JP2023111574A - 固体電解質、固体電解質の製造方法、全固体リチウムイオン電池、及び、水素発生装置 - Google Patents

固体電解質、固体電解質の製造方法、全固体リチウムイオン電池、及び、水素発生装置 Download PDF

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Abstract

【課題】イオン伝導性及び基材との密着性が良好な固体電解質、その製造方法、及び全固体リチウムイオン電池並びに固体電解質を備える水素発生装置を提供する。
【解決手段】アルミニウムを含む金属化合物と、ギ酸、炭酸、リン酸、無水リン酸、シュウ酸、クエン酸、及び、ペルオキソ酸から選ばれる酸化合物由来の有機成分とを含む金属酸化物非晶質膜、並びにリチウム塩化合物由来の遊離リチウムイオンを含む固体電解質であって、遊離リチウムイオンは、少なくとも金属酸化物非晶質膜が有する三次元立体構造の空隙に含まれる固体電解質、固体電解質の製造方法、全固体リチウムイオン電池及び水素発生装置。
【選択図】なし

Description

本開示は、固体電解質、固体電解質の製造方法、全固体リチウムイオン電池、及び、水素発生装置に関する。
従来、リチウムイオン電池(LIB)、燃料電池、エレクトロクロミックデバイス(ECD)など、イオン輸送を動作に必要とするデバイスには、イオン伝導体として有機電解液が用いられてきた。しかし、有機電解液は可燃性であり、安全性及び耐久性の観点から固体のイオン伝導体としての固体電解質が望まれている。
なかでも、全固体電池は、液を内包する従来型の電池に比較して、セパレータが不要であること、液絡の回避のため従来は行い難かった単一包装内での積層化が可能になるなどの利点を有し、安定性に優れ、その応用範囲は広い。
固体電解質としては、酸化ケイ素、酸化チタンなどの非晶質金属酸化物と上記金属酸化物中に含有された金属イオンとを含む無機固体イオン伝導体が提案されている(特許文献1参照)。また、酸化ケイ素、酸化チタンなどの金属酸化物の前駆体を含む反応液を基材に塗布し、非晶質且つ電子絶縁性の金属酸化物薄膜を形成し、前記金属酸化物薄膜に金属イオンをドープする無機固体イオン伝導体の製造方法が提案されている(特許文献2参照)。
また、電解質材料としては、有機系の高分子固体電解質を用いる試みもなされ、例えば、ポリエチレンオキサイド(PEO)等の類縁体中にキャリアイオンとなる電解質塩を溶解させた高分子固体電解質が検討されている(非特許文献1参照)。
特開2012-160440号公報 特開2013-168352号公報
Poly(ethylene oxide)-based electrolytes for lithium-ion batteries, J. Mater. Chem. A, vol.3、No.38、pp.19218-19253 (2015年)
特許文献1及び特許文献2に記載の無機固体イオン伝導体は、イオン伝導性が十分ではなく、且つ、無機固体イオン伝導体の製造に際しては、まず、非導電性の金属酸化物薄膜を形成し、そこに金属イオンをドープすることが必要であり、製造方法が煩雑であった。
非特許文献1に記載の固体電解質は、有機高分子材料を含み、揮発性がなく、成形も容易ではあるが、材料自体が可燃性であり、経時により分解するなどの問題があり、耐久性及び安全性の観点からはなお、改良の余地がある。
本発明のある実施形態が解決しようとする課題は、イオン伝導性及び基材との密着性が良好な固体電解質、充放電性能が良好な全固体リチウムイオン電池、及び、上記固体電解質を備える水素発生装置を提供することである。
また、本発明の別の実施形態が解決しようとする課題は、イオン伝導性及び基材との密着性が良好な固体電解質の簡易な製造方法を提供することである。
既述の課題の解決手段は、以下の実施形態を含む。
<1> アルミニウムを含む金属化合物と、ギ酸、炭酸、リン酸、無水リン酸シュウ酸、クエン酸、及び、ペルオキソ酸から選ばれる酸化合物由来の有機成分とを含む金属酸化物非晶質膜、並びにリチウム塩化合物由来の遊離リチウムイオンを含む固体電解質であって、前記遊離リチウムイオンは、少なくとも前記金属酸化物非晶質膜が有する三次元立体構造の空隙に含まれる固体電解質。
<2> 前記遊離リチウムイオンは、下記リチウム塩化合物群より選択される化合物由来のイオンである<1>に記載の固体電解質。
(化合物群)
LiPF、LiPF(CFCF、LiPF(C、LiSCN、
LiPF(CF、LiN(CN)、LiClO、LiBF、LiAsF
LiCFSO、Li(FSON、Li(CFSOC、LiSbF
LiN(SOCF、LiN(SOCFCF、LiB(C、LiBF、LiCFSO、LiI
<3> 前X線光電子分光法により検出される前記固体電解質に含まれる炭素原子の量は、前記固体電解質の全固形分に対し1質量%~20質量%である<1>又は<2>に記載の固体電解質。
<4> アルミニウムを含む金属化合物と、ギ酸、炭酸、リン酸、無水リン酸、シュウ酸、クエン酸、及び、ペルオキソ酸からなる群より選択される酸化合物と、を反応させて、酸を配位子とする金属酸化物プレカーサー溶液を調製する工程と、リチウム塩化合物を有機溶剤に溶解して、リチウムイオン含有液を調製する工程と、前記金属酸化物プレカーサー溶液と、リチウムイオン含有液とを混合し、固体電解質形成用組成物を調製する工程と、前記固体電解質形成用組成物を基材に付与し、乾燥させる工程と、を含む固体電解質の製造方法。
