JP2023106808A - NiAl2O4とγ-Al2O3とZrO2とが複合化した複合酸化物、当該複合酸化物の還元物である活性材料、及び当該活性材料の再生方法 - Google Patents

NiAl2O4とγ-Al2O3とZrO2とが複合化した複合酸化物、当該複合酸化物の還元物である活性材料、及び当該活性材料の再生方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2023106808A
JP2023106808A JP2022007756A JP2022007756A JP2023106808A JP 2023106808 A JP2023106808 A JP 2023106808A JP 2022007756 A JP2022007756 A JP 2022007756A JP 2022007756 A JP2022007756 A JP 2022007756A JP 2023106808 A JP2023106808 A JP 2023106808A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
active material
zro
particles
nazo
composite oxide
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2022007756A
Other languages
English (en)
Inventor
真平 山口
Shinpei Yamaguchi
友厚 尾崎
Tomoatsu Ozaki
剛 陶山
Takeshi Suyama
昌司 大谷
Masashi Otani
香名 森山
Kana Moriyama
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
KANSAI SHOKUBAI KAGAKU KK
Osaka Research Institute of Industrial Science and Technology
Original Assignee
KANSAI SHOKUBAI KAGAKU KK
Osaka Research Institute of Industrial Science and Technology
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by KANSAI SHOKUBAI KAGAKU KK, Osaka Research Institute of Industrial Science and Technology filed Critical KANSAI SHOKUBAI KAGAKU KK
Priority to JP2022007756A priority Critical patent/JP2023106808A/ja
Publication of JP2023106808A publication Critical patent/JP2023106808A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E60/00Enabling technologies; Technologies with a potential or indirect contribution to GHG emissions mitigation
    • Y02E60/30Hydrogen technology
    • Y02E60/50Fuel cells

Landscapes

  • Inorganic Compounds Of Heavy Metals (AREA)
  • Hydrogen, Water And Hydrids (AREA)
  • Catalysts (AREA)
  • Inert Electrodes (AREA)
  • Fuel Cell (AREA)

Abstract

【課題】NAO(NiAl2O4とγ-Al2O3との複合酸化物)を改良した新たな複合酸化物であって、NAOの高活性な特徴及び再生機能を保持しながら材料強度を高めた複合酸化物、及び当該複合酸化物の還元物である活性材料を提供する。【解決手段】NiAl2O4とγ-Al2O3とZrO2とが複合化した複合酸化物であって、還元することにより活性材料となることを特徴とする複合酸化物、及び当該複合酸化物の還元物である、γ-Al2O3とZrO2とが複合化した複合酸化物の表面に少なくともNi粒子が分散していることを特徴とするNi/(γ-Al2O3・ZrO2)系活性材料。【選択図】なし

Description

本発明は、NiAlとγ-AlとZrOとが複合化した複合酸化物、当該複合酸化物の還元物である活性材料、及び当該活性材料の再生方法に関する。
従来、炭化水素改質用触媒としては、スピネル酸化物であるNiAl(詳細にはNiAlとγ-Alとの複合酸化物であって「NAO」ともいう)が使用されている。このNAOは、例えば700~800℃で還元することによりNiがスピネル構造から解離し、γ-Al表面に微細なNi粒子が高分散した高活性な触媒(Ni/γ-Al触媒)となることが知られている。
また、NAOに更にRuを添加した触媒(「RNAO」ともいう)も知られており、Ruを含むことにより改質活性が向上すること、改質時の炭素析出耐性が高くなること、還元によりγ-Al表面に微細なNi粒子とRu粒子とが高分散(一部、NiとRuとが合金化していてもよい。以下同様。)した高活性な触媒(Ni,Ru/γ-Al触媒)となること等が知られている。
