JP2023107498A - 弾性繊維用処理剤及び弾性繊維 - Google Patents

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Abstract

【課題】平滑性及び接着性を向上できる弾性繊維用処理剤及びかかる弾性繊維用処理剤が付着している弾性繊維を提供する。【解決手段】本発明の弾性繊維用処理剤は、シリコーン(A1)、及び下記の鉱物油(A2)を含む平滑剤(A)と、有機リン酸エステル金属塩(B)とを含有し、前記シリコーン(A1)及び前記鉱物油(A2)の質量比が、シリコーン(A1)/鉱物油(A2)=15/85~80/20であることを特徴とする。鉱物油(A2)は、アロマ成分を1質量%以上の割合で含有する。【選択図】なし

Description

本発明は、弾性繊維の平滑性及び弾性繊維の他素材との接着性を向上できる弾性繊維用処理剤及びかかる弾性繊維用処理剤が付着している弾性繊維に関する。
例えばポリウレタン系弾性繊維等の弾性繊維は、他の合成繊維に比べて、繊維間の粘着性が強い。そのため、例えば弾性繊維を紡糸し、パッケージに巻き取った後、該パッケージから引き出して加工工程に供する際、パッケージから安定して解舒することが困難という問題があった。そのために、従来より弾性繊維の平滑性を向上させるため、シリコーン等の平滑剤を含有する弾性繊維用処理剤が使用されることがある。
従来、特許文献1に開示される弾性繊維用処理剤が知られている。特許文献1は、シリコーン油、鉱物油、及びエステル油より選ばれる少なくとも一種のベース成分、分子内に少なくとも2個のカルボキシル基を有するヒドロキシ酸を含有する弾性繊維用処理剤について開示する。
国際公開第2014/148368号
しかし、従来の弾性繊維用処理剤は、弾性繊維用処理剤が付与された弾性繊維の平滑性の向上及び弾性繊維の他素材との接着性の向上という各効能の両立を十分に図ることができなかった。
本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、シリコーン及び所定の鉱物油を所定の比率を配合するとともに、有機リン酸エステル金属塩を配合した構成が好適であることを見出した。
上記課題を解決するために、本発明の一態様の弾性繊維用処理剤では、シリコーン(A1)及び下記の鉱物油(A2)を含む平滑剤(A)と、有機リン酸エステル金属塩(B)とを含有し、前記シリコーン(A1)及び前記鉱物油(A2)の質量比が、シリコーン(A1)/鉱物油(A2)=15/85~80/20であることを要旨とする。
鉱物油(A2):アロマ成分を1質量%以上の割合で含有する鉱物油。
前記弾性繊維用処理剤中に、前記有機リン酸エステル金属塩(B)を0.05質量%以上10質量%以下の割合で含有してもよい。
前記弾性繊維用処理剤中に、前記鉱物油(A2)を45質量%以上の割合で含有してもよい。
前記弾性繊維用処理剤において、前記有機リン酸エステル金属塩(B)が、有機リン酸エステルのアルカリ土類金属塩であってもよい。
前記弾性繊維用処理剤において、前記シリコーン(A1)が、ポリエーテル変性シリコーンを含み、前記弾性繊維用処理剤中に、前記ポリエーテル変性シリコーンを0.05質量%以上5質量%以下の割合で含有してもよい。
前記弾性繊維用処理剤において、更に、下記のアルコール(C)を含有し、前記弾性繊維用処理剤中に、前記アルコール(C)を0.05質量%以上10質量%以下の割合で含有してもよい。
アルコール(C):分岐鎖を有する炭素数8以上26以下の1価脂肪族アルコール、及び直鎖の第二級アルコールから選ばれる少なくとも一つ。
上記課題を解決するために、本発明の一態様の弾性繊維では、前記弾性繊維用処理剤が付着していることを要旨とする。
本発明によれば、弾性繊維の平滑性及び他素材との接着性を向上できる。
(第1実施形態)
以下、本発明の弾性繊維用処理剤(以下、処理剤ともいう)を具体化した第1実施形態を説明する。本実施形態の処理剤は、平滑剤(A)と、有機リン酸エステル金属塩(B)とを含む。また、処理剤は、さらにアルコール(C)を含んでもよい。
本実施形態の処理剤に供される平滑剤(A)としては、ベース成分として処理剤に配合され、弾性繊維に平滑性を付与する。平滑剤(A)としては、少なくともシリコーン(A1)及び下記の鉱物油(A2)を含む。
シリコーン(A1)としては、シリコーン油が挙げられる。シリコーン油の具体例としては、例えばジメチルシリコーン、フェニル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、アミド変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、アミノポリエーテル変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アルキルアラルキル変性シリコーン、アルキルポリエーテル変性シリコーン、エステル変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、ポリオキシアルキレン変性シリコーン等が挙げられる。これらのシリコーン油は、動粘度等によって規定される市販品を適宜採用してもよい。動粘度は、適宜設定されるが、25℃における動粘度が2cst(mm/s)以上10000cst(mm/s)以下であることが好ましく、3cst(mm/s)以上7000cst(mm/s)以下であることがより好ましい。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。25℃における動粘度は、JIS Z 8803に準拠して測定される。これらのシリコーン(A1)は、1種のシリコーンを単独で使用してもよく、2種以上のシリコーンを組み合わせて使用してもよい。
処理剤中におけるシリコーン(A1)の含有割合の下限は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上である。かかる含有割合が10質量%以上の場合、処理剤が付与された弾性繊維の平滑性を向上できる。処理剤中におけるシリコーン(A1)の含有割合の上限は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下である。かかる含有割合が90質量%以下の場合、本発明の効果をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
シリコーン(A1)は、ポリエーテル変性シリコーンを含むことが好ましい。シリコーン(A1)がポリエーテル変性シリコーンを含むことにより、平滑性をより向上できる。
ポリエーテル変性シリコーンとしては、公知のものを適宜採用できる。ポリエーテル変性シリコーンとして例えばオキシアルキレン鎖を有するポリエーテル変性シリコーンが挙げられる。オキシアルキレン鎖の原料となるアルキレンオキサイドの具体例としては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等が挙げられる。アルキレンオキサイドは、1種類のアルキレンオキサイドを単独で使用してもよいし、2種以上のアルキレンオキサイドを適宜組み合わせて使用してもよい。アルキレンオキサイドが2種類以上適用される場合、それらの付加形態は、ブロック付加、ランダム付加、及びブロック付加とランダム付加の組み合わせのいずれでもよく、特に制限はない。
ポリエーテル変性シリコーンとしては、例えばABn型ポリエーテル変性シリコーン、側鎖型ポリエーテル変性シリコーン、両末端型ポリエーテル変性シリコーン、ポリエーテル基とアルキル基の両方が側鎖、又は、末端に導入されたアルキルポリエーテル変性シリコーン、側鎖型ポリエーテル変性シリコーンのポリエーテル鎖末端部分が脂肪族化合物、又は、脂肪酸化合物で封鎖されたもの、両末端型ポリエーテル変性シリコーンのポリエーテル鎖末端部分が脂肪族化合物、又は、脂肪酸化合物で封鎖されたもの等が挙げられる。これらのポリエーテル変性シリコーンとしては、動粘度等によって規定される市販品を適宜採用してもよい。動粘度は、適宜設定されるが、25℃における動粘度が100cst(mm/s)以上10000cst(mm/s)以下であることが好ましく、500cst(mm/s)以上7000cst(mm/s)以下であることがより好ましい。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。なお、ポリエーテル変性シリコーンが複数種類使用される場合の動粘度は、使用する複数のポリエーテル変性シリコーンの混合物の実際の測定値が適用される。ポリエーテル変性シリコーンは、1種のポリエーテル変性シリコーンを単独で使用してもよく、2種以上のポリエーテル変性シリコーンを組み合わせて使用してもよい。
