JP2023132401A - 摩擦抵抗低減システム、航走体及び航走体の摩擦抵抗低減方法 - Google Patents

摩擦抵抗低減システム、航走体及び航走体の摩擦抵抗低減方法 Download PDF

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Abstract

【課題】水上を航行する船舶等の水上航走体や潜水艦等の水中を航行する水中航走体等の航走体において、水に接する没水表面の摩擦抵抗を低減する。【解決手段】航走時に水面下の船体没水部2を有する航走体1において、少なくとも航走時に、船体没水部2の没水表面2fに一体で設けられている水放出口12から、又は、船体没水部2の没水表面2fに当接または離間して別体で配置されている水放出口12から、水放出口12の周囲の主流の流速Vmと航走速度Vsのいずれか一方よりも遅い流速Vwで、水放出口12の下流の没水表面2fに沿うように水Waを放出する。これにより、航走体1の摩擦抵抗を低減する。【選択図】図2

Description

本発明は、水に接する没水表面を有する航走体に配置される摩擦抵抗低減システム、航走体、及び、航走体の摩擦抵抗低減方法等に関する。
水上を航行する船舶や水中を潜航する潜水艦等の航走体においては、航走体が移動する際に水に接する没水表面が水から摩擦抵抗を受けるため、これに抗する推進力を発揮する必要がある。
一般に、水上を航行する船舶の抵抗を推定する際には、空気抵抗の他では、水による抵抗として、粘性抵抗と剰余抵抗の2つに分けて推定したり、無次元値のフルード数が関係する造波抵抗成分と、無次元値のレイノルズ数が関係する摩擦抵抗成分と、その他の抵抗(形状抵抗、飛沫抵抗等)の3つに分けたりして推定している。
この摩擦抵抗成分は、大型タンカーなどでは、全抵抗の約8割を占めることもあるので、摩擦抵抗を減少することは、船舶の推進機関の出力を著しく低減でき、これにより、運航時の燃料を低減できる可能性を占めている。そのため、多くの摩擦抵抗低減方法が提案されてきている。
しかしながら、この摩擦抵抗の大きさの推定においては、船型模型を用いた水槽試験で、相似側のレイノルズ数(Rn=ρUL/μ=「流体の密度」×「代表速度」×「代表長さ」/「粘性係数」=「代表速度」×「代表長さ」/「動粘性係数」)を合わせるためには、実船のn分の一の寸法の船型模型の速度を、実船の速度のn倍にする必要があり、船型模型の速度が高速になり過ぎて、試験を実施することが難しいという問題がある。そのため、現状では、以下のような方法で粘性抵抗、特に摩擦抵抗の低減を図っている。
この船舶の摩擦抵抗を低減する方法としては、船底や船側に設けた空気吹出し口から空気を吹き出して気泡やマイクロバブルで船体の表面を覆うことで摩擦抵抗を減少する空気吹き出し方法(空気潤滑法、気体潤滑法とも言われる)、船体表面を摩擦抵抗の小さい形状に変化させる方法、船体表面の境界層を制御する方法、流体中にポリマーを添加する方法、摩擦抵抗を大きく低減させることのできる摩擦低減剤、摩擦低減剤を含有する塗料、および摩擦低減剤を用いる方法等がある。
この空気吹き出し方法では、例えば、船内の圧縮機で空気を圧縮して、500kPa(好ましくは、700kPa~1300kPa)に加圧した圧縮空気を生成する。そして、この圧縮された空気を、船内の気体室から船首側の船側外板と船底に沿って設けられた複数の空気吹き出し口を経由して、その噴出量を均一化しながら船体外部の水中に吹出して、この空気で形成される気泡で船体を覆うことにより、船体の摩擦抵抗の低減を図っている(例えば、特許文献1、2参照)。
また、この空気吹き出し方法では、気泡を没水面の広い面に広げるために、船底において、船尾側に向けて喫水が深くなる傾斜面を、空気吹出し部より船尾側に設けたり、凹部を空気吹出し部より船尾側に設けたり、空気拡散を抑制するガイド部を、空気吹出し部より船幅方向の外側に設けたりして、船底に供給された気泡の散逸を防止する方法も提案されている(例えば、特許文献3、4参照)。
この空気吹き出し方法の気泡供給に関しては、空気送出手段を用いないで、船首部に空気ダクト部と翼部とウォータージェット推進部を設けて、ウォータージェット推進部から翼部に向けて水を噴射することにより翼部の上側の圧力を低下させ、それにより、空気ダクト部から空気を吸引して船底部にバブル(気泡)を発生させて、ブロワーやコンプレッサ等の空気送出手段を用いずに船底部にバブルを含む二相流を供給する方法が提案されている(例えば、特許文献5参照)。
また、マイクロバブルの供給に関しては、平板翼を備えたマイクロバブル発生貫流ポンプを船首部水面下の船体側面外板部に設置し、並びに、船首部中空立杭の船体底面部にマイクロバブル発生貫流ポンプを設置して、マイクロバブルによる船体の側面と底面の摩擦低減と船首部に発生する造波抵抗の両方の低減を図る船体流体抵抗低減装置も提案されている(例えば、特許文献6参照)。
さらに、この空気吹き出し方法に適した防汚塗膜として、防汚塗膜表面と接触する気体との付着力が高まることで、気体を効率的に防汚塗膜表面に付着させて、気体潤滑による摩擦抵抗低減効果を高める防汚塗膜も提案されている(例えば、特許文献7参照)。
そして、流体中にポリマーを添加する方法として、分子量が50万以上のアルカリ可溶性樹脂を含有し、平均粒子径が1μm以下である水中摩擦抵抗低減用樹脂粒子を含有する船底塗料が提案されている(例えば、特許文献8参照)。
また、摩擦低減剤、摩擦低減塗料等を用いる方法として、摩擦低減方法水性の液体の摩擦抵抗を大きく低減させることのできる、水溶性高分子化合物からなる摩擦低減剤、摩擦低減剤を含有する塗料、および摩擦低減剤を用いた摩擦低減方法が提案されている(例えば、特許文献9参照)。
そして、船体表面を摩擦抵抗の小さい形状に変化させる方法として、例えば、最大の深さが1mm~25mmで、滑走面の流れ方向における長さが15mm~60mm以上のくぼみを、船体表面に複数設けて、その複数のくぼみの各々の底面を、流動媒体の流れの上流側から下流側に行くにつれて継続的に広くなるように形成して、層流を乱して船体表面に対する水の付着力をかなり削減することで、15ノットより低い速度や約40ノット前後以上の高速時に、最も適した形状で、流動媒体との間の生じる抵抗を減少する構造体が提案されている(例えば、特許文献10参照)。
また、船体表面の境界層を制御する方法として、矩形体、斜端面を有する矩形体、底面の形が台形の四角柱、三角錐、又は半円錐の形状をした長尺状に配列された乱流発生装置を、船舶の船殻表面に設置して、この乱流発生装置により乱流を発生させて、境界層の厚さを減らし、分離点を後方へずらして、船尾の圧力を高めることにより、航行する際の抵抗力を減らす構造を有する船舶が提案されている(例えば、特許文献11参照)。
その他にも、流体剥離現象を防止するために、境界層の流体剥離を攪拌できる微細な円錐形突起を設けて、臨界レイノルズ数を引き下げる効果を持たせることにより、流体と移動体との境界部に発生する流体剥離抵抗を解消する方法も提案されている(例えば、特許文献12参照)。
特開2018-122717号公報 特開2018-122718号公報 特開2018-154198号公報 特開2018-154199号公報 特開2018-90173号公報 特開2016-64812号公報 特開2019-199600号公報 特開2014-162912号公報 特開2019-178329号公報 特開2008-157465号公報 特開2018-90242号公報 特開2006-22937号公報
しかしながら、空気吹出し方法の場合は、均一に気泡を分散させて水中に放出することと、均等に船体表面を覆うことが必要であるが、これが難しいという問題がある。つまり、複数の空気吹き出し口から水中に吹き出された圧縮空気は、気泡となり、船底の平坦部を後方に流れると共に幅方向に拡散すると考えられるものの、船首側のみで放出した気泡で、細かい気泡のままに維持しつつ船体表面をきれいに覆うのは難しいと考える。特に、波浪等によって船体動揺がある場合は、噴出された気泡が境界層の外部へ拡散してしまい、船体表面から離れてしまうと考えられる。
さらに、喫水が20mにも及ぶ大型タンカーなどでは、水圧が高い船底に気泡やマイクロバブルを供給する場合に、気泡やマイクロバブルの体積が質量に対して著しく小さくなるので、多量の空気やマイクロバブルが必要となるという問題がある。また、空気を細かい気泡にするために、空気吹き出しの機構が複雑になるという問題がある。
また、水圧の高い部位に気泡を吹出す場合には、水圧を考慮する必要があり、圧縮機で使用されるエネルギーが大きくなるという問題もある。また、水と共に気泡を供給する場合には、気泡の浮力を考慮しながら船底まで気泡を供給する必要がある。
また、マイクロバブルによる船舶の摩擦抵抗の低減方法では、マイクロバブルを発生する装置や機構やエネルギーが必要となる。その上、マイクロバブルを含んだ水の層を船体表面に保持することが難しいという問題がある。
また、ポリマー、摩擦低減剤、摩擦低減塗料などを用いる方法では、これらの物質が多量に必要になると共に、貝殻などの付着等の問題がある。また、船体表面の境界層を制御するために、船体表面に窪みや乱流発生構造、円錐形突起等の数mm程度の微小な構造物を設ける方法も、船体におけるレイノルズ数が非常に大きいので、船体表面の多くが乱流境界層や乱流状態になっていることを考えると、その効果は小さいのではないかと考える。
