JP2023119177A - 染料捺染用処理液組成物、組成物セット、捺染方法、及びインクジェット捺染方法 - Google Patents

染料捺染用処理液組成物、組成物セット、捺染方法、及びインクジェット捺染方法 Download PDF

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Abstract

【課題】予め、処理液組成物を布帛に付着させ、処理液組成物が付着した布帛に対して捺染をすることで、優れた摩擦堅牢性、洗濯堅牢性、及び発色性と共に、良好な風合い性を有する印捺物を得ること。【解決手段】染料捺染用処理液組成物は、布帛に付着させて用い、ポリエステル樹脂と、第3級アミンと、架橋剤としてイソシアネート基含有の化合物と、水と、を含み、前記第3級アミンの含有量が、前記処理液組成物の総量に対して、1質量%以上5質量%以下である。【選択図】図1

Description

本発明は、染料捺染用処理液組成物、組成物セット、捺染方法、及びインクジェット捺染方法に関する。
従来、色材によって布帛へ染色を行って印捺物を製造する際に、色材の発色性、及び堅牢性を改善するため、処理液を用いて、布帛に前処理を施す技術が知られている。そのような技術としては、例えば、特許文献1において、ポリエステル布帛に水性組成物からなる前処理液を付着させる技術が知られている。
特開2009-249773号公報
しかしながら、特許文献1の前処理液では、優れた摩擦堅牢性、洗濯堅牢性、及び発色性を有する捺染物が得られ難いという課題がある。そもそも、特許文献1は、ポリエステル布帛に対する技術であり、天然繊維の布帛に対する捺染について記載されていない。ポリエステル布帛は、天然繊維の布帛と異なり、前処理液を用いなくても、染料を用いて捺染をすることができる。
本発明は、布帛に付着させて用いる処理液組成物であって、ポリエステル樹脂と、第3級アミンと、架橋剤としてイソシアネート基含有の化合物と、水と、を含み、前記第3級アミンの含有量が、前記処理液組成物の総量に対して、1質量%以上5質量%以下である、染料捺染用処理液組成物である。
本実施形態の間接捺染記録方法の一例を示すフローチャートである。
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
1.染料捺染用処理液組成物
本実施形態の染料捺染用処理液組成物(以下、「処理液組成物」とも称する。)は、布帛に付着させて用いる処理液組成物であって、ポリエステル樹脂と、第3級アミンと、架橋剤としてイソシアネート基含有の化合物と、水と、を含み、第3級アミンの含有量が、処理液組成物の総量に対して、1質量%以上5質量%以下である。処理液組成物は、染料捺染をする前に、布帛に付着させるために用いられることが好ましい。
本実施形態によれば、予め、処理液組成物を布帛に付着させ、処理液組成物が付着した布帛に対して染料捺染をすることで、優れた摩擦堅牢性、洗濯堅牢性、及び発色性を有する印捺物を得ることができる。
このように本実施形態によって優れた効果が得られる理由について定かではないが、本発明者らは、次のように推定している。
すなわち、通常、捺染に用いる分散染料等を含むインクは、綿等の繊維を含む布帛に対して親和性が低く、染料捺染をし難い。一方、分散染料等を含むインクは、ポリエステル樹脂の構造中において、カルボキシ基との水素結合や、フェニル基等の疎水性部分とのπ-π相互作用及びファンデルワールス力等の非共有結合により、ポリエステル樹脂に染色しやすい。そして、ポリエステル樹脂は、繊維を含む布帛と親和性が高いため、布帛上に存在することが可能である。そのため、処理液組成物を用いて、ポリエステル樹脂を布帛に付着させることで、綿等の繊維を含む布帛に対しても、分散染料等を含むインクの染色性を付与することができる。
しかしながら、ポリエステル樹脂は、布帛上に付着しているのみで布帛に結着していない。そのため、ポリエステル樹脂と布帛との結着性が不十分であるため、得られる印捺物は、摩擦検討性及び洗濯堅牢性に劣る傾向にある。この点、摩擦検討性及び洗濯堅牢性を得るために、布帛にポリエステル樹脂を多く付着させることが考えられる。しかし、ポリエステル樹脂を多く付着させるとインクの付着量も多く付着されることから、布帛上にインク由来の塗膜が形成され、印捺物の風合い性が損なわれる傾向にある。
一方、本実施形態の処理液組成物では、ポリエステル樹脂と共に、架橋剤としてイソシアネート基含有の化合物と、特定量にて第3級アミンとを含む。第3級アミンは、第1級アミン及び第2級アミンに比べて、イソシアネート基含有の化合物と、ポリエステル樹脂と、布帛との反応を適度に推進させて、結着させることができる。そのため、ポリエステル樹脂と布帛との結着性を好適なものとすることができるため、摩擦堅牢性及び洗濯堅牢性に優れながら、良好な風合い性を有する印捺物を得ることができる。そのうえで、ポリエステル樹脂は染色されやすいため、印捺物は良好な発色性も有すると推定している。ただし、理由はこれに限定されない。
次に、処理液組成物に含まれる各成分について説明するが、布帛については後述する。
1.1.ポリエステル樹脂
処理液組成物は、ポリエステル樹脂を含む。
処理液組成物がポリエステル樹脂を含むことで、優れた摩擦堅牢性、洗濯堅牢性、及び発色性と共に、良好な風合い性を有する印捺物を得ることができる。
ポリエステル樹脂としては、例えば、多価カルボン酸由来の構成単位と、多価アルコール由来の構成単位とを有する。
多価カルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、フタル酸、4,4′-ジフェニルジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、2-カリウムスルホテレフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、グルタル酸、コハク酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水フタル酸、無水コハク酸、及びp-ヒドロキシ安息香酸、並びにそれらの塩が挙げられる。塩としては、例えば、カリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、及びマグネシウム塩が挙げられる。
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、p-キシリレングリコール、ビスフェノールA-エチレングリコール付加物、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリテトラメチレンオキシドグリコール、ジメチロールプロピオン酸、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジメチロールエチルスルホン酸ナトリウム、ジメチロールエチルスルホン酸カリウム、及びジメチロールプロピオン酸カリウムが挙げられる。
ポリエステル樹脂は、ヒドロキシル基、カルボキシ基、及びスルホン酸基、並びにそれらのナトリウム塩を含むことが好ましい。それらの基は、ポリエステル樹脂中に、1種、又は2種以上含んでもよい。
スルホン酸基含有ポリエステル樹脂は、例えば、多価カルボン酸由来の構成単位と、多価アルコール由来の構成単位と、スルホン酸基含有芳香族モノマー由来の構成単位とを有する。
スルホン酸基含有芳香族モノマーとしては、例えば、5-スルホイソフタル酸、スルホテレフタル酸、4-スルホフタル酸、4-スルホナフタレン-2,7-ジカルボン酸、及び4-スルホ-1,8-ナフタレンジカルボン酸無水物、並びにそれらの塩が挙げれる。塩としては、上記を参考にしてもよく、ナトリウム塩が好ましい。
ポリエステル樹脂がそれらの基を含むことで、ポリエステル樹脂は下記のイソシアネート基含有の化合物と良好に反応することが可能となり、布帛、好ましくは水酸基を有する繊維を含む布帛との結着性が良好となる。そのため、より優れた摩擦堅牢性、洗濯堅牢性、及び発色性と共に、より良好な風合い性を有する印捺物を得ることが可能となる。
更に優れた摩擦堅牢性、洗濯堅牢性、及び発色性と共に、更に良好な風合い性を有する印捺物を有することから、ポリエステル樹脂としては、その構造中に芳香族等の疎水性部分を含むことが好ましい。
ポリエステル樹脂は、例えば、上記の多価カルボン酸、多価アルコール、及び必要に応じてスルホン酸基含有芳香族モノマーの中から、それぞれ適宜一つ以上を選択し、常法の重縮合反応により合成することで得られる。
