JP2023108031A - 気管支肺異形成症の治療における抗Flt-1抗体 - Google Patents

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Abstract

【課題】気管支肺異形成症の治療における抗Flt-1抗体の提供。【解決手段】本発明は、数ある中でも、慢性肺障害、特に気管支肺異形成症(BPD)を治療するための方法および組成物を提供する。一部の実施形態において、本発明による方法は、少なくとも一つのBPDの症状または特徴の強度、重篤度、もしくは頻度が低減されるように、またはその発現を遅延させるように、BPDに罹患している、またはBPDに感受性を有する個体に対し、有効量の抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片を投与することを含む。【選択図】なし

Description

関連出願の相互参照
出願は、2018年6月22日に出願された米国仮出願第62/688,541号に対する優先権および利益を主張するものであり、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
配列表の参照による組み込み
2019年6月21日に作成され、サイズが1.59KBである「SHR-2004WO_Seq_Listing.txt」という名称のテキストファイルの内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
気管支肺異形成症(BPD)は、主に早産児に影響を及ぼす重篤な慢性肺疾患である。早産児は、酸素補給および機械的呼吸補助の使用によって肺が損傷を受けた後にBPDを発症する可能性がある。BPDを有する乳児は、肺に炎症および瘢痕化を有し、重篤な場合、人工呼吸器または酸素サポートの長期にわたる必要性、肺高血圧、再発性呼吸器感染症、肺機能異常、心機能障害、運動不耐性、および遅発性神経発達異常のリスクが高く、死のリスクさえも高い。
BPDを有する多くの乳児は回復し、時間とともに改善するが、これらの小児は喘息およびウイルス性肺炎を含むさらなる合併症を発症するリスクが高くなる。また、大半の乳児が生存する一方で、非常に重篤なBPDを有する一部の乳児は依然として、数カ月の治療後でさえも疾患によって死亡することになる。
本発明は、数ある中でも、抗Flt-1抗体療法に基づいて、慢性肺障害、特に気管支肺異形成症(BPD)を治療するための改善された方法および組成物を提供する。下記の実施例に記載の通り、本発明は、抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片が、VEGFおよび他のリガンドがFlt-1受容体に結合するのを阻害することができ、それによって、VEGFおよび/またはVEGF受容体に結合するために利用可能な他のリガンドの量を増加させることができるという発見に部分的に基づく。この結合の増加は、毛細血管密度を増加させ、線維症および炎症の低減、ならびにBPDに関連付けられた症状および特徴の軽減を促進する、血管新生促進効果を誘発することができる。実際に、実施例に示す通り、本開示は、抗Flt-1抗体の投与が、心機能の改善を含む、BPD動物モデルにおける肺病理の程度を改善することを示す。従って、本発明は、BPDの治療のための安全かつ効果的な抗体ベースの療法を提供する。
一態様において、本発明は、有効量の抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片を、治療を必要とする個体に投与することを含む、気管支肺異形成症(BPD)を治療する方法を提供する。
一部の実施形態において、個体は、BPDに罹患している乳児、またはBPDに感受性を有する乳児である。一部の実施形態において、個体は、BPDに罹患している胎児を妊娠、またはBPDに感受性を有する胎児を妊娠している。
一部の実施形態において、抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片は、表面プラズモン共鳴結合アッセイにおいて、10-9M超、10-10M超、または10-12M超の親和性でヒトFlt-1に結合する能力によって特徴付けられる。
一部の実施形態において、抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片は、ヒトFlt-1との競合アッセイにおいて、100pM未満、10pM未満、または1pM未満のIC50で特徴付けられる。
一部の実施形態において、競合アッセイは、ヒトFlt-1へのVEGFの結合の阻害である。一部の実施形態において、競合アッセイは、ヒトFlt-1へのPLGFの結合の阻害である。
一部の実施形態において、抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片は、VEGFR2および/またはVEGFR3に結合しない。
一部の実施形態において、抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片は、マウスまたはサルのFlt-1に結合しない。
一部の実施形態において、抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片は、マウスおよび/またはサルのFlt-1に結合する。
一部の実施形態において、抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片は、IgG、F(ab’)、F(ab)、Fab’、Fab、ScFvs、ダイアボディ、トリアボディ、およびテトラボディから成る群から選択される。一部の実施形態において、抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片は、IgGである。一部の実施形態において、抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片は、IgG1である。
一部の実施形態において、抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片は、モノクローナル抗体である。一部の実施形態において、モノクローナル抗体は、ヒト化モノクローナル抗体である。一部の実施形態において、ヒト化モノクローナル抗体は、ヒトFc領域を含有する。一部の実施形態において、Fc領域は、抗体のインビボでの半減期が延長されるように、Fc領域とFcRn受容体の間の結合親和性を強化する一つ以上の変異を含有する。一部の実施形態において、Fc領域は、ヒトIgG1のThr250、Met252、Ser254、Thr256、Thr307、Glu380、Met428、His433、および/またはAsn434に対応する一つ以上の位置にて一つ以上の変異を含有する。
一部の実施形態において、抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片は、非経口的に投与される。一部の実施形態において、非経口投与は、静脈内、皮内、髄腔内、吸入、経皮(局所的)、眼内、筋肉内、皮下、肺送達、および/または経粘膜投与から選択される。一部の実施形態において、非経口投与は静脈内投与である。
一部の実施形態において、抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片は、経口投与される。
一部の実施形態において、抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片は、隔月、毎月、3週間毎、隔週、毎週、毎日、または可変的な間隔で投与される。
一部の実施形態において、抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片は、肺および心臓から選択される一つ以上の標的組織に送達される。一部の実施形態において、抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片は、肺に送達される。一部の実施形態において、抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片は、心臓に送達される。
一部の実施形態において、抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片の投与は、健康な肺組織の増殖、肺炎症の減少、肺胞発生の増加、血管新生の増加、肺血管床の構造の改善、肺瘢痕化の減少、肺成長の改善、呼吸不全の減少、運動耐性の改善、有害な神経学的転帰の減少、および/または対照と比較して肺機能の改善をもたらす。
一部の実施形態において、本発明は、サーファクタント、酸素療法、人工呼吸器療法、ステロイド、ビタミンA、一酸化窒素吸入、高カロリー栄養製剤、利尿剤、および/または気管支拡張剤から選択される少なくとも一つの追加の薬剤または療法を同時投与することをさらに含む、方法を提供する。
一部の実施形態において、抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片は、約0.5mg/kg体重~約100mg/kg体重の用量で、それを必要とする対象に投与される。例えば 一部の実施形態において、抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片は、約0.5mg/kg、約1.0mg/kg、約1.5mg/kg、約2.0mg/kg、約2.5mg/kg、約3.0mg/kg、約3.5mg/kg、約4.0mg/kg、約4.5mg/kg、約5.0mg/kg、約5.5mg/kg、約6.0mg/kg、約6.5mg/kg、約7.0mg/kg、約7.5mg/kg、約8.0mg/kg、約8.5mg/kg、約9.0mg/kg、約9.5mg/kg、約10.0mg/kg、約15mg/kg、約20mg/kg、約25mg/kg、約30mg/kg、約35mg/kg、約40mg/kg、約45mg/kg、約50mg/kg、約55mg/kg、約60mg/kg、約65mg/kg、約70mg/kg、約75mg/kg、約80mg/kg、約85mg/kg、約90mg/kg、約95mg/kg、または約100mg/kgの用量で、それを必要とする対象に投与される。
一部の実施形態において、抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片は、約1mg/kg体重~約50mg/kg体重の用量で、それを必要とする対象に投与される。
一部の実施形態において、抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片は、約1mg/kg体重~約10mg/kg体重の用量で、それを必要とする対象に投与される。
一部の実施形態において、抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片の投与は、ベースライン測定と比較して心拍出量の増加をもたらす。
一部の実施形態において、抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片の投与は、血圧を低下させる。
一部の実施形態において、抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片の投与は、心拍出量、心拍出体積、および/またはLV拡張期面積を用量依存的に増大させる。