また、航空機等で行われている、翼表面における固体壁の運動、吹き出し、吸込み、乱れ発生装置、乱流境界層への遷移の防止(例えば層流翼)等の境界層制御の船舶への応用に関しては、船舶におけるレイノルズ数が、航空機の翼に比べて高く、航空機と同様な境界層制御は船舶では難しいと考える。
つまり、船舶では、動粘性係数(ν)が水15℃で、ν≒1.2×10-6〔m/s〕であり、肥大タンカー船の一例では、載荷重量トンが30万トンで、船長(L)が333m、幅(B)が60m、満載吃水(d)が20.5mで、航行速度(Vs)15.5ノット(約8.0[m/s])となっている。この場合に船速をVとし、代表長さをLとすると、レイノルズ数は、Re=V×L/ν=8.0×333/(1.2×10-6)=2.22×10となる。
そして、平板で境界層遷移が起こるレイノルズ数は、3.2×10程度あるいは5×10程度とされており、流速8.0〔m/s〕では、L=5×10×(1.2×10-6)/8.0=0.075〔m〕となるので、船舶の没水表面の殆どの領域が乱流境界層の領域又は乱流領域になっていると考えられる。
また、境界層の厚さに関しては、平板では、前縁からの距離をLとして、99%境界層厚さ(δ)は、(δ/L)=5/√Reという話があり、L=100mでは、レイノルズ数は、Re=8.0×100/(1.2×10-6)=6.7×10となるので、(δ/L)=5/√Re=1.93×10-4となり、δ=1.93×10-2mとなる。つまり、計算上では約2cmとなる。
また、水槽試験を考えた場合には、模型船が実船の1/100の大きさとすると、相似側を維持するために、レイノルズ数を同じにするためには、模型船の船速は100倍となり、実用的ではなくなる。また、風洞試験を考えると、空気の動粘性係数νaは、地上で15℃では、νa≒1.5×10-5〔m/s〕となり、水の約1/10となる。そのため、模型船が実船の1/100の大きさとすると、レイノルズ数を維持したままでは、風速が1000倍となる上に、圧縮性の問題も発生し、実際的ではなくなる。つまり、レイノルズ数を維持したままで、模型で試験をすることが非常に困難であるという問題がある。
本件の発明者は、上記の従来技術においては、船体表面の摩擦抵抗係数に注目して、この摩擦抵抗係数を低減することで、船体表面における摩擦抵抗の低減を図っているが、摩擦抵抗は、船体表面の境界層の外側の外部流の流速の2乗に比例するものであるので、船体表面の流速を遅くすることで、船体表面における摩擦抵抗を低減して、推進効率を向上できるのではないかと考えた。
本発明は上記のことを鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、水上を航行する船舶等の水上航走体や潜水艦等の水中を航行する水中航走体等の航走体において、水に接する没水表面の摩擦抵抗を低減する摩擦抵抗低減システム、航走体及び航走体の抵抗低減方法を提供することにある。
上記のような目的を達成するための本発明の摩擦抵抗低減システムは、航走時に水面下の船体没水部を有する航走体に配置する摩擦抵抗低減システムであって、前記航走体の前記船体没水部の最大幅の1/2よりも幅が大きい第1前後領域で、少なくとも航走時において、前記船体没水部の没水表面に一体で設けられている水放出口から、又は、前記船体没水部の没水表面に当接または離間して別体で配置されている水放出口から、前記水放出口の周囲の主流の流速と航走速度のいずれか一方よりも遅い流速で、前記水放出口の下流の前記没水表面に沿うように、水を放出することを特徴とする摩擦抵抗低減システムである。
この「航走体」には水上航走体と水中航走体が含まれる。そして、本発明の効果は、特に、水上航走体では、船舶の浮力による分類で「最も一般的な船体下部が水面下に沈むことで浮力を得る船であり、航行時と停船時のいずれでも浮力を得る方法に変りはない。」という「排水量型船舶」において効果が大きく、特に航行速度が比較的遅く、推進抵抗において摩擦抵抗の占める割合が大きい商船で効果が大きい。また、水中航走体では、没水表面が大きく造波抵抗が無いので、効果が大きく、この水中航走体としては、調査用の潜水艇、探査用の潜水艇、軍用の潜水艦等がある。
また、「船体没水部」は、航走体が航走するときに没水している部分、言い換えれば、没水表面を有する部分であり、水上航走体では、通常運航時で没水部の容積が略最大になる没水部のことを言い、商船や艦艇などの船舶では、満載喫水線より下の部分であり、半没の潜水艇ではその最大没水部分であり、全没の潜水艦などでは、艦橋、ブリッジ、セイル、司令塔などと呼ばれる船体から突出した部分を除いた船体となる。そして、「没水表面」は航走時の外側の「浸水表面」のことを言う。従って、耐圧殻が複殻式の潜水艦の場合は、外殻の外側の面が「没水表面」となる。
また「主流の流速と航走速度のいずれか一方」に関しては、「主流」は境界層理論の言葉で「粘性による影響を強く受ける層である境界層(層流境界層又は乱流境界層)の外側の流れ」のことを言う。なお、ここでは、「境界層の厚さ」は、主流に対して、99%までの速度の流れを持つ「99%境界層厚さ」とする。しかしながら、高レイノルズ数の流域における航走体の「主流の流速」は、現状においては正確に推定できないと考えられるので、「主流の流速」の特定が難しい場合には、「主流の流速」の代わりに「航走速度」を用いる。
そして、「航走体の前記船体没水部の最大幅の1/2よりも幅が大きい第1前後領域」の意味は、航走体の前方側における前縁部を除くと共に、後方側の後流が発生している部位を除くとの意味である。この「第1前後領域」は、水放出口から水を放出していない場合では、没水表面の近傍の流れが没水表面から離れた後流になっておらず、主に摩擦抵抗が大きいと考えられる領域である。後流(伴流)が発生する部位が船速によって変化する可能性があり、また、この後流が発生する部位の特定が難しいことから、水放出口をこの第1前後領域に設けるという表現にしている。勿論、水放出口を、この第1前後領域以外に広げて設けてもよい。
なお、摩擦抵抗の低減効果を上げるためには、船体没水部の没水表面の全体の25%以上でかつ50%以下の領域を、より好ましくは、15%以上でかつ90%以下の領域を、水放出口から放出する水で覆うことが好ましい。この「25%」、「50%」、「15%」及び「90%」という数字は、摩擦低減の効果の境界値を示すものではなく、本発明の構成を他の構成と区別するための数字である。
この構成によれば、本発明の航走体は、船体没水部の没水表面に主流又は航走速度のいずれか一方よりも流速が遅い水で覆うことで、没水表面における流速を小さくすることができるので、船体没水部の没水表面における摩擦抵抗を低減できる。
この摩擦抵抗の低減に関しては、次のように考える。つまり、低速の水を没水表面に沿って放出することで、没水表面におけるレイノルズ数は低下するので、没水表面の摩擦抵抗係数自体は大きくなる可能性が有るが、摩擦抵抗は流速の2乗に比例するので、摩擦抵抗は全体としては減少すると考える。仮に、没水表面の近傍の流速を半分にできれば、摩擦抵抗を4分の1にできることになり、また、没水表面の近傍の流速を71%に低下させることで、摩擦抵抗を約半分にできることになる。従って、少しの流速低下でも大きな効果を得られると考える。一方、摩擦抵抗係数を低減する場合は、摩擦抵抗係数に比例して摩擦抵抗が低減されることになる。
また、水(清水、海水、河川水、湖水等)を用いるので、気泡、マイクロバブルを必要とせず、これらの発生装置及び発生機構が不要になる。また、水を用いているので、水深が深く水圧の大きい部位に対しても水の自重で対応でき、水圧を考慮する必要が無いので、放出時の駆動力が少なくて済む。さらに、従来技術における没水表面に対して気泡やマイクロバブル含有水を供給するシステムを、これらの代わりに水を放出するように改造することで、これらの供給システムの構成を利用することができるようになる。
そして、航走体を新造する際には、船体没水部の形状を考慮しつつ、水放出口の配置による圧力抵抗の増加を抑制しながら、没水表面に水放出口を設けることができるので、摩擦抵抗低減システムの水放出口を没水表面に一体的に設ける構成で製造することが好ましい。この構成では、没水表面の内部に水を放出するための導水路を形成することができるので、没水表面における水流の乱れを少なくできる。
一方、既存の航走体に摩擦抵抗低減システムを追設する際には、既存の航走体の本体を改造することなく、水放出口を没水表面とは別体で形成して、没水表面に当接または離間して配置することで、摩擦抵抗低減システムを没水表面の外側から配設できる。この構成では、没水表面の外側に水を放出する導水路を形成することになるので、没水表面における水流の乱れが大きくなるが、既存の航走体に容易に摩擦抵抗低減システムを配置できる。
そして、水を没水表面に沿わせて、水放出口の後方に死水領域が発生しないように放出することにより、没水表面に凹凸を設ける構成に比べて、水放出口の後方に死水領域が発生して圧力抵抗が生じることを防止できる。従って、水放出口から放出する水の流速は、ある程度の流速で放出することが好ましい。