<5> 前記固体電解質形成用組成物におけるアルミニウム原子に対するリチウム原子の含有比率が、質量基準で、0.5~2.0である<4>に記載の固体電解質の製造方法。
<6> 前記基材に付与した固体電解質形成用組成物を乾燥させる工程が、50℃以上100℃未満の温度条件で行われる<4>又は<5>に記載の固体電解質の製造方法。
<7> 正極、負極、及び、前記正極と前記負極との間に、<1>~<3>のいずれか1つに記載の固体電解質からなる電解質層を備える全固体リチウムイオン電池。
<8> 正極、負極、及び、前記正極と前記負極との間に、<1>~<3>のいずれか1つに記載の固体電解質からなる電解質層を備え、前記正極は、LiMnO及びLiCoOから選ばれる金属酸化物膜を備え、前記負極は、TiOアナターゼ膜又は単層カーボンナノチューブ/TiOアナターゼ複合膜を備える水素発生装置。
本発明のある実施形態によれば、イオン伝導性及び基材との密着性が良好な固体電解質、充放電性能が良好な全固体リチウムイオン電池、及び、上記固体電解質を備える水素発生装置を提供することができる。
また、本発明の別の実施形態によれば、イオン伝導性及び基材との密着性が良好な固体電解質の簡易な製造方法を提供することができる。
実施例1で得た固体電解質の膜断面の電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)写真である。 実施例1で得た固体電解質のインピーダンス測定結果より得られたナイキストプロットである。 実施例1で得た固体電解質のXRDパターンを示すグラフである。 実施例1で得た固体電解質に対し、定電流印加と自然放電のサイクルを30回繰り返した際の電圧の変化を示すグラフである。 実施例2で得た固体電解質を電解質層として有する積層体の光照射時間に対する起電力変化の関係を示すグラフである。
以下、本開示の固体電解質形成用組成物等について詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、これらの内容に限定されない。その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
なお、本開示において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
本開示において組成物に含まれる各成分の量は、組成物中に、各成分に該当する物質が複数含まれる場合、特に断らない限り、当該複数の物質の合計量を意味する。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本開示において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本開示において組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本開示において、「全固形分」とは、組成物に含まれる成分のうち、溶剤を除く全成分の合計量を示す。
本開示における常温とは、全固体リチウムイオン電池の動作環境である15℃~40℃の温度範囲を指す。
[固体電解質]
本開示の固体電解質は、アルミニウムを含む金属化合物と、ギ酸、炭酸、リン酸、無水リン酸、シュウ酸、クエン酸、及び、ペルオキソ酸から選ばれる酸化合物由来の有機成分とを含む金属酸化物非晶質膜、並びにリチウム塩化合物由来の遊離リチウムイオンを含む固体電解質であって、遊離リチウムイオンは、少なくとも金属酸化物非晶質膜が有する三次元立体構造の空隙に含まれる。
本開示の固体電解質、全固体リチウムイオン電池及び水素発生装置の作用機構は明確ではないが、以下のように考えている。
一般に、液状の電解質はイオン伝導性が良好であるのに対し、高分子化合物からなる固体電解質は、液状の電解質に比較して、イオン伝導性が低く、また、金属化合物からなる固体電解質は、イオン伝導性と基材との密着性が低い傾向にある。
本開示の固体電解質は、酸化アルミニウムを含む金属酸化物非晶質膜からなり、非晶質膜は、有機成分を含む三次元立体構造を有し、上記三次元立体構造の空隙内に、遊離リチウムイオンを含むことにより、三次元立体構造の空隙内における遊離リチウムイオンの運動性が向上し、良好なイオン伝導性を発現されると考えている。さらに、三次元立体構造を有する金属酸化物非晶質膜は、構造内に酸化合物由来の有機成分を含むために、遊離リチウムイオンの移動性を低下させず、さらに、基材と金属酸化物非晶質膜との良好な密着性を発現すると推定される。
従って、本開示の固体電解質を電解質層として有する全固体リチウムイオン電池は、イオン伝導性が良好となり、本開示の固体電解質を有する水素発生装置では、従来の電解質層を有する装置に比較し、効率よく水素を生成することができると考えている。
なお、本開示は、上記推定機構には何ら制限されない。
本開示の固体電解質は、アルミニウムを含む金属化合物と、ギ酸、炭酸、リン酸、無水リン酸酸、シュウ酸、クエン酸、及び、ペルオキソ酸から選ばれる酸化合物由来の有機成分とを含む金属酸化物非晶質膜、並びにリチウム塩化合物由来の遊離リチウムイオンを含む固体電解質であって、上記遊離リチウムイオンは、少なくとも上記金属酸化物非晶質膜が有する三次元立体構造の空隙に含まれる。