このようなポリエステル樹脂としては、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、エリテール(登録商標)KA-5071S、KT-8803、KT-9204、KT-8701、KT-8904、及びKT-0507(以上、商品名、ユニチカ(株)、ポリエステル樹脂エマルジョン);ハイテック(登録商標)SN-2002(商品名、東邦化学工業(株)、ポリエステル樹脂エマルジョン);プラスコート(登録商標)Z-221、Z-446、Z-561、Z-565、RZ-570、Z-592、Z-687、Z-690、Z-730、Z-760、RZ-105、RZ-570、及びRZ-760(以上、商品名、互応化学工業(株)製);バイロナール(登録商標)MD-1200、MD-1500、及びMD-2000(以上、商品名、東洋紡(株)製)が挙げられる。
ポリエステル樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
一層優れた摩擦堅牢性、洗濯堅牢性、及び発色性と共に、一層良好な風合い性を有する印捺物が得られることから、ポリエステル樹脂の含有量は、処理液組成物の総量に対して、固形分換算で、2質量%以上20質量%以下であることが好ましい。より一層優れた摩擦堅牢性、洗濯堅牢性、及び発色性と共に、より一層良好な風合い性を有する印捺物が得られることから、ポリエステル樹脂の含有量は、処理液組成物の総量に対して、固形分換算で、2質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、2質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。
一層優れた摩擦堅牢性、洗濯堅牢性、及び発色性と共に、一層良好な風合い性を有する印捺物が得られることから、ポリエステル樹脂と下記のイソシアネート基含有の化合物との合計含有量は、処理液組成物の総量に対して、固形分換算で、3質量%以上23質量%以下であることが好ましく、3質量%以上15質量%以下であることがより好ましい。より一層優れた摩擦堅牢性、洗濯堅牢性、及び発色性と共に、より一層良好な風合い性を有する印捺物が得られることから、ポリエステル樹脂と下記のイソシアネート基含有の化合物との合計含有量は、処理液組成物の総量に対して、固形分換算で、3質量%以上10質量%以下であることが更に好ましい。
1.2.第3級アミン
処理液組成物は、第3級アミンを含む。第3級アミンの含有量は、処理液組成物の総量に対して、1質量%以上5質量%以下である。
処理液組成物中において、ポリエステル樹脂とイソシアネート基含有の化合物と共に、第3級アミンを特定量で用いることで、優れた摩擦堅牢性、洗濯堅牢性、及び発色性と共に、良好な風合い性を有する印捺物を得ることができる。
処理液組成物の保存安定性により優れ、より優れた摩擦堅牢性、洗濯堅牢性、及び発色性と共に、一層良好な風合い性を有する印捺物が得られることから、第3級アミンとしては、水酸基を有することが好ましい。水酸基を有する第3級アミンを用いると、処理液組成物中において、ポリエステル樹脂とイソシアネート基含有の化合物との硬化反応が比較的進み難くなるため、処理液組成物の保存安定性に優れる傾向にある。
より優れた摩擦堅牢性、洗濯堅牢性、及び発色性と共に、一層良好な風合い性を有する印捺物が得られることから、第3級アミンとしては、その標準沸点が340℃以下であることが好ましい。標準沸点が340℃以下である第3級アミンを用いることで、印捺物に第3級アミンが残存し難くなるため、更に優れた摩擦堅牢性が得られる傾向にある。印捺物に第3級アミンがより残存し難くなり、更に一層優れた摩擦堅牢性が得られ、より優れた洗濯堅牢性、及び発色性と共に、一層良好な風合い性を有する印捺物が得られることから、標準沸点の上限としては、300℃以下であることがより好ましく、200℃以下であることが更に好ましく、100℃以下であることが更により好ましい。標準沸点の下限としては、より優れた摩擦堅牢性、洗濯堅牢性、及び発色性と共に、一層良好な風合い性を有する印捺物が得られることから、50℃以上であることが好ましい。本明細書において、標準沸点とは、1気圧における沸点を意味する。
より優れた摩擦堅牢性、洗濯堅牢性、及び発色性と共に、より良好な風合い性を有する印捺物が得られることから、第3級アミンとしては、式(1)で表される化合物が好ましい。
1-N(R2)-R3・・・(1)
式(1)中、R1、R2、及びR3は、各々独立に、炭素数1以上10以下の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、炭素数1以上10以下の直鎖状又は分岐鎖状のヒドロキシアルキル基、若しくは炭素数1以上10以下の直鎖状又は分岐鎖状のアルコキシ基を示す。R1、R2、及びR3は、本発明の作用効果を阻害しない範囲において、ハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。
より一層優れた摩擦堅牢性、洗濯堅牢性、及び発色性と共に、より一層良好な風合い性を有する印捺物が得られることから、炭素数1以上10以下の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基としては、炭素数1以上6以下の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましく、炭素数1以上4以下の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基がより好ましい。このようなアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、n-へプチル基、n-オクチル基、n-エチルヘキシル基、n-ノニル基、及びn-デシル基が挙げられる。
より一層優れた摩擦堅牢性、洗濯堅牢性、及び発色性と共に、より一層良好な風合い性を有する印捺物が得られることから、炭素数1以上10以下の直鎖状又は分岐鎖状のヒドロキシアルキル基としては、炭素数1以上6以下の直鎖状又は分岐鎖状のヒドロキシアルキル基が好ましく、炭素数1以上4以下の直鎖状又は分岐鎖状のヒドロキシアルキル基がより好ましい。このようなヒドロキシアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、ヒドロキシペンチル基、ヒドロキシヘキシル基、ヒドロキシヘプチル基、ヒドロキシオクチル基、ヒドロキシブチル基、ヒドロキシペンチル基、ヒドロキシヘキシル基、ヒドロキシヘプチル基、及びヒドロキシオクチル基が挙げられる。
より一層優れた摩擦堅牢性、洗濯堅牢性、及び発色性と共に、より一層良好な風合い性を有する印捺物が得られることから、炭素数1以上10以下の直鎖状又は分岐鎖状のアルコキシ基としては、炭素数1以上6以下の直鎖状又は分岐鎖状のアルコキシ基が好ましく、炭素数1以上4以下の直鎖状又は分岐鎖状のアルコキシ基がより好ましい。このようなアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、n-ヘキサノキシ基、及び2-メチルプロポキシ基が挙げられる。
式(1)で表される化合物としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ-n-ブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジエチル-n-ブチルアミン、メチルジ-n-ブチルアミン、及びメチルエチル-n-ブチルアミン等のトリアルキルアミン;N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン、N,N-ジプロピルエタノールアミン、及びN,N-ジブチルエタノールアミン等のN,N-ジアルキルアルカノールアミン;N-メチルジエタノールアミン、N-プロピルジエタノールアミン、N-ブチルジエタノールアミン、及びN-メチルジプロパノールアミン等のN-アルキルジアルカノールアミン;トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、及びトリブタノールアミン等のトリアルカノールアミンが挙げられる。
更に一層優れた摩擦堅牢性、洗濯堅牢性、及び発色性と共に、更に一層良好な風合い性を有する印捺物が得られることから、式(1)で表される化合物としては、トリアルキルアミン及びトリアルカノールアミンからなる群より選ばれる1種以上であることが好ましく、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、及びトリエチルアミンからなる群より選ばれる1種以上であることがより好ましい。
式(1)で表される化合物としては、トリアルキルアミンであることが好ましく、トリエチルアミンであることがより好ましい。それらの第3級アミンは、印捺物に残存し難くいため、それらの第3級アミンを用いることで、更により一層優れた摩擦堅牢性が得られる傾向にある。
