JP2023130274A - 発酵調味料 - Google Patents

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【課題】 飲食品に添加することで、より良い風味を有する飲食品とすることができる天然物由来の発酵調味料を提供する。【解決手段】 ロイシン又はバリンの何れか1以上を含む発酵用液体原料を枯草菌により発酵させることで、イソ吉草酸又はイソ酪酸の何れか1以上を含む、枯草菌発酵調味料が製造できることを見出し、本発明を完成した。【選択図】なし

Description

本発明は、枯草菌発酵調味料及びその製造方法、並びに該発酵調味料を添加した飲食品及びその製造方法等に関する。
枯草菌の芽胞形成能欠損株を用いた発酵調味料が特許文献1で開示されており、また、特許文献2では、豆乳に糖類を添加し、これに納豆菌又は完成した納豆を加え、豆乳が凝集を終えた段階で脱水処理を行い、必要に応じて更に水分を減らして、乳製品を納豆又は納豆菌と豆乳の組み合わせで作る、豆乳を基本原料とする植物系乳製品を作る方法が開示されている。
特許第6019528号公報 特開2001-000104号公報
本発明は、飲食品に添加することで、より良い風味を有する飲食品とすることができる天然物由来の発酵調味料を提供する。
発明者らは、ロイシン又はバリンの何れか1以上を含む発酵用液体原料を枯草菌により発酵させることで、イソ吉草酸又はイソ酪酸の何れか1以上を含む、枯草菌発酵調味料が製造できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[8]の態様に関する。
[1]ロイシン又はバリンの何れか1以上を含む発酵用液体原料を枯草菌により発酵させた枯草菌発酵物からなる枯草菌発酵調味料であって、
イソ吉草酸又はイソ酪酸の何れか1以上を含み、イソ吉草酸及びイソ酪酸を合計で枯草菌発酵調味料の固形分当たり0.15重量%以上含む、枯草菌発酵調味料。
[2]ロイシン及びバリンを合計で0.01重量%以上含む発酵用液体原料を使用することを特徴とする、[1]に記載の枯草菌発酵調味料。
[3]枯草菌により発酵させた枯草菌発酵物をさらにリパーゼ活性を有する酵素を用いて酵素処理した枯草菌発酵調味料である、[1]又は[2]に記載の枯草菌発酵調味料。
[4]ロイシン又はバリンの何れか1以上を含む発酵用液体原料を枯草菌により発酵させ、枯草菌発酵物を得る工程を含む枯草菌発酵調味料の製造方法であって、
イソ吉草酸又はイソ酪酸の何れか1以上を含み、イソ吉草酸及びイソ酪酸を合計で枯草菌発酵調味料の固形分当たり0.15重量%以上含む、枯草菌発酵調味料の製造方法。
[5]ロイシン及びバリンを合計で0.01重量%以上含む発酵用液体原料を使用することを特徴とする、[4]に記載の枯草菌発酵調味料の製造方法。
[6]枯草菌により発酵させた枯草菌発酵物をさらにリパーゼ活性を有する酵素を用いて酵素処理する工程を含む、[4]又は[5]に記載の枯草菌発酵調味料の製造方法。
[7][1]~[3]の何れかに記載の枯草菌発酵調味料を添加してなる、イソ吉草酸及びイソ酪酸を合計で飲食品の固形分当たり0.0001重量%以上含有する飲食品。
[8][1]~[3]の何れかに記載の枯草菌発酵調味料を、イソ吉草酸及びイソ酪酸を合計で飲食品の固形分当たり0.0001重量%以上含有するように飲食品に添加する、飲食品の製造方法。
本発明によって、発酵風味を付与でき、また飲食品の不快な臭いを低減できる天然物由来の枯草菌発酵調味料を提供でき、該調味料を添加することで、より良い風味を有する飲食品とすることができ、よりおいしい飲食品を提供できる。
