JP2023129036A - 圧縮機及び冷凍サイクル装置 - Google Patents

圧縮機及び冷凍サイクル装置 Download PDF

Info

Publication number
JP2023129036A
JP2023129036A JP2022033790A JP2022033790A JP2023129036A JP 2023129036 A JP2023129036 A JP 2023129036A JP 2022033790 A JP2022033790 A JP 2022033790A JP 2022033790 A JP2022033790 A JP 2022033790A JP 2023129036 A JP2023129036 A JP 2023129036A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
sliding
sliding member
compressor
crankshaft
scroll
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2022033790A
Other languages
English (en)
Inventor
功二 小島
Koji Kojima
彩 岡本
Aya Okamoto
勇太 岡村
Yuta Okamura
誠也 森
Masaya Mori
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Daikin Industries Ltd
Original Assignee
Daikin Industries Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Daikin Industries Ltd filed Critical Daikin Industries Ltd
Priority to JP2022033790A priority Critical patent/JP2023129036A/ja
Publication of JP2023129036A publication Critical patent/JP2023129036A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Compressor (AREA)

Abstract

Figure 2023129036000001
【課題】摺動部に摩耗が生じた状態で、圧縮機が異常振動しながら長時間運転されることを抑制可能な圧縮機及びこれを備えた冷凍サイクル装置を提供する。
【解決手段】スクロール圧縮機は、吸入した冷媒を圧縮機構により圧縮して吐出する。スクロール圧縮機は、クランク軸80と、クランク軸が接触して摺動する摺動部220と、を備える。摺動部220は、軸受メタル112と、摺動部材222と、を含む。軸受メタルは、クランク軸と接触して摺動する。摺動部材は、軸受メタルが所定量だけ摩耗した際にクランク軸と接触して摺動する。摺動部材の動摩擦係数は、軸受メタルの動摩擦係数より大きい。
【選択図】図7

Description

圧縮機、及び、圧縮機を備える冷凍サイクル装置に関する。
圧縮機における一般的な課題として、摺動部の摩耗の問題が知られている。例えば特許文献1(特開2007-162571号公報)には、軸の軸受に対する片当たりにより、軸受に摩耗が発生し得ることが記載されている。
圧縮機の摺動部に摩耗が生じると、圧縮機が異常振動する可能性がある。圧縮機の異常振動は、圧縮機に接続されている配管を破損し、その結果、圧縮機における圧縮対象等の冷媒や、圧縮機で使用されている冷凍機油等が環境に放出され、環境に悪影響を与えるおそれがある。
第1観点の圧縮機は、吸入した冷媒を圧縮機構により圧縮して吐出する。圧縮機は、第1部材と、第1部材が接触して摺動する摺動部と、を備える。摺動部は、第1摺動部材と、第2摺動部材と、を含む。第1摺動部材は、第1部材と接触して摺動する。第2摺動部材は、第1摺動部材が所定量だけ摩耗した際に第1部材と接触して摺動する。第2摺動部材の動摩擦係数は、第1摺動部材の動摩擦係数より大きい。
第1観点の圧縮機では、摺動部において、第1摺動部材の摩耗が進むと、第1部材が第1摺動部材より動摩擦係数の大きな第2摺動部材と摺動し、圧縮機の運転が高負荷状態になる。そのため、摺動部に摩耗が生じた状態で圧縮機が異常振動しながら長時間運転される前に、圧縮機を停止させることができる。
第2観点の圧縮機は、第1観点の圧縮機であって、第1摺動部材と第2摺動部材とは別材料である。
第2観点の圧縮機では、第1摺動部材の材質によらず、圧縮機の停止を実現することが容易な動摩擦係数の大きな第2摺動部材を設けることができる。
第3観点の圧縮機は、第2観点の圧縮機であって、第2摺動部材は、摩擦材を樹脂で固定した樹脂部材、金属粉を焼結した金属部材、又は、炭素繊維複合材である。
第3観点の圧縮機では、第2摺動部材として上記材料が使用されるため、第1部材が第2摺動部材と摺動する際に高負荷状態が作り出されやすい。
第4観点の圧縮機は、第1観点から第3観点のいずれかの圧縮機であって、第1摺動部材は、摩耗量が最大摩耗量を超える状態で圧縮機が運転される場合に加速的に摩耗が進行する。第2摺動部材は、第1摺動部材が最大摩耗量より小さな値の所定量だけ摩耗した際に第1部材と接触して摺動する。
第4観点の圧縮機では、所定量を最大摩耗量より小さな値とすることで、圧縮機が大きく異常振動し始める前に、圧縮機を停止状態に導くことができる。
第5観点の圧縮機は、第1観点から第4観点のいずれかの圧縮機であって、第1部材と摺動部とは、冷凍機油の油膜を介して接触する。
第6観点の圧縮機は、第5観点の圧縮機であって、第2摺動部材の表面粗さは、第1部材と摺動部との摺動において許容される最小油膜厚さ以上である。
第6観点の圧縮機では、第2摺動部材の表面粗さが最小油膜厚さ以上であるため、摺動部の摩耗が進んだ際に、第2摺動部材と第1部材とが直接接触しやすくい。そのため、摺動部に摩耗が生じた状態で圧縮機が異常振動しながら長時間運転される前に、圧縮機を停止状態に導くことが容易である。
第7観点の圧縮機は、第1観点から第6観点のいずれかの圧縮機であって、供給される電流が閾値を超える場合に運転を停止する。
第1部材が動摩擦係数の高い第2摺動部材と摺動して高負荷状態が作り出されると、圧縮機の電流値は大きくなる。第7観点の圧縮機では、これを利用し、供給される電流の大きさに基づいて圧縮機の運転を停止させることができる。
第8観点の冷凍サイクル装置は、第1観点から第7観点のいずれかの圧縮機と、凝縮器と、蒸発器と、膨張機構と、を有する冷媒回路を備える。
一実施形態に係る冷凍サイクル装置の概略構成図である。 圧縮機の一実施形態に係るスクロール圧縮機の概略縦断面図である。 図2のスクロール圧縮機の可動スクロールを背面側から見た概略平面図である。 図2のスクロール圧縮機のオルダムリングの概略平面図である。 図4のオルダムリングの概略側面図である。 図2のスクロール圧縮機の、クランク軸の偏心部と、クランク軸の偏心部と摺動する摺動部との拡大概略縦断面図である。 図2のスクロール圧縮機の、上部軸受ハウジングにおける、クランク軸の主軸と、クランク軸の主軸と摺動する摺動部との拡大概略縦断面図である。 図2のスクロール圧縮機の、下部軸受ハウジングにおける、クランク軸の主軸と、クランク軸の主軸と摺動する摺動部との拡大概略縦断面図である。 図2のスクロール圧縮機の、固定スクロールの周縁部と、固定スクロールの周縁部と摺動する摺動部との拡大概略縦断面図である。 図2のスクロール圧縮機の、可動スクロールのキー溝の側面と、可動スクロールのキー溝の側面と摺動する摺動部との拡大概略平面図である。 変形例Dに係る、上部軸受ハウジングにおける、クランク軸の主軸と、クランク軸の主軸と摺動する摺動部との拡大概略縦断面図である。 変形例Dに係る、固定スクロールの周縁部と、固定スクロールの周縁部と摺動する摺動部との拡大概略縦断面図である。 圧縮機の変形例Eに係るロータリ圧縮機の概略縦断面図である。
本開示の圧縮機と、圧縮機を備えた冷凍サイクル装置の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
以下では、説明の便宜上、位置や向きを説明するために、「上」、「下」等の表現を用いる場合がある。断りの無い場合、「上」、「下」等の表現の表す位置や向きは、図中の矢印に従う。
また、以下では、「平行」、「直交」、「水平」、「垂直」、「同一」等の表現を用いる場合があるが、これらの表現は、厳密な意味で「平行」、「直交」、「水平」、「垂直」、「同一」である場合に限定されない。「平行」、「直交」、「水平」、「垂直」、「同一」等の表現は、実質的に「平行」、「直交」、「水平」、「垂直」、「同一」である場合を含む意味で用いられる。
(1)冷凍サイクル装置の構成
本開示の圧縮機の一実施形態に係るスクロール圧縮機100を備えた冷凍サイクル装置1000について、図1を参照しながら説明する。図1は、冷凍サイクル装置の一実施形態に係る空気調和装置の概略構成図である。