なお、水放出口から放出する水を没水表面の接線方向でなく、法線方向成分を持たせて放出して、一旦に没水表面から離れた方向に放出しても、主流があるため、放出された水は没水表面に付着して沿って流れる場合が多いと考えられる。しかしながら、この場合は水放出口の下流の直後に死水領域が発生するので、推進抵抗の面では好ましくない。従って、水は没水表面の接線方向に放出することがより好ましいと考える。
上記の摩擦抵抗低減システムにおいて、前記水放出口から放出する水が、前記航走体が航走する水域の水であるとすると、航走体の周囲の水を、吸い込んだり、取り入れたり、誘導したりして、没水表面の水放出口に放出することになるので、放出用の水を航走体に貯蔵しておく必要が無くなる。この場合に、水の取り入れ口を没水表面に作用する圧力が大きい前方の部位に開口して、水放出口に放出する水を第1前後領域より前方の部位で取り入れるように構成すると、この船首部に作用する圧力を小さくすることができ、圧力抵抗や造波抵抗を低減できる可能性が生じる。なお、放出用の水の一部を、主機や発電機の冷却水などの用途に使用してもよい。
上記の摩擦抵抗低減システムで、航走体の前後方向に、前記水放出口が複数設けられているとともに、前方の前記水放出口から放出される水の流速と後方の前記水放出口から放出される水の流速とが異なるように水を放出すると、水の放出による流れの攪乱の程度が不均一になり、渦流の発生や拡大を抑制できる。
例えば、没水表面の主流の流速と放出水の流速の差が大きいと、流れの攪乱が大きくなるので、渦流の発生や拡大が生じ易くなる。没水表面の流れの様子によっては、上流側では、放出水の流速を比較的速くして、主流の流速と放出水の流速の差を小さくする。一方、主流と放出水が混合して没水表面の近傍の流速が遅くなる下流側では、放出水の流速を比較的遅くして、没水表面の近傍の流速と放出水の流速の差を小さくしつつ、主流の流速と放出水の流速の差を大きくする。これにより、渦流の発生や流れの攪乱を小さくして渦流などによる抵抗の増加を抑制しつつ、没水表面の近傍の流れを主流よりも小さくして、摩擦抵抗の低減を図る。
あるいは、没水表面の流れ場によっては、主流の流速と放出水の流速の差により流れの攪乱と渦流が発生する可能性があるので、上流側では、放出水の流速を比較的遅くし、隣接する下流側では、放出水の流速を比較的速くしたりする。あるいは、その逆の流速の関係にしたりする。つまり、上流側と下流側で発生する流れの攪乱の方向や渦の方向とが、上流側と下流側とで互いに反対方向になるようにする。これにより、流れの攪乱や渦流の発生を小さくしつつ、摩擦抵抗の低減を図る。
上記の摩擦抵抗低減システムにおいて、前記水放出口が航走体の上下方向に間隔を開けて複数設けられているとともに、上側の前記水放出口から放出される水の流速と隣接する下側の前記水放出口から放出される水の流速とが異なるように水を放出すると、水の放出による流れの攪乱の程度が不均一になり、流れの攪乱や渦流の発生や拡大を抑制できる。
上記の摩擦抵抗低減システムにおいて、航走体の前後方向に関して、前記水放出口の部位よりも後方の部位に整流機構を設けて構成すると、水放出口の下流側において、主流と放出された水との流速の差によって生じる攪乱や渦流の有る流れを整流フィンや整流用翼等の整流機構で整流することができ、航走体の後流による損失エネルギーを小さくすることができる。
上記の摩擦抵抗低減システムにおいて、航走体の前後方向に関して、前記水放出口から放出される水の一部又は全部が流入する推進装置又は運動エネルギー吸収装置を設けて構成すると、水放出口の下流側において、主流と放出された水との流速の差によって生じる攪乱や渦流を、ポッド推進器などの推進装置又はプロペラ発電器などの運動エネルギー吸収装置を通過させることで、攪乱や渦流の運動エネルギーを吸収して、整流化した水流を排出することができる。従って、航走体の後流による損失エネルギーを小さくすることができる。
そして、上記の目的を達成するための航走体は、上記のいずれかの摩擦抵抗低減システムを備えていることを特徴とする。この構成により、上記のそれぞれの摩擦抵抗低減システムと同様の効果を発揮できる。
そして、上記の航走体において、前記船体没水部の後半部が、航走体の上下方向に関して、前記船体没水部の上下方向の少なくとも50%の領域において、連続的又は断続的に水線面形状の70%が対称翼の後半部の形状で構成されていると、言い換えれば、船体没水部の後半部の水線面形状の70%が対称翼の後半部の形状の70%と一致するように形成されていると、次のような効果を発揮できる。
この構成によれば、船体没水部の後半部の大半を対称翼の後半部の形状で形成するので、船尾側における流れを単純化でき、後方肩部及び船尾による波の発生や後流(伴流)の発生を抑制できる。従って、船体没水部の後半部で発生する推進抵抗を大幅に減少することができるので、航走体全体としての推進抵抗を減少することができる。
そして、上記の目的を達成するための航走体の摩擦抵抗低減方法は、航走時に水面下の船体没水部を有する航走体において、少なくとも航走時に、前記船体没水部の没水表面に一体で設けられている水放出口から、又は、前記船体没水部の没水表面に当接または離間して別体で配置されている水放出口から、前記水放出口の周囲の主流の流速と航走速度のいずれか一方よりも遅い流速で、前記水放出口の下流の没水表面に沿うように、水を放出して、前記航走体の摩擦抵抗を低減する方法である。
あるいは、上記の目的を達成するための航走体の摩擦抵抗低減方法は、上記のいずれかの摩擦抵抗低減システムを用いて、前記航走体の摩擦抵抗を低減する方法である。
これらの航走体の摩擦抵抗低減方法によれば、航走体の船体没水部で発生する摩擦抵抗を低減することにより、航走体全体の抵抗を低減することができる。
そして、上記の目的を達成するための航走体の改造方法は、上記のいずれかの摩擦抵抗低減システムを既存の前記航走体に追加して設ける方法である。この方法によれば、上記のそれぞれの摩擦抵抗低減システムと同様な効果を発揮できる。
本発明の摩擦抵抗低減システム、航走体、及び、航走体の摩擦抵抗低減方法、航走体の改造方法によれば、航走体の没水表面の一部の領域に低速の水を放出して覆うことにより、没水表面における流速の低下による摩擦抵抗の低減を図ることができ、航走体の推進抵抗を低減することができる。
図1は本発明に係る実施の形態の水上航走体である船舶を例示する正面図である。 図2は本発明に係る実施の形態の水上航走体の第1例として、従来技術の船型の船舶に本発明に係る実施の形態の摩擦抵抗低減システムを備えた構成を模式的に示す底面図である。 図3は本発明に係る実施の形態の水上航走体の第2例として、前半部が従来技術の船型で、後半部が対称翼型の船舶に本発明に係る実施の形態の摩擦抵抗低減システムを備えた構成を模式的に示す底面図である。 図4は本発明に係る実施の形態の水上航走体の第3例として、対称翼型の船舶に本発明に係る実施の形態の摩擦抵抗低減システムを備えた構成を模式的に示す底面図である。 図5は本発明に係る実施の形態の水中航走体である潜水艦に本発明に係る実施の形態の摩擦抵抗低減システムを備えた構成を式的に示す正面図である。 図6は図5の潜水艦の底面図である。 図7は本発明に係る実施の形態の摩擦抵抗低減システムを備えた船舶の前方部分を模式的に示す側面図である。 図8は本発明に係る実施の形態の摩擦抵抗低減システムを備えた潜水艦の前方部分を模式的に示す側面図である。 図9は取水開口部を船首中央部に配置した船舶を示す図で、(a)は正面図で、(b)は底面図である。 図10は取水開口部を船首中央部に配置した潜水艦を示す図で、(a)は正面図で、(b)は底面図である。 図11は取水開口部を船首肩部に配置した船舶を示す図で、(a)は正面図で、(b)は底面図である。 図12は取水開口部を船首の側方に配置した潜水艦を示す図で、(a)は正面図で、(b)は底面図である。 図13は取水開口部を船体の内殻と外殻の間に配置した潜水艦を示す図で、(a)は正面図で、(b)は底面図である。 図14は取水開口部を船体の側方に配置した船舶を示す図で、(a)は正面図で、(b)は底面図である。 図15は取水開口部を船体の側方の波反射用側壁を備えた導水路の入口と兼用にした船舶を示す図で、(a)は正面図で、(b)は底面図である。 図16は取水開口部を平行部に配置した船体没水部の側面における摩擦抵抗低減システムを模式的に示す底面図である。 図17は取水開口部を後方の幅が狭くなる部位にも配置した船体没水部の側面における摩擦抵抗低減システムを模式的に示す底面図である。 図18は外板と一体の水放水口を模式的に示す図で、(a)は後方から見た図で、(b)は右舷側から見た側面図である。 図19は外板とは別体の水放水口を模式的に示す図で、(a)は後方から見た図で、(b)は右舷側から見た側面図である。 図20は水放水口の例を模式的に示す図(側面図又は底面図)である。 図21は水放水口の開口部の形状の例を模式的に示す背面図である。 図22は水放水口から放出される水の流速の分布の第1例を模式的に示す図(側面図又は底面図)である。 図23は水放水口から放出される水の流速の分布の第2例を模式的に示す図(側面図又は底面図)である。 図24は水放水口から放出される水の流速の分布の第3例を模式的に示す図(側面図又は底面図)である。 図25は水放水口から放出される水の流速の分布の第4例を模式的に示す図(側面図又は底面図)である。 図26は整流部材の第1の例を示す図であり、(a)は側面図で、(b)は背面図で、(c)は平面図である。 図27は整流部材の第2の例を示す図であり、(a)は側面図で、(b)は背面図で、(c)は平面図である。 図28は整流用翼の例示であり、(a)は側面図で、(b)は背面図で、(c)は平面図である。 図29は推進装置の例示であり、(a)は底面図で、(b)はX1-X1(前方)から見た図である。 図30はエネルギー吸収装置を例示であり、(a)は底面図で、(b)はX1-X1(前方)から見た図である。 図31は、摩擦抵抗低減システムの簡易な構造の例示であり、(a)は側面図で、(b)はX1-X1(前方)とX2-X2(後方)から見た図で、(c)は平面図である。 図32は、水上航走体の第2例の船舶の形状を示す平面図で、(a)は船体の後半部が対称翼の後半部の形状に構成された船型を示し、(b)は対称翼の形状を示す。 図33は、水上航走体の第3例の船舶の形状を示す平面図で、(a)は船体の全体が対称翼の形状に構成された船型を示し、(b)は対称翼の形状を示す。