処理剤中におけるポリエーテル変性シリコーンの含有割合の下限は、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上である。かかる含有割合が0.05質量%以上の場合、処理剤の平滑性を向上できる。ポリエーテル変性シリコーンの含有割合の上限は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下である。かかる含有割合が5質量%以下の場合、本発明の効果をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
本実施形態の処理剤に供される鉱物油(A2)としては、パラフィン成分、ナフテン成分、アロマ成分より構成される一般的な石油留分が挙げられる。鉱物油中のアロマ成分、ナフテン成分、パラフィン成分の各定性と含有量は、ASTMのD3238に規定されたn-d-M法による環分析により行われ、アロマ成分、ナフテン成分、パラフィン成分の含有量はここに記載されている%C、%C、%Cの値と同義である。
鉱物油(A2)中におけるアロマ成分の含有割合は、1質量%以上であり、好ましくは1.5質量%以上である。かかる含有割合を1質量%以上に規定することにより、処理剤が付与された弾性繊維の他素材との接着性を向上できる。
鉱物油(A2)は、動粘度等によって規定される市販品を適宜採用してもよい。動粘度は、適宜設定されるが、25℃における動粘度が2cst(mm/s)以上100cst(mm/s)以下であることが好ましい。なお、25℃における粘度は、キャノンフェンスケ粘度計を用いて測定される。また、複数種類の鉱物油が適用される場合は、全ての鉱物油を混合した際の動粘度の値が採用される。
処理剤中における鉱物油(A2)の含有割合の下限は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは45質量%以上である。かかる含有割合が20質量%以上の場合、処理剤が付与された弾性繊維の平滑性を向上できる。かかる含有割合が45質量%以上の場合、処理剤が付与された弾性繊維の他素材との接着性を向上できる。処理剤中における鉱物油(A2)の含有割合の上限は、好ましくは85質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。かかる含有割合が85質量%以下の場合、本発明の効果をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
処理剤中において、シリコーン(A1)及び鉱物油(A2)の質量比が、シリコーン(A1)/鉱物油(A2)=15/85~80/20、好ましくは18/82~78/22である。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。シリコーン(A1)及び鉱物油(A2)の質量比をかかる範囲に規定することにより、平滑性及び処理剤が付与された弾性繊維の他素材との接着性を向上できる。
本実施形態の処理剤において、上記以外の平滑剤を併用してもよい。上記以外の平滑剤としては、公知のものを適宜採用できる。上記以外の平滑剤としては、例えばエステル油、ポリオレフィン等が挙げられる。
エステル油としては、特に制限はないが、脂肪酸とアルコールとから製造されるエステル油が挙げられる。エステル油としては、例えば後述する奇数又は偶数の炭化水素基を有する脂肪酸とアルコールとから製造されるエステル油が例示される。
エステル油の原料である脂肪酸は、その炭素数、分岐の有無、価数等について特に制限はなく、また、例えば高級脂肪酸であってもよく、環状のシクロ環を有する脂肪酸であってもよく、芳香族環を有する脂肪酸であってもよい。エステル油の原料であるアルコールは、その炭素数、分岐の有無、価数等について特に制限はなく、また、例えば高級アルコールであっても、環状のシクロ環を有するアルコールであっても、芳香族環を有するアルコールであってもよい。
エステル油の具体例としては、例えば(1)オクチルパルミタート、オレイルラウラート、オレイルオレアート、イソトリデシルステアラート、イソテトラコシルオレアート等の、脂肪族モノアルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物、(2)1,6-ヘキサンジオールジデカナート、グリセリントリオレアート、トリメチロールプロパントリラウラート、ペンタエリスリトールテトラオクタナート等の、脂肪族多価アルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物、(3)ジオレイルアゼラート、チオジプロピオン酸ジオレイル、チオジプロピオン酸ジイソセチル、チオジプロピオン酸ジイソステアリル等の、脂肪族モノアルコールと脂肪族多価カルボン酸とのエステル化合物、(4)ベンジルオレアート、ベンジルラウラート等の、芳香族モノアルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物、(5)ビスフェノールAジラウラート等の、芳香族多価アルコールと脂肪族モノカルボン酸との完全エステル化合物、(6)ビス2-エチルヘキシルフタラート、ジイソステアリルイソフタラート、トリオクチルトリメリタート等の、脂肪族モノアルコールと芳香族多価カルボン酸との完全エステル化合物、(7)ヤシ油、ナタネ油、ヒマワリ油、大豆油、ヒマシ油、ゴマ油、魚油及び牛脂等の天然油脂等が挙げられる。
ポリオレフィンは、平滑成分として用いられるポリ-α-オレフィンが適用される。ポリオレフィンの具体例としては、例えば1-ブテン、1-ヘキセン、1-デセン等を重合して得られるポリ-α-オレフィン等が挙げられる。ポリ-α-オレフィンは、市販品を適宜採用してもよい。
これらのその他の平滑剤は、1種の平滑剤を単独で使用してもよく、2種以上の平滑剤を組み合わせて使用してもよい。
なお、全平滑剤中におけるシリコーン(A1)と鉱物油(A2)との含有割合の合計は、本発明の効能を効率的に発揮する観点から好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上である。
本実施形態の処理剤は、有機リン酸エステル金属塩(B)を配合することにより、処理剤が付与された弾性繊維の平滑性及び解舒性を向上できる。
本実施形態の処理剤に供する有機リン酸エステル金属塩(B)としては、例えばアルキルリン酸エステルの金属塩、アルケニルリン酸エステルの金属塩、(ポリ)アルキレンオキサイド鎖を付加したアルキルリン酸エステル又はアルケニルリン酸エステルの金属塩等が挙げられる。
有機リン酸エステル金属塩を構成するアルキル基又はアルケニル基は、特に制限はなく、例えば、直鎖状であっても、分岐鎖構造を有するものでもよい。アルキル基又はアルケニル基の炭素数は、特に限定されないが、炭素数1以上32以下が好ましく、炭素数8以上22以下がより好ましい。アルキル基の具体例としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、イコシル基、イソブチル基、イソペンチル基、イソヘキシル基、イソヘプチル基、イソオクチル基、イソデシル基、イソウンデシル基、イソドデシル基、イソトリデシル基、イソテトラデシル基、イソペンタデシル基、イソヘキサデシル基、イソヘプタデシル基、イソオクタデシル基、イソイコシル基等が挙げられる。
アルケニル基の具体例としては、例えばブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、イコセニル基、イソブテニル基、イソペンテニル基、イソヘキセニル基、イソヘプテニル基、イソオクテニル基、イソノネニル基、イソデセニル基、イソウンデセニル基、イソドデセニル基、イソトリデセニル基、イソテトラデセニル基、イソペンタデセニル基、イソヘキサデセニル基、イソヘプタデセニル基、イソオクタデセニル基、イソイコセニル基等が挙げられる。
(ポリ)オキシアルキレン構造を形成する原料として用いられるアルキレンオキサイドとしては、炭素数2以上4以下のアルキレンオキサイドが好ましい。アルキレンオキサイドの具体例としては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等が挙げられる。アルキレンオキサイドの付加モル数は、適宜設定されるが、好ましくは0.1モル以上60モル以下、より好ましくは1モル以上40モル以下、さらに好ましくは2モル以上30モル以下である。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。なお、アルキレンオキサイドの付加モル数は、仕込み原料中における脂肪族アルコール化合物1モルに対するアルキレンオキサイドのモル数を示す。アルキレンオキサイドは、1種類のアルキレンオキサイドを単独で使用してもよいし、又は2種以上のアルキレンオキサイドを適宜組み合わせて使用してもよい。アルキレンオキサイドが2種類以上適用される場合、それらの付加形態は、ブロック付加、ランダム付加、及びブロック付加とランダム付加の組み合わせのいずれでもよく、特に制限はない。
有機リン酸エステル金属塩(B)を構成するリン酸は、特に制限はなく、オルトリン酸であってもよいし、二リン酸等のポリリン酸であってもよい。
