JP2023113463A - 冷媒漏洩検知・防止剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】 冷媒漏洩の箇所を検知すると共に、冷媒漏洩を抑制する手段を提供する。【解決手段】 冷媒漏洩検知・防止剤は、(1)含フッ素樹脂粒子と、(2)蛍光剤と、を含む冷凍機油を含み、含フッ素樹脂粒子は2.0μm~10.0μmのD50および4.0~14.0のD90/D10を有し、蛍光剤は、(a)ナフタルイミド化合物、(b)ビフェニル構造またはスチルベン構造を有する炭化水素化合物、(c)クマリン化合物および(d)分子内に、窒素、酸素及び硫黄を有さず、かつ3環以上の縮合環を有する蛍光性の縮合環式化合物から成る群より選択される。【選択図】なし

Description

本開示は、冷媒漏洩検知・防止剤に関する。
冷凍サイクル装置が設置された現場においては、そのような装置から冷媒が漏洩するのを防止すると共に、漏洩している場合には、漏洩箇所を特定して適切な処置を講ずる必要がある。
例えば、冷凍サイクル装置に付属する金属配管において、腐食により配管の内部にまで至る貫通孔のような欠陥が生じた場合、その孔から冷媒が漏洩する。従って、そのような漏洩の検知、漏洩が生じている場合には漏洩箇所を特定してその形状、大きさ等に応じて冷媒の漏洩を防止する必要がある。このように冷媒漏洩を検知して防止する作業は、作業者の経験に基づく勘に依存する側面が大きいため、煩雑かつ困難な作業となっている。装置の規模が大きくなると、配管のサイズが大きくなり、また、配管数が増えるため、冷媒漏洩の検知・防止作業は一層煩雑となる。
特許6791423号公報
上記特許文献1には、冷媒漏洩防止剤が開示されている。そのような冷媒漏洩防止剤を用いて冷媒漏洩を防止するに際して、それだけでは十分に対応できない欠陥が残存する場合であっても、冷媒漏洩の防止作業が完了したものと判断して冷凍サイクル装置の運転を再開すると、その後も引き続いて冷媒漏洩が生じるため、後日別途の冷媒漏洩防止作業を再び行わねばならないという二度手間の対応が必要となることがある。このような状況に鑑み、本開示は、冷媒漏洩の防止機能に加えて、冷媒漏洩を防止できているか否かを確認できる、即ち、冷媒漏洩を検知できる冷媒漏洩防止剤を提供することを課題とする。
本開示は、以下の態様[1]~[6]を含む。
[1] (1)含フッ素樹脂粒子と、
(2)蛍光剤と、
を含む冷凍機油を含み、含フッ素樹脂粒子は2.0μm~10.0μmのD50および4.0~14.0のD90/D10を有する、冷媒漏洩検知・防止剤であって、
蛍光剤は、(a)ナフタルイミド化合物、(b)ビフェニル構造またはスチルベン構造を有する炭化水素化合物、(c)クマリン化合物および(d)分子内に、窒素、酸素及び硫黄を有さず、かつ3環以上の縮合環を有する蛍光性の縮合環式化合物から成る群より選択される少なくとも1種である、冷媒漏洩検知・防止剤。
[2] 含フッ素樹脂粒子の含有量は、冷凍機油100重量部に対して0.1質量部~10質量部である、上記[1]に記載の冷媒漏洩検知・防止剤。
[3] 含フッ素樹脂粒子は、3.0μm~8.0μmの標準偏差を有する、上記[1]または[2]に記載の冷媒漏洩検知・防止剤。
[4] 含フッ素樹脂粒子はポリテトラフルオロエチレン粒子である、上記[1]~[3]のいずれかに記載の冷媒漏洩検知・防止剤。
[5] 上記[1]~[4]のいずれかに記載の冷媒漏洩検知・防止剤と、冷媒を含む冷媒組成物とを含む冷凍機用作動流体を含む、冷凍サイクル装置。
[6] (1)含フッ素樹脂粒子と、
(2)蛍光剤と、
を含む、配管で輸送される流体の漏洩検知・防止剤であって、
含フッ素樹脂粒子は2.0μm~10.0μmのD50および4.0~14.0のD90/D10を有する、漏洩検知・防止剤。
本開示は、冷媒漏洩を防止することに加えて、冷媒漏洩しているか否かを、例えば冷媒漏洩防止作業の後で冷媒漏洩を防止できているか否かを検知できる冷媒漏洩検知・防止剤を提供することができる。
冷凍サイクル装置である空気調和装置が有する冷媒回路の例を模式的に示す図である。
本開示の実施形態を、必要に応じて図面を参照して、以下に詳述するが、本開示はこれらの実施形態に限定されるものではない。
本開示の冷媒漏洩検知・防止剤は、冷凍機油を含み、この冷凍機油は、(1)含フッ素樹脂粒子および(2)蛍光剤を含む。含フッ素樹脂粒子は、2.0μm~10.0μmのD50および4.0~14.0のD90/D10を有する。従って、本開示の冷媒漏洩検知・防止剤は、少なくとも冷凍機油、特定の粒度の特徴を有する含フッ素樹脂粒子および蛍光剤を含む。以下、本開示の冷媒漏洩検知・防止剤に含まれる冷凍機油、樹脂粒子および蛍光剤を説明する。尚、本開示において、蛍光剤は、光(例えば可視光線または紫外線)を照射すると、光を発する、例えば蛍光を発する化合物である。冷凍機油は、冷凍サイクル装置内の潤滑性を高め、例えば冷凍サイクル装置内の圧縮機の潤滑性を高めることができる。
本開示の冷媒漏洩検知・防止剤は、冷媒組成物および冷凍機油を用いる冷凍サイクル装置において使用できる。冷凍サイクル装置は、一般的に、冷媒組成物および冷凍機油を本来的に含む作動流体が循環する冷媒回路を有する。本開示において、「本来的に」は、冷凍サイクル装置がその機能を発揮するために、使用することが予め意図されていることを意味する。即ち、冷凍サイクル装置において使用予定の冷媒組成物および冷凍機油を意味する。また、「冷媒組成物」は、熱の受け渡しの役割を果たす冷媒化合物を含み、冷媒化合物単体であっても、別の態様では、複数の冷媒化合物の混合物であってもよい。冷媒組成物は、冷媒化合物に加えて、(任意成分としての)他の必要な成分を含んでよい。
そのような作動流体は、冷凍サイクル装置に本来的に含まれる冷媒組成物および冷凍機油に加えて、本開示の冷媒漏洩検知・防止剤を含んでよい。例えば図1に示す冷凍サイクル装置が有する冷媒回路を、作動流体と本開示の冷媒漏洩検知・防止剤とが一緒に循環する。この場合、本開示の冷媒漏洩検知・防止剤に含まれる冷凍機油と本来的に含まれる冷凍機油とが同じであっても、あるいは異なってもよい。前者が好ましいが、後者の場合、本開示の冷媒漏洩検知・防止剤に含まれる冷凍機油は、本来的に含まれる冷凍機油に対して相溶性であるのが特に好ましい。
従って、本開示は、上述および後述の本開示の冷媒漏洩検知・防止剤を含む作動流体、ならびにそのような作動流体を含む冷媒回路および冷凍サイクル装置をも提供する。このような作動流体が循環する冷媒回路において、冷媒回路を構成する要素、例えば配管等の壁部に、欠陥部(例えば腐食による貫通孔)が形成されると、作動流体が欠陥部から系外に漏洩する。このような作動流体の漏洩に際しては、それに含まれる冷媒組成物も、結果的に冷媒も漏洩する。本開示において、「冷媒漏洩」は、冷凍サイクル装置の系内から作動流体、冷媒組成物または冷媒化合物等が系外に漏れ出ることを広く意味する。
冷媒漏洩に際して、作動流体中に本開示の冷媒漏洩検知・防止剤に含まれていると、蛍光剤も一緒に漏洩し、欠陥部が開口する、壁部の外側表面付近に付着する。蛍光剤は、例えば紫外線を照射することによって蛍光を発するので、冷媒回路を構成する要素、例えば配管の外壁面等に紫外線を照射すると、欠陥部が開口する、管の外側表面付近が発光するので、冷媒漏洩が生じていることが分かり、発光位置に基づき発行箇所を特定できる。即ち、冷媒漏洩を検知できる。好ましい態様では、発光の状況から開口部の形状、サイズ等の開口部の様子が分かる。その後、検知した漏洩の状況に応じて必要な処置(例えば、配管の交換等)を実施できる。この意味で、本開示において「検知」剤なる用語を使用している。
作動流体中の本開示の冷媒漏洩検知・防止剤に含まれる含フッ素樹脂粒子は欠陥部を形成する空隙に嵌り込むことができ、空隙を埋めようとする。好ましい態様では、そのような空隙を埋めることによって、貫通孔のような欠陥部からの作動流体の漏洩を抑制、好ましくは防止できる。その結果、更なる漏洩を減らし、好ましくは停止できる。
明らかなように、本開示の冷媒漏洩検知・防止剤に含まれる含フッ素樹脂粒子は、粒子の粒度分布と欠陥部の状況(例えば形状、サイズ等)との相関的な関係に応じて、冷媒漏洩をもたらし得る欠陥部の空隙を埋め込んで冷媒漏洩を減らし、好ましくは停止できる。本開示では、この意味で「防止」剤なる用語を使用する。従って、「防止剤」が冷媒漏洩を必ず停止できるという意味ではなく、冷媒漏洩の程度を減らす、即ち、抑制し、特に好ましい態様では、冷媒漏洩を停止できる(即ち、防止できる)ことを意味する。
本開示において、「冷媒漏洩検知・防止剤」なる用語は、欠陥部の状況に応じて、冷媒漏洩の検知機能および防止機能の少なくとも一方、好ましくは双方の機能を発揮できることを意味する。
本開示の1つの態様では、冷凍サイクル装置の作動流体は、本開示の冷媒漏洩検知・防止剤を予め含む。「予め」とは、冷媒サイクル装置の運転に先立って、作動流体が本開示の冷媒漏洩検知・防止剤を含むことを意味する。別の態様では、冷凍サイクル装置の作動流体は、本開示の冷媒漏洩検知・防止剤を事後的に含む。「事後的に」とは、冷凍サイクル装置の運転を開始した後に、一旦運転を止めて、あるいは運転中に、本開示の冷媒漏洩検知・防止剤を冷媒回路に供給して作動流体に混入させることを意味する。
1つの好ましい別の態様では、例えば冷媒漏洩の兆候が認められた場合、本開示の冷媒漏洩検知・防止剤を冷媒回路に注入する。事後の注入は、例えば冷凍サイクル装置の室外ユニットの圧縮機に吸入させることで実施できる。別の態様では、冷凍サイクル装置の運転開始後、冷媒漏洩の兆候が認められなくても、事後的に本開示の冷媒漏洩検知・防止剤を冷媒回路に供給してよい。この態様では、本開示の冷媒漏洩検知・防止剤が予め冷媒回路に含まれているので、貫通開口部の発生とほぼ同時に樹脂粒子が開口部を埋め込む作用が始まる。その結果、冷媒漏洩を迅速に抑制・防止でき、即ち、実質的に予防できる。
<空気調和装置>
図1を参照すると、例えば冷凍サイクル装置である空気調和装置1は冷媒回路10を有する。この冷媒回路10において作動流体が循環する。このような冷凍サイクル装置が例えば冷凍機の場合、物または空間の熱を奪い去ることにより、周囲の外気よりも低い温度にし、かつこの低温を維持できる。言い換えれば、冷凍機は温度の低い方から高い方へ熱を移動させるために、外部からエネルギーを得て仕事を行いエネルギー変換する変換装置である。
空気調和装置1は、蒸気圧縮式の冷凍サイクル運転を行うことによって、室内の冷房および/または暖房に使用される装置である。空気調和装置1は、主として、室外ユニット2と、室内ユニット3と、室外ユニット2と室内ユニット3とを接続する液側冷媒連絡配管9およびガス側冷媒連絡配管8とを備えている。
空気調和装置1が有する冷媒回路10は、圧縮機4、室外熱交換器5、膨張弁6、室内熱交換器7を有しており、これらが液側冷媒連絡配管9、ガス側冷媒連絡配管8、その他の冷媒配管によって接続されることで、上記圧縮式の冷媒回路が構成されている。なお、空気調和装置1は、マイクロコンピュータやメモリ等を有しており、各種アクチュエータを駆動制御するための制御部を有している。
冷媒回路10には、冷媒を含む冷媒組成物と、冷凍機油とを含んだ作動流体が封入され、その中を循環する。
<室内ユニット>
室内ユニット3は、室内の天井面や壁面に設置されており、液側冷媒連絡配管9およびガス側冷媒連絡配管8を介して室外ユニット2に接続されており、冷媒回路10の一部を構成している。なお、室内ユニット3は、冷媒回路10において互いに並列に複数接続されていてもよい。
室内ユニット3は、室内熱交換器7と室内ファン13とを有している。
室内熱交換器7は、特に限定されず、例えば、伝熱管と多数のフィンとにより構成される。室内熱交換器7は、冷房運転時は冷媒の蒸発器として機能して室内空気の冷却を行い、暖房運転時は冷媒の凝縮器として機能して室内空気を暖める。
室内ファン13は、室内ユニット3内に室内空気を吸入して、室内熱交換器7において冷媒と熱交換させた後に、供給空気として室内に供給する空気流れを生じさせる。室内ファン13は、室内ファン用モータMを有している。
<室外ユニット>
室外ユニット2は、室外に設置されており、液側冷媒連絡配管9およびガス側冷媒連絡配管8を介して室内ユニット3に接続されている。
室外ユニット2は、圧縮機4、室外熱交換器5、室外ファン12、膨張弁6、アキュームレータ11、四路切換弁10、液側閉鎖弁14、ガス側閉鎖弁15等を有している。
圧縮機4は、圧縮機用モータMによって駆動される容積式圧縮機等である。圧縮機用モータは、例えば、インバータ装置(図示せず)を介して電力の供給を受けて駆動するものであってもよい。
室外熱交換器5は、特に限定されず、例えば、伝熱管と多数のフィンとにより構成される。室外熱交換器5は、冷房運転時に冷媒の凝縮器として機能し、暖房運転時に冷媒の蒸発器として機能する。
室外ファン12は、室外ユニット2内に室外空気を吸入して、室外熱交換器5において冷媒と熱交換させた後に、室外に排出する空気流れを生じさせる。この室外ファン12は、室外ファン用モータMを有している。
膨張弁6は、弁開度を調節することで、通過する冷媒の圧力を調節することが可能である。
アキュームレータ11は、四路切換弁10から圧縮機4までの間のうち、圧縮機4の吸入側に設けられており、液体状態の冷媒と気体状態の冷媒とを分離する。
四路切換弁10は、接続状態を切り換えることで、圧縮機4の吐出側と室外熱交換器5とを接続しつつアキュームレータ11の下流側とガス側閉鎖弁15とを接続する冷房運転接続状態と、圧縮機4の吐出側とガス側閉鎖弁15とを接続しつつアキュームレータ11の下流側と室外熱交換器5とを接続する暖房運転接続状態と、を切り換えることができる。
液側閉鎖弁14およびガス側閉鎖弁15は、外部の機器・配管(具体的には、液側冷媒連絡配管およびガス側冷媒連絡配管)との接続口に設けられた弁である。
<冷凍サイクル>
空気調和装置1では、冷房運転時には、四路切換弁10が冷房運転接続状態となっており、圧縮機4から吐出された高温高圧冷媒は、冷媒の凝縮器として機能する室外熱交換器5において凝縮し、膨張弁6を通過する際に減圧され、液側冷媒連絡配管9を介して室内ユニット3のガス側に供給される。室内ユニット3に供給された冷媒は、冷媒の蒸発器として機能する室内熱交換器7において蒸発し、ガス側冷媒連絡配管8を介して、室外ユニット2のアキュームレータ11を介して圧縮機4に吸入される。
空気調和装置1では、暖房運転時には、四路切換弁10が暖房運転接続状態となっており、圧縮機4から吐出された高温高圧冷媒は、ガス側冷媒連絡配管8を介して、室内ユニット3のガス側に送られる。室内ユニット3に送られた冷媒は、冷媒の凝縮器として機能する室内熱交換器7において凝縮し、液側冷媒連絡配管9を介して室外ユニット2の膨張弁6に送られる。膨張弁6を通過する際に減圧された冷媒は、冷媒の蒸発器として機能する室外熱交換器5において蒸発し、アキュームレータ11を介して圧縮機4に吸入される。
尚、冷凍サイクル装置としては、特に限定されず、例えば、ルームエアコン、パッケージエアコン、冷蔵庫、自動車用エアコン、給湯器、除湿機、冷凍庫、冷凍冷蔵倉庫、自動販売機、ショーケース、化学プラント等の冷却装置等が挙げられるが、なかでも、密閉型圧縮機を有する冷凍機として特に好ましく用いられる。冷凍機油は、往復動式、回転式、遠心式等の何れの形式の圧縮機にも使用可能である。これらの冷凍機において、冷凍機油は、冷媒組成物と混合された作動流体として用いられる。
次に、本開示の冷媒漏洩検知・防止剤に含まれる各成分((a)冷凍機油、(b)含フッ素樹脂粒子および(c)蛍光剤)を詳細に説明する。
(a)冷凍機油
冷凍機油は、冷媒組成物と共存させて冷凍サイクル等を行わせることで、冷凍サイクル装置内の潤滑性を高めることができ、効率的なサイクル性能を発揮させることもできるものとして冷凍サイクル装置において一般的に使用されている。本開示の冷媒漏洩検知・防止剤に含まれる冷凍機油は、そのように一般的に使用されている冷凍機油と同等の性能を有するのが好ましく、従って、一般的に使用されている冷凍機油であってよい。以下に、本開示の冷媒漏洩検知・防止剤に含まれる冷凍機油(以下、単に「冷凍機油」とも呼ぶ)を詳細に説明する。
冷凍機油として、例えば、含酸素系合成油(エステル系冷凍機油、エーテル系冷凍機油等)、炭化水素系冷凍機油等が挙げられる。なかでも、冷媒または冷媒組成物との相溶性の観点から、エステル系冷凍機油、エーテル系冷凍機油が好ましい。冷凍機油としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
冷凍機油は、潤滑性や圧縮機の密閉性の低下を抑制させること、低温条件下で冷媒に対して相溶性が十分に確保されること、圧縮機の潤滑不良を抑制させること、および蒸発器における熱交換効率を良好にすることの少なくともいずれか1つの観点から、40℃における動粘度が1mm/s以上750mm/s以下であることが好ましく、1mm/s以上400mm/s以下であることがより好ましい。なお、冷凍機油の100℃における動粘度としては、例えば、1mm/s以上100mm/s以下であってよく、1mm/s以上50mm/s以下であることがより好ましい。
