JP2023110902A - 組成物及び製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、成形性に優れ且つ色や臭気などの官能特性においても優れた植物性食品残渣含有組成物を提供することを目的とする。【解決手段】本発明は、植物性食品残渣と、可塑化澱粉と、熱可塑性樹脂と、を含む組成物であって、前記組成物を所定条件で昇圧試験機により測定したときに測定される押出開始圧力と押出終了圧力との差ΔPが20bar以下である前記組成物を提供する。前記植物性食品残渣は、野菜、果実、穀物、コーヒー、及び茶のうちから選ばれる食品材料の残渣であってよい。また、本発明は、前記組成物の製造方法も提供する。当該製造方法は、植物性食品残渣及び澱粉を含む混合物に対して可塑化処理を行って残渣含有可塑化複合材料を製造すること、及び、前記可塑化複合材料を熱可塑性樹脂と混錬して組成物を製造することを含んでよい。【選択図】なし

Description

本発明は、組成物及び当該組成物の製造方法に関し、特には植物性食品残渣を含む組成物及び当該組成物の製造方法に関する。
石油資源等を原料として製造されたプラスチック成形品は、飲食用容器を初め、シート、フィルムなどの各種包装材料、緩衝材、生活用品、農業用品など産業資材として広範囲の用途に用いられている。一方で、プラスチック材料の大量消費により温室効果ガスによる地球温暖化や石油資源の枯渇が地球規模で長期的に取り組む重要な課題となっている。
そこで、プラスチック材料の使用量を減少するために、バイオマス材料の活用が検討されている。例えば下記特許文献1には、全組成物の45~70重量%のデンプン含有農業廃棄物を含む混合物を配合することから得られる熱可塑性デンプン組成物であって、前記農業廃棄物が、乾重量で50%未満のデンプン量;全組成物の25~50重量%の熱可塑性合成ポリマー;全組成物の1~10重量%の可塑剤;および全組成物の1~5重量%のカップリング剤、を含有し;前記配合が、室温よりも高い第一の温度で実施される、組成物が開示されている。
特表2015-511648号公報
バイオマス材料の一つとして、植物性食品残渣が挙げられる。植物性食品残渣の利活用の手法の一つとして、例えばポリエステル及びポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂と混合して熱可塑性組成物を製造することが考えられる。しかしながら、植物性食品残渣と熱可塑性樹脂とを含む組成物は、成形性に劣る場合がある。また、当該組成物は、色又は臭気などの問題も有する場合も多い。
本発明は、成形性に優れ且つ色や臭気などの官能特性においても優れた植物性食品残渣含有組成物を提供することを目的とする。
本発明は、以下を提供する。
[1]植物性食品残渣と、
可塑化澱粉と、
熱可塑性樹脂と、
を含む組成物であって、
前記組成物を以下の条件で昇圧試験機により測定したときに測定される押出開始圧力と押出終了圧力との差ΔPが20bar以下である、
前記組成物。
<前記昇圧試験機による測定の条件>
押出機径:25mm
温度:200℃
メッシュ:100メッシュ
試験に付される組成物の量:200g
[2]前記植物性食品残渣は、野菜、果実、穀物、コーヒー、及び茶のうちから選ばれる食品材料の残渣である、請求項1に記載の組成物。
[3]前記植物性食品残渣は、野菜又は穀物由来のでん粉抽出残渣、果実由来の果汁抽出残渣、コーヒー又は茶の飲料抽出残渣、又は穀物精白残渣である、[1]又は[2]に記載の組成物。
[4]前記植物性食品残渣は、5mm以下のサイズを有する残渣片を主成分とする、[1]~[3]のいずれか一つに記載の組成物。
[5]前記植物性食品残渣は、植物性食品残渣の粉砕物を含む、[1]~[4]のいずれか一つに記載の組成物。
[6]前記植物性食品残渣に含まれる澱粉が、可塑化された状態にある、[1]~[5]いずれか一つに記載の組成物。
[7]前記組成物は、熱可塑性組成物である、[1]~[6]のいずれか一つに記載の組成物。
[8]前記組成物は、フィルム又はシートを成形可能な組成物である、[1]~[7]のいずれか一つに記載の組成物。
[9]前記熱可塑性樹脂は、ポリエステル系樹脂又はポリオレフィン系樹脂を少なくとも含む、[1]~[8]のいずれか一つに記載の組成物。
[10]前記熱可塑性樹脂を、前記組成物の質量に対して90質量%以下の割合で含む、[1]~[9]のいずれか一つに記載の組成物。
[11]前記組成物はさらに、多価アルコールを含む、[1]~[10]のいずれか一つに記載の組成物。
[12]ペレット形状を有する、[1]~[11]のいずれか一つに記載の組成物。
[13]フィルム形状又はシート形状に成形された、[1]~[12]のいずれか一つに記載の組成物。
[14]植物性食品残渣及び澱粉を含む混合物に対して可塑化処理を行って残渣含有可塑化複合材料を製造すること、
前記可塑化複合材料を熱可塑性樹脂と混錬して組成物を製造すること、
を含む製造方法。
[15]前記組成物を以下の条件で昇圧試験機により測定したときに測定される押出開始圧力と押出終了圧力との差ΔPが20bar以下である、[14]に記載の製造方法。
<前記昇圧試験機による測定の条件>
押出機径:25mm
温度:200℃
メッシュ:100メッシュ
試験に付される組成物の量:200g
本発明に従う組成物は、成形性に優れており、且つ、色及び臭気などの官能特性においても優れている。そのため、本発明に従う組成物は、植物性食品残渣の利活用を進展させるために適している。さらに、本発明により、ポリエステル及びポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂の利用量を減少させることもできる。すなわち、本発明により、植物性食品残渣のアップサイクルを大幅に進展させることができ、SDGsの達成のために貢献することもできる。
植物性食品残渣中の澱粉の可塑化を示すためのSEM写真である。 植物性食品残渣中の澱粉の可塑化を示すためのSEM写真である。 押出圧力差ΔPを説明するための図である。 押出圧力差ΔPを測定するための用いられる昇圧試験機の摸式図である。 プレス成形を説明するための模式図である。
以下、本発明を実施するための好適な形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態を示したものであり、本発明の範囲がこれらの実施形態のみに限定されることはない。
本発明について、以下の順序で説明を行う。
1.第1の実施形態(組成物)
2.第2の実施形態(組成物の製造方法)
3.実施例
1.第1の実施形態(組成物)
上記で述べたとおり、植物性食品残渣と熱可塑性樹脂とを含む組成物は、成形性又は色や臭気などにおいて問題を有する場合がある。このような問題は、特には植物性食品残渣の含有割合を高める場合に特に生じやすい。
本発明者らは、特定の組成及び特定の物性によって、植物性食品残渣含有組成物の成形性を向上でき且つ色又は臭気などの官能特性も向上できることを見出した。一実施態様において、本発明の組成物は、植物性食品残渣と、可塑化澱粉と、熱可塑性樹脂とを含む。さらに、本発明の組成物は、当該組成物を所定の条件で昇圧試験機により測定したときに測定される押出開始圧力と押出終了圧力との差ΔPが20bar以下である。
このような組成及び物性によって、優れた成形性及び官能特性がもたらされる。例えば、植物性食品残渣及び熱可塑性樹脂にさらに可塑化澱粉を加え且つ前記差ΔPが所定値以下であることが、組成物の成形性及び官能特性の向上に特に貢献している。
以下で、本発明の組成物についてより具体的に説明する。
(1)組成
(1-1)植物性食品残渣
本発明の組成物は、植物性食品残渣を含む。前記植物性食品残渣は、植物繊維を含む残渣であってよい。例えば、前記植物性食品残渣は、食物繊維を、当該残渣の乾燥重量100g当たり、例えば10g以上、好ましくは15g以上、より好ましくは20g以上含むものであってよく、さらに好ましくは30g以上、40g以上、50g以上であってよく、さらには60g以上又は70g以上であってもよい。食物繊維含有量は、当該残渣の乾燥重量100g当たり例えば99g以下、97g以下、又は95g以下であってよく、さらには90g以下、85g以下、又は80g以下であってもよい。このように食物繊維含有量が高い食品残渣は、しばしば熱可塑性樹脂と混ざりにくいが、可塑化澱粉を利用することで、組成物中に良好に分散され、組成物の品質が向上する。
植物性食品残渣に含まれる食物繊維の乾燥重量100g当たり含有量は、植物性食品残渣を、凍結乾燥し、ミルで粉砕し、そして、その粉砕物を、0.8mmメッシュに通して得られる産物に対して、Prosky法(Prosky L et al., Determination of total dietary fiber in foods and food products, Collaborative study. J Assoc Off Anal Chem. 58:677-679, 1985.)に従い、食物繊維の抽出を行いそして測定される。
前記植物性食品残渣は、例えば野菜、果実、穀物、コーヒー、及び茶のうちから選ばれる食品材料の残渣であってよい。本発明において、種々の植物性食品残渣が利用されてよい。
一実施態様において、前記植物性食品残渣は、野菜の食品残渣であってよい。野菜の残渣は、例えばいも類、根菜類、豆類、葉茎菜類、果菜類、あぶらな科野菜、又は葉菜類の残渣であってよい。
前記いも類として、ばれいしょ、かんしょ、さといも、及びやまのいもを挙げることができる。前記根菜類として、てんさい、だいこん、にんじん、及びかぶを挙げることができる。前記豆類として、だいず、あずき、そらまめ、及びえだまめを挙げることができる。このように、本発明は、種々の野菜食品残渣に適用できる。
他の実施態様において、前記植物性食品残渣は、果実の食品残渣であってよい。前記果実は、かんきつ類、仁果類、核果類、又はベリー類の残渣であってよい。
前記かんきつ類として、例えばみかん、グレープフルーツ、及びオレンジを挙げることができる。前記仁果類として、リンゴ及びナシを挙げることができる。前記核果類として、モモ及ぶウメを挙げることができる。前記ベリー類として、ぶどう及びブルーベリーが挙げられる。このように、本発明は、種々の果実食品残渣に適用できる。