本出願で使用される「約」および「およそ」という用語は、同意語として使用される。本出願で使用される任意の数字は、約/およそを有しても有しなくても、当業者によって理解される任意の正常な変動を包含することが意味される。
本発明の他の特徴、目的、および利点は、以下の詳細な説明において明らかになる。しかし、当然のことながら、発明を実施するための形態は、本発明の実施形態を示すが、単に例示のためのみであり、制限するものではない。本発明の範囲内の様々な変更および修正は、以下の詳細な説明から当業者に明らかになるであろう。
定義
本発明をより容易に理解するために、特定の用語を最初に以下に定義する。以下の用語および他の用語の追加の定義は、明細書全体を通して定められている。
動物:本明細書で使用される「動物」という用語は、動物界の任意の一員を指す。一部の実施形態において、「動物」は、発達の任意の段階でのヒトを指す。一部の実施形態において、「動物」は、発達の任意の段階での非ヒト動物を指す。ある特定の実施形態において、非ヒト動物は、哺乳類(例えば、ゲッ齒類、マウス、ラット、ウサギ、サル、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、霊長類、および/またはブタ)である。一部の実施形態において、動物としては、哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、昆虫類、および/または蠕虫類が挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態において、動物は、遺伝子導入動物、遺伝子組み換え動物、および/またはクローンであってもよい。
抗体:本明細書で使用される「抗体」という用語は、天然であるか、または完全もしくは部分的に合成的に産生されたかにかかわらず、任意の免疫グロブリンを指す。特異的結合能力を維持するそのすべての誘導体も、この用語に含まれる。この用語はまた、免疫グロブリン結合ドメインに対して相同であるか、または主に相同である結合ドメインを有する任意のタンパク質を包含する。こうしたタンパク質は、天然源に由来してもよく、または部分的にまたは完全に合成的に産生されてもよい。抗体は、モノクローナルであってもよく、またはポリクローナルであってもよい。抗体は、以下のヒトクラスのいずれかを含む任意の免疫グロブリンクラスの一員であってもよい:IgG、IgM、IgA、IgD、およびIgE。ある特定の実施形態において、抗体は、IgG免疫グロブリンクラスの一員であってもよい。本明細書で使用される「抗体断片」または「抗体の特徴的部分」という用語は、互換的に使用され、完全長よりも短い抗体の任意の誘導体を指す。一般的に、抗体断片は、完全長の抗体の特異的結合能力の少なくともかなりの部分を保持する。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)、scFv、Fv、dsFvダイアボディ、およびFd断片が挙げられるが、これらに限定されない。抗体断片は、任意の手段によって産生されてもよい。例えば、抗体断片は、インタクト抗体の断片化によって酵素的にまたは化学的に産生されてもよく、かつ/または部分抗体配列をコードする遺伝子から組み換え的に産生されてもよい。代替的に、または追加的に、抗体断片は、完全にまたは部分的に合成的に産生されてもよい。抗体断片は任意選択的に、単鎖抗体断片を含んでもよい。代替的に、または追加的に、抗体断片は、例えばジスルフィド結合によって一緒に連結された複数の鎖を含んでもよい。抗体断片は任意選択的に、多分子複合体を含んでもよい。機能性抗体断片は典型的に、少なくとも約50個のアミノ酸を含み、またより典型的に、少なくとも約200個のアミノ酸を含む。一部の実施形態において、抗体はヒト抗体であってもよい。一部の実施形態において、抗体はヒト化抗体であってもよい。
抗原結合性断片:本明細書で使用される「抗原結合性断片」という用語は、抗原(すなわち、Flt-1)に接触および結合する免疫グロブリン分子の一部分を指す。
およそまたは約:本明細書で使用される、対象となる一つ以上の値に適用される「およそ」または「約」という用語は、記述された参照値に類似する値を指す。ある特定の実施形態において、「およそ」または「約」という用語は、特に明記しない限り、または文脈からそうでないことが明らかでない限り(そのような数が可能値の100%を超える場合を除く)、記述された参照値のいずれかの方向(より大きいかまたは小さい)で25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、またはそれ未満に収まる値の範囲を指す。
生物学的に活性:本明細書で使用される「生物学的に活性である」という句は、生物系において、特に生命体において活性を有する任意の薬剤の特徴を指す。例えば、生命体に投与された時に、その生命体に対して生物学的効果を有する薬剤は、生物学的に活性であると考えられる。ペプチドが生物学的活性である特定の実施形態において、そのペプチドの少なくとも一つの生物活性を共有するそのペプチドの一部分は典型的に、「生物学的に活性」な部分と称される。ある特定の実施形態において、ペプチドは固有の生物学的活性を有しないが、一つ以上のVEGFリガンドの結合を阻害するペプチドは、生物学的に活性であると考えられる。
担体または希釈剤:本明細書で使用される「担体」および「希釈剤」という用語は、医薬製剤の調製に有用な薬学的に許容可能な(例えば、ヒトへの投与では安全かつ無毒である)担体または希釈物質を指す。例示的な希釈剤としては、滅菌水、注射用静菌水(BWFI)、pH緩衝溶液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)、滅菌生理食塩水、リンガー溶液、またはデキストロース溶液が挙げられる。
投与形態:本明細書で使用される「投与形態」および「単位投与形態」という用語は、治療される患者のための物理的に個別の治療用タンパク質(例えば、抗体)の単位を指す。各単位は、所望の治療効果をもたらすように計算された所定の量の活性物質を含有する。しかしながら、組成物の総投与量は、主治医が妥当な医学的判断の範囲内で決定することになることを理解されたい。
機能的均等物または機能的誘導体:本明細書で使用される「機能的均等物」または「機能的誘導体」という用語は、アミノ酸配列の機能的誘導体の文脈において、本来の配列の生物学的活性と実質的に同様の生物活性(機能的活性または構造的活性のいずれか)を保持する分子を示す。機能的誘導体または機能的均等物は、天然の誘導体であってもよく、または合成で調製される。例示的な機能的誘導体としては、一つ以上のアミノ酸の置換、欠失、または付加を有するが、タンパク質の生物学的活性が保たれているアミノ酸配列が挙げられる。置換したアミノ酸は望ましくは、置換されたアミノ酸の化学物理的特性と類似する化学物理的特性を有する。望ましい類似する化学物理的特性としては、電荷、嵩高さ、疎水性、親水性、およびこれに類するものが挙げられる。
融合タンパク質:本明細書で使用される「融合タンパク質」または「キメラタンパク質」という用語は、2種以上の本来は別個のタンパク質またはそれらの部分を結合することによって作り出されたタンパク質を指す。一部の実施形態において、リンカーまたはスペーサーが各タンパク質の間に存在することになる。
半減期:本明細書で使用される「半減期」という用語は、タンパク質濃度またはタンパク質活性などの量が、ある期間の開始時に測定されたその値の半分まで下がるのに必要とされる時間である。
肥大:本明細書で使用される「肥大」という用語は、器官または組織の構成細胞の拡大に起因する、器官または組織の体積の増加を指す。
改善、増加、または低減:本明細書で使用される「改善」、「増加(または増大)」、もしくは「低減」という用語、または文法的均等物は、本明細書に記載の治療の開始前の同一個体での測定値、または本明細書に記載の治療を受けていない対照対象(または複数の対照対象)での測定値などのベースライン測定値に対する相対的な値を表す。「対照対象」は、治療を受けている対象と同じ疾患形態を患っていて、治療を受けている対象とほぼ同じ年齢の対象である。
インビトロ:本明細書で使用される「インビトロ」という用語は、多細胞生命体内ではなく、例えば試験管内または反応容器内、細胞培養液中などの人工的な環境で生じる事象を指す。
インビボ:本明細書で使用される「インビボ」という用語は、ヒトおよび非ヒト動物などの多細胞生命体内で生じる事象を指す。細胞ベースの系の文脈において、この用語は、生細胞内で生じる事象を指すために(例えば、インビトロ系とは対照的に)使用されてもよい。
リンカー:本明細書で使用される「リンカー」という用語は、融合タンパク質において、天然タンパク質の特定の位置に見られるもの以外のアミノ酸配列を指し、これは概して、可撓性であるように、または二つのタンパク質部分の間にα-ヘリックスなどの構造を挿入するように設計される。リンカーはスペーサーとも呼ばれる。リンカーまたはスペーサーは典型的に、それ自体は生物学的機能を有しない。
薬学的に許容可能な:本明細書で使用される「薬学的に許容可能な」という用語は、妥当な医学的判断の範囲内で、過度な毒性、刺激、アレルギー応答、または他の問題もしくは合併症を伴うことなく、合理的な利益/リスクの比率に応じてヒトおよび動物の組織に接触させて使用するのに適した物質を指す。
ポリペプチド:本明細書で使用される「ポリペプチド」という用語は、ペプチド結合を介して一緒に連結されたアミノ酸の連続鎖を指す。この用語は、任意の長さのアミノ酸鎖を指すために使用されるが、当業者であれば、この用語は長い鎖に限定されず、ペプチド結合を介して一緒に連結された二つのアミノ酸を含む最小限の鎖を指すことができることを理解するであろう。当業者に知られている通り、ポリペプチドはプロセシングおよび/または修飾されてもよい。
予防:本明細書で使用される「予防する」または「予防」という用語は、疾患、障害、および/または病状の発病に関連して使用される場合、疾患、障害、および/または病状の発症のリスクを低減することを指す。「リスク」の定義を参照されたい。
タンパク質:本明細書で使用される「タンパク質」という用語は、個別の単位として機能する一つ以上のポリペプチドを指す。単一のポリペプチドが個別の機能性単位であり、かつ個別の機能性単位を形成するために他のポリペプチドと永続的にまたは一時的に物理的に会合することを必要としない場合、「ポリペプチド」という用語と「タンパク質」という用語は交換可能に用いることができる。個別の機能性単位が、互いに物理的に会合する二つ以上のポリペプチドから成る場合、「タンパク質」という用語は、物理的に連結し、かつ個別の単位として一緒に機能する複数のポリペプチドを指す。
リスク:文脈から理解される通り、疾患、障害、および/または病状の「リスク」は、特定の個体が疾患、障害、および/または病状(例えば、BPD)を発症する可能性を含む。一部の実施形態において、リスクは百分率(パーセント)として表される。一部の実施形態において、リスクは0%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%から100%までである。一部の実施形態において、リスクは、参照試料または参照試料群に関連付けられたリスクと比較した危険性として表される。一部の実施形態において、参照試料または参照試料群は、疾患、障害、病状、および/または事象(例えば、BPD)の既知のリスクを有する。一部の実施形態において、参照試料または参照試料群は、ある特定の個体と比較可能な個体に由来する。一部の実施形態において、相対リスクは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上である。