冷凍機油は、アニリン点が、-100℃以上0℃以下であることが好ましい。ここで、「アニリン点」は、例えば、炭化水素系溶剤等の溶解性を示す数値であり、試料(ここでは冷凍機油)を等容積のアニリンと混合して冷やしたときに、互いに溶解し合えなくなって濁りが見え始めたときの温度を表すものである(JIS K 2256で規定)。なお、これらの値は、冷媒が溶解しない状態の冷凍機油自体の値である。このようなアニリン点の冷凍機油を用いることで、例えば、樹脂製機能部品を構成する各軸受および電動機の絶縁材料が冷凍機油と接する位置で用いられている場合においても、これらの樹脂製機能部品に対する冷凍機油の適合性を向上させることができる。具体的には、アニリン点が低すぎると、冷凍機油が軸受や絶縁材料に浸透し易くなり、軸受等が膨潤し易くなる。一方、アニリン点が高すぎると、冷凍機油が軸受や絶縁材料に浸透し難くなり、軸受等が収縮し易くなる。そこで、アニリン点が上述した所定の範囲(-100℃以上0℃以下)である冷凍機油を用いることで、軸受や絶縁材料の膨潤/収縮変形を防止することができる。ここで、各軸受が膨潤変形してしまうと、摺動部での隙間(ギャップ)を所望とする長さに維持することができない。その結果、摺動抵抗の増大を招く虞がある。各軸受が収縮変形してしまうと、軸受の硬度が高くなり圧縮機の振動によって軸受が破損する虞がある。つまり、各軸受が収縮変形すると、摺動部の剛性の低下を招く虞がある。また、電動機の絶縁材料(絶縁被服材料や絶縁フィルム等)が膨潤変形してしまうと、その絶縁材料の絶縁性が低下してしまう。絶縁材料が収縮変形してしまうと、上述した軸受の場合と同様に絶縁材料が破損する虞があり、この場合も絶縁性が低下してしまう。これに対して、上記のようにアニリン点が所定の範囲内である冷凍機油を用いることで、軸受や絶縁材料の膨潤/収縮変形を抑制できるため、このような不具合を回避することができる。
(a-1)含酸素系合成油
含酸素系合成油であるエステル系冷凍機油やエーテル系冷凍機油は、主として、炭素原子と酸素原子を有して構成されている。エステル系冷凍機油やエーテル系冷凍機油においては、この炭素原子と酸素原子の比率(炭素/酸素モル比)が小さすぎると吸湿性が高くなり、当該比率が大きすぎると冷媒との相溶性が低下してしまうことから、当該比率はモル比で2以上7.5以下であることが好ましい。
(a-1-1)エステル系冷凍機油
エステル系冷凍機油としては、化学的安定性の観点から、二塩基酸と1価アルコールとの二塩基酸エステル油、ポリオールと脂肪酸とのポリオールエステル油、またはポリオールと多価塩基酸と1価アルコール(又は脂肪酸)とのコンプレックスエステル油、ポリオール炭酸エステル油等が挙げられる。
(二塩基酸エステル油)
二塩基酸エステル油としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の二塩基酸、特に、炭素数5~10の二塩基酸(グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等)と、直鎖または分枝アルキル基を有する炭素数1~15の一価アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール等)とのエステルが好ましい。この二塩基酸エステル油としては、具体的には、グルタル酸ジトリデシル、アジピン酸ジ(2-エチルヘキシル)、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジトリデシル、セバシン酸ジ(3-エチルヘキシル)等が挙げられる。
(ポリオールエステル油)
ポリオールエステル油とは、多価アルコールと脂肪酸(カルボン酸)とから合成されるエステルであり、炭素/酸素モル比が2以上7.5以下、好ましくは3.2以上5.8以下のものである。
ポリオールエステル油を構成する多価アルコールとしては、ジオール(エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、2-エチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,7-ヘプタンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール等)、水酸基を3~20個有するポリオール(トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ジ-(トリメチロールプロパン)、トリ-(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、ジ-(ペンタエリスリトール)、トリ-(ペンタエリスリトール)、グリセリン、ポリグリセリン(グリセリンの2~3量体)、1,3,5-ペンタントリオール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトールなどの多価アルコール、キシロース、アラビノース、リボース、ラムノース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、ソルボース、セロビオース、マルトース、イソマルトース、トレハロース、シュクロース、ラフィノース、ゲンチアノース、メレンジトースなどの糖類、ならびにこれらの部分エーテル化物等)が挙げられ、エステルを構成する多価アルコールとしては、上記の1種でもよく、2種以上が含まれていてもよい。
ポリオールエステル油を構成する脂肪酸としては、特に炭素数は制限されないが、通常炭素数1~24のものが用いられる。直鎖の脂肪酸、分岐を有する脂肪酸が好ましい。直鎖の脂肪酸としては、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等が挙げられ、カルボキシル基に結合する炭化水素基は、全て飽和炭化水素であってもよく、不飽和炭化水素を有していてもよい。分岐を有する脂肪酸としては、2-メチルプロパン酸、2-メチルブタン酸、3-メチルブタン酸、2,2-ジメチルプロパン酸、2-メチルペンタン酸、3-メチルペンタン酸、4-メチルペンタン酸、2,2-ジメチルブタン酸、2,3-ジメチルブタン酸、3,3-ジメチルブタン酸、2-メチルヘキサン酸、3-メチルヘキサン酸、4-メチルヘキサン酸、5-メチルヘキサン酸、2,2-ジメチルペンタン酸、2,3-ジメチルペンタン酸、2,4-ジメチルペンタン酸、3,3-ジメチルペンタン酸、3,4-ジメチルペンタン酸、4,4-ジメチルペンタン酸、2-エチルペンタン酸、3-エチルペンタン酸、2,2,3-トリメチルブタン酸、2,3,3-トリメチルブタン酸、2-エチル-2-メチルブタン酸、2-エチル-3-メチルブタン酸、2-メチルヘプタン酸、3-メチルヘプタン酸、4-メチルヘプタン酸、5-メチルヘプタン酸、6-メチルヘプタン酸、2-エチルヘキサン酸、3-エチルヘキサン酸、4-エチルヘキサン酸、2,2-ジメチルヘキサン酸、2,3-ジメチルヘキサン酸、2,4-ジメチルヘキサン酸、2,5-ジメチルヘキサン酸、3,3-ジメチルヘキサン酸、3,4-ジメチルヘキサン酸、3,5-ジメチルヘキサン酸、4,4-ジメチルヘキサン酸、4,5-ジメチルヘキサン酸、5,5-ジメチルヘキサン酸、2-プロピルペンタン酸、2-メチルオクタン酸、3-メチルオクタン酸、4-メチルオクタン酸、5-メチルオクタン酸、6-メチルオクタン酸、7-メチルオクタン酸、2,2-ジメチルヘプタン酸、2,3-ジメチルヘプタン酸、2,4-ジメチルヘプタン酸、2,5-ジメチルヘプタン酸、2,6-ジメチルヘプタン酸、3,3-ジメチルヘプタン酸、3,4-ジメチルヘプタン酸、3,5-ジメチルヘプタン酸、3,6-ジメチルヘプタン酸、4,4-ジメチルヘプタン酸、4,5-ジメチルヘプタン酸、4,6-ジメチルヘプタン酸、5,5-ジメチルヘプタン酸、5,6-ジメチルヘプタン酸、6,6-ジメチルヘプタン酸、2-メチル-2-エチルヘキサン酸、2-メチル-3-エチルヘキサン酸、2-メチル-4-エチルヘキサン酸、3-メチル-2-エチルヘキサン酸、3-メチル-3-エチルヘキサン酸、3-メチル-4-エチルヘキサン酸、4-メチル-2-エチルヘキサン酸、4-メチル-3-エチルヘキサン酸、4-メチル-4-エチルヘキサン酸、5-メチル-2-エチルヘキサン酸、5-メチル-3-エチルヘキサン酸、5-メチル-4-エチルヘキサン酸、2-エチルヘプタン酸、3-メチルオクタン酸、3,5,5-トリメチルヘキサン酸、2-エチル-2,3,3-トリメチル酪酸、2,2,4,4-テトラメチルペンタン酸、2,2,3,3-テトラメチルペンタン酸、2,2,3,4-テトラメチルペンタン酸、2,2-ジイソプロピルプロパン酸などが挙げられる。脂肪酸は、これらの中から選ばれる1種または2種以上の脂肪酸とのエステルであってもよい。
エステルを構成する多価アルコールは1種類でもよく、2種以上の混合物でもよい。エステルを構成する脂肪酸は、単一成分でもよく、2種以上の脂肪酸とのエステルでもよい。ポリオールエステル油は、遊離の水酸基を有していてもよい。
具体的なポリオールエステル油としては、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ジ-(トリメチロールプロパン)、トリ-(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、ジ-(ペンタエリスリトール)、トリ-(ペンタエリスリトール)などのヒンダードアルコールのエステルがより好ましく、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタンおよびペンタエリスリトール、ジ-(ペンタエリスリトール)のエステルが更により好ましく、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジ-(ペンタエリスリトール)等と炭素数2~20の脂肪酸とのエステルが好ましい。
このような多価アルコール脂肪酸エステルを構成する脂肪酸において、脂肪酸は直鎖アルキル基をもつ脂肪酸のみでもよいし、分岐構造をもつ脂肪酸から選ばれてもよく、また、直鎖と分岐脂肪酸の混合エステルでもよい。エステルを構成する脂肪酸は、上記脂肪酸から選ばれる2種類以上が用いられていてもよい。
具体的な例として、直鎖と分岐脂肪酸の混合エステルの場合には、直鎖を有する炭素数4~6の脂肪酸と分岐を有する炭素数7~9の脂肪酸のモル比は、15:85~90:10であり、好ましくは15:85~85:15であり、より好ましくは20:80~80:20であり、更に好ましくは25:75~75:25であり、最も好ましくは30:70~70:30である。多価アルコール脂肪酸エステルを構成する脂肪酸の全量に占める直鎖を有する炭素数4~6の脂肪酸および分岐を有する炭素数7~9の脂肪酸の合計の割合は20モル%以上であることが好ましい。脂肪酸組成に関しては、冷媒との十分な相溶性、および冷凍機油として必要な粘度とを両立させるものであることが好ましい。なお、ここでいう脂肪酸の割合とは、冷凍機油に含まれる多価アルコール脂肪酸エステルを構成する脂肪酸全量を基準とした値である。
なかでも、このような冷凍機油としては、脂肪酸における炭素数4~6の脂肪酸と炭素数7~9の分岐脂肪酸のモル比が15:85~90:10であり、炭素数4~6の脂肪酸は2-メチルプロパン酸を含有し、上記エステルを構成する脂肪酸の全量に占める炭素数4~6の脂肪酸および炭素数7~9の分岐脂肪酸の合計の割合が20モル%以上であるエステル(以下、「多価アルコール脂肪酸エステル(A)」という。)を含有したものが好ましい。
多価アルコール脂肪酸エステル(A)には、多価アルコールの全ての水酸基がエステル化された完全エステル、多価アルコールの水酸基の一部がエステル化せずに残っている部分エステル、ならびに完全エステルと部分エステルとの混合物が包含されるが、多価アルコール脂肪酸エステル(A)の水酸基価は、好ましくは10mgKOH/g以下、更には5mgKOH/g以下、最も好ましくは3mgKOH/g以下である。
多価アルコール脂肪酸エステル(A)を構成する脂肪酸において、炭素数4~6の脂肪酸と分岐を有する炭素数7~9の脂肪酸のモル比は、15:85~90:10であり、好ましくは15:85~85:15であり、より好ましくは20:80~80:20であり、更に好ましくは25:75~75:25であり、最も好ましくは30:70~70:30である。多価アルコール脂肪酸エステル(A)を構成する脂肪酸の全量に占める炭素数4~6の脂肪酸および分岐を有する炭素数7~9の脂肪酸の合計の割合は20モル%以上である。脂肪酸組成に関する上記の条件を満たさない場合には、冷媒組成物にジフルオロメタンが含まれている場合において、当該ジフルオロメタンとの十分な相溶性、および冷凍機油として必要な粘度とが高水準で両立されにくくなる。なお、脂肪酸の割合とは、冷凍機油に含有される多価アルコール脂肪酸エステル(A)を構成する脂肪酸全量を基準とした値である。
上記炭素数4~6の脂肪酸としては、例えばブタン酸、2-メチルプロパン酸、ペンタン酸、2-メチルブタン酸、3-メチルブタン酸、2,2-ジメチルプロパン酸、2-メチルペンタン酸、3-メチルペンタン酸、4-メチルペンタン酸、2,2-ジメチルブタン酸、2,3-ジメチルブタン酸、3,3-ジメチルブタン酸、ヘキサン酸などが挙げられる。これらの中でも、2-メチルプロパン酸のように、アルキル骨格に分岐を有するものが好ましい。
上記分岐を有する炭素数7~9の脂肪酸としては、例えば2-メチルヘキサン酸、3-メチルヘキサン酸、4-メチルヘキサン酸、5-メチルヘキサン酸、2,2-ジメチルペンタン酸、2,3-ジメチルペンタン酸、2,4-ジメチルペンタン酸、3,3-ジメチルペンタン酸、3,4-ジメチルペンタン酸、4,4-ジメチルペンタン酸、2-エチルペンタン酸、3-エチルペンタン酸、1,1,2-トリメチルブタン酸、1,2,2-トリメチルブタン酸、1-エチル-1メチルブタン酸、1-エチル-2-メチルブタン酸、オクタン酸、2-エチルヘキサン酸、3-エチルヘキサン酸、3,5-ジメチルヘキサン酸、2,4-ジメチルヘキサン酸、3,4-ジメチルヘキサン酸、4,5-ジメチルヘキサン酸、2,2-ジメチルヘキサン酸、2-メチルヘプタン酸、3-メチルヘプタン酸、4-メチルヘプタン酸、5-メチルヘプタン酸、6-メチルヘプタン酸、2-プロピルペンタン酸、ノナン酸、2,2-ジメチルヘプタン酸、2-メチルオクタン酸、2-エチルヘプタン酸、3-メチルオクタン酸、3,5,5-トリメチルヘキサン酸、2-エチル-2,3,3-トリメチル酪酸、2,2,4,4-テトラメチルペンタン酸、2,2,3,3-テトラメチルペンタン酸、2,2,3,4-テトラメチルペンタン酸、2,2-ジイソプロピルプロパン酸などが挙げられる。
多価アルコール脂肪酸エステル(A)は、炭素数4~6の脂肪酸と分岐を有する炭素数7~9の脂肪酸のモル比が15:85~90:10であり、かつ、炭素数4~6の脂肪酸が2-メチルプロパン酸を含有する限りにおいて、炭素数4~6の脂肪酸および分岐を有する炭素数7~9の脂肪酸以外の脂肪酸を構成酸成分として含有してもよい。
上記炭素数4~6の脂肪酸および分岐を有する炭素数7~9の脂肪酸以外の脂肪酸としては、具体的には、酢酸、プロピオン酸等の炭素数2~3の脂肪酸;ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸等の炭素数7~9の直鎖脂肪酸;デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸、オレイン酸等の炭素数10~20の脂肪酸等が挙げられる。
上記炭素数4~6の脂肪酸および分岐を有する炭素数7~9の脂肪酸と、これらの脂肪酸以外の脂肪酸とを組み合わせて用いる場合、多価アルコール脂肪酸エステル(A)を構成する脂肪酸の全量に占める炭素数4~6の脂肪酸および炭素数7~9の分岐脂肪酸の合計の割合が20モル%以上とすることが好ましく、25モル%以上であることがより好ましく、30モル%以上であることが更により好ましい。この割合が20モル%以上であることにより、冷媒組成物においてジフルオロメタンが含まれている場合における当該ジフルオロメタンとの相溶性が十分となる。
多価アルコール脂肪酸エステル(A)の中でも、酸構成成分が2-メチルプロパン酸と3,5,5-トリメチルヘキサン酸のみからなるものが、必要粘度の確保と、冷媒組成物においてジフルオロメタンが含まれている場合における当該ジフルオロメタンとの相溶性との両立の面で特に好ましい。
上記多価アルコール脂肪酸エステル(A)は、分子構造の異なるエステルの2種以上の混合物であってもよく、かかる場合には個々の分子が必ずしも上記の条件を満たしている必要はなく、冷凍機油中に含まれるペンタエリスリトール脂肪酸エステルを構成する脂肪酸全体として上記条件を満たしていればよい。
上記した通り、多価アルコール脂肪酸エステル(A)は、エステルを構成する酸成分として炭素数4~6の脂肪酸及び分岐を有する炭素数7~9の脂肪酸を必須とし、必要に応じてその他の脂肪酸を構成成分として含むものである。すなわち、多価アルコール脂肪酸エステル(A)は、2種のみの脂肪酸を酸構成成分としているものであっても、3種以上の構造の異なる脂肪酸を酸構成成分としているものであってもよいが、当該多価アルコール脂肪酸エステル(A)は、酸構成成分として、カルボニル炭素と隣接する炭素原子(α位炭素原子)が四級炭素でない脂肪酸のみを含有することが好ましい。多価アルコール脂肪酸エステル(A)を構成する脂肪酸中に、α位炭素原子が四級炭素である脂肪酸が含まれる場合には、冷媒組成物にジフルオロメタンを含んでいる場合における当該ジフルオロメタン存在下での潤滑性が不十分となる傾向にある。
ポリオールエステル油を構成する多価アルコールとしては、水酸基を2~6個有する多価アルコールが好ましく用いられる。