さらに他の実施態様において、前記植物性食品残渣は、穀物の残渣であってよい。前記穀物の残渣は、米、とうもろこし、麦類(例えば小麦、大麦、又はライ麦など)、又はそばの残渣であってよい。前記穀物の残渣の例として米ぬかが挙げられる。
さらに他の実施態様において、前記植物性食品残渣は、コーヒー又は茶の残渣であってもよい。例えば、当該残渣の例として、コーヒー液抽出残渣(例えばコーヒーかす)又は茶飲料抽出残渣(例えば茶がら)であってよい。
このように、本発明は、野菜又は果実以外の植物性食品残渣に適用することもできる。
一実施態様において、前記植物性食品残渣は、野菜又は穀物由来のでん粉抽出残渣、果実由来の果汁抽出残渣、コーヒー又は茶の飲料抽出残渣、又は穀物精白残渣(例えば米又は麦の精白残渣)であってよい。この実施態様において、前記野菜は、上記で述べた野菜のいずれかであってよく、特にはいも類、根菜類、又は豆類であってよい。この実施態様において、前記穀物は、特には米、とうもろこし、又は麦類であってよい。この実施態様において、前記果実は、かんきつ類、仁果類、核果類、又はベリー類であってよく、特にはリンゴ又はブドウであってよい。
前記残渣は、例えば、皮部分を含んでよい。例えば前記残渣がいも類残渣である場合は、当該残渣は、いもの皮を含んでもよく又は含まなくてもよい。前記残渣は、いも類の搾汁時に生じるたんぱく質を含んでもよい。また、当該残渣は、当該搾汁時に生じるたんぱく質以外の成分を含んでいてもよい。
また、前記残渣が根菜類である場合は、当該残渣は、当該根菜類の根の皮及び/又は当該根菜類の搾汁カスを含んでよい。例えば、にんじんの皮又は搾汁カスが、前記残渣に含まれてよい。前記残渣は、根菜類の搾汁時に生じるたんぱく質を含んでもよい。また、当該残渣は、当該搾汁時に生じるたんぱく質以外の成分を含んでいてもよい。
また、前記残渣が豆類である場合は、当該残渣は、当該豆類の豆の皮及び/又は当該豆類の搾汁カスを含んでよい。当該皮は、例えば鞘及び薄皮を包含する。例えば、えだまめの皮又は搾汁カスが前記残渣に含まれてよい。前記残渣は、豆類の搾汁時に生じるたんぱく質を含んでもよい。また、当該残渣は、当該搾汁時に生じるたんぱく質以外の成分を含んでいてもよい。
また、前記残渣が果実である場合は、前記残渣は、果皮を含んでよく又は含まなくてもよい。例えばリンゴ又はブドウの果皮又は搾汁カスが前記残渣に含まれてよい。前記残渣は、果実の搾汁時に生じるたんぱく質を含んでもよい。また、当該残渣は、当該搾汁時に生じるたんぱく質以外の成分を含んでいてもよい。
このように、前記残渣は、植物性食品の皮又は抽出残渣(例えば搾汁カス)など、植物性食品の加工工程において生じる残渣であってよい。さらに、前記残渣は、当該植物性食品の搾汁又は加工の際に生じるたんぱく質などの成分を含んでもよい。
これらの残渣は、食品製造プロセスにおいて生成される量が特に多い。本発明の組成物は、このような残渣を利用することができるので、アップサイクルの観点から特に適している。
好ましくは、前記植物性食品残渣は、5mm以下のサイズを有する残渣片を主成分とする残渣であってよい。このようなサイズを有する残渣片を主成分とする残渣を用いることは、組成物の物性の向上の貢献にする。本明細書内において、前記残渣片を主成分とする残渣は、例えば全体の質量に対して50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、又は90質量%以上が、5mm以下のサイズを有するということを意味してよい。
当該残渣片を主成分とする残渣は、例えば残渣原料を粉砕処理することによって得られてよい。粉砕処理の種類は、例えば残渣原料の種類などに応じて、当業者により適宜選択されてよい。すなわち、前記植物性食品残渣は、植物性食品残渣の粉砕物を含んでよい。粉砕によって、上記で述べた、5mm以下のサイズを有する残渣片を主成分とする残渣が得られてよい。
特に好ましくは、前記植物性食品残渣は、植物性食品残渣の摩砕物であってよい。当該摩砕物は、繊維径が例えば1000μm以下、好ましくは200μm以下である摩砕物であってよく、より好ましくは繊維径が150μm以下である摩砕物であってよく、特に好ましくは繊維径が100μm以下である摩砕物であってよい。前記植物性食品残渣をこのような摩砕物として用いることで、成形性が向上される。また、前記摩砕物を用いることで、成形体の表面粗さ及び/又は伸度などの品質が向上する。
前記摩砕物は、例えば残渣を石臼式摩砕機によって摩砕することによって得られる。
前記摩砕物の繊維径は、マイクロスコープ画像によって測定される。
前記植物性食品残渣は、好ましくは乾燥処理されていない残渣であってよい。残渣の水分含有率は、例えば5質量%以上であってよく、特には10質量%以上、20質量%以上、又は30質量%以上であってよく、特定の実施態様においては前記水分含有率は50質量%以上であってもよい。水分含有率は、例えば90質量%以下又は80質量%以下であってよい。水分含有率は、乾燥減量法により測定される。このように水分を含む状態で、前記植物性残渣を組成物(特には可塑化澱粉と植物性食品残渣とを含む残渣含有可塑化複合材料(マスターバッチ))を製造するために用いることが、組成物の成形性及び官能特性の向上のために特に好ましい。すなわち、前記植物性食品残渣は、湿式で当該マスターバッチを製造するために用いられてよい。
水分含有率が低すぎる植物性食品残渣については、水と当該残渣との混合物の形態で、前記マスターバッチ製造のために用いられてよい。また、乾燥処理された残渣が用いられる場合は、当該乾燥残渣に対して、適宜水が加えられてよい。
好ましい実施態様において、本発明の組成物中の植物性食品残渣に含まれる澱粉は、可塑化された状態にあってよい。植物性食品残渣に由来する澱粉が可塑化されていることは、本発明の組成物の成形性の向上に貢献する。可塑化された状態は、例えば、植物性食品残渣と可塑化澱粉とから前記複合材料を製造する際に実現されてよい。
好ましい実施態様において、植物性食品残渣及び後述の可塑化澱粉を形成する澱粉材料は、一緒に可塑化される。特に好ましくは、植物性食品残渣及び澱粉材料は押出機により一緒に押出処理(混錬処理)されて可塑化される。これら2成分がこのような状態で可塑化されて得られた複合材料は、熱可塑性樹脂と組み合わせるために特に適している。
前記複合材料に含まれる澱粉が可塑化されていることは、例えば走査電子顕微鏡(SEM)により確認できる。図1Aに、SEM写真を示す。同図の中央は、可塑化処理前の植物性食品残渣(馬鈴薯からの澱粉抽出処理により得られた残渣)のSEM写真である。同図の左は、当該残渣にグリセリンを混合して加熱処理して得られた産物のSEM写真である。同図の右は、当該残渣にグリセリン及びマレイン酸を混合して加熱処理して得られた産物のSEM写真である。同図中央の写真では、澱粉の粒が確認できるが、同図の右及び肥大の写真では、そのような粒は確認できない。このように、前記可塑化処理によって、植物性食品残渣中の澱粉が可塑化される。また、図1Bに示されるように、グリセリンの代わりに、プロピレングリコール、プロピレングリコールと酸(マレイン酸)、又はプロピレングリコールと糖(マルチトール)を用いた場合のいずれにおいても、植物性食品残渣中の澱粉は可塑化される。このように、植物性食品残渣中の澱粉の可塑化のために、種々の可塑剤が用いられてよい。
(1-2)可塑化澱粉
本発明の組成物は、可塑化澱粉を含む。当該可塑化澱粉は、植物性食品残渣に由来する澱粉でない可塑化澱粉を含む。すなわち、当該可塑化澱粉は、植物性食品残渣とは別に用意された澱粉材料が可塑化されたものであってよい。植物性食品残渣と可塑化澱粉との組合せを熱可塑性樹脂に混合して製造される組成物は、植物性食品残渣だけを熱可塑性樹脂に混合して製造される組成物よりも、成形性及び官能特性において優れている。
前記可塑化澱粉は、可塑化された状態にある澱粉材料である。例えば、前記植物性食品残渣と前記澱粉材料との混合物を可塑化処理することによって、当該混合物中の前記澱粉材料は可塑化澱粉になる。このように可塑化処理された複合材料を熱可塑性樹脂と混合して得られる組成物は、成形性及び官能特性において優れている。
前記可塑化処理に付される澱粉材料として、生澱粉を用いることができ、例えば、地下系澱粉及び地上系澱粉を挙げることができる。前記可塑化澱粉は、可塑化された地下系澱粉若しくは可塑化された地上系澱粉又はこれらの組合せであってよい。
地下系澱粉は、地下で蓄積された澱粉であり、例えば、地下茎又は根などに蓄積された澱粉をいう。地下系澱粉として、例えば、タピオカ澱粉(キャッサバ澱粉)、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、クズ澱粉、及びワラビ澱粉を挙げることができるがこれらに限定されない。
地上系澱粉は、地上で蓄積された澱粉であり、例えば、種子などに蓄積された澱粉をいう。地上系澱粉として、例えば、トウモロコシ澱粉、小麦澱粉、サゴ澱粉、ドングリ澱粉及び米澱粉を挙げることができるがこれらに限定されない。
前記澱粉材料は、澱粉の変性物(すなわち変性澱粉)、特には地下系澱粉の変性物若しくは地上系澱粉の変性物又はこれらの組合せであってもよい。このような変性物として、化学的に修飾された化学的変性澱粉が挙げられる。化学的変性澱粉として、例えば、アセト酢酸エステル化澱粉、酢酸エステル化澱粉、ヒドロキシメチルエーテル化澱粉、ヒドロキシプロピルエーテル化澱粉、カルボキシメチルエーテル化澱粉、アリルエーテル化澱粉、メチルエーテル化澱粉、コハク酸エステル化澱粉、キサントゲン酢酸エステル化澱粉、硝酸エステル化澱粉、尿素リン酸エステル化澱粉、リン酸エステル化澱粉、リン酸架橋澱粉、ホルムアルデヒド架橋澱粉、アクロレイン架橋澱粉、エピクロルヒドリン架橋澱粉等が挙げられる。
澱粉材料がトウモロコシ澱粉である場合、その粒子径は、好ましくは5μm以上であり、より好ましくは10μm以上であり、さらに好ましくは15μm以上である。粒子径の上限値は、特に限定されないが、好ましくは50μm以下であり、より好ましくは40μm以下であり、さらに好ましくは30μm以下である。
澱粉材料がタピオカ澱粉である場合、その粒子径が好ましくは2μm以上であり、より好ましくは10μm以上であり、さらに好ましくは15μm以上である。粒子径の上限値は、特に限定されないが、好ましくは40μm以下であり、より好ましくは30μm以下であり、さらに好ましくは25μm以下である。
