系4112を介してフローセル(シースフローセル)4113内を通過する測定試料中の分析物に照射される。これにより、フローセル4113内を流れる分析物から散乱光および蛍光が発せられる。
光源4111から出射される光の波長は特に限定されず、蛍光色素の励起に好適な波長が選択される。光源4111として、例えば、半導体レーザ光源、アルゴンレーザ光源、ヘリウム-ネオンレーザ等の気体レーザ光源、水銀アークランプなどが使用される。特に半導体レーザ光源は、気体レーザ光源に比べて非常に安価であるので好適である。
フローセル4113内の分析物から生じる前方散乱光は、集光レンズ4114およびピンホール部4115を介して、受光素子4116によって受光される。受光素子4116は、例えば、フォトダイオードである。フローセル4113内の分析物から生じる側方散乱光は、集光レンズ4117、ダイクロイックミラー4118、バンドパスフィルタ4119、およびピンホール部4120を介して、受光素子4121によって受光される。受光素子4121は、例えば、フォトダイオードである。フローセル4113内の分析物から生じる蛍光は、集光レンズ4117およびダイクロイックミラー4118を介して、受光素子4122によって受光される。受光素子4122は、例えば、アバランシェフォトダイオードである。なお、受光素子4116、4121、4122として、光電子増倍管が用いられてもよい。
各受光素子4116、4121、4122から出力されたアナログの受光信号(光学的信号)は、それぞれ、アンプ4151、4152、4153を介して、アナログ処理部420に入力される。
アナログ処理部420は、FCM検出部410から入力される光学的信号に対してノイズ除去や平滑化などの処理を行い、処理後の光学的信号をA/D変換部461に対して出力する。
図24に戻り、測定ユニット制御部460は、A/D変換部461と、IF(インターフェース)部462と、バス463と、IF部464、465と、を備える。
A/D変換部461は、アナログ処理部420から出力された、測定試料の測定開始から測定終了までのアナログの光学的信号を、デジタルデータに変換する。1つの測定試料から複数種類の光学的信号(例えば、前方散乱光強度、側方散乱光強度および蛍光強度にそれぞれ対応する光学的信号)が生成される場合、A/D変換部461は、それぞれの光学的信号の測定開始から測定終了までをデジタルデータに変換する。A/D変換部461には、例えば、図25に示すように、3種類の光学的信号(前方散乱光信号、側方散乱光信号および蛍光信号)が、それぞれ対応する複数の信号伝送経路420aを介して入力される。A/D変換部461は、複数の信号伝送経路420aから入力された光学的信号のそれぞれをデジタルデータに変換する。それぞれの信号伝送経路420aは、例えば、アナログの光学的信号を差動信号として伝送するように構成されている。
A/D変換部461は、光学的信号の信号レベルと所定の閾値とを比較して、閾値より大きい信号レベルを有する光学的信号をサンプリングする。A/D変換部461は、所定のサンプリングレート(例えば、10ナノ秒間隔で1024ポイントのサンプリング、80ナノ秒間隔で128ポイントのサンプリング、または160ナノ秒間隔で64ポイントのサンプリング等)で、アナログの光学的信号をサンプリングする。A/D変換部461は、例えば、各分析物に対応する3種類の光学的信号に対してサンプリング処理を実行することで、各分析物について前方散乱光信号のデジタルデータ(波形データ)、側方散乱光信号のデジタルデータ(波形データ)、および蛍光信号のデジタルデータ(波形データ)を生成する。各デジタルデータ(波形データ)は、検体中の分析物の各々に対応する。
A/D変換部461は、生成した波形データのそれぞれにインデックスを付与する。生成された波形データは、例えば、1つの検体に含まれるN個の分析物に各々対応するデジタルのデータである。これにより、分析物ごとに、3種類の光学的信号(前方散乱光信号、側方散乱光信号および蛍光信号)に対応して、3種類の波形データが生成される。
A/D変換部461で生成された波形データは、IF部462、465およびバス463を介して、分析ユニット300に送信される。また、装置機構部430、試料調製部440および検体吸引部450は、IF部464、465およびバス463を介して、分析ユニット300によって制御される。
図26は、分析ユニット300の構成を示すブロック図である。
分析ユニット300は、プロセッサ3001と、RAM3017と、バス3003と、記憶部3004と、IF部3006と、表示部3011と、操作部3012と、を備える。分析ユニット300は、例えば、パーソナルコンピュータによって構成されている。分析ユニット300は、IF部3006を介して測定ユニット400と接続される。
プロセッサ3001は、例えば、CPUにより構成される。プロセッサ3001は、記憶部3004からRAM3017に展開されたプログラムを実行する。RAM3017は、いわゆるメインメモリである。プロセッサ3001は、分析用のプログラムを実行することにより、測定ユニット400で取得された波形データを分析する。プロセッサ3001は、制御用のプログラムを実行することにより、分析ユニット300および測定ユニット400を制御する。
記憶部3004は、例えば、ハードディスクドライブ(HDD)やソリッドステートドライブ(SSD)により構成される。記憶部3004には、測定ユニット400から受信した波形データと、分析ユニット300および測定ユニット400を制御するためのプログラムと、波形データを分析するためのプログラムとが記憶されている。波形データを分析するためのプログラムは、上述の計算処理分析とAI分析に基づいて、波形データを分析するように構成されている。また、記憶部3004は、AI分析と計算処理分析の各々の対象となる波形データを特定するためのルールや、分析動作を選択するためのルールを記憶する。
表示部3011は、例えば、液晶ディスプレイにより構成される。表示部3011は、バス3003およびIF部3006を介して、プロセッサ3001に接続されている。表示部3011には、例えば、測定ユニット400で取得された分析結果が表示される。
操作部3012は、例えば、キーボード、マウス、およびタッチパネルを含むポインティングデバイスなどにより構成される。医師や検査技師等のユーザは、操作部3012を操作することで、検体分析装置4000に測定オーダーを入力し、測定オーダーに基づく測定指示を入力することができる。ユーザは、操作部3012を操作することで、分析結果を表示する指示を入力することもできる。分析結果は、例えば、分析に基づく数値結果、グラフ、チャート、検体に付与されたフラグ情報などを含む。
図27は、検体分析装置4000が血液検体中の血球の計数および分類を実行する場合の、測定ユニット400の構成を示すブロック図である。
図27の測定ユニット400は、図24の構成に加え、さらに、RBC/PLT検出部4101と、HGB検出部4102と、アナログ処理部4201、4202と、A/D変換部4611、4612と、を備える。
RBC/PLT検出部4101は、電気抵抗式の検出部であり、RBC/PLT測定試料に基づいて、シースフローDC検出法により血球の測定を行う。HGB検出部4102は、ヘモグロビン測定試料に基づいて、SLS-ヘモグロビン法によりヘモグロビンの測定を行う。RBC/PLT検出部4101およびHGB検出部4102のそれぞれから取得されたアナログ信号をA/D変換することで得られたデータ、計算処理分析の対象となる。RBC/PLT検出部4101に基づくデータにより、血液検体中の赤血球や血小板が計数される。HGB検出部4102に基づくデータにより、血液検体中の血色素量が取得される。
なお、RBC/PLT検出部4101およびHGB検出部4102のそれぞれから取得されたアナログ信号をA/D変換することで得られたデータは、AI分析の対象となってもよい。また、RBC/PLT検出部4101およびHGB検出部4102に基づくデータに対しても、AI分析と計算処理分析が使い分けられてもよい。これにより、データを処理する分析ユニット300の負荷を軽減できる。
図28は、図27の測定ユニット400における検体吸引部450および試料調製部440の構成を示すブロック図である。
検体吸引部450は、採血管TBから血液検体(例えば、全血)を吸引するためのノズル451と、ノズルに陰圧および陽圧を付与するためのポンプ452と、を備える。ノズル451は、装置機構部430(図27参照)によって上下移動されることで採血管TBに挿入される。ノズル451が採血管TBに挿入された状態でポンプ452が陰圧を付与すると、ノズル451を介して血液検体が吸引される。なお、装置機構部430は、採血管TBからの血液の吸引前に採血管TBを転倒攪拌するハンド部材を備えてもよい。
試料調製部440は、WDF試料調製部440a、RET試料調製部440b、WPC試料調製部440c、PLT-F試料調製部440d、およびWNR試料調製部440eを備える。試料調製部440a~440eは、それぞれ、検体と試薬(例えば、溶血剤および染色液)を混合するための反応チャンバを備える。試料調製部440a~440eは、それぞれ、WDFチャンネル、RETチャンネル、WPCチャンネル、PLT-Fチャンネル、WNRチャンネルにおいて用いられる。
ここで、検体分析装置4000は、調製する複数種類の測定試料にそれぞれ対応して、複数の測定チャンネルを備える。検体分析装置4000は、例えば、WDFチャンネル、RETチャンネル、WPCチャンネル、PLT-Fチャンネル、およびWNRチャンネルを備える。WDFチャンネルは、好中球、リンパ球、単球、および好酸球を検出するためのチャンネルである。RETチャンネルは、網状赤血球を検出するためのチャンネルである。WPCチャンネルは、芽球およびリンパ球系の異常細胞を検出するためのチャンネルである。PLT-Fチャンネルは、血小板を検出するためのチャンネルである。WNRチャンネルは、好塩基球以外の白血球、好塩基球、および有核赤血球を検出するためのチャンネルである。
試料調製部440a~440eには、測定チャンネルに対応する試薬である溶血剤を収容した溶血剤容器と染色液を収容した染色液容器とが、流路を介して接続されている。例えば、WDF試料調製部440aには、WDF測定用試薬であるWDF溶血剤(例えば、ライザセルWDF II;シスメックス株式会社製)を収容した溶血剤容器、およびWDF染色液(例えば、フルオロセルWDF;シスメックス株式会社製)を収容した染色液容器が、流路を介して接続されている。なお、ここでは1つの試料調製部が溶血剤容器と染色液容器とに接続された構成が例示されているが、1つの試料調製部が必ずしも溶血剤容器と染色液容器の両方に接続されていなくてもよく、複数の試料調製部によって1つの試薬容器が共用されてもよい。また、試料調製部と試薬容器とは流路で接続されている必要はなく、試薬容器からノズルにより試薬を吸引し、ノズルが移動し、吸引した試薬をノズルから試料調製部の反応チャンバに吐出する構成であってもよい。
血液検体を吸引したノズル451は、装置機構部430による水平および上下移動によって、試料調製部440a~440eのうち、測定オーダーに対応する試料調製部の反応チャンバの上方に位置づけられる。この状態で、ポンプ452が陽圧を付与すると、ノズル451から対応する反応チャンバに、血液検体が吐出される。試料調製部440は、血液検体が吐出された反応チャンバに対応する溶血剤と染色液を供給し、反応チャンバ内で血液検体、溶血剤および染色液を混合することにより測定試料を調製する。
WDF試料調製部440aにおいてWDF測定試料が調製され、RET試料調製部440bにおいてRET測定試料が調製され、WPC試料調製部440cにおいてWPC測定試料が調製され、PLT-F試料調製部440dにおいてPLT-F測定試料が調製され、WNR試料調製部440eにおいてWNR測定試料が調製される。調製された測定試料は、流路を介して反応チャンバからFCM検出部410に供給され、フローサイトメトリー法による細胞の測定が行われる。
上述の測定チャンネル(WDF、RET、WPC、PLT-F、WNR)は、測定オーダーに含まれる測定項目に対応している。例えば、WDFチャンネルは白血球の分類に関する測定項目に対応し、RETチャンネルは網状赤血球に関する測定項目に対応し、PLT-Fチャンネルは血小板に関する測定項目に対応し、WNRチャンネルは白血球数および有核赤血球に関する測定項目に対応する。上述の測定チャンネルにおいて調製される測定試料は、FCM検出部410により測定される。
なお、RBC/PLT検出部4101による測定結果は、赤血球数に関する測定項目に対応する。HGB検出部4102による測定結果は、血色素量に関する測定項目に対応する。
図29は、図28に示した試料調製部440の他の構成を示すブロック図である。
図29に示す例では、AI分析と計算処理分析の分担に応じて、試料調製部440の測定チャンネルの構成が変更されている。具体的には、図29の試料調製部440は、図28の試料調製部440と比較して、WNRチャンネル用のWNR試料調製部440eと、WNR試料調製部440eに接続された試薬(WNR溶血剤およびWNR染色液)とに代えて、WDFチャンネル用のWDF試料調製部440aと、WDF試料調製部440aに接続された試薬(WDF溶血剤およびWDF染色液)が追加されている。すなわち、図29の試料調製部440は、WDFチャンネルに対応したWDF試料調製部440aおよび試薬からなる組を2つ備えている。なお、試料調製部440は、WDFチャンネルに対応したWDF試料調製部440aおよび試薬からなる組を3以上備えてもよい。
図29に示すように試料調製部440が構成される場合、WNRチャンネルにおいて行われる好塩基球および有核赤血球の分類は、WDFチャンネルにおいて行われる。分析ユニット300は、WDFチャンネルにおいて調製された測定試料から得られた波形データに対してAI分析を実行することにより、好中球、リンパ球、単球、好酸球、好塩基球、および有核赤血球を分類する。この場合、例えば、WDFチャンネルによる測定で得られた波形データのうち、好中球、リンパ球、単球、好酸球、好塩基球、および有核赤血球に対応する波形データを、あらかじめ教師データとしてAIアルゴリズム60に学習させる。これにより、WDFチャンネルの波形データから、好中球、リンパ球、単球、好酸球、好塩基球、および有核赤血球を分類可能なAIアルゴリズム60が生成される。
図29の構成によれば、例えば、複数のWDF試料調製部404aの各々の反応チャンバにおいて、異なる検体の測定試料を並行して調製できる。これにより、異なる検体に対するWDFチャンネルの測定を並行して実行できる。
また、図29の構成では、元の測定チャンネル(WNRチャンネル)に対応する反応チャンバおよび試薬が、後の測定チャンネル(WDFチャンネル)に対応する反応チャンバおよび試薬に置き換えられている。この場合、元の測定チャンネルの分析は、後の測定チャンネルの分析によって行われる必要がある。
図29の構成では、元の測定チャンネル(WNRチャンネル)の分析が、後の測定チャンネル(WDFチャンネル)による波形データのAI分析により行われる。これにより、元の測定チャンネル(WNRチャンネル)を後の測定チャンネル(WDFチャンネル)に置き換えることが可能となる。よって、検体分析装置4000に設けられた測定チャンネルの総数を増やすことなく、増設したい測定チャンネルの数を増やすことができる。WDFチャンネルの数が増えることで、複数のWDFチャンネルでそれぞれ異なる検体を並列的に測定でき、WDFチャンネルによる測定のスループットが向上する。また、AI分析および計算処理分析が分担されることにより、AI分析に要する演算負荷を軽減し、かつ、検体処理のスループットも向上できるという顕著な効果が得られる。
図7を参照して説明した処理では、測定項目に応じてAI分析および計算処理分析のいずれかで分析される例が示されたが、測定チャンネルに応じてAI分析および計算処理分析の何れで分析するか決められてもよい。
図30は、測定チャンネルに応じて分析が実行される例を示すフローチャートである。
