JP2023121261A - インプラント材料を評価するための改変骨芽細胞様細胞 - Google Patents

インプラント材料を評価するための改変骨芽細胞様細胞 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、インプラント材料の正確な評価のために、細胞カウントと生きた状態の細胞の観察とを両立することができる全く新しいインプラント材料の細胞適合性評価方法を確立することを目的とした。【解決手段】複数の異なる蛍光タンパク質を発現する骨芽細胞様細胞であって、少なくとも1つの蛍光タンパク質が、核において発現し、前記蛍光タンパク質と異なる少なくとも1つの蛍光タンパク質が、核以外で発現する、前記骨芽細胞様細胞によって上記課題は解決された。【選択図】図5

Description

本発明は、インプラント材料を評価するための改変骨芽細胞様細胞および該細胞を用いたインプラント材料の細胞適合性を評価する方法に関する。
MC3T3-E1細胞は、新生児C57BL/6マウス頭蓋冠から樹立された細胞株である。MC3T3-E1細胞は、増殖能力が高く、優れた石灰化能力を有していることから、歯科用チタンインプラントの表面粗さの骨形成能への影響の評価(非特許文献1)や、チタンおよびジルコニウムの硬組織適合性の類似性の確認(非特許文献2)などに用いられる。また、日本工業規格JIS T0301:2000(金属系インプラント材料の細胞適合性評価方法)においても、チタンやジルコニウムなどの金属系インプラント材料の細胞適合性の評価に用いられている。
MC3T3-E1細胞を改変した例として、MC3T3-E1細胞に蛍光タンパク質を導入した例が知られている。例えば、非特許文献3においては、インプラント材料内に封入したMC3T3-E1細胞を可視化するために蛍光タンパク質(GFP)が導入されており、ペプチド両親媒性物質のナノファイバーマトリックスにより充填された多孔性のTi-6A-4Vフォームからなるハイブリッド骨インプラント材料の評価において用いられている。さらに、非特許文献4においては、MC3T3-E1に蛍光タンパク質(GFP)が導入されており、MC3T3-E1とMLO-Y4との細胞間相互作用を調査する際に、MLO-Y4との共培養からのフローサイトメトリーによる単離のために用いられている。
また、MC3T3-E1細胞株は、同じ親株から樹立したサブクローン、または細胞バンク(ATCC)により配布されているサブクローンにおいても、分化能を維持している株および分化能を維持していない株の両方が存在するという不安定性の問題が生じる場合があった(非特許文献5および6)。
従来、インプラント材料の細胞適合性評価として、ニュートラルレッド法、MTT法などの細胞カウント方法が用いられていたが(例えば、JIS T0301:2000)、細胞数の測定の際に、細胞の固定や、呈色のための薬剤処理などの工程を要するものであった。
Young-Dan Cho et al., Molecular Sciences (2021) Feb 27; 22 (5): 2406. doi: 10.3390/ijms22052406. Takayuki UMEZAWA et al., Dental Materials Jounal 2015; 34 (5) : 713-718 DIAN WANG et al., JOURNAL OF BONE AND MINERAL RESERCH Volume 14, Number 6, 1999: 893-903 Phillip W. Hwang et al., SCIENTIFIC REPORTS (2019) 9: 8299 <URL:https://doi.org/10.1038/s41598-019-44575-8> Timothy D. Sargeant et al., Biomaterials 29 (2008) 161-171 Yoichi Nishikawa et al., Biochemical and Biophysical Research Communications 456 (2015) 1-6
本発明者らは、より正確なインプラント材料の評価のためには、従来実施されていた細胞接着や細胞増殖に関する評価に加えて、生きた状態の細胞を観察する必要があると考えた。しかしながら、従来のニュートラルレッド法やMTT法などの細胞カウント方法では、細胞の固定を行うことになり、1つのインプラント材料に対して細胞カウントと生きた状態の細胞の観察とを同時に行うことができないとの問題に直面した。本発明者らは、インプラント材料の正確な評価のために、細胞カウントと生きた状態の細胞の観察とを両立することができる全く新しいインプラント材料の細胞適合性評価方法を確立することを目的とした。
したがって本発明の課題は、従来不可能であったインプラント材料上で生きた状態の細胞を用いながらインプラント材料の細胞適合性をより正確に評価する方法を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究する中で、骨芽細胞様細胞の核および核以外の部分に、夫々、異なる蛍光色の蛍光タンパク質を発現させた改変骨芽細胞様細胞を用いることで、細胞を固定することなく、核において発現する蛍光タンパク質を観察することにより、細胞数を計測するのと同時に、核以外において発現する蛍光タンパク質を観察することにより、細胞の形態などの細胞の状態について同時に評価することができるとの知見を得た。かかる知見に基づき、さらに研究を進めた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、以下に関する。
[1]骨芽細胞様細胞を改変して複数の異なる蛍光タンパク質を発現する改変骨芽細胞様細胞であって、少なくとも1つの蛍光タンパク質が、核において発現し、前記蛍光タンパク質と異なる少なくとも1つの蛍光タンパク質が、核以外で発現する、前記改変骨芽細胞様細胞。
[2]核において発現する少なくとも1つの蛍光タンパク質が、核以外で発現する任意の蛍光タンパク質よりも強く発光する、前記[1]に記載の改変骨芽細胞様細胞。
[3]核において発現する少なくとも1つの蛍光タンパク質が、tdTOMATOであり、核以外で発現する蛍光タンパク質がEGFPである、前記[1]または[2]に記載の改変骨芽細胞様細胞。
[4]骨芽細胞様細胞が、MC3T3-E1細胞である、前記[1]~[3]のいずれか1つに記載の改変骨芽細胞様細胞。