〔イントロ及び図の概説〕以下、図面を参照して本発明に係る摩擦抵抗低減システム、航走体及び航走体の摩擦抵抗低減方法等の実施の形態について説明する。最初に、図面について説明する。本発明に係る実施の形態の航走体は水上航走体と水中航走体であるので、これらの航走体の例を、図1~図6に示す。より詳細には、図1~図4に排水量型の船舶1A~1Cの例を、また、図5~図6に潜水艦1Bの例を示す。
そして、図7と図8は摩擦抵抗低減システムの構成を示す図である。また、図9~図17は取水開口部の配置位置を示す図である。図18~図21は水放水口の構成、形状、配置パターンを例示する図で、図22~図25は、水放水口から放出される水の流速分布を例示する図である。図26~図30は、水放水口の後方の流れを整流するための構成を例示する図である。図26~図30は、水放水口の後方の流れを整流するための構成を例示する図である。図31と図32は、船型と対称翼の形状との関係を例示する図である。
なお、図面は本発明を説明するための概略図であり、必ずしも正確な寸法の比率で示されているものでもなく、各装置などの位置も必ずしも正確な位置に示されているものでもない。また、符号「Lc」は船体中央断面を示す船体中央線であり、平面図と底面図、正面図と背面図などでも同じ符号「Lc」を用いている。なお、第1~第3の水上航走体1AA、1AB、1ACの総称に関しては、「水上航走体1A」を用い、水上航走体1Aと水中航走体1Bの総称に関しては「航走体1」を用いる。
また、図面の座標系として、航走体に固定した直交座標系として右手系のX-Y-Z座標系(航走体と共に移動する移動座標系)を採用し、X方向を「航走体の前後方向(以下、略して「前後方向」と言う)」とし、Y方向を「航走体の幅方向(以下、略して「幅方向」と言う)」とし、Z方向を「航走体の上下方向(以下、略して「上下方向」と言う)」とする。なお、ここでは方向を明確にするための補助として座標系を用いているので、座標系の原点は特に固定して論じる必要はないが、説明を簡略化するために座標系の原点を航走体の重心位置としている。また、航走体が直進しているときには、航走体の前進方向は、航走体の前後方向のX方向と一致しているので、ここでは、「前進方向」の符号も「X」で示すこととする。
〔本発明の対象〕そして、本発明では、航走体における没水表面の摩擦抵抗の低減を目的としており、造波抵抗の低減は考えていないので、水上航走体では、大型タンカーや大型鉱石運搬船などの比較的低速で造波抵抗が小さく、摩擦抵抗の大きい船舶が主な対象となる。また、水中航走体では摩擦抵抗の低減の効果が大きいと思われる潜水艦や魚雷や自律型の潜水機器等が対象となる。つまり、本発明が対象とする「航走体」は水上航走体又は水中航走体である。しかしながら、本発明はこれらに限定されず、航走時に水面下に船体没水部を有する航走体であれば、この航走体に適用できる。なお、単胴船だけでなく、双胴船や三胴船等の多胴船等にも適用できる。
そして、本発明の効果は、没水表面が大きい程効果が増す。そのため、特に、水上航走体では、船舶の浮力による分類で「最も一般的な船体下部が水面下に沈むことで浮力を得る船であり、航行時と停船時のいずれでも浮力を得る方法に変りはない。」という「排水量型船舶」において効果が大きく、特に低速で摩擦抵抗が大きい商船で効果が大きい。また、水中航走体では、調査用の潜水艇、探査用の潜水艇、軍用の潜水艦等で効果が大きい。
〔本発明に係る実施の形態の航走体〕図1~図6に示すように、本発明に係る実施の形態の航走体1(1AA、1AB、1AC、1B)は、航走時に水面下の船体没水部2を有する航走体であり、摩擦抵抗低減システム10を備えて構成される。図1~図4に水上航走体1Aの例を示し、図5及び図6に水中航走体1Bの例を示す。図2は従来形状の船舶1Aの例であり、図3は対称翼形状の船尾を持つ船舶1ABの例である。また、図4は対称翼形状の全体形状を持つ船舶1ACの例である。そして、図5と図6は、潜水艦1Bの例である。なお、図30と図31に図3と図4に対応する船舶の形状と対称翼の形状との比較を示す。
そして、摩擦抵抗低減システム10と関係する航走体1の船体没水部2の前後方向の区分として、図2~図4と図6に示す「平行部Rxa」、「第1前後領域Rxb」、「分布領域Rxc」について説明する。「平行部Rxa」は、船舶等で通常使用されている平行部と同じ意味で、「船体幅が同じ領域」である。船体没水部2の最大幅Bmaxの最前方の位置Paと最後方の位置Pbと間が平行部Rxaとなる。
ここで使用する「第1前後領域Rxb」は、「航走体の船体没水部の最大幅の1/2よりも幅が大きい領域」である。この第1前後領域Rxbは、水放出口12から水Waを放出していない場合では、没水表面2fの近傍の流れが没水表面2fから離れた後流になっておらず、主に摩擦抵抗が大きいと考えられる領域である。この第1前後領域Rxbの設定は、船首側におけるよどみ点近傍の圧力が大きい部分と、船尾側における後流領域を除外するために便宜的に設けている。これらの除外した領域は、水放出口12を分布させても、摩擦抵抗の低減効果を殆んど期待できないと推測される領域である。ここでは、圧力の高い前方部位と後流が発生する後方部位は、船速によって変化する可能性があり、また、これらの部位の領域の特定が難しいことから、権利範囲を特定し易いように、「第1前後領域Rxb」を設定している。
また、ここで使用する「分布領域Rxc」は、「摩擦抵抗低減システム10の水放出口12を分布させるのに適した領域」であり、水放出口12から水Waを放出することで得られる摩擦抵抗の低減効果が比較的大となると推測される領域である。ここでは、第1前後領域Rxbの領域内で、かつ、船体没水部2の最大幅Bmaxの最前方の位置Paより後方としている。なお、水放出口12の分布は、船体没水部2の形状によって好ましい分布が決まるものであり、必ずしも、分布領域Rxcの領域内に一様に分布させる必要は無い。また、船体没水部2の形状によっては、水放出口12の分布は、この分布領域Rxcの領域内のみに限定するものではなく、その前後に拡大されていてもよい。
なお、摩擦抵抗の低減効果を上げるためには、船体没水部2の没水表面2fの全体の25%以上でかつ50%以下の領域を、より好ましくは、15%以上でかつ90%以下の領域を、水放出口12から放出する水Waで覆うことが好ましい。この「25%」、「50%」、「15%」及び「90%」という数字は、摩擦低減効果の境界値を示すものではなく、本発明の構成を、必要に応じて、類似した他の構成が有った場合に、この他の構成と区別するための数字である。
〔摩擦抵抗低減システム〕そして、本発明に係る摩擦抵抗低減システム10は、航走時に水面下の船体没水部2を有する航走体1に配置する摩擦抵抗低減システム10である。この摩擦抵抗低減システム10では、航走体1の船体没水部2の最大幅Bmaxの1/2よりも幅Biが大きい第1前後領域Rxbで、少なくとも航走時において、船体没水部2の没水表面2fに一体で設けられている水放出口12から、又は、船体没水部2の没水表面2fに当接または離間して別体で配置されている水放出口12から、水放出口12の周囲の主流の流速Vmと航走速度Vsのいずれか一方よりも遅い流速Vwで、水放出口12の下流の没水表面2fに沿うように、水Waを放出する。なお、一般に主流の流速Vmを推定するのは現状では簡単では無いので、航走速度Vsを放出される水の流速Vwの定義のために導入している。この航走速度Vsは、航走体1に固定した座標系で見た場合に、航走体1の遠方の一様流速と同じ流速と考えられるので、この航走速度Vsを航走体1の遠方の一様流速Vs(方向は航走方向とは逆方向)として採用している。
この摩擦抵抗低減システム10で、水放出口12から放出する水Waは、航走体1が航走する水域の水を用いる。つまり、航走体1の周囲の水Waを、吸い込んだり、取り入れたり、誘導したりして、没水表面2fの水放出口12から放出するので、放出用の水Waを航走体1の内部に貯蔵しておく必要が無くなる。