澱粉材料が馬鈴薯澱粉である場合、その粒子径が好ましくは2μm以上であり、より好ましくは20μm以上であり、さらに好ましくは30μm以上である。粒子径の上限値は、特に限定されないが、好ましくは80μm以下であり、より好ましくは60μm以下であり、さらに好ましくは40μm以下である。
また、澱粉材料は、好ましくは平衡水分を含むものであってよい。平衡水分の量は、例えば、澱粉材料質量に対して、好ましくは10質量%~15質量%であり、より好ましくは10質量%~14質量%であり、さらに好ましくは10質量%~13質量%であり、さらにより好ましくは11質量%~13質量%でありうる。なお、熱可塑性樹脂と配合する際には、澱粉の水分率は好ましくは3%以下であってよい。
(1-3)熱可塑性樹脂
前記組成物は、熱可塑性樹脂を含む。当該熱可塑性樹脂は、ポリエステル系樹脂又はポリオレフィン系樹脂を少なくとも含んでよい。本発明に従う組成物は、ポリエステル系樹脂若しくはポリオレフィン系樹脂を含んでよく又はこれらの両方を含んでもよい。また、熱可塑性樹脂は、ポリスチレン系樹脂であってもよい。また、当該熱可塑性樹脂は、生分解性を低下させないため生分解性材料を含んでいてもよい。
前記組成物は、前記熱可塑性樹脂を、前記組成物の質量に対して例えば90質量%以下の割合で含んでよく、好ましくは80質量%以下、75質量%以下、又は70質量%以下の割合で含んでよい。また、前記組成物は、前記熱可塑性樹脂を、前記組成物の質量に対して例えば10質量%以上の割合で含んでよく、好ましくは20質量%以上以下、25質量%以上、又は30質量%以上の割合で含んでよい。
前記ポリオレフィン系樹脂は、オレフィン類(例えば、α-オレフィン類)を主要なモノマーとする重合により得られる高分子である。前記ポリオレフィン系樹脂は、例えば、ポリエチレン(PE)樹脂若しくはポリプロピレン(PP)樹脂又はこれらの組合せであってもよい。
前記ポリエチレン樹脂は、例えば、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE: Low DensityPolyethylene)、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE: High DensityPolyethylene)、超低密度ポリエチレン樹脂(VLDPE:Very LowDensity Polyethylene)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE: Linear LowDensity Polyethylene)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA樹脂)等のエチレン共重合体、又は超高分子量ポリエチレン樹脂(UHMW-PE: Ultra HighMolecular Weight-Polyethylene)又はこれらの組合せであってもよい。
前記ポリオレフィン系樹脂は、好ましくはバイオマス由来のポリオレフィン系樹脂(例えば、バイオマス由来ポリエチレン樹脂など)であってよく、例えば、バイオマスポリエチレン樹脂でありうる。バイオマスポリエチレン樹脂は、例えば、LDPE、LLDPE、又はHDPEでありうる。これによりCO2排出量を削減することができる。
前記ポリオレフィン系樹脂は、メタロセン触媒を用いて製造されたポリオレフィン系樹脂であってもよい。すなわち、熱可塑性樹脂は、例えば、メタロセン触媒系のポリエチレン樹脂若しくはポリプロピレン樹脂であってよく、又は、これらの組合せであってもよい。
前記ポリスチレン系樹脂は、メタロセン触媒系のポリスチレン系樹脂であってよい。
前記ポリエステル系樹脂は、エステル結合によりモノマーが重合した高分子である。ポリエステル系樹脂は、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリ乳酸樹脂(PLA)、若しくはポリカーボネート樹脂(PC)、ポリブチレンアジペートテレフタレート樹脂(PBAT)、ポリブチレンサクシネート樹脂(PBS)、ポリヒドロキシアルカノエート樹脂(PHA)、又はこれらのうち2以上を組み合わせたものであってもよい。好ましい実施態様において、前記ポリエステル系樹脂は、PLAとPBATとを含んでよい。
ポリスチレン系樹脂は、スチレン系モノマーが重合した高分子である。ポリスチレン系樹脂は、例えば、ポリスチレン樹脂、ゴム強化ポリスチレン樹脂(耐衝撃性ポリスチレン樹脂、HIPS)、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)、メタクリル酸エステル・スチレン共重合体、アクリロニトリル・アクリルゴム・スチレン共重合体、並びにアクリロニトリル・エチレンプロピレン・スチレン共重合体等又はこれらのうち2以上を組み合わせたものであってもよい。
本実施形態において、熱可塑性樹脂の種類は、例えば、成形体の用途に応じて当業者により適宜選択されてよく、加工温度が低い熱可塑性樹脂が好ましい。例えば、食料品包装用容器に使用されるシートの場合、熱可塑性樹脂は、例えば、好ましくはポリオレフィン系樹脂であり、より好ましくはポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂であってよい。
本実施形態において、熱可塑性樹脂の融点は、好ましくは170℃以下であり、より好ましくは165℃以下でありうる。より低い融点を有する熱可塑性樹脂を採用することによって、成形時の温度を低くすることができる。また、熱可塑性樹脂の融点は、好ましくは90℃以上であり、より好ましくは95℃以上でありうる。
(1-4)他の成分
本発明の組成物は、さらに他の成分を含んでもよい。当該他の成分として、例えば、多価アルコール、低融点添加剤、及び高融点添加剤を挙げることができる。
一実施態様において、前記複合材料は、少なくとも一つの多価アルコールを含む。すなわち、前記複合材料を用いて製造された前記組成物は、植物性食品残渣と可塑化澱粉と熱可塑性樹脂と多価アルコールとを含んでよい。多価アルコールは、澱粉の可塑化を促進するために用いられてよく、すなわち澱粉可塑剤として機能しうる。なお、本発明において、多価アルコール以外の可塑剤が用いられてもよい。
本発明において、多価アルコールとは、分子中に2個以上の水酸基を有するアルコールをいう。このような多価アルコールは、好ましくは炭素数が2~5の多価アルコールであり、より好ましくは炭素数が2~4の多価アルコールでありうる。前記多価アルコールは、好ましくは2~5の水酸基(OH基)を有し、より好ましくは2~4の水酸基(OH基)を有する。
前記多価アルコールは、例えば、グリセリン及びグリコールを含みうる。当該グリコールとして、例えば、エチレングリコール及びプロピレングリコールを挙げることができる。
前記多価アルコールは、好ましくはグリセリン、エチレングリコール及びプロピレングリコールから選ばれる1つ又は2つ以上の組み合わせを含みうる。前記複合材料は、当該多価アルコールを、可塑化澱粉100質量部に対して、例えば、好ましくは10質量部~40質量部を含み、より好ましくは20質量部~35質量部を含みうる。また、樹脂組成物中における多価アルコールの含有量が、好ましくは3質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上であり、さらに好ましくは10質量%以上でありうる。
本発明の組成物は、添加剤が配合されてもよい。このような添加剤として、熱可塑性樹脂の溶融温度より低い融点温度を有し、比較的低温度で溶融する低融点添加剤が挙げられる。このような低融点添加剤として、好ましくは100℃以下で溶融するもの、より好ましくは60~100℃で溶融するものである。このような低融点添加剤として、常温で液体、又は固体のエステル化合物が好ましく用いられる。具体的には、低融点添加剤として、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、アセチル化モノグリセリド、有機酸モノグリセリド、中鎖脂肪酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、特殊脂肪酸エステル、高級アルコール脂肪酸エステルなどが挙げられる。好ましくは、グリセリン系脂肪酸エステル等が用いられる。低融点添加剤は、比較的低温度で溶融し、粘性を有するので、植物性食品残渣に絡み粘着するように機能しうる。
前記低融点添加剤は、植物性食品残渣及び可塑化澱粉の合計量100質量部当たり、例えば、好ましくは0.1質量部~5質量部、より好ましくは0.1質量部~3質量部の含有割合で、配合されてよい。
また、樹脂組成物には、低融点添加剤よりも高い融点を有する高融点添加剤が含まれていてもよい。このような高融点添加剤は、低融点添加剤よりも高い融点を有し、その融点が、好ましくは100~150℃の範囲にあり、低融点添加剤よりも先に固化し、熱可塑性樹脂の溶融温度よりも低い融点を有するものであってよい。このような高融点添加剤として、脂肪酸金属塩、炭化水素系、高級アルコール系、脂肪族アミド系、脂肪酸エステルなどが挙げられ、具体的には、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、安息香酸カリウム、安息香酸ナトリウム、フマル酸ステアリルナトリウム等が用いられる。
前記高融点添加剤は、植物性食品残渣及び可塑化澱粉の合計量100質量部当たり、例えば、好ましくは0.1質量部~5質量部、より好ましくは0.1質量部~3質量部の含有割合で、配合されてよい。
その他の添加剤として、植物性食品残渣、可塑化澱粉、及び熱可塑性樹脂の親和性を向上させるために、相溶化剤が本発明の組成物に含まれてよい。相溶化剤は、熱可塑性樹脂の種類に応じて選択されてよい。このような相溶化剤として、例えば、酸変性ポリオレフィン、酸変性ナイロン、酸変性ポリスチレン、酸変性EVA、酸変性エチレン共重合ポリマー、酸変性アクリレート、アクリル酸変性EVA、及び変性エチレンアクリレートなどを挙げることができる。
熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂である場合、相溶化剤は好ましくは酸変性ポリオレフィンであり、特には無水カルボン酸変性ポリオレフィン又はオレフィン系のコモノマーでありうる。