[5]細胞増殖率が、MC3T3-E1細胞の細胞増殖率の±60%である、前記[1]~[4]のいずれか1つに記載の改変骨芽細胞様細胞。
[6]MC3T3-E1細胞よりも高い分化誘導能を有する、前記[1]~[5]のいずれか1つに記載の改変骨芽細胞様細胞。
[7]NITE P-03582(受託番号)で表される、改変骨芽細胞様細胞。
[8]蛍光タンパク質によって標識された改変骨芽細胞様細胞を用いることを含む、インプラント材料の細胞適合性を評価する方法。
[9]蛍光タンパク質によって標識された改変骨芽細胞様細胞が、少なくとも1つの蛍光タンパク質が、核において発現し、前記蛍光タンパク質と異なる少なくとも1つの蛍光タンパク質が、核以外で発現する改変骨芽細胞様細胞である、前記[8]に記載の方法。
[10]インプラント材料の細胞適合性の評価が、インプラント材料の表面が及ぼす、細胞増殖、細胞の遊走、細胞の伸長および/または分化誘導能に対する影響を評価することである、前記[9]に記載の方法。
[11]インプラント材料の細胞適合性が、経時的に評価される、前記[8]~[10]のいずれか1つに記載の方法。
[12]インプラント材料の表面が及ぼす、細胞増殖、細胞の遊走および/または細胞の伸長に対する影響を、分化誘導能に対する影響と同時に評価する、前記[10]または[11]に記載の方法。
[13]インプラント材料が、光非透過性材料である、前記[8]~[12]のいずれか1つに記載の方法。
[14]蛍光タンパク質によって標識された改変骨芽細胞様細胞が、前記[1]~[7]のいずれか1つに記載の改変骨芽細胞様細胞である、前記[8]~[13]のいずれか1つに記載の方法。
本発明は、細胞を固定することなく、細胞を生きた状態のままで容易に細胞数を計測することができる。さらに本発明は、細胞数の計測のために細胞を破壊や固定することがなく、細胞を生きた状態で維持できるため、同一インプラント材料上の同一細胞を繰り返し評価することができ、簡便に経時的な評価が可能である。
また本発明は、従来のニュートラルレッド法やMTT法などのように測定された吸光度の値から換算する必要がなく、細胞の核の数を直接計測できることから、より正確な細胞数を評価することができる。さらに本発明は、従来法のように、呈色のための薬剤処理をすることも、処理した細胞を数時間インキュベートすることも不要であるため、安価かつ簡便に、短時間で細胞数を計測することが可能である。
また本発明は、インプラント材料の生体適合性を評価するための細胞に対して、固定することも、呈色のための薬剤処理をすることも必要としない。さらに本発明は、インプラント材料において細胞を生存したまま維持することができるため、インプラント材料の表面が及ぼす、細胞増殖、細胞の遊走、細胞の伸長、細胞の分化誘導能に対する影響などについて、正確に評価することができる。また本発明は、細胞を生きた状態で維持しながらインプラント材料を評価できることから、複数のサンプルを用意する必要がなく、1つのサンプルに対して、細胞増殖、細胞の遊走、細胞の伸長、細胞の分化誘導能などの評価を行うことができる。
図1は、改変MC3T3-E1細胞を作製するために用いた、CAGプロモーターの制御下でhyPBase(Hyperactive version of piggyBac transposase)を発現させるベクター(pCAG-hyPBase)の概略図である。 図2は、改変MC3T3-E1細胞を作製するために用いた、piggyBacトランスポザーゼの制御下でCAG、EGFPおよびピューロマイシン耐性遺伝子を含む発現カセットを細胞ゲノムへと組み込むベクター(pPB-CAG-EGFP-puro)の概略図である。 図3は、改変MC3T3-E1細胞を作製するために用いた、piggyBacトランスポザーゼの制御下でCAG、核局在化シグナル(nls:nuclear localization signal)を付加したtdTomatoおよびピューロマイシン耐性遺伝子を含む発現カセットを細胞ゲノムへと組み込むベクター(pPB-CAG-nls-tdTomato-puro)の概略図である。 図4は、直径6cmのディッシュに継代した6個のクローンから取得した蛍光顕微鏡画像である(左から順にClone1~6と称する)。上段の蛍光(緑)が細胞質を、下段の蛍光(赤)が細胞の核を示す。 図5A~Cは、夫々1、2および4番目のクローンを直径10cmのディッシュに継代した後に取得した蛍光顕微鏡画像である(各図における左側の蛍光(緑)が細胞質を、右側の蛍光(赤)が細胞の核を示す)。 図6は、播種後1日目、2日目および3日目の夫々に各Cloneについて取得した顕微鏡写真である。 図7は、播種後1日目、2日目および3日目の夫々に各Cloneについて取得した蛍光顕微鏡画像である。夫々の日数、Cloneの画像において、左側の蛍光(緑)が細胞質を、右側の蛍光(赤)が細胞の核を示す。 図8A~Cは、各Cloneについて播種後3日目に取得した蛍光顕微鏡画像である。各図中の左側の蛍光(緑)が細胞質を、右側の蛍光(赤)が細胞の核を示す。 図9は、各Cloneおよび対照における播種後1日目の細胞数に対する播種後3日目の細胞数の比(細胞増殖率)を算出したグラフである。 図10は、播種後30日目のClone1についてアリザリン染色した染色図を示す。図において、上段が石灰化誘導サンプルについての、下段が非誘導サンプルについての染色図を示す。 図11は、播種後30日目のClone2についてアリザリン染色した染色図である。図において、上段が石灰化誘導サンプルについての、下段が非誘導サンプルについての染色図を示す。 図12は、播種後30日目のClone4についてアリザリン染色した染色図である。図において、上段が石灰化誘導サンプルについての、下段が非誘導サンプルについての染色図を示す。 図13は、播種後30日目の対照についてアリザリン染色した染色図である。図において、上段が石灰化誘導サンプルについての、下段が非誘導サンプルについての染色図を示す。 図14は、純チタン試験片上の細胞について取得した蛍光顕微鏡画像である。図14A~Cは、夫々20倍、40倍および60倍の対物レンズを用いた異なる倍率での画像を示す。各図中の左側の蛍光(緑)が細胞質を、右側の蛍光(赤)が細胞の核を示す。 図15は、播種密度5000細胞/cmの播種後1日目での4つの異なる視野において取得した蛍光顕微鏡画像および計測数を指す。図中の蛍光(赤)は、細胞の核を示す。 