〔システム構成〕この摩擦抵抗低減システム10は、水Waを取り入れるための取水開口部11と、水Waを没水表面2fに沿って放出するための水放出口12と、水Waを取水開口部11から水放出口12まで導く導水路13とを有して構成される。また、必要に応じて、水Waを取水開口部11から水放出口12まで導き、取水時の流速Viから流速Vwにして水放出口12から放出するための流速調整機構14と、満載状態と軽荷状態等の積載状態の変化に対応させて、水Waを放出する水放出口12を選択するための放出路選定弁15を設ける。
この摩擦抵抗低減システム10は、航走体1の新造時や大規模な改造時に、船体内部に導水路13が配置される内部配置の構成と、既に建造されている航走体1の船体の外側に追加して配置される外部配置の構成とがあり、外部配置の構成には、航走体1に固定配置される固定配置の構成と、航走体1に着脱可能に配置される一時配置の構成とがある。
〔取水開口部〕この取水開口部11としては、第1前後領域Rxbより前方の部位に設ける第1の場合と、第1前後領域Rxbの部位であるが水放出口12より前方に設ける第2の場合と、第1前後領域Rxbより部位より後方に設ける第3の場合とが考えられる。
第1の場合の前方の部位における内部配置で、図9及び図10に示すように、水上航走体1Aと水中航走体1Bの船首部の中央のよどみ点近傍の部位に取水開口部11を設けると、没水表面2fに作用する圧力が大きいよどみ点近傍の部位から水Waを取り入れるので、この部位で船体没水部2に作用する圧力低減できるので推進抵抗を低減できる。また、水上航走体1Aでは、よどみ点近傍の部位で発生する船首波の発生も抑制できるので、造波抵抗も小さくできる。
また、第1の場合の前方の部位における内部配置で、図11及び図12に示すように、船首肩部の近傍の船体没水部2の内側に取水開口部11を設けると、水上航走体1Aでは、船首肩部から発生する波を小さくすることができる上に、船首部のよどみ点近傍で造波された波を取水開口部11の内部に導いて外部への伝搬量を少なくすることができるので、造波抵抗を小さくすることができる。
また、第1の場合の前方の部位における内部配置で、図13に示すように、耐圧殻が複殻式の水中航走体1Bでは、内殻2aと外殻2bとの間に取水開口部11を設ける。この内殻2aと外殻2bとの間の空間2cに入ってくる水の一部又は全部を水放出口12から没水表面2fに放出する水Waとして使用する。
また、第1の場合の前方の部位における外部配置で、図14に示すように、船体没水部2の外側に取水開口部11を設ける。これにより、取水開口部11から没水表面2fの外側に設けた導水路13に入ってくる水Waを、水放出口12に導く。この場合には、導水路13が外付けになるので、推進抵抗ができるだけ小さくなるように導水路13の形状を形成する。
また、第1の場合の前方の部位における外部配置で、図15に示すように、船体没水部2から幅方向Yにある程度離間して、船体の外側に波反射用側壁3を設けている水上航走体1Aでは、船体没水部2と波反射用側壁3の間の波用導水路3cの入口と兼用で取水開口部11を設ける。これにより、波用導水路3cに入ってくる水Waの一部又は全部を水放出口12から没水表面2fに放出する水Waとして使用する。この構成では、船首波や船首肩波等の船首系波を波用導水路3cに取り入れて、造波された波が外部へ伝搬して行くことを抑制することができる。
第2の場合の第1前後領域Rxbの部位における内部配置又は外部配置で、第1前後領域Rxbの部位に取水開口部11を設けると、取水開口部11と水放出口12との距離が短くなり、これらの相互を結ぶ導水路13の摩擦抵抗を小さくすることができる。
なお、図2、図3又は図6に示すような船体没水部2に平行部Rxaを有する船舶1AA又は潜水艦1Bでは、図16に示すように、取水開口部11を平行部Rxaに設けて取水しても、船体没水部2の周囲の流れに大きな影響を与える可能性は少ないと考える。
一方、船体没水部2の一部又は全部に対称翼型の形状を有する船舶1AB、1AC(図3、図4)又は潜水艦(図示しない)では、図17に示すように、船体没水部2の後方で船幅が狭くなる部位に取水開口部11を設けて取水することで、船体没水部2の周囲の流れが剥がれて後流(伴流)が発生する部位を後方に移動させて、圧力抵抗を減少させることができる可能性が有る。
第3の場合の第1前後領域Rxbより部位より後方に設ける構成で、第1前後領域Rxbより後方の部位に取水開口部11を設けると、航走体1の後流の部分から水Waを取り入れることができるようになる。この構成により、航走体1の後流を制御できる可能性が生じる。
また、その他の場合でも、例えば、前後方向Xに関して、取水開口部11を前方側の水放出口12と後方側の水放出口12との間に設けたりすることで、取水開口部11による水の吸込みと水放出口12による水の放出により、船体没水部2の没水表面2fにおける流れを再構成できるので、没水表面2fにおける水流分布を大きく制御できる可能性が生じる。
〔導水路〕摩擦抵抗低減システム10の導水路13に関しては、船体内部に配置される内部配置と、船体の外側に配置される外部配置とがある。内部配置の場合には、船体の外部の推進抵抗は大きくならないが、内部に導水路13が存在する関係で、使用可能な内部容積が減少する。
例えば、造波抵抗低減を目的として、船首側に開口部を設ける船型が数多く提案されており、これらの提案の形状の場合には、導水路13の配置と容量は、取水開口部11の配置と機能に関連して、有る程度決まることになる。図9~図12に示すように、取水開口部11をよどみ点近傍や船首肩部に配置して、船首波の低減を図る場合には、少なくとも船首側においては内部配置となる。
一方、摩擦抵抗低減システム10を追加で設ける場合には、導水路13を外部配置して、船体自体の改造量を少なくすることが好ましい。この外部配置では、船体の内部に導水路13が存在しないので、使用可能な内部容積が減少しないが、外部配置された構造物により推進抵抗が増加する。ただし、主要な導水路13を水面より上に配置して、水による推進抵抗の増加を抑制することはできる。いずれにしても、摩擦抵抗低減システム10による抵抗増加と摩擦抵抗の減少とのバランスを取る必要がある。
また、既存の水路を利用して、摩擦抵抗低減システム10を追加で設けることもできる。例えば、側壁内側のバラストタンクの一部に導水路13を設けられる場合は内部配置とすることができる。また、図13に示すように、内殻2aと外殻2bを備えている潜水艦1Bの場合には、この内殻2aと外殻2bの内部に導水路13を設けることで、導水路13の配置による摩擦抵抗の増加を回避できる。
また、図14に示すように、船首肩部の外側に取水開口部11を設ける場合には、導水路13を、没水表面2fに沿って配置してもよく、没水表面2fから離間して配置してもよい。さらに、波反射用側壁3を備えた波用導水路3cが有る場合は、図15に示すように、この波反射用側壁3の摩擦抵抗を低減する必要があるので、波用導水路3cを外部配置の導水路13と兼用にしたり、波用導水路3cの内部に導水路13を配置したりすることで、導水路13の配置による摩擦抵抗の増加を抑制できる。また、図16及び図17に示すように、取水開口部11を第1前後領域Rxb及びその後方部位に設ける場合は、導水路13は内部配置と外部配置の両方を考えることができる。
〔流速調整機構〕流速調整機構14は、取水開口部11から導水路13に流れ込んだ水Waを水放出口12に放出するまでの間に、水Waの流速を放出時の流速Vwにする機構である。水Waは非圧縮性であるので、水Waの流速を遅くする場合には、導水路13を閉通路にして、取水開口部11で取り込んだ水Waの量を維持しながら、水放出口12の全体の流出面積を、取水開口部11の全体の流入面積よりも大きくすればよいことになる。この流量維持方法では、流速調整機構14として、導水路13に通路拡大部を設ける。
取水開口部11が船首側に有る場合では、水Waが波のエネルギーと運動エネルギーを持って流入してくるので、通路拡大部を設けるだけ、水放水口12に導くことができる。しかし、流入してくる水Waが持つ波のエネルギーと運動エネルギーが大きい場合には、この通路拡大部の上流にプロペラ式発電機などのエネルギー吸収用の機器を設けて、水Waの波エネルギーと運動エネルギーを吸収してもよい。また、逆に流入してくる水Waが持つ波エネルギーと運動エネルギーが小さい場合には、流通抵抗に打ち勝って水Waを水放出口12に放出するために、ポンプやプロペラなどの流速加速用の機器を設ける必要がある。
この流速調整機構14は、導水路13における流路抵抗ができるだけ小さくなるような位置に配置することが好ましい。導水路13における摩擦抵抗を全体として小さくするためには、導水路13における平均流速を小さくすることが有利となるので、流速調整機構14を導水路13のできるだけ上流側に配置して、上流側で流速を小さくすることが望ましい。ただし、流速を遅くすると、導水路13の流路断面積を大きくする必要が生じて、導水路13の容積が大きくなるので、導水路13における摩擦抵抗の低減効果と導水路13の容積の増加とのバランスを取る必要がある。