式(1)で表される化合物としては、トリアルカノールアミンであることが好ましく、トリエタノールアミン及びトリイソプロパノールアミンからなる群より選ばれる1種以上であることがより好ましい。それらの第3級アミンを用いると、処理液組成物中において、ポリエステル樹脂とイソシアネート基含有の化合物との硬化反応をより好適に抑制することが可能となるため、処理液組成物の保存安定性に一層優れる傾向にある。
第3級アミンは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
より優れた洗濯堅牢性を有し、より優れた摩擦堅牢性、及び発色性と共に、良好な風合い性を有する印捺物が得られることから、第3級アミンの含有量は、処理液組成物の総量に対して、1質量%以上3質量%以下であることが好ましい。
より優れた摩擦堅牢性、洗濯堅牢性、及び発色性と共に、良好な風合い性を有する印捺物が得られることから、下記のイソシアネート基含有の化合物の含有量に対する、第3級アミンの質量比は、0.3以上5以下であることが好ましく、1以上5以下であることがより好ましい。
1.3.架橋剤
処理液組成物は、架橋剤としてイソシアネート基含有の化合物を含む。
処理液組成物において、イソシアネート基含有の化合物を、特定量の第3級アミンと共に含むことで、イソシアネート基含有の化合物は、ポリエステル樹脂及び布帛と適度に架橋し、ポリエステル樹脂及び布帛とを好適に結着することが可能となる。そのため、優れた摩擦堅牢性、洗濯堅牢性、及び発色性と共に、良好な風合い性を有する印捺物を得ることができる。
架橋剤であるイソシアネート基含有の化合物としては、公知の架橋剤から適宜選択して用いることができ、常温で架橋反応を開始するものであってもよく、熱により架橋反応を開始するものであってもよい。このような化合物としては、例えば、自己架橋性を有する架橋剤、不飽和カルボン酸成分と反応する官能基を分子内に複数個有する化合物、及び多価の配位座を有する金属等が挙げられる。
イソシアネート基含有の化合物としては、例えば、水分散型(ブロック)ポリイソシアネート等が挙げられる。なお、(ブロック)ポリイソシアネートとは、ポリイソシアネート及び/又はブロックポリイソシアネートを意味する。
水分散型ポリイソシアネートとしては、例えば、ポリエチレンオキシド鎖によって親水性が付与されたポリイソシアネートをアニオン性分散剤又はノニオン性分散剤で水に分散させたものが挙げられる。
ポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のジイソシアネート;それらのジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ビューレット体、及びイソシアヌレート体等のポリイソシアネートの誘導体(変性物)が挙げられる。また、ポリイソシアネートは、その構造中にイソシアヌレート骨格を有していてもよい。それらのポリイソシアネートは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
水分散型ブロックポリイソシアネートは、水分散型ポリイソシアネートのイソシアネート基をブロック化剤でブロックさせたものである。ブロック化剤としては、例えば、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、ε-カプロラクタム、ブタノンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、1,2,4-トリアゾール、ジメチル-1,2,4-トリアゾール、3,5-ジメチルピラゾール、及びイミダゾールが挙げられる。それらのブロック化剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
イソシアネート基含有の化合物としては、構造中にイソシアヌレート骨格を有することが好ましく、構造中にイソシアヌレート骨格を有する水分散型ポリイソシアネートであることがより好ましい。イソシアヌレート骨格を有するイソシアネート基含有の化合物は、少なくとも架橋点が3つあるため、ポリエステル樹脂と布帛との結着性をより好適なものとすることができる傾向にある。そのため、より優れた摩擦堅牢性及び洗濯堅牢性、及び発色性と共に、より良好な風合い性を有する印捺物を得ることができる傾向にある。
このようなイソシアネート基含有の架橋剤としては、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、フィキサー#100ECO、#104EA、#220、70ECO、#70、#410、及び#400(以上、商品名、(株)村山化学研究所);エラストロン(登録商標)BN-11、BN-27、BN-69、及びBN-77(以上、商品名、第一工業製薬(株))が挙げられる。
イソシアネート基含有の化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
より優れた洗濯堅牢性を有し、より優れた摩擦堅牢性、及び発色性と共に、より一層良好な風合い性を有する印捺物が得られることから、イソシアネート基含有の化合物の含有量は、処理液組成物の総量に対して、固形分換算で、1質量%以上3質量%以下であることが好ましい。
1.4.水
処理液組成物は、水を含む。
水は、処理液組成物を布帛に付着させた後に、乾燥によって蒸発飛散する。水としては、例えば、イオン交換水、限外ろ過水、逆浸透水、及び蒸留水等の純水、並びに超純水のようなイオン性不純物を極力除去したものが挙げられる。また、紫外線照射や過酸化水素の添加等によって滅菌した水は、処理液組成物を長期間保存する場合に、カビやバクテリアの発生を抑制することができるため、好ましい。
水の含有量は、処理液組成物の総量に対して、30質量%以上98質量%以下であり、35質量%以上96質量%以下であることが好ましく、40質量%以上94質量%以下であることがより好ましい。水の含有量を上記の範囲とすることにより、処理液の粘度の増大を抑えて、処理液を布帛に付着させる際の作業性、及び付着させた後の乾燥性を向上させることができる。
布帛、好ましく水酸基を有する繊維を含む布帛に対して、より高い親和性と、より高い安全性が得られることから、処理液組成物は、水系の処理液組成物であることが好ましい。なお、本実施形態において、「水系」とは、組成物の総量に対する水の含有量が、30質量%以上であることを称する。
1.5.その他の成分
処理液組成物には、界面活性剤、溶解助剤、粘度調整剤、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤、防かび剤、腐食防止剤、及びキレート化剤等の種々の添加剤を含んでもよい。
添加剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
添加剤の含有量は、処理液組成物の総量に対して、例えば、それぞれ0.01質量%以上5.0質量%以下である。
1.6.処理液組成物の調製方法
処理液組成物は、各成分を任意の順序で混合し、必要に応じてろ過等を実施して不純物や異物等を除去することで調製することができる。各成分の混合方法としては、メカニカルスターラー、及びマグネティックスターラー等の撹拌装置を備えた容器に、各成分を順次添加して撹拌、及び混合する方法が用いられる。ろ過方法としては、遠心ろ過、及びフィルターろ過等が挙げられる。
1.7.処理液組成物の物性
処理液組成物の物性は、布帛の種類や、布帛へ付着させる方法、すなわち、塗布方法等によって、任意に調節される。処理液組成物の塗布方法は、後述する。
1.7.1.粘度
処理液組成物の20℃における粘度は、1.5mPa・s以上100mPa・s以下とすることが好ましい。処理液の粘度を上記の範囲とすることにより、布帛に付着させた際の、処理液の広がりやすさ等の塗工性を向上させることができる。
なお、処理液組成物の粘度は、例えば、粘弾性試験機MCR-300(Pysica社)を用いて測定する。具体的には、処理液組成物の温度を20℃に調整し、せん断速度200(1/s)におけるせん断粘度(mPa・s)を読み取ることにより測定することができる。
1.7.2.表面張力
処理液組成物の25℃における表面張力は、30mN/m以上50mN/m以下とすることが好ましい。処理液組成物の25℃における表面張力を上記の範囲とすることにより、布帛に対して適度な濡れ性や浸透性が発現する。また、処理液組成物が布帛に均一に吸収され易くなるため、処理液組成物を塗布する際に生じる付着量の濃淡差、すなわち、塗布ムラの発生を抑制することができる。