図30では、図6と比較して、ステップS12に代えてステップS101が追加されている。以下、図6からの変更点について説明する。
ステップS101において、分析ユニット300は、測定チャンネルに基づいてAI分析および計算処理分析の何れを行うかを含むルールを参照し、参照したルールに基づいて、ステップS11で取得された波形データに対して、AI分析の対象となる波形データと、計算処理分析の対象となる波形データとをそれぞれ特定する。
図31は、測定チャンネルごとにAI分析または計算処理分析を設定するための画面を模式的に示す例示図である。図31に例示する測定チャンネルは、血球分析装置に関するものである。
図31の画面は、例えば、分析ユニット300が備える表示部に表示される。図31の画面は、測定チャンネルごとに、AI分析を設定するためのチェックボックスおよび計算処理分析を設定するためのチェックボックスを備える。ユーザは、チェックボックスを操作して測定チャンネルごとにAI分析と計算処理分析の何れの分析を行うかを選択し、設定ボタンを操作する。これにより、分析ユニット300の記憶部にルールが記憶される。
図30に戻り、ステップS101で特定した波形データに、AI分析の対象となる波形データが含まれている場合(S13:YES)、ステップS14において、分析ユニット300は、ステップS101で特定したAI分析の対象となる波形データに対して、AI分析を実行する。ステップS101で特定した波形データに、計算処理分析の対象となる波形データが含まれている場合(S15:YES)、ステップS16において、分析ユニット300は、ステップS101で特定した計算処理分析の対象となる波形データに対して、計算処理分析を実行する。
図31の場合、WDFチャンネルがAI分析の対象に設定されているため、WDFチャンネルに対応付けられる測定項目(例えば、白血球の種別)の分析は、WDFチャンネルにおいて調製された測定試料から得られた波形データに対するAI分析により実行される。一方、他のチャンネルは計算処理分析の対象に設定されているため、他のチャンネルに対応づけられた測定項目の分析は、当該他のチャンネルにおいて調製された測定試料から得られた波形データに対する計算処理分析により実行される。
なお、WDFチャンネルがAI分析の対象に設定された場合、WDFチャンネルに対応する全ての測定項目に対してAI分析が実行されてもよいし、WDFチャンネルに対応する一部の測定項目に対してAI分析が実行され、残りの測定項目に対しては計算処理分析が実行されてもよい。
<検体中の分析物の分析方法の例>
次に、図32~図35に示す例を用いて訓練データ75の生成方法および波形データの分析方法を説明する。
<波形データ>
図32は、本分析方法において用いられる波形データを説明するための模式図である。
図32の上段の図に示すように、分析物Aを含む検体から調製された測定試料がフローセル4113に流され、フローセル4113を流れる分析物Aに光が照射されると、光の進行方向に対して前方に前方散乱光が生じる。同様に、光の進行方向に対して側方に側方散乱光および蛍光が生じる。前方散乱光、側方散乱光および蛍光は、それぞれ、受光素子4116、4121、4122によって受光され、受光強度に応じた信号が出力される。これにより、受光素子4116、4121、4122から、それぞれ、時間経過に伴う信号の変化を表すアナログの光学的信号が出力される。前方散乱光に対応する光学的信号を「前方散乱光信号」、側方散乱光に対応する光学的信号を「側方散乱光信号」、蛍光に対応する光学的信号を「蛍光信号」と称する。光学的信号は、A/D変換部461に入力され、デジタルデータに変換される。
図32の中段の図は、A/D変換部461によるデジタルデータへの変換を模式的に示す図である。ここでは、アナログの光学的信号が、A/D変換部461に直接入力されている。光学的信号のレベルは、そのままデジタルデータに変換されてもよいが、適宜、ノイズ除去、ベースライン補正、正規化等の処理が行われてもよい。
図32の中段の図に示すように、A/D変換部461は、受光素子4116、4121、4122から入力されるアナログの光学的信号のうち、前方散乱光信号のレベルが所定の閾値を上回った時点を始点とし、前方散乱光信号のレベルが所定の閾値を下回った時点を終点として、前方散乱光信号、側方散乱光信号および蛍光信号のサンプリングを行う。始点から終点までの間の波形により、1つの分析物に対応するデジタルの波形データが取得される。A/D変換部461は、所定のサンプリングレート(例えば、10ナノ秒間隔で1024ポイントのサンプリング、80ナノ秒間隔で128ポイントのサンプリング、または160ナノ秒間隔で64ポイントのサンプリング等)で、それぞれの光学的信号をサンプリングする。
なお、ここでは、便宜上、アナログの光学的信号に対して始点および終点が設定されて波形データが取得されたが、上述したように、光学的信号が全てデジタルデータに変換された後、デジタルデータに対して始点および終点が設定されて波形データが取得されてもよい。
図32の下段の図は、サンプリングによって得られる波形データを模式的に示す図である。サンプリングによって、1つの分析物に対応する波形データとして、複数の時点におけるアナログ信号レベルをデジタルに示す値を要素とする行列データ(一次元の配列データ)が得られる。A/D変換部461は、分析物ごとに、前方散乱光の波形データ、側方散乱光の波形データ、および蛍光の波形データを生成する。A/D変換部461は、取得された分析物の数が所定数に達するまで、または検体がフローセル4113に流されてから所定時間が経過するまで、波形データの生成を繰り返す。これにより、1つの検体に含まれるN個の分析物の波形データで構成されるデジタルデータが得られる。各分析物に対するサンプリングデータの集合(例えば、t=0nsからt=10240nsまで10ナノ秒毎に1024個のデジタル値の集合)が波形データに相当する。
A/D変換部461によって生成された各々の波形データには、各々の分析物を識別するためのインデックスが付与されてもよい。インデックスは、例えば、生成された波形データの順に1~Nの整数が付与され、同じ分析物から得られた前方散乱光の波形データ、側方散乱光の波形データ、および蛍光の波形データには、それぞれ、同一のインデックスが付与される。同じ分析物に対応する波形データに同一のインデックスが付与されることで、後述するAIアルゴリズム60は、個々の分析物に対応する前方散乱光の波形データ、側方散乱光の波形データ、および蛍光の波形データを1セットとして解析し、分析物の種別を分類できる。
<訓練データの生成>
図33は、検体中の分析物の種別を判定するためのAIアルゴリズム50を訓練するために使用される訓練データの生成方法の一例を示す模式図である。
分析物がフローサイトメトリーに基づいて測定されることにより、分析物から前方散乱光に対応する光学的信号70a、側方散乱光に対応する光学的信号70b、および蛍光に対応する光学的信号70cが取得される。分析物に対応する波形データ72a、72b、72cは、それぞれ、光学的信号70a、70b、70cに基づいて取得される。訓練データ75には、例えば、フローサイトメトリーに基づいて測定された検体中の分析物を計算処理で分析した結果、特定の種別である可能性が高いと判断された分析物の波形データ72a、72b、72cを用いることができる。
以下、血液検体を分析する血球計数装置としての検体分析装置4000を用いる例を説明する。
オペレータは、血液検体をFCM検出部410で測定し、検体に含まれる個々の分析物の前方散乱光、側方散乱光および蛍光の波形データを蓄積しておく。続いて、オペレータは、例えば、側方散乱光に基づく波形データのピーク値および蛍光に基づく波形データのピーク値に基づいて、検体中の分析物(細胞)を、好中球、リンパ球、単球、好酸球、好塩基球、幼若顆粒球および異常細胞の集団に分類する。オペレータは、分類された細胞種別に対応するラベル値77を、その細胞の波形データに付与することで、訓練データ75を得る。訓練データ75は細胞の種別ごとに生成されるため、図34に示すように、ラベル値77は細胞の種別に応じて異なっている。
このとき、オペレータは、好中球の集団に含まれる細胞の側方散乱光および蛍光に基づく波形データのピーク値の最頻値、平均値または中央値を求め、それらの値に基づいて代表的な細胞を特定し、特定した細胞の波形データに、好中球に対応するラベル値「1」を付与する。
なお、訓練データ75の生成方法はこれに限らず、例えば、オペレータは、セルソータによって特定の細胞だけを回収しておき、その細胞をフローサイトメトリーに基づいて測定し、得られた波形データに細胞のラベル値を付与することによって訓練データ75を得てもよい。
波形データ72a、72b、72cは、データの元となった細胞の種別を表すラベル値77と組み合わされる。訓練データ75は、各細胞に対応する3つの波形データ(光学的信号70a、70b、70cに基づく波形データ)を関連付けた状態で含む。そして、訓練データ75が、AIアルゴリズム50に入力される。
<深層学習の概要>
図33を例として、ニューラルネットワークの訓練の概要を説明する。
AIアルゴリズム50は、多層の中間層を含むニューラルネットワークにより構成される。この場合のニューラルネットワークは、例えば、畳み込み層を有する畳み込みニューラルネットワークである。ニューラルネットワークにおける入力層50aのノード数は、入力される訓練データ75の波形データ72a、72b、72cに含まれる配列の要素数に対応している。配列の要素数は、1つの分析物に対応する前方散乱光、側方散乱光および蛍光の波形データ72a、72b、72cの要素数の総和に等しい。
図33の例では、波形データ72a、72b、72cのそれぞれが1024個の要素を含んでいるため、入力層50aのノード数は、1024×3=3072個となる。波形データ72a、72b、72cは、ニューラルネットワークの入力層50aに入力される。訓練データ75の各波形データのラベル値77は、ニューラルネットワークの出力層50bに入力され、ニューラルネットワークを訓練する。入力層50aと出力層50bの間には中間層50cが位置づけられる。
<波形データの分析方法>
図35は、検体中の分析物の波形データをAIアルゴリズム60により分析する方法を模式的に示す図である。
図35に例示される波形データの分析方法では、分析物がフローサイトメトリーに基づいて測定されることにより、分析物から前方散乱光に対応する光学的信号80a、側方散乱光に対応する光学的信号80b、および蛍光に対応する光学的信号80cが取得される。分析物に対応する波形データ82a、82b、82cは、それぞれ、光学的信号80a、80b、80cに基づいて取得される。そして、波形データ82a、82b、82cからなる分析データ85が生成される。
分析データ85と訓練データ75は、少なくとも取得条件を同じにすることが好ましい。取得条件とは、検体中の分析物をフローサイトメトリーに基づいて測定するための条件、例えば、測定試料の調製条件、測定試料をフローセルに流すときの流速、フローセルに照射される光の強度、散乱光および蛍光を受光する受光部の増幅率などを含む。取得条件は、さらに、アナログの光学的信号をA/D変換するときのサンプリングレートも含む。
分析データ85は、各分析物に対応する3つの波形データ(光学的信号80a、80b、80cに基づく波形データ)を関連付けた状態で含む。そして、分析データ85が、訓練済みのAIアルゴリズム60に入力される。AIアルゴリズム60は、多層の中間層を含むニューラルネットワークにより構成される。
分析データ85がAIアルゴリズム60を構成するニューラルネットワークの入力層60aに入力されると、出力層60bから、分析データ85に対応する分析物の種別に関する分類情報82が出力される。入力層60aと出力層60bの間には中間層60cが位置づけられる。分類情報82は、分析物が複数の種別の各々に該当する確率を含む。さらに、確率が最も高い種別が、当該分析物が属する種別であると判断され、その種別を表す識別子であるラベル値83と、その種別を表す文字列である分析結果84とが出力される。
図35の例では、分析データ85に対応する分析物の種別は、好中球である確率が最も高かったため、ラベル値83として「1」が出力され、分析結果84として「好中球」という文字データが出力されている。ラベル値83および分析結果84の出力は、AIアルゴリズム60が行ってもよいが、他のコンピュータプログラムが、AIアルゴリズム60が算出した確率に基づいて、最も好ましいラベル値83および分析結果84を出力してもよい。
上述の図19~図21で示した例における波形データの分析方法を、上述の図32および図35に基づいて説明する。
図19~図21に示した例の場合、まず、分析ユニット300は、取得された波形データを計算処理によって分析する。その後、分析ユニット300は、計算処理分析で分類された所定の種別の細胞(図19~図21の例では、単球とリンパ球)に対応する波形データに対してAI分析を実行する。
計算処理分析で所定の細胞に分類されると、当該細胞は、例えば、図32の波形データのインデックスで識別される。これにより、計算処理分析で単球およびリンパ球に分類された波形データは、AI分析においてインデックスにより特定される。分析ユニット300は、図35の例に従って、インデックスに基づいて特定された波形データに対してAI分析を実行する。分析ユニット300は、例えば、インデックスで特定された波形データを、単球およびリンパ球をより詳細に分類することが可能に学習されたAIアルゴリズム60に入力する。
上述の図29を参照して説明した波形データの分析方法を、上述の図32および図35に基づいて説明する。
図29を参照して説明した分析方法では、分析ユニット300は、例えば、WDFチャンネルによる測定で得られた波形データのAI分析によって、有核赤血球(NRBC)の分類および計数と、好塩基球(BASO)の分類および計数とに加え、好酸球、好中球、リンパ球、および単球の分類および計数も実行する。この例の場合、AIアルゴリズム60は、波形データにより、有核赤血球、好塩基球、好酸球、好中球、リンパ球、および単球の分類が可能となるように学習されている。このようなAIアルゴリズム60を用いることで、WNRチャンネルをWDFチャンネルに置き換えることが可能となる。
図36は、WDFチャンネルで取得される波形データに対してAI分析を実行する例を示すフローチャートである。
ステップS111において、測定ユニット400は、WDFチャンネルにおいて調製した測定試料から光学的信号を取得し、取得した光学的信号から波形データを取得する。ステップS112において、分析ユニット300は、ステップS111で取得した波形データに対して、AI分析を実行する。ステップS113において、分析ユニット300は、WDFチャンネルの波形データに対する分析結果、および他のチャンネルの波形データに対する分析結果を合わせて提供する。他のチャンネルの波形データの分析をAI分析および計算処理分析でどのように分担して実行するかは、例えば、上述の実施形態で例示されたいずれかのルールに基づいて判定される。
図29に示した構成に基づく他の分析方法では、分析ユニット300は、例えば、WDFチャンネルで得られた波形データのAI分析によって、有核赤血球の分類および計数と、好塩基球の分類および計数とを行う。分析ユニット300は、有核赤血球および好塩基球の何れにも分類されなかった細胞に対応する波形データに対して、計算処理分析を実行し、好酸球、好中球、リンパ球および単球の分類および計数を実行する。この例の場合、AIアルゴリズム60は、例えば、波形データから分析物を有核赤血球、好塩基球、およびそれ以外の分析物に分類できるように学習されている。
分析ユニット300は、有核赤血球および好塩基球の何れにも分類されなかった細胞に対応する波形データに対して、計算処理分析を実行する。例えば、有核赤血球および好塩基球の何れにも分類されなかった細胞に対応する波形データのピーク値が抽出され、側方散乱光に対応するピーク値および蛍光に対応するピーク値から生成される2次元グラフ(スキャッタグラム)に基づいて、細胞種別が分類される。例えば、当該2次元グラフに基づき、細胞が好酸球、好中球、リンパ球、単球およびそれ以外のいずれであるかが分類される。2次元グラフに基づく分析で好酸球、好中球、リンパ球および単球以外に分類された細胞は、例えば、デブリ(Debris)に分類される。
