JP2023134371A - タイヤ - Google Patents

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澄子 宮崎
Sumiko Miyazaki
大輔 佐藤
Daisuke Sato
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Abstract

【課題】操縦安定性及び乗り心地性の総合性能に優れたタイヤを提供する。【解決手段】サイド部を備えるタイヤであって、前記サイド部は、ミクロフィブリル化植物繊維を含み、かつ下記式(1)~(2)を満たすゴム組成物で構成されるサイド部材を有するタイヤに関する。(1)tanδ<0.100(2)tanδ/T≧0.020(式中、tanδは、温度30℃、初期歪10%、動歪1%、周波数10Hz、伸長モードのサイド部材の損失正接である。Tは、サイド部材の最大厚み(mm)である。)【選択図】なし

Description

本発明は、タイヤに関する。
タイヤには種々の性能が求められ、例えば、乗り心地性、操縦安定性などが挙げられるが、一般にこれらは背反する性能であり、両立が望まれている。
本発明は、前記課題を解決し、操縦安定性及び乗り心地性の総合性能に優れたタイヤを提供することを目的とする。
本発明は、サイド部を備えるタイヤであって、
前記サイド部は、ミクロフィブリル化植物繊維を含み、かつ下記式(1)~(2)を満たすゴム組成物で構成されるサイド部材を有するタイヤに関する。
(1)tanδ<0.100
(2)tanδ/T≧0.020
(式中、tanδは、温度30℃、初期歪10%、動歪1%、周波数10Hz、伸長モードのサイド部材の損失正接である。Tは、サイド部材の最大厚み(mm)である。)
本発明は、サイド部を備えるタイヤであって、該サイド部が、ミクロフィブリル化植物繊維を含み、かつ前記式(1)~(2)を満たすゴム組成物で構成されるサイド部材を有するタイヤあるので、操縦安定性及び乗り心地性の総合性能に優れたタイヤを提供できる。
空気入りタイヤの一部が示された断面図である。 図1のタイヤ2のサイド部3の近辺が示された拡大断面図である。
本発明のタイヤは、サイド部を備え、該サイド部が、ミクロフィブリル化植物繊維を含み、かつ前記式(1)~(2)を満たすゴム組成物で構成されるサイド部材を有する。
前記作用効果が得られるメカニズムは明らかではないが、以下のように推察される。
サイド部材がミクロフィブリル化植物繊維を含み、ミクロフィブリル化植物繊維がタイヤ周方向に配向することで、タイヤ周方向の剛性を維持し、乗り心地を維持しつつタイヤ周方向の剛性を向上させることができる。
同時に、サイド部材のtanδを0.100未満(式(1))とすることで、入力応答の位相差を減らすことができ、応答性が良くなると共に、周方向の剛性が高い状態にある為、舵角を付けた際に、大きな反力を即座に発生させることができる様になると考えられる。
一方、サイド部材のtanδを低下させることで、乗り心地の悪化が懸念されるが、tanδの低下に伴ってサイド部材の厚みを薄くすることで(式(2))、サイド部がたわみやすくなるので、乗り心地性を維持又は向上させることが可能となる。
よって、タイヤ周方向の剛性を向上し、応答性を向上させつつ、タイヤ半径方向の剛性及びたわみ性を維持することができる為、操縦安定性及び乗り心地性の総合性能が向上すると推察される。
このように、前記タイヤのサイド部を、ミクロフィブリル化植物繊維を含み、かつ式(1)「tanδ<0.100」、式(2)「tanδ/T≧0.020」を満たすゴム組成物で構成されるサイド部材を備える構成にすることにより、操縦安定性及び乗り心地性の総合性能を向上するという課題(目的)を解決するものである。すなわち、式(1)「tanδ<0.100」、式(2)「tanδ/T≧0.020」の構成は課題(目的)を規定したものではなく、本願の課題は、操縦安定性及び乗り心地性の総合性能を向上することであり、そのための解決手段として当該パラメーターを満たすような構成にしたものである。
本発明のタイヤにおいて、サイド部は、1つ又は2つ以上のサイド部材により構成される。
サイド部材としては、例えば、サイドウォール、クリンチ、ランフラット補強層などが挙げられる。なかでも、効果がより良好に得られる観点から、サイドウォール、クリンチに好適に用いられる。
本発明のタイヤにおいて、サイド部材は、下記式(1)を満たすゴム組成物(加硫後)で構成される。
(1)tanδ<0.100
(式中、tanδは、温度30℃、初期歪10%、動歪1%、周波数10Hz、伸長モードのサイド部材の損失正接である。)
tanδは、好ましくは0.099以下、より好ましくは0.095以下、更に好ましくは0.093以下、特に好ましくは0.092以下である。下限は特に限定されないが、好ましくは0.050以上、より好ましくは0.070以上、更に好ましくは0.080以上、特に好ましくは0.085以上である。上記範囲内であると、効果が好適に得られる。
本発明のタイヤにおいて、サイド部材は、下記式(2)を満たすゴム組成物(加硫後)で構成される。
(2)tanδ/T≧0.020
(式中、tanδは、温度30℃、初期歪10%、動歪1%、周波数10Hz、伸長モードのサイド部材の損失正接である。Tは、サイド部材の最大厚み(mm)である。)
tanδ/Tは、好ましくは0.023以上、より好ましくは0.024以上、更に好ましくは0.040以上、特に好ましくは0.046以上、最も好ましくは0.048以上である。上限は特に限定されないが、好ましくは0.080以下、より好ましくは0.070以下、更に好ましくは0.060以下、特に好ましくは0.055以下である。上記範囲内であると、効果が好適に得られる。
tanδ/Tを所定以上、特にtanδ/T≧0.040を満たすことで前記作用効果が得られるメカニズムは明らかではないが、tanδ/ゲージをさらに大きくすることで、乗り心地性能の向上効果を大きくすることができると考えられる。よって、操縦安定性及び乗り心地性の総合性能が顕著に向上すると推察される。
サイド部材の最大厚みTは、効果が好適に得られる観点から、下記式を満たすことが望ましい。
T≦5.0mm
Tは、好ましくは4.0mm以下、より好ましくは3.0mm以下、更に好ましくは2.5mm以下、特に好ましくは2.0mm以下である。下限は、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは1.0mm以上、更に好ましくは1.3mm以上、特に好ましくは1.5mm以上である。上記範囲内であると、効果が好適に得られる。
サイド部材は、効果が好適に得られる観点から、下記式を満たすゴム組成物(加硫後)で構成されることが望ましい。
tanδ/E*×100<4.00
(式中、E*及びtanδは、温度30℃、初期歪10%、動歪1%、周波数10Hz、伸長モードの複素弾性率(MPa)及び損失正接である。)
tanδ/E*×100は、好ましくは3.82以下、より好ましくは3.80以下、更に好ましくは3.65以下、より更に好ましくは3.50以下、特に好ましくは3.30以下である。下限は、好ましくは1.00以上、より好ましくは1.20以上、更に好ましくは1.50以上、特に好ましくは1.65以上である。上記範囲内であると、効果が好適に得られる。
tanδ/E*×100を所定以下、特にtanδ/E*×100≦3.80を満たすことで前記作用効果が得られるメカニズムは明らかではないが、ゴムの硬さに対するtanδを小さくすることで、さらに応答性が良くなると考えられる。よって、操縦安定性及び乗り心地性の総合性能が顕著に向上すると推察される。
サイド部材は、効果が好適に得られる観点から、下記式を満たすゴム組成物(加硫後)で構成されることが望ましい。
E*>2.2MPa
(式中、E*は、温度30℃、初期歪10%、動歪1%、周波数10Hz、伸長モードの複素弾性率(MPa)である。)
E*は、好ましくは2.4MPa以上、より好ましくは2.5MPa以上、更に好ましくは2.6MPa以上、特に好ましくは2.7MPa以上である。上限は特に限定されないが、好ましくは8.0MPa以下、より好ましくは7.0MPa以下、更に好ましくは6.5MPa以下、特に好ましくは6.0MPa以下である。上記範囲内であると、効果が好適に得られる。
サイド部材は、効果が好適に得られる観点から、下記式を満たすゴム組成物(加硫後)で構成されることが望ましい。
M300>2.8MPa
(式中、M300は、300%伸長時のモジュラスである。)
M300は、好ましくは2.9MPa以上、より好ましくは3.0MPa以上、更に好ましくは3.2MPa以上、より更に好ましくは3.3MPa以上、特に好ましくは3.4MPa以上である。上限は特に限定されないが、好ましくは5.0MPa以下、より好ましくは4.5MPa以下、更に好ましくは4.0MPa以下、特に好ましくは3.8MPa以下である。上記範囲内であると、効果が好適に得られる。
M300を所定以上、特にM300≧3.0MPaを満たすことで前記作用効果が得られるメカニズムは明らかではないが、300%変形時のモジュラスを高めることで、サイド部が変形した際の反力を大きくすることができる。よって、操縦安定性及び乗り心地性の総合性能が顕著に向上すると推察される。