図16は、播種密度10000細胞/cmの播種後1日目での4つの異なる視野において取得した蛍光顕微鏡画像および計測数を指す。図中の蛍光(赤)は、細胞の核を示す。 図17は、播種密度20000細胞/cmの播種後1日目での4つの異なる視野において取得した蛍光顕微鏡画像および計測数を指す。図中の蛍光(赤)は、細胞の核を示す。 図18は、播種密度5000細胞/cmの播種後4日目での4つの異なる視野において取得した蛍光顕微鏡画像および計測数を指す。図中の蛍光(赤)は、細胞の核を示す。 図19は、播種密度10000細胞/cmの播種後4日目での4つの異なる視野において取得した蛍光顕微鏡画像および計測数を指す。図中の蛍光(赤)は、細胞の核を示す。 図20は、播種密度20000細胞/cmの播種後4日目での4つの異なる視野において取得した蛍光顕微鏡画像および計測数を指す。図中の蛍光(赤)は、細胞の核を示す。 図21は、播種後1日目~4日目までの各日における細胞の核の数を示すグラフである。 図22は、播種後1時間において各金属試験片上の細胞で取得された画像である。図中の蛍光(緑)は細胞質を示す。 図23は、播種後6時間において各金属試験片上の細胞で取得された画像である。図中の蛍光(緑)は細胞質を示す。 図24は、播種後24時間において各金属試験片上の細胞で取得された画像である。図中の蛍光(緑)は細胞質を示す。 図25は、播種後48時間において各金属試験片上の細胞で取得された画像である。図中の蛍光(緑)は細胞質を示す。 図26は、播種後72時間において各金属試験片上の細胞で取得された画像である。図中の蛍光(緑)は細胞質を示す。 図27は、純チタン試験片上の細胞について、播種後時間毎に並べた画像である。図中の蛍光(緑)は細胞質を示す。 図28は、播種後96時間でのチタン合金試験片上での異なる視野において取得した蛍光顕微鏡画像である。図中の蛍光(緑)は細胞質を示す。 図29は、播種後72時間における純チタン試験片(n=5)上の4つの異なる視野において取得した蛍光顕微鏡画像である。図中の蛍光(赤)は、細胞の核を示す。 図30は、播種後72時間におけるチタン合金試験片(n=5)上の4つの異なる視野において取得した蛍光顕微鏡画像である。図中の蛍光(赤)は、細胞の核を示す。 図31は、播種後72時間におけるCo-Cr合金試験片(n=5)上の4つの異なる視野において取得した蛍光顕微鏡画像である。図中の蛍光(赤)は、細胞の核を示す。 図32は、夫々の時間における各金属試験片上の細胞数を示すグラフである。 図33は、播種後12時間、15時間、18時間、21時間、および24時間において同一視野から取得した蛍光顕微鏡画像である。図中の緑色の蛍光は、細胞質を示す。三角の矢印は、夫々の時間における同一の細胞を示す。 図34は、播種後3時間、7時間、12時間、24時間、36時間、および48時間において同一視野から取得した蛍光顕微鏡画像である。図中の蛍光(緑)は、細胞質を示す。 図35は、遺伝子発現解析のための培養スキームを示す。 図36は、各遺伝子についてClone3の1日目の発現量を基準とした、他の時点および対照の発現量を示すグラフである。 図37は、Clone3および対照夫々について、1日目の発現量を基準とした、他の時点での発現量を示すグラフである。
本発明は、少なくとも1つの蛍光タンパク質が、核において発現し、前記蛍光タンパク質と異なる少なくとも1つの蛍光タンパク質が、核以外で発現する、複数の異なる蛍光タンパク質を発現する骨芽細胞様細胞に関する。
本発明において用いることができる蛍光タンパク質は、とくに限定されないが、例えば、(i)Sirius、EBFPなどの青色蛍光タンパク質、(ii)ECFP、mTurquoise、TagCFP、AmCyan、mTFP1、MidoriishiCyan、CFPなどのシアン色蛍光タンパク質、(iii)TurboGFP、AcGFP、TagGFP、Azami-Green、ZsGreen、EmGFP、EGFP、GFP2、HyPerなどの緑色蛍光タンパク質、(iv)TagYFP、EYFP、Venus、YFP、PhiYFP、PhiYFP-m、TurboYFP、ZsYellow、mBananaなどの黄色蛍光タンパク質、(v)KusabiraOrange、mOrangeなどの橙色蛍光タンパク質、(vi)TurboRFP、DsRed-Express、DsRed2、TagRFP、DsRed-Monomer、AsRed2、mStrawberryなどの赤色蛍光タンパク質、(vii)TurboFP602、mRFP1、JRed、KillerRed、mCherry、tdTomato、HcRed、KeimaRed、FarRed、mRasberry、mPlum、E2-Crimsonなどの遠赤色蛍光タンパク質、(viii)PS-CFP、Dendra2、Kaede、EosFP、KikumeGRなどの光変換蛍光タンパク質などが挙げられる。
本発明において、核において発現する蛍光タンパク質と、核以外で発現する蛍光タンパク質との組合せは、例えば、上述した緑色蛍光タンパク質の群から選択されるものと赤色蛍光タンパク質の群から選択されるものとの組合せ、青色蛍光タンパク質の群から選択されるものと黄色蛍光タンパク質の群から選択されるものとの組合せ、青色蛍光タンパク質の群から選択されるものと赤色蛍光タンパク質の群から選択されるものとの組合せ、であってもよい。それぞれの蛍光波長で干渉が起こらず、かつ、検出機器の設定として標準で装備されていることが多い波長であるとの観点から、緑色蛍光タンパク質の群から選択されるものと赤色蛍光タンパク質の群から選択されるものとの組合せが好ましい。
本発明において、核において発現する蛍光タンパク質と、核以外で発現する蛍光タンパク質との具体的な組合せは、例えば、tdTomatoとEGFP、AsRed2とAmCyan、DsRed2とAcGFP、HcRedとZsGreen、などが挙げられる。蛍光強度やタンパク質の安定性の観点から、tdTomatoとEGFPとの組合せが好ましい。とくに、動植物の持つ自家蛍光の影響を受けにくく蛍光強度が高いとの観点から、核において発現する蛍光タンパク質としてtdTomatoを用い、核以外で発現する蛍光タンパク質としてEGFPを用いることが好ましい。
本発明において、核以外で発現する蛍光タンパク質の発現部位は、とくに限定されないが、例えば、細胞質、ミトコンドリア、ゴルジ体、小胞体、細胞膜、リソソーム、ペルオキシソーム、などが挙げられる。核以外の発現部位は、細胞の形態を観察できるとの観点から、細胞質であることが好ましい。
