JP2023113987A - ポリカーボネート樹脂組成物およびそれからなる成形品 - Google Patents

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Abstract

【課題】メタリック外観、シャルピー衝撃強度および面衝撃特性が改善されたポリカーボネート樹脂組成物を提供する。【解決手段】 (A)ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対し、(B)光輝材(B成分)0.05~3重量部および(C)アクリル系ブロック共重合体(C成分)1~10重量部を含有することを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。【選択図】 なし

Description

本発明はポリカーボネート樹脂組成物に関するものである。さらに詳細には、メタリック外観、シャルピー衝撃強度および面衝撃特性が改善されたポリカーボネート樹脂組成物に関するものである。
ポリカーボネート樹脂は、優れた機械特性、熱特性を有しているため、OA機器分野、電子電気機器分野および自動車分野など様々な分野で広く利用されている。ポリカーボネート樹脂にメタリック外観を付与するため、アルミニウムやマイカなどの光輝材を添加することが知られているが、ポリカーボネート樹脂に光輝材を添加した場合、ポリカーボネート樹脂の優れた耐衝撃性が損なわれるという問題があった。このような問題に対し、特定のスチレン系ブロック共重合体添加により、耐衝撃性が向上することが知られているが(特許文献1参照)、これら組成物は、シャルピー衝撃強度は向上するものの、面衝撃特性の低下もしくは黒スジ状の外観不良が発生するという問題があった。
特開2021-75597号公報
上記に鑑み、本発明の目的はメタリック外観、シャルピー衝撃強度および面衝撃特性が改善されたポリカーボネート樹脂組成物を提供することである。
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、ポリカーボネート樹脂に光輝材およびアクリル系ブロック共重合体を所定量含有させることにより、メタリック外観、シャルピー衝撃強度および面衝撃特性に優れた樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明によれば、上記課題は、(A)ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対し、(B)光輝材(B成分)0.05~3重量部および(C)アクリル系ブロック共重合体(C成分)1~10重量部を含有することを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物により達成される。
以下、本発明の詳細について説明する。
<A成分:ポリカーボネート樹脂>
本発明において使用されるポリカーボネート樹脂は、二価フェノールとカーボネート前駆体とを反応させて得られるものである。反応方法の一例として界面重合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換法、および環状カーボネート化合物の開環重合法などを挙げることができる。
ここで使用される二価フェノールの代表的な例としては、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’-ビフェノール、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールAあるいはBPA)、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、4,4’-(p-フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、4,4’-(m-フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-イソプロピルシクロヘキサン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エステル、ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)スルフィド、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンおよび9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレンなどが挙げられる。好ましい二価フェノールは、ビス(4-ヒドロキシフェニル)アルカンであり、なかでも耐衝撃性の点からビスフェノールAが特に好ましく、汎用されている。
本発明では、汎用のポリカーボネート樹脂であるビスフェノールA系のポリカーボネート樹脂以外にも、他の2価フェノール類を用いて製造した特殊なポリカーボネ-ト樹脂をA成分として使用することが可能である。例えば、2価フェノール成分の一部又は全部として、4,4’-(m-フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール(以下“BPM”と略称することがある)、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(以下“Bis-TMC”と略称することがある)、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン及び9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン(以下“BCF”と略称することがある)を用いたポリカーボネ-ト樹脂(単独重合体又は共重合体)は、吸水による寸法変化や形態安定性の要求が特に厳しい用途に適当である。これらのBPA以外の2価フェノールは、該ポリカーボネート樹脂を構成する2価フェノール成分全体の5モル%以上、特に10モル%以上、使用するのが好ましい。殊に、高剛性かつより良好な耐加水分解性が要求される場合には、樹脂組成物を構成するA成分が次の(1)~(3)の共重合ポリカーボネート樹脂であるのが特に好適である。
(1)該ポリカーボネート樹脂を構成する2価フェノール成分100モル%中、BPMが20~80モル%(より好適には40~75モル%、さらに好適には45~65モル%)であり、かつBCFが20~80モル%(より好適には25~60モル%、さらに好適には35~55モル%)である共重合ポリカーボネート樹脂。
(2)該ポリカーボネートを樹脂構成する2価フェノール成分100モル%中、BPAが10~95モル%(より好適には50~90モル%、さらに好適には60~85モル%)であり、かつBCFが5~90モル%(より好適には10~50モル%、さらに好適には15~40モル%)である共重合ポリカーボネート樹脂。
(3)該ポリカーボネート樹脂を構成する2価フェノール成分100モル%中、BPMが20~80モル%(より好適には40~75モル%、さらに好適には45~65モル%)であり、かつBis-TMCが20~80モル%(より好適には25~60モル%、さらに好適には35~55モル%)である共重合ポリカーボネート樹脂。
これらの特殊なポリカーボネート樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を適宜混合して使用してもよい。また、これらを汎用されているビスフェノールA型のポリカーボネート樹脂と混合して使用することもできる。これらの特殊なポリカーボネート樹脂の製法及び特性については、例えば、特開平6-172508号公報、特開平8-27370号公報、特開2001-55435号公報及び特開2002-117580号公報等に詳しく記載されている。
なお、上述した各種のポリカーボネート樹脂の中でも、共重合組成等を調整して、吸水率及びTg(ガラス転移温度)を下記の範囲内にしたものは、ポリマー自体の耐加水分解性が良好で、かつ成形後の低反り性においても格段に優れているため、形態安定性が要求される分野では特に好適である。
(i)吸水率が0.05~0.15%、好ましくは0.06~0.13%であり、かつTgが120~180℃であるポリカーボネート樹脂、あるいは
(ii)Tgが160~250℃、好ましくは170~230℃であり、かつ吸水率が0.10~0.30%、好ましくは0.13~0.30%、より好ましくは0.14~0.27%であるポリカーボネート樹脂。
ここで、ポリカーボネート樹脂の吸水率は、直径45mm、厚み3.0mmの円板状試験片を用い、ISO62-1980に準拠して23℃の水中に24時間浸漬した後の水分率を測定した値である。また、Tg(ガラス転移温度)は、JIS K7121に準拠した示差走査熱量計(DSC)測定により求められる値である。
カーボネート前駆体としてはカルボニルハライド、炭酸ジエステルまたはハロホルメートなどが使用され、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネートまたは二価フェノールのジハロホルメートなどが挙げられる。
前記二価フェノールとカーボネート前駆体を界面重合法によってポリカーボネート樹脂を製造するに当っては、必要に応じて触媒、末端停止剤、二価フェノールが酸化するのを防止するための酸化防止剤などを使用してもよい。また本発明のポリカーボネート樹脂は三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネート樹脂、芳香族または脂肪族(脂環式を含む)の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネート樹脂、二官能性アルコール(脂環式を含む)を共重合した共重合ポリカーボネート樹脂、並びにかかる二官能性カルボン酸および二官能性アルコールを共に共重合したポリエステルカーボネート樹脂を含む。また、得られた芳香族ポリカーボネート樹脂の2種以上を混合した混合物であってもよい。
