JP2023135635A - 硫化物固体電解質の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】製造工程が煩雑ではなく、また粒径が小さく(比表面積が大きく)かつ吸油量が少ない硫化物固体電解質を製造することができる硫化物固体電解質を製造する方法を提供する。【解決手段】リチウム原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子を含む原料含有物と錯化剤とを混合して、電解質前駆体を得ること、前記電解質前駆体より錯化剤を除去して錯分解物を得ること、前記錯分解物を加熱して結晶性錯分解物を得ること、及び前記結晶性錯分解物を、積算エネルギー量10Wh/kg以上500Wh/kg未満の機械的処理を加えることで、解砕処理して解砕処理物を得ること、を含む、硫化物固体電解質の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、硫化物固体電解質の製造方法に関する。
近年におけるパソコン、ビデオカメラ、及び携帯電話等の情報関連機器や通信機器等の急速な普及に伴い、その電源として利用される電池の開発が重要視されている。従来、このような用途に用いられる電池において可燃性の有機溶媒を含む電解液が用いられていたが、電池を全固体化することで、電池内に可燃性の有機溶媒を用いず、安全装置の簡素化が図れ、製造コスト、生産性に優れることから、電解液を固体電解質層に換えた電池の開発が行われている。
固体電解質層に用いられる固体電解質の製造方法として、簡便かつ大量に合成できる方法として液相法が注目されている。しかし液相法では、固体電解質を構成する原子の分散状態を保持したまま析出することが困難であるため、更に錯化剤を用い、電解質前駆体を経て、固体電解質を製造する方法が開示されている(例えば、特許文献1、2参照)。
国際公開第2020/105736号パンフレット 国際公開第2020/105737号パンフレット
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、製造工程を煩雑にすることなく、また粒径が小さく(比表面積が大きく)かつ吸油量が少ない硫化物固体電解質を製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記の課題を解決するべく鋭意検討した結果、下記の発明により当該課題を解決できることを見出した。
[1]リチウム原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子を含む原料含有物と錯化剤とを混合して、電解質前駆体を得ること、
前記電解質前駆体より錯化剤を除去して錯分解物を得ること、
前記錯分解物を加熱して結晶性錯分解物を得ること、及び
前記結晶性錯分解物を、積算エネルギー量10Wh/kg以上500Wh/kg未満の機械的処理を加えることで、解砕処理して解砕処理物を得ること、
を含む、硫化物固体電解質の製造方法。
[2]リチウム原子、硫黄原子、リン原子、ハロゲン原子、及び0.01~1.0質量%の錯化剤を含有し、かつ、レーザー回折散乱式粒度分布測定法における累積体積50%の粒径(D50)が0.10μm以上0.50μm未満であり、かつ、累積体積10%の粒径(D10)が0.05μm以上0.15μm未満である硫化物固体電解質。
本発明によれば、製造工程を煩雑にすることなく、また比表面積を下げることなく吸油量が少ない硫化物固体電解質を製造する方法を提供することができる。
実施例1で得られた硫化物固体電解質の粒子径分布である。 実施例2で得られた硫化物固体電解質の粒子径分布である。 実施例3で得られた硫化物固体電解質の粒子径分布である。 比較例1で得られた硫化物固体電解質の粒子径分布である。 比較例2で得られた硫化物固体電解質の粒子径分布である。 実施例1で得られた硫化物固体電解質のX線回折スペクトルである。 実施例1で得られた固体電解質粉末の走査型顕微鏡(SEM)写真である。 比較例1で得られた固体電解質粉末の走査型顕微鏡(SEM)写真である。
以下、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」と称することがある。)について説明する。なお、本明細書において、「以上」、「以下」、「~」の数値範囲に係る上限及び下限の数値は任意に組み合わせできる数値であり、また実施例の数値を上限及び下限の数値として用いることもできる。また、好ましいとされている規定は任意に採用することができる。即ち、好ましいとされている一の規定を、好ましいとされている他の一又は複数の規定と組み合わせて採用することができる。好ましいもの同士の組み合わせはより好ましいと言える。
(本発明に至るために本発明者らが得た知見)
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、下記の事項を見出し、本発明を完成するに至った。
従来より、固体電解質としては、全固体リチウム電池の性能、製造の観点から、粒径が小さいものが求められている。全固体リチウム電池では、正極材、負極材及び電解質の全てが固体となるため、固体電解質の粒径が小さいと、活物質と固体電解質との接触界面を形成しやすくなり、イオン伝導と電子伝導のパスが良好になるといった利点がある。
一方、特許文献1及び2に記載の製造方法においては、結晶性錯分解物である機械的処理前の固体電解質が、粗大で多孔質(比表面積が大きい)かつ軟質である特徴を有するため、その細孔に溶媒が吸収されやすく、従ってスラリー化する際に多量の溶媒を要するものであった。そこで、これらの固体電解質を粉砕しようとしても、固体電解質の粒径がかえって増大してしまい目的を達しない、あるいは、機械的処理が不均一で粗大な多孔質粒子が多く残存し、いずれにしても吸油量が大きくなり電池作製が困難となる、といった問題があった。すなわち、従来はいずれの手法においても粒径が小さいこと(比表面積が大きいこと)と、吸油量が小さいこととが二律背反の関係にあり、電池の作製の容易性と電池性能の向上とを両立させることは困難であった。
本発明者らは、その解決策として、結晶性錯分解物の機械処理における諸条件に着目し、積算エネルギー量を従来に比べて少なくして、よりマイルドな条件で機械的処理を施すことで、非常に微細かつ多孔性の低い粒子とすることで、吸油量抑制と比表面積増大を両立できることを見出した。
本実施形態の第一の態様に係る硫化物固体電解質の製造方法は、
(1)リチウム原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子を含む原料含有物と錯化剤とを混合して、電解質前駆体を得ること、
(2)前記電解質前駆体より錯化剤を除去して錯分解物を得ること、
(3)前記錯分解物を加熱して結晶性錯分解物を得ること、及び
(4)前記結晶性錯分解物を、積算エネルギー量10Wh/kg以上500Wh/kg未満の機械的処理を加えることで、解砕処理して解砕処理物を得ること、
を含む硫化物固体電解質の製造方法、
である。
上述のように、特許文献1及び2に記載の硫化物固体電解質の製造方法においては、粒径が小さく、かつ吸油量が小さい固体電解質を製造することが困難であった。
これに対し、第一の態様に係る硫化物固体電解質の製造方法においては、結晶性錯分解物に対して所定の積算エネルギー量の機械的処理を加えて解砕することで、粒径が小さく、かつ吸油量が小さいという2つの性状を両立することができる。
本実施形態の第二の態様に係る硫化物固体電解質の製造方法は、
前記結晶性錯分解物の解砕処理を、酸素原子含有化合物を含む溶媒中で行う第一の態様に記載の硫化物固体電解質の製造方法、
である。
結晶性錯分解物の解砕処理を、酸素原子含有化合物を含む溶媒中で行うことで、粗大粒子の解砕を効率よく行うことができるとともに、残留する錯化剤を除去しやすくなる。
本実施形態の第三の態様に係る硫化物固体電解質の製造方法は、
前記酸素原子含有化合物が、エーテル化合物である第二の態様に記載の硫化物固体電解質の製造方法、
である。
また、本実施形態の第四の態様に係る硫化物固体電解質の製造方法は、
前記溶媒が、さらに炭化水素化合物を含有する第二又は第三の態様に記載の硫化物固体電解質の製造方法、
である。
さらに、本実施形態の第五の態様に係る硫化物固体電解質の製造方法は、
前記溶媒が、前記炭化水素化合物50~99.5質量%と、前記酸素原子含有化合物0.5~50質量%とを含有する第四の態様に記載の硫化物固体電解質の製造方法、
である。
結晶性錯分解物の解砕処理に用いられる溶媒としては、粗大粒子の解砕や、残留する錯化剤の除去の観点から、上述のエーテル化合物や炭化水素化合物を含むものが好ましく用いられ、また、炭化水素化合物と酸素原子含有化合物を上記比率で含有することが好ましい。
本実施形態の第六の態様に係る硫化物固体電解質の製造方法は、
前記電解質前駆体からの錯化剤の除去を乾燥により行う第一~第五のいずれか一の態様に記載の硫化物固体電解質の製造方法、
である。
電解質前駆体からの錯化剤の除去は、乾燥により簡便に行うことができる。
本実施形態の第七の態様に係る硫化物固体電解質の製造方法は、
さらに、前記解砕処理物を加熱することを含む、第一~第六のいずれか一の態様に記載の硫化物固体電解質の製造方法、
である。
解砕処理物の一部又は全部がガラス化(非晶化)した場合であっても、加熱することで、再度結晶化させることができる。
本実施形態の第八の態様に係る硫化物固体電解質の製造方法は、
前記錯化剤が窒素原子含有化合物である第一~第七のいずれか一の態様に記載の硫化物固体電解質の製造方法、
である。
また、本実施形態の第九の態様に係る硫化物固体電解質の製造方法は、