当該無水カルボン酸変性ポリオレフィンを構成する無水カルボン酸は、好ましくは無水マレイン酸でありうる。相溶化剤は、例えば、無水マレイン酸グラフト化ポリオレフィン樹脂であり、より特には無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、及び無水マレイン酸変性エチレン-プロピレン共重合体からなる群から選ばれる1つ又は2以上の組合せであってよい。相溶化剤には、ゴム成分が分散されていてもよい。
前記相溶化剤は、前記複合材料の質量に対して、例えば、0.1質量%~10質量%、より好ましくは1.0質量%~5.0質量%の含有割合で、前記複合材料に含まれてよい。
一実施態様において、前記相溶化剤は、前記複合材料を製造する際の一成分として用いられてよく、さらに、前記複合材料と前記熱可塑性樹脂とから本発明の組成物を製造する際の一成分として用いられてよい。このように、これら2つの製造工程のそれぞれにおいて用いられてよい。
その他の添加剤として、着色剤を用いることができる。
着色剤は、バイオマス材料含有熱可塑性樹脂組成物に着色を施すために用いられうる。着色剤として、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、染料、及び顔料を挙げることができる。
また、前記他の成分として、例えば、酸化防止剤、架橋剤、紫外線吸収剤、発泡剤及び耐衝撃剤などが用いられてもよい。これら添加剤として、市販のものが用いられてもよい。
(1-5)含有割合
本発明の組成物に含まれる前記植物性食品残渣及び前記可塑化澱粉の合計含有量の割合は、本発明の組成物の質量に対して、例えば10質量%以上であってよく、好ましくは15質量%以上、20質量%以上、25質量%以上、30質量%以上、35質量%以上、又は40質量%以上であってよい。また、前記植物性食品残渣及び前記可塑化澱粉の合計含有量の割合は、本発明の組成物の質量に対して、例えば90質量%以下であってよく、好ましくは85質量%以下、80質量%以下、75質量%以下、70質量%以下、65質量%以下、又は60質量%以下であってよい。
また、前記組成物は、前記熱可塑性樹脂を、前記組成物の質量に対して例えば90質量%以下の割合で含んでよく、好ましくは85質量%以下、80質量%以下、75質量%以下、又は70質量%以下の割合で含んでよい。また、前記組成物は、前記熱可塑性樹脂を、前記組成物の質量に対して例えば10質量%以上の割合で含んでよく、好ましくは15質量%以上、20質量%以上以下、25質量%以上、又は30質量%以上の割合で含んでよい。
また、前記植物性食品残渣の含有量は、前記植物性食品残渣及び前記可塑化澱粉の合計含有量100質量部に対して、例えば5質量部以上又は10質量部以上であり、好ましくは15質量部以上、20質量部以上、25質量部以上、30質量部以上、35質量部以上、40質量部以上、45質量部以上、又は50質量部以上であってよい。また、前記植物性食品残渣の含有量は、前記植物性食品残渣及び前記可塑化澱粉の合計含有量100質量部に対して、例えば95質量部以下又は90質量部以下であり、好ましくは85質量部以下、80質量部以下、75質量部以下、70質量部以下、65質量部以下、60質量部以下、55質量部以下、又は50質量部以上であってよい。
例えば、前記植物性食品残渣の含有量が前記植物性食品残渣及び前記可塑化澱粉の合計含有量100質量部に対して15質量部以上であることは、残渣の利活用促進の観点から好ましい。
また、前記可塑化澱粉の含有量は、前記植物性食品残渣及び前記可塑化澱粉の合計含有量100質量部に対して、例えば95質量部以下又は90質量部以下であり、好ましくは85質量部以下、80質量部以下、75質量部以下、70質量部以下、65質量部以下、60質量部以下、55質量部以下、又は50質量部以上であってよい。また、前記可塑化澱粉の含有量は、前記植物性食品残渣及び前記可塑化澱粉の合計含有量100質量部に対して、例えば5質量部以上又は10質量部以上であり、好ましくは15質量部以上、20質量部以上、25質量部以上、30質量部以上、35質量部以上、40質量部以上、45質量部以上、又は50質量部以上であってよい。
例えば、前記可塑化澱粉の含有量が前記植物性食品残渣及び前記可塑化澱粉の合計含有量100質量部に対して15質量部以上であることは、成形性の向上及び/又は成形体品質の向上の観点から好ましい。
また、前記多価アルコールの含有量は、前記植物性食品残渣及び前記可塑化澱粉の合計含有量100質量部に対して、例えば10質量部以上、好ましくは12質量部以上、より好ましくは14質量部以上、16質量部以上、18質量部以上、又は20質量部以上であってよい。また、前記多価アルコールの含有割合は、前記植物性食品残渣及び前記可塑化澱粉の合計含有量100質量部に対して、例えば30質量部以下であり、好ましくは28質量部以下、より好ましくは26質量部以下であってよい。
本発明の組成物に含まれる前記可塑化複合材料の含有量の割合は、本発明の組成物の質量に対して、例えば10質量%以上又は13質量%以上であってよく、好ましくは15質量%以上、20質量%以上、25質量%以上、30質量%以上、35質量%以上、又は40質量%以上であってよい。また、前記可塑化複合材料の含有量の割合は、本発明の組成物の質量に対して、例えば90質量%以下であってよく、好ましくは85質量%以下、80質量%以下、75質量%以下、70質量%以下、65質量%以下、又は60質量%以下であってよい。
(2)物性
(2-1)昇圧試験機により測定したときに測定される押出開始圧力と押出終了圧力との差ΔP
本発明の組成物は、前記組成物を以下の条件で昇圧試験機により測定したときに測定される押出開始圧力と押出終了圧力との差ΔPが20bar以下であってよく、より好ましくは18bar以下、さらにより好ましくは14bar以下、12bar以下、又は10bar以下であってもよく、特に好ましくは8bar以下、6bar以下、又は4bar以下であってもよい。前記差ΔPは、例えば-1bar以上であってよく、-0.5bar以上、-0.3bar以上、又は0bar以上であってよい。以下で、当該測定の方法を説明する。
組成物について以下で説明する昇圧試験機により押出圧力を測定すると、例えば図2に示されるようなグラフが得られる。当該グラフは、圧力を時間に対してプロットしたグラフの模式的な例である。
組成物について測定される押出圧力差ΔPとは、ベースの熱可塑性樹脂(プライムポリプロJ106、株式会社プライムポリマー)の押出圧力が平衡状態(直近5分間の圧力変化が±0.5%以下になった状態)になった時点の押出開始圧力Pstartと平衡状態(直近5分間の圧力変化が±0.5%以下になった状態)になった押出終了圧力Pendとの圧力差を表す指標をいう。単位は、barで表す。換言すれば、組成物に含まれる粒などの存在の程度を示す指標として使用されうる。この数値が低いほど、メッシュ詰まりが発生しにくいことを意味する。
前記押出圧力差ΔPは、昇圧試験機「LFT44-GP」(ラボテック社製)を使用して測定される。
前記押出圧力差ΔPは、以下の手順で測定される。図3は、本実施形態に係る澱粉含有素材に関する押出圧力差ΔPを測定する際に使用する昇圧試験機の一例を示す摸式図である。図3に示す昇圧試験機40は、単軸スクリュー押出機43、ギアポンプ42と、メッシュ41とを備える。昇圧試験機40において、ギアポンプ入口側圧力P1と、ギアポンプ出口側圧力P2が測定される。押出圧力差ΔPの測定に際し、ギアポンプ42の回転数が30RPMで一定となるように設定し、ギアポンプ入口側圧力P1を50barに設定し、P1が50barを維持するように単軸スクリュー押出機43の回転数を連動制御させるようにし、ギアポンプ出口側圧力P2の値を測定する。押出圧力差ΔPの測定は、以下の手順で行われる。
(1)図3に示す、100メッシュ(目開き0.154mm(公称)、空間率37%)のメッシュ41が設置され、押出圧力のモニタリングが可能な昇圧試験機40を用いて、ベースの熱可塑性樹脂の押出を行い、昇圧試験機40のギアポンプ出口側圧力P2において押出圧力が平衡状態(直近5分間の圧力変化が±0.5%以下になった状態)になった後に、前記押出圧力のモニタリングが可能な昇圧試験機40を設定温度200℃で用いて、前記組成物200gの押出を開始する。
(2)図3に示す昇圧試験機40のギアポンプ出口側圧力P2において押出圧力が平衡状態(直近5分間の圧力変化が±0.5%以下になった状態)になった時点の押出開始圧力Pstartを測定する。
(3)組成物200gを全て昇圧試験機40から押出した後にベースとなる熱可塑性樹脂に切り替えを行い、ギアポンプ出口側圧力P2において圧力が平衡状態(直近1分間の圧力変化が±0.5%以下になった状態)になった際の押出終了圧力Pendを測定する。(4)押出圧力差ΔPを下記式より算出する。
押出圧力差ΔP=Pend-Pstart
(2-2)成形性
本発明に従う組成物は、フィルム又はシートを成形可能な組成物であってよい。特には、本発明の組成物は、熱可塑性組成物であり、すなわち、熱が加えられた状態において成形可能な組成物であってよい。本発明に従う組成物は、例えばフィルム形状又はシート形状に成形されたものであってよい。また、本発明に従う組成物はペレット形状にあってもよい。
また、本発明の組成物は、プレス成形を行うために用いられてもよい。この場合において、当該組成物は、ゲル状の溶融物として成形機中に配置され、その後、プレス成形処理されて成形体が得られてよい。
(2-3)表面粗さ
本発明に従う組成物は、優れた表面状態を有する成形体を得るために適している。例えば、本発明の組成物は、表面粗さ(Ry)が例えば100μm以下、好ましくは90μm以下、より好ましくは80μm以下、さらにより好ましくは70μm以下、特に好ましくは60μm以下である表面を有する成形体であってよい。当該表面粗さは、例えば1μm以上、5μm以上、又は10μm以上であってよい。当該表面は、例えば本発明の組成物の成形体がフィルム又はシートである場合における当該フィルム又は当該シートの表面であってよい。また、当該表面は、本発明の組成物の成形体が容器である場合における当該容器の表面であってもよい。本発明によって、このように優れた表面状態を有する組成物(成形体)を得ることができる。