なお、処理液組成物の表面張力は、例えば、自動表面張力計CBVP-Z(協和界面科学社)を用いて測定することができる。具体的には、25℃の環境下にて、白金プレートを処理液組成物で濡らしたときの表面張力を読み取ることにより、測定することができる。
2.インクジェットインク組成物
インクジェットインク組成物(以下、「インク組成物」とも称する。)は、本実施形態の処理液組成物を付着させた布帛に捺染をし、印捺物を製造するために用いられる。次に、インク組成物について説明する。
本実施形態に係るインク組成物は、分散染料と、水と含む。
2.1.分散染料
処理液組成物を付着させた布帛に対して、優れた発色性が得られることから、インク組成物には、染料として分散染料を含む。分散染料は、通常、粒子状を形成しており、分散媒中に分散剤によって分散する色材である。また、分散染料は、通常、親水性基及び適度の極性基を持つ非イオン染料である。分散染料は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
分散染料としては、例えば、C.I.ディスパースイエロー、C.I.ディスパースレッド、C.I.ディスパースブルー、C.I.ディスパースオレンジ、C.I.ディスパースバイオレット、C.I.ディスパースグリーン、C.I.ディスパースブラウン、及びC.I.ディスパースブラックが挙げられる。
それらの中でも、分散剤としては、昇華性染料が好ましい。ここで、「昇華性染料」とは、加熱により昇華する性質を有する染料をいう。
そのような昇華性染料として、具体的には、C.I.ディスパースイエロー3、7、8、23、39、51、54、60、71、及び86;C.I.ディスパースオレンジ1、1:1、5、20、25、25:1、33、56、及び76;C.I.ディスパースブラウン2;C.I.ディスパースレッド11、50、53、55、55:1、59、60、65、70、75、93、146、158、190、190:1、207、239、及び240;C.I.バットレッド41;C.I.ディスパースバイオレット8、17、23、27、28、29、36、及び57;C.I.ディスパースブルー14、19、26、26:1、35、55、56、58、64、64:1、72、72:1、81、81:1、91、95、108、131、141、145、及び359;C.I.ソルベントブルー36、63、105、及び111等が挙げられる。
本実施形態においては、処理液組成物が付着した布帛に対して、より良好な染色性が得られ、十分な発色性を有する印捺物が得られることから、シアン染料、レッド染料、及びイエロー染料が好ましい。更に良好な染色性が得られ、十分な発色性を有する印捺物が得られることから、シアン染料としては、C.I.ディスパースブルー359がより好ましい。レッド染料としては、C.I.ディスパースレッド60がより好ましい。イエロー染料としては、C.I.ディスパースイエロー54がより好ましい。
本実施形態の作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、色材の含有量は、インク組成物の総量に対して、0.05質量%以上20質量%以下であることが好ましい。
2.2.水
インク組成物は、水を含む。
水としては、好ましい態様も含めて、上記の処理液組成物に含まれる水を参照することができる。
本実施形態の作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、水の含有量は、インク組成物の総量に対して、30質量%以上80質量%以下であることが好ましい。
2.3.分散剤
インク組成物は、分散剤を含んでもよい。
インク組成物は、分散剤を含むと、分散染料の分散性が優れ、インク組成物の耐目詰まり性が優れる。分散剤としては、例えば、ナフタレンスルホン酸ナトリウム・ホルマリン縮合物、及び樹脂が挙げられる。ナフタレンスルホン酸ナトリウム・ホルマリン縮合物は、分子中にナフタレン環を有するスルホン化物をホルマリン縮合して得られる化合物、又はその塩である。分散剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
より良好な分散性を有することから、分散剤としては、樹脂を含むことが好ましい。樹脂としては、例えば、ウレタン系樹脂、スチレンアクリル系樹脂、アクリル系樹脂、フルオレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ロジン変性樹脂、テルペン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、及びエチレン酢酸ビニル系樹脂が挙げられる。それらの中でも、耐目詰まり性に優れる点から、樹脂としては、ウレタン系樹脂、及びスチレンアクリル系樹脂が好ましく、スチレンアクリル系樹脂がより好ましい。
ウレタン系樹脂としては、分子内にウレタン結合を有する樹脂であれば特に限定されない。ウレタン系樹脂としては、ウレタン結合以外に、主鎖にエーテル結合を含むポリエーテル型ウレタン樹脂、主鎖にエステル結合を含むポリエステル型ウレタン樹脂、及び主鎖にカーボネート結合を含むポリカーボネート型ウレタン樹脂が挙げられる。ウレタン系樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ウレタン系樹脂としては、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、例えば、三井化学(株)製のタケラック(登録商標)W6110(商品名)、大成ファインケミカル(株)製のアクリット(登録商標)WBR-022U(商品名)、三洋化成工業(株)製の、パーマリン(登録商標)UX-368T(商品名)、ユープレン(登録商標)UXA-307(商品名)、及びユーコート(登録商標)UWS-145(商品名)、並びにルーブリゾール社製のソルスバース(登録商標)47000(商品名)が挙げられる。
スチレンアクリル系樹脂としては、例えば、スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-アクリル酸共重合体、及びスチレン-α-メチルスチレン-アクリル酸-アクリル酸エステル共重合体が挙げられる。それらの共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、及びグラフト共重合体のいずれの形態を有してもよい。
スチレンアクリル系樹脂としては、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、例えば、BASFジャパン(株)製のジョンクリル(登録商標)67(商品名)、及びルーブリゾール社製のソルスバース(登録商標)43000(商品名)が挙げられる。
本実施形態の作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、分散剤の含有量は、インク組成物の総量に対して、3.0質量%以上8.0質量%以下であることが好ましい。
2.4.界面活性剤
インク組成物は、界面活性剤を含んでもよい。
界面活性剤としては、例えば、アセチレングリコール系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、及びシリコーン系界面活性剤が挙げられる。界面活性剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール及びそのアルキレンオキサイド付加物、並びに2,4-ジメチル-5-デシン-4-オール及びそのアルキレンオキサイド付加物が挙げられる。
アセチレングリコール系界面活性剤としては、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、日信化学工業(株)製の、オルフィン(登録商標)104シリーズ(商品名)、及びEシリーズ(商品名)、並びにエアープロダクツアンドケミカルスインコーポレッド製のサーフィノール(登録商標)シリーズ(商品名)が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルベタイン、及びパーフルオロアルキルアミンオキサイド化合物が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、旭硝子(株)製の、S-144(商品名)、及びS-145(商品名)が挙げられる。
シリコーン系界面活性剤としては、ポリシロキサン系化合物、及びポリエーテル変性オルガノシロキサンが挙げられる。
シリコーン系界面活性剤としては、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、ビックケミー・ジャパン(株)製のBYK(登録商標)シリーズの、306、307、333、341、345、346、347、348、及び349(以上、商品名)が挙げられる。