図37は、WDFチャンネルで取得される波形データに基づいて、AI分析で有核赤血球と好塩基球を分類し、計算処理分析でその他を分類する例を示すフローチャートである。
ステップS121において、測定ユニット400は、WDFチャンネルにおいて調製した測定試料から光学的信号を取得し、取得した光学的信号から波形データを取得する。ステップS122において、分析ユニット300は、ステップS121で取得した波形データに対して、AI分析を実行する。これにより、有核赤血球および好塩基球が分類される。ステップS123において、分析ユニット300は、有核赤血球および好塩基球のいずれにも分類されない細胞に対応する波形データを特定する。
ステップS124において、分析ユニット300は、ステップS123で特定した波形データに対して計算処理分析を実行する。これにより、リンパ球、単球、好酸球、および好中球が分類される。ステップS125において、分析ユニット300は、WDFチャンネルの波形データの分析結果、および他のチャンネルの波形データの分析結果を合わせて提供する。
図29に示した構成に基づく他の分析方法では、分析ユニット300は、例えば、WDFチャンネルで得られた波形データの計算処理分析によって、リンパ球の分類および計数、単球の分類および計数、好酸球の分類および計数、ならびに、好中球または好塩基球の分類および計数が実行される。好中球または好塩基球の分類および計数において、例えば、好中球および好塩基球のいずれかに分類される細胞が計数される。続いて、分析ユニット300は、リンパ球、単球、好酸球、および、好中球または好塩基球のいずれにも分類されなかった細胞、ならびに、好中球および好塩基球のいずれかに分類された細胞に対応する波形データに対して、AI分析を実行する。これにより、分析物は、有核赤血球、好塩基球、およびそれ以外の細胞に分類される。
例えば、計算処理分析で好中球および好塩基球のいずれかであると分類された細胞の計数結果から、AI分析により好塩基球と分類された細胞の計数結果が減算され、好中球および好塩基球の計数結果がそれぞれ算出される。AI分析で有核赤血球および好塩基球のいずれにも分類されなかった細胞は、例えば、デブリ(Debris)に分類される。
図38は、WDFチャンネルにおける計算処理の分析により特定された好中球/好塩基球に対してAI分析を実行する例を示すフローチャートである。
ステップS131において、測定ユニット400は、WDFチャンネルにおいて調製した測定試料から光学的信号を取得し、取得した光学的信号から波形データを取得する。ステップS132において、分析ユニット300は、ステップS131で取得した波形データに対して、計算処理分析を実行する。これにより、リンパ球、単球、好酸球、ならびに、好中球および好塩基球からなる群が分類される。ステップS133において、分析ユニット300は、(1)リンパ球、単球、好酸球、および、好中球または好塩基球のいずれにも分類されなかった細胞と、(2)好中球または好塩基球に分類された細胞と、に対応する波形データを特定する。
ステップS134において、分析ユニット300は、ステップS133で特定した波形データに対してAI分析を実行する。これにより、好中球および好塩基球が分類される。ステップS135において、分析ユニット300は、WDFチャンネルの波形データの分析結果、および他のチャンネルの波形データの分析結果を合わせて提供する。
[実施形態5]
実施形態5では、血液検体の凝固能を分析する検体分析装置4000において、計算処理分析およびAI分析を分担して実行する詳細な構成例を示す。
実施形態5の検体分析装置4000が測定する検体として、被検者から採取された生体試料を挙げることができる。検体は、例えば、全血、血漿などを含み得る。実施形態5の検体分析装置4000は、凝固法、合成基質法、免疫比濁法、凝集法、化学発光酵素免疫測定法(CLEIA法)などに基づいて、検体中の干渉物質に起因する異常の有無を分析する。実施形態5の検体分析装置4000は、例えば、図1に示した実施形態1の構成例と同様、測定ユニット400および分析ユニット300を備える。
(構成例)
図39は、実施形態5に係る、測定ユニット400の構成を模式的に示すブロック図である。
図39の測定ユニット400は、図24に示した測定ユニット400と比較して、FCM検出部410に代えて検出部470を備え、さらに制御部466を備える。
検出部470は、光源部471および検出ブロック476を備える。光源部471は、例えば、ハロゲンランプを含む。光源部471は、例えば、血液凝固時間測定用の波長660nmの光と、合成基質測定用の波長405nmの光と、免疫比濁測定用の波長800nmの光と出射可能に構成されている。試料調製部440は、検体に血液凝固試薬を混合して、測定試料を調製する。検出部470は、血液凝固試薬および検体からなる測定試料に光源部471からの光を照射し、検体を透過した光を検出する。なお、検出部470は、測定試料に光源部471からの光を照射し、検体により散乱した光を検出してもよい。
制御部466は、例えば、FPGAにより構成される。制御部466は、バス463およびIF部465を介して分析ユニット300に接続されている。制御部466は、分析ユニット300からの指示に基づいて、測定ユニット400の各部を制御する。
図40は、検出ブロック476による測定を模式的に示す側面図である。
検出ブロック476は、保持部472と、光ファイバー473と、集光レンズ474と、受光部475と、を備える。
保持部472には、検体と、測定項目に対応した試料とにより調製された測定試料を収容する反応容器C1が保持される。これにより、測定試料が静置される。光源部471(図39参照)から出射された光は、光ファイバー473により集光レンズ474に導かれる。集光レンズ474は、光ファイバー473からの光を反応容器C1に集光させる。反応容器C1に集光され、反応容器C1内の測定試料を通過した透過光が、受光部475により受光される。受光部475は、例えば、フォトダイオードである。受光部475は、受光した透過光の強度に基づく光学的信号を出力する。
図39に戻り、アナログ処理部420は、受光部475(図40参照)から出力されたアナログの光学的信号を処理して、A/D変換部461に出力する。A/D変換部461は、アナログの光学的信号をデジタルに変換する。上述したように、光学的信号がデジタル変換されたデジタルデータは、図4に示したような凝固波形データである。制御部466は、取得した凝固波形データを分析ユニット300に送信する。
図41は、実施形態5に係る分析例を示すフローチャートである。実施形態5では、分析ユニット300のプロセッサ3001(図26参照)が、凝固波形データに対して計算処理分析およびAI分析を実行する。
ステップS141において、測定ユニット400は、検出部470において光学的信号を取得し、取得した光学的信号から凝固波形データを取得する。ステップS142において、分析ユニット300は、ステップS141で取得した凝固波形データに対して、計算処理分析を実行する。例えば、図4を参照して説明したように、分析ユニット300は、凝固波形データの吸光度が50%まで下がるのに要した時間(T-T2)を、血液検体が凝固するまでの時間を示す結果として取得する。
ステップS143において、分析ユニット300は、ステップS141で取得した凝固波形データに対して、AI分析を実行する。これにより、分析ユニット300は、凝固波形データからAIアルゴリズム60が抽出した特徴量に基づいて、測定に関する異常の有無を取得する。分析ユニット300は、測定に関する異常の有無に基づいて、非特異反応の発生の疑いを判定する。
ステップS144において、分析ユニット300は、ステップS142で取得した血液検体が凝固するまでの時間を示す結果と、ステップS143で取得した測定に関する異常の有無を示す結果とを提供する。
なお、図41では、ステップS143において常にAI分析が実行されたが、分析ユニット300は、あらかじめ設定されたAI分析の要否を示すルールに基づいて、ステップS143の処理が実行されてもよい。
実施形態5の検体分析装置4000は、血液検体の凝固に伴う測定試料の濁度変化を光学的に測定する血液凝固測定装置であったが、これには限定されない。例えば、血液検体の凝固に伴う測定試料の粘度変化に伴う、測定試料中のスチールボールの振幅運動の変化を、高周波発信コイルから発信された高周波の受信周波数により測定する血液凝固測定装置であってもよい。また、実施形態5の検体分析装置4000は、血液凝固測定装置であったが、免疫測定装置、生化学測定装置、および遺伝子測定装置であってもよい。
[実施形態6]
実施形態6では、ホストプロセッサおよび並列処理プロセッサを含む検体分析装置4000の構成例を示す。実施形態6では、並列処理プロセッサ3002において波形データに対して並列処理が実行され、並列処理の結果に基づいて分析物の各々の種別に関する情報が生成される。
実施形態6によれば、1検体あたり数百メガバイトから数ギガバイトに及ぶ膨大な容量のデータを分析する場合であっても、ホストプロセッサとは別に設けられた並列処理プロセッサによって、波形データに関する処理を並列で実行できる。このため、例えば、膨大な容量のデータをAIアルゴリズム60によって処理する場合であっても、検体分析装置4000内でデータの処理が完結する。これにより、例えば、AIアルゴリズム60を格納した分析用サーバに、インターネットまたはイントラネットを介してデータを送信する必要がない。したがって、実施形態6によれば、検体分析装置4000から分析用サーバに大容量のデータを送信し、分析用サーバから返ってくる分析結果を取得する必要がなく、検体中の分析物の分類精度を向上しながらも検体分析装置4000の処理能力を高く維持することができる。
図42および図43を参照して、実施形態6の検体分析装置4000の構成を説明する。図42および図43に示す構成例では、測定ユニット400が検体(例えば、血液検体、尿検体、体液、骨髄液)を測定するためのFCM検出部410を備える。
図42は、実施形態6に係る、検体分析装置4000の構成を示すブロック図である。
実施形態6の検体分析装置4000は、測定ユニット400と、測定ユニット400の内部に設けられた分析ユニット300と、を備える。実施形態6の測定ユニット400は、図24に示した実施形態4の測定ユニット400と比較して、IF部462、464、465およびバス463が省略されている。実施形態6の分析ユニット300は、測定ユニット400内のA/D変換部461、装置機構部430、試料調製部440および検体吸引部450と、測定ユニット400の外部に配置されたコンピュータ301と、に接続されている。
図43は、実施形態6に係る、分析ユニット300の構成を示すブロック図である。
実施形態6の分析ユニット300は、図26に示した実施形態4の分析ユニット300と比較して、並列処理プロセッサ3002と、バスコントローラ3005と、IF部462、464と、を備える。
並列処理プロセッサ3002は、AIアルゴリズム60による演算処理をマスタプロセッサに代わって処理可能となるよう構成されている。AIアルゴリズム60で実行される行列演算の処理に適した並列処理プロセッサ3002を用いることで、AI分析に要するTATの改善が可能となる。しかしながら、並列処理プロセッサ3002によりTATは改善されるが、分析対象のデータ量が多くなればAI分析に要するコンピュータ負荷は増加する。これに対し、上述したように、計算処理分析とAI分析とによるデータ分析が分担されることにより、コンピュータ負荷を軽減して検査効率の向上を実現できる。
プロセッサ3001は、並列処理プロセッサ3002を用いて、AIアルゴリズム60によって波形データの分析処理を実行する。すなわち、プロセッサ3001は、解析ソフトウェア3100を実行することにより、AIアルゴリズム60に基づく波形データのAI分析を実行する。解析ソフトウェア3100は、AIアルゴリズム60に基づいて検体中の分析物に対応する波形データを分析するために用いられる。
なお、解析ソフトウェア3100は、記憶部3004に格納されてもよい。この場合、プロセッサ3001は、記憶部3004に格納されている解析ソフトウェア3100を実行することにより、AIアルゴリズム60に基づく波形データのAI分析を実行する。
本実施形態では、例えば、AI分析は、プロセッサ3001および並列処理プロセッサ3002によって実行され、計算処理分析は、並列処理プロセッサ3002は用いずにプロセッサ3001によって実行される。
プロセッサ3001として、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。プロセッサ3001は、例えばインテル社製のCore i9、Core i7、Core i5、AMD社製のRyzen 9、Ryzen 7、Ryzen 5、Ryzen 3などが用いられてもよい。
プロセッサ3001は、並列処理プロセッサ3002を制御する。並列処理プロセッサ3002は、プロセッサ3001による制御に応じて、例えば行列演算に関する並列処理を実行する。つまり、プロセッサ3001は、並列処理プロセッサ3002のマスタプロセッサであり、並列処理プロセッサ3002は、プロセッサ3001のスレーブプロセッサである。プロセッサ3001は、ホストプロセッサまたはメインプロセッサとも呼ばれる。プロセッサ3001は、AIアルゴリズム60による行列演算を、並列処理プロセッサ3002による並列処理で実行する。
並列処理プロセッサ3002は、波形データの分析に関する処理の少なくとも一部である複数の演算処理を並列に実行する。並列処理プロセッサ3002は、例えば、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)である。並列処理プロセッサ3002がFPGAである場合、並列処理プロセッサ3002は、例えば、訓練済みのAIアルゴリズム60に関する演算処理が予めプログラムされていてもよい。並列処理プロセッサ3002がASICである場合、並列処理プロセッサ3002は、例えば、訓練済みのAIアルゴリズム60に関する演算処理を実行するための回路が予め組み込まれていてもよいし、そのような組み込み回路に加えてプログラマブルなモジュールが内蔵されていてもよい。
並列処理プロセッサ3002として、例えば、NVIDIA社製のGeForce,Quadro,TITAN,Jetsonなどが用いられてもよい。Jetsonシリーズであれば、例えば、Jetson Nano、Jetson Tx2、Jetson Xavier、Jetson AGX Xavierが用いられる。
プロセッサ3001は、例えば、測定ユニット400の制御に関する計算処理を実行する。プロセッサ3001は、例えば、装置機構部430、試料調製部440および検体吸引部450の間で送受信される制御信号に関する計算処理を実行する。また、プロセッサ3001は、例えば、コンピュータ301との間での情報の送受信に関する計算処理を実行する。
コンピュータ301は、例えば、プロセッサ3001の処理に基づいて分析ユニット300から送信された分析結果を表示する機能を有する。コンピュータ301は、例えば、分析ユニット300に測定オーダーを送信する。測定オーダーは、例えば、ホストコンピュータからコンピュータ301に送信される。ユーザは、コンピュータ301の入力デバイスを介して、測定オーダーを入力することもできる。
プロセッサ3001は、例えば、記憶部3004からのプログラムデータの読み出し、RAM3017へのプログラムの展開、RAM3017との間のデータの送受信に関する処理を実行する。プロセッサ3001により実行される上述の各処理は、例えば、所定の順番に実行することが求められる。例えば、装置機構部430、試料調製部440および検体吸引部450の制御に要する処理をそれぞれA、BおよびCとすると、B、A、Cの順で実行することが求められることがある。プロセッサ3001はこのような順序に依存する連続的な処理を実行することが多いため、演算ユニット(「プロセッサコア」、「コア」等と呼ばれることがある)の数を増したとしても、必ずしも処理速度が高まるものではない。