対象:本明細書で使用される「対象」という用語は、ヒトまたは任意の非ヒト動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、または霊長類)を指す。ヒトには、出生前および出生後の形態が含まれる。多くの実施形態において、対象はヒトである。対象は患者とすることができ、これは、疾患の診断または治療のために医療機関に来院するヒトを指す。「対象」という用語は本明細書において「個体」または「患者」と互換的に使用される。対象は、疾患もしくは障害を患っている、または疾患もしくは障害に感受性を有する可能性があるが、疾患または障害の症状を示す場合もあり、または示さない場合もある。
実質的に:本明細書で使用される「実質的に」という用語は、対象となる特徴または特性のすべてもしくはほぼすべての範囲または程度を示す、定性的な状態を指す。生物学分野の当業者であれば、生物学的および化学的な現象が、完了することおよび/もしくは完了の域に進行すること、または絶対的な結果を達成もしくは回避することが、仮にあったとしても稀であることを理解するであろう。従って、「実質的に」という用語は本明細書において、多くの生物学的および化学的現象に固有の完了の潜在的な欠如を捉えるために使用される。
実質的相同性:本明細書で使用される「実質的相同性」という句は、アミノ酸配列間または核酸配列間の比較を指す。当業者に理解される通り、二つの配列は概して、それらが対応する位置に相同な残基を含有する場合、「実質的に相同」であると考えられる。相同な残基は同一の残基であってもよい。代替的に、相同な残基は非同一の残基であってもよく、構造的特徴および/または機能的特徴が適切に類似である。例えば、当業者に周知の通り、ある特定のアミノ酸は典型的に、「疎水性」または「親水性」アミノ酸として、かつ/または「極性」または「非極性」の側鎖を有するものとして分類される。一つのアミノ酸を同じタイプの別のアミノ酸に置換することは、しばしば「相同的」置換と考えられうる。
この技術分野で周知の通り、アミノ酸配列または核酸配列は、ヌクレオチド配列用のBLASTN、ならびにアミノ酸配列用のBLASTP、ギャップドBLAST、およびPSI-BLASTなどの市販のコンピュータプログラムで利用可能なものを含む様々なアルゴリズムのいずれかを使用して比較されてもよい。例示的なこうしたプログラムは、Altschul,et al.,Basic local alignment search tool,J.Mol.Biol.,215(3):403-410,1990、Altschul,et al.,Methods in Enzymology;Altschul,et al.,“Gapped BLAST and PSI-BLAST:a new generation of protein database search programs”,Nucleic Acids Res.25:3389-3402,1997、Baxevanis,et al.,Bioinformatics:A Practical Guide to the Analysis of Genes and Proteins,Wiley、1998、およびMisener,et al.,(eds.),Bioinformatics Methods and Protocols(Methods in Molecular Biology,Vol.132),Humana Press,1999に記載されている。相同な配列を同定することに加えて、上述のプログラムは典型的に、相同性の程度の指標を提供する。一部の実施形態において、二つの配列は、それらの対応する残基の少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上が、残基の関連するストレッチにわたって相同である場合、実質的に相同であると考えられる。一部の実施形態において、関連するストレッチは完全な配列である。一部の実施形態において、関連するストレッチは、少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500またはそれ以上の残基である。
実質的同一性:本明細書で使用される「実質的同一性」という句は、アミノ酸配列間または核酸配列間の比較を指すために使用される。当業者に理解される通り、二つの配列は、それらが対応する位置に同一の残基を含む場合、一般的に「実質的に同一」であると考えられる。この技術分野で周知の通り、アミノ酸配列または核酸配列は、ヌクレオチド配列用のBLASTN、ならびにアミノ酸配列用のBLASTP、ギャップドBLAST、およびPSI-BLASTなどの市販のコンピュータプログラムで利用可能なものを含む様々なアルゴリズムのいずれかを使用して比較されてもよい。例示的なこうしたプログラムは、Altschul,et al.,Basic local alignment
search tool,J.Mol.Biol.,215(3):403-410,1990、Altschul,et al.,Methods in Enzymology、Altschulet al.,Nucleic Acids Res.25:3389-3402,1997、Baxevanis et al.,Bioinformatics:A Practical Guide to the Analysis of Genes and Proteins,Wiley,1998、およびMisener,et al.,(eds.),Bioinformatics Methods
and Protocols(Methods in Molecular Biology,Vol. 132),Humana Press,1999に記載されている。同一の配列を同定することに加えて、上述のプログラムは典型的に、同一性の程度の指標を提供する。一部の実施形態において、二つの配列は、それらの対応する残基の少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上が残基の関連するストレッチにわたって同一である場合に、実質的に同一であると考えられる。一部の実施形態において、関連するストレッチは完全な配列である。一部の実施形態において、関連するストレッチは、少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500またはそれ以上の残基である。
罹患:疾患、障害、および/または病状に「罹患」している個体は、その疾患、障害、および/または病状を有すると診断されているか、またはその疾患、障害、および/または病状の一つ以上の症状を示す。
感受性を有する:疾患、障害、および/または病状に感受性を有する個体は、その疾患、障害、および/または病状を有すると診断されていない。一部の実施形態において、疾患、障害、および/または病状に感受性を有する個体は、その疾患、障害、および/または病状の症状を呈しない場合がある。一部の実施形態において、疾患、障害、病状、または事象(例えば、BPD)に感受性を有する個体は、以下のうちの一つによって特徴付けられる:(1)疾患、障害、および/または病状の発症と関連付けられた遺伝子変異、(2)疾患、障害、および/または病状の発症と関連付けられた遺伝子多型、(3)疾患、障害、および/または病状と関連付けられたタンパク質の発現および/または活性の増加および/または減少、(4)疾患、障害、病状、および/または事象の発症と関連付けられた習慣および/またはライフスタイル、および/または(5)移植を受けたか、移植を受ける予定であるか、または移植を必要としていること。一部の実施形態において、疾患、障害、および/または病状に感受性を有する個体は、その疾患、障害、および/または病状を発症するであろう。一部の実施形態において、疾患、障害、および/または病状に感受性を有する個体は、その疾患、障害、および/または病状を発症しないであろう。
標的組織:本明細書で使用される「標的組織」という用語は、BPDなどの治療されるべき疾患の影響を受ける任意の組織を指す。一部の実施形態において、標的組織は、疾患関連病理、症状、または特徴を示す組織を含み、これには、肺炎症、肺瘢痕化、肺成長障害、早期肺損傷、呼吸不全の延長、肺感染症、運動不耐性、および有害な神経学的転帰が挙げられるが、これらに限定されない。
治療有効量:本明細書で使用される、治療剤の「治療有効量」という用語は、疾患、障害、および/または病状に罹患しているか、またはこれらに感受性を有する対象に投与される場合、その疾患、障害、および/または病状を治療する、診断する、予防する、ならびに/またはその疾患、障害、および/または病状の発現を遅延させるのに十分な量を意味する。治療有効量は典型的に、少なくとも一つの単位用量を含む用量レジメンによって投与されることが当業者に理解されるであろう。
治療:本明細書で使用される「治療する」、「治療」、または「治療している」という用語は、特定の疾患、障害、および/または病状のうち一つ以上の症状または特徴を、部分的にまたは完全に軽減する、寛解させる、緩和する、抑制する、予防する、その発現を遅延させる、その重篤度を低減する、かつ/またはその発生率を低減するために使用される任意の方法を指す。疾患の徴候を示していない対象、および/または疾患の初期の徴候のみを示している対象に対して、その疾患に関連付けられた病理を発症させるリスクを低減させることを目的として、治療が行われる場合がある。
本発明は、数ある中でも、気管支肺異形成症(BPD)を治療するための治療法として、抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片の使用に基づいて、慢性肺障害、特にBPDを治療するための方法および組成物を提供する。一部の実施形態において、本発明は、少なくとも一つのBPDの症状または特徴の強度、重篤度、もしくは頻度が低減されるように、またはその発症を遅延させるように、BPDに罹患している、またはBPDに感受性を有する個体に対し、有効量の抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片を投与することを含む、BPDの治療の方法を提供する。
本発明の様々な態様が、以下のセクションで詳細に記載される。セクションの使用は、本発明を限定することを意味しない。各セクションは、本発明の任意の態様に適用することができる。本出願において、「または」の使用は、別段の記述がない限り、「および/または」を意味する。
気管支肺異形成症(BPD)
サーファクタント療法、母体ステロイド、新たな人工呼吸器戦略、動脈管開存の積極的な管理、栄養改善、および他の治療の導入によって、RDSを有する早産児の臨床経過および転帰は過去30年間で劇的に変化した。最近、BPDを発症する乳児の約3分の2が出生時に軽度の呼吸困難のみを有することが実証されている。これは、肺損傷の発生タイミングが、BPDの病因における重要な要因であることを示唆している。
