JP2023125987A - 静電吸着シート - Google Patents

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弘和 田▲尻▼
Hirokazu TAJIRI
康弘 野田
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Abstract

【課題】接着剤なしで印刷物をそのまま被着体に貼り付け可能であり、使用後は被着体から剥離できるとともに、印刷時のハンドリング性が良好であり、環境負荷の低減に貢献可能な静電吸着シートを提供する。【解決手段】静電吸着シートは、帯電処理されたシート本体(i)に剥離層(ii)が積層される。シート本体(i)は、樹脂層(A)と樹脂層(A)上に印刷受容層(B)とを備え、シート本体(i)の樹脂層(A)側の表面が剥離層(ii)と静電吸着する。樹脂層(A)が、熱可塑性樹脂及び無機粒子を含有するコア層(C)を含み、コア層(C)中記無機粒子の含有量が50~80質量%である。静電吸着シートのシート本体(i)側及び剥離層(ii)側の表面抵抗率が、それぞれ1×10-1~9×1012Ωである。シート本体(i)の不透明度が50~100%である。【選択図】図1

Description

本発明は、静電吸着シートに関する。
従来、静電気によって壁、窓ガラス又はロッカーのような被着体に吸着できるフィルムが提案されている(例えば、特許文献1~3参照)。このようなフィルムに予め印刷されたポスター又は広告等を貼り合わせることにより、接着剤又は粘着テープを使用せずに被着体に貼り付け可能な表示媒体を作成することができる。
上記のように静電吸着できるフィルムとしては、多孔質のフィルムも提案されている(例えば、特許文献4~7参照)。多孔質のフィルムは、内部の空孔に電荷を蓄積することにより、静電吸着力を維持することができる。そのため、フィルムを被着体から剥がした後、再度貼り付けることができ、繰り返し使用可能である。
また静電吸着できるフィルムのなかには印刷適性を有するフィルムも提案されている(例えば、特許文献6又は8)。表示内容をフィルム上に直接印刷することができるため、表示媒体の作成が容易であり、軽量化も可能である。
特公昭63-030940号公報 特開昭58-098351号公報 特開昭61-00025号公報 特開平06-083266号公報 特許第3770926号公報 特開平07-244461号公報 特表平10-504248号公報 特開2010-023502号公報
しかし、フィルムが静電吸着力を有する場合、フィルムへの印刷時に印刷装置内の搬送ローラーに貼り付いて印刷位置がずれることがある。ほこりやごみのような異物がフィルムに付着することもあるため、フィルムのハンドリング性の改善が求められていた。
また静電吸着力を長く維持でき、繰り返し使用できるフィルムも、最終的には廃棄されるが、環境保護に対する意識の高まりから、プラスチック廃棄物の減量化の要求がある。そのため、静電吸着フィルムにおいても樹脂量の削減が検討されている。
本発明は、接着剤なしで印刷物をそのまま被着体に貼り付け可能であり、使用後は被着体から剥離できるとともに、印刷時のハンドリング性が良好であり、環境負荷の低減に貢献可能な静電吸着シートを提供することを目的とする。
本発明者らが上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、以下のとおり、本発明を完成した。
[1]帯電処理されたシート本体(i)に剥離層(ii)が積層された静電吸着シートであって、
前記シート本体(i)は、樹脂層(A)と、前記樹脂層(A)上に印刷受容層(B)とを備え、前記シート本体(i)の前記樹脂層(A)側の表面が前記剥離層(ii)と静電吸着し、
前記樹脂層(A)が、熱可塑性樹脂及び無機粒子を含有するコア層(C)を含み、前記コア層(C)中の前記無機粒子の含有量が50~80質量%であり、
前記静電吸着シートの前記シート本体(i)側及び前記剥離層(ii)側の表面抵抗率が、それぞれ1×10-1~9×1012Ωであり、
前記シート本体(i)の不透明度が50~100%である
静電吸着シート。
[2]前記樹脂層(A)が、延伸樹脂層を含む
上記[1]に記載の静電吸着シート。
[3]下記式(F1)によって求められる、前記無機粒子の粒度分布における標準偏差(SD)が、0.3以上である
上記[1]又は[2]に記載の静電吸着シート。
(F1) SD=(d84%-d16%)/2
〔式(F1)において、d84%は累積カーブが84%となる点の粒子径(μm)を表す。d16%は累積カーブが16%となる点の粒子径(μm)を表す。〕
[4]前記印刷受容層(B)が、帯電防止機能を有するポリマーを含有する
上記[1]~[3]のいずれかに記載の静電吸着シート。
[5]前記帯電防止機能を有するポリマーが、第4級アンモニウム塩型共重合体又はアルカリ金属塩含有ポリマーを含む
上記[4]に記載の静電吸着シート。
[6]前記アルカリ金属塩含有ポリマーが、アルカリ金属を含有し、
前記アルカリ金属が、リチウムを含む
上記[5]に記載の静電吸着シート。
[7]前記シート本体(i)の水蒸気透過係数が、0.01~2.50g・mm/(m・24時間)である
上記[1]~[6]のいずれか一項に記載の静電吸着シート。
本発明によれば、接着剤なしで印刷物をそのまま被着体に貼り付け可能であり、使用後は被着体から剥離できるとともに、印刷時のハンドリング性が良好であり、環境負荷の低減に貢献可能な静電吸着シートを提供することができる。
静電吸着シートの一例を示す断面図である。 帯電処理に使用できるバッチ式コロナ放電処理装置の一例を示す概略図である。 帯電処理に使用できるバッチ式コロナ放電処理装置の一例を示す概略図である。 帯電処理に使用できる連続式コロナ放電処理装置の一例を示す概略図である。 帯電処理に使用できる連続式コロナ放電処理装置の一例を示す概略図である。 静電吸着シートの製造装置の一例を示す概略図である。 吸着力の測定装置の概略図である。
以下、本発明の静電吸着シートについて詳細に説明する。以下の説明は本発明の一例(代表例)であり、本発明はこれに限定されない。
以下の説明において、「(メタ)アクリル」の記載は、アクリルとメタクリルの両方を示す。
(静電吸着シート)
本発明の静電吸着シートは、帯電処理されたシート本体(i)と、当該シート本体(i)に積層された剥離層(ii)とを備える。シート本体(i)は、樹脂層(A)と、当該樹脂層(A)上に印刷受容層(B)とを備える。
シート本体(i)の樹脂層(A)側の表面は、剥離層(ii)と静電吸着する。剥離層(ii)をシート本体(i)から容易に剥がすことができ、樹脂層(A)を露出させることができる。樹脂層(A)は帯電処理によって電荷を保持し、被着体に静電吸着することが可能である。よって、接着剤を使用せずにシート本体(i)の樹脂層(A)側の表面をそのまま被着体に貼り付けることができる。シート本体(i)の印刷受容層(B)には印刷が可能であるため、静電吸着シートの印刷物をそのまま、シール、ラベル、サイン、ポスター、又は広告等の表示媒体として使用することができる。また静電吸着したシート本体(i)は、被着体から剥がすことも容易であり、接着剤の残存もない。使用後のシート本体(i)を廃棄物として容易に回収できるため、リサイクルに好適である。
このように樹脂層(A)は静電吸着力を有するが、本発明の静電吸着シートにおいては樹脂層(A)の一方の面に印刷受容層(B)が、他方の面に剥離層(ii)がそれぞれ配置される。印刷受容層(B)側の表面及び剥離層(ii)側の表面は、それぞれ1×10-1~9×1012Ωの表面抵抗率を有し、静電気を帯びにくい。そのため、本発明の静電吸着シートは、シートの搬送ローラーへの貼り付き、シート同士のブロキング、又はごみ、ほこりのような異物の付着が少ない。
すなわち、本発明の静電吸着シートは、被着体への貼り付け時には十分な静電吸着力を有しながらも、その静電吸着力による印刷工程や加工工程時のトラブルが少なく、ハンドリング性が高い。またシート本体(i)の不透明度も50~100%と高いため、印刷内容が明瞭に表示されやすく、印刷適性に優れた静電吸着シートを提供できる。
さらに本発明においては、樹脂層(A)が熱可塑性樹脂及び無機粒子を含有するコア層(C)を含み、コア層(C)中の無機粒子の含有量が50~80質量%である。無機粒子を多く含有することにより、樹脂量を減らすことができる。また熱可塑性樹脂を、製造過程における二酸化炭素ガスの排出係数が熱可塑性樹脂よりも小さい無機粒子に置き換えることができる。よって、環境負荷の低減に貢献することが可能な静電吸着シートを提供することができる。
((シート本体(i)))
上述のように、シート本体(i)は樹脂層(A)及び印刷受容層(B)を備える。樹脂層(A)は帯電処理によって静電吸着力を有し、当該静電吸着力によってシート本体(i)を被着体に貼り付けることも剥がすこともできる。
<樹脂層(A)>
本発明における樹脂層(A)は、熱可塑性樹脂及び無機粒子を含有するコア層(C)を少なくとも1層含み、2層以上含むこともできる。無機粒子を含有するコア層(C)を延伸することにより、樹脂層(A)内部に空孔を形成することが容易となる。空孔は内部に電荷を保持できるため、樹脂層(A)の静電吸着力が高まる。また熱可塑性樹脂を無機粒子及び空孔に置き換えることができ、環境負荷の低減に貢献することができる。
<<熱可塑性樹脂>>
樹脂層(A)に用いる熱可塑性樹脂の種類は特に制限されない。特に絶縁性の優れた熱可塑性樹脂を樹脂層(A)が含有することにより、内部に蓄積した電荷を保持しやすく好ましい。使用できる熱可塑性樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、プロピレン系樹脂、ポリメチル-1-ペンテン等のポリオレフィン系樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、マレイン酸変性ポリエチレン、マレイン酸変性ポリプロピレン等の官能基含有ポリオレフィン系樹脂、ナイロン-6、ナイロン-6,6等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやその共重合体、ポリブチレンテレフタレート、脂肪族ポリエステル等の熱可塑性ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート、アタクティックポリスチレン、又はシンジオタクティックポリスチレン等が挙げられる。なかでも、絶縁性と加工性に優れるポリオレフィン系樹脂、又は官能基含有ポリオレフィン系樹脂が好ましい。
ポリオレフィン系樹脂のより具体的な例としては、エチレン、プロピレン、ブチレン、ヘキセン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、メチル-1-ペンテン等のオレフィン類の単独重合体、又はこれらオレフィン類の2種以上からなる共重合体が挙げられる。
官能基含有ポリオレフィン系樹脂のより具体的な例としては、上記オレフィン類と共重合可能な官能基含有モノマーとの共重合体が挙げられる。官能基含有モノマーとしては、例えばスチレン、α-メチルスチレン等のスチレン類、酢酸ビニル、ビニルアルコール、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ブチル安息香酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル類、アクリル酸、メタクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N-メタロール(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリル酸エステル類、又はメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、シクロペンチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等のビニルエーテル類が挙げられる。これらのうち1種又は2種以上を適宜共重合に用いることができる。
熱可塑性樹脂としては、上記ポリオレフィン系樹脂又は官能基含有ポリオレフィン系樹脂が、グラフト変性された樹脂を使用することも可能である。