本発明の枯草菌発酵調味料は、ロイシン又はバリンの何れか1以上を含む発酵用液体原料を枯草菌により発酵させ、枯草菌発酵物を得る工程を含む製造方法で製造でき、さらにリパーゼ活性を有する酵素を用いて酵素処理する工程を含んでいてもよく、得られる枯草菌発酵物は、イソ吉草酸又はイソ酪酸の何れか1以上を含み、枯草菌発酵調味料として利用できる。
本発明に記載の枯草菌は、バチルス・サブチリスであれば特に限定されず、バチルス・サブチリスNBRC3009、バチルス・サブチリスNBRC3013、バチルス・サブチリスNBRC3335、バチルス・サブチリスNBRC13169等の納豆菌が好ましく、独立行政法人製品評価技術基盤機構等から入手することができ、芽胞形成能欠損株が好ましい。
前記芽胞形成能欠損株は、遺伝子組換えによる方法、突然変異による方法等により変異させることで得られるが、自然突然変異による方法が好ましい。自然突然変異による芽胞形成能欠損株の取得方法は、特に限定されず、高温培養法や、野生株と欠損株のコロニーのメラニン色素の着色により識別するランダム法、異化代謝産物抑制(Catabolite repression)様現象を利用した方法(J.F.Michel,B.Cami,P.Schaeffer:Ann.Inst.Pasteur,114,11;21(1968))が例示できるが、異化代謝産物抑制様現象を利用した方法が好ましい(特許第6019528号公報参照)。異化代謝産物抑制様現象を利用する方法により得られる芽胞形成能欠損株は、芽胞形成能と供にリゾチーム活性及び形質転換能が欠損しているため、溶菌による問題がなく継代することができ、芽胞形成能欠損という形質を維持することができる。芽胞形成能欠損株を使用すれば、100℃以下の穏和な殺菌条件で殺菌できるため、芽胞形成株で問題となる殺菌不足による製造設備の汚染を防ぐことができ、各種食品への添加や製剤化が容易となる。
本発明で使用する発酵用液体原料は、枯草菌が増殖できる成分を含む液体であればよく、炭素源、窒素源、無機物等が溶解した液体培地であればよい。炭素源としては、クエン酸等の有機酸、グルコース、シュクロース、デキストリン、澱粉等の糖類、グリセリン、マンニトール等の糖アルコール、糖蜜等が使用でき、また、糖類、糖アルコール又はクエン酸を含む植物抽出物、例えば昆布エキス等の褐藻抽出物、キノコエキス、レモン、ライム、シークワーサー、ユズ、スダチ、カボス、ダイダイ等の香酸柑橘の果汁、ウメ、アンズ、スモモ等のスモモ亜属に属する果実の果汁等、クエン酸を含む果汁等も使用でき、1種又は2種以上を使用してもよい。窒素源としては、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機塩類、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、麦芽エキス、コーンスティープリカー等の窒素含有天然物が使用できる。無機物としては、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸一カリウム、リン酸二カリウム、硫酸マグネシウム、塩化第二鉄等が例示でき、天然物中に含まれる成分を利用できる。
本発明は、ロイシン又はバリンの何れか1以上を含む発酵用液体原料を使用することで、本発明の発酵調味料が得られ、ロイシン又はバリンの何れか1以上を加えた発酵用液体原料又はロイシン若しくはバリンの何れか1以上を比較的多く含む培地成分、例えばアミノ酸混合物、タンパク質分解物若しくはこれらを組み合わせた培地を使用することができる。発酵用液体原料中のロイシン又はバリンの含有量は、本発明の発酵調味料が得られれば特に限定されないが、ロイシン又はバリンの何れか1以上を含む発酵用液体原料を100重量%とした場合に、ロイシン及びバリンを合計で0.01重量%以上含むのが好ましく、0.02~10重量%含むのがより好ましく、0.04~8重量%含むのがさらに好ましく、0.08~5重量%含むのが特に好ましく、0.1~2重量%含むのが最も好ましい。ロイシン又はバリンは、L体でもD体でもラセミ体であってもよいが、L体が好ましい。