前記窒素原子含有化合物が第3級アミノ基を有する化合物である第八の態様に記載の硫化物固体電解質の製造方法、
である。
錯化剤として窒素原子含有化合物や、第3級アミノ基を有する化合物を用いると、錯化剤が除去されやすくなるため、イオン伝導度を改善する観点から好ましい。
本実施形態の第十の態様に係る硫化物固体電解質の製造方法は、
前記結晶性錯分解物のレーザー回折散乱式粒度分布測定法における累積体積50%の粒径(D50)が3.00μm未満である第一~第九のいずれか一の態様に記載の硫化物固体電解質の製造方法、
である。
また、本実施形態の第十一の態様に係る硫化物固体電解質の製造方法は、
前記結晶性錯分解物のレーザー回折散乱式粒度分布測定法における累積体積90%の粒径(D90)が5.00μm以上である第一~第十のいずれか一の態様に記載の硫化物固体電解質の製造方法、
である。
本実施形態の硫化物固体電解質の製造方法においては、上記した累積体積50%の粒径(D50)や累積体積90%の粒径(D90)の範囲を満たす結晶性錯分解物に対して機械的処理を加え、粗大な多孔質粒子を解砕することで、効率よく粒径が小さくかつ吸油量の少ない硫化物固体電解質が得られる。
本実施形態の第十二の態様に係る硫化物固体電解質は、
リチウム原子、硫黄原子、リン原子、ハロゲン原子、及び0.01~1.0質量%の錯化剤を含有し、かつ、レーザー回折散乱式粒度分布測定法における累積体積50%の粒径(D50)が0.10μm以上0.50μm未満であり、かつ、累積体積10%の粒径(D10)が0.05μm以上0.15μm未満である硫化物固体電解質、
である。
本実施形態の第十三の態様に係る硫化物固体電解質は、
累積体積90%の粒径(D90)が0.10μm以上10.0μm未満である第十二の態様に記載の硫化物固体電解質、
である。
本実施形態の第十四の態様に係る硫化物固体電解質は、
比表面積が20~50m/gである第十二又は第十三の態様に記載の硫化物固体電解質、
である。
本実施形態の第十五の態様に係る硫化物固体電解質は、
さらに、0.01~0.5質量%の酸素原子含有化合物を含有する第十二~第十四のいずれか一の態様に記載の硫化物固体電解質、
である。
本実施形態の第十六の態様に係る硫化物固体電解質は、
前記錯化剤が窒素原子含有化合物である第十二~第十五のいずれか一の態様に記載の硫化物固体電解質、
である。
本実施形態の第十七の態様に係る硫化物固体電解質は、
前記窒素原子含有化合物が第3級アミノ基を有する化合物である第十六の態様に記載の硫化物固体電解質、
である。
本実施形態の第十八の態様に係る硫化物固体電解質は、
第十二~第十七のいずれか一の態様に記載の硫化物固体電解質と、レーザー回折散乱式粒度分布測定法における累積体積50%の粒径(D50)が0.50μm以上の他の硫化物固体電解質とを含有する硫化物固体電解質混合物、
である。
上記硫化物固体電解質と、より粒子径の大きい他の硫化物固体電解質とを組み合わせることで、大きな粒子の課題である空隙率を低下させることができる。例えば、セパレート層では電極層と比べて接触界面が少ない大きな粒子が使用されるが、空隙を生じやすい。本実施形態においては、微細な粒子である上述の硫化物固体電解質と、大きな粒子である他の硫化物固体電解質とを組み合わせることで、空隙率を低減することができ、これによってイオン伝導と電子伝導のパスが良好となる。
本実施形態の第十九の態様に係る硫化物固体電解質は、
第十二~第十七のいずれか一の態様に記載の硫化物固体電解質と、レーザー回折散乱式粒度分布測定法における累積体積50%の粒径(D50)が0.50μm以上の他の硫化物固体電解質とを混合することを含む、第十八の態様に記載の硫化物固体電解質混合物の製造方法、
である。
本実施形態によれば、前述の硫化物固体電解質混合物を製造することができる。
本実施形態の硫化物固体電解質の製造方法により得られる硫化物固体電解質は、好ましくは上記した累積体積50%の粒径(D50)や累積体積90%の粒径(D90)の範囲を満たす程度に粒子径が小さいものとなり、また、その製造工程に由来して少量の錯化剤や酸素原子含有化合物を含有するものとなることがある。
[硫化物固体電解質]
本明細書において、「硫化物固体電解質」とは、窒素雰囲気下25℃で固体を維持する電解質を意味する。本実施形態における硫化物固体電解質は、リチウム元素、硫黄元素、リン元素及びハロゲン元素を含み、リチウム元素に起因するイオン伝導度を有する硫化物固体電解質である。
「硫化物固体電解質」には、本実施形態の製造方法により得られる結晶構造を有する結晶性硫化物固体電解質と、非晶性硫化物固体電解質と、の両方が含まれる。
本明細書において、結晶性硫化物固体電解質とは、X線回折測定におけるX線回折パターンにおいて、硫化物固体電解質由来のピークが観測される固体電解質であって、これらにおいての硫化物固体電解質の原料由来のピークの有無は問わないものである。すなわち、結晶性硫化物固体電解質は、硫化物固体電解質に由来する結晶構造を含み、その一部が該硫化物固体電解質に由来する結晶構造であっても、その全部が該硫化物固体電解質に由来する結晶構造であってもよい。そして、結晶性硫化物固体電解質は、上記のようなX線回折パターンを有していれば、その一部に非晶性硫化物固体電解質が含まれていてもよい。したがって、結晶性硫化物固体電解質には、非晶質硫化物固体電解質を結晶化温度以上に加熱して得られる、いわゆるガラスセラミックスが含まれる。
また、本明細書において、非晶性硫化物固体電解質とは、X線回折測定におけるX線回折パターンにおいて、材料由来のピーク以外のピークが実質的に観測されないハローパターンであるもののことであり、硫化物固体電解質の原料由来のピークの有無は問わないものである。
[原料含有物]
本実施形態で用いられる原料含有物(以下、単に「原料」とも称する。)は、リチウム原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子を含むものである。
より具体的には、硫化リチウム;フッ化リチウム、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム等のハロゲン化リチウム;三硫化二リン(P)、五硫化二リン(P)等の硫化リン;各種フッ化リン(PF、PF)、各種塩化リン(PCl、PCl、PCl)、各種臭化リン(PBr、PBr)、各種ヨウ化リン(PI、P)等のハロゲン化リン;フッ化チオホスホリル(PSF)、塩化チオホスホリル(PSCl)、臭化チオホスホリル(PSBr)、ヨウ化チオホスホリル(PSI)、二塩化フッ化チオホスホリル(PSClF)、二臭化フッ化チオホスホリル(PSBrF)等のハロゲン化チオホスホリル;などの上記四種の原子から選ばれる少なくとも二種の原子からなる化合物、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)等のハロゲン単体、好ましくは臭素(Br)、ヨウ素(I)が代表的に挙げられる。
上記以外の原料が含有し得るものとしては、例えば、上記四種の原子から選ばれる少なくとも一種の原子を含み、かつ該四種の原子以外の原子を含む化合物、より具体的には、酸化リチウム、水酸化リチウム、炭酸リチウム等のリチウム化合物;硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウム等の硫化アルカリ金属;硫化ケイ素、硫化ゲルマニウム、硫化ホウ素、硫化ガリウム、硫化スズ(SnS、SnS)、硫化アルミニウム、硫化亜鉛等の硫化金属;リン酸ナトリウム、リン酸リチウム等のリン酸化合物;ヨウ化ナトリウム、フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム等のハロゲン化ナトリウム等のリチウム以外のアルカリ金属のハロゲン化物;ハロゲン化アルミニウム、ハロゲン化ケイ素、ハロゲン化ゲルマニウム、ハロゲン化ヒ素、ハロゲン化セレン、ハロゲン化スズ、ハロゲン化アンチモン、ハロゲン化テルル、ハロゲン化ビスマス等のハロゲン化金属;オキシ塩化リン(POCl)、オキシ臭化リン(POBr)等のオキシハロゲン化リン;などが挙げられる。
上記の中でも、硫化リチウム、三硫化二リン(P)、五硫化二リン(P)等の硫化リン、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)等のハロゲン単体、フッ化リチウム、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム等のハロゲン化リチウムが好ましい。また、酸素原子を固体電解質に導入する場合、酸化リチウム、水酸化リチウム及びリン酸リチウム等のリン酸化合物が好ましい。原料の組み合わせとしては、例えば、硫化リチウム、五硫化二リン及びハロゲン化リチウムの組み合わせ、硫化リチウム、五硫化二リン及びハロゲン単体の組み合わせが好ましく挙げられ、ハロゲン化リチウムとしては、臭化リチウム及びヨウ化リチウムから選択される少なくとも一方を用いることが好ましく、ハロゲン単体としては臭素及びヨウ素が好ましい。
本実施形態においては、PS構造を含むLiPSを原料の一部として用いることもできる。具体的には、先にLiPSを製造する等して用意し、これを原料として使用する。
原料の合計に対するLiPSの含有量は、60~100mol%が好ましく、65~90mol%がより好ましく、70~80mol%が更に好ましい
また、LiPSとハロゲン単体とを用いる場合、LiPSに対するハロゲン単体の含有量は、1~50mol%が好ましく、10~40mol%がより好ましく、20~30mol%が更に好ましく、22~28mol%が更により好ましい。
本実施形態で用いられる硫化リチウムは、粒子であることが好ましい。