分岐ポリカーボネート樹脂は、本発明の樹脂組成物に、ドリップ防止性能などを付与できる。かかる分岐ポリカーボネート樹脂に使用される三官能以上の多官能性芳香族化合物としては、フロログルシン、フロログルシド、または4,6-ジメチル-2,4,6-トリス(4-ヒドロキジフェニル)ヘプテン-2、2,4,6-トリメチル-2,4,6-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1-トリス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,6-ビス(2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェノール、4-{4-[1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン}-α,α-ジメチルベンジルフェノール等のトリスフェノール、テトラ(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,4-ジヒドロキシフェニル)ケトン、1,4-ビス(4,4-ジヒドロキシトリフェニルメチル)ベンゼン、またはトリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸およびこれらの酸クロライド等が挙げられ、中でも1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1-トリス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)エタンが好ましく、特に1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンが好ましい。
分岐ポリカーボネート樹脂における多官能性芳香族化合物から誘導される構成単位は、2価フェノールから誘導される構成単位とかかる多官能性芳香族化合物から誘導される構成単位との合計100モル%中、好ましくは0.01~1モル%、より好ましくは0.05~0.9モル%、さらに好ましくは0.05~0.8モル%である。また、特に溶融エステル交換法の場合、副反応として分岐構造単位が生ずる場合があるが、かかる分岐構造単位量についても、2価フェノールから誘導される構成単位との合計100モル%中、好ましくは0.001~1モル%、より好ましくは0.005~0.9モル%、さらに好ましくは0.01~0.8モル%であるものが好ましい。なお、かかる分岐構造の割合についてはH-NMR測定により算出することが可能である。
脂肪族の二官能性のカルボン酸は、α,ω-ジカルボン酸が好ましい。脂肪族の二官能性のカルボン酸としては例えば、セバシン酸(デカン二酸)、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、オクタデカン二酸、イコサン二酸などの直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸、並びにシクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸が好ましく挙げられる。二官能性アルコールとしては脂環族ジオールがより好適であり、例えばシクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、およびトリシクロデカンジメタノールなどが例示される。
本発明のポリカーボネート樹脂の製造方法である界面重合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマー固相エステル交換法、および環状カーボネート化合物の開環重合法などの反応形式は、各種の文献および特許公報などで良く知られている方法である。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物を製造するにあたり、ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(M)は、特に限定されないが、好ましくは1.8×10~4.0×10であり、より好ましくは2.0×10~3.5×10、さらに好ましくは2.2×10~3.0×10である。粘度平均分子量が1.8×10未満のポリカーボネート樹脂では、良好な機械的特性が得られない場合がある。一方、粘度平均分子量が4.0×10を超えるポリカーボネート樹脂から得られる樹脂組成物は、射出成形時の流動性に劣る点で汎用性に劣る。
なお、前記ポリカーボネート樹脂は、その粘度平均分子量が前記範囲外のものを混合して得られたものであってもよい。殊に、前記範囲(5×10)を超える粘度平均分子量を有するポリカーボネート樹脂は、樹脂のエントロピー弾性が向上する。その結果、強化樹脂材料を構造部材に成形する際に使用されることのあるガスアシスト成形、および発泡成形において、良好な成形加工性を発現する。かかる成形加工性の改善は前記分岐ポリカーボネート樹脂よりもさらに良好である。より好適な態様としては、A成分が粘度平均分子量7×10~3×10のポリカーボネート樹脂(A-1-1成分)、および粘度平均分子量1×10~3×10の芳香族ポリカーボネート樹脂(A-1-2成分)からなり、その粘度平均分子量が1.6×10~3.5×10であるポリカーボネート樹脂(A-1成分)(以下、“高分子量成分含有ポリカーボネート樹脂”と称することがある)も使用できる。
かかる高分子量成分含有ポリカーボネート樹脂(A-1成分)において、A-1-1成分の分子量は7×10~2×10が好ましく、より好ましくは8×10~2×10、さらに好ましくは1×10~2×10、特に好ましくは1×10~1.6×10である。またA-1-2成分の分子量は1×10~2.5×10が好ましく、より好ましくは1.1×10~2.4×10、さらに好ましくは1.2×10~2.4×10、特に好ましくは1.2×10~2.3×10である。
高分子量成分含有ポリカーボネート樹脂(A-1成分)はA-1-1成分とA-1-2成分を種々の割合で混合し、所定の分子量範囲を満足するよう調整して得ることができる。好ましくは、A-1成分100重量%中、A-1-1成分が2~40重量%の場合であり、より好ましくはA-1-1成分が3~30重量%であり、さらに好ましくはA-1-1成分が4~20重量%であり、特に好ましくはA-1-1成分が5~20重量%である。
また、A-1成分の調製方法としては、(1)A-1-1成分とA-1-2成分とを、それぞれ独立に重合しこれらを混合する方法、(2)特開平5-306336号公報に示される方法に代表される、GPC法による分子量分布チャートにおいて複数のポリマーピークを示す芳香族ポリカーボネート樹脂を同一系内において製造する方法を用い、かかる芳香族ポリカーボネート樹脂を本発明のA-1成分の条件を満足するよう製造する方法、および(3)かかる製造方法((2)の製造法)により得られた芳香族ポリカーボネート樹脂と、別途製造されたA-1-1成分および/またはA-1-2成分とを混合する方法などを挙げることができる。
本発明でいう粘度平均分子量は、まず、次式にて算出される比粘度(ηSP)を20℃で塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求め、
比粘度(ηSP)=(t-t)/t
[tは塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
求められた比粘度(ηSP)から次の数式により粘度平均分子量Mを算出する。
ηSP/c=[η]+0.45×[η]c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10-40.83
c=0.7
本発明のポリカーボネート樹脂としてポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂を使用することも出来る。ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂は下記一般式(1)で表される二価フェノールおよび下記一般式(3)で表されるヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサンを共重合させることにより調製される共重合樹脂であることが好ましい。
[上記一般式(1)において、R及びRは夫々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数1~18のアルコキシ基、炭素原子数6~20のシクロアルキル基、炭素原子数6~20のシクロアルコキシ基、炭素原子数2~10のアルケニル基、炭素原子数6~14のアリール基、炭素原子数6~14のアリールオキシ基、炭素原子数7~20のアラルキル基、炭素原子数7~20のアラルキルオキシ基、ニトロ基、アルデヒド基、シアノ基及びカルボキシ基からなる群から選ばれる基を表し、それぞれ複数ある場合はそれらは同一でも異なっていても良く、e及びfは夫々1~4の整数であり、Wは単結合もしくは下記一般式(2)で表される基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基である。]
[上記一般式(2)においてR11,R12,R13,R14,R15,R16,R17及びR18は夫々独立して水素原子、炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数6~14のアリール基及び炭素原子数7~20のアラルキル基からなる群から選ばれる基を表し、R19及びR20は夫々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基、炭素原子数6~20のシクロアルキル基、炭素原子数6~20のシクロアルコキシ基、炭素原子数2~10のアルケニル基、炭素原子数6~14のアリール基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基、炭素原子数7~20のアラルキル基、炭素原子数7~20のアラルキルオキシ基、ニトロ基、アルデヒド基、シアノ基及びカルボキシ基からなる群から選ばれる基を表し、複数ある場合はそれらは同一でも異なっていても良く、gは1~10の整数、hは4~7の整数である。]
[上記一般式(3)において、R、R、R、R、R及びRは、各々独立に水素原子、炭素数1~12のアルキル基又は炭素数6~12の置換若しくは無置換のアリール基であり、R及びR10は夫々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基であり、pは自然数であり、qは0又は自然数であり、p+qは10~300の自然数である。Xは炭素数2~8の二価脂肪族基である。]