本実施形態の作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、界面活性剤の含有量は、インク組成物の総量に対して、0.5質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。
2.5.水溶性有機溶剤
インク組成物は、水溶性有機溶剤を含んでもよい。
水溶性有機溶剤としては、例えば、グリセリン;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、及び1,6-ヘキサンジオールのようなグリコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、及びメチルトリグルコールのようなグリコールモノエーテル類;2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、及びN-エチル-2-ピロリドンのような含窒素溶剤;メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、iso-プロピルアルコール、n-ブタノール、2-ブタノール、tert-ブタノール、iso-ブタノール、n-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、及びtert-ペンタノールのようなアルコール類が挙げられる。
水溶性有機溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態の作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、水溶性有機溶剤の含有量は、インク組成物の総量に対して、5質量%以上30質量%以下であることが好ましい。
2.6.その他の成分
インク組成物は、溶解助剤、粘度調整剤、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤、防かび剤、腐食防止剤、及び分散に影響を与える金属イオンを捕獲するためのキレート化剤等の、種々の添加剤を含んでもよい。
添加剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
防腐剤としては、ペンタクロロフェノールナトリウム、2-ピリジンチオール-1-オキサイドナトリウム、及び1,2-ジベンジンチアゾリン-3-オンが挙げられる。
防腐剤としては、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、ロンザジャパン社製のプロキセル(登録商標)シリーズの、CRL、BND、GXL、XL-2、及びTN(以上、商品名)が挙げられる。防腐剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
添加剤の含有量は、インク組成物の総量に対して、それぞれ0.01質量%以上5.0質量%以下である。
2.7.インク組成物の製造方法
インク組成物は、分散染料と、水と、必要に応じてその他の成分とを、任意の順序で混合し、必要に応じてろ過等を実施して不純物や異物等を除去することで調製することができる。各成分の混合方法としては、メカニカルスターラー、及びマグネティックスターラー等の撹拌装置を備えた容器に、各成分を順次添加して撹拌、及び混合する方法が用いられる。ろ過方法としては、遠心ろ過、及びフィルターろ過等が挙げられる。
また、インク組成物中において、分散染料をより良好に分散させるために、予め、染料分散剤を調製し、分散染料の代わりに、染料分散剤を用いてインク組成物を調製してもよい。染料分散剤は、例えば、分散染料と、水と、分散剤とを、任意の順序で混合し、ペイントシェーカー等により分散させることで得ることができる。
3.組成物セット
組成物セットは、上記の処理液組成物と、上記のインク組成物と、を備える。
本実施形態では、予め、処理液組成物を布帛に付着させて、処理液組成物が付着した布帛を得る。そして、処理液組成物が付着した布帛に対して、インク組成物により捺染をすることで、優れた摩擦堅牢性、洗濯堅牢性、及び発色性と共に、良好な風合い性を有する印捺物を得ることができる。
4.布帛
本実施形態に係る布帛としては、例えば、綿、麻、羊毛、皮革、及び絹等の天然繊維;ポリプロピレン、ポリエステル、アセテート、トリアセテート、ポリアミド、アクリル、及びポリウレタン等の合成繊維;ポリ乳酸等の生分解性繊維等が挙げられる。また、布帛としては、それらの混紡繊維であってもよい。
より優れた摩擦堅牢性、洗濯堅牢性、及び発色性を有し、良好な風合い性を有する印捺物が得られることから、布帛としては、水酸基を有する繊維を含むことが好ましく、綿であることがより好ましい。水酸基を有する繊維としては、それらの混紡繊維であってもよい。
布帛の形態としては、例えば、織物、編物、不織布、布地、並びに衣類及びその他の服飾品が挙げられる。衣類及びその他の服飾品には、縫製後のTシャツ、ハンカチ、スカーフ、タオル、手提げ袋、布製のバッグ、カーテン、シーツ、ベッドカバー、及び壁紙等のファーニチャー類;縫製前の部品としての裁断前後の布地は挙げられる。それらの形態としては、ロール状に巻かれた長尺のもの、所定の大きさに切断されたもの、及び製品形状のものが挙げられる。なお、布帛は、処理液組成物が付着していればよく、布帛として予め処理液組成物を付与したものを用いてもよい。
布帛の目付としては、例えば、1.0oz以上10.0oz以下であることが好ましい。布帛の目付がこのような範囲であれば、良好な記録を行うことができる。
布帛としては、染料によって予め着色された布帛を用いてもよい。処理液組成物は、処理痕が発生し難いため、予め着色された布帛であっても用いることができる。すなわち、生地が着色されていても、処理痕の発生を抑えた捺染をすることが可能であることから、製品としての印捺物の品質や商品価値を従来よりも高めることができる。
布帛が予め着色される染料としては、例えば、酸性染料、及び塩基性染料等の水溶性染料;分散剤を併用する分散染料;反応性染料;溶剤染料等が挙げられる。布帛として綿布帛を用いる場合、綿の染色に適した分散染料及び反応性染料を用いることが好ましく、分散染料がより好ましい。
5.捺染方法
本実施形態の捺染方法は、処理液組成物を布帛に付着させる、処理液組成物付着工程を含む。
本工程を経ることで、処理液組成物が付着した布帛が得られる。また、この布帛にインク組成物を付着させることで、優れた摩擦堅牢性、洗濯堅牢性、及び発色性と共に、良好な風合い性を有する印捺物が得られる。
捺染方法は、上記の処理液組成物付着工程の後に、処理液組成物が付着した布帛にインク組成物を付着させる、インク組成物付着工程を含むことが好ましい。なお、布帛に付着させるインク組成物は、分散染料を含めば特に限定されず、例えば、本実施形態に係るインクジェットインク組成物を用いることができる。また、インク組成物付着工程については、後述のインクジェット法を用いた捺染方法を参照できる。
捺染方法は、種々の布帛に適用することができ、良好な印捺を行うことができる。
布帛における処理液組成物の付着量は、例えば、0.02g/cm2以上0.5g/cm2以下となるように付着させることが好ましく、0.02g/cm2以上0.3g/cm2以下となるように付着させることがより好ましい。処理液組成物の付着量を上記範囲とすることで、布帛に対して処理液組成物を一層均一に付着でき、印捺物における画像の凝集ムラを更に抑制でき、発色を高めることができる。
処理液組成物を布帛に付着させる方法としては、例えば、処理液組成物中に布帛を浸漬させる浸漬塗布方法、処理液組成物をマングルローラー及びロールコーター等で塗布するローラ塗布方法、処理液組成物をスプレー装置等によって噴射するスプレー塗布方法、及び処理液組成物をインクジェット法により噴射するインクジェット塗布方法が挙げられる。それらの塗布方法は、1つの方法を単独で用いて、処理液組成物を布帛に付着させてもよく、2つの方法以上を組み合わせて、処理液組成物を布帛に付着させてもよい。
本実施形態においては、処理液組成物の付着量の設計自由度が高まり、付着時の不具合を生じ難く、均一に布帛に処理液組成物を付着させることができることから、マングルローラー及びロールコーター等のローラを用いて、処理液組成物を布帛に付着させることが好ましい。
捺染方法では、処理液組成物を布帛に付着させる処理液組成物付着工程の後、布帛に付着させた処理液組成物を乾燥する乾燥工程を含み、前記乾燥工程における乾燥温度が、処理液組成物に含まれる第3級アミンの標準沸点以上の温度であることが好ましい。処理液組成物の乾燥は、自然乾燥で行ってもよいが、布帛への処理液組成物の付着量が向上し、かつ、乾燥速度も向上する点から、加熱を伴う乾燥であることが好ましい。