グラフト変性には公知の手法が用いることができ、具体的な例としては、不飽和カルボン酸又はその誘導体によるグラフト変性が挙げられる。上記不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等が挙げることができる。また、上記不飽和カルボン酸の誘導体としては、酸無水物、エステル、アミド、イミド、金属塩等も使用可能である。具体的には、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸ジエチルエステル、フマル酸モノメチルエステル、フマル酸ジメチルエステル、イタコン酸モノメチルエステル、イタコン酸ジエチルエステル、(メタ)アクリルアミド、マレイン酸モノアミド、マレイン酸ジアミド、マレイン酸-N-モノエチルアミド、マレイン酸-N,N-ジエチルアミド、マレイン酸-N-モノブチルアミド、マレイン酸-N,N-ジブチルアミド、フマル酸モノアミド、フマル酸ジアミド、フマル酸-N-モノエチルアミド、フマル酸-N,N-ジエチルアミド、フマル酸-N-モノブチルアミド、フマル酸-N,N-ジブチルアミド、マレイミド、N-ブチルマレイミド、N-フェニルマレイミド、(メタ)アクリル酸ナトリウム、又は(メタ)アクリル酸カリウム等が挙げられる。グラフト変性物は、ポリオレフィン系樹脂又は官能基含有ポリオレフィン系樹脂に対して、通常は0.005質量%、好ましくは0.01質量%以上であり、通常は10質量%以下、好ましくは5質量%以下のグラフトモノマーによってグラフト変性され得る。
樹脂層(A)の熱可塑性樹脂としては、上記の熱可塑性樹脂の中から1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて、使用してもよい。
上記ポリオレフィン系樹脂の中でも、プロピレン系樹脂が、絶縁性、加工性、耐薬品性、又はコストの観点から好ましい。プロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体であり、アイソタクティックないしはシンジオタクティック及び種々の程度の立体規則性を示すポリプロピレンや、プロピレンを主成分とし、これと、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、4-メチル-1-ペンテン等のα-オレフィンとを重合させた共重合体を主成分として使用することが好ましい。主成分とは、重合体の50質量%を超える成分をいう。上記共重合体は、2元系でも3元系以上でもよく、またランダム共重合体でもブロック共重合体であってもよい。
樹脂層(A)中の熱可塑性樹脂は、プロピレン単独重合体よりも融点が低い樹脂を10質量%以上含むことが好ましく、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上、特に好ましくは25質量%以上、より特に好ましくは30質量%以上含むことが好ましい。このような樹脂を含むことにより、コア層(C)中の無機粒子の含有量を多くし、かつ高い倍率でコア層(C)を延伸したとしても、空孔の連通と水蒸気透過度の増加を抑えることができる。その結果、電荷の蓄積を維持しつつ、樹脂量を低減することができ、環境負荷を低減することができる。上記融点が低い樹脂は、プロピレン単独重合体よりも融点が10℃以上低いことが好ましく、20℃以上低いことがより好ましい。そのような融点が低い樹脂として、高密度又は低密度のポリエチレン、又はプロピレンとエチレン等との共重合体等を例示することができる。
コア層(C)中の熱可塑性樹脂の含有量は、20質量%以上であることが好ましく、より好ましくは25質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上であり、50質量%以下が好ましく、より好ましくは45質量%以下であり、さらに好ましくは40質量%以下である。上記含有量が20質量%以上であれば、コア層(C)を成形しやすい。上記含有量が50質量%以下であれば、樹脂量を削減でき、環境負荷の低減に貢献しやすい。
<<無機粒子>>
コア層(C)が無機粒子を含有することにより、静電吸着シートの白色度及び不透明度の調整が可能である。また後述の延伸工程により、無機粒子を核とした微細な空孔をコア層(C)内部に多数形成することができる。空孔によりフィルム内部の界面数が増加し、電荷の保持量が増えて静電吸着力が高まりやすいとともに、静電吸着シートの白色化、不透明化及び軽量化が容易である。またコア層(C)中の樹脂成分が、二酸化炭素ガスの排出係数が0の空孔又は樹脂より小さい無機粒子に置き換えられるため、樹脂層(A)中の樹脂量を削減できるとともに二酸化炭素ガスの排出量を効果的に減らすことができる。
コア層(C)中の無機粒子の含有量は、50質量%以上であり、好ましくは55質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上である。また、コア層(C)における無機粒子の含有量は80質量%以下であり、好ましくは75質量%以下であり、より好ましくは70質量%以下である。上記含有量が50質量%以上であると、延伸によって形成される空孔が増え、電荷の蓄積能力が向上する。また、樹脂量を減らして廃棄時に環境負荷を低減することができる。一方、上記含有量が80質量%以下であると、コア層(C)の成形が容易になる。また、空孔同士の連通を抑え、この連通孔を経由して保持した電荷が静電吸着シートの表面又は側面から逃げにくくなるため、電荷の保持性能を高めやすい。
なお、空孔が多いほど、空孔同士が連通して空孔内に保持した電荷が連通孔を経由して静電吸着シートの表面又は側面から逃げやすくなる傾向がある。これに対しては後述する延伸工程における温度を樹脂の融点近くまで高くするか、上述のように熱可塑性樹脂が低融点の樹脂を含む等の製造条件か、又は無機粒子のサイズ等を調整することにより、空孔の連通を抑えることもできるため、無機粒子の含有量が多くても電荷状態を安定して維持することができる。
使用できる無機粒子としては、例えば炭酸カルシウム、焼成クレイ、シリカ、けいそう土、白土、タルク、酸化チタン、硫酸バリウム、アルミナ、ゼオライト、マイカ、セリサイト、ベントナイト、セピオライト、バーミキュライト、ドロマイト、ワラストナイト、又はガラスファイバー等が挙げられる。
無機粒子の平均粒子径は、空孔形成性の観点から、0.01μm以上が好ましく、0.1μm以上がより好ましい。表面欠陥による印刷性低下抑制の観点から、上記平均粒子径は、15μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましい。上記平均粒子径は、レーザー回折による粒度分布計により測定される。
上記粒度分布計により測定される、無機粒子の粒度分布における標準偏差(SD)は、0.3以上が好ましく、1.0以上がより好ましく、2.0以上がさらに好ましく、3.0以上が特に好ましく、5.0以上がより特に好ましい。標準偏差(SD)が0.3以上であると、無機粒子の含有量が多くても空孔が連通しにくく、水蒸気透過係数の上昇を抑えやすい。上記標準偏差(SD)は、例えば10.0以下である。
上記標準偏差(SD)は、下記式(F1)によって求められる。
(F1) SD=(d84%-d16%)/2
式(F1)において、d84%は、1つの粉体の集合の全体積を100%として累積カーブを求めたとき、当該累積カーブが84%となる点の粒子径(μm)を表す。d16%は、上記累積カーブが16%となる点の粒子径(μm)を表す。
コア層(C)は、無機粒子とともに有機粒子を含有してもよい。有機粒子を使用する場合のコア層(C)中の有機粒子の含有量は、例えば10質量%以下、又は5質量%以下の程度とすることができる。有機粒子としては、コア層(C)中で配合量が最も多い熱可塑性樹脂とは異なる種類の樹脂を選択することが好ましい。例えば、熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂である場合には、有機粒子としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ナイロン-6、ナイロン-6,6、環状ポリオレフィン、ポリスチレン、又はポリメタクリレート等の重合体であって、ポリオレフィン系樹脂の融点よりも高い融点(例えば170~300℃)又はガラス転移温度(例えば170~280℃)を有し、かつ非相溶の樹脂を使用することができる。
樹脂層(A)は、必要に応じて熱安定剤(酸化防止剤)、光安定剤、分散剤、又は滑剤等を含有することができる。熱安定剤を使用する場合の樹脂層(A)中の含有量は、通常0.001~1質量%である。熱安定剤としては、例えば立体障害フェノール系、リン系、又はアミン系等の熱安定剤等を使用することができる。光安定剤を使用する場合の樹脂層(A)中の含有量は、通常0.001~1質量%である。光安定剤としては、例えば立体障害アミン系、ベンゾトリアゾール系、又はベンゾフェノン系の光安定剤等が挙げられる。分散剤又は滑剤は、例えば無機粒子を分散させる目的で使用される。これらの樹脂層(A)中の含有量は通常0.01~4質量%である。分散剤又は滑剤としては、例えばシランカップリング剤、オレイン酸あるいはステアリン酸等の高級脂肪酸、金属石鹸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸又はそれらの塩等を使用することができる。
<<層構造>>
樹脂層(A)は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。単層構造の樹脂層(A)はコア層(C)からなる。
樹脂層(A)が多層構造を有する場合、樹脂層(A)は、例えば熱可塑性樹脂と無機粒子を含有するコア層(C)と、当該コア層(C)の一方の面上又は両面上に表面層(D)とを含むことができる。コア層(C)は帯電処理によって注入された電荷を保持するが、表面層(D)によってこのコア層(C)の表面を覆うことにより、コア層(C)に保持された電荷が外部に逃げることを抑えることができる。加えて表面層(D)は、コア層(C)が水等の外部の影響を受けにくくする保護層としても機能する。
樹脂層(A)は、延伸樹脂層を含むことが好ましい。無機粒子を含有する延伸樹脂層は、微細な空孔を内部に多数有する多孔質延伸層であり得る。空孔により、フィルム内の界面数が増加し、内部に保持できる電荷が増加して静電吸着力が高まる傾向にある。また空孔による光拡散率の向上効果により、シート本体(i)の不透明度をより高めやすい。延伸樹脂層は、少なくとも1軸方向に延伸されているのであれば、1軸方向に延伸された樹脂フィルムであってもよいし、2軸方向に延伸された樹脂フィルムであってもよい。多層構造の場合の樹脂層(A)は、そのような延伸樹脂層を1層以上含むことができ、空孔形成性の観点からは、コア層(C)が延伸樹脂層であることが好ましい。
樹脂層(A)が2層構造又は3層構造を有する場合の延伸軸数は、例えば1軸/1軸、1軸/2軸、2軸/1軸、1軸/1軸/2軸、1軸/2軸/1軸、2軸/1軸/1軸、1軸/2軸/2軸、2軸/2軸/1軸、又は2軸/2軸/2軸であり得る。樹脂層(A)の多層化により、耐電圧性能の向上、筆記性、耐擦過性、又は2次加工適性等の様々な機能の付加が可能となる。
<<空孔率>>
樹脂層(A)中の空孔率は、静電吸着力、不透明度又は環境負荷の低減の観点から、5%以上であることが好ましく、10%以上がより好ましい。一方、上記空孔率は、連通孔を減らし、静電吸着力を維持する観点及び成形性向上の観点から、60%以下であることが好ましく、45%以下であることがより好ましい。
上記空孔率は、電子顕微鏡で観察したフィルムの断面の一定領域において、空孔が占める面積の比率より求めることができる。具体的には、シートの任意の一部を切り取り、エポキシ樹脂で包埋して固化させた後、ミクロトームを用いてシートの面方向に垂直に切断し、その切断面が観察面となるように観察試料台に貼り付ける。観察面に金又は金-パラジウム等を蒸着し、観察しやすい任意の倍率(例えば、500倍~3000倍の拡大倍率)に調整して空孔を観察する。観察領域を画像データとして取り込み、画像解析装置にて画像処理を行い、空孔部分が占める面積率(%)を求める。多層構造の場合、各層の境界をその外観の違いから判別し、各層内での空孔部分の面積率(%)を求める。任意の10箇所以上における測定値を平均して、空孔率(%)とすることができる。
<印刷受容層(B)>
印刷受容層(B)は、樹脂層(A)の一方の表面を覆い、当該表面における静電吸着力を抑えて、印刷工程等における静電吸着シートのハンドリング性を高めることができる。印刷受容層(B)は、ハンドリング性を高める観点から、帯電防止剤を含有することが好ましい。このような印刷受容層(B)は、通常、帯電防止剤等を含む塗工液を樹脂層(A)上に塗工するにより設けられ得る。或いは予め別のフィルム上に印刷受容層(B)を形成して、これを樹脂層(A)にラミネートすることで形成することが好ましい。
<<帯電防止剤>>