金属酸化物非晶質膜は、アルミニウムを含む金属化合物とリチウムイオン源であるリチウム塩化合物との反応生成物である。金属酸化物非晶質膜の好ましい製造方法については後述する。
本開示の固体電解質が、金属酸化物非晶質膜であることは、X線回折法(X-ray diffraction:以下、XRDと称する)により確認することができる。
XRD測定装置は、SmartLab装置(株式会社リガク)を用いる。固体電解質に対し、入射角0.3°の平行ビーム光学系で、2θが10°~80°まで0.05°ステップで、固定時間5°/分ずつ回折強度を測る。その結果、得られた曲線において、結晶構造を示す明かなピークが見出されないことにより、固体電解質が非晶質膜であることが確認される。
本開示の固体電解質は、金属酸化物非晶質膜の空隙中に遊離リチウムイオンを含む。
上記遊離リチウムイオンには特に制限はない。なかでも、運動性がより良好な遊離リチウムイオンのイオン源としては、下記リチウム塩化合物群より選択される化合物が挙げられる。
(化合物群)
LiPF、LiPF(CFCF、LiPF(C、LiSCN、LiPF(CF、LiN(CN)、LiClO、LiBF、LiAsF、LiCFSO、Li(FSON、Li(CFSOC、LiSbF、LiN(SOCF、LiN(SOCFCF、LiB(C、LiBF、LiCFSO、LiI
本開示における固体電解質は、上記化合物を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
なかでも、運動性がより良好な遊離リチウムイオンのイオン源としては、LiPF、LiClO、LiI等が挙げられる。
本開示の固体電解質は、ギ酸、炭酸、リン酸、無水リン酸、シュウ酸、クエン酸、及び、ペルオキソ酸から選ばれる酸化合物由来の有機成分を含む。固体電解質は、基材との密着性がより良好な膜となるという観点から、X線光電子分光法により検出される固体電解質に含まれる炭素原子の量が、固体電解質の全固形分に対し1質量%~20質量%であることが好ましく、1質量%~5質量%であることがより好ましい。
固体電解質に炭素原子を上記の含有量で含むことで、固体電解質に有機成分が含まれることが裏付けられる。
本開示におけるX線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy:以下XPSと称する)は以下に示す測定条件による。
XPS装置は、日本電子株式会社、JPS-9030を用い、10kV、100mAの出力のMg-Kα線で測定する。得られた各元素(Li 1s、C 1s、O 1s、金属酸化物由来のAl 2p)のピークを、ツガード法でバックグラウンド補正し、ガウス関数でピーク分離する。分離した各ピーク面積を各元素の感度因子で補正し、ピーク面積比を求めることで、炭素原子(C)の含有量を得る。
[固体電解質の好ましい物性]
-イオン伝導度-
本開示の固体電解質は、金属酸化物非晶質膜の空隙内に、運動性の高い状態で遊離リチウムイオンを含むことから、良好なイオン伝導性を示す。
例えば、後述する製造方法により得られるAi/LiClOを含む金属酸化物非晶質膜は、厚み110μmの目視で透明、且つ均一な膜であり、25℃におけるイオン伝導度は、1.3×10-5Scm-1以上と推算される。
本開示の固体電解質の25℃におけるイオン伝導度は、10-5Scm-1以上であることが好ましく、10-4Scm-1以上であることがより好ましい。
本開示の固体電解質のイオン伝導度は、インピーダンスを測定することで測定することができる。
固体電解質のインピーダンスを以下の条件で測定する。
交流インピーダンスを、Solartron Analtical(株式会社東陽テクニカ、Model 1260A Impedance/Gain-phase、及び、Analyzer1260A Dilectric Interface(株式会社東陽テクニカ)を用い、室温(25℃)下で、印加交流電圧:100mV、積分時間:1秒、周波数範囲:10MHz-100mHzまで測定する。
インピーダンスの測定結果より、リアクタンスと、レジスタンスとを複素平面上にプロットし、ナイキストプロットを作成する。そのナイキストプロットから、イオン伝導度を推算することができる。
本開示の固体電解質は、固体であるにも拘わらず、良好なイオン伝導性を示すため、例えば、全固体リチウムイオン電池の電解質層、水素発生装置の電解質層などの用途に適用することができる。
[固体電解質の製造方法]
本開示の固体電解質の製造方法には特に制限はないが、以下に示す分子プレカーサー法を適用した製造方法により製造することが、高温処理を必要とせず、簡易に均一な固体電解質を得られるため、好ましい。
本開示の固体電解質の製造方法は、アルミニウムを含む金属化合物と、ギ酸、炭酸、リン酸、無水リン酸、シュウ酸、クエン酸、及び、ペルオキソ酸からなる群より選択される酸化合物と、を反応させて、酸を配位子とする金属酸化物プレカーサー溶液を調製する工程(工程A)と、リチウム塩化合物を有機溶剤に溶解して、リチウムイオン含有液を調製する工程(工程B)と、上記金属酸化物プレカーサー溶液と、上記リチウムイオン含有液とを混合し、固体電解質形成用組成物を調製する工程(工程C)と、得られた固体電解質形成用組成物を基材に付与し、乾燥させる工程(工程D)と、を含む。