冷凍サイクル装置1000は、蒸気圧縮式冷凍サイクルを利用して、温度調整対象を冷却したり、加熱したりする装置である。冷凍サイクル装置1000は、例えば、温度調整対象としての空調対象空間の空気を冷却したり加熱したりする空気調和装置である。ここでは、冷凍サイクル装置1000が空気調和装置である場合を例に、冷凍サイクル装置1000を説明する。ただし、冷凍サイクル装置1000の種類は、空気調和装置に限定されるものではなく、給湯装置、床暖房装置、冷蔵装置等であってもよい。
冷凍サイクル装置1000は、図1のように、主として冷媒回路600を備える。冷媒回路600は、図1のように、スクロール圧縮機100と、流路切換機構700と、熱源熱交換器300と、利用熱交換器400と、膨張機構500と、を有する。冷媒回路600では、スクロール圧縮機100と、流路切換機構700と、熱源熱交換器300と、利用熱交換器400と、膨張機構500と、が、冷媒配管により接続されている。
スクロール圧縮機100は、冷凍サイクルにおける低圧(以後、単に低圧と呼ぶ場合がある)のガス冷媒を吸入して加圧し、冷凍サイクルにおける高圧のガス冷媒(以後、単に高圧と呼ぶ場合がある)として吐出する装置である。スクロール圧縮機100についての詳細は後述する。
流路切換機構700は、冷媒回路600の状態を、冷房状態と、暖房状態と、の間で切り換える機構である。限定するものではないが、流路切換機構700は、四路切換弁である。冷媒回路600が冷房状態にある時には、冷媒は、スクロール圧縮機100、流路切換機構700、熱源熱交換器300、膨張機構500、利用熱交換器400、流路切換機構700、スクロール圧縮機100の順に冷媒回路600を流れる(図1の流路切換機構700内の実線を参照)。冷媒回路600が暖房状態にある時には、冷媒は、スクロール圧縮機100、流路切換機構700、利用熱交換器400、膨張機構500、熱源熱交換器300、流路切換機構700、スクロール圧縮機100の順に冷媒回路600を流れる(図1の流路切換機構700内の破線を参照)。
熱源熱交換器300は、熱源となる媒体(例えば空気)と冷媒との間で熱交換を行わせる熱交換器である。冷媒回路600の状態が冷房状態にある時、熱源熱交換器300は、冷媒の凝縮器(放熱器)として機能する。冷媒回路600の状態が暖房状態にある時、熱源熱交換器300は、冷媒の蒸発器(吸熱器)として機能する。
利用熱交換器400は、温度調整対象(ここでは、空調対象空間の空気)と冷媒との間で熱交換を行わせる熱交換器である。冷媒回路600の状態が冷房状態にある時、利用熱交換器400は、冷媒の蒸発器(吸熱器)として機能する。冷媒回路600の状態が暖房状態にある時、利用熱交換器400は、冷媒の凝縮器(放熱器)として機能する。
膨張機構500は、膨張機構500を通過する高圧の冷媒(主に液体の冷媒)を減圧し、低圧の冷媒(液体と気体とからなる二相の冷媒)にする。膨張機構500は、例えば電子膨張弁である。ただし、膨張機構500の種類は電子膨張弁に限定されず、感温筒を有する温度自動膨張弁や、キャピラリチューブであってもよい。
冷凍サイクル装置1000の行う冷房運転と暖房運転とについて説明する。
冷凍サイクル装置1000が冷房運転を行う場合、スクロール圧縮機100は、低圧のガス冷媒を吸入して加圧し、高圧のガス冷媒として吐出する。スクロール圧縮機100が吐出する高圧のガス冷媒は、流路切換機構700を通過して、凝縮器として機能する熱源熱交換器300に供給される。熱源熱交換器300は、熱源となる媒体と高圧のガス冷媒とを熱交換させて、高圧のガス冷媒を凝縮させ、高圧の液冷媒にする。熱源熱交換器300から流出する高圧の液冷媒は、膨張機構500を通過して低圧の気液二相冷媒となり、蒸発器として機能する利用熱交換器400に供給される。利用熱交換器400は、空調対象空間の空気と低圧の気液二相冷媒とを熱交換させて、気液二相冷媒に含まれる液冷媒を蒸発させ、低圧のガス冷媒にする。この際、空調対象空間の空気は、冷媒により冷却される。利用熱交換器400から流出する低圧のガス冷媒は、流路切換機構700を通過し、スクロール圧縮機100に再び吸入される。
冷凍サイクル装置1000が暖房運転を行う場合、スクロール圧縮機100は、低圧のガス冷媒を吸入して加圧し、高圧のガス冷媒として吐出する。スクロール圧縮機100が吐出する高圧のガス冷媒は、流路切換機構700を通過して、凝縮器として機能する利用熱交換器400に供給される。利用熱交換器400は、空調対象空間の空気と高圧のガス冷媒とを熱交換させて、高圧のガス冷媒を凝縮させ、高圧の液冷媒にする。この際、空調対象空間の空気は、冷媒により加熱される。利用熱交換器400から流出する高圧の液冷媒は、膨張機構500を通過して低圧の気液二相冷媒となり、蒸発器として機能する熱源熱交換器300に供給される。熱源熱交換器300は、熱源となる媒体と低圧の気液二相冷媒とを熱交換させて、気液二相冷媒に含まれる液冷媒を蒸発させ、低圧のガス冷媒にする。熱源熱交換器300から流出する低圧のガス冷媒は、流路切換機構700を通過し、スクロール圧縮機100に再び吸入される。
なお、ここでは、冷凍サイクル装置1000の一例としての空気調和装置が、冷房運転と暖房運転とを実行する装置である場合を例に説明したが、空気調和装置は、冷房運転と暖房運転との一方だけを行う装置であってもよい。この場合には、冷凍サイクル装置1000の一例としての空気調和装置は、流路切換機構700を有していなくてもよい。
また、ここで説明した冷凍サイクル装置1000を構成する機器は一例に過ぎず、冷凍サイクル装置1000は、ここで説明した以外の機器を有してもよい。
(2)スクロール圧縮機の全体構成
一実施形態に係るスクロール圧縮機100の概要を、図2を参照しながら説明する。図2は、スクロール圧縮機100の概略縦断面図である。
スクロール圧縮機100は、前述のように冷凍サイクル装置1000において用いられ、低圧のガス冷媒を吸入し、吸入した冷媒を圧縮して高圧のガス冷媒にして吐出する。冷媒は、例えばHFC冷媒のR32である。なお、R32は冷媒の種類の例示に過ぎず、スクロール圧縮機100は、R32以外のHFC冷媒や、HFO冷媒を圧縮する装置であってもよい。また、例えば、スクロール圧縮機100は、二酸化炭素等の自然冷媒を圧縮して吐出する装置であってもよい。
スクロール圧縮機100は、図1及び図2に示すように、ケーシング10と、圧縮機構20と、ハウジング50と、モータ70と、クランク軸80と、下部軸受ハウジング90と、停止部140と、を主に有する。
(3)スクロール圧縮機の各構成
スクロール圧縮機100の、ケーシング10、圧縮機構20、ハウジング50、モータ70、クランク軸80、下部軸受ハウジング90、停止部140について、詳細を説明する。なお、本スクロール圧縮機100は、部材が互いに摺動する摺動箇所に特徴ある構成を有するが、摺動箇所に関する説明は、別途後述する。
(3-1)ケーシング
スクロール圧縮機100は、縦長円筒状のケーシング10を有する(図2参照)。
ケーシング10は、図2に示すように、円筒部材12と、上蓋14aと、下蓋14bと、を主に有する。円筒部材12は、中心軸に沿って延びる上下が開口した円筒状の部材である。上蓋14aは、円筒部材12の上方に設けられ、円筒部材12の上方の開口を塞ぐ。下蓋14bは、円筒部材12の下方に設けられ、円筒部材12の下方の開口を塞ぐ。円筒部材12と、上蓋14a及び下蓋14bとは、気密を保つように溶接により固定される。
ケーシング10は、圧縮機構20、ハウジング50、モータ70、クランク軸80、及び下部軸受ハウジング90を含む、スクロール圧縮機100を構成する各種部材を内部に収容する(図2参照)。ケーシング10内の上部には、圧縮機構20が配置されている。圧縮機構20の下方には、ハウジング50が配置されている。ハウジング50の下方には、モータ70が配置されている。モータ70の下方には、下部軸受ハウジング90が配置されている。ケーシング10の底部には、油溜空間16が形成されている。油溜空間16には、スクロール圧縮機100の各種摺動箇所を潤滑するための油(冷凍機油)が溜められている。
モータ70は、スクロール圧縮機100の第1空間S1に配置される。第1空間S1は、ケーシング10の内部の、圧縮機構20のハウジング50より下方の空間である。本実施形態では、第1空間S1は、圧縮機構20により圧縮された高圧の冷媒が流入する空間である。言い換えれば、本実施形態のスクロール圧縮機100は、いわゆる高圧ドーム型のスクロール圧縮機である。
ケーシング10には、吸入管18a及び吐出管18bが、ケーシング10の内部と外部とを連通するように取り付けられている(図2参照)。
吸入管18aは、図2のように、ケーシング10の上蓋14aを貫通して設けられる。吸入管18aの一端(ケーシング10の外部の端部)は、冷凍サイクル装置1000の配管600aに接続され、吸入管18aの他端(ケーシング10の内部の端部)は、圧縮機構20の固定スクロール30の吸入ポート36aに接続される。配管600aは、図1のように、スクロール圧縮機100の吸入管18aと流路切換機構700とを接続する配管である。吸入管18aは、吸入ポート36aを介して後述する圧縮機構20の外周側の圧縮室Scと連通する。スクロール圧縮機100は、吸入管18aを介して、冷凍サイクル装置1000の冷凍サイクルにおける低圧の冷媒を吸入する。