このように、Ni/γ-Al触媒、及びNi,Ru/γ-Al触媒は炭化水素改質活性が高い触媒であるが、改質時に長時間、高温で使用するとNi凝集が生じて触媒活性が低下し失活する。従来、Ni/γ-Al触媒、及びNi,Ru/γ-Al触媒は失活後は廃棄処理せざるを得ないという課題があったが、本願出願人は特許文献1において、失活したNi/γ-Al触媒、及びNi,Ru/γ-Al触媒に酸化処理、及び還元処理を順次行うことにより活性材料に再生する方法を提案している。
Ni/γ-Al触媒、及びNi,Ru/γ-Al触媒は、旧触媒のPt/γ-Al触媒(γ-Al表面に微細なPt粒子が高分散した触媒)と比較するとトルエン改質活性が約1.5~3.0倍高いという特徴がある。また、上記特許文献1に開示されるように、これらの触媒は繰り返し活性材料に再生して使用することができるという利点がある。
これに対して、NAO(RNAOも包含する。以下同様。)は、材料強度が低く造粒が困難という課題がある。造粒後に還元することにより得られた材料(例えば触媒)の強度が不十分であると触媒が使用中に崩れることで微粉化し、触媒使用環境での配管閉塞や偏流が生じるという問題がある。よって、NAOの高活性な特徴及び再生機能を保持しながら材料強度を高めることが求められている。
特開2020-62609号公報
本発明は上記従来技術の問題点を改善するものであり、NAOを改良した新たな複合酸化物であって、NAOの高活性な特徴及び再生機能を保持しながら材料強度を高めた複合酸化物を提供することを目的とする。また、当該複合酸化物の還元物である活性材料及び当該活性材料の再生方法を提供することも目的とする。
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の組成からなる複合酸化物が上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
つまり、本発明は下記のNiAlとγ-AlとZrOとが複合化した複合酸化物、当該複合酸化物の還元物である活性材料、及び当該活性材料の再生方法に関する。
1.NiAlとγ-AlとZrOとが複合化した複合酸化物であって、還元することにより活性材料となることを特徴とする複合酸化物。
2.γ-AlとZrOとが複合化した複合酸化物の表面に少なくともNi粒子が分散していることを特徴とするNi/(γ-Al・ZrO)系活性材料。
3.更に白金族粒子Mが分散しているNi,M/(γ-Al・ZrO)系活性材料である、上記項2に記載の活性材料。
4.前記白金族粒子Mは、Ru粒子である、上記項3に記載の活性材料。
5.更に金属元素Mが酸化物の状態で複合化したNi,M/(γ-Al・ZrO・M)系活性材料(但し、xは金属元素Mに対応する酸素量を示す)である、上記項3又は4に記載の活性材料。
6.前記Mは、Ti、Hf、Ce、Se、Y、La、Sm、Ca、Mg、Sr、及びBaからなる群から選択される少なくとも一種である、上記項5に記載の活性材料。
7.炭化水素改質用触媒、メタン化用触媒、木質ガス化用触媒及び固体酸化物型燃料電池(SOFC)の燃料極材料からなる群から選択される少なくとも一種である、上記項2~6のいずれかに記載の活性材料。
8.失活材料から活性材料を再生する方法であって、
前記活性材料は、γ-AlとZrOとが複合化した複合酸化物の表面に少なくともNi粒子が分散しているNi/(γ-Al・ZrO)系活性材料であり、
前記失活材料は、前記活性材料に少なくとも熱が加わることによって前記γ-Al・ZrOの表面に前記Ni粒子の凝集が生じている材料であり、
(1)前記失活材料を酸化することにより、NiAl構造を有するスピネル酸化物を生じさせる工程1、
(2)前記スピネル酸化物を還元することにより、前記活性材料を得る工程2、
を有することを特徴とする活性材料の再生方法。
9.前記酸化は、700℃以上の温度で行う、上記項8に記載の再生方法。
10.前記還元は、500℃以上且つ1分以上の条件で行う、上記項8又は9に記載の再生方法。
本発明の複合酸化物は、NiAlとγ-AlとZrOとが複合化した複合酸化物(「NAZO」ともいう)であって、還元することにより活性材料となることを特徴とする。この複合酸化物は、従前のNAO(NiAlとγ-Alとの複合酸化物)に更にZrOが複合化した複合酸化物であり、ZrOが複合化したことによりNAOの材料強度が向上している。ZrOは単斜晶(モノクリニック)、正方晶(テトラゴナル)、立方晶(キュービック)等の複数の結晶系を有し、NAZOに応力が加わった際に結晶系が変化することにより応力緩和できることによりNAOよりも材料強度が向上すると考えられる。また、立方晶(キュービック)は高温で安定であるため前記相変化以外の点でも強度向上に寄与すると考えられる。本発明の複合酸化物は、還元することにより活性材料となり、炭化水素改質用触媒、SOFCの燃料極材料等として用いることができ、活性材料に熱が加わることにより失活後は、失活材料に酸化処理、及び還元処理を順次行うことにより活性材料に再生することができる。