2価アルコール(ジオール)としては、例えばエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、2-エチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,7-ヘプタンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオールなどが挙げられる。3価以上のアルコールとしては、例えばトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ジ-(トリメチロールプロパン)、トリ-(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、ジ-(ペンタエリスリトール)、トリ-(ペンタエリスリトール)、グリセリン、ポリグリセリン(グリセリンの2~3量体)、1,3,5-ペンタントリオール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトールなどの多価アルコール、キシロース、アラビノース、リボース、ラムノース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、ソルボース、セロビオースなどの糖類、ならびにこれらの部分エーテル化物などが挙げられる。これらの中でも、加水分解安定性により優れることから、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ジ-(トリメチロールプロパン)、トリ-(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、ジ-(ペンタエリスリトール)、トリ-(ペンタエリスリトール)などのヒンダードアルコールのエステルがより好ましく、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタンおよびペンタエリスリトール、ジ-(ペンタエリスリトール)のエステルが更により好ましく、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジ-(ペンタエリスリトール)が更に好ましく、冷媒との相溶性および加水分解安定性に特に優れることから、ペンタエリスリトール、ジ-(ペンタエリスリトール)またはペンタエリスリトールとジ-(ペンタエリスリトール)との混合エステルが最も好ましい。
上記多価アルコール脂肪酸エステル(A)を構成する酸構成成分の好ましい例としては、以下のものを挙げることができる。
(i)ブタン酸、2-メチルプロパン酸、ペンタン酸、2-メチルブタン酸、3-メチルブタン酸、2,2-ジメチルプロパン酸、2-メチルペンタン酸、3-メチルペンタン酸、4-メチルペンタン酸、2,2-ジメチルブタン酸、2,3-ジメチルブタン酸、3,3-ジメチルブタン酸およびヘキサン酸から選ばれる1~13種と、2-メチルヘキサン酸、3-メチルヘキサン酸、4-メチルヘキサン酸、5-メチルヘキサン酸、2,2-ジメチルペンタン酸、2,3-ジメチルペンタン酸、2,4-ジメチルペンタン酸、3,3-ジメチルペンタン酸、3,4-ジメチルペンタン酸、4,4-ジメチルペンタン酸、2-エチルペンタン酸、3-エチルペンタン酸および2-エチル-3-メチルブタン酸から選ばれる1~13種との組合せ;
(ii)ブタン酸、2-メチルプロパン酸、ペンタン酸、2-メチルブタン酸、3-メチルブタン酸、2,2-ジメチルプロパン酸、2-メチルペンタン酸、3-メチルペンタン酸、4-メチルペンタン酸、2,2-ジメチルブタン酸、2,3-ジメチルブタン酸、3,3-ジメチルブタン酸およびヘキサン酸から選ばれる1~13種と、2-メチルヘプタン酸、3-メチルヘプタン酸、4-メチルヘプタン酸、5-メチルヘプタン酸、6-メチルヘプタン酸、2,2-ジメチルヘキサン酸、3,3-ジメチルヘキサン酸、4,4-ジメチルヘキサン酸、5,5-ジメチルヘキサン酸、2,3-ジメチルヘキサン酸、2,4-ジメチルヘキサン酸、2,5-ジメチルヘキサン酸、3,4-ジメチルヘキサン酸、3,5-ジメチルヘキサン酸、4,5-ジメチルヘキサン酸、2,2,3-トリメチルペンタン酸、2,3,3-トリメチルペンタン酸、2,4,4-トリメチルペンタン酸、3,4,4-トリメチルペンタン酸、2-エチルヘキサン酸、3-エチルヘキサン酸、2-プロピルペンタン酸、2-メチル-2-エチルペンタン酸、2-メチル-3-エチルペンタン酸および3-メチル-3-エチルペンタン酸から選ばれる1~25種との組合せ;
(iii)ブタン酸、2-メチルプロパン酸、ペンタン酸、2-メチルブタン酸、3-メチルブタン酸、2,2-ジメチルプロパン酸、2-メチルペンタン酸、3-メチルペンタン酸、4-メチルペンタン酸、2,2-ジメチルブタン酸、2,3-ジメチルブタン酸、3,3-ジメチルブタン酸およびヘキサン酸から選ばれる1~13種と、2-メチルオクタン酸、3-メチルオクタン酸、4-メチルオクタン酸、5-メチルオクタン酸、6-メチルオクタン酸、7-メチルオクタン酸、8-メチルオクタン酸、2,2-ジメチルヘプタン酸、3,3-ジメチルヘプタン酸、4,4-ジメチルヘプタン酸、5,5-ジメチルヘプタン酸、6,6-ジメチルヘプタン酸、2,3-ジメチルヘプタン酸、2,4-ジメチルヘプタン酸、2,5-ジメチルヘプタン酸、2,6-ジメチルヘプタン酸、3,4-ジメチルヘプタン酸、3,5-ジメチルヘプタン酸、3,6-ジメチルヘプタン酸、4,5-ジメチルヘプタン酸、4,6-ジメチルヘプタン酸、2-エチルヘプタン酸、3-エチルヘプタン酸、4-エチルヘプタン酸、5-エチルヘプタン酸、2-プロピルヘキサン酸、3-プロピルヘキサン酸、2-ブチルペンタン酸、2,2,3-トリメチルヘキサン酸、2,2,3-トリメチルヘキサン酸、2,2,4-トリメチルヘキサン酸、2,2,5-トリメチルヘキサン酸、2,3,4-トリメチルヘキサン酸、2,3,5-トリメチルヘキサン酸、3,3,4-トリメチルヘキサン酸、3,3,5-トリメチルヘキサン酸、3,5,5-トリメチルヘキサン酸、4,4,5-トリメチルヘキサン酸、4,5,5-トリメチルヘキサン酸、2,2,3,3-テトラメチルペンタン酸、2,2,3,4-テトラメチルペンタン酸、2,2,4,4-テトラメチルペンタン酸、2,3,4,4-テトラメチルペンタン酸、3,3,4,4-テトラメチルペンタン酸、2,2-ジエチルペンタン酸、2,3-ジエチルペンタン酸、3,3-ジエチルペンタン酸、2-エチル-2,3,3-トリメチル酪酸、3-エチル-2,2,3-トリメチル酪酸および2,2-ジイソプロピルプロピオン酸から選ばれる1~50種との組合せ。
上記多価アルコール脂肪酸エステル(A)を構成する酸構成成分の更に好ましい例としては、以下のものを挙げることができる。
(i)2-メチルプロパン酸と、2-メチルヘキサン酸、3-メチルヘキサン酸、4-メチルヘキサン酸、5-メチルヘキサン酸、2,2-ジメチルペンタン酸、2,3-ジメチルペンタン酸、2,4-ジメチルペンタン酸、3,3-ジメチルペンタン酸、3,4-ジメチルペンタン酸、4,4-ジメチルペンタン酸、2-エチルペンタン酸、3-エチルペンタン酸および2-エチル-3-メチルブタン酸から選ばれる1~13種との組合せ;
(ii)2-メチルプロパン酸と、2-メチルヘプタン酸、3-メチルヘプタン酸、4-メチルヘプタン酸、5-メチルヘプタン酸、6-メチルヘプタン酸、2,2-ジメチルヘキサン酸、3,3-ジメチルヘキサン酸、4,4-ジメチルヘキサン酸、5,5-ジメチルヘキサン酸、2,3-ジメチルヘキサン酸、2,4-ジメチルヘキサン酸、2,5-ジメチルヘキサン酸、3,4-ジメチルヘキサン酸、3,5-ジメチルヘキサン酸、4,5-ジメチルヘキサン酸、2,2,3-トリメチルペンタン酸、2,3,3-トリメチルペンタン酸、2,4,4-トリメチルペンタン酸、3,4,4-トリメチルペンタン酸、2-エチルヘキサン酸、3-エチルヘキサン酸、2-プロピルペンタン酸、2-メチル-2-エチルペンタン酸、2-メチル-3-エチルペンタン酸および3-メチル-3-エチルペンタン酸から選ばれる1~25種との組合せ;
(iii)2-メチルプロパン酸と、2-メチルオクタン酸、3-メチルオクタン酸、4-メチルオクタン酸、5-メチルオクタン酸、6-メチルオクタン酸、7-メチルオクタン酸、8-メチルオクタン酸、2,2-ジメチルヘプタン酸、3,3-ジメチルヘプタン酸、4,4-ジメチルヘプタン酸、5,5-ジメチルヘプタン酸、6,6-ジメチルヘプタン酸、2,3-ジメチルヘプタン酸、2,4-ジメチルヘプタン酸、2,5-ジメチルヘプタン酸、2,6-ジメチルヘプタン酸、3,4-ジメチルヘプタン酸、3,5-ジメチルヘプタン酸、3,6-ジメチルヘプタン酸、4,5-ジメチルヘプタン酸、4,6-ジメチルヘプタン酸、2-エチルヘプタン酸、3-エチルヘプタン酸、4-エチルヘプタン酸、5-エチルヘプタン酸、2-プロピルヘキサン酸、3-プロピルヘキサン酸、2-ブチルペンタン酸、2,2,3-トリメチルヘキサン酸、2,2,3-トリメチルヘキサン酸、2,2,4-トリメチルヘキサン酸、2,2,5-トリメチルヘキサン酸、2,3,4-トリメチルヘキサン酸、2,3,5-トリメチルヘキサン酸、3,3,4-トリメチルヘキサン酸、3,3,5-トリメチルヘキサン酸、3,5,5-トリメチルヘキサン酸、4,4,5-トリメチルヘキサン酸、4,5,5-トリメチルヘキサン酸、2,2,3,3-テトラメチルペンタン酸、2,2,3,4-テトラメチルペンタン酸、2,2,4,4-テトラメチルペンタン酸、2,3,4,4-テトラメチルペンタン酸、3,3,4,4-テトラメチルペンタン酸、2,2-ジエチルペンタン酸、2,3-ジエチルペンタン酸、3,3-ジエチルペンタン酸、2-エチル-2,3,3-トリメチル酪酸、3-エチル-2,2,3-トリメチル酪酸および2,2-ジイソプロピルプロピオン酸から選ばれる1~50種との組合せ。
本開示の冷媒漏洩検知・防止剤に含まれる冷凍機油としては、多価アルコール脂肪酸エステル(A)のみを単独で(すなわち多価アルコール脂肪酸エステル(A)の含有量が100質量%)用いてもよいが、これに加えて、その優れた性能を損なわない程度に、多価アルコール脂肪酸エステル(A)以外の冷凍機油を更に含有してもよい。多価アルコール脂肪酸エステル(A)以外の冷凍機油としては、鉱油、オレフィン重合体、アルキルジフェニルアルカン、アルキルナフタレン、アルキルベンゼン等の炭化水素系油;多価アルコール脂肪酸エステル(A)以外のポリオールエステル、コンプレックスエステル、脂環式ジカルボン酸エステル等のエステル、ポリグリコール、ポリビニルエーテル、ケトン、ポリフェニルエーテル、シリコーン、ポリシロキサン、パーフルオロエーテル等の酸素を含有する合成油(以下、場合により「他の含酸素合成油」という)などが挙げられる。
酸素を含有する合成油としては、上記の中でも、多価アルコール脂肪酸エステル(A)以外のエステル、ポリグリコール、ポリビニルエーテルが好ましく、特に好ましいのは、多価アルコール脂肪酸エステル(A)以外のポリオールエステルである。多価アルコール脂肪酸エステル(A)以外のポリオールエステルとしては、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の多価アルコールと脂肪酸とのエステルが挙げられ、特に好ましいものは、ネオペンチルグリコールと脂肪酸とのエステル、ペンタエリスリトールと脂肪酸とのエステル及びジペンタエリスリトールと脂肪酸とのエステルである。
ネオペンチルグリコールエステルとしては、ネオペンチルグリコールと炭素数5~9の脂肪酸とのエステルであることが好ましい。このようなネオペンチルグリコールエステルとしては、例えばネオペンチルグリコールジ3,5,5-トリメチルヘキサノエート、ネオペンチルグリコールジ2-エチルヘキサノエート、ネオペンチルグリコールジ2-メチルヘキサノエート、ネオペンチルグリコールジ2-エチルペンタノエート、ネオペンチルグリコールと2-メチルヘキサン酸・2-エチルペンタン酸のエステル、ネオペンチルグリコールと3-メチルヘキサン酸・5-メチルヘキサン酸のエステル、ネオペンチルグリコールと2-メチルヘキサン酸・2-エチルヘキサン酸のエステル、ネオペンチルグリコールと3,5-ジメチルヘキサン酸・4,5-ジメチルヘキサン酸・3,4-ジメチルヘキサン酸のエステル、ネオペンチルグリコールジペンタノエート、ネオペンチルグリコールジ2-エチルブタノエート、ネオペンチルグリコールジ2-メチルペンタノエート、ネオペンチルグリコールジ2-メチルブタノエート、ネオペンチルグリコールジ3-メチルブタノエート等が挙げられる。
ペンタエリスリトールエステルとしては、ペンタエリスリトールと炭素数5~9の脂肪酸とのエステルが好ましい。このようなペンタエリスリトールエステルとしては、具体的には、ペンタエリスリトールと、ペンタン酸、2-メチルブタン酸、3-メチルブタン酸、ヘキサン酸、2-メチルペンタン酸、2-エチルブタン酸、2-エチルペンタン酸、2-メチルヘキサン酸、3,5,5-トリメチルヘキサン酸および2-エチルヘキサン酸から選ばれる1種以上の脂肪酸とのエステルが挙げられる。
ジペンタエリスリトールエステルとしては、ジペンタエリスリトールと炭素数5~9の脂肪酸のエステルが好ましい。このようなジペンタエリスリトールエステルとしては、具体的には、ジペンタエリスリトールと、ペンタン酸、2-メチルブタン酸、3-メチルブタン酸、ヘキサン酸、2-メチルペンタン酸、2-エチルブタン酸、2-エチルペンタン酸、2-メチルヘキサン酸、3,5,5-トリメチルヘキサン酸および2-エチルヘキサン酸から選ばれる1種以上の脂肪酸とのエステルが挙げられる。
このような冷凍機油が多価アルコール脂肪酸エステル(A)以外の含酸素合成油を含有する場合、多価アルコール脂肪酸エステル(A)以外の含酸素合成油の含有量は、冷凍機油の優れた潤滑性と相溶性とを損なわない限りにおいて特に制限はない。多価アルコール脂肪酸エステル(A)以外のポリオールエステルを配合する場合、冷凍機油全量基準(冷凍機油およびそれに配合された添加剤の合計量基準)で、50質量%未満であることが好ましく、45質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることが更に好ましく、35質量%以下であることが更により好ましく、30質量%以下であることが一層好ましく、25質量%以下であることが最も好ましい。ポリオールエステル以外の含酸素合成油を配合する場合、冷凍機油全量基準(冷凍機油およびそれに配合された添加剤の合計量基準)で50質量%未満であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることが更に好ましい。多価アルコール脂肪酸エステル(A)以外のポリオールエステルや他の含酸素合成油の配合量が多すぎると、上記効果が十分には得られない。
なお、多価アルコール脂肪酸エステル(A)以外のポリオールエステルは、多価アルコールの水酸基の一部がエステル化されずに水酸基のまま残っている部分エステルであってもよく、全ての水酸基がエステル化された完全エステルであってもよく、また、部分エステルと完全エステルの混合物であってもよいが、水酸基価が、10mgKOH/g以下であることが好ましく、5mgKOH/g以下であることがより好ましく、3mgKOH/g以下であることが最も好ましい。
冷凍機油が多価アルコール脂肪酸エステル(A)以外のポリオールエステルを含有する場合、該ポリオールエステルとして、単一の構造のポリオールエステルの1種からなるものを含有してもよく、また、構造の異なる2種以上のポリオールエステルの混合物を含有してもよい。
多価アルコール脂肪酸エステル(A)以外のポリオールエステルは、1種の脂肪酸と1種の多価アルコールとのエステル、2種以上の脂肪酸と1種の多価アルコールとのエステル、1種の脂肪酸と2種以上の多価アルコールとのエステル、2種以上の脂肪酸と2種以上の多価アルコールとのエステルのいずれであってもよい。
冷凍機油は、多価アルコール脂肪酸エステル(A)のみからなるものであってもよく、また、多価アルコール脂肪酸エステル(A)とその他の冷凍機油とからなるものであってもよいが、後述する各種添加剤を更に含有してもよい。なお、以下の説明において、添加剤の含有量については、冷凍機油全量(冷凍機油およびそれに配合された添加剤の合計量基準)を基準として示す。
冷凍機油の耐摩耗性、耐荷重性を更に改良するために、リン酸エステル、酸性リン酸エステル、チオリン酸エステル、酸性リン酸エステルのアミン塩、塩素化リン酸エステルおよび亜リン酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種のリン化合物を配合することができる。これらのリン化合物は、リン酸または亜リン酸とアルカノール、ポリエーテル型アルコールとのエステルあるいはその誘導体である。
具体的には、リン酸エステルとしては、トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリヘプチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリノニルホスフェート、トリデシルホスフェート、トリウンデシルホスフェート、トリドデシルホスフェート、トリトリデシルホスフェート、トリテトラデシルホスフェート、トリペンタデシルホスフェート、トリヘキサデシルホスフェート、トリヘプタデシルホスフェート、トリオクタデシルホスフェート、トリオレイルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェートなどが挙げられる。