なお、本明細書において、ゴム組成物のE*、tanδは、加硫後のゴム組成物のE*、tanδを意味する。また、E*、tanδは、加硫後のゴム組成物に対し、粘弾性試験を実施することで得られる値である。
本明細書において、ゴム組成物(加硫後)のE*、tanδは、温度30℃、初期歪10%、動歪1%、周波数10Hz、伸長モードの複素弾性率及び損失正接である。
なお、前記E*、tanδはタイヤから幅4mm、長さ20mm、厚さ1mmのサンプルを切り出して測定されるものであり、サンプルの長手方向は、タイヤ周方向の接線方向と一致させる。
サイド部材の最大厚みTは、各サイド部材(サイドウォール、クリンチ等)の厚みの最大値を意味する。各サイド部材の厚みは、当該サイド部材のタイヤ外表面側の点を通り、当該部材のタイヤ内腔面側の表面に対してする法線に沿って計測されるものである。なお、内側と隣接した部材等との兼ね合いにより、内腔表面側の形状に段差が生じている場合においては、当該段差が生じている点での値は除かれるものである。例えば、当該部材が、サイドウォールであり、その内腔表面側でカーカス層と接している場合には、サイドウォールとカーカス層の界面に対する法線上でのサイドウォールの厚みの最大値を指し、カーカス層がビード部で巻き返された結果、サイドウォールとの界面に段差が生じている場合には、当該カーカス層の巻き返しの半径方向外側における端点付近での値は除かれる。
なお、本明細書において、タイヤの各サイド部材の寸法(サイドウォールの最大厚み、クリンチの最大厚みなどの寸法)及び角度は、特に言及がない限り、タイヤの半径方向断面における値を指すものである。簡易的には、タイヤを半径方向に切り出し、ビード部間の幅を正規リム幅に合わせて固定した状態で測定することにより、求めることが出来る。
正規リムとは、タイヤが依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。
なお、本明細書において、ゴム組成物のM300は、加硫後のゴム組成物のM300を意味する。また、M300(300%モジュラス)は、JIS K6251:2010に基づく方法で測定される値である。
tanδは、ゴム組成物に配合される薬品(特に、ゴム成分、充填材、オイルや樹脂などの可塑剤、硫黄、加硫促進剤、シランカップリング剤)の種類や量によって調整することが可能であり、例えば、ミクロフィブリル化植物繊維と酸性化合物との混合物(マスターバッチ)を使用したり、ゴム成分と相溶性の高い軟化剤(例えば、樹脂)を使用したり、変性ゴムを使用したり、充填材量を減量したり、オイル量を減量したり、硫黄量を増量したり、加硫促進剤量を増量したり、シランカップリング剤量を増量したりすることにより、tanδは小さくなる傾向がある。
E*は、ゴム組成物に配合される薬品(特に、ゴム成分、充填材、オイルや樹脂などの可塑剤)の種類や量によって調整することが可能であり、例えば、ミクロフィブリル化植物繊維と酸性化合物との混合物(マスターバッチ)を使用したり、軟化剤の量を減量したり、充填材の量を増量したり、硫黄量を増量したり、加硫促進剤を増量することにより、E*は大きくなる傾向がある。
M300は、ゴム組成物に配合される薬品(特に、ゴム成分、充填材、オイルや樹脂などの可塑剤、加硫剤)の種類や量によって調整することが可能であり、例えば、ミクロフィブリル化植物繊維と酸性化合物との混合物(マスターバッチ)を使用したり、充填剤を増量したり、可塑剤を減量したり、硫黄量を増量したり、加硫促進剤を増量することにより、M300の値が高くなる傾向がある。
本発明のタイヤにおいて、前記サイド部材は、サイド部材用ゴム組成物で構成される。
前記サイド部材用ゴム組成物は、ゴム成分を含む。
前記サイド部材用ゴム組成物において、ゴム成分は、架橋に寄与する成分であり、一般的に、重量平均分子量(Mw)が1万以上のポリマーである。前記ゴム成分は、常温(25℃)で固体状態である。
ゴム成分の重量平均分子量は、好ましくは5万以上、より好ましくは15万以上、更に好ましくは20万以上であり、また、好ましくは200万以下、より好ましくは150万以下、更に好ましくは100万以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、本明細書において、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)(東ソー(株)製GPC-8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMULTIPORE HZ-M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めることができる。
ゴム成分としては特に限定されず、タイヤ分野で公知のものを使用できる。例えば、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレンスブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合ゴム(SIBR)等のジエン系ゴムが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、効果がより良好に得られる観点から、イソプレン系ゴム、BR、SBRのいずれかを用いることが好ましく、イソプレン系ゴム、BRを用いることがより好ましい。また、これらは前述の通り併用しても良く、イソプレン系ゴムとBRの併用、イソプレン系ゴムとBRとSBRの併用としても良く、イソプレン系ゴム単体で用いても良い。
イソプレン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、改質NR、変性NR、変性IR等が挙げられる。NRとしては、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。IRとしては、特に限定されず、例えば、IR2200等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。改質NRとしては、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(UPNR)等、変性NRとしては、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴム等、変性IRとしては、エポキシ化イソプレンゴム、水素添加イソプレンゴム、グラフト化イソプレンゴム等、が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、NRが好ましい。
前記サイド部材用ゴム組成物がイソプレン系ゴムを含む場合、ゴム成分100質量%中、イソプレン系ゴムの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上であり、100質量%でもよい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。なお、サイドウォール用ゴム組成物、クリンチ用ゴム組成物の場合も同様の範囲が望ましい。
BRとしては特に限定されず、例えば、日本ゼオン(株)製のBR1220、宇部興産(株)製のBR150B、LG Chem社製のBR1280等の高シス含有量のBR、宇部興産(株)製のVCR412、VCR617等の1,2-シンジオタクチックポリブタジエン結晶(SPB)を含むBR、希土類元素系触媒を用いて合成されたブタジエンゴム(希土類系BR)等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
BRのシス量(シス含量)は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、更に好ましくは90質量%以上であり、また、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98質量%以下、更に好ましくは97質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、BRのシス量は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
前記サイド部材用ゴム組成物がBRを含む場合、ゴム成分100質量%中、BRの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、また、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
SBRとしては特に限定されず、例えば、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E-SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S-SBR)等を使用できる。市販品としては、住友化学(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等の製品が挙げられる。
SBRのスチレン含量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上、特に好ましくは20質量%以上である。該スチレン含量は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、本明細書において、SBRのスチレン含量は、H-NMR測定により算出される。
