JP2023121463A - 双方向型電源システム - Google Patents

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Shoji Nishimura
吉則 河▲崎▼
Yoshinori Kawasaki
弘典 柏原
Hironori Kashiwabara
有貴 福田
Yuki Fukuda
怜史 宇田
Satoshi Uda
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Abstract

【課題】商用電力系統の異常時における補償動作を行うことができ、かつ、補償動作時における補償対象負荷の電圧品質の低下を防止できる安価な双方向型電源システムを提供する。【解決手段】双方向型電源システム100は、商用電力系統10から補償対象負荷30に給電するための電力線L1に接続された分散型電源1と、電力線L1を開閉する機械式スイッチ2と、機械式スイッチに並列接続された転流用コンデンサ31と、機械式スイッチよりも商用電力系統側の電圧異常を検出する系統異常検出部5と、電圧異常を検出した場合に機械式スイッチに対して開放指令を出力する開閉制御部6と、開放指令の出力後、機械式スイッチが開放動作を開始した開放タイミングを検出する開放開始検出部7と、開放タイミングを検出する前は分散型電源を電流制御し、開放タイミングを検出した場合には分散型電源を電流制御から電圧制御に切り替える分散型電源制御部8と、を備える。【選択図】図1

Description

本発明は、商用電力系統と補償対象負荷との間に設けられ、補償対象負荷への電力供給及び商用電力系統への逆潮流を含む連系運転を行う双方向型電源システムに関するものである。
従来、系統連系される分散型電源設備としては、特許文献1に示すように、商用電力系統から負荷への給電を遮断する遮断器と、遮断器よりも負荷側に接続された蓄電池等の分散型電源とを備えたものが考えられている。
この分散型電源設備は、商用電力系統の正常時には、遮断器を介して商用電力系統から負荷に給電するとともに分散型電源を系統連系運転させる。一方、商用電力系統の異常時には、遮断器を開放して商用電力系統から負荷への給電を遮断すると同時に、分散型電源の運転モードを電流制御から電圧制御に切り替えて自立運転させる。これにより、商用電力系統の異常時でも負荷に無停電で確実に電力を供給することができる。
特許第3402886号公報
しかしながら、上記した分散型電源設備は、遮断器としてIGBT等の半導体スイッチを用いるため、高速な開閉切替動作が可能となる一方で、素子のオン抵抗に起因する通電損失が小さくない。また、高圧・特別高圧のような高電圧環境下では、高価な半導体スイッチを複数台直列接続する必要があり、コストが増大するとともに制御回路も複雑になる。
そこで近年では、遮断器として半導体スイッチを用いない機械式スイッチを使用することで、通電損失が少なくかつ安価な双方向型電源システムを構築することが考えられている。しかしながら、遮断器として機械式スイッチを使用する場合、接点の荒れ具合やグリスの劣化具合等に起因して、開放指令を出力してから実際に開放動作を開始するまでの時間にバラツキが生じる。そのため遮断器として機械式スイッチを用いる場合、開放動作の開始までの時間のバラツキを考慮して、機械式スイッチに対して開放指令を出力してから十分な時間(機械式スイッチが確実に開放されたと思われる時間)が経過した後に分散型電源による負荷への電力の供給を行う必要があり、負荷の健全電圧への復帰に遅れが生じてしまうという懸念がある。また逆に、機械式スイッチに対して開放指令を出力後、機械式スイッチが完全に開放する前に分散型電源による電力の供給を開始すると、分散型電源から商用電力系統側に短絡電流を流してしまい、機械式スイッチの接点を破損させてしまう。また、負荷に対して過電圧を印加してしまう、という問題がある。