本発明において、核において発現する蛍光タンパク質と、核以外で発現する蛍光タンパク質との組合せは、夫々を識別可能な組合せであれば、とくに限定されない。蛍光タンパク質の識別には、蛍光の発光強度、蛍光の波長、減衰時間などを利用することができる。したがって、例えば、1つの蛍光タンパク質が、他の蛍光タンパク質よりも、強く発光する組合せや、蛍光の波長が異なる組合せ、減衰までの時間の差を用いることができる。
発する蛍光により細胞数を計測することが容易となることなどから、核において発現する蛍光タンパク質が、核以外で発現するいずれの蛍光タンパク質よりも強く発光することが好ましい。例えば、蛍光タンパク質の発光の強さが、その蛍光強度に依存する場合に、核において発現するタンパク質の蛍光強度は、核以外で発現する蛍光タンパク質の蛍光強度の1.1倍以上であればよい。核において発現するタンパク質の蛍光強度は、核以外で発現する蛍光タンパク質の蛍光強度に対して、1.1倍~160倍程度であればよく、好ましくは1.1倍~70倍程度、さらに好ましくは1.5倍~5倍程度、とくに好ましくは2倍~4倍程度である。
本発明において用い得る骨芽細胞様細胞は、インプラント材料の評価に用いることができるものであれば、とくに限定されない。かかる細胞として、例えば、MC3T3-E1細胞、SaOS-2、Hs-Os-1、ROS17/2.8、HOS、MG63などが挙げられる。これらの骨芽細胞様細胞のうち、細胞の性質が詳細に明らかになっており、JIS T0301:2000などにおいて指標となる細胞株として用いられているなどの観点から、MC3T3-E1細胞が好ましい。
本発明の改変骨芽細胞様細胞は、MC3T3-E1細胞と同程度の細胞増殖能を有することが望ましい。細胞増殖能は、夫々の細胞を培養した際、一定間隔で細胞数を計測して算出される細胞増殖率などにより確認できる。
一態様において、本発明の改変骨芽細胞様細胞の細胞増殖率は、MC3T3-E1細胞の細胞増殖率の、±60%程度、好ましくは±30%程度、とくに好ましくは±15%程度である。
本発明の改変骨芽細胞様細胞は、MC3T3-E1細胞と比較して、高い分化誘導能を有する。
骨芽細胞様細胞の分化誘導能は、例えば、石灰化誘導能である。石灰化誘導能は、例えば、夫々の細胞に対して、石灰化を誘導したのちのアリザリン染色による呈色により確認できる。または石灰化誘導能は、骨分化マーカー遺伝子の発現レベルによっても確認できる。骨分化マーカー遺伝子に関して、石灰化しやすい細胞株において骨後期分化マーカーである、IbspおよびBglapの発現量が多く、in vivoでの骨化と相関することは当業者に周知である(例えば、DIAN WANG et al., JOURNAL OF BONE AND MINERAL RESERCH, Volume 14, Number 6, 1999: 893-903を参照する)。
本発明の改変骨芽細胞様細胞は、MC3T3-E1細胞よりも、高いレベルで骨後期分化マーカーを発現する。本発明の改変骨芽細胞様細胞は、MC3T3-E1細胞よりも、好ましくは8倍以上、より好ましくは9倍以上の高いレベルで骨後期分化マーカーを発現する。
本発明の改変骨芽細胞様細胞の調製は、一般的な遺伝子導入方法を用いて行うことができる。例えば、目的の蛍光タンパク質遺伝子(核において発現する蛍光タンパク質に関しては、核移行シグナルを付した遺伝子)を組み込んだ遺伝子発現ベクターとポリエチレンイミンなどのトランスフェクション試薬を用いることにより行うことができる。ベクターとしては、pCAGGSベクター(RIKEN BRC DNA BANK)のクローニングサイトにオリゴリンカーを導入し、クローニングに用いることができる制限酵素サイトを増やしたベクター、ピューロマイシンなどの薬剤耐性遺伝子を挿入したpPB-CAG.EBNXN(Wellcome Trust Sanger Institute)ベクター、などが用いられ得る。遺伝子発現ベクターにピューロマイシンなどの抗生物質の耐性遺伝子などを併せて組み込むことで、発現する抗生物質耐性により遺伝子導入された細胞を選択してもよい。
一態様において、本発明の改変骨芽細胞様細胞は、本出願人らによって、MC3T3-E1細胞に、tdTomao遺伝子(addgeneから入手)およびEGFP遺伝子(GenBank: U55761.1参照)を導入された改変骨芽細胞様細胞(改変MC3T3-E1細胞)である。かかる細胞は、本発明者らにより、令和4年(2022年)1月5日付けにて、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物センターに寄託され、受託番号「NITE P-03582」が付されている。また、かかる細胞は、継代培養の後も十分な分化能を維持しており、インプラント材料の評価方法に用いる細胞株として十分な安定性を備えていた。
本発明は、別の側面において、蛍光タンパク質によって標識された改変骨芽細胞様細胞を用いることを含む、インプラント材料の細胞適合性を評価する方法に関する。
本発明において、インプラント材料の細胞適合性は、インプラント材料の表面が及ぼす、細胞増殖、細胞の遊走、細胞の伸長、分化誘導能などに対する影響により評価することができる。
一態様において、本発明の方法に用いられる蛍光タンパク質によって標識された改変骨芽細胞様細胞は、少なくとも1つの蛍光タンパク質が、核において発現し、前記蛍光タンパク質と異なる少なくとも1つの蛍光タンパク質が、核以外で発現する骨芽細胞様細胞である。一態様において、本発明に用いられる、蛍光タンパク質によって標識された骨芽細胞様細胞は、本明細書に記載の改変骨芽細胞様細胞または受託番号:NITE P-03582として寄託された上記の改変MC3T3-E1細胞である。
本発明においては、細胞を、破壊や固定することなしに細胞数の計測や細胞形態の観察することができる。観察は、断続的または連続的に行うことができる。経時的な観察により、インプラント材料の細胞適合性をより詳細に評価することができる。
一態様において、インプラント材料の細胞適合性は、細胞増殖により評価される。細胞増殖は、例えば、評価したいインプラント材料上と陰性対照(細胞に対する悪影響がないことが既知であるインプラント材料または培養シャーレなど)上で同一条件にて一定期間培養した際の、陰性対照での細胞数に対する評価したいインプラント材料での細胞数の比により評価することができる。かかる場合においては、算出された比が1より小さくなるにつれて評価したいインプラント材料の細胞増殖阻害作用が強いといえる。