有機リン酸エステル金属塩(B)を構成する金属塩としては、例えばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩が挙げられる。アルカリ金属塩を構成するアルカリ金属の具体例としては、例えばナトリウム、カリウム、リチウム等が挙げられる。アルカリ土類金属塩を構成するアルカリ土類金属としては、第2族元素に該当する金属、例えばカルシウム、マグネシウム、ベリリウム、ストロンチウム、バリウム等が挙げられる。これらの中で、処理剤が付与された繊維の解舒性に優れる観点から有機リン酸エステルのアルカリ土類金属塩が好ましい。
有機リン酸エステル金属塩(B)の具体例としては、例えばイソトリデシルエーテルのリン酸エステルのマグネシウム塩、ポリオキシエチレン(n=5、アルキレンオキサイドの付加モル数を示す(以下同じ))イソオクタデシルエーテルのリン酸エステルのマグネシウム塩、イソオクタデシルエーテルのリン酸エステルのカルシウム塩、トリデシルエーテルのリン酸エステルのマグネシウム塩、イソオクタデシルエーテルのリン酸エステルのナトリウム塩、ポリオキシエチレン(n=5)イソトリデシルエーテルのリン酸エステルのナトリウム塩等が挙げられる。
これらの有機リン酸エステル金属塩(B)は、1種類の有機リン酸エステル金属塩を単独で使用してもよいし、又は2種以上の有機リン酸エステル金属塩を適宜組み合わせて使用してもよい。
処理剤中における有機リン酸エステル金属塩(B)の含有割合の下限は、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上である。かかる含有割合が0.05質量%以上の場合、処理剤が付与された弾性繊維の平滑性及び解舒性を向上できる。有機リン酸エステル金属塩(B)の含有割合の上限は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下である。かかる含有割合が10質量%以下の場合、本発明の効果をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
本実施形態の処理剤に供されるアルコール(C)としては、分岐鎖を有する1価脂肪族アルコール、直鎖の第二級アルコールが挙げられる。アルコール(C)により、処理剤が付与された弾性繊維の他素材との接着性を向上できる。
分岐鎖を有する1価脂肪族アルコールの炭素数は、8以上26以下、好ましくは10以上24以下である。また、脂肪族アルコールは、飽和脂肪族アルコールであっても、不飽和脂肪族アルコールであってもよい。また、分岐鎖を構成する炭化水素基について、その分岐位置は特に制限されるものではなく、例えば、α位が分岐した炭素鎖であってもよいし、β位が分岐した炭素鎖であってもよい。また、第一級アルコールであっても、第二級アルコールであってもよい。
分岐鎖を有する1価脂肪族アルコールの具体例としては、例えばイソオクタノール、イソノナノール、イソデカノール、イソドデカノール、イソトリデカノール、イソテトラデカノール、イソヘキサデカノール、イソヘプタデカノール、イソオクタデカノール、イソノナデカノール、イソエイコサノール、イソヘンエイコサノール、イソドコサノール、イソトリコサノール、イソテトラコサノール、イソペンタコサノール、イソヘキサコサノール等が挙げられる。
脂肪族アルコールを構成するアルキル鎖のβ位に分岐鎖を有する1価脂肪族アルコール、つまりゲルベアルコールの具体例としては、例えば2-エチル-1-プロパノール、2-エチル-1-ブタノール、2-エチル-1-ヘキサノール、2-エチル-1-オクタノール、2-エチル-デカノール、2-ブチル-1-ヘキサノール、2-ブチル-1-オクタノール、2-ブチル-1-デカノール、2-ヘキシル-1-オクタノール、2-ヘキシル-1-デカノール、2-オクチル-1-デカノール、2-オクチル-1-ドデカノール、2-ヘキシル-1-オクタノール、2-ヘキシル-1-ドデカノール、2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチル-1-オクタノール、2-(4-メチルヘキシル)-8-メチル-1-デカノール、2-(1,5-ジメチルヘキシル)-5,9-ジメチル-1-デカノール、2-デシル-1-テトラデカノール等が挙げられる。
直鎖の第二級アルコールは、直鎖の炭化水素基を有する1価の脂肪族アルコールが挙げられる。直鎖の第二級アルコールの炭素数は、好ましくは6以上24以下、より好ましく8以上22以下である。第二級アルコールは、飽和脂肪族アルコールであっても、不飽和脂肪族アルコールであってもよい。炭化水素基中の水酸基の結合位置は特に制限されるものではなく、例えばβ位等が挙げられる。
直鎖の第二級アルコールの具体例としては、例えば2-ヘキサノール、2-オクタノール、2-ノナノール、2-デカノール、2-ウンデカノール、2-ドデカノール、2-トリデカノール、2-テトラデカノール、2-ペンタデカノール、2-ヘキサデカノール、2-ヘプタデカノール、2-オクタデカノール、2-ノナデカノール、2-エイコサノール、2-ヘンエイコサノール、2-ドコサノール、2-トリコサノール、2-テトラコサノール等が挙げられる。
これらのアルコール(C)は、1種のアルコールを単独で使用してもよく、2種以上のアルコールを組み合わせて使用してもよい。
処理剤中におけるアルコール(C)の含有割合の下限は、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上である。かかる含有割合が0.05質量%以上の場合、処理剤が付与された弾性繊維の他素材との接着性を向上できる。アルコール(C)の含有割合の上限は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下である。かかる含有割合が10質量%以下の場合、本発明の効果をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
(第2実施形態)
次に、本発明に係る弾性繊維を具体化した第2実施形態について説明する。本実施形態の弾性繊維は、第1実施形態の処理剤が付着している弾性繊維である。弾性繊維に対する第1実施形態の処理剤の付着量は、特に制限はないが、本発明の効果をより向上させる観点から、溶媒を含まない処理剤の量として0.1質量%以上10質量%以下の割合で付着していることが好ましい。
弾性繊維としては、特に制限はないが、例えばポリエステル系弾性繊維、ポリアミド系弾性繊維、ポリオレフィン系弾性繊維、ポリウレタン系弾性繊維等が挙げられる。これらの中でもポリウレタン系弾性繊維が好ましい。かかる場合に本発明の効果の発現をより高くできる。
本実施形態の弾性繊維の製造方法は、第1実施形態の処理剤を弾性繊維に給油することにより得られる。処理剤の給油方法としては、希釈することなくニート給油法により、弾性繊維の紡糸工程において弾性繊維に付着させる方法が好ましい。付着方法としては、例えばローラー給油法、ガイド給油法、スプレー給油法等の公知の方法が適用できる。給油ローラーは、通常口金から巻き取りトラバースまでの間に位置することが一般的であり本実施形態の製造方法にも適用できる。これらの中でも延伸ローラーと延伸ローラーの間に位置する給油ローラーにて第1実施形態の処理剤を弾性繊維、例えばポリウレタン系弾性繊維に付着させることが効果の発現が顕著であるため好ましい。
本実施形態に適用される弾性繊維自体の製造方法は、特に限定されず、公知の方法で製造が可能である。例えば湿式紡糸法、溶融紡糸法、乾式紡糸法等が挙げられる。これらの中でも、弾性繊維の品質及び製造効率が優れる観点から乾式紡糸法が好ましく適用される。
本実施形態の処理剤及び弾性繊維の効果について説明する。
(1)本実施形態の処理剤では、シリコーン(A1)及び上述した鉱物油(A2)を所定の比率で含む平滑剤(A)と、上述した有機リン酸エステル金属塩(B)を配合して構成した。したがって、処理剤が付与された弾性繊維の平滑性の向上及び弾性繊維の他素材との接着性の向上という各効能の両立を十分に図ることができる。また、処理剤が付与された弾性繊維が解舒性を向上できる。
(2)本実施形態の処理剤が、所定量のポリエーテル変性シリコーンを更に含む場合、処理剤が付与された弾性繊維の平滑性を向上できる。
(3)本実施形態の処理剤が、上述したアルコール(C)を更に含む場合、弾性繊維の他素材との接着性をより向上できる。
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
・上記実施形態の処理剤には、本発明の効果を阻害しない範囲内において、その他成分として処理剤の品質保持のための安定化剤、制電剤、つなぎ剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の通常処理剤に用いられる成分をさらに配合してもよい。なお、その他成分の処理剤中における含有割合は、本発明の効能を効率的に発揮する観点から好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
試験区分1(処理剤の調製)
