JP2023106835A - 過渡吸収測定装置、および、測定方法 - Google Patents

過渡吸収測定装置、および、測定方法 Download PDF

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Abstract

【課題】少量かつ低濃度の試料であっても、励起光パルスの照射回数を低減しながら、高い時間分解能で、励起光照射タイミングの直後から広範囲にわたって過渡吸収を測定できる装置を提供する。【解決手段】光キャビティを構成する一対の反射ミラーの間に配置された試料に対して、励起光パルスを照射する。プローブ光パルス列を反射ミラーの一方に対して照射することにより光キャビティ内に入射させ、プローブ光パルスをそれぞれ光キャビティ内で繰り返し往復させながら、プローブ光パルスが反射ミラーに到達するたびに反射ミラーを透過する一部の光の強度を時系列に検出する。検出された光強度の減衰度合から試料の吸光度の変化ΔAを算出し、この算出処理を、パルス列のそれぞれプローブ光パルスについて行う。【選択図】図2

Description

本発明は、励起光を試料に照射することにより生じる光化学反応中間体を、試料にプローブ光を照射して測定する過渡吸収測定装置および測定方法に関する。
過渡吸収測定装置は、励起光を照射したサンプルの光化学反応中間体等を、試料にプローブ光を照射して、透過光を検出することにより測定する装置として知られている。試料は、固体、液体、気体を問わず適用がされている。
例えば、非特許文献1には、青色光受容体タンパク質であるクリプトクロム(Cryptochrome)磁気受容体のモデル物質について、化学反応の磁場効果を高感度に測定するために、広帯域(白色光)の光源であるスーパーコンテニューム光源の疑似定常光(連続光)をプローブ光として用いるとともに、試料の両側に高反射率ミラーを配置して光キャビティを構成した装置を用いるキャビティエンハンスト法が開示されている。具体的には、試料には磁場が印加された状態で、試料に励起光を照射した後、連続光のプローブ光を光キャビティ内で繰り返し往復させて検出する。これにより、少量および低濃度の貴重な生物学的物質を試料としながら、高感度に、かつ、広帯域に透過光を検出し、定常的励起光照射下での化学反応中間体を観測することができる。
また、非特許文献2には、試料の両側に高反射ミラーを配置して光キャビティを構成し、試料に励起光パルスを照射した後、パルスレーザ光をプローブ光として照射し、光キャビティの高反射ミラーを透過する光強度を時系列に測定することにより、光キャビティ内を循環(往復)している最中のプローブ光の減衰を時系列に測定するキャビティリングダウン法が開示されている。測定した時系列な光強度の減衰曲線から、光キャビティ内の光の指数関数的な減衰(リングダウン時間τ)を求め、リングダウン時間τとキャビティ長Lから光キャビティ内の一回の光通過当たりの試料の吸光度の変化ΔAが算出される。この測定を、励起光パルスの照射と、プローブ光パルスの照射との間の時間(遅延時間td)を変化させながら、何度も繰り返すことにより、光キャビティ内の一回の光通過当たりの試料の吸光度の変化ΔAの遅延時間tdとの関係を求める。求めたΔAとtdとの関係から、励起光により生じた試料に生じた、短命の中間体であるスピン相関ラジカルペア(RP)およびフリーラジカルの濃度の減衰を定量的に測定することができる。
一方、特許文献1および非特許文献3には、従来の過渡吸収分光装置のプローブ光源を、ピコ秒のパルストレインを出射するスーパーコンテニューム光源に置き換えた装置が開示されている。具体的には、励起光パルスを試料に1回照射した後、スーパーコンテニューム光源から出射されるパルストレインをプローブ光パルスとして照射し、プローブ光パルスの照射のたびに試料の透過光のピーク強度を測定する。励起光パルスの入射前のプローブ光の強度と励起光パルスの入射後のプローブ光量の比の対数を算出することにより吸光度(OD)の変化(ΔA)を求める。時間分解能を高めるため、励起光パルスと、パルストレインの最初のプローブ光パルスとの間の時間(遅延時間td)を同期させずにランダムに変化させながら、複数回測定を繰り返す。得られた吸光度の変化(ΔA)を、励起光パルスの照射のタイミングを一致させてプロットしている。
特開2015-222192号公報
非特許文献1のキャビティエンハンスト法は、光キャビティを用いて、サンプル光が試料を何度も通過することにより、試料による光吸収を増大させ、高感度での中間体の測定に成功している。具体的には、スーパーコンテニューム光源からの疑似定常光をプローブ光源として用い、励起光も定常光とすることにより10-7までのきわめて小さな吸光度変化の測定に成功している。しかしながら、この測定方法は、励起光とプローブ光どちらも連続光であるため、時間分解能を持たず、短寿命種には適用不可能であり、過渡種の時間変化を測定することはできない。また、キャビティのミラーの反射率などによって、吸光度計測に補正が必要であり、その補正は、波長依存性があるため容易ではない。
非特許文献2の技術は、プローブ光にパルスレーザを用いるため、パルスごとに測定結果を得ることにより過渡種の時間変化を測定可能である。例えば、光キャビティにより10-6程度までの過渡吸光度の変化ΔAの測定(1000回程度積算後)を可能にしている。具体的には、1つの励起光パルスに対して、所定の遅延時間td後に1つのプローブ光パルスを照射して、そのプローブ光パルスをキャビティで往復させながらプローブ光強度を測定することにより、一つの吸光度の変化ΔAが得られる。そのため、遅延時間tdの変化に伴うΔAの変化を測定するためには、必要な遅延時間tdの測定数だけ、励起光パルスの照射とプローブ光の照射を繰り返す必要がある。しかも、精度を上げるためには、遅延時間tdごとに同じ測定を繰り返して、算出したΔAを積算する必要がある。例えば遅延時間100点について、それぞれΔAを1000回積算する必要がある場合には、100000回の励起光パルスとプローブ光パルスをそれぞれ照射する必要がある。