吐出管18bは、図2のように、円筒部材12の上下方向における中央部に、円筒部材12を貫通して設けられる。吐出管18bの一端(ケーシング10の外部の端部)は、冷凍サイクル装置1000の配管600bに接続され、吐出管18bの他端(ケーシング10の内部の端部)は、第1空間S1のハウジング50とモータ70との間に配置される。配管600bは、図1のように、スクロール圧縮機100の吐出管18bと流路切換機構700とを接続する配管である。スクロール圧縮機100は、圧縮機構20による圧縮後の高圧の冷媒を吐出管18bを介して吐出する。
(3-2)圧縮機構
圧縮機構20は、固定スクロール30と、可動スクロール40と、を主に有する。固定スクロール30と可動スクロール40とは、組み合わされて圧縮室Scを形成する。圧縮機構20は、圧縮室Scで冷媒を圧縮し、圧縮後の冷媒を吐出する。
(3-2-1)固定スクロール
固定スクロール30は、ハウジング50上に載置され、図示しない固定手段(例えばボルト)によりハウジング50に固定されている。
固定スクロール30は、図2に示すように、第1鏡板32と、第1ラップ34と、周縁部36と、を主に有する。
第1鏡板32は、円板状の部材である。第1ラップ34は、第1鏡板32の前面32a(下面)から可動スクロール40側に突出する壁状の部材である。固定スクロール30を下方から見ると、第1ラップ34は、第1鏡板32の中心付近から外周側に向かって渦巻状(インボリュート形状)に形成されている。周縁部36は、第1鏡板32の前面32aから可動スクロール40側に突出する厚肉円筒状の部材である。周縁部36は、第1ラップ34の周囲を取り囲むように配置される。周縁部36には、吸入ポート36aが形成される。吸入ポート36aには、吸入管18aの下端が接続される。
固定スクロール30の第1ラップ34と、後述する可動スクロール40の第2ラップ44とは、組み合わされて圧縮室Scを形成する。具体的には、固定スクロール30と可動スクロール40とは、第1鏡板32の前面32aと後述する第2鏡板42の前面42a(上面)とが対向する状態で組み合わされる。その結果、第1鏡板32と、第1ラップ34と、第2ラップ44と、後述する可動スクロール40の第2鏡板42と、に囲まれた圧縮室Scが形成される(図2参照)。可動スクロール40が固定スクロール30に対して旋回すると、吸入管18aから吸入ポート36aを介して周縁側の圧縮室Scに流入した低圧の冷媒は、中央側の圧縮室Scへと移動するにつれ圧縮されて圧力が上昇する。
第1鏡板32の略中心には、圧縮機構20により圧縮された冷媒を吐出する吐出ポート33が、第1鏡板32を厚さ方向(上下方向)に貫通して形成されている(図2参照)。吐出ポート33は、圧縮機構20の中心側(最内側)の圧縮室Scと連通している。第1鏡板32の上方には、吐出ポート33を開閉する吐出弁22が取り付けられている。吐出ポート33が連通する最内側の圧縮室Scの圧力と、吐出弁22より上方の吐出空間Saの圧力とが所定の関係になると、吐出弁22が開き、最内側の圧縮室Scの冷媒が吐出ポート33を通過して第1鏡板32の上方の吐出空間Saに流入する。吐出空間Saは、固定スクロール30及びハウジング50にわたって形成されている冷媒通路(図示省略)と連通している。冷媒通路は、吐出空間Saとハウジング50の下方の第1空間S1とを連通する通路であり、吐出空間Saに流入する圧縮機構20による圧縮後の冷媒は、冷媒通路を通過して第1空間S1へ流入する。
(3-2-2)可動スクロール
可動スクロール40について、図3も参照して更に説明する。図3は、可動スクロール40を背面側(下方側)から見た概略平面図である。
可動スクロール40は、図2に示すように、第2鏡板42と、第2ラップ44と、ボス部46と、を主に有する。
第2鏡板42は、円板状の部材であるが、図3のように、2カ所に、径方向外側に突出する突出部43を有する。第2鏡板42の背面42bには、上方に凹むキー溝42baが形成されている。キー溝42baは、図3のように、突出部43の外縁(第2鏡板42の径方向における端部)から、第2鏡板42の中心側に向かって延びる。
第2ラップ44は、第2鏡板42の前面42a(上面)から固定スクロール30側に突出する壁状の部材である。可動スクロール40を上方から見ると、第2ラップ44は、第2鏡板42の中心付近から外周側に向かって渦巻状(インボリュート形状)に形成されている。
スクロール圧縮機100の運転中には、可動スクロール40は、第2鏡板42の背面42b側の、後述するクランク室52及び背圧空間54の圧力により固定スクロール30に押し付けられる。可動スクロール40が固定スクロール30に押し付けられることで、第1ラップ34の歯先と第2鏡板42との間の隙間や、第2ラップ44の歯先と第1鏡板32との間の隙間からの冷媒の漏れが抑制される。
ボス部46は、ハウジング50により形成される後述するクランク室52内に配置される。ボス部46は、円筒状に形成されている。ボス部46は、第2鏡板42の背面42bから下方に突出するように延びる。円筒状のボス部46の上部は、第2鏡板42により閉じられている。ボス部46の中空部には、軸受メタル47が配置される。ボス部46の中空部には、後述するクランク軸80の偏心部84(ピン軸)が挿入される(図2参照)。クランク軸80は、後述するようにモータ70のロータ74と連結されているため、モータ70が運転されてロータ74が回転すると、可動スクロール40が旋回する。
なお、モータ70が旋回させる可動スクロール40は、オルダム継手24(図2参照)の働きにより、自転せずに、固定スクロール30に対して公転する。
オルダム継手24について、図4及び図5を更に参照して説明する。図4は、オルダム継手24の概略平面図である。図5は、オルダム継手24の側面図である。
オルダム継手24は、ハウジング50と可動スクロール40との間に配置されている(図2参照)。オルダム継手24は、ハウジング50により下方から支持される。
オルダム継手24は、リング部24aと、2つの第1キー24bと、2つの第2キー24cとを有している(図4及び図5参照)。リング部24aは、環形状を有する本体部24aaと、本体部24aaの外周面から径方向外側に突出する4つの突出部24abと、を有している。本実施形態では、突出部24abは、周方向に等間隔(90度間隔)で配置されている。
第1キー24bは、立方体形状に形成されている。2つの第1キー24bは、平面視において本体部24aaの中心を挟むように配置される2ヶ所の突出部24abから上方(可動スクロール40側)に延びる。第1キー24bは、可動スクロール40の第2鏡板42の背面42bに形成されているキー溝42ba(図3参照)に嵌入される。
第1キー24bは、キー溝42baにおいて、クランク軸80の径方向に摺動する。具体的には、第1キー24bの幅(第1キー24bの摺動方向と直交する方向における第1キー24bの幅)は、キー溝42baの幅(第1キー24bの摺動方向と直交する方向におけるキー溝42baの幅)と概ね同一である。そのため、第1キー24bの側面(第1キー24bの摺動方向と直交する方向における両縁部の側面)は、キー溝42baの側面42c(第1キー24bの摺動方向に平行に延びる側面)と摺動する。
第2キー24cは、立方体形状に形成されている。2つの第2キー24cは、平面視において本体部24aaの中心を挟むように配置される2ヶ所の突出部24abから下方(ハウジング50側)に延びる。第2キー24cが設けられる2つの突出部24abは、第1キー24bが設けられている2つの突出部24abとは別の突出部24abである。第2キー24cは、後述するハウジング50の第2凹部58の上面に、下方に凹むように形成されているキー溝(図示省略)に嵌入されている。
第2キー24cは、ハウジング50に形成されているキー溝において、クランク軸80の径方向に摺動する。具体的には、第2キー24cの幅(第2キー24cの摺動方向と直交する方向における第2キー24cの幅)は、ハウジング50のキー溝の幅(第2キー24cの摺動方向と直交する方向におけるキー溝の幅)と概ね同一である。そのため、第2キー24cの側面(第2キー24cの摺動方向と直交する方向における両縁部の側面)は、ハウジング50のキー溝の側面(第2キー24cの摺動方向に平行に延びる側面)と摺動する。
可動スクロール40が固定スクロール30に対して公転させられると、圧縮機構20の圧縮室Sc内のガス冷媒が圧縮される。具体的には、可動スクロール40が公転させられると、吸入管18aから吸入ポート36aを介して周縁側の圧縮室Scにガス冷媒が吸引され、その後、圧縮室Scは圧縮機構20の中心側(第1鏡板32の中心側)に移動する。圧縮室Scが圧縮機構20の中心側に移動するにつれ、圧縮室Scの容積は減少し、圧縮室Sc内の圧力が上昇する。その結果、中央側の圧縮室Scは、周縁側の圧縮室Scに比べ高い圧力になる。圧縮機構20により圧縮されて高圧となったガス冷媒は、中央側の圧縮室Scから第1鏡板32に形成された吐出ポート33を通って吐出空間Saに吐出される。吐出空間Saに吐出された冷媒は、固定スクロール30及びハウジング50に形成された冷媒通路を通過して、ハウジング50の下方の第1空間S1へ流入する。