一般式(1)で表される二価フェノール(I)としては、例えば、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,3’-ビフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-イソプロピルフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2-ビス(3-ブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエ-テル、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルエ-テル、4,4’-スルホニルジフェノール、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、2,2’-ジメチル-4,4’-スルホニルジフェノール、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルフィド、2,2’-ジフェニル-4,4’-スルホニルジフェノール、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジフェニルジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジフェニルジフェニルスルフィド、1,3-ビス{2-(4-ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼン、1,4-ビス{2-(4-ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼン、1,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,8-ビス(4-ヒドロキシフェニル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、4,4’-(1,3-アダマンタンジイル)ジフェノール、1,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-5,7-ジメチルアダマンタン等が挙げられる。
なかでも、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、4,4’-スルホニルジフェノール、2,2’-ジメチル-4,4’-スルホニルジフェノール、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、1,3-ビス{2-(4-ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼン、1,4-ビス{2-(4-ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼンが好ましく、殊に2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(BPZ)、4,4’-スルホニルジフェノール、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレンが好ましい。中でも強度に優れ、良好な耐久性を有する2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンが最も好適である。また、これらは単独または二種以上組み合わせて用いてもよい。
上記一般式(3)で表されるヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサンとしては、例えば下記に示すような化合物が好適に用いられる。
ヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)は、オレフィン性の不飽和炭素-炭素結合を有するフェノール類、好適にはビニルフェノール、2-アリルフェノール、イソプロペニルフェノール、2-メトキシ-4-アリルフェノールを所定の重合度を有するポリシロキサン鎖の末端に、ハイドロシリレーション反応させることにより容易に製造される。なかでも、(2-アリルフェノール)末端ポリジオルガノシロキサン、(2-メトキシ-4-アリルフェノール)末端ポリジオルガノシロキサンが好ましく、殊に(2-アリルフェノール)末端ポリジメチルシロキサン、(2-メトキシ-4-アリルフェノール)末端ポリジメチルシロキサンが好ましい。ヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)は、その分子量分布(Mw/Mn)が3以下であることが好ましい。さらに優れた高温成形時の低アウトガス性と低温衝撃性を発現させるために、かかる分子量分布(Mw/Mn)はより好ましくは2.5以下であり、さらに好ましくは2以下である。かかる好適な範囲の上限を超えると高温成形時のアウトガス発生量が多く、また、低温衝撃性に劣る場合がある。
また、高度な耐衝撃性を実現するためにヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)のジオルガノシロキサン重合度(p+q)は10~300が適切である。かかるジオルガノシロキサン重合度(p+q)は好ましくは10~200、より好ましくは12~150、更に好ましくは14~100である。かかる好適な範囲の下限未満では、ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合体の特徴である耐衝撃性が有効に発現せず、かかる好適な範囲の上限を超えると外観不良が現れる。
A成分で使用されるポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂全重量に占めるポリジオルガノシロキサン含有量は0.1~50重量%が好ましい。かかるポリジオルガノシロキサン成分含有量はより好ましくは0.5~30重量%、さらに好ましくは1~20重量%である。かかる好適な範囲の下限以上では、耐衝撃性や難燃性に優れ、かかる好適な範囲の上限以下では、成形条件の影響を受けにくい安定した外観が得られやすい。かかるポリジオルガノシロキサン重合度、ポリジオルガノシロキサン含有量は、H-NMR測定により算出することが可能である。
本発明において、ヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)は1種のみを用いてもよく、また、2種以上を用いてもよい。
また、本発明の妨げにならない範囲で、上記二価フェノール(I)、ヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)以外の他のコモノマーを共重合体の全重量に対して10重量%以下の範囲で併用することもできる。
本発明においては、あらかじめ水に不溶性の有機溶媒とアルカリ水溶液との混合液中における二価フェノール(I)と炭酸エステル形成性化合物の反応により末端クロロホルメート基を有するオリゴマーを含む混合溶液を調製する。
二価フェノール(I)のオリゴマーを生成するにあたり、本発明の方法に用いられる二価フェノール(I)の全量を一度にオリゴマーにしてもよく、又は、その一部を後添加モノマーとして後段の界面重縮合反応に反応原料として添加してもよい。後添加モノマーとは、後段の重縮合反応を速やかに進行させるために加えるものであり、必要のない場合には敢えて加える必要はない。
このオリゴマー生成反応の方式は特に限定はされないが、通常、酸結合剤の存在下、溶媒中で行う方式が好適である。
炭酸エステル形成性化合物の使用割合は、反応の化学量論比(当量)を考慮して適宜調整すればよい。また、ホスゲン等のガス状の炭酸エステル形成性化合物を使用する場合、これを反応系に吹き込む方法が好適に採用できる。
前記酸結合剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、ピリジン等の有機塩基あるいはこれらの混合物などが用いられる。酸結合剤の使用割合も、上記同様に、反応の化学量論比(当量)を考慮して適宜定めればよい。具体的には、オリゴマーの形成に使用する二価フェノール(I)のモル数(通常1モルは2当量に相当)に対して2当量若しくはこれより若干過剰量の酸結合剤を用いることが好ましい。
前記溶媒としては、公知のポリカーボネート樹脂の製造に使用されるものなど各種の反応に不活性な溶媒を1種単独であるいは混合溶媒として使用すればよい。代表的な例としては、例えば、キシレン等の炭化水素溶媒、塩化メチレン、クロロベンゼンをはじめとするハロゲン化炭化水素溶媒などが挙げられる。特に塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素溶媒が好適に用いられる。
オリゴマー生成の反応圧力は特に制限はなく、常圧、加圧、減圧のいずれでもよいが、通常常圧下で反応を行うことが有利である。反応温度は-20~50℃の範囲から選ばれ、多くの場合、重合に伴い発熱するので、水冷又は氷冷することが望ましい。反応時間は他の条件に左右され一概に規定できないが、通常、0.2~10時間で行われる。オリゴマー生成反応のpH範囲は、公知の界面反応条件と同様であり、pHは常に10以上に調製される。
本発明はこのようにして、末端クロロホルメート基を有する二価フェノール(I)のオリゴマーを含む混合溶液を得た後、該混合溶液を攪拌しながら分子量分布(Mw/Mn)が3以下まで高度に精製された一般式(3)で表わされるヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)を二価フェノール(I)に加え、該ヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)と該オリゴマーを界面重縮合させることによりポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合体を得る。
(上記一般式(3)において、R、R、R、R、R及びRは、各々独立に水素原子、炭素数1~12のアルキル基又は炭素数6~12の置換若しくは無置換のアリール基であり、R及びR10は夫々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基であり、pは自然数であり、qは0又は自然数であり、p+qは10~300の自然数である。Xは炭素数2~8の二価脂肪族基である。)
