JP2023125364A - 真空排気システム - Google Patents

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Yoshinobu Otachi
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勉 高阿田
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Abstract

【課題】プロセスガス由来の生成物がターボ分子ポンプ内に堆積しにくくなり、また設備の設置に要するスペースを有効に活用することができる真空排気システムを提案する。【解決手段】真空排気システム200は、複数段の回転翼102と複数段の固定翼123との相互作用によってガス分子を排気口133から排気するターボ分子ポンプ機構を備える一方、ネジ溝ポンプ機構を持たない複数のターボ分子ポンプ100と、排気口133のそれぞれが接続された統合配管部206を有する排気配管204と、排気配管204に接続されて統合配管部206を介してガス分子を排気するバックポンプ203と、を備えることを特徴とする。【選択図】図5

Description

本発明は、真空排気システムに関する。
半導体製造におけるウエハ面に薄膜を形成する表面処理においては、エッチングやALD(Atomic Layer Deposition、原子層堆積技術)、CVD(Chemical Vapor Deposition、化学気相成長技術)等が用いられる。
半導体製造等のエッチングは通常、チャンバ内に基板を載置してチャンバを真空雰囲気にした状態で行われることから、半導体製造工程においてはチャンバに接続される真空排気システムが必要である。真空排気システムは、チャンバに接続される排気配管の他、排気配管に接続されてチャンバ内を真空引きするバックポンプ(ドライ真空ポンプ)やブースターポンプ(メカニカルブースターポンプ)、ターボ分子ポンプ等の真空排気装置を含んで構成される。
ターボ分子ポンプは、特許文献1に示されているように、排気上流側において複数段の回転翼と複数段の固定翼により構成されるターボ分子ポンプ機構と、排気下流側に設けられるネジ溝ポンプ機構で構成される。
ここで、図8を参照しながら建物に設けられた真空排気システムの一実施形態について説明する。図示したように建物に真空排気システム500を設けるにあたっては、例えば上層フロアUFにクリーンルームCRを設け、このクリーンルームCR内に薄膜を形成するチャンバ501A、501B、501C・・・とターボ分子ポンプ502A、502B、502C・・・を設置する。図示したようにターボ分子ポンプ502A・・・に接続されるブースターポンプ503A、503B、503C・・・とバックポンプ504A、504B、504C・・・は、クリーンルームCR外の下層フロアLFに設置することが一般的である。なお、ブースターポンプ503A・・・は、クリーンルームCR内に設置することもある。ここでチャンバ501A・・・、ターボ分子ポンプ502A・・・、ブースターポンプ503A・・・、バックポンプ504A・・・は、排気配管505A・・・で接続されている。またチャンバ501A・・・、ブースターポンプ503A・・・、バックポンプ504A・・・は、排気配管505A・・・とは別に、粗引き用配管506A・・・で接続されている。なお排気配管505A・・・と粗引き用配管506A・・・の途中には、バルブ(第一バルブ507A、507B、507C・・・、第二バルブ508A、508B、508C・・・、第三バルブ509A、509B、509C・・・、第四バルブ510A、510B、510C・・・)が設けられている。
このような配置で真空排気システム500を設置しているのは、薄膜を形成する際には高いクリーン度が求められ、これを実現するにはクリーンルームの設備費及び維持費が高額になるため、クリーンルームの面積を必要最小限に抑えてコスト削減を図るためのである。またブースターポンプ503A・・・とバックポンプ504A・・・をチャンバ501A・・・等の直下に配置しているのは、排気配管505A・・・や粗引き用配管506A・・・の長さを短くしてコンダクタンスをできるだけ大きくするためである。
なお半導体等を製造するための設備は、設置スペースをできるだけ減らすとともに同一のスペースに多くの設備が設置できるようにするため、特許文献2に示されているように密集した状態で据え付けられる。
特開2013-079602号公報 特開2017-079329号公報