(3-3)ハウジング
ハウジング50は、固定スクロール30及び可動スクロール40を支持する機能を有する。また、ハウジング50は、クランク軸80を軸支する機能を有する。
ハウジング50は、図2のように、本体部120と、上部軸受ハウジング110と、を主に含む。
本体部120は、ケーシング10に固定される円筒状の部分である。本体部120は、ケーシング10の円筒部材12の内面12bに固定されている。
上部軸受ハウジング110も、円筒状に形成されている。上部軸受ハウジング110は、クランク軸80の軸方向において、本体部120よりモータ70側に配置される。
本体部120には、固定スクロール30が固定されている。具体的には、固定スクロール30は、固定スクロール30の周縁部36の下面がハウジング50の上面と対向する状態でハウジング50に載置され、図示しない固定部材(例えばボルト)によりハウジング50に固定されている。本体部120には、吐出空間Saと第1空間S1とを連通する冷媒通路の一部が形成されている。
本体部120は、本体部120に固定されている固定スクロール30を支持する。また、本体部120は、固定スクロール30とハウジング50の本体部120との間に配置される可動スクロール40を支持する。具体的には、本体部120は、可動スクロール40を、ハウジング50の上方に配置されているオルダム継手24を介して下方から支持する。
本体部120は、図2に示すように、中央に凹むように配置される第1凹部56と、第1凹部56を囲むように配置される第2凹部58と、を有する。第1凹部56は、可動スクロール40のボス部46が配置されるクランク室52の側面を囲む。第2凹部58は、第2鏡板42の背面42b側に環状の背圧空間54を形成する。第2凹部58の上面には、前述のオルダム継手24の第2キー24cが嵌入され、第2キー24cが摺動するキー溝(図示省略)が形成されている。
スクロール圧縮機100の定常運転時には(スクロール圧縮機100の運転が安定した状態では)、クランク室52の圧力は、冷凍サイクルにおける高圧になる。その結果、スクロール圧縮機100の定常運転時には、クランク室52に面する第2鏡板42の背面42bの中央部は、高圧で固定スクロール30に向かって押される。
背圧空間54は、スクロール圧縮機100の運転中に可動スクロール40が旋回すると、可動スクロール40が1回転する間に、所定の期間、第2鏡板42に形成されている図示しない穴を介して圧縮途中の圧縮室Scと連通する。そのため、スクロール圧縮機100の定常運転時には、背圧空間54の圧力は、冷凍サイクルにおける中間圧(冷凍サイクルにおける低圧と高圧との間の圧力)になる。その結果、スクロール圧縮機100の定常運転時には、背圧空間54に面する第2鏡板42の背面42bの周縁部は、中間圧で固定スクロール30に向かって押される。
なお、クランク室52と背圧空間54とは、第1凹部56と第2凹部58との境界に配置されている環状の壁部57により隔てられている(図2参照)。第2鏡板42の背面42bと対向する壁部57の上端には、クランク室52と背圧空間54との間をシールするように、図示しないシールリングが配置されている。
上部軸受ハウジング110は、円筒状に形成されている。円筒状の上部軸受ハウジング110の内部には、クランク軸80を回転可能に支持する軸受メタル112が設けられる。
(3-4)モータ
モータ70は、可動スクロール40を駆動する。
モータ70は、ケーシング10の円筒部材12の内面12bに固定された環状のステータ72と、ステータ72の内側に配置されたロータ74と、を有する(図2参照)。
ステータ72は、主として、ステータコア73と、図示を省略するコイルとを含む(図2参照)。ステータコア73は、ケーシング10の円筒部材12の内面12bに固定される円筒形状の部材である。
ロータ74は、ステータコア73の内側に僅かな隙間(エアギャップ)を空けて回転自在に収容されている。ロータ74は、円筒状の部材で、内部にクランク軸80が挿通されている。ロータ74は、クランク軸80を介して可動スクロール40と連結されている。モータ70は、ロータ74を回転させることで可動スクロール40を駆動し、可動スクロール40を固定スクロール30に対して旋回させる。
(3-5)クランク軸
クランク軸80は、モータ70の駆動力を圧縮機構20に伝える部材である。具体的には、クランク軸80は、モータ70のロータ74と、圧縮機構20の可動スクロール40とを連結する。クランク軸80は、図2のように回転軸Oに沿って延び、回転軸O周りを回転する。本実施形態のスクロール圧縮機100では、回転軸Oは上下方向である。クランク軸80は、モータ70の駆動力を圧縮機構20の可動スクロール40に伝達する。
クランク軸80は、主軸82と、偏心部84と、を主に有する(図2参照)。
主軸82は、油溜空間16からクランク室52まで上下方向に延びる。主軸82は、上部軸受ハウジング110の軸受メタル112、及び後述する下部軸受ハウジング90の軸受メタル91により、回転自在に支持される。また、主軸82は、ハウジング50の上部軸受ハウジング110と下部軸受ハウジング90との間で、モータ70のロータ74に挿通され、ロータ74に連結される。主軸82の中心軸は、クランク軸80の回転軸Oと一致する。
偏心部84は、主軸82の端部(本実施形態では上端)に配置されている。偏心部84の中心軸は、クランク軸80の回転軸Oに対して偏心している。偏心部84は、可動スクロール40のボス部46の内部に挿入され、ボス部46の内部に配置されている軸受メタル47により回転可能に支持されている。
クランク軸80の内部には、油通路86が形成されている。油通路86は、主経路86aと、分岐経路(図示せず)と、を有する。主経路86aは、クランク軸80の軸方向に沿って、クランク軸80の下端から上端まで延びる。分岐経路は、主経路から、クランク軸80の軸方向と交差する方向に延びる。油溜空間16の油は、クランク軸80の下端に設けられたポンプ(図示せず)により汲み上げられ、油通路86を通って、最終的に、クランク軸80と軸受メタル47,112,91との摺動箇所や、圧縮機構20の摺動箇所や、オルダム継手24の第1キー24bと可動スクロール40のキー溝42baとの摺動箇所や、オルダム継手24の第2キー24cとハウジング50のキー溝との摺動箇所等に供給される。
(3-6)下部ハウジング
下部軸受ハウジング90は、図2に示すように、下部軸受部92と、複数のアーム94と、を主に含む。下部軸受ハウジング90は、クランク軸80を軸支する。
下部軸受部92は、クランク軸80を回転可能に支持する軸受メタル91を含む。
アーム94は、下部軸受部92を支持する。アーム94は、棒状の部材である。各アーム94は、下部軸受部92から、ケーシング10に向かって延び、ケーシング10の円筒部材12の内面12bに固定される。
(3-7)停止部
停止部140は、所定条件の成立時に、運転中のスクロール圧縮機100を停止させる。具体的には、停止部140は、モータ70に供給される電流の大きさが所定値を超える際に、モータ70への電力供給を遮断し、スクロール圧縮機100を停止させる。
停止部140は、例えば、モータ70の保護用のリレーである。ただし、停止部140は、モータ70に供給される電流の大きさが所定値を超える際にモータ70を停止させるものであれば、リレーに限定されない。
(4)スクロール圧縮機の動作
スクロール圧縮機100の動作について説明する。なお、ここでは、定常状態(運転を開始して、運転が安定した状態)のスクロール圧縮機100の動作について説明する。
モータ70が駆動されると、ステータ72の発生させる回転磁界によりロータ74が回転し、ロータ74と連結されたクランク軸80も回転する。クランク軸80が回転すると、オルダム継手24の働きにより、可動スクロール40は、自転せずに固定スクロール30に対して公転する。そして、吸入管18aから流入した冷凍装置の冷凍サイクルにおける低圧の冷媒は、吸入ポート36aを介して圧縮機構20の周縁側の圧縮室Scに吸入される。そして、可動スクロール40が公転し、圧縮室Scの容積が減少するのに伴って、圧縮室Scの圧力が上昇する。冷媒が、周縁側(外側)の圧縮室Scから、中央側(内側)の圧縮室Scへ移動するに連れて冷媒の圧力は上昇し、最終的に冷凍装置の冷凍サイクルにおける高圧となる。圧縮機構20によって圧縮された冷媒は、第1鏡板32の中央付近に位置する吐出ポート33から吐出され、固定スクロール30及びハウジング50に形成されている図示しない冷媒経路を通過して第1空間S1に流入する。また、圧縮機構20によって圧縮され、固定スクロール30及びハウジング50に形成されている図示しない冷媒経路を通過した冷媒は、ステータ72とケーシング10の円筒部材12の内面12bとの隙間等を通過して油溜空間16にも流入する。油溜空間16に吐出された冷媒ガスは、ステータ72とロータ74との間のエアギャップや、ステータ72とケーシング10の円筒部材12の内面12bとの隙間を通過して第1空間S1に流入する。第1空間S1に流入した冷凍サイクルにおける高圧の冷媒は、最終的に吐出管18bから吐出される。