界面重縮合反応を行うにあたり、酸結合剤を反応の化学量論比(当量)を考慮して適宜追加してもよい。酸結合剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、ピリジン等の有機塩基あるいはこれらの混合物などが用いられる。具体的には、使用するヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)、又は上記の如く二価フェノール(I)の一部を後添加モノマーとしてこの反応段階に添加する場合には、後添加分の二価フェノール(I)とヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)との合計モル数(通常1モルは2当量に相当)に対して2当量若しくはこれより過剰量のアルカリを用いることが好ましい。
二価フェノール(I)のオリゴマーとヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)との界面重縮合反応による重縮合は、上記混合液を激しく攪拌することにより行われる。
かかる重合反応においては、末端停止剤或いは分子量調節剤が通常使用される。末端停止剤としては一価のフェノール性水酸基を有する化合物が挙げられ、通常のフェノール、p-tert-ブチルフェノール、p-クミルフェノール、トリブロモフェノールなどの他に、長鎖アルキルフェノール、脂肪族カルボン酸クロライド、脂肪族カルボン酸、ヒドロキシ安息香酸アルキルエステル、ヒドロキシフェニルアルキル酸エステル、アルキルエーテルフェノールなどが例示される。その使用量は用いる全ての二価フェノール系化合物100モルに対して、100~0.5モル、好ましくは50~2モルの範囲であり、二種以上の化合物を併用することも当然に可能である。
重縮合反応を促進するために、トリエチルアミンのような第三級アミン又は第四級アンモニウム塩などの触媒を添加してもよい。
かかる重合反応の反応時間は、好ましくは30分以上、更に好ましくは50分以上である。所望に応じ、亜硫酸ナトリウム、ハイドロサルファイドなどの酸化防止剤を少量添加してもよい。
分岐化剤を上記の二価フェノール系化合物と併用して分岐化ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサンとすることができる。かかる分岐ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂に使用される三官能以上の多官能性芳香族化合物としては、フロログルシン、フロログルシド、または4,6-ジメチル-2,4,6-トリス(4-ヒドロキジフェニル)ヘプテン-2、2,4,6-トリメチル-2,4,6-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1-トリス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,6-ビス(2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェノール、4-{4-[1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン}-α,α-ジメチルベンジルフェノール等のトリスフェノール、テトラ(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,4-ジヒドロキシフェニル)ケトン、1,4-ビス(4,4-ジヒドロキシトリフェニルメチル)ベンゼン、またはトリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸およびこれらの酸クロライド等が挙げられ、中でも1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1-トリス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)エタンが好ましく、特に1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンが好ましい。分岐ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂中の多官能性化合物の割合は、ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂全量中、好ましくは0.001~1モル%、より好ましくは0.005~0.9モル%、さらに好ましくは0.01~0.8モル%、特に好ましくは0.05~0.4モル%である。なお、かかる分岐構造量についてはH-NMR測定により算出することが可能である。
反応圧力は、減圧、常圧、加圧のいずれでも可能であるが、通常は、常圧若しくは反応系の自圧程度で好適に行い得る。反応温度は-20~50℃の範囲から選ばれ、多くの場合、重合に伴い発熱するので、水冷又は氷冷することが望ましい。反応時間は反応温度等の他の条件によって異なるので一概に規定はできないが、通常、0.5~10時間で行われる。
場合により、得られたポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂に適宜物理的処理(混合、分画など)及び/又は化学的処理(ポリマー反応、架橋処理、部分分解処理など)を施して所望の還元粘度[ηSP/c]のポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂として取得することもできる。
得られた反応生成物(粗生成物)は公知の分離精製法等の各種の後処理を施して、所望の純度(精製度)のポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂として回収することができる。
ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂成形品中のポリジオルガノシロキサンドメインの平均サイズは、1~40nmの範囲が好ましい。かかる平均サイズはより好ましくは1~30nm、更に好ましくは5~25nmである。かかる好適な範囲の下限未満では、耐衝撃性や難燃性が十分に発揮されず、かかる好適な範囲の上限を超えると耐衝撃性が安定して発揮されない場合がある。これにより耐衝撃性および外観に優れたポリカーボネート樹脂組成物が提供される。
本発明におけるポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂成形品のポリジオルガノシロキサンドメインの平均ドメインサイズ、小角エックス線散乱法(Small Angle X-ray Scattering:SAXS)により評価した。小角エックス線散乱法とは、散乱角(2θ)<10°以内の小角領域で生じる散漫な散乱・回折を測定する方法である。この小角エックス線散乱法では、物質中に1~100nm程度の大きさの電子密度の異なる領域があると、その電子密度差によりエックス線の散漫散乱が計測される。この散乱角と散乱強度に基づいて測定対象物の粒子径を求める。ポリカーボネートポリマーのマトリックス中にポリジオルガノシロキサンドメインが分散した凝集構造となるポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂の場合、ポリカーボネートマトリックスとポリジオルガノシロキサンドメインの電子密度差により、エックス線の散漫散乱が生じる。散乱角(2θ)が10°未満の範囲の各散乱角(2θ)における散乱強度I を測定して、小角エックス線散乱プロファイルを測定し、ポリジオルガノシロキサンドメインが球状ドメインであり、粒径分布のばらつきが存在すると仮定して、仮の粒径と仮の粒径分布モデルから、市販の解析ソフトウェアを用いてシミュレーションを行い、ポリジオルガノシロキサンドメインの平均サイズを求める。小角エックス線散乱法によれば、透過型電子顕微鏡による観察では正確に測定できない、ポリカーボネートポリマーのマトリックス中に分散したポリジオルガノシロキサンドメインの平均サイズを、精度よく、簡便に、再現性良く測定することができる。平均ドメインサイズとは個々のドメインサイズの数平均を意味する。
本発明に関連して用いる用語「平均ドメインサイズ」は、かかる小角エックス線散乱法により、実施例記載の方法で作製した3段型プレートの厚み1.0mm部を測定することにより得られる測定値を示す。また、粒子間相互作用(粒子間干渉)を考慮しない孤立粒子モデルにて解析を行った。
<B成分:光輝材>
本発明のポリカーボネート樹脂組成物はB成分として光輝材を含有する。本発明で使用する光輝材としては、光を反射し、メタリック外観を付与するものであれば特に限定されないが、例えば、アルミニウムなどの金属顔料、マイカおよび金属被覆ガラスが挙げられ、中でもアルミニウムが好ましい。光輝材はそのまま用いることもでき、光輝材を樹脂等に練り込んだマスターバッチであってもよい。
光輝材の形状は、特に限定されるものではないが、コイン状又はフレーク状であることが好ましい。光輝材の粒子径は、特に限定されるものではないが、好ましくは平均粒子径が1~100μmであり、より好ましくは3~50μmである。
B成分の含有量は、A成分100重量部に対し、0.05~3重量部であり、好ましくは0.1~2重量部、より好ましくは0.3~1.5重量部である。B成分の含有量が0.1重量部未満の場合、メタリック外観が得られず、3重量部を超えるとシャルピー衝撃強度および面衝撃特性が低下する。
<C成分:アクリル系ブロック共重合体>
本発明のポリカーボネート樹脂組成物はC成分としてアクリル系ブロック共重合体を含有する。C成分としてアクリル系ブロック共重合体以外のブロック共重合体を使用した場合、面衝撃特性の低下もしくは黒スジ状の外観不良が発生する。本発明で使用するアクリル系ブロック共重合体は、メタクリル酸およびこれらの誘導体を含有する単量体成分を重合して得られる重合体ブロックを1種類以上有する共重合体を主成分とするものであれば特に限定されないが、アクリル酸エステル単量体単位を含む重合体ブロックおよびメタクリル酸エステル単量体単位を含む重合体ブロックを含むアクリル系ブロック共重合体が好ましく、アクリル系ブロック共重合体中のメタクリル酸エステル単量体単位を含む重合体ブロックの含有量が好ましくは25重量%以上、より好ましくは30重量%以上、さらに好ましくは35重量%以上であるアクリル系ブロック共重合体であることがより好ましい。該含有量が25重量%未満の場合、面衝撃特性が低下する場合がある。なお、該含有量の上限は特に限定されないが、60重量%以下であることが好ましい。