一方、並列処理プロセッサ3002は、例えば、多量の要素を含む行列データの演算のように、定型的で多量な計算処理を実行する。本実施形態では、並列処理プロセッサ3002は、AIアルゴリズム60に従って波形データを分析する処理の少なくとも一部を並列化した並列処理を実行する。AIアルゴリズム60には、例えば、多量の行列演算が含まれる。AIアルゴリズム60には、例えば、少なくとも100の行列演算が含まれることがあり、また、少なくとも1000の行列演算が含まれることもある。
並列処理プロセッサ3002は、複数の演算ユニットを有し、これらの演算ユニットの各々が同時に行列演算を実行可能である。つまり、並列処理プロセッサ3002は、並列処理として、複数の演算ユニットの各々による行列演算を並列に実行することができる。例えば、AIアルゴリズム60に含まれる行列演算は、互いに順序依存が無い複数の演算処理に分割することができる。このように分割された演算処理は、複数の演算ユニットの各々で並列に実行可能となる。これらの演算ユニットは、「プロセッサコア」、「コア」等と呼ばれることがある。
このような並列処理を実行することにより、検体分析装置4000全体としての演算処理を高速化することが可能となる。AIアルゴリズム60に含まれる行列演算のような処理は、例えば、「単一命令複数データ処理」(SIMD:Single Instruction Multiple Data)と呼ばれることがある。並列処理プロセッサ3002は、例えばこのようなSIMD演算に適している。このような並列処理プロセッサ3002は、ベクトルプロセッサと呼ばれることがある。
上述のように、プロセッサ3001は、多様かつ複雑な処理を実行することに適している。一方、並列処理プロセッサ3002は、定型化された多量の処理を並列に実行することに適している。定型化された多量の処理を並列に実行することにより、計算処理に要するTATが短縮される。
なお、並列処理プロセッサ3002が実行する並列処理の対象は、行列演算に限られない。例えば、並列処理プロセッサ3002がAIアルゴリズム50に対して学習処理を実行するときは、学習処理に関する微分演算等が並列処理の対象となり得る。
プロセッサ3001の演算ユニットの数は、例えば、デュアルコア(コア数:2)、クアッドコア(コア数:4)、オクタコア(コア数:8)である。一方、並列処理プロセッサ3002は、演算ユニットを、例えば、少なくとも10個有し(コア数:10)、10の行列演算を並列に実行し得る。並列処理プロセッサ3002は、演算ユニットを数十個有するものもある。また、並列処理プロセッサ3002は、演算ユニットを、例えば、少なくとも100個有し(コア数:100)、100の行列演算を並列に実行し得るものもある。並列処理プロセッサ3002は、演算ユニットを数百個有するものもある。また、並列処理プロセッサ3002は、演算ユニットを、例えば、少なくとも1000個有し(コア数:1000)、1000の行列演算を並列に実行し得るものもある。並列処理プロセッサ3002は、演算ユニットを数千個有するものもある。
図44は、実施形態6に係る、検体分析装置4000の他の構成を示すブロック図である。図44の検体分析装置4000は、血液検体中の血球の計数および分類を実行する。
図44の検体分析装置4000は、図42の検体分析装置4000と比較して、図27と同様のRBC/PLT検出部4101、HGB検出部4102、アナログ処理部4201、4202、およびA/D変換部4611、4612を備える。図44の試料調製部440は、図28または図29に示した試料調製部440と同様に構成される。
図45は、並列処理プロセッサ3002の構成例を示す図である。
並列処理プロセッサ3002は、複数の演算ユニット3200と、RAM3201とを含む。演算ユニット3200の各々は、行列データの演算処理を並列に実行する。RAM3201は、演算ユニット3200が実行する演算処理に関するデータを記憶する。RAM3201は、少なくとも1ギガバイトの容量を有するメモリである。RAM3201は、2ギガバイト、4ギガバイト、6ギガバイト、8ギガバイト、または10ギガバイト以上の容量を有するメモリであってもよい。演算ユニット3200は、RAM3201からデータを取得し、演算処理を実行する。演算ユニット3200は、「プロセッサコア」、「コア」等と呼ばれることがある。
図46~図48は、並列処理プロセッサ3002の搭載例を模式的に示す図である。
図46に示す例では、プロセッサ3001は、基板3301に搭載される。並列処理プロセッサ3002は、グラフィックボード3300に搭載され、グラフィックボード3300がコネクタ3310を介して基板3301に接続される。プロセッサ3001は、バス3003を介して並列処理プロセッサ3002と接続される。図47に示す例では、並列処理プロセッサ3002は、基板3301に直接搭載され、バス3003を介してプロセッサ3001に接続される。図48に示す例では、プロセッサ3001および並列処理プロセッサ3002が一体として設けられる。この場合、並列処理プロセッサ3002は、基板3301に搭載されたプロセッサ3001に内蔵される。
図49は、並列処理プロセッサ3002の他の搭載例を示す図である。
図49に示す例では、測定ユニット400に接続される外付け装置3400によって、測定ユニット400に並列処理プロセッサ3002が搭載される。並列処理プロセッサ3002は、例えば、USBデバイスである外付け装置3400に実装される。外付け装置3400がIF部467を介してバス3003に接続されることにより、並列処理プロセッサ3002は、検体分析装置4000に搭載される。USBデバイスは、例えば、USBドングルのような小型デバイスでもよい。IF部467は、例えば、数百Mbpsの転送速度を有するUSBインターフェースであり、より好ましくは、数Gbps~数10Gbps以上の転送速度を有するUSBインターフェースである。並列処理プロセッサ3002が実装された外付け装置3400として、例えば、Intel社製 Neural Compute Stick 2が用いられてもよい。
並列処理プロセッサ3002が実装された複数のUSBデバイスをIF部467に接続することで、複数の並列処理プロセッサ3002を検体分析装置4000に搭載してもよい。1つのUSBデバイスに実装される並列処理プロセッサ3002は、演算ユニット3200の数がGPU等に比べて少ないことがあるため、測定ユニット400に接続するUSBデバイスを複数に増設することにより、コア数のスケールアップが可能となる。
次に、図50~図52を参照して、プロセッサ3001上で動作する解析ソフトウェア3100の制御に基づいて、並列処理プロセッサ3002で実行される演算処理の概要を説明する。
図50は、演算処理を実行する並列処理プロセッサ3002の構成例を示す図である。
並列処理プロセッサ3002は、複数の演算ユニット3200と、RAM3201と、を有する。解析ソフトウェア3100を実行するプロセッサ3001は、並列処理プロセッサ3002に命令し、波形データをAIアルゴリズム60で分析する場合に要する少なくとも一部の演算処理を並列処理プロセッサ3002に実行させる。プロセッサ3001は、並列処理プロセッサ3002に対して、AIアルゴリズム60に基づく波形データの分析に関する演算処理の実行を命令する。
波形データの全部または少なくとも一部は、RAM3017に記憶される。RAM3017に記憶されたデータは、例えばDMA(Direct Memory Access)方式により、並列処理プロセッサ3002のRAM3201に転送される。並列処理プロセッサ3002の複数の演算ユニット3200の各々は、RAM3201に記憶されたデータに対する演算処理を並列に実行する。複数の演算ユニット3200の各々は、必要なデータをRAM3201から取得して演算処理を実行する。演算結果に対応するデータは、並列処理プロセッサ3002のRAM3201に記憶される。演算結果に対応するデータは、例えばDMA方式により、RAM3201からRAM3017に転送される。
図51は、並列処理プロセッサ3002が実行する行列演算の概要を示す図である。
波形データをAIアルゴリズム60に従って分析するにあたり、行列の積の計算(行列演算)が実行される。並列処理プロセッサ3002は、例えば、行列演算に関する複数の演算処理を並列に実行する。
図51の上段の図は、行列の積の計算式を示す。この計算式では、n行n列の行列aとn行n列の行列bとの積により、行列cを求める。図51の上段の図に例示されるように、計算式は、多階層のループ構文で記述される。図51の下段の図は、並列処理プロセッサ3002で並列に実行される演算処理の例を示す。図51の下段の図に例示された計算式は、例えば、1階層目のループ用変数iと、2階層目のループ用変数jとの組合せ数であるn×n個の演算処理に分割することができる。このように分割された演算処理の各々は、互いに依存しない演算処理であるため、並列に実行され得る。
図52は、図51の下段の図に例示された複数の演算処理が、並列処理プロセッサ3002で並列に実行されることを示す概念図である。
図52に示すように、複数の演算処理の各々は、並列処理プロセッサ3002が備える複数の演算ユニット3200のいずれかに割り当てられる。演算ユニット3200の各々は、割り当てられた演算処理を、互いに並列に実行する。つまり、演算ユニット3200の各々は、分割された演算処理を同時に実行する。
図51および図52に例示された並列処理プロセッサ3002による演算によって、例えば、波形データに対応する細胞が複数の細胞種別の各々に属する確率に関する情報が求められる。解析ソフトウェア3100を実行するプロセッサ3001は、演算の結果に基づいて、波形データに対応する細胞の細胞種に関する解析を行う。
検体中の分析物が複数の分類種別の各々に属する確率の演算は、並列処理プロセッサ3002とは別のプロセッサにより行われてもよい。例えば、並列処理プロセッサ3002による演算結果がRAM3201からRAM3017に転送され、プロセッサ3001が、RAM3017から読み出した演算結果に基づいて、各々の波形データに対応する分析物が複数の分類種別の各々に属する確率に関する情報を演算してもよい。また、並列処理プロセッサ3002による演算結果がRAM3201から分析ユニット300に転送され、分析ユニット300に搭載されたプロセッサが、各々の波形データに対応する分析物が複数の分類種別の各々に属する確率に関する情報を演算してもよい。
図51および図52に示した処理は、例えば、AIアルゴリズム60における畳み込み層に関する演算処理(フィルタ処理とも呼ばれる)に適用される。
図53は、畳み込み層に関する演算処理の概要を模式的に示す図である。
図53の上段の図には、AIアルゴリズム60に入力される波形データとして、前方散乱光に基づいて得られた波形データが示されている。本実施形態の波形データは、図32に示すように一次元の行列データである。より単純に言えば、波形データは要素を一列に並べた配列データである。ここでは、説明の便宜上、波形データの要素数をn(nは1以上の整数)とする。図53の上段の図には、複数のフィルタが示されている。フィルタは、AIアルゴリズム50の学習処理により生成される。複数のフィルタの各々は、波形データの特徴を表す一次元の行列データである。図53の上段の図に示すフィルタは、1行3列の行列データであるが、列数は3に限られない。AIアルゴリズム60に入力される波形データと、各々のフィルタとを行列演算することで、波形データに関する細胞種別に対応する特徴が計算される。
図53の下段の図は、波形データおよびフィルタの行列演算の概要を示す。各フィルタを波形データの各要素に対して1つずつずらしながら行列演算が実行される。行列演算の計算は、下記の(式1)により実行される。
Figure 2023137000000002
(式1)において、xの添え字は、波形データの行番号および列番号を示す変数である。hの添え字は、フィルタの行番号および列番号を示す変数である。図53に示す例の場合、波形データは一次元の行列データであり、フィルタは、1行3列の行列データであるから、L=1、M=3、p=0、q=0,1,2、i=0、j=0,1,…,n-1である。
並列処理プロセッサ3002は、(式1)で表される行列演算を、複数の演算ユニット3200の各々によって並列に実行する。並列処理プロセッサ3002が実行した演算処理に基づき、検体中の各分析物の種別に関する分類情報が生成される。生成された分類情報は、分類情報に基づく検体の検査結果の生成および表示に用いられる。
図42および図43に示したように、コンピュータ301は、IF部3006およびバス3003を介してプロセッサ3001と接続されており、プロセッサ3001および並列処理プロセッサ3002による分析結果を受信することができる。IF部3006は、例えば、USBインターフェースである。コンピュータ301は、分析ユニット300による分析結果を、IF部3006を介して受信し、コンピュータ301の表示デバイスに分析結果を表示する。
コンピュータ301は、キーボード、マウスまたはタッチパネルを含むポインティングデバイスで構成される操作部を備えてもよい。医師や検査技師等のユーザは、操作部を操作することで、検体分析装置4000に測定オーダーを入力し、測定オーダーにしたがって測定指示を入力することができる。ユーザは、操作部を介して、検査結果を表示する指示をコンピュータ301に入力できる。ユーザは、操作部を操作し、検査結果に関する様々な情報、例えば、分析に基づく数値結果、グラフ、チャート、検体に付与されたフラグ情報を閲覧することができる。
<検体分析装置の動作>
図54~図56を参照して、検体分析装置4000による検体の分析動作を説明する。
図54は、分析ユニット300および測定ユニット400の分析動作を示すフローチャートである。
ステップS200において、分析ユニット300のプロセッサ3001は、測定オーダーを受け付けると、測定ユニット400に対して測定の実行を指示する。例えば、分析ユニット300は、測定ユニット400への指示によって、測定ユニット400の各検出部(FCM検出部410、RBC/PLT検出部4101、HGB検出部4102)、検体吸引部450、および試料調製部440の動作を制御する。測定ユニット400は、分析ユニット300からの指示に応じて検体の測定を開始する。
ステップS300において、検体吸引部450は、分析ユニット300からの測定指示に応じて、採血管から検体を吸引し、吸引した検体を反応チャンバに吐出する。分析ユニット300からの測定指示には、測定オーダーによって測定が要求されている測定チャンネルの情報が含まれている。検体吸引部450は、測定指示に含まれる測定チャンネルの情報に基づいて、対応する測定チャンネルの反応チャンバに検体を吐出する。
ステップS301において、試料調製部440は、分析ユニット300からの測定指示に応じて、測定試料を調製する。具体的には、試料調製部440は、測定指示に含まれる測定チャンネルの情報に基づいて、検体が吐出された反応チャンバに試薬(溶血剤および染色液)を供給し、検体および試薬を混合する。これにより、測定試料(例えば、WDF測定試料、RET測定試料、WPC測定試料、PLT-F測定試料、WNR測定試料)が調製される
また、試料調製部440は、検体が吐出された反応チャンバに試薬を供給し、検体および試薬を混合して、RBC/PLT測定試料を調製する。試料調製部440は、検体が吐出された反応チャンバに試薬を供給し、検体および試薬を混合して、ヘモグロビン測定試料を調製する。
ステップS302において、FCM検出部410は、分析ユニット300からの測定指示に応じて、調製した測定試料を測定する。具体的には、装置機構部430が、分析ユニット300からの測定指示に応じて、試料調製部440の反応チャンバ内にある測定試料をFCM検出部410へ送液する。反応チャンバから送液された測定試料は、フローセル4113内に流され、光源4111によってレーザ光が照射される(図25参照)。測定試料に含まれる分析物がフローセル4113を通過すると、光が分析物に照射され、分析物から生じた前方散乱光、側方散乱光および蛍光が、それぞれ受光素子4116、4121、4122によって検出され、受光強度に応じたアナログの光学的信号が出力される。光学的信号は、アナログ処理部420により処理された後、A/D変換部461に出力される。
