JP2023108256A - 内燃機関の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】内燃機関の始動性を確保しつつ排気エミッションの悪化を抑制した内燃機関の制御装置を提供することを課題とする。【解決手段】ポート噴射弁及び筒内噴射弁を有した内燃機関の自動停止及び自動始動を実行する間欠運転制御部と、自動始動の際に空燃比を理論空燃比よりもリッチ側に制御するリッチ制御中であり、且つ自動始動開始からの前記内燃機関の積算吸気量が所定の閾値よりも少ないか否かを判定する判定部と、前記判定部により肯定判定がなされた場合に、前記判定部により否定判定がなされた場合よりも、前記筒内噴射弁の噴射タイミングを吸気行程下死点のタイミングに接近させる、及び前記ポート噴射弁及び筒内噴射弁からの総燃料噴射量に占める前記筒内噴射弁からの噴射量の比率を減少させる、の少なくとも一方を実行することにより、前記内燃機関からの排気微粒子の排出量を抑制する抑制噴射制御を実行する噴射制御部と、を備えた内燃機関の制御装置。【選択図】図3
Description
本発明は、内燃機関の制御装置に関する。
内燃機関の自動停止及び自動始動を行う間欠運転制御が知られている(特許文献1参照)。
自動停止中には内燃機関では燃焼が行われないため、燃焼室内の温度が低下して、ピストン頂面に付着した燃料の温度も低下する。その後に内燃機関が自動始動して燃焼が開始されると、ピストン頂面に付着して低温となった燃料が高温の火炎に晒される。これにより排気微粒子の排出量が増大し、排気エミッションが悪化するおそれがある。特に、自動始動の際には空燃比がリッチ空燃比となるように制御されている場合がある。この場合には、空燃比が理論空燃比となるように制御されている場合よりも燃料噴射量が増大しているため、排気微粒子の排出量が増大しやすい。
そこで本発明は、内燃機関の始動性を確保しつつ排気エミッションの悪化を抑制した内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
上記目的は、ポート噴射弁及び筒内噴射弁を有した内燃機関の自動停止及び自動始動を実行する間欠運転制御部と、自動始動の際に空燃比を理論空燃比よりもリッチ側に制御するリッチ制御中であり、且つ自動始動開始からの前記内燃機関の積算吸気量が所定の閾値よりも少ないか否かを判定する判定部と、前記判定部により肯定判定がなされた場合に、前記判定部により否定判定がなされた場合よりも、前記筒内噴射弁の噴射タイミングを吸気行程下死点のタイミングに接近させる、及び前記ポート噴射弁及び筒内噴射弁からの総燃料噴射量に占める前記筒内噴射弁からの噴射量の比率を減少させる、の少なくとも一方を実行することにより、前記内燃機関からの排気微粒子の排出量を抑制する抑制噴射制御を実行する噴射制御部と、を備えた内燃機関の制御装置により達成できる。
本発明によれば、内燃機関の始動性を確保しつつ排気エミッションの悪化を抑制した内燃機関の制御装置を提供できる。
[ハイブリッド車両の概略構成]
図1は、ハイブリッド車両の概略構成図である。ハイブリッド車両には、走行用の駆動源としてエンジン10とモータ15が搭載されている。エンジン10は、詳しくは後述するように複数の気筒を有したガソリンエンジンであるが、これに限定されずディーゼルエンジンであってもよい。エンジン10は、内燃機関の一例である。エンジン10から駆動輪13への動力伝達経路には、変速ユニット11が設けられている。変速ユニット11と左右の駆動輪13とは、ディファレンシャル12を介して駆動連結されている。
図1は、ハイブリッド車両の概略構成図である。ハイブリッド車両には、走行用の駆動源としてエンジン10とモータ15が搭載されている。エンジン10は、詳しくは後述するように複数の気筒を有したガソリンエンジンであるが、これに限定されずディーゼルエンジンであってもよい。エンジン10は、内燃機関の一例である。エンジン10から駆動輪13への動力伝達経路には、変速ユニット11が設けられている。変速ユニット11と左右の駆動輪13とは、ディファレンシャル12を介して駆動連結されている。
変速ユニット11には、K0クラッチ14とモータ15とが設けられている。変速ユニット11においてモータ15は、エンジン10から駆動輪13への動力伝達経路上に位置するように設置されている。
K0クラッチ14は、同動力伝達経路におけるエンジン10とモータ15との間の部分に位置するように設置されている。K0クラッチ14は、油圧の供給を受けて係合状態となって、エンジン10とモータ15との動力伝達を接続する。K0クラッチ14は、油圧供給の停止に応じて開放状態となって、エンジン10とモータ15との動力伝達を遮断する。また、K0クラッチ14は、トルク伝達を開始してから完全係合するまでスリップ状態となる。