この変化する疫学的かつ臨床的なパターンと並行して、BPDにおける肺組織学の主要な特徴も変化している。早産後に持続性肺疾患を有する乳児は、このサーファクタント未使用の時代にBPDで死亡する乳児において従来観察されたものとは異なる臨床経過および病理を有することが、現在認識されつつある。BPDが最初に特徴付けられる古典的な進行期は、臨床管理の変化のため、しばしば存在せず、またBPDは、主として急性肺損傷の重篤度によって定義される状態から、主に遠位肺成長の破壊によって定義される現在の特徴付けに明らかに変化した。それ故に、いわゆる、サーファクタント使用の時代の新しいBPDは、肺の構造、成長、および遠位気腔および血管系の機能の変化を伴う肺発達の阻害を表す。生理学的に、これは、運動不耐性、肺高血圧、および急性呼吸器感染症の不良な耐性のリスクの増加を伴う、ガス交換の障害に潜在的に寄与する、肺胞毛細血管表面積の顕著な減少を示唆する。
BPDの病因
BPDは、肺成長の臨界期間中、すなわち気腔の中隔作成および血管の発生が劇的に増加する、管状期(ヒトでは17~26週間)中の傷害に対する肺の応答を表す。一部の実施形態において、BPDの発症に対する早産児の感受性を増加させる要因には、肺サーファクタント欠損症、抗酸化防御の減少、上皮イオンおよび水輸送機能の障害、ならびに肺構造未成熟が含まれる。一部の実施形態において、早産後の肺損傷およびその後の肺成長の停止は、防御が不良な発達中の肺の炎症、高酸素症、機械的換気、および感染を含む、複数の有害な刺激の間の複雑な相互作用からもたらされる。一部の実施形態において、母親の絨毛羊膜炎に起因する、TNF-α、IL-6、IL-8、およびその他の炎症誘発性サイトカインへの出生前の曝露は、子宮内での肺成熟を強化するが、BPDのリスクを増大させる。
高酸素症および酸化ストレスは、BPDの発症における重要な因子である。一部の実施形態において、正常な胎児の低酸素分圧環境から子宮外生活の相対的に高酸素の状態への早産児の移行は、肺胞形成の減少および異型脈管構造を伴うBPDのリスクを増大させる。一部の実施形態において、酸素環境の早すぎる変化は、正常な上皮間葉相互作用を阻害し、微小血管系における内皮細胞生存、分化、および組織化の変化につながる。一部の実施形態において、早産児は、早産後の適切な抗酸化物質の欠如によって、活性酸化種(ROS)誘発損傷に特に感受性を有する。一部の実施形態において、抗酸化酵素[例えば、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、カタラーゼ、およびグルタチオンペルオキシダーゼ]は、妊娠後期中に顕著に増加する。一部の追加的実施形態において、高酸素に応答して抗酸化酵素の合成を増加させる能力は、早産の動物において低下し、そのため早産は、早期の生後の生活中に持続する抗酸化物質の正常な上方制御より先に起こる場合がある。一部の実施形態において、内皮細胞および肺胞II型細胞は、高酸素症およびROS誘発性損傷に非常に感受性を有し、浮腫の増加、細胞機能不全、ならびに細胞生存および増殖の障害につながる。
一部の実施形態において、気圧障害または容量損傷の明白な徴候がない場合でさえも、機械的換気による早期新生児の治療は、炎症および浸透性浮腫を伴う肺損傷を開始および促進し、BPDに寄与する。一部の実施形態において、人工呼吸器関連肺損傷(VALI)は、遠位気道上皮および毛細血管内皮の伸張から生じるが、これは浸透性浮腫を増加させ、サーファクタント機能を阻害するとともに、複雑な炎症性カスケードを引き起こす。一部の実施形態において、分娩室での蘇生中などの短時間の正圧換気でさえも、肺の細気管支上皮および内皮に損傷を引き起こし、進行性肺炎症および損傷の段階のきっかけをもたらす可能性がある。
肺炎症は、出生前(絨毛羊膜炎から)に誘発されても、または生後早期に(高酸素症またはVALIに起因して)誘発されても、BPDの発症において顕著な役割を果たす。一部の実施形態において、BPDのリスクは、気管液好中球数、活性化マクロファージ、高濃度の脂質産物、酸化剤非活性化α-1-アンチトリプシン活性、ならびにIL-6およびIL-8を含む炎症誘発性サイトカインの持続的な増加、ならびにIL-10レベルの減少と関連付けられる。一部の実施形態において、TNF-α、IL-1β、IL-8、およびTGF-βなどの早期応答サイトカインのマクロファージによる放出、および可溶性接着分子(すなわち、セレクチン)の存在は、他の細胞に影響を与えて、好中球を動員し、炎症応答を増幅する化学誘引物質を放出させる場合がある。一部の実施形態において、炎症誘発性サイトカインの濃度の上昇は、抗炎症産物(すなわち、IL-10)の減少と併せて、その後にBPDを発生する乳児において、生後数時間以内に気管吸引液中に存在する。一部の実施形態において、活性化された好中球からのエラスターゼおよびコラゲナーゼ放出の増加は、肺のエラスチンおよびコラーゲン骨格を直接破壊する場合があり、コラーゲンおよびエラスチン分解のマーカーは、BPDを有する乳児の尿の中で回収することができる。一部の実施形態において、ウレアプラズマ・ウレアリチカム(Ureaplasma urealyticum)による気道コロニー形成などの比較的に低い病毒性生命体からの感染は、炎症反応を増強し、BPDのリスクをさらに増大させる場合がある。一部の実施形態において、例えばビタミンAおよびビタミンE欠損症などの栄養失調やサーファクタントタンパク質の一塩基多型バリアントなどの遺伝的要因などの他の要因は、一部の早産児におけるBPDのリスクを増大させる可能性が高い。
BPDにおける肺循環
気道および遠位気腔に及ぼす有害な効果に加えて、急性肺傷害も、早産後の発達している肺循環の成長、構造、機能を害する。一部の実施形態において、内皮細胞は、高酸素症または炎症による酸化傷害に特に感受性を有する。一部の実施形態において、小肺動脈の媒体は、平滑筋細胞増殖、成熟平滑筋細胞への未成熟間葉細胞の早熟な成熟、および血管壁への線維芽細胞/筋線維芽細胞の組み込みを含む、顕著な変化を経る。一部の実施形態において、肺血管系の構造変化は、血管直径の狭窄および血管コンプライアンスの低下による高い肺血管抵抗(PVR)に寄与する。一部の実施形態において、これらの構造変化に加えて、肺循環は、PVRも増加させる、異常な血管反応性によってさらに特徴付けられる。一部の実施形態において、血管新生の減少は、特に運動またはストレスを伴う高心拍出量に応答して、血管表面積を制限し、PVRのさらなる上昇を引き起こす場合がある。
全体的に、肺循環の早期の損傷は、肺高血圧症の急速な発症につながり、これは重篤なBPDの罹患率および死亡率に著しく寄与する。一部の実施形態において、高い死亡率は、長時間の人工呼吸器による補助を必要とするBPDおよび肺高血圧症を有する乳児で発生する。一部の実施形態において、肺高血圧症は、より進行したBPDのマーカーであり、PVRの上昇はまた、右心室機能の低下、心拍出量の障害、酸素送達の制限、肺浮腫の増加、およびおそらくは突然死のリスクの上昇を引き起こす。一部の実施形態において、BPDにおける肺循環の生理学的異常は、急性低酸素症に対する顕著な血管収縮応答によって示される通り、PVRの上昇および異常な血管反応性を含む。一部の実施形態において、軽度の低酸素症でさえ、肺高血圧症の中程度の基礎レベルを有する乳児において、肺動脈圧の顕著な上昇を引き起こす。一部の実施形態において、92~94%を超える酸素飽和の治療レベルは、肺動脈圧を効果的に低下させる。一部の実施形態において、肺動脈圧を低下させる、または肺血管系への損傷を制限する戦略は、BPDにおける肺高血圧症のその後の発症を制限する場合がある。
最後に、肺高血圧症および右心機能は、BPDを有する乳児において大きな臨床的懸念のままである。一部の実施形態において、BPDの肺血管疾患はまた、成長障害による肺動脈密度の低下を含み、これは、ガス交換障害の生理学的異常、ならびにBPDの実際の病因に寄与する。一部の実施形態において、血管新生障害は肺胞形成を阻害し、内皮細胞の生存、成長、および機能を維持および強化する戦略は、BPDの予防のための治療アプローチを提供する。
BPDにおける血管新生因子の改変されたシグナル伝達
複数の成長因子およびシグナル伝達系は、正常な肺血管の成長において重要な役割を果たす。一部の実施形態において、早産と、酸素分圧、炎症性サイトカインおよび他のシグナルにおける変化とは、正常な成長因子の発現およびシグナル伝達を改変し、それ故に肺/肺血管の発生を改変する。一部の実施形態において、成長因子はVEGFである。VEGFシグナル伝達の障害は、臨床現場におけるBPDの病因と関連付けられている。一部の実施形態において、慢性肺疾患を発症していない患者よりも、BPDをその後発症する早産の新生児からの気管液サンプルにおいて、VEGFは低いことが見いだされる(185)。一部の実施形態において、高酸素症は肺のVEGF発現を下方制御し、またVEGFシグナル伝達の薬理学的阻害は肺血管の成長を害し、肺胞形成を阻害する。一部の実施形態において、デュシェンヌ筋ジストロフィー(DMD)誘発性虚血性および低酸素状態は、VEGFシグナル伝達の障害と関連付けられている。血管成長の減少および肺胞形成の障害につながるVEGFシグナル伝達障害の生物学的根拠は、十分に確立されている。
血管の成長および肺胞形成
上述の通り、気道と血管の間の成長の緊密な連携は、正常な肺発達に不可欠である。一部の実施形態において、肺成長の重要な期間(発達の嚢状または肺胞期)中の肺血管成長の不全は、中隔作成を減少させ、BPDを特徴付ける肺形成不全に最終的に寄与する。一部の実施形態において、血管新生は肺発達中の肺胞形成に関与し、また肺血管の成長を損傷し、阻害する機序は、早産後の肺胞成長を妨げる場合がある。一部の実施形態において、生後の肺成長の重要な期間中の肺血管成長の阻害は、肺胞形成を害する。
Flt-1受容体
血管内皮成長因子受容体1としても知られるFlt-1受容体は、FLT1遺伝子によってコードされる受容体である。シグナル糖タンパク質の血管内皮成長因子(VEGF)ファミリーは、胚形成中および生後成長中の血管新生の強力なプロモーターとして作用する。具体的に、VEGF-AリガンドとVEGF受容体との結合は、血管透過性を促進し、内皮細胞の移動、増殖、および生存をトリガすることも示されていて、新たに形成された内皮細胞は、新しい脈管構造の基礎構造を提供する。血管新生のための主要なVEGFシグナル分子であるVEGF-Aは、VEGF受容体-1(VEGFR-1、Flt-1としても知られる)およびVEGF受容体-2(VEGFR-2、Flk-1としても知られる)を介してそのシグナルを媒介する。Flt-1の可溶性形態(sFlt-1)も存在するが、細胞内シグナル伝達ドメインを欠くため、それに結合するVEGF-Aまたは他のリガンドを隔離することによる調節能力でのみ機能すると考えられる。sFlt-1および細胞内シグナル伝達経路に結合していないFlt-1結合部位を含有する他の分子は、デコイ受容体と呼ばれる。Flt-1受容体およびFlk-1受容体は、細胞外VEGF-A結合ドメインおよび細胞内チロシンキナーゼドメインを含有し、両方とも血管芽細胞および内皮細胞系統における発生段階中および組織再生中に発現を示す。Flt-1は、Flk-1と比較して、VEGF-A(Kd約2~10pM)に対する結合親和性が約10倍高いが、より弱いチロシンキナーゼドメインは、Flt-1へのVEGF-Aの結合後の血管新生シグナル伝達が、Flk-1シグナルよりも比較的に弱いことを示す。このように、ホモ接合型Flt-1遺伝子ノックアウトマウスは、内皮細胞の過剰産生および血管の崩壊から胚期に死亡する。逆に、ホモ接合型Flk-1遺伝子ノックアウトマウスは、胚形成中の卵黄嚢血島形成の欠如によって、組織化された血管の発達における欠陥によって死亡する。Flt-1受容体とFlk-1受容体の両方は、正常な発達のために必要であるが、VEGF-A濃度の選択的な増強は、Flk-1受容体へのより大きい結合を可能にし、また毛細血管密度を増加させる、および線維症と炎症の低減ならびにBPDに関連する症状と特徴の軽減を促進する、血管新生促進効果を誘発する場合がある。
