JP2023107541A - 全固体電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】正極層と負極層との短絡を防止しつつ、エネルギ密度の高い全固体電池を提供することを目的とする。【解決手段】正極と負極とが固体電解質層を介して積層された全固体電池において、負極は、負極集電箔と、負極集電箔を挟んで積層された一対の負極保護層と、を有し、負極は、端面が固体電解質層の端面より外側に突出しており、負極保護層は、少なくとも固体電解質層と対向する領域の一部がイオン伝導性を有し、かつ少なくとも端面を含む領域が固体電解質層の端面より外側で接着層を介して負極集電箔に接着されており、負極保護層の、負極集電箔と接着された領域の表面から、固体電解質層との接触面までの積層方向距離の充放電に伴う変化量が、接着層の積層方向寸法の充放電に伴う変化量よりも大きいことを特徴とする全固体電池。【選択図】図3
Description
本発明は、全固体電池に関する。
特許文献1には、正極層と負極層との短絡を防止する構成を有する全固体電池が開示されている。具体的には、固体電解質層はその外周部に絶縁体を備え、絶縁体は空洞の中央部又は枠部を備えた枠形状を有し、枠部の内周部の少なくとも一部に空隙部を有し、空隙部の少なくとも一部に固体電解質が充填されている。そして、固体電解質層の中央部の厚みが、固体電解質が充填された空隙部の厚みと同じか、またはそれよりも大きい。
しかしながら、上記文献に記載の構成では、析出型の負極を用いる全固体電池の場合に、析出金属が塑性変形して電極の端面より外側に移動し、この移動した析出金属が充放電に寄与できなくなるおそれがある。そして、充放電に寄与できない析出金属があることで、いわゆるサイクル耐久性が低下するという問題がある。この問題は、電池のエネルギ密度を向上させるために正極の容量を増加させると、特に顕著になる。
そこで本発明では、正極層と負極層との短絡を防止しつつ、エネルギ密度の高い全固体電池を提供することを目的とする。
本発明のある態様によれば、正極と負極とが固体電解質層を介して積層された全固体電池が提供される。この全固体電池において、負極は、負極集電箔と、負極集電箔を挟んで積層された一対の負極保護層と、を有し、負極は、端面が固体電解質層の端面より外側に突出しており、負極保護層は、少なくとも固体電解質層と対向する領域の一部がイオン伝導性を有し、かつ少なくとも端面を含む領域が固体電解質層の端面より外側で接着層を介して負極集電箔に接着されている。また、負極保護層の、負極集電箔と接着された領域の表面から、固体電解質層との接触面までの積層方向距離の充放電に伴う変化量が、接着層の積層方向寸法の充放電に伴う変化量よりも大きい。
上記態様によれば、正極層と負極層との短絡を防止しつつ、エネルギ密度の高い全固体電池を提供することができる。
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
まず、析出型の負極を用いる全固体電池の問題点について図1、図2を参照して説明する。図1、図2は公知の全固体電池の断面の一部を示す図であり、図1は完全放電状態を、図2は充電により負極に金属が析出した状態を、それぞれ示している。
図1の完全放電状態から充電を行うことで、負極集電箔と固体電解質層との間に金属が析出する。このとき、全固体電池には積層方向両側から拘束圧が印加されているため、析出した金属(以下、析出金属ともいう)は、塑性変形して積層方向と直交する方向へ移動する。そして、エネルギ密度を向上させるために正極容量を大きくするほど、析出金属の量も多くなり、図2に示すように、全固体電池の端部からはみ出すおそれがある。図1に示すように固体電解質層の端部を正極層及び負極集電箔の端部より外側に突出させることで、析出金属が全固体電池の端部において固体電解質層を迂回して正極層に到達することによる短絡は防止できる。しかし、はみ出した析出金属は充放電に寄与しないので、はみ出す析出金属の量が多くなるほどサイクル耐久性が低下してしまう。つまり全固体電池のエネルギ密度を向上させるためには、この析出金属のはみ出しによるサイクル耐久性低下の問題を解決しなければならない。析出金属による短絡を防止し、かつエネルギ密度の向上を図るための構成について、以下に説明する。