酸性リン酸エステルとしては、モノブチルアシッドホスフェート、モノペンチルアシッドホスフェート、モノヘキシルアシッドホスフェート、モノヘプチルアシッドホスフェート、モノオクチルアシッドホスフェート、モノノニルアシッドホスフェート、モノデシルアシッドホスフェート、モノウンデシルアシッドホスフェート、モノドデシルアシッドホスフェート、モノトリデシルアシッドホスフェート、モノテトラデシルアシッドホスフェート、モノペンタデシルアシッドホスフェート、モノヘキサデシルアシッドホスフェート、モノヘプタデシルアシッドホスフェート、モノオクタデシルアシッドホスフェート、モノオレイルアシッドホスフェート、ジブチルアシッドホスフェート、ジペンチルアシッドホスフェート、ジヘキシルアシッドホスフェート、ジヘプチルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジノニルアシッドホスフェート、ジデシルアシッドホスフェート、ジウンデシルアシッドホスフェート、ジドデシルアシッドホスフェート、ジトリデシルアシッドホスフェート、ジテトラデシルアシッドホスフェート、ジペンタデシルアシッドホスフェート、ジヘキサデシルアシッドホスフェート、ジヘプタデシルアシッドホスフェート、ジオクタデシルアシッドホスフェート、ジオレイルアシッドホスフェートなどが挙げられる。
チオリン酸エステルとしては、トリブチルホスフォロチオネート、トリペンチルホスフォロチオネート、トリヘキシルホスフォロチオネート、トリヘプチルホスフォロチオネート、トリオクチルホスフォロチオネート、トリノニルホスフォロチオネート、トリデシルホスフォロチオネート、トリウンデシルホスフォロチオネート、トリドデシルホスフォロチオネート、トリトリデシルホスフォロチオネート、トリテトラデシルホスフォロチオネート、トリペンタデシルホスフォロチオネート、トリヘキサデシルホスフォロチオネート、トリヘプタデシルホスフォロチオネート、トリオクタデシルホスフォロチオネート、トリオレイルホスフォロチオネート、トリフェニルホスフォロチオネート、トリクレジルホスフォロチオネート、トリキシレニルホスフォロチオネート、クレジルジフェニルホスフォロチオネート、キシレニルジフェニルホスフォロチオネートなどが挙げられる。
酸性リン酸エステルのアミン塩としては、酸性リン酸エステルと、炭素数1~24、好ましくは5~18の1~3級の直鎖または分岐アルキル基のアミンとのアミン塩が挙げられる。
酸性リン酸エステルのアミン塩を構成するアミンとしては、直鎖または分岐のメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミン、オレイルアミン、テトラコシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、ジウンデシルアミン、ジドデシルアミン、ジトリデシルアミン、ジテトラデシルアミン、ジペンタデシルアミン、ジヘキサデシルアミン、ジヘプタデシルアミン、ジオクタデシルアミン、ジオレイルアミン、ジテトラコシルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、トリデシルアミン、トリウンデシルアミン、トリドデシルアミン、トリトリデシルアミン、トリテトラデシルアミン、トリペンタデシルアミン、トリヘキサデシルアミン、トリヘプタデシルアミン、トリオクタデシルアミン、トリオレイルアミン、トリテトラコシルアミンなどのアミンとの塩が挙げられる。アミンは単独の化合物であっても、2種以上の化合物の混合物であってもよい。
塩素化リン酸エステルとしては、トリス・ジクロロプロピルホスフェート、トリス・クロロエチルホスフェート、トリス・クロロフェニルホスフェート、ポリオキシアルキレン・ビス[ジ(クロロアルキル)]ホスフェートなどが挙げられる。亜リン酸エステルとしては、ジブチルホスファイト、ジペンチルホスファイト、ジヘキシルホスファイト、ジヘプチルホスファイト、ジオクチルホスファイト、ジノニルホスファイト、ジデシルホスファイト、ジウンデシルホスファイト、ジドデシルホスファイト、ジオレイルホスファイト、ジフェニルホスファイト、ジクレジルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリペンチルホスファイト、トリヘキシルホスファイト、トリヘプチルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリノニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリウンデシルホスファイト、トリドデシルホスファイト、トリオレイルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイトなどが挙げられる。これらの混合物も使用できる。
冷凍機油が上記リン化合物を含有する場合、リン化合物の含有量は特に制限されないが、冷凍機油全量基準(冷凍機油およびそれに配合された添加剤の合計量基準)で、0.01質量%以上であることが好ましく、0.02質量%以上であることがより好ましく、5.0質量%以下であることが好ましく、3.0質量%以下であることがより好ましい。なお、上記リン化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
冷凍機油には、その熱・化学的安定性を更に改良するために、テルペン化合物を添加することができる。本開示でいう「テルペン化合物」とは、イソプレンの重合した化合物およびこれらの誘導体を意味し、イソプレンの2~8量体が好ましく用いられる。テルペン化合物としては、具体的には、ゲラニオール、ネロール、リナロール、シトラール(ゲラニアールを含む)、シトロネロール、メントール、リモネン、テルピネロール、カルボン、ヨノン、ツヨン、樟脳(カンファー)、ボルネオールなどのモノテルペン、ファルネセン、ファルネソール、ネロリドール、幼若ホルモン、フムレン、カリオフイレン、エレメン、カジノール、カジネン、ツチンなどのセスキテルペン、ゲラニルゲラニオール、フィトール、アビエチン酸、ピマラジェン、ダフネトキシン、タキソール、ピマール酸などのジテルペン、ゲラニルファルネセンなどのセスタテルペン、スクアレン、リモニン、カメリアゲニン、ホパン、ラノステロールなどのトリテルペン、カロテノイドなどのテトラテルペンなどが挙げられる。
これらのテルペン化合物の中でも、モノテルペン、セスキテルペン、ジテルペンが好ましく、セスキテルペンがより好ましく、αファルネセン(3,7,11-トリメチルドデカ-1,3,6,10-テトラエン)および/またはβファルネセン(7,11-ジメチル-3-メチリデンドデカ-1,6,10-トリエン)が特に好ましい。本開示において、テルペン化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
冷凍機油におけるテルペン化合物の含有量は特に制限されないが、冷凍機油全量基準(冷凍機油およびそれに配合された添加剤の合計量基準)で、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.05質量%以上、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下である。テルペン化合物の含有量が0.001質量%未満であると熱・化学的安定性の向上効果が不十分となる傾向にあり、10質量%を超えると潤滑性が不十分となる傾向にある。
冷凍機油は、その熱・化学的安定性を更に改良するために、フェニルグリシジルエーテル型エポキシ化合物、アルキルグリシジルエーテル型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、アリルオキシラン化合物、アルキルオキシラン化合物、脂環式エポキシ化合物、エポキシ化脂肪酸モノエステルおよびエポキシ化植物油から選ばれる少なくとも1種のエポキシ化合物を含有することができる。
フェニルグリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、具体的には、フェニルグリシジルエーテルまたはアルキルフェニルグリシジルエーテルが例示できる。ここでいうアルキルフェニルグリシジルエーテルとは、炭素数1~13のアルキル基を1~3個有するものが挙げられ、中でも炭素数4~10のアルキル基を1個有するもの、例えばn-ブチルフェニルグリシジルエーテル、i-ブチルフェニルグリシジルエーテル、sec-ブチルフェニルグリシジルエーテル、tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、ペンチルフェニルグリシジルエーテル、ヘキシルフェニルグリシジルエーテル、ヘプチルフェニルグリシジルエーテル、オクチルフェニルグリシジルエーテル、ノニルフェニルグリシジルエーテル、デシルフェニルグリシジルエーテルなどが好ましいものとして例示できる。
アルキルグリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、具体的には、デシルグリシジルエーテル、ウンデシルグリシジルエーテル、ドデシルグリシジルエーテル、トリデシルグリシジルエーテル、テトラデシルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールモノグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテルなどが例示できる。
グリシジルエステル型エポキシ化合物としては、具体的には、フェニルグリシジルエステル、アルキルグリシジルエステル、アルケニルグリシジルエステルなどが挙げられ、好ましいものとしては、グリシジル-2,2-ジメチルオクタノエート、グリシジルベンゾエート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどが例示できる。
アリルオキシラン化合物としては、具体的には、1,2-エポキシスチレン、アルキル-1,2-エポキシスチレンなどが例示できる。
アルキルオキシラン化合物としては、具体的には、1,2-エポキシブタン、1,2-エポキシペンタン、1,2-エポキシヘキサン、1,2-エポキシヘプタン、1,2-エポキシオクタン、1,2-エポキシノナン、1,2-エポキシデカン、1,2-エポキシウンデカン、1,2-エポキシドデカン、1,2-エポキシトリデカン、1,2-エポキシテトラデカン、1,2-エポキシペンタデカン、1,2-エポキシヘキサデカン、1,2-エポキシヘプタデカン、1,1,2-エポキシオクタデカン、2-エポキシノナデカン、1,2-エポキシイコサンなどが例示できる。
脂環式エポキシ化合物としては、具体的には、1,2-エポキシシクロヘキサン、1,2-エポキシシクロペンタン、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、エキソ-2,3-エポキシノルボルナン、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、2-(7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプト-3-イル)-スピロ(1,3-ジオキサン-5,3’-[7]オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン、4-(1’-メチルエポキシエチル)-1,2-エポキシ-2-メチルシクロヘキサン、4-エポキシエチル-1,2-エポキシシクロヘキサンなどが例示できる。
エポキシ化脂肪酸モノエステルとしては、具体的には、エポキシ化された炭素数12~20の脂肪酸と炭素数1~8のアルコールまたはフェノール、アルキルフェノールとのエステルなどが例示できる。特にエポキシステアリン酸のブチル、ヘキシル、ベンジル、シクロヘキシル、メトキシエチル、オクチル、フェニルおよびブチルフェニルエステルが好ましく用いられる。
エポキシ化植物油としては、具体的には、大豆油、アマニ油、綿実油等の植物油のエポキシ化合物などが例示できる。
これらのエポキシ化合物の中でも好ましいものは、フェニルグリシジルエーテル型エポキシ化合物、アルキルグリシジルエーテル型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、および脂環式エポキシ化合物である。
冷凍機油が上記エポキシ化合物を含有する場合、エポキシ化合物の含有量は特に制限されないが、冷凍機油全量基準(冷凍機油およびそれに配合された添加剤の合計量基準)で、0.01質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましく、5.0質量%以下であることが好ましく、3.0質量%以下であることがより好ましい。上記エポキシ化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
多価アルコール脂肪酸エステル(A)を含む冷凍機油の40℃における動粘度は、好ましくは20mm/s以上、より好ましくは25mm/s以上、最も好ましくは30mm/s以上、好ましくは80mm/s以下、より好ましくは75mm/s以下、最も好ましくは70mm/s以下とすることができる。100℃における動粘度は好ましくは2mm/s以上、より好ましくは3mm/s以上、好ましくは20mm/s以下、より好ましくは10mm/s以下とすることができる。動粘度が前記下限値以上の場合には冷凍機油として必要な粘度を確保しやすく、他方、前記上限値以下の場合には冷媒組成物としてジフルオロメタンが含まれている場合の当該ジフルオロメタンとの相溶性を十分にすることができる。
多価アルコール脂肪酸エステル(A)を含む冷凍機油の体積抵抗率は特に限定されないが、好ましくは1.0×1012Ω・cm以上、より好ましくは1.0×1013Ω・cm以上、最も好ましくは1.0×1014Ω・cm以上とすることができる。特に、密閉型の冷凍機に用いる場合には高い電気絶縁性が必要となる傾向にある。なお、体積抵抗率とは、JIS C 2101「電気絶縁油試験方法」に準拠して測定した25℃での値を意味する。
多価アルコール脂肪酸エステル(A)を含む冷凍機油の水分含有量は特に限定されないが、冷凍機油全量基準(冷凍機油およびそれに配合された添加剤の合計量基準)で好ましくは200ppm以下、より好ましくは100ppm以下、最も好ましくは50ppm以下とすることができる。特に密閉型の冷凍機に用いる場合には、冷凍機油の熱・化学的安定性や電気絶縁性への影響の観点から、水分含有量が少ないことが求められる。
多価アルコール脂肪酸エステル(A)を含む冷凍機油の酸価は特に限定されないが、冷凍機または配管に用いられている金属への腐食を防止するため、好ましくは0.1mgKOH/g以下、より好ましくは0.05mgKOH/g以下とすることができる。なお、本開示において、酸価とは、JIS K 2501「石油製品および潤滑油一中和価試験方法」に準拠して測定した酸価を意味する。
多価アルコール脂肪酸エステル(A)を含む冷凍機油の灰分は特に限定されないが、冷凍機油の熱・化学的安定性を高めスラッジ等の発生を抑制するため、好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下とすることができる。なお、灰分とは、JIS K 2272「原油および石油製品の灰分並びに硫酸灰分試験方法」に準拠して測定した灰分の値を意味する。
(コンプレックスエステル油)
コンプレックスエステル油とは、脂肪酸および二塩基酸と、一価アルコールおよびポリオールとのエステルである。脂肪酸、二塩基酸、一価アルコール、ポリオールとしては、上述と同様のものを用いることができる。
脂肪酸としては、上記ポリオールエステルの脂肪酸で示したものが挙げられる。二塩基酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等が挙げられる。ポリオールとしては、上記ポリオールエステルの多価アルコールとして示したものが挙げられる。コンプレックスエステルは、これらの脂肪酸、二塩基酸、ポリオールのエステルであり、各々単一成分でもよいし、複数成分からなるエステルでもよい。
(ポリオール炭酸エステル油)
ポリオール炭酸エステル油とは、炭酸とポリオールとのエステルである。ポリオールとしては、上述と同様のジオールやポリオールが挙げられる。ポリオール炭酸エステル油としては、環状アルキレンカーボネートの開環重合体であってもよい。
(a-1-2)エーテル系冷凍機油
エーテル系冷凍機油としては、ポリビニルエーテル油、ポリオキシアルキレン油等が挙げられる。
(ポリビニルエーテル油)
ポリビニルエーテル油としては、ビニルエーテルモノマーの重合体、ビニルエーテルモノマーとオレフィン性二重結合を有する炭化水素モノマーとの共重合体、オレフィン性二重結合とポリオキシアルキレン鎖を有するモノマーとビニルエーテルモノマーとの共重合体等が挙げられる。
ポリビニルエーテル油の炭素/酸素モル比は、2以上7.5以下であることが好ましく、2.5以上5.8以下であることがより好ましい。炭素/酸素モル比が当該範囲より低いと吸湿性が高くなり、当該範囲より高いと相溶性が低下する。ポリビニルエーテルの重量平均分子量は、好ましくは200以上3000以下、より好ましくは500以上1500以下である。