工程Aは、金属酸化物非晶質膜の原料となる金属化合物と酸化合物とを反応させ、金属酸化物を含む非晶質膜の前駆体となる、酸を配位子とする金属酸化物プレカーサー溶液を調製する工程である。
金属酸化物プレカーサー溶液の調製は、常温雰囲気下で行ってもよく、溶解性向上を目的として、液温を、40℃を超え100℃以下程度に加温して行ってもよい。
工程Aで用いられる金属化合物は、アルミニウムブトキシド等が挙げられる。
金属酸化物プレカーサー溶液におけるアルミニウムを含む金属化合物の含有量は、金属酸化物プレカーサー溶液の全質量に対し、1質量%~10質量%であることが好ましく、3質量%~6質量%であることが好ましい。
アルミニウムを含む金属化合物と反応させる酸としては、例えば、アルミニウムブトキシドを溶解しやすい酸化合物を、ギ酸、炭酸、リン酸、無水リン酸、シュウ酸、クエン酸、及び、ペルオキソ酸からなる群より選択して用いればよく、なかでも、ギ酸が好ましい。
金属酸化物プレカーサー溶液における酸化合物の含有量は、金属酸化物プレカーサー溶液の全質量に対し、1質量%~20質量%であることが好ましく、1質量%~10質量%であることが好ましい。
金属酸化物プレカーサー溶液の調製に用いる溶剤は、アルミニウムを含む金属化合物と酸化合物との反応生成物である金属酸化物プレカーサーを溶解し、安定に保持できる溶剤であれば制限なく用いることができる。
溶剤としては、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノールなどの1価のアルコール、エチルエーテル、ジメチルエーテルなどのエーテル、アセトンなどのケトン等の有機溶剤、及び、既述の有機溶剤と水との混合溶剤等が挙げられる。
工程Aにおいて、金属酸化物プレカーサー溶液を調製する際には、金属化合物と酸化合物との反応から形成された金属錯体を安定化するために、所望により、アミン類を併用してもよい。アミン類としては、プロピルアミン、ブチルアミン等が挙げられる。
金属酸化物プレカーサー溶液におけるアミン類の含有量は、金属酸化物プレカーサー溶液の全質量に対し、0質量%~10質量%であることが好ましく、0質量%~5質量%であることが好ましい。即ち、金属酸化物プレカーサー溶液の調製に際してアミン類を併用しなくてもよい。
工程Aのより具体的な例としては、例えば、常温雰囲気下、アルミニウムを含む金属化合物であるアルミニウムトリ-sec-ブトキシドを適用する場合、ギ酸のエタノール溶液に、ブチルアミンと、アルミニウムトリ-sec-ブトキシドを加えて還流することにより、Al3+イオンを含むギ酸を配位子とするアルミニウム錯体を得る工程が挙げられる。得られたギ酸を配位子とするアルミニウム錯体溶液は、金属酸化物非晶質膜の前駆体となる金属酸化物プレカーサー溶液である。
工程Bは、リチウム塩化合物を有機溶剤に溶解して、リチウムイオン含有液を調製する工程である。
リチウムイオン含有液の調製は、常温雰囲気下で行ってもよく、溶解性向上を目的として、液温を、40℃を超え100℃以下程度に加温して行ってもよい。
リチウムイオン含有液の調製に用いるリチウム塩化合物は、溶剤に溶解することでリチウムイオンを生成する化合物であれば制限なく用いることができる。即ち、リチウム塩化合物は、通常、リチウムイオン電池に用いられる公知のリチウム塩化合物を制限なく使用することができる。
なかでも、入手容易であり、イオン伝導性が良好であるという観点から、リチウム塩化合物としては、以下に示す化合物群から選択される1種又は2種以上が挙げられる。
(化合物群)
LiPF、LiPF(CFCF、LiPF(C、LiSCN、LiPF(CF、LiN(CN)、LiClO、LiBF、LiAsF、LiCFSO、Li(FSON、Li(CFSOC、LiSbF、LiN(SOCF、LiN(SOCFCF、LiB(C、LiBF、LiCFSO、LiI
リチウムイオン含有液の調製に用いる溶剤は、リチウム塩化合物を溶解し、リチウムイオンを生成しうる溶剤であれば制限なく用いることができる。
溶剤としては、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノールなどの1価のアルコール、エチルエーテル、ジメチルエーテルなどのエーテル、アセトンなどのケトン等の有機溶剤、及び、既述の有機溶剤と水との混合溶剤等が挙げられる。
リチウムイオン含有液におけるリチウム塩化合物の含有量は、リチウムイオン含有液中のリチウムイオンの濃度が1質量%~15質量%となる量であることが好ましく、2質量%~5質量%となる量であることが好ましい。
工程Bとしては、より具体的には、例えば、常温雰囲気下、エタノールに過塩素酸リチウムを加えて撹拌し、Liイオンを含む、LiClOのエタノール溶液を調製する工程が挙げられる。得られたLiClOのエタノール溶液が、リチウムイオン含有液である。
工程Cは、既述の工程Aで得た金属酸化物プレカーサー溶液と、工程Bで得たリチウムイオン含有液とを混合し、固体電解質形成用組成物を調製する工程である。
固体電解質形成用組成物の調製は、常温雰囲気下で行ってもよく、反応性向上を目的として、液温を、40℃を超え100℃以下程度に加温して行ってもよい。