本発明は、上記問題点を一挙に解決すべくなされたものであり、商用電力系統の異常時における補償動作を行うことができ、かつ補償動作時における補償対象負荷への電圧品質の低下を防止できる安価な双方向型電源システムを提供することをその主たる課題とするものである。
すなわち本発明に係る双方向型電源システムは、商用電力系統と補償対象負荷との間に設けられ、前記補償対象負荷への電力供給及び前記商用電力系統への逆潮流を含む連系運転を行う双方向型電源システムであって、前記商用電力系統から前記補償対象負荷に給電するための電力線に接続された分散型電源と、前記分散型電源よりも前記商用電力系統側に設けられ、前記電力線を開閉する機械式スイッチと、前記機械式スイッチに並列接続された転流用コンデンサと、前記機械式スイッチよりも前記商用電力系統側の電圧異常を検出する系統異常検出部と、前記電圧異常が検出された場合に前記機械式スイッチに対して開放指令を出力する開閉制御部と、前記開放指令の出力後、前記機械式スイッチが開放動作を開始した開放タイミングを検出する開放開始検出部と、前記開放タイミングを検出する前は前記分散型電源を電流制御し、前記開放タイミングを検出した場合には前記分散型電源を電流制御から電圧制御に切り替える分散型電源制御部とを備えることを特徴とする。
このような双方向型電源システムであれば、遮断器として安価な機械式スイッチを用い、商用電力系統の異常が検出された場合には、機械式スイッチを開放するとともに分散型電源から補償対象負荷への電力の供給を開始するので、系統異常時にも補償対象負荷に電力を供給することができる。ここで、機械式スイッチに対して開放指令を出力した後、機械式スイッチが開放動作を実際に開始したタイミングを検出するようにしているので、機械式スイッチの開放タイミングにバラツキがあっても、分散型電源から補償対象負荷への電力の供給を、過度に遅らせることも早めることもなく適切なタイミングで開始させることができ、補償対象負荷への電圧品質の低下を防止できる。これにより、商用電力系統の異常時における補償動作を行うことができ、かつ補償動作時における補償対象負荷への電圧品質の低下を防止できる双方向型電力システムを安価に提供することができる。
前記分散型電源制御部の具体的態様として、前記分散型電源制御部は、前記開放タイミングが検出されてから、前記機械式スイッチの開極特性に応じて整定された所定の第1遅延時間の経過後に前記分散型電源の電圧制御を開始することが好ましい。具体的には、前記分散型電源制御部は、前記開放タイミングが検出されてから、前記機械式スイッチの開極特性に応じて整定された所定の第1遅延時間が経過するまでに前記分散型電源の電流制御を停止し、前記第1遅延時間の経過後に前記分散型電源の電圧制御を開始する。
この第1遅延時間とは開極特性により決められる値であり、機械式スイッチが開放開始後、その極間電圧が回路の定格電圧より定まる最大極間電圧Vpに達するまでの時間である。例えば、回路の定格電圧が6.6kVの場合最大極間電圧Vpは、5.93kV(=6.6kV×√2/√3×1.1倍)になる。
また、前記分散型電源制御部は、前記開放タイミングが検出されてから前記第1遅延時間の経過時、又は、前記電圧異常が検出されてから、前記第1遅延時間よりも長い所定の第2遅延時間の経過時、のいずれか早い時点で前記分散型電源の電圧制御を開始することが好ましい。
この構成であれば、例えば、機械式スイッチの開放時に転流用コンデンサに流れる電流(転流電流)が非常に小さく、または転流電流が流れず、開放開始検出部により開放タイミングが検出できない場合であっても、系統側の電圧異常が検出されてから所定時間経過後に分散型電源から補償対象負荷への電力の供給を開始することができ、補償動作を確実に行うことができる。
前記開放開始検出部の具体的な実施の態様としては、前記転流用コンデンサを流れる電流値に基づいて前記開放タイミングを検出するものや、前記機械式スイッチの極間電圧値に基づいて前記開放タイミングを検出するものが挙げられる。
さらに、本発明の双方向型電源システムは、前記機械式スイッチに並列接続されており、前記転流用コンデンサを放電するための放電用抵抗をさらに備えていることが望ましい。