また、RBC/PLT検出部4101は、RBC/PLT測定試料に基づいて、シースフローDC検出法により血球の測定を行う。HGB検出部4102は、ヘモグロビン測定試料に基づいて、SLS-ヘモグロビン法によりヘモグロビンの測定を行う。RBC/PLT検出部4101で検出されたアナログ信号は、アナログ処理部4201により処理された後、A/D変換部4611に出力され、HGB検出部4102で検出されたアナログ信号は、アナログ処理部4202で処理された後、A/D変換部4612に出力される(図27参照)
ステップS303において、A/D変換部461は、上述したように、アナログの光学的信号を所定レートでサンプリングすることでデジタルデータを生成し、デジタルデータに基づいて、分析物の各々に対応する波形データを生成する。A/D変換部461によって生成された波形データは、例えば、DMA転送によって、分析ユニット300のプロセッサ3001を介さずに直接RAMに転送される。これにより、分析物から取得された前方散乱光信号に基づく波形データ、側方散乱光に対応する波形データ、および蛍光に対応する波形データが、RAM3017に取り込まれる。
また、A/D変換部4611は、RBC/PLT検出部4101からのアナログ信号を所定レートでサンプリングすることでデジタルデータを生成する。A/D変換部4612は、HGB検出部4102からのアナログ信号を所定レートでサンプリングすることでデジタルデータを生成する。これらのデジタルデータも、RAM3017に取り込まれてもよい。
ステップS201において、分析ユニット300のプロセッサ3001は、AIアルゴリズム60を用いて波形データに対してAI分析を実行し、波形データのうち、分析物の特徴に対応する代表値に対して計算処理分析を実行する。AI分析および計算処理分析の分担は、上述の通りである。これにより、検体中の分析物が分類される。ステップS201におけるAI分析の処理については後述するが、プロセッサ3001は、並列処理プロセッサ3002を用いた処理の結果として、例えば、検体中の個々の分析物の分類情報82を取得し、ラベル値83および分析結果84を取得する(図35参照)。
ステップS202において、プロセッサ3001は、記憶部3004に格納されたプログラムを用いて、ラベル値83および分析結果84を分析し、検体の検査結果を生成する。ステップS202では、例えば、個々の分析物のラベル値83および分析結果84に基づいて、分析物の種別ごとに当該分析物の数が計数される。
例えば、血液検体中の血球を検査する例の場合、1つの検体から好中球を示すラベル値「1」が付与された分類情報がN個あれば、検体の検査結果として好中球の数=Nとする計数結果が取得される。プロセッサ3001は、分析結果84に基づいて測定チャンネルに応じた測定項目に関する計数結果を取得し、検体の識別情報とともに記憶部3004に格納する。
ここで、測定チャンネルに応じた測定項目とは、測定オーダーによって計数結果が要求されている項目である。例えば、WDFチャンネルに応じた測定項目とは、白血球5分類、すなわち単球、好中球、リンパ球、好酸球、および好塩基球の数の測定項目を含む。RETチャンネルに応じた測定項目とは、網状赤血球の数の測定項目を含む。PLT-Fに応じた測定項目とは、血小板の数の測定項目を含む。WPCに応じた測定項目とは、造血前駆細胞の数の測定項目を含む。WNRに応じた測定項目とは、白血球と有核赤血球の数の測定項目を含む。
計数結果は、上に列挙したような測定が要求されている項目(リポータブル項目ともいう)に限らず、同じ測定チャンネルで測定可能な他の細胞の計数結果も含み得る。例えば、WDFチャンネルの場合、図34に示したように、白血球5分類に加えて、幼若顆粒球(IG)および異常細胞も計数結果に含まれる。
さらに、プロセッサ3001は、得られた計数結果を分析することで検体の検査結果を生成し、記憶部3004に格納する。計数結果の分析とは、例えば、計数結果が正常値範囲内であるか、異常細胞が検出されていないか、前回の検査結果と比べて乖離が許容範囲内か、などを判断することを含む。
ステップS203において、コンピュータ301は、分析ユニット300によって生成された検査結果を表示部に表示する。
図55は、図54のステップS201におけるAI分析の詳細を示すフローチャートである。
ステップS201は、解析ソフトウェア3100の動作に応じて、プロセッサ3001により実行される。
ステップS2010において、プロセッサ3001は、ステップS303においてRAM3017に取り込まれた波形データを、並列処理プロセッサ3002に転送する。波形データは、図50に示したように、DMA転送によって、RAM3017からRAM3201にDMA転送される。このとき、プロセッサ3001は、例えば、バスコントローラ3005を制御し、RAM3017からRAM3201に波形データをDMA転送させる。
ステップS2011において、プロセッサ3001は、並列処理プロセッサ3002に、波形データに対する並列処理の実行を指示する。プロセッサ3001は、例えば、並列処理プロセッサ3002のカーネル関数を呼び出すことで、並列処理の実行を指示する。並列処理プロセッサ3002で実行される処理については、追って図56を参照して説明する。プロセッサ3001は、例えば、AIアルゴリズム60に関する行列演算の実行を、並列処理プロセッサ3002に指示する。検体中の分析物の各々に対応する波形データが、それぞれ、AIアルゴリズム60に入力される。AIアルゴリズム60に入力された波形データは、並列処理プロセッサ3002によって演算される。
ステップS2012において、プロセッサ3001は、並列処理プロセッサ3002によって実行された演算結果を受信する。演算結果は、図50に示したように、RAM3201からRAM3017にDMA転送される。ステップS2013において、プロセッサ3001は、並列処理プロセッサ3002による演算結果に基づいて、各分析物の種別の解析結果を生成する。
図56は、図55のステップS2011の詳細を示すフローチャートである。
ステップS2011は、プロセッサ3001の指示に基づいて、並列処理プロセッサ3002により実行される。
ステップS2100において、解析ソフトウェア3100を実行するプロセッサ3001は、並列処理プロセッサ3002に、演算ユニット3200に対する演算処理の割り当てを実行させる。プロセッサ3001は、例えば、並列処理プロセッサ3002のカーネル関数を呼び出すことで、並列処理プロセッサ3002に、演算ユニット3200への演算処理の割り当てを実行させる。図52に示したように、例えば、AIアルゴリズム60に関する行列演算が複数の演算処理に分割され、分割された各演算処理が演算ユニット3200に割り当てられる。検体中の分析物の各々に対応する波形データが、それぞれ、AIアルゴリズム60に入力される。波形データに対応する行列演算が複数の演算処理に分割され、演算ユニット3200に割り当てられる。
ステップS2101において、各演算処理が、複数の演算ユニット3200によって並列に処理される。演算処理は、複数の波形データに対して実行される。ステップS2102において、複数の演算ユニット3200によって並列に処理されることで生成された演算結果が、RAM3201からRAM3017に転送される。演算結果は、図50に示したように、RAM3201からRAM3017にDMA転送される。
なお、図54のステップS201において、分析ユニット300のプロセッサ3001は、RBC/PLT検出部4101からのアナログ信号に基づくデジタルデータに対してAIアルゴリズム60を用いることにより、RBC/PLTチャンネルに対応する測定項目(例えば、赤血球数やヘマトクリット値など)の分析結果を取得してもよい。また、プロセッサ3001は、HGB検出部4102からのアナログ信号に基づくデジタルデータに対してAIアルゴリズム60を用いることにより、HGBチャンネルに対する測定項目(例えば、血色素量など)の分析結果を取得してもよい。
次に、図57および図58を参照し、測定ユニット400および分析ユニット300によって構成される検体分析装置4000の他の構成例を説明する。
図57は、測定ユニット400の他の構成を示すブロック図である。
図57に示す例では、アナログ処理部420で処理されたアナログの光学的信号が、接続ポート421を介して分析ユニット300に送信される。接続ポート421には接続ケーブル4210が接続される。図57に示すその他の構成は、上述の実施形態の測定ユニット400と同様の構成および機能を有する。
図58は、分析ユニット300の他の構成を示すブロック図である。
図58に示す例では、分析ユニット300は、IF部3006を介して、測定ユニット400に接続される。RAM3017およびバス3003は、例えば、数百MB/s以上のデータ転送速度を有する伝送路である。バス3003は、1GB/s以上のデータ転送速度を有する伝送路であってもよい。バス3003は、例えば、PCI-ExpressやPCI-X規格に基づいてデータ転送を行う。プロセッサ3001、並列処理プロセッサ3002、記憶部3004、およびRAM3017の構成、ならびに、それらで実行される処理は、上述の構成および処理と同様である。
分析ユニット300は、接続ポート3007と、A/D変換部3008と、IF部3009と、を備える。
接続ポート3007は、接続ケーブル4210を介して、測定ユニット400の接続ポート421(図57参照)に接続されている。接続ケーブル4210は、例えば、測定ユニット400から分析ユニット300に伝送されるアナログ信号の種類に対応する数の伝送経路を備える。例えば、接続ケーブル4210は、ツイストペアケーブルで構成され、分析ユニット300に伝送されるアナログ信号の種類に対応する数のペア数の配線を有する。接続ケーブル4210は、信号伝送中のノイズ低減のため、例えば、1メートル以下の長さであることが好ましい。
A/D変換部3008は、接続ポート3007に接続されている。A/D変換部3008は、上述したように、測定ユニット400から出力されたアナログの光学的信号をサンプリングし、検体中の各分析物に対応する波形データを生成する。生成された波形データは、IF部3009およびバス3003を介して、記憶部3004またはRAM3017に記憶される。なお、接続ポート3007からA/D変換部3008の伝送経路も、分析ユニット300に伝送される光学的信号の種類に対応する数の配線を有してもよい。
プロセッサ3001および並列処理プロセッサ3002は、記憶部3004またはRAM3017に記憶された波形データに対して演算処理を実行する。プロセッサ3001上で動作する解析ソフトウェア3100は、図50に示した解析ソフトウェア3100と同様である。プロセッサ3001は、解析ソフトウェア3100を実行することにより、上記と同様の動作によって、検体中の分析物の種別に関する分類情報を生成する。
次に、図59および図60を参照し、測定ユニット400および分析ユニット300によって構成される検体分析装置4000の他の構成例を説明する。
図59は、測定ユニット400の他の構成を示すブロック図である。
図59に示す測定ユニット400は、A/D変換部461で生成された波形データを分析ユニット300に伝送するためのIF部4631を備える。IF部4631には、伝送路4632が接続されている。その他の構成および機能は、上述の測定ユニット400と同様である。
IF部4631は、例えば、1ギガビット/秒以上の通信帯域を備える専用回線としてのインターフェースである。例えば、IF部4631は、ギガビットイーサ、USB3.0、またはThunderbolt3に準拠したインターフェースである。IF部4631がギガビットイーサである場合、伝送路4632は、LANケーブルである。IF部4631がUSB3.0である場合、伝送路4632は、USB3.0に準拠したUSBケーブルである。伝送路4632は、例えば、測定ユニット400と分析ユニット300との間でデジタルデータを伝送するための専用の伝送路である。
図60は、分析ユニット300の他の構成を示すブロック図である。
図60に示す分析ユニット300は、IF部3010を備える。その他の構成および機能は、上述の分析ユニット300と同様である。分析ユニット300は、複数のIF部3010、および、複数のIF部3006を介して、複数の測定ユニット400と接続されてもよい。
プロセッサ3001上で動作する解析ソフトウェア3100は、上述の解析ソフトウェア3100と同様の機能を有する。解析ソフトウェア3100は、上述の関連記載と同様の動作によって、検体中の分析物の種別を分析する。
図59および図60の構成では、測定ユニット400内のA/D変換部461が、FCM検出部410において生成されたアナログの光学的信号に基づいて、デジタルの波形データを生成する。波形データは、IF部462、バス463、IF部4631、伝送路4632を介して、分析ユニット300に送られる。
測定ユニット400と分析ユニット300は、例えば、伝送路4632を介して、一対一で接続される。この場合の伝送路4632は、検体分析装置4000を構成するコンポーネント(例えば、測定ユニット400および分析ユニット300)以外の装置に関連するデータの伝送が介在しない伝送路である。伝送路4632は、例えば、イントラネットやインターネットとは、別の伝送路である。これにより、測定ユニット400内で生成された波形データが分析ユニット300に送信されても、デジタルデータの伝送の通信速度のボトルネックを回避できる。
次に、図61~図65を参照して、検体分析装置4000の他の構成例を説明する。
図61は、検体分析装置4000の他の構成を示すブロック図である。
本構成例では、測定ユニット400とコンピュータ301との間に、分析ユニット600が設けられる。すなわち、図61~図65の構成において、検体分析装置4000は、測定ユニット400と、コンピュータ301と、分析ユニット600と、を備える。分析ユニット600は、測定された細胞の種別を解析する。後述するように、本構成例の並列処理プロセッサ6002は、分析ユニット600に組み込まれる形で検体分析装置4000に搭載される。
図62は、測定ユニット400の他の構成を示すブロック図である。
図62の測定ユニット400は、図59の構成と比較して、IF部465にコンピュータ301が接続され、IF部4631とコンピュータ301との間に、分析ユニット600が設けられる。分析ユニット600は、IF部4631およびコンピュータ301に対して通信可能に接続される。なお、分析ユニット600は、複数の測定ユニット400と接続されてもよい。分析ユニット600は、複数のコンピュータ301と接続されてもよい。
図63は、分析ユニット600の構成を示すブロック図である。
分析ユニット600は、プロセッサ6001と、並列処理プロセッサ6002と、バス6003と、記憶部6004と、RAM6005と、IF部6006、6007と、を備える。分析ユニット600の各部は、バス6003に接続されている。
バス6003は、例えば、数百MB/s以上のデータ転送速度を有する伝送路である。バス3003は、1GB/s以上のデータ転送速度を有する伝送路であってもよい。バス3003は、例えば、PCI-ExpressやPCI-X規格に基づいてデータ転送を行う。分析ユニット600は、複数のIF部6006を介して、複数の測定ユニット400と接続されてもよい。複数の測定ユニット400が設けられている場合、測定ユニット400のそれぞれに分析ユニット600が接続されてもよい。この場合、例えば、複数の測定ユニット400と複数の分析ユニット600が、それぞれ、一対一に接続される。
図64は、演算処理を実行する並列処理プロセッサ6002の構成例を示す図である。