使用できる帯電防止剤としては、例えばステアリン酸モノグリセリド、アルキルジエタノールアミン、ソルビタンモノラウレート、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルジフェニルエーテルスルフォン酸塩等に代表される低分子量有機化合物系の帯電防止剤、ITO(インジウムドープド酸化錫)、ATO(アンチモンドープド酸化錫)、グラファイトウィスカ等に代表される導電性無機充填剤、ポリチオフェン、ポリピーロイル、ポリアニリン等の分子鎖内のパイ電子により導電性を発揮するいわゆる電子導電性ポリマー、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンジアミン等の非イオン性ポリマー系の帯電防止剤、ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ポリジメチルアミノエチルメタクリレート四級化物等の第4級アンモニウム塩型共重合体、アルキレンオキシド基及び/又は水酸基含有ポリマーへのアルカリ金属イオン添加物等のアルカリ金属塩含有ポリマーに代表される帯電防止機能を有するポリマー等が挙げられる。
上記のうち、帯電防止機能を有するポリマーは、インクの密着性及び転移性への影響も小さく、着色もほとんど無いことから、好ましい。なかでも、第4級アンモニウム塩型共重合体又はアルカリ金属塩含有ポリマーは、帯電防止性能が良好であり、環境湿度の帯電防止性能への影響が小さいため、より好ましい。
<<<第4級アンモニウム塩型共重合体>>>
上記帯電防止機能を有するポリマーの一例として、第4級アンモニウム塩型共重合体よりなるマルチカチオン型水溶性ポリマーが挙げられる。該共重合体は、下記一般式(1)で表される第4級アンモニウム塩型単量体の構造単位(a)、下記一般式(6)で表される疎水性単量体の構造単位(b)、及びこれらと共重合可能な単量体の構造単位(c)を含有する。
各構造単位(a)~(c)の質量割合(質量%)は、(a):(b):(c)=30~70:30~70:0~40であることが好ましく、より好ましくは35~65:35~65:0~20、さらに好ましくは40~60:40~60:0~10である。
(a)第4級アンモニウム塩型単量体の構造単位
構造単位(a)を形成する第4級アンモニウム塩型単量体は、下記一般式(1)で表されるアクリル酸又はメタクリル酸のエステル又はアミドである。構造単位(a)は、構造内の2以上のカチオンにより共重合体の帯電防止機能に寄与する。共重合体中の構造単位(a)の質量割合が、30質量%以上であれば十分な帯電防止効果が得られやすく、70質量%以下であれば過度に水溶性となって高湿度条件下でべたつくことを抑えやすい。
Figure 2023125987000002
一般式(1)中、Aはオキソ基(-O-)又は第2級アミン基(-NH-)を表す。R1は水素原子又はメチル基を表す。R2は炭素数が2~4のアルキレン基又は下記一般式(2)で表される2-ヒドロキシプロピレン基を表す。R3、R4、R5及びR6は、炭素数が1~3のアルキル基を表す。R7は炭素数が1~10のアルキル基又は炭素数が7~10のアラルキル基を表す。Xは塩素原子、臭素原子、又は沃素原子を表す。R3、R4、R5及びR6は同一であってもよく、異なっていてもよい。mは1~3の整数を表す。
Figure 2023125987000003
一般式(1)で表される構造単位(a)を形成する第4級アンモニウム塩型単量体は、下記一般式(3)で表されるジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、又はジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアミン含有単量体を、下記一般式(5)で表される3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド等の変性剤で、重合前に又は重合後に変性することによって得ることができる。
Figure 2023125987000004
一般式(3)中、Aはオキソ基(-O-)又は第2級アミン基(-NH-)を表す。R1は水素原子又はメチル基を表す。R2は炭素数が2~4のアルキレン基又は上記一般式(2)で表される2-ヒドロキシプロピレン基を表す。R3及びR4は炭素数が1~3のアルキル基を表す。R3とR4は同一であってもよく、異なっていてもよい。
Figure 2023125987000005
上記一般式(5)中、R5及びR6は炭素数が1~3のアルキル基を表す。R7は炭素数が1~10のアルキル基又は炭素数が7~10のアラルキル基を表す。Xは塩素原子、臭素原子、又は沃素原子を表す。R5とR6は同一であってもよく、異なっていてもよい。mは1~3の整数を表す。
(b)疎水性単量体の構造単位
構造単位(b)を形成する疎水性単量体は、下記一般式(6)で表されるアクリル酸又はメタクリル酸のエステルである。構造単位(b)は、共重合体に親油性を付与し、耐水性又はインクの転移性に寄与する。このような疎水性単量体により、印刷適性と帯電防止性の両立が容易となる。ポリマー共重合体中の構造単位(b)の質量割合が、30質量%以上であると上記の効果が得られやすく、70質量%以下であると相対的に帯電防止効果が得られやすい。
Figure 2023125987000006
一般式(6)中、R8は水素原子又はメチル基を表す。R9は炭素数が1~30のアルキル基、炭素数が7~22のアラルキル基、又は炭素数が5~22のシクロアルキル基を表す。
上記一般式(6)で表される構造単位(b)を形成する単量体としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャリーブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、又はステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(c)共重合可能な他の単量体の構造単位
構造単位(c)は、上記構造単位(a)及び(b)を形成する単量体と共重合可能な他の単量体により形成され、必要に応じて共重合体に組み込まれる構造単位である。構造単位(c)を形成する単量体としては、下記一般式(7)~(11)で表されるスチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル等の疎水性単量体、又はビニルピロリドン、(メタ)アクリルアミド等の親水性単量体を挙げることができる。構造単位(c)により、共重合が容易となり、また塗工液調整時の溶媒への溶解性の調整が容易である。
Figure 2023125987000007
上記共重合体を得るための共重合方法としては、ラジカル開始剤を用いた、塊状重合、溶液重合、又は乳化重合等の公知の重合方法を採用することができる。なかでも、溶液重合法が好ましく、溶液重合法は、各単量体を溶媒に溶解し、これにラジカル重合開始剤を添加して、窒素気流下において加熱撹拌することにより実施される。溶媒は水、又はメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、セロソロブ等のアルコール類が好ましく、これらの混合物を使用してもよい。重合開始剤は、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、又はアゾビスバレロニトリル等のアゾ化合物が好適に用いられる。重合時の単量体の固形分濃度は、通常10~60質量%である。重合開始剤の濃度は、単量体に対し通常0.1~10質量%である。第4級アンモニウム塩型共重合体の分子量は、重合温度、重合時間、重合開始剤の種類及び量、溶剤使用量、又は連鎖移動剤等の重合条件により任意のレベルとすることができる。
本発明で用い得る第4級アンモニウム塩型共重合体の分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定した重量平均分子量が1千~100万の範囲内であることが一般的であるが、1千~50万の範囲が好ましい。
<<<アルカリ金属塩含有ポリマー>>>
上記帯電防止機能を有するポリマーの別の一例として、アルカリ金属塩含有ポリマーが挙げられる。アルカリ金属塩含有ポリマーは、下記一般式(12)で表されるポリアルキレンオキシド化合物単量体の構造単位(d)、上記一般式(6)で表される疎水性単量体の構造単位(b)、及びこれらと共重合可能な単量体からなる構造単位(c)を含有する。これら構造単位の質量割合(質量%)は、(d):(b):(c)=1~99:0~99:0~40である。
各構造単位(d)、(b)及び(c)の質量割合(質量%)は、好ましくは20~70:30~80:0~20、より好ましくは30~60:40~70:0~10である。
(d)ポリアルキレンオキシド化合物単量体の構造単位
構造単位(d)を形成するポリアルキレンオキシド化合物単量体は、下記一般式(12)で表されるアクリル酸又はメタクリル酸のエステルである。構造単位(d)は、構造内のアニオン及びアルカリ金属イオンによりポリマーの帯電防止機能に寄与する。ポリマー中の構造単位(d)の質量割合が、1質量%以上であると十分な帯電防止効果が得られやすく、99質量%以下であると過度に水溶性となり、高湿度条件下でべたつくことを抑えやすい。
Figure 2023125987000008
一般式(12)中、R10は水素原子又はメチル基を表す。R11は水素原子、塩素原子、又はメチル基を表す。Aは下記の<1群>から選択される1種の連結基か、下記の<1群>から選択される1種以上の連結基と下記の<2群>から選択される1種以上の連結基とが交互に結合した連結基か、又は単結合を表す。Mはアルカリ金属を表す。nは1~100の整数を表す。
<1群>
置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキレン基、
置換基を有していてもよい炭素数6~20のアリーレン基
<2群>
-CONH-、-NHCO-、-OCONH-、-NHCOO-、
-NH-、-COO-、-OCO-、-O-
<1群>の炭素数1~6のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、又はヘキシレン基が挙げられる。これらは直鎖状であっても分枝状であってもよいが好ましいのは直鎖状である。置換基としては、ヒドロキシル基、又はアリール基等が挙げられる。炭素数6~20のアリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基、又はアントリレン基等が挙げられる。置換基としては、ヒドロキシル基、又はアルキル基等が挙げられる。アルキル基が置換したアリーレン基としては、トリレン基、又はキリリレン基等が挙げられる。
<2群>の連結基としては、ウレタン基又はエステル基を好ましく選択することができる。
<1群>から選択される1種以上の連結基と<2群>から選択される1種以上の連結基とが交互に結合した連結基としては、「(1群から選択される連結基)-(2群から選択される連結基)」で表される連結基や、「(1群から選択される連結基)-(2群から選択される連結基)-(1群から選択される連結基)-(2群から選択される連結基)」で表される連結基等が挙げられる。後者の場合は、2種類の(1群から選択される連結基)は互いに同一であっても異なっていてもよく、また2種類の(2群から選択される連結基)は互いに同一であっても異なっていてもよい。
上記一般式(12)において、nが2以上であるとき、n個のR11は同一であっても異なっていてもよいが、好ましいのは同一である場合である。nは1~100の整数を表すが、2~50が好ましく、3~50がより好ましい。例えば、R11が水素原子の場合、nを10~35、さらには15~30、さらには20~25の範囲内から選択してもよい。R11がメチル基の場合、nを1~20、さらには3~16、さらには5~14の範囲内から選択してもよい。
上記一般式(12)において、Mはアルカリ金属を表し、Li、Na、又はK等を挙げることができるが、イオン半径の小さいLiが導電性の観点で好ましい。
本発明において好適に用い得るポリアルキレンオキシド化合物単量体の例としては、例えば、(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレート、(ポリ)クロロエチレングリコール(メタ)アクリレート、(ポリ)テトラメチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、又はメトキシ(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレンオキシド(メタ)アクリレートが挙げられる。
これらの具体例において、上記一般式(12)のAとして単結合以外の連結基を有するアルキレンオキシドモノマーも使用することができる。例えば、Aにウレタン結合を有する化合物として、特開平09-113704号公報に記載される化合物を使用することができる。