ポリビニルエーテル油は、流動点が-30℃以下であることが好ましい。ポリビニルエーテル油は、20℃における表面張力が0.02N/m以上0.04N/m以下であることが好ましい。ポリビニルエーテル油は、15℃における密度が0.8g/cm以上1.8g/cm以下であることが好ましい。ポリビニルエーテル油は、温度30℃、相対湿度90%における飽和水分量が2000ppm以上であることが好ましい。
冷凍機油においては、ポリビニルエーテルが主成分として含まれていてもよい。冷媒にHFO-1234yfが含まれている場合には、冷凍機油の主成分であるポリビニルエーテルが、当該HFO-1234yfに対して相溶性を有しており、冷凍機油の40℃における動粘度が400mm/s以下であると、HFO-1234yfが、冷凍機油にある程度溶解する。冷凍機油の流動点が-30℃以下である場合には、冷媒回路において冷媒組成物や冷凍機油が低温となる部位においても冷凍機油の流動性を確保しやすい。冷凍機油の20℃における表面張力が0.04N/m以下である場合には、圧縮機から吐出された冷凍機油が冷媒組成物によって押し流されにくくなるような大きな油滴になりにくい。このため、圧縮機から吐出された冷凍機油は、HFO-1234yfに溶解してHFO-1234yfと共に圧縮機に戻されやすい。
冷凍機油の40℃における動粘度が30mm/s以上である場合には、動粘度が低すぎて油膜強度が不十分になることが抑制され、潤滑性能を確保しやすい。冷凍機油の20℃における表面張力が0.02N/m以上である場合には、圧縮機内のガス冷媒中で小さな油滴になりにくく、圧縮機から多量に冷凍機油が吐出されることを抑制できる。このため、圧縮機における冷凍機油の貯留量を充分に確保しやすい。
冷凍機油の飽和水分量が、温度30℃/相対湿度90%において2000ppm以上である場合には、冷凍機油の吸湿性を比較的高いものとすることができる。これにより、冷媒にHFO-1234yfが含まれている場合には、HFO-1234yf中の水分を冷凍機油によって有る程度捕捉することが可能となる。HFO-1234yfは、含有される水分の影響により、変質/劣化し易い分子構造を有する。よって、冷凍機油による吸湿効果により、このような劣化を抑制することができる。
冷媒回路を流れる冷媒と接触可能となるシール部や摺動部に所定の樹脂製機能部品が配置されている場合であって、当該樹脂製機能部品が、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフェニレンサルファイド、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、クロロブレンゴム、シリコンゴム、水素化ニトリルゴム、フッ素ゴム、ヒドリンゴムのいずれかで構成されている場合には、冷凍機油のアニリン点は、当該樹脂製機能部品との適合性を考慮して、その数値範囲を設定することが好ましい。このようにアニリン点を設定することで、例えば樹脂製機能部品を構成する軸受と冷凍機油との適合性が向上する。具体的に、アニリン点が小さ過ぎると、冷凍機油が軸受等に浸透し易くなり、軸受等が膨潤し易くなる。一方、アニリン点が大き過ぎると、冷凍機油が軸受等と浸透し難くなり、軸受等が収縮し易くなる。そこで、冷凍機油のアニリン点を所定の数値範囲とすることで、軸受等の膨潤/収縮変形を防止できる。ここで、例えば各軸受等が膨潤/縮小変形してしまうと、摺動部での隙間(ギャップ)を所望とする長さに維持することができない。その結果、摺動抵抗の増大や摺動部の剛性の低下を招くおそれがある。しかしながら、上記のように冷凍機油のアニリン点を所定の数値範囲とすることで、軸受等の膨潤/縮小変形が抑制されるので、このような不具合を回避できる。
ビニルエーテルモノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。オレフィン性二重結合を有する炭化水素モノマーとしては、エチレン、プロピレン、各種ブテン、各種ペンテン、各種ヘキセン、各種ヘプテン、各種オクテン、ジイソブチレン、トリイソブチレン、スチレン、α-メチルスチレン、各種アルキル置換スチレン等が挙げられる。オレフィン性二重結合を有する炭化水素モノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリビニルエーテル共重合体は、ブロックまたはランダム共重合体のいずれであってもよい。ポリビニルエーテル油は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。好ましく用いられるポリビニルエーテル油は、下記一般式(1)で表される構造単位を有する。
Figure 2023113463000001
(式中、R、RおよびRは同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1~8の炭化水素基を示し、Rは炭素数1~10の2価の炭化水素基または炭素数2~20の2価のエーテル結合酸素含有炭化水素基を示し、Rは炭素数1~20の炭化水素基を示し、mは上記ポリビニルエーテルについてのmの平均値が0~10となるような数を示し、R~Rは構造単位ごとに同一であっても異なっていてもよく、一の構造単位においてmが2以上である場合には、複数のROは同一でも異なっていてもよい。)
上記一般式(1)におけるR、RおよびRは、少なくとも1つが水素原子、特には全てが水素原子であることが好ましい。一般式(1)におけるmは0以上10以下、特には0以上5以下が、更には0であることが好ましい。一般式(1)におけるRは炭素数1~20の炭化水素基を示すが、この炭化水素基としては、具体的にはメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、各種メチルシクロヘキシル基、各種エチルシクロヘキシル基、各種ジメチルシクロヘキシル基などのシクロアルキル基、フェニル基、各種メチルフェニル基、各種エチルフェニル基、各種ジメチルフェニル基のアリール基、ベンジル基、各種フェニルエチル基、各種メチルベンジル基のアリールアルキル基を示す。なお、アルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、アリール基、アリールアルキル基の中でも、アルキル基、特には炭素数1以上5以下のアルキル基が好ましい。なお、上記ポリビニルエーテル油としては、Rの炭素数が1又は2のアルキル基であるポリビニルエーテル油:Rの炭素数が3又は4のアルキル基であるポリビニルエーテル油の比率が、40%:60%~100%:0%で含まれていることが好ましい。
ポリビニルエーテル油は、一般式(1)で表される構造単位が同一である単独重合体であっても、2種以上の構造単位で構成される共重合体であってもよい。共重合体はブロック共重合体またはランダム共重合体のいずれであってもよい。
ポリビニルエーテル油は、上記一般式(1)で表される構造単位のみで構成されるものであってもよいが、下記一般式(2)で表される構造単位を更に含む共重合体であってもよい。この場合、共重合体はブロック共重合体またはランダム共重合体のいずれであってもよい。
Figure 2023113463000002
(式中、R~Rは互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1~20の炭化水素基を示す。)
ビニルエーテル系モノマーとしては、下記一般式(3)の化合物が挙げられる。
Figure 2023113463000003
(式中、R、R、R、R、Rおよびmは、それぞれ一般式(1)中のR、R、R、R、Rおよびmと同一の定義内容を示す。)
上記ポリビニルエーテル系化合物に対応する各種のものがあるが、例えば、ビニルメチルエーテル;ビニルエチルエーテル;ビニル-n-プロピルエーテル;ビニル-イソプロピルエーテル;ビニル-n-ブチルエーテル;ビニル-イソブチルエーテル;ビニル-sec-ブチルエーテル;ビニル-tert-ブチルエーテル;ビニル-n-ペンチルエーテル;ビニル-n-ヘキシルエーテル;ビニル-2-メトキシエチルエーテル;ビニル-2-エトキシエチルエーテル;ビニル-2-メトキシ-1-メチルエチルエーテル;ビニル-2-メトキシ-プロピルエーテル;ビニル-3,6-ジオキサヘプチルエーテル;ビニル-3,6,9-トリオキサデシルエーテル;ビニル-1,4-ジメチル-3,6-ジオキサヘプチルエーテル;ビニル-1,4,7-トリメチル-3,6,9-トリオキサデシルエーテル;ビニル-2,6-ジオキサ-4-ヘプチルエーテル;ビニル-2,6,9-トリオキサ-4-デシルエーテル;1-メトキシプロペン;1-エトキシプロペン;1-n-プロポキシプロペン;1-イソプロポキシプロペン;1-n-ブトキシプロペン;1-イソブトキシプロペン;1-sec-ブトキシプロペン;1-tert-ブトキシプロペン;2-メトキシプロペン;2-エトキシプロペン;2-n-プロポキシプロペン;2-イソプロポキシプロペン;2-n-ブトキシプロペン;2-イソブトキシプロペン;2-sec-ブトキシプロペン;2-tert-ブトキシプロペン;1-メトキシ-1-ブテン;1-エトキシ-1-ブテン;1-n-プロポキシ-1-ブテン;1-イソプロポキシ-1-ブテン;1-n-ブトキシ-1-ブテン;1-イソブトキシ-1-ブテン;1-sec-ブトキシ-1-ブテン;1-tert-ブトキシ-1-ブテン;2-メトキシ-1-ブテン;2-エトキシ-1-ブテン;2-n-プロポキシ-1-ブテン;2-イソプロポキシ-1-ブテン;2-n-ブトキシ-1-ブテン;2-イソブトキシ-1-ブテン;2-sec-ブトキシ-1-ブテン;2-tert-ブトキシ-1-ブテン;2-メトキシ-2-ブテン;2-エトキシ-2-ブテン;2-n-プロポキシ-2-ブテン;2-イソプロポキシ-2-ブテン;2-n-ブトキシ-2-ブテン;2-イソブトキシ-2-ブテン;2-sec-ブトキシ-2-ブテン;2-tert-ブトキシ-2-ブテン等が挙げられる。これらのビニルエーテル系モノマーは公知の方法により製造することができる。
上記一般式(1)で表される構成単位を有するポリビニルエーテル系化合物は、その末端を本明細書にて説明する方法及び公知の方法により、所望の構造に変換することができる。変換する基としては、飽和の炭化水素,エーテル、アルコール、ケトン、アミド、ニトリルなどを挙げることができる。
ポリビニルエーテル系化合物としては、次の末端構造を有するものが好ましい。
Figure 2023113463000004
(式中、R11、R21およびR31は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1~8の炭化水素基を示し、R41は炭素数1~10の二価の炭化水素基または炭素数2~20の二価のエーテル結合酸素含有炭化水素基を示し、R51は炭素数1~20の炭化水素基を示し、mはポリビニルエーテルについてのmの平均値が0~10となるような数を示し、mが2以上の場合には、複数のR41Oは同一でも異なっていてもよい。)
Figure 2023113463000005
(式中、R61、R71、R81およびR91は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1~20の炭化水素基を示す。)
Figure 2023113463000006
(式中、R12、R22およびR32は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1~8の炭化水素基を示し、R42は炭素数1~10の二価の炭化水素基または炭素数2~20の二価のエーテル結合酸素含有炭化水素基を示し、R52は炭素数1~20の炭化水素基を示し、mはポリビニルエーテルについてのmの平均値が0~10となるような数を示し、mが2以上の場合には、複数のR42Oは同一でも異なっていてもよい。)
Figure 2023113463000007
(式中、R62、R72、R82およびR92は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1~20の炭化水素基を示す。)
Figure 2023113463000008
(式中、R13、R23およびR33は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1~8の炭化水素基を示す。)
ポリビニルエーテル油は、上記したモノマーをラジカル重合、カチオン重合、放射線重合などによって製造することができる。重合反応終了後、必要に応じて通常の分離・精製方法を施すことにより、目的とする一般式(1)で表される構造単位を有するポリビニルエーテル系化合物が得られる。
(ポリオキシアルキレン油)
ポリオキシアルキレン油としては、炭素数2~4のアルキレンオキシド(エチレンオキシド、プロピレンオキシド等)を、水や水酸基含有化合物を開始剤として重合させる方法等により得られたポリオキシアルキレン化合物が挙げられる。また、ポリオキシアルキレン化合物の水酸基をエーテル化またはエステル化したものであってもよい。ポリオキシアルキレン油中のオキシアルキレン単位は、1分子中において同一であってもよく、2種以上のオキシアルキレン単位が含まれていてもよい。1分子中に少なくともオキシプロピレン単位が含まれることが好ましい。
具体的なポリオキシアルキレン油としては、例えば次の一般式(9)
101-[(OR102-OR103 …(9)
(式中、R101は水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアシル基又は結合部2~6個を有する炭素数1~10の脂肪族炭化水素基、R102は炭素数2~4のアルキレン基、R103は水素原子、炭素数1~10のアルキル基又は炭素数2~10のアシル基、lは1~6の整数、kはk×lの平均値が6~80となる数を示す。)で表される化合物が挙げられる。
上記一般式(9)において、R101、R103におけるアルキル基は直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。該アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などを挙げることができる。このアルキル基の炭素数が10を超えると冷媒との相溶性が低下し、相分離を生じる場合がある。好ましいアルキル基の炭素数は1~6である。
101、R103における該アシル基のアルキル基部分は直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。該アシル基のアルキル基部分の具体例としては、上記アルキル基の具体例として挙げた炭素数1~9の種々の基を同様に挙げることができる。該アシル基の炭素数が10を超えると冷媒との相溶性が低下し、相分離を生じる場合がある。好ましいアシル基の炭素数は2~6である。
101およびR103が、いずれもアルキル基またはアシル基である場合には、R101とR103は同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
lが2以上の場合には、1分子中の複数のR103は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
101が結合部位2~6個を有する炭素数1~10の脂肪族炭化水素基である場合、この脂肪族炭化水素基は鎖状のものであってもよいし、環状のものであってもよい。結合部位2個を有する脂肪族炭化水素基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基などが挙げられる。結合部位3~6個を有する脂肪族炭化水素基としては、例えば、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール;1,2,3-トリヒドロキシシクロヘキサン;1,3,5-トリヒドロキシシクロヘキサンなどの多価アルコールから水酸基を除いた残基を挙げることができる。
この脂肪族炭化水素基の炭素数が10を超えると冷媒との相溶性が低下し、相分離が生じる場合がある。好ましい炭素数は2~6である。
上記一般式(9)中のR102は炭素数2~4のアルキレン基であり、繰り返し単位のオキシアルキレン基としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基が挙げられる。1分子中のオキシアルキレン基は同一であってもよいし、2種以上のオキシアルキレン基が含まれていてもよいが、1分子中に少なくともオキシプロピレン単位を含むものが好ましく、特にオキシアルキレン単位中に50モル%以上のオキシプロピレン単位を含むものが好適である。
上記一般式(9)中のlは1~6の整数で、R101の結合部位の数に応じて定めることができる。例えばR101がアルキル基やアシル基の場合、lは1であり、R101が結合部位2,3,4,5及び6個を有する脂肪族炭化水素基である場合、lはそれぞれ2,3,4,5及び6となる。lは1または2であることが好ましい。kはk×lの平均値が6~80となる数であることが好ましい。
ポリオキシアルキレン油の構造は、下記一般式(10)で表されるポリオキシプロピレンジオールジメチルエーテル、並びに下記一般式(11)で表されるポリ(オキシエチレン/オキシプロピレン)ジオールジメチルエーテルが経済性および前述の効果の点で好適であり、また、下記一般式(12)で表されるポリオキシプロピレンジオールモノブチルエーテル、下記一般式(13)で表されるポリオキシプロピレンジオールモノメチルエーテル、下記一般式(14)で表されるポリ(オキシエチレン/オキシプロピレン)ジオールモノメチルエーテル、下記一般式(15)で表されるポリ(オキシエチレン/オキシプロピレン)ジオールモノブチルエーテル、下記一般式(16)で表されるポリオキシプロピレンジオールジアセテートが、経済性等の点で好適である。