プロセッサ6001および並列処理プロセッサ6002は、それぞれ、上述のプロセッサ3001および並列処理プロセッサ3002と同様の構成および機能を有する。並列処理プロセッサ6002は、複数の演算ユニット6200、およびRAM6201を含む。プロセッサ6001上で、検体中の分析物の種別を解析する解析ソフトウェア6100が動作する。プロセッサ6001上で動作する解析ソフトウェア6100は、図50に示された解析ソフトウェア3100と同様の機能を有する。解析ソフトウェア6100は、図50で説明した動作と同様にして、検体中の分析物の種別を解析する。解析ソフトウェア6100は、検体中の分析物の分類情報を、IF部6007を介してコンピュータ301に送信する。
図65は、コンピュータ301の構成を示すブロック図である。
図65のコンピュータ301は、図63の分析ユニット600から並列処理プロセッサ6002が省略された構成と同様である。コンピュータ301は、プロセッサ3501と、バス3503と、記憶部3504と、RAM3505と、IF部3506と、を備える。
プロセッサ3501上では、解析ソフトウェア3100が動作していなくてもよい。コンピュータ301は、IF部3506を介して、分析ユニット600による解析結果を受信する。IF部3506は、例えば、イーサネットやUSBである。IF部3506は、無線通信可能なインターフェースでもよい。
図62~図65の構成では、FCM検出部410において生成された細胞のアナログの光学的信号は、測定ユニット400内のA/D変換部461において、デジタルの波形データに変換される。波形データは、IF部462、バス463、IF部4631、および伝送路4632を介して、分析ユニット600に送られる。
IF部4631は、上述したように測定ユニット400と分析ユニット600を接続する専用のインターフェースであり、測定ユニット400と分析ユニット600を一対一で接続する。言い換えれば、伝送路4632は、例えば、検体分析装置4000を構成するコンポーネント(例えば、測定ユニット400および分析ユニット300)以外の装置に関連するデータの伝送が介在しない伝送路である。伝送路4632は、イントラネットやインターネットとは、別の伝送路である。これにより、測定ユニット400内で生成された波形データが分析ユニット600に送信されても、波形データの伝送の通信速度のボトルネックを回避できる。
この場合、図54のステップS200~S202は、分析ユニット600で実行され、ステップS203は、コンピュータ301で実行される。
次に、図66および図67を参照し、図61の検体分析装置4000の他の構成例を説明する。この例の検体分析装置4000は、測定ユニット400と、コンピュータ301と、分析ユニット600を備える。
図66の測定ユニット400は、図57の構成と比較して、IF部465にコンピュータ301が接続され、接続ポート421とコンピュータ301との間に、分析ユニット600が設けられる。分析ユニット600は、接続ポート421およびコンピュータ301に対して通信可能に接続される。測定ユニット400は、接続ケーブル4210を介して、分析ユニット600にアナログの光学的信号を伝送する。
図67の分析ユニット600は、図63の構成と比較して、IF部6006に代えて、接続ポート6008およびA/D変換部6009を備える。
分析ユニット600から接続ケーブル4210を介して伝送されたアナログの光学的信号は、接続ポート6008を介してA/D変換部6009に入力される。A/D変換部6009は、A/D変換部461と同様の処理により、光学的信号から波形データを生成する。
分析ユニット600は、複数の接続ポート6008を介して、複数の測定ユニット400と接続されてもよい。複数の測定ユニット400が設けられている場合、測定ユニット400のそれぞれに分析ユニット600が接続されてもよい。この場合、例えば、複数の測定ユニット400と複数の分析ユニット600が、それぞれ、一対一に接続される。
図66および図67の構成では、図54のステップS303において、分析ユニット600が、測定ユニット400から送信されたアナログの光学的信号に基づいて波形データを生成する。図54のステップS200~S202は、分析ユニット600で実行され、ステップS203は、コンピュータ301で実行される。
次に、図68および図69を参照し、検体分析装置4000が備える測定ユニット400および分析ユニット300の他の構成例を説明する。
図68の測定ユニット400は、図27の構成と比較して、A/D変換部461、4611、4612およびIF部462に代えて、接続ポート421、4211、4212を備える。各検出部で取得されたアナログの光学的信号は、それぞれ、接続ケーブル4210を介して分析ユニット300に伝送される。
図69の分析ユニット300は、図58の構成と比較して、接続ポート3007、A/D変換部3008およびIF部3009からなる組を3つ備える。3つの接続ポート3007は、それぞれ、図68の接続ポート421、4211、4212と接続される。
図68および図69の構成では、図54のステップS303において、分析ユニット300が、測定ユニット400から送信されたアナログの光学的信号に基づいて波形データを生成する。
次に、図70および図71を参照し、検体分析装置4000が備える測定ユニット400および分析ユニット300の他の構成例を説明する。
図70の測定ユニット400は、図27の構成と比較して、IF部4631を備える。A/D変換部461、4611、4612は、それぞれ、対応する検出部で取得されたアナログの光学的信号に基づいて波形データを生成する。各検出部に対応する波形データは、それぞれ、伝送路4632を介して、分析ユニット300に伝送される。
図71の分析ユニット300は、図60の構成と比較して、3つのIF部3010を備える。3つのIF部3010は、それぞれ、図70の伝送路4632と接続される。
次に、図72および図73を参照し、検体分析装置4000が備える測定ユニット400および分析ユニット300の他の構成例を説明する。
図72の測定ユニット400は、図68の構成と比較して、IF部465にコンピュータ301が接続され、接続ポート421、4211、4212とコンピュータ301との間に、分析ユニット600が配置されている。分析ユニット600は、接続ポート421、4211、4212およびコンピュータ301に対して通信可能に接続される。分析ユニット600およびコンピュータ301は、デジタルデータの送受信が可能となるように接続されている。
図73の分析ユニット300は、図67の構成と比較して、接続ポート6008およびA/D変換部6009からなる組を3つ備える。3つの接続ポート6008は、それぞれ、図72の接続ポート421、4211、4212と接続される。
次に、波形データおよびデジタルデータのデータサイズについて説明する。
本実施形態では、例えば、前方散乱光に基づくアナログの光学的信号(FSC)、側方散乱光に基づくアナログの光学的信号(SSC)、および蛍光に基づくアナログの光学的信号(FL)のそれぞれに対して、検体中の1つの分析物についてサンプリングが行われる。
サンプリングレートの例は、10ナノ秒間隔で1024ポイントのサンプリング、80ナノ秒間隔で128ポイントのサンプリング、または160ナノ秒間隔で64ポイントのサンプリング等を挙げることができる。データ量は、例えば、1サンプリングあたり2バイトとなる。FSC、SSC、FLの各々について、サンプリングレートに応じた量のデータ(1024ポイントのレートの場合、2バイト×1024=2048バイト)が取得される。このデータ量は、検体中の1つの分析物あたりのデータ量である。
1回の測定では、例えば、少なくとも100個の分析物について、FSC、SSC、FLが測定される。また、1回の測定で、例えば、少なくとも1000個の分析物について、FSC、SSC、FLが測定されることもある。また、1回の測定で、例えば、約10000個~約140000個の分析物について、FSC、SSC、FLが測定されることもある。よって、1回の測定で計測される分析物数が100000個で、サンプリングレートが1024の場合、FSC、SSC、FLの各々のデジタルデータのデータ量は、2バイト×1024×100000=204,800,000バイトとなり、FSC、SSC、FLの合計で、614,400,000バイトとなる。
さらに、FSC、SSC、FLは、測定チャンネルごとに計測される。よって、1回の測定で計測される分析物の数が100000個で、サンプリングレートが1024、測定チャンネル数が5の場合、FSC、SSC、FLの各々のデータ量は、2バイト×1024×100000×5=1,024,000,000バイトとなり、FSC、SSC、FLの合計で、3,072,000,000バイトとなる。
以上のように、デジタルデータの容量は、例えば、1検体あたり数百メガバイトから数ギガバイトとなり、分析物の数、サンプリングレート、測定チャンネル数によっては、少なくとも1ギガバイトとなる。
本実施形態によれば、1検体あたり数百メガバイトから数ギガバイトに及ぶ膨大な容量のデジタルデータを分析するにあたり、上述のとおり検体分析装置4000の内部でAIアルゴリズム60を用いた分析処理が完結し、検体分析装置4000の外部に設置された分析用サーバにインターネットまたはイントラネットを介してデジタルデータが送信されることはない。よって、検体分析装置4000から分析用サーバにデジタルデータを送信する場合に生じる通信負荷の増大に伴う処理能力低下を回避できる。
[実施形態7]
<波形データ分析システムの構成>
図74は、本実施形態に係る、波形データ分析システムの構成を模式的に示す図である。
測定ユニット400aの構成は、上述した測定ユニット400と同様である。測定ユニット400aは、検体に基づいて調製された測定試料をフローセル4113に送液する。光源4111(図25参照)は、フローセル4113に供給された測定試料に光を照射し、受光素子4116、4121、4122(図25参照)は、測定試料中の分析物から生じた前方散乱光、側方散乱光および蛍光を検出する。測定ユニット400aは、受光素子4116、4121、4122から出力される前方散乱光、側方散乱光および蛍光に基づく光学的信号から波形データを生成し、生成した波形データを深層学習装置100に送信する。
深層学習装置100は、ベンダ側装置である。深層学習装置100は、測定ユニット400aによって取得された訓練用の波形データを受信する。訓練用の波形データの生成方法は、上述の通りである。深層学習装置100に格納されるAIアルゴリズム50は、深層学習アルゴリズムである。深層学習装置100は、訓練前のニューラルネットワークで構成されるAIアルゴリズム50に訓練データを使って学習させ、訓練データによって訓練されたAIアルゴリズム60をユーザに提供する。学習済みのニューラルネットワークから構成されるAIアルゴリズム60は、記録媒体98または通信ネットワーク99を通じて、深層学習装置100から検体分析装置4000に提供される。記録媒体98は、例えばDVD-ROMやUSBメモリ等の、コンピュータ読み取り可能であって非一時的な有形の記録媒体である。
深層学習装置100は、例えば汎用コンピュータで構成されており、後述するフローチャートに基づいて、深層学習処理を行う。
検体分析装置4000は、学習済みのニューラルネットワークから構成されるAIアルゴリズム60を用いて、分析物に対応する波形データに対してAI分析を実行する。
<深層学習装置のハードウェア構成>
図75は、深層学習装置100の構成を示すブロック図である。
深層学習装置100は、処理部10と、入力部16と、出力部17と、を備える。
入力部16および出力部17は、IF部15を介して処理部10に接続されている。入力部16は、例えば、キーボードやマウス等の入力装置である。出力部17は、例えば、液晶ディスプレイ等の表示装置である。
処理部10は、CPU11と、メモリ12と、記憶部13と、バス14と、IF部15と、GPU19と、を備える。
CPU11は、後述するデータ処理を行う。メモリ12は、データ処理の作業領域に使用される。記憶部13は、後述するプログラムおよび処理データを記録する。バス14は、各部の間でデータを伝送する。IF部15は、外部機器とのデータの入出力を行う。GPU19は、CPU11が行う演算処理(例えば、並列演算処理)を補助するアクセラレータとして機能する。すなわち、以下の説明において、CPU11が行う処理とは、CPU11がGPU19をアクセラレータとして用いて行う処理も含むことを意味する。GPU19は、上述の並列処理プロセッサ3002、6002と同等の機能を有する。なお、GPU19に代えて、ニューラルネットワークの計算に好ましいチップが用いられてもよい。このようなチップとして、例えば、FPGA、ASIC、Myriad X(Intel)等を挙げることができる。
処理部10は、図77を参照して後述する各ステップの処理を行うために、本実施形態に係るプログラムおよび訓練前のニューラルネットワークで構成されるAIアルゴリズム50を、例えば実行形式で記憶部13に予め記録している。実行形式は、例えばプログラミング言語からコンパイラにより変換されて生成される形式である。処理部10は、記憶部13に記録したプログラムを使用して、訓練前のAIアルゴリズム50の訓練処理を行う。
以下の説明においては、特に断らない限り、処理部10が行う処理は、記憶部13またはメモリ12に格納されたプログラムおよびAIアルゴリズム50に基づいて、CPU11が行う処理を意味する。CPU11は、メモリ12を作業領域として必要なデータ(処理途中の中間データ等)を一時記憶し、記憶部13に演算結果等の長期保存するデータを適宜記録する。
<分析装置のハードウェア構成>
検体分析装置4000(図74参照)は、上述の構成と同様であり、深層学習装置100から提供されたアルゴリズムに基づいて波形データを処理する。また、検体分析装置4000は、深層学習装置100の機能を兼備し、訓練データを使ってAIアルゴリズム50を学習させてもよい。この場合、深層学習装置100は不要となる。
検体分析装置4000は、以下の波形データ分析処理で説明する各ステップの処理を行うために、本実施形態に係るプログラムおよび訓練済みのニューラルネットワークで構成されるAIアルゴリズム60を、例えば実行形式で、記憶部3004(例えば図26参照)や記憶部6004(例えば図63参照)に予め記録している。検体分析装置4000は、記憶部3004に記録したプログラムおよびAIアルゴリズム60を使用して処理を行う。
記憶部3004、6004に記録されたAIアルゴリズム60は、通信ネットワーク経由で更新されてもよい。深層学習装置100は、通信ネットワーク(例えば、インターネット、イントラネット)を介して、検体分析装置4000に、AIアルゴリズム60を送信する。検体分析装置4000は、受信したAIアルゴリズム60によって、記憶部3004、6004に既に記録されているAIアルゴリズム60を更新する。
<機能ブロックおよび処理手順>
(深層学習処理)
図76は、深層学習装置100の機能ブロック図である。
深層学習装置100の処理部10Aは、訓練データ生成部101と、訓練データ入力部102と、アルゴリズム更新部103と、を備える。コンピュータに深層学習処理を実行させるプログラムを、図75に示す処理部10の記憶部13またはメモリ12にインストールし、このプログラムをCPU11およびGPU19が実行することにより、処理部10Aの各機能ブロックが実現される。
訓練データデータベース(DB)104およびアルゴリズムデータベース(DB)105は、図75に示す処理部10の記憶部13またはメモリ12に記録される。訓練用の波形データ72a、72b、72cは、例えば、測定ユニット400aによって予め取得され、訓練データデータベース104に予め格納されている。AIアルゴリズム50はアルゴリズムデータベース105に格納される。
図77は、深層学習装置100が行う処理を示すフローチャートである。
図77のステップS401、S404、S406の処理は、訓練データ生成部101により実行される。ステップS402の処理は、訓練データ入力部102により実行される。ステップS403、S405の処理は、アルゴリズム更新部103により実行される。