ところでプロセスガスを排気すると、ガスの温度及び圧力が下がって気体の状態から昇華し、固体となった生成物がターボ分子ポンプ内に堆積することによってポンプ流路を狭め、ターボ分子ポンプの性能を低下させることがある。このような現象は、特にポンプ流路の狭いネジ溝ポンプ機構で生じやすくなっている。このため特許文献1に示されているように、ポンプ本体を加熱する加熱装置とポンプ本体を冷却する冷却装置を制御して、生成物が析出しにくい状態にすることが行われている。しかし、このような制御を行えるように構成する場合はコスト高になる。また、最近の半導体製造においてはプロセスガスの流量が増えているため、これらの機構を用いても生成物が堆積しやすい状況にある。
また半導体等の製造設備は、特許文献2のように密集した状態で設置されているものの、更なるコストの削減と生産効率の向上のためには、設置スペースの有効活用を一段と図る必要がある。
このような点に鑑み、本発明は、従来使用していた加熱装置や冷却装置を使用せずともプロセスガス由来の生成物がターボ分子ポンプ内に堆積しにくくなり、また製造設備の設置に要するスペースを有効に活用することができる真空排気システムを提供することを目的とする。
本発明の真空排気システムは、複数段の回転翼と複数段の固定翼との相互作用によってガス分子を排気口から排気するターボ分子ポンプ機構を備える一方、ネジ溝ポンプ機構を持たない複数のターボ分子ポンプと、前記排気口のそれぞれが接続された統合配管部を有する排気配管と、前記排気配管に接続されて前記統合配管部を介して前記ガス分子を排気するバックポンプと、を備えることを特徴とする。
このような真空排気システムにおいて、前記排気配管における前記統合配管部から前記バックポンプまでの間に、当該バックポンプの排気性能を補助するブースターポンプが接続され、前記ブースターポンプの数は、前記ターボ分子ポンプの数よりも少ないことが好ましい。
また前記ブースターポンプは、前記ターボ分子ポンプに対して横並びに配置され、前記統合配管部は、前記ターボ分子ポンプの直下を避けた位置に配置されることが好ましい。
そして前記排気配管における前記統合配管部から前記バックポンプまでの間に、当該バックポンプの排気性能を補助するバックアップ用ブースターポンプが更に接続されることが好ましい。
また前記排気配管に、前記統合配管部を介して前記ガス分子を排気するバックアップ用バックポンプが更に接続されることが好ましい。
本発明の真空排気システムにおいて、ターボ分子ポンプはネジ溝ポンプ機構を備えていないため、生成物がポンプ内で堆積しにくくなる。なおネジ溝ポンプ機構を省略したことによるターボ分子ポンプの排気性能の低下は、バックポンプにより補うことができる。また従来の排気配管は、各チャンバに対してターボ分子ポンプとバックポンプをそれぞれ接続していて、チャンバの数とターボ分子ポンプ及びバックポンプの数が同数であったが、本真空排気システムの排気配管は、複数のターボ分子ポンプのそれぞれが接続された統合配管部を有していて、バックポンプによる排気は統合配管部を介して行うように構成しているため、バックポンプの数を減らすことができる。従って、従来、バックポンプの設置に要していたスペースをあけることができ、製造設備の設置に要するスペースを有効に活用することができる。
本発明に係る真空排気システムに含まれる真空ポンプの一実施形態を概略的に示した縦断面図である。 図1に示した真空ポンプのアンプ回路の回路図である。 電流指令値が検出値より大きい場合の制御を示すタイムチャートである。 電流指令値が検出値より小さい場合の制御を示すタイムチャートである。 本発明に係る真空排気システムの一実施形態を概略的に示した図である。 図5に示した真空排気システムの統合配管部周辺を概略的に示した図であって、(a)は平面図であり、(b)は側面図である。 図5に示した真空排気システムの変形例を示した図である。 従来の真空排気システムを概略的に示した図である。
以下、図面を参照しながら本発明に係る真空排気システムの一実施形態について説明する。まず、この真空排気システムに含まれるターボ分子ポンプについて、図1~図4を参照しながら説明する。
このターボ分子ポンプ100の縦断面図を図1に示す。図1において、ターボ分子ポンプ100には、中心軸CAに沿って延在する円筒状の外筒127の上端に吸気口101が備えられている。そして、外筒127の内方には、ガスを吸引排気するためのタービンブレードである複数の回転翼102(102a、102b、102c・・・)を周部に放射状かつ多段に形成した回転体103が備えられている。この回転体103の中心にはロータ軸113が取り付けられており、このロータ軸113は、例えば5軸制御の磁気軸受により空中に浮上支持かつ位置制御されている。回転体103は、一般的に、アルミニウム又はアルミニウム合金などの金属によって構成されている。