[第1実施形態]
図3、4は、本実施形態に係る全固体電池1の断面の一部を示す図であり、図3は完全放電状態を、図4は充電により負極に金属が析出した状態を、それぞれ示している。なお、以下の説明において、図面上下方向を積層方向、図面左右方向を幅方向という。
図3、4は、本実施形態に係る全固体電池1の断面の一部を示す図であり、図3は完全放電状態を、図4は充電により負極に金属が析出した状態を、それぞれ示している。なお、以下の説明において、図面上下方向を積層方向、図面左右方向を幅方向という。
全固体電池1は、正極3と負極4が固体電解質層2を介して積層された単位電池が複数積層されてなる。なお、全固体電池1には、各層間の接触状態を良好に保つ目に、積層方向両側から拘束圧が印加されている。
正極3は、正極集電箔5と、その両面に形成される正極層6とを備える。正極集電箔5を形成する材料には、これを形成するものとして公知の材料を使用する。正極層6についても同様である。
負極4は、負極集電箔7と、その両面に配置される負極保護層8とを備える。負極集電箔7を形成する材料には、これを形成するものとして公知の材料を使用する。
負極4は、端面(負極集電体端面7Aと負極保護層端面8A)が固体電解質層端面2Aより外側に突出している。本実施形態における「外側に突出」とは、固体電解質層端面2Aから幅方向に離れる方向に突出していることをいう。
負極保護層8は、少なくとも固体電解質層2と対向する領域の一部がイオン伝導性を有し、かつ少なくとも端面8Aを含む領域が固体電解質層端面2Aより外側で接着層9を介して負極集電箔7に接着されている。接着層9は、公知の接着剤により形成される。なお、本実施形態の負極保護層8は、全体がイオン伝導性を有する材料で形成されている。
また、負極保護層8は、イオン伝導性を持たせるための材料として炭素材料(例えばカーボンブラック等)、固体電解質(例えばLGPSやLPSといった硫化物系固体電解質)の少なくとも一方を含んでいる。負極保護層8は、多孔質樹脂シートまたは多孔質金属シートにこれら炭素材料及び固体電解質を含浸させて作製してもよいし、枠状の樹脂シートまたは金属シートの枠内に、これら炭素材料及び固体電解質を樹脂などのバインダと混合したものを塗工することで作製してもよい。本実施形態の負極保護層8の厚みは、1~100μm(より好ましくは1~10μm)とする。
図3に示す完全放電状態から充電を行うと、図4に示すように負極集電箔7と負極保護層8の間に金属が析出し(以下、析出した金属を析出金属10ともいう。)、析出した部分では負極集電箔7と負極保護層8との積層方向距離が拡がる。ただし、負極集電箔7及び負極保護層8の端部付近は接着層9により接着されており、析出金属10の量が増加しても、上述した図2に示すように固体電解質層端面2Aから外側にはみ出すことはない。換言すると、接着層9によって析出金属10の幅方向への移動が遮断される。
上記の金属の析出に伴い、接着層9の積層方向寸法も、使用する接着剤の弾性力により変化するが、この変化量(図中のB1-B0)は、負極保護層8の負極集電箔7と接着された領域の表面8Bから固体電解質層2との接触面8Cまでの積層方向距離の変化量(図中のA1-A0)よりも小さい。つまり、A1-A0>B1-B0という関係が成立する。
上記の関係が成立するということは、析出金属10の量が比較的少ない間は負極保護層8が変形するだけで接着層9の積層方向寸法がほとんど変化せず、その後、変形した負極保護層8により積層方向に引っ張られることによって接着層9の積層方向寸法も増大するということである。
これに対し、A1-A0<B1-B0の場合には、析出金属10の量が比較的少ないときから負極保護層8が接着層9を押し上げることになる。つまり、充電する度に接着層9に剥離方向の入力が生じることになるので、接着層9のシール性が低下し易くなり、析出金属10の幅方向への移動を遮断する機能が損なわれるおそれがある。
エネルギ密度をより向上させるためには、負極保護層8の変形可能な領域が広い方が望ましい。したがって、接着層9の幅方向寸法は、A1-A0>B1-B0という関係が成立する寸法変化を維持可能な接着力を確保できる範囲で、できるだけ狭いこと(例えば10mm以下、より好ましくは3mm以下)が望ましい。