硫化リチウム粒子の平均粒径(D50)は、0.1μm以上1000μm以下であることが好ましく、0.5μm以上100μm以下であることがより好ましく、1μm以上20μm以下であることがさらに好ましい。本明細書において、平均粒径(D50)は、粒子径分布積算曲線を描いた時に粒子径の最も小さい粒子から順次積算して全体の50%に達するところの粒子径であり、体積分布は、例えば、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置を用いて測定することができる平均粒径のことである。また、上記の原料として例示したもののうち固体の原料については、上記硫化リチウム粒子と同じ程度の平均粒径を有するものが好ましい、すなわち上記硫化リチウム粒子の平均粒径と同じ範囲内にあるものが好ましい。
原料として、硫化リチウム、五硫化二リン及びハロゲン化リチウムを用いる場合、硫化リチウム及び五硫化二リンの合計に対する硫化リチウムの割合は、より高い化学的安定性及びより高いイオン伝導度を得る観点から、70~80mol%が好ましく、72~78mol%がより好ましく、74~78mol%が更に好ましい。
硫化リチウム、五硫化二リン、ハロゲン化リチウム及び必要に応じて用いられる他の原料を用いる場合、これらの合計に対する硫化リチウム及び五硫化二リンの含有量は、50~100mol%が好ましく、55~85mol%がより好ましく、60~75mol%が更に好ましい。
また、ハロゲン化リチウムとして、臭化リチウムとヨウ化リチウムとを組み合わせて用いる場合、イオン伝導度を向上させる観点から、臭化リチウム及びヨウ化リチウムの合計に対する臭化リチウムの割合は、1~99mol%が好ましく、20~80mol%がより好ましく、30~70mol%が更に好ましく、40~60mol%が特に好ましい。
原料としてハロゲン単体を用いる場合であって、硫化リチウム、五硫化二リンを用いる場合、ハロゲン単体のモル数と同モル数の硫化リチウムを除いた硫化リチウム及び五硫化二リンの合計モル数に対する、ハロゲン単体のモル数と同モル数の硫化リチウムとを除いた硫化リチウムのモル数の割合は、60~90%の範囲内であることが好ましく、65~85%の範囲内であることがより好ましく、68~82%の範囲内であることが更に好ましく、72~78%の範囲内であることが更により好ましく、73~77%の範囲内であることが特に好ましい。これらの割合であれば、より高いイオン伝導度が得られるからである。
また、これと同様の観点から、硫化リチウムと五硫化二リンとハロゲン単体とを用いる場合、硫化リチウムと五硫化二リンとハロゲン単体との合計量に対するハロゲン単体の含有量は、1~50mol%が好ましく、2~40mol%がより好ましく、3~25mol%が更に好ましく、3~15mol%が更により好ましい。
硫化リチウムと五硫化二リンとハロゲン単体とハロゲン化リチウムとを用いる場合には、これらの合計量に対するハロゲン単体の含有量(αmol%)、及びハロゲン化リチウムの含有量(βmol%)は、下記式(2)を満たすことが好ましく、下記式(3)を満たすことがより好ましく、下記式(4)を満たすことが更に好ましく、下記式(5)を満たすことが更により好ましい。
2≦2α+β≦100…(2)
4≦2α+β≦80 …(3)
6≦2α+β≦50 …(4)
6≦2α+β≦30 …(5)
二種のハロゲンを単体として用いる場合には、一方のハロゲン元素の物質中のモル数をA1とし、もう一方のハロゲン元素の物質中のモル数をA2とすると、A1:A2が1~99:99~1が好ましく、10:90~90:10であることがより好ましく、20:80~80:20が更に好ましく、30:70~70:30が更により好ましい。
また、二種のハロゲン単体が、臭素とヨウ素である場合、臭素のモル数をB1とし、ヨウ素のモル数をB2とすると、B1:B2が1~99:99~1が好ましく、15:85~90:10であることがより好ましく、20:80~80:20が更に好ましく、30:70~75:25が更により好ましく、35:65~75:25が特に好ましい。
[錯化剤]
本明細書において、錯化剤とは、固体電解質の原料として好ましく用いられるLiS及びP等から得られるLiPS及びハロゲン原子を含む錯体を形成可能、好ましくはLiPSを形成する能力を有し、かつ、形成したLiPS及びハロゲン原子を含む錯体を形成可能な錯化剤である。
本実施形態で用いられる錯化剤は、1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。錯化剤としては、通常、LiPS及びハロゲン原子を含む錯体を形成可能なものが用いられる。
本実施形態の混合を行う際の錯化剤の添加量は、錯体を効率的に形成させる観点から、前記原料含有物に含まれるLi原子の合計モル量に対する錯化剤のモル比が、好ましくは0.5以上7.0以下であり、より好ましくは0.6以上5.5以下であり、更に好ましくは0.8以上3.5以下である。
本実施形態において用いられる錯化剤としては、上記の性能を有するものであれば特に制限なく用いることができ、特にリチウム原子との親和性が高い原子、例えば窒素原子、酸素原子、塩素原子等のヘテロ原子を含む化合物が好ましく、これらのヘテロ原子を含む基を有する化合物がより好ましく挙げられる。これらのヘテロ原子、該へテロ原子を含む基は、リチウムと配位(結合)し得るからである。
上記錯化剤としては、窒素原子含有化合物が好ましく用いられる。
錯化剤の分子中に存在するヘテロ原子はリチウム原子との親和性が高く、本実施形態により製造される固体電解質の主骨格であるPS構造を含むLiPS並びにハロゲン化リチウム等のリチウム原子及びハロゲン原子を含む原料と結合して錯体を形成しやすい性能を有するものと考えられる。そのため、上記原料と、錯化剤とを混合することにより、前記錯体が形成され、析出工程においても各種成分の分散状態を保持したまま析出させることが可能となり、ハロゲン原子がより均一に分散及び定着した電解質前駆体(以下、リチウム原子、硫黄原子及びリン原子から選ばれる少なくとも一種を含む原料含有物と錯化剤とを混合して得られたものを電解質前駆体とも称する。)が得られるので、結果としてイオン伝導度が高い固体電解質が得られるものと考えられる。
したがって、錯化剤は分子中に少なくとも二つのヘテロ原子を有することが好ましく、分子中に少なくとも二つヘテロ原子を含む基を有することがより好ましい。錯化剤が分子中に少なくとも二つのヘテロ原子を有することで、LiPS並びにハロゲン化リチウム等のリチウム及びハロゲンを含む原料を、分子中の少なくとも二つのヘテロ原子を介して結合させることができる。また、ヘテロ原子の中でも、窒素原子が好ましく、窒素原子を含む基としてはアミノ基が好ましい。すなわち錯化剤としてはアミン化合物が好ましい。
アミン化合物としては、分子中にアミノ基を有するものであれば、錯体の形成を促進し得るので特に制限はないが、分子中に少なくとも二つのアミノ基を有する化合物が好ましい。このような構造を有することで、LiPS並びにハロゲン化リチウム等のリチウム及びハロゲンを含む原料を、分子中の少なくとも易二つの窒素原子を介して結合させることができる。
このようなアミン化合物としては、例えば、脂肪族アミン、脂環式アミン、複素環式アミン、芳香族アミン等のアミン化合物が挙げられ、単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。
より具体的には、脂肪族アミンとしては、エチレンジアミン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン等の脂肪族一級ジアミン;N,N’-ジメチルエチレンジアミン、N,N’-ジエチルエチレンジアミン、N,N’-ジメチルジアミノプロパン、N,N’-ジエチルジアミノプロパン等の脂肪族二級ジアミン;N,N,N’,N’-テトラメチルジアミノメタン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラエチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルジアミノプロパン、N,N,N’,N’-テトラエチルジアミノプロパン、N,N,N’,N’-テトラメチルジアミノブタン、N,N,N’,N’-テトラメチルジアミノペンタン、N,N,N’,N’-テトラメチルジアミノヘキサン等の脂肪族三級ジアミン;などの脂肪族ジアミンが代表的に好ましく挙げられる。ここで、本明細書における例示において、例えばジアミノブタンであれば、特に断りがない限り、1,2-ジアミノブタン、1,3-ジアミノブタン、1,4-ジアミノブタン等のアミノ基の位置に関する異性体の他、ブタンについては直鎖状、分岐状の異性体等の、全ての異性体が含まれるものとする。
脂肪族アミンの炭素数は、好ましくは2以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは6以上であり、上限として好ましくは10以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは7以下である。また、脂肪族アミン中の脂肪族炭化水素基の炭素数は、好ましくは2以上であり、上限として好ましくは6以下、より好ましくは4以下、更に好ましくは3以下である。
脂環式アミンとしては、シクロプロパンジアミン、シクロヘキサンジアミン等の脂環式一級ジアミン;ビスアミノメチルシクロヘキサン等の脂環式二級ジアミン;N,N,N’,N’-テトラメチル-シクロヘキサンジアミン、ビス(エチルメチルアミノ)シクロヘキサン等の脂環式三級ジアミン;などの脂環式ジアミンが代表的に好ましく挙げられ、また、複素環式アミンとしては、イソホロンジアミン等の複素環式一級ジアミン;ピペラジン、ジピペリジルプロパン等の複素環式二級ジアミン;N,N-ジメチルピペラジン、ビスメチルピペリジルプロパン等の複素環式三級ジアミン;などの複素環式ジアミンが代表的に好ましく挙げられる。