一方、非特許文献3および特許文献1の技術は、ピコ秒パルスのトレインを出射するスーパーコンテニューム光源を用い、プローブ光パルスの照射のたびに試料の透過光のピーク強度を測定することにより、時間分解能を向上させる。このため、時間軸方向のデータを多数必要とする場合においては励起光の照射回数を非特許文献2よりも低減することができる。しかし、非特許文献3および特許文献1の技術は、一つ一つのパルスの透過光のピーク強度を測定する必要があるため、測定感度の面においては非特許文献2などのキャビティを用いた方法には全く及ばない。もし非特許文献2と同等の結果を得ようとした場合、現実的には信号を得られないか、上で述べた照射回数の低減を相殺するどころかそれ以上の励起パルス光照射回数が必要となる。しかも、スーパーコンテニューム光源から出射されるパルス光の強度には大きな揺らぎがあり、通常のランプや定常レーザを用いた一般的な過渡吸収法よりも不安定である。そのことは、特許文献1の図3に示されているが、パルストレイン強度の揺らぎを精度よくモニタする必要がある。具体的には、特許文献1の図1にあるように、ビームスプリッタで分離したプローブ光を専用の検出器で測定している(特許文献1の図1中19)。さらに、特許文献1ではランダムに照射されるプローブ光パルスのタイミングを得るために、時間分解能を改善した第3の測定システムを使っている(特許文献1の図1中15)。プローブ光をモニタすることにより、過渡吸収測定感度がどの程度改善されるのかについては、示されていないが、一般的な過渡吸収測定法の測定感度を超えることは無く、試料の透過光強度の測定精度を向上させることが難しい。よって非特許文献3および特許文献1の技術は、具体的には、繰り返し測定を行って、測定結果を積算しても、測定される試料の吸光度は10-2程度が限界であり、誤差の影響を受けやすい。さらに、特許文献1においては3つの検出チャンネルを使って1つの波長領域における過渡吸収を測定している。スーパーコンテニューム光源の性質により、パルストレインの揺らぎは波長ごとに異なるため、特許文献1の技術は多波長同時測定をする場合において、波長ごとに複数の検出チャンネルを用意する必要があり、複数波長測定が現実的に困難である。
このように、非特許文献3および特許文献1の技術は、時間分解能の改善と測定誤差の影響を低減するために、励起光パルスと、パルストレインの最初のプローブ光パルスとの遅延時間をランダムに変化させながら複数回測定を繰り返している。結果的に、同一の試料に対し、励起光パルスを複数回試料に照射しなければならないという問題がある。
仮に、特許文献1の技術の試料(特許文献1の図1中5)の両サイドに高反射ミラーを置きキャビティを構成し、非特許文献2のようにキャビティを用いた測定を行おうとしても、非特許文献3で用いているスーパーコンテニューム光源のスペックから見て、プローブ光パルスの強度がリングダウン信号を精度良く測定するには十分ではない。さらに、特許文献1の技術は、遅延時間tdを制御しておらず、ランダムに遅延時間tdを変化させながら複数回測定を繰り返しているので、同じ遅延時間tdの測定結果同士を積算することができない。よって、励起パルス照射後のある特定の遅延時間tdにおけるリングダウン時間を得ることが出来ないため、化学反応中間体のΔAを精度よく測定することはできない。
上述してきたように、非特許文献1~3および特許文献1の技術は、時間分解能よく過渡吸収測定を行うためには、励起光パルスを多数回照射する必要があるが、試料は、励起光パルスの照射されるたびに劣化する。生物学的物質を試料とする場合、試料を大量に作製するのは非常に難しいため、貴重な試料を劣化させることなく、吸光度の変化を精度よく、かつ、時間分解能高く、しかも、励起光パルスの照射タイミング後のナノ秒からマイクロ秒までの広範囲で測定する技術が望まれている。
本発明の目的は、少量かつ低濃度の試料であっても、励起光パルスの照射回数を低減しながら、数十から数百ナノ秒という高い時間分解能で、励起光照射タイミングの直後から広範囲にわたって過渡吸収を測定できる装置を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明の過渡吸収測定装置は、光キャビティを構成する一対の高反射率ミラーと、励起光用光源と、プローブ光用光源と、光検出器と、演算処理部を有する。
反射ミラーは、所定の光軸に沿って、試料を配置する領域の両側に配置され、所定の反射率で光を反射し、残りの光を透過する。励起光用光源は、領域に配置された試料に対して励起光パルスを照射する。プローブ光用光源は、予め定めたパルス間隔でプローブ光パルス列を反射ミラーの一方に対して光軸に沿って照射することにより、プローブ光パルス列を構成するプローブ光パルスを光キャビティ内に順次入射させ、プローブ光パルスを光キャビティ内で繰り返し往復させる。
光検出器は、光キャビティ内で繰り返し往復するプローブ光パルスが反射ミラーに到達するたびに反射ミラーを透過する光の強度を時系列に検出する。演算処理部は、一つのプローブ光パルスが光キャビティ内を繰り返し往復している間に光検出器が時系列に検出した光強度の減衰度合から、一つのプローブ光パルスが照射された時点における試料のプローブ光パルスの通過一回あたりの吸光度の変化ΔAを算出する。この算出処理を連続的なプローブ光パルス列のそれぞれのプローブ光パルスについて行うことにより、プローブ光パルス列が照射されている間の試料の吸光度の変化ΔAの時間変化を求める。