Mが表すアルカリ金属を導入する方法は、特に制限されないが、通常はアルキレンオキシドモノマーにアルカリ金属塩を反応させて水酸基末端をイオン化することにより、アルカリ金属によるイオン導電性を得ることができる。本発明において好適に用い得るアルカリ金属塩の例としては、リチウム、ナトリウム、カリウムの過塩素酸塩、又はこれらの塩化物、臭化物、ヨウ化物、チオシアン化物等の無機塩が挙げられる。これら無機塩を上記ポリアルキレンオキシド化合物単量体に添加してアルコキシド化することにより、アルカリ金属によるイオン導電性を得ることができる。特開平09-113704公報には、式1のAにウレタン結合を持ったアルコキシド化合物が提案されている。
印刷受容層(B)中のアルカリ金属の濃度は、好ましくは0.01質量%以上であり、好ましくは1.00質量%以下であり、より好ましくは0.70質量%以下であり、さらに好ましくは0.50質量%以下である。上記アルカリ金属の濃度が0.01質量以上であると十分な帯電防止効果が得られやすく、1.00質量%以下であると帯電防止効果が得られやすいとともに金属イオンの増加によるインクとの密着性の低下を抑えやすい。
本発明で用い得るアルカリ金属塩含有ポリマーは、上記一般式(12)で表されるポリアルキレンオキシド化合物単量体の構造単位(d)と、上記一般式(6)で表される疎水性単量体の構造単位(b)と、これらと共重合可能な上記一般式(7)~(11)等の単量体の構造単位(c)とを共重合させることにより製造することができる。
このアルカリ金属塩含有ポリマーの製造方法は、特に制限されず、公知の重合手法を単独又は組み合わせて適宜用いることができる。なかでも、上記第4級アンモニウム塩型共重合体と同様に、ラジカル開始剤を用いた、塊状重合、溶液重合、又は乳化重合等の公知の重合方法を採用することが好ましい。
なかでも、溶液重合法が好ましい。具体的には、窒素気流下において、原料として用いる、構造単位(d)を形成するポリアルキレンオキシド化合物単量体、構造単位(b)を形成する疎水性単量体、構造単位(c)を形成する単量体等を不活性有機溶媒に溶解し、これにラジカル重合開始剤を添加した後に、通常65~150℃に加熱しながら撹拌することにより実施される。不活性有機溶媒としては、例えば、n-ヘキサン、n-ブタノール、2-プロパノール、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、又はプロピレングリコールモノエチルエーテル等を使用できる。重合時間は通常1~24時間に設定する。重合時の単量体固形分濃度は通常10~60質量%である。重合開始剤の濃度は単量体に対し通常0.1~10質量%である。アルカリ金属塩含有ポリマーの分子量は、重合温度、重合時間、重合開始剤の種類及び量、溶剤使用量、連鎖移動剤等の重合条件により任意のレベルとすることができる。
共重合に用いる重合開始剤は、脂溶性であることが好ましく、好適な重合開始剤として有機過酸化物、アゾニトリル等が挙げられる。有機過酸化物としては、例えばアルキルパーオキシド(ジアルキルパーオキシド)、アリールパーオキシド(ジアリールパーオキシド)、アシルパーオキシド(ジアシルパーオキシド)、アロイルパーオキシド(ジアロイルパーオキシド)、ケトンパーオキシド、パーオキシカーボネート(パーオキシジカーボネート)、パーオキシカーボレート、パーオキシカルボキシレート、ヒドロパーオキシド、パーオキシケタール、又はパーオキシエステル等が含まれる。アルキルパーオキシドとしては、例えばジイソプロピルパーオキシド、ジターシャリーブチルパーオキシド、又はターシャリーブチルヒドロパーオキシド等が挙げられる。アリールパーオキシドとしては、例えばジクミルパーオキシド、又はクミルヒドロパーオキシド等が挙げられる。アシルパーオキシドとしては、例えばジラウロイルパーオキシド等が挙げられる。アロイルパーオキシドとしては、例えばジベンゾイルパーオキシド等が挙げられる。ケトンパーオキシドとしては、例えばメチルエチルケトンパーオキシド、又はシクロヘキサノンパーオキシド等が挙げられる。アゾニトリルとしては、例えばアゾビスイソブチルニトリル、又はアゾビスイソプロピオニトリル等が挙げられる。
本発明で用い得るアルカリ金属塩含有ポリマーの分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定した重量平均分子量が1万~100万であることが好ましい。分子量が1万以上であれば、形成した塗工層から同ポリマーが染み出し難くなるため、十分な耐水性が得られやすい傾向がある。分子量が100万以下であれば、バインダー成分と混和しやすいため塗工欠陥が生じにくくなり均一な帯電防止効果が得られやすい傾向がある。
本発明において印刷受容層(B)は、樹脂層(A)との密着性向上又はインクとの密着性向上の観点から、必要に応じて高分子のバインダーを含有することができる。
使用できるバインダーの具体例としては、例えばポリエチレンイミン、炭素数1~12のアルキル変性ポリエチレンイミン、ポリ(エチレンイミン-尿素)、ポリ(エチレンイミン-尿素)のエチレンイミン付加物、ポリアミンポリアミド、ポリアミンポリアミドのエチレンイミン付加物、及びポリアミンポリアミドのエピクロルヒドリン付加物等のポリエチレンイミン系重合体、アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸エステル共重合体、アクリル酸アミド-アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸アミド-アクリル酸エステル-メタクリル酸エステル共重合体、ポリアクリルアミドの誘導体、及びオキサゾリン基含有アクリル酸エステル系重合体等のアクリル酸エステル系重合体、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール等、加えて、酢酸ビニル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、尿素樹脂、テルペン樹脂、石油樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニリデン樹脂、塩化ビニル-塩化ビニリデン共重合体樹脂、塩素化エチレン樹脂、塩素化プロピレン樹脂、ブチラール樹脂、シリコーン樹脂、ニトロセルロース樹脂、スチレン-アクリル共重合体樹脂、スチレン-ブタジエン共重合体樹脂、又はアクリルニトリル-ブタジエン共重合体等が挙げられる。
これらのバインダーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。高分子バインダーは有機溶剤又は水に希釈するか、分散した様態で用いることができる。これらの中でも、ポリエーテルウレタン、ポリエステルポリウレタン、アクリルウレタン等のウレタン樹脂、又はアクリル酸エステル共重合体が、上記イオン性ポリマー系の帯電防止機能を有するポリマーとの相性(相溶性)がよく、混溶して塗工液中で安定し、塗工しやすいため好ましい。
本発明において、印刷受容層(B)は必要に応じて顔料粒子を含有することができる。
顔料粒子は、その吸油性によるインクの定着性向上、体質顔料として表面の風合い及び光沢感の向上、白色顔料として白色度向上、表面凹凸付与によるブロッキング防止性能向上、紫外線反射材として耐光性又は耐候性向上等の性能の付与が可能であり、所望の性能に応じて適宜選択して使用できる。
顔料粒子としては、有機又は無機の微細粉末を使用でき、具体的な例としては、酸化ケイ素、炭酸カルシウム、焼成クレイ、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、珪藻土、アクリル粒子、スチレン粒子、ポリエチレン粒子、又はポリプロピレン粒子等が挙げられる。これらは表面処理されていてもよい。
顔料粒子の粒子径は、好ましくは20μm以下であり、より好ましくは15μm以下である。顔料粒子の粒子径が20μm以下であると形成した印刷受容層(B)から顔料粒子が脱落する粉吹き現象を抑制しやすい。
顔料粒子を含有する場合の印刷受容層(B)中の顔料粒子の含有量は、好ましくは70質量%以下であり、より好ましくは60質量%以下であり、さらに好ましくは45質量%以下である。顔料粒子の含有量が70質量%以下であると相対して高分子バインダーが増え、印刷受容層(B)の十分な凝集力が発生して、インクの剥離を抑えやすい傾向にある。
コート層(B)は、必要に応じて硬化剤、滑剤等の各種添加剤を含有してもよい。
印刷受容層(B)中の帯電防止剤の含有量(固形分量)は、帯電防止性の観点から、3質量%以上が好ましく、8質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましく、30質量%以上が特に好ましい。また上記帯電防止剤の含有量は、100質量%であってもよいが、バインダー等の配合の観点から、70質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。
印刷受容層(B)中のバインダーの含有量(固形分量)は、樹脂層(A)又はインクとの密着性の観点から、30質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましい。上記バインダーの含有量は、99質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましい。
印刷受容層(B)中の顔料粒子の含有量は、インクの定着性、風合い、光沢感等の機能付与の観点から、30質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましい。上記顔料粒子の含有量は、粉吹きの抑制の観点から、70質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。
((剥離層(ii)))
剥離層(ii)は、樹脂層(A)と静電吸着することにより、樹脂層(A)上に積層されている。
剥離層(ii)としては、シート本体(i)と静電吸着し、帯電防止性能を有するのであれば特に限定されず、例えば紙、合成紙、樹脂フィルム、織布、又は不織布等の公知の素材を使用できる。なかでも、剥離層(ii)は、電荷の移動を少なくする観点から、絶縁性に優れる樹脂フィルムであることが好ましい。
剥離層(ii)は、単層構造でもよく、2層以上からなる多層構造でもよい。多層構造の場合、剥離層(ii)の一方の表面がシート本体(i)と静電吸着でき、もう一方の表面が帯電防止できるように、各層に異なる機能を付与することができ、好ましい。
剥離層(ii)を多層構造とする場合、組成の異なる紙、組成の異なる樹脂フィルム同士や、紙、合成紙、樹脂フィルム等異なる2種類以上の素材を貼りあわせたものであってもよい。シート本体(i)と接する面は、シート本体(i)からの電荷の移動を少なくする観点から、絶縁性に優れた樹脂から構成されることが好ましい。絶縁性に優れる樹脂の例としては、前述のシート本体(i)で例示したポリオレフィン系樹脂、官能基含有ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、又は熱可塑性ポリエステル系樹脂等が挙げられる。
なお、シート本体(i)よりも一部突出するタブ部が剥離層(ii)に設けられてもよい。シート本体(i)から剥離層(ii)を剥がす際、タブ部によって剥離層(ii)を掴みやすい。タブ部は、例えばシート本体(i)を部分的に切り取ること等により形成することができる。
((接着剤層))
本発明の静電吸着シートは、シート本体(i)と剥離層(ii)との間にさらに接着剤層を備えてもよい。シート本体(i)の静電吸着力に加えて、接着剤層の接着力により、シート本体(i)と剥離層(ii)とをより強く接着することができる、
接着剤層を備える静電吸着シートにおいて、シート本体(i)と剥離層(ii)とは、接着剤層を介して貼合される。貼合は、通常の手法により行うことができる。例えば、剥離層(ii)上に水系接着剤、溶剤系接着剤又はホットメルト型接着剤等の接着剤からなる層を、塗工、散布、又は溶融押出ラミネート等の手法により形成するか、シート本体(i)に帯電処理を施した後にドライラミネートするか、又はシート本体(i)に帯電処理を施した後に熱融着性フィルム又は溶融押出フィルムを介して溶融ラミネートする等の手法が挙げられる。
剥離層(ii)をシート本体(i)から剥離する際、接着剤は剥離層(ii)に追随し、シート本体(i)側には残らないようにすることが好ましい。よって接着剤層と剥離層(ii)との接着性は、シート本体(i)と剥離層(ii)の接着性より小さいことが好ましい。上記のように接着性に差異をつける方法としては、接着剤層の剥離層(ii)側表面にはコロナ放電処理等の表面処理を行い、シート本体(i)側表面には同様の表面処理を行わない方法、接着層のシート本体(i)側表面にはシリコーン樹脂又はフッ素樹脂を塗工するが、剥離層(ii)側表面には同様の塗工を行わない方法、又は接着剤層の両面の濡れ性に差異を付ける方法、一方に架橋剤を含有させて接着剤の凝集力を高め、接着剤層の接着力を弱める方法等が挙げられる。また滑剤、無機粒子又は有機粒子のような添加剤によって剥離性を制御してもよい。