各実施例、各比較例に用いた処理剤は、表1に示される各成分を使用し、下記調製方法により調製した。
(実施例1)
平滑剤(A)として25℃における動粘度が10cst(mm/s)であるジメチルシリコーン(AS-1)を46部(%)、25℃における動粘度が1000mm/s、シリコーン主鎖/ポリエーテル側鎖=80/20(質量比)、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド=50/50(モル比)のポリエーテル変性シリコーン(AS-3)を3部(%)、アロマ成分が2.5%、25℃における動粘度が11cSt(mm/s)の鉱物油(AM-1)を47部(%)、有機リン酸エステル金属塩(B)としてイソトリデシルエーテルのリン酸エステルのマグネシウム塩(B-1)を3部(%)、アルコール(C)として2-ヘキシル-1-デカノール(C-1)を1部(%)とをよく混合して均一にすることで実施例1の処理剤を調製した。
(実施例2~24、比較例1~5)
実施例2~24、比較例1~5は、実施例1と同様にして平滑剤(A)、有機リン酸エステル金属塩(B)、及びアルコール(C)を表1に示した割合で混合することで処理剤を調製した。
各例の処理剤中におけるシリコーン(A1)、鉱物油(A2)、有機リン酸エステル金属塩(B)、及びアルコール(C)の各成分の種類、各成分の含有割合の合計を100%とした場合における各成分の比率を、表1の「シリコーン(A1)」欄、「鉱物油(A2)」欄、「有機リン酸エステル金属塩(B)」欄、「アルコール(C)」欄にそれぞれ示す。また、各例の処理剤中におけるシリコーン(A1)と鉱物油(A2)の質量比を、表1の「シリコーン(A1)/鉱物油(A2)質量比」欄に示す。
表1の区分欄に記載するシリコーン(A1)、鉱物油(A2)、有機リン酸エステル金属塩(B)、及びアルコール(C)の詳細は以下のとおりである。
(シリコーン(A1))
AS-1:25℃における動粘度が10cSt(mm/s)であるジメチルシリコーン
AS-2:25℃における動粘度が20cSt(mm/s)であるジメチルシリコーン
AS-3:25℃における動粘度が1000mm/s、シリコーン主鎖/ポリエーテル側鎖=80/20(質量比)、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド=50/50(モル比)のポリエーテル変性シリコーン
AS-4:25℃における動粘度が2200mm/s、シリコーン主鎖/ポリエーテル側鎖=60/40(質量比)、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド=40/60(モル比)のポリエーテル変性シリコーン
(鉱物油(A2))
AM-1:アロマ成分が2.5%、25℃における動粘度が11cSt(mm/s)の鉱物油
AM-2:アロマ成分が1.6%、25℃における動粘度が20cSt(mm/s)の鉱物油
AM-3:アロマ成分が7.0%、25℃における動粘度が11cSt(mm/s)の鉱物油
ram-1:アロマ成分が0.2%、25℃における動粘度が18cSt(mm/s)の鉱物油
(有機リン酸エステル金属塩(B))
B-1:イソトリデシルエーテルのリン酸エステルのマグネシウム塩
B-2:ポリオキシエチレン(n=5)イソオクタデシルエーテルのリン酸エステルのマグネシウム塩
B-3:イソオクタデシルエーテルのリン酸エステルのカルシウム塩
B-4:トリデシルエーテルのリン酸エステルのマグネシウム塩
B-5:イソオクタデシルエーテルのリン酸エステルのナトリウム塩
B-6:ポリオキシエチレン(n=5)イソトリデシルエーテルのリン酸エステルのナトリウム塩
rb-1:イソトリデシルエーテルのリン酸エステルのトリエチルアミン塩
rb-2:未中和のイソオクタデシルエーテルのリン酸エステル
(アルコール(C))
C-1:2-ヘキシル-1-デカノール
C-2:2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチル-1-オクタノール
C-3:2-デシル-1-テトラデカノール
C-4:2-デカノール
試験区分2(弾性繊維の製造)
分子量1000のポリテトラメチレングリコールとジフェニルメタンジイソシアネートとから得たプレポリマーをジメチルホルムアミド溶液中にてエチレンジアミンにより鎖伸長反応させ、濃度30%の紡糸ドープを得た。この紡糸ドープを紡糸口金から加熱ガス流中において乾式紡糸した。そして、巻き取り前の延伸ローラーと延伸ローラーの間に位置する給油ローラーより、乾式紡糸したポリウレタン系弾性繊維に、処理剤をローラーオイリング法でニート給油した。
以上のようにローラー給油した弾性繊維を、巻き取り速度が600m/分で、長さ58mmの円筒状紙管に、巻き幅38mmを与えるトラバースガイドを介して、サーフェイスドライブの巻取機を用いて巻き取り、40デニールの乾式紡糸ポリウレタン系弾性繊維のパッケージ1kg又は500gを得た。処理剤の付着量の調節は、給油ローラーの回転数を調整することで何れも5%となるように行った。
こうして得られたローラー給油した乾式紡糸ポリウレタン系弾性繊維のパッケージを用いて、弾性繊維の平滑性、解舒性、及び不織布を用いた接着性について評価した。
試験区分3(弾性繊維の評価)
・平滑性の評価
摩擦測定メーター(エイコー測器社製、SAMPLE FRICTION UNIT MODEL TB-1)を用いた。二つのフリーローラー間に直径1cmで表面粗度2Sのクロムメッキ梨地ピンを配置した。このクロムメッキ梨地ピンに対し、前記のパッケージ(1kg巻き)から引き出したポリウレタン系弾性繊維の接触角度が90度となるように繊維を通した。25℃で60%RHの条件下、入側で初期張力(T)5gをかけ、100m/分の速度で走行させたときの出側の2次張力(T)を測定した。下記の数式から摩擦係数を求め、次の基準で評価した。結果を表1の「平滑性」欄に示す。
・平滑性の評価基準
◎(良好):摩擦係数が0.150以上、0.220未満
○(可):摩擦係数が0.220以上、0.260未満
×(不良):摩擦係数が0.260以上
・解舒性の評価
第1駆動ローラーとこれに常時接する第1遊離ローラーとで送り出し部を形成した。また、第2駆動ローラーとこれに常時接する第2遊離ローラーとで巻き取り部を形成した。送り出し部と巻き取り部の間隔を、水平方向に沿って約20cmとした。作製したパッケージ(500g巻き)を第1駆動ローラーに装着した。第1駆動ローラーを駆動させて弾性繊維を送り出すとともに、第2駆動ローラーを駆動させて弾性繊維を巻き取った。パッケージの糸巻の厚さが2mmになるまで解舒した。
その際、第1駆動ローラーの送り出し速度を50m/分で固定する一方、第2駆動ローラーの巻き取り速度を50m/分より徐々に上げて、弾性繊維をパッケージから強制解舒した。この強制解舒において、送り出し部と巻き取り部との間で弾性繊維の踊りがなくなる時点、言い換えれば、糸の挙動が不安定にならず、スムーズにパッケージから送り出されるようになる時点での巻き取り速度V(m/分)を測定した。下記の式から解舒性(%)を求め、以下の基準で評価した。
解舒性(%)=(V-50)×2
・解舒性の評価基準
◎(良好):解舒性が150%未満
○(可):解舒性が150%以上、180%未満
×(不可):解舒性が180%以上
・接着性の評価
ポリプロピレン製スパンボンド不織布上に、145℃で加熱溶融したスチレンブタジエンスチレンブロック共重合体を主成分とするゴム系ホットメルト接着剤を均一にローラーで塗布した。接着剤塗布後の不織布を切断して、40mm×20mmの大きさの切断物を2枚作製した。2枚の切断物の接着剤塗布面の間に、前記のパッケージ(1kg巻き)から引き出した40mmの長さのポリウレタン系弾性繊維の先端部10mmを挟んだ。160℃の処理温度、荷重9g/cmで30秒間、圧着し、試料とした。この試料のポリプロピレン製スパンボンド不織布部分を、引張試験機(島津製作所製、オートグラフAGS)の上部試料把持部に固定し、下部試料把持部にポリウレタン系弾性繊維を固定して、100mm/分の速度で引っ張った。ポリプロピレン製スパンボンド不織布からポリウレタン系弾性繊維を引き抜くのに要する強力を測定し、次の基準で評価した。結果を表1の「接着性」欄に示す。
・接着性の評価基準
◎◎(優れる):強力が36g以上
◎(良好):強力が33g以上36g未満
○(可):強力が30g以上33g未満
×(不可):強力が30g未満
表1の各比較例に対する各実施例の評価結果からも明らかなように、本発明の処理剤によると、処理剤が付与された弾性繊維の平滑性、接着性、及び解舒性を向上できる。
本発明は、弾性繊維の平滑性及び弾性繊維の他素材との接着性を向上できる弾性繊維用処理剤及びかかる弾性繊維用処理剤が付着している弾性繊維に関する。
例えばポリウレタン系弾性繊維等の弾性繊維は、他の合成繊維に比べて、繊維間の粘着性が強い。そのため、例えば弾性繊維を紡糸し、パッケージに巻き取った後、該パッケージから引き出して加工工程に供する際、パッケージから安定して解舒することが困難という問題があった。そのために、従来より弾性繊維の平滑性を向上させるため、シリコーン等の平滑剤を含有する弾性繊維用処理剤が使用されることがある。