(5)スクロール圧縮機の摺動箇所の構造
スクロール圧縮機100の摺動箇所の構造について説明する。特には、スクロール圧縮機100の以下の摺動箇所について説明する。
a)クランク軸80の偏心部84と摺動部210との摺動箇所
b)クランク軸80の主軸82と摺動部220との摺動箇所(上部軸受ハウジング110における摺動箇所)
c)クランク軸80の主軸82との摺動部230との摺動箇所(下部軸受ハウジング90における摺動箇所)
d)固定スクロール30の周縁部36と摺動部240との摺動箇所
e)可動スクロール40のキー溝42baの側面42cと摺動部250との摺動箇所
なお、ここで使用する摺動部という語は、他の構成(摺動部とは別の構成)と接触した状態で、他の構成に対して相対的に移動する構成を指す。言い換えれば、摺動部は、可動の構成の場合もあれば、可動ではない構成の場合(相手側の構成が可動の場合)もある。
摺動部210,220,230,240,250について詳細を説明する。
(5-1)クランク軸の偏心部と摺動する摺動部
第1部材の一例としてのクランク軸80(特には偏心部84)と接触して摺動する摺動部210について、図6を参照しながら説明する。図6は、クランク軸80の偏心部84と、偏心部84と摺動する摺動部210との拡大概略縦断面図である。
摺動部210は、図6のように、クランク軸80の偏心部84の外面と、可動スクロール40のボス部46の内面と、の間に配置される。摺動部210は、可動スクロール40のボス部46に取り付けられ、可動スクロール40のボス部46により支持される。摺動部210は、クランク軸80に作用するラジアル荷重を支える。
摺動部210は、図6のように、軸受メタル47と、摺動部材212と、を含む。軸受メタル47は、クランク軸80の偏心部84と接触して摺動する第1摺動部材の一例である。摺動部材212は、クランク軸80の偏心部84と接触して摺動する第2摺動部材の一例である。摺動部材212の動摩擦係数は、軸受メタル47の動摩擦係数より大きい。
通常時には(言い換えれば、正常な運転状態では)、クランク軸80の偏心部84は、軸受メタル47によって回転自在に軸支される。摺動部材212は、通常時にはクランク軸80の偏心部84とは接触しない。摺動部材212は、軸受メタル47が(スクロール圧縮機100を使用し始める前の初期状態から)所定量だけ摩耗した際に、クランク軸80の偏心部84と接触して摺動する。
軸受メタル47と摺動部材212とについて詳細を説明する。
軸受メタル47は、滑り軸受として機能する。軸受メタル47は、クランク軸80の偏心部84と、クランク軸80の油通路86を介して供給される冷凍機油を介して接触する。軸受メタル47は、円筒状の部材である。軸受メタル47は、単一の部品で構成されてもよいし、複数の部品から構成されてもよい。軸受メタル47は、従来のスクロール圧縮機において、クランク軸の偏心部(ピン軸)を軸支するために使用される軸受メタルと同様の部材である。軸受メタル47は、通常時に、クランク軸80の偏心部84と接触して摺動する寸法に設計されている。
摺動部210は、1対の摺動部材212を有する。各摺動部材212は、円筒状の部材である。各摺動部材212は、単一の部品で構成されてもよいし、複数の部品から構成されてもよい。1対の摺動部材212は、図6のように、クランク軸80の軸方向において軸受メタル47を挟むように、それぞれ、軸受メタル47の上方及び下方に配置される。なお、摺動部210の有する摺動部材212は、1つでもよく、軸受メタル47の上方又は下方に配置されてもよい。
摺動部材212は、上述のように、軸受メタル47が所定量だけ摩耗した際にクランク軸80の偏心部84と接触して摺動する。これを実現するために、円筒状の摺動部材212の内径ΦDa2は、円筒状の軸受メタル47の内径ΦDa1より大きい(図6参照)。
例えば、摺動部材212の内径ΦDa2は、円筒状の軸受メタル47の内径ΦDa1より、軸受メタル47の許容摩耗量だけ大きい。軸受メタル47の許容摩耗量とは、軸受メタル47の摩耗量がその値以下であれば、スクロール圧縮機100を問題なく運転可能な摩耗量である。限定するものではないが、具体的な数字で表せば、内径ΦDa2と内径ΦDa1との差は、例えば80μmである。
なお、摺動部材212の内径ΦDa2と円筒状の軸受メタル47の内径ΦDa1との差は、軸受メタル47の許容摩耗量より大きくてもよい。ただし、摺動部材212の内径ΦDa2と円筒状の軸受メタル47の内径ΦDa1との差は、軸受メタル47の最大摩耗量より小さく設定されることが好ましい。なお、軸受メタル47の最大摩耗量とは、軸受メタル47がその量を超えて摩耗すると、クランク軸80の偏心部84がクランク軸80の軸方向と交差する方向に振れ動き、この状態でスクロール圧縮機100が運転されると、加速的に軸受メタル47の摩耗が進行する摩耗量である。例えば、限定するものではないが、具体的な数字で表せば、内径ΦDa2と内径ΦDa1との差は、前述の80μm以上であり、軸受メタル47の最大摩耗量である600μmより小さな値であることが好ましい。
クランク軸80、軸受メタル47、及び摺動部材212の材質について説明する。
クランク軸80は、例えば、鉄製である。
軸受メタル47には、軸受メタルに一般に利用される材料が使用される。限定するものではないが、軸受メタル47には、例えば、銅合金やアルミ合金が使用される。また、軸受メタル47は、金属製ではなく、樹脂製でもよい。
摺動部材212は、軸受メタル47とは別材料である。限定するものではないが、摺動部材212は、例えば、自動車のブレーキパッド等に使用される材料である。摺動部材212は、例えば、金属繊維やセラミックス等の摩擦材を樹脂で固定した樹脂部材である。また、摺動部材212は、例えば、銅系合金やアルミ系合金等の金属粉を焼結した金属部材である。また、摺動部材212は、例えば、炭素繊維複合材である。なお、摺動部材212には、例示した以外の動摩擦係数が軸受メタル47より大きな材質が用いられてもよい。
(5-2)クランク軸の主軸と摺動する摺動部
上部軸受ハウジング110におけるクランク軸80の主軸82との摺動部220と、下部軸受ハウジング90におけるクランク軸80の主軸82との摺動部230と、について、図7及び図8を参照しながら説明する。図7は、上部軸受ハウジング110における、クランク軸80の主軸82との摺動部220との拡大概略縦断面図である。図8は、下部軸受ハウジング90における、クランク軸80の主軸82との摺動部230との拡大概略縦断面図である。
摺動部220、230は、クランク軸80に作用するラジアル荷重を支える。なお、摺動部220及ぶ摺動部230は、摺動部210と同様の点も多いため、説明の重複を避けるため、適宜説明を省略する。
摺動部220及び摺動部230は、第1部材の一例としてのクランク軸80の主軸82と接触して摺動する。摺動部220は、図7のように、クランク軸80の主軸82の外面と、上部軸受ハウジング110の内面と、の間に配置される。摺動部220は、上部軸受ハウジング110に取り付けられ、上部軸受ハウジング110により支持される。摺動部230は、図8のように、クランク軸80の主軸82と、下部軸受ハウジング90と、の間に配置される。摺動部230は、下部軸受ハウジング90の下部軸受部92に固定され、下部軸受ハウジング90により支持される。
摺動部220は、図7のように、軸受メタル112と、摺動部材222と、を含む。軸受メタル112は、クランク軸80の主軸82と接触して摺動する第1摺動部材の一例である。摺動部材222は、クランク軸80の主軸82と接触して摺動する第2摺動部材の一例である。通常時には、クランク軸80の主軸82は、軸受メタル112により回転自在に軸支され、摺動部材222はクランク軸80の主軸82とは接触しない(図7参照)。摺動部材222は、軸受メタル112が(スクロール圧縮機100を使用し始める前の初期状態から)所定量だけ摩耗した際に、クランク軸80の主軸82と接触して摺動する。摺動部材222の動摩擦係数は、軸受メタル112の動摩擦係数より大きい。
摺動部230は、図8のように、軸受メタル91と、摺動部材232と、を含む。軸受メタル91は、クランク軸80の主軸82と接触して摺動する第1摺動部材の一例である。摺動部材232は、クランク軸80の主軸82と接触して摺動する第2摺動部材の一例である。通常時には、クランク軸80の主軸82は、軸受メタル91により回転自在に軸支され、摺動部材232はクランク軸80の主軸82とは接触しない(図8参照)。摺動部材232は、軸受メタル91が(スクロール圧縮機100を使用し始める前の初期状態から)所定量だけ摩耗した際にクランク軸80の主軸82と接触して摺動する。摺動部材232の動摩擦係数は、軸受メタル91の動摩擦係数より大きい。
軸受メタル112及び摺動部材222の、形状、寸法、配置、材質等は、軸受メタル47及び摺動部材212の、形状、寸法、配置、材質等と同様であるので、ここでは詳細な説明は省略する。また、軸受メタル91及び摺動部材232の、形状、寸法、配置、材質等も、軸受メタル47及び摺動部材212の、形状、寸法、配置、材質等と同様であるので、ここでは詳細な説明は省略する。