上側径方向電磁石104は、4個の電磁石がX軸とY軸とに対をなして配置されている。この上側径方向電磁石104に近接して、かつ上側径方向電磁石104のそれぞれに対応して4個の上側径方向センサ107が備えられている。上側径方向センサ107は、例えば伝導巻線を有するインダクタンスセンサや渦電流センサなどが用いられ、ロータ軸113の位置に応じて変化するこの伝導巻線のインダクタンスの変化に基づいてロータ軸113の位置を検出する。この上側径方向センサ107はロータ軸113、すなわちそれに固定された回転体103の径方向変位を検出し、不図示の制御装置に送るように構成されている。
この制御装置においては、例えばPID調節機能を有する補償回路が、上側径方向センサ107によって検出された位置信号に基づいて、上側径方向電磁石104の励磁制御指令信号を生成し、図2に示すアンプ回路150(後述する)が、この励磁制御指令信号に基づいて、上側径方向電磁石104を励磁制御することで、ロータ軸113の上側の径方向位置が調整される。
そして、このロータ軸113は、高透磁率材(鉄、ステンレスなど)などにより形成され、上側径方向電磁石104の磁力により吸引されるようになっている。かかる調整は、X軸方向とY軸方向とにそれぞれ独立して行われる。また、下側径方向電磁石105及び下側径方向センサ108が、上側径方向電磁石104及び上側径方向センサ107と同様に配置され、ロータ軸113の下側の径方向位置を上側の径方向位置と同様に調整している。
さらに、軸方向電磁石106A、106Bが、ロータ軸113の下部に備えた円板状の金属ディスク111を上下に挟んで配置されている。金属ディスク111は、鉄などの高透磁率材で構成されている。ロータ軸113の軸方向変位を検出するために軸方向センサ109が備えられ、その軸方向位置信号が制御装置に送られるように構成されている。
そして、制御装置において、例えばPID調節機能を有する補償回路が、軸方向センサ109によって検出された軸方向位置信号に基づいて、軸方向電磁石106Aと軸方向電磁石106Bのそれぞれの励磁制御指令信号を生成し、アンプ回路150が、これらの励磁制御指令信号に基づいて、軸方向電磁石106Aと軸方向電磁石106Bをそれぞれ励磁制御することで、軸方向電磁石106Aが磁力により金属ディスク111を上方に吸引し、軸方向電磁石106Bが金属ディスク111を下方に吸引し、ロータ軸113の軸方向位置が調整される。
このように、制御装置は、この軸方向電磁石106A、106Bが金属ディスク111に及ぼす磁力を適当に調節し、ロータ軸113を軸方向に磁気浮上させ、空間に非接触で保持するようになっている。なお、これら上側径方向電磁石104、下側径方向電磁石105及び軸方向電磁石106A、106Bを励磁制御するアンプ回路150については、後述する。
一方、モータ121は、ロータ軸113を取り囲むように周状に配置された複数の磁極を備えている。各磁極は、ロータ軸113との間に作用する電磁力を介してロータ軸113を回転駆動するように、制御装置によって制御されている。また、モータ121には図示しない例えばホール素子、レゾルバ、エンコーダなどの回転速度センサが組み込まれており、この回転速度センサの検出信号によりロータ軸113の回転速度が検出されるようになっている。
さらに、例えば下側径方向センサ108近傍に、図示しない位相センサが取り付けてあり、ロータ軸113の回転の位相を検出するようになっている。制御装置では、この位相センサと回転速度センサの検出信号を共に用いて磁極の位置を検出するようになっている。
回転翼102(102a、102b、102c・・・)とわずかの空隙を隔てて複数枚の固定翼123(123a、123b、123c・・・)が配設されている。回転翼102(102a、102b、102c・・・)は、それぞれ排気ガスの分子を衝突により下方向に移送するため、ロータ軸113の軸線に垂直な平面から所定の角度だけ傾斜して形成されている。固定翼123(123a、123b、123c・・・)は、例えばアルミニウム、鉄、ステンレス、銅などの金属、又はこれらの金属を成分として含む合金などの金属によって構成されている。