一態様において、インプラント材料の細胞適合性は、細胞の遊走により評価される。細胞の遊走は、評価したいインプラント材料上に播種した、同一の細胞を経時的に観察し続けることによって確認することができる。
一態様において、インプラント材料の細胞適合性は、細胞の伸長により評価される。細胞の伸長は、評価したいインプラント材料上に播種した、同一の細胞を経時的に観察し続けることによって確認することができる。
一態様において、インプラント材料の細胞適合性は、分化誘導能、例えば、石灰化誘導能を測定することにより評価される。石灰化誘導能は、評価したいインプラント材料上に播種した細胞に対して、石灰化を誘導し、かかる細胞をアリザリン染色することによって確認することができる。
本発明の評価方法の対象となるインプラント材料は、皮下、筋肉、骨組織内などの生体内に埋め込まれて、生体組織と直接接触して使用されるものであれば特に限定されない。本発明の評価方法は、インプラント材料の候補となる材料に対して広く用いることができる。例えば、従来、骨芽細胞様細胞を用いて評価されているインプラント材料を再評価することも可能である。
本発明の評価方法の対象となるインプラント材料の用途は、とくに限定されないが、例えば、歯科用、脊椎用、関節用などが挙げられる。本発明の評価方法では、骨芽細胞に接触する、または骨芽細胞に近接して用いられるインプラント材料のように、骨芽細胞様細胞を用いて評価し得る材料を対象とすることが好ましい。
さらに本発明の評価方法では、蛍光を用いて観察することが適したインプラント材料を評価するのに有効である。本発明の評価方法の対象となるインプラント材料としては、光非透過性材料であっても、光透過性材料であってもよい。本発明の評価方法は、従来、評価が困難であった光非透過性材料において、インプラント材料としての評価が可能である。
本発明の評価方法は、とくに金属系インプラント材料を評価するのに好適に用いることができる。評価対象となる金属系インプラント材料には、純チタン、チタン合金(例として、チタン合金α+β型Ti-6A-4V)、Co-Cr合金、ステンレス(316)などが含まれ得る。
本発明の評価方法は、金属系インプラント材料以外のインプラント材料を評価するのにもまた用いることができる。かかるインプラント材料には、樹脂材料(例として、PEEK、PTFE、UHMWPE)などが含まれ得る。
以下、本発明について実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではないことは言うまでもない。
培地
以下の実施例において、培地は次の組成のものを使用した。
増殖培地:α-MEM(ナカライテスク、型番21444-05)に、FBS(Gibco、型番10437)を10%となるように、およびPenicillin-Streptomycin(10,000U/mL)(Gibco、型番15140-122)を1%となるように添加したもの。
石灰化培地:増殖培地に10mg/mLアスコルビン酸、0.5Mβグリセロリン酸を1/100量添加したもの。
器具・機器
以下の実施例において、使用された器具および機器を次に列挙する。
・10cmディッシュ(Thermo Fisher Scientific、型番130182)
・96ウェルプレート(FALCON、型番353072)
・48ウェルプレート(FALCON、型番353078)
・24ウェルプレート(Thermo Fisher Scientific、型番930186)
・12ウェルプレート(TrueLine、型番TR5001)
・正立蛍光顕微鏡(Leica DM5000 B)
・超微量分光光度計NanoDrop One(Thermo Fisher Scientific)
・QuantStudio 3 リアルタイムPCRシステム(Thermo Fisher Scientific)
例1.蛍光タンパク質発現MC3T3-E1細胞の作製
(1)MC3T3-E1細胞への蛍光タンパク質の導入
MC3T3-E1細胞(RIKEN BRC、細胞番号:RCB1126)を10cmディッシュに2~4×10細胞/10cmディッシュとなるように播種し、37℃でCO2インキュベーターにて培養した。培地として増殖培地を用いた。
・培養2日目に、800μLのα-MEM(ナカライテスク、型番21444-05)にDNA(pCAG-hyPBase 8μg、pPB-CAG-EGFP-puro 4μg、およびpPB-CAG-nls-tdTOMATO-puro 4μg)を加えたA液と800μLのα-MEMに48μLのポリエチレンイミン(Polysciences、型番24765)を加えたB液とを混合した。この混合液を、室温で15分間静置した後、800μLを培地に添加した。
・培養4日目に、ピューロマイシンを6μg/mLとなるように添加した。
・培養11日目に細胞を回収し細胞のクローン化を実施した。
用いたpCAG-hyPBase、pPB-CAG-EGFP-puro、およびpPB-CAG-nls-tdTOMATO-puroの概略図を夫々図1~図3に示す。
なお、図中の記号は、以下の意味を示す。
[図1]
HyPBase:hyperactive piggyBacトランスポザーゼ
pCAG-1:マルチクローニングサイトを付加したpCAGGSベクター
[図2]
pB5’TR:5’ piggyBacトランスポゾン特異性末端逆位配列
CAG:CAGプロモーター
EGFP:EGFP遺伝子
rabbit βglobin pA:ウサギβグロビンのポリA付加シグナル
puromycin:ピューロマイシン耐性遺伝子
pB3’TR:3’ piggyBacトランスポゾン特異性末端逆位配列
pPB-CAG.EBNXN-puro:ピューロマイシン耐性遺伝子を有するPiggyBacトランスポゾンベクター
[図3]
pB5’TR:5’ piggyBacトランスポゾン特異性末端逆位配列
CAG:CAGプロモーター
Nls-tdTomato:核局在化シグナルを付加したtdTomato遺伝子
rabbit βglobin pA:ウサギβグロビンのポリA付加シグナル
puromycin:ピューロマイシン耐性遺伝子
pB3’TR:3’ piggyBacトランスポゾン特異性末端逆位配列
pPB-CAG.EBNXN-puro:ピューロマイシン耐性遺伝子を有するPiggyBacトランスポゾンベクター