本発明によれば、少量かつ低濃度の試料であっても、励起光パルスの照射回数を低減しながら、数十から数百ナノ秒程度の比較的高い時間分解能で、励起光照射タイミングの直後から広範囲にわたって過渡吸収を測定できる。
本発明の実施形態の過渡吸収測定装置の構成を示すブロック図。 (a)~(d)は、実施形態の過渡吸収測定装置の励起光パルスの照射タイミングと、プローブ光パルスの照射タイミングと、光検出器70の検出波形と、算出される吸光度の変化ΔAを示すタイムチャート。 実施形態の過渡吸収測定装置の動作を示すフローチャート。 実施形態の過渡吸収測定装置の測定結果の一例を示すグラフ。 (a)モードロック型レーザを用いたスーパーコンテニューム光源内のパルス周波数と強度の説明図、(b)ゲインスイッチ型レーザを用いたスーパーコンテニューム光源内のパルス周波数と強度を示す説明図。
以下、本発明の一実施の形態の過渡吸収測定装置について説明する。
<装置構成>
まず、本実施形態の過渡吸収測定装置について図1を用いて説明する。
図1のように、本実施形態の過渡吸収測定装置は、光キャビティ20を構成する一対の反射ミラー21、22と、励起光用光源50と、プローブ光用光源40と、光検出器70と、光検出器70の出力をサンプリングしてデジタル化するデジタルオシロスコープ80と、演算処理部90および表示部91とを備えて構成される。光検出器と反射ミラー22との間には、グレーティング60が配置されている。励起光用光源50とプローブ光用光源40には、パルス遅延発生器100が接続され、励起光用光源50とプローブ光用光源40の出射タイミングを同期させる。プローブ光用光源40と励起光用光源50の前(試料30側)には、ビームシャッタ110、120がそれぞれ配置されている。
反射ミラー21、22は、試料30を配置する領域を挟むように、光軸10に沿って配置され、光キャビティ20を構成している。反射ミラー21、22は、必要な広い波長領域において所定の高反射率(例えば、99.9%)で光を反射し、残りの光を透過する特性を有するものを用いる。
試料30としては、固体、液体、気体のいずれであってもよい。例えば、生物学的物質を含む溶液を試料30として用いる場合、石英ガラスセルに挟んで光キャビティ20内に配置する。光軸10方向の試料30(溶液)の厚さは、一例としては1mmであり、光軸に直交する方向のサイズは、光源(プローブ光用光源40)のビームサイズ程度あれば十分であり、一例としては2-3mm角である。よって必要なサンプル量は20μL程度である。固体や薄膜を用いる場合はプリズム表面にキャストした試料を用いて全反射するプローブ光のエバネッセント光を用いて測定することも可能である。
励起光用光源50は、試料30に対して励起光パルスを照射する(図2(a))。励起光パルスの波長は、試料30により吸収され、試料30を励起する波長を選択する。例えば、波長350nm前後の紫外光パルスを発するレーザ光源を、励起光用光源50として用いる。励起光パルスのパルス幅は、その時間分解能を満たす範囲内でパルス強度を考慮して、試料30の励起に必要な十分なエネルギーを照射できるパルス幅であることが望ましい。一般的には数ナノ秒程度が望ましい。
ここでは、励起光用光源50は、反射ミラー21、22を透過させることなく、直接試料30に励起光パルスを照射する位置に配置されている。また、試料30が小さいため、励起光用光源50の光軸は、光軸10に対して傾斜するように向けられている。
プローブ光用光源40は、図2(b)に示すように、予め定めたパルス間隔のプローブ光パルス列を出射するものである。プローブ光用光源40は、反射ミラー21、22の一方(図1の例では反射ミラー21)に対して光軸10に沿って、プローブ光パルス列を照射するように配置されている。これにより、プローブ光パルス列を構成するプローブ光パルスの一部の光は、反射ミラー21を透過して光キャビティ20内に順次入射し、反射ミラー21、22で反射されることにより、光キャビティ20内で繰り返し往復する。
プローブ光パルスの波長は、励起前の試料30によっては吸収されず、励起された試料30により吸収される波長を含むように選択する。ここでは、白色光のパルスを出射するスーパーコンテニューム光源をプローブ光用光源40として用いる。プローブ光パルス列の強度およびパルス間隔については、あとで詳しく述べる。
光検出器70は、光キャビティ20内で繰り返し往復するプローブ光パルスが反射ミラー22に到達するたびに反射ミラー22を透過するわずかな光の強度を時系列に検出する(図2(c)参照)。デジタルオシロスコープ80の高速A/D変換器(2.5Gサンプリング毎秒)とロングメモリ(250×10個のサンプリングデータを格納できるメモリ)を利用し、励起光パルス照射前、照射後の光の強度を全て測定する。本装置では一回の励起光パルスの照射後0.1秒まで測定できる。プローブ光用光源40として用いるスーパーコンテニューム光源のパルストレインは、200もしくは250ナノ秒間隔で発射されるため、50万~40万ポイントの吸光度の変化ΔAの時間変化データを測定可能である。ΔAの算出方法については後述する。
一つのプローブ光パルスが光キャビティ20内に入射してから、次のプローブ光パルスが入射するまでの間に、プローブ光パルスの強度は、試料30および石英ガラスセルを通過することによる吸収と、セル上での散乱や光キャビティ20内の空気による吸収と、反射ミラー21、22の反射率等によって、光強度が徐々に減衰する。光検出器70で検出される光強度は、光キャビティ20内を往復する光の強度に比例しているため、図2(c)に示すように、一つのプローブ光パルスが光キャビティ20内に入射してから、次のプローブ光パルスが入射するまでの間に時系列に徐々に減衰した波形となる。