(5-3)固定スクロールと摺動する摺動部
第1部材としての固定スクロール30(より具体的には、固定スクロール30の周縁部36)と接触し、摺動する摺動部240について、図9を参照しながら説明する。図9は、固定スクロール30の周縁部36と、固定スクロール30の周縁部36と摺動する摺動部240との拡大概略縦断面図である。
摺動部240は、可動スクロール40の第2鏡板42に設けられる(図9参照)。スクロール圧縮機100の運転中、可動スクロール40の第2鏡板42は、前述のように、背圧により、固定スクロール30の周縁部36に押し付けられる。摺動部240は、スラスト荷重を支える。
摺動部240は、図9のように、第1摺動部材242と、第2摺動部材244と、を含む。第2摺動部材244は、第1摺動部材242よりも動摩擦係数の大きな部材である。
第1摺動部材242及び第2摺動部材244の配置を具体的に説明する。可動スクロール40の第2鏡板42は、図9のように第2摺動部材244の層を有する。第2摺動部材244の層の上部は、図9のように第1摺動部材242の層により覆われている。言い換えれば、第1摺動部材242は、第2摺動部材244の上方に配置されている。さらに言い換えれば、第1摺動部材242は、第2摺動部材244よりも固定スクロール30の近くに配置されている。なお、可動スクロール40の第2鏡板42は、第2摺動部材244の層の下部に、第2摺動部材244とは更に別の層を有していてもよい。または、図示はしていないが、可動スクロール40の第2鏡板42は、第1摺動部材242の層と、第2摺動部材244の層と、だけから構成されてもよい。
このような構造を有することで、第2摺動部材244は、第1摺動部材242が摩耗して存在しなくなるまでは、固定スクロール30の周縁部36には接触せず摺動しない。
第1摺動部材242と第2摺動部材244とについて詳細を説明する。
通常時には(言い換えれば、正常な運転状態では)、動摩擦係数の比較的小さな第1摺動部材242が、クランク軸80の油通路86を介して供給される冷凍機油を介して、固定スクロール30の周縁部36と接触して摺動する。
第1摺動部材242の厚みは、可動スクロール40の第2鏡板42の許容摩耗量と同じ厚みである。可動スクロール40の第2鏡板42の許容摩耗量は、第2摺動部材244を有さない十分な厚みの第2鏡板42を想定した場合に、第2鏡板42がその量だけ摩耗したとしても、スクロール圧縮機100を問題なく運転することが可能な第2鏡板42の摩耗量である。限定するものではないが、具体的な数字で表せば、第1摺動部材242の厚みは、例えば500μmである。
なお、第1摺動部材242の厚みは、可動スクロール40の第2鏡板42の許容摩耗量より大きくてもよい。ただし、第1摺動部材242の厚みは、可動スクロール40の第2鏡板42の最大摩耗量より小さく設定されることが好ましい。なお、可動スクロール40の第2鏡板42の最大摩耗量とは、第2摺動部材244を有さない十分な厚みの第2鏡板42を想定した場合に、第2鏡板42がその量を超えて摩耗した状態でスクロール圧縮機100が運転されると、例えば、固定スクロール30の周縁部36との片当たり等により、加速的に可動スクロール40の第2鏡板42の摩耗が進行する摩耗量である。例えば、限定するものではないが、具体的な数字で表せば、第1摺動部材242の厚みは、前述の500μm以上であり、第2鏡板42の最大摩耗量である1000μmより小さな値であることが好ましい。
固定スクロール30の周縁部36、第1摺動部材242、及び第2摺動部材244の材質について説明する。
固定スクロール30の周縁部36は、例えば、鋳鉄製である。また、固定スクロール30の周縁部36には、摺動性を高めるため、所定の表面処理が施されてもよい。
第1摺動部材242の材質は、例えば、固定スクロール30の周縁部36と同一の材質である。
第2摺動部材244には、前述の摺動部210の摺動部材212と同様の材質が用いられる。ここでは説明を省略する。
(5-4)可動スクロールと摺動する摺動部
第1部材としての可動スクロール40(より具体的には、可動スクロール40のキー溝42baの側面42c)と接触し、摺動する摺動部250について、図10を参照しながら説明する。図10は、可動スクロール40のキー溝42baの側面42cと、可動スクロール40のキー溝42baの側面42cと摺動する摺動部250と、の拡大概略平面図である。
摺動部250は、図10のように、オルダム継手24の第1キー24bに設けられる。スクロール圧縮機100の運転中、オルダム継手24の第1キー24bは、可動スクロール40のキー溝42ba内を往復動し、キー溝42baの側面42cと摺動する。なお、キー溝42baの側面42cとは、可動スクロール40をクランク軸80の軸方向に沿って見た時に、第1キー24bに対し、第1キー24bの移動方向と直交する方向における両側に配置される側面である(図10参照)。
摺動部250は、図10のように、第1摺動部材252と、第2摺動部材254と、を含む。第2摺動部材254は、第1摺動部材252よりも動摩擦係数の大きな部材である。
第1摺動部材252及び第2摺動部材254の配置を具体的に説明する。オルダム継手24の第1キー24bは、クランク軸80の軸方向に沿って見た時に、図10のように、第2摺動部材254の層を有する。そして、オルダム継手24をクランク軸80の軸方向に沿って見た時に、第2摺動部材254の層の第1キー24bの移動方向と直交する方向における両側の側面は、第1摺動部材252の層により覆われている。言い換えれば、第1摺動部材252は、第2摺動部材254よりもキー溝42baの側面42cの近くに配置されている。なお、図10には描画していないが、クランク軸80の軸方向に沿って見た時に、第2摺動部材254は複数の層に分かれ、第2摺動部材254の層の内側(第1摺動部材252とは対向しない側)には、第2摺動部材254とは別の層が存在してもよい。また、摺動部250は、図10のように、第1摺動部材252と、第2摺動部材254とだけから構成されてもよい。
このような構造を有することで、第2摺動部材254は、第1摺動部材252が摩耗して存在しなくなるまでは、可動スクロール40のキー溝42baの側面42cとは接触せず摺動しない。
第1摺動部材252と第2摺動部材254とについて詳細を説明する。
通常時には(言い換えれば、正常な運転状態では)、動摩擦係数の比較的小さな第1摺動部材252が、クランク軸80の油通路86を介して供給される冷凍機油を介して、可動スクロール40のキー溝42baの側面42cと接触して摺動する。
第1摺動部材252の厚みは、オルダム継手24の第1キー24bの許容摩耗量と同じ厚みである。オルダム継手24の第1キー24bの許容摩耗量は、第2摺動部材254を有さない(全体が第1摺動部材252からなる)オルダム継手24の第1キー24bを想定した場合に、オルダム継手24の第1キー24bがその量だけ摩耗したとしても、スクロール圧縮機100を問題なく運転することが可能な摩耗量である。限定するものではないが、具体的な数字で表せば、第1摺動部材252の厚みは、例えば50μmである。
なお、第1摺動部材252の厚みは、オルダム継手24の第1キー24bの許容摩耗量より大きくてもよい。ただし、第1摺動部材252の厚みは、オルダム継手24の第1キー24bの最大摩耗量より小さく設定されることが好ましい。なお、第1キー24bの最大摩耗量とは、第2摺動部材254を有さない(全体が第1摺動部材252からなる)オルダム継手24の第1キー24bを想定した場合に、第1キー24bがその量を超えて摩耗した状態でスクロール圧縮機100が運転されると、例えば、可動スクロール40のキー溝42baの側面42cとの片当たり等により、加速的にオルダム継手24の第1キー24bの摩耗が進行する摩耗量である。例えば、限定するものではないが、具体的な数字で表せば、第1摺動部材252の厚みは、前述の50μm以上であり、第1キー24bの最大摩耗量である500μmより小さな値であることが好ましい。
可動スクロール40のキー溝42baの側面42c、第1摺動部材252、及び第2摺動部材254の材質について説明する。
可動スクロール40のキー溝42baの側面42cは、例えば、鋳鉄製である。
第1摺動部材252の材質は、例えば、鋳鉄製であってもよいし、アルミニウム合金製、樹脂製等であってもよい。
第2摺動部材254には、前述の摺動部210の摺動部材212と同様の材質が用いられる。ここでは説明を省略する。
(6)第1部材が摺動部の第2摺動部材と摺動する際のスクロール圧縮機の挙動
例示した各種の第1部材が、対応する摺動部の第2摺動部材と摺動した際のスクロール圧縮機100の挙動について説明する。ここでの第2摺動部材には、摺動部210の摺動部材212、摺動部220の摺動部材222、摺動部230の摺動部材232、摺動部240の第2摺動部材244、及び摺動部250の第2摺動部材254を含む。
通常時には、第1部材は、対応する摺動部の、動摩擦係数の比較的小さな第1摺動部材と冷凍機油を介し接触して摺動する。この状態では、第1摺動部材の動摩擦係数は比較的小さいため、スクロール圧縮機100のモータ70の負荷は比較的小さい。