乾燥温度として、第3級アミンの標準沸点以上であると、印捺物に第3級アミンが残存し難くなるため、より一層優れた摩擦堅牢性を有する印捺物が得られる傾向にある。乾燥温度は、例えば、300℃以下とすることが好ましく、200℃以下とすることがより好ましい。これにより、布帛が染料で予め着色されていても、加熱乾燥による染料の昇華を抑えて、布帛の生地色の退色を抑制することができる。また、加熱温度の下限は、処理液組成物に含まれる水分等の媒体が揮発すればよく、例えば、50℃以上であることが好ましく、100℃以上とすることがより好ましく、110℃以上とすることが更に好ましい。
加熱方法としては、例えば、ヒートプレス法、常圧スチーム法、高圧スチーム法、及びサーモフィックス法が挙げられる。また、加熱の熱源としては、例えば、赤外線(ランプ)が挙げられる。
捺染方法では、処理液組成物を布帛に付着させた後、必要に応じて、洗浄工程を含んでもよい。捺染方法が本工程を含むことで、布帛に付着していない処理液組成物に含まれる成分を除去することができる。
6.インクジェット捺染方法
インクジェット捺染方法は、インクジェット法を用いて、処理液組成物が付着した布帛に対して、インク組成物を付着する方法である。インクジェット法を採用することにより、微細なパターンの染色部も容易かつ確実に形成することができる。また、種々の布帛に適用することができ、良好な印捺を行うことができる。インクジェット捺染方法により、厚みのある生地に対しても、表裏色差が小さい良好な印捺を行うことができる。インクジェット捺染方法としては、例えば、間接捺染記録方法、及び直接捺染記録方法が挙げられる。
6.1.インクジェット記録装置
捺染方法に用いるインクジェット記録装置としては、インク組成物を収容するインク収容体、及びこれに接続される記録ヘッドを少なくとも有し、インク組成物を記録ヘッドから吐出して、処理液組成物が付着した布帛、又は中間転写媒体である転写紙に画像を形成することができれば特に限定されない。また、インクジェット記録装置としては、シリアル型、及びライン型のいずれでも使用することができる。それらの型のインクジェット記録装置には記録ヘッドが搭載されており、布帛又は転写紙と、記録ヘッドとの相対的な位置関係を変化させながら、記録ヘッドのノズル孔からインク組成物の液滴を所定のタイミングで、間欠的にかつ所定の体積で吐出する。これにより、布帛又は転写紙に、インク組成物を付着させて、所定の転写画像を形成することができる。
一般に、シリアル型のインクジェット記録装置では、記録媒体の搬送方向と、記録ヘッドの往復動作の方向が交差しており、記録ヘッドの往復動作と記録媒体の搬送動作との組み合わせによって、記録媒体と記録ヘッドとの相対的な位置関係を変化させる。またこの場合、一般的には、記録ヘッドには複数のノズル孔が配置され、記録媒体の搬送方向に沿ってノズル孔の列、すなわちノズル列が形成されている。また、記録ヘッドには、インク組成物の種類や数に応じて、複数のノズル列が形成される場合もある。
また、一般に、ライン型のインクジェット記録装置では、記録ヘッドは往復動作を行わず、記録媒体の搬送によって記録媒体と記録ヘッドとの相対的な位置関係を変化させて、記録媒体と記録ヘッドとの相対的な位置関係を変化させる。この場合においても、一般的には、記録ヘッドには、ノズル孔が複数配置され、記録媒体の搬送方向に交差する方向に沿ってノズル列が形成されている。
6.2.間接捺染記録方法
本実施形態のインクジェット捺染方法は、処理液組成物を布帛に付着させる、処理液組成物付着工程と、インク組成物を記録ヘッドから吐出して中間転写媒体に付着させる吐出工程と、中間転写媒体に付着したインク組成物を、処理液組成物付着工程により得られた処理液組成物が付着した布帛に転写させる転写工程と、を含む。具体的には、この捺染方法では、昇華性染料等の分散染料を含むインク組成物を、記録ヘッドである液体噴射ヘッドで吐出して中間転写媒体に付着させ、中間転写媒体のインク組成物が付着された面と、処理液組成物が付着した布帛面と、を対向させた状態で加熱し、インク組成物に含まれる分散染料を、処理液組成物が付着した布帛に転写させる。本実施形態において、このような捺染方法を間接捺染記録方法とも称する。この捺染方法であれば、布帛の形態に限定されず、良好に印捺することができる。
6.2.1.処理液組成物付着工程
処理液組成物付着工程については、上記の捺染方法を参照できる。
6.2.2.吐出工程
吐出工程では、加熱したインク組成物を液体噴射ヘッドから吐出して中間転写媒体に付着させる。具体的には、圧力発生手段を駆動させて、液体噴射ヘッドの圧力発生室内に充填されたインク組成物をノズルから吐出させる。
中間転写媒体としては、例えば、普通紙等の紙、及びインク受容層が設けられた記録媒体等を用いることができる。上記のインク受容層が設けられた記録媒体は、例えば、インクジェット用専用紙、及びコート紙等で呼称される。それらの中では、シリカ等の無機粒子を含有するインク受容層が設けられた紙がより好ましい。これにより、中間転写媒体に付与されたインク組成物が乾燥する過程で、記録面に滲み等が抑制された中間記録物を得ることができる。また、このような媒体であれば、さらに記録面の表面に分散染料を留めやすく、後の転写工程において、分散染料の昇華をより効率的に行うことができる。
本工程では、複数種のインク組成物を用いてもよい。これにより、例えば、表現することのできる色域をより広いものとすることができる。その複数種のインク組成物のうち1種が本実施形態のインク組成物であってもよく、2種以上が本実施形態のインク組成物であってもよい。
6.2.3.転写工程
転写工程は、中間転写媒体のインク組成物が付着した面と、処理液組成物が付着した布帛面と、を対向させた状態で加熱し、インク組成物に含まれる分散染料を、処理液組成物が付着した布帛に転写させる工程である。これにより、分散染料が転写され、インク組成物が付着した布帛である印捺物が得られる。
本工程では、インク組成物が付与された中間転写媒体を、処理液組成物が付着した布帛と対向させた状態で加熱すればよい。本工程では、中間転写媒体と処理液組成物が付着した布帛とを密着させた状態で加熱することがより好ましい。これにより、例えば、より鮮明な画像を処理液組成物が付着した布帛に記録する、すなわち染色することができる。
加熱方法としては、例えば、蒸気によるスチーミング、乾熱によるヒートプレス、サーモゾル、過熱蒸気によるHTスチーマー、並びに加圧蒸気によるHPスチーマーが挙げられる。インク組成物が付与された布帛に対して、直ちに加熱処理が施されてもよく、所定時間経過後に加熱処理が施されてもよい。優れた摩擦堅牢性、洗濯堅牢性、及び発色性と共に、良好な風合い性を有する印捺物が得られることから、加熱方法としては、乾熱が好ましい。
加熱温度は、160℃以上220℃以下であることが好ましく、190℃以上210℃以下であることがより好ましい。加熱温度が上記範囲内にあることで、転写に要するエネルギーをより少なくすることができ、印捺物の生産性により優れる傾向にある。また、印捺物の発色性がより優れる傾向にある。
加熱時間は、加熱温度にもよるが、30秒以上120秒以下が好ましく、40秒以上90秒以下がより好ましい。加熱時間が上記範囲内であることにより、転写に要するエネルギーをより少なくすることができ、印捺物の生産性により優れる傾向にある。また、印捺物の発色性がより優れる傾向にある。
転写により、布帛に付着するインク組成物の付着量は、例えば、布帛の単位面積当たり、1.5mg/cm2以上6.0mg/cm2以下であることが好ましい。インク組成物の付着量が、上記の範囲にあることにより、捺染をすることによって形成される画像等の発色性が向上すると共に、布帛に付着したインクの乾燥性が確保されて、画像等のにじみの発生が低減される。
6.2.4.その他の工程
本方法では、必要に応じて、中間処理工程、及び後処理工程を含んでいてもよい。
中間処理工程としては、例えば、処理液組成物が付着した布帛を予備加熱する工程が挙げられる。
後処理工程としては、例えば、印捺物を洗浄する工程が挙げられる。
6.2.直接捺染記録方法
インクジェット捺染方法は、処理液組成物を布帛に付着させる、処理液組成物付着工程と、インク組成物を記録ヘッドから吐出して、インク組成物を、処理液組成物付着工程により得られた処理液組成物が付着した布帛に付着させる、インク組成物付着工程と、を含んでもよい。本実施形態において、このような捺染方法を直接捺染記録方法とも称する。この捺染方法であれば、微細なパターンの染色部も容易かつ確実に形成することができる。また、中間転写媒体等の版を用いる必要がないため、オンデマンド性に優れ、少量生産、及び多品目生産に好適に対応することができる。