脂環式アミン、複素環式アミンの炭素数は、好ましくは3以上、より好ましくは4以上であり、上限として好ましくは16以下、より好ましくは14以下である。
また、芳香族アミンとしては、フェニルジアミン、トリレンジアミン、ナフタレンジアミン等の芳香族一級ジアミン;N-メチルフェニレンジアミン、N,N’-ジメチルフェニレンジアミン、N,N’-ビスメチルフェニルフェニレンジアミン、N,N’-ジメチルナフタレンジアミン、N-ナフチルエチレンジアミン等の芳香族二級ジアミン;N,N-ジメチルフェニレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルフェニレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルジアミノジフェニルメタン、N,N,N’,N’-テトラメチルナフタレンジアミン等の芳香族三級ジアミン;などの芳香族ジアミンが代表的に好ましく挙げられる。
芳香族アミンの炭素数は、好ましくは6以上、より好ましくは7以上、更に好ましくは8以上であり、上限として好ましくは16以下、より好ましくは14以下、更に好ましくは12以下である。
本実施形態で用いられるアミン化合物は、アルキル基、アルケニル基、アルコキシル基、水酸基、シアノ基等の置換基、ハロゲン原子により置換されたものであってもよい。
なお、具体例としてジアミンを例示したが、本実施形態で用いられ得るアミン化合物としては、ジアミンに限らないことは言うまでもなく、イミダゾール、メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、ジエチレントリアミン、N,N’,N’’-トリメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N’’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、N,N’-ビス[(ジメチルアミノ)エチル]-N,N’-ジメチルエチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等のアミノ基を3つ以上有するポリアミンも用いることができる。
錯化剤は、上記の中でも、より高いイオン伝導度を得る観点から、アミノ基として第3級アミノ基を有する3級アミンであることが好ましく、二つの第3級アミノ基を有する3級ジアミンであることがより好ましく、二つの第3級アミノ基を両末端に有する3級ジアミンが更に好ましく、第3級アミノ基を両末端に有する脂肪族3級ジアミンがより更に好ましい。上記のアミン化合物において、3級アミノ基を両末端に有する脂肪族3級ジアミンとしては、テトラメチルエチレンジアミン、テトラエチルエチレンジアミン、テトラメチルジアミノプロパン、テトラエチルジアミノプロパンが好ましく、入手の容易性等も考慮すると、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチルジアミノプロパンが好ましい。
また、ヘテロ原子として窒素原子を含む、アミノ基以外の基、例えばニトロ基、アミド基等の基を有する化合物も、これと同様の効果が得られる。
[溶媒]
本実施形態においては、原料及び錯化剤を混合する際、さらに溶媒を加えることができる。
液体である錯化剤中において固体である錯体が形成される際、錯体が錯化剤に溶解しやすいものであると、成分の分離が生じる場合がある。そこで、錯体が溶解しない溶媒を使用することで、電解質前駆体中の成分の溶出を抑えることができる。また、溶媒を用いて原料及び錯化剤を混合することで、錯体形成が促進され、各主成分をより満遍なく存在させることができ、ハロゲン元素がより分散して定着した電解質前駆体が得られるので、結果として高いイオン伝導度が得られるという効果が発揮されやすくなる。
本実施形態の固体電解質の製造方法は、いわゆる不均一法であり、錯体は、液体である錯化剤に対して完全に溶解せず析出することが好ましい。溶媒を加えることによって錯体の溶解性を調整することができる。特にハロゲン元素は錯体から溶出しやすいため、溶媒を加えることによってハロゲン元素の溶出を抑えて所望の錯体が得られる。その結果、ハロゲン等の成分が分散した電解質前駆体を経て、高いイオン伝導度を有する結晶性固体電解質を得ることができる。
このような性状を有する溶媒としては、溶解度パラメータが10以下の溶媒が好ましく挙げられる。本明細書において、溶解度パラメータは、各種文献、例えば「化学便覧」(平成16年発行、改定5版、丸善株式会社)等に記載されており、以下の数式(1)により算出される値δ((cal/cm1/2)であり、ヒルデブランドパラメータ、SP値とも称される。

(数式(1)中、ΔHはモル発熱であり、Rは気体定数であり、Tは温度であり、Vはモル体積である。)
溶解度パラメータが10以下の溶媒を用いることにより、上記の錯化剤に比べて相対的にハロゲン元素、ハロゲン化リチウム等のハロゲン元素を含む原料、更には錯体に含まれる共結晶を構成するハロゲン元素を含む成分(例えば、ハロゲン化リチウムと錯化剤とが結合した集合体)等が溶解しにくい状態とすることができ、錯体中にハロゲン元素を定着させやすくなり、得られる電解質前駆体、更には固体電解質中に良好な分散状態でハロゲン元素が存在することとなり、高いイオン伝導度を有する固体電解質が得られやすくなる。すなわち、本実施形態で用いられる溶媒は、錯体が溶解しない性質を有することが好ましい。これと同様の観点から、溶媒の溶解度パラメータは、好ましくは9.5以下、より好ましくは9.0以下、更に好ましくは8.5以下である。
本実施形態で用いられる溶媒としては、より具体的には、固体電解質の製造において従来より用いられてきた溶媒を広く採用することが可能であり、例えば、脂肪族炭化水素溶媒、脂環族炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒等の炭化水素溶媒;アルコール系溶媒、エステル系溶媒、アルデヒド系溶媒、ケトン系溶媒、片側の炭素数が4以上のエーテル系溶媒、炭素原子とヘテロ原子元素を含む溶媒等の炭素原子含む溶媒;等が挙げられ、これらの中から、好ましくは溶解度パラメータが上記範囲であるものから、適宜選択して用いればよい。
より具体的には、ヘキサン(7.3)、ペンタン(7.0)、2-エチルヘキサン、ヘプタン(7.4)、オクタン(7.5)、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン等の脂肪族炭化水素溶媒;シクロヘキサン(8.2)、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素溶媒;ベンゼン、トルエン(8.8)、キシレン(8.8)、メシチレン、エチルベンゼン(8.8)、tert-ブチルベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン、ニトロベンゼン、クロロベンゼン(9.5)、クロロトルエン(8.8)、ブロモベンゼン等の芳香族炭化水素溶媒;エタノール(12.7)、ブタノール(11.4)等のアルコール系溶媒;ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド(10.3)、ジメチルホルムアミド(12.1)等のアルデヒド系溶媒、アセトン(9.9)、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル(8.4)、tert-ブチルメチルエーテル、アニソール等のエーテル系溶媒;アセトニトリル(11.9)、ジメチルスルホキシド、二硫化炭素等の炭素原子とヘテロ原子を含む溶媒等が挙げられる。なお、上記例示における括弧内の数値はSP値である。
これらの溶媒の中でも、脂肪族炭化水素溶媒、脂環族炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒、エーテル系溶媒が好ましく、より安定して高いイオン伝導度を得る観点から、ヘプタン、シクロヘキサン、トルエン、エチルベンゼン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジメトキシエタン、シクロペンチルメチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、アニソールがより好ましく、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテルが更に好ましく、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテルがより更に好ましく、特にシクロヘキサンが好ましい。本実施形態で用いられる溶媒は、好ましくは上記例示した有機溶媒であり、上記の錯化剤と異なる有機溶媒である。本実施形態においては、これらの溶媒を単独で、又は複数種を組み合わせて用いてもよい。
[混合]
本実施形態においては、リチウム原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子を含む原料含有物と錯化剤とを混合して、電解質前駆体を得る。本実施形態において原料及び錯化剤を混合する形態は固体状、液状のいずれであってもよいが、通常原料は固体を含んでおり、錯化剤は液状であるため、通常液状の錯化剤中に固体の原料が存在する形態で混合する。また、原料と錯化剤を混合する際、必要に応じてさらに溶媒を混合しても良い。以下、原料及び錯化剤の混合について説明する箇所においては、特に断りが無い場合、必要に応じてさらに溶媒も混合してもよいものとする。