一方、導水路13を開水路にして、導水路13に流れる水Waの量を、取水開口部11から流入した水Waの量よりも増加することで、水放出口12から放出される水Waの流速を低下させる方法もある。この流量増量方法では、導水路13の取水開口部11の近傍、導水路13の途中、水放出口12の近傍等において、導水路13の内部に、エジェクターに類似した吸引機構を設ける。この吸引機構が流速調整機構14となる。この吸引機構で、取水開口部11から取り入れた水Waの運動エネルギーを利用して船体没水部2の周囲の水Waを吸引する。なお、取り入れた水Waの運動エネルギーが小さいときには必要に応じて、水Waの流速を加速する流速加速用の機器を用いる。この流速調整機構14の配置位置についても、導水路13における摩擦抵抗と容積とのバランスを取りながら設定する。
また、もう一つの流量増量方法では、導水路13に取水開口部11とは別の系統で取り入れて、船体の外部に排出する水Wa(例えば、エンジン冷却水など)を遅い流速で導水路13の内部に取り入れる。この場合は、合流機構が流速調整機構14となる。ただし、この別系統で使用する水量は、通常は、少ないので、補助的なものとなる。
〔水放出口〕水放出口12の配置部位に関しては、摩擦低減効果が有ると考えられる分布領域Rxcとなる。そして、配置のパターンとしては、上下方向Zに延びるスリット形状の水放出口12、又は、間隔を設けて配置した複数個の水放出口12を、複数列、航走体1の前後方向Xに設けたり、間隔を設けて配置した複数個の水放出口12を千鳥状に配置したりする。
また、水放出口12の構造に関しては、没水表面2fとの一体の構造と、没水表面2fとは別体の構造とが考えられる。この一体の構造では、摩擦抵抗低減システム10の水放出口12を没水表面2fと一体的に設ける構成、言い換えれば、没水表面2fを構成する外板を加工して設ける構成で製造する。そして、この一体の構造では、没水表面2fの内部に水Waを放出するための導水路13を形成することができるので、没水表面2fにおける水流の変化を少なくできる。そのため、船体没水部2の形状を考慮しつつ水放出口12を設けることができるので、船体没水部2の圧力抵抗の増加を抑制し易い。従って、航走体1を新造する際には、この一体の構造が好ましい。
図18に、この没水表面2fとの一体の構造の水放出口12を例示する。導水路13の枝管13aの切欠き部13cからの水Waは、導水路13の内部の分岐口13iから、外周殻12aで囲われ放出路12cに入り、開口部12dから外部に放出される。なお、この放出路12cでは、水Waの放出方向を整えるために、仕切板12bを設けている。
また、没水表面2fとは別体の構造では、没水表面2fを構成する外板とは別体で水放出口12を形成して、没水表面2fに当接または離間して配置する構成とする。この別体の構造では、既存の航走体1の本体を改造することなく、摩擦抵抗低減システム10を追設できる。この別体の構成では、没水表面2fの外側に水Waを放出する導水路13を形成することになるので、没水表面2fにおける水流の変化が大きくなるが、既存の航走体1に容易に摩擦抵抗低減システム10を配置できる。従って、既存の航走体1に摩擦抵抗低減システム10を追加する際には、この別体の構造が好ましい。
図19に、この没水表面2fと別体の構造の水放出口12を例示する。導水路13の枝管13aと水放出口12を結ぶ連結管13bからの水Waは、導水路13の内部の分岐口13iから、外周殻12aで囲われた放出路12cに入り、開口部12dから外部に放出される。この構成では、枝管13aには、外板2dの没水表面2fに接触する接触板13dが支柱13eを介して設けられている。また、水放出口12においても、没水表面2fと当接する側には接触板12eが配置されている。この接触板12eは放出路12cの周囲の一部を形成している。
〔水放出口の構成と形状〕この水放出口12に関しては、前後方向Xに対して直交する方向(上下方向Z:図20、幅方向Y)や交差する方向(斜め前後方向)に対して、開口部12dを連続させてスリット状に設ける構成(図20の右)がある。また、複数の開口部12dを連続させ水放出口12を、間隔を開けて配置したり(図20の中央)、単一又は少数の開口部の水放出口12を、間隔を開けて設けたりする(図20の左)。また、これらの構成を混合して配置する構成もある。
そして、この個々の水放出口12の開口部12dの流出断面の形状に関しては、細長いスリット状の形状(図21(a))、半円形形状(図21(b))、半楕円形形状(図21(c))、三角形形状(図21(d))、長方形形状(図21(e))、台形形状(図21(f))等の様々な形状が考えられる。水放出口12の形状に関しては、摩擦抵抗を発生する表面積の増加を抑制しながら、放出される水Waで没水表面2fを効率よく覆うことができる形状にすることが好ましい。また、水放出口12の下流側に発生する渦流が小さくなるような形状にすることが好ましい。
〔放出される水の方向と流速〕そして、水Waを没水表面2fに沿わせて放出することにより、水放出口12の後方に死水領域が発生して圧力抵抗が生じることを防止する。そのため、水放出口12から放出する水Waの流速Vwは、水放出口12の後方に死水領域が発生しないように、ある程度の流速Vwで放出する。
なお、水放出口12から放出する水Waを没水表面2fの接線方向でなく、法線方向成分を持たせて放出して、一旦に没水表面2fから離れた方向に放出しても、主流があるため、コアンダ効果などにより、放出された水Waが没水表面2fに付着して沿って流れる場合があるが、この場合は水放出口12の直後に死水領域が発生するので、推進抵抗の面では好ましくない。従って、水Waは没水表面2fの接線方向及びそれに近い方向に放出して、放出される水Waが没水表面2fに沿って流れるようにする。
さらに、水放出口12の下流側の渦流の渦の方向や強弱や分布などを考慮しながら、水放出口12の形状と水放出口12の配置と放出される水Waの流速Vwとを変化させることにより、水放出口12の下流の流れを相互干渉させて、渦流による推進抵抗の増加を抑制する。
〔水の放出パターン〕この水放出口12から放出される水Waの放出パターンに関しては、航走体の前後方向Xに、水放出口12が複数設けられているとともに、前方の水放出口12から放出される水Waの流速Vwと後方の水放出口12から放出される水Waの流速Vwとが異なるように水Waを放出することがより好ましい。これにより、水放出口12からの水Waの放出による流れの攪乱の程度を不均一にして、渦流の発生や拡大の抑制を図る。
例えば、没水表面2fの主流の流速Vmと放出する水Waの流速Vwの差が大きいと、流れの攪乱が大きくなるので、渦流の発生や拡大が生じ易くなる。これを考慮して、図22に示すように、没水表面2fの流れ場の状態によっては、上流側では、水Waの流速Vwを比較的速くして、主流の流速Vmと水Waの流速Vwの差を小さくして、主流と放出される水Waが混合して没水表面2fの近傍の流速が遅くなる下流側では、放出される水Waの流速Vwを比較的遅くして、没水表面2fの近傍の流速Vmと放出される水Waの流速Vwの差を小さくしつつ、主流の流速Vmと放出される水Waの流速Vwの差を大きくする。これにより、渦流の発生や流れの攪乱を小さくしつつ没水表面2fの近傍の流れの流速Vwを主流の流速Vmよりも小さくして、没水表面2fの摩擦抵抗の低減を図る。
あるいは、没水表面2fの流れ場の状態によっては、主流の流速Vmと放出される水Waの流速Vwの差により流れの攪乱と渦流が発生する可能性がある。これを考慮して、図23に示すように、上流側では、放出される水Waの流速Vwを比較的遅くし、隣接する下流側では、放出される水Waの流速Vwを比較的速くしたり、その逆の流速の関係にしたりして、上流側と下流側で発生する流れの攪乱の方向や渦の方向とが上流側と下流側とで互いに反対方向になるようにする。これにより、流れの攪乱や渦流の発生を小さくしつつ、摩擦抵抗の低減を図る。
また、図24及び図25に示すように、水放出口12が航走体の上下方向Zに間隔を開けて複数設けられているとともに、上側の水放出口12から放出される水Waの流速Vwと隣接する下側の水放出口12から放出される水Waの流速Vwとが異なるように水Waを放出する。これにより、水Waの放出による流れの攪乱の程度を不均一にして、流れの攪乱や渦流の発生や拡大を抑制する。
〔整流機構〕そして、摩擦抵抗低減システム10においては、航走体の前後方向Xに関して、水放出口12の部位よりも後方の部位に整流機構30を設けて構成することが好ましい。この整流機構30としては、整流用フィン30Aや整流用翼30B等がある。
この整流用フィン30Aに関しては、水放出口12の形状によって、主流と放出された水Waとの混合領域(言い換えれば、流速の境界領域)が没水表面2fに対して変化するが、この混合領域に整流用フィン30Aを設けることにより、主流側の水と、放出される水Waとの間で渦流ができることを妨げつつ、両者の混合を図る。
この整流用フィン30Aの形状に関しては、その幅方向の形状は、必ずしも直線である必要は無く、航走体1の横断面で見たときに、主流と放出される水Waとの混合部位の形状に合わせた形状とすることが好ましい。ただし、摩擦抵抗低減システム10の効果が損なわれる程度まで、整流用フィン30Aの摩擦抵抗が大きくなっては、整流用フィン30Aを設ける意味が無いので、渦流による抵抗の抑制効果とのバランスを取る必要がある。