(静電吸着シートの製造方法)
本発明の静電吸着シートの製造方法は特に限定されない。例えば、樹脂層(A)上に印刷受容層(B)を積層してシート本体(i)を形成し、これを帯電処理した後、樹脂層(A)に剥離層(ii)を静電吸着させて積層することにより、静電吸着シートを製造することができる。各層は必要に応じて延伸されてもよい。
<フィルム成形>
樹脂層(A)又は剥離層(ii)は、通常、上述の熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物をフィルム状に成形し、必要に応じて延伸することにより得られ得る。フィルムの成形方法は特に限定されず、公知の種々の成形方法を単独でも又は組み合わせて製造することができる。
単層構造のフィルムは、例えばスクリュー型押出機に接続されたTダイ、Iダイ等により溶融樹脂をシート状に押し出すキャスト成形、カレンダー成形、圧延成形、インフレーション成形等を用いて、フィルム状に成形することができる。熱可塑性樹脂と有機溶媒又はオイルとの混合物を、キャスト成形又はカレンダー成形した後、溶媒又はオイルを除去することにより、熱可塑性樹脂フィルムを成形してもよい。
多層構造のフィルムの成形方法としては、例えばフィードブロック、マルチマニホールドを使用した多層ダイス方式、複数のダイスを使用する押出しラミネーション方式等が挙げられ、各方法を組み合わせることもできる。
<延伸>
フィルムの延伸方法としては、通常用いられる種々の方法のいずれかによって行うことができる。具体的には、ロール群の周速差を利用した縦延伸、テンターオーブンを使用した横延伸、縦延伸と横延伸を組み合わせた逐次2軸延伸、圧延、テンターオーブンとリニアモーターの組み合わせによる同時2軸延伸、テンターオーブンとパンタグラフの組み合わせによる同時2軸延伸等を挙げることができる。又、インフレーションフィルムの延伸方法としては、チューブラー法による同時2軸延伸を挙げることができる。
延伸温度は、フィルムに最も多く用いる熱可塑性樹脂のガラス転移点温度以上から結晶部の融点以下の熱可塑性樹脂に好適な公知の温度範囲内で行うことができる。具体的には、熱可塑性樹脂がプロピレン単独重合体(融点155~167℃)の場合は100~166℃、高密度ポリエチレン(融点121~136℃)の場合は70~135℃であり融点より1~70℃低い温度である。また、延伸速度は20~350m/分にするのが好ましい。
延伸倍率は特に限定されず、フィルムに用いる熱可塑性樹脂の特性等を考慮して適宜決定する。例えば、熱可塑性樹脂としてプロピレン単独重合体又はその共重合体を使用しこれを一方向に延伸する場合の延伸倍率は、通常1.2倍以上、好ましくは2倍以上であり、通常は12倍以下であり、好ましくは10倍以下である。2軸延伸の場合の延伸倍率は、面積倍率で通常1.5倍以上であり、好ましくは4倍以上であり、通常は60倍以下であり、好ましくは50倍以下である。その他の熱可塑性樹脂を使用し、これを一方向に延伸する場合の延伸倍率は、通常1.2倍以上であり、好ましくは2倍以上であり、通常は10倍以下であり、好ましくは5倍以下である。2軸延伸の場合の延伸倍率は、面積倍率で通常は1.5倍以上であり、好ましくは4倍以上であり、通常は20倍以下であり、好ましくは12倍以下である。
複数層を延伸する場合、積層前に各層を個別に延伸しておいてもよいし、積層後に各層をまとめて延伸してもよい。また延伸した層を他の層に積層後、さらに延伸してもよい。
<印刷受容層(B)の形成>
印刷受容層(B)は、上記帯電防止剤等を含む塗工液を調製して樹脂層(A)上に塗工し、これを乾燥、固化させることにより形成することができる。塗工には、従来公知の手法や装置を利用することができる。
印刷受容層(B)は、ラミネートにより樹脂層(A)に設けることも可能である。この場合は、別のフィルム上に印刷受容層(B)を形成した後、当該フィルムから樹脂層(A)上に印刷受容層をラミネート加工すればよい。ラミネート加工は、通常のドライラミネート、又は溶融ラミネート等の手法により行うことができる。
<帯電処理>
シート本体(i)の帯電処理の手法としては、特に制限されず、公知の種々の方法が挙げられる。例えば、シート本体(i)の表面にコロナ放電あるいはパルス状高電圧を加える方法、シート本体(i)の両面を誘電体で保持し、両面に直流高電圧を加える方法(エレクトロエレクトレット化法)、又はシート本体(i)にγ線や電子線等の電離放射線を照射してエレクトレット化する方法(ラジオエレクトレット化法)等が挙げられる。
エレクトロエレクトレット化法のより具体的な例としては、直流高圧電源に接続された印加電極とアース電極の間にシート本体(i)を固定する方法(バッチ式、図2及び図3参照)か、又は通過させる方法(連続式、図4及び図5参照)が挙げられる。本手法を用いる場合、等間隔に配置された針状の複数の主電極か金属ワイヤーの主電極を使用し、対電極には平らな金属板か金属ローラーを使用することが好ましい。
本発明において、帯電処理は直流式コロナ放電処理であることが好ましい。直流式コロナ放電処理には、図2~図5に例示するようなコロナ放電処理装置50A、50B、60A及び60Bを使用することができる。コロナ放電処理装置50Aでは、針状の主電極(印加電極)52と平板状の対電極(アース電極)53が直流高圧電源51に接続されている。コロナ放電処理装置50Bでは、針状の主電極53とローラー状の対電極55とが、直流高圧電源51に接続されている。コロナ放電処理装置60Aでは、ワイヤー状の主電極(印加電極)62と平板状の対電極(アース電極)63とが直流高圧電源61に接続されている。コロナ放電処理装置60Bでは、ワイヤー状の主電極64と、ローラー状の対電極(アース電極)65とが、直流高圧電源61に接続されている。各電極間にシート本体(i)又は剥離層(ii)を設置し、直流高電圧を印加することで発生するコロナ放電により、シート本体(i)又は剥離層(ii)に電荷を注入することができる。
主電極と対電極との間隔は、1mm以上が好ましく、2mm以上がより好ましく、5mm以上がさらに好ましく、50mm以下が好ましく、30mm以下がより好ましく、20mm以下がさらに好ましい。電極間が1mm以上であれば、電極間距離を均一に保持しやすく、シートの幅方向の帯電処理が均一になりやすい。電極間が50mm以下であれば、コロナ放電が発生しやすく、帯電処理が均一になりやすい。
両電極間に印加する電圧は、シート本体(i)及び剥離層(ii)の電気特性、主電極と対電極の形状や材質、又は主電極と対電極の間隔等により決定され得る。帯電処理によって注入される電荷の量は、主電極と対電極間に流れた電流量に依存する。電流量は両電極間の電圧が高いほど多くなることから、印加電圧はシート本体(i)が絶縁破壊しない程度に高く設定することが好ましい。
具体的には、印加電圧は、1kV以上が好ましく、3kV以上がより好ましく、5kV以上がさらに好ましく、10kV以上が特に好ましい。また印加電圧は、100kV以下が好ましく、70kV以下がより好ましく、50kV以下がさらに好ましく、30kV以下が特に好ましい。主電極の極性はプラスでもマイナスでもよいが、主電極側をマイナス極性にした方が比較的安定したコロナ放電状態となるため好ましい。
主電極と対電極の材質は、導電性の物質から適宜選択されるが、鉄、ステンレス、銅、真鍮、タングステン等の金属又はカーボンが好ましい。
シート本体(i)は、通常印刷受容層(B)と反対側の表面、つまり樹脂層(A)側の表面が、上記コロナ放電又は高電圧を加える手法によって帯電処理される。よって、印刷受容層(B)がアース側(金属板又は金属ロールのような対電極側)に面するよう、シート本体(i)が配置されることが好ましい。これにより、帯電処理により注入された後、帯電防止性能を有する印刷受容層(B)を介して逃げる電荷を減らすことができる。
帯電処理後、静電吸着シート及びシート本体(i)に除電処理が施されてもよい。除電処理により表面の電荷を除去することができ、表面の電荷により生じる貼り付き等を減らして印刷工程、ラベル等への加工工程でのトラブルを回避しやすい。除電処理には、電圧印加式除電器(イオナイザ)又は自己放電式除電器等の公知の手法を用いることができる。除電処理によって表面の電荷は除去されるが、樹脂層(A)内部に蓄積した電荷までは除去されにくいため、除電処理によりシート本体(i)の静電吸着力が大きく影響を受けることはない。
本発明の積層体は、特許文献8に開示された、記録層を有する樹脂フィルムに、接着剤を介して、帯電防止処理を施した支持体が積層された後、電荷が与えられた積層フィルムと比べて、下記効果(1)~(3)を有する点でより優れている。
(1)シート本体(i)のみに帯電処理を行うために、シート本体(i)への帯電をより効果的に行え、静電吸着力が高く、静電吸着力の持続性も充分で長期に亘り表示使用することが可能なシート本体(i)を得ることができたこと
(2)シート本体(i)と剥離層(ii)との積層は、シート本体(i)の帯電処理後に行うため、該積層はシート本体(i)の静電吸着力のみで達成可能であり、必ずしも接着層が必要ではなくなったこと
(3)好ましくはシート本体(i)が帯電防止性能を有する印刷受容層(B)を有することによって、静電吸着シートの様態では外部に静電吸着力を発現しないことから、特に印刷工程でのトラブルが発生し難く、ハンドリング性が良好な静電吸着シートが得られたこと
<シート本体(i)と剥離層(ii)の積層>
帯電処理後、シート本体(i)の樹脂層(A)側の表面に剥離層(ii)が積層される。樹脂層(A)の静電吸着力により、シート本体(i)に剥離層(ii)が貼り付く。
帯電処理及び積層は、例えばロール・トゥ・ロール方式により連続して行うことができる。ロール・トゥ・ロール方式では、図6に示すように、シート本体(i)のロール41を巻き出し、主電極64及び対電極65間を通過させて帯電処理を行う。そこへ剥離層(ii)のロール42を巻き出して積層し、両者を圧着ローラー66により加圧接着した後、巻き取ることにより静電吸着シートのロール43が得られる。
シート本体(i)と剥離層(ii)間に接着剤層を設ける場合、例えば、圧着ローラー66の箇所において剥離層(ii)上に接着剤を塗工することが容易である。
<印刷>
本発明の静電吸着シートは、シート本体(i)の印刷受容層(B)表面に印刷を施すことが可能である。印刷方式は特に限定されず、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、レタープレス印刷、スクリーン印刷、インクジェット記録方式、感熱記録方式、熱転写記録方式、又は電子写真記録方式等の従来公知の手法を用いることが可能である。デザイン又はサイズの変更が容易である観点からは、オフセット印刷、又はインクジェット記録方式が好ましい。インクとしては、油性インク、水性インク又はUVインクのような種々のインクが使用可能であるが、乾燥速度が速いUVインクが好ましい。
(静電吸着シートの物性)
<厚み>
シート本体(i)の厚みは、20μm以上が好ましく、25μm以上がより好ましく、30μm以上がさらに好ましく、40μm以上が特に好ましく、500μm以下が好ましく、400μm以下がより好ましく、200μm以下がさらに好ましく、150μm以下が特に好ましい。
シート本体(i)の厚みが20μm以上であれば、シート本体(i)を被着体に貼り付ける際にシワが生じにくく、貼り付けやすいため、外観に優れる傾向がある。上記厚みが500μm以下であれば、シート本体(i)を軽量化でき、自重による被着体からの剥がれが少ない傾向がある。
樹脂層(A)の厚みは、20μm以上が好ましく、30μm以上がより好ましく、40μm以上がさらに好ましい。樹脂層(A)の厚みは、500μm以下であることが好ましく、400μm以下がより好ましく、300μm以下がさらに好ましい。
上記厚みが20μm以上であれば、樹脂層(A)単体を取り扱う際に、帯電により手等への貼り付きが減り、作業性が向上する傾向がある。また被着体に貼り付けた際にシワになりにくく優れた外観が得られやすい。上記厚みが500μm以下であれば、シート本体(i)を軽量化でき、自重による被着体からの剥がれを抑えやすい。
印刷受容層(B)の厚みは、0.01μm以上が好ましく、0.05μm以上がより好ましく、0.1μm以上がさらに好ましく、0.3μm以上が特に好ましい。印刷受容層(B)の厚みは、50μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましく、10μm以下がさらに好ましく、8μm以下が特に好ましい。上記厚みが、0.01μm以上であると印刷受容層(B)の均一性を維持しやすく、インクとの密着性が高まりやすい。上記厚みが50μm以下であると、シート本体(i)を軽量化でき、自重による剥がれを抑えやすい。