従来、特許文献1に開示される弾性繊維用処理剤が知られている。特許文献1は、シリコーン油、鉱物油、及びエステル油より選ばれる少なくとも一種のベース成分、分子内に少なくとも2個のカルボキシル基を有するヒドロキシ酸を含有する弾性繊維用処理剤について開示する。
国際公開第2014/148368号
しかし、従来の弾性繊維用処理剤は、弾性繊維用処理剤が付与された弾性繊維の平滑性の向上及び弾性繊維の他素材との接着性の向上という各効能の両立を十分に図ることができなかった。
本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、シリコーン及び所定の鉱物油を所定の比率を配合するとともに、有機リン酸エステル金属塩を配合した構成が好適であることを見出した。
上記課題を解決するために、本発明の一態様の弾性繊維用処理剤では、シリコーン(A1)及び下記の鉱物油(A2)を含む平滑剤(A)と、有機リン酸エステル金属塩(B)と、下記のアルコール(C)とを含有し、前記シリコーン(A1)及び前記鉱物油(A2)の質量比が、シリコーン(A1)/鉱物油(A2)=15/85~80/20であり、前記シリコーン(A1)が、ポリエーテル変性シリコーンを含むことを要旨とする。
鉱物油(A2):アロマ成分を1質量%以上の割合で含有する鉱物油。
アルコール(C):分岐鎖を有する炭素数8以上26以下の1価脂肪族アルコール、及び直鎖の第二級アルコールから選ばれる少なくとも一つ。
前記弾性繊維用処理剤中に、前記有機リン酸エステル金属塩(B)を0.05質量%以上10質量%以下の割合で含有してもよい。
前記弾性繊維用処理剤中に、前記鉱物油(A2)を45質量%以上の割合で含有してもよい。
前記弾性繊維用処理剤において、前記有機リン酸エステル金属塩(B)が、有機リン酸エステルのアルカリ土類金属塩であってもよい。
記弾性繊維用処理剤中に、前記ポリエーテル変性シリコーンを0.05質量%以上5質量%以下の割合で含有してもよい。
記弾性繊維用処理剤中に、前記アルコール(C)を0.05質量%以上10質量%以下の割合で含有してもよい。
記課題を解決するために、本発明の一態様の弾性繊維では、前記弾性繊維用処理剤が付着していることを要旨とする。
本発明によれば、弾性繊維の平滑性及び他素材との接着性を向上できる。
(第1実施形態)
以下、本発明の弾性繊維用処理剤(以下、処理剤ともいう)を具体化した第1実施形態を説明する。本実施形態の処理剤は、平滑剤(A)と、有機リン酸エステル金属塩(B)とを含む。また、処理剤は、さらにアルコール(C)を含
本実施形態の処理剤に供される平滑剤(A)としては、ベース成分として処理剤に配合され、弾性繊維に平滑性を付与する。平滑剤(A)としては、少なくともシリコーン(A1)及び下記の鉱物油(A2)を含む。
シリコーン(A1)としては、シリコーン油が挙げられる。シリコーン油の具体例としては、例えばジメチルシリコーン、フェニル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、アミド変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、アミノポリエーテル変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アルキルアラルキル変性シリコーン、アルキルポリエーテル変性シリコーン、エステル変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、ポリオキシアルキレン変性シリコーン等が挙げられる。これらのシリコーン油は、動粘度等によって規定される市販品を適宜採用してもよい。動粘度は、適宜設定されるが、25℃における動粘度が2cst(mm/s)以上10000cst(mm/s)以下であることが好ましく、3cst(mm/s)以上7000cst(mm/s)以下であることがより好ましい。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。25℃における動粘度は、JIS Z 8803に準拠して測定される。これらのシリコーン(A1)は、1種のシリコーンを単独で使用してもよく、2種以上のシリコーンを組み合わせて使用してもよい。
処理剤中におけるシリコーン(A1)の含有割合の下限は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上である。かかる含有割合が10質量%以上の場合、処理剤が付与された弾性繊維の平滑性を向上できる。処理剤中におけるシリコーン(A1)の含有割合の上限は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下である。かかる含有割合が90質量%以下の場合、本発明の効果をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
シリコーン(A1)は、ポリエーテル変性シリコーンを含。シリコーン(A1)がポリエーテル変性シリコーンを含むことにより、平滑性をより向上できる。
ポリエーテル変性シリコーンとしては、公知のものを適宜採用できる。ポリエーテル変性シリコーンとして例えばオキシアルキレン鎖を有するポリエーテル変性シリコーンが挙げられる。オキシアルキレン鎖の原料となるアルキレンオキサイドの具体例としては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等が挙げられる。アルキレンオキサイドは、1種類のアルキレンオキサイドを単独で使用してもよいし、2種以上のアルキレンオキサイドを適宜組み合わせて使用してもよい。アルキレンオキサイドが2種類以上適用される場合、それらの付加形態は、ブロック付加、ランダム付加、及びブロック付加とランダム付加の組み合わせのいずれでもよく、特に制限はない。
ポリエーテル変性シリコーンとしては、例えばABn型ポリエーテル変性シリコーン、側鎖型ポリエーテル変性シリコーン、両末端型ポリエーテル変性シリコーン、ポリエーテル基とアルキル基の両方が側鎖、又は、末端に導入されたアルキルポリエーテル変性シリコーン、側鎖型ポリエーテル変性シリコーンのポリエーテル鎖末端部分が脂肪族化合物、又は、脂肪酸化合物で封鎖されたもの、両末端型ポリエーテル変性シリコーンのポリエーテル鎖末端部分が脂肪族化合物、又は、脂肪酸化合物で封鎖されたもの等が挙げられる。これらのポリエーテル変性シリコーンとしては、動粘度等によって規定される市販品を適宜採用してもよい。動粘度は、適宜設定されるが、25℃における動粘度が100cst(mm/s)以上10000cst(mm/s)以下であることが好ましく、500cst(mm/s)以上7000cst(mm/s)以下であることがより好ましい。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。なお、ポリエーテル変性シリコーンが複数種類使用される場合の動粘度は、使用する複数のポリエーテル変性シリコーンの混合物の実際の測定値が適用される。ポリエーテル変性シリコーンは、1種のポリエーテル変性シリコーンを単独で使用してもよく、2種以上のポリエーテル変性シリコーンを組み合わせて使用してもよい。
処理剤中におけるポリエーテル変性シリコーンの含有割合の下限は、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上である。かかる含有割合が0.05質量%以上の場合、処理剤の平滑性を向上できる。ポリエーテル変性シリコーンの含有割合の上限は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下である。かかる含有割合が5質量%以下の場合、本発明の効果をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
本実施形態の処理剤に供される鉱物油(A2)としては、パラフィン成分、ナフテン成分、アロマ成分より構成される一般的な石油留分が挙げられる。鉱物油中のアロマ成分、ナフテン成分、パラフィン成分の各定性と含有量は、ASTMのD3238に規定されたn-d-M法による環分析により行われ、アロマ成分、ナフテン成分、パラフィン成分の含有量はここに記載されている%C、%C、%Cの値と同義である。
鉱物油(A2)中におけるアロマ成分の含有割合は、1質量%以上であり、好ましくは1.5質量%以上である。かかる含有割合を1質量%以上に規定することにより、処理剤が付与された弾性繊維の他素材との接着性を向上できる。
鉱物油(A2)は、動粘度等によって規定される市販品を適宜採用してもよい。動粘度は、適宜設定されるが、25℃における動粘度が2cst(mm/s)以上100cst(mm/s)以下であることが好ましい。なお、25℃における粘度は、キャノンフェンスケ粘度計を用いて測定される。また、複数種類の鉱物油が適用される場合は、全ての鉱物油を混合した際の動粘度の値が採用される。