CHO-(CO)-CH …(10)
(式中、hは6~80の数を表す。)
CHO-(CO)-(CO)-CH …(11)
(式中、iおよびjはそれぞれ1以上であり且つiとjとの合計が6~80となる数を表す。)
O-(CO)-H …(12)
(式中、hは6~80の数を示す。)
CHO-(CO)-H …(13)
(式中、hは6~80の数を表す。)
CHO-(CO)-(CO)-H …(14)
(式中、iおよびjはそれぞれ1以上であり且つiとjとの合計が6~80となる数を表す。)
O-(CO)-(CO)-H …(15)
(式中、iおよびjはそれぞれ1以上であり且つiとjとの合計が6~80となる数を表す。)
CHCOO-(CO)-COCH …(16)
(式中、hは6~80の数を表す。)
このポリオキシアルキレン油は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(a-2)炭化水素系冷凍機油
炭化水素系冷凍機油としては、例えば、アルキルベンゼンを用いることができる。
アルキルベンゼンとしては、フッ化水素などの触媒を用いてプロピレンの重合物とベンゼンを原料として合成される分岐アルキルベンゼン、同触媒を用いてノルマルパラフィンとベンゼンを原料として合成される直鎖アルキルベンゼンが使用できる。アルキル基の炭素数は、冷凍油として好適な粘度とする観点から、好ましくは1~30、より好ましくは4~20である。アルキルベンゼン1分子が有するアルキル基の数は、アルキル基の炭素数によるが粘度を設定範囲内とするために、好ましくは1~4、より好ましくは1~3である。
なお、炭化水素系冷凍機油は、冷凍サイクル系内を、冷媒と共に循環することが好ましい。冷凍機油は冷媒と溶解することが最も好ましい形態だが、冷凍サイクル系内を冷媒と共に循環できる冷凍機油であれば、例えば、溶解性が低い冷凍機油(例えば、特許第2803451号公報に記載されている冷凍機油)であっても用いることができる。冷凍機油が冷凍サイクル系内を循環するためには、冷凍機油の動粘度が小さいことが求められる。炭化水素系冷凍機油の動粘度としては、40℃において1mm/s以上50mm/s以下であることが好ましく、1mm/s以上25mm/s以下であることがより好ましい。これらの冷凍機油は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(b)含フッ素樹脂粒子
本開示の冷媒漏洩検知・防止剤において、冷凍機油は、特定の粒度分布を有する含フッ素樹脂粒子を含む。含フッ素樹脂粒子とは、フッ素を含む樹脂(例えばPTFE樹脂)で形成された粒状物である。便宜上、本開示では、「樹脂粒子」は、冷凍機油中に分散している状態にあることを意味し、後述の「樹脂粉末」は、樹脂で形成された粒状物の集合体であるが、乾燥した状態にあることを意味する。「特定の粒度分布」を有するとは、樹脂粒子の粒子径が比較的ブロードで幅が広い粒度分布を有することを意味する。より具体的には、後述するように含フッ素樹脂粒子は、2.0μm~10.0μmのD50および4.0~14.0のD90/D10を有する。
冷凍サイクル装置は、上述のように冷媒回路を有し、冷媒回路の箇所に応じて種々の組成、相状態で作動流体が存在する。例えば、冷媒組成物の割合が大きく、冷凍機油の割合が小さい液状の作動流体、気体状態の冷媒の割合が大きく、液体状態の冷凍機油の割合が小さい気液混合状態の作動流体等が冷媒回路に存在し得る。そのような冷媒回路を構成する要素、例えば配管の壁部に、微細な貫通孔のような欠陥部が生じると、その箇所において存在する作動流体が欠陥部から外部に漏洩する、即ち、冷媒漏洩の可能性がある。
本開示において、含フッ素樹脂粒子は、少なくともその一部分が冷媒漏洩の原因となる孔に入って孔の空隙を少なくとも部分的に、好ましくは孔を実質的に全部塞ぐように作用できる。塞ぐべき孔の孔径は、必ずしも一様ではなく、例えば冷凍サイクル装置の個体差、配置される環境等の要因によって種々異なることがある。冷媒回路が存在する環境に応じて、生じた孔が成長して孔径が大きくなる可能性がある。このような種々の孔径に対応するために、本開示において樹脂粒子は、特定の粒度分布として、比較的広い分布幅およびブロードな分布を有するのが好ましい。この結果、冷媒漏洩の抑制、好ましくは防止を図ることができる。
本開示では、そのような特定の粒度分布として、具体的にはD50およびD90/D10を指標として用いることができる。ここで、D10、D50およびD90は、体積基準の粒度分布における、累積体積割合が10%、50%および90%の時の粒子径をそれぞれ意味する。この粒子径は、後述の実施例で説明するように、樹脂粒子を冷凍機油中に分散させた状態で、遠心沈降式粒度分布測体装置(CAPA-700、Horiba)によって測定される粒度分布から算出されるものである。
本開示において、特定の粒度分布は、2.0μm~10.0μmのD50および4.0~14.0のD90/D10である。D50は樹脂粒子の平均粒径に類似の概念であり、粒子のD50がこの範囲より小さい場合は、小さ過ぎて孔を通過するために孔の閉塞に寄与できない粒子が増える傾向にある。粒子のD50がこの範囲より大きい場合は、大き過ぎて孔に入ることができないために孔の閉塞に寄与できない粒子が増える傾向にある。
50の下限は、好ましくは2.5μm、より好ましくは3.0μm、特に好ましくは3.5μm、更に好ましくは4.0μm、最も好ましくは4.5μm、例えば5.0μmである。D50の上限は、好ましくは9.5μm、より好ましくは9.0μm、特に好ましくは8.5μm、更に好ましくは8.0μmである。
冷凍サイクル装置が存在する環境にも依存するが、例えば樹脂粒子が上述のような上限および/または下限を有する場合には、孔の閉塞に寄与できる粒子の割合が増える傾向になるであろうと予想できるが、このことは、本開示を拘束するものではない。
90/D10の下限は、好ましくは4.5であり、より好ましくは5.0である。D90/D10の上限は、好ましくは13.5、より好ましくは13.0である。このようなD90/D10の値は粒子径の分布幅が大きいことを意味する。D50の場合と同様に、上限および下限に関しては、D90/D10の値が、過度に小さいと、孔を通過して閉塞に寄与できない小さい粒子が増え、また、過度に大きいと、孔に入れないために孔の閉塞に寄与できない大きい粒子が増える傾向にある。
本開示において、好ましい態様では、特定の粒度分布は、3.0μm~8.0μmの標準偏差を含む。標準偏差は、上述のように遠心沈降式粒度分布測体装置によって測定される粒度分布から算出されるものである。この標準偏差の下限はより好ましくは3.5μm、特に好ましくは4.0μmである。この標準偏差の上限はより好ましくは7.5μmである。このような標準偏差の値は粒子径の分布幅が大きいことを意味し、上限および下限に関しては、上述のD90/D10と同様のことが当て嵌まる。
本開示において、樹脂粒子を構成する樹脂は、含フッ素樹脂であれば、いずれの適当なものであってもよく、可撓性を有するのが好ましく、冷媒漏洩の原因となる孔の形状に適合して入り易い。含フッ素樹脂等は、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)樹脂、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)樹脂等であるのがより好ましく、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂が特に好ましく、低分子量PTFE樹脂が殊更好ましい。含フッ素樹脂により構成された樹脂粒子の場合、比重が大きいので、冷凍機油中に均一に分散しやすい。また、耐熱性、耐久性、潤滑性も高く、冷媒組成物や冷凍機油に対しても安定であり、好適である。
低分子量PTFE樹脂は、380℃における溶融粘度が1×10~7×10Pa・sであるのが好ましい。そのような低分子量PTFE樹脂の中でも、炭素数が8以上14以下のパーフルオロカルボン酸及び/またはその塩を実質的に含まないものが好ましく、炭素数が8のパーフルオロカルボン酸(PFOA)及び/またはその塩を実質的に含まないものが更に好ましい。尚、本開示では、「実質的に含まない」とは、質量基準で好ましくは50ppb以下であること、より好ましくは25ppb未満であること、更に好ましくは15ppb以下であること、特に好ましくは5ppb未満であることを意味する。下限は特に限定されず、検出限界未満の量であってよい。上記パーフルオロカルボン酸及び/またはその塩の量は、液体クロマトグラフィーによって測定できる。
低分子量PTFE樹脂の製造方法としては、重合法、放射線分解法、熱分解法等がある。本開示では、重合法により得られた低分子量PTFE樹脂が好ましい。本開示において、放射線分解法で得られた低分子量PTFE樹脂の場合、炭素数が8以上14以下のパーフルオロカルボン酸及び/またはその塩を実質的に含まないものも好ましい。
放射線分解法で得られた低分子量PTFE樹脂は、例えば、国際公開特許(WO)2018/026012、WO2018/026017、WO2019/156036,WO2020/156037、WO2019/156038、WO2019/156039、WO2019/156053、WO2019/156065、WO2019/156067、WO2019/156071に記載された方法により得られた低分子量PTFE樹脂であることが更に好ましい。
このような樹脂粒子は、冷凍機油中にいずれの適当な含量で含まれていてもよい。冷凍機油は、その100質量部に対して例えば下限として、0.0001質量部が好ましく、0.001質量部がより好ましく、0.01質量部が更に好ましく、0.1質量部が特に好ましい。上限として、20質量部が好ましく、10質量部がより好ましく、5質量部が更に好ましく、3質量部が特に好ましい。具体的な1つの態様では、樹脂粒子は、冷凍機油100質量部に対して0.1質量部~10質量部の含量で含まれている。0.0001質量部未満であれば、冷媒漏洩の原因となる孔を実質的に全部塞ぐように作用する効果が小さくなる。20質量部を超えた場合、冷凍機油の粘度が高くなり、冷凍機油の流動性が低下する。
本開示における特定の粒度分布を持つ樹脂粒子を含む冷凍機油は、例えば、広い粒度分布を持つ樹脂粉末を得て、必要に応じて粉砕し、その樹脂粉末を冷凍機油に分散するように混合することによって得ることができる。粉砕方法、分散・混合方法は、いずれの適当な公知の方法であってよく、例えば、ホモジナイザー、ロールミル、サンドミルなどを用いてもよい。この混合と一緒に、あるいはその前または後に、後述の蛍光剤を混合してよい。
(c)蛍光剤
本開示の冷媒漏洩検知・防止剤は(c)蛍光剤を含む。本開示において、「蛍光剤」は、光(例えば可視光線または紫外線)を照射することによって光(例えば蛍光)を発する材料を意味する。そのような蛍光剤は、冷凍サイクル装置の冷媒回路において使用できる限り、特に限定されるものではない。好ましい蛍光剤として使用できる化合物を次に説明するが、蛍光剤はそれらに限定されるものではない。本開示の冷媒漏洩検知・防止剤に含まれる蛍光剤としては、1種の蛍光剤を用いることができ、別の態様では、2種以上の蛍光剤の混合物を用いることもできる。
好ましい蛍光剤としては、例えば、ナフタルイミド系化合物、クマリン系化合物、アントラセン系化合物、フェナントレン系化合物、キサンテン系化合物、チオキサンテン系化合物、ナフトキサンテン系化合物及びフルオレセイン系化合物、並びにこれらの誘導体が挙げられる。紫外線により蛍光を発光する蛍光剤としては、例えばナフタルイミド系化合物及びクマリン系化合物のいずれか又は両方が好ましい。
本開示の冷媒漏洩検知・防止剤に含まれる特に好ましい蛍光剤は、(c-1)ナフタルイミド系化合物、(c-2)ビフェニル構造またはスチルベン構造を有する炭化水素化合物、(c-3)クマリン系化合物および(c-4)分子内に、窒素、酸素及び硫黄を有さず、かつ3環以上の縮合環を有する縮合環式化合物であり、これらの化合物から成る群より選択される少なくとも1種が蛍光剤として含まれるのが好ましい。以下、これらの蛍光剤を詳細に説明する。
(c-1)ナフタルイミド系化合物
本開示において、ナフタルイミド系化合物とは、例えば下記式(17)に示すような骨格構造を有する化合物をいう。
Figure 2023113463000009
式中、RおよびRは、同じでも異なってもよい置換基であり、飽和炭化水素、不飽和炭化水素あるいは芳香族炭化水素でもよい。このようなナフタルイミド系化合物は、得られる生成物が上記式(17)の構造の範囲内であるような、4-クロロ-1,8-ナフタル酸無水物と少なくとも一つのエーテルアミン、少なくとも一つの分岐アルキルアミンまたはこれらの混合物との間の置換反応により得ることができる。
具体的には、以下の式(18)、式(19)のような構造のナフタルイミド系化合物が好ましく挙げられる。
Figure 2023113463000010
上述したナフタルイミド系化合物の好ましい配合量(添加量)は、冷凍機油100質量部に対して、0.001質量部以上10質量部以下が好ましく、より好ましくは0.001質量部以上1質量部以下、更に好ましくは0.001質量部以上0.1質量部以下である。配合量がこの下限値よりも少ないと、冷凍サイクル装置から作動流体が漏出しても発する蛍光量が少なく、漏洩箇所がわかりにくくなるおそれがある。一方、上限値よりも多く配合しても漏洩検知剤としての効果の向上は特に無く、むしろ、冷媒漏洩検知・防止剤の安定性を阻害するおそれがある。
(c-2)ビフェニル構造またはスチルベン構造を有する炭化水素化合物
本開示において、ビフェニル構造を有する炭化水素化合物とは、例えば下記式(20)~(22)に示すような骨格構造を有する化合物をいう。ベンゼン環の数には特に制限はなく、また、結合位置にも制限はない。更に、各ベンゼン環には、一つあるいは複数の炭化水素基(例えばアルキル基)が結合していてもよく、結合位置に制限はない。
Figure 2023113463000011
本開示において、スチルベン構造を有する炭化水素化合物とは、例えば下記式(23)、(24)に示すような骨格構造を有する化合物をいう。スチルベン構造はシスでもトランスでもよい。ベンゼン環の数やスチルベン構造単位の数には特に制限はなく、結合位置にも制限はない。更に、各ベンゼン環には、一つあるいは複数の炭化水素基(例えばアルキル基)が結合していてもよく、結合位置に制限はない。
Figure 2023113463000012
上述した炭化水素化合物としては、例えばp-ビス(o-メチルスチリル)ベンゼン、2,5,2’’’,5’’’-テトラメチル-p-クオーターフェニル、あるいは2’’,3,3’,3’’’-テトラメチル-1,1’:4’,1’’:4’’,1’’’-クアテルベンゼンなどが好ましく挙げられる。
上述した炭化水素化合物の好ましい配合量(添加量)は、冷凍機油100質量部に対して0.001質量部以上10質量部以下が好ましく、より好ましくは0.001質量部以上1質量部以下、更に好ましくは0.001質量部以上0.1質量部以下である。配合量がこの下限値よりも少ないと、冷凍サイクル装置から作動流体が漏出しても発する蛍光量が少なく、漏洩箇所がわかりにくくなるおそれがある。一方、上限値よりも多く配合しても漏洩検知剤としての効果の向上は特に無く、むしろ冷媒漏洩検知・防止剤の安定性を阻害するおそれがある。
(c-3)クマリン系化合物
本開示の冷媒漏洩検知・防止剤は、1つの態様において、クマリン系化合物を含む。クマリン系化合物とは、クマリン(coumarin化学式C)を基本骨格とする誘導体である。たとえば、10-オキソ-2,3,5,6-テトラヒドロ-4H,10H-11-オキサ-3a-アザ-1H-ベンゾ[de]アントラセン-9-カルボン酸エチル、7-(エチルアミノ)-4,6-ジメチル-2H-1-ベンゾピラン-2-オン、7-ジエチルアミノ-4-メチルクマリン、および下記式(25)~(29)に示す化合物などが挙げられる。
Figure 2023113463000013
上述したクマリン系化合物の好ましい配合量(添加量)は、冷凍機油100質量部に対して0.001質量部以上10質量部以下が好ましく、より好ましくは0.001質量部以上1質量部以下、更に好ましくは0.001質量部以上0.1質量部以下である。配合量がこの下限値よりも少ないと、冷凍サイクル装置から作動流体が漏出しても発する蛍光量が少なく、漏洩箇所がわかりにくくなるおそれがある。一方、上限値よりも多く配合しても漏洩検知剤としての効果の向上は特に無く、むしろ冷媒漏洩検知・防止剤の安定性を阻害するおそれがある。
(c-4)分子内に、窒素、酸素及び硫黄を有さず、かつ3環以上の縮合環を有する縮合環式化合物(単に、「縮合環式化合物」とも呼ぶ)
本開示の冷媒漏洩検知・防止剤は、1つの態様において、分子内に窒素、酸素及び硫黄を有さず、かつ3環以上の縮合環を有する縮合環式化合物を含む。この縮合環式化合物は、蛍光性があるが、非発光時は無色であってもよいし、有色であってもよい。