本発明における、γ-AlとZrOとが複合化した複合酸化物(γ-Al・ZrO)の表面に少なくともNi粒子が分散しているNi/(γ-Al・ZrO)系活性材料が失活後に酸化処理、還元処理を順次行うことにより元の活性材料に再生する機能を模式的に示す図である。 試験例1における、NiAlZr(「1:5:5NAZO」ともいう)を含む1:5:5NAZO/α-Alの還元前後の外観、及び還元前後のエネルギー分散型X線分析装置(EDX)により観察した微細構造(NiとAlのEDXマッピング結果)を示す図である。 試験例2における、1:5:5NAZOの繰り返し逐次昇温還元(TPR)特性を示す図である。 試験例2における、酸化・還元サイクルでの4回目の酸化を350℃、500℃、600℃、700℃、780℃及び850℃で行った1:5:5NAZOのX線回折(XRD)パターンを示す図である。 試験例2における、酸化・還元サイクルでの4回目の酸化を350℃、500℃、600℃、700℃、780℃及び850℃で行った1:5:5NAZOのXRDパターン(特にZrOのピークに関する)を示す図である。 試験例2における、850℃で2時間還元した1:5:5NAZO還元物のSTEM(走査透過電子顕微鏡)及びEDX観察像を示す図である。 試験例2における、1:5:5NAZO酸化物のSTEM及びEDX観察像を示す図である。 試験例3における、強度試験(圧縮試験)結果を示す図である。 試験例4における、メタン改質触媒のLNG改質速度のアレニウスプロットを示す図である。 試験例5における、木質ガス化触媒、及び触媒なしのガス化(C転化)速度のアレニウスプロットを示す図である。
1.NiAl とγ-Al とZrO とが複合化した複合酸化物
本発明の複合酸化物は、NiAlとγ-AlとZrOとが複合化した複合酸化物(NAZO)であって、還元することにより活性材料となることを特徴とする。上記特徴を有する本発明の複合酸化物は、従前のNAO(NiAlとγ-Alとの複合酸化物)に更にZrOが複合化した複合酸化物であり、ZrOが複合化したことによりNAOの材料強度が向上している。ZrOは単斜晶(モノクリニック)、正方晶(テトラゴナル)、立方晶(キュービック)等の複数の結晶系を有し、NAZOに応力が加わった際に結晶系が変化することにより応力緩和できることによりNAOよりも材料強度が向上すると考えられる。また、立方晶(キュービック)は高温で安定であるため前記相変化以外の点でも強度向上に寄与すると考えられる。本発明の複合酸化物は、還元することにより活性材料となり、炭化水素改質用触媒、SOFCの燃料極材料等として用いることができ、活性材料に熱が加わることにより失活後は、失活材料に酸化処理、及び還元処理を順次行うことにより活性材料に再生することができる。
複合酸化物(NAZO)におけるNiAlとγ-AlとZrOとの複合化の形態は限定的ではなく、各酸化物粒子が完全に固溶している態様、各酸化物粒子の表面の一部どうしが固溶してネッキングすることにより複合化している態様等が挙げられる。
複合酸化物(NAZO)におけるNi、Al、Zrの組成モル比は、複合酸化物を調製する原料の配合割合によって調整することができる。上記各元素の組成モル比を原料配合時の割合で示すと、Ni:Al:Zr=1以上:1~40:0超過~40であることが好ましく、1~2:10~40:1~10であることがより好ましい。なお、NAOと比較してNAZOの材料強度を高める観点では、複合酸化物(NAZO)を構成する各酸化物(NiAlとγ-AlとZrO)の合計量を100質量%とし、ZrOの含有量が1質量%以上であれば材料強度を高めることができる。ZrOの含有量は好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上であり、強度向上と複合酸化物の特性(還元後の活性材料の特性)との関係から特定される好ましい上限は90質量%程度である。
複合酸化物(NAZO)の調製方法は限定的ではなく、例えば原料としてニッケル塩、アルミニウム塩、及びジルコニウム塩をイオン交換水に溶解して各水溶液を準備し、所定量の各水溶液の混合物とアルカリ源として例えば水酸化ナトリウム、アンモニア水等とを滴定しながら共沈法により沈殿物を得、沈殿物を乾燥後、大気下で焼成することにより複合酸化物(NAZO)は得られる。共沈法により例えば水酸化物の沈殿を得、沈殿物を乾燥後、大気下で焼成することによる複合酸化物の調製方法は当業者に公知の手法であり、沈殿物を得る条件や乾燥・焼成の条件は常法に従えばよい。
原料としてのニッケル塩、アルミニウム塩、及びジルコニウム塩としては、例えば各元素の硫酸塩、硝酸塩等を使用することができる。また、NAZOに白金族元素M(例えばRu)、金属元素M(Ti、Hf、Ce、Sc、Y、La、Sm、Ca、Mg、Sr、及びBaからなる群から選択される少なくとも一種)の酸化物を含める場合には、白金族元素M、金属元素Mの塩(例えば硝酸塩、硫酸塩、塩化物)の水溶液をニッケル塩、アルミニウム塩、及びジルコニウム塩の各水溶液とともに共沈させることにより複合化することができる。NAZOに白金族元素M(例えばRu)を含有する場合には、後述する本発明の活性材料(還元状態)において例えばRuはNiと容易に合金化してNi-Ruを形成することにより、改質活性の向上、改質時の炭素析出耐性の向上、後述する本発明の活性材料の再生方法において、失活材料に酸化処理、及び還元処理を順次行う際の酸化温度、還元温度を低く設定できる利点がある。また、金属元素Mは酸化物(M)(但し、xは金属元素Mに対応する酸素量を示す)の状態で複合酸化物を構成し、それ自体は活性を有さないが、白金族元素Mの分散性をより高める効果がある。