特に好ましい実施態様において、前記組成物は、表面粗さ(Ry)が例えば50μm以下、好ましくは45μm以下、より好ましくは43μm以下、さらにより好ましくは42μm以下、特に好ましくは41μm以下、特に好ましくは40μm以下である表面を有する成形体であってよい。当該表面粗さは、例えば1μm以上、5μm以上、又は10μm以上であってよい。当該表面は、例えば本発明の組成物の成形体がフィルム又はシートである場合における当該フィルム又は当該シートの表面であってよい。また、当該表面は、本発明の組成物の成形体が容器である場合における当該容器の表面であってもよい。
この実施態様における組成物の上記表面粗さは、前記植物性食品残渣として、上記で述べた摩砕物(特には上記で述べた繊維径を有する摩砕物)を用いることで実現しやすい。当該摩砕物は、このような特に優れた表面状態を有する成形体を得るために特に適している。
前記表面粗さ(Ry)の測定方法は以下のとおりである。
使用機器: HANDYSURF+35(ACCRETECH社製)
規格: JIS Z 1702
測定条件: λc2.5mm、評価長さ12.5mm
試験片: 厚さ50μm、幅50mm、長さ50mm
すなわち、JIS Z 1702にのっとり、厚さ50μmの例えばフィルムを50mm角に切り取ってサンプルを用意し、当該サンプルに対して、c2.5mm及び評価長さ12.5mmの測定条件で表面粗さ測定を実施してRyが算出される。当該測定のために用いられる装置は、HANDYSURF+35(ACCRETECH社製)である。なお、測定対象は、フィルムに限られず、シート又はその他の成形体などの表面に対しても、同様に実行されてよい。
(2-4)破断点伸度
本発明に従う組成物は、優れた伸度特性を示す成形体を得るために適している。例えば、本発明の組成物は、厚さ50μmのフィルムへと成形された場合に、当該フィルムの破断点伸度は例えば20%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは40%以上である。当該破断点伸度は、例えば1000%以下であってよく、特には800%以下、又は600%以下であってよく、より特には500%以下、400%以下、又は300%以下であってよい。
特に好ましい実施態様において、本発明の組成物は、厚さ50μmのフィルムへと成形された場合に、当該フィルムの破断点伸度は例えば50%以上であり、いくつかの実施態様においては80%以上、90%以上、又は100%以上であってよく、さらには200%以上であってもよい。当該破断点伸度は、例えば1500%以下であってよく、特には1200%以下であってよく、より特には900%以下、800%以下、又は600%以下であってよい。
前記特に好ましい実施態様における組成物の上記破断点伸度は、前記植物性食品残渣として、上記で述べた摩砕物(特には上記で述べた繊維径を有する摩砕物)を用いることで、より実現しやすい。当該摩砕物は、このような特に優れた伸度特性を有する成形体を得るために特に適している。
前記破断点伸度の測定方法は以下のとおりである。
引張試験(最大点応力、破断点伸度)
使用機器: STROGRAPH VE20D(株式会社東洋精機製作所製)
規格: JIS B 0601:2013
測定条件: 300mm/分
試験片: 厚さ50μm、幅15mm、長さ200mm
すなわち、JIS B 0601:2013にのっとり、厚さ50μmのフィルムを幅15mm、長さ200mmに切り取ってサンプルを用意し、当該サンプルに対して、300mm/分の速さで引張試験を実施し、最大点応力および破断点伸度を算出する(STROGRAPH VE20D:株式会社東洋精機製作所製)。
2.第2の実施形態(組成物の製造方法)
(3)製造方法
本発明の組成物は、以下のとおり複合材料製造工程及び組成物製造工程の2段階で製造されうる。これら2つの工程によって製造することで、上記で述べた数値範囲内の圧力差ΔPを有する組成物が得られる。前記2つの工程を実行する場合、まず植物性食品残渣及び澱粉材料を用いて残渣含有可塑化複合材料が得られ、その後、当該複合材料が熱可塑性樹脂と混合されて、本発明の組成物が得られる。
また、本発明の組成物は、植物性食品残渣、澱粉材料、及び熱可塑性樹脂を1つの工程において混合して製造されてもよい。
以下で、これらの製造工程について説明する。
(3-1)2段階での組成物の製造
(3-1-1)複合材料製造工程
複合材料製造工程において、植物性食品残渣及び澱粉材料が混合及び加熱されて、植物食品残渣及び可塑化澱粉を含む可塑化複合材料が得られる。一実施態様において、前記混合及び前記加熱は、段階的に行われてよく、すなわち前記混合を行った後に、前記加熱が行われてよい。他の実施態様において、前記混合及び前記加熱は同時に行われてもよい。
すなわち、植物性食品残渣と可塑化澱粉とを含む可塑化複合材料の製造方法は、植物性食品残渣及び澱粉材料の混合物に対して可塑化処理を行う可塑化工程を含み、前記植物性食品残渣は、湿った状態で前記可塑化処理に付されてよい。前記植物性食品残渣は、水分含有率が5質量%以上である状態で前記可塑化処理に付されてよい。
例えば、植物性食品残渣及び澱粉材料並びに他の成分が混合される。当該混合は常温で行われてよい。当該混合において用いられる他の成分として、前記多価アルコールが挙げられる。また、当該他の成分は、さらに水及び/又は変性剤(マレイン酸又は無水マレイン酸)などを含んでもよい。当該混合は、例えば当技術分野で通常用いられるミキサーを用いて実行されてよい。
前記植物性食品残渣は、上記(1)において述べたとおりであり、好ましくは乾燥処理されていない残渣であってよい。前記植物性食品残渣の水分含有率は、例えば5質量%以上であってよく、特には10質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、又は50質量%以上であってよい。水分含有率は、例えば90質量%以下又は80質量%以下であってよい。水分含有率は、乾燥減量法により測定される。このように水分を含む状態の前記植物性残渣を、残渣含有可塑化複合材料(マスターバッチ)を製造するために用いることが、官能特性向上のために特に好ましい。すなわち、前記植物性食品残渣は、湿式で当該マスターバッチを製造するために用いられてよい。
水分含有率が低すぎる植物性食品残渣については、水と当該残渣との混合物の形態で、前記マスターバッチ製造のために用いられてよい。また、乾燥処理された残渣が用いられる場合は、当該乾燥残渣に対して、適宜水が加えられてよい。
以上のとおりにして製造された混合物が、加熱処理に付される。当該加熱処理は、上記で述べた押出機による混錬処理として実行されてよい。当該押出機は、二軸押出機又は単軸押出機であってよい。当該押出機のシリンダー温度は、前記澱粉材料及び前記残渣中の澱粉の可塑化が行われるように設定されてよく、例えば60℃以上、80℃以上、90℃以上、又は100℃以上であってよい。前記シリンダー温度が高すぎる場合は、複合材料が変色しうるので、好ましくは200℃以下であり、より好ましくは190℃以下、170℃以下、又は150℃以下であり、特に好ましくは130℃以下、さらには120℃以下であってもよい。
前記押出機から残渣含有可塑化複合材料が排出される。当該複合材料は、例えば、柱状形状(特には円柱形状)を有してよい。また、当該柱状の形状の断面寸法(特には円柱形状の断面径)は、例えば2mm~10mm、特には3mm~8mm、より特には4mm~6mmであってよい。例えば、当該複合材料は、ストランド状であってよい。当該複合材料は、例えば透明又は半透明であってよい。当該柱状の複合材料は、例えばペレタイザーによりペレット状にカットされてもよい。すなわち、当該複合材料はペレット形状を有してもよい。
代替的には、当該複合材料は、必ずしも柱状を有している必要はなく、例えばケーキ状、特にはウェットケーキ状を有していてもよい。
また、当該複合材料は、熱可塑性樹脂と組み合わせて組成物を製造するために、適宜粉砕されてもよい。
このようにして製造される複合材料は、以下のとおりの各種含有割合を有してよい。
前記植物性食品残渣及び前記可塑化澱粉の合計含有割合は、前記可塑化複合材料の質量に対して、例えば60質量%以上であり、好ましくは62質量%以上、又は64質量%以上であり、特には70質量%以上、72質量%以上、74質量%以上、76質量%以上、78質量%以上、又は80質量%以上であってもよい。前記植物性食品残渣及び前記可塑化澱粉の合計含有割合は、前記可塑化複合材料の質量に対して、例えば99質量%以下であってよく、好ましくは98質量%以下、96質量%以下、94質量%以下、92質量%以下、又は90質量%以下であってよい。
前記多価アルコールの含有割合は、前記可塑化複合材料の質量に対して、例えば10質量%以上であり、好ましくは12質量%以上、より好ましくは14質量%以上、16質量%以上、18質量%以上、又は20質量%以上であってよい。また、前記多価アルコールの含有割合は、前記可塑化複合材料の質量に対して、例えば30質量%以下であり、好ましくは28質量%以下、より好ましくは26質量%以下であってよい。
前記植物性食品残渣及び前記可塑化澱粉及び前記多価アルコールの合計含有割合は、前記可塑化複合材料の質量に対して、例えば80質量%以上であり、好ましくは82質量%以上、84質量%以上、86質量%以上、88質量%以上、90質量%以上、92質量%以上、又は94質量%以上であってよい。前記植物性食品残渣及び前記可塑化澱粉及び前記多価アルコールの合計含有割合は、前記可塑化複合材料の質量に対して、例えば100質量%以下、99質量%以下、又は98質量%以下であってよい。
前記複合材料は、熱可塑性樹脂を含まなくてよく、又は、含んでもよい。前記複合材料が熱可塑性樹脂を含む場合、前記可塑化複合材料中の熱可塑性樹脂含有割合は、前記可塑化複合材料の質量に対して5質量%以下、4質量%以下、又は3質量%以下であってよい。例えば、ポリオレフィン系樹脂又はポリエステル系樹脂が、この数値範囲内の含有割合で含まれてよい。前記可塑化複合材料中の熱可塑性樹脂含有割合は、前記可塑化複合材料の質量に対して、例えば0質量%以上であってよく、又は、0質量%であってもよい。上記(1-3)における説明が、前記複合材料に含まれるポリオレフィン系樹脂及びポリエステル系樹脂についてもあてはまる。例えば前記組成物を製造するために用いられる熱可塑性樹脂と、前記複合材料中に含まれる熱可塑性樹脂とは、同じであってよく又は異なっていてもよく、好ましくは同じである。例えば、前者がポリオレフィン系樹脂である場合は後者もポリオレフィン系樹脂であってよい。前者がポリエステル系樹脂である場合は後者もポリエステル系樹脂であってよい。