処理剤中における鉱物油(A2)の含有割合の下限は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは45質量%以上である。かかる含有割合が20質量%以上の場合、処理剤が付与された弾性繊維の平滑性を向上できる。かかる含有割合が45質量%以上の場合、処理剤が付与された弾性繊維の他素材との接着性を向上できる。処理剤中における鉱物油(A2)の含有割合の上限は、好ましくは85質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。かかる含有割合が85質量%以下の場合、本発明の効果をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
処理剤中において、シリコーン(A1)及び鉱物油(A2)の質量比が、シリコーン(A1)/鉱物油(A2)=15/85~80/20、好ましくは18/82~78/22である。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。シリコーン(A1)及び鉱物油(A2)の質量比をかかる範囲に規定することにより、平滑性及び処理剤が付与された弾性繊維の他素材との接着性を向上できる。
本実施形態の処理剤において、上記以外の平滑剤を併用してもよい。上記以外の平滑剤としては、公知のものを適宜採用できる。上記以外の平滑剤としては、例えばエステル油、ポリオレフィン等が挙げられる。
エステル油としては、特に制限はないが、脂肪酸とアルコールとから製造されるエステル油が挙げられる。エステル油としては、例えば後述する奇数又は偶数の炭化水素基を有する脂肪酸とアルコールとから製造されるエステル油が例示される。
エステル油の原料である脂肪酸は、その炭素数、分岐の有無、価数等について特に制限はなく、また、例えば高級脂肪酸であってもよく、環状のシクロ環を有する脂肪酸であってもよく、芳香族環を有する脂肪酸であってもよい。エステル油の原料であるアルコールは、その炭素数、分岐の有無、価数等について特に制限はなく、また、例えば高級アルコールであっても、環状のシクロ環を有するアルコールであっても、芳香族環を有するアルコールであってもよい。
エステル油の具体例としては、例えば(1)オクチルパルミタート、オレイルラウラート、オレイルオレアート、イソトリデシルステアラート、イソテトラコシルオレアート等の、脂肪族モノアルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物、(2)1,6-ヘキサンジオールジデカナート、グリセリントリオレアート、トリメチロールプロパントリラウラート、ペンタエリスリトールテトラオクタナート等の、脂肪族多価アルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物、(3)ジオレイルアゼラート、チオジプロピオン酸ジオレイル、チオジプロピオン酸ジイソセチル、チオジプロピオン酸ジイソステアリル等の、脂肪族モノアルコールと脂肪族多価カルボン酸とのエステル化合物、(4)ベンジルオレアート、ベンジルラウラート等の、芳香族モノアルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物、(5)ビスフェノールAジラウラート等の、芳香族多価アルコールと脂肪族モノカルボン酸との完全エステル化合物、(6)ビス2-エチルヘキシルフタラート、ジイソステアリルイソフタラート、トリオクチルトリメリタート等の、脂肪族モノアルコールと芳香族多価カルボン酸との完全エステル化合物、(7)ヤシ油、ナタネ油、ヒマワリ油、大豆油、ヒマシ油、ゴマ油、魚油及び牛脂等の天然油脂等が挙げられる。
ポリオレフィンは、平滑成分として用いられるポリ-α-オレフィンが適用される。ポリオレフィンの具体例としては、例えば1-ブテン、1-ヘキセン、1-デセン等を重合して得られるポリ-α-オレフィン等が挙げられる。ポリ-α-オレフィンは、市販品を適宜採用してもよい。
これらのその他の平滑剤は、1種の平滑剤を単独で使用してもよく、2種以上の平滑剤を組み合わせて使用してもよい。
なお、全平滑剤中におけるシリコーン(A1)と鉱物油(A2)との含有割合の合計は、本発明の効能を効率的に発揮する観点から好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上である。
本実施形態の処理剤は、有機リン酸エステル金属塩(B)を配合することにより、処理剤が付与された弾性繊維の平滑性及び解舒性を向上できる。
本実施形態の処理剤に供する有機リン酸エステル金属塩(B)としては、例えばアルキルリン酸エステルの金属塩、アルケニルリン酸エステルの金属塩、(ポリ)アルキレンオキサイド鎖を付加したアルキルリン酸エステル又はアルケニルリン酸エステルの金属塩等が挙げられる。
有機リン酸エステル金属塩を構成するアルキル基又はアルケニル基は、特に制限はなく、例えば、直鎖状であっても、分岐鎖構造を有するものでもよい。アルキル基又はアルケニル基の炭素数は、特に限定されないが、炭素数1以上32以下が好ましく、炭素数8以上22以下がより好ましい。アルキル基の具体例としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、イコシル基、イソブチル基、イソペンチル基、イソヘキシル基、イソヘプチル基、イソオクチル基、イソデシル基、イソウンデシル基、イソドデシル基、イソトリデシル基、イソテトラデシル基、イソペンタデシル基、イソヘキサデシル基、イソヘプタデシル基、イソオクタデシル基、イソイコシル基等が挙げられる。
アルケニル基の具体例としては、例えばブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、イコセニル基、イソブテニル基、イソペンテニル基、イソヘキセニル基、イソヘプテニル基、イソオクテニル基、イソノネニル基、イソデセニル基、イソウンデセニル基、イソドデセニル基、イソトリデセニル基、イソテトラデセニル基、イソペンタデセニル基、イソヘキサデセニル基、イソヘプタデセニル基、イソオクタデセニル基、イソイコセニル基等が挙げられる。
(ポリ)オキシアルキレン構造を形成する原料として用いられるアルキレンオキサイドとしては、炭素数2以上4以下のアルキレンオキサイドが好ましい。アルキレンオキサイドの具体例としては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等が挙げられる。アルキレンオキサイドの付加モル数は、適宜設定されるが、好ましくは0.1モル以上60モル以下、より好ましくは1モル以上40モル以下、さらに好ましくは2モル以上30モル以下である。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。なお、アルキレンオキサイドの付加モル数は、仕込み原料中における脂肪族アルコール化合物1モルに対するアルキレンオキサイドのモル数を示す。アルキレンオキサイドは、1種類のアルキレンオキサイドを単独で使用してもよいし、又は2種以上のアルキレンオキサイドを適宜組み合わせて使用してもよい。アルキレンオキサイドが2種類以上適用される場合、それらの付加形態は、ブロック付加、ランダム付加、及びブロック付加とランダム付加の組み合わせのいずれでもよく、特に制限はない。
有機リン酸エステル金属塩(B)を構成するリン酸は、特に制限はなく、オルトリン酸であってもよいし、二リン酸等のポリリン酸であってもよい。
有機リン酸エステル金属塩(B)を構成する金属塩としては、例えばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩が挙げられる。アルカリ金属塩を構成するアルカリ金属の具体例としては、例えばナトリウム、カリウム、リチウム等が挙げられる。アルカリ土類金属塩を構成するアルカリ土類金属としては、第2族元素に該当する金属、例えばカルシウム、マグネシウム、ベリリウム、ストロンチウム、バリウム等が挙げられる。これらの中で、処理剤が付与された繊維の解舒性に優れる観点から有機リン酸エステルのアルカリ土類金属塩が好ましい。
有機リン酸エステル金属塩(B)の具体例としては、例えばイソトリデシルエーテルのリン酸エステルのマグネシウム塩、ポリオキシエチレン(n=5、アルキレンオキサイドの付加モル数を示す(以下同じ))イソオクタデシルエーテルのリン酸エステルのマグネシウム塩、イソオクタデシルエーテルのリン酸エステルのカルシウム塩、トリデシルエーテルのリン酸エステルのマグネシウム塩、イソオクタデシルエーテルのリン酸エステルのナトリウム塩、ポリオキシエチレン(n=5)イソトリデシルエーテルのリン酸エステルのナトリウム塩等が挙げられる。
これらの有機リン酸エステル金属塩(B)は、1種類の有機リン酸エステル金属塩を単独で使用してもよいし、又は2種以上の有機リン酸エステル金属塩を適宜組み合わせて使用してもよい。