このように構成した本発明によれば、商用電力系統の異常時における補償動作を行うことができ、かつ補償動作時における補償対象負荷の電圧品質の低下を防止できる安価な双方向型電源システムを提供することができる。
本実施形態の双方向型電源システムの構成を示す模式図である。 機械式スイッチの動作時間に対する極間耐電圧特性と第1遅延時間と第2遅延時間との関係を示す図である。 商用電力系統で三相短絡発生した場合に転流回路にLC共振電流が流れる原理を示す図である。 系統三相短絡に対して機械式スイッチの開放時間のバラツキを考慮して分散型電源への出力開始を十分に遅延させた場合の補償対象負荷印加電圧等の時間変化を示すシミュレーション例である。 系統三相短絡に対して機械式スイッチの開放時間に対して許容される最も早いタイミングで分散型電源への出力開始(定電圧制御)を行った場合の負荷印加電圧等の時間変化を示すシミュレーション例である。 系統三相短絡に対して機械式スイッチの開放よりも早いタイミングで分散型電源への出力開始(定電圧制御)を行った場合の負荷印加電圧等の時間変化を示すシミュレーション例である。 系統二相短絡に対して機械式スイッチの開放時間に対して許容される最も早いタイミングで分散型電源への出力開始(定電圧制御)を行った場合の負荷印加電圧等の時間変化を示すシミュレーション例である。 系統開放停電時に、商用電力系統の異常検出後、第2遅延時間の経過後に分散型電源への出力開始(定電圧制御)を行った場合の負荷印加電圧等の時間変化を示すシミュレーション例である。 他の実施形態の双方向型電源システムの構成を示す模式図である。 他の実施形態の双方向型電源システムの構成を示す模式図である。 他の実施形態の双方向型電源システムの構成を示す模式図である。
以下に、本発明の実施形態に係る双方向型電源システム100について、図面を参照して説明する。
<双方向型電源システム100の構成>
本実施形態の双方向型電源システム100は、図1に示すように、商用電力系統10と補償対象負荷30との間に設けられ、補償対象負荷30への電力供給及び商用電力系統10への逆潮流を含む連系運転を行うものである。具体的に双方向型電源システム100は、商用電力系統10と補償対象負荷30との間に設けられ、商用電力系統10の異常時に補償対象負荷30に電力を供給する無停電電源システムとしての機能(無停電電源機能)と、商用電力系統10に対して順潮流及び逆潮流することで負荷平準化する分散型電源システムとしての機能(負荷平準化機能)を発揮するものである。
ここで、商用電力系統10は、電力会社(電気事業者)の電力供給網であり、発電所、送電系統及び配電系統を有するものである。また、補償対象負荷30は、停電や瞬低などの系統異常時においても電力を安定して供給すべき負荷であり、図1では1つであるが、複数あっても良い。
具体的に双方向型電源システム100は、図1に示すように、分散型電源1と、商用電力系統10と分散型電源1及び補償対象負荷30とを接続する開閉スイッチ2と、開閉スイッチ2に並列接続された転流回路3と、開閉スイッチ2よりも商用電力系統10側及び補償対象負荷30側にそれぞれ設けられた解列スイッチ4a、4bと、商用電力系統10の電圧異常を検出する系統異常検出部5と、開閉スイッチ2及び解列スイッチ4a、4bの開閉状態を制御する開閉制御部6と、開放開始検出部7と、分散型電源1による給電を制御する分散型電源制御部8と、を備えている。
分散型電源1は、商用電力系統10から補償対象負荷30に給電するための電力線L1に接続されている。この分散型電源1は、商用電力系統10に連系されるものであり、例えば太陽光発電や燃料電池などの直流発電設備、二次電池(蓄電池)などの電力貯蔵装置(蓄電デバイス)、風力発電やマイクロガスタービンなどの交流で出力された電気エネルギーを直流に整流したうえで、電力変換装置を用いて系統連系をされる発電設備(不図示)、又は、同期発電機や誘導発電機等の交流発電設備等を備えるものである。直流発電設備及び電力貯蔵装置(蓄電デバイス)は、図示しない電力変換装置を備えている。