また、前記複合材料は、以下で説明するように熱可塑性樹脂と混合するために用いられてよいが、前記複合材料の用途は、これに限られない。例えば、前記複合材料は、紙を製造するために用いられる添加剤として用いられてもよい。例えば、前記複合材料は、溶融された状態で紙料に添加及び混合されてよい。前記複合材料を含む紙料が抄紙されて、紙が製造されうる。これにより、前記残渣を含む紙を製造することができる。すなわち、植物性食品残渣を、紙においてアップサイクルすることができる。
すなわち、本発明は、前記複合材料を含む紙及び当該紙の製造方法も提供する。前記紙において、前記複合材料を構成する成分は、当該紙中に分散されていてよい。すなわち、前記紙は、前記残渣、前記澱粉材料、及び紙成分を含んでよい。
前記紙は、前記残渣を、当該紙の質量に対して例えば0.01質量%以上、0.05質量%以上、又は0.1質量%以上の含有割合で含んでよく、さらには1質量%以上の含有割合で含んでもよい。また、前記含有割合は、例えば20質量%以下、15質量%以下、又は10質量%以下であってよい。
前記紙は、前記澱粉材料を、当該紙の質量に対して例えば0.05質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、0.5質量%以上、又は1質量%以上の含有割合で含んでよい。また、前記含有割合は、例えば30質量%以下、20質量%以下、又は10質量%以下であってよい。
(3-1-2)組成物製造工程
組成物製造工程において、前記残渣含有可塑化複合材料と熱可塑性樹脂とが混錬処理されて、本発明の組成物が製造される。当該混錬処理において、相溶化剤も一緒に混錬されてよい。
当該混錬処理は、押出機により行われうる。当該押出機は、二軸押出機又は単軸押出機であってよい。当該押出機におけるシリンダー温度は、例えば前記複合材料製造工程における加熱温度(混錬処理温度)よりも高くてよく、熱可塑性樹脂の融点が達成されるように設定されうる。当該シリンダー温度は、例えば100℃以上、110℃以上、又は120℃以上であってよい。また、当該シリンダー温度は、例えば210℃以下であってよく、特には200℃以下、190℃以下、180℃以下、170℃以下、160℃以下、又は150℃以下であってもよい。
前記押出機から組成物が排出される。当該組成物はストランド状を有してよい。当該組成物は、次の成形工程のために、例えばペレタイザーによりペレット状にカットされうる。
このように、本発明の組成物は、ストランド状又はペレット状の形状の組成物として後述の成形工程において利用されるだけでなく、このようにストランド状又はペレット状の形状へと成形されることなく、後述の成形工程において利用されてもよい。すなわち、前記残渣含有可塑化複合材料と熱可塑性樹脂とが混錬処理されて得られた前記組成物が、そのまま後述の成形工程において利用されてもよい。
(3-2)1段階での製造
本発明の組成物は、植物性食品残渣、澱粉材料、及び熱可塑性樹脂が混合及び加熱されて製造されてもよい。すなわち、上記(3-1)において説明した前記残渣含有可塑化複合材料(特には当該複合材料のペレット)を製造することなく、これら3つの材料から本発明の組成物は製造されてもよい。
例えば1つの混錬装置内に、これら3つの材料が投入されて、加熱及び混合されてよい。例えば、前記混錬装置へ、前記植物性食品残渣、前記澱粉材料、及び前記熱可塑性樹脂が投入され、そして、これら3種の材料が同時に加熱及び混合されてよい。このようにして前記組成物が得られうる。
または、前記混錬装置へ、前記植物性食品残渣及び前記澱粉材料が投入され、これら2種の材料が加熱及び混合され、そして、得られた溶融物中に前記熱可塑性樹脂が投入されてもよい。このようにして前記組成物が得られうる。
または、前記混錬装置へ、前記澱粉材料が投入され、当該澱粉材料が加熱されて溶融された後に、前記植物性食品残渣が投入され、加熱及び混合され、その後に、前記熱可塑性樹脂が投入され、加熱及び混合されてもよい。このようにして前記組成物が得られうる。
前記組成物のこのような製造方法においても、上記(3-1)で述べたように、前記植物性食品残渣及び前記澱粉材料が混合及び加熱される段階で、前記他の成分が(例えば前記多価アルコール、並びに、水及び/又は変性剤)添加されてよい。また、前記植物性食品残渣は、上記(1)において述べたとおりであり、好ましくは乾燥処理されていない残渣であってよく、前記植物性食品残渣の水分含有率は、例えば5質量%以上であってよく、特には10質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、又は50質量%以上であってよい。水分含有率は、例えば90質量%以下又は80質量%以下であってよい。
前記植物性食品残渣及び前記澱粉材料が混合及び加熱される段階での加熱温度は、例えば60℃以上、80℃以上、90℃以上、又は100℃以上であってよい。前記温度が高すぎる場合は、複合材料が変色しうるので、好ましくは130℃以下、より好ましくは120℃以下であってよい。
また、前記熱可塑性樹脂が混合及び加熱される段階での温度は、例えば100℃以上、110℃以上、又は120℃以上であってよい。また、当該温度は、210℃以下であってよく、特には200℃以下、190℃以下、180℃以下、170℃以下、160℃以下、又は150℃以下であってよい。
(3-3)成形工程
前記製造方法は、上記(3-1)又は(3-2)で得られた組成物を成形する成形工程を含んでもよいが、含まなくてもよい。当該成形工程において採用される成形手法は、所望の成形体の形状又は種類に応じて当業者により適宜選択されてよい。
例えば、前記成形工程において、フィルム又はシート状の成形体を得るための処理が行われてよい。そして、前記組成物のフィルム又はシート状の成形体が、さらに他の形状へと成形されてよいが、当該フィルム又はシート状の成形体がそのままユーザ(例えば消費者)により利用されてもよい。
また、当該成形工程において、前記組成物は、フィルム又はシート状の成形体が形成されることなく、所望の形状へと成形されてもよい。すなわち、例えば前記組成物の溶融物が、そのまま成形されて、所望の形状へと成形されてもよい。当該溶融物は、上記で述べたストランド状又はペレット状の組成物が溶融されて得られた溶融物であってよく、又は、前記残渣含有可塑化複合材料と熱可塑性樹脂とが混錬処理されて得られた溶融物(すなわちストランド状又はペレット状の状態を経ていないもの)であってもよい。
当該成形体を得るために、例えばインフレーション成形、射出成形、押出成形、プレス成形、又は延伸成形などが実行されてよい。成形手法は、当業者により適宜選択されてよい。
フィルム又はシート状の成形体の製造に関しては、後述の実施例も参照されたい。
前記組成物の溶融物がそのまま成形される例に関して、以下に説明する。
前記成形体の製造のために、前記組成物は溶融されうる。例えば、前記組成物は、溶融機を用いて溶融されうる。当該溶融機は、当技術分野で既知のものであってよく、例えばバッチ式の溶融機、特には攪拌式の溶融機であってよい。
溶融状態にある前記組成物(以下「溶融物」ともいう)が、成形機を用いて成形されて、前記成形体が得られる。当該溶融物は、例えばゲル状であってよい。当該溶融物は、例えば機械アームにより又は手作業により、前記成形機へと投入されうる。前記成形機の種類は、所望の形状又は所望の成形手法に応じて、当業者により適宜選択されてよい。以下で、プレス成形の例を、図4を参照して説明する。
同図のAに示されるように、溶融状態にある組成物52が、例えば機械アームを用いてプレス成形機の型50及び51(特には金型)の間に配置される。例えば同図に示されるように、下側の型51の上に配置されてよい。
次に、同図のBに示されるように、型50及び51が型締めされ、プレスされる。これにより、組成物52が所望の形状へ成形される。型締めされた状態で、前記組成物は冷却されてよい。
次に、同図のCに示されるように、型50及び51が開かれて、前記組成物の成形体52’が、成形機から取り出される。このようにして、前記組成物の成形体が得られてよい。
前記プレスの際には、組成物が流動性を有していないと、型内に組成物が充満されず、ショート状態になる。本発明の組成物は、成形機における型内に充満させるために適しており、このような成形が可能である。
3.実施例
以下、本発明を、実施例に基づいてさらに詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本発明の代表的な実施例の一例を示したものであり、本発明の範囲はこれらの実施例のみに限定されるものでない。
3-1.実施例1及び2
当該実施例において用いられた評価方法を以下に説明し、次に、各組成物について説明する。
(1)評価方法
(1-1)昇圧試験
各組成物を昇圧試験機(LABTECH ENGINEERING、押出機径25mm、温度200℃)へ供給し、昇圧試験を行った。当該昇圧試験は200℃で行われメッシュは100を使用し、測定スタートと測定終了時の圧力差ΔPを測定した。圧力差ΔPの測定は、上記1.の「(2)物性」において記載したとおりに行われた。
(1-2)成形性(インフレーション成形)
各組成物は、インフレーション成形機(株式会社プラコー、ダイスΦ65、押出機径55mm、温度150℃)へ供給され、そして、インフレーション成形が行われた。当該インフレーション成形は、150℃~160℃で行われた。当該インフレーション成形によって、厚み50μmのフィルムを得た。当該インフレーション成形により得られたフィルムを以下の基準で評価した。
<評価基準>
A:インフレーション成形でき、且つ、得られたフィルムは破れを有さず、均一な外観を有した。
B:インフレーション成形でき、且つ、得られたフィルムは破れを有さなかったが、フィルムの一部に凝集物が確認された。
C:穴あきなどの要因により、インフレーション成形できなかった。
(1-3)臭い
上記(1-2)における評価において製造されたフィルムの臭いを、以下の基準に従い評価した。
<評価基準>
A:ほぼ無臭
B:わずかに臭う程度であり、許容できる
C:強い臭い
(1-4)色
上記(1-2)における評価において製造されたフィルムの色を、以下の基準に従い評価した。