整流用フィン30Aの具体的な例示としては、例えば、図26に示すように、水放出口12の形状が細長いスリット形状であれば、整流用フィン30Aの前縁部30Aaが前後方向Xから見た場合にそのスリット形状の水放出口12の開口部12dの外周に沿った形状に形成されて、開口部12dより少し後方に配置される。本体30Abは、没水表面2fに沿って後方(-X方向)に延びている形状となる。本体の後側に三角形形状や台形形状等の切欠き30Acを設けることにより、主流側の水と放出される水Waの混合度合いを調整して、渦流の発生を抑制する。なお、整流用フィン30Aは支持部材30Adにより、没水表面2fに支持されたり、支持部材30Aeにより、水放出口12に支持されたりする。
また、没水表面2fに沿って、水放出口12が離間して配置されている場合には、水放出口12の間の領域では流速が主流に近いので、例えば、図27に示すように、整流用フィン30Aの前縁部30Aaが水放出口12の間に配置され、水放出口12の開口部12dより少し後方に配置される。本体30Abは断面がT字形状に形成され、没水表面2fに配置される。開口部12dの後側に整流用フィン30Aを設けることにより、主流側の水と放出される水Waの混合度合いを調整して、渦流の発生を抑制する。
そして、整流用翼30Bに関しては、例えば、図28に示すように、水放出口12の前方に整流用翼30Bを没水表面2f側に対して前縁側が接近する迎角αを取るように配置することで、整流用翼30Bの後端側から、渦の流れを発生させる。この整流用翼30Bの渦の流れを、水放出口12の後方で発生する流れの攪乱や渦の流れと干渉させて、流れを整流する。この整流用翼30Bの幅方向Yの形状は直線である必要は無く、水放出口12の開口部12dの形状に合わせて、角型や半円形等の形状とすることが好ましい。また、整流用翼30Bの翼幅を短くして多数基配置することで、翼端渦を効率よく発生させつつ、整流用翼30Bの全体として摩擦抵抗を減少させることも考えられる。
これらの構成により、水放出口12の下流側において、主流の流速Vmと放出された水Waとの流速Vwの差によって生じる流れの攪乱や渦流が生じている可能性の有る流れをこれらの整流機構30で整流することができ、航走体1の後流の運動エネルギーを小さくすることができる。
〔推進装置〕また、摩擦抵抗低減システム10において、航走体の前後方向Xに関して、水放出口12の部位よりも後方の位置に、水放出口12から放出される水Waの一部又は全部が流入する推進装置40又は運動エネルギー吸収装置50を設けて構成することが好ましい。この推進装置40は、主流と放出された水Waとの混合領域の水流を吸引して、水Waを加速して排出する。
この推進装置40としては、例えば、図29に示すように、航走体1の推進力を発生する小型の推進器41を上下方向Y等に複数個の列として配置して構成する。この小型の推進器41の配列に関しては、航走体1の横断面で見たときに、主流と放出された水Waとの混合領域に、小型の推進器41を列状に配置することが好ましい。
この構成により、水放出口12の下流側において、主流と放出された水Waとの流速の差によって生じる攪乱や渦流を、この推進装置40を通過させることで、攪乱や渦流の運動エネルギーを吸収して、整流化した水流を排出することができるので、航走体1の後流の運動エネルギーを小さくすることができる。
〔運動エネルギー吸収装置〕また、この運動エネルギー吸収装置50は、主流と放出された水Waとの混合領域の水流により、プロペラなどを回転して発電することで、渦流の運動エネルギーを吸引して整流した流れを排出する。この運動エネルギー吸収装置50は、主流と放出された水Waとの混合領域の水流を吸引して、水Waの持つ運動エネルギーを吸収して排出する。
この運動エネルギー吸収装置50としては、例えば、図30に示すように、小型のプロペラ発電器51を列にして配置して構成する。この小型のプロペラ発電器51の配列に関しては、推進装置の推進器の配列と同様に、航走体1の横断面で見たときに、主流と放出された水Waとの混合領域に、小型のプロペラ発電器51を列状に配置する。なお、運動エネルギー吸収装置50の機構を簡単にするために、適当な回転負荷を与えたプロペラだけで、発電機能を省略して、渦流の整流機能だけにして、構成を単純化してもよい。
この運動エネルギー吸収装置50を設ける構成により、水放出口12の下流側において、主流と放出された水Waとの流速の差によって生じる攪乱や渦流を、この運動エネルギー吸収装置50を通過させることで、攪乱や渦流の運動エネルギーを吸収して、整流化した水流を排出することができるので、航走体1の後流の運動エネルギーを小さくすることができる。
〔簡便な構成〕なお、この取水開口部11と水放水口12と導水路(拡大水路)13の構成の例として、図31に示すような、取水開口部11と水放水口12の間に拡大水路を備えた導水路13を設けた簡便な構成10Aが考えられる。この水放水口12の流路断面積を取水開口部11の流路断面積よりも大きくすることで、放出される水Waの流速Vwを主流の流速Vmまたは航走速度Vsよりも小さくすることができる。
この簡便な構成10Aでは、取水開口部11の入口抵抗の減少と水放水口12の出口抵抗の減少と導水路13の水路損失をできる限り小さくすることが望ましく、それぞれの形状を工夫することが重要である。また、この簡便な構成10Aの外形の形状は、摩擦抵抗や圧力抵抗などの粘性抵抗を極力小さくするように工夫する必要があり、流線型にすることが望ましい。また、簡便な構成10Aは複数の配置や多数を没水表面2fに分布させることになるので、この配置や分布させたときの全体としての粘性抵抗を小さくすることも重要となる。これら事項に関しては、水槽実験や数値実験等で対応できると考える。
さらに、導水路13の内部の水路損失及び外形による粘性抵抗を小さくするためには、導水路13の形状を工夫するだけでなく、導水路13を摩擦抵抗係数の小さい合成樹脂で構成したり、導水路13の表面に摩擦抵抗係数が小さい樹脂で塗装したりして、摩擦抵抗を減少することが望ましい。この簡便な構成10Aを比重が1.0以下の材料で形成することで、簡便な構成10Aの配置による航走体1の浮力の減少を回避できる。
この簡便な構成を船体没水部2の没水表面2fに設けたり、この簡便な構成を没水表面2fに対して外側から配置したり、この簡便な構成を備えたシートを没水表面2fに張り付けたりすることで、容易に、簡便な構成10Aを配設することができる。
〔摩擦抵抗低減システムの効果〕そして、上記の摩擦抵抗低減システム10、航走体1、及び、航走体の摩擦抵抗低減方法等によれば、航走体1の没水表面2fの一部の領域に低速の水Waを放出して覆うことにより、没水表面2fの流速の低下により、没水表面2fにおける摩擦抵抗の低減を図ることができるので、航走体1の推進抵抗の低減の効果を得ることができる。
この構成によれば、本発明の航走体1は、船体没水部2の没水表面2fに主流の流速Vm又は航走速度Vsのいずれか一方よりも流速が遅い水Waで覆うことで、没水表面2fにおける流速を主流よりも小さくすることができるので、船体没水部2の没水表面2fにおける摩擦抵抗を低減できる。
この摩擦抵抗の低減に関しては、低速の水Waを没水表面2fに沿って放出することで、没水表面2fの摩擦抵抗係数は大きくなる可能性が有るが、摩擦抵抗は流速の2乗に比例するので、摩擦抵抗自体は減少する。一方、摩擦抵抗は流速の2乗に比例するので、没水表面2f近傍の流速を半分にできれば、摩擦抵抗を4分の1にすることができる。また、没水表面2f近傍の流速を71%に低下させることで、摩擦抵抗を約半分にすることができる。従って、少しの流速低下でも大きな摩擦抵抗の低減効果が得られる。
また、水(清水、海水、河川水、湖水等)を用いるので、気泡、マイクロバブルを必要とせず、これらの発生装置及び発生機構が不要になる。また、水を用いる場合は、水深が深く水圧の大きい部位に対しても自重で対応でき、水圧を考慮する必要が無いので、放出時の駆動力が少なくて済む。さらに、従来技術の没水表面に対して気泡やマイクロバブル含有水を放出するシステムにおいて、これらの代わりに水を放出するように改造することで、これらの放出システムの構成を利用することができる。
〔航走体〕次に、本発明の実施の形態の航走体は、上記のいずれかの摩擦抵抗低減システム10を備えて構成される。そして、第1の実施の形態の水上航走体は、従来船型の水上航走体(例えば船舶)1AAに摩擦抵抗低減システム10を備えて構成される。この第1の実施の形態の船舶1AAの例を図2に示す。
また、本発明の第2の実施の形態の航走体は、摩擦抵抗低減システム10を備える航走体1ABの船体形状が、対称翼形状の船尾を持つ。この対称翼形状の船尾を持つ船舶1ABの例を図3に示す。
そして、この第2の実施の形態の航走体1ABは、図32(a)に示すように、船体没水部2の後半部Rbsが、航走体1ABの上下方向Zに関して、船体没水部2の上下方向Zの少なくとも50%の領域において、連続的又は断続的に水線面形状の70%が図32(b)に示すような対称翼Swingの後半部Rbwの形状で構成される。言い換えれば、船体没水部2の後半部Rbsの水線面形状の70%が対称翼Swingの後半部Rbwの形状の70%と一致するように形成される。