本発明における発酵条件は、適宜設定できるが、通気、振盪、攪拌等により好気的に液体発酵するのが好ましく、発酵温度は例えば10~50℃が例示でき、20~45℃が好ましく、発酵時間は例えば2~72時間が例示でき、4~48時間が好ましく、6~36時間がより好ましく、pHは例えば4.0~9.0が例示でき、5.0~8.5が好ましい。発酵中に例えば前記範囲でpH調整をしてもよく、pH5.5~8.0の範囲に調整するのが好ましく、6.0~7.5の範囲に調整するのがより好ましく、pH調整は、クエン酸等の有機酸、水酸化ナトリウム、アンモニア等を用いることができる。
本発明の製造方法は、枯草菌により発酵させた枯草菌発酵物をさらにリパーゼ活性を有する酵素を用いて酵素処理する工程を含んでいてもよく、前記発酵と並行して又は発酵後に酵素処理することができ、酵素処理枯草菌発酵物とすることができる。発酵中又は発酵後にリパーゼ活性を有する酵素を添加することで酵素処理を行うことができるが、エタノールを添加し、エタノール存在下で酵素処理を行うのが好ましい。エタノール濃度は、酵素が適切に作用する濃度であればよいが、エタノール濃度が高過ぎると、酵素活性が低下する傾向にあることから、酵素処理中の液全体を100重量%とした場合に0.01~60重量%含むのが好ましく、0.1~50重量%含むのがより好ましく、0.3~40重量%含むのがさらにより好ましく、0.5~30重量%含むのが特に好ましい。
本発明において、リパーゼ活性を有する酵素は、食品加工に用いることができるリパーゼ活性を有する酵素であれば特に限定されず、該酵素を含むものでもよく、酵素製剤を用いてもよい。酵素製剤としては、例えば、リパーゼ製剤であるリパーゼOF(名糖産業株式会社製)、リパーゼA「アマノ」6(天野エンザイム株式会社製)、リリパーゼ(登録商標)A-10D(ナガセケムテックス株式会社製)等が例示できる。酵素添加量は、適宜設定できるが、酵素添加前の液全体を100重量%とした場合に、酵素製剤として例えば0.0005~2.0重量%の添加量が例示でき、0.001~1.0重量%添加するのが好ましく、0.002~0.5重量%添加するのがより好ましい。
本発明における酵素処理条件は、酵素反応が進む条件であれば特に限定されないが、処理温度は、例えば10~70℃が例示でき、好ましくは15~60℃、より好ましくは20~50℃、処理時間は、例えば10分間~24時間が例示でき、好ましくは20分間~12時間、より好ましくは30分間~6時間、pH条件は酵素の至適pH、pH安定性等を考慮して適宜設定できるが、例えばpH3.0~9.0が例示でき、pH3.5~8.0が好ましく、酵素処理前に該範囲にクエン酸等の有機酸、水酸化ナトリウム、アンモニア等を用いてpH調整をすることができる。また、酵素処理後に中和してもよい。
本発明において、発酵後、又は発酵及び酵素処理後は加熱するのが好ましく、加熱により殺菌及び/又は酵素を失活できる。加熱条件は、一般的な殺菌方法又は酵素失活方法であれば特に限定されないが、例えば60~120℃で1~30分間又は80~100℃で5~20分間の加熱が好ましい。さらに、スプレードライ、真空及び/又は凍結乾燥等を行って粉末化してもよく、一般的な賦形剤を使用できる。