6.2.1.処理液組成物が付着した布帛を得る工程
処理液組成物付着工程については、上記の捺染方法を参照できる。
6.2.2.インク組成物付着工程
インク組成物付着工程では、処理液組成物が付着した布帛に、インク組成物を付着する。また、インク組成物付着工程では、インク組成物が付着した領域上に、インク組成物を更に付着する工程を含んでもよい。
インク組成物付着工程において、布帛への最大の付着量は、50mg/cm2以上200mg/cm2以下であることが好ましく、80mg/cm2以上150mg/cm2以下であることがより好ましい。最大の付着量が上記範囲にある場合、発色性がより良好となる。また、画像の摩擦堅牢性も優れたものとなり、凝集ムラが目立たない傾向にある。
本工程では、処理液組成物が付着した布帛に、インク組成物を付着する際に、加熱することが好ましい。これにより、例えば、より鮮明な画像を処理液組成物が付着した布帛に記録する、すなわち染色することができる。
加熱方法としては、例えば、ヒートプレス法、常圧スチーム法、高圧スチーム法、及びサーモフィックス法が挙げられる。また、加熱の熱源としては、例えば、温風、赤外線、及びマイクロウェーブ等が挙げられる。
加熱において、加熱された布帛の表面温度が、60℃以上180℃以下であることが好ましい。表面温度が上記範囲内にあることで、インクジェットヘッドや布帛のダメージを低減できると共に、インクが布帛へ均一に濡れ広がりやすく、浸透しやすくなる。なお、表面温度は、例えば、非接触温度計(商品名「IT2-80」、株式会社キーエンス製)を用いて測定することができる。
加熱時間としては、例えば、5秒以上5分以下とすることが好ましい。加熱時間が上記範囲にあることにより、インクジェットヘッドや布帛のダメージを低減しつつ、布帛を充分に加熱することが可能となる。
6.2.3.その他の工程
本方法では、必要に応じて、中間処理工程、及び後処理工程を含んでいてもよい。それらの工程については、上記の間接捺染記録方法におけるその他の工程を参照できる。
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
1.染料捺染用処理液組成物
1.1.染料捺染用処理液組成物の調製
〔実施例1~9、及び比較例1~6〕
表1に記載の組成となるように、混合物用タンクに各成分を入れ、混合攪拌し、さらに5μmのメンブランフィルターでろ過することにより、処理液組成物をそれぞれ得た。
なお、表1における各成分の配合量の数値は、質量%を表す。ポリエステル樹脂及び架橋剤の配合量は、固形分換算で算出した配合量(質量%)を表す。ポリエステル樹脂における「Tg」は、ガラス転移温度(℃)を表す。アミンにおける「b.p.」は、1気圧における標準沸点(℃)を表す。「ポリエステル樹脂とアミンとの合計含有量」は、処理液組成物中の、ポリエステル樹脂の固形分換算で算出した含有量(質量%)と、アミンの含有量(質量%)との合計量(質量%)を表す。「架橋剤の含有量に対する、アミンの含有量の質量比」は、処理液組成物中の、架橋剤の固形分換算で算出した含有量(質量%)に対する、アミンの含有量(質量%)の質量比を表す。
また、表1に示す各成分は、以下のとおりである。
(ポリエステル樹脂)
・KT-8803…エリテール(登録商標)KT-8803(商品名、ユニチカ(株)、固形分量:30質量%)
(アミン)
・トリエタノールアミン(第3級アミン、標準沸点:335℃)
・トリエチルアミン(第3級アミン、標準沸点:89.7℃)
・ジエタノールアミン(第2級アミン、標準沸点:217℃)
(架橋剤)
・#220…フィキサー#220(商品名、(株)村山化学研究所、構造中にイソシアヌレート骨格を有するイソシアネート基含有の化合物、固形分量:40質量%)
・WS-500…エポクロス(登録商標)WS-500(商品名、(株)日本触媒、オキサゾリン基含有の化合物、固形分量:39質量%)
1.2.染料捺染用処理液組成物の評価
〔保存安定性〕
実施例1~9、及び比較例1~6で得られた染料捺染用処理液組成物を、室温で7日間放置した。その後、得られた処理液組成物のそれぞれを目視で観察し、以下の評価基準に従って、処理液組成物を評価した。それらの結果を表1に示す。
(評価基準)
A:処理液組成物中において、固形分の分離が観察されなかった。
B:処理液組成物中において、固形分の分離が観察された。
Figure 2023119177000002
2.インクジェットインク組成物の調製
〔Cインク〕
表2に記載の組成となるように、混合物用タンクに各成分を入れ、スターラーで2時間混合攪拌した。その後、孔径1μmのメンブランフィルターでろ過することにより、インク組成物としてCインクを得た。なお、表2における各成分の数値は、質量%を表す。
また、表2に示す各成分は、以下のとおりである。
(染料分散剤)
・Disperse Blue 359:C.I.ディスパースブルー359(市販品)
(水溶性有機溶剤)
・プロピレングリコール
・グリセリン
・メチルトリグルコール
(界面活性剤〕
・BYK(R)-348:BYK(登録商標)-348(商品名、シリコーン系界面活性剤、ビックケミー・ジャパン(株)製)
Figure 2023119177000003
3.印捺物の作製
3.1.処理液組成物が付着した布帛の作製
(実施例1~9、及び比較例1~6)
実施例1~9、及び比較例1~6のそれぞれの処理液組成物を用いて、処理液組成物を布帛に付着させた。具体的には、次のようにして、処理液組成物が付着した布帛を得た。
布帛として、白色の綿ブレード#4000(商品名、東洋紡株式会社製)に、処理液組成物を浸漬させ、絞り率が80%となるようにマングルローラーにて、処理液組成物を布帛に塗布した。その後、140℃で2分間乾燥させた後、更に170℃で1分間乾燥させて、処理液組成物が付着した布帛をそれぞれ得た。
なお、絞り率(S)は、次の式(2)により算出した。
S(%)=〔(A-B)/B〕×100・・・(2)
なお、式(2)において、Sは、絞り率(%)を、Aは、処理液組成物が付着した布帛の質量を、Bは、処理液組成物が付着する前の布帛の質量を、それぞれ示す。
3.2.インク組成物が付着した中間記録媒体の作製
(実施例1~9、及び比較例1~6)
Cインクを、インクジェットプリンターPX-G930(商品名、セイコーエプソン(株)製)のカートリッジに充填した。その後、中間転写媒体としてコート紙(TRANSJET Sportline1254(商品名)、Chem Paper社製)のコート層が設けられた面に、720dpi×720dpiの解像度で、かつ100%Dutyのインク吐出量の場合におけるインク打ち込み量が12mg/inch2の条件で、付着させて、塗り潰しパターンを有する画像を形成した。これにより、インク組成物が付着した中間記録媒体を得た。
3.3.捺染
(実施例1~9、及び比較例1~6)
上記で得られたインク組成物が付着した中間記録媒体の画像が形成された面を、上記で得られた処理液組成物が付着した布帛(綿ブレード)のそれぞれに、ヒートプレス機TP-608M(商品名、太陽精機(株)製)を用いて、温度200℃、圧力4.2N/cm3、及び60秒間の条件で熱転写し、Cインクが付着した布帛である印捺物をそれぞれ得た。
4.捺染物の評価
4.1.摩擦堅牢性
前記の捺染にて得られた実施例1~9、及び比較例1~6における印捺物のそれぞれに対して、JIS L0849における「摩擦に対する染色堅ろう度試験方法」に規定される湿潤試験に準拠して、以下の評価基準で摩擦堅牢性を評価した。なお、試験はクロックメータ法により行った。評価はJIS L0849で引用される、JIS L0801の箇条10(染色堅ろう度の判定)により視感法で汚染等級を判定することにより行った。それらの結果を表3に示す。C評価以上の場合、良好な効果が得られているということができる。
(評価基準)
A:摩擦堅牢性が4級を超える。
B:摩擦堅牢性が3-4級(中間等級)以上4級以下である。
C:摩擦堅牢性が2-3級(中間等級)以上3級以下である。
D:摩擦堅牢性が1-2級(中間等級)以上2級以下である。
E:摩擦堅牢性が1級以下である。
4.2.洗濯堅牢性
前記の捺染にて得られた実施例1~9、及び比較例1~6における印捺物に対して、JIS L0844(洗濯に対する染色堅ろう度試験方法)のA-2法に準拠して、洗濯堅牢性試験を実施した。具体的には、一般家庭用洗濯洗剤(蛍光増白剤フリー)を用いて、家庭用洗濯機(ZABOON(商品名)、(株)東芝製)にて、前記の捺染にて得られた実施例1~9、及び比較例1~6における印捺物をそれぞれ洗濯し、すすぎ、脱水、乾燥した後に、印捺物の変退色を判定した。変退色は、JIS L0804:2004(ISO 105-C10(B2))の変退色グレースケールに従って、退色の程度を以下の評価基準に従って評価した。それらの結果を表3に示す。C評価以上の場合、良好な効果が得られているということができる。