縮合環式化合物の分子内に窒素、酸素及び硫黄が含まれる場合、縮合環式化合物と冷凍機油とが反応しやすく、縮合環式化合物及び冷凍機油が変質することにより、作動流体物の変色、酸価の上昇、スラッジの発生を招くとともに、冷凍サイクル装置内の金属を腐食するおそれがある。特に、冷凍機油として有用なポリアルキレングリコール及びポリオールエステルは、分子内に窒素、酸素及び硫黄を含む縮合環式化合物と反応しやすい。また、分子内に窒素、酸素及び硫黄を含む縮合環式化合物は、冷凍機油と反応しなくても、それ自身が経時的に劣化(変質、分解)しやすいため、経時的に蛍光性能が損なわれ、冷媒漏洩箇所の検知に悪影響が生じる可能性がある。
本開示の縮合環式化合物は、分子内に窒素、酸素及び硫黄を有さないことから、冷凍機油との反応が抑制されるため、冷凍機油の熱安定性及び化学的安定性に優れ、冷凍機油の経時的な劣化(変質、分解)を抑制できる。用いることができる縮合環式化合物は、それ自体が経時的に劣化(変質、分解)しにくいものである。従って、そのような縮合環式化合物を含む冷凍機油、また、それを含む冷媒漏洩検知・防止剤は、経時的な変色、酸価の上昇、スラッジの発生、機器内の金属腐食を抑制できるとともに、蛍光性能の経時的な劣化も抑制し得るものである。
上述した縮合環式化合物の好ましい配合量(添加量)は、冷凍機油100質量部に対して0.001~1.0質量部である。縮合環式化合物の含有量が0.001質量部未満の場合、作動流体の漏洩箇所の検知が困難となる。縮合環式化合物の含有量が1.0質量部超の場合、冷凍機油に縮合環式化合物が溶解できない場合があり、潤滑性等に悪影響を与える可能性がある。縮合環式化合物の含有量が1.0質量%を超えても、冷媒漏洩検知剤としての漏洩箇所の検知精度の向上は期待できない。
縮合環式化合物の配合量は、冷凍機油100質量部に対して0.001~0.8質量部であることが好ましい。また、縮合環式化合物の配合量は、冷凍機油全量基準(冷凍機油およびそれに配合された添加剤の合計量基準)で0.001質量部以上であることが好ましく、0.002質量部以上であることがより好ましく、0.5質量部以下であることが好ましく、0.2質量部以下であることがより好ましく、0.1質量部以下であることが更に好ましい。
縮合環式化合物は、分子内に窒素、酸素及び硫黄を有さず、かつ3環以上の縮合環を有するという条件を満たしていれば、置換基を有するものであってもよい。置換基はアルキル基、アリール基等の炭化水素基が好ましく、アリール基がより好ましい。本開示において、アリール基とは、単純芳香環のみならず、ナフチル等の多環芳香族炭化水素基を含むものとする。このような置換基を有する縮合環式化合物を用いることで、熱安定性及び化学的安定性により優れた冷媒漏洩検知・防止剤を提供できる。
縮合環式化合物としては、ペリレン系化合物、ナフタセン系化合物及びアントラセン系化合物が具体的に挙げられる。
ペリレン系化合物は、下記一般式(30)で示されるペリレン、及び該ペリレンに置換基を有する化合物が挙げられる。置換基としては、アルキル基、アリール基等の炭化水素基等が挙げられる。
Figure 2023113463000014
ペリレン系化合物としては、冷凍機油への溶解性及び潤滑性の低下の抑制の観点から、アルキル基又はアリール基を置換基として有するペリレンが好ましく、アリール基を置換基として有するペリレンがより好ましい。置換基を有するペリレンの具体例としては、2,3,10,11-テトラメチルペリレン、3-メチルペリレン、3,7-ジプロピルペリレン、2,5,7,10-テトラフェニルペリレン、3,9-ビス(2-ナフチル)ペリレンが挙げられる。
ナフタセン系化合物は、下記一般式(31)で示されるナフタセン、及び該ナフタセンに置換基を有する化合物が挙げられる。置換基としては、アルキル基、アリール基等の炭化水素基等が挙げられる。
Figure 2023113463000015
ナフタセン系化合物としては、冷凍機油への溶解性及び潤滑性の低下の抑制の観点から、アルキル基又はアリール基を置換基として有するナフタセンが好ましく、アリール基を置換基として有するナフタセンがより好ましい。置換基を有するナフタセンの具体例としては、5,6,11,12-テトラフェニルナフタセン、1-メチルナフタセン、2,9-ジオクチルナフタセンが挙げられる。この中でも、5,6,11,12-テトラフェニルナフタセンが好ましい。
アントラセン系化合物は、下記一般式(32)で示されるアントラセン、及び該アントラセンに置換基を有する化合物が挙げられる。置換基としては、アルキル基、アリール基等の炭化水素基等が挙げられる。
Figure 2023113463000016
アントラセン系化合物としては、冷凍機油への溶解性及び潤滑性の低下の抑制の観点から、アルキル基又はアリール基を置換基として有するアントラセンが好ましく、アリール基を置換基として有するアントラセンがより好ましい。置換基を有するアントラセンの具体例としては、9-フェニルアントラセン、9,10-ジフェニルアントラセン、9-9’-ビアントラセン、9-メチルアントラセン、2-エチルアントラセンが挙げられる。この中でも、9-フェニルアントラセン、9,10-ジフェニルアントラセン、9-9’-ビアントラセンのいずれかが好ましい。
本開示において、冷凍機油は、縮合環式化合物以外の蛍光性化合物(以下、「その他の蛍光性化合物」と称する場合がある。)を含有してもよいが、その含有量は微量であることが好ましい。具体的には、その他の蛍光性化合物の含有量は、冷凍機油の全量基準(冷凍機油およびそれに配合された添加剤の合計量基準)で0.1質量%未満であることが好ましく、0.05質量%未満であることがより好ましく、0.01質量%未満であることが更に好ましく、0.005質量%未満であることがより更に好ましい。
(d)添加剤
本開示の冷媒漏洩検知・防止剤は、冷凍機油、含フッ素樹脂粒子および蛍光剤に加えて、以下に説明する添加剤の少なくとも1種を必要に応じて含んでよい。そのような添加剤としては、酸捕捉剤、極圧剤、酸化防止剤、消泡剤、油性剤、銅不活性化剤等の金属不活化剤、摩耗防止剤および相溶化剤等が挙げられる。
酸捕捉剤には、フェニルグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエーテル、アルキレングリコールグリシジルエーテル、シクロヘキセンオキシド、α-オレフィンオキシド、エポキシ化大豆油などのエポキシ化合物、カルボジイミド等を用いることができる。なお、これらのうち、相溶性の観点から、フェニルグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエーテル、アルキレングリコールグリシジルエーテル、シクロヘキセンオキシド、α-オレフィンオキシドが好ましい。アルキルグリシジルエーテルのアルキル基、及びアルキレングリコールグリシジルエーテルのアルキレン基は、分岐を有していてもよい。これらの炭素数は、3以上30以下であればよく、4以上24以下であればより好ましく、6以上16以下であれば更に好ましい。α-オレフィンオキシドは、全炭素数が4以上50以下であればよく、4以上24以下であればより好ましく、6以上16以下であれば更に好ましい。酸捕捉剤は、1種だけを用いてもよく、複数種類を併用することも可能である。
極圧剤には、例えば、リン酸エステル類を含むものを用いることができる。リン酸エステル類としては、リン酸エステル、亜リン酸エステル、酸性リン酸エステル、及び酸性亜リン酸エステル等を用いることができ、リン酸エステル、亜リン酸エステル、酸性リン酸エステル、及び酸性亜リン酸エステルのアミン塩を含むものを用いることもできる。
リン酸エステルには、トリアリールホスフェート、トリアルキルホスフェート、トリアルキルアリールホスフェート、トリアリールアルキルホスフェート、トリアルケニルホスフェート等がある。リン酸エステルを具体的に列挙すると、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、ベンジルジフェニルホスフェート、エチルジフェニルホスフェート、トリブチルホスフェート、エチルジブチルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジクレジルフェニルホスフェート、エチルフェニルジフェニルホスフェート、ジエチルフェニルフェニルホスフェート、プロピルフェニルジフェニルホスフェート、ジプロピルフェニルフェニルホスフェート、トリエチルフェニルホスフェート、トリプロピルフェニルホスフェート、ブチルフェニルジフェニルホスフェート、ジブチルフェニルフェニルホスフェート、トリブチルフェニルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリ(2-エチルヘキシル)ホスフェート、トリデシルホスフェート、トリラウリルホスフェート、トリミリスチルホスフェート、トリパルミチルホスフェート、トリステアリルホスフェート、トリオレイルホスフェート等がある。
亜リン酸エステルの具体的としては、トリエチルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト、トリ(ノニルフェニル)ホスファイト、トリ(2-エチルヘキシル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリイソオクチルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、トリステアリルホスファイト、トリオレイルホスファイト等がある。
酸性リン酸エステルの具体的としては、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、テトラコシルアシッドホスフェート、イソデシルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、トリデシルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート、イソステアリルアシッドホスフェート等がある。
酸性亜リン酸エステルの具体的としては、ジブチルハイドロゲンホスファイト、ジラウリルハイドロゲンホスファイト、ジオレイルハイドゲンホスファイト、ジステアリルハイドロゲンホスファイト、ジフェニルハイドロゲンホスファイト等がある。以上のリン酸エステル類の中で、オレイルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェートが好適である。
リン酸エステル、亜リン酸エステル、酸性リン酸エステル又は酸性亜リン酸エステルのアミン塩に用いられるアミンのうちモノ置換アミンの具体例としては、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、ベンジルアミン等がある。ジ置換アミンの具体例としては、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジオクチルアミン、ジラウリルアミン、ジステアリルアミン、ジオレイルアミン、ジベンジルアミン、ステアリル・モノエタノールアミン、デシル・モノエタノールアミン、ヘキシル・モノプロパノールアミン、ベンジル・モノエタノールアミン、フェニル・モノエタノールアミン、トリル・モノプロパノール等がある。トリ置換アミンの具体例としては、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリシクロヘキシルアミン、トリオクチルアミン、トリラウリルアミン、トリステアリルアミン、トリオレイルアミン、トリベンジルアミン、ジオレイル・モノエタノールアミン、ジラウリル・モノプロパノールアミン、ジオクチル・モノエタノールアミン、ジヘキシル・モノプロパノールアミン、ジブチル・モノプロパノールアミン、オレイル・ジエタノールアミン、ステアリル・ジプロパノールアミン、ラウリル・ジエタノールアミン、オクチル・ジプロパノールアミン、ブチル・ジエタノールアミン、ベンジル・ジエタノールアミン、フェニル・ジエタノールアミン、トリル・ジプロパノールアミン、キシリル・ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン等がある。
上記以外の極圧剤としては、例えば、モノスルフィド類、ポリスルフィド類、スルホキシド類、スルホン類、チオスルフィネート類、硫化油脂、チオカーボネート類、チオフェン類、チアゾール類、メタンスルホン酸エステル類等の有機硫黄化合物系の極圧剤、チオリン酸トリエステル類等のチオリン酸エステル系の極圧剤、高級脂肪酸、ヒドロキシアリール脂肪酸類、多価アルコールエステル類、アクリル酸エステル類等のエステル系の極圧剤、塩素化パラフィン等の塩素化炭化水素類、塩素化カルボン酸誘導体等の有機塩素系の極圧剤、フッ素化脂肪族カルボン酸類、フッ素化エチレン樹脂、フッ素化アルキルポリシロキサン類、フッ素化黒鉛等の有機フッ素化系の極圧剤、高級アルコール等のアルコール系の極圧剤、ナフテン酸塩類(ナフテン酸鉛等)、脂肪酸塩類(脂肪酸鉛等)、チオリン酸塩類(ジアルキルジチオリン酸亜鉛等)、チオカルバミン酸塩類、有機モリブデン化合物、有機スズ化合物、有機ゲルマニウム化合物、ホウ酸エステル等の金属化合物系の極圧剤が挙げられる。
酸化防止剤には、例えば、フェノール系の酸化防止剤やアミン系の酸化防止剤を用いることができる。フェノール系の酸化防止剤には、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(DBPC)、2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,4-ジメチル-6-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、ビスフェノールA等がある。アミン系の酸化防止剤には、N,N’-ジイソプロピル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジ-sec-ブチル-p-フェニレンジアミン、フェニル-α-ナフチルアミン、N.N’-ジ-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N-ジ(2-ナフチル)-p-フェニレンジアミン等がある。なお、酸化防止剤には、酸素を捕捉する酸素捕捉剤も用いることができる。
消泡剤としては、例えば、ケイ素化合物を用いることができる。
油性剤としては、例えば、高級アルコール類、脂肪酸等を用いることができる。
銅不活性化剤等の金属不活化剤としては、ベンゾトリアゾールやその誘導体等を用いることができる。
摩耗防止剤としては、ジチオリン酸亜鉛等を用いることができる。
相溶化剤としては、特に限定されず、一般に用いられる相溶化剤の中から適宜選択することができ、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。相溶化剤としては、例えば、ポリオキシアルキレングリコールエーテル、アミド、ニトリル、ケトン、クロロカーボン、エステル、ラクトン、アリールエーテル、フルオロエーテルおよび1,1,1-トリフルオロアルカン等が挙げられる。相溶化剤としては、ポリオキシアルキレングリコールエーテルが特に好ましい。
なお、冷凍機油には、必要に応じて、耐荷重添加剤、塩素捕捉剤、清浄分散剤、粘度指数向上剤、耐熱性向上剤、安定剤、腐食防止剤、耐熱性向上剤、流動点降下剤、および防錆剤等を添加することも可能である。
上記各添加剤の配合量は、冷凍機油に含まれる割合が0.01質量%以上5質量%以下であってよく、0.05質量%以上3質量%以下であることが好ましい。冷媒組成物と冷凍機油とを合わせた作動流体中の添加剤の配合割合が、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。
冷凍機油は、塩素濃度が50ppm以下となっていることが好ましく、硫黄濃度が50ppm以下となっていることが好ましい。
(e)冷媒および冷媒組成物
本開示の冷媒漏洩検知・防止剤を適用できる冷凍サイクル装置において、その作動流体は冷媒組成物を含む。冷媒組成物は、少なくとも1種の冷媒のみから構成されていてよいが、それに加えて、必要に応じて以下に説明する他の成分を少なくとも1種含んでよい。
本開示において、「冷媒」なる用語には、ISO817(国際標準化機構)で定められた、冷媒の種類を表すRで始まる冷媒番号(ASHRAE番号)が付された化合物が少なくとも含まれ、更に、冷媒番号が未だ付されていないとしても、それらと同等の冷媒としての特性を有するものが含まれる。冷媒は、化合物の構造の面で、「フルオロカーボン系化合物」と「非フルオロカーボン系化合物」とに大別される。
「フルオロカーボン系化合物」には、クロロフルオロカーボン(CFC)、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)及びハイドロフルオロカーボン(HFC)が含まれる。「非フルオロカーボン系化合物」としては、プロパン(R290)、プロピレン(R1270)、ブタン(R600)、イソブタン(R600a)、二酸化炭素(R744)及びアンモニア(R717)等が挙げられる。「冷媒」には、上述のように複数種類の冷媒が混合された混合物も含まれる。
本開示において、「冷媒組成物」なる用語には、冷媒そのもの(冷媒の混合物を含む)と、その他の成分を更に含有するものとが含まれる。上述のように冷媒組成物を冷凍サイクル装置における作動流体として使用するに際しては、通常、少なくとも冷凍機油と混合して用いられる。従って、冷媒組成物は、好ましくは冷凍機油を実質的に含まない。具体的には、冷媒組成物は、その全体の質量を基準として冷凍機油の含有量が好ましくは0~1質量%であり、より好ましくは0~0.1質量%である。