また、固体電解質層端面2Aと接着層9との間の距離C0は、析出金属10の量に応じた負極保護層8の変形可能な領域を確保するために、少なくとも、満充電時の析出金属10の積層方向寸法以上であることが望ましい。このように負極保護層8の変形可能な領域を確保することで、充放電に伴って固体電解質層2に応力がかかったり、負極保護層8にせん断力がかかったりすることを抑制できる。
図5は、より大きな正極容量に対応するための接着層9のバリエーションを示す図である。なお、各部の参照符号は省略しているが、図3及び図4と同じである。
正極容量が大きいほど析出金属10の積層方向寸法の変化量も大きくなるので、正極容量を大きくするためには負極保護層8の変形可能な領域も大きくする必要がある。そこで、必要となる負極保護層8の変形可能な領域の大きさに応じて、接着層9の幅方向寸法を設定する(図5の(A))。
析出金属10の積層方向寸法の変化量が図5の(A)よりも大きい図5の(B)の場合には、負極保護層8の変形可能な領域を図5の(A)の場合より大きくする必要がある。そこで、接着層9の幅方向寸法を図5の(A)の場合より小さくすることで、負極保護層8の変形可能な領域を確保する。
また、負極保護層8の変形可能な領域を確保するためには、図5の(C)の場合のように、接着層9の積層方向寸法を大きくしてもよい。なお、図5の(C)の左図において、接着層9の側面は負極保護層8と接着されていない。
上述した方法により負極保護層8の変形可能な領域を確保することで、正極容量をより大きくすることができ、その結果、エネルギ密度を高めることができる。なお、図5の(A)~(C)はより大きな正極容量に対応するための接着層9のバリエーションを例示したものであり、負極保護層8の変形可能な領域を確保するための構成は、これらに限られるわけではない。
図6は、本実施形態の変形例に係る全固体電池1の完全放電状態における断面の一部を示す図である。本変形例も、上述した実施形態と同様に本発明の範囲に属する。
上記の実施形態と本変形例との相違点は、本変形例の負極保護層8が、正極層6の端面6Aより外側に突出した領域の固体電解質層2側の表面に、絶縁処理された絶縁部11を備える点である。絶縁部11は、例えば、樹脂、金属酸化物又はこれらの混合物により形成されている。
このように絶縁部11を設けることで、例えば図5の(C)のように充放電に伴う負極4の積層方向寸法の変化量が大きい場合でも、負極保護層8と、正極層6及び正極集電箔5との短絡を防止できる。
以上のように本実施形態では、正極3と負極4とが固体電解質層2を介して積層された全固体電池1において、負極4は、負極集電箔7と、負極集電箔7を挟んで積層された一対の負極保護層8と、を有し、負極4は、端面が固体電解質層2の端面2Aより外側に突出している。負極保護層8は、少なくとも固体電解質層2と対向する領域の一部がイオン伝導性を有し、かつ少なくとも端面を含む領域が固体電解質層2の端面より外側で接着層9を介して負極集電箔7に接着されている。このように端部付近が接着されていることにより、例えば図2に示すような析出金属10の変形を抑制できる。また、負極4の端部が固体電解質層2の端部より外側にあるので、充放電容量の低下や放電時における固体電解質層2へのせん断応力の発生を防止できる。
また、負極保護層8の、負極集電箔7と接着された領域の表面から、固体電解質層2との接触面までの積層方向距離の充放電に伴う変化量(A1-A0)が、接着層9の積層方向寸法の充放電に伴う変化量(B1-B0)よりも大きい。これにより、接着部分の切れや剥離を防止してシール機能を維持し易くなり、ひいては全固体電池1のエネルギ密度を向上させることが可能となる。
本実施形態では、負極保護層8は、正極3の端面3Aより外側に突出した領域の、固体電解質層2側の表面に、絶縁処理された絶縁部11を備える。これにより、負極保護層8の正極3の端面3Aより外側に突出した領域の電子絶縁性が向上し、充放電に伴う負極4の厚さの変化量が大きくても、析出金属10の変形による負極保護層8と正極層6または正極集電箔5との短絡を防止できる。
本実施形態では、負極保護層8は、イオン伝導性を有する材料として炭素材料と固体電解質の少なくとも一方を含む。これにより、イオン伝導性を確保しつつ、負極保護層8と負極集電箔7との間に析出した金属が貫通して固体電解質層2へ到達することを防止できる。