本明細書で使用される「Flt-1受容体」という用語は、可溶性と膜結合型の両方のFlt-1受容体、またはその機能的断片を指す。
抗Flt-1抗体
本明細書で使用される「抗Flt-1抗体」という用語は、Flt-1受容体(例えば、可溶性または膜結合型Flt-1受容体)に結合する任意の抗体またはその抗原結合性断片を指す。例示的な抗体は、例えば国際特許公開公報第2016/164567号および同第2016/164579号に記載されていて、そのそれぞれの内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。一部の実施形態において、Flt-1受容体に高い親和性で結合する抗Flt-1抗体が産生される。理論に拘束されることを望むものではないが、Flt-1受容体に結合する抗Flt-1抗体は、一つ以上の内因性リガンドがFlt-1に結合するのを阻害し、それによって、より大量の利用可能なリガンドが、Flk-1受容体などの他のVEGF受容体と会合することを可能にすると考えられる。Flk-1受容体の活性化の増加は、毛細血管密度を増加させ、線維症および炎症の減少を促進し、BPDに関連する症状および特徴の軽減を促進する可能性がある。一部の実施形態において、VEGFの増加は、DMDに関連する症状および特徴の軽減に使用することができる。一部の実施形態において、Flt-1受容体に結合する抗体は、他のVEGF受容体に結合するために利用可能なVEGFの量を増加させる。一部の実施形態において、Flt-1受容体に結合する抗体は、他のVEGF受容体に結合するために利用可能な胎盤成長因子(PLGF)の量を増加させる。
一部の実施形態において、抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片は、約10-9Mを超える親和性、約10-10Mを超える親和性、約0.5×10-10Mを超える親和性、約10-11Mを超える親和性、約0.5×10-11Mを超える親和性、約10-12Mを超える親和性、または約0.5×10-12Mを超える親和性で、ヒトFlt-1に結合する。Flt-1抗体の親和性は、例えばBIACOREアッセイなどの表面プラズモン共鳴アッセイで測定されてもよい。
一部の実施形態において、抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片は、ヒトFlt-1との競合アッセイにおいて、100pM未満、10pM未満、または1pM未満のIC50で特徴付けられる。
一部の実施形態において、抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片は、Flt-1受容体でのVEGFの結合および/または活性を阻害する。一部の実施形態において、抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片は、競合アッセイにおいて、ヒトFlt-1へのVEGFの結合を阻害するために、100pM未満、10pM未満、または1pM未満のIC50によって特徴付けられる。
一部の実施形態において、抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片は、Flt-1受容体でのPLGFの結合および/または活性を阻害する。一部の実施形態において、抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片は、競合アッセイにおいて、ヒトFlt-1へのPLGFの結合を阻害するために、100pM未満、10pM未満、または1pM未満のIC50によって特徴付けられる。
一部の実施形態において、抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片は、Flt-1に選択的に結合し、他のVEGF受容体への結合は最小限であるか、またはあまりない。一部の実施形態において、抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片は、Flt-1に選択的に結合し、VEGFR2(Flk-1)および/またはVEGFR3(Flt-4)への結合は最小限であるか、またはあまりない。
一部の実施形態において、抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片は、ヒトFlt-1に選択的に結合し、他の哺乳動物Flt-1受容体への結合は最小限であるか、またはあまりない(例えば、10-7M未満または10-6M未満の結合親和性を有する)。一部の実施形態において、抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片は、ヒトFlt-1に選択的に結合し、サルFlt-1に結合しない。一部の実施形態において、抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片は、ヒトFlt-1に選択的に結合し、マウスFlt-1に結合しない。
一部の実施形態において、抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片は、ヒトFlt-1だけでなくサルFlt-1にも結合する。一部の実施形態において、抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片は、ヒトFlt-1だけでなくマウスFlt-1にも結合する。
一部の実施形態において、抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片は、IgG、F(ab’)、F(ab)、Fab’、Fab、ScFvs、ダイアボディ、トリアボディ、およびテトラボディから成る群から選択される。
一部の実施形態において、抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片は、IgGである。一部の実施形態において、抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片は、IgG1である。
一部の実施形態において、適切な抗Flt-1抗体は、FcRn受容体に結合するFcドメインまたはその一部分を含有する。非限定的な例として、適切なFcドメインは、IgGなどの免疫グロブリンのサブクラスに由来する場合がある。一部の実施形態において、適切なFcドメインは、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4に由来する。特に適切なFcドメインとしては、ヒト抗体またはヒト化抗体に由来するものが挙げられる。
FcドメインとFcRn受容体の間の結合の改善は、血清半減期の延長をもたらすと考えられる。それ故に、一部の実施形態において、適切なFcドメインは、FcRnへの結合の改善につながる一つ以上のアミノ酸変異を含む。FcRnへの結合の改善に影響を及ぼすFcドメイン内の様々な変異は当技術分野で知られていて、本発明の実施に適合させることができる。一部の実施形態において、適切なFcドメインは、ヒトIgG1のThr250、Met252、Ser254、Thr256、Thr307、Glu380、Met428、His433、および/またはAsn434に対応する一つ以上の位置にて一つ以上の変異を含む。
一部の実施形態において、抗Flt-1抗体または抗原結合性断片は、スペーサーを含有し、および/または別の実体に連結される。一部の実施形態において、リンカーまたはスペーサーは、GAPGGGGGAAAAAGGGGGGAP(配列番号1)(GAGリンカー)と、少なくとも50%(例えば、少なくとも55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一な配列を含む。一部の実施形態において、リンカーまたはスペーサーは、GAPGGGGGAAAAAGGGGGGAPGGGGGAAAAAGGGGGGAP(配列番号2)(GAG2リンカー)と、少なくとも50%(例えば、少なくとも55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一な配列を含む。一部の実施形態において、リンカーまたはスペーサーは、GAPGGGGGAAAAAGGGGGGAPGGGGGAAAAAGGGGGGAPGGGGGAAAAAGGGGGGAP(配列番号3)(GAG3リンカー)と、少なくとも50%(例えば、少なくとも55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一な配列を含む。
抗Flt-1抗体および抗原結合性断片の産生
本発明に適した組み換え抗Flt-1抗体または抗原結合性断片は、任意の利用可能な手段によって産生されてもよい。例えば、組み換え抗Flt-1抗体または抗原結合性断片は、組み換え抗Flt-1抗体または抗原結合性断片をコードする核酸を発現するように操作された宿主細胞系を利用することによって、組み換え的に産生されてもよい。
抗体が組み換え的に産生される場合、任意の発現系を使用することができる。ほんの数例を挙げると、既知の発現系としては、例えば卵、バキュロウイルス、植物、酵母、または哺乳動物細胞が挙げられる。
一部の実施形態において、本発明に適した組み換え抗Flt-1抗体または抗原結合性断片は、哺乳動物細胞で産生される。本発明に従って使用されてもよい哺乳動物細胞の非限定的な例としては、BALB/cマウス骨髄腫株(NSO/l、ECACC番号:85110503)、ヒト網膜芽細胞(PER.C6、CruCell、Leiden、オランダ)、およびSV40により形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7、ATCC
CRL 1651)が挙げられる。
一部の実施形態において、本発明は、ヒト細胞から産生された組み換え抗Flt-1抗体または抗原結合性断片を提供する。一部の実施形態において、本発明は、CHO細胞から産生された抗Flt-1抗体または抗原結合性断片を提供する。
医薬組成物および投与
本発明は、本明細書に記載の抗Flt-1抗体または抗原結合性断片と、生理学的に許容可能な担体または賦形剤とを含有する医薬組成物をさらに提供する。