より詳細には、図32(a)では、航走体1ABの船体没水部2の後半部Rbs(船体没水部2の前後方向Xに関する中央Pmより後方)を対称翼(「NACA0020翼」)の後半部Rbw(対称翼60の前後方向Xに関する中央Pmより後方)の形状Swingで形成している例を示す。なお、図32(b)は、対称翼(「NACA0020翼」)Swingの全体を示す。また、対称翼Swingはこの「NACA0020翼」に限定されず、その他の対称翼であってもよい。
この第2の実施の形態の航走体1ABの構成によれば、船体没水部2の後半部Rbsの大半を対称翼Swingの後半部Rbwの形状で形成するので、船尾側における流れを単純化でき、後方肩部及び船尾による波の発生や後流(伴流)の発生を抑制できる。従って、船体没水部2の後半部Rbsで発生する推進抵抗を大幅に減少することができるので、航走体1B全体としての推進抵抗を減少することができる。
また、本発明の第3の実施の形態の航走体1ACは、摩擦抵抗低減システム10を備える航走体1の船体形状が、対称翼形状を持つ。この対称翼形状を持つ船舶1ACの例を図4に示す。
そして、この第3の実施の形態の航走体1ACは、図33(a)に示すように、船体没水部2が、航走体1ACの上下方向Zに関して、船体没水部2の上下方向Zの少なくとも50%の領域において、連続的又は断続的に水線面形状の70%が図33(b)に示すような対称翼Swingの形状で構成される。言い換えれば、船体没水部2の水線面形状の70%が対称翼Swingの形状の70%と一致するように形成される。
より詳細には、図33(a)では、航走体1ACの船体没水部2を対称翼(「NACA0020翼」)の形状Swingで形成している例を示す。なお、図33(b)は、対称翼(「NACA0020翼」)Swingを示す。また、対称翼Swingはこの「NACA0020翼」に限定されず、その他の対称翼であってもよい。
この第3の実施の形態の航走体1ACの構成によれば、船体没水部2の大半を対称翼Swingの形状で形成するので、船体没水部2の全体における流れを円滑にすることができ、船首及び船尾における波の発生や後流(伴流)の発生を抑制できる。従って、船体没水部2で発生する推進抵抗を大幅に減少することができるので、航走体1ACの全体としての推進抵抗を減少することができる。
〔航走体の摩擦抵抗低減方法〕そして、本発明の第1の実施の形態の航走体の摩擦抵抗低減方法は、航走時に水面下の船体没水部2を有する航走体1において、少なくとも航走時に、船体没水部2の没水表面2fに一体で設けられている水放出口12から、又は、没水表面2fに当接または離間して別体で配置されている水放出口12から、水放出口12の周囲の主流の流速Vmと航走速度Vsのいずれか一方よりも遅い流速Vwで、水放出口12の下流の没水表面2fに沿うように水Waを放出して、航走体1の摩擦抵抗を低減する方法である。この航走体の摩擦抵抗低減方法によれば、没水表面2fの流速を低下させることにより、没水表面2fの摩擦抵抗を低減することができ、これにより、航走体1の摩擦抵抗を低減することができる。
あるいは、本発明の第2の実施の形態の航走体の摩擦抵抗低減方法は、上記のいずれかの摩擦抵抗低減システム10を用いて航走体1の摩擦抵抗を低減する方法である。この航走体の摩擦抵抗低減方法によれば、摩擦抵抗低減システム10と同様の効果により、航走体1の摩擦抵抗を低減することができる。
〔航走体の改造方法〕そして、本発明の実施の形態の航走体の改造方法は、上記のいずれかの摩擦抵抗低減システム10を既存の航走体1に追加して設ける方法である。この方法によれば、上記のそれぞれの摩擦抵抗低減システム10と同様な効果を発揮できる。
〔発明の効果〕上記の摩擦抵抗低減システム10、航走体1、及び、航走体の摩擦抵抗低減方法、航走体の改造方法によれば、航走体1の没水表面2fの一部の領域に低速の水Waを放出して覆うことにより、流速の低下による摩擦抵抗の低減を図ることができ、航走体1の推進抵抗の低減の効果を得ることができる。
1 航走体
1A、1AA、1AB、1AC 水上航走体(船舶)
1B 水中航走体(潜水艦)
1C 船体没水部の船尾が対称翼型形状
1D 船体没水部が対称翼型形状
2 船体没水部
2a 内殻
2b 外殻
2c 内殻と外殻との間の空間
2d 外板
2f 没水表面
3 波反射用側壁
3c 波用導水路
10 摩擦抵抗低減システム
10A 簡単な構成(摩擦抵抗低減システム)
11 取水開口部
12 水放出口
12a 外周殻
12b 仕切板
12c 放出路
12d 開口部
12e 接触板
13 導水路
13a 枝管
13b 結ぶ連結管
13c 切欠き部
13d 接触する接触板
13e 支柱
13i 内部の分岐口
14 流速調整機構
15 放出路選定弁
30 整流機構
30A 整流用フィン
30Aa 前縁部
30Ab 本体
30Ac 切欠き
30Ad、30Ae 支持部材
30B 整流用翼
40 推進装置
41 推進器
50 エネルギー吸収装置
51 プロペラ発電器
Bi 船幅
Bmax 最大幅
Rbs 航走体の船体没水部の後半部
Rbw 対称翼の後半部
Rxa 平行部
Rxb 第1前後領域
Rxc 分布領域
Swing 対称翼
Vm 主流の流速
Vs 航走速度
Vw 水を放出する流速
Wa 放出する水
WL 水面(航走時喫水線)
X 前後方向(航走体の前後方向)
Y 幅方向(航走体の幅方向)
Z 上下方向(航走体の上下方向)

Claims (11)

  1. 航走時に水面下の船体没水部(2)を有する航走体(1)に配置する摩擦抵抗低減システム(10)であって、
    前記航走体(1)の前記船体没水部(2)の最大幅(Bmax)の1/2よりも幅(Bi)が大きい第1前後領域(Rxb)で、
    少なくとも航走時において、前記船体没水部(2)の没水表面(2f)に一体で設けられている水放出口(12)から、又は、前記船体没水部(2)の没水表面(2f)に当接または離間して別体で配置されている水放出口(12)から、前記水放出口(12)の周囲の主流の流速(Vm)と航走速度(Vs)のいずれか一方よりも遅い流速(Vw)で、前記水放出口(12)の下流の前記没水表面(2f)に沿うように、水(Wa)を放出することを特徴とする摩擦抵抗低減システム。
  2. 前記水放出口(12)から放出する水(Wa)が、前記航走体(1)が航走する水域の水(Wa)であることを特徴とする請求項1に記載の摩擦抵抗低減システム。
  3. 航走体の前後方向(X)に、前記水放出口(12)が複数設けられているとともに、前方の前記水放出口(12)から放出される水(Wa)の流速(Vw)と隣接する後方の前記水放出口(12)から放出される水(Wa)の流速(Vw)とが異なるように水(Wa)を放出することを特徴とする請求項1又は2に記載の摩擦抵抗低減システム。
  4. 前記水放出口(12)が航走体の上下方向(Z)に間隔を開けて複数設けられているとともに、上側の前記水放出口(12)から放出される水(Wa)の流速(Vw)と隣接する下側の前記水放出口(12)から放出される水(Wa)の流速(Vw)とが異なることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の摩擦抵抗低減システム。
  5. 航走体の前後方向(X)に関して、前記水放出口(12)の部位よりも後方の部位に整流機構(30)を設けていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の摩擦抵抗低減システム。
  6. 航走体の前後方向(X)に関して、前記水放出口(21)の部位よりも後方の位置に、前記水放出口(12)から放出される水(Wa)の一部又は全部が流入する推進装置(40)又は運動エネルギー吸収装置(50)を設けていることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の摩擦抵抗低減システム。
  7. 請求項1~6のいずれか1項に記載の摩擦抵抗低減システム(10)を備えていることを特徴とする航走体。
  8. 前記船体没水部(2)の後半部(Rbs)が、航走体の上下方向(Z)に関して、前記船体没水部(2)の上下方向(Z)の少なくとも50%の領域において、連続的又は断続的に水線面形状の70%が対称翼の後半部(Rbw)の形状で形成されていることを特徴とする請求項7に記載の航走体。
  9. 航走時に水面下の船体没水部(2)を有する航走体(1)において、少なくとも航走時に、前記船体没水部(2)の没水表面(2f)に一体で設けられている水放出口(12)から、又は、前記船体没水部(2)の没水表面(2f)に当接または離間して別体で配置されている水放出口(12)から、前記水放出口(12)の周囲の主流の流速(Vm)と航走速度(Vs)のいずれか一方よりも遅い流速(Vw)で、前記水放出口(12)の下流の没水表面(2f)に沿うように、水(Wa)を放出して、前記航走体(1)の摩擦抵抗を低減することを特徴とする航走体の摩擦抵抗低減方法。
  10. 請求項1~6のいずれか1項に記載の摩擦抵抗低減システム(10)を用いて、前記航走体(1)の摩擦抵抗を低減することを特徴とする航走体の摩擦抵抗低減方法。
  11. 請求項1~6のいずれか1項に記載の摩擦抵抗低減システム(10)を既存の前記航走体(1)に追加して設けることを特徴とする航走体の改造方法。
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