剥離層(ii)の厚みは、20μm以上が好ましく、25μm以上がより好ましく、30μm以上がさらに好ましく、35μm以上が特に好ましい。剥離層(ii)の厚みは、500μm以下が好ましく、400μm以下がより好ましく、200μm以下がさらに好ましく、150μm以下が特に好ましい。
剥離層(ii)の厚みが20μm以上であると、シート本体(i)の電荷の流出を抑えやすく、シート本体(i)の静電吸着力を維持しやすい。上記厚みが500μm以下であると、静電吸着シートの厚みが、印刷工程や断裁工程で作業しやすい厚みとなりやすい。
上記厚みは、JIS-K-7130に準拠し、定圧厚み測定器((株)テクロック製、商品名:PG-01J)を用いて測定される。
多層構造の場合の各層の厚みは次のようにして測定される。測定対象試料を液体窒素にて-60℃以下の温度に冷却し、ガラス板上に置いた試料に対してカミソリ刃(シック・ジャパン(株)製、商品名:プロラインブレード)を直角に当て切断し断面観察用の試料を作製する。得られた試料を走査型電子顕微鏡(日本電子(株)製、商品名:JSM-6490)を使用して断面観察を行い、外観の違いから層ごとの境界線を判別して、各層の厚み比率を測定する。樹脂層(A)全体の厚みに各層の厚み比率を乗算して、各層の厚みを求める。
<表面抵抗率>
樹脂層(A)の印刷受容層(B)と反対側の表面抵抗率は、1×1013Ω以上が好ましく、5×1013Ω以上がより好ましく、1×1014Ω以上がさらに好ましい。また上記表面抵抗率は、9×1017Ω以下が好ましく、9×1016Ω以下がより好ましく、9×1015Ω以下がさらに好ましい。表面抵抗率が1×1013Ω以上であれば、電荷が表面を伝って逃げにくくなり、シート本体(i)への電荷注入の効率が良くなり帯電処理に必要なエネルギーを減らせる傾向がある。また帯電処理の効果が十分に得られやすく、静電吸着力が向上しやすい。一方、9×1017Ω以下であれば、現在公知の物資を使用してこのような高絶縁性の表面を形成しやすい。
樹脂層(A)の印刷受容層(B)と反対面の表面抵抗率を所望の範囲に制御する方法としては、例えば熱可塑性樹脂として絶縁性に優れるポリオレフィン系樹脂を使用することや、これに配合する無機粒子の種類又は量を調整する方法が挙げられる。
印刷受容層(B)の表面抵抗率、つまり静電吸着シートのシート本体(i)側の表面抵抗率は、1×10-1Ω以上であり、好ましくは1×103Ω以上、より好ましくは1×106Ω以上である。また印刷受容層(B)の表面抵抗率は、9×1012Ω以下であり、好ましくは9×1011Ω以下、より好ましくは9×1010Ω以下である。
印刷受容層(B)の表面抵抗率が9×1012Ω以下であると、シート本体(i)が有する静電吸着力を十分に抑制でき、印刷工程における静電吸着シートのロールへの貼り付き又はシート同士のブロッキング等を抑えやすい。一方、印刷受容層(B)の表面抵抗率が1×10-1Ω以上であると、シート本体(i)の本来の静電吸着力が損なわれにくい。またこのような高導電性を有する印刷受容層(B)の形成も容易である。
剥離層(ii)のシート本体(i)と接する面の表面抵抗率は、1×1013Ω以上が好ましく、5×1013Ω以上がより好ましく、1×1014Ω以上がさらに好ましい。上記表面抵抗率は、9×1017Ω以下が好ましく、9×1016Ω以下がより好ましく、9×1015Ω以下がさらに好ましい。上記表面抵抗率が1×1013Ω以上であると、シート本体(i)の電荷がその表面を伝って大気中等の外部に逃げにくい。そのため、シート本体(i)が長期間電荷を保持しやすく、静電吸着力が低下しにくい。上記表面抵抗率が9×1017Ω以下であると、現在公知の物質を使用して上記のような高絶縁性の表面を形成しやすい。
一方、静電吸着シートの最外層に帯電防止性能を持たせるといった目的から、剥離層(ii)のシート本体(i)と反対側の面には帯電防止性能を付与することが望ましい。
剥離層(ii)への帯電防止性能の付与は、上記印刷受容層(B)と同様のコート層を設ける方法や、導電性塗料を塗工して導電層を設ける方法や、直接蒸着、転写蒸着、又は蒸着フィルムのラミネート等により金属薄膜を設ける方法、剥離層(ii)を構成する樹脂へ帯電防止剤を練り込む方法等が挙げられる。
剥離層(ii)のシート本体(i)と反対側の面、つまり静電吸着シートの剥離層(ii)側の表面抵抗率は、1×10-1Ω以上であり、1×100Ω以上が好ましく、9×1012Ω以下であり、9×1011Ω以下が好ましい。
上記表面抵抗率が9×1012Ω以下であると、十分な帯電防止性能が得られやすく、静電吸着シートの貼り付きや、静電吸着シート同士のブロッキング等のトラブルを抑えやすい。一方、表面抵抗率が1×10-1Ω以上であると、現在公知の物質を使用して上記のような高導電性の表面を形成しやすい。
上記表面抵抗率は、温度23℃、相対湿度50%の条件下で、表面抵抗率が1×107Ω以上の場合は、JIS-K-6911に準拠し2重リング法の電極を用いて測定する。表面抵抗率が1×107Ω未満の場合は、JIS-K-7194に準拠し、4深針法で測定することによって求めた抵抗(R)に、補正係数Fを乗じてこれを表面抵抗率とする。
<不透明度>
本発明においてシート本体(i)の不透明度は、50%以上であり、好ましくは60%以上であり、より好ましくは70%以上であり、100%以下である。不透明度が50%以上であると、被着体の色、絵柄又は模様が透けにくく、装飾性に優れた静電吸着シートが得られやすい。
上記不透明度は、JIS-P-8149に準拠し、サンプルの背面に黒色及び白色の標準板を当てて光を照射したときの、光の反射率の比(黒色板/白色板)を百分率で示す。
<水蒸気透過係数>
本発明においてシート本体(i)の水蒸気透過係数は、2.50g・mm/(m2・24時間)以下が好ましく、より好ましくは2.00g・mm/(m2・24時間)以下、さらに好ましくは1.00g・mm/(m2・24時間)以下、特に好ましくは0.85g・mm/(m2・24時間)以下、より特に好ましくは0.80g・mm/(m2・24時間)以下である。水蒸気透過係数が2.50g・mm/(m2・24時間)以下であると、高湿度下での帯電性の低下による、シート本体(i)の吸着性能の低下が少ない傾向がある。一方、水蒸気透過係数が0.01g・mm/(m2・24時間)以上であると、電荷の維持性能に優れるとともに内部の電荷が移動しやすく、吸着性能が上昇する傾向があり、好ましい。
上記水蒸気透過係数(g・mm/(m2・24時間))は、JIS-Z-0208に準拠して、カップ法により、40℃、90%RHの条件下にて測定された透湿度(g/(m2・24時間))とフィルムの厚み(mm)から求める。
<ガーレ柔軟度>
本発明において、シート本体(i)のガーレ柔軟度は、5mgf以上が好ましく、1000mgf以下が好ましく、より好ましくは700mgf以下、さらに好ましくは400mgf以下である。シート本体(i)のガーレ柔軟度が5mgf以上であると、十分なコシが得られやすく、静電吸着シートの取り扱いが容易となる傾向がある。またシワになりにくく、外観が損なわれにくい。上記ガーレ柔軟度が1000mgf以下であると適度なコシが得られやすく、小さなカールが発生した場合又は静電吸着力が弱い場合でも被着体に均一に貼り付きやすく、吸着力の持続性が向上しやすい。
剥離層(ii)のガーレ柔軟度は、5mgf以上が好ましく、好ましくは10000mgf以下であり、より好ましくは7000mgf以下であり、さらに好ましくは3000mgf以下である。剥離層(ii)のガーレ柔軟度が5mgf以上であると、剥離層(ii)を掴みやすく、シート本体(i)を剥がしやすい。上記ガーレ柔軟度が10000mgf以下であると、剥離層(ii)を変形させやすく、静電吸着シートの搬送性が向上し、取り扱いやすい。
上記ガーレ柔軟度は、JAPANTAPPINo.40:2000に準拠し、温度23℃、相対湿度50%RHの環境下で、縦(MD)方向と横(TD)方向それぞれを測定する。
<比誘電率>
剥離層(ii)の比誘電率は、5.0以下が好ましく、4.0以下がより好ましく、3.0がさらに好ましい。上記比誘電率が、5.0以下であるとシート本体(i)が長期間電荷を保持しやすく、静電吸着力が低下しにくい。上記比誘電率は、剥離層(ii)に使用する材料の物性から、通常1.1以上であり、1.2以上がより好ましく、1.5以上がさらに好ましい。上記剥離層(ii)の比誘電率は、上記材料の使用、又は内部に空孔を形成すること等により調整することができる。
上記比誘電率は、測定周波数に応じてその測定法が選定される。測定周波数が10Hz以下場合には、超低周波ブリッジを用い、10Hz~3MHzの場合には変成器ブリッジを用い、1MHzを越える場合には、並列T型ブリッジ、高周波シェリングブリッジ、Qメーター、共振法、定在波法、又は空洞共振法を用いる。また上記比誘電率は、測定周波数の交流信号に対して、回路部品に対する電圧・電流ベクトルを測定し、この値から静電容量を算出するLCRメーター等によっても測定できる。
比誘電率の測定装置としては、平行に配設した平板状印可電極と平板状ガード電極との間に試料を一定圧力で挟み込み、5V程度の電圧が印加でき、測定周波数が任意に選定できる測定装置が好ましい。このような測定機によれば、周波数を変更することにより、試料の周波数依存性が把握でき、適性使用範囲の指標にできる。試料は、できるだけ厚みが均一で表面が平滑なものが好ましい。表面の平滑性が高いと、試料と電極との間の空隙(空気層)が少なく、測定値の誤差が少ない。この場合、試料と電極との電気的接触を完全にするために、銀導電性塗料を塗工するか、真空蒸着することが好ましい。測定装置の具体例としては、AgilentTechnologies社の「4192ALFIMPEDANCEANALYZER」、横河電機(株)社の「LCRメーター4274A」、日置電機(株)社の「HIOKI3522LCRハイテスター」等が挙げられる。
具体的には、温度23℃、相対湿度50%の環境条件下で、直径38mmの主電極と直径56mmの対電極との間に、電極直径より大きい試料を表面抵抗率が高い面が主電極側になるように挟み込み、5Vの電圧を印加する。10Hz~1MHzの範囲の周波数で比誘電率を測定し、周波数100Hzの測定値を代表値とする。
(印刷物)
本発明の静電吸着シートの印刷受容層(B)表面に印刷を施した印刷物としては、POPカード(ポスター、ステッカー、ディスプレイ等)、店舗案内(パンフレット、会社案内、品書き、メニュー等)、下敷き(ランチマット、テーブルマット、文房具用品等)、マニュアル(職務、作業、操作等の各種マニュアル、工程表、時間割等)、チャート類(海図、天気図、図表、罫線表等)、カタログ、地図(海図、路線図、屋外用地図等)、店頭価格表、登山ガイド、名刺、迷子札、料理のレシピ、案内板(売り場案内、方向・行き先案内等)、スケジュール表、ロード・サイン(葬式・住宅展示場所等)、室名札、校内記録表、表示板(立ち入り禁止、林道作業等の)、区画杭、表札、カレンダー(画像入り)、簡易ホワイトボード、マウスパッド、包装資材(包装紙、箱、袋等)、又はコースター等を例示することができる。特に屋内使用を前提とした用途に好適に用いることができる。
(被着体)
上述の印刷物から剥離層(ii)を剥がし、露出したシート本体(i)を吸着させる被着体としては、掲示版、看板、サインボード、ホワイトボード、壁、天井、柱、ドア、パーティション、床、ロッカー、机、棚、窓(ガラス製、樹脂製)、冷蔵庫(金属面、ガラス面、プラスチック面)、各種機器(工作機、印刷機、成形機等)、又は移動体(自動車、バス、電車、船舶、航空機)内の壁面等を例示することができる。特に表面の平滑性が高い被着体は、印刷物との密着面積が大きくなり、得られる静電吸着力も高まることから好ましく適用することができる。
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の「部」、「%」等の記載は、断りのない限り、質量基準の記載を意味する。
(樹脂層(A)形成用の樹脂組成物)
表1は、樹脂層(A)の形成に使用する樹脂組成物の各材料の配合量の一覧である。
Figure 2023125987000009
<樹脂組成物(AC1)>
プロピレン単独重合体(日本ポリプロ社製、商品名:ノバテックPP FY4)25質量%と、高密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、商品名:ノバテックHD HJ360)10質量%と、無機粒子として炭酸カルシウム(備北粉化工業社製、商品名:ライトンS4、粒度分布の標準偏差(SD):7.1)65質量%と、を210℃に設定した2軸混練機にて溶融混練した。次いで230℃に設定した押出機にてストランド状に押し出し、冷却後にストランドカッターにて切断して樹脂組成物(AC1)のペレットを作製した。