一方、第1部材が、対応する摺動部の第2摺動部材と接触して摺動すると、第2摺動部材は動摩擦係数が大きいため、スクロール圧縮機100のモータ70の負荷が大きくなる。その結果、モータ70に供給される電流の大きさも増大する。そして、電流の大きさが所定値以上になると、前述の停止部140が、モータ70に供給される電力を遮断し、スクロール圧縮機100は運転を停止する。
なお、第1部材と第2摺動部材とは、第1摺動部材と同様に、冷凍機油を介し接触する。そのため、第2摺動部材の表面粗さが比較的小さい場合、第2摺動部材は冷凍機油の油膜に覆われ、第2摺動部材が第1部材と摺動することに伴うスクロール圧縮機100の負荷は十分に大きくならず、停止部140によって、モータ70への電力の供給が遮断されない可能性がある。そこで、停止部140によりモータ70への電力の供給が遮断されやすくため、摺動部の第2摺動部材は、想定される最小油膜厚さ以上の表面粗さを有することが好ましい。
限定するものではないが、具体的には、摺動部210の摺動部材212、摺動部220の摺動部材222、及び摺動部230の摺動部材232の表面粗さは、例えば、想定される最小油膜厚さである10μmより大きいことが好ましい。また、摺動部240の第2摺動部材244の表面粗さは、例えば、想定される最小油膜厚さである30μmより大きいことが好ましい。また、摺動部250の第2摺動部材254の表面粗さは、例えば、想定される最小油膜厚さである10μmより大きいことが好ましい。
なお、仮に停止部140によりモータ70への電力の供給の遮断がなされなくても、第1部材と、対応する第2摺動部材との動摩擦係数が大きくなることで、スクロール圧縮機100の動作が低速となる場合には、スクロール圧縮機100の運転に伴う振動で、スクロール圧縮機100に接続されている配管が破損する等の冷凍サイクル装置1000の重大な損傷の発生は抑制されやすい。
(7)特徴
以下に、スクロール圧縮機100の特徴について説明する。
なお、以下の特徴の説明中の第1部材という語は、以下のいずれかの構成を指す。
a)クランク軸80(特には偏心部84)
b)クランク軸80(特には主軸82)
c)固定スクロール30(特には周縁部36)
d)可動スクロール40(特にはキー溝42baの側面42c)
また、それぞれの第1部材と関連付けて記載される摺動部は、以下の構成を指す。
a)第1部材がクランク軸80の偏心部84の場合には摺動部210
b)第1部材がクランク軸80の主軸82の場合には摺動部220又は摺動部230
c)第1部材が固定スクロール30の周縁部36の場合、摺動部240
d)第1部材が可動スクロール40のキー溝42baの側面42cの場合、摺動部250
(7-1)
本開示の圧縮機の一実施形態であるスクロール圧縮機100は、吸入した冷媒を圧縮機構20により圧縮して吐出する。スクロール圧縮機100は、第1部材と、第1部材が接触して摺動する摺動部と、を備える。摺動部は、第1摺動部材と、第2摺動部材と、を含む。第1摺動部材は、第1部材と接触して摺動する。第2摺動部材は、第1摺動部材が所定量だけ摩耗した際に第1部材と接触して摺動する。第2摺動部材の動摩擦係数は、第1摺動部材の動摩擦係数より大きい。
なお、摺動部210、摺動部220及び摺動部230について補足して説明すると、摺動部210では、第1摺動部材は軸受メタル47であり、第2摺動部材は摺動部材212である。摺動部220では、第1摺動部材は軸受メタル112であり、第2摺動部材は摺動部材222である。摺動部230では、第1摺動部材は軸受メタル91であり、第2摺動部材は摺動部材232である。
このスクロール圧縮機100では、摺動部において第1摺動部材の摩耗が進むと、第1部材が第1摺動部材より動摩擦係数の大きな第2摺動部材と摺動し、スクロール圧縮機100の運転が高負荷状態になる。そのため、摺動部に摩耗が生じた状態でスクロール圧縮機100が異常振動しながら長時間運転される前に、スクロール圧縮機100を停止させることができる。
(7-2)
スクロール圧縮機100では、第1摺動部材と第2摺動部材とは別材料である。
スクロール圧縮機100では、第1摺動部材の材質によらず、スクロール圧縮機100の停止を実現することが容易な動摩擦係数の大きな第2摺動部材を設けることができる。
(7-3)
スクロール圧縮機100では、第2摺動部材は、摩擦材を樹脂で固定した樹脂部材、金属粉を焼結した金属部材、又は、炭素繊維複合材である。
スクロール圧縮機100では、第2摺動部材として上記材料が使用されるため、第1部材が第2摺動部材と摺動する際に高負荷状態が作り出されやすい。
(7-4)
スクロール圧縮機100では、第1摺動部材は、摩耗量が最大摩耗量を超える状態でスクロール圧縮機100が運転される場合に加速的に摩耗が進行する。第2摺動部材は、第1摺動部材が最大摩耗量より小さな値の所定量だけ摩耗した際に第1部材と接触して摺動する。
スクロール圧縮機100では、所定量を最大摩耗量より小さな値とすることで、スクロール圧縮機100が大きく異常振動し始める前に、スクロール圧縮機100を停止状態に導くことができる。
(7-5)
スクロール圧縮機100では、第1部材と摺動部とは、冷凍機油の油膜を介して接触する。スクロール圧縮機100では、第2摺動部材の表面粗さは、第1部材と摺動部との摺動において許容される最小油膜厚さ以上である。
スクロール圧縮機100では、第2摺動部材の表面粗さが最小油膜厚さ以上であるため、摺動部の摩耗が進んだ際に、第2摺動部材と第1部材とが直接接触しやすくい。そのため、摺動部に摩耗が生じた状態で圧縮機が異常振動しながら長時間運転される前に、スクロール圧縮機100を停止状態に導くことが容易である。
(7-6)
スクロール圧縮機100では、供給される電流が閾値を超える場合に運転を停止する。具体的には、スクロール圧縮機100は、供給される電流が閾値を超える場合、モータ70への電力供給を停止する停止部140を有する。
第1部材が動摩擦係数の高い第2摺動部材と摺動して高負荷状態が作り出されると、圧縮機の電流値は大きくなる。スクロール圧縮機100では、これを利用し、供給される電流の大きさに基づいてスクロール圧縮機100の運転を停止させることができる。
(8)変形例
以下に上記実施形態の変形例を示す。なお、以下の変形例の内容は、互いに矛盾しない範囲で適宜組み合わされてもよい。
(8-1)変形例A
上記実施形態では、クランク軸80を第1部材とし、クランク軸80を軸支する側に第1摺動部材及び第2摺動部材を有する摺動部210,220,230を設けている。ただし、これに限定されるものではなく、クランク軸80を軸支する側を第1部材として、軸支されるクランク軸80側に第1摺動部材及び第2摺動部材を有する摺動部を設けてもよい。
例えば、一例を挙げれば、上部軸受ハウジング110には軸受メタル112だけが配置され、摺動部材222は設けられなくてもよい。そして、代わりに、クランク軸80に、軸受メタル112と接触して摺動する部分(第1摺動部材)と、第1摺動部材が所定量だけ摩耗した際に軸受メタル112と接触して摺動する部分(第2摺動部材)と、を設け、第2摺動部材の動摩擦係数を第1摺動部材の動摩擦係数より大きくしてもよい。
また、詳細な説明は省略するが、可動スクロール40の第2鏡板42を第1部材とし、固定スクロール30の周縁部36に、第1摺動部材及び第2摺動部材を有する摺動部を設けてもよい。
また、詳細な説明は省略するが、オルダム継手24の第1キー24bを第1部材とし、可動スクロール40(具体的には、可動スクロール40のキー溝42baの側面42c)に第1摺動部材及び第2摺動部材を有する摺動部を設けてもよい。
なお、2つの部材が摺動関係にある場合に、どちらに第1摺動部材と第2摺動部材とを含む摺動部を設けるかは、例えば、2つの部材のうちどちらが摩耗しやすいかに基づき決定されればよい。
(8-2)変形例B
スクロール圧縮機100の第1部材及びこれに対応する摺動部は、上記実施形態で例示したものに限定されない。例えば、スクロール圧縮機100の第1部材はクランク軸80であり、摺動部は、図2において符号“260”で示した、クランク軸80をその下部で支持するスラスト軸受部であってもよい。
また、スクロール圧縮機100の、オルダム継手24の第2キー24cを摺動部とし、第2キー24cが摺動するハウジング50のキー溝の側面を第1部材としてもよい。
(8-3)変形例C
上記実施形態では、スクロール圧縮機100が第1摺動部材と第2摺動部材とを含む5つの摺動部210,220,230,240,250を有する場合について説明をしている。ただし、これに限定されるものではなく、スクロール圧縮機100は、摺動部210,220,230,240,250のうちの一部だけを有し、他の摺動部は、第2摺動部材を有さなくてもよい。
(8-4)変形例D
上記実施形態では、摺動部210,220,230については、クランク軸80の軸方向において異なる位置に軸受メタルと摺動部材を設ける構造を例示している。ただし、これに限定されるものではなく、摺動部210,220,230に、摺動部240と同様の二層構造を採用してもよい。