SBRのビニル含量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上である。該ビニル含量は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、本明細書において、SBRのビニル含量(1,2-結合ブタジエン単位量)は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
前記サイド部材用ゴム組成物がSBRを含む場合、ゴム成分100質量%中、SBRの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、また、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
ゴム成分は、オイル、樹脂、液状ゴムなどの可塑剤成分により伸展された伸展ゴムでもよい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。伸展ゴムに使用される可塑剤は、後述で説明するものと同様のものが挙げられる。また、伸展ゴム中の可塑剤分は特に限定されないが、通常、ゴム固形分100質量部に対して10~50質量部程度である。
ゴム成分は、変性により、シリカ等の充填材と相互作用する官能基が導入されていてもよい。
上記官能基としては、例えば、ケイ素含有基(-SiR(Rは、同一又は異なって、水素、水酸基、炭化水素基、アルコキシ基など)、アミノ基、アミド基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、エポキシ基等が挙げられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。なかでも、ケイ素含有基が好ましく、-SiR(Rは、同一又は異なって、水素、水酸基、炭化水素基(好ましくは炭素数1~6の炭化水素基(より好ましくは炭素数1~6のアルキル基))又はアルコキシ基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基))であり、Rの少なくとも一つが水酸基)がより好ましい。
上記官能基を導入する化合物(変性剤)の具体例としては、2-ジメチルアミノエチルトリメトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2-ジメチルアミノエチルトリエトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、2-ジエチルアミノエチルトリメトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2-ジエチルアミノエチルトリエトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
前記サイド部材用ゴム組成物は、フィラーとして、ミクロフィブリル化植物繊維を含む。
上記ミクロフィブリル化植物繊維としては、良好な補強性が得られるという点から、セルロースミクロフィブリルが好ましい。セルロースミクロフィブリルとしては、天然物由来のものであれば特に制限されず、例えば、果実、穀物、根菜などの資源バイオマス、木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、及びこれらを原料として得られるパルプや紙、布、農作物残廃物、食品廃棄物や下水汚泥などの廃棄バイオマス、稲わら、麦わら、間伐材などの未使用バイオマスの他、ホヤ、酢酸菌等の生産するセルロースなどに由来するものが挙げられる。これらのミクロフィブリル化植物繊維は、1種を用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、本明細書において、セルロースミクロフィブリルとは、典型的には、平均繊維径が10μm以下の範囲内であるセルロース繊維、より典型的には、セルロース分子の集合により形成されている平均繊維径500nm以下の微小構造を有するセルロース繊維を意味する。典型的なセルロースミクロフィブリルは、例えば、上記のような平均繊維径を有するセルロース繊維の集合体として形成されている。
上記ミクロフィブリル化植物繊維の製造方法としては特に限定されないが、例えば、上記セルロースミクロフィブリルの原料を必要に応じて水酸化ナトリウム等のアルカリで化学処理した後、リファイナー、二軸混練機(二軸押出機)、二軸混練押出機、高圧ホモジナイザー、媒体撹拌ミル、石臼、グラインダー、振動ミル、サンドグラインダー等により機械的に磨砕ないし叩解する方法が挙げられる。これらの方法では、化学処理によって原料からリグニンが分離されるため、リグニンを実質的に含有しないミクロフィブリル化植物繊維が得られる。また、その他の方法として、上記セルロースミクロフィブリルの原料を超高圧処理する方法なども挙げられる。
上記ミクロフィブリル化植物繊維としては、例えば、(株)スギノマシン等の製品を使用できる。
なお、上記ミクロフィブリル化植物繊維としては、上記製造方法により得られたものに更に、酸化処理や種々の化学変性処理などを施したものや、上記セルロースミクロフィブリルの由来となり得る天然物(例えば、木材、パルプ、竹、麻、ジュート、ケナフ、農作物残廃物、布、紙、ホヤセルロース等)をセルロース原料として、酸化処理や種々の化学変性処理などを行い、その後に必要に応じて解繊処理を行ったものも使用できる。例えば、酸化処理を施したミクロフィブリル化植物繊維を好適に使用できる。
酸化処理の態様としては、例えば、N-オキシル化合物を用いた酸化処理などが例示される。上記N-オキシル化合物を用いた酸化処理は、例えば、水中においてN-オキシル化合物を酸化触媒とし、ミクロフィブリル化植物繊維に共酸化剤を作用させる方法で行うことができる。上記N-オキシル化合物としては、例えば、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(TEMPO)及びその誘導体などが挙げられる。上記共酸化剤としては、例えば、次亜塩素酸ナトリウムなどが挙げられる。
上記ミクロフィブリル化植物繊維の平均繊維径は、10μm以下であることが好ましい。上記範囲であることにより、エラストマー中でのミクロフィブリル化植物繊維の分散性を向上できる。また、加工中のミクロフィブリル化植物繊維の破損が抑えられる傾向にある。当該平均繊維径は、500nm以下がより好ましく、100nm以下が更に好ましく、50nm以下が特に好ましい。また、該平均繊維径の下限は特に制限されないが、ミクロフィブリル化植物繊維の絡まりがほどけにくく、分散し難いという理由から、4nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましく、20nm以上が更に好ましい。
上記ミクロフィブリル化植物繊維の平均繊維長は、100nm以上であることが好ましく、より好ましくは300nm以上、更に好ましくは500nm以上、より更に好ましくは1μm以上、特に好ましくは2μm以上である。また、5mm以下が好ましく、1mm以下がより好ましく、50μm以下が更に好ましく、5μm以下がより更に好ましく、3μm以下が特に好ましく、2μm以下が最も好ましい。平均繊維長が下限未満の場合や上限を超える場合は、前述の平均繊維径と同様の傾向がある。
なお、上記ミクロフィブリル化植物繊維が2種以上の組み合わせからなる場合、上記平均繊維径、上記平均繊維長は、ミクロフィブリル化植物繊維全体での平均として算出される。
本明細書において、上記ミクロフィブリル化植物繊維の平均繊維径及び平均繊維長は、走査型電子顕微鏡写真による画像解析、透過型電子顕微鏡写真による画像解析、原子間力顕微鏡写真による画像解析、X線散乱データの解析、細孔電気抵抗法(コールター原理法)等によって測定できる。
前記サイド部材用ゴム組成物において、ミクロフィブリル化植物繊維の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは8質量部以上、特に好ましくは10質量部以上である。該含有量の上限は、好ましくは60質量部以下、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは40質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。なお、サイドウォール用ゴム組成物、クリンチ用ゴム組成物の場合も同様の範囲が望ましい。
前記サイド部材用ゴム組成物は、効果がより良好に得られる観点から、ジカルボン酸を含むことが望ましい。
前記作用効果が得られるメカニズムは明らかではないが、ジカルボン酸のOHとミクロフィブリル化植物繊維内のOHが相互作用することで、分散性が向上し、発熱性を低減させつつ、剛性を高めやすくなると考えられる。よって、操縦安定性及び乗り心地性の総合性能が向上すると推察される。