また、固定翼123も、同様にロータ軸113の軸線に垂直な平面から所定の角度だけ傾斜して形成され、かつ外筒127の内方に向けて回転翼102の段と互い違いに配設されている。そして、固定翼123の外周端は、複数の段積みされた固定翼スペーサ125(125a、125b、125c・・・)の間に嵌挿された状態で支持されている。
固定翼スペーサ125はリング状の部材であり、例えばアルミニウム、鉄、ステンレス、銅などの金属、又はこれらの金属を成分として含む合金などの金属によって構成されている。固定翼スペーサ125の外周には、わずかの空隙を隔てて外筒127が固定されている。外筒127の底部にはベース部129が配設されている。ベース部129には、中心軸CAに対して直交するように横向きに開口する排気口133が形成され、排気口133は、後述する真空排気システムに接続されている。チャンバ(真空チャンバ)側から吸気口101に入ってベース部129に移送されてきた排気ガスは、排気口133へと送られる。
ベース部129は、ターボ分子ポンプ100の基底部を構成する円盤状の部材であり、一般には鉄、アルミニウム、ステンレスなどの金属によって構成されている。ベース部129はターボ分子ポンプ100を物理的に保持すると共に、熱の伝導路の機能も兼ね備えているので、鉄、アルミニウムや銅などの剛性があり、熱伝導率も高い金属が使用されるのが望ましい。
かかる構成において、回転翼102がロータ軸113と共にモータ121により回転駆動されると、回転翼102と固定翼123の作用により、吸気口101を通じてチャンバから排気ガスが吸気される。回転翼102の回転速度は通常20000rpm~90000rpmであり、回転翼102の先端での周速度は200m/s~400m/sに達する。吸気口101から吸気された排気ガスは、回転翼102と固定翼123の間を通り、ベース部129へ移送され、排気口133から排出される。このとき、排気ガスが回転翼102に接触する際に生ずる摩擦熱や、モータ121で発生した熱の伝導などにより、回転翼102の温度は上昇するが、この熱は、輻射又は排気ガスの気体分子などによる伝導により固定翼123側に伝達される。
固定翼スペーサ125は、外周部で互いに接合しており、固定翼123が回転翼102から受け取った熱や排気ガスが固定翼123に接触する際に生ずる摩擦熱などを外部へと伝達する。
ところで従来のターボ分子ポンプは、背圧が高い場合でも運転を行うことができるように、最下段の回転翼102と固定翼123の下方にネジ溝ポンプ機構が設けられていて、回転翼102と固定翼123によって吸気口101から吸気された排気ガスは、このネジ溝ポンプ機構を経由して、排気口133から排出される。一方、本実施形態のターボ分子ポンプ100は、このようなネジ溝ポンプ機構を設けずに、回転翼102と固定翼123を含んで構成されるターボ分子ポンプ機構のみでガス分子を排気口133から排気するように構成されている。
また、ターボ分子ポンプ100の用途によっては、吸気口101から吸引されたガスが上側径方向電磁石104、上側径方向センサ107、モータ121、下側径方向電磁石105、下側径方向センサ108、軸方向電磁石106A、106B、軸方向センサ109などで構成される電装部に侵入することのないよう、電装部は周囲をステータコラム122で覆われ、このステータコラム122内はパージガスにて所定圧に保たれる場合もある。
この場合には、ベース部129には図示しない配管が配設され、この配管を通じてパージガスが導入される。導入されたパージガスは、保護ベアリング120とロータ軸113間、モータ121のロータとステータ間、ステータコラム122と回転翼102の内周側円筒部の間の隙間を通じて排気口133へ送出される。
ここに、ターボ分子ポンプ100は、機種の特定と、個々に調整された固有のパラメータ(例えば、機種に対応する諸特性)に基づいた制御を要する。この制御パラメータを格納するために、上記ターボ分子ポンプ100は、その本体内に電子回路部141を備えている。電子回路部141は、EEP-ROM等の半導体メモリ及びそのアクセスのための半導体素子等の電子部品、それらの実装用の基板143等から構成される。この電子回路部141は、ターボ分子ポンプ100の下部を構成するベース部129の例えば中央付近の図示しない回転速度センサの下部に収容され、気密性の底蓋145によって閉じられている。
ところで、半導体の製造工程では、チャンバに導入されるプロセスガスの中には、その圧力が所定値よりも高くなり、或いは、その温度が所定値よりも低くなると、固体となる性質を有するものがある。ターボ分子ポンプ100内部では、排気ガスの圧力は、吸気口101で最も低く排気口133で最も高い。プロセスガスが吸気口101から排気口133へ移送される途中で、その圧力が所定値よりも高くなったり、その温度が所定値よりも低くなったりすると、プロセスガスは、固体状となり、ターボ分子ポンプ100内部に付着して堆積する。