演算処理部90は、一つのプローブ光パルスが光キャビティ20内を繰り返し往復している間に光検出器70が時系列に検出した光強度の減衰度合から、一つのプローブ光パルスが照射された時点における試料のプローブ光パルスの通過一回あたりの吸光度の変化ΔAを算出する。
具体的には、専用のソフトウェア(Wavemetrics社製のソフトウェア Igor Pro)上で作られたプログラムで、デジタルオシロスコープ80から転送された検出光の波形(図2(c)の波形)から、各プローブ光パルス照射後の時間tp(tpは、プローブ光パルスの照射間隔)の波形をそれぞれ切り出す。プローブ光パルス照射後の時間tpの波形は、上述したようにキャビティ20内で往復する一つのプローブ光パルスの光強度を表し、試料30で時系列に徐々に吸収されることにより、図2(c)に示すように徐々に減衰する波形(キャビティリングダウン)となる。
切り出した各減衰波形をソフトウェア内に組み込まれているLevenberg-Marquardtアルゴリズムで、式(1)で表される単一指数関数の曲線201にフィッティングすることにより、減衰時間τを求める。なお、式(1)のtdnは、式(2)により表される。
Figure 2023106835000002
Figure 2023106835000003
式(1)、(2)において、tdnは、照射番号nのプローブ光パルスの遅延時間である。プローブ光パルスの照射番号nは、図2(c)に示したように、励起光パルス照射直後のプローブ光パルスをn=0とし、その後のプローブ光パルスの照射番号をn=1,2,3・・・とし、励起光パルス照射前のプローブ光パルスを、n=-1,-2,-3・・・で表す。また、式(2)において、td0は、励起光パルス照射直後のプローブ光パルスの遅延時間である。tpは、プローブ光パルスの照射間隔である。
減衰時間の短い過渡吸収信号(寿命で1マイクロ秒以下)を追跡する場合は、プローブ光パルスの遅延時間と測定するリングダウン信号との時間差を考慮する必要がある。リングダウン信号をシミュレートするプログラムを用いて、数値計算によりリングダウン信号を計算し、用いているソフトウェアを用いてフィッティングすることにより、その時間差Δtを数値計算した。その結果、時間差はリングダウン信号の減衰時間τのほぼ半分すなわちτ/2で近似される。ただし、Δtの値は、フィッティング時におけるリングダウン信号に対する重み関数の設定により、より小さくすることも可能であると同時に、そのこともシミュレーションプログラムによって計算することが出来る。
試料30の過渡吸収強度(1回の光の通過に換算した吸光度の変化)ΔAは、励起パルス照射前のプローブ光パルスの減衰時間τn<0と、励起パルス照射後のプローブ光パルスの減衰時間τn≧0とを用いて、式(3)から算出される。
Figure 2023106835000004
式(3)において、Lはキャビティミラー間の距離、cは光速(2.9979×108 m/s)である。
演算処理部90は、上記演算処理を、プローブ光パルス列のそれぞれのプローブ光パルスについて、光検出器70が時系列に検出し、デジタルオシロスコープ80がサンプリングした光強度の減衰波形(図2(c))ごとに行うことにより、プローブ光パルス列が照射されている間の試料30の吸光度の変化ΔAの時間変化を求めることができる(図2(d)参照)。ΔAの時間変化は上で述べた時間差を考慮した式(4)に示した遅延時間tnに対してプロットすることが望ましいが、観測対象の寿命がΔtと比較して長い場合には、tdnで近似できる。
Figure 2023106835000005
なお、図1の例では、プローブ光パルスとして、白色光を用いているため、反射ミラー22と光検出器70との間にグレーティング60を配置して分光し、複数の光検出器70により複数の波長帯域ごとに光の強度時系列に検出する構成としている。これにより、複数の波長帯域ごとに、試料30の吸光度の変化ΔAの時間変化を求めることができる。波長分解能はグレーティングや光検出器70のサイズによるが、プローブ光パルスの強度や許されるデジタルオシロスコープのチャンネル数等により決まる。測定チャンネル数は検出器やデジタルオシロスコープ80の台数によりアップグレード可能である。さらに光検出器70を左右に空間的に動かして複数の測定を行えば得られる波長に対する測定ポイント数を増加させることも可能である。
ただし、本実施形態の過渡吸収測定装置は、この構成に限定されるものではなく、単色もしくはある波長領域を切り出したプローブ光パルスを、単一の光検出器70で検出する構成であってもよい。
デジタルオシロスコープ80で得られた信号には、フィルター等で除けなかった励起パルスや試料30からの発光が混じる可能性があるが、これらは非特許文献3にある方法や、励起パルスのみで計測したデータを引き算することにより、簡単に取り除くことができる。
また、図1の例では、試料30に磁場を印加しながら測定を行うために、試料30を配置する領域に磁場を印加する磁場発生装置130が備えられている。磁場発生装置130としては、例えば、ヘルムホルツコイルを用いることができる。
<プローブ光パルス>
プローブ光パルスについて詳しく説明する。