ジカルボン酸としては、カルボキシル基を2つ有する酸であれば特に限定されず、例えば、セバシン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、ウンデカン酸、ウンデカンジオン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸;1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;1,2-シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;オルソフタル酸、キシリレンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸類;リンゴ酸、乳酸、グリコール酸、グルコン酸、クエン酸などのヒドロキシカルボン酸;などが挙げられる。なかでも、脂肪族ジカルボン酸が望ましい。
ジカルボン酸の炭素数は、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは4以上、より更に好ましくは5以上である。ジカルボン酸の炭素数の上限は、好ましくは10以下、より好ましくは9以下、更に好ましくは8以下、より更に好ましくは6以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
前記サイド部材用ゴム組成物において、ジカルボン酸の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは8質量部以上、特に好ましくは10質量部以上である。該含有量の上限は、好ましくは60質量部以下、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは40質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。なお、サイドウォール用ゴム組成物、クリンチ用ゴム組成物の場合も同様の範囲が望ましい。
前記サイド部材用ゴム組成物において、ミクロフィブリル化植物繊維(固形分)とジカルボン酸との含有比〔ミクロフィブリル化植物繊維量(質量部)/ジカルボン酸(質量部)〕は、10/90~90/10が好ましく、20/80~80/20がより好ましく、30/70~70/30が更に好ましく、40/60~60/40が特に好ましく、50/50~60/40が最も好ましい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。なお、サイドウォール用ゴム組成物、クリンチ用ゴム組成物の場合も同様の範囲が望ましい。
前記サイド部材用ゴム組成物は、ミクロフィブリル化植物繊維以外の他のフィラーを含むことが望ましい。
前記サイド部材用ゴム組成物において、前記他のフィラー(充填材)の含有量(カーボンブラック、シリカなどの他のフィラーの総量)は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは20質量部以上、更に好ましくは30質量部以上である。該含有量の上限は、好ましくは100質量部以下、より好ましくは70質量部以下、更に好ましくは50質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。なお、サイドウォール用ゴム組成物、クリンチ用ゴム組成物の場合も同様の範囲が望ましい。
前記他のフィラー(充填材)としては特に限定されず、ゴム分野で公知の材料を使用でき、例えば、シリカ、カーボンブラック、炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、クレイ、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、マイカなどの無機フィラー、バイオ炭(BIO CHAR)などが挙げられる。なかでも、効果がより良好に得られる観点から、カーボンブラック、シリカが好ましい。
前記サイド部材用ゴム組成物に使用可能なカーボンブラックとしては、特に限定されないが、N134、N110、N220、N234、N219、N339、N330、N326、N351、N550、N762等が挙げられる。市販品としては、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱ケミカル(株)、ライオン(株)、日鉄カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。また、上記の鉱油等を原料としたカーボンブラック以外にリグニンなどのバイオマス材料を原料としたカーボンブラックを用いても良い。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記サイド部材用ゴム組成物において、カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は、30m/g以上が好ましく、35m/g以上がより好ましく、40m/g以上が更に好ましく、41m/g以上がより更に好ましい。また、上記NSAは、100m/g以下が好ましく、80m/g以下がより好ましく、60m/g以下が更に好ましく、50m/g以下が特に好ましい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、カーボンブラックのNSAは、JIS K6217-2:2001によって求められる。
前記サイド部材用ゴム組成物がカーボンブラックを含む場合、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上、更に好ましくは30質量部以上である。該含有量の上限は、好ましくは70質量部以下、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは40質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。なお、サイドウォール用ゴム組成物、クリンチ用ゴム組成物の場合も同様の範囲が望ましい。
使用可能なシリカとしては、乾式法シリカ(無水シリカ)、湿式法シリカ(含水シリカ)などが挙げられる。なかでも、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。市販品としては、デグッサ社、ローディア社、東ソー・シリカ(株)、ソルベイジャパン(株)、(株)トクヤマ等の製品を使用できる。また、上述のシリカの他、もみ殻などのバイオマス材料を原料としたシリカを用いても良い。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
シリカの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは50m/g以上、より好ましくは100m/g以上、更に好ましくは150m/g以上、特に好ましくは170m/g以上である。また、シリカのNSAの上限は特に限定されないが、好ましくは350m/g以下、より好ましくは300m/g以下、更に好ましくは250m/g以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、シリカのNSAは、ASTM D3037-93に準じてBET法で測定される値である。
前記サイド部材用ゴム組成物がシリカを含む場合、シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上、更に好ましくは30質量部以上である。該含有量の上限は、好ましくは70質量部以下、より好ましくは60質量部以下、更に好ましくは50質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。なお、サイドウォール用ゴム組成物、クリンチ用ゴム組成物の場合も同様の範囲が望ましい。
前記サイド部材用ゴム組成物がシリカを含む場合、更にシランカップリング剤を含むことが好ましい。
シランカップリング剤としては、特に限定されず、ゴム分野で公知のものが使用可能であり、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、などのスルフィド系、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、Momentive社製のNXT、NXT-Zなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、などのグリシドキシ系、3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシランなどのクロロ系などがあげられる。市販品としては、デグッサ社、Momentive社、信越シリコーン(株)、東京化成工業(株)、アヅマックス(株)、東レ・ダウコーニング(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記サイド部材用ゴム組成物において、シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上、特に好ましくは7質量部以上である。該含有量の上限は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは15質量部以下、特に好ましくは10質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
前記サイド部材用ゴム組成物は、可塑剤を含んでもよい。
ここで、可塑剤とは、ゴム成分に可塑性を付与する材料であり、例えば、液体可塑剤(常温(25℃)で液体状態の可塑剤)、樹脂(常温(25℃)で固体状態の樹脂)等が挙げられる。