例えば、Alエッチング装置にプロセスガスとしてSiCl4が使用された場合、低真空(760[torr]~10-2[torr])かつ、低温(約20[℃])のとき、固体生成物(例えばAlCl3)が析出し、ターボ分子ポンプ100内部に付着堆積することが蒸気圧曲線からわかる。これにより、ターボ分子ポンプ100内部にプロセスガスの析出物が堆積すると、この堆積物がポンプ流路を狭め、ターボ分子ポンプ100の性能を低下させる原因となる。従来のターボ分子ポンプにおいては、圧力が高い排気口の近くに位置するネジ溝ポンプ機構で析出物が堆積しやすく、性能低下につながりやすい状況にあった。
そのため、この問題を解決するために、従来はベース部等の外周に図示しないヒータや環状の水冷管を巻着させ、かつ例えばベース部に図示しない温度センサ(例えばサーミスタ)を埋め込み、この温度センサの信号に基づいてベース部の温度を一定の高い温度(設定温度)に保つようにヒータの加熱や水冷管による冷却の制御(以下TMSという。TMS;Temperature Management System)が行われている。しかし、これらの部材を設けるとコストが嵩むことになる。特に、最近の半導体製造はプロセスガスの流量が増えているため、TMS技術を適用した場合でもネジ溝ポンプ機構で析出物が堆積しやすい状況にあった。一方、本実施形態のターボ分子ポンプ100はネジ溝ポンプ機構を持たないため、ターボ分子ポンプ100内での析出物の堆積を抑制することができ、またTMSに関する部材を省略してコストを抑えることができる。
次に、このように構成されるターボ分子ポンプ100に関して、その上側径方向電磁石104、下側径方向電磁石105及び軸方向電磁石106A、106Bを励磁制御するアンプ回路150について説明する。このアンプ回路150の回路図を図2に示す。
図2において、上側径方向電磁石104等を構成する電磁石巻線151は、その一端がトランジスタ161を介して電源171の正極171aに接続されており、また、その他端が電流検出回路181及びトランジスタ162を介して電源171の負極171bに接続されている。そして、トランジスタ161、162は、いわゆるパワーMOSFETとなっており、そのソース-ドレイン間にダイオードが接続された構造を有している。
このとき、トランジスタ161は、そのダイオードのカソード端子161aが正極171aに接続されるとともに、アノード端子161bが電磁石巻線151の一端と接続されるようになっている。また、トランジスタ162は、そのダイオードのカソード端子162aが電流検出回路181に接続されるとともに、アノード端子162bが負極171bと接続されるようになっている。
一方、電流回生用のダイオード165は、そのカソード端子165aが電磁石巻線151の一端に接続されるとともに、そのアノード端子165bが負極171bに接続されるようになっている。また、これと同様に、電流回生用のダイオード166は、そのカソード端子166aが正極171aに接続されるとともに、そのアノード端子166bが電流検出回路181を介して電磁石巻線151の他端に接続されるようになっている。そして、電流検出回路181は、例えばホールセンサ式電流センサや電気抵抗素子で構成されている。
以上のように構成されるアンプ回路150は、一つの電磁石に対応されるものである。そのため、磁気軸受が5軸制御で、電磁石104、105、106A、106Bが合計10個ある場合には、電磁石のそれぞれについて同様のアンプ回路150が構成され、電源171に対して10個のアンプ回路150が並列に接続されるようになっている。
さらに、アンプ制御回路191は、例えば、制御装置の図示しないディジタル・シグナル・プロセッサ部(以下、DSP部という)によって構成され、このアンプ制御回路191は、トランジスタ161、162のon/offを切り替えるようになっている。
アンプ制御回路191は、電流検出回路181が検出した電流値(この電流値を反映した信号を電流検出信号191cという)と所定の電流指令値とを比較するようになっている。そして、この比較結果に基づき、PWM制御による1周期である制御サイクルTs内に発生させるパルス幅の大きさ(パルス幅時間Tp1、Tp2)を決めるようになっている。その結果、このパルス幅を有するゲート駆動信号191a、191bを、アンプ制御回路191からトランジスタ161、162のゲート端子に出力するようになっている。