アクリル酸エステル単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n-オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ジメチルアミノエチル等のアクリル酸エステルが挙げられる。
メタクリル酸エステル単量体としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸オクタデシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2-エチルヘキシル等のメタクリル酸エステルが挙げられる。
C成分の含有量は、A成分100重量部に対し、1~10重量部であり、好ましくは2~8重量部、より好ましくは3~7重量部である。C成分の含有量が1重量部未満の場合、シャルピー衝撃強度が向上せず、10重量部を超えると面衝撃特性が低下する。
<その他の成分について>
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、リン系安定剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、離型剤、紫外線吸収剤、コアシェル型グラフトポリマー、B成分以外の染顔料(カーボンブラック、酸化チタン等)等を配合することもできる。
(i)リン系安定剤・フェノール系安定剤・その他熱安定剤
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には各種の熱安定剤が配合されることが好ましい。かかる熱安定剤としてリン系安定剤が好適である。リン系安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステル、並びに第3級ホスフィンなどが例示される。かかるリン系安定剤は、1種のみならず2種以上を混合して用いることができる。ホスファイト化合物としては、例えば、トリデシルホスファイトの如きトリアルキルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイトの如きジアルキルモノアリールホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイトの如きモノアルキルジアリールホスファイト、トリフェニルホスファイトおよびトリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイトの如きトリアリールホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、およびビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトなどのペンタエリスリトールホスファイト、並びに2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイトおよび2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイトなどの環状ホスファイトが例示される。ホスフェート化合物としては、トリブチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリエチルホスフェート、ジフェニルクレジルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、およびジイソプロピルホスフェートなどが例示され、好ましくはトリフェニルホスフェート、トリメチルホスフェートである。ホスホナイト化合物としては、テトラキス(ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイト、およびビス(ジ-tert-ブチルフェニル)-フェニル-フェニルホスホナイトが好ましく例示され、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイト、およびビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-フェニル-フェニルホスホナイトがより好ましい。かかるホスホナイト化合物は上記アルキル基が2以上置換したアリール基を有するホスファイト化合物との併用可能であり好ましい。ホスホネイト化合物としては、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、およびベンゼンホスホン酸ジプロピル等が挙げられる。第3級ホスフィンとしては、例えばトリフェニルホスフィンが例示される。
かかるリン系安定剤の含有量は、A成分100重量部に対し、0.001~3.0重量部が好ましく、0.01~2.0重量部がより好ましく、0.05~1.0重量部がさらに好ましい。
ヒンダードフェノール化合物としては、通常樹脂に配合される各種の化合物が使用できる。かかるヒンダードフェノール化合物としては、例えば、α-トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン、シナピルアルコール、ビタミンE、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2-tert-ブチル-6-(3’-tert-ブチル-5’-メチル-2’-ヒドロキシベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2,6-ジ-tert-ブチル-4-(N,N-ジメチルアミノメチル)フェノール、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネートジエチルエステル、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-シクロヘキシルフェノール)、2,2’-ジメチレン-ビス(6-α-メチル-ベンジル-p-クレゾール)、2,2’-エチリデン-ビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2’-ブチリデン-ビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、トリエチレングリコール-N-ビス-3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート、1,6-へキサンジオールビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ビス[2-tert-ブチル-4-メチル6-(3-tert-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシベンジル)フェニル]テレフタレート、3,9-ビス{2-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]-1,1-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-チオビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)スルフィド、4,4’-ジ-チオビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、4,4’-トリ-チオビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2-チオジエチレンビス-[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4-ビス(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、N,N’-ヘキサメチレンビス-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナミド)、N,N’-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス2[3(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチルイソシアヌレート、テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、トリエチレングリコール-N-ビス-3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート、トリエチレングリコール-N-ビス-3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)アセテート、3,9-ビス[2-{3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)アセチルオキシ}-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、テトラキス[メチレン-3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート]メタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)ベンゼン、およびトリス(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)イソシアヌレートなどが例示される。上記化合物の中でも、本発明においてはテトラキス[メチレン-3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート]メタン、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、および3,9-ビス[2-{3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンが好ましく利用される。特に3,9-ビス[2-{3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンが好ましい。上記ヒンダードフェノール化合物は、単独でまたは2種以上を組合せて使用することができる。