具体例を挙げて説明すると、上部軸受ハウジング110に設けられる摺動部220は、例えば、図11のように、第2摺動部材として機能する摺動部材222と、摺動部材222を覆うように、摺動部材222の内周面に配置される、第1摺動部材として機能する軸受メタル112と、を有する二層構造を有していてもよい。このように構成される場合にも、第1摺動部材としての軸受メタル112が所定量だけ摩耗した際に、摺動部材222をクランク軸80の主軸82と摺動させることができる。なお、この場合には、軸受メタル112の厚みを、軸受メタル112の許容摩耗量以上とし、軸受メタル112の最大摩耗量より小さくすることが好ましい。軸受メタル112の許容摩耗量及び最大摩耗量は、軸受メタル47の許容摩耗量及び最大摩耗量と同様に定義される。
また、上記実施形態では、摺動部240,250については、第1摺動部材と第2摺動部材とが二層に配置される構造を例示している。ただし、これに限定されるものではなく、摺動部240,250に、摺動部210,220,230と同様の構造を採用してもよい。
具体例を挙げて説明すると、可動スクロール40の第2鏡板42に設けられる摺動部240では、例えば、図12のように、第1摺動部材242の径方向外側に第2摺動部材244が配置されてもよい。そして、当初の(スクロール圧縮機100の使用を開始する前の)第2摺動部材244の上面を、当初の第1摺動部材242の上面の位置より低くに配置してもよい。このように構成する場合にも、第1摺動部材242が所定量だけ摩耗した際に、第2摺動部材244を固定スクロール30の周縁部36と摺動させることができる。なお、この場合には、当初の第2摺動部材244の上面の位置と当初の第1摺動部材242の上面の位置との距離を、可動スクロール40の第2鏡板42の許容摩耗量以上とし、可動スクロール40の第2鏡板42の最大摩耗量より小さくすることが好ましい。
(8-5)変形例E
上記実施形態では、スクロール圧縮機100を例に圧縮機を説明したが、圧縮機の種類はスクロール圧縮機に限定されず、他の種類の圧縮機であってもよい。
例えば、本開示の構成は、図13のようなロータリ圧縮機1100にも適用可能である。具体的には、ロータリ圧縮機1100の、第1部材としてのクランク軸1080を軸支する軸受部分1210,1220に、第1摺動部材と第2摺動部材とを有する摺動部を設けてもよい。
(8-6)変形例F
上記実施形態では、第1摺動部材と第2摺動部材とは別部材である。また、上記実施形態では、第1摺動部材と第2摺動部材とは別の材料製である。ただし、本開示の圧縮機は、このような態様に限定されない。例えば、第1摺動部材と第2摺動部材とは、同一の部材で、同一の材料製であってもよく、第1摺動部材として機能する部分又は第2摺動部材として機能する部分に表面処理を施すことで、第1摺動部材と第2摺動部材とが異なる動摩擦係数を有するように構成されてもよい。
(8-7)変形例G
上記実施形態で例示した第2摺動部材の材料は、本開示を限定するものではない。第2摺動部材の材料は、第1摺動部材より動摩擦係数が大きな材料であれば、例示した材料に限定されない。
<付記>
以上、本開示の実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
本開示は、圧縮機、及び、圧縮機を備えた冷凍サイクル装置に広く適用でき有用である。
20 圧縮機構
30 固定スクロール(第1部材)
40 可動スクロール(第1部材)
47 軸受メタル(第1摺動部材)
91 軸受メタル(第1摺動部材)
112 軸受メタル(第1摺動部材)
80 クランク軸(第1部材)
100 スクロール圧縮機(圧縮機)
210,220,230,240,250 摺動部
212,222,232 摺動部材(第2摺動部材)
242 第1摺動部材
244 第2摺動部材
252 第1摺動部材
254 第2摺動部材
300 熱源熱交換器(凝縮器,蒸発器)
400 利用熱交換器(蒸発器,凝縮器)
500 膨張機構
600 冷媒回路
1000 冷凍サイクル装置
1100 ロータリ圧縮機(圧縮機)
特開2007-162571号公報

Claims (8)

  1. 吸入した冷媒を圧縮機構(20)により圧縮して吐出する圧縮機であって、
    第1部材(30,40,80)と、
    前記第1部材が接触して摺動する摺動部(240,250,210,220,230)と、
    を備え、
    前記摺動部は、前記第1部材と接触して摺動する第1摺動部材(47,112,91,242,252)と、前記第1摺動部材が所定量だけ摩耗した際に前記第1部材と接触して摺動する第2摺動部材(212,222,232,244,254)と、を含み、
    前記第2摺動部材の動摩擦係数は、前記第1摺動部材の動摩擦係数より大きい、
    圧縮機(100)。
  2. 前記第1摺動部材と前記第2摺動部材とは、別材料である、
    請求項1に記載の圧縮機。
  3. 前記第2摺動部材は、摩擦材を樹脂で固定した樹脂部材、金属粉を焼結した金属部材、又は、炭素繊維複合材である、
    請求項2に記載の圧縮機。
  4. 前記第1摺動部材は、摩耗量が最大摩耗量を超える状態で前記圧縮機が運転される場合に加速的に摩耗が進行し、
    前記所定量は、前記最大摩耗量より小さな値である、
    請求項1から3のいずれか1項に記載の圧縮機。
  5. 前記第1部材と前記摺動部とは、冷凍機油の油膜を介して接触する、
    請求項1から4のいずれか1項に記載の圧縮機。
  6. 前記第2摺動部材の表面粗さは、前記第1部材と前記摺動部との摺動において許容される最小油膜厚さ以上である、
    請求項5に記載の圧縮機。
  7. 供給される電流が閾値を超える場合に運転を停止する、
    請求項1から6のいずれか1項に記載の圧縮機。
  8. 請求項1から7のいずれか1項に記載の圧縮機と、凝縮器(300,400)と、蒸発器(400,300)と、膨張機構(500)と、を有する冷媒回路(600)を備える、
    冷凍サイクル装置。
JP2022033790A 2022-03-04 2022-03-04 圧縮機及び冷凍サイクル装置 Pending JP2023129036A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2022033790A JP2023129036A (ja) 2022-03-04 2022-03-04 圧縮機及び冷凍サイクル装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2022033790A JP2023129036A (ja) 2022-03-04 2022-03-04 圧縮機及び冷凍サイクル装置

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2023129036A true JP2023129036A (ja) 2023-09-14

Family

ID=87973043

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2022033790A Pending JP2023129036A (ja) 2022-03-04 2022-03-04 圧縮機及び冷凍サイクル装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2023129036A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6672056B2 (ja) ターボ圧縮機、これを備えたターボ冷凍装置
JP4143827B2 (ja) スクロール圧縮機
JP4814167B2 (ja) 多段圧縮機
CN108603500B (zh) 涡旋压缩机
JP6057535B2 (ja) 冷媒圧縮機
JP2017194064A (ja) 冷凍サイクル
JP2023129036A (ja) 圧縮機及び冷凍サイクル装置
JP5741197B2 (ja) ロータの端部材、該ロータ端部材を備えたモータおよび該モータを備えた圧縮機
JP7017240B2 (ja) スクロール型圧縮機
JP2017172346A (ja) スクロール圧縮機、及び、空気調和機
JP2023149156A (ja) スクロール圧縮機及び冷凍サイクル装置
JP6598881B2 (ja) スクロール圧縮機
JP2003176793A (ja) スクロール圧縮機
JP7481640B2 (ja) スクロール圧縮機及び冷凍装置
JP7078883B1 (ja) 圧縮機及び冷凍サイクル装置
JP7378275B2 (ja) 圧縮機、室外機および空気調和装置
JP2013238191A (ja) 圧縮機
WO2020194994A1 (ja) スクロール圧縮機
JP2019100254A (ja) スクロール圧縮機
JP5304679B2 (ja) 圧縮機
EP4372229A1 (en) Scroll compressor and refrigeration device
WO2023218584A1 (ja) スクロール圧縮機
WO2019244526A1 (ja) 圧縮機
JP2023111597A (ja) 圧縮機及びヒートポンプ式給湯システム
JP4995290B2 (ja) スクロール圧縮機の設計方法