(e-1)冷媒
本開示の冷媒漏洩検知・防止剤を適用できる冷凍サイクル装置において使用できる冷媒として、R410A、R407C、R404AおよびR32等のHFC冷媒が挙げられる。R1123、R1234yfおよびR1234zeなどのHFO系冷媒を用いてもよく、例えば下記の表1および表2に示す冷媒1~75を用いることができる。
Figure 2023113463000017
Figure 2023113463000018
(e-2)水
本開示の冷媒漏洩検知・防止剤を使用できる冷凍サイクル装置において使用できる冷媒組成物は微量の水を含んでもよい。冷媒組成物における含水割合は、冷媒組成物基準で0.1質量%以下とすることが好ましい。
(e-3)トレーサー
本開示の冷媒漏洩検知・防止剤を使用できる冷凍サイクル装置において使用できる冷媒組成物はトレーサーを含んでもよい。トレーサーは、冷媒組成物の希釈、汚染、その他何らかの変更があった場合、その変更を追跡できるように検出可能な濃度で本開示の冷媒組成物に添加される。冷媒組成物は、トレーサーとして、1種を単独で含有してもよいし、2種以上を含有してもよい。
トレーサーとしては、特に限定されず、一般に用いられるトレーサーの中から適宜選択することができる。好ましくは、冷媒組成物に用いる冷媒に不可避的に混入する不純物とはなり得ない化合物をトレーサーとして選択する。
トレーサーとしては、例えば、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、クロロフルオロカーボン、ハイドロクロロカーボン、フルオロカーボン、重水素化炭化水素、重水素化ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロカーボン、フルオロエーテル、臭素化化合物、ヨウ素化化合物、アルコール、アルデヒド、ケトン、亜酸化窒素(N2O)等が挙げられる。
トレーサーとしては、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、クロロフルオロカーボン、ハイドロクロロカーボン、フルオロカーボン及びフルオロエーテルが特に好ましい。
上記トレーサーとしては、具体的には、以下の化合物が好ましい:
FC-14(テトラフルオロメタン、CF
HCC-40(クロロメタン、CHCl)
HFC-23(トリフルオロメタン、CHF
HFC-41(フルオロメタン、CHCl)
HFC-125(ペンタフルオロエタン、CFCHF
HFC-134a(1,1,1,2-テトラフルオロエタン、CFCHF)
HFC-134(1,1,2,2-テトラフルオロエタン、CHFCHF
HFC-143a(1,1,1-トリフルオロエタン、CFCH
HFC-143(1,1,2-トリフルオロエタン、CHFCHF)
HFC-152a(1,1-ジフルオロエタン、CHFCH
HFC-152(1,2-ジフルオロエタン、CHFCHF)
HFC-161(フルオロエタン、CHCHF)
HFC-245fa(1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン、CFCHCHF
HFC-236fa(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、CFCHCF
HFC-236ea(1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパン、CFCHFCHF
HFC-227ea(1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン、CFCHFCF)
HCFC-22(クロロジフルオロメタン、CHClF
HCFC-31(クロロフルオロメタン、CHClF)
CFC-1113(クロロトリフルオロエチレン、CF=CClF)
HFE-125(トリフルオロメチル-ジフルオロメチルエーテル、CFOCHF
HFE-134a(トリフルオロメチル-フルオロメチルエーテル、CFOCHF)
HFE-143a(トリフルオロメチル-メチルエーテル、CFOCH
HFE-227ea(トリフルオロメチル-テトラフルオロエチルエーテル、CFOCHFCF
HFE-236fa(トリフルオロメチル-トリフルオロエチルエーテル、CFOCHCF
トレーサー化合物は、冷媒組成物の全量基準(冷媒および含まれ得る他の成分の合計量)で約10質量百万分率(ppm)~約1000ppmの合計濃度で冷媒組成物中に存在し得る。トレーサー化合物は、好ましくは約30ppm以上、より好ましくは50ppm以上の合計濃度で冷媒組成物中に存在し、好ましくは約500ppm以下、より好ましくは300ppm以下の合計濃度で冷媒組成物中に存在する。
(e-4)安定剤
本開示の冷媒漏洩検知・防止剤を使用できる冷凍サイクル装置において使用できる冷媒組成物は、安定剤1種を単独で含有してもよいし、2種以上を含有してもよい。安定剤としては、特に限定されず、一般に用いられる安定剤の中から適宜選択することができる。安定剤としては、例えば、ニトロ化合物、エーテル類及びアミン類等が挙げられる。
ニトロ化合物としては、例えば、ニトロメタン及びニトロエタン等の脂肪族ニトロ化合物、並びにニトロベンゼン及びニトロスチレン等の芳香族ニトロ化合物等が挙げられる。エーテル類としては、例えば、1,4-ジオキサン等が挙げられる。アミン類としては、例えば、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルアミン、ジフェニルアミン等が挙げられる。その他にも、ブチルヒドロキシキシレン、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
安定剤の含有割合は、特に限定されず、冷媒組成物の全量基準で、通常、0.01質量%以上とすることが好ましく、0.05質量%以上とすることがより好ましく、5質量%以下とすることが好ましく、2質量%以下とすることがより好ましい。
(e-5)重合禁止剤
本開示の冷媒漏洩検知・防止剤を使用できる冷凍サイクル装置において使用できる冷媒組成物は、重合禁止剤1種を単独で含有してもよいし、2種以上を含有してもよい。重合禁止剤としては、特に限定されず、一般に用いられる重合禁止剤の中から適宜選択することができる。
重合禁止剤としては、例えば、4-メトキシ-1-ナフトール、ヒドロキノン、ヒドロキノンメチルエーテル、ジメチル-t-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
重合禁止剤の含有割合は、特に限定されず、冷媒組成物の全量基準で、通常、0.01質量%以上とすることが好ましく、0.05質量%以上とすることがより好ましく、5質量%以下とすることが好ましく、2質量%以下とすることがより好ましい。
以下、実施例および比較例により本開示の冷媒漏洩検知・防止剤をより具体的に説明するが、本開示はそのような実施例によって限定されるものではない。
<実施例および比較例の樹脂粒子の調製>
国際公開第2009/020187号に開示の実施例7に記載の方法に基づいて低分子量PTFE(溶融粘度:14000Pa・s、融点:329℃)の水性分散液(固形分濃度:20.0%)を得た。得られた低分子量PTFE水性分散液3000gに硝酸20gを加え、激しい攪拌を与えることで凝析させ、その後、中和するため、24質量%の水酸化ナトリウム水溶液20gを加え、湿潤状態のPTFE樹脂を得た。
得られた湿潤状態のPTFE樹脂を濾別し、純水1800gを用いて水洗した。160℃の熱風循環式乾操機にて18時間乾燥させることにより、粉末状態の低分子量PTFEの樹脂粒子を得た。必要に応じて、得られた樹脂粒子をボールミルにより粉砕した。
実施例および比較例に用いた粉末状態の低分子量PTFEの樹脂粒子の粒度分布の調整は、凝析時の攪拌条件(具体的には回転数、温度等)、および/または得られた低分子量PTFE樹脂粉末のボールミルによる粉砕条件を適宜選択して実施し、それによって実施例および比較例に用いたPTFE樹脂粒子を得た。
<冷凍機油中の樹脂粒子の粒度分布の測定>
樹脂粒子を含む冷凍機油(市販の冷凍機油(エーテル系冷凍機油)100質量部に対して樹脂粒子1.0質量部を含む)を超音波振動機にて30分間処理して均一な分散液を得、遠心沈降式粒度分布測体装置(CAPA-700、Horiba)にて粒度分布(D10、D50およびD90ならびに標準偏差)を測定した。
<冷媒漏洩率の測定>
冷凍サイクル装置として空調装置(冷媒R-410A:充填量0.75kg、市販の冷凍機油(エーテル系冷凍機油):充填量0.3L)を冷房運転した。外気温および室内温度は共に40℃であり、冷媒圧力は3.2MPa以上となるようにした。運転時間は150時間とした。
空調装置の銅製配管部分(室外ユニットと室内ユニットとをつなぐ接続配管である、蒸発した冷媒が通過するガス側冷媒連絡配管)を、ギ酸水溶液(0.005質量%)が存在する環境(温度40℃、湿度90%以上に調整)において保持した。これにより、銅製配管部分には、いわゆる微小な「蟻の巣状の腐食孔」(特開2011-75221号参照)が生じた。
冷房運転開始前に銅製配管部分に窒素圧(3.2MPa)を加えて窒素圧の経時変化を測定し、減少した圧力から窒素の単位時間当たりの漏れ量を漏洩速度として算出した。測定に使用した銅製配管は、既使用のもの(従って、冷媒漏洩の原因となり得る貫通孔を有し得る)であり、0.5~3.0g-N/hrの運転前漏洩速度を有した。150時間運転した後、該当する配管部分から冷媒ガスを除去した後、同様にして銅製配管部分からの窒素の漏れ量を測定して運転後漏洩速度を求めた。
(冷媒漏洩率)=[(運転後漏洩速度)/(運転前漏洩速度)]×100(%)
<実施例1>
市販の冷凍機油(エーテル系冷凍機油)100質量部に下記表3に示す実施例1のPTFE樹脂粒子を1.0質量部、蛍光剤Aを0.1質量部加え、ホモジナイザーを用いて混合して本開示の冷媒漏洩検知・防止剤を得た。得られた冷媒漏洩検知・防止剤50mlを特開2013-139934号公報に準拠して、室外ユニットの圧縮機の配管に吸入させた。この冷凍サイクル装置は、本開示の冷媒漏洩検知・防止剤を含む作動流体を含む。その後、上述のように空調装置を運転した。
<実施例2>
実施例1において蛍光剤Aを0.5質量部加えたこと以外は、実施例1と同様に冷媒漏洩検知・防止剤を吸入させて空調装置を運転した。
<実施例3>
実施例1のPTFE樹脂粒子の代わりに、下記表3に示す実施例3のPTFE樹脂粒子を用いたこと以外は、実施例1と同様に冷媒漏洩検知・防止剤を吸入させて空調装置を運転した。
<実施例4>
実施例3において蛍光剤Aを0.5質量部用いたこと以外は、実施例3と同様に冷媒漏洩検知・防止剤を吸入させて空調装置を運転した。
<比較例1>
PTFE樹脂粒子を含むが、蛍光剤を含まない冷凍機油を用いて、実施例3と同様に冷凍機油を吸入させて空調装置を運転した。
<比較例2>
樹脂粒子を含まないが、蛍光剤Aを含む冷凍機油を用いて、実施例1と同様に冷凍機油を吸入させて空調装置を運転した。
<比較例3>
蛍光剤Aに代えて蛍光剤Bを含む冷凍機油を用いたこと以外は、実施例1と同様に冷凍機油を吸入させて空調装置を運転した。
<比較例4>
蛍光剤Aに代えて蛍光剤Bを含む冷凍機油を用いたこと以外は、実施例2と同様に冷凍機油を吸入させて空調装置を運転した。
<比較例5>
実施例1のPTFE樹脂粒子の代わりに、下記表3に示す比較例5のPTFE樹脂粒子を含む冷凍機油を用いたこと以外は、実施例1と同様に冷凍機油を吸入させて空調装置を運転した。
<比較例6>
蛍光剤Aに代えて蛍光剤Bを含む冷凍機油を用いたこと以外は比較例5と同様に冷凍機油を吸入させて空調装置を運転した。
<熱安定性試験>
実施例および比較例において用いたPTFE樹脂粒子および/または蛍光剤を含む冷凍機油について、熱安定性試験を実施した。試験に際しては、容積200mLのオートクレーブに、冷凍機油および金属触媒(鉄、銅およびアルミニウムからなる)を充填して封管し、175℃にて168時間保持した後、酸価を測定した。酸価は、JIS K2501の「潤滑油中和試験方法」に基づき、電位差法により測定した。
<冷媒漏洩検知に関する評価>
空調装置の運転中に、空調装置のガス側冷媒連絡配管の外側表面に紫外線を照射した。配管の外側表面を目視にて観察し、蛍光を発する箇所の有無を確認して冷媒漏洩箇所の特定の可否を評価した。実施例および比較例において冷凍機油が蛍光剤を含む場合は、蛍光を発光する箇所を確認でき、従って、冷媒漏洩箇所を特定できることを確認した。即ち、蛍光剤を使用することによって冷媒漏洩を検知できることが分った。
実施例および比較例に用いた樹脂粒子の量、その粒度分布および蛍光剤量、実施例および比較例における冷媒漏洩抑制の評価、熱安定性試験の評価および冷媒漏洩箇所の特定に関する評価の結果を下記の表3に示す。
Figure 2023113463000019
上記の表3から明らかなように、本開示に基づいて特定の粒度分布を有する樹脂粒子と蛍光剤とを冷凍機油と組み合わせて用いると、冷媒漏洩を検知でき、冷媒漏洩を効率的に抑制できることが分かる。
<参考例1>
上述の空調装置の蟻の巣状の腐食孔を有する配管部分に対してより大きい腐食孔を有する別の銅製配管部分を並列に接続したことを除いて、実施例1と同様に空調装置を運転した。より大きい腐食孔を有する配管部分について、上述の運転前漏洩速度を測定したところ、30.0g-N/hrであった。
別の配管部分については、漏洩防止はできなかったものの、腐食孔から本開示の冷媒漏洩検知・防止剤が腐食孔から漏洩した結果、配管部分の外側表面に紫外線を照射したところ、目視にて冷媒漏洩箇所を特定でき、また、蛍光剤が発する蛍光によって、径の大きな腐食孔を存在することを確認できた。
以上、本開示の冷媒漏洩検知・防止剤を、空調装置の冷媒漏洩を検知して防止できる冷媒漏洩検知・防止剤として説明したが、本開示の冷媒漏洩検知・防止剤は、冷媒漏洩ではなく、配管で輸送する他の流体の漏洩検知・防止剤としても使用できる。この漏洩検知・防止剤は、含フッ素樹脂粒子および蛍光剤に加えて、冷凍機油に代えて、他の流体および/または他の流体への悪影響が少ない、好ましくは影響が実質的に無い別の流体を含んでよい。別の態様では、この漏洩検知・漏洩防止剤は、含フッ素樹脂粒子および蛍光剤のみから構成されていてよい。
具体的には、以下のような各種産業分野において、様々な流体(例えば気体、液体等)、例えば、清水、海水、薬液、燃料油、潤滑油、蒸気、都市ガス、プロセスガス(製造プロセスにおいて使用される不活性ガス、特殊ガス等)等を輸送する配管、例えば金属配管(ステンレス鋼、アルミニウム、炭素鋼、合金鋼、銅製の配管)におけるそのような流体の漏洩検知・防止剤としても適用することもができる。
(1)化学プラント、動力プラント、タンク
(2)医療機器
(3)輸送機械(自動車、鉄道、航空機、船舶)
(4)建設機械(油圧ショベル、建設用クレーン、トラクタ)
(5)家庭用・業務用の電気製品(洗濯機、冷蔵庫)
(6)建築設備(建屋配管、建屋、屋根)
(7)土木設備(海洋・港湾構造物、海水熱交換器、パイプライン、埋設管)
(8)電力設備(ボイラー、蒸気管、原子炉配管)
本開示の冷媒漏洩検知・防止剤は、冷凍サイクル装置における冷媒漏洩を検知し、冷媒漏洩を抑制または防止しようとする場合に好適である。
1 空気調和装置
2 室外ユニット
3 室内ユニット
4 圧縮機
5 室外熱交換器
6 膨張弁
7 室外熱交換器
8 ガス側冷媒連絡配管
9 液側冷媒連絡配管
10 冷媒回路または四路切換弁
11 アキュームレータ
12 室外ファン
13 室内ファン
14 液側閉鎖弁
15 ガス側閉鎖弁

Claims (6)

  1. (1)含フッ素樹脂粒子と、
    (2)蛍光剤と、
    を含む冷凍機油を含み、含フッ素樹脂粒子は2.0μm~10.0μmのD50および4.0~14.0のD90/D10を有する、冷媒漏洩検知・防止剤であって、
    蛍光剤は、(a)ナフタルイミド化合物、(b)ビフェニル構造またはスチルベン構造を有する炭化水素化合物、(c)クマリン化合物および(d)分子内に、窒素、酸素及び硫黄を有さず、かつ3環以上の縮合環を有する蛍光性の縮合環式化合物から成る群より選択される少なくとも1種である、冷媒漏洩検知・防止剤。
  2. 含フッ素樹脂粒子の含有量は、冷凍機油100重量部に対して0.1質量部~10質量部である、請求項1に記載の冷媒漏洩検知・防止剤。
  3. 含フッ素樹脂粒子は、3.0μm~8.0μmの標準偏差を有する、請求項1または2に記載の冷媒漏洩検知・防止剤。
  4. 含フッ素樹脂粒子はポリテトラフルオロエチレン樹脂粒子である、請求項1~3のいずれかに記載の冷媒漏洩検知・防止剤。
  5. 請求項1~4の何れかに記載の冷媒漏洩検知・防止剤と、冷媒を含む冷媒組成物とを含む冷凍機用作動流体を含む、冷凍サイクル装置。
  6. (1)含フッ素樹脂粒子と、
    (2)蛍光剤と、
    を含む、配管で輸送される流体の漏洩検知・防止剤であって、
    含フッ素樹脂粒子は2.0μm~10.0μmのD50および4.0~14.0のD90/D10を有する、漏洩検知・防止剤。
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