得られた複合酸化物(NAZO)はNAOと比べて材料強度が向上しているため、複合酸化物(NAZO)を直接、例えば転動造粒することにより所望の形状に成形してもよい。また、α-Al等の公知の担体に担持することにより所望の形状に成形してもよい。α-Al(担体)にNAZOを担持する場合には、例えばα-Alを水(バインダー)とともに転動造粒することにより一次造粒物(担体前駆体)を得、一次造粒物に所望量の前記沈殿物(乾燥後)を添加して更に転動造粒することにより二次造粒物(担持体前駆体)を得、二次造粒物を焼成することにより担体表面にNAZOが担持された担持体を得ることができる。転動造粒は当業者に公知の手法であり、NAZOの造粒物や担体にNAZOを担持した担持体を得る条件は常法に従えばよい。
複合酸化物(NAZO)は還元することにより活性材料となる。還元条件はNAZOの還元物が炭化水素改質用触媒、メタン化用触媒、木質ガス化用触媒、固体酸化物型燃料電池(SOFC)の燃料極材料等の用途で活性を発揮できる限り限定的ではないが、図1を参照しながら説明すると下記の通りである。
図1はγ-AlとZrOとが複合化した複合酸化物の表面に少なくともNi粒子が分散しているNi/(γ-Al・ZrO)系活性材料(後述する本発明の活性材料)が失活後に酸化処理、還元処理を順次行うことにより元の活性材料に再生する機能を模式的に示す図である。再生サイクルの模式図において、左下のNAZOは本発明の複合酸化物であり、NiAlとγ-AlとZrOとが複合化した複合酸化物を示している。スピネル酸化物は一般にAB(Aは2価金属、Bは3価金属)の組成式で表されるところ、NAZOを構成する酸化物のうちNiAlがスピネル酸化物である(図1左上の結晶構造図)。NAZOは還元されると、NiAlスピネルの結晶からNiが解離し、γ-AlとZrOとが複合化した複合酸化物の表面上に微細なNi粒子として析出して高分散化する。図1に示されるNAZOのエネルギー分散型X線分析装置(EDX)観察像からはスピネル酸化物におけるNiとAlはほぼ同じ場所に分布しているが、スピネルの結晶からNiが解離した後ではNiはNi粒子として分散していることが分かる。このように、Ni粒子が高分散化した状態において上記各用途における活性を発揮する。他方、Ni粒子がNiAlスピネルの結晶から解離した状態から酸化すると、NiはNiOとなり、次にγ-Alと反応することにより再びNiAlスピネル酸化物を形成する。かかる可逆的な酸化・還元の挙動が後述する本発明の活性材料の再生方法のメカニズムである。酸化・還元の条件の詳細は、後述の項目で説明する。
2.活性材料
本発明の活性材料は、本発明の複合酸化物(NAZO)を還元することによりNiAlスピネルの結晶からNiが解離し、γ-AlとZrOとが複合化した複合酸化物の表面上に微細なNi粒子として析出して高分散化したものであり、γ-AlとZrOとが複合化した複合酸化物の表面に少なくともNi粒子が分散していることを特徴とするNi/(γ-Al・ZrO)系活性材料である。ここで、「Ni/(γ-Al・ZrO)」の表記は、γ-AlとZrOとの複合酸化物の表面にNi粒子が分散していることを意味する。
本発明の活性材料は、従前のNAOの還元物と比較して、活性材料を構成する複合酸化物にZrOを有することにより活性材料の材料強度が向上している。材料強度が向上する理由は本発明の複合酸化物(NAZO)の項目でも述べた通り、ZrOは単斜晶(モノクリニック)、正方晶(テトラゴナル)、立方晶(キュービック)等の複数の結晶系を有する点で、活性材料に応力が加わった際に結晶系が変化することにより応力緩和できることによると考えられる。特に正方晶(t-ZrO)から単斜晶(m-ZrO)への結晶系の変化は体積膨張を伴うことにより、活性材料に応力が加わることによる割れ等の進行を抑制して材料強度を高める効果があると考えられる。また、立方晶(キュービック)は高温で安定であるため前記相変化以外の点でも強度向上に寄与すると考えられる。
また、本発明の活性材料はZrOを有する点で、ZrOは酸素欠陥を通じた酸素イオン伝導性を有するため、活性点であるNi粒子と接するZrOが触媒反応におけるプロモーターとして作用し、特に炭化水素改質用触媒、メタン化用触媒、木質ガス化用触媒等の用途で従前のNAOの還元物と比較してより優れた活性を発揮することができる。更に固体酸化物型燃料電池(SOFC)の燃料極材料としても使用できる。
なお、本発明の活性材料としては、γ-AlとZrOとの複合酸化物の表面に少なくともNi粒子が分散したNi/(γ-Al・ZrO)系活性材料であれば限定されないが、応用態様も含めて例えば、
(1)(γ-Al・ZrO)表面にNi粒子が分散した活性材料、
(2)(γ-Al・ZrO)表面に少なくともNi粒子及び白金族粒子Mが分散したNi,M/(γ-Al・ZrO)系活性材料(但し、白金族粒子MはRu粒子、Rh粒子、Pd粒子、Os粒子、Ir粒子及びPt粒子からなる群から選択される少なくとも一種)、
(3)上記(2)において、更に金属元素Mが酸化物(M)(但し、xは金属元素Mに対応する酸素量を示す)の状態で複合化したNi,M/(γ-Al・ZrO・M)系活性材料(但し、Mは、Ti、Hf、Ce、Se、Y、La、Sm、Ca、Mg、Sr、及びBaからなる群から選択される少なくとも一種)、
等が挙げられる。