pCAG-hyPBase、pPB-CAG-EGFP-puroおよびpPB-CAG-nls-tdTOMATO-puroは、以下のように調製することが可能である。
(a)pCAG-hyPBaseの調製
pCMV-hyPBase(Wellcome Trust Sanger Institute)からKpnI-XhoIを用いてHyPBaseを切り出し、pCAG-1の同サイトにクローニングした。
(b)pPB-CAG-EGFP-puroの調製
pPB-CAG.EBNXN(Wellcome Trust Sanger Institute)のBamHIサイトにピューロマイシン耐性遺伝子を挿入し、BglII-XhoIサイトに5’側にKpnIサイトを付加したEGFP遺伝子を挿入した。
(c)pPB-CAG-nls-tdTOMATO-puroの調製
pPB-CAG-EGFP-puroにおいてEGFPをKpnI-XhoIを用いて取り除き、代わりにNls-tdTomatoを挿入した。Nls-tdTomatoは、pCAG-tdTOMATO(addgene、型番:83029)からPCRにより増幅したtdTomatoに核局在化シグナルを付加して調製した。
(2)クローン化
(1)において蛍光タンパク質を導入したMC3T3-E1細胞を0.25%Trypsin-EDTA(Gibco、型番25200)を用いて剥離し、2細胞/mLとなるように増殖培地で懸濁した。この懸濁液を96ウェルプレートに100μLずつ播種し、37℃でCO2インキュベーターにて培養した。
培養後、各ウェルの観察を行い、細胞のコロニーが出現したウェルから細胞を剥離して、12ウェルプレートに全量継代した。
同様に、12ウェルプレートでの培養後、各ウェルの観察を行い、蛍光タンパク質を強く発現しているクローンを6個選択し、それらを直径6cmのディッシュに全量継代した。そこからさらに強く蛍光タンパク質を発現しているクローンを3個選択し、最終的に直径10cmのディッシュに全量継代した。
直径6cmのディッシュに継代された6個のクローンから取得した蛍光顕微鏡画像を図4に示す(左から順にClone1~6と称する)。上段の蛍光(緑)が細胞質を、下段の蛍光(赤)が細胞の核を示す。これら6個のクローンのうちClone1、2および4が蛍光タンパク質を強く発現していた。Clone1、2および4を直径10cmのディッシュに継代した後に取得した蛍光顕微鏡画像を、夫々図5A~Cに示す。
例2.セルカウント試験
例1において取得したClone1、2および4の細胞夫々について、細胞の接着能力および増殖能力について確認した。対照として、野生型のMC3T3-E1細胞を用いた。夫々の細胞を、12ウェルプレートに5000細胞/cmで播種し、37℃でCO2インキュベーターにて培養した。培地として、増殖培地を用いた。播種後1日目、2日目および3日目に顕微鏡写真および細胞の蛍光を確認する画像を取得した。さらに、播種後1日目および3日目には、0.25%Trypsin-EDTAを用いて細胞を剥離し、血球計算盤を用いて細胞数を計測した。結果を図6~図9に示す。
図6は、播種後1日目、2日目および3日目の夫々に各Cloneについて取得した顕微鏡写真である。写真より各Cloneの細胞が、野生型細胞と同等の接着能力を有することが確認された。図7は、播種後1日目、2日目および3日目の夫々に各Cloneについて取得した蛍光顕微鏡画像であり、図8A~Cは、各Cloneについて播種後3日目に取得した蛍光顕微鏡画像である。夫々の日数、Cloneの画像において、左側の蛍光(緑)が細胞質を、右側の蛍光(赤)が細胞の核を示す。図9は、各Cloneおよび対照における播種後1日目の細胞数に対する播種後3日目の細胞数の比を算出したグラフである。これらにより、3つのクローン全てにおいて細胞が、対照と同等かまたはそれ以上の増殖能力を有することが確認された。
例3.石灰化試験
例1において取得したClone1、2および4の細胞について、MC3T3-E1が有する石灰化能力を維持しているかを確認した。対照として、野生型のMC3T3-E1細胞を用いた。
各細胞を、48ウェルプレートに5000細胞/cmで播種し、37℃でCO2インキュベーターにて培養した。培地として増殖培地を用いた。各細胞株につき、6ウェル播種し、そのうち3ウェルを石灰化誘導サンプルとし、残り3ウェルを非誘導サンプルとした。
播種後1日目に、石灰化誘導サンプルについては、石灰化培地への半量の培地交換を実施した。非誘導サンプルについては、増殖培地への半量の培地交換を実施した。以後2日おきに、同様に半量ずつ培地交換を実施した。
播種後30日目に培地を除去し、石灰化染色キット(コスモバイオ、型番AK21)を用いて石灰化した骨結節のアリザリン染色を実施し、各細胞株について染色強度を目視で確認した。結果を図10~図13に示す。
図10~図13は、播種後30日目に夫々のCloneについてアリザリン染色した染色図を示す。各図において、上段は石灰化誘導サンプルを、下段は非誘導サンプルを示す。Clone1は、ウェル全体が濃く染まり、およびClone2は、不均一に部分的に濃く染まった。対照は点状に薄く染まったのみであり、Clone1および2の両方とも対照よりも濃く染まったことが確認された。Clone4は染まらなかった。
以上より、Clone1は、石灰化能力を強く発現していることが示唆される。
例4.材料上での観察
例3において高い石灰化能力を有することが示唆されたClone1の細胞を用いて、材料上での観察方法を検討した。評価用の材料として、純チタン試験片(直径14mm)を用いた。
24ウェルプレートの各ウェル内に純チタン試験片を配置し、その上に細胞を30000細胞/cmで播種した。培地として増殖培地を用いた。純チタン試験片およびウェルの内容物を播種翌日に、35mmディッシュに移し、細胞を観察した。結果を図14に示す。
図14は、純チタン試験片上の細胞について取得した蛍光顕微鏡画像である。図14A~Cは、夫々20倍、40倍および60倍の対物レンズを用いた異なる倍率での図を示す。各図中の左側の蛍光(緑)が細胞質を、右側の蛍光(赤)が細胞の核を示す。これらの図により、材料から細胞を剥離させることなく、材料上において細胞を、発現した蛍光タンパク質を利用することにより観察できることが確認された。
例5.播種密度3条件によるセルカウント
5000細胞/cm、10000細胞/cm、および20000細胞/cmの3条件の細胞播種密度での細胞数の上昇率について確認した。細胞は、例1において取得したClone1の細胞を用いた。