<樹脂組成物(AC2)、(AC3)及び(AC6)>
各材料の配合量を表1に示すように変更した以外は、樹脂組成物(AC1)と同様にして樹脂組成物(AC2)、(AC3)及び(AC6)のペレットを作製した。
<樹脂組成物(AC4)>
プロピレン単独重合体(日本ポリプロ社製、商品名:ノバテックPP FY4)5質量%と、高密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、商品名:ノバテックHD HJ360)10質量%と、ランダムポリプロピレン(JPP社製、商品名:FW4AB)20質量%と、無機粒子として炭酸カルシウム(備北粉化工業社製、商品名:ライトンS4、SD=7.1)65質量%と、を210℃に設定した2軸混練機にて溶融混練した。次いで230℃に設定した押出機にてストランド状に押し出し、冷却後にストランドカッターにて切断して樹脂組成物(AC4)のペレットを作製した。
<樹脂組成物(AC5)>
ランダムポリプロピレン(JPP社製、商品名:FW4AB)20質量%を、プロピレン系エラストマー(三菱化学社製、商品名:ゼラスMC717R4)20質量%に変更した以外は、樹脂組成物(AC4)と同様にして樹脂組成物(AC5)のペレットを作製した。
<樹脂組成物(AC7)>
無機粒子を、炭酸カルシウム(備北粉化工業社製、商品名:ライトンS4、SD=7.1)65質量%から、炭酸カルシウム(備北粉化工業社製、商品名:ライトンBS-0、SD=1.5)65質量%に変更した以外は、樹脂組成物(AC1)と同様にして樹脂組成物(AC7)のペレットを作製した。
<樹脂組成物(AC8)>
無機粒子を、炭酸カルシウム(備北粉化工業社製、商品名:ライトンS4、SD=7.1)65質量%から、炭酸カルシウム(丸尾カルシウム社製、商品名:YM23、SD=0.4)65質量%に変更した以外は、樹脂組成物(AC1)と同様にして樹脂組成物(AC8)のペレットを作製した。
<樹脂組成物(AS1)>
プロピレン単独重合体(日本ポリプロ社製、商品名:ノバテックPP MA3)85質量%と、高密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、商品名:ノバテックHD HJ360)10質量%と、無機粒子として炭酸カルシウム(備北粉化工業社製、商品名:ソフトン1800、SD=2.6)5質量%と、を210℃に設定した2軸混練機にて溶融混練した。次いで230℃に設定した押出機にてストランド状に押し出し、冷却後にストランドカッターにて切断して樹脂組成物(AS1)のペレットを作製した。
<樹脂組成物(AS2)及び(AS3)>
各材料の配合量を表1に示すように変更した以外は、樹脂組成物(AS1)と同様にして樹脂組成物(AS2)及び(AS3)のペレットを作製した。
(印刷受容層(B)形成用の塗工液)
表2は、印刷受容層(B)形成用の塗工液の各材料と配合量の一覧である。
Figure 2023125987000010
<帯電防止機能を有するポリマーの調製例1>
ポリエチレングリコールモノメタクリレート(日本油脂(株)製、商品名:ブレンマーPE-350)100質量部、過塩素酸リチウム(和光純薬工業(株)製、試薬)20質量部、ヒドロキノン(和光純薬工業(株)製、試薬)1質量部及びプロピレングリコールモノエチルエーテル(和光純薬工業(株)製、試薬)400質量部を、撹拌装置、還流冷却管(コンデンサー)、温度計、及び滴下ロートを装着した四つ口フラスコに導入し、系内を窒素置換し、60℃で40時間反応させた。これにステアリルメタクリレート(和光純薬工業(株)製、試薬)5質量部、n-ブチルメタクリレート(和光純薬工業(株)製、試薬)5質量部、アゾビスイソブチロニトリル(和光純薬工業(株)製、試薬)1質量部を添加し、80℃で3時間重合反応した後、プロピレングリコールモノエチルエーテルを添加して固形分を20質量%に調整し、重量平均分子量約30万、固形分中のリチウム濃度0.6質量%のアルカリ金属塩含有ポリマーよりなる帯電防止機能を有するポリマーの溶液を得た。
<帯電防止機能を有するポリマーの調製例2>
N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート(三菱ガス化学(株)製)35質量部、エチルメタクリレート(和光純薬工業(株)製、試薬)20質量部、シクロヘキシルメタクリレート(和光純薬工業(株)製、試薬)20質量部、ステアリルメタクリレート(和光純薬工業(株)製、試薬)25質量部、エチルアルコール150質量部と、アゾビスイソブチロニトリル(和光純薬工業(株)製、試薬)1質量部を、撹拌装置、還流冷却管(コンデンサー)、温度計、及び滴下ロートを備えた四つ口フラスコに導入し、系内を窒素置換し、窒素気流下にて80℃の温度で6時間重合反応を行なった。次いで3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドの50質量%水溶液85質量部(和光純薬工業(株)製、試薬)を加え、更に80℃の温度で15時間反応させた後、水を滴下しながらエチルアルコールを留去し、最終固形分として20質量%の第4級アンモニウム塩型共重合体よりなる帯電防止機能を有するポリマーの溶液を得た。
<高分子バインダーの調製例1>
2-ヒドロキシエチルメタクリレート(和光純薬工業(株)製、試薬)15質量部、メチルメタクリレート(和光純薬工業(株)製、試薬)50質量部、エチルアクリレート(和光純薬工業(株)製、試薬)35質量部及びトルエン(和光純薬工業(株)製、試薬)100質量部を、撹拌機、環流冷却管、温度計、及び滴下ロートを装着した四つ口フラスコに仕込んだ。窒素置換後、2,2′-アゾビス(イソブチロニトリル)(和光純薬工業(株)製、試薬)0.6質量部を重合開始剤として導入し、80℃で4時間重合させた。得られた溶液は、水酸基価65の水酸基含有メタクリル酸エステル系重合体の50%トルエン溶液であった。次いで、この溶液100質量部に、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体(新第1塩ビ(株)製、商品名:ZEST C150ML)20%メチルエチルケトン溶液を30質量部加え、メチルエチルケトン(和光純薬工業(株)製、試薬)を添加して固形分を20質量%に調整し、高分子バインダー溶液を得た。
<高分子バインダーの調製例2>
N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート(三菱ガス化学(株)製)62.9質量部、ブチルメタクリレート(和光純薬工業(株)製、試薬)71質量部、ラウリルメタクリレート(和光純薬工業(株)製、試薬)25.4質量部及びイソプロピルアルコール(和光純薬工業(株)製、試薬)200質量部を、撹拌機、還流冷却器、温度計、及び滴下ロートを装置した四つ口フラスコ内に仕込んだ。窒素ガス置換後、2,2′-アゾビス(イソブチロニトリル)(和光純薬工業(株)製、試薬)0.9質量部を重合開始剤として添加し、80℃にて4時間重合反応を行った。次いで、酢酸(和光純薬工業(株)製、試薬)24質量部で中和した後、イソプロピルアルコール(和光純薬工業(株)製、試薬)を溜去しながら、水を添加し、最終的に固形分35%の粘調な分散剤(a)の水溶液を得た。
同方向かみ合い型二軸押出機((株)池貝製、商品名:PCM45φ)に、エチレン-メタクリル酸共重合体(三井デュポンケミカル(株)製、商品名:ニュクレルN1035)を100部/時間の割合で連続的に供給した。また、同押出し機の第一の注入口より上記分散剤(a)の水溶液を、22.9部/時間(分散剤の固形分としては8部/時間)の割合で連続的に供給した。さらに第二の注入口から水を70部/時間の割合で連続的に供給しながら、加熱温度(シリンダー温度)130℃で連続的に混練して押出し、乳白色の樹脂水性分散液を得た。この樹脂水性分散液を250メッシュのステンレス製金網でろ過後、水を添加して固形分を45質量%に調整し、高分子バインダー溶液を得た。
<高分子バインダーの調製例3>
撹拌機、環流冷却器、温度計及び窒素ガス導入口を備えた四つ口フラスコに、ポリエチレンイミン(日本触媒(株)製、商品名:エポミン P-1000)25質量%水溶液100質量部、1-クロロブタン(和光純薬工業(株)製、試薬)10質量部及びプロピレングリコールモノメチルエーテル(和光純薬工業(株)製、試薬)10質量部を導入した。窒素気流下で撹拌し、80℃の温度で20時間変性反応を行った。この溶液に水を添加して固形分を20質量%に調整し、高分子バインダー溶液を得た。
<塗工液(b1)>
メチルエチルケトンをカウレスミキサーにて静かに撹拌しながら、これに顔料粒子として沈降性シリカ(水澤化学工業社製、商品名:ミズカシルP-527、平均粒子径:1.6μm、吸油量:180cc/100g)及び表面処理硫酸バリウム(堺化学工業社製、商品名:BARIACE B-32、平均粒子径:0.3μm)を少しずつ加え、固形分濃度20質量%となるように調整した。カウレスミキサーの回転数を上げて30分間撹拌し顔料分散液を調製した。
カウレスミキサーの回転数を落とした後、上記顔料分散液に、調製例1の高分子バインダー溶液、調製例1の帯電防止機能を有するポリマー溶液、及び硬化剤(ヘキサメチレンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業社製、商品名:コロネートHL))の溶液(酢酸エチルにて固形分20質量%に希釈したもの)をこの順に添加した。20分間撹拌して混合した後、100メッシュのフィルターを通して粗粒径物の除去を行った。メチルエチルケトンで塗工液の固形分濃度が20質量%となるように希釈して、印刷受容層(B)用の塗工液(b1)を得た。各成分の添加量は、塗工液(b1)中の各成分の配合割合が表2に示す配合割合となるように調整した。
<塗工液(b5)>
調製例1の帯電防止機能を有するポリマー溶液を配合せず、調製例1の高分子バインダー溶液の配合割合を表2に示すように変更した以外は、塗工液(b1)と同様に塗工液(b5)を調製した。
<塗工液(b2)>
メチルエチルケトンをカウレスミキサーにて静かに撹拌しながら、これに調製例1の高分子バインダー溶液、調製例1の帯電防止機能を有するポリマー溶液、及び硬化剤(ヘキサメチレンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業社製、商品名:コロネートHL))の溶液(酢酸エチルにて固形分20質量%に希釈したもの)をこの順に添加した。20分間撹拌して混合した後、メチルエチルケトンで塗工液の固形分濃度が20質量%となるように希釈し、印刷受容層(B)形成用の塗工液(b2)を得た。各成分の添加量は、塗工液(b2)中の各成分の配合割合が表2に示す配合割合となるように調整した。
<塗工液(b3)>
撹拌機を備えた容器中に、調製例3の高分子バインダー溶液、顔料粒子の溶液としてポリアミド・エピクロロヒドリン樹脂溶液(星光PMC社製、商品名:WS4024)、及び調製例1の帯電防止機能を有するポリマー溶液をこの順に添加した。水で塗工液の固形分濃度が3質量%となるように希釈した後、そのまま20分間撹拌して混合し、印刷受容層(B)用の塗工液(b3)を得た。各成分の添加量は、塗工液(b3)中の各成分の配合割合が表2に示す配合割合となるように調整した。
<塗工液(b4)>
撹拌機を備えた容器中に、調製例2及び3の高分子バインダー溶液、顔料粒子の溶液としてポリアミド・エピクロロヒドリン樹脂溶液(星光PMC社製、商品名:WS4024)、及び調製例1の帯電防止機能を有するポリマー溶液をこの順に添加した。水で塗工液の固形分濃度が20質量%となるように希釈した後、そのまま20分間撹拌して混合し、印刷受容層(B)用の塗工液(b4)を得た。各成分の添加量は、塗工液(b4)中の各成分の配合割合が表2に示す配合割合となるように調整した。
(剥離層(ii)の製造例I)
二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂社製、商品名:ダイヤホイルO300、厚み:100μm)の片面に、導電性塗料(大日精化工業社製、商品名:ネオコンコート565DR2)を乾燥後の固形分量が2g/mとなるように塗工した。塗工膜を乾燥し、最表面に導電層を有する剥離層(ii)を得た。
表3は、剥離層(ii)の物性を示す。
Figure 2023125987000011
(実施例1)
<樹脂層(A)の形成>
樹脂組成物(AC1)と樹脂組成物(AS1)を230℃に設定した3台の押出機にてそれぞれ溶融混練した後、250℃に設定した押出ダイに供給した。ダイ内で各樹脂組成物を積層してシート状に押し出し、樹脂組成物(AC1)からなる層/樹脂組成物(AS1)からなる層/樹脂組成物(AC1)からなる層の順に積層された3層シートを得た。これを冷却装置により60℃まで冷却して無延伸シートを得た。