モータ15は、インバータ17を介してバッテリ16に接続されている。バッテリ16は、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池等の充放電可能な二次電池である。モータ15は、バッテリ16からの給電に応じて車両の駆動力を発生するモータとして機能する一方で、エンジン10や駆動輪13からの動力伝達に応じてバッテリ16に充電する電力を発電する発電機としても機能する。モータ15とバッテリ16との間で授受される電力は、インバータ17により調整されている。
変速ユニット11には、トルク増幅機能を有した流体継ぎ手であるトルクコンバータ18、及びギア段の切替えにより変速比を多段階に切替える有段式の自動変速機19が設けられている。変速ユニット11において自動変速機19は、上記動力伝達経路におけるモータ15よりも駆動輪13側の部分に位置するように設置されている。モータ15と自動変速機19とはトルクコンバータ18を介して連結されている。トルクコンバータ18には、油圧の供給を受けて係合してモータ15と自動変速機19とを直結するロックアップクラッチ20が設けられている。
変速ユニット11には、更にオイルポンプ21及び油圧制御機構22が設けられている。オイルポンプ21で発生した油圧は、油圧制御機構22を介して、K0クラッチ14、トルクコンバータ18、自動変速機19、及びロックアップクラッチ20にそれぞれ供給される。油圧制御機構22には、K0クラッチ14、トルクコンバータ18、自動変速機19、及びロックアップクラッチ20のそれぞれの油圧回路と、それらの作動油圧を制御するための各種の油圧制御弁と、が設けられている。
ハイブリッド車両には、同車両の制御装置としてのECU(Electronic Control Unit)50が設けられている。ECU50は、車両の走行制御に係る各種演算処理を行う演算処理回路と、制御用のプログラムやデータが記憶されたメモリと、を備える電子制御ユニットである。ECU50は、内燃機関の制御装置の一例であり、詳しくは後述する間欠運転制御部、判定部、噴射制御部を機能的に実現する。
ECU50には、イグニッションスイッチ61、クランク角センサ62、エアフローメータ63、空燃比センサ64、冷却水温度センサ65、及びアクセル開度センサ66からの信号が入力される。イグニッションスイッチ61は、イグニッションのオンオフを検出する。クランク角センサ62は、エンジン10のクランクシャフトの回転速度を検出する。エアフローメータ63は、エンジン10に導入される吸入空気量を検出する。空燃比センサ64は、エンジン10の排気の空燃比を検出する。冷却水温度センサ65は、エンジン10を冷却する冷却水の温度を検出する。アクセル開度センサ66は、アクセルペダルによって操作されるアクセル開度を検出する。
ECU50は、エンジン10及びモータ15の駆動を制御する。具体的にはECU50は、インバータ17を制御して、モータ15とバッテリ16との間での電力の授受量を調整することによりモータ15のトルク制御を行う。ECU50は、油圧制御機構22の制御を通じて、K0クラッチ14やロックアップクラッチ20、自動変速機19の駆動制御を行う。
ECU50は、モータ走行モード、ハイブリッド走行モード、及びエンジン走行モードの何れかの走行モードでハイブリッド車両を走行させる。モータ走行モードでは、ECU50はK0クラッチ14を開放してモータ15の動力で駆動輪13を回転させる。ハイブリッド走行モードでは、ECU50はK0クラッチ14を係合してエンジン10及びモータ15の動力で駆動輪13を回転させる。エンジン走行モードでは、ECU50はK0クラッチ14を係合してエンジン10の動力で駆動輪13を回転させる。ECU50は、バッテリ16の充電残量に充分な余裕がある場合には、モータ走行モードを選択する。ECU50は、バッテリ16の充電残量が少ない場合や、車速がモータ走行モードでの上限を超えた場合、急加速の場合には、ハイブリッド走行モード又はエンジン走行モードが選択される。
[エンジンの概略構成]
図2は、エンジン10の概略構成図である。エンジン10は、シリンダブロック30、シリンダヘッド32、ピストン33、コネクティングロッド34、クランクシャフト35、吸気通路36、吸気バルブ36v、排気通路37、及び排気バルブ37vを有している。