24ウェルプレートの各ウェル内に純チタン試験片を配置し、その上に細胞を5000細胞/cm、10000細胞/cm、および20000細胞/cmで播種した(各播種密度につきn=3)。培地として増殖培地を用いた。純チタン試験片およびウェルの内容物を播種翌日に、35mmディッシュに移し、細胞を37℃でCO2インキュベーターにて培養した。培養1日目から4日目の各日において、純チタン試験片上の蛍光により細胞の核を示す画像を夫々の播種密度につき4つの視野について、正立蛍光顕微鏡を用いて取得した。取得した画像を、画像解析ソフトImageJ(National Institute of Health Sciences)の「Analyze Particles」解析により、細胞の核の数を計測した。および画像あたりの細胞の個数を計測した。結果を図15~図21に示す。
図15~図17は、培養1日目における各播種密度(n=3)の4つの異なる視野において取得した蛍光顕微鏡画像、および各画像における細胞の計測数を示す。図18~図20は、培養4日目における各播種密度(n=3)の4つの異なる視野において取得した蛍光顕微鏡画像、および各画像における細胞の計測数を示す。各図中の蛍光(赤)は、細胞の核を示す。図21は、培養1日目~4日目までの各日における細胞の核の数を示すグラフである。
これらの結果から、初期播種密度を10000細胞/cm、または20000細胞/cmとした場合、培養3日目から4日目における細胞数の上昇率が低くなっている傾向が確認された。一方で、初期播種密度を5000細胞/cmとした場合は細胞数の上昇率が一定となっていることが確認された。これらの結果から、画像によるセルカウントを実施するための初期播種密度は5000細胞/cmが適切であると考えられる。
例6.3種類の金属試験片上での細胞観察
例1において取得したClone1の細胞を用いて、3種類の金属試験片上での細胞接着・伸展について確認した。金属試験片として、純チタン、チタン合金α+β型Ti-6A-4V、およびCo-Cr合金を選択した(いずれも直径14mm)。
24ウェルプレートの各ウェル内に各金属試験片を配置し、その上に細胞を5000細胞/cmで播種した(各金属試験片につきn=5)。培地として増殖培地を用いた。播種後1時間、6時間、24時間、48時間、および72時間に、各金属試験片上の蛍光により細胞質を示す画像を、正立蛍光顕微鏡を用いて取得した。結果を図22~図28に示す。
図22~図26は、夫々の時間において各金属試験片上の細胞について取得された蛍光顕微鏡画像である。各図中の蛍光(緑)は細胞質を示す。図27は、純チタン試験片上の細胞について、播種後時間毎に並べた画像である。図28は、播種後96時間でのチタン合金試験片上での異なる視野における蛍光により細胞質を示す画像である。いずれの金属試験片上においても細胞は、経時的に増加し、金属試験片に接着し、伸展していることが確認された。また、純チタン試験片上では、純チタン試験片の表面加工の溝に沿って細胞が並ぶ様子が確認された。チタン合金試験片上では細胞の広がりにむらがあることが確認された。
例7.3種類の金属試験片上でのセルカウント
例1において取得したClone1の細胞を用いて、3種類の金属試験片上での細胞増殖率について確認した。金属試験片として、純チタン、チタン合金α+β型Ti-6A-4V、およびCo-Cr合金を選択した(いずれも直径14mm)。
24ウェルプレートの各ウェル内に各金属試験片を配置し、その上に細胞を5000細胞/cmで播種した(各金属試験片につきn=5)。培地として増殖培地を用いた。播種後1時間、24時間、48時間、および72時間に、各金属試験片上の蛍光により細胞の核を示す画像を、正立蛍光顕微鏡を用いて取得した。取得した画像を、画像解析ソフトImageJ(National Institute of Health Sciences)の「Analyze Particles」解析により、細胞の核の数を計測した。結果を図29~図32に示す。
図29は、播種後72時間における純チタン試験片(n=5)上の4つの異なる視野において取得した蛍光顕微鏡画像である。図30は、播種後72時間におけるチタン合金試験片(n=5)上の4つの異なる視野において取得した蛍光顕微鏡画像である。図31は、播種後72時間におけるCo-Cr合金試験片(n=5)上の4つの異なる視野において取得した蛍光顕微鏡画像である。各図中の蛍光(赤)は、細胞の核を示す。図32は、夫々の時間における各金属試験片上の細胞数を示すグラフである。以上より、播種後1時間および24時間における細胞数は、純チタン試験片上が最も多く、その後播種後72時間の間の細胞増殖率は、Co-Cr合金試験片上が最も高い結果であることが確認された。チタン合金試験片については、同一試験片上においても細胞密度にむらが生じており、このことが細胞増殖率に影響していることが考えられる。
例8.タイムラプスでの観察
例1において取得したClone1の細胞を用いて、材料上での細胞の遊走および増殖の様子をタイムラプスで観察した。材料として、純チタン試験片(直径14mm)を選択した。
24ウェルプレートの各ウェル内に純チタン試験片を配置し、その上に細胞を10000細胞/cmで播種し、37℃でCO2インキュベーターにて培養した。培地として、増殖培地を用いた。細胞を、播種後12時間、15時間、18時間、21時間、および24時間で正立蛍光顕微鏡を用いて試験片上の同一位置について画像を取得し、それらをつなぎ合わせてタイムラプス画像を作成した。同様に、播種後3時間、7時間、12時間、24時間、36時間、および48時間で正立蛍光顕微鏡を用いて試験片上の同一位置について画像を取得し、それらをつなぎ合わせてタイムラプス画像を作成した。結果を図33および図34に示す。
図33は、播種後12時間、15時間、18時間、21時間、および24時間において同一視野から取得した蛍光顕微鏡画像である。図中の蛍光(緑)は、細胞質を示す。三角の矢印は、夫々の時間における同一の細胞を示す。これらの画像により、純チタン試験片上で細胞が遊走することが確認された。また、図34は、播種後3時間、7時間、12時間、24時間、36時間、および48時間において同一視野から取得した蛍光顕微鏡画像である。図中の蛍光(緑)は、細胞質を示す。これらの画像により、細胞が、純チタン試験片の表面加工の溝に沿って伸長することが確認された。
例9.遺伝子発現解析
例1において作製した蛍光タンパク質発現MC3T3-E1細胞が骨関連遺伝子を発現していることについて確認した。