ヒンダードフェノール化合物の含有量は、A成分100重量部に対し、0.001~3.0重量部が好ましく、0.01~2.0重量部がより好ましく、0.05~1.0重量部がさらに好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、上記のリン系安定剤およびヒンダードフェノール化合物以外の他の熱安定剤を配合することもできる。かかるその他の熱安定剤は、これらの安定剤および酸化防止剤のいずれかと併用されることが好ましく、特に両者と併用されることが好ましい。かかる他の熱安定剤としては、例えば3-ヒドロキシ-5,7-ジ-tert-ブチル-フラン-2-オンとo-キシレンとの反応生成物に代表されるラクトン系安定剤(かかる安定剤の詳細は特開平7-233160号公報に記載されている)が好適に例示される。かかる化合物はIrganox HP-136(商標、CIBA SPECIALTY CHEMICALS社製)として市販され、該化合物を利用できる。更に該化合物と各種のホスファイト化合物およびヒンダードフェノール化合物を混合した安定剤が市販されている。例えば上記社製のIrganox HP-2921が好適に例示される。本発明においてもかかる予め混合された安定剤を利用することもできる。ラクトン系安定剤の含有量は、A成分100重量部に対し、好ましくは0.0005~0.05重量部、より好ましくは0.001~0.03重量部である。
またその他の安定剤としては、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)、およびグリセロール-3-ステアリルチオプロピオネートなどのイオウ含有安定剤が例示される。かかる安定剤は、樹脂組成物が回転成形に適用される場合に特に有効である。かかるイオウ含有安定剤の含有量は、A成分100重量部に対し、好ましくは0.001~0.1重量部、より好ましくは0.01~0.08重量部である。
(ii)離型剤
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、その成形時の生産性向上や成形品の歪みの低減を目的として、離型剤を配合することができる。かかる離型剤としては公知のものが使用できる。例えば、飽和脂肪酸エステル、不飽和脂肪酸エステル、ポリオレフィン系ワックス(ポリエチレンワックス、1-アルケン重合体など。酸変性などの官能基含有化合物で変性されているものも使用できる)、シリコーン化合物、フッ素化合物(ポリフルオロアルキルエーテルに代表されるフッ素オイルなど)、パラフィンワックス、蜜蝋などを挙げることができる。中でも好ましい離型剤として脂肪酸エステルが挙げられる。かかる脂肪酸エステルは、脂肪族アルコールと脂肪族カルボン酸とのエステルである。かかる脂肪族アルコールは1価アルコールであっても2価以上の多価アルコールであってもよい。また該アルコールの炭素数としては、3~32の範囲、より好適には5~30の範囲である。かかる一価アルコールとしては、例えばドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール、エイコサノール、テトラコサノール、セリルアルコール、およびトリアコンタノールなどが例示される。かかる多価アルコールとしては、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ポリグリセロール(トリグリセロール~ヘキサグリセロール)、ジトリメチロールプロパン、キシリトール、ソルビトール、およびマンニトールなどが挙げられる。本発明の脂肪酸エステルにおいては多価アルコールがより好ましい。一方、脂肪族カルボン酸は炭素数3~32であることが好ましく、特に炭素数10~22の脂肪族カルボン酸が好ましい。該脂肪族カルボン酸としては、例えばデカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸(ステアリン酸)、ノナデカン酸、ベヘン酸、イコサン酸、およびドコサン酸などの飽和脂肪族カルボン酸、並びにパルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エイコセン酸、エイコサペンタエン酸、およびセトレイン酸などの不飽和脂肪族カルボン酸を挙げることができる。上記の中でも脂肪族カルボン酸は、炭素原子数14~20であるものが好ましい。なかでも飽和脂肪族カルボン酸が好ましい。特にステアリン酸およびパルミチン酸が好ましい。ステアリン酸やパルミチン酸など上記の脂肪族カルボン酸は通常、牛脂や豚脂などに代表される動物性油脂およびパーム油やサンフラワー油に代表される植物性油脂などの天然油脂類から製造されるため、これらの脂肪族カルボン酸は、通常炭素原子数の異なる他のカルボン酸成分を含む混合物である。したがって本発明の脂肪酸エステルの製造においてもかかる天然油脂類から製造され、他のカルボン酸成分を含む混合物の形態からなる脂肪族カルボン酸、殊にステアリン酸やパルミチン酸が好ましく使用される。脂肪酸エステルは、部分エステルおよび全エステル(フルエステル)のいずれであってもよい。しかしながら部分エステルでは通常水酸基価が高くなり高温時の樹脂の分解などを誘発しやすいことから、より好適にはフルエステルである。本発明の脂肪酸エステルにおける酸価は、熱安定性の点から好ましく20以下、より好ましくは4~20の範囲、更に好ましくは4~12の範囲である。尚、酸価は実質的に0を取り得る。また脂肪酸エステルの水酸基価は、0.1~30の範囲がより好ましい。更にヨウ素価は、10以下が好ましい。尚、ヨウ素価は実質的に0を取り得る。これらの特性はJIS K 0070に規定された方法により求めることができる。
離型剤の含有量は、A成分100重量部に対し、好ましくは0.01~4.0重量部、より好ましくは0.05~3.0重量部、更に好ましくは0.1~2.5重量部である。
(iii)紫外線吸収剤
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は紫外線吸収剤を含有することができる。ベンゾフェノン系では、例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ベンジロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-5-スルホキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-5-スルホキシトリハイドライドレイトベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシ-5-ソジウムスルホキシベンゾフェノン、ビス(5-ベンゾイル-4-ヒドロキシ-2-メトキシフェニル)メタン、2-ヒドロキシ-4-n-ドデシルオキシベンソフェノン、および2-ヒドロキシ-4-メトキシ-2’-カルボキシベンゾフェノンなどが例示される。ベンゾトリアゾール系では、例えば、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジクミルフェニル)フェニルベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-4-オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2,2’-メチレンビス(4-クミル-6-ベンゾトリアゾールフェニル)、2,2’-p-フェニレンビス(1,3-ベンゾオキサジン-4-オン)、および2-[2-ヒドロキシ-3-(3,4,5,6-テトラヒドロフタルイミドメチル)-5-メチルフェニル]ベンゾトリアゾ-ル、並びに2-(2’-ヒドロキシ-5-メタクリロキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾールと該モノマーと共重合可能なビニル系モノマーとの共重合体や2-(2’―ヒドロキシ-5-アクリロキシエチルフェニル)―2H―ベンゾトリアゾールと該モノマーと共重合可能なビニル系モノマーとの共重合体などの2-ヒドロキシフェニル-2H-ベンゾトリアゾール骨格を有する重合体などが例示される。ヒドロキシフェニルトリアジン系では、例えば、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヘキシルオキシフェノール、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-メチルオキシフェノール、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-エチルオキシフェノール、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-プロピルオキシフェノール、および2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ブチルオキシフェノールなどが例示される。さらに2-(4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヘキシルオキシフェノールなど、上記例示化合物のフェニル基が2,4-ジメチルフェニル基となった化合物が例示される。環状イミノエステル系では、例えば2,2’-p-フェニレンビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、2,2’-(4,4’-ジフェニレン)ビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、および2,2’-(2,6-ナフタレン)ビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)などが例示される。
シアノアクリレート系では、例えば1,3-ビス-[(2’-シアノ-3’,3’-ジフェニルアクリロイル)オキシ]-2,2-ビス[(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル)プロパン、および1,3-ビス-[(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイル)オキシ]ベンゼンなどが例示される。
さらに上記紫外線吸収剤は、ラジカル重合が可能な単量体化合物の構造をとることにより、かかる紫外線吸収性単量体および/またはヒンダードアミン構造を有する光安定性単量体と、アルキル(メタ)アクリレートなどの単量体とを共重合したポリマー型の紫外線吸収剤であってもよい。上記紫外線吸収性単量体としては、(メタ)アクリル酸エステルのエステル置換基中にベンゾトリアゾール骨格、ベンゾフェノン骨格、トリアジン骨格、環状イミノエステル骨格、およびシアノアクリレート骨格を含有する化合物が好適に例示される。