図2は、エンジン10の概略構成図である。エンジン10は、シリンダブロック30、シリンダヘッド32、ピストン33、コネクティングロッド34、クランクシャフト35、吸気通路36、吸気バルブ36v、排気通路37、及び排気バルブ37vを有している。
シリンダブロック30には、円筒状のボア31が設けられている。ピストン33は、ボア31内に往復動可能に収容されている。ボア31は、円筒状の内壁面であるボア壁面31Sを有している。ピストン33は、ピストン頂面33Sを有している。ボア壁面31S、シリンダヘッド32の下面32S、及びピストン頂面33Sにより、燃焼室Cが画定される。燃焼室Cは、ピストン33の往復動によりその容積が増減する。
エンジン10の出力軸であるクランクシャフト35には、コネクティングロッド34を介して連結されている。コネクティングロッド34及びクランクシャフト35は、ピストン33の往復運動をクランクシャフト35の回転運動に変換するクランク機構を構成する。エンジン10には、上述したクランク角センサ62が設けられている。
吸気通路36は、吸気の導入路であり、燃焼室Cに吸気バルブ36vを介して接続されている。排気通路37は、排気の排出路であり、燃焼室Cに排気バルブ37vを介して接続されている。吸気通路36には、上述したエアフローメータ63が設けられている。
シリンダブロック30には、燃焼室C内に直接燃料を噴射する筒内噴射弁41Dが設けられている。吸気通路36には、吸気ポートに向けて燃料を噴射するポート噴射弁41Pが設けられている。シリンダヘッド32には、燃焼室C内に導入された吸気と燃料との混合気を火花放電により点火する点火プラグ42が設けられている。排気通路37には、排気浄化用の触媒43が設けられ、触媒43よりも下流側に上述した空燃比センサ64が設けられている。触媒43は、混合気の空燃比が理論空燃比となっているときに最大の浄化能力を発揮する。触媒43は、理論空燃比よりもリーンな排気中の酸素を吸蔵し、理論空燃比よりもリッチな排気に吸蔵した酸素を放出する酸素吸蔵能力を有した三元触媒である。
ECU50には、上述したセンサの検出信号に基づいて、スロットルバルブ40の開度、筒内噴射弁41Dやポート噴射弁41Pの燃料噴射量、点火プラグ42による点火時期等を制御することにより、エンジン10の駆動を制御する。また、ECU50は、エンジン10の運転状態に基づいて、総燃料噴射量に対するポート噴射弁41Pの噴射量を示すポート噴射率と、総燃料噴射量に対する筒内噴射弁41Dの噴射量を示す筒内噴射率とを制御する。詳細にはECU50は、ポート噴射率と筒内噴射率との合計が1となるように、それぞれ0以上から1以下の範囲内で可変設定する。例えばエンジン10の運転状態が低回転低負荷運転の場合には、ポート噴射率を筒内噴射率よりも高く設定され、高回転高負荷運転の場合には、筒内噴射率をポート噴射率よりも高く設定される。
[間欠運転制御]
ECU50は、ハイブリッド走行モード又はエンジン走行モードにおいて、所定の停止条件が成立した場合にエンジン10を自動停止させ、所定の始動条件が成立した場合に自動停止したエンジン10を始動させる間欠運転制御を実行する。例えばECU50は、ハイブリッド走行モード又はエンジン走行モードにおいてアクセルペダルの踏込みが解除された場合に、自動停止条件が成立したものとしてエンジン10を自動停止させる。また、ECU50は、アクセルペダルが踏み込まれた場合に、自動始動条件が成立したものとしてエンジン10を自動で始動させる。尚、エンジン10を自動停止させる際には、ECU50はK0クラッチ14を解放して燃料噴射を停止する。エンジン10を自動始動させる際には、ECU50はK0クラッチ14を介してモータ15によりエンジン10をクランキングして燃料噴射と点火を開始し、その後にK0クラッチ14を係合させる。このような間欠運転制御に関する処理は、間欠運転制御部が実行する処理の一例である。
ECU50は、ハイブリッド走行モード又はエンジン走行モードにおいて、所定の停止条件が成立した場合にエンジン10を自動停止させ、所定の始動条件が成立した場合に自動停止したエンジン10を始動させる間欠運転制御を実行する。例えばECU50は、ハイブリッド走行モード又はエンジン走行モードにおいてアクセルペダルの踏込みが解除された場合に、自動停止条件が成立したものとしてエンジン10を自動停止させる。また、ECU50は、アクセルペダルが踏み込まれた場合に、自動始動条件が成立したものとしてエンジン10を自動で始動させる。尚、エンジン10を自動停止させる際には、ECU50はK0クラッチ14を解放して燃料噴射を停止する。エンジン10を自動始動させる際には、ECU50はK0クラッチ14を介してモータ15によりエンジン10をクランキングして燃料噴射と点火を開始し、その後にK0クラッチ14を係合させる。このような間欠運転制御に関する処理は、間欠運転制御部が実行する処理の一例である。