例1において取得したClone1の細胞を、24ウェルプレートに5000細胞/cmで播種し、37℃でCO2インキュベーターにて培養した。対照として、野生型のMC3T3-E1細胞を同様に播種し、培養した。各細胞株について16ウェルに播種し、夫々4ウェルずつ、播種後1日目サンプル、播種後10日目サンプル、播種後20日目サンプル、および播種後30日目サンプルとした。
培養1日目に、各細胞株について培養1日目サンプルに、TRIzol Reagent(Thermo Fisher Scientific、型番15596026)を250μLずつ添加し、細胞を懸濁して、セルライセートとした後-30℃で保存した。播種後10日目サンプル、播種後20日目サンプル、および播種後30日目サンプルについては、石灰化培地への半量の培地交換を実施した。以後2日おきに同様の培地交換を実施した。
播種後10日目、20日目、および30日目において、各細胞株について播種後10日目サンプル、播種後20日目サンプル、および播種後30日目サンプルの夫々に、TRIzol Reagent(Thermo Fisher Scientific、型番15596026)を250μLずつ添加し、細胞を懸濁して、セルライセートとした後-30℃で保存した。
-30℃で保存された各セルライセートを解凍して、PureLink RNA Miniキット(Thermo Fisher Scientific、型番12183020)を用いてRNAを精製した。精製したRNAは超微量分光光度計NanoDrop Oneを使用して、260nm、230nm、および280nmの吸光度を測定し、RNA濃度と精製度を確認した。次いで、精製したRNAを鋳型として、SuperScript IV VILO Master Mix(Thermo Fisher Scientific、型番11756050)を用いて逆転写反応を行い、cDNAを得た。
・次に、10μLのTaqMan Fast Advanced Master Mix(Thermo Fisher Scientific、型番4444557)と、1μLのTaqMan Gene Expression AssayにcDNAを10~100ng加え、さらに精製水で総液量が20μLとなるように調製し、QuantStudio 3 リアルタイムPCRシステムを使用してPCR反応を行い、各サンプルのCT値を得た。尚、骨分化マーカーの検出に用いたTaqMan Gene Expression Assay(FAM)(Thermo Fisher Scientific、型番4331182)の遺伝子ごとのIDは以下の通りである。
・Runx2(Assay ID Mm00501583_m1)
・Alpl(Assay ID Mm00475834_m1)
・Ibsp(Assay ID Mm00492555_m1)
・Col1a1(Assay ID Mm00801666_g1)
・Bglap(Assay ID Mm03413826_mH)
・また、内在性コントロールコントロールにはTaqMan Gene Expression Assay(VIC)(Thermo Fisher Scientific、型番4448489)およびGapdh(Assay ID Mm99999915_g1)を用いた。
・得られたCT値からΔΔCT値を計算し、各遺伝子の発現量をタイムポイントごとに評価した。
培養スキームを図35に、夫々の細胞における細胞を溶解させた時点での遺伝子発現レベルを図36および図37に示す。
いずれの遺伝子においても、野生型の細胞よりも、Clone3の細胞の方が高いレベルで発現していることが確認された。さらにClone3の細胞は、野生型の細胞と比べて、後期骨分化マーカーとして知られるBglapおよびIbspの発現量が顕著に多いことが確認された。

Claims (14)

  1. 骨芽細胞様細胞を改変して複数の異なる蛍光タンパク質を発現する改変骨芽細胞様細胞であって、少なくとも1つの蛍光タンパク質が、核において発現し、前記蛍光タンパク質と異なる少なくとも1つの蛍光タンパク質が、核以外で発現する、前記改変骨芽細胞様細胞。
  2. 核において発現する少なくとも1つの蛍光タンパク質が、核以外で発現する任意の蛍光タンパク質よりも強く発光する、請求項1に記載の改変骨芽細胞様細胞。
  3. 核において発現する少なくとも1つの蛍光タンパク質が、tdTOMATOであり、核以外で発現する蛍光タンパク質がEGFPである、請求項1または2に記載の改変骨芽細胞様細胞。
  4. 骨芽細胞様細胞が、MC3T3-E1細胞である、請求項1~3のいずれか一項に記載の改変骨芽細胞様細胞。
  5. 細胞増殖率が、MC3T3-E1細胞の細胞増殖率の±60%である、請求項1~4のいずれか一項に記載の改変骨芽細胞様細胞。
  6. MC3T3-E1細胞よりも高い分化誘導能を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の改変骨芽細胞様細胞。
  7. NITE P-03582(受託番号)で表される、改変骨芽細胞様細胞。
  8. 蛍光タンパク質によって標識された改変骨芽細胞様細胞を用いることを含む、インプラント材料の細胞適合性を評価する方法。
  9. 蛍光タンパク質によって標識された改変骨芽細胞様細胞が、少なくとも1つの蛍光タンパク質が、核において発現し、前記蛍光タンパク質と異なる少なくとも1つの蛍光タンパク質が、核以外で発現する改変骨芽細胞様細胞である、請求項8に記載の方法。
  10. インプラント材料の細胞適合性の評価が、インプラント材料の表面が及ぼす、細胞増殖、細胞の遊走、細胞の伸長および/または分化誘導能に対する影響を評価することである、請求項9に記載の方法。
  11. インプラント材料の細胞適合性が、経時的に評価される、請求項8~10のいずれか一項に記載の方法。
  12. インプラント材料の表面が及ぼす、細胞増殖、細胞の遊走および/または細胞の伸長に対する影響を、分化誘導能に対する影響と同時に評価する、請求項10または11に記載の方法。
  13. インプラント材料が、光非透過性材料である、請求項8~12のいずれか一項に記載の方法。
  14. 蛍光タンパク質によって標識された改変骨芽細胞様細胞が、請求項1~7のいずれか一項に記載の改変骨芽細胞様細胞である、請求項8~13のいずれか一項に記載の方法。
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