開閉スイッチ2は、電力線L1において分散型電源1の接続点よりも商用電力系統10側に設けられて電力線L1を開閉するものであり、具体的には機械式スイッチ(以下、機械式スイッチ2ともいう)である。この機械式スイッチ2は、開閉制御部6から出力される指令信号に応じて開閉駆動されるように構成されている。
転流回路3は、機械式スイッチ2を開放した際に電流が流れ込み(転流され)、これを限流させるものである。具体的にこの転流回路3は、機械式スイッチ2に対して並列接続された転流用コンデンサ31を備える。転流用コンデンサ31は、具体的には例えばフィルムコンデンサ等である。本実施形態の転流用コンデンサ31は、機械式スイッチ2を開放した際に、機械式スイッチ2に流れる電流を、アークを生じさせることなく瞬時に転流回路3に転流させ、機械式スイッチ2をゼロ点関係なく高速に遮断できるようにその静電容量Cが定められている。
解列スイッチ4a、4bは、電力線L1において分散型電源1よりも(ここでは機械式スイッチ2よりも)電力系統10側及び補償対象負荷30側にそれぞれ設けられており、例えば機械式スイッチである。この解列スイッチ4a、4bは、開閉制御部6により開閉制御される。
系統異常検出部5は、電力線L1における機械式スイッチ2よりも商用電力系統10側の電圧に基づいて、商用電力系統10の電圧異常を検出するものである。具体的にこの系統異常検出部5は、機械式スイッチ2及び転流回路3からなる並列回路よりも商用電力系統10側に計器用変圧器を介して接続されており、電力線L1において機械式スイッチ2よりも商用電力系統10側の電圧を常時検出している。
そして系統異常検出部5は、検出した検出電圧と、予め定められた整定値とを比較して、前記検出電圧が整定値(UV整定値)未満である場合に、瞬時電圧低下を検出し、前記検出電圧が整定値(OV整定値)を超えた場合に、電圧上昇を検出する。
なお、系統異常検出部5は、検出した検出電圧から周波数変動(周波数上昇(OF)、周波数低下(UF))を検出することもできる。なお、この周波数変動は、例えばステップ上昇や、ランプ上昇・下降である。その他、系統異常検出部5は、瞬時電圧低下、停電及び電圧上昇に加えて、位相変動、電圧不平衡、高調波異常又はフリッカの少なくとも1つを検出してもよい。
開閉制御部6は、機械式スイッチ2、解列スイッチ4a、4bに対して指令信号(開放指令信号、投入指令信号)を出力し、これらの開閉状態を制御するものである。具体的にこの開閉制御部6は、系統異常検出部5により電圧異常(検出電圧<不足電圧(UV)整定値、又は、検出電圧>過電圧(OV)整定値の何れか)が検出されると、機械式スイッチ2に対して開放指令信号を出力するように構成されている。また、開閉制御部6は、検出電圧≧UV整定値、又は、検出電圧≦OV整定値の何れかが検出されると、機械式スイッチ2に対して投入指令信号を出力するように構成されている。
開放開始検出部7は、開閉制御部6による開放指令の出力後、機械式スイッチ2が開放動作(開極動作)を実際に開始したタイミング(開放タイミング、開放時刻ともいう)を検出するものである。具体的にこの開放開始検出部7は、計器用変流器を介して転流回路3に接続されており、転流回路3を流れる三相分の電流値を常時計測し、当該電流値に基づいて機械式スイッチ2の開放タイミングを検出するように構成されている。
より具体的にこの開放開始検出部7は、検出した三相分の検出電流値と予め定められた整定値とを比較して、三相のいずれかの検出電流値が整定値を超えた場合(|検出電流|≧整定値)に、機械式スイッチ2の開放動作の開始を検出する。すなわち開放開始検出部7は、三相のいずれかの検出電流値が整定値を超えたタイミング(又は時刻)を、機械式スイッチ2が開放動作を開始したタイミング(又は時刻)と見なす。この整定値は、ノイズの影響を受けない程度に十分に小さく設定されているのが好ましい。