プローブ光パルス列は、一つのプローブ光パルスが光キャビティ20内に入射し、光キャビティ内を繰り返し往復して減衰し、次のプローブ光パルスが照射される前に、予め定めた強度以下(例えば5%以下)になるように設計されていることが望ましい。このように設計することにより、前のプローブ光パルスと次のプローブ光パルスが重なって光検出器70によって検出されるのを避けることができ、精度よくプローブ光パルスの減衰を検出することができるからである。
本実施形態の過渡吸収測定装置は、非特許文献3および特許文献1に開示されている装置とは異なり、プローブ光パルス列と励起光パルスとを、パルス遅延発生器を用いて完全に同期することができる。その結果非特許文献3および特許文献1であるように、ランダムな遅延時間を利用してパルス列の時間間隔を多数のレーザ励起測定の繰り返しによりデータ埋めることを要しないが、本装置においてはパルス遅延発生器100を90からコントロールすることにより、好みの時間間隔で自由に測定時間を埋めることが可能である。特許文献1のランダムなインターリーブは、ピコ秒領域の時間分解能においてはメリットがあるが、レーザ励起を極力減らして精度良い測定を行うという観点からはデメリットである。
さらに、本装置のキャビティリングダウン法はプローブパルス列のパルス強度の揺らぎの影響を受けないという特徴がある。このことは、比較的パルス間揺らぎが大きいという本質的な問題があるスーパーコンテニューム光源を過渡吸収法に適用する際において最も重要な改善点である。その点においても非特許文献3および特許文献1と比較して格段のメリットがある。
また、光検出器70が、反射ミラー22を透過した光を時系列に検出して時系列な減衰を検出できるように、反射ミラー22を透過した光の強度が、光検出器70の検出限界よりも十分大きくなるように、プローブ光パルスの強度を反射ミラー22の反射率を考慮して設計する必要がある。
そのため、プローブ光パルス列のパルス間隔およびパルス強度は、光キャビティを構成する反射ミラー間の距離、反射ミラーの反射率、および、試料について予め求めておいた光吸収率の推測値に基づいて、予め算出された時間や強度を満たすように設定されていることが望ましい。また、光キャビティ20を構成する反射ミラー21、22の間隔を、プローブ光パルス列のパルス間隔およびパルス強度に応じて、設計してもよい。
すなわち、プローブ光パルス列を構成するプローブ光パルスの強度は、光キャビティ20の反射ミラー22から漏れ出す光が、ナノ秒での高速測定おいて、光検出器70で十分検出可能な強度を持つように設定されている。
また、光キャビティ20を構成する反射ミラー21、22の間隔は、一つのプローブ光パルスの強度が光キャビティ20内の往復により、次のプローブ光パルスが照射される前に、予め定めた強度以下に減衰し、しかも一般的な高速光検出器(フォトマルチプライアチューブもしくはフォトダイオード)70により減衰時間を精度よく測定するに十分な間隔に設定され、それでいて励起パルス光を効率よく試料30に照射することができる間隔であることが望ましい。
具体的には、プローブ光用光源40のプローブ光パルス列の各プローブ光パルスの強度は、10 nJ/pulse以上であることが望ましい。プローブ光パルス列のパルス間隔は、200 ns以上500 ns以下であることが望ましい。
これらの条件を満たすプローブ光パルスは、プローブ光用光源40として、スーパーコンテニューム光源を用いると広い波長領域での測定が可能となり有効である。スーパーコンテニューム光源は、レーザ光源と、フォトニックファイバとを含み、レーザ光源から出射された高強度のピコ秒(もしくはフェムト秒)レーザパルスをフォトニックファイバに入射させ、フォトニックファイバの非線形効果により広範囲波長領域にわたる光を発生させる。一般に市販のスーパーコンテニューム光源は、フォトニックファイバに光を導入するレーザ光源として、(a)モードロック型レーザ、(b)ゲインスイッチ型レーザを用いているが、レーザパルス列の繰り返しを可変させる場合の方式に異なりがある。
(a)のモードロック型レーザは基本的なパルス列の繰り返し周波数が数十MHzに固定されており、本発明の目的のために繰り返し周波数を5MHz程度に下げる場合、パルスピッカを用いてパルス列を間引く事により行う。その場合、図5(a)に示すように、単発当たりのレーザパルスの強度は、高繰り返しの場合と全く同じであり、フォトニックファイバ通過後の光の波長を分解した場合、本実施形態のようなキャビティを用いた測定において必要な強度(10 nJ/pulse)が得られない場合が多い。また、非特許文献3および特許文献1にあるように、励起パルスと同期出来ない可能性がある。
一方で(b)のゲインスイッチ型レーザは図5(b)に示すように、パルスピッカを用いる方式とは異なり、もともとのパルス列の繰り返し周波数を下げることが可能である。そのため、ゲインスイッチ型レーザを光源とするスーパーコンテニューム光源は、通常ゲインスイッチ型レーザとフォトニックファイバとの間に光アンプが配置され、ゲインスイッチ型レーザから出射されたレーザパルス列をシード光として用いて、そのシード光を増幅してから、フォトニックファイバに入射する。光アンプは、具体的には励起された媒質の中をシードパルスが通過する際に、誘導放出によってパルスにエネルギーが与えられる。一定の単位時間当たりのエネルギーを与える光アンプに対して、繰り返し周波数の異なるレーザを入れた場合、周波数の低いレーザの方が一発に対するゲインが大きくなり、単発のレーザ強度を大きく上げることができる。さらに、フォトニックファイバの非線形な応答により、フォトニックファイバに入射するレーザ強度が大きいほど、より強度の大きな出射光パルスが出力されるため、レーザ光源の繰り返し周波数による単発当たりの強度の差によるフォトニックファイバの出射光パルスの強度の違いは、より大きなものとなる。その結果、スーパーコンテニューム光源は、5 MHzの繰り返し、 20 nmのバンド幅において、本実施形態の装置でリングダウン時間を測定するに十分なパルス強度(10 nJ/pulse以上)のプローブ光パルスを出射することができ、その時パルス間隔を200 ns以上500 ns以下にできる。本実施の形態の装置の試作機では、200-250 nsつまり、4-5MHzでその条件を満たすことができた。