原料及び錯化剤の混合方法に特段の制限はなく、原料及び錯化剤を混合できる装置に、原料及び錯化剤を投入して混合すればよい。例えば、錯化剤を槽内に供給し、撹拌翼を作動させた後に、原料を徐々に加えていくと、原料の良好な混合状態が得られ、原料の分散性が向上するため、好ましい。
ただし、原料としてハロゲン単体を用いる場合、原料が固体ではない場合があり、具体的には常温常圧下において、フッ素及び塩素は気体、臭素は液体となる。このような場合、例えば原料が液体の場合は、他の固体の原料とは別に錯化剤とともに槽内に供給すればよく、また原料が気体の場合は、錯化剤に固体の原料を加えたものに吹き込むように供給すればよい。
本実施形態の固体電解質の製造方法においては、原料と錯化剤とを混合することを含むことを特徴としており、当該混合は撹拌機によって行ってもよく、ボールミル、ビーズミル等の媒体式粉砕機等の、一般に粉砕機と称される固体原料の粉砕を目的として用いられる機器によって行ってもよく、撹拌機と粉砕機の両方を用いて行ってもよい。本実施形態の固体電解質の製造方法では、撹拌機を用いて原料と錯化剤とを単に混合するだけで錯体を形成することができるが、錯体を得るための混合時間を短縮したり、微粉化したりするために、原料と錯化剤との混合物を粉砕機によって粉砕してもよい。
上記撹拌機の具体例としては、例えば槽内に撹拌翼を備える機械撹拌式混合機が挙げられる。機械撹拌式混合機は、高速撹拌型混合機、双腕型混合機等が挙げられ、原料と錯化剤との混合物中の原料の均一性を高め、より高いイオン伝導度を得る観点から、高速撹拌型混合機が好ましく用いられる。また、高速撹拌型混合機としては、垂直軸回転型混合機、水平軸回転型混合機等が挙げられ、どちらのタイプの混合機を用いてもよい。
機械撹拌式混合機において用いられる撹拌翼の形状としては、アンカー型、ブレード型、アーム型、リボン型、多段ブレード型、二連アーム型、ショベル型、二軸羽型、フラット羽根型、C型羽根型等が挙げられ、原料中の原料の均一性を高め、より高いイオン伝導度を得る観点から、ショベル型、フラット羽根型、C型羽根型等が好ましい。また、機械撹拌式混合機においては攪拌対象を混合機外部に排出してから再び混合機内部に戻す循環ラインを設置してもよい。これにより、ハロゲン化リチウム等の比重が重い原料が沈降・滞留することなく攪拌され、より均一な混合が可能となる。
循環ラインの設置個所は特に限定されないが、混合機の底から排出して混合機の上部に戻すような箇所に設置されることが好ましい。こうすることで、沈降しやすい原料を循環による対流に乗せて均一に攪拌しやすくなる。さらに、戻り口が攪拌対象の液面下に位置していることが好ましい。こうすることで、攪拌対象が液跳ねして混合機内部の壁面に付着することを抑制することができる。
原料と錯化剤とを混合する際の温度条件としては、特に制限はなく、例えば-30~100℃、好ましくは-10~50℃、より好ましくは室温(23℃)程度(例えば室温±5℃程度)である。また混合時間は、0.1~150時間程度、より均一に混合し、より高いイオン伝導度を得る観点から、好ましくは1~120時間、より好ましくは4~100時間、更に好ましくは8~80時間である。
原料と錯化剤とを混合することで、上記の原料に含まれるリチウム元素、硫黄元素、リン元素及びハロゲン元素と錯化剤との作用により、これらの元素が錯化剤を介して及び/又は介さずに直接互いに結合した錯体が得られる。すなわち、本実施形態の固体電解質の製造方法において、原料と錯化剤とを混合して得られる錯体は、錯化剤、リチウム元素、硫黄元素、リン元素及びハロゲン元素により構成されるものである。本実施形態において得られる錯体は、液体である錯化剤に対して完全に溶解するものではなく、通常、固体であるため、本実施形態においては、錯体及び必要に応じて添加される溶媒中に錯体が懸濁した懸濁液が得られる。したがって、本実施形態の固体電解質の製造方法は、いわゆる液相法における不均一系に相当する。
[錯化剤の除去]
本実施形態の硫化物固体電解質の製造方法は、上述のようにして得られた電解質前駆体より錯化剤を除去して錯分解物を得る。これにより錯分解物の粉末が得られる。
錯化剤の除去は、錯体に残存する錯化剤及び溶媒の種類に応じた温度で行うことができる。錯化剤を除去する際の温度条件は、通常5~100℃であり、好ましくは10~85℃であり、より好ましくは15~70℃であり、より更に好ましくは室温(23℃)程度(例えば室温±5℃程度)であり、真空ポンプ等を用いて減圧乾燥(真空乾燥)して、錯化剤及び溶媒を揮発させて行うことができる。
なお、溶媒は錯化剤と異なり錯体に取り込まれにくいため、錯体中に含まれ得る溶媒は、通常3質量%以下であり、2質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましい。
また、乾燥は、ガラスフィルター等を用いたろ過、デカンテーションによる固液分離、また遠心分離機等を用いた固液分離により行ってもよい。本実施形態においては、固液分離を行った後、上記の温度条件による乾燥を行ってもよい。
固液分離は、具体的には、前記懸濁液を容器に移し、固体が沈殿した後に、上澄みとなる錯化剤及び必要に応じて添加される溶媒を除去するデカンテーション、また例えばポアサイズが10~200μm程度、好ましくは20~150μmのガラスフィルターを用いたろ過が容易である。
前記錯体は、錯化剤、リチウム元素、硫黄元素、リン元素及びハロゲン元素により構成され、X線回折測定においてX線回折パターンに、原料由来のピークとは異なるピークが観測される、という特徴を有するものであり、好ましくは錯化剤、リチウム元素、硫黄元素、リン元素及びハロゲン元素により構成される共結晶を含むものである。単に原料のみを混合しただけでは、原料由来のピークが観測されるだけであり、原料と錯化剤とを混合することにより、原料由来のピークとは異なるピークが観測されることから、錯体(共結晶)は、原料に含まれる原料自体とは明らかに異なる構造を有するものである。
[錯分解物の加熱]
本実施形態の硫化物固体電解質の製造方法においては、錯分解物を加熱して結晶性固体電解質を得る。錯分解物を加熱することで、錯分解物中の錯化剤が除去され、リチウム元素、硫黄元素、リン元素及びハロゲン元素を含む結晶性固体電解質が得られる。ここで、錯分解物中の錯化剤が除去されることについては、X線回折パターン、ガスクロマトグラフィー分析等の結果から錯化剤が電解質前駆体の共結晶を構成していることが明らかであることに加え、錯分解物を加熱することで錯化剤を除去して得られた結晶性錯分解物が、錯化剤を用いずに従来の方法により得られた固体電解質とX線回折パターンが同じであることにより裏づけされる。
本実施形態の製造方法において、硫化物固体電解質は、錯分解物を加熱することにより、該錯分解物中の錯化剤を除去して得られ、固体電解質中の錯化剤は少ないほど好ましいものであるが、固体電解質の性能を害さない程度に錯化剤が含まれていてもよい。固体電解質中の錯化剤の含有量は、通常10質量%以下となっていればよく、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である。
錯分解物の加熱温度は、結晶性固体電解質の構造に応じて決定すればよく、具体的には、錯分解物を、示差熱分析装置(DTA装置)を用いて、10℃/分の昇温条件で示差熱分析(DTA)を行い、最も低温側で観測される発熱ピークのピークトップの温度を起点に、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは20℃以上の範囲とすればよく、上限としては特に制限はないが、40℃以下程度とすればよい。このような温度範囲とすることで、より効率的かつ確実に結晶性固体電解質が得られる。結晶性固体電解質を得るための加熱温度としては、得られる結晶性固体電解質の構造に応じてかわるため一概に規定することはできないが、通常、130℃以上が好ましく、135℃以上がより好ましく、140℃以上が更に好ましく、上限としては特に制限はないが、好ましくは300℃以下、より好ましくは280℃以下、更に好ましくは250℃以下である。
加熱時間は、所望の非晶性固体電解質、結晶性固体電解質が得られる時間であれば特に制限されるものではないが、例えば、1分間以上が好ましく、10分以上がより好ましく、30分以上が更に好ましく、1時間以上がより更に好ましい。また、加熱時間の上限は特に制限されるものではないが、24時間以下が好ましく、10時間以下がより好ましく、5時間以下が更に好ましく、3時間以下がより更に好ましい。
また、加熱は、不活性ガス雰囲気(例えば、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気)、または減圧雰囲気(特に真空中)で行うことが、結晶性固体電解質の劣化(例えば、酸化)を防止する観点で好ましい。加熱の方法は、特に制限されるものではないが、例えば、ホットプレート、真空加熱装置、アルゴンガス雰囲気炉、焼成炉を用いる方法等を挙げることができる。また、工業的には、加熱手段と送り機構を有する横型乾燥機、横型振動流動乾燥機等を用いることもでき、加熱する処理量に応じて選択すればよい。
[機械的処理]
本実施形態の固体電解質の製造方法においては、上述のようにして得られた結晶性錯分解物に対して、積算エネルギー量10Wh/kg以上500Wh/kg未満の機械的処理を加えることで、解砕処理して解砕処理物を得る。当該機械的処理における積算エネルギー量が10Wh/kg未満であると、得られる硫化物固体電解質の吸油量が多くなってしまい、500Wh/kg以上であると、得られる硫化物固体電解質の比表面積が小さくなってしまう。上記積算エネルギー量は、好ましくは20Wh/kg以上420Wh/kg以下であり、より好ましくは40Wh/kg以上380Wh/kg以下である。