分散型電源制御部8は、開放開始検出部7が検出した機械式スイッチ2の開放タイミングに基づいて、分散型電源1による給電を制御するものである。具体的にこの分散型電源制御部8は、開放タイミングを検出する前は分散型電源1を電流制御(CC制御)し、機械式スイッチ2の開放タイミングが検出されてから所定の第1遅延時間の経過後に、分散型電源1を電流制御から電圧制御に切り替えるように構成されている。本実施形態の分散型電源制御部8は、第1遅延時間が経過するまでに分散型電源1の電流制御(CC制御)を停止し、第1遅延時間の経過後に分散型電源1の電圧制御(CVCF制御)を開始する。ここで分散型電源1の電流制御は、商用電力系統10からの受電電圧に基づいて一定電流となるように制御する出力制御(CC制御)である。また、分散型電源1の電圧制御は、分散型電源1自体が電圧源として動作し、出力電圧が一定かつ出力周波数が一定の出力制御(CVCF制御)である。また、分散型電源制御部8は、開閉制御部6が機械式スイッチ2に対して投入指令信号を出力すると、分散型電源1を電圧制御(CVCF制御)から電流制御(CC制御)に切り替えるように構成されている。
この第1遅延時間とは開極特性により決められる値であり、図2に示すように、機械式スイッチ2が開放開始後、その極間電圧が回路(転流回路3等)の定格電圧より定まる最大極間電圧Vpに達するまでの時間である。例えば、回路の定格電圧が6.6kVの場合最大極間電圧Vpは、5.93kV(=6.6kV×√2/√3×1.1倍)になる。
さらに本実施形態の分散型電源制御部8は、系統異常検出部5により商用電力系統10の電圧異常が検出されてから、所定の第2遅延時間の経過時にも、分散型電源1を電流制御(CC制御)から電圧制御(CVCF制御)に切り替えるように構成されている。具体的にこの分散型電源制御部8は、機械式スイッチ2の開放タイミングが検出されてから所定の第1遅延時間の経過時、又は商用電力系統10の電圧異常が検出されてから所定の第2遅延時間の経過時のいずれか早い時点で、分散型電源1を電流制御(CC制御)から電圧制御(CVCF制御)に切り替える。
この第2遅延時間は、第1遅延時間よりも十分長い時間である。具体的にこの第2遅延時間は、図2に示すように、機械式スイッチ2への開放指令の出力から実際の開放動作開始までの想定される時間(想定開放時間)に、前記した所定の第1遅延時間を加算した時間である。この想定開放時間とは、機械式スイッチ2の開放タイミングにバラツキが生じるため、そのバラツキ時間を見込んだ最大値である。なお図2で示す例は、機械式スイッチ2に開放指令を出力してから想定開放時間の経過時に開放動作が開始している。
<双方向型電源システム100の動作>
このように構成した本実施形態の双方向型電源システム100は、電力線L1における商用電力系統10側の電圧値や転流回路3を流れる電流値に応じて各機器の運転/停止、開放/投入等を制御することにより、(1)正常時モード、(2)異常時モード、を含む複数の制御モードを取るように構成されている。以下、各制御モードについて説明する。
(1)正常時モード
系統異常検出部5により系統異常が検出されていない場合(すなわち商用電力系統10の正常時)、開閉制御部6は機械式スイッチ2及び解列スイッチ4a、4bを閉じている。この場合、商用電力系統10は、機械式スイッチ2を介して補償対象負荷30に交流電力を供給する。転流回路3は機械式スイッチ2に並列接続されているが、機械式スイッチ2のインピーダンスは転流回路3のインピーダンスよりも小さいため、商用電力系統10と補償対象負荷30とは、機械式スイッチ2側で電力をやり取りする。なお、この正常時モードでは、分散型電源1は電流制御(CC制御)されており、充放電を含めた連系運転を行い、放電運転時には逆潮流状態を含んでいる。
(2)異常時モード