以上のように、ゲインスイッチ型のレーザを用いた光源は本技術を達成するうえで重要な要素である。しかしながら、ゲインスイッチ型レーザは、本発明に必須の条件ではなく、上で示したパルス強度や繰り返し周波数が可能であれば、モードロック型のレーザを用いることももちろん可能であり、レーザの方式を特定するものではない。
<測定方法>
本実施形態の過渡吸収測定装置を用いて、過渡吸収測定を行う方法について図2および図3を用いて説明する。ここでは、一例として演算処理部90が、パルス遅延発生器100を通じてプローブ光用光源40および励起光用光源50を制御し、光検出器70の検出波形データをデジタルオシロスコープ80から受け取り、それを処理することにより、測定を実行する場合について説明する。具体的には、演算処理部90は、CPUとメモリとを有して構成され、CPUがメモリ内に予め格納されているプログラムを実行することにより、図3のフローのように動作する。以下、具体的に説明する。
(ステップ301)
演算処理部90は、接続されている表示部91に、試料30を光キャビティ20内の領域にセットするようにユーザに促す表示を表示する。
(ステップ302)
試料30がセットされたならば、演算処理部90は、パルス遅延発生器100を通じて励起光用光源50とプローブ光用光源40を同期させる。同期後、パルス遅延発生器100は、プローブ光用光源40の前にそれぞれ配置されたビームシャッタ110を開放する。これにより、図2(b)のように、プローブ光パルス列がパルス間隔tpで試料30に対して照射される。
プローブ光パルス列が試料30を通過している条件下で、プローブ光のキャビティリングダウン信号列(光キャビティ20を通じて反射ミラー22を透過した光)をすべて光検出器70で検出し、デジタルオシロスコープ80でサンプリングすることにより、プローブ光パルスの減衰波形を取得する。
(ステップ303、304)
所定の励起光パルス照射タイミングに達したならば、パルス遅延発生器100は、励起光用光源50の前のビームシャッタ120を開放する。これにより、励起光パルスが図2(a)のように、所定のタイミング(t=0)で試料30に照射される。
(ステップ305)
その後も、プローブ光パルス列をパルス間隔tpで試料30への照射を継続し、ステップ302と同様に、プローブ光パルスの減衰波形を取得する。
(ステップ306、307)
所定時間のプローブ光パルスを照射したならば(ステップ306)、ステップ302およびステップ305で検出した光強度の減衰波形のSN比が予め定めた閾値以上かどうかを判定する(ステップ307)。減衰波形が閾値を超えていない場合、減衰曲線として十分なSN比を持たないので、ステップ302~306を繰り返し、再度、減衰波形の検出を行い、前回検出した減衰波形であって、励起光パルスの照射タイミングに対して同じ遅延量tdnのプローブ光パルスから得られた減衰波形とデジタルオシロスコープ80上で積算する。
ステップ307において、減衰波形のSN比が閾値以上であった場合、ステップ308に進む。
なお、ステップ307において、減衰波形のSN比を算出せず、ステップ302~306を所定回数繰り返した場合、ステップ308に進む構成としてもよい。
(ステップ308)
デジタルオシロスコープ80上で積算された減衰波形のデータは、図2(c)様な波形をミリ秒までの長い時間の過渡吸収データを記録したものであり、それを演算処理部90に転送する。転送時にはビームシャッタ110,120を閉じることにより試料30の劣化を防ぐ。
演算処理部90は、転送されたデータをプローブ光パルスごとに時間tpにおける光強度の減衰波形を切り出し、単指数関数減衰曲線にフィッティングして、上述の式(1)、(2)から減衰時間τを求める。さらに、上述の数式(3)から試料30の吸光度の変化ΔAをすべてのnに対して算出し、遅延時間tdnのプローブ光パルスごとに算出する。この算出処理を、プローブ光パルス列すべてについて行うことにより、各遅延時間tnの試料の吸光度の変化ΔA(t)を求める。
演算処理部90は、算出した吸光度の変化ΔA(t)を図2(d)のように遅延時間tnを横軸とするグラフにプロットする。
(ステップ309)
演算処理部90は、ステップ302~308を予め定めた繰り返し回数繰り返し、その都度、励起光パルスの照射タイミングを基準として、前回のプロット結果に重ねてプロットする。
(ステップ310)
演算処理部90は、ステップ309で得られたプロット結果を平均化し、標準誤差を添えて表示部91に、例えば図4のように表示する。
これにより、最低1回の励起光パルスの照射により、時系列な吸光度の変化ΔAを求めることができる。
<測定結果>
図4は、フラビンモノヌクレオチド0.2 mM 卵白リゾチーム0.2 mMの混合水溶液で測定した過渡吸収の時間変化である。励起光波長 351 nm、 励起光強度0.1 mJ/pulse、キャビティ長 17 cm、プローブ光波長600 nm、強度 55 mW (11 nJ /pulse@5 MHz )、パルス間隔200 nsである。試料30について、10回平均化したリングダウン信号の測定を10回繰り返し、励起光パルス照射のタイミングを合わせてプロットした結果である。