本実施形態では、負極保護層8は、イオン伝導性を有する材料として、固体電解質を含む。これにより、全固体電池1の内部抵抗の上昇を抑制できる。
[第2実施形態]
図7は、本実施形態に係る全固体電池1の完全放電状態における断面の一部を示す図である。図3との相違点は、負極保護層8である。本実施形態の負極保護層8は、端面8Aから固体電解質層端面2Aより内側までのイオン伝導性材料非含有領域13と、それより内側のイオン伝導性材料含有領域12と、からなる。
図7は、本実施形態に係る全固体電池1の完全放電状態における断面の一部を示す図である。図3との相違点は、負極保護層8である。本実施形態の負極保護層8は、端面8Aから固体電解質層端面2Aより内側までのイオン伝導性材料非含有領域13と、それより内側のイオン伝導性材料含有領域12と、からなる。
イオン伝導性材料非含有領域13は、電子絶縁性を有し、かつ透気度がイオン伝導性材料含有領域12よりも大きい樹脂シートで構成される。例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアクリロニトリル等がこれに相当する。樹脂シートを使うことで、充放電に伴い変形する領域の柔軟性を確保できる。換言すると、充放電に伴う変形の繰り返しに対する強度を高めることができる。また、接着に供される領域の透気度が相対的に高いことで、析出金属10に対するシール性をより高めることができる。
なお、イオン伝導性材料非含有領域13の透気度は、上記の通りイオン伝導性材料含有領域12よりも大きければよいが、JISにおいて規格化されているガーレー試験機法による測定結果が1000秒/100ml以上であることが好ましく、5000秒/100ml以上であることがより好ましい。
イオン伝導性材料非含有領域13を設けることで、上述した変形例と同様に、負極保護層8と、正極層6及び正極集電箔5との短絡を防止でき、さらに、強度も向上する。
イオン伝導性材料含有領域12が小さくなるほど、負極保護層8の電池反応に供される領域が小さくなる。そこで、イオン伝導性材料非含有領域13の、固体電解質層端面2Aより内側の部分の幅方向寸法Dは、電池反応に供される領域が過度に狭くならない程度が好ましい。具体的な値は全固体電池1の大きさにより異なるが、車両用電池として一般的に想定される大きさの場合には、2mm以内であることが好ましく、1mm以内であることがより好ましい。
図8は、本実施形態の変形例に係る全固体電池1の完全放電状態における断面の一部を示す図である。本変形例も、上述した実施形態と同様に本発明の範囲に属する。
図7との相違点は、イオン伝導性材料非含有領域13の少なくとも一部、ここでは固体電解質層端面2Aより内側の部分が、接着層14を介して固体電解質層2に接着されている点である。
これにより、仮に固体電解質層2と負極保護層8との間に金属が析出しても、接着層14がシールの役目を果たすので、析出金属10が固体電解質層端面2Aから外側にはみ出すことを防止できる。
以上のように本実施形態では、負極保護層8は、端面から固体電解質層の端面2Aより内側までのイオン伝導性材料非含有領域13と、イオン伝導性材料非含有領域13より内側のイオン伝導性材料含有領域12と、からなる。これにより、負極保護層8の正極3の端面3Aより外側に突出した領域の電子絶縁性及び強度が向上し、充放電に伴う負極4の厚さの変化量が大きくても、析出金属10の変形による負極保護層8と正極層6または正極集電箔5との短絡を防止できる。
本実施形態では、負極保護層8は、イオン伝導性材料非含有領域13の少なくとも一部が接着層14を介して固体電解質層2に接着されている。これにより、負極保護層8と固体電解質層2との間に析出した金属に対するシール性が向上する。
本実施形態では、負極保護層8のイオン伝導性材料非含有領域13は、電子絶縁性を有し、かつ透気度がイオン伝導性材料含有領域12よりも大きい樹脂シートで構成される。これにより、イオン伝導性材料非含有領域13の柔軟性を維持しつつ、シール性の向上を図ることができる。
[第3実施形態]
図9は、本実施形態に係る全固体電池1の完全放電状態における断面の一部を示す図である。図3との相違点は、正極3の端面3Aが、幅方向において負極保護層8と固体電解質層2との接触部の端部2Aよりも内側に位置する点である。