商用電力系統10で短絡事故等が生じ、系統異常検出部5により瞬時電圧低下等の系統異常が検出されると、開閉制御部6は機械式スイッチ2に対して開放指令を出力する。開放指令の出力後、転流回路3の電流値が所定の整定値を越えて、開放開始検出部7により機械式スイッチ2の開放動作の開始タイミングが検出されると、その第1遅延時間経過後に、分散型電源制御部8は分散型電源1に出力信号を送信し、電流制御(CC制御)から電圧制御(CVCF制御)に切り変える。ただし、この切り替えは、機械式スイッチ2の開放動作の開始タイミング検出以降で分散型電源制御部8が電流制御(CC制御)を早めに停止させることを含む。これにより、分散型電源1が電圧源となり、補償対象負荷30に電力が供給される。この時、商用電力系統10と分散型電源1とは転流回路3を介して接続されることになり、転流用コンデンサ31によって限流されるため逆潮流は制限されるが、FRT(Fault Ride Through、事故運転継続)要件を満足するために連系運転は維持される。系統異常がさらに継続すると、開閉制御部6は解列スイッチ4a、4bを開放し、補償対象負荷30及び分散型電源1は商用電力系統10から完全に分離される。
なお、この異常時モードにおいて、開放開始検出部7は、商用電力系統10の二相短絡事故時のみならず、三相短絡事故時においても、転流回路3を流れる電流値を検出して、機械式スイッチ2の開放タイミングを検出できる。図3に示すように、電力線L1における機械式スイッチ2よりも補償対象負荷30側には、電力貯蔵装置の交流/直流変換装置の出力回路に並列接続されたフィルタコンデンサが接続されており、商用電力系統10側にはトランス(変圧器)が直列に接続されている。このフィルタコンデンサの静電容量Cと、トランスの漏れインダクタンスLと、短絡点により、LC共振回路が形成され、三相短絡発生時のコンデンサの電圧(すなわち、充電電荷によるエネルギー)、トランス漏れインダクタンスの電流(磁気エネルギー)を初期値とした共振電流が発生する。このとき、商用電力系統10から補償対象負荷30へ電力を供給していれば、少なくとも各要素初期値のいずれかはゼロではない。その結果、三相短絡事故発生時において転流回路3には共振電流が流れ、開放開始検出部7は、当該共振電流を検出することにより、機械式スイッチ2の極間開放(極間非短絡状態)を検出することができる。
なお、商用電力系統10の開放停電時には、上記したLC共振回路が生成されないため転流回路3には電流が流れず、開放開始検出部7は機械式スイッチ2の開放タイミングを検出することができない。このような場合、分散型電源制御部8は、系統異常検出部5により商用電力系統10の異常が検出された後(又は機械式スイッチ2に開放指令が出力された後)第2遅延時間の経過後に、分散型電源1に出力信号を送信して補償対象負荷30への電力の供給を開始させる。
<シミュレーション結果>
次に、様々な態様の双方向型電源システムの補償動作時の負荷印加電圧等の時間変化をシミュレーションにより示す。
図4は、系統三相短絡に対して機械式スイッチの開放時間のバラツキを考慮して分散型電源への出力開始を十分に遅延させた場合の負荷印加電圧等の時間変化を示すシミュレーション例である。すなわちこのシミュレーションは、機械式スイッチの開放タイミングを検出することなく、系統電圧の低下を検出後、機械式スイッチの開極時間よりも十分に長い時間の経過後に分散型電源に出力させている。図4から分かるように、このシミュレーションでは、機械式スイッチの開放後、補償対象負荷の健全電圧の復帰に大きな遅れが出ることが確認できた。
図5は、系統三相短絡に対して機械式スイッチの開放時間に対して許容される最も早いタイミングで分散型電源への出力開始を行った場合の負荷印加電圧等の時間変化を示すシミュレーション例である。すなわちこのシミュレーションは、上記した本実施形態の双方向型電源システム100と同じ方式であり、系統三相短絡に対して機械式スイッチの開放タイミングを検出し、これに基づいて分散型電源への出力を開始している。図5から分かるように、この例では図4の例に比べて高速で補償対象負荷電圧を健全化できることが確認できた。
図6は、系統三相短絡に対して機械式スイッチの開放よりも早いタイミングで分散型電源への出力開始を行った場合の負荷印加電圧等の時間変化を示すシミュレーション例である。この図から分かるように、双方向型電源システムの出力開始が早すぎる場合には、機械式スイッチに過電流(短絡電流)が流れ、また機械式スイッチの極間に過電圧が発生し、また補償対象負荷に過電圧が印加されることが確認できた。