処理剤中における有機リン酸エステル金属塩(B)の含有割合の下限は、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上である。かかる含有割合が0.05質量%以上の場合、処理剤が付与された弾性繊維の平滑性及び解舒性を向上できる。有機リン酸エステル金属塩(B)の含有割合の上限は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下である。かかる含有割合が10質量%以下の場合、本発明の効果をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
本実施形態の処理剤に供されるアルコール(C)としては、分岐鎖を有する1価脂肪族アルコール、直鎖の第二級アルコールが挙げられる。アルコール(C)により、処理剤が付与された弾性繊維の他素材との接着性を向上できる。
分岐鎖を有する1価脂肪族アルコールの炭素数は、8以上26以下、好ましくは10以上24以下である。また、脂肪族アルコールは、飽和脂肪族アルコールであっても、不飽和脂肪族アルコールであってもよい。また、分岐鎖を構成する炭化水素基について、その分岐位置は特に制限されるものではなく、例えば、α位が分岐した炭素鎖であってもよいし、β位が分岐した炭素鎖であってもよい。また、第一級アルコールであっても、第二級アルコールであってもよい。
分岐鎖を有する1価脂肪族アルコールの具体例としては、例えばイソオクタノール、イソノナノール、イソデカノール、イソドデカノール、イソトリデカノール、イソテトラデカノール、イソヘキサデカノール、イソヘプタデカノール、イソオクタデカノール、イソノナデカノール、イソエイコサノール、イソヘンエイコサノール、イソドコサノール、イソトリコサノール、イソテトラコサノール、イソペンタコサノール、イソヘキサコサノール等が挙げられる。
脂肪族アルコールを構成するアルキル鎖のβ位に分岐鎖を有する1価脂肪族アルコール、つまりゲルベアルコールの具体例としては、例えば2-エチル-1-プロパノール、2-エチル-1-ブタノール、2-エチル-1-ヘキサノール、2-エチル-1-オクタノール、2-エチル-デカノール、2-ブチル-1-ヘキサノール、2-ブチル-1-オクタノール、2-ブチル-1-デカノール、2-ヘキシル-1-オクタノール、2-ヘキシル-1-デカノール、2-オクチル-1-デカノール、2-オクチル-1-ドデカノール、2-ヘキシル-1-オクタノール、2-ヘキシル-1-ドデカノール、2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチル-1-オクタノール、2-(4-メチルヘキシル)-8-メチル-1-デカノール、2-(1,5-ジメチルヘキシル)-5,9-ジメチル-1-デカノール、2-デシル-1-テトラデカノール等が挙げられる。
直鎖の第二級アルコールは、直鎖の炭化水素基を有する1価の脂肪族アルコールが挙げられる。直鎖の第二級アルコールの炭素数は、好ましくは6以上24以下、より好ましく8以上22以下である。第二級アルコールは、飽和脂肪族アルコールであっても、不飽和脂肪族アルコールであってもよい。炭化水素基中の水酸基の結合位置は特に制限されるものではなく、例えばβ位等が挙げられる。
直鎖の第二級アルコールの具体例としては、例えば2-ヘキサノール、2-オクタノール、2-ノナノール、2-デカノール、2-ウンデカノール、2-ドデカノール、2-トリデカノール、2-テトラデカノール、2-ペンタデカノール、2-ヘキサデカノール、2-ヘプタデカノール、2-オクタデカノール、2-ノナデカノール、2-エイコサノール、2-ヘンエイコサノール、2-ドコサノール、2-トリコサノール、2-テトラコサノール等が挙げられる。
これらのアルコール(C)は、1種のアルコールを単独で使用してもよく、2種以上のアルコールを組み合わせて使用してもよい。
処理剤中におけるアルコール(C)の含有割合の下限は、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上である。かかる含有割合が0.05質量%以上の場合、処理剤が付与された弾性繊維の他素材との接着性を向上できる。アルコール(C)の含有割合の上限は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下である。かかる含有割合が10質量%以下の場合、本発明の効果をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
(第2実施形態)
次に、本発明に係る弾性繊維を具体化した第2実施形態について説明する。本実施形態の弾性繊維は、第1実施形態の処理剤が付着している弾性繊維である。弾性繊維に対する第1実施形態の処理剤の付着量は、特に制限はないが、本発明の効果をより向上させる観点から、溶媒を含まない処理剤の量として0.1質量%以上10質量%以下の割合で付着していることが好ましい。
弾性繊維としては、特に制限はないが、例えばポリエステル系弾性繊維、ポリアミド系弾性繊維、ポリオレフィン系弾性繊維、ポリウレタン系弾性繊維等が挙げられる。これらの中でもポリウレタン系弾性繊維が好ましい。かかる場合に本発明の効果の発現をより高くできる。
本実施形態の弾性繊維の製造方法は、第1実施形態の処理剤を弾性繊維に給油することにより得られる。処理剤の給油方法としては、希釈することなくニート給油法により、弾性繊維の紡糸工程において弾性繊維に付着させる方法が好ましい。付着方法としては、例えばローラー給油法、ガイド給油法、スプレー給油法等の公知の方法が適用できる。給油ローラーは、通常口金から巻き取りトラバースまでの間に位置することが一般的であり本実施形態の製造方法にも適用できる。これらの中でも延伸ローラーと延伸ローラーの間に位置する給油ローラーにて第1実施形態の処理剤を弾性繊維、例えばポリウレタン系弾性繊維に付着させることが効果の発現が顕著であるため好ましい。
本実施形態に適用される弾性繊維自体の製造方法は、特に限定されず、公知の方法で製造が可能である。例えば湿式紡糸法、溶融紡糸法、乾式紡糸法等が挙げられる。これらの中でも、弾性繊維の品質及び製造効率が優れる観点から乾式紡糸法が好ましく適用される。
本実施形態の処理剤及び弾性繊維の効果について説明する。
(1)本実施形態の処理剤では、シリコーン(A1)及び上述した鉱物油(A2)を所定の比率で含む平滑剤(A)と、上述した有機リン酸エステル金属塩(B)を配合して構成した。したがって、処理剤が付与された弾性繊維の平滑性の向上及び弾性繊維の他素材との接着性の向上という各効能の両立を十分に図ることができる。また、処理剤が付与された弾性繊維が解舒性を向上できる。
(2)本実施形態の処理剤が、所定量のポリエーテル変性シリコーンを更に含む場合、処理剤が付与された弾性繊維の平滑性を向上できる。
(3)本実施形態の処理剤が、上述したアルコール(C)を更に含む場合、弾性繊維の他素材との接着性をより向上できる。
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
・上記実施形態の処理剤には、本発明の効果を阻害しない範囲内において、その他成分として処理剤の品質保持のための安定化剤、制電剤、つなぎ剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の通常処理剤に用いられる成分をさらに配合してもよい。なお、その他成分の処理剤中における含有割合は、本発明の効能を効率的に発揮する観点から好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
試験区分1(処理剤の調製)
各実施例、各比較例に用いた処理剤は、表1に示される各成分を使用し、下記調製方法により調製した。
(実施例1)
平滑剤(A)として25℃における動粘度が10cst(mm/s)であるジメチルシリコーン(AS-1)を46部(%)、25℃における動粘度が1000mm/s、シリコーン主鎖/ポリエーテル側鎖=80/20(質量比)、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド=50/50(モル比)のポリエーテル変性シリコーン(AS-3)を3部(%)、アロマ成分が2.5%、25℃における動粘度が11cSt(mm/s)の鉱物油(AM-1)を47部(%)、有機リン酸エステル金属塩(B)としてイソトリデシルエーテルのリン酸エステルのマグネシウム塩(B-1)を3部(%)、アルコール(C)として2-ヘキシル-1-デカノール(C-1)を1部(%)とをよく混合して均一にすることで実施例1の処理剤を調製した。
(実施例2~16,18,19、参考例17,20~24、比較例1~5)
実施例2~16,18,19、参考例17,20~24、比較例1~5は、実施例1と同様にして平滑剤(A)、有機リン酸エステル金属塩(B)、及びアルコール(C)を表1に示した割合で混合することで処理剤を調製した。