つまり、Ni/(γ-Al・ZrO)系活性材料の用語は、(γ-Al・ZrO)表面にNi粒子のみが分散した上記(1)の態様に加えて、白金族粒子Mが更に分散した上記(2)の態様、及び上記(2)において更に金属元素Mが酸化物(M)(但し、xは金属元素Mに対応する酸素量を示す)の状態で複合化した上記(3)の態様も包含する。
炭化水素改質用触媒としては、例えば、上記(1)の(γ-Al・ZrO)表面にNi粒子が分散した触媒であれば、スピネル酸化物であるNiAlを含むNAZOを800~900℃で還元することによりNiがスピネル構造から解離し、(γ-Al・ZrO)表面に微細なNi粒子が高分散した触媒が挙げられる。
上記(2)の更に白金族粒子Mが分散した触媒であれば、NAZOに更に白金族粒子Mを添加した原料(MがRu粒子の場合はRNAZO)を還元することにより(γ-Al・ZrO)表面に微細なNi粒子と白金族粒子Mとが高分散した触媒が挙げられる。この触媒の場合も、還元によりNi及び白金族粒子Mがスピネル構造から解離し、(γ-Al・ZrO)表面に微細なNi粒子及び白金族粒子Mが分散した触媒となる。
白金族粒子MはPt、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、からなる群から選択される少なくとも一種であればよいが、その中でも還元状態において、Niと容易に合金化しNi-Ruを形成することや、他の白金族金属元素よりもコスト性に優れるなどの観点からRu粒子が好ましい。白金族粒子Mが更に分散されていることにより、改質活性の向上、改質時の炭素析出耐性の向上等の効果が得られる。
上記(3)の更に金属元素Mが酸化物(M)(但し、xは金属元素Mに対応する酸素量を示す)の状態で複合化した触媒であれば、上記(2)の触媒の原料(例えばRNAZO)に金属粒子Mを更に添加することにより、(γ-Al・ZrO・M)表面に微細なNi粒子に加えて微細な白金族粒子が分散した触媒が挙げられる。ここで、金属粒子Mはそれ自体は活性を有さず、強度の向上及び触媒活性をより高める効果がある。
SOFCの燃料極材料としても上記例示した(1)~(3)の活性材料が使用できる。なお、SOFCの燃料極は、一般に上記(1)~(3)のいずれかの活性材料、Ni及び電解質(YSZなど)を含む多孔質サーメットの状態で使用される。よって、燃料極を得る際は、上記(1)~(3)のいずれかの原料(例えばNAZO、RNAZO等)と、NiOと、電解質(YSZなど)とを含む多孔質サーメットを公知の方法により作製後、それを還元処理することによって製造することができる。
本発明の活性材料は、例えば上記炭化水素改質用触媒、SOFCの燃料極材料等として用いることにより、活性材料に少なくとも熱が加わることによって(γ-Al・ZrO)表面にNi粒子の凝集が生じて活性が低下する。図1の再生サイクルの模式図において、右下の「Niの凝集」は活性が低下した状態を示している。本発明では、例えば上記例示した各用途において触媒活性や燃料極性能が使用開始時(初期)から低下したものを失活材料と称するが、完全に活性をなくした態様だけでなく、少なくとも初期から比べてNi粒子の凝集が生じて活性が低下したと認められる態様のものは本発明における失活材料に包含される。なお、炭化水素改質用触媒の場合は、活性が低下した失活触媒をそのまま後述する本発明の再生方法に適用すればよく、SOFCの燃料極材料の場合は、失活材料を含む多孔質サーメット自体をそのまま本発明の再生方法に適用することができる。
3.活性材料の再生方法
本発明の活性材料の再生方法は、失活材料から活性材料を再生する方法であって、
前記活性材料は、(γ-Al・ZrO)表面に少なくともNi粒子が分散したNi/(γ-Al・ZrO)系活性材料であり、
前記失活材料は、前記活性材料に少なくとも熱が加わることによって前記(γ-Al・ZrO)表面に前記Ni粒子の凝集が生じている材料であり、
(1)前記失活材料を酸化することにより、NiAl構造を有するスピネル酸化物を生じさせる工程1、
(2)前記スピネル酸化物を還元することにより、前記活性材料を得る工程2、
を有することを特徴とする。
上記特徴を有する本発明の再生方法によれば、(γ-Al・ZrO)表面に少なくともNi粒子が分散したNi/(γ-Al・ZrO)系活性材料を炭化水素改質用触媒、SOFCの燃料極材料等として用いることにより活性材料に少なくとも熱が加わることによって(γ-Al・ZrO)表面にNi粒子の凝集が生じた材料(失活材料)を、酸化及び還元の工程を含む簡便な処理に供することで活性材料に再生させることができる。失活材料に対する酸化は、700℃以上の温度で行うことが好ましい。また、酸化に続く還元は、500℃以上且つ1分以上の条件で行うことが好ましい。本発明の活性材料は、失活後も簡便な処理により活性材料に再生させることができる点で有用性が高く、メンテナンスフリーな分散型電源の改質器への応用も期待できる。
なお、本発明の再生工程が適用できる失活材料は、(γ-Al・ZrO)表面に少なくともNi粒子が分散した活性材料〔Ni/(γ-Al・ZrO)系活性材料〕を例えば炭化水素改質用触媒、SOFCの燃料極材料等として用いることにより、活性材料に少なくとも熱が加わることによって(γ-Al・ZrO)表面にNi粒子の凝集が生じた(すなわち失活した)材料である。ここで、Ni/(γ-Al・ZrO)系活性材料の用語について、(γ-Al・ZrO)表面にNi粒子のみが分散した上記(1)の態様に加えて、白金族粒子Mが更に分散した上記(2)の態様、白金族粒子Mが(γ-Al・ZrO・M)上に分散した上記(3)の態様も包含する点は前述の通りである。