図9は、本実施形態に係る全固体電池1の完全放電状態における断面の一部を示す図である。図3との相違点は、正極3の端面3Aが、幅方向において負極保護層8と固体電解質層2との接触部の端部2Aよりも内側に位置する点である。
上記の構成にすることで、負極4の厚さの変化に伴い負極保護層8が変形したときに、負極保護層8と正極3とが固体電解質層2を迂回して接触することによる短絡が、より生じにくくなる。
図10は、本実施形態の第1変形例に係る全固体電池1の完全放電状態における断面の一部を示す図である。本変形例も、上述した実施形態と同様に本発明の範囲に属する。
図9との相違点は、正極集電箔5の端面5Aが幅方向において固体電解質層端面2Aと略同じ位置にある点、及び正極層6の端面6Aより外側の固体電解質層2と正極集電箔5との隙間に、支持部15がある点である。支持部15は、樹脂又は絶縁スラリー等を塗工・乾燥させることで形成されている。
図9のように正極3の端面3Aが負極保護層8と固体電解質層2との接触部の端部2Aより内側にあり、正極3の端面3Aより外側が空洞になっている場合には、金属の析出に伴い負極4の厚さが増加する際に、固体電解質層2には正極層6の端部を支点とする曲げ応力が生じる。したがって、充放電を繰り返すと固体電解質層2は繰り返し曲げられることになるので、析出金属10の量が多い全固体電池1の場合には、固体電解質層2にクラックが生じるおそれがある。
その点、本変形例のように支持部15を備える構成であれば、固体電解質層2の曲げ変形を抑制できるので、クラックの発生を抑制できる。
図11は、本実施形態の第2変形例に係る全固体電池1の完全放電状態における断面の一部を示す図である。本変形例も、上述した実施形態と同様に本発明の範囲に属する。
図10との相違点は、支持部15が固体電解質層2の一部として形成されている点である。本変形例の構成でも、第1変形例と同様の効果が得られる。
図12は、本実施形態の第3変形例に係る全固体電池1の完全放電状態における断面の一部を示す図である。本変形例も、上述した実施形態と同様に本発明の範囲に属する。
図10との相違点は、負極保護層8と固体電解質層2との接触部の端部から正極層6の端面までの距離E2が、図10における同距離E1より小さい、つまり正極層6が幅方向に広い点と、これに伴い支持部15が幅方向外側に突出している点である。本変形例の構成によれば、第1変形例と同様の効果に加えて、正極層6の面積を大きくできる(つまり、正極容量を大きくできる)という効果も得られる。
以上のように本実施形態では、正極3の端面3Aは、負極保護層8と固体電解質層2との接触部の端部2Aよりも内側に位置する。これにより、負極保護層8と正極3との短絡の発生をより抑制できる。
本実施形態では、固体電解質層2の一部または固体電解質層2とは別部材で形成され、正極3の端面3Aより外側に配置される支持部15を有する。これにより、充放電に伴う負極4の厚さの変化に起因する固体電解質層2のクラック発生を抑制できる。
[製造方法]
次に、全固体電池1の製造方法について図13を参照して説明する。
次に、全固体電池1の製造方法について図13を参照して説明する。
ここでは第1実施形態で説明した図3に示す全固体電池1の製造方法について説明する。他の実施形態等に係る全固体電池1も、絶縁部11を設けたり(図6)、イオン伝導性材料非含有領域13を設けたり(図7)、接着層14を設けたり(図8)、正極3の幅方向寸法が異なったり(図9)、支持部15を設けたり、といった違いはあるものの、基本的には同じ製造方法である。
全固体電池1は、固体電解質層2の一方の面に正極3が、他方の面に負極4がそれぞれ形成された単位電池を積層したものである。しかし、製造する際には、正極3と固体電解質層2との接合体である正極-固体電解質接合体16と、負極集電箔7と負極保護層8との接合体である負極接合体17とを別々に作製し、両接合体を積層するという工程をとる。
まず、正極-固体電解質接合体16を作製する工程について図12の工程(A1)~(A3)を参照して説明する。
工程(A1)では、正極集電箔5の両面に、塗工等により正極層6を形成する。続く工程(A2)では、工程(A1)で形成した正極層6に、塗工、転写等により固体電解質層2を形成する。これにより、工程(A3)に示す正極-固体電解質接合体16が作製される。