間欠運転制御によるエンジン10の自動停止中では、エンジン10では燃焼が行われていないため燃焼室C内の温度が低下し、ピストン頂面33に付着した燃料の温度も低下する。その後にエンジン10が自動始動して燃料が噴射されるとピストン頂面33Sに付着した燃料が高温の火炎に晒される。これにより排気微粒子の排出量が増大して、排気エミッションが悪化するおそれがある。
特に、エンジン10の自動始動の際には、空燃比を理論空燃比よりもリッチ空燃比に制御するA/Fリッチ制御が実行される場合がある。A/Fリッチ制御は、エンジン10の始動の際に酸素吸蔵量が過多の触媒43から酸素を放出させるためや、燃焼室C内の壁面に付着して燃焼に寄与しない未燃燃料分を補うために実行される。A/Fリッチ制御が実行されると、空燃比が理論空燃比に制御されている場合よりも燃料噴射量が増量しているため、噴射された燃料の一部がピストン頂面33に更に付着して、排気微粒子の排出量が増大しやすい。本実施例では、ECU50はエンジン10の自動始動の際に所定の条件が成立した場合に、以下のように排気微粒子の排出量を抑制するためのPN(Particulate Number)抑制噴射制御を実行する。
[燃料噴射制御]
図3は、ECU50が実行する燃料噴射制御の一例を示したフローチャートである。ECU50は、イグニッションオンの状態で所定の周期で繰り返し本制御を実行する。最初にECU50は、エンジン10の自動始動要求があるか否かを判定する(ステップS1)。ステップS1でNoの場合には、本制御は終了する。
図3は、ECU50が実行する燃料噴射制御の一例を示したフローチャートである。ECU50は、イグニッションオンの状態で所定の周期で繰り返し本制御を実行する。最初にECU50は、エンジン10の自動始動要求があるか否かを判定する(ステップS1)。ステップS1でNoの場合には、本制御は終了する。
ステップS1でYesの場合、ECU50はシステムが正常であるか否かを判定する(ステップS2)。例えば、OBD(On-Board Diagnostics)に基づいて筒内噴射弁41Dやポート噴射弁41Pの異常や、燃圧の異常が検出された場合には、ステップS2でNoと判定される。
ステップS2でYesの場合、ECU50は上述したA/Fリッチ制御の実行中であるか否かを判定する(ステップS3)。A/Fリッチ制御は、上述したようにエンジン10の始動性を確保するために実行される。具体的には、ECU50は目標量当量比がリッチ当量比を示す所定値以上(例えば1.05以上)に設定されている場合や、又は燃料噴射量を増量補正するための増量補正係数が所定値以上(例えば1.05以上)に設定されている場合に、A/Fリッチ制御の実行中であると判定する。
当量比は、混合気における燃料濃度を表す指標値であり、理論空燃比となる燃料量を実際の燃料量で除した値である。当量比は、混合気の空燃比が理論空燃比の場合には「1」を、理論空燃比よりもリッチの場合には「1」よりも大きい値を、理論空燃比よりもリーンの場合には「1」よりも小さい値をとる。目標量当量比がリッチ当量比に設定されている場合には、空燃比センサ64により検出された空燃比がリッチ当量比に対応したリッチ空燃比となるように、燃料噴射量がフィードバック制御される。燃料噴射量の増量補正は、増量補正係数に従って燃料噴射量がフィードフォワード制御される。具体的には、エンジン10の運転状態に応じて算出される基本燃料噴射量に、1よりも大きい増量補正係数を乗算して得られた燃料噴射量を目標噴射量とすることにより増量補正が行われる。ステップS3は、判定部が実行する処理の一例である。
ステップS3でYesの場合、ECU50はエンジン10の自動始動開始からのエンジン10の積算吸気量が所定の閾値よりも小さいか否かを判定する(ステップS4)。積算吸気量は、燃焼室C内の温度に相関し、積算吸気量が増大するほど、燃焼室C内で燃焼が行われ燃焼室C内の温度が高いことを示す。積算吸気量が閾値以上となると、燃焼室C内の温度は十分に高温となり燃焼室C内の壁面に付着した燃料は蒸発したものとみなすことができる。尚、積算吸気量は、エンジン10の自動始動開始からのエアフローメータ63の検出値に基づいてECU50が算出する。ステップS4は判定部が実行する処理の一例である。