上記積算エネルギーは、以下のようにして求めることができる。
(積算エネルギーの求め方)
積算エネルギーE(単位:Wh/kg)は、結晶性錯分解物を含まない際の各機械の空動力平均をP(単位:W)、各機械にて結晶性錯分解物を処理する際に要した瞬時動力平均をP(単位:W)、総処理時間をt(単位:h)、処理する結晶性錯分解物の総重量をM(単位:kg)とすると、下式にて求められる。
E=(P-P)×t/M
結晶性錯分解物の機械的処理の方法としては、粉砕機、撹拌機等の装置を用いた方法が挙げられる。
撹拌機としては、例えば槽内に撹拌翼を備える機械撹拌式混合機が挙げられる。機械撹拌式混合機としては、高速撹拌型混合機、双腕型混合機等が挙げられ、いずれのタイプのものも採用できるが、より容易に所望のモルフォロジーを調整する観点から、高速撹拌型混合機が好ましい。高速撹拌型混合機としては、より具体的には、垂直軸回転型混合機、水平軸回転型混合機、高速旋回薄膜型撹拌機、高速せん断型撹拌機等が挙げられる。中でも、より容易に所望のモルフォロジーを調整する観点から、高速旋回薄膜型撹拌機(「薄膜旋回型高速ミキサー」等とも称される。)が好ましい。
上記粉砕機としては、少なくともレーザー回折式粒度分布測定方法により測定される体積基準の平均粒径が1μm以上、BET法により測定される比表面積が20m/g以上である固体電解質を撹拌し得る回転体を有する粉砕機が挙げられる。
回転体の周速については、例えば粉砕機で使用する媒体の粒径、材質、使用量等によって変わり得るため一概に規定することはできない。例えば、高速旋回薄膜型撹拌機のようにボールやビーズの粉砕媒体を用いない装置の場合には、比較的高周速であっても主として解砕が起こり、造粒は起きにくい。一方、ボールミルやビーズミルのような粉砕媒体を用いる装置の場合には、既述のとおり低周速で解砕できる。
また、粉砕機として、より具体的な装置としては、例えば媒体式粉砕機が挙げられる。媒体式粉砕機は、容器駆動式粉砕機、媒体撹拌式粉砕機に大別される。
容器駆動式粉砕機としては、撹拌槽、粉砕槽、あるいはこれらを組み合わせたボールミル、ビーズミル等が挙げられる。ボールミル、ビーズミルとしては、回転型、転動型、振動型、遊星型等の各種形式のいずれも採用することができる。
また、媒体撹拌式粉砕機としては、カッターミル、ハンマーミル、ピンミル等の衝撃式粉砕機;タワーミルなどの塔型粉砕機;アトライター、アクアマイザー、サンドグラインダー等の撹拌槽型粉砕機;ビスコミル、パールミル等の流通槽型粉砕機;流通管型粉砕機;コボールミル等のアニュラー型粉砕機;連続式のダイナミック型粉砕機;などの各種粉砕機が挙げられる。
結晶性錯分解物の機械的処理においては、より容易に所望のモルフォロジーを調整する観点から、容器駆動式粉砕機を用いることが好ましく、中でもビーズミル、ボールミルが好ましい。ビーズミル、ボールミルといった容器駆動式粉砕機では、結晶性錯分解物を撹拌し得る回転体と、当該結晶性錯分解物を収納する撹拌槽、粉砕槽といった容器を備えており、当該回転体の周速の調整により、容易に機械的処理によって加える積算エネルギー量を調整することができる。
ビーズミル、ボールミル等に用いられるビーズ、ボール等の媒体の粒径としては、所望のモルフォロジーとともに、使用する装置の種類、規模等を考慮して適宜決定すればよいが、通常好ましくは0.01mm以上、より好ましくは0.015mm以上、更に好ましくは0.02mm以上、より更に好ましくは0.04mm以上であり、上限として好ましくは3mm以下、より好ましくは2mm以下、更に好ましくは1mm以下、より更に好ましくは0.8mm以下である。
また媒体の材質としては、例えば、ステンレス、クローム鋼、タングステンカーバイド等の金属;ジルコニア、窒化ケイ素等のセラミックス;メノウ等の鉱物等が挙げられる。
機械的処理の処理時間は、所望のモルフォロジーとともに、使用する装置の種類、規模等を考慮して適宜決定すればよいが、通常好ましくは5秒以上、より好ましくは30秒以上、更に好ましくは3分以上、より更に好ましくは15分以上であり、上限として好ましくは5時間以下、より好ましくは3時間以下、更に好ましくは2時間以下、より更に好ましくは1.5時間以下である。
機械的処理における回転体の周速(ビーズミル、ボールミル等の装置における回転速度)は、所望のモルフォロジーとともに、使用する装置の種類、規模等を考慮して適宜決定すればよいが、通常好ましくは0.5m/s以上、より好ましくは1m/s以上、更に好ましくは2m/s以上、より更に好ましくは3m/s以上であり、上限として好ましくは55m/s以下、より好ましくは40m/s以下、更に好ましくは25m/s以下、より更に好ましくは15m/s以下である。また、周速は同じであってもよいし、途中でかえることもできる。
機械的処理は、溶媒中で行うことができる。溶媒としては、所定の平均粒径及び比表面積とともに、より安定して高いイオン伝導度を得る観点から、脂肪族炭化水素溶媒、脂環族炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒、エーテル系溶媒が好ましく、ヘプタン、シクロヘキサン、トルエン、エチルベンゼン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジメトキシエタン、シクロペンチルメチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、アニソールがより好ましく、ヘプタン、トルエン、エチルベンゼンが更に好ましく、ヘプタン、トルエンがより更に好ましい。
機械的処理に用いる溶媒は、酸素原子含有化合物を含むことが好ましく、エーテル化合物を含むことがより好ましく、また、さらに炭化水素化合物を含有することが好ましい。
上記溶媒は、さらに具体的には、炭化水素化合物50~99.5質量%と、酸素原子含有化合物0.5~50質量%を含有することが好ましく、炭化水素化合物70~95質量%と、酸素原子含有化合物5.0~30質量%を含有することがより好ましく、炭化水素化合物80~92質量%と、酸素原子含有化合物8.0~20質量%を含有することがさらに好ましい。
溶媒の使用量は、結晶性錯分解物と溶媒との合計量に対する結晶性錯分解物の量が、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは8質量%以上、上限として好ましくは30質量%以下、より好ましくは23質量%以下、更に好ましくは18質量%以下となるような量とすればよい。
本実施態様の製造方法においては、結晶性錯分解物の機械的処理後の解砕処理物には、結晶化のための熱処理は原則不要である。ただし、機械的処理のエネルギーは比較的小さいものの、結晶性錯分解物の一部又は全部がガラス化(非晶化)する場合がある。この場合は、結晶性錯分解物を再度結晶化させるために加熱を行ってもよい。すなわち、本実施形態においては、結晶性錯分解物の機械的処理後の解砕処理物に、加熱することを含んでもよい。
本実施形態の製造方法によって得られる結晶性固体電解質は、粗粒を粉砕して新生面が露出したような一次粒子とは異なり、化学的に安定な一次粒子が集まったモルフォロジーを有しているため、結晶化における造粒が比較的抑えられる。
上記解砕処理物より溶媒を除去する方法は、前述の電解質前駆体より錯化剤を除去する方法と同様にして行うことができるが、粒子径分布を維持する観点からは、室温(23℃)程度(例えば室温±5℃程度)で、真空ポンプ等を用いて減圧乾燥(真空乾燥)して、溶媒を揮発させて行うことが好ましい。
[硫化物固体電解質]
本実施形態の硫化物固体電解質の製造方法により得られる硫化物固体電解質としては、リチウム元素、硫黄元素、リン元素及びハロゲン元素を含んでおり、代表的なものとしては、例えば、LiS-P-LiI、LiS-P-LiCl、LiS-P-LiBr、LiS-P-LiI-LiBr等の、硫化リチウムと硫化リンとハロゲン化リチウムとから構成される固体電解質;更に酸素元素、珪素元素等の他の元素を含む、例えば、LiS-P-LiO-LiI、LiS-SiS-P-LiI等の固体電解質が好ましく挙げられる。より高いイオン伝導度を得る観点から、LiS-P-LiI、LiS-P-LiCl、LiS-P-LiBr、LiS-P-LiI-LiBr等の、硫化リチウムと硫化リンとハロゲン化リチウムとから構成される固体電解質が好ましい。
硫化物固体電解質を構成する元素の種類は、例えば、ICP発光分光分析装置により確認することができる。
本実施形態の硫化物固体電解質の製造方法により得られる結晶性固体電解質は、非晶質固体電解質を結晶化温度以上に加熱して得られる、いわゆるガラスセラミックスであってもよく、その結晶構造としては、LiPS結晶構造、Li結晶構造、LiPS結晶構造、Li11結晶構造、2θ=20.2°近傍及び23.6°近傍にピークを有する結晶構造(例えば、特開2013-16423号公報)等が挙げられる。