次に、負極接合体17を作製する工程について図12の工程(B1)~(B3)を参照して説明する。
工程(B1)では、負極集電箔7の両面の端部付近に、塗工等により接着層9を形成する。続く工程(B2)では、塗工等により形成された負極保護層8を、負極集電箔7の両面に設置する。このとき、負極保護層8の端部付近は接着層9を介して負極集電箔7と接着される。これにより、工程(B3)に示す負極接合体17が作製される。
そして、工程(C)で、正極-固体電解質接合体16と負極接合体17とをプレス積層等の方法により積層する。
塗工する際に使用する溶媒には、塗工する物質や塗工される側の物質等に応じて種々の選択肢がある。しかし、一連の工程で固体電解質層2の一方の面に正極3を形成し、他方の面に負極4を形成するという作製方法にすると、各塗工工程で使用可能な溶媒は、他の塗工工程に支障をきたさないものに限定されてしまう。
これに対し本発明のように正極-固体電解質接合体16と負極接合体17とを別々に作製し、両接合体をプレス積層等の方法により積層するという作製方法にすれば、正極-固体電解質接合体16の作製に適した溶媒と、負極接合体17に適した溶媒を、別個に選択できる。つまり、溶媒の選択肢が増える。
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるわけではなく、特許請求の範囲に記載の技術的思想の範囲内で様々な変更を成し得ることは言うまでもない。
1 全固体電池、 2 固体電解質層、 3 正極、 4 負極、 5 正極集電箔、 6 正極層、 7 負極集電箔、 8 負極保護層、 9 接着部、 10 析出金属、 15 支持部
Claims (9)
- 正極と負極とが固体電解質層を介して積層された全固体電池において、
前記負極は、負極集電箔と、前記負極集電箔を挟んで積層された一対の負極保護層と、を有し、
前記負極は、端面が前記固体電解質層の端面より外側に突出しており、
前記負極保護層は、少なくとも前記固体電解質層と対向する領域の一部がイオン伝導性を有し、かつ少なくとも端面を含む領域が前記固体電解質層の端面より外側で接着層を介して前記負極集電箔に接着されており、
前記負極保護層の、前記負極集電箔と接着された領域の表面から、前記固体電解質層との接触面までの積層方向距離の充放電に伴う変化量が、前記接着層の積層方向寸法の充放電に伴う変化量よりも大きいことを特徴とする全固体電池。 - 請求項1に記載の全固体電池において、
前記負極保護層は、前記正極の端面より外側に突出した領域の、固体電解質層側の表面に、絶縁処理された絶縁部を備える、全固体電池。 - 請求項1または2に記載の全固体電池において、
前記負極保護層は、端面から前記固体電解質層の端面より内側までのイオン伝導性材料非含有領域と、前記イオン伝導性材料非含有領域より内側のイオン伝導性材料含有領域と、からなる、全固体電池。 - 請求項3に記載の全固体電池において、
前記負極保護層は、前記イオン伝導性材料非含有領域の少なくとも一部が前記接着層を介して前記固体電解質層に接着されている、全固体電池。 - 請求項1から4のいずれか一項に記載の全固体電池において、
前記正極の端面は、前記負極保護層と前記固体電解質層との接触部の端部よりも内側に位置する、全固体電池。 - 請求項5に記載の全固体電池において、
前記固体電解質層の一部または前記固体電解質層とは別部材で形成され、前記正極の端面より外側に配置される支持部を有する、全固体電池。 - 請求項1から6のいずれか一項に記載の全固体電池において、
前記負極保護層は、前記イオン伝導性を有する材料として、炭素材料を含む、全固体電池。 - 請求項1から7のいずれか一項に記載の全固体電池において、
前記負極保護層は、前記イオン伝導性を有する材料として、固体電解質を含む、全固体電池。 - 請求項1から8のいずれか一項に記載の全固体電池において、
前記負極保護層の前記イオン伝導性を有しない領域は、電子絶縁性を有し、かつ透気度が前記イオン伝導性を有する領域よりも大きい樹脂シートで構成される、全固体電池。
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