本発明の枯草菌発酵調味料は、ロイシン又はバリンの何れか1以上を含む発酵用液体原料を枯草菌により発酵させた枯草菌発酵物からなる枯草菌発酵調味料であって、枯草菌発酵物をさらにリパーゼ活性を有する酵素を用いて酵素処理した枯草菌発酵物からなる枯草菌発酵調味料であってもよく、イソ吉草酸又はイソ酪酸の何れか1以上を含み、イソ吉草酸及びイソ酪酸を合計で枯草菌発酵調味料の固形分当たり0.15重量%以上、好ましくは0.2~50重量%、より好ましくは0.5~40重量%、さらに好ましくは1.0~30重量%、特に好ましくは2.0~20重量%含む枯草菌発酵調味料である。
本発明の枯草菌発酵調味料は、各種飲食品に添加することで、発酵風味を付与することができ、よりよい風味を有する本発明の飲食品が得られる。また、飲食品が有する風味を増強する効果があり、飲食品の風味増強用として有用で、特に、発酵飲食品の発酵風味増強用として用いることができる。また、飲食品の不快な味を低減することができるため、マスキング用としても有用で、特に植物性タンパク質臭のマスキング用として用いることができる。添加する飲食品は特に制限されず、味噌、ソース、ドレッシング、タレ等の調味料、非アルコール飲料、アルコール飲料等の飲料、スープ等の液状食品、機能性食品等が例示でき、また、植物性タンパク質を使用した、プロテインサプリメント、プロテインバー、プロテインゼリー等のタンパク質補給用食品、豆乳等の飲料、植物性タンパク質を含むスープ類、肉様食品、疑似乳製品等の植物性タンパク質含有飲食品が例示でき、飲食品の不快な味を抑えると共に、発酵風味を付与することができるため、飲食品が有する風味を増強でき、よりおいしい飲食品を提供できる。また、発酵飲食品への添加は、ヨーグルト風味増強用、チーズ風味増強用、キムチ、白菜漬け等の漬物風味増強用、味噌等の発酵調味料風味増強用、納豆風味増強用、日本酒の吟醸香等、醸造酒の風味増強用として用いることができる。枯草菌発酵調味料を添加した飲食品中の枯草菌発酵調味料の含有量は、よりおいしい飲食品が得られれば特に限定されないが、飲食品中に0.01~40重量%含むのが好ましく、0.05~20重量%含むのがより好ましく、0.1~10重量%含むのがさらに好ましい。
本発明の枯草菌発酵調味料が添加された本発明の飲食品は、イソ吉草酸又はイソ酪酸の何れか1以上を含み、イソ吉草酸及びイソ酪酸を合計で飲食品の固形分当たり0.0001重量%以上、好ましくは0.0005~20重量%、より好ましくは0.001~10重量%、さらに好ましくは0.005~5重量%含む飲食品である。
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の例によって限定されるものではない。尚、本発明において、%は別記がない限り全て重量%である。
枯草菌の一種であるバチルス・サブチリスNBRC3335から、異化代謝産物抑制様現象を利用した自然突然変異により、芽胞形成能が欠損した枯草菌:バチルス・サブチリ
Figure 2023130274000001
異は、特許第6019528号公報の実施例に記載の方法で行い、該公報に記載の方法で芽胞形成能が欠損した株であることを確認した。
レモン5倍濃縮透明果汁(日本果実加工株式会社製)24g(2.0%)、酵母エキス(ミースト(登録商標)P1G、アサヒグループ食品株式会社製)12g(1.0%)、L-ロイシン(食品添加物)6g(0.5%)及び水道水1,158gを混合し、20%水酸化ナトリウム水溶液でpH6.0に調整後、121℃、15分間加熱殺菌した後冷却した発酵用液体原料に、前記枯草菌を接種して、35℃、pH7.5で20時間通気発酵することで枯草菌発酵物1,200g(実施品1-1:固形分2.18%)を得た。