図7は、系統二相短絡に対して機械式スイッチの開放時間に対して許容される最も早いタイミングで分散型電源への出力開始を行った場合の負荷印加電圧等の時間変化を示すシミュレーション例である。すなわちこのシミュレーションは、上記した本実施形態の双方向型電源システム100と同じ方式であり、系統二相短絡に対して機械式スイッチの開放タイミングを検出し、これに基づいて分散型電源への出力を開始している。図7から分かるように、本実施形態の双方向型電源システム100の方式によれば、系統二相短絡時においても高速で補償対象負荷電圧を健全化できることが確認できた。
図8は、系統開放停電時に、商用電力系統の異常検出後、第2遅延時間の経過後に分散型電源への出力開始を行った場合の負荷印加電圧等の時間変化を示すシミュレーション例である。すなわちこの例は、転流回路3に転流電流が流れず、開放開始検出部7により開放タイミングを検出できない例である。この図から、この例においても、系統電圧の低下後一定時間後に補償対象負荷電圧を健全化できることが分かる。図5、図7の例に比べて、補償対象負荷電圧を健全化までに時間を要するものの、分散型電源1への出力指令が出ず、補償対象負荷に電圧が印加されない、という最悪の事態を防ぐことができることがわかる。
<本実施形態の効果>
このように構成した本実施形態の双方向型電源システム100によれば、遮断器として安価な機械式スイッチ2を用い、商用電力系統10の異常が検出された場合には、機械式スイッチ2を開放するとともに分散型電源1から補償対象負荷30への電力の供給を開始するので、系統異常時にも補償対象負荷30に電力を供給することができる。ここで、機械式スイッチ2に対して開放指令を出力した後、開放開始検出部7により機械式スイッチ2が開放動作を実際に開始したタイミングを検出するようにしているので、機械式スイッチ2の開放タイミングにバラツキがあっても、分散型電源1から補償対象負荷30への電力の供給を、過度に遅らせることも早めることもなく適切なタイミングで開始させることができ補償対象負荷30の電圧品質の低下を防止できる。
また、本実施形態の双方向型電源システム100は、分散型電源制御部8が、開放タイミングが検出されてから第1遅延時間の経過時、又は電圧異常が検出されてから、第1遅延時間よりも長い所定の第2遅延時間の経過時、のいずれか早い時点で分散型電源1を電流制御(CC制御)から電圧制御(CVCF制御)に切り替えるように構成されているので、例えば、機械式スイッチ2の開放時に転流回路3に流れる電流が非常に小さく、開放開始検出部7により開放タイミングが検出できない場合であっても、商用電力系統10側の電圧異常が検出されてから所定時間経過後に分散型電源1を電流制御(CC制御)から電圧制御(CVCF制御)に切り替えることができ、補償動作を確実に行うことができる。
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
例えば、他の実施形態の双方向型電源システム100は、図9に示すように、機械式スイッチ2及び転流回路3に対して並列接続された自己放電回路9を備えてもよい。このようにすれば、機械式スイッチ2と転流回路3により限流遮断した後、転流回路3のコンデンサ31に残留する電荷を、自己放電回路9により放電することができる。自己放電回路9は、例えば、機械式スイッチ2及び転流回路3に対して並列接続され、互いに直列接続された放電用抵抗91及び開閉スイッチ92等を含むものが挙げられる。この場合、自己放電回路9に含まれる開閉スイッチ92は、機械式スイッチ2が開放している状態でのみ投入するようにする。自己放電回路9は、開閉スイッチ92を含まなくてもよいが、その場合、放電用抵抗91の抵抗値は、少なくとも機械式スイッチ2の通電抵抗よりも大きい値となるように構成する。