まず、処理部10Aは、訓練用の波形データ72a、72b、72cを取得する。訓練用の波形データ72a、72b、72cは、それぞれ、前方散乱光、側方散乱光および蛍光に基づく波形データである。訓練用の波形データ72a、72b、72cの取得は、例えば、オペレータの操作によって、測定ユニット400aから取り込まれてもよく、記録媒体98から取り込まれてもよく、通信ネットワーク99を介して取り込まれてもよい。訓練用の波形データ72a、72b、72cを取得する際に、その訓練用の波形データ72a、72b、72cが、いずれの細胞種別を示すものであるかの情報も取得される。細胞種別の情報は、訓練用の波形データ72a、72b、72cに紐付けられてもよく、オペレータにより入力部16を介して入力されてもよい。
ステップS401において、処理部10Aは、図33に示したように、訓練用の波形データ72a、72b、72cおよびラベル値77から、訓練データ75を生成する。ステップS402において、処理部10Aは、訓練データ75をAIアルゴリズム50に入力し、試行結果を取得する。試行結果は、複数の訓練データ75をAIアルゴリズム50に入力する度に蓄積される。
本実施形態に係る細胞種別の分析方法では、畳み込みニューラルネットワークを使用しており、確率的勾配降下法を用いるため、ステップS403において、処理部10Aは、予め定められた所定の試行回数分の訓練結果が蓄積されているか否かを判定する。所定数の訓練結果が蓄積された場合(S403:YES)、処理部10Aは、処理をステップS404に進める。他方、所定数の訓練結果が蓄積されていない場合(S403:NO)、処理部10Aは、ステップS404の処理をスキップする。
所定数の訓練結果が蓄積された場合(S403:YES)、ステップS404において、処理部10Aは、ステップS402で蓄積された訓練結果を用いて、AIアルゴリズム50を構成するニューラルネットワークの結合重みwを更新する。本実施形態に係る細胞種別の分析方法では、確率的勾配降下法を用いるため、所定の回数分の訓練結果が蓄積した段階で、ニューラルネットワークの結合重みwを更新する。結合重みwを更新する処理は、具体的には、後述の(式12)および(式13)に示される、勾配降下法による計算を実施する処理である。
ステップS405において、処理部10Aは、AIアルゴリズム50を規定数の訓練データ75で訓練したか否かを判定する。AIアルゴリズム50が規定数の訓練データ75で訓練された場合(S405:YES)、深層学習処理が終了する。他方、AIアルゴリズム50が規定数の訓練データ75で訓練されていない場合(S405:NO)、ステップS406において、処理部10Aは、別の訓練用の波形データ72a、72b、72cを取り込み、処理をステップS401に戻す。
以上のような処理により、処理部10Aは、AIアルゴリズム50を訓練し、AIアルゴリズム60を得る。
(ニューラルネットワークの構造)
図78の上段は、AIアルゴリズム50を構成するニューラルネットワークの構造を例示する模式図である。上述したように、本実施形態では、畳み込みニューラルネットワークが用いられる。AIアルゴリズム50のニューラルネットワークは、入力層50aと、出力層50bと、入力層50aおよび出力層50bの間の中間層50cとを備え、中間層50cは、複数の層で構成されている。中間層50cを構成する層の数は、例えば5層以上、好ましくは50層以上、より好ましくは100層以上とされる。
AIアルゴリズム50のニューラルネットワークでは、層状に配置された複数のノード89が、層間において結合されている。これにより、情報が入力層50aから出力層50bに、図中矢印Dに示す一方向のみに伝播する。
(各ノードにおける演算)
図78の中段は、各ノード89における演算を示す模式図である。各ノード89では、複数の入力が受け取られ、1つの出力(z)が計算される。図78の中段に示す例の場合、ノード89は4つの入力を受け取る。ノード89が受け取る総入力(u)は、例えば、以下の(式2)で表される。ここで、本実施形態においては、訓練データ75および分析データ85として一次元の行列データを用いるため、演算式の変数が二次元の行列データに対応する場合には、変数を一次元の行列データに対応するように変換する処理を行う。
Figure 2023137000000003
各入力には、それぞれ異なる重みが掛けられる。(式2)中、bはバイアスと呼ばれる値である。ノードの出力(z)は、(式2)で表される総入力(u)に対する所定の関数fの出力となり、以下の(式3)で表される。関数fは、活性化関数と呼ばれる。
Figure 2023137000000004
図78の下段は、ノード間の演算を示す模式図である。ニューラルネットワークでは、(式2)で表される各ノード89の総入力(u)に対して、(式3)で表される結果(z)を出力するノード89が層状に並べられている。前の層のノード89の出力が、次の層のノード89の入力となる。図78の下段に示す例では、図中左側の層のノード89aの出力が、図中右側の層のノード89bの入力となる。各ノード89bは、それぞれ、ノード89aからの出力を受け取る。各ノード89aと各ノード89bとの間の各結合には、異なる重みが掛けられる。複数のノード89aのそれぞれの出力をx1~x4とすると、3つのノード89bのそれぞれに対する入力は、以下の(式4-1)~(式4-3)で表される。
Figure 2023137000000005
これら(式4-1)~(式4-3)を一般化すると、以下の(式4-4)となる。ここで、i=1,…,I、j=1,…,Jである。Iは入力総数であり、Jは総出力数である。
Figure 2023137000000006
(式4-4)を活性化関数に適用すると、以下の(式5)で表される出力が得られる。
Figure 2023137000000007
(活性化関数)
実施形態に係る細胞種別の分析方法では、活性化関数として、正規化線形関数(rectified linear unit function)を用いる。正規化線形関数は、以下の(式6)で表される。
Figure 2023137000000008
(式6)は、z=uの線形関数のうち、u<0の部分をu=0とする関数である。図78の下段に示す例では、j=1のノードの出力は、以下の(式6)により表される。
Figure 2023137000000009
(ニューラルネットワークの学習)
ニューラルネットワークを用いて表現される関数をy(x:w)とおくと、関数y(x:w)は、ニューラルネットワークのパラメータwを変化させると変化する。入力xに対してニューラルネットワークがより好適なパラメータwを選択するように、関数y(x:w)を調整することを、ニューラルネットワークの訓練または学習と呼ぶ。ニューラルネットワークを用いて表現される関数の入力と出力との組が複数与えられているとする。ある入力xに対する望ましい出力をdとすると、入出力の組は、{(x1、d1)、(x2、d2)、・・・、(xn、dn)}と与えられる。(x、d)で表される各組の集合を、訓練データと呼ぶ。具体的には、図33に示したように、波形データ72a、72b、72cの集合が訓練データ75である。
ニューラルネットワークの学習とは、どのような入出力の組(xn、dn)に対しても、以下の式に示すように、入力xnを与えたときのニューラルネットワークの出力y(xn:w)が、出力dnになるべく近づくように重みwを調整することを意味する。
Figure 2023137000000010
誤差関数(error function)とは、ニューラルネットワークを用いて表現される関数と訓練データとの近さを測る尺度である。誤差関数は、損失関数(loss function)とも呼ばれる。実施形態に係る細胞種別の分析方法において用いる誤差関数E(w)は、以下の(式7)で表される。(式7)は交差エントロピー(cross entropy)と呼ばれる。
Figure 2023137000000011
(式7)の交差エントロピーの算出方法を説明する。実施形態に係る細胞種別の分析方法において用いるニューラルネットワークの出力層50bでは、すなわちニューラルネットワークの最終層では、入力xを内容に応じて有限個のクラスに分類するための活性化関数が用いられる。活性化関数はソフトマックス関数(softmax function)と呼ばれ、以下の(式8)で表される。なお、出力層50bには、クラス数kと同数のノードが並べられているとする。出力層Lの各ノードk(k=1,…,K)の総入力uは、前層L-1の出力から、uk(L)で与えられるとする。これにより、出力層のk番目のノードの出力は、以下の(式8)で表される。
Figure 2023137000000012
(式8)がソフトマックス関数である。(式8)で決まる出力y1,…,yKの総和は、常に1となる。
各クラスをC1,…,CKと表すと、出力層Lのノードkの出力yK(すなわちuk(L))は、与えられた入力xがクラスCKに属する確率を表す。入力xは、以下の(式9)で表される確率が最大になるクラスに分類される。
Figure 2023137000000013
ニューラルネットワークの学習では、ニューラルネットワークで表される関数を、各クラスの事後確率(posterior probability)のモデルとみなし、そのような確率モデルの下で、訓練データに対する重みwの尤度(likelihood)を評価し、尤度を最大化するような重みwを選択する。
(式8)のソフトマックス関数による目標出力を、出力が正解のクラスである場合のみ1とし、出力がそれ以外の場合は0になるとする。目標出力をdn=[dn1,…,dnK]というベクトル形式で表すと、例えば入力xnの正解クラスがC3である場合、目標出力dn3のみが1となり、それ以外の目標出力は0となる。このように符号化すると、事後分布(posterior)は、以下の(式10)で表される。
Figure 2023137000000014
訓練データ{(xn、dn)}(n=1,…,N)に対する重みwの尤度L(w)は、以下の(式11)で表される。尤度L(w)の対数をとり符号を反転すると、(式7)の誤差関数が導出される。
Figure 2023137000000015
学習は、訓練データを基に計算される誤差関数E(w)を、ニューラルネットワークのパラメータwについて最小化することを意味する。実施形態に係る細胞種別の分析方法では、誤差関数E(w)は、(式7)で表される。
誤差関数E(w)をパラメータwについて最小化することは、誤差関数E(w)の局所的な極小点を求めることと同じ意味である。パラメータwは、ノード間の結合の重みである。重みwの極小点は、任意の初期値を出発点として、パラメータwを繰り返し更新する反復計算によって求められる。このような計算の一例には、勾配降下法(gradient descent method)がある。
勾配降下法では、次の(式12)で表されるベクトルを用いる。
Figure 2023137000000016
勾配降下法では、現在のパラメータwの値を負の勾配方向(すなわち-∇E)に移動させる処理を何度も繰り返す。現在の重みをw(t)とし、移動後の重みをw(t+1)とすると、勾配降下法による演算は、以下の(式13)で表される。値tは、パラメータwを移動させた回数を意味する。
Figure 2023137000000017
(式13)で用いられた以下の(式14)に示す記号は、パラメータwの更新量の大きさを決める定数であり、学習係数と呼ばれる。
Figure 2023137000000018
(式13)で表される演算を繰り返すことにより、値tの増加に伴って誤差関数E(w(t))が減少し、パラメータwは極小点に到達する。
なお、(式13)による演算は、全ての訓練データ(n=1,…,N)に対して実施してもよく、一部の訓練データのみに対して実施してもよい。一部の訓練データのみに対して行う勾配降下法は、確率的勾配降下法(stochastic gradient descent)と呼ばれる。実施形態に係る細胞種別の分析方法では、確率的勾配降下法を用いる。
[実施形態の効果]
検体分析装置4000は、検体から光学的信号を取得するためのFCM検出部410や検出部470(光学式検出部)を含む測定ユニット400と、光学的信号に対応する第1および第2データを分析する分析ユニット300や分析ユニット600と、を備える。分析ユニット300、600は、取得された全ての波形データのうちの第1データに対し、AI分析(人工知能アルゴリズムによる第1分析動作)を実行し、取得された全ての波形のうちの第2データに対し、計算処理分析(分析物の特徴に対応する代表値を処理する第2分析動作)を実行する。
この構成によれば、検体から取得された光学的信号に対応するデータの分析処理を、AI分析と計算処理分析とで分担することで、光学的信号に対応するデータを一律、人工知能アルゴリズムのみを用いて分析する場合と比較して、データを処理するコンピュータである分析ユニット300、600の負荷を軽減できる。
検体分析装置4000が血球分析装置や尿分析装置の場合、第1および第2データは、各分析物(細胞や有形成分)から生じた光に基づく光学的信号の強度に対応するデジタルのデータ(波形データ)である。この場合の光学的信号は、前方散乱光、側方散乱光および蛍光に基づいて受光素子から出力されるアナログ信号である。光学的信号は、検体中の分析物の各々に対応する領域を有し、検体中の分析物の存在が反映された信号である。波形データ(第1および第2データ)は、光学的信号の領域に対応して生成される。言い換えれば、波形データは、光源4111による光の照射位置を分析物が通過する間に取得された光学的信号に対応する。分析物の特徴に対応する代表値とは、例えば、分析物に対応する波形データから得られるピーク値、面積、幅などの値(図3参照)である。第1分析動作および第2分析動作とは、分析物(細胞や有形成分)の種類を判定する動作のことである。
検体分析装置4000が血液凝固測定装置の場合、第1および第2データは、透過光または散乱光に基づく光学的信号の強度に対応するデジタルのデータ(凝固波形データ)である。この場合の光学的信号は、透過光または散乱光の強度に基づいて、測光開始から測光終了(例えば開始から180秒後)までのアナログ信号である。光学的信号は、凝固反応開始(図4のタイミングT2)から凝固反応終了(タイミングT3)までのアナログ信号でもよい。凝固波形データ(第1および第2データ)は、光学的信号から生成される。分析物の特徴に対応する代表値とは、例えば、検出された光の強度が所定の条件を満たしたとき(例えば、吸光度が50%のとき)の凝固波形データから得られる時間(例えば、T-T2)(図4参照)である。第1分析動作は、非特異反応の疑いの有無を判定する動作のことであり、第2分析動作は、凝固時間を判定する動作のことである。
第1データと第2データは、同一のデータでもよく、全く別のデータでもよい。例えば、WDFチャンネルによる1回の測定によって得られた波形データに基づいて、有核赤血球および好塩基球についてAI分析を実行し、他の白血球について計算処理分析する場合、第1データおよび第2データは同一のデータである。2回の測定によって得られた波形データのうち、1回目の測定に基づく波形データに対して計算処理分析を実行し、2回目の測定に基づく波形データに対してAI分析を実行する場合、第1データおよび第2データは別のデータである。
計算処理分析で処理対象となる波形データ(第2データ)の代表値は、波形データ(第2データ)の大きさに基づいて特定される。具体的には、ピーク値、面積、幅などの代表値、および、吸光度が50%となるまでの時間などの代表値は、第2データの大きさに基づいて特定される。これにより、円滑に代表値を特定できる。
検体分析装置4000が血球分析装置や尿分析装置の場合、光学的信号は、検体中の分析物の各々に対応する領域を有する。分析ユニット300、600は、計算処理分析において、光学的信号の領域の各々に対応する波形データ(第2データ)基づいて、計算処理分析の対象となる代表値を特定する。このように、光学的信号は、分析物の各々に対応する領域を含んでいるため、光学的信号の各領域に対応する波形データに基づいて、各分析物に対応したピーク値、面積、幅などの代表値を円滑に特定できる。