昆布だしCIE-8828(池田糖化工業株式会社製)24g(2.0%)、酵母エキス(ミースト(登録商標)P1G)12g(1.0%)、L-バリン(食品添加物)6g(0.5%)及び水道水882gを混合し、20%水酸化ナトリウム水溶液でpH6.0に調整後、121℃、15分間加熱殺菌した後冷却した発酵用液体原料に、前記枯草菌を接種して、35℃、pH6.0で20時間通気発酵することで枯草菌発酵物1,200g(実施品1-2:固形分1.59%)を得た。
レモン5倍濃縮透明果汁24g(2.0%)、酵母エキス(ミースト(登録商標)P1G)12g(1.0%)、L-ロイシン(食品添加物)2.4g(0.2%)、L-バリン(食品添加物)2.4g(0.2%)及び水道水1,159.2gを混合し、20%水酸化ナトリウム水溶液でpH6.0に調整後、121℃、15分間加熱殺菌した後冷却した発酵用液体原料に、前記枯草菌を接種して、30℃、pH7.0で24時間通気発酵することで枯草菌発酵物1,200g(実施品1-3:固形分1.60%)を得た。
実施品1-1~1-3の枯草菌発酵物を、セルロースアセテートフィルター(孔径0.45μm)でろ過し、脂肪酸分析用蛍光試薬(ADAM、フナコシ株式会社製)により蛍光標識したサンプルについて、下記HPLC条件でイソ酪酸及びイソ吉草酸濃度を測定して、表1に示した。
<HPLC測定条件>
・検出器:蛍光検出器(励起波長:365nm、蛍光波長412nm)
・カラム:InertSustain C18(内径4.6mm、長さ250mm)
・移動相:80容量%アセトニトリル水溶液
・流速:1.0ml/分
・カラム温度:40℃
・標品:イソ酪酸(富士フィルム和光純薬株式会社製)、イソ吉草酸(富士フィルム和光純薬株式会社製)をメタノールで溶解して、検量線を作成した。
Figure 2023130274000002
[評価試験]
実施品1-1~1-3の枯草菌発酵物又は比較品を各々豆乳に5%添加して、訓練された3人のパネルにより官能評価を行い、結果を表2に示した。官能評価は、発酵風味又は大豆臭の有無を評価し、発酵風味が「有」と判定した人数が3名を「○」、2名を「△」、0~1名を「×」とし、大豆臭が「無」と判定した人数が3名を「○」、2名を「△」、0~1名を「×」として、結果を表2に示した。また、各試料添加後の豆乳の総合評価として、よりおいしい豆乳となっていたものを「○」、よりおいしい豆乳となっていなかったものを「×」として表2に示した。
尚、試薬のイソ酪酸及びイソ吉草酸を実施例1-1の発酵用液体原料で実施品1-1のイソ酪酸濃度及びイソ吉草酸濃度になるように希釈した溶液を比較品1-1、試薬のイソ酪酸及びイソ吉草酸を実施例1-2の発酵用液体原料で実施品1-2のイソ酪酸濃度及びイソ吉草酸濃度になるように希釈した溶液を比較品1-2、試薬のイソ吉草酸及びイソ吉草酸を実施例1-3の発酵用液体原料で実施品1-3のイソ酪酸濃度及びイソ吉草酸濃度になるように希釈した溶液を比較品1-3として使用した。
Figure 2023130274000003
表2に示す通り、実施品1-1~1-3の枯草菌発酵物は何れも、豆乳に添加することで、不快な大豆臭を抑制できると共に、発酵風味を付与することができたが、同程度のイソ酪酸又はイソ吉草酸を含有する比較品1-1~1-3の水溶液の添加では、発酵風味を付与することはできず、また、不快な大豆臭を抑制することはできなかった。