この無延伸シートを135℃に加熱し、ロール群の周速差を利用して縦方向(MD)に2倍延伸した。次いで、この2倍延伸シートを60℃まで冷却し、テンターオーブンを用いて再び約155℃に加熱して横方向(TD)に2倍延伸した後、更に160℃まで加熱して熱処理を行った。
次いで60℃まで冷却し、耳部をスリットした後、この2軸延伸フィルムの両面にコロナ放電による表面処理を施した。これにより、樹脂組成物(AS1)からなる表面層(D)/樹脂組成物(AC1)からなるコア層(C)/樹脂組成物(AS1)からなる表面層(D)の順に積層された3層構造(各層の樹脂組成物:AS1/AC1/AS1、総厚み:70μm、各層の厚み:5μm/60μm/5μm、延伸軸数:2軸/2軸/2軸)の樹脂層(A)を得た。
<印刷受容層(B)の形成>
上記樹脂層(A)の片面に、印刷受容層(B)形成用の塗工液(b1)を、乾燥後の厚みが2μmとなるようにバーコーターで塗工した。70℃のオーブンで30秒乾燥した後、40℃で8時間硬化させて、印刷受容層(B)を形成した。これにより、樹脂層(A)上に印刷受容層(B)が積層されたシート本体(i)を得た。
<剥離層(ii)の形成>
図6に示す製造装置を用い、上記シート本体(i)のロール41を巻き出し、シート本体(i)の樹脂層(A)側の面に、直流式のコロナ放電による帯電処理を実施した。帯電処理時、図6中のワイヤー状主電極64とローラー状の対電極65の距離を1cmに設定し、放電電圧を12kVとした。
次いで、製造例Iの剥離層(ii)のロール42を巻き出し、帯電処理されたシート本体(i)の樹脂層(A)の表面と、剥離層(ii)の導電層と反対側の表面とが接するように積層した。両者を圧着ローラー66により加圧接着し、実施例1の静電吸着シートを得た。
(実施例2、3、7~10、14~16及び比較例1~3)
樹脂層(A)に用いる樹脂組成物を表4に示すように変更した以外は、実施例1と同様に実施例2、3、7~10、14~16、比較例1及び3の静電吸着シートを得た。
樹脂層(A)に用いる樹脂組成物を表4に示すように変更し、印刷受容層(B)を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様にして比較例2の静電吸着シートを得た。
(実施例4)
樹脂層(A)の縦方向(MD)の延伸倍率を5倍、横方向(TD)の延伸倍率を8倍に変更した以外は、実施例1と同様に実施例4の静電吸着シートを得た。
(実施例5)
樹脂層(A)を次のようにして形成した以外は、実施例1と同様に実施例5の静電吸着シートを得た。
樹脂組成物(AC5)を230℃に設定した押出機にて溶融混練した後、250℃に設定した押出ダイに供給し、ダイからシート状に押し出して、樹脂組成物(AC5)からなる単層シートを得た。これを冷却装置により60℃まで冷却して無延伸シートを得た。
この無延伸シートを135℃に加熱し、ロール群の周速差を利用して縦方向(MD)に5倍延伸した。次いで、この5倍延伸シートを60℃まで冷却し、テンターオーブンを用いて再び約155℃に加熱して横方向(TD)に8倍延伸した後、更に160℃まで加熱して熱処理を行った。
次いで60℃まで冷却し、耳部をスリットした後、この2軸延伸フィルムの両面にコロナ放電による表面処理を施し、単層構造(各層の樹脂組成物:-/AC1/-、総厚み:60μm、各層厚み:-/60μm/-、各層延伸軸数:-/2軸/-)の樹脂層(A)を得た。
(実施例13)
樹脂組成物AC5に代えて樹脂組成物AC1を用い、縦方向及び横方向の延伸倍率をそれぞれ2倍に変更した以外は、実施例5と同様にして単層構造の樹脂層(A)を形成した。この樹脂層(A)を用いて実施例5と同様に実施例13の静電吸着シートを得た。
(実施例6)
樹脂層(A)の縦方向(MD)の延伸倍率を5倍、横方向(TD)の延伸倍率を8倍に変更し、縦方向の延伸時の延伸温度を155℃に変更した以外は、実施例1と同様に実施例6の静電吸着シートを得た。
(実施例11)
上記樹脂組成物(AC1)を230℃に設定した押出機にて溶融混練した後、250℃に設定した押出ダイに供給しシート状に押し出し、これを冷却装置により60℃まで冷却して無延伸シートを得た。この無延伸シートを135℃に加熱し、ロール群の周速差を利用して縦方向に2倍延伸した。
次いで、上記樹脂組成物(AS1)を250℃に設定した2台の押出機にて溶融混練した後、シート状に押し出して、上記2倍延伸されたシートの両面にそれぞれ積層して、3層の積層シートを得た。
次いで、この3層の積層シートを60℃まで冷却し、テンターオーブンを用いて積層シートを約150℃に加熱して横方向に2倍延伸した後、さらに160℃まで加熱して熱処理を行った。
次いで60℃に冷却し、耳部をスリットして、3層構造(各層の樹脂組成物:AS1/AC1/AS1、総厚み:70μm、各層の厚み:5μm/60μm/5μm、延伸軸数:1軸/2軸/1軸)の樹脂層(A)を得た。
この樹脂層(A)を用いて実施例1と同様に実施例11の静電吸着シートを得た。
(実施例12)
表面層(D)の厚みを10μmに変更し、総厚み80μmの樹脂層(A)を形成した以外は、実施例1と同様にして実施例12の静電吸着シートを得た。
(物性の測定)
得られた各静電吸着シートの物性を次のように測定した。
<標準偏差(SD)>
粒子径分布測定装置MT3000II(マイクロトラック・ベル社製)を用いて、無機粒子の粒度分布を測定した。この粒度分布の累積カーブからd84%及びd16%を求め、前述の式(F1)により標準偏差SDを求めた。
<不透明度>
静電吸着シートの不透明度は、JIS-P-8149に準拠して測定した。具体的には、背面に黒色及び白色標準板を当ててサンプルに光を照射したときの光の反射率の比(黒色板/白色板)を求め、これを百分率で示した。
<表面抵抗率>
シート本体(i)の樹脂層(A)側の表面と印刷受容層(B)側の表面の表面抵抗率(Ω)を、温度23℃、相対湿度50%の条件下で測定した。表面抵抗率が1×107Ω以上の場合は、JIS-K-6911に準拠し、2重リング法の電極を用いて表面抵抗率(Ω)を測定した。表面抵抗率が1×107Ω未満の場合は、JIS-K-7194に準拠し、4深針法で測定することによって求めた抵抗(R)に、補正係数Fを乗じてこれを表面抵抗率(Ω)とした。
<水蒸気透過係数>
シート本体(i)の水蒸気透過係数(g・mm/(m2・24時間))を、JIS-Z-0208に準拠して、カップ法により、温度40℃、相対湿度90%RHの条件下にて測定された透湿度(g/(m2・24時間))と、シート本体(i)の厚み(mm)とから求めた。
(評価)
各静電吸着シートを次のように評価した。
<インクとの密着強度>
静電吸着シートを、温度23℃,相対湿度50%の雰囲気下で1日間保管した。その後、静電吸着シートの印刷受容層(B)側の表面に、印刷試験機((株)明製作所製、商品名:RI-III型印刷適性試験機)を用いて、印刷インキ((株)T&KTOKA製、商品名:ベストキュアー161墨)を1.5g/m2の厚みとなるよう均一に印刷した。メタルハライド灯(アイグラフィック(株)製、出力:80W/cm)下でUV照射強度が0.04W/cm2となるようにUV照射し、印刷インキを乾燥固化した。
再び静電吸着シートを、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で1日間保管した後、印刷面にセロハンテープ(ニチバン(株)製、商品名:CT-18)を貼り付けた。JAPAN TAPPI No.18-2(内部結合強さ試験方法)に準じて、インクの剥離強度を測定し、2回の測定結果の平均値を密着強度とした。測定には、インターナルボンドテスター(熊谷理機工業(株)社製、商品名)を用いた。得られた密着強度を以下の基準で合否評価した。
○(合格) :密着強度が1.4kg・cm以上
×(不合格):密着強度が1.4kg・cm未満
<ハンドリング性>
静電吸着シートを、打ち抜き刃を用いて長手89mm×幅57mmのサイズに打ち抜き、100枚のカードを作成した。作成したカードを1m×1mのガラス板上にランダムに広げて、手でかき集めて100枚の束を作成し、きれいな束にできるかを以下の基準で評価した。
○(良好) :4辺がきれいにそろった束が作成可能
△(やや良好):4辺は揃えられないが束は作成可能
×(不良) :カードがガラス板に張り付いてしまい束の作成が困難
<吸着力>
静電吸着シートを、200mm×220mmのサイズに断裁し、相対湿度50%の雰囲気下で1日間保管した。同雰囲気下で、静電吸着シートより剥離層(ii)を剥がして、図7に示す測定装置70のガラス板71上にシート本体(i)の樹脂層(A)側の表面を貼り付けた。このとき、シート本体(i)の下端の一部がガラス板71より下方にはみ出すように貼り付けた。ガラス板71に貼り付けられたシート本体(i)の面積は200mm×200mmであり、シート本体(i)の下端から20mm×200mmの部分がガラス板71からはみ出した。
シート本体(i)の下端部分にクリップ72を取り付け、糸により10gの分銅73を吊り下げた。この10gの分銅73を1つずつクリップ72に追加し、シート本体(i)が滑り落ちた時の分銅73の合計重量から平米あたりの吸着力を換算した。得られた吸着力を、以下の基準で評価した。
○(良好) :吸着力が5000g/m2以上
△(やや良好):吸着力が1000g/m2以上、5000g/m2未満
×(不良) :吸着力が1000g/m2未満
表4は、評価結果を示す。なお、表4中の延伸温度の項目は、縦延伸時の延伸温度を示す。
Figure 2023125987000012
表4に示すように、実施例1~16の静電吸着シートはいずれも、シート本体(i)が十分な吸着力を有する。よって接着剤を使用せずとも被着体に貼り付け、剥がすことができる。実施例1~16の静電吸着シートは、印刷受容層(B)のインク密着強度も高く、印刷適性を有するため、その印刷物をそのまま被着体に貼り付けることが可能である。シート本体(i)に剥離層(ii)が積層された状態では、静電吸着シートの両面の表面抵抗率が9×1012Ω以下の範囲内にあり、ハンドリング性にも優れている。また樹脂層(A)には、無機粒子を50質量%以上含有するコア層(C)が含まれるため、環境負荷の低減にも貢献できている。
一方、比較例1の静電吸着シートは、コア層(C)の無機粒子の含有量が50質量%未満であり、環境負荷の低減に貢献できていない。吸着力も十分でなく、被着体への貼り付けが不十分になる可能性がある。印刷受容層(B)がない比較例2の静電吸着シートは、インクの密着強度及びハンドリング性が低い。
1 静電吸着シート
10 シート本体(i)
11 樹脂層(A)
12 印刷受容層(B)
20 剥離層(ii)

Claims (7)

  1. 帯電処理されたシート本体(i)に剥離層(ii)が積層された静電吸着シートであって、
    前記シート本体(i)は、樹脂層(A)と、前記樹脂層(A)上に印刷受容層(B)とを備え、前記シート本体(i)の前記樹脂層(A)側の表面が前記剥離層(ii)と静電吸着し、
    前記樹脂層(A)が、熱可塑性樹脂及び無機粒子を含有するコア層(C)を含み、前記コア層(C)中の前記無機粒子の含有量が50~80質量%であり、
    前記静電吸着シートの前記シート本体(i)側及び前記剥離層(ii)側の表面抵抗率が、それぞれ1×10-1~9×1012Ωであり、
    前記シート本体(i)の不透明度が50~100%である
    静電吸着シート。
  2. 前記樹脂層(A)が、延伸樹脂層を含む
    請求項1に記載の静電吸着シート。
  3. 下記式(F1)によって求められる、前記無機粒子の粒度分布における標準偏差(SD)が、0.3以上である
    請求項1又は2に記載の静電吸着シート。
    (F1) SD=(d84%-d16%)/2
    〔式(F1)において、d84%は累積カーブが84%となる点の粒子径(μm)を表す。d16%は累積カーブが16%となる点の粒子径(μm)を表す。〕
  4. 前記印刷受容層(B)が、帯電防止機能を有するポリマーを含有する
    請求項1~3のいずれか一項に記載の静電吸着シート。
  5. 前記帯電防止機能を有するポリマーが、第4級アンモニウム塩型共重合体又はアルカリ金属塩含有ポリマーを含む
    請求項4に記載の静電吸着シート。
  6. 前記アルカリ金属塩含有ポリマーが、アルカリ金属を含有し、
    前記アルカリ金属が、リチウムを含む
    請求項5に記載の静電吸着シート。
  7. 前記シート本体(i)の水蒸気透過係数が、0.01~2.50g・mm/(m・24時間)である
    請求項1~6のいずれか一項に記載の静電吸着シート。

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