なお、回転体103の回転速度の加速運転中に共振点を通過する際や定速運転中に外乱が発生した際等に、高速かつ強い力での回転体103の位置制御をする必要がある。そのため、電磁石巻線151に流れる電流の急激な増加(あるいは減少)ができるように、電源171としては、例えば50V程度の高電圧が使用されるようになっている。また、電源171の正極171aと負極171bとの間には、電源171の安定化のために、通常コンデンサが接続されている(図示略)。
かかる構成において、トランジスタ161、162の両方をonにすると、電磁石巻線151に流れる電流(以下、電磁石電流iLという)が増加し、両方をoffにすると、電磁石電流iLが減少する。
また、トランジスタ161、162の一方をonにし他方をoffにすると、いわゆるフライホイール電流が保持される。そして、このようにアンプ回路150にフライホイール電流を流すことで、アンプ回路150におけるヒステリシス損を減少させ、回路全体としての消費電力を低く抑えることができる。また、このようにトランジスタ161、162を制御することにより、ターボ分子ポンプ100に生じる高調波等の高周波ノイズを低減することができる。さらに、このフライホイール電流を電流検出回路181で測定することで電磁石巻線151を流れる電磁石電流iLが検出可能となる。
すなわち、検出した電流値が電流指令値より小さい場合には、図3に示すように制御サイクルTs(例えば100μs)中で1回だけ、パルス幅時間Tp1に相当する時間分だけトランジスタ161、162の両方をonにする。そのため、この期間中の電磁石電流iLは、正極171aから負極171bへ、トランジスタ161、162を介して流し得る電流値iLmax(図示せず)に向かって増加する。
一方、検出した電流値が電流指令値より大きい場合には、図4に示すように制御サイクルTs中で1回だけパルス幅時間Tp2に相当する時間分だけトランジスタ161、162の両方をoffにする。そのため、この期間中の電磁石電流iLは、負極171bから正極171aへ、ダイオード165、166を介して回生し得る電流値iLmin(図示せず)に向かって減少する。
そして、いずれの場合にも、パルス幅時間Tp1、Tp2の経過後は、トランジスタ161、162のどちらか1個をonにする。そのため、この期間中は、アンプ回路150にフライホイール電流が保持される。
次に、上述したターボ分子ポンプ100を含む真空排気システム200について、図5を参照しながら説明する。本実施形態の真空排気システム200は、上層フロアUFにクリーンルームCRを設け、このクリーンルームCR内に設置される複数のチャンバ201A、201B、201C・・・と、クリーンルームCR内に設置されるチャンバ201A・・・と同数のターボ分子ポンプ100A、100B、100C・・・とを含んで構成されている。また真空排気システム200は、上層フロアUFにおけるクリーンルームCRの外側に設置されている1台のブースターポンプ202と、クリーンルームCRを設けていない下層フロアLFに設置されている1台のバックポンプ203とを含んで構成されている。
なおブースターポンプ202は、メカニカルブースターポンプとも称されるものであって、到達真空度は一例として0.01~10Pa程度である。またバックポンプ203は、ドライ真空ポンプとも称されるものであって、到達真空度は一例として1kPa程度である。ブースターポンプ202は、多くの場合にルーツ型の容積式真空ポンプが採用される。ルーツ型の容積式真空ポンプは、ターボ分子ポンプ(特にネジ溝ポンプ機構)に比べて、回転体のイナーシャが大きく、低速高トルク運転となるので、生成物の堆積に対して性能を維持できるマージンが大きい。またバックポンプ203は、多くの場合にルーツ型、クロー型、スクリュー型の容積式ドライ真空ポンプが採用される。これらはターボ分子ポンプ(特にネジ溝ポンプ機構)と比較して、ブースターポンプ202と同様に生成物の堆積に対して性能を維持できるマージンが大きい。
チャンバ201A・・・、ターボ分子ポンプ100A・・・、ブースターポンプ202、バックポンプ203は、排気配管204で相互に接続されている。またチャンバ201A・・・とバックポンプ203は、排気配管204とは別に、粗引き用配管205で相互に接続されている。