前記サイド部材用ゴム組成物において、可塑剤の含有量(可塑剤の総量)は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは50質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは10質量部以下、特に好ましくは5質量部以下であり、0質量部でもよい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。なお、伸展ゴムに用いられた可塑剤成分量も、これらの可塑剤の含有量に含まれるものである。
前記サイド部材用ゴム組成物に使用可能な液体可塑剤(常温(25℃)で液体状態の可塑剤)としては特に限定されず、オイル、液状ポリマー(液状樹脂、液状ジエン系ポリマー、液状ファルネセン系ポリマーなど)などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記サイド部材用ゴム組成物において、液体可塑剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは50質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは10質量部以下、特に好ましくは5質量部以下であり、0質量部でもよい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。なお、液体可塑剤の含有量には、油展ゴムに含まれるオイルの量も含まれる。また、オイルの含有量も同様の範囲が好適である。
オイルとしては、例えば、プロセスオイル、植物油、又はその混合物が挙げられる。プロセスオイルとしては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどを用いることができる。植物油としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、桐油等が挙げられる。市販品としては、出光興産(株)、三共油化工業(株)、ENEOS(株)、オリソイ社、H&R社、豊国製油(株)、昭和シェル石油(株)、富士興産(株)、日清オイリオグループ(株)等の製品を使用できる。なかでも、プロセスオイル(パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル等)、植物油が好ましい。なお、これらのプロセスオイル及び植物油は、ライフサイクルアセスメントの観点から、ゴム混合用ミキサーやエンジンなどの潤滑油として用いられた後のオイルや廃食油などを適宜用いても良い。
液状樹脂としては、テルペン系樹脂(テルペンフェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂を含む)、ロジン樹脂、スチレン系樹脂、C5系樹脂、C9系樹脂、C5/C9系樹脂、ジシクロペンタジエン(DCPD)樹脂、クマロンインデン系樹脂(クマロン、インデン単体樹脂を含む)、フェノール樹脂、オレフィン系樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。また、これらの水素添加物も使用可能である。
液状ジエン系ポリマーとしては、25℃で液体状態の液状スチレンブタジエン共重合体(液状SBR)、液状ブタジエン重合体(液状BR)、液状イソプレン重合体(液状IR)、液状スチレンイソプレン共重合体(液状SIR)、液状スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(液状SBSブロックポリマー)、液状スチレンイソプレンスチレンブロック共重合体(液状SISブロックポリマー)等が挙げられる。これらは、末端や主鎖が極性基で変性されていても構わない。また、これらの水素添加物も使用可能である。
液状ファルネセン系ポリマーとしては、25℃で液体状態の液状ファルネセン重合体、液状ファルネセンブタジエン共重合体等が挙げられる。これらは、末端や主鎖が極性基で変性されていても構わない。また、これらの水素添加物も使用可能である。
前記サイド部材用ゴム組成物に使用可能な前記樹脂(常温(25℃)で固体状態の樹脂)としては、例えば、常温(25℃)で固体状態の芳香族ビニル重合体、クマロンインデン樹脂、クマロン樹脂、インデン樹脂、フェノール樹脂、ロジン樹脂、石油樹脂、テルペン系樹脂、アクリル系樹脂などが挙げられる。また、樹脂は、水添されていてもよい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、芳香族ビニル重合体、石油樹脂、テルペン系樹脂が好ましい。
前記サイド部材用ゴム組成物において、前記樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは50質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは10質量部以下、特に好ましくは5質量部以下であり、0質量部でもよい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
前記樹脂の軟化点は、50℃以上が好ましく、55℃以上がより好ましく、60℃以上が更に好ましい。上限は、160℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましく、145℃以下が更に好ましい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
上記樹脂の軟化点は、JIS K6220-1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
なお、前記樹脂の軟化点は、通常、樹脂成分のガラス転移温度の+50℃±5℃程度の値である。
前記芳香族ビニル重合体は、芳香族ビニルモノマーを構成単位として含むポリマーである。例えば、α-メチルスチレン及び/又はスチレンを重合して得られる樹脂が挙げられ、具体的には、スチレンの単独重合体(スチレン樹脂)、α-メチルスチレンの単独重合体(α-メチルスチレン樹脂)、α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体、スチレンと他のモノマーの共重合体などが挙げられる。
前記クマロンインデン樹脂は、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、クマロン及びインデンを含む樹脂である。クマロン、インデン以外に骨格に含まれるモノマー成分としては、スチレン、α-メチルスチレン、メチルインデン、ビニルトルエンなどが挙げられる。
前記クマロン樹脂は、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、クマロンを含む樹脂である。
前記インデン樹脂は、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、インデンを含む樹脂である。
前記フェノール樹脂としては、例えば、フェノールと、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラールなどのアルデヒド類とを酸又はアルカリ触媒で反応させることにより得られるポリマー等の公知のものを使用できる。なかでも、酸触媒で反応させることにより得られるもの(ノボラック型フェノール樹脂など)が好ましい。
前記ロジン樹脂としては、天然ロジン、重合ロジン、変性ロジン、これらのエステル化合物、これらの水素添加物に代表されるロジン系樹脂等が挙げられる。
前記石油樹脂としては、C5系樹脂、C9系樹脂、C5/C9系樹脂、ジシクロペンタジエン(DCPD)樹脂、これらの水素添加物などが挙げられる。なかでも、DCPD樹脂、水添DCPD樹脂が好ましい。
前記テルペン系樹脂は、テルペンを構成単位として含むポリマーであり。例えば、テルペン化合物を重合して得られるポリテルペン樹脂、テルペン化合物と芳香族化合物とを重合して得られる芳香族変性テルペン樹脂などが挙げられる。芳香族変性テルペン樹脂としては、テルペン化合物及びフェノール系化合物を原料とするテルペンフェノール樹脂や、テルペン化合物及びスチレン系化合物を原料とするテルペンスチレン樹脂、テルペン化合物、フェノール系化合物及びスチレン系化合物を原料とするテルペンフェノールスチレン樹脂も使用できる。なお、テルペン化合物としては、α-ピネン、β-ピネンなど、フェノール系化合物としては、フェノール、ビスフェノールAなど、芳香族化合物としては、スチレン系化合物(スチレン、α-メチルスチレンなど)が挙げられる。
前記アクリル系樹脂は、アクリル系モノマーを構成単位として含むポリマーである。例えば、カルボキシル基を有し、芳香族ビニルモノマー成分とアクリル系モノマー成分とを共重合して得られる、スチレンアクリル樹脂等のスチレンアクリル系樹脂などが挙げられる。なかでも、無溶剤型カルボキシル基含有スチレンアクリル系樹脂を好適に使用できる。
可塑剤としては、例えば、丸善石油化学(株)、住友ベークライト(株)、ヤスハラケミカル(株)、東ソー(株)、RutgersChemicals社、BASF社、アリゾナケミカル社、日塗化学(株)、(株)日本触媒、ENEOS(株)、荒川化学工業(株)、田岡化学工業(株)等の製品を使用できる。