以下、本発明の活性材料の再生方法を工程ごとに説明する。
工程1(失活材料を酸化する工程)
工程1では、失活材料を酸化することにより、NiAl構造を有するスピネル酸化物を生じさせる。
酸化工程は、失活材料を酸化することによりNiAl構造を有するスピネル酸化物を生じさせる工程であればよく、酸化方法は限定的ではないが、本発明では酸化ガスとして空気をNiの酸化に必要な量以上で供給して失活材料と接触酸化させる方法が好ましい。酸化工程は、図1の再生サイクルの模式図において、右下の「Niの凝集」(失活状態)からZNAOを生じさせる工程である。
(炭化水素改質用触媒用途の場合)
酸化工程は、炭化水素改質用触媒の用途で上記(1)の材料の場合には、800℃以上の温度で行うことが好ましく、800~900℃がより好ましく、850~900℃が更に好ましい。酸化工程に要する時間は酸化ガスの流量、温度等によって異なるが、上記方法によって酸化させる場合には、2時間以上が好ましく、2~8時間がより好ましい。
他方、炭化水素改質用触媒の用途で上記(2)又は(3)の材料の場合には、750℃以上の温度で行うことが好ましく、750~900℃がより好ましく、750~800℃が更に好ましい。酸化工程に要する時間は酸化ガスの流量、温度等によって異なるが、上記方法によって酸化させる場合には、2時間以上が好ましく、2~8時間がより好ましい。つまり、白金族粒子Mを含む場合には、白金族粒子Mを含まない場合よりも再生処理のための酸化温度を低く設定することができる。
(SOFCの燃料極材料用途の場合)
酸化工程は、燃料極材料用途で上記(1)の材料の場合には、750℃以上の温度で行うことが好ましく、750~1000℃がより好ましく、800~900℃が更に好ましい。酸化工程に要する時間は酸化ガスの流量、温度等によって異なるが、上記方法によって酸化させる場合には、1分以上が好ましく、3~60分がより好ましい。
他方、燃料極材料用途で上記(2)又は(3)の材料の場合には、700℃以上の温度で行うことが好ましく、700~900℃がより好ましく、750~850℃が更に好ましい。酸化工程に要する時間は酸化ガスの流量、温度等によって異なるが、上記方法によって酸化させる場合には、1分以上が好ましく、3~60分がより好ましい。つまり、白金族粒子Mを含む場合には、白金族粒子Mを含まない場合よりも再生処理のための酸化温度を低く設定することができる。
上記酸化工程により、凝集したNi粒子は先ず酸化ニッケルの状態となり、次いでγ-Alと反応して再びNiAl構造を有するスピネル酸化物の状態となる。このとき上記(2)、(3)の材料の場合には、白金族粒子Mはスピネル酸化物の構造中には取り込まれずスピネル酸化物の表面に残るものと推測される。
工程2(還元により活性材料を得る工程)
工程2では、第1工程で生じさせたスピネル酸化物を還元することにより、活性材料〔Ni/(γ-Al・ZrO)系活性材料〕を再生する。
還元工程は、工程1で生じさせたスピネル酸化物(白金族粒子Mがスピネル酸化物の表面に残っている場合も含む)を還元することにより、失活前の活性材料〔Ni/(γ-Al・ZrO)系活性材料〕の状態に再生する工程であれば限定的ではないが、本発明では還元ガスとして水素を10ml・min-1以上の流量で供給して活性材料の状態に再生させる方法が好ましい。なお、還元ガスとして外部から加える水素を利用しなくても、炭化水素改質用触媒用途の場合には、炭化水素の改質ガスにより自己改質還元することも可能である。同様に、SOFCの燃料極材料用途においても、炭化水素の改質により内部改質還元することも可能である。場合、改質ガス中の水素濃度が20mol%以上で還元可能であり、理想的には水素濃度が40mol%以上が好ましい。還元工程は、図1の再生サイクルの模式図において、左下のNAZOから還元によりNAZOをNi/(γ-Al・ZrO)系活性材料に再生する工程である。
(炭化水素改質用触媒用途の場合)
還元工程は、炭化水素改質用触媒の用途で上記(1)の材料の場合には、800℃以上の温度で行うことが好ましく、800~950℃がより好ましく、850~950℃が更に好ましい。還元工程に要する時間は還元ガスの流量、温度等によって異なるが、上記方法によって還元させる場合には、1分以上が好ましい。
他方、炭化水素改質用触媒の用途で上記(2)又は(3)の材料の場合には、700℃以上の温度で行うことが好ましく、700~850℃がより好ましく、750~800℃が更に好ましい。還元工程に要する時間は還元ガスの流量、温度等によって異なるが、上記方法によって還元させる場合には、1分以上が好ましい。つまり、白金族粒子Mを含む場合には、白金族粒子Mを含まない場合よりも再生処理のための還元温度を低く設定することができる。この理由としては、白金族粒子Mを含む場合には、白金族粒子M上に吸着した水素原子が解離して生成した原子状水素が白金族粒子Mの近傍のNiの還元頻度を向上させることで還元速度が速くなり、還元温度が低くなるものと推測される。
(SOFCの燃料極材料用途の場合)
還元工程は、燃料極材料用途で上記(1)の材料の場合には、550℃以上の温度で行うことが好ましく、650~1000℃がより好ましく、700~900℃が更に好ましい。還元工程に要する時間は還元ガスの流量、温度等によって異なるが、上記方法によって還元させる場合には、1分以上が好ましい。