ここで、排気配管204について詳細に説明する。本実施形態の排気配管204は、図6に示すように水平方向に延在する統合配管部206を備えている。統合配管部206における両側面には、統合配管部206の長さ方向に間隔をあけて配置される複数の接続口207A、207B、207C・・・が設けられている。そしてターボ分子ポンプ100A・・・は、統合配管部206を挟んで両側に、統合配管部206が延在する向きに沿って横並び状態(ターボ分子ポンプ100A・・・同士が高さ方向に重なっていない状態)で設置されていて、ターボ分子ポンプ100A・・・における排気口133A・・・が、接続口207A・・・に接続されている。ブースターポンプ202は、ターボ分子ポンプ100A・・・と同階層の上層フロアUFにおいて、ターボ分子ポンプ100A・・・と横並びになるように設置され、統合配管部206の一端部に接続されている。なお、統合配管部206の一端部とブースターポンプ202を直接接続せず、排気配管204を構成する配管を介してこれらを接続しても良い。
また排気配管204は、図5に示すようにチャンバ201A・・・とターボ分子ポンプ100A・・・の間に第一バルブ208A・・・を備えている。また排気配管204は、ブースターポンプ202とバックポンプ203の間において、上層フロアUFに位置する部分と下層フロアLFに位置する部分にそれぞれ第二バルブ209と第三バルブ210を備えている。
粗引き用配管205は、図5に示すように排気上流側では複数本に分岐している一方、排気下流側では1本にまとめられている。粗引き用配管205における複数本に分岐した部分は、それぞれチャンバ201A・・・に接続されていて、また分岐したそれぞれには第四バルブ211A、211B、211C・・・が設けられている。そして粗引き用配管205における1本にまとめられた部分は、バックポンプ203に接続されていて、この1本にまとめられた部分には、第五バルブ212が設けられている。
上記の真空排気システム200は、ブースターポンプ202とバックポンプ203によるターボ分子ポンプ100A・・・からの排気は統合配管部206を介して行うように構成されていて、図8に示した従来の真空排気システム500のようにチャンバ毎にブースターポンプとバックポンプを設ける必要がないため、ブースターポンプ202とバックポンプ203の数を減らすことができる。従って、従来の真空排気システム500においてブースターポンプとバックポンプの設置に要していたスペースをあけることができるため、真空排気システム200を設ける建物内のスペースを有効に活用することができる。また従来の真空排気システム500は、ターボ分子ポンプ502A・・・とブースターポンプ503A・・・を接続するために複数本の排気配管505A・・・が必要であったが、本実施形態の真空排気システム200では、1本の統合配管部206にまとめられているため、この点でも従来に比してスペースをあけることができる。そして横並びに配置したターボ分子ポンプ100A・・・とブースターポンプ202を統合配管部206によって接続することによってこれらをつなぐ配管長が短くなるため、コンダクタンスの低下を抑制することができる。また統合配管部206をターボ分子ポンプ100A・・・の直下に配置すると、その分、ターボ分子ポンプ100A・・・を嵩上げしなければならなくなってチャンバ201A・・・等の高さも高くなってしまうが、本実施形態のようにターボ分子ポンプ100A・・・の直下を避けた位置に統合配管部206を配置することにより、高さを抑えることができる。
なお、本実施形態の真空排気システム200によってチャンバ201A・・・を真空雰囲気にするには、まず第四バルブ211A・・・と第五バルブ212を開くとともにバックポンプ203を駆動させて、粗引き用配管205を通じて大気圧下のチャンバ201A・・・の減圧を行う。そして所定の圧力までチャンバ201A・・・内が減圧された後は、第四バルブ211A・・・と第五バルブ212を閉じるとともに第一バルブ208A・・・、第二バルブ209、及び第三バルブ210を開き、更にターボ分子ポンプ100A・・・、ブースターポンプ202、及びバックポンプ203を駆動させることにより、チャンバ201A・・・を意図した真空雰囲気にすることができる。なお、本実施形態のターボ分子ポンプ100A・・・は、上述したようにネジ溝ポンプ機構を備えていないものの、ネジ溝ポンプ機構を省略したことによるターボ分子ポンプ100Aの排気性能の低下は、ブースターポンプ202とバックポンプ203で補うことができる。