前記サイド部材用ゴム組成物は、老化防止剤を含有してもよい。
老化防止剤としては、例えば、フェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;オクチル化ジフェニルアミン、4,4′-ビス(α,α′-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系老化防止剤;N-イソプロピル-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N′-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン等のp-フェニレンジアミン系老化防止剤;2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;テトラキス-[メチレン-3-(3′,5′-ジ-t-ブチル-4′-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤等が挙げられる。市販品としては、精工化学(株)、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)、フレクシス社等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記サイド部材用ゴム組成物において、老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上、更に好ましくは2.0質量部以上であり、また、好ましくは10.0質量部以下、より好ましくは6.0質量部以下、更に好ましくは4.0質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
前記サイド部材用ゴム組成物は、ワックスを含有してもよい。
ワックスとしては、特に限定されず、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス;植物系ワックス、動物系ワックス等の天然系ワックス;エチレン、プロピレン等の重合物等の合成ワックス等が挙げられる。市販品としては、大内新興化学工業(株)、日本精蝋(株)、精工化学(株)等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記サイド部材用ゴム組成物において、ワックスの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは6質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
前記サイド部材用ゴム組成物は、ステアリン酸を含有してもよい。
ステアリン酸としては、従来公知のものを使用でき、市販品としては、日油(株)、花王(株)、富士フイルム和光純薬(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記サイド部材用ゴム組成物において、ステアリン酸の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上、更に好ましくは2.0質量部以上であり、また、好ましくは10.0質量部以下、より好ましくは6.0質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
前記サイド部材用ゴム組成物は、硫黄を含有してもよい。
硫黄としては、ゴム工業において一般的に架橋剤として用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄等が挙げられる。市販品としては、鶴見化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社、日本乾溜工業(株)、細井化学工業(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記サイド部材用ゴム組成物において、硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上、更に好ましくは1.5質量部以上、特に好ましくは1.8質量部以上であり、また、好ましくは3.5質量部以下、より好ましくは2.8質量部以下、更に好ましくは2.5質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
前記サイド部材用ゴム組成物は、加硫促進剤を含有してもよい。
加硫促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT-N)等のチウラム系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(CBS)、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N′-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。市販品としては、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記サイド部材用ゴム組成物において、加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは0.8質量部以上、更に好ましくは1.0質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、更に好ましくは7質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
前記サイド部材用ゴム組成物には、上記成分の他、タイヤ工業において一般的に用いられている添加剤、例えば、有機過酸化物等を更に配合してもよい。これらの添加剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.1~200質量部が好ましい。
前記サイド部材用ゴム組成物は、公知の方法を用いて製造でき、例えば、前述の各成分をオープンロール、バンバリーミキサーなどのゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法などにより製造できる。
なかでも、前記式(1)~(2)を満たすものが好適に得られる観点から、先ず、前記ミクロフィブリル化植物繊維の水分散液及び/又は水溶液と、前記ジカルボン酸とを含む混合液を調製する工程1と、該混合液から水分の少なくとも一部を除去する工程2とを含む製造方法によりミクロフィブリル化植物繊維及びジカルボン酸の混合物(マスターバッチ)を製造し、次いで、得られた混合物、他の成分をオープンロール、バンバリーミキサーなどのゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法などにより製造することが望ましい。なお、上記工程を含む限り、その他の工程を含んでいてもよく、また、上記工程をそれぞれ、1回行ってもよいし、複数回繰り返し行ってもよい。
工程1において、ミクロフィブリル化植物繊維の水分散液及び/又は水溶液は、公知の方法で製造でき、例えば、高速ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、コロイドミル、ブレンダ―ミルなどを用いてミクロフィブリル化植物繊維を水中に分散又は溶解させることで調製できる。調製の際の温度や時間は、ミクロフィブリル化植物繊維が水中に十分分散、溶解するように適宜設定できる。
ミクロフィブリル化植物繊維の水分散液及び/又は水溶液中のミクロフィブリル化植物繊維の含有量(固形分)は、好ましくは0.2~20質量%、より好ましくは0.5~10質量%、更に好ましくは0.5~3質量%である。
工程1において、ミクロフィブリル化植物繊維の水分散液及び/又は水溶液と、ジカルボン酸との混合は、公知の方法で製造でき、例えば、高速ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、コロイドミル、ブレンダ―ミルなどを用いて実施できる。混合時の温度や時間は、ミクロフィブリル化植物繊維、ジカルボン酸が水中に十分混合するように適宜設定できる。
工程1において、効果が好適に得られる観点から、ミクロフィブリル化植物繊維(固形分)とジカルボン酸との混合比〔ミクロフィブリル化植物繊維量(質量部)/ジカルボン酸(質量部)〕は、10/90~90/10が好ましく、20/80~80/20がより好ましく、30/70~70/30が更に好ましく、40/60~60/40が特に好ましく、50/50~60/40が最も好ましい。
工程2では、工程1で得られた混合液から、混合液中の水分の少なくとも一部が除去される。水分の除去が可能な種々の方法を使用でき、例えば、塩酸や硫酸等の強酸を添加して、加熱(例えば、80~220℃、好ましくは120~200℃、より好ましくは140~180℃)し、共沸させる等により水分を除去する方法、などを好適に使用できる。
次いで、得られた混合物、他の成分を、オープンロール、バンバリーミキサーなどのゴム混練装置を用いて混練する方法、押出機(2軸押出機等)を用いて混練する方法、等を実施し、更に加硫することで、サイド部材用ゴム組成物(加硫後)が得られる。