得られる固体電解質のイオン伝導性がより良好になるという観点から、工程Cにて得られた固体電解質形成用組成物における金属原子に対するリチウム原子の含有比率は、質量基準で、0.5~2.0であることが好ましく、0.5~1.5であることがより好ましい。
ここで金属酸化物に含まれる金属、例えば、既述の例では、金属酸化物プレカーサー溶液におけるAl3+イオンに対する、リチウムイオン含有液に含まれるLiイオンの含有量が、上記好ましい範囲となる比率で、金属酸化物プレカーサー溶液と、リチウムイオン含有液との混合することが好ましい。
工程Dは、既述の工程Cで得られた固体電解質形成用組成物を、基材に付与し、乾燥させる工程である。
固体電解質形成用組成物の基材への付与は、公知の方法で行うことができる。
固体電解質形成用組成物の基材への付与方法としては、スピンコート法、ディップコート法、バーコート法、ドロップコート法、カーテンコート法、基材にスペーサを設け、固体電解質形成用組成物をスペーサで区画された領域に流入させる方法などが挙げられる。
固体電解質形成用組成物の塗布量は、形成する固体電解質の膜厚に応じて調整する。
例えば、固体電解質を透明電極に用いる場合には、固体電解質の膜厚は、1μm以下とすることができる。全固体電池の導電層として用いる場合には、膜厚は、400μm~1mmとすることができる。
基材上に付与された固体電解質形成用組成物の乾燥方法には特に制限はない。乾燥方法としては、固体電解質形成用組成物層が形成された基材を、例えば、加熱した空気中に所定時間配置して、非接触で乾燥する熱処理乾燥方法、真空装置内に配置して減圧する減圧乾燥方法、赤外線を照射する方法、紫外線を照射する方法等が挙げられる。
熱処理乾燥方法では、例えば、50℃以上100℃未満とすることができる。上記温度範囲であれば、乾燥時間は、10分間~30分間とすることができる。
減圧乾燥方法では、真空装置内の気圧を1000hPa~10hPaとすることができる。
本開示の製造方法によれば、固体電解質の形成に分子プレカーサー法を用いるため、固体電解質形成用組成物を乾燥して固体電解質を製造する際に、熱処理を適用する場合であっても、比較的低温の加熱乾燥処理により成膜することができる。
従来の高分子化合物からなる有機固体電解質における紫外線照射などのエネルギー付与、又は、無機固体電解質における500℃といった高温度での熱処理を行う必要なく、低エネルギーでイオン伝導性が良好な固体電解質を製造することができることも、本開示の製造方法の特徴の一つである。
[全固体リチウムイオン電池]
本開示の全固体リチウムイオン電池は、正極、負極、及び、正極と負極との間に、既述の本開示の固体電解質からなる電解質層を備える。
既述の本開示の固体電解質からなる電解質層を、正極及び負極と貼り合わせ、3層構造とすることで、目的とする本開示の全固体リチウムイオン電池を得ることができる。
本発明者らの検討によれば、全固体リチウムイオン電池の正極及び負極の製造に際しても、湿式法である分子プレカーサー法を適用することにより、スパッタリングなどの乾式法に比較して、簡易に電極を製造することができる。
全固体リチウムイオン電池における正極と負極は、公知のリチウムイオン電池における正極及び負極を、制限なく用いることができる。
正極としては、LiFePO、LiCoO、LiMnO、LiMn4、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3等が挙げられる。
負極としては、炭素電極、リチウム合金、TiO(チタニア電極)等が挙げられる。
[水素発生装置]
本開示の水素発生装置は、正極、負極、及び、正極と負極との間に、既述の本開示の固体電解質からなる電解質層を備え、正極は、LiMnO及びLiCoOから選ばれる金属酸化物膜を備え、記負極は、TiOアナターゼ膜又は単層カーボンナノチューブ/TiOアナターゼ複合膜を備える。
既述の本開示の固体電解質からなる電解質層を、正極及び負極と貼り合わせ、例えば、3層構造とする。3層構造の積層体の両極を、H型反応管内のPt担持Ti電極に接続し、反応管内に電解液を満たし、負極面に紫外線を照射させることで、積層体に起電力が生じ、反応管内に水素ガスが発生する水素発生装置が得られる。
電解液としては、例えば、30質量%水酸化ナトリウム水溶液を用いることができる。本開示の水素発生装置によれば、負極側には水素が、正極側には酸素が、それぞれ発生する。
以下、実施例を挙げて詳細に説明するが、以下の実施例は一態様を挙げたに過ぎず、これに限定されない。
なお、以下の実施例において、特に断らない限り室温は25℃を意味する。
(実施例1)
1-1.ギ酸を配位子とするAlプレカーサー溶液の調製
50mL三角フラスコにエタノール(10g)を量りとり、0.52g(7.1mmol)のブチルアミン、0.58g(2.4mmol)のアルミニウムトリ-sec-ブトキシ度、及び0.65g(14mmol)のギ酸を加えて3時間還流した後、室温(25℃)まで放冷してAlプレカーサー溶液(以下、SAlと記載)を得た。SAlに含まれるAl3+濃度は0.2mmolg-1であった。(工程A)
2.Liイオン含有液の調製
9.7gのエタノールに、0.33g(3.1mmol)の過塩素酸リチウムを加えて10分間撹拌し、LiClOのエタノール溶液であるリチウムイオン含有液(以下、SLiと記載)を得た。リチウムイオン含有液(SLi)に含まれるLiイオンの濃度は0.3mmolg-1であった。(工程B)