図4から明らかなように、100回の積算で10-4オーダーの過渡吸収測定の時間依存性の測定が可能となっていることがわかる。非特許文献2の技術でも、Lの異なる類似のキャビティを用いているため、300回程度の積算で10-3-10-4オーダーの過渡吸収を測定しているが、得られるのは1つの遅延時間での吸光度のみである。非特許文献2のFigure 6では24点の遅延時間について測定しているので、サンプルへの励起光照射パルス数は7200(24×300)となる。よって、本技術では、ほぼ同等の時間分解能で、繰り返し測定の回数を約70分の1に低減できることがわかる。もし図4に示した、約1600点(1.7ミリ秒)の長い遅延時間に亘る測定で比較した場合は、励起光照射パルス数を4800分の1に低減できる事になる。さらに、時間分解能をある程度犠牲にすれば、スムージング処理により測定のノイズをさらに低減させて10-5のオーダーまで測定の精度を上昇させることができる。図4の実線は5点の時間変化のデータをBinomial型スムージング処理した結果である。
また、励起光パルスの照射回数は、わずか100回であるため、試料30にほとんどダメージを与えず、短時間で測定を行うことができる。
また、図4から明らかなように、吸光度の変化ΔAを測定可能な時間帯は、励起光パルスの照射から数十ナノ秒後からミリ秒後まで広範囲であり、広い時間範囲にわたって、吸光度の変化ΔAを測定できる。
さらに、本実施形態の測定方法、光キャビティ20内を往復するプローブ光パルスの減衰曲線のτから吸光度の変化ΔAを求めるため、プローブ光用光源40としてスーパーコンテニューム光源を用い、プローブ光パルスの強度I0nが、パルスごとに揺らぐ場合であっても、その影響を受けない。よって、高精度に吸光度の変化ΔAを算出することができる。また、別の検出器や測定チャンネルを用いてプローブ光パルス強度を測定する必要が無く、1つのチャンネルの測定データのみからΔAを算出できる。この事は多波長での過渡吸収を同時に測定する場合において大きなメリットがある。例えば8チャンネルのオシロスコープから8つの波長の過渡吸収が同時に得られる。
通常の過渡吸収測定は、強いプローブ光の小さな変化を測定する必要があり、大きなバックグラウンド信号の中の小さな変化を測定することになる。本測定方法では光キャビティ内のパルスの減衰を、オシロスコープ80の全体の縦分解能を用いて測定することができる。よってオシロスコープにおけるデジタイザのデジタル化における分解能にもさほど影響されない。
以上のように、本実施形態の過渡吸収測定装置を用いることにより、タンパク質など劣化しやすい試料の化学反応による吸光度の変化を、高い時間分解能で広い時間範囲において、高精度に測定することができる。
本実施形態の技術は、非特許文献1~3の技術と比較して、測定感度を数百倍程度飛躍的に増大させることができる。これにより、サンプルの劣化等のため、従来光照射量を小さくする必要のあったサンプルや、光反応サイクルが非常に遅いために高繰り返しのレーザ励起が問題となるサンプルにおける光化学反応追跡を可能とし、光化学反応の磁場効果など、その速度計測のみならずその反応量の絶対値の正確な測定が必要となる場合において、高感度かつ高精度での過渡吸収計測が可能となる。
スーパーコンテニューム光源として、モードロック型レーザを用いた場合、数十MHzの繰り返し周波数を持つパルストレイン型であり、パルストレインを構成する1発1発のパルスの強度を大きくすることが難しく、光キャビティ20の反射ミラー22を透過した光(キャビティリングダウン)を光検出器70が測定可能な程度の強度にすることができるプローブ光パルスを出射させることは難しい。さらに繰り返し周波数が高いために、tpが短くなり、キャビティの設計やリングダウン信号の計測が難しくなる。本実施形態では、ゲインスイッチ型のスーパーコンテニューム光源を用いたことにより、反射ミラー22を透過した光を光検出器70が測定可能な程度の強度であり、リングダウン信号を計測するのに十分なtpを持つプローブ光パルス列を出射させることができる。
また、本実施形態の測定方法は、99.9%程度の反射率を持つブロードバンド反射ミラーを用いているが、反射ミラー21、22の反射率とその波長依存性などによる吸光度の補正が不要であり、光励起による吸光度の変化ΔAの絶対値を簡単に求めることが可能である。
よって、白色光のスーパーコンテニューム光源を用いて、各波長において光励起による吸光度の変化ΔAを同時に測定することが可能である。しかも、反射ミラー21、22の反射率の波長依存性などによる吸光度の補正が不要であるため、反射ミラー21、22の反射率に波長依存性があっても、その影響を受けることなく、また、波長依存性の補正をすることもなく、各波長において光励起による吸光度の変化ΔAの絶対値を簡単に測定することができる。
また、1発の励起光パルスを照射するだけで、数十ナノ秒程度の時間分解能(光キャビティのリングダウン時間の半分程度かそれ以下)で、その後に照射する多数のプローブ光パルスについて吸光度の時間変化ΔA(t)をそれぞれ測定することができる。発明者らの実験においては、1発の励起光パルスの照射後に、1.7ミリ秒に渡って多数のプローブ光パルスを照射して、それぞれのプローブ光パルスについて吸光度の変化ΔA(t)を測定することに成功している。
さらに、本実施形態の過渡吸収測定装置に、分光装置、光電子増倍管アレー、多チャンネルのオシロスコープなどを組み合わせることにより、波長分解能をさらに向上させることが可能である。