紫外線吸収剤の含有量は、A成分100重量部に対し、好ましくは0.01~2.0重量部、より好ましくは0.02~1.5重量部、さらに好ましくは0.03~1.0重量部である。
(iv)コアシェル型グラフトポリマー
本発明のポリカーボネート樹脂組成物はコアシェル型グラフトポリマーを含有することができる。コアシェル型グラフトポリマーはガラス転移温度が10℃以下のゴム成分をコアとして、芳香族ビニル、シアン化ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、およびこれらと共重合可能なビニル化合物から選択されたモノマーの1種または2種以上をシェルとして共重合されたグラフト共重合体である。
コアシェル型グラフトポリマーのゴム成分としては、ブタジエンゴム、ブタジエン-アクリル複合ゴム、アクリルゴム、アクリル-シリコーン複合ゴム、イソブチレン-シリコーン複合ゴム、イソプレンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、エチレン-プロピレンゴム、ニトリルゴム、エチレン-アクリルゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、フッ素ゴムおよびこれらの不飽和結合部分に水素が添加されたものを挙げることができるが、燃焼時の有害物質の発生懸念という点から、ハロゲン原子を含まないゴム成分が環境負荷の面において好ましい。ゴム成分のガラス転移温度は好ましくは-10℃以下、より好ましくは-30℃以下であり、ゴム成分としては特にブタジエンゴム、ブタジエン-アクリル複合ゴム、アクリルゴム、アクリル-シリコーン複合ゴムが好ましい。複合ゴムとは、2種のゴム成分を共重合したゴムまたは分離できないよう相互に絡み合ったIPN構造をとるように重合したゴムをいう。コアシェル型グラフトポリマーにおいて、そのコアの粒径は重量平均粒子径において0.05~0.8μmが好ましく、0.1~0.6μmがより好ましく、0.15~0.5μmがさらに好ましい。0.05~0.8μmの範囲であればより良好な耐衝撃性が達成される。
ゴム成分にコアシェル型グラフトポリマーのシェルとして共重合するビニル化合物における芳香族ビニルとしては、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、アルコキシスチレン、ハロゲン化スチレン等を挙げることができる。またアクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸オクチル等を挙げることができ、メタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸オクチル等を挙げることができ、メタクリル酸メチルが特に好ましい。これらの中でも特にメタクリル酸メチルなどのメタクリル酸エステルを必須成分として含有することが好ましい。これは、該コアシェル型グラフトポリマーが芳香族ポリカーボネート樹脂との親和性に優れることから、該樹脂中により多くのゴム成分が存在するようになり、芳香族ポリカーボネート樹脂の有する良好な耐衝撃性がより効果的に発揮され、結果として樹脂組成物の耐衝撃性が良好となるためである。より具体的には、メタクリル酸エステルはグラフト成分100重量%中(コアシェル型重合体の場合にはシェル100重量%中)、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上含有されることが好ましい。ガラス転移温度が10℃以下のゴム成分を含有する弾性重合体は、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合のいずれの重合法で製造したものであってもよく、共重合の方式は一段グラフトであっても多段グラフトであっても差し支えない。また製造の際に副生するグラフト成分のみのコポリマーとの混合物であってもよい。さらに重合法としては一般的な乳化重合法の他、過硫酸カリウム等の開始剤を使用するソープフリー重合法、シード重合法、二段階膨潤重合法等を挙げることができる。また懸濁重合法において、水相とモノマー相とを個別に保持して両者を正確に連続式の分散機に供給し、粒子径を分散機の回転数で制御する方法、および連続式の製造方法において分散能を有する水性液体中にモノマー相を数~数十μm径の細径オリフィスまたは多孔質フィルターを通すことにより供給し粒径を制御する方法などを行ってもよい。コアシェル型のグラフト重合体の場合、その反応はコアおよびシェル共に、1段であっても多段であってもよい。
かかる重合体は市販されており容易に入手することが可能である。例えばゴム成分として、ブタジエンゴムを主成分とするものは、(株)カネカ製のカネエースMシリーズ(例えばシェル成分がメチルメタクリレートを主成分とするM-711、シェル成分がメチルメタクリレート・スチレンを主成分とするM-701など)、三菱レイヨン(株)製のメタブレンCシリーズ(例えばシェル成分がメチルメタクリレート・スチレンを主成分とするC-223Aなど)、Eシリーズ(例えばシェル成分がメチルメタクリレート・スチレンを主成分とするE-870Aなど)、DOWケミカル(株)のパラロイドEXLシリーズ(例えばシェル成分がメチルメタクリレートを主成分とするEXL-2620など)が挙げられアクリルゴムまたはブタジエン-アクリル複合ゴムを主成分とするものとしては、Wシリーズ(例えばシェル成分がメチルメタクリレートを主成分とするW-600Aなど)、DOWケミカル(株)のパラロイドEXLシリーズ(例えばシェル成分がメチルメタクリレートを主成分とするEXL-2390など)が挙げられ、ゴム成分としてアクリル-シリコーン複合ゴムを主成分とするものとしては三菱レイヨン(株)製のシェル成分がメチルメタクリレートを主成分とするメタブレンS-2501あるいはシェル成分がアクリロニトリル・スチレンを主成分とするSRK200Aという商品名で市販されているものが挙げられる。
(v)他の樹脂
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、他の樹脂を本発明の効果を発揮する範囲において、少割合使用することもできる。かかる他の樹脂としては、例えばAS樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリメタクリレート樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂等の樹脂が挙げられる。
(vi)B成分以外の染顔料
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は更にB成分以外の各種染顔料を含有し多様な意匠性を発現する成形品を提供できる。蛍光増白剤やそれ以外の発光をする蛍光染料を配合することにより、発光色を生かした更に良好な意匠効果を付与することができる。また微量のカーボンブラックや酸化チタンなどの顔料およびその他染顔料による着色、かつ鮮やかな発色性を有するポリカーボネート樹脂組成物もまた提供可能である。
本発明で使用する蛍光染料(蛍光増白剤を含む)としては、例えば、クマリン系蛍光染料、ベンゾピラン系蛍光染料、ペリレン系蛍光染料、アンスラキノン系蛍光染料、チオインジゴ系蛍光染料、キサンテン系蛍光染料、キサントン系蛍光染料、チオキサンテン系蛍光染料、チオキサントン系蛍光染料、チアジン系蛍光染料、およびジアミノスチルベン系蛍光染料などを挙げることができる。これらの中でも耐熱性が良好でポリカーボネート樹脂の成形加工時における劣化が少ないクマリン系蛍光染料、ベンゾピラン系蛍光染料、およびペリレン系蛍光染料が好適である。
上記ブルーイング剤および蛍光染料以外の染料としては、ペリレン系染料、クマリン系染料、チオインジゴ系染料、アンスラキノン系染料、チオキサントン系染料、紺青等のフェロシアン化物、ペリノン系染料、キノリン系染料、キナクリドン系染料、ジオキサジン系染料、イソインドリノン系染料、およびフタロシアニン系染料などを挙げることができる。
染顔料の含有量は、A成分100重量部に対し、0.00001~1重量部が好ましく、0.00005~0.5重量部がより好ましい。
(vii)難燃剤
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には従来、熱可塑性樹脂、特にポリカーボネート樹脂の難燃剤として知られる各種の化合物を含有することができるが、より好適には、(i)ハロゲン系難燃剤(例えば、臭素化ポリカーボネート化合物など)(ii)リン系難燃剤(例えば、モノホスフェート化合物、ホスフェートオリゴマー化合物ホスホネートオリゴマー化合物、ホスホニトリルオリゴマー化合物、ホスホン酸アミド化合物、およびホスファゼン化合物など)、(iii)金属塩系難燃剤(例えば有機スルホン酸アルカリ(土類)金属塩、ホウ酸金属塩系難燃剤、および錫酸金属塩系難燃剤など)、(iv)シリコーン化合物からなるシリコーン系難燃剤である。尚、難燃剤として使用される化合物の配合は難燃性の向上のみならず、各化合物の性質に基づき、例えば帯電防止性、流動性、剛性、および熱安定性の向上などがもたらされる。
難燃剤の含有量は、A成分100重量部に対し、好ましくは0.01~30重量部であり、より好ましくは0.05~28重量部、さらに好ましくは0.08~25重量部である。難燃剤の含有量が0.01重量部未満の場合、十分な難燃性が得られない場合があり、30重量部を超えた場合、機械特性の低下が大きい場合がある。
(viii)その他の添加剤
その他、本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、成形品に種々の機能の付与や特性改善のために、それ自体知られた添加物を少割合配合することができる。これら添加物は本発明の目的を損なわない限り、通常の配合量である。かかる添加剤としては、摺動剤(例えばPTFE粒子)、光拡散剤(例えばアクリル架橋粒子、シリコン架橋粒子、極薄ガラスフレーク、炭酸カルシウム粒子)、帯電防止剤、結晶核剤、無機および有機の抗菌剤、光触媒系防汚剤(例えば微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛)、ラジカル発生剤、赤外線吸収剤(熱線吸収剤)、およびフォトクロミック剤などが挙げられる。