上述した真空排気システム200は、図7に示した真空排気システム250のように構成してもよい。本実施形態の真空排気システム250は、真空排気システム200に対して更にバックアップ用ブースターポンプ251とバックアップ用バックポンプ252を備えている。バックアップ用ブースターポンプ251は、ブースターポンプ202と同階層の上層フロアUFであってクリーンルームCR外に設置され、バックアップ用バックポンプ252は、バックポンプ203と同階層の下層フロアLFに設置されている。またバックアップ用ブースターポンプ251は、第六バルブ253を介して統合配管部206に接続されるとともに、排気配管204におけるブースターポンプ202よりも排気下流側に対して第七バルブ254を介して接続される。そしてバックアップ用バックポンプ252は、第八バルブ255を介して排気配管204に接続されるとともに、第九バルブ256を介して粗引き用配管205に接続される。
このような真空排気システム250によれば、ブースターポンプ202の動作不良が生じたときは、ブースターポンプ202を停止させるとともに第六バルブ253と第七バルブ254を開いてバックアップ用ブースターポンプ251を駆動させることにより、長時間の停止を伴うことなく真空排気システム250としての運転を続けることができる。そしてバックポンプ203の動作不良が生じた際、粗引き用配管205での減圧を行う場合は、バックポンプ203を停止させるとともに第五バルブ212を閉じ、更に第九バルブ256を開いてバックアップ用バックポンプ252を駆動する。また排気配管204での減圧を行う場合はバックポンプ203を停止させるとともに第八バルブ255を開いてバックアップ用バックポンプ252を駆動させる。このような手順を実行することにより、バックポンプ203の動作不良が生じた場合にも長時間の停止を伴うことなく真空排気システム250としての運転を続けることができる。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、上記の説明で特に限定しない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更、組み合わせが可能である。また、上記の実施形態における効果は、本発明から生じる効果を例示したに過ぎず、本発明による効果が上記の効果に限定されることを意味するものではない。
例えば真空排気システム200、250に設けたブースターポンプ202は、バックポンプ203の排気性能を補うものである。従って、排気配管505のコンダクタンスに応じて任意に設ければよく、バックポンプ203のみでも十分に排気できる場合は、ブースターポンプ202は省略してもよい。また、真空排気システム200、250に用いられるブースターポンプ202の台数は、ターボ分子ポンプ100の台数よりも少なければよく、上述した1台に限られず複数台でもよい。
100:ターボ分子ポンプ
102:回転翼
123:固定翼
133:排気口
200、250:真空排気システム
202:ブースターポンプ
203:バックポンプ
204:排気配管
206:統合配管部
251:バックアップ用ブースターポンプ
252:バックアップ用バックポンプ

Claims (5)

  1. 複数段の回転翼と複数段の固定翼との相互作用によってガス分子を排気口から排気するターボ分子ポンプ機構を備える一方、ネジ溝ポンプ機構を持たない複数のターボ分子ポンプと、
    前記排気口のそれぞれが接続された統合配管部を有する排気配管と、
    前記排気配管に接続されて前記統合配管部を介して前記ガス分子を排気するバックポンプと、を備えることを特徴とする真空排気システム。
  2. 前記排気配管における前記統合配管部から前記バックポンプまでの間に、当該バックポンプの排気性能を補助するブースターポンプが接続され、
    前記ブースターポンプの数は、前記ターボ分子ポンプの数よりも少ないことを特徴とする請求項1に記載の真空排気システム。
  3. 前記ブースターポンプは、前記ターボ分子ポンプに対して横並びに配置され、
    前記統合配管部は、前記ターボ分子ポンプの直下を避けた位置に配置されることを特徴とする請求項2に記載の真空排気システム。
  4. 前記排気配管における前記統合配管部から前記バックポンプまでの間に、当該バックポンプの排気性能を補助するバックアップ用ブースターポンプが更に接続されることを特徴とする請求項2又は3に記載の真空排気システム。
  5. 前記排気配管に、前記統合配管部を介して前記ガス分子を排気するバックアップ用バックポンプが更に接続されることを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載の真空排気システム。
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