Li4-xGe1-x系チオリシコンリージョンII(thio-LISICON Region II)型結晶構造(Kannoら、Journal of The Electrochemical Society,148(7)A742-746(2001)参照)、Li4-xGe1-x系チオリシコンリージョンII(thio-LISICON Region II)型と類似の結晶構造(Solid State Ionics,177(2006),2721-2725参照)等も挙げられる。本実施形態の硫化物固体電解質の製造方法により得られる結晶性固体電解質の結晶構造は、より高いイオン伝導度が得られる点で、上記の中でもチオリシコンリージョンII型結晶構造であることが好ましい。ここで、「チオリシコンリージョンII型結晶構造」は、Li4-xGe1-x系チオリシコンリージョンII(thio-LISICON Region II)型結晶構造、Li4-xGe1-x系チオリシコンリージョンII(thio-LISICON Region II)型と類似の結晶構造のいずれかであることを示す。
また、本実施形態の製造方法で得られる結晶性固体電解質は、上記チオリシコンリージョンII型結晶構造を含むものであってもよいし、主結晶としてこれを含むものであってもよいが、より高いイオン伝導度を得る観点から、主結晶として含むものであることが好ましい。本明細書において、「主結晶として含む」とは、結晶構造のうち対象となる結晶構造の割合が80%以上であることを意味し、90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。また、本実施形態の製造方法により得られる結晶性固体電解質は、より高いイオン伝導度を得る観点から、結晶性LiPS(β-LiPS)を含まないものであることが好ましい。
CuKα線を用いたX線回折測定において、LiPS結晶構造の回折ピークは、例えば2θ=17.5°、18.3°、26.1°、27.3°、30.0°付近に現れ、Li結晶構造の回折ピークは、例えば2θ=16.9°、27.1°、32.5°付近に現れ、LiPS結晶構造の回折ピークは、例えば2θ=15.3°、25.2°、29.6°、31.0°付近に現れ、Li11結晶構造の回折ピークは、例えば2θ=17.8°、18.5°、19.7°、21.8°、23.7°、25.9°、29.6°、30.0°付近に現れ、Li4-xGe1-x系チオリシコンリージョンII(thio-LISICON Region II)型結晶構造の回折ピークは、例えば2θ=20.1°、23.9°、29.5°付近に現れ、Li4-xGe1-x系チオリシコンリージョンII(thio-LISICON Region II)型と類似の結晶構造の回折ピークは、例えば2θ=20.2、23.6°付近に現れる。なお、これらのピーク位置については、±0.5°の範囲内で前後していてもよい。
上記のLiPSの構造骨格を有し、Pの一部をSiで置換してなる組成式Li7-x1-ySi及びLi7+x1-ySi(xは-0.6~0.6、yは0.1~0.6)で示される結晶構造は、立方晶又は斜方晶、好ましくは立方晶で、CuKα線を用いたX線回折測定において、主に2θ=15.5°、18.0°、25.0°、30.0°、31.4°、45.3°、47.0°、及び52.0°の位置に現れるピークを有する。上記の組成式Li7-x-2yPS6-x-yCl(0.8≦x≦1.7、0<y≦-0.25x+0.5)で示される結晶構造は、好ましくは立方晶で、CuKα線を用いたX線回折測定において、主に2θ=15.5°、18.0°、25.0°、30.0°、31.4°、45.3°、47.0°、及び52.0°の位置に現れるピークを有する。また、上記の組成式Li7-xPS6-xHa(HaはClもしくはBr、xが好ましくは0.2~1.8)で示される結晶構造は、好ましくは立方晶で、CuKα線を用いたX線回折測定において、主に2θ=15.5°、18.0°、25.0°、30.0°、31.4°、45.3°、47.0°、及び52.0°の位置に現れるピークを有する。
なお、これらのピーク位置については、±0.5°の範囲内で前後していてもよい。
本実施形態の硫化物固体電解質の製造方法において得られる硫化物固体電解質が、少なくともLiS-Pを有するものである場合、硫化リチウム及び五硫化二リンの合計に対する硫化リチウムの割合は、より高い化学的安定性及びより高いイオン伝導度を得る観点から、70~80mol%が好ましく、72~78mol%がより好ましく、74~78mol%が更に好ましい。
また、硫化物固体電解質が、硫化リチウム、五硫化二リン、ハロゲン化リチウム及び必要に応じて用いられる他の原料を含有する場合、これらの合計に対する硫化リチウム及び五硫化二リンの含有量は、50~100mol%が好ましく、55~85mol%がより好ましく、60~75mol%が更に好ましい。
また、硫化物固体電解質が、ハロゲン化リチウムとして、臭化リチウムとヨウ化リチウムとを含有する場合、イオン伝導度を向上させる観点から、臭化リチウム及びヨウ化リチウムの合計に対する臭化リチウムの割合は、1~99mol%が好ましく、20~80mol%がより好ましく、30~70mol%が更に好ましく、40~60mol%が特に好ましい。
本実施形態の固体電解質の製造方法において得られる硫化物固体電解質において、リチウム元素、硫黄元素、リン元素及びハロゲン元素の配合比(モル比)は、1.0~1.8:1.0~2.0:0.1~0.8:0.01~0.6が好ましく、1.1~1.7:1.2~1.8:0.2~0.6:0.05~0.5がより好ましく、1.2~1.6:1.3~1.7:0.25~0.5:0.08~0.4が更に好ましい。また、ハロゲン元素として、臭素及びヨウ素を併用する場合、リチウム元素、硫黄元素、リン元素、臭素、及びヨウ素の配合比(モル比)は、1.0~1.8:1.0~2.0:0.1~0.8:0.01~0.3:0.01~0.3が好ましく、1.1~1.7:1.2~1.8:0.2~0.6:0.02~0.25:0.02~0.25がより好ましく、1.2~1.6:1.3~1.7:0.25~0.5:0.03~0.2:0.03~0.2がより好ましく、1.35~1.45:1.4~1.7:0.3~0.45:0.04~0.18:0.04~0.18が更に好ましい。リチウム元素、硫黄元素、リン元素及びハロゲン元素の配合比(モル比)を上記範囲内とすることにより、後述するチオリシコンリージョンII型結晶構造を有する、より高いイオン伝導度の固体電解質が得られやすくなる。
本実施形態の製造方法により得られる硫化物固体電解質は、リチウム原子、硫黄原子、リン原子、ハロゲン原子、及び0.01~1.0質量%の錯化剤を含有し、かつ、レーザー回折散乱式粒度分布測定法における累積体積50%の粒径(D50)が0.10μm以上0.50μm未満であり、かつ、累積体積10%の粒径(D10)が0.05μm以上0.15μm未満である。
本実施形態の硫化物固体電解質の、レーザー回折散乱式粒度分布測定法における累積体積10%の粒径(D10)、累積体積50%の粒径(D50)及び累積体積90%の粒径(D90)の好適な範囲は、以下に示す通りである。
硫化物固体電解質の累積体積10%の粒径(D10)は、好ましくは0.05μm以上0.12μm以下であり、より好ましくは0.06μm以上0.10μm以下である。
硫化物固体電解質の累積体積50%の粒径(D50)は、好ましくは0.10μm以上0.30μm以下であり、より好ましくは0.11μm以上0.25μm以下であり、さらに好ましくは0.11μm以上0.20μm以下である。
硫化物固体電解質の累積体積90%の粒径(D90)は、好ましくは0.10μm以上10.0μm未満であり、より好ましくは0.40μm以上7.00μm以下であり、さらに好ましくは0.60μm以上3.00μm以下である。
ここで、累積体積50%の粒径(D50)とは、粒子径分布積算曲線を描いた時に粒子径の最も小さい粒子から順次積算して全体の50%に達するところの粒子径であり、累積体積10%の粒径(D10)及び累積体積90%の粒径(D90)についても同様である。
さらに、本実施形態の硫化物固体電解質は、BET法により測定される比表面積(本明細書において、単に「比表面積」と称することがある。)が20~50m/gであることが好ましく、25~40m/gであることがより好ましい。
比表面積の具体的な測定方法としては、実施例において用いられている方法が挙げられる。
本実施形態の硫化物固体電解質は、その製造方法に由来して、上述の錯化剤が残留したものとなる。従って、例えば錯化剤として第3級アミノ基を有する化合物等の窒素原子含有化合物を用いた場合、窒素原子含有化合物を含有するものとなり、その含有量は例えば0.01~1.0質量%である。
本実施形態の硫化物固体電解質は、その製造方法に由来して、上述の解砕処理時の溶媒が残留したものとなる。従って、例えば溶媒として酸素原子含有化合物を用いた場合、0.01~0.5質量%の酸素原子含有化合物を含有するものとなる。
[硫化物固体電解質混合物]
本実施形態に係る硫化物固体電解質混合物は、上述の硫化物固体電解質と、レーザー回折散乱式粒度分布測定法における累積体積50%の粒径(D50)が0.50μm以上の他の硫化物固体電解質とを含有するものである。
上記他の硫化物固体電解質としては、特に限定されないが、例えば上述の本実施形態の固体電解質の製造方法における錯分解物や、結晶性錯分解物を用いることができる。
次に実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら制限されるものではない。
実施例1~3及び比較例1~2における粒径、吸油量、比表面積、残留錯化剤量の測定は、以下のようにして行った。
(粒径の測定)
累積体積10%の粒径(D10)、累積体積50%の粒径(D50)及び累積体積90%の粒径(D90)は、以下のようにして得た粒子径分布積算曲線より求めた。
レーザー回折散乱式粒子径分布測定装置(HORIBA製、LA-950V2モデルLA-950S2)で測定した。
脱水処理されたトルエン(和光純薬製、特級)を分散媒として用いた。装置のフローセル内に分散媒を50mL注入し、循環させた後、測定対象を添加して超音波処理した後、粒子径分布を測定した。