適切な薬学的に許容可能な担体としては、水、塩溶液(例えば、NaCl)、生理食塩水、緩衝生理食塩水、アルコール、グリセロール、エタノール、アラビアゴム、植物油、ベンジルアルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、炭水化物(ラクトース、アミロース、またはデンプンなど)、糖(マンニトール、スクロース、またはその他など)、デキストロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、珪酸、粘性パラフィン、香油、脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなど、およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。医薬製剤は、所望であれば、活性化合物と有害な反応を起こさないか、またはそれらの活性を妨げない助剤(例えば、潤滑剤、防腐剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を及ぼす塩類、緩衝剤、着色料、香味料、および/または芳香物質、およびこれに類するもの)と混合することができる。好ましい一実施形態において、静脈内投与に適した水溶性担体が使用される。
所望であれば、適切な医薬組成物または薬剤はまた、少量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤を含有することもできる。組成物は、溶液、懸濁液、乳濁液、錠剤、丸剤、カプセル剤、徐放性製剤、または粉末とすることができる。組成物はまた、従来の結合剤および担体(トリグリセリドなど)を用いて座薬として製剤化することもできる。経口製剤は、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの標準的な担体を含むことができる。
医薬組成物または薬剤は、ヒトに対する投与に適した医薬組成物として、所定の手順に従って製剤化することができる。例えば、一部の実施形態において、静脈内投与用の組成物は典型的に、無菌等張水性緩衝液である。必要に応じて、組成物はまた、可溶化剤、および注射部位の痛みを軽減するための局所麻酔薬を含んでもよい。一般的に成分は、例えば活性物質の量を示すアンプルまたはサシェ(sachette)などの密封容器に入れられた凍結乾燥粉末または無水濃縮物として、単位投与形態で別々にまたは一緒に混合されて供給される。組成物を点滴によって投与する場合、無菌医薬品グレードの水、生理食塩水、またはデキストロース/水を含有する輸液瓶を用いて分与することができる。組成物を注射によって投与する場合、注射用の無菌水、または生理食塩水のアンプルを提供することができ、これによって投与に先立ち成分を混合してもよい。
投与経路
本明細書に記載の抗Flt-1抗体または抗原結合性断片(または本明細書に記載の抗Flt-1抗体または抗原結合性断片を含有する組成物または薬剤)は、任意の適切な経路によって投与される。一部の実施形態において、抗Flt-1抗体もしくは抗原結合性断片タンパク質、またはそれを含有する医薬組成物は、非経口的に投与される。非経口投与は、静脈内、皮内、髄腔内、吸入、経皮(局所的)、眼内、筋肉内、皮下、筋肉内、および/または経粘膜的投与であってもよい。一部の実施形態において、抗Flt-1抗体もしくは抗原結合性断片、またはそれを含有する医薬組成物は、皮下投与される。本明細書で使用される「皮下組織」という用語は、皮膚直下の疎性不規則性結合組織の層として定義される。例えば皮下投与は、大腿部、腹部、殿部、または肩甲部が挙げられるが、これらに限定されない領域に組成物を注射することによって実施されてもよい。一部の実施形態において、抗Flt-1抗体もしくはその抗原結合性断片、またはそれを含有する医薬組成物は、静脈内投与される。一部の実施形態において、抗Flt-1抗体もしくはその抗原結合性断片、またはそれを含有する医薬組成物は、動脈内投与される。一部の実施形態において、抗Flt-1抗体もしくは抗原結合性断片、またはそれを含有する医薬組成物は、経口投与される。所望であれば、二つ以上の経路を同時に使用することができる。
一部の実施形態において、投与は個体において局所的効果のみをもたらすが、一方で他の実施形態において、投与は個体の複数の部位にわたり効果(例えば、全身効果)をもたらす。典型的に投与は、抗Flt-1抗体または抗原結合性断片を、肺および心臓を含むがこれらに限定されない一つ以上の標的組織に送達する。
投与形態および投与レジメン
一部の実施形態において、組成物は、治療有効量で、かつ/または特定の望ましい転帰(例えば、気管支肺異形成症などの慢性肺障害の治療またはリスクの低減)と相関する投与レジメンに従って投与される。
一部の実施形態において、抗Flt-1抗体の投与は、BPDを有する対象において心機能を改善する。心機能を評価するための様々な方法が当該技術分野で周知であり、例えば血液分析(例えば、NT-proANPレベルの評価、血中尿素窒素測定、C反応性タンパク質測定)、CTスキャン、心臓カテーテル挿入、心臓CTスキャン血管造影、心エコー検査、駆出分画検査、心電図、超音波、および心臓リズムモニタリングが挙げられる。
一部の実施形態において、抗Flt-1抗体の投与は、BPDを有する対象において心機能を維持する。例えば、一部の実施形態において、抗Flt-1抗体の投与は、対象における心機能のさらなる悪化を伴わないBPDを有する対象に見られる心機能を維持する。
一部の実施形態において、抗Flt-1抗体の投与は、抗Flt-1抗体の投与前の対象の心機能と比較して、BPDを有する対象の心機能を改善する。一部の実施形態において、改善は抗Flt-1抗体の投与後に維持される。例えば、心機能の改善は、抗Flt-1抗体の投与後約7日間、約14日間、約21日間、約28日間、約35日間、約42日間、約60日間、約90日間、約120日間、約150日間、約180日間、約210日間、約240日間、約270日間、約300日間、または約1年間持続する。
一部の実施形態において、抗Flt-1抗体の投与は、BPDを有する対象の心機能を、BPDを有しない健康な個体の心機能に回復させる。
本発明に従って投与される特定の用量または量は、例えば所望の転帰の性質および/もしくは程度、投与経路および/もしくはタイミングの詳細、ならびに/または一つ以上の特徴(例えば、体重、年齢、個人歴、遺伝的特徴、ライフスタイルパラメータ、心臓欠陥の重篤度、および/もしくは心臓欠陥のリスクのレベルなど、またはそれらの組み合わせ)に依存して変化する場合がある。こうした用量または量は、当業者によって決定することができる。一部の実施形態において、適切な用量または量は、標準的な臨床技法に従って決定される。代替的に、または追加的に、一部の実施形態において、適切な用量または量は、所望のまたは最適な投与量範囲もしくは投与される量を特定するのに役立つ一つ以上のインビトロアッセイまたはインビボアッセイの使用によって決定される。
様々な実施形態において、抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片は、治療有効量で投与される。一般に治療有効量は、対象に対して意義のある利益を達成する(例えば、基礎疾患または症状を治療する、調節する、治癒する、予防する、および/または寛解させる)ために十分である。一部の特定の実施形態において、適切な投与用量または投与される量は、インビトロまたは動物モデル評価系由来の用量応答曲線から外挿されてもよい。
一部の実施形態において、提供された組成物は医薬製剤として提供される。一部の実施形態において、医薬製剤は、気管支肺異形成症などの慢性肺障害の発症率またはリスクの低減の達成と相関した投与レジメンに従う投与のための単位投与量であるか、またはこの単位用量を含む。
一部の実施形態において、本明細書に記載の抗Flt-1抗体または抗原結合性断片を含む製剤は、単一用量として投与される。一部の実施形態において、本明細書に記載の抗Flt-1抗体または抗原結合性断片を含む製剤は、定期的な間隔で投与される。本明細書で使用される「間隔」での投与は、治療有効量が周期的に投与される(単回用量とは区別される)ことを表す。間隔は、標準的な臨床技法によって決定することができる。一部の実施形態において、本明細書に記載の抗Flt-1抗体または抗原結合性断片を含む製剤は、隔月、毎月、月2回、3週間毎、隔週、毎週、週2回、週3回、毎日、1日2回、または6時間毎に投与される。単一個体に対する投与間隔は、一定の間隔である必要はなく、個体の必要性に応じて経時的に変化させることができる。
本明細書で使用される「隔月」という用語は2か月に1回(すなわち、2か月毎に1回)の投与を意味し、「毎月」という用語は1か月に1回の投与を意味し、「3週間毎」という用語は3週間に1回(すなわち3週間毎に1回)の投与を意味し、「隔週」という用語は2週間に1回(すなわち、2週間毎に1回)の投与を意味し、「毎週」という用語は週に1回の投与を意味し、「毎日」という用語は1日に1回の投与を意味する。
一部の実施形態において、本明細書に記載の抗Flt-1抗体または抗原結合性断片を含む製剤は、定期的な間隔で無期限に投与される。一部の実施形態において、本明細書に記載の抗Flt-1抗体または抗原結合性断片を含む製剤は、定義された周期にわたり定期的な間隔で投与される。
一部の実施形態において、本明細書に記載の抗Flt-1抗体または抗原結合性断片を含む製剤は、出生前に投与される。一部の実施形態において、本明細書に記載の抗Flt-1抗体または抗原結合性断片を含む製剤は、生後に投与される。
一部の実施形態において、本明細書に記載の抗Flt-1抗体または抗原結合性断片を含む製剤は、約0.5mg/kg体重、約1.0mg/kg体重、約10mg/kg体重、約20mg/kg体重、約30mg/kg体重、約40mg/kg体重、約50mg/kg体重、約60mg/kg体重、約70mg/kg体重、約80mg/kg体重、約90mg/kg体重、または約100mg/kg体重の用量で投与される。
一部の実施形態において、本明細書に記載の抗Flt-1抗体または抗原結合性断片を含む製剤は、約0.5mg/kg体重~約80mg/kg体重の範囲の用量で投与される。例えば、一部の実施形態において、抗Flt-1抗体または抗原結合性断片を含む製剤は、約1mg/kg体重~約10mg/kg体重の範囲の用量で、または50mg/kg体重で投与される。
一部の実施形態において、本明細書に記載の抗Flt-1抗体または抗原結合性断片を含む製剤は、約35mg、約70mg、約700mg、または約1400mgの単位用量で成人に投与される。一部の実施形態において、本明細書に記載の抗Flt-1抗体または抗原結合性断片を含む製剤は、約35mg~約1400mgの範囲の用量、例えば約70mg~約700mgの範囲の用量で投与される。
一部の実施形態において、本明細書に記載の抗Flt-1抗体または抗原結合性断片を含む製剤は、約2mg、約4mg、約40mg、または約80mgの単位用量で乳児に投与される。一部の実施形態において、本明細書に記載の抗Flt-1抗体または抗原結合性断片を含む製剤は、約2mg~約80mgの範囲の用量、例えば約4mg~約40mgの範囲の用量で投与される。
一部の実施形態において、抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片の投与は、少なくとも一つのBPDの徴候もしくは症状の強度、重篤度、もしくは頻度を減少させる、またはその発現を遅延させる。一部の実施形態において、抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片の投与は、肺炎症、肺瘢痕化、肺成長障害、早期肺損傷、呼吸不全の延長、肺感染症、運動不耐性、および有害な神経学的転帰から成る群から選択される少なくとも一つのBPDの徴候もしくは症状の強度、重篤度、または頻度を減少させる、またはその発現を遅延させる。