3.固体電解質形成用組成物の調製
工程Aで調製したAlプレカーサー溶液(SAl 10gに対して、工程Bで得たリチウムイオン含有液(SLi) 5gを加えて、10分間撹拌混合して、室温で1時間撹拌して透明な溶液である固体電解質形成用組成物(SAMix)を得た。SAmixにおけるLi/Al3+比は質量換算で0.75であった。(工程C)
4.正極及び負極の製造
-リチウムマンガン電極用プレカーサー溶液の調製-
マンガン、およびリチウムを含む金属錯体溶液(リチウムマンガン電極用プレカーサー溶液:以下LMPプレカーサー溶液とも称する)を調製した。
10gのエタノールに、0.27g(4.0mmol)の酢酸リチウム、0.35g(2.0mmol)の酢酸マンガン(II)、及び、1.79g(24mmol)のブチルアミンを加えて、室温(25℃)下で3時間撹拌して、金属イオンの濃度比(Li:Mn2+=2:1)で、金属イオン濃度が0.5 mmolg-1のLMOプレカーサー溶液(SLMO)を調製した。
3gの(SLMO)にエタノールを2g加えて撹拌し、全金属イオン濃度が0.3mmolg-1の LMOプレカーサー溶液(S’LMO)を調製した
-カーボンナノチューブ/チタニアプレカーサー溶液の調製-
10gのチタニアプレカーサー溶液に、6.0gの単層カーボンナノチューブ(以下、SWCNT)分散エタノール溶液(商品名:eDIPS INK、株式会社名城ナノカーボン)を加えて、室温下で1時間撹拌して、SWCNT/チタニアプレカーサー溶液(SCOMP)を調製した。得られたプレカーサー溶液(SCOMP)におけるTi4+濃度は0.45mmolg-1、C(炭素)濃度は、0.075mass%であった。
-プレカーサー溶液を用いた正極及び負極の製造-
20×33mmのFTOガラス基板を、FTOの露出面積が、20×20mmとなるように、FTOガラス基板の長手方向の両端を、それぞれ10mmと、3mmの範囲でマスキングした。
マイクロピペットで、FTOガラス基板上に、50μLのプレカーサー溶液(S’LMO)を滴下した。2段階スピンコート法(条件 1回目:500回/分(以下rpm)で5秒間、2回目:2000rpmで30秒間)で塗布し、70℃の乾燥機中で10分間乾燥させてプレカーサー膜を得た後、マスキングテープを取り除いた。
得られたプレカーサー膜を、525℃で1時間熱処理した。この工程を2回繰り返し、成膜面積が20×20mmのLMOの2層膜(FLMO)を形成し、正極とした。
また、20×33mmのFTOガラス基板を、FTOの露出面積が、20×20mmとなるように、FTOガラス基板の長手方向の両端を、それぞれ10mmと、3mmの範囲でマスキングした。
マイクロピペットで、FTOガラス基板上に、50μLのプレカーサー溶液(SCOMP)を滴下した。2段階スピンコート法(条件 1回目:500rpmで5秒間、2回目:2000rpmで30秒間)で塗布し、70℃の乾燥機中で10分間乾燥させてプレカーサー膜を得た後、マスキングテープを取り除いた。
得られたプレカーサー膜を500℃で0.5時間熱処理して、成膜面積が20×20mmのSWCNT/チタニア膜(FCOMP)を形成し、負極とした。
5.固体電解質膜の形成
上記で得た正極と負極とを以下のように組み合わせて、固体電解質膜を形成し、全固体リチウムイオン電池を作成した。
まず、正極と負極において、それぞれ、膜(FLMO)及び膜(FCOMP)が成膜されていない部分を予めマスキングした。
薄膜(FCOMP)が形成されたFTOガラス基板(負極)を、65℃のホットプレート上に膜面を上にして置き、上記で得た400μLの固体電解質形成用組成物(SAMix)を滴下して、30分間乾燥させ、固体電解質の膜(FAMix)を形成した。
FTOガラス基板の膜(FCOMP)と膜面が向かい合うように、膜(FLMO)を重ね、上から、重りで3.0Nの荷重をかけて30分間静置して接着させ、膜(FCOMP)、固体電解質の膜(FAMix)及び膜(FLMO)を積層した。
その後、接着した積層体を室温まで放冷し、接着した積層体の4辺に紫外線硬化性樹脂(BONDIC:登録商標、ボンディックジャパン)を塗った後、紫外光LEDを照射して、紫外線硬化性樹脂を硬化させ、正極と負極との間に、実施例1の固体電解質膜(FAMix:即ち、本開示の固体電解質)を形成した。(工程D)
6.固体電解質膜の評価
得られた固体電解質の膜(FAMix)を以下の方法で評価した。
6-1.膜厚測定
実施例1の固体電解質膜の厚さを、FTOガラス基板の面に垂直に切断して、FE-SEMにて撮影し、膜の厚さを測定したところ、膜厚は110μmであった。
実施例1の固体電解質膜の断面FE-SEM像を図1に示す。
6-2.固体電解質のインピーダンス測定
工程Dを経て形成した実施例1の固体電解質(FAMix)のイオン伝導度を、インピーダンスを測定することで測定した。
交流インピーダンスは、Solartron Analtical(株式会社東陽テクニカ、Model 1260A Impedance/Gain-phase、及び、Analyzer1260A Dilectric Interface(株式会社東陽テクニカ)を用い、室温(25℃)下で、印加交流電圧:100mV、積分時間:1秒、周波数範囲:10MHz-100mHzまで測定した。