閾値は、以下のように冷却水温度センサ65によって検出された冷却水の温度に基づいて算出される。図4は、閾値と冷却水温度との関係を規定したマップの一例である。横軸は冷却水の温度[℃]を示し、縦軸は閾値[g]を示す。このマップは予めECU50のメモリに記憶されており、ECU50はこのマップを参照して閾値を算出する。図4に示すように、冷却水の温度が高いほど閾値は小さい値に規定されている。冷却水の温度が高いほど、自動停止から自動始動までのエンジン10の停止時間が短いことを示し、排気微粒子の排出が抑制されるまでの積算吸気量は少なくて済むからである。尚、冷却水の温度の代わりにエンジン10の潤滑油の温度を用いてもよい。冷却水の温度も潤滑油の温度も、エンジン10の温度に相関する温度だからである。
ステップS2~S4の何れかでNoの場合には、ECU50は基本噴射制御を実行する(ステップS5)。基本噴射制御とは、エンジン10の運転状態に応じた燃料噴射であり、エンジン10の出力や燃費等を考慮した噴射タイミングや筒内噴射率で行われる制御である。ステップS2~S4でYesの場合には、ECU50はPN抑制噴射制御を実行する(ステップS6。)PN抑制噴射制御とは、エンジン10の出力や燃費等よりも上述した排気微粒子の排出量を抑制することを優先した噴射タイミングや筒内噴射率で行われる制御である。ステップS5及びS6は、噴射制御部が実行する処理の一例である。
具体的にはPN抑制噴射制御では、基本噴射制御と比較して、筒内噴射弁41Dの噴射タイミングを吸気行程下死点のタイミングに接近させる、及び筒内噴射率を減少させる、の少なくとも一方を実行する。吸気行程下死点のタイミングとは、ピストン33が下死点に位置するタイミングであり、筒内噴射弁41Dからピストン33が最も離れた位置にあるタイミングである。このため、筒内噴射弁41Dの噴射タイミングを吸気行程下死点のタイミングに接近させることにより、筒内噴射弁41Dが噴射した燃料量のうちピストン頂面33Sに付着する燃料量を抑制することができる。また、筒内噴射率を減少させることによっても、ピストン頂面33Sに付着する燃料量を抑制することができる。これにより、燃焼行程において火炎に晒されるピストン頂面33S上の付着燃料量が抑制され、排気微粒子の排出量を抑制でき、排気エミッションの悪化が抑制される。
筒内噴射弁41Dの噴射タイミングを吸気行程下死点のタイミングに接近させる場合には、例えば基本噴射制御の場合の筒内噴射弁41Dの噴射タイミングがBTDC(Before Top Dead Center)300°~90°の範囲であるのに対して、PN抑制噴射制御ではBTDC280°~100°の範囲に制限することにより行ってもよい。筒内噴射率を減少させる場合には、例えば筒内噴射率を1未満であって0.4以上に設定することにより行ってもよい。
図5は、排気微粒子の排出量を示したグラフである。図5は、A/Fリッチ制御中であって積算吸気量が閾値よりも小さい場合に、基本噴射制御を実行した場合と、筒内噴射弁41Dの噴射タイミングを吸気行程下死点のタイミングに接近させたPN抑制噴射制御(以下、第1抑制噴射制御と称する)を実行した場合、筒内噴射率を低減したPN抑制噴射制御(以下、第2抑制噴射制御と称する)を実行した場合での、それぞれの排気微粒子の排出量を示している。第1抑制噴射では、基本噴射制御よりも筒内噴射の噴射タイミングが吸気行程下死点のタイミングに接近しており、その他の条件は基本噴射制御と同じである。第2抑制噴射制御では、基本噴射制御よりも筒内噴射率が低減されており、その他の条件は基本噴射制御と同じである。
詳細には、基本噴射制御ではBTDC280°とBTDC100°で2回の筒内噴射が実行され、筒内噴射率は1でありポート噴射率は0であり、1回目と2回目の筒内噴射量は同じである。第1抑制噴射制御は、2回目の筒内噴射のタイミングがBTDC230°である点で基本噴射制御と異なっているが、その他の条件は基本噴射制御と同じである。第2抑制噴射制御では、BTDC540°で1回のポート噴射が実行され、BTDC280°とBTDC100°で2回の筒内噴射が実行され、筒内噴射率及びポート噴射率はそれぞれ0.5であり、1回目の筒内噴射量は2回目の筒内噴射量よりも多く設定されている。第1及び第2抑制噴射制御では何れも場合も基本噴射制御よりもPNの排出量が低減している。
第1抑制噴射制御では、基本噴射制御と比較して2回目の筒内噴射タイミングがBTDC100°からBTDC230°に変更されており、吸気行程下死点のタイミング(BTDC180°)に接近している。これにより第1抑制噴射制御では、基本噴射制御と比較してピストン頂面33Sに付着する燃料量が抑制され、排気微粒子の排出量が抑制されている。また、第1抑制噴射制御では、吸気行程下死点のタイミング(BTDC180°)よりも前のBTDC230°で2回目の筒内噴射が行われる。即ち、ピストン33が下死点に向けて下降している最中に2回目の筒内噴射が行われる。これによっても、基本噴射制御と比較してピストン頂面33Sに付着する燃料量が抑制され、排気微粒子の排出量が抑制されている。