他方、燃料極材料用途で上記(2)又は(3)の材料の場合には、500℃以上の温度で行うことが好ましく、600~950℃がより好ましく、650~850℃が更に好ましい。還元工程に要する時間は還元ガスの流量、温度等によって異なるが、上記方法によって還元させる場合には、1分以上が好ましい。つまり、白金族粒子Mを含む場合には、白金族粒子Mを含まない場合よりも再生処理のための還元温度を低く設定することができる。
以下、調製例及び試験例を示して本発明を具体的に説明する。但し、本発明はこれらの例示的記載に限定されない。
調製例1~6(NAO複合酸化物前駆体、NAZO複合酸化物前駆体の調製)
(調製例1:比較品)1:2NAO(モル比はNi:Al=1:2)
(調製例2:比較品)1:10NAO(モル比はNi:Al=1:10)
(調製例3:比較品)1:20NAO(モル比はNi:Al=1:20)
(調製例4:実施品)1:2:3NAZO(モル比はNi:Al:Zr=1:2:3)
(調製例5:実施品)1:3:3NAZO(モル比はNi:Al:Zr=1:3:3)
(調製例6:実施品)1:5:5NAZO(モル比はNi:Al:Zr=1:5:5)
の各複合酸化物前駆体を調製した。
各前駆体の調製方法は下記の通りである。
硫酸ニッケル6水和物(NiSO・6HO)αg、硫酸アルミニウム8水和物(Al(SO・HO)βg、硫酸ジルコニウム4水和物(Zr(SO・4HO)γgを水Xgに加熱・撹拌しながら溶解した。これにより硫酸NiAlZr混合溶液を得た。水酸化物を作製するためのアルカリ源として25%水酸化ナトリウム溶液を用意した。300gの水を入れたビーカーに硫酸NiAlZr混合溶液を2時間かけてポンプで滴下した。混合溶液滴下中は、ビーカー溶液内のpHが7に維持されるように25%水酸化ナトリウム溶液をポンプで滴下した。反応温度は90℃で撹拌は800rpmで反応を行った。滴下終了後、温度及び撹拌を維持したまま1時間熟成した。濾過・洗浄を行い110℃で12時間乾燥して、Ygの複合酸化物前駆体(焼成前)を調製した。なお、α、β、γ、X及びYは下記表1に示す通りであった。ここで、調製例1~6では複合酸化物前駆体を目的物としているが、複合酸化物前駆体は別途1000℃、5時間、大気下で焼成することにより各NAO複合酸化物又は各NAZO複合酸化物を得た。
Figure 2023106808000001
調製例7~9(NAZO複合酸化物担持体の調製)
(調製例7:実施品)1:2:3NAZO/α-Al
(調製例8:実施品)1:3:3NAZO/α-Al
(調製例9:実施品)1:5:5NAZO/α-Al
の各NAZO複合酸化物担持体を調製した。なお、「1:2:3NAZO/α-Al」の表記は1:2:3NAZOを担体であるα-Alに担持した担持体を意味する。
各NAZO複合酸化物担持体の調製方法は下記の通りである。
α-Alと水(バインダー)をα-Al:水=9:1の質量比になるように、α-Alを転動させながら水を添加することで造粒した。造粒は室温、約70rpmの回転速度、1時間以上の条件で行うことで一次造粒物(担体前駆体)を得た。得られた一次造粒物に対して、調製例ごとに約2質量%の複合酸化物前駆体を添加し、前記条件の転動造粒を行い、二次造粒物(担持体前駆体)を得た。得られた二次造粒物を1000℃、5時間、大気下で焼成することにより各NAZO複合酸化物担持体を調製した。各NAZO複合酸化物担持体の粒子径は約3~10mmであった。
試験例1(1:5:5NAZO/α-Al の還元前後の外観等)
調製例9で得た1:5:5NAZO/α-Alの還元前後の外観、及び還元前後のエネルギー分散型X線分析装置(EDX)(HITACHI,HD-2700,EDAX Genesis XM2)により観察した微細構造(NiとAlのEDXマッピング結果)を図2に示す。
図2の使用前NAZO/α-Alは還元前のNAZO複合酸化物担持体であり、使用(還元)後NAZO/α-AlはNAZO複合酸化物担持体を850℃において2時間、H還元した還元物(活性材料)である。還元前の外観写真では担持体の表面は白色であるが、還元物ではNi粒子の析出・分散により担持体の表面は灰色に変わっていた。また、EDXマッピング結果においても、還元前はNiとAlの分布は同様であるが、還元物ではNi粒子の析出・分散により5~20nmのNi粒子の存在が確認された。図2には還元物を割った中身が確認できる写真も載せているが、割る際に担持体における表面部分(NAZO複合酸化物)が特に硬く形成されていることが確認された。これは、NAZO複合酸化物がZrOを有することに基づくと考えられる。
試験例2(1:5:5NAZO複合酸化物の繰り返し再生機能評価と結晶構造解析)
1:5:5NAZO(複合酸化物)について、Hを還元剤とした逐次昇温還元(TPR)により還元特性を評価した。1:5:5NAZOの使用量は4.0g、還元ガスHの供給流量は100ml・min-1、温度範囲は室温から850℃まで、10℃・min-1の昇温速度の条件においてTPRを行い、出口ガスは水分を吸湿剤により除去した後、ガス流量を測定してHの消費特性を解析した。
上記TPRにおいて、温度が850℃に到達後、温度を保持したままN置換し、今度は空気を2時間供給することで1:5:5NAZO還元物を酸化した。このTPRによる還元・酸化のサイクルを4回繰り返し、各サイクルのTPR特性を解析した。
また、3回の還元・酸化のサイクルと4回目の還元までを終えた1:5:5NAZO還元物を350℃、500℃、600℃、700℃、780℃及び850℃の各温度において大気雰囲気で2時間酸化した。これらの各温度で酸化した1:5:5NAZOは、X線回折装置(XRD,Rigaku,SmartLab)を用いて線源CuKα,出力40kV,150mA,角速度10°・min-1の条件において結晶構造を調べた。