検体分析装置4000が血球分析装置や尿分析装置の場合、光学的信号は、検体中の分析物の各々に対応する領域を有する。分析ユニット300、600は、AI分析において、光学的信号の領域の各々に対応する波形データ(第1データ)を人工知能アルゴリズムに入力する。このように、光学的信号は、分析物の各々に対応する領域を含んでいるため、光学的信号の各領域に対応する波形データを人工知能アルゴリズムに入力することにより、AI分析を円滑に実行できる。
上記のように、光学的信号が検体中の分析物の各々に対応する領域を有する場合、測定ユニット400は、図3の上段の図に示したように、光学的信号の強度に対応する所定の閾値より大きい信号に基づいて、波形データ(第1および第2データ)を取得する。この構成によれば、分析物の各々に対応する波形データを的確に取得できる。
図6に示したように、分析ユニット300は、AI分析(第1分析動作)および計算処理分析(第2分析動作)のそれぞれの対象となるデータを特定するためのルールに基づいて、AI分析の対象となるデータ(第1データ)および計算処理分析の対象となるデータ(第2データ)を特定する。この構成によれば、光学的信号に対応するデータに対して、第1分析動作および第2分析動作のいずれで分析を行うかを円滑に決めることができる。
図7に示したように、分析ユニット300は、検体に対する測定オーダーに含まれる測定項目に応じて、AI分析の対象となるデータ(第1データ)および計算処理分析の対象となるデータ(第2データ)を特定する。この構成によれば、例えば、計算処理分析では高精度な分析が困難な測定項目の分析を、AI分析により実行し、通常の測定項目の分析を、計算処理分析により実行できる。これにより、高精度な分析および分析ユニット300の負荷の軽減を実現できる。
図13に示したように、分析ユニット300は、検体に対する測定オーダーの種別に応じて、AI分析の対象となるデータ(第1データ)および計算処理分析の対象となるデータ(第2データ)を特定する。この構成によれば、例えば、通常測定(Normal)、同じ測定オーダーを再度実行する再測定(Rerun)、および測定オーダーが再設定された測定(Reflex)などの測定オーダーの種別に応じて、すなわち測定オーダーに基づく測定の目的等に応じて、AI分析および計算処理分析のいずれを実行するかを決めることができる。
図11に示したように、分析ユニット300は、検体分析装置4000の分析モードに応じて、AI分析の対象となるデータ(第1データ)および計算処理分析の対象となるデータ(第2データ)を特定する。この構成によれば、例えば、検体分析装置4000に対して、あらかじめAI分析モードおよび計算処理分析モードのいずれかを設定することにより、検体や測定項目ごとに分析モードを設定する手間を省略できる。
図17および図22に示したように、分析ユニット300は、計算処理分析(第2分析動作)の分析結果に応じて、AI分析(第1分析動作)の実行要否を判定する。この構成によれば、例えば、計算処理分析の分析結果に基づいて、さらに詳細な分析が必要である場合に、AI分析を実行することにより、高精度な分析を行うことができる。
図17および図22に示したように、分析ユニット300は、計算処理分析(第2分析動作)によって所定の分析物が検体で検出されたか否かに応じて、AI分析(第1分析動作)の実行要否を判定する。この構成によれば、計算処理分析によって、例えば、芽球、異常リンパ球および異型リンパ球などが検出された場合に、AI分析によって、さらに詳細な検査を行うことができる。
図19に示したように、分析ユニット300は、計算処理分析(第2分析動作)によって所定の種別に分類された分析物に対応する波形データ(第1データ)を計算処理分析(第1分析動作)で分析する。計算処理分析の分析結果によれば、例えば、図21に示したように、単球およびリンパ球などに分類される細胞は、分布領域が接近している。したがって、計算処理分析によって単球およびリンパ球がなどに分類された細胞に対してAI分析を実行することにより、高精度な分類を行うことができる。
計算処理分析(第2分析動作)において処理される代表値は、AI分析(第1分析動作)においてAIアルゴリズム60に入力される波形データ(第1データ)よりもデータ量が小さい。すなわち、計算処理分析では、処理対象のデータ量がAI分析と比較して少ないため、AI分析に比べて、分析を行うコンピュータに対する負荷が少ない。これにより、測定結果の分析のTAT(Turn Around Time)を短くすることができる。
本発明の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
60 AIアルゴリズム(人工知能アルゴリズム)
80a、80b、80c 光学的信号
82a、82b、82c 波形データ(第1データ、第2データ)
300、600 分析ユニット
400 測定ユニット
410 FCM検出部(光学式検出部)
440 試料調製部
470 検出部(光学式検出部)
471 光源部(光源)
475 受光部(光検出器)
3001、6001 プロセッサ(ホストプロセッサ)
3002、6002 並列処理プロセッサ
4000 検体分析装置
4111 光源
4113 フローセル
4116、4121、4122 受光素子(光検出器)

Claims (41)

  1. 検体中の分析物を分析するための検体分析装置であって、
    前記検体から光学的信号を取得するための光学式検出部を含む測定ユニットと、
    前記光学的信号に対応する第1および第2データを分析する分析ユニットと、を備え、
    前記分析ユニットは、
    前記第1データに対し、人工知能アルゴリズムによる第1分析動作を実行し、
    前記第2データのうち、前記分析物の特徴に対応する代表値を処理する第2分析動作を実行する、
    ことを特徴とする検体分析装置。
  2. 前記分析ユニットは、第2分析動作において、前記代表値を前記第2データに基づいて特定し、特定した前記代表値を処理する、請求項1に記載の検体分析装置。
  3. 前記分析ユニットは、第2分析動作において、前記代表値を前記第2データの大きさに基づいて特定する、請求項2に記載の検体分析装置。
  4. 前記光学的信号は、前記検体中の分析物の各々に対応する領域を有し、
    前記分析ユニットは、第2分析動作において、前記光学的信号の前記領域の各々に対応する前記第2データに基づいて、前記代表値を特定する、請求項2または3に記載の検体分析装置。
  5. 前記分析ユニットは、前記第2データの前記領域におけるピーク値を、前記代表値として特定する、請求項4に記載の検体分析装置。
  6. 前記光学的信号は、前記検体中の分析物の各々に対応する領域を有し、
    前記分析ユニットは、前記第1分析動作において、前記光学的信号の前記領域の各々に対応する前記第1データを前記人工知能アルゴリズムに入力する、請求項1ないし5の何れか一項に記載の検体分析装置。
  7. 前記測定ユニットは、前記光学的信号の強度に対応する所定の閾値より大きい信号に基づいて、前記第1および第2データを取得する、請求項4ないし6の何れか一項に記載の検体分析装置。
  8. 前記測定ユニットは、前記光学的信号に基づいて前記代表値を取得し、
    前記分析ユニットは、第2分析動作において、前記測定ユニットが取得した前記代表値を処理する、請求項1に記載の検体分析装置。
  9. 前記光学的信号は、前記検体中の分析物の存在が反映された信号である、請求項1ないし8の何れか一項に記載の検体分析装置。
  10. 前記光学式検出部は、光源、フローセルおよび光検出器を備え、前記フローセルに光を照射して前記フローセルを流れる前記検体中の分析物から生じる光を検出する、請求項1ないし9の何れか一項に記載の検体分析装置。
  11. 前記第1および第2データは、前記光の照射位置を前記分析物が通過する間に取得された前記光学的信号に対応する、請求項10に記載の検体分析装置。
  12. 前記光学式検出部は、光源および光検出器を備え、静置した前記検体に光を照射し、前記検体を透過した光または前記検体により散乱した光を検出する、請求項1ないし3の何れか一項に記載の検体分析装置。
  13. 前記検体は血液であり、
    前記測定ユニットは、前記検体に血液凝固試薬を混合するための試料調製部をさらに備え、
    前記光学式検出部は、前記血液凝固試薬が混合された前記検体に光を照射し、前記検体を透過した光または前記検体により散乱した光を検出する、請求項12に記載の検体分析装置。
  14. 前記第1および第2データは、前記検体の凝固開始を示すタイミングから、前記検体の凝固終了を示すタイミングまでに取得された前記光学的信号に対応するデータを含む、請求項13に記載の検体分析装置。
  15. 前記分析ユニットは、前記検出した光の強度が所定の条件を満たしたときの前記第2データを、前記代表値として特定する、請求項13または14に記載の検体分析装置。
  16. 前記分析ユニットは、前記第1分析動作により、非特異反応の発生の疑いを判定する、請求項13ないし15の何れか一項に記載の検体分析装置。
  17. 前記分析ユニットは、前記人工知能アルゴリズムによる畳み込み演算で、前記第1データを分析する、請求項1ないし16の何れか一項に記載の検体分析装置。
  18. 前記分析ユニットは、前記人工知能アルゴリズムによる行列演算で、前記第1データを分析する、請求項1ないし17の何れか一項に記載の検体分析装置。
  19. 前記分析ユニットは、前記人工知能アルゴリズムによる行列演算を、並列処理プロセッサによる並列処理で実行する、請求項18に記載の検体分析装置。
  20. 前記分析ユニットは、前記第1分析動作を前記並列処理プロセッサによって実行し、前記第2分析動作を前記並列処理プロセッサのホストプロセッサによって実行する、請求項19に記載の検体分析装置。
  21. 前記人工知能アルゴリズムは、深層学習アルゴリズムである、請求項1ないし20の何れか一項に記載の検体分析装置。
  22. 前記分析ユニットは、前記第1分析動作および前記第2分析動作のそれぞれの対象となるデータを特定するためのルールに基づいて、前記第1データおよび前記第2データを特定する、請求項1ないし21の何れか一項に記載の検体分析装置。
  23. 前記分析ユニットは、前記検体に対する測定オーダーに含まれる測定項目に応じて、前記第1データおよび前記第2データを特定する、請求項1ないし22の何れか一項に記載の検体分析装置。
  24. 前記分析ユニットは、前記検体に対する測定オーダーの種別に応じて、前記第1データおよび前記第2データを特定する、請求項1ないし23の何れか一項に記載の検体分析装置。
  25. 前記分析ユニットは、前記検体分析装置の分析モードに応じて、前記第1データおよび前記第2データを特定する、請求項1ないし24の何れか一項に記載の検体分析装置。
  26. 前記分析ユニットは、前記第2分析動作の分析結果に応じて、前記第1分析動作の実行要否を判定する、請求項1ないし25の何れか一項に記載の検体分析装置。
  27. 前記分析ユニットは、前記第2分析動作によって所定の分析物が前記検体で検出されたか否かに応じて、前記第1分析動作の実行要否を判定する、請求項1ないし26の何れか一項に記載の検体分析装置。
  28. 前記分析ユニットは、前記第2分析動作によって所定の種別に分類された分析物に対応する前記第1データを前記第1分析動作で分析する、請求項1ないし27の何れか一項に記載の検体分析装置。
  29. 前記第2分析動作において処理される前記代表値は、前記第1分析動作において前記人工知能アルゴリズムに入力される前記第1データよりもデータ量が小さい、請求項1ないし28の何れか一項に記載の検体分析装置。
  30. 前記検体と試薬とに基づいて測定試料を調製する試料調製部をさらに備え、
    前記光学式検出部は、前記測定試料に含まれる前記検体から前記光学的信号を取得し、
    前記分析ユニットは、1つの前記測定試料から取得した前記光学的信号に対応する前記第1データおよび前記第2データを分析する、請求項1ないし29の何れか一項に記載の検体分析装置。
  31. 前記第1データおよび前記第2データは、それぞれが複数のデータであり、少なくとも一部が互いに同じデータである、請求項30に記載の検体分析装置。
  32. 前記検体と試薬とに基づいて測定試料を調製する試料調製部をさらに備え、
    前記光学式検出部は、前記測定試料に含まれる前記検体から前記光学的信号を取得し、
    前記分析ユニットは、同一の被検者から採取した前記検体を含む複数の前記測定試料からそれぞれ取得した前記光学的信号のそれぞれに対応する前記第1データおよび前記第2データを分析する、請求項1ないし31の何れか一項に記載の検体分析装置。
  33. 前記検体と試薬とに基づいて測定試料を調製する試料調製部をさらに備え、
    前記光学式検出部は、前記測定試料に含まれる前記検体から前記光学的信号を取得し、
    前記分析ユニットは、互いに異なる被検者から採取した前記検体を含む複数の前記測定試料からそれぞれ取得した前記光学的信号のそれぞれに対応する前記第1データおよび前記第2データを分析する、請求項1ないし32の何れか一項に記載の検体分析装置。
  34. 複数の前記測定試料に含まれる前記試薬は、互いに同種の試薬である、請求項32または33に記載の検体分析装置。
  35. 複数の前記測定試料に含まれる前記試薬は、互いに異種の試薬である、請求項32または33に記載の検体分析装置。
  36. 検体中の分析物を分析するための検体分析方法であって、
    前記検体から光学的信号を取得する工程と、
    前記光学的信号に対応する第1および第2データを分析する分析工程と、を含み、
    前記分析工程において、
    前記第1データに対し、人工知能アルゴリズムによる第1分析動作を実行し、
    前記第2データのうち、前記分析物の特徴に対応する代表値を処理する第2分析動作を実行する、
    ことを特徴とする検体分析方法。
  37. 検体中の分析物を分析する処理をコンピュータに実行させるプログラムであって、
    前記検体から取得された光学的信号に対応する第1および第2データを分析する処理を含み、
    前記処理は、
    前記第1データに対し、人工知能アルゴリズムによる第1分析動作を実行し、
    前記第2データのうち、前記分析物の特徴に対応する代表値を処理する第2分析動作を実行する、
    ことを特徴とするプログラム。
  38. 検体中の分析物を分析するための検体分析装置であって、
    前記検体から光学的信号を取得するための光学式検出部を含む測定ユニットと、
    前記光学的信号に対応するデータを分析する分析ユニットと、を備え、
    前記分析ユニットは、前記データの分析モードに応じて、人工知能アルゴリズムによる第1分析、または、前記データのうち、前記分析物の特徴に対応する代表値を処理する第2分析により、前記データを分析する、
    ことを特徴とする検体分析装置。
  39. 前記分析モードは、前記検体に対する測定オーダーに含まれる測定項目ごと、または、前記検体に対する測定オーダーの種別ごとに選択可能である、請求項38に記載の検体分析装置。
  40. 検体中の分析物を分析するための検体分析方法であって、
    前記検体から光学的信号を取得する工程と、
    前記光学的信号に対応するデータを分析する分析工程と、を含み、
    前記分析工程において、
    前記データの分析モードに応じて、人工知能アルゴリズムによる第1分析、または、前記データのうち、前記分析物の特徴に対応する代表値を処理する第2分析により、前記データを分析する、
    ことを特徴とする検体分析方法。
  41. 検体中の分析物を分析する処理をコンピュータに実行させるプログラムであって、
    前記検体から取得された光学的信号に対応するデータを分析する処理を含み、
    前記処理は、
    前記データの分析モードに応じて、人工知能アルゴリズムによる第1分析、または、前記データのうち、前記分析物の特徴に対応する代表値を処理する第2分析により、前記データを分析する、
    ことを特徴とするプログラム。
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