(吸油量の測定)
実施例及び比較例で得られた結晶性固体電解質1gを試料とし、メノウ乳鉢において、スポイトを用いて酪酸ブチルを1滴添加してはスパチュラで撹拌する操作を行い、試料がペースト状になるまで当該操作を繰り返し、添加した酪酸ブチルの合計量を吸油量(mL/g)とした。
(比表面積)
JIS R 1626:1996に準じて、吸着質として窒素ガスを用いたBET流動法(3点法)で測定した。
(残留錯化剤量)
ガスクロマトグラフ(Agilent社製の6890型)で測定した。
(実施例1)
1リットルの撹拌翼付き反応槽に、窒素雰囲気下で硫化リチウム13.19g、五硫化二リン21.26g、臭化リチウム4.15g及びヨウ化リチウム6.40gを導入した。これに、錯化剤としてテトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)100mL、溶媒としてシクロヘキサン800mLを加えて、撹拌翼を作動させて、撹拌による混合を行った。循環運転可能なビーズミル(「ラボスターミニLMZ015(商品名)」、アシザワ・ファインテック株式会社製)に、ジルコニアボール(直径:0.5mmφ)を456g(粉砕室に対するビーズ充填率:80%)仕込み、上記反応槽と粉砕室との間を、ポンプ流量:550mL/min、周速:8m/s、ミルジャケット温度:20℃の条件で循環させながら、60分の粉砕を行い、錯体スラリーを得た。次いで、得られた錯体スラリーを、直ちに真空下で室温(23℃)にて乾燥し、粉末の錯体を得た。得られた錯体を110℃、減圧下で6時間乾燥を行い、非晶性の錯分解物を得た。次いで減圧下160℃で2時間の加熱を行い、結晶性の錯分解物を得た。
得られた錯分解物について粉末XRD回折の測定を行った。その結果を図6に示す。
次いで、攪拌翼付き反応槽に、上記で得られた結晶性の錯分解物を80g導入し、ヘプタン740mLとジイソプロピルエーテル(DiPE)110mLを加え10分攪拌し、スラリーを得た。得られたスラリーを、循環運転可能なビーズミル(「ラボスターミニLMZ015(商品名)」、アシザワ・ファインテック株式会社製)を用いて所定条件(ビーズ直径:0.3mmΦ、ビーズ使用量:456g(粉砕室に対するビーズ充填量:80%)、ポンプ流量:400mL/min、周速3m/s)で循環させながら30分解砕処理を行った。
さらに、解砕処理したスラリーを真空下で室温(23℃)にて乾燥して、解砕した固体電解質粉末を得た。得られた固体電解質粉末について、走査型顕微鏡(SEM)を用いて撮影した(図7)
(実施例2)
実施例1と同様の方法にて結晶性の錯分解物を得た。
次いで、攪拌翼付き反応槽に、上記で得られた結晶性の錯分解物を100g導入し、ヘプタン2144mLとジイソプロピルエーテル(DiPE)138mLを加え10分攪拌し、スラリーを得た。得られたスラリーを、循環運転可能なビーズミル(「MAXナノ・ゲッター(商品名)」、アシザワ・ファインテック株式会社製)を用いて所定条件(ビーズ直径:0.05mmΦ、ビーズ使用量:1573g(粉砕室に対するビーズ充填量:65%)、ポンプ流量:1000mL/min、周速6m/s)でパス運転により3分解砕処理を行った。
さらに、解砕処理したスラリーを真空下で室温(23℃)にて乾燥して、解砕した固体電解質粉末を得た。
(実施例3)
実施例1と同様の方法にて結晶性の錯分解物を得た。
次いで、攪拌翼付き反応槽に上記で得られた結晶性の錯分解物を200g導入し、攪拌機「スーパーミキサーピッコロ(商品名)」、株式会社カワタ製を用いて、所定条件(上羽根:V型、下羽根:D型、回転数2000rpm)で60分解砕処理を行い、解砕した固体電解質粉末を得た。
(比較例1)
実施例1と同様の方法にて得られた結晶性の錯分解物をそのまま比較対象として各種測定を行った。得られた固体電解質粉末について、走査型顕微鏡(SEM)を用いて撮影した(図8)
(比較例2)
実施例1と同様の方法にて結晶性の錯分解物を得た。
次いで、攪拌翼付き反応槽に、上記で得られた結晶性の錯分解物を80g導入し、ヘプタン740mLとジイソプロピルエーテル(DiPE)110mLを加え10分攪拌し、スラリーを得た。得られたスラリーを、循環運転可能なビーズミル(「ラボスターミニLMZ015(商品名)」、アシザワ・ファインテック株式会社製)を用いて所定条件(ビーズ直径:0.3mmΦ、ビーズ使用量:456g(粉砕室に対するビーズ充填量:80%)、ポンプ流量:400mL/min、周速8m/s)で循環させながら30分解砕処理を行った。
さらに、解砕処理したスラリーを真空下で室温(23℃)にて乾燥して、解砕した固体電解質粉末を得た。
各実施例、比較例の測定結果をまとめて表1に示す。
また、各実施例、比較例で得られた硫化物固体電解質の粒子径分布を図1~5に示す。

本実施形態の硫化物固体電解質の製造方法によれば、比表面積を下げることなく吸油量が少ない硫化物固体電解質を製造することができる。本実施形態の製造方法により得られる結晶性固体電解質は、電池に、とりわけ、パソコン、ビデオカメラ、及び携帯電話等の情報関連機器や通信機器等に用いられる電池に好適に用いられる。

Claims (19)

  1. リチウム原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子を含む原料含有物と錯化剤とを混合して、電解質前駆体を得ること、
    前記電解質前駆体より錯化剤を除去して錯分解物を得ること、
    前記錯分解物を加熱して結晶性錯分解物を得ること、及び
    前記結晶性錯分解物を、積算エネルギー量10Wh/kg以上500Wh/kg未満の機械的処理を加えることで、解砕処理して解砕処理物を得ること、
    を含む、硫化物固体電解質の製造方法。
  2. 前記結晶性錯分解物の解砕処理を、酸素原子含有化合物を含む溶媒中で行う請求項1に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
  3. 前記酸素原子含有化合物が、エーテル化合物である請求項2に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
  4. 前記溶媒が、さらに炭化水素化合物を含有する請求項2又は3に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
  5. 前記溶媒が、前記炭化水素化合物50~99.5質量%と、前記酸素原子含有化合物0.5~50質量%とを含有する請求項4に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
  6. 前記電解質前駆体からの錯化剤の除去を乾燥により行う請求項1~5のいずれか1項に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
  7. さらに、前記解砕処理物を加熱することを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
  8. 前記錯化剤が窒素原子含有化合物である請求項1~7のいずれか1項に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
  9. 前記窒素原子含有化合物が第3級アミノ基を有する化合物である請求項8に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
  10. 前記結晶性錯分解物のレーザー回折散乱式粒度分布測定法における累積体積50%の粒径(D50)が3.00μm未満である請求項1~9のいずれか1項に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
  11. 前記結晶性錯分解物のレーザー回折散乱式粒度分布測定法における累積体積90%の粒径(D90)が5.00μm以上である請求項1~10のいずれか1項に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
  12. リチウム原子、硫黄原子、リン原子、ハロゲン原子、及び0.01~1.0質量%の錯化剤を含有し、かつ、レーザー回折散乱式粒度分布測定法における累積体積50%の粒径(D50)が0.10μm以上0.50μm未満であり、かつ、累積体積10%の粒径(D10)が0.05μm以上0.15μm未満である硫化物固体電解質。
  13. 累積体積90%の粒径(D90)が0.10μm以上10.0μm未満である請求項12に記載の硫化物固体電解質。
  14. 比表面積が20~50m/gである請求項12又は13に記載の硫化物固体電解質。
  15. さらに、0.01~0.5質量%の酸素原子含有化合物を含有する請求項12~14のいずれか1項に記載の硫化物固体電解質。
  16. 前記錯化剤が窒素原子含有化合物である請求項12~15のいずれか1項に記載の硫化物固体電解質。
  17. 前記窒素原子含有化合物が第3級アミノ基を有する化合物である請求項16に記載の硫化物固体電解質。
  18. 請求項12~17のいずれか1項に記載の硫化物固体電解質と、レーザー回折散乱式粒度分布測定法における累積体積50%の粒径(D50)が0.50μm以上の他の硫化物固体電解質とを含有する硫化物固体電解質混合物。
  19. 請求項12~17のいずれか1項に記載の硫化物固体電解質と、レーザー回折散乱式粒度分布測定法における累積体積50%の粒径(D50)が0.50μm以上の他の硫化物固体電解質とを混合することを含む、請求項18に記載の硫化物固体電解質混合物の製造方法。
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