<評価基準>
A:黄色
B:薄い茶色
C:茶色
(1-5)成形性(射出成形)
各組成物を用いて射出成形を行い、その射出成形性を評価した。
各組成物は、射出成形機(株式会社住友重工業、SH-125)へ供給され、そして、射出成形が行われた。当該射出成形は、180℃~190℃で行われた。当該射出成形によって、JIS7161に記載のダンベル型射出成型品を得た。当該射出成形により得られた射出成型品を以下の基準で評価した。
<評価基準>
A:黒点、コゲなどの見た目の不良がなく、ひけ、充填不足、発泡などの成形不良なく成形できる。
B:黒点、コゲは見られるが充填不足、発泡などの成形不良なく成形できる。
C:黒点、コゲが見られ、充填不足、発泡などの成形不良が解消できない。
(2)組成物の製造
以下の表に示される配合で、各組成物を製造した。各組成物の製造方法は、これら表の後に記載されるとおりである。これらの表において、組成に関する数値の単位は質量部であり、ΔPの単位はbarである。
(比較例1)
馬鈴薯残渣を用意した。当該馬鈴薯残渣は、馬鈴薯澱粉の抽出処理において生じた搾りかすであり、すなわち馬鈴薯由来のでん粉抽出残渣である。当該馬鈴薯残渣は、5mm以下のサイズを有するように粉砕処理され、且つ、乾燥処理された。このようにして、馬鈴薯残渣の乾燥粉末が用意された。
前記馬鈴薯残渣乾燥粉末40質量部、ステアリン酸マグネシウム1.5質量部、ステアリン酸亜鉛1質量部、モノグリセリド0.5質量部、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE: Linear Low Density Polyethylene、製品名UF641、日本ポリエチレン株式会社製)54質量部、及び相溶化剤(無水マレイン酸変性ポリエチレン、デュポン社製)3質量部を用意した。これらの成分を、ドライブレンドした。当該ドライブレンドは常温で行われた。
前記ドライブレンドにより得られた混合物を二軸押出機(PCM30、株式会社池貝)内へ供給し、そして、これらの成分が混練処理に付された。当該混練処理におけるシリンダー温度は140℃であり、且つ、樹脂圧力は9.5MPaであった。当該混練処理において、ベントからの吸引が行われた。当該混練処理によって、組成物(以下、「比較例1の組成物」ともいう)を得た。
(比較例2)
前記馬鈴薯残渣乾燥粉末40質量部の代わりに前記馬鈴薯残渣乾燥粉末8.5質量部及びコーン澱粉31.5質量部の組合せを用いたこと以外は、比較例1と同じ方法で組成物(以下、「比較例2の組成物」ともいう))を製造した。
(実施例1-1)
比較例1において用いた馬鈴薯の搾りかすを、5mm以下のサイズを有するように粉砕処理したが、比較例1と異なり、乾燥処理しなかった。このようにして、粉砕処理だけ行われた馬鈴薯残渣粉砕物が用意された。当該馬鈴薯残渣粉砕物は湿っていた。当該馬鈴薯残渣粉砕物は、手で触ったときに、水分が手に付着する程度の湿った状態を有していた。
コーン澱粉70質量部、グリセリン16質量部、エチレングリコール8質量部、ホルムアミド1質量部、モノグリセリド0.5質量部、ポリエチレン2質量部、変性ポリエチレン2質量部、及び、水と前記馬鈴薯残渣粉砕物との混合物(質量比10:3)100質量部を用意した。これら成分をミキサー内で混合した。当該混合は常温で行われた。前記グリセリン、前記エチレングリコール、前記水及び前記水と馬鈴薯残渣粉砕物との混合物は、前記ミキサーに投入する前に予め混合されていた。当該混合により得られた混合物は、液状混合物であった。
前記混合により得られた混合物を二軸押出機(PCM30、株式会社池貝)内へ供給し、そして、当該混合物が混練処理に付された。
当該混練処理におけるシリンダー温度は110℃であった。当該混練処理において、ベントからの吸引が行われた。当該混練処理後に、前記混合物は当該押出機のダイから押し出され、そして細長い略円柱状の残渣含有可塑化複合材料(「実施例1-1のマスターバッチ」ともいう)が得られた。
実施例1-1のマスターバッチ50質量部及びポリエチレン(LLDPE: Linear Low Density Polyethylene、製品名UF641、日本ポリエチレン株式会社製)50質量部、及び酸変性ポリエチレン(無水マレイン酸変性ポリエチレン、デュポン社製)3質量部を二軸押出機(PCM30、株式会社池貝)内へ供給し、そして、これらの成分が混練処理に付された。当該混練処理におけるシリンダー温度は140℃であり、且つ、樹脂圧力は4.4MPaであった。当該混練処理において、ベントからの吸引が行われた。当該混練処理によって組成物(以下、「実施例1-1の組成物」ともいう)を得た。
実施例1-1の組成物を昇圧試験機(LABTECH ENGINEERING、押出機径25mm、温度200℃)へ供給し、上記で説明したとおりに昇圧試験を行って圧力差ΔPを測定した。
また、実施例1-1の組成物について、フィルム成形に関する成形性並びに臭い及び色に関する評価を上記で説明したとおりに行った。
(実施例1-2及び1-3)
マスターバッチを製造するための配合を表2に示されるとおりに変更したこと以外は同じ方法でマスターバッチを製造し、そして、当該マスターバッチを用いて組成物(「実施例1-2の組成物」及び「実施例1-3の組成物」という)を製造した。製造された組成物それぞれについて、上記で説明したとおりに昇圧試験を行って圧力差ΔPを測定した。また、これら組成物について、フィルム成形に関する成形性並びに臭い及び色に関する評価を上記で説明したとおりに行った。
(実施例2-1)
比較例1において用いた馬鈴薯の搾りかすを、5mm以下のサイズを有するように粉砕処理したが、比較例1と異なり、乾燥処理しなかった。このようにして、粉砕処理だけ行われた馬鈴薯残渣粉砕物が用意された。当該馬鈴薯残渣粉砕物は湿っていた。
リン酸架橋タピオカ澱粉(T-1、松谷化学工業株式会社)67質量部、グリセリン5質量部、エチレングリコール18質量部、水18質量部、馬鈴薯残渣粉砕物4.1質量部及び無水マレイン酸0.5質量部を用意した。これら成分をミキサー内で混合した。当該混合は常温で行われた。前記グリセリン、前記エチレングリコール、前記馬鈴薯残渣粉砕物は、前記ミキサーに投入する前に予め混合されていた。当該混合により得られた混合物は、粉状混合物であった。
前記混合により得られた混合物を二軸押出機(PCM30、株式会社池貝)内へ供給し、そして、当該混合物が混練処理に付された。
当該混練処理におけるシリンダー温度は110℃であった。当該混練処理において、ベントからの吸引が行われた。当該混練処理後に、前記混合物は当該押出機のダイから押し出され、そして細長い略円柱状の残渣含有可塑化複合材料(「実施例2-1のマスターバッチ」ともいう)が得られた。
実施例2-1のマスターバッチ50質量部及びPLAとPBATとの混合樹脂(ECOVIO、BASF社製)60質量部を二軸押出機(PCM30、株式会社池貝)内へ供給し、そして、これらの成分が混練処理に付された。当該混練処理におけるシリンダー温度は140℃であり、且つ、樹脂圧力は4.4MPaであった。当該混練処理において、ベントからの吸引が行われた。当該混練処理によって組成物(以下、「実施例2-1の組成物」ともいう)を得た。
実施例2-1の組成物を昇圧試験機(LABTECH ENGINEERING、押出機径25mm、温度200℃)へ供給し、上記で説明したとおりに昇圧試験を行って圧力差ΔPを測定した。
また、実施例2-1の組成物について、フィルム成形に関する成形性並びに臭い及び色に関する評価を上記で説明したとおりに行った。
(実施例2-2~2-13)
マスターバッチを製造するための配合及び組成物を製造するための配合をそれぞれ表3に示されるとおりに変更したこと以外は同じ方法で、マスターバッチを製造し、そして、当該マスターバッチを用いて組成物を製造した。
実施例2-7及び2-11において用いられたリンゴ残渣は、リンゴの果汁抽出処理において生じた搾りかすであり、すなわちリンゴの果汁抽出残渣である。当該リンゴ残渣は、5mm以下のサイズを有するように粉砕処理された。このようにして用意されたリンゴ残渣粉砕物がこれら実施例において用いられた。
実施例2-8及び2-9において用いられた水と馬鈴薯残渣の混合液は、実施例1-1で用いたものと同じである。
実施例2-5及び2-6に関しては、フィルム成形における成形性でなく、射出成形における成形性が評価された。
(実施例2-14~2-17)
植物性食品残渣として人参残渣、葡萄残渣、枝豆残渣、又はコーヒー残渣を用い且つ配合を表4に示されるとおりに変更したこと以外は同じ方法で、マスターバッチを製造し、そして、当該マスターバッチを用いて組成物を製造した。
前記人参残渣は、人参エキス抽出処理において生じた搾りかすもしくは食品への加工時に発生した皮や切れ端などの残渣である。当該人参残渣は、5mm以下のサイズを有するように粉砕処理または摩砕処理することによって調製された。
前記葡萄残渣は、葡萄の果汁抽出処理において生じた搾りかすであり、すなわち葡萄の果汁抽出残渣である。当該葡萄残渣は、5mm以下のサイズを有するように粉砕処理または摩砕処理することによって調製された。
前記枝豆残渣は、食品加工時に豆を取り除いた残渣である。当該枝豆残渣は、5mm以下のサイズを有するように粉砕処理または摩砕処理することによって調製された。
前記コーヒー残渣は、コーヒー抽出処理において生じた出がらし等の残渣である。当該コーヒー残渣は5mm以下のサイズを有するように粉砕処理または摩砕処理することによって調製された。
(3)評価結果
各組成物の評価結果が、上記の表1~3に示されている。比較例1に関する評価結果に示されるとおり、熱可塑性樹脂及び馬鈴薯残渣乾燥粉末を含む組成物は、成形性が不良であった。また、比較例2に関する評価結果に示されるとおり、熱可塑性樹脂及び馬鈴薯残渣乾燥粉末にさらに澱粉を加えても、成形性が不良であった。
また、比較例1及び2のいずれについても、臭いの評価結果は不良であった。
また、比較例1及び2のいずれについても、色の評価結果は茶色であった。
馬鈴薯残渣乾燥粉末のようなバイオマス材料を熱可塑性樹脂に加える場合には、熱可塑性樹脂との混ざり易さを考慮して、水分を極力除去することが望ましいと考えられ、例えばバイオマス材料は乾燥される。しかしながら、比較例1に示されるように、馬鈴薯残渣を乾燥粉末の状態で用いた場合は、成形性は不良であった。また、比較例2に示されるように、熱可塑性樹脂と馬鈴薯残渣乾燥粉末との混ざり易さを改善するために澱粉を加えても、やはり成形性は不良であった。