各例の処理剤中におけるシリコーン(A1)、鉱物油(A2)、有機リン酸エステル金属塩(B)、及びアルコール(C)の各成分の種類、各成分の含有割合の合計を100%とした場合における各成分の比率を、表1の「シリコーン(A1)」欄、「鉱物油(A2)」欄、「有機リン酸エステル金属塩(B)」欄、「アルコール(C)」欄にそれぞれ示す。また、各例の処理剤中におけるシリコーン(A1)と鉱物油(A2)の質量比を、表1の「シリコーン(A1)/鉱物油(A2)質量比」欄に示す。
表1の区分欄に記載するシリコーン(A1)、鉱物油(A2)、有機リン酸エステル金属塩(B)、及びアルコール(C)の詳細は以下のとおりである。
(シリコーン(A1))
AS-1:25℃における動粘度が10cSt(mm/s)であるジメチルシリコーン
AS-2:25℃における動粘度が20cSt(mm/s)であるジメチルシリコーン
AS-3:25℃における動粘度が1000mm/s、シリコーン主鎖/ポリエーテル側鎖=80/20(質量比)、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド=50/50(モル比)のポリエーテル変性シリコーン
AS-4:25℃における動粘度が2200mm/s、シリコーン主鎖/ポリエーテル側鎖=60/40(質量比)、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド=40/60(モル比)のポリエーテル変性シリコーン
(鉱物油(A2))
AM-1:アロマ成分が2.5%、25℃における動粘度が11cSt(mm/s)の鉱物油
AM-2:アロマ成分が1.6%、25℃における動粘度が20cSt(mm/s)の鉱物油
AM-3:アロマ成分が7.0%、25℃における動粘度が11cSt(mm/s)の鉱物油
ram-1:アロマ成分が0.2%、25℃における動粘度が18cSt(mm/s)の鉱物油
(有機リン酸エステル金属塩(B))
B-1:イソトリデシルエーテルのリン酸エステルのマグネシウム塩
B-2:ポリオキシエチレン(n=5)イソオクタデシルエーテルのリン酸エステルのマグネシウム塩
B-3:イソオクタデシルエーテルのリン酸エステルのカルシウム塩
B-4:トリデシルエーテルのリン酸エステルのマグネシウム塩
B-5:イソオクタデシルエーテルのリン酸エステルのナトリウム塩
B-6:ポリオキシエチレン(n=5)イソトリデシルエーテルのリン酸エステルのナトリウム塩
rb-1:イソトリデシルエーテルのリン酸エステルのトリエチルアミン塩
rb-2:未中和のイソオクタデシルエーテルのリン酸エステル
(アルコール(C))
C-1:2-ヘキシル-1-デカノール
C-2:2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチル-1-オクタノール
C-3:2-デシル-1-テトラデカノール
C-4:2-デカノール
試験区分2(弾性繊維の製造)
分子量1000のポリテトラメチレングリコールとジフェニルメタンジイソシアネートとから得たプレポリマーをジメチルホルムアミド溶液中にてエチレンジアミンにより鎖伸長反応させ、濃度30%の紡糸ドープを得た。この紡糸ドープを紡糸口金から加熱ガス流中において乾式紡糸した。そして、巻き取り前の延伸ローラーと延伸ローラーの間に位置する給油ローラーより、乾式紡糸したポリウレタン系弾性繊維に、処理剤をローラーオイリング法でニート給油した。
以上のようにローラー給油した弾性繊維を、巻き取り速度が600m/分で、長さ58mmの円筒状紙管に、巻き幅38mmを与えるトラバースガイドを介して、サーフェイスドライブの巻取機を用いて巻き取り、40デニールの乾式紡糸ポリウレタン系弾性繊維のパッケージ1kg又は500gを得た。処理剤の付着量の調節は、給油ローラーの回転数を調整することで何れも5%となるように行った。
こうして得られたローラー給油した乾式紡糸ポリウレタン系弾性繊維のパッケージを用いて、弾性繊維の平滑性、解舒性、及び不織布を用いた接着性について評価した。
試験区分3(弾性繊維の評価)
・平滑性の評価
摩擦測定メーター(エイコー測器社製、SAMPLE FRICTION UNIT MODEL TB-1)を用いた。二つのフリーローラー間に直径1cmで表面粗度2Sのクロムメッキ梨地ピンを配置した。このクロムメッキ梨地ピンに対し、前記のパッケージ(1kg巻き)から引き出したポリウレタン系弾性繊維の接触角度が90度となるように繊維を通した。25℃で60%RHの条件下、入側で初期張力(T)5gをかけ、100m/分の速度で走行させたときの出側の2次張力(T)を測定した。下記の数式から摩擦係数を求め、次の基準で評価した。結果を表1の「平滑性」欄に示す。
・平滑性の評価基準
◎(良好):摩擦係数が0.150以上、0.220未満
○(可):摩擦係数が0.220以上、0.260未満
×(不良):摩擦係数が0.260以上
・解舒性の評価
第1駆動ローラーとこれに常時接する第1遊離ローラーとで送り出し部を形成した。また、第2駆動ローラーとこれに常時接する第2遊離ローラーとで巻き取り部を形成した。送り出し部と巻き取り部の間隔を、水平方向に沿って約20cmとした。作製したパッケージ(500g巻き)を第1駆動ローラーに装着した。第1駆動ローラーを駆動させて弾性繊維を送り出すとともに、第2駆動ローラーを駆動させて弾性繊維を巻き取った。パッケージの糸巻の厚さが2mmになるまで解舒した。
その際、第1駆動ローラーの送り出し速度を50m/分で固定する一方、第2駆動ローラーの巻き取り速度を50m/分より徐々に上げて、弾性繊維をパッケージから強制解舒した。この強制解舒において、送り出し部と巻き取り部との間で弾性繊維の踊りがなくなる時点、言い換えれば、糸の挙動が不安定にならず、スムーズにパッケージから送り出されるようになる時点での巻き取り速度V(m/分)を測定した。下記の式から解舒性(%)を求め、以下の基準で評価した。
解舒性(%)=(V-50)×2
・解舒性の評価基準
◎(良好):解舒性が150%未満
○(可):解舒性が150%以上、180%未満
×(不可):解舒性が180%以上
・接着性の評価
ポリプロピレン製スパンボンド不織布上に、145℃で加熱溶融したスチレンブタジエンスチレンブロック共重合体を主成分とするゴム系ホットメルト接着剤を均一にローラーで塗布した。接着剤塗布後の不織布を切断して、40mm×20mmの大きさの切断物を2枚作製した。2枚の切断物の接着剤塗布面の間に、前記のパッケージ(1kg巻き)から引き出した40mmの長さのポリウレタン系弾性繊維の先端部10mmを挟んだ。160℃の処理温度、荷重9g/cmで30秒間、圧着し、試料とした。この試料のポリプロピレン製スパンボンド不織布部分を、引張試験機(島津製作所製、オートグラフAGS)の上部試料把持部に固定し、下部試料把持部にポリウレタン系弾性繊維を固定して、100mm/分の速度で引っ張った。ポリプロピレン製スパンボンド不織布からポリウレタン系弾性繊維を引き抜くのに要する強力を測定し、次の基準で評価した。結果を表1の「接着性」欄に示す。
・接着性の評価基準
◎◎(優れる):強力が36g以上
◎(良好):強力が33g以上36g未満
○(可):強力が30g以上33g未満
×(不可):強力が30g未満
表1の各比較例に対する各実施例の評価結果からも明らかなように、本発明の処理剤によると、処理剤が付与された弾性繊維の平滑性、接着性、及び解舒性を向上できる。

Claims (7)

  1. シリコーン(A1)及び下記の鉱物油(A2)を含む平滑剤(A)と、有機リン酸エステル金属塩(B)とを含有し、前記シリコーン(A1)及び前記鉱物油(A2)の質量比が、シリコーン(A1)/鉱物油(A2)=15/85~80/20であることを特徴とする弾性繊維用処理剤。
    鉱物油(A2):アロマ成分を1質量%以上の割合で含有する鉱物油。
  2. 前記弾性繊維用処理剤中に、前記有機リン酸エステル金属塩(B)を0.05質量%以上10質量%以下の割合で含有する請求項1に記載の弾性繊維用処理剤。
  3. 前記弾性繊維用処理剤中に、前記鉱物油(A2)を45質量%以上の割合で含有する請求項1又は2に記載の弾性繊維用処理剤。
  4. 前記有機リン酸エステル金属塩(B)が、有機リン酸エステルのアルカリ土類金属塩である請求項1~3のいずれか一項に記載の弾性繊維用処理剤。
  5. 前記シリコーン(A1)が、ポリエーテル変性シリコーンを含み、前記弾性繊維用処理剤中に、前記ポリエーテル変性シリコーンを0.05質量%以上5質量%以下の割合で含有する請求項1~4のいずれか一項に記載の弾性繊維用処理剤。
  6. 更に、下記のアルコール(C)を含有し、前記弾性繊維用処理剤中に、前記アルコール(C)を0.05質量%以上10質量%以下の割合で含有する請求項1~5のいずれか一項に記載の弾性繊維用処理剤。
    アルコール(C):分岐鎖を有する炭素数8以上26以下の1価脂肪族アルコール、及び直鎖の第二級アルコールから選ばれる少なくとも一つ。
  7. 請求項1~6のいずれか一項に記載の弾性繊維用処理剤が付着していることを特徴とする弾性繊維。
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