一部の実施形態において、抗Flt-1抗体の投与は血圧を低下させる。一部の実施形態において、抗Flt-1抗体の投与は、心拍出量、心臓1回拍出量、および/またはLV拡張期面積を用量依存的に増大させる。
併用療法
一部の実施形態において、抗Flt-1抗体または抗原結合性断片は、筋ジストロフィーの治療に現在使用されている一つ以上の既知の治療剤(例えば、コルチコステロイド)と組み合わせて投与される。一部の実施形態において、既知の治療剤(複数可)は、その標準的もしくは承認済み投与レジメンおよび/またはスケジュールに従って投与される。一部の実施形態において、既知の治療剤(複数可)は、その標準的もしくは承認済み投与レジメンおよび/またはスケジュールと比較して改変されたレジメンに従って投与される。一部の実施形態において、こうした改変されたレジメンは、一つ以上の単位用量が改変されている(例えば低減または増加)という点で、および/または投与の頻度が改変されているという点で(例えば、単位投与間の一つ以上の間隔を長くし、結果として低頻度にするか、または間隔を短くして、結果として高頻度するかという点で)、標準的または承認済み投与レジメンと異なる。
実施例1.抗Flt-1モノクローナル抗体の投与によって、心機能が改善される
抗Flt-1抗体は、血管内皮成長因子(VEGF)レベルを増加させ、かつ血管新生を促進し、これは結果として炎症、壊死および線維症の破壊サイクルを減弱させる。抗Flt-1抗体の心機能に対する効果を決定するため、本明細書に記載の研究は、抗Flt-1抗体の投与が、齧歯類モデルへの投与後に心臓の機能に有益な効果を及ぼしたかどうかを評価した。
本研究において、抗Flt-1モノクローナル抗体(mAb)の投与が心拍出量および全体的心機能に及ぼす効果を評価した。本研究は、8週間の回復期間を有する探索的な4週間のラット毒性研究である。抗Flt-1 mAbを、0、3、10、および60mg/kg(6匹のラット/群)で健康なオスのラット48匹に、静脈注射によって週に2回、計9回投与した。研究には二つの治療群があり、1)24時間連続テレメトリ収集を、0、3、7、10、14、17、21、24、および28日目にラット24匹で実施し、2)2次元Mモード心エコー検査を、15および29日目に追加のラット24匹で収集した。心臓採取のために、それぞれの群のラット3匹は30日目に終了し、またそれぞれの群のラット3匹は回復することができ、2週間ごとにテレメトリおよび心エコー検査の評価を行った。
結果は、抗Flt-1 mAb(3、10、および60mg/kg/用量)の投与によって、対照と比較して、心重量/体重比(HW/BW)がそれぞれ(5%、20%、および35%)、用量依存的に増加したことを示した。N末端プロ心房性ナトリウム利尿ペプチド(NT-proANP)レベルも用量依存的に増加し、3日目にはより顕著な増加があった。病理組織学的評価では、いずれの用量でも心臓中にいかなる巨視的または顕微鏡的相関性は示されなかった。抗Flt-1 mAbの投与によって、血圧(14mmHg)および左心室(LV)-dP/dtmin(1853mmHg/秒)の減少、心拍数(92bpm)およびLV-dP/dtmax(1374mmHg/秒)の増加、ならびに心拍出量(CO、最大61%)、1回拍出量(SV、最大53%、15日目および29日目)、およびLV-拡張期面積(最大19%、29日目)の用量依存的増大が見られた。抗Flt-1 mAb mAbの投与は、駆出分画(EF)、短縮率(FS)、面積短縮率(FAS)、および壁厚さ(LV-後壁/内部直径、および拡張末期/収縮末期中の心室中隔幅)に効果を及ぼさなかった。血行動態パラメータは、回復28日目にベースラインに戻った。COおよびSVの増加は、8週間の回復期間の終了まで維持された。EF、FS、FASは最長で回復42日目まで維持されたままであった。またHW/BWはベースラインに戻った。
心機能は、薬剤の中止後、最大42日間維持/改善された。
均等物および範囲
当業者は、所定の実験を越えない手法を使用して、本明細書に記載の本発明の特定の実施形態の多くの均等物を認識する、または確認することができるであろう。本発明の範囲は、上記の記述に制限されることを意図されるものではなく、以下の特許請求の範囲に記述される通りである。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
気管支肺異形成症(BPD)を治療する方法であって、
有効量の抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片を、治療を必要とする個体に投与することを含む、方法。
(項目2)
前記個体が、BPDに罹患している、またはBPDに感受性を有する乳児である、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記個体が、BPDに罹患している胎児を妊娠、またはBPDに感受性を有する胎児を妊娠している、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片が、表面プラズモン共鳴結合アッセイにおいて10-9M超の親和性でヒトFlt-1に結合する能力によって特徴付けられる、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片が、表面プラズモン共鳴結合アッセイにおいて10-10M超のヒトFlt-1に対する結合親和性を有する、項目1または項目4に記載の方法。
(項目6)
前記抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片が、表面プラズモン共鳴結合アッセイにおいて、10-12M超のヒトFlt-1に対する結合親和性を有する、項目1~5のいずれか一項に記載の方法。
(項目7)
前記抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片が、ヒトFlt-1との競合アッセイにおいて、100pM未満のIC50で特徴付けられる、項目1~6のいずれか一項に記載の方法。
(項目8)
前記抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片が、ヒトFlt-1との競合アッセイにおいて、10pM未満のIC50で特徴付けられる、項目1~7のいずれか一項に記載の方法。
(項目9)
前記抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片が、ヒトFlt-1との競合アッセイにおいて、1pM未満のIC50で特徴付けられる、項目1~8のいずれか一項に記載の方法。
(項目10)
前記競合アッセイが、ヒトFlt-1へのVEGFの結合の阻害である、項目7~9のいずれか一項に記載の方法。
(項目11)
前記競合アッセイが、ヒトFlt-1へのPLGFの結合の阻害である、項目7~9のいずれか一項に記載の方法。
(項目12)
前記抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片が、VEGFR2および/またはVEGFR3に結合しない、項目1~11のいずれか一項に記載の方法。
(項目13)
前記抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片が、マウスまたはサルのFlt-1に結合しない、項目1~12のいずれか一項に記載の方法。
(項目14)
前記抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片が、マウスおよび/またはサルのFlt-1に結合する、項目1~12のいずれか一項に記載の方法。
(項目15)
前記抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片が、IgG、F(ab’)、F(ab)、Fab’、Fab、ScFvs、ダイアボディ、トリアボディ、およびテトラボディから成る群から選択される、項目1~14のいずれか一項に記載の方法。
(項目16)
前記抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片がIgGである、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片がIgG1である、項目16に記載の方法。
(項目18)
前記抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片がモノクローナル抗体である、項目16または項目17に記載の方法。
(項目19)
前記モノクローナル抗体がヒト化モノクローナル抗体である、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記ヒト化モノクローナル抗体がヒトFc領域を含有する、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記抗体のインビボでの半減期が延長されるように、前記Fc領域と前記FcRn受容体の間の結合親和性を強化する一つ以上の変異を前記Fc領域が含有する、項目20に記載の方法。
(項目22)
ヒトIgG1のThr250、Met252、Ser254、Thr256、Thr307、Glu380、Met428、His433、および/またはAsn434に対応する一つ以上の位置にて一つ以上の変異を前記Fc領域が含有する、項目21に記載の方法。
(項目23)
前記抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片が、非経口的に投与される、項目1~22のいずれか一項に記載の方法。
(項目24)
前記非経口投与が、静脈内、皮内、髄腔内、吸入、経皮(局所的)、眼内、筋肉内、皮下、肺送達、および/または経粘膜投与から選択される、項目23に記載の方法。
(項目25)
前記非経口投与が静脈内投与である、項目24に記載の方法。
(項目26)
前記抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片が、経口投与される、項目1~22のいずれか一項に記載の方法。
(項目27)
前記抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片が、隔月、毎月、3週間毎、隔週、毎週、毎日、または可変的な間隔で投与される、項目1~26のいずれか一項に記載の方法。
(項目28)
前記抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片が、肺および心臓から選択される一つ以上の標的組織に送達される、項目1~27のいずれか一項に記載の方法。
(項目29)
前記抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片が、前記肺に送達される、項目1~28のいずれか一項に記載の方法。
(項目30)
前記抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片が、前記心臓に送達される、項目1~29のいずれか一項に記載の方法。
(項目31)