よって、単に、大豆食品にイソ酪酸又はイソ吉草酸を添加するだけでは、発酵風味はなく、大豆食品由来の不快な臭いも残るため、元の豆乳と比べてよりおいしい豆乳には成り得なかったが、イソ酪酸及び/又はイソ吉草酸を含む本発明の枯草菌発酵物を添加することで、元の豆乳と比べてよりおいしい豆乳に成り得、枯草菌発酵物が枯草菌発酵調味料として有用であることが分かった。
実施品1-1の枯草菌発酵物を50%クエン酸水溶液でpH4.0に調整後、リパーゼ製剤であるリパーゼOF(名糖産業株式会社製)0.05%を添加(実施例2-1)又はリパーゼ0.05%と95容量%エタノール20%を添加(実施例2-2)し、40℃で1時間酵素処理した後、90℃で10分間、加熱処理して実施品2-1及び2-2の酵素処理枯草菌発酵物を得た。
[評価試験]
実施品2-1、2-2の酵素処理枯草菌発酵物、又は比較品1-1を各々豆乳に5%添加して、訓練された3人のパネルにより官能評価を行い、結果を表3に示した。官能評価は、果実様香気を有する発酵風味又は大豆臭の有無を評価し、果実様香気を有する発酵風味が「有」と判定した人数が3名を「○」、2名を「△」、0~1名を「×」とし、大豆臭が「無」と判定した人数が3名を「○」、2名を「△」、0~1名を「×」として、結果を表2に示した。
Figure 2023130274000004
表3に示す通り、実施品2-1及び2-2の酵素処理枯草菌発酵物は何れも、豆乳に添加することで、大豆臭を抑制できると共に、果実様香気を有する発酵風味を付与することができた。
よって、枯草菌発酵物をさらにエタノール存在下又は非存在下でリパーゼ活性を有する酵素で酵素処理することで、大豆臭のマスキング効果を有すると共に、果実様香気を有する発酵風味とすることができ、酵素処理することで枯草菌発酵物がさらに好ましい風味を有し、付与できる枯草菌発酵調味料と成り得ることが分かった。

Claims (8)

  1. ロイシン又はバリンの何れか1以上を含む発酵用液体原料を枯草菌により発酵させた枯草菌発酵物からなる枯草菌発酵調味料であって、
    イソ吉草酸又はイソ酪酸の何れか1以上を含み、イソ吉草酸及びイソ酪酸を合計で枯草菌発酵調味料の固形分当たり0.15重量%以上含む、枯草菌発酵調味料。
  2. ロイシン及びバリンを合計で0.01重量%以上含む発酵用液体原料を使用することを特徴とする、請求項1記載の枯草菌発酵調味料。
  3. 枯草菌により発酵させた枯草菌発酵物をさらにリパーゼ活性を有する酵素を用いて酵素処理した枯草菌発酵調味料である、請求項1又は2記載の枯草菌発酵調味料。
  4. ロイシン又はバリンの何れか1以上を含む発酵用液体原料を枯草菌により発酵させ、枯草菌発酵物を得る工程を含む枯草菌発酵調味料の製造方法であって、
    イソ吉草酸又はイソ酪酸の何れか1以上を含み、イソ吉草酸及びイソ酪酸を合計で枯草菌発酵調味料の固形分当たり0.15重量%以上含む、枯草菌発酵調味料の製造方法。
  5. ロイシン及びバリンを合計で0.01重量%以上含む発酵用液体原料を使用することを特徴とする、請求項4記載の枯草菌発酵調味料の製造方法。
  6. 枯草菌により発酵させた枯草菌発酵物をさらにリパーゼ活性を有する酵素を用いて酵素処理する工程を含む、請求項4又は5記載の枯草菌発酵調味料の製造方法。
  7. 請求項1~3の何れか1項に記載の枯草菌発酵調味料を添加してなる、イソ吉草酸及びイソ酪酸を合計で飲食品の固形分当たり0.0001重量%以上含有する飲食品。
  8. 請求項1~3の何れか1項に記載の枯草菌発酵調味料を、イソ吉草酸及びイソ酪酸を合計で飲食品の固形分当たり0.0001重量%以上含有するように飲食品に添加する、飲食品の製造方法。
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