(評価基準)
A:洗濯堅牢性が5級以上である。
B:洗濯堅牢性が4級以上5級未満である。
C:洗濯堅牢性が3級以上4級未満である。
D:洗濯堅牢性が2級以上3級未満である。
E:洗濯堅牢性が2級未満である。
4.3.発色性
前記の捺染にて得られた実施例1~9、及び比較例1~6における印捺物のそれぞれを25℃の室温にて3日間放置した。その後、蛍光分光濃度計FD-7(商品名、コニカミノルタ(株)製)を用いて、下記の測定条件、及び25℃の室温にて、放置後の印捺物のそれぞれにおける、Cインクに対する発色濃度(OD値)を測定した。
(測定条件)
・観測光源:D65
・観測視野:2°
・ステータス:T
・偏光フィルター:非装着
その後、実施例1~9、及び比較例2~6におけるそれぞれの印捺物に対するOD値と、比較例1における印捺物に対するOD値とを対比して、以下の評価基準に従って、Cインクに対する発色性を評価した。それらの結果を表3に示す。
(評価基準)
A:比較例1における印捺物に対するOD値と比較して、OD値が220%以上であった。
B:比較例1における印捺物に対するOD値と比較して、OD値が150%以上220%未満であった。
C:比較例1における印捺物に対するOD値と比較して、OD値が100%以上150%未満であった。
D:比較例1における印捺物に対するOD値と比較して、OD値が50%以上100%未満であった。
E:比較例1における印捺物に対するOD値と比較して、OD値が50%未満であった。
4.4.風合い性
前記の捺染にて得られた実施例1~13、及び比較例1~5における印捺物のそれぞれの風合い性を官能試験にて評価した。具体的には、得られた印捺物について、判定員が、以下の基準に従って、その感触を官能評価し、風合い性を評価した。それらの結果を表3に示す。なお、E評価のものであっても実使用には耐えうるものであった。
(評価基準)
A:印捺物が柔らかく、布帛本来の手触性と遜色がない
B:印捺物は柔らかいが、少しごわついた感触が認められる。
C:印捺物がやや硬く、少しごわついた感触が認められる。
D:印捺物が硬く、少しごわついた感触が認められる。
E:印捺物が硬く、顕著にごわついた感触が認められる。
Figure 2023119177000004
表1に示すように、本実施形態の処理液組成物を布帛に付着させ、処理液組成物が付着した布帛に対して捺染をすることで、優れた摩擦堅牢性、洗濯堅牢性、及び発色性と共に、良好な風合い性を有する印捺物が得られることがわかった。
実施例1と、実施例2との対比から、第3級アミンの含有量が、処理液組成物の総量に対して、1質量%以上3質量%以下の範囲にあると、より優れた洗濯堅牢性を有する印捺物が得られることがわかった。
実施例2と、実施例4との対比から、標準沸点が比較的低い第3級アミンを用いると、印捺物に第3級アミンが残存し難くなり、一層優れた摩擦堅牢性を有する印捺物が得られることがわかった。
実施例1と実施例3との対比、及び実施例2と実施例4との対比から、水酸基を有する第3級アミンを用いることで、処理液組成物の保存安定性により優れる印捺物が得られることがわかった。
実施例8と、実施例7及び実施例9との対比から、ポリエステル樹脂の含有量が、処理液組成物の総量に対して、固形分換算で、2質量%以上20質量%以下の範囲にあると、一層優れた摩擦堅牢性、洗濯堅牢性、及び発色性を有する印捺物が得られることがわかった。
実施例8と、実施例7及び9との対比から、ポリエステル樹脂とイソシアネート基含有の化合物との合計含有量の含有量が、処理液組成物の総量に対して、固形分換算で、3質量%以上23質量%以下の範囲にあると、一層優れた摩擦堅牢性、洗濯堅牢性、及び発色性を有する印捺物が得られることがわかった。
実施例5と、実施例6との対比から、ポリエステル樹脂とイソシアネート基含有の化合物との合計含有量の含有量が、処理液組成物の総量に対して、固形分換算で、3質量%以上10質量%以下の範囲にあると、一層良好な風合い性を有する印捺物が得られることがわかった。
実施例5と、実施例6との対比から、イソシアネート基含有の化合物の含有量が、処理液組成物の総量に対して、固形分換算で、1質量%以上3質量%以下の範囲にあると、一層良好な風合い性を有する印捺物が得られることがわかった。
実施例1及び2と、比較例5及び6との対比から、イソシアネート基含有の化合物の含有量に対する、第3級アミンの質量比が0.3以上5以下の範囲にあると、より優れた摩擦堅牢性、洗濯堅牢性、及び発色性と共に、良好な風合い性を有する印捺物が得られることがわかった。

Claims (15)

  1. 布帛に付着させて用いる処理液組成物であって、
    ポリエステル樹脂と、第3級アミンと、架橋剤としてイソシアネート基含有の化合物と、水と、を含み、
    前記第3級アミンの含有量が、前記処理液組成物の総量に対して、1質量%以上5質量%以下である、染料捺染用処理液組成物。
  2. 前記第3級アミンが水酸基を有する、請求項1に記載の染料捺染用処理液組成物。
  3. 前記第3級アミンの標準沸点が340℃以下である、請求項1又は2に記載の染料捺染用処理液組成物。
  4. 前記イソシアネート基含有の化合物が、構造中にイソシアヌレート骨格を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の染料捺染用処理液組成物。
  5. 前記ポリエステル樹脂の含有量が、前記処理液組成物の総量に対して、固形分換算で、2質量%以上20質量%以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の染料捺染用処理液組成物。
  6. 前記イソシアネート基含有の化合物の含有量が、前記処理液組成物の総量に対して、固形分換算で、1質量%以上3質量%以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の染料捺染用処理液組成物。
  7. 前記ポリエステル樹脂と前記イソシアネート基含有の化合物との合計含有量が、前記処理液組成物の総量に対して、固形分換算で、3質量%以上23質量%以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載の染料捺染用処理液組成物。
  8. 前記第3級アミンが、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、及びトリエチルアミンからなる群より選ばれる1種以上である、請求項1~7のいずれか一項に記載の染料捺染用処理液組成物。
  9. 前記イソシアネート基含有の化合物の含有量に対する、前記第3級アミンの含有量の質量比が、0.3以上5以下である、請求項1~8のいずれか一項に記載の染料捺染用処理液組成物。
  10. 前記布帛が、水酸基を有する繊維を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の染料捺染用処理液組成物。
  11. 前記布帛に染料捺染をする前に、前記布帛に付着させるために用いられる、請求項1~10のいずれか一項に記載の染料捺染用処理液組成物。
  12. 請求項1~11のいずれか一項に記載の染料捺染用処理液組成物と、インクジェットインク組成物と、を備え、
    前記インクジェットインク組成物が、分散染料と、水と、を含む、
    組成物セット。
  13. 請求項1~11のいずれか一項に記載の染料捺染用処理液組成物を布帛に付着させる、処理液組成物付着工程を含む、捺染方法。
  14. 前記処理液組成物付着工程の後、前記布帛に付着させた前記処理液組成物を乾燥する乾燥工程を含み、
    前記乾燥工程における乾燥温度が、前記処理液組成物に含まれる第3級アミンの標準沸点以上の温度である、
    請求項13に記載の捺染方法。
  15. 請求項12に記載の組成物セットに備えられる染料捺染用処理液組成物を布帛に付着させる、処理液組成物付着工程と、
    請求項12に記載の組成物セットに備えられるインクジェットインク組成物を記録ヘッドから吐出して中間転写媒体に付着させる吐出工程と、
    前記中間転写媒体に付着した前記インクジェットインク組成物を、前記染料捺染用処理液組成物が付着した前記布帛に転写させる転写工程と、を含む、
    インクジェット捺染方法。
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