混練条件としては、加硫剤及び加硫促進剤以外の添加剤を混練するベース練り工程では、混練温度は、通常50~200℃、好ましくは80~190℃であり、混練時間は、通常30秒~30分、好ましくは1分~30分である。加硫剤、加硫促進剤を混練する仕上げ練り工程では、混練温度は、通常100℃以下、好ましくは室温~80℃である。また、加硫剤、加硫促進剤を混練した組成物は、通常、プレス加硫などの加硫処理が施される。加硫温度としては、通常120~200℃、好ましくは140~180℃である。
上記サイド部材用ゴム組成物は、タイヤに好適に使用できる。タイヤとしては、空気入りタイヤ、非空気入りタイヤなどが挙げられるが、なかでも、空気入りタイヤが好ましい。特に、夏用タイヤ(サマータイヤ)、冬用タイヤ(スタッドレスタイヤ、低温路面向けタイヤ、スノータイヤ、スタッドタイヤなど)として好適に使用できる。タイヤは、乗用車用タイヤ、大型乗用車用、大型SUV用タイヤ、トラック、バスなどの重荷重用タイヤ、ライトトラック用タイヤ、二輪自動車用タイヤ、レース用タイヤ(高性能タイヤ)などに使用可能である。
タイヤは、サイド部材用ゴム組成物を用いて通常の方法により製造される。例えば、各種材料を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でサイド部材の形状に合わせて押し出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することによりタイヤを得る。
前記サイド部材用ゴム組成物を用いたタイヤの一例を、図1を用いて説明する。
図1において、上下方向がタイヤ2の半径方向であり、左右方向がタイヤ2の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ2の周方向である。トレッド4は、キャップ層30及びベース層28を備えている。
なお、図1では、キャップ層30及びベース層28からなる2層構造トレッド4の例が示されているが、単層構造トレッド、3層以上の構造を有するトレッドでもよい。
タイヤ2において、それぞれのサイドウォール6は、トレッド4の端から半径方向略内向きに延びている。このサイドウォール6の半径方向外側部分は、トレッド4と接合されている。このサイドウォール6の半径方向内側部分は、クリンチ10と接合されている。このサイドウォール6は、カーカス14の損傷を防止できる。タイヤ2では、サイドウォール6及び/又はクリンチ10が、式(1)「tanδ<0.100」を満たす前記サイド部材用ゴム組成物で構成されている。また、該サイド部材用ゴム組成物は、式「tanδ/E*×100<4.00」、式「E*>2.2MPa」、式「M300>2.8MPa」を満たすことが望ましい。
図2は、図1のタイヤ2のサイド部3の近辺が示された拡大断面図である。
サイドウォール6の最大厚みTsは、サイドウォール6の厚みの最大値を意味し、厚みは、サイドウォール6のタイヤ外表面側の点を通り、サイドウォール6のタイヤ内腔面側の表面に対してする法線に沿って計測される。図2のサイドウォール6の内腔表面側でカーカスプライ36(カーカス層)と接しているタイヤ2では、サイドウォール6とカーカスプライ36の界面に対する法線上でのサイドウォール6の厚みの最大値を指す。
図1のそれぞれのウィング8は、トレッド4とサイドウォール6との間に位置している。ウィング8は、トレッド4及びサイドウォール6のそれぞれと接合している。
それぞれのクリンチ10は、サイドウォール6の半径方向略内側に位置している。クリンチ10は、軸方向において、ビード12及びカーカス14よりも外側に位置している。
それぞれのビード12は、クリンチ10の軸方向内側に位置している。ビード12は、コア32と、このコア32から半径方向外向きに延びるエイペックス34とを備えている。コア32はリング状であり、巻回された非伸縮性ワイヤーを含むことが望ましい。エイペックス34は、半径方向外向きに先細りである。
カーカス14は、カーカスプライ36を備えている。このタイヤ2では、カーカス14は1枚のカーカスプライ36からなるが、2枚以上で構成されてもよい。
このタイヤ2では、カーカスプライ36は、両側のビード12の間に架け渡されており、トレッド4及びサイドウォール6に沿っている。カーカスプライ36は、それぞれのコア32の周りにて、軸方向内側から外側に向かって折り返されている。この折り返しにより、カーカスプライ36には、主部36aと一対の折り返し部36bとが形成されている。すなわち、カーカスプライ36は、主部36aと一対の折り返し部36bとを備えている。
図示されていないが、カーカスプライ36は、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなることが望ましい。それぞれのコードが赤道面に対してなす角度の絶対値は、75°から90°が好適である。換言すれば、このカーカス14はラジアル構造を有することが好ましい。
図1のベルト16は、トレッド4の半径方向内側に位置している。ベルト16は、カーカス14と積層されている。ベルト16は、カーカス14を補強する。ベルト16は、内側層38及び外側層40からなる。図1から明らかなように、軸方向において、内側層38の幅は外側層40の幅よりも若干大きいことが望ましい。このタイヤ2では、ベルト16の軸方向幅はタイヤ2の断面幅(JATMA参照)の0.6倍以上が好ましく、0.9倍以下が好ましい。
図示されていないが、内側層38及び外側層40のそれぞれは、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなることが望ましい。言い換えれば、ベルト16は並列された多数のコードを含んでいる。それぞれのコードは、赤道面に対して傾斜している。傾斜角度の一般的な絶対値は、10°以上35°以下である。内側層38のコードの赤道面に対する傾斜方向は、外側層40のコードの赤道面に対する傾斜方向とは逆である。
図1のバンド18は、ベルト16の半径方向外側に位置している。軸方向において、バンド18はベルト16の幅と同等の幅を有している。このバンド18が、このベルト16の幅よりも大きな幅を有していてもよい。
図示されていないが、バンド18は、コードとトッピングゴムとからなることが望ましい。コードは、螺旋状に巻かれている。このバンド18は、いわゆるジョイントレス構造を有する。コードは、実質的に周方向に延びている。周方向に対するコードの角度は、5°以下、さらには2°以下であることが好ましい。このコードによりベルト16が拘束されるので、ベルト16のリフティングが抑制される。
図1のベルト16及びバンド18は、補強層を構成している。ベルト16のみから、補強層が構成されてもよい。
インナーライナー20は、カーカス14の内側に位置している。インナーライナー20は、カーカス14の内面に接合されている。インナーライナー20の典型的な基材ゴムは、ブチルゴム又はハロゲン化ブチルゴムである。インナーライナー20は、タイヤ2の内圧を保持する。
それぞれのチェーファー22は、ビード12の近傍に位置している。この実施形態では、チェーファー22は布とこの布に含浸したゴムとからなることが望ましい。このチェーファー22が、クリンチ10と一体とされてもよい。
このタイヤ2では、トレッド4は溝26として主溝42を備えている。図1に示されているように、このトレッド4には、複数本、詳細には、3本の主溝42が刻まれている。これらの主溝42は、軸方向に間隔をあけて配置されている。このトレッド4には、3本の主溝42が刻まれることにより、周方向に延在する4本のリブ44が形成されている。つまり、リブ44とリブ44との間が主溝42である。
それぞれの主溝42は、周方向に延在している。主溝42は、周方向に途切れることなく連続している。主溝42は、例えば雨天時において、路面とタイヤ2との間に存在する水の排水を促す。このため、路面が濡れていても、タイヤ2は路面と十分に接触することができる。
以下では、実施をする際に好ましいと考えられる例(実施例)を示すが、本発明の範囲は実施例に限られない。
以下、実施例及び比較例で使用する各種薬品について、まとめて説明する。
NR:TSR20
BR:宇部興産(株)製のBR150B(シス量:97質量%)
ミクロフィブリル化植物繊維:(株)スギノマシン製のバイオマスナノファイバー(製品名「BiNFi-s セルロース」、固形分2質量%、水分98質量%、平均繊維径10~50nm、平均繊維長2~5μm)
コハク酸:東京化成工業(株)製
グルタル酸:東京化成工業(株)製
アジピン酸:東京化成工業(株)製
スベリン酸:東京化成工業(株)製
アゼライン酸:東京化成工業(株)製
ミネラルオイル:出光興産(株)製のPS-32
カーボンブラック:三菱ケミカル(株)製のダイアブラックN550(NSA41m/g)
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C
ステアリン酸:日油(株)製の椿
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛2種
硫黄:日本乾溜工業(株)製のセイミ硫黄
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS
<MB(マスターバッチ)の作製>