実施例1-1~1-3及び2-1~2-13(以下これらをまとめて「実施例群」という)では、まず、植物性食品残渣と澱粉とから、残渣含有可塑化複合材料(マスターバッチ)が製造された。当該マスターバッチの製造において用いられた植物性食品残渣は、乾燥処理されたものでなく、湿っていた。このように湿った状態にある残渣と澱粉との混合物に対して可塑化処理を行って製造されたマスターバッチを、熱可塑性樹脂と混合して得られた組成物は、表2及び3に示されるように、いずれも成形性に優れていた。
以上のとおり、組成物が植物性食品残渣と可塑化澱粉と熱可塑性樹脂を含み且つ組成物のΔPが低いことによって、成形性を向上させることができることが分かる。
また、前記複合材料を用いることによって、植物性食品残渣を含む組成物の成形性を向上させることができることが分かる。例えば本発明に従う可塑化複合材料は、組成物のΔPを下げるために適している。
また、実施例群の臭いについては、いずれにおいても無臭又は許容できる臭いであった。そのため、実施例群におけるように組成物が植物性食品残渣と可塑化澱粉と熱可塑性樹脂を含み且つ組成物のΔPが低いことによって、臭いを低減することができる。また、前記複合材料を用いることが、組成物における臭いの低減に貢献していることも分かる。
また、実施例群の色については、黄色又は薄い茶色であった。そのため、実施例群におけるように組成物が植物性食品残渣と可塑化澱粉と熱可塑性樹脂を含み且つ組成物のΔPを低めることによって、茶色の色味を低減することができ、すなわちより明るい色味を有する樹脂組成物が得られる。また、前記複合材料を用いることが、組成物における色味を明るくすることに貢献していることも分かる。
比較例1及び2の組成物と実施例群の組成物とは、表1~3に示されるように、圧力差ΔPにおける違いがある。そのため、組成物について測定される圧力差ΔPが例えば20bar以下、好ましくは18bar以下、より好ましくは19bar以下、さらにより好ましくは17bar以下、16bar以下、又は15bar以下であることが、優れた成形性を発揮することに貢献していると考えられる。
また、当該圧力差ΔPをこのように低く制御するために、実施例群におけるように、植物性食品残渣を湿った状態で澱粉と組み合わせて可塑化処理することが有効であると考えられる。そして、当該可塑化処理を行って得られたマスターバッチは、熱可塑性樹脂と組み合わせて組成物を得るために適している。
以上のとおり、本発明の組成物は、優れた成形性を有する。また、本発明に従う製造方法は、そのような優れた成形性を有する組成物を製造するために適している。
また、実施例1-1では、水と馬鈴薯残渣の混合液が用いられ、実施例1-2及び1-3では、馬鈴薯残渣は水と混合することなく用いられた。いずれの残渣利用態様においても、成形性及び組成物品質特性が向上されることが分かる。
また、実施例1-1~1-3では、ポリオレフィン系樹脂が用いられ、実施例2-1~2-12ではポリエステル系樹脂が用いられ、実施例2-13ではポリオレフィン系樹脂が用いられた。また、これら実施例において植物性食品残渣及び熱可塑性樹脂は種々の比率で用いられた。いずれ樹脂及び比率においても、成形性及び組成物品質特性が向上されることが分かる。
また、実施例2-1~2-4に関する成形性の評価結果より、残渣と可塑化澱粉の合計量に対する残渣の割合が低いほど、成形性が向上すると考えられる。しかしながら、実施例2-10及び2-11では、当該割合が高くても成形例は極めて良好であった。そのため、例えば澱粉の種類又は熱可塑性樹脂の種類によって、成形性を向上させることができることも分かる。
また、実施例2-14~2-17に示されるとおり、植物性食品残渣の種類として人参残渣、葡萄残渣、枝豆残渣、及びコーヒー残渣を用いたいずれの場合においても、前記圧力差ΔPが20bar以下であることによって、良好な評価結果が得られた。そのため、様々な種類の植物性食品残渣が用いられた場合においても、前記圧力差ΔPが20bar以下であることによって、組成物の良好な特性が実現されることが分かる。
3-2.実施例3
マスターバッチを製造するための配合を以下の表5に示されるとおりに変更したこと以外は同じ方法でマスターバッチを製造し、そして、当該マスターバッチを用いて組成物を製造した。
実施例3-1と実施例3-5とは、植物性食品残渣として、馬鈴薯残渣が摩砕されたものであるか又は摩砕されていないものであるかという点で異なること以外は同じである。実施例3-2と実施例3-6、実施例3-3と実施例3-7、及び実施例3-4と実施例3-8の3ペアについても、同様に、摩砕の有無以外は同じである。
摩砕されていない残渣は、上記実施例1及び2と同様に、5mm以下のサイズを有するように粉砕処理されたものであったが、後述のとおり繊維径を100μm以下とするための摩砕はされていない。すなわち、当該摩砕されていない残渣は、繊維径が100μm以上且つ5mm以下の繊維を含むものである。なお、当該摩砕されていない残渣は、繊維径が100μm以下の繊維も含みうる。すなわち、当該摩砕されていない残渣中に、繊維径が100μm以下の繊維が存在してもよい。
また、摩砕された残渣は、繊維径が100μm以上且つ5mm以下の繊維を、実質的に含まなくてよく、例えばマイクロスコープ画像中の全繊維のうち3%以下、2%以下、又は1%以下であってよい。
摩砕された残渣は、いずれも100μm以下の繊維径を有する。当該摩砕された残渣は、摩砕されていない残渣を、さらに石臼式摩砕機(増幸産業株式会社)により1500回転で摩砕することによって得られた。
製造された各実施例の組成物について、昇圧試験により圧力差ΔPを測定した。さらに、各組成物について、上記で述べたフィルム成形性の評価を実施し、さらに、表面粗さ(Ry)及び破断点伸度が測定された。これらの測定は、上記で説明したとおりに実行された。
表5に示されるとおり、圧力差ΔPが20bar以下であることによって、インフレーション成形が可能であることが確認された。また、摩砕された残渣を用いることによって、摩砕されていない残渣を用いた場合と比べて、成形性がさらに向上することも確認された。特には、当該摩砕は、残渣成分の凝集を防ぐことに貢献すると考えられる。
また、摩砕された残渣を用いることによって、摩砕されていない残渣を用いた場合と比べて、表面粗さ及び破断点伸度が向上することもわかる。
以上のとおり、摩砕された植物性食品残渣を用いることによって、特に優れた物性を有する組成物が得られることがわかる。
上述の実施形態及び実施例において挙げた構成、方法、工程、形状、材料、及び数値はあくまでも例に過ぎず、これと異なる構成、方法、工程、形状、材料、及び数値が用いられてもよい。
また、上述の実施形態及び実施例の構成、方法、工程、形状、材料、及び数値等は、本発明の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
また、本明細書において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階における数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階における数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。本明細書に例示する材料は、特に断らない限り、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。

Claims (15)

  1. 植物性食品残渣と、
    可塑化澱粉と、
    熱可塑性樹脂と、
    を含む組成物であって、
    前記組成物を以下の条件で昇圧試験機により測定したときに測定される押出開始圧力と押出終了圧力との差ΔPが20bar以下である、
    前記組成物。
    <前記昇圧試験機による測定の条件>
    押出機径:25mm
    温度:200℃
    メッシュ:100メッシュ
    試験に付される組成物の量:200g
  2. 前記植物性食品残渣は、野菜、果実、穀物、コーヒー、及び茶のうちから選ばれる食品材料の残渣である、請求項1に記載の組成物。
  3. 前記植物性食品残渣は、野菜又は穀物由来のでん粉抽出残渣、果実由来の果汁抽出残渣、コーヒー又は茶の飲料抽出残渣、又は穀物精白残渣である、請求項1又は2に記載の組成物。
  4. 前記植物性食品残渣は、5mm以下のサイズを有する残渣片を主成分とする、請求項1又は2に記載の組成物。
  5. 前記植物性食品残渣は、植物性食品残渣の粉砕物を含む、請求項1又は2に記載の組成物。
  6. 前記植物性食品残渣に含まれる澱粉が、可塑化された状態にある、請求項1又は2に記載の組成物。
  7. 前記組成物は、熱可塑性組成物である、請求項1又は2に記載の組成物。
  8. 前記組成物は、フィルム又はシートを成形可能な組成物である、請求項1又は2に記載の組成物。
  9. 前記熱可塑性樹脂は、ポリエステル系樹脂又はポリオレフィン系樹脂を少なくとも含む、請求項1又は2に記載の組成物。
  10. 前記熱可塑性樹脂を、前記組成物の質量に対して90質量%以下の割合で含む、請求項1又は2に記載の組成物。
  11. 前記組成物はさらに、多価アルコールを含む、請求項1又は2に記載の組成物。
  12. ペレット形状を有する、請求項1又は2に記載の組成物。
  13. フィルム形状又はシート形状に成形された、請求項1又は2に記載の組成物。
  14. 植物性食品残渣及び澱粉を含む混合物に対して可塑化処理を行って残渣含有可塑化複合材料を製造すること、
    前記可塑化複合材料を熱可塑性樹脂と混錬して組成物を製造すること、
    を含む製造方法。
  15. 前記組成物を以下の条件で昇圧試験機により測定したときに測定される押出開始圧力と押出終了圧力との差ΔPが20bar以下である、請求項14に記載の製造方法。
    <前記昇圧試験機による測定の条件>
    押出機径:25mm
    温度:200℃
    メッシュ:100メッシュ
    試験に付される組成物の量:200g
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