第2抑制噴射制御では、基本噴射制御と比較して筒内噴射率が低減している。このため、筒内噴射弁41Dからの噴射量が低減することにより、基本噴射制御と比較してピストン頂面33Sに付着する燃料量が抑制され、排気微粒子の排出量が抑制される。
また、第1及び第2抑制噴射制御の何れの場合にも、総燃料噴射量は基本噴射制御と同じである。このため、空燃比を目標空燃比であるリッチ空燃比に制御してエンジン10の始動性を確保しつつ、上述のように排気微粒子の排出量を抑制することができる。
上記実施例のように筒内噴射弁41Dにより1燃焼サイクルで複数回分割噴射を行う場合には、基本噴射制御と比較して何れかの分割噴射の噴射タイミングを吸気行程下死点に接近させればよい。
上記実施例では、筒内噴射弁41Dによる2回の分割噴射を行う場合を例として説明したが、これに限定されない。分割噴射を行わない場合においても、基本噴射制御と比較して、筒内噴射弁41Dの噴射タイミングを吸気行程下死点のタイミングに接近させる、及び筒内噴射率を減少させる、の少なくとも一方を実行すればよい。
また、PN抑制噴射制御として、基本噴射制御と比較して、筒内噴射弁41Dの噴射タイミングを吸気行程下死点のタイミングに接近させ、且つ筒内噴射率を減少させてもよい。
上記実施例及び変形例では、ハイブリッド車両1を例に説明したが、これに限定されず、車両の駆動源としてエンジンのみを有したエンジン車両であってもよい。
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
10 エンジン(内燃機関)
41D 筒内噴射弁
41P ポート噴射弁
50 ECU(間欠運転制御部、判定部、噴射制御部、内燃機関の制御装置)
41D 筒内噴射弁
41P ポート噴射弁
50 ECU(間欠運転制御部、判定部、噴射制御部、内燃機関の制御装置)
Claims (1)
- ポート噴射弁及び筒内噴射弁を有した内燃機関の自動停止及び自動始動を実行する間欠運転制御部と、
自動始動の際に空燃比を理論空燃比よりもリッチ側に制御するリッチ制御中であり、且つ自動始動開始からの前記内燃機関の積算吸気量が所定の閾値よりも少ないか否かを判定する判定部と、
前記判定部により肯定判定がなされた場合に、前記判定部により否定判定がなされた場合よりも、前記筒内噴射弁の噴射タイミングを吸気行程下死点のタイミングに接近させる、及び前記ポート噴射弁及び筒内噴射弁からの総燃料噴射量に占める前記筒内噴射弁からの噴射量の比率を減少させる、の少なくとも一方を実行することにより、前記内燃機関からの排気微粒子の排出量を抑制する抑制噴射制御を実行する噴射制御部と、を備えた内燃機関の制御装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2022009276A JP2023108256A (ja) | 2022-01-25 | 2022-01-25 | 内燃機関の制御装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2022009276A JP2023108256A (ja) | 2022-01-25 | 2022-01-25 | 内燃機関の制御装置 |
Publications (1)
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JP2023108256A true JP2023108256A (ja) | 2023-08-04 |
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ID=87475086
Family Applications (1)
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JP2022009276A Pending JP2023108256A (ja) | 2022-01-25 | 2022-01-25 | 内燃機関の制御装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2023108256A (ja) |
-
2022
- 2022-01-25 JP JP2022009276A patent/JP2023108256A/ja active Pending
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