ミクロフィブリル化植物繊維500gに純水1000gを添加し、ミクロフィブリル化植物繊維の0.5質量%(固形分濃度)懸濁液を作製し、高速ホモジナイザー(IKAジャパン社製の「T50」、回転数:8000rpm)で約5分撹拌して均一な水分散液を調製する。
表1の配合処方に従って、上記で調製する水分散液(ミクロフィブリル化植物繊維の乾燥質量(固形分)換算)、各種ジカルボン酸を混合し、更にトルエンをミクロフィブリル化植物繊維100質量部に対して100質量部添加して、混合する。
得られる混合物に塩酸を少量添加し、80℃に加熱して共沸させて水分を除去する。
水分除去後の混合物を高速ホモジナイザー(IKAジャパン社製の「T50」、回転数:8000rpm)を用いて50℃で5分撹拌、混合して、各MBを調製する。
Figure 2023134371000001
<試験用タイヤの作製>
表2に示す配合処方に従い、1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を150℃で4分間混練りする。
次に、オープンロールを用いて、得られる混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加して80℃で4分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得る。
得られる未加硫ゴム組成物をサイドウォールの形状に成形し、タイヤ成型機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを形成し、次いで、170℃で12分間加硫し、試験用タイヤ(サイズ:195/65R15、仕様:各表)を製造する。
各表に従って配合を変化させた組成物により得られる試験用タイヤを想定して、下記評価方法に基づいて算出した結果を各表に示す。
なお、基準比較例は、比較例1とする。
<粘弾性試験>
各試験用タイヤのサイドウォールのゴム層内部から、サンプルの長手方向がタイヤ周方向の接線方向と一致するように、幅4mm、長さ20mm、厚さ1mmの粘弾性測定サンプルを採取し、サイドウォールゴムのtanδおよびE*を、TAインスツルメント社製のRSAシリーズを用いて、温度30℃、初期歪10%、動歪1%、周波数10Hz、伸長モードの測定値を得る。
なお、サンプルの厚み方向はタイヤ半径方向とする。
<300%伸張時応力(M300)>
各試験用タイヤのサイドウォールのゴム層内部から採取するサンプルから厚さ1mmの7号ダンベル形状の試験片を作製し、JIS K6251:2010に基づいて、20℃において引張試験を実施して300%伸張時応力(M300)を測定する。
<操縦安定性>
試験用タイヤを車輌(国産FF2000cc)の全輪に装着してテストコースを走行し、蛇行運転をした際のドライバーの官能評価により操縦安定性を評価する。基準比較例を100とした時の指数で表示する。指数が大きいほど、操縦安定性に優れることを示す。
<乗り心地性>
試験用タイヤを15x6JJのアルミホイールリムにリム組みし、かつ内圧210kPa(前後同一)を充填して、排気量2000ccの国産FF車の4輪に装着するとともに、テストコース内をドライバー1名乗車で走行して官能評価する。基準比較例を100とする指数で評価する。数値が大きいほど、乗り心地が良好である。
<総合性能>
前記操縦安定性の評価、前記乗り心地性の評価で得られる2つの指数の合計により、操縦安定性及び乗り心地性の総合性能を評価する。数値が大きいほど、総合性能が良好である。
Figure 2023134371000002
本発明(1)はサイド部を備えるタイヤであって、
前記サイド部は、ミクロフィブリル化植物繊維を含み、かつ下記式(1)~(2)を満たすゴム組成物で構成されるサイド部材を有するタイヤである。
(1)tanδ<0.100
(2)tanδ/T≧0.020
(式中、tanδは、温度30℃、初期歪10%、動歪1%、周波数10Hz、伸長モードのサイド部材の損失正接である。Tは、サイド部材の最大厚み(mm)である。)
本発明(2)はゴム組成物が下記式を満たす本発明(1)記載のタイヤである。
M300≧3.0MPa
(式中、M300は、300%伸長時のモジュラスである。)
本発明(3)はゴム組成物が下記式を満たす本発明(1)又は(2)記載のタイヤである。
tanδ/E*×100≦3.80
(式中、E*及びtanδは、温度30℃、初期歪10%、動歪1%、周波数10Hz、伸長モードの複素弾性率(MPa)及び損失正接である。)
本発明(4)はゴム組成物が下記式を満たす本発明(1)~(3)のいずれかに記載のタイヤである。
tanδ/T≧0.040
(式中、tanδは、温度30℃、初期歪10%、動歪1%、周波数10Hz、伸長モードのサイド部材の損失正接である。Tは、サイド部材の最大厚み(mm)である。)
本発明(5)はゴム組成物がジカルボン酸を含む本発明(1)~(4)のいずれかに記載のタイヤである。
本発明(6)はゴム組成物が下記式を満たす本発明(1)~(5)のいずれかに記載のタイヤである。
tanδ≦0.095
(式中、tanδは、温度30℃、初期歪10%、動歪1%、周波数10Hz、伸長モードのサイド部材の損失正接である。)
本発明(7)はサイド部材の最大厚みTが下記式を満たす本発明(1)~(6)のいずれかに記載のタイヤである。
T≦3.0mm
本発明(8)はゴム組成物が下記式を満たす本発明(1)~(7)のいずれかに記載のタイヤである。
E*≧2.6MPa
(式中、E*は、温度30℃、初期歪10%、動歪1%、周波数10Hz、伸長モードの複素弾性率(MPa)である。)
本発明(9)はゴム組成物において、ゴム成分100質量部に対するカーボンブラックの含有量が20~50質量部である本発明(1)~(8)のいずれかに記載のタイヤである。
本発明(10)はゴム組成物において、ゴム成分100質量部に対する可塑剤の含有量が5質量部以下である本発明(1)~(9)のいずれかに記載のタイヤである。
本発明(11)はゴム組成物が、イソプレン系ゴムを含むゴム成分を含む本発明(1)~(10)のいずれかに記載のタイヤである。
本発明(12)はゴム組成物が、イソプレン系ゴム及びブタジエンゴムを含むゴム成分を含む本発明(1)~(11)のいずれかに記載のタイヤである。
本発明(13)はゴム組成物において、ゴム成分100質量部に対するミクロフィブリル化植物繊維の含有量が1~60質量部である本発明(1)~(12)のいずれかに記載のタイヤである。
2 空気入りタイヤ
3 サイド部
4 トレッド
6 サイドウォール
8 ウィング
10 クリンチ
12 ビード
14 カーカス
16 ベルト
18 バンド
20 インナーライナー
22 チェーファー
24 トレッド面
26 溝
28 ベース層
30 キャップ層
32 コア
34 エイペックス
36 カーカスプライ
36a 主部
36b 折り返し部
38 内側層
40 外側層
42 主溝
44 リブ
CL タイヤ2の赤道面
Ts サイドウォールの最大厚み
Tc クリンチの最大厚み

Claims (10)

  1. サイド部を備えるタイヤであって、
    前記サイド部は、ミクロフィブリル化植物繊維を含み、かつ下記式(1)~(2)を満たすゴム組成物で構成されるサイド部材を有するタイヤ。
    (1)tanδ<0.100
    (2)tanδ/T≧0.020
    (式中、tanδは、温度30℃、初期歪10%、動歪1%、周波数10Hz、伸長モードのサイド部材の損失正接である。Tは、サイド部材の最大厚み(mm)である。)
  2. ゴム組成物が下記式を満たす請求項1記載のタイヤ。
    M300≧3.0MPa
    (式中、M300は、300%伸長時のモジュラスである。)
  3. ゴム組成物が下記式を満たす請求項1又は2記載のタイヤ。
    tanδ/E*×100≦3.80
    (式中、E*及びtanδは、温度30℃、初期歪10%、動歪1%、周波数10Hz、伸長モードの複素弾性率(MPa)及び損失正接である。)
  4. ゴム組成物が下記式を満たす請求項1又は2記載のタイヤ。
    tanδ/T≧0.040
    (式中、tanδは、温度30℃、初期歪10%、動歪1%、周波数10Hz、伸長モードのサイド部材の損失正接である。Tは、サイド部材の最大厚み(mm)である。)
  5. ゴム組成物がジカルボン酸を含む請求項1又は2記載のタイヤ。
  6. ゴム組成物が下記式を満たす請求項1又は2記載のタイヤ。
    tanδ≦0.095
    (式中、tanδは、温度30℃、初期歪10%、動歪1%、周波数10Hz、伸長モードのサイド部材の損失正接である。)
  7. サイド部材の最大厚みTが下記式を満たす請求項1又は2記載のタイヤ。
    T≦3.0mm
  8. ゴム組成物が下記式を満たす請求項1又は2記載のタイヤ。
    E*≧2.6MPa
    (式中、E*は、温度30℃、初期歪10%、動歪1%、周波数10Hz、伸長モードの複素弾性率(MPa)である。)
  9. ゴム組成物は、ゴム成分100質量部に対するカーボンブラックの含有量が20~50質量部である請求項1又は2記載のタイヤ。
  10. ゴム組成物は、ゴム成分100質量部に対する可塑剤の含有量が5質量部以下である請求項1又は2記載のタイヤ。

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