また、前記実施形態の双方向型電源システム100は、開放開始検出部7は、計器用変流器を介して転流回路3を流れる三相分の電流値を常時計測し、当該電流値に基づいて機械式スイッチ2の開放タイミングを検出するように構成されていたが、これに限らない。他の実施形態の双方向型電源システム100は、図10に示すように、機械式スイッチ2及び転流回路3に並列接続した電力線L2において計器用変圧器を介して接続されて、機械式スイッチ2の三相分の極間電圧を常時計測し、当該極間電圧値に基づいて機械式スイッチ2の開放タイミングを検出するように構成されてもよい。
さらに、図11に示すように、分散型電源制御部8が、第2遅延時間を考慮することなく、機械式スイッチ2の開放タイミングが検出されてから所定の第1遅延時間の経過時に分散型電源1を電流制御(CC制御)から電圧制御(CVCF制御)に切り替えるように構成しても良い。ただし、この切り替えは、機械式スイッチ2の開放動作の開始タイミング検出以降で分散型電源制御部8が電流制御(CC制御)を早めに停止させることを含む。
解列スイッチ4a、4bは、電力線L1において機械式スイッチ2よりも商用電力系統10側及び補償対象負荷30側の両方に設けられていたが、これに限らず、いずれか一方にのみ設けられていてもよい。
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
100・・・双方向型電源システム
10 ・・・商用電力系統
30 ・・・補償対象負荷
L1 ・・・電力線
1 ・・・分散型電源
2 ・・・機械式スイッチ
31 ・・・転流用コンデンサ
4a ・・・解列スイッチ
4b ・・・解列スイッチ
5 ・・・系統異常検出部
6 ・・・開閉制御部
7 ・・・開放開始検出部
8 ・・・分散型電源制御部
91 ・・・放電用抵抗

Claims (6)

  1. 商用電力系統と補償対象負荷との間に設けられ、前記補償対象負荷への電力供給及び前記商用電力系統への逆潮流を含む連系運転を行う双方向型電源システムであって、
    前記商用電力系統から前記補償対象負荷に給電するための電力線に接続された分散型電源と、
    前記分散型電源よりも前記商用電力系統側に設けられ、前記電力線を開閉する機械式スイッチと、
    前記機械式スイッチに並列接続された転流用コンデンサと、
    前記機械式スイッチよりも前記商用電力系統側の電圧異常を検出する系統異常検出部と、
    前記電圧異常が検出された場合に前記機械式スイッチに対して開放指令を出力する開閉制御部と、
    前記開放指令の出力後、前記機械式スイッチが開放動作を開始した開放タイミングを検出する開放開始検出部と、
    前記開放タイミングを検出する前は前記分散型電源を電流制御し、前記開放タイミングを検出した場合には前記分散型電源を電流制御から電圧制御に切り替える分散型電源制御部とを備える、双方向型電源システム。
  2. 前記分散型電源制御部は、前記開放タイミングが検出されてから、前記機械式スイッチの開極特性に応じて整定された所定の第1遅延時間の経過後に前記分散型電源の電圧制御を開始する、請求項1に記載の双方向型電源システム。
  3. 前記分散型電源制御部は、
    前記開放タイミングが検出されてから前記第1遅延時間の経過時、又は、
    前記電圧異常が検出されてから、前記第1遅延時間よりも長い所定の第2遅延時間の経過時、のいずれか早い時点で前記分散型電源の電圧制御を開始する、請求項2に記載の双方向型電源システム。
  4. 前記開放開始検出部が、前記転流用コンデンサを流れる電流値に基づいて前記開放タイミングを検出するものである、請求項1又は2に記載の双方向型電源システム。
  5. 前記開放開始検出部が、前記機械式スイッチの極間電圧値に基づいて前記開放タイミングを検出するものである、請求項1又は2に記載の双方向型電源システム。
  6. 前記機械式スイッチに並列接続されており、前記転流用コンデンサを放電するための放電用抵抗をさらに備えている、請求項1乃至5の何れか一項に記載の双方向型電源システム。
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