発明者らの実験によれば、1発の励起光パルスについて、吸光度10-3程度の過渡吸収信号を測定することができ、100ショット程度の繰り返し回数(ステップ304)で、吸光度10-4-10-5の測定が可能であった。また、その10%程度の過渡吸収信号に対する磁場効果の測定が可能であった。
10 光軸
20 光キャビティ
21 反射ミラー
22 反射ミラー
30 試料
40 プローブ光用光源
50 励起光用光源
60 グレーティング
70 光検出器
80 デジタルオシロスコープ
90 演算処理部
91 表示部
100 パルス遅延発生器
110 ビームシャッタ
120 ビームシャッタ
130 磁場発生装置
201 曲線

Claims (10)

  1. 光キャビティを構成する一対の反射ミラーと、励起光用光源と、プローブ光用光源と、光検出器と、演算処理部を有し、
    前記反射ミラーは、所定の光軸に沿って、試料を配置する領域を挟むように配置され、所定の反射率で光を反射し、残りの光を透過し、
    前記励起光用光源は、前記領域に配置された前記試料に対して励起光パルスを照射し、
    前記プローブ光用光源は、予め定めたパルス間隔でプローブ光パルス列を前記反射ミラーの一方に対して前記光軸に沿って照射することにより、前記プローブ光パルス列を構成するプローブ光パルスを前記光キャビティ内に順次入射させ、前記プローブ光パルスを前記光キャビティ内で繰り返し往復させ、
    前記光検出器は、前記光キャビティ内で繰り返し往復する前記プローブ光パルスが前記反射ミラーに到達するたびに前記反射ミラーを透過する光の強度を時系列に検出し、
    前記演算処理部は、一つの前記プローブ光パルスが前記光キャビティ内を繰り返し往復している間に前記光検出器が時系列に検出した光強度の減衰曲線から、前記一つのプローブ光パルスが照射された時点における前記試料の前記プローブ光パルスの通過一回あたりの吸光度の変化ΔAを算出し、この算出処理を前記プローブ光パルス列のそれぞれの前記プローブ光パルスについて行うことにより、前記プローブ光パルス列が照射されている間の前記試料の吸光度の変化ΔAの時間変化を求めることを特徴とする過渡吸収測定装置。
  2. 請求項1に記載の過渡吸収測定装置であって、前記プローブ光パルス列のパルス間隔は、一つの前記プローブ光パルスの強度が前記光キャビティ内の往復により、次のプローブ光パルスが照射される前に、予め定めた強度以下に減衰する時間に設定されていることを特徴とする過渡吸収測定装置。
  3. 請求項2に記載の過渡吸収測定装置であって、前記パルス間隔は、前記光キャビティを構成する反射ミラー間の距離、前記反射ミラーの反射率、および、前記試料について予め求めておいた光吸収率の推測値に基づいて算出された時間であることを特徴とする過渡吸収測定装置。
  4. 請求項1ないし3のいずれか1項に記載の過渡吸収測定装置であって、前記プローブ光パルス列を構成するプローブ光パルスの強度は、前記光キャビティの反射ミラーから漏れ出す光が、前記光検出器で検出可能な強度を持つように設定されていることを特徴とする過渡吸収測定装置。
  5. 請求項1ないし3のいずれか1項に記載の過渡吸収測定装置であって、前記光キャビティを構成する前記反射ミラーの間隔は、一つの前記プローブ光パルスの強度が前記光キャビティ内の往復により、次のプローブ光パルスが照射される前に、予め定めた強度以下に減衰し、しかも前記光検出器により減衰時間を測定するにことができる間隔であって、かつ、励起パルス光を前記試料に照射可能な間隔であることを特徴とする過渡吸収測定装置。
  6. 請求項1ないし5のいずれか1項に記載の過渡吸収測定装置であって、前記プローブ光用光源は、所定の波長領域よりも広い波長領域を利用可能なスーパーコンテニューム光源であることを特徴とする過渡吸収測定装置。
  7. 請求項6に記載の過渡吸収測定装置であって、前記スーパーコンテニューム光源は、ゲインスイッチ型レーザを含むことを特徴とする過渡吸収測定装置。
  8. 請求項1ないし7のいずれか1項に記載の過渡吸収測定装置であって、試料を配置する領域に磁場を印加する磁場発生装置をさらに有することを特徴とする過渡吸収測定装置。
  9. 光キャビティを構成する一対の反射ミラーの間に配置された試料に対して、励起光パルスを照射する第1工程と、
    予め定めたパルス間隔のプローブ光パルス列を前記反射ミラーの一方に対して照射することにより、前記プローブ光パルス列を構成するプローブ光パルスを前記光キャビティ内に順次入射させ、前記プローブ光パルスをそれぞれ前記光キャビティ内で繰り返し往復させながら、前記プローブ光パルスが前記反射ミラーに到達するたびに前記反射ミラーを透過する一部の光の強度を時系列に検出する第2工程と、
    一つの前記プローブ光パルスが前記光キャビティ内を繰り返し往復している間に時系列に検出された前記光強度の減衰曲線から、前記一つのプローブ光パルスが照射された時点における前記試料の前記プローブ光パルスの通過一回あたりの吸光度の変化ΔAを算出し、この算出処理を、前記プローブ光パルス列のそれぞれの前記プローブ光パルスについて行うことにより、前記プローブ光パルス列が照射されている間の前記試料の吸光度の変化ΔAの時間変化を求める第3工程と
    を有することを特徴とする過渡吸収測定方法。
  10. 請求項9に記載の過渡吸収測定方法であって、前記第3工程では、前記光強度の前記減衰曲線に所定の曲線をフィッティングすることにより、減衰時間を求め、前記減衰時間と、前記励起光パルスの照射前の前記試料に前記プローブ光パルスを照射して求めた前記減衰時間との差から吸光度の変化ΔAを算出することを特徴とする過渡吸収測定方法。
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