<ポリカーボネート樹脂組成物の調製方法>
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、上記各成分を同時に、または任意の順序でタンブラー、V型ブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、押出機等の混合機により混合することにより調製する。混合器としては、2軸押出機による溶融混練が好ましく、必要に応じて、任意の成分をサイドフィーダー等を用いて第2供給口より、溶融混合された他の成分中に供給することが好ましい。上記の如く押出された樹脂は、直接切断してペレット化するか、またはストランドを形成した後かかるストランドをペレタイザーで切断してペレット化される。ペレット化に際して外部の埃などの影響を低減する必要がある場合には、押出機周囲の雰囲気を清浄化することが好ましい。得られたペレットの形状は、円柱、角柱、および球状など一般的な形状を取り得るが、より好適には円柱である。かかる円柱の直径は好ましくは1~5mm、より好ましくは1.5~4mm、さらに好ましくは2~3.5mmである。一方、円柱の長さは好ましくは1~30mm、より好ましくは2~5mm、さらに好ましくは2.5~4mmである。
<本発明のポリカーボネート樹脂組成物からなる成形品について>
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、通常上述の方法で得られたペレットを射出成形して各種製品を製造することができる。かかる射出成形においては、通常の成形方法だけでなく、適宜目的に応じて、射出圧縮成形、射出プレス成形、ガスアシスト射出成形、発泡成形(超臨界流体の注入によるものを含む)、インサート成形、インモールドコーティング成形、断熱金型成形、急速加熱冷却金型成形、二色成形、サンドイッチ成形、および超高速射出成形などの射出成形法を用いて成形品を得ることができる。これら各種成形法の利点は既に広く知られるところである。また成形はコールドランナー方式およびホットランナー方式のいずれも選択することができる。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、メタリック外観、シャルピー衝撃強度および面衝撃特性に優れることから、住宅設備用途、建材用途、生活資材用途、インフラ設備用途、自動車用途、OA・EE用途、屋外機器用途、その他の各種分野において幅広く有用である。したがって本発明の奏する産業上の効果は極めて大である。
本発明者が現在最良と考える発明の形態は、上記の各要件の好ましい範囲を集約したものとなるが、例えば、その代表例を下記の実施例中に記載する。もちろん本発明はこれらの形態に限定されるものではない。
以下に実施例をあげて本発明を更に説明する。なお、評価は下記の方法によって実施した。
(i)シャルピー衝撃強度
下記の方法で得られたISO試験片(長さ80mm×幅10mm×厚み4mm)を用いて、温度23℃および相対湿度50%RHの雰囲気下においてISO179に従い、ノッチ付きのシャルピー衝撃強度の測定を実施した。本発明の樹脂組成物はシャルピー衝撃強度を30J/m以上にする必要がある。
(ii)面衝撃特性
下記の方法で得られた3段プレートの厚み2mm部分(長さ45mm×幅50mm×厚み2mm)を用いて、JIS K7211-2に従い、高速パンクチャ―衝撃試験機「ハイドロショットHITS-P10」(島津製作所製)を用い、23℃環境下で打抜き試験速度7m/secで打抜き試験を実施し、破壊形態を目視にて確認した。なお試験は各5回実施し、下記の基準で評価した。評価は延性が最も優れ、次いで延脆性、脆性の順である。
延性:全て延性破壊を示したもの
延脆性:延性破壊と脆性破壊が混在するもの
脆性:全て脆性破壊を示したもの
(iii)成形品外観
下記の方法で得られた角板(長さ150mm×幅150mm×厚み2.5mm)の外観について、目視で評価した。なお、評価は下記の基準で実施した。
○:メタリック外観が確認でき、黒スジ等の外観不良が見られない。
×:メタリック外観が確認できない。もしくは黒スジ等の外観不良が発生している。
[実施例1~15、比較例1~6]
表1の記載成分からなる混合物を押出機の第1供給口から供給した。かかる混合物はV型ブレンダーで混合して得た。押出は径30mmφのベント式二軸押出機((株)日本製鋼所TEX30α-38.5BW-3V)を使用し、スクリュー回転数200rpm、吐出量25kg/h、ベントの真空度3kPaで溶融混練しペレットを得た。なお、押出温度については、第1供給口からダイス部分まで280℃で実施した。得られたペレットは、120℃で5時間熱風循環式乾燥機にて乾燥した後、射出成形機(シリンダー温度280℃、金型温度70℃)を用いて、評価用の試験片(ISO試験片、3段プレート(厚み1mm、2mm、3mm)および角板)をそれぞれ成形した。なお、B成分の含有量は括弧内に示したB-1~B-3に含まれるアルミニウムの量である。(括弧外の数字はB-1~B-3の樹脂組成物中の重量部を表す。)
なお、原料としては以下のものを用いた。
(A成分)
A-1:芳香族ポリカーボネート樹脂(ビスフェノールAとホスゲンから常法によって作られた粘度平均分子量19,800のポリカーボネート樹脂粉末、帝人(株)製 パンライトL-1225WX(製品名))
A-2:芳香族ポリカーボネート樹脂(ビスフェノールAとホスゲンから常法によって作られた粘度平均分子量22,400のポリカーボネート樹脂粉末、帝人(株)製 パンライトL-1225WP(製品名))
A-3:芳香族ポリカーボネート樹脂(ビスフェノールAとホスゲンから常法によって作られた粘度平均分子量25,100のポリカーボネート樹脂粉末、帝人(株)製 パンライトL-1250WQ(製品名))
A-4:ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂(粘度平均分子量19,800、PDMS量8.4%、PDMS重合度37)
(B成分)
B-1:アルミニウム顔料マスターバッチ(ベース樹脂:AS樹脂、アルミニウム比率:50重量%、アルミニウム形状:コイン状、アルミニウム粒子径:30μm、レジノカラー工業(株)製 MHF-A-30CB50(製品名))
B-2:アルミニウム顔料マスターバッチ(ベース樹脂:AS樹脂、アルミニウム比率:50重量%、アルミニウム形状:コイン状、アルミニウム粒子径:20μm、レジノカラー工業(株)製 MHF-A-20CB50(製品名))
B-3:アルミニウム顔料マスターバッチ(ベース樹脂:AS樹脂、アルミニウム比率:50重量%、アルミニウム形状:コイン状、アルミニウム粒子径:5μm、レジノカラー工業(株)製 MHF-A-05CB50(製品名))
(C成分)
C-1:アクリル酸エステル単量体単位を含む重合体ブロックおよびメタクリル酸エステル単量体単位を含む重合体ブロックを含むアクリル系ブロック共重合体(アクリル系ブロック共重合体中のメタクリル酸エステル単量体単位を含む重合体ブロックの含有量:50重量%、(株)クラレ製 クラリティLA4285(製品名))
C-2:アクリル酸エステル単量体単位を含む重合体ブロックおよびメタクリル酸エステル単量体単位を含む重合体ブロックを含むアクリル系ブロック共重合体(アクリル系ブロック共重合体中のメタクリル酸エステル単量体単位を含む重合体ブロックの含有量:40重量%、(株)クラレ製 クラリティLA2270(製品名))
C-3:アクリル酸エステル単量体単位を含む重合体ブロックおよびメタクリル酸エステル単量体単位を含む重合体ブロックを含むアクリル系ブロック共重合体(アクリル系ブロック共重合体中のメタクリル酸エステル単量体単位を含む重合体ブロックの含有量:30重量%、(株)クラレ製 クラリティLA2250(製品名))
C-4:アクリル酸エステル単量体単位を含む重合体ブロックおよびメタクリル酸エステル単量体単位を含む重合体ブロックを含むアクリル系ブロック共重合体(アクリル系ブロック共重合体中のメタクリル酸エステル単量体単位を含む重合体ブロックの含有量:20重量%、(株)クラレ製 クラリティLA2140(製品名))
C-5(比較例):スチレン系ブロック共重合体(旭化成(株)製 タフテックH1052(製品名))
C-6(比較例):変性スチレン系ブロック共重合体(旭化成(株)製 タフテックM1943(製品名))
(その他成分)
D-1:リン系熱安定剤((株)ADEKA製 アデカスタブ2112(製品名))
D-2:ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤((株)ADEKA製 アデカスタブ LA-31(製品名))
上記表より、ポリカーボネート樹脂に光輝材およびアクリル系ブロック共重合体を所定量含有させることにより、メタリック外観、シャルピー衝撃強度および面衝撃特性が改善されたポリカーボネート樹脂組成物を得ることができることが分かる。

Claims (5)

  1. (A)ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対し、(B)光輝材(B成分)0.05~3重量部および(C)アクリル系ブロック共重合体(C成分)1~10重量部を含有することを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
  2. C成分がアクリル酸エステル単量体単位を含む重合体ブロックおよびメタクリル酸エステル単量体単位を含む重合体ブロックを含むアクリル系ブロック共重合体であることを特徴とする請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  3. C成分中のメタクリル酸エステル単量体単位を含む重合体ブロックの含有量が25重量%以上であることを特徴とする請求項2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  4. B成分がアルミニウムであることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  5. 請求項1~4のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物よりなる成形品。
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