インピーダンスの測定結果より、リアクタンスと、レジスタンスとを複素平面上にプロットし、ナイキストプロットを作成する。そのナイキストプロットから、イオン伝導度を推算した。得られたナイキストプロットを図2に示す。図2に示すナイキストプロットから、イオン伝導度を推算した結果、得られた固体電解質(FAMix)のイオン伝導度は、1.3×10-5Scm-1を示し、十分なイオン伝導性を示すことが確認された。
6-3.固体電解質膜が非晶質であることの確認
実施例1の固体電解質(FAMix)を、XRD測定装置(Lab装置(株式会社リガク)を用いて、固体電解質に対し、入射角0.3°の平行ビーム光学系で、2θが10°~80°まで0.05°ステップで、固定時間5°/分ずつ強度を測った。図3に固体電解質(FAMix)のXRDパターンを示す。
図3に明らかなように、得られた曲線において、結晶構造を示す明かなピークが見出されず、実施例1の固体電解質膜(FAMix)は非晶質膜であることが確認された。
6-4.固体電解質における炭素原子の含有量測定
工程Dを経て形成した実施例1の固体電解質膜(FAMix)を、(FLF)を、XPS(日本電子株式会社、JPS-9030)を用い、10kV、100mAの出力のMg-Kα線で測定した。得られた各元素(Li 1s、C 1s、O 1s、金属酸化物由来のAl 2p)のピークを、ツガード法でバックグラウンド補正し、ガウス関数でピーク分離した。分離した各ピーク面積を各元素の感度因子で補正し、ピーク面積比を求めたところ、実施例1の固体電解質に含まれる炭素原子(C)の含有量は、固体電解質の全固形分に対し、10質量%であった。
6-5.固体電解質膜と基材との密着性
実施例1の固体電解質膜(FAMix)と基材との密着性は、鉛筆硬度試験により評価した。
鉛筆硬度試験は、750gの荷重をかけた鉛筆ひっかき硬度試験器(株式会社佐藤商事製:MJ-PHT)を用いた測定した。鉛筆硬度は、形成した各膜に対して、荷重をかけるために用いる鉛筆の硬度を8Hから開始し、硬さを徐々に低くして、各2回ずつ測定し、2回とも傷又は圧痕が付かなかった鉛筆硬度を、密着性の基準とした。
その結果、固体電解質(FAMix)の鉛筆硬度は、4Hであり、基材との密着性が良好な硬質な膜であることが分かる。
について、以下の方法でFTOガラス基板との密着性を評価した。
7.積層体の充放電評価
正極、固体電解質(FAMix)及び負極を有する全固体リチウムイオン電池の、正極と、負極とに、ソースメーター(6241A、ADC)を接続し、0.04mAの定電流を1分間印加した。また、定電流印加した後に、デジタルマルチメーターの内部抵抗によりデバイスを1分間自然放電させた。
充放電を行いながら、5秒間隔で電圧を記録し、定電流印加と自然放電のサイクルを30回繰り返した。
その結果を図4に示す。図4は、実施例1で得た固体電解質に対し、定電流印加と自然放電のサイクルを30回繰り返した際の電圧の変化を示すグラフである。図4に明らかなように、形成した積層体は、全固体リチウムイオン電池として動作することが確認できた。
(実施例2)
-水素発生装置用の積層体の製造-
正極としてLiMnO薄膜を、負極としてチタニアアナターゼ膜を形成した。
1枚のマスキングした正極面に、実施例1で得たSAMixを400μL滴下し、70℃で30分間乾燥させて(FAMix)からなる電解質層を形成した後に、もう1枚の電極と電極面を向き合わせて接合し、さらに70℃で30分間加熱しながら、0.1kgの荷重で圧着させ、積層体を得た。その後、室温(25℃)に放冷して、接着面が剥離しない透明な固体電解質膜(FAMix)からなる電解質層を有する積層体を得た。
得られた電解質層の膜厚は、110μmであった。
得られた積層体に、16mWcm-2の強度の紫外光(波長:365nm)を照射したところ、1.2Vの電圧を示した。得られた積層体の光照射時間と、起電力との関係を図5のグラフに示す。
本開示の固体電解質は、光照射により起電力を示すことが確認された。
(実施例3)
-水素発生装置の製造-
実施例2で得た正極、厚さ110μmの固体電解質(FAMix)からなる電解質層、及び負極からなる3層構造の積層体において、積層体の負極及び正極を、それぞれH型反応管内のPt担持Ti電極に接続した。反応管内には、電解液として30質量%水酸化ナトリウム水溶液を満たして、実施例3の水素発生装置を得た。
得られた水素発生装置の負極面に16mWcm-2の強度の紫外光(波長:365nm)を90分間照射した。その結果、積層体における電解質層に起電力が生じ、反応管内の電極表面に気体が発生した。発生した気体は、負極側に水素40μL(マイクロリットル)、正極側に酸素30μLであった。
電解質層の膜面積を4×5cmとした上記水素発生装置を、4並列ユニット、3直列に接続した水素発生装置モジュールを得た。即ち、水素発生装置モジュールに含まれる積層体は12個である。上記と同一条件で負極面に紫外線照射を行ったところ、水素発生装置モジュールに発生した気体は、負極側に水素110μL、正極側に酸素50μLであった。