前記抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片の前記投与が、健康な肺組織の増殖、肺の炎症の減少、肺胞発生の増加、血管新生の増加、肺血管床の構造改善、肺の瘢痕化の低減、肺成長の改善、呼吸不全の低減、運動耐性の改善、有害な神経学的転帰の低減、および/または対照と比較して改善された肺機能をもたらす、項目1~30のいずれか一項に記載の方法。
(項目32)
サーファクタント、酸素療法、人工呼吸器療法、ステロイド、ビタミンA、一酸化窒素吸入、高カロリー栄養製剤、利尿剤、および/または気管支拡張剤から選択される少なくとも一つの追加的な薬剤または療法を同時投与することをさらに含む、項目1~31のいずれか一項に記載の方法。
(項目33)
前記抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片が、約0.5mg/kg体重~約100mg/kg体重の用量で、それを必要とする対象に投与される、項目1~32のいずれか一項に記載の方法。
(項目34)
前記抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片が、約1mg/kg体重~約50mg/kg体重の用量で、それを必要とする対象に投与される、項目33に記載の方法。
(項目35)
前記抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片が、約1mg/kg体重~約10mg/kg体重の用量で、それを必要とする対象に投与される、項目34に記載の方法。
(項目36)
前記抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片の投与が、ベースライン測定と比較して、心拍出量の増加をもたらす、項目1~35のいずれか一項に記載の方法。
(項目37)
前記抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片の前記投与が、血圧を減少させる、項目1~36のいずれか一項に記載の方法。
(項目38)
前記抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片の前記投与が、心拍出量、心拍出体積、および/またはLV拡張期面積を用量依存的に増大させる、項目1~37のいずれか一項に記載の方法。

Claims (38)

  1. 心機能障害を有する個体における心拍出量の増加における治療用途のための組成物であって、抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片を含む、組成物。
  2. 前記個体が、気管支肺異形成症(BPDに罹患している、またはBPDに感受性を有する乳児である、請求項1に記載の組成物。
  3. 前記個体が、BPDに罹患している胎児を妊娠、またはBPDに感受性を有する胎児を妊娠している、請求項1に記載の組成物。
  4. 前記抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片が、表面プラズモン共鳴結合アッセイにおいて10-9M超の親和性でヒトFlt-1に結合する能力によって特徴付けられる、請求項1に記載の組成物。
  5. 前記抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片が、表面プラズモン共鳴結合アッセイにおいて10-10M超のヒトFlt-1に対する結合親和性を有する、請求項1または請求項4に記載の組成物。
  6. 前記抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片が、表面プラズモン共鳴結合アッセイにおいて、10-12M超のヒトFlt-1に対する結合親和性を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
  7. 前記抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片が、ヒトFlt-1との競合アッセイにおいて、100pM未満のIC50で特徴付けられる、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
  8. 前記抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片が、ヒトFlt-1との競合アッセイにおいて、10pM未満のIC50で特徴付けられる、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
  9. 前記抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片が、ヒトFlt-1との競合アッセイにおいて、1pM未満のIC50で特徴付けられる、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
  10. 前記競合アッセイが、ヒトFlt-1へのVEGFの結合の阻害である、請求項7~9のいずれか一項に記載の組成物。
  11. 前記競合アッセイが、ヒトFlt-1へのPLGFの結合の阻害である、請求項7~9のいずれか一項に記載の組成物。
  12. 前記抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片が、VEGFR2および/またはVEGFR3に結合しない、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
  13. 前記抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片が、マウスまたはサルのFlt-1に結合しない、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
  14. 前記抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片が、マウスおよび/またはサルのFlt-1に結合する、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
  15. 前記抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片が、IgG、F(ab’)、F(ab)、Fab’、Fab、ScFvs、ダイアボディ、トリアボディ、およびテトラボディから成る群から選択される、請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物。
  16. 前記抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片がIgGである、請求項15に記載の組成物。
  17. 前記抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片がIgG1である、請求項16に記載の組成物。
  18. 前記抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片がモノクローナル抗体である、請求項16または請求項17に記載の組成物。
  19. 前記モノクローナル抗体がヒト化モノクローナル抗体である、請求項18に記載の組成物。
  20. 前記ヒト化モノクローナル抗体がヒトFc領域を含有する、請求項19に記載の組成物。
  21. 前記抗体のインビボでの半減期が延長されるように、前記Fc領域と前記FcRn受容体の間の結合親和性を強化する一つ以上の変異を前記Fc領域が含有する、請求項20に記載の組成物。
  22. ヒトIgG1のThr250、Met252、Ser254、Thr256、Thr307、Glu380、Met428、His433、および/またはAsn434に対応する一つ以上の位置にて一つ以上の変異を前記Fc領域が含有する、請求項21に記載の組成物。
  23. 前記組成物が、非経口的に投与されることを特徴とする、請求項1~22のいずれか一項に記載の組成物。
  24. 前記非経口投与が、静脈内、皮内、髄腔内、吸入、経皮(局所的)、眼内、筋肉内、皮下、肺送達、および/または経粘膜投与から選択される、請求項23に記載の組成物。
  25. 前記非経口投与が静脈内投与である、請求項24に記載の組成物。
  26. 前記組成物が、経口投与されることを特徴とする、請求項1~22のいずれか一項に記載の組成物。
  27. 前記組成物が、隔月、毎月、3週間毎、隔週、毎週、毎日、または可変的な間隔で投与されることを特徴とする、請求項1~26のいずれか一項に記載の組成物。
  28. 前記抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片が、肺および心臓から選択される一つ以上の標的組織に送達される、請求項1~27のいずれか一項に記載の組成物。
  29. 前記抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片が、前記肺に送達される、請求項1~28のいずれか一項に記載の組成物。
  30. 前記抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片が、前記心臓に送達される、請求項1~29のいずれか一項に記載の組成物。
  31. 前記組成物の前記投与が、健康な肺組織の増殖、肺の炎症の減少、肺胞発生の増加、血管新生の増加、肺血管床の構造改善、肺の瘢痕化の低減、肺成長の改善、呼吸不全の低減、運動耐性の改善、有害な神経学的転帰の低減、および/または対照と比較して改善された肺機能をもたらす、請求項1~30のいずれか一項に記載の組成物。
  32. 前記組成物が、サーファクタント、酸素療法、人工呼吸器療法、ステロイド、ビタミンA、一酸化窒素吸入、高カロリー栄養製剤、利尿剤、および/または気管支拡張剤から選択される少なくとも一つの追加的な薬剤または療法と同時投与されることを特徴とする、請求項1~31のいずれか一項に記載の組成物。
  33. 前記抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片が、約0.5mg/kg体重~約100mg/kg体重の用量で、それを必要とする対象に投与される、請求項1~32のいずれか一項に記載の組成物。
  34. 前記抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片が、約1mg/kg体重~約50mg/kg体重の用量で、それを必要とする対象に投与される、請求項33に記載の組成物。
  35. 前記抗Flt-1抗体またはその抗原結合性断片が、約1mg/kg体重~約10mg/kg体重の用量で、それを必要とする対象に投与される、請求項34に記載の組成物。
  36. 前記組成物の投与が、ベースライン測定と比較して、心拍出量の増加をもたらす、請求項1~35のいずれか一項に記載の組成物。
  37. 前記組成物の前記投与が、血圧を減少させる、請求項1~36のいずれか一項に記載の組成物。
  38. 前記組成物の前記投与が、心拍出量、心拍出体積、および/またはLV拡張期面積を用量依存的に増大させる、請求項1~37のいずれか一項に記載の組成物。
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