電解質層の膜面積を4×5cmとした上記水素発生装置を、4並列ユニット、3直列に接続した水素発生装置モジュールを得た。即ち、水素発生装置モジュールに含まれる積層体は12個である。上記と同一条件で負極面に紫外線照射を行ったところ、水素発生装置モジュールに発生した気体は、負極側に水素110μL、正極側に酸素50μLであった。
-水素発生装置におけるエネルギー効率の試算-
水素の発生量が0.1mLを超えた装置について、光照射によってデバイスに与えたエネルギーに対して発生した水素の体積から算出される化学エネルギーを比較し、エネルギー変換効率を試算した。
ここで、光エネルギーEO(1)と化学エネルギーEC(2)をそれぞれ以下のように定義する。
EO[J]=S[Wcm-2]×A[cm]×T[s] (1)
式(1)において、Sは、負極活物質膜の吸収した紫外線の強度、Aは12個のデバイスの総受光面積(12×20cm)、Tは光を照射した時間(5400秒間)である。
紫外線の強度は、チタニア膜付きFTOガラス基板と、500℃で30分間熱処理したFTOガラス基板に、16mWcm-2の紫外光を照射し、紫外線強度計(UVR-400、As one)にて透過光の強度を測定し、熱処理したFTOガラス基板(透過後:9.5mWcm-2)とチタニア膜付きFTO(透過後:9.2mWcm-2)の差分(0.30mWcm-2)より求めた。
[J]= G°[Jmol-1]×V[L]/22.4[Lmol-1] (2)
式(2)において、G°は水の分解に必要なエネルギー(標準生成ギブスエネルギー、237kJmol-1)、Vは発生した水素の体積である。
式(1)より、最も水素が発生した実験条件での水の光分解実験における光エネルギーは、E[J]=S[Wcm-2]×A[cm]×T[s]
=0.30×10-3×240×5400=3.88×10[J]
次に、式(2)より、実験条件での水の光分解実験において水素発生量(110μL)から化学エネルギーを算出すると、
[J]=G°[Jmol-1]×V[L]/22.4[Lmol-1
=(237×10×1.10×10-4)/22.4=1.16となり、Eに対するEの比を求めると、
/E[%]=100×1.16/(3.88×10)=0.3[%]
算出したEに対するEの比率の結果より、12個の積層体(デバイス)を電気分解セルに接続した場合のエネルギー変換効率は0.3%であった。
このことから、本開示の固体電解質は、水素発生装置の電解質層として有用であることがわかった。

Claims (8)

  1. アルミニウムを含む金属化合物と、ギ酸、炭酸、リン酸、無水リン酸、シュウ酸、クエン酸、及び、ペルオキソ酸から選ばれる酸化合物由来の有機成分とを含む金属酸化物非晶質膜、並びにリチウム塩化合物由来の遊離リチウムイオンを含む固体電解質であって、
    前記遊離リチウムイオンは、少なくとも前記金属酸化物非晶質膜が有する三次元立体構造の空隙に含まれる固体電解質。
  2. 前記遊離リチウムイオンは、下記リチウム塩化合物群より選択される化合物由来のイオンである請求項1に記載の固体電解質。
    (化合物群)
    LiPF、LiPF(CFCF、LiPF(C、LiSCN、
    LiPF(CF、LiN(CN)、LiClO、LiBF、LiAsF
    LiCFSO、Li(FSON、Li(CFSOC、LiSbF
    LiN(SOCF、LiN(SOCFCF、LiB(C、LiBF、LiCFSO、LiI
  3. X線光電子分光法により検出される前記固体電解質に含まれる炭素原子の量は、前記固体電解質の全固形分に対し1質量%~20質量%である請求項1又は請求項2に記載の固体電解質。
  4. アルミニウムを含む金属化合物と、ギ酸、炭酸、リン酸、無水リン酸、シュウ酸、クエン酸、及び、ペルオキソ酸からなる群より選択される酸化合物と、を反応させて、酸を配位子とする金属酸化物プレカーサー溶液を調製する工程と、
    リチウム塩化合物を有機溶剤に溶解して、リチウムイオン含有液を調製する工程と、
    前記金属酸化物プレカーサー溶液と、リチウムイオン含有液とを混合し、固体電解質形成用組成物を調製する工程と、
    前記固体電解質形成用組成物を基材に付与し、乾燥させる工程と、を含む固体電解質の製造方法。
  5. 前記固体電解質形成用組成物におけるアルミニウム原子に対するリチウム原子の含有比率が、質量基準で、0.5~2.0である請求項4に記載の固体電解質の製造方法。
  6. 前記基材に付与した固体電解質形成用組成物を乾燥させる工程が、50℃以上100℃未満の温度条件で行われる請求項4又は請求項5に記載の固体電解質の製造方法。
  7. 正極、負極、及び、前記正極と前記負極との間に、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の固体電解質からなる電解質層を備える全固体リチウムイオン電池。
  8. 正極、負極、及び、前記正極と前記負極との間に、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の固体電解質からなる電解質層を備え、
    前記正極は、LiMnO及びLiCoOから選ばれる金属酸化物膜を備え、
    前記負極は、TiOアナターゼ膜又は単層カーボンナノチューブ/TiOアナターゼ複合膜を備える、水素発生装置。
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