850℃において2時間、H還元(4回目)した1:5:5NAZO還元物、及び続く5回目の酸化を行った1:5:5NAZO酸化物を走査透過電子顕微鏡(STEM)及びエネルギー分散型X線分析装置(EDX)(HITACHI,HD-2700,EDAX Genesis XM2)により観察し、微細構造を調べた。
<結果及び考察>
(1:5:5NAZOの特性評価)
図3は、1:5:5NAZOの繰り返しTPR特性を示す。
図3より、1:5:5NAZOにおいて、750~800℃のピークはNiAlスピネル酸化物の還元反応(NiAl+H→Ni+Al+HO)を示しており、繰り返し酸化・還元してもNiAlの還元に由来するピークは全て確認された。これは、還元により複合酸化物(NiAl・γ-Al・ZrO)から微細なNi粒子が析出することで生成したNi/(γ-Al・ZrO)が酸化されると再び(NiAl・γ-Al・ZrO)に戻ることを示唆している。
また、1:5:5NAZOにおいて酸化・還元を繰り返してもNiAlの還元ピーク面積は安定していることが確認された。これは、1:5:5NAZOの酸化・還元サイクルが安定していることを意味している。
また、4回目の還元までを終えた1:5:5NAZO還元物を350℃、500℃、600℃、700℃、780℃及び850℃の各温度において大気雰囲気で2時間酸化した結果からは、350℃の酸化では依然としてNi粒子の分散が残っているため1:5:5NAZO粒子は灰色であったが、酸化温度が高くなるにつれて分散していたNi粒子が(NiAl・γ-Al・ZrO)に戻るため、850℃では1:5:5NAZO粒子は水色に変化した。
(1:5:5NAZOのXRDパターン)
図4及び図5は、酸化・還元サイクルでの4回目の酸化を350℃、500℃、600℃、700℃、780℃及び850℃で行った1:5:5NAZOのXRDパターンを示す。
図4より、450℃以上でNi(N,44.5°)の酸化反応が生じ、700℃以上でNiO(NO,43°)とγ-Al(A,37.5°)との反応が生じることにより対応するピーク高さがともに減少し、850℃ではNiAl(S,19.2°)が生じたことがピークの出現により確認された。これにより、1:5:5NAZOの酸化・還元による再生機能が確認された。
図5より、1:5:5NAZOを構成するZrOの結晶系としては、単斜晶(モノクリニック,27.2°)と正方晶(テトラゴナル,33°及び35.4°)とが存在することが確認された。
(4回目の還元後、4回目の酸化後の1:5:5NAZOのSTEM,EDX観察像)
図6は、850℃で2時間還元した1:5:5NAZO還元物のSTEM及びEDX観察像を示す。還元された1:5:5NAZOの表面には、NiとAlは必ずしも同じ場所には存在せず、約5~10nmの微細なNi粒子が確認され、高い分散性を示していることが確認された。
図7は、1:5:5NAZO酸化物のSTEM及びEDX観察像を示す。図6とは対照的に1:5:5NAZOの表面には、NiとAlはほぼ同じ場所に分布しており、Ni/(γ-Al・ZrO)が酸化されると再び(NiAl・γ-Al・ZrO)に戻ることを示唆していることが確認された。
試験例3(1:2:3NAZO/α-Al 及び1:3:3NAZO/α-Al の強度特性評価)
1:2:3NAZO/α-Al担持体及び1:3:3NAZO/α-Al担持体の強度特性をAl(担体)造粒物及び1:2NAO複合酸化物造粒物の強度特性との対比において評価した。各担持体及び各造粒物の大きさは同程度であった。各造粒物1つを二枚のセラミック板で挟み、互いの板を平行に保ったまま片方の板を押し込むことにより、造粒物が圧壊するまでに加えられる力の最大値を測定する強度試験を行った。
強度試験(圧縮試験)結果を図8に示す。図8より、Al(担体)造粒物及び1:2NAO造粒物の圧壊強度に対して、1:2:3NAZO/α-Al担持体及び1:3:3NAZO/α-Al担持体の圧壊強度は5倍以上であることが確認された。これは、NAZO複合酸化物がZrOを有することにより、従前のNAO複合酸化物、及びAl(担体)よりも材料強度が高いことを意味している。
試験例4(NAOとの対比によるNAZOのLNG改質活性評価)
複合酸化物として1:10NAO、1:20NAO、1:5:5NAZO、1:3:3NAZO、及び1:2:3NAZOをそれぞれ1.0gずつ用意した。各複合酸化物は、Hガスを30分以上供給することにより還元してメタン改質触媒とした。
各メタン改質触媒を管状炉に充填し、850℃に加熱後、体積比でLNG:水蒸気=1:2.9、各メタン改質触媒の質量ベースで空間速度SV=6700Lkg-1-1の条件でLNG改質活性を調査した。具体的には、温度は850℃~350℃の所定の温度において、LNG流量:111ml/min、水蒸気流量:0.26g/min、N流量:150ml/minの条件でLNG改質活性を調査した。
各メタン改質触媒のLNG改質速度のアレニウスプロットを図9に示す。図9より、Ni量が同条件である場合には、NAZOはNAOと同等以上のLNG改質活性を有することが確認された。また、図9より、1:5:5NAZOと1:20NAOとは、活性金属であるNiの量が同じであるが、1:5:5NAZOは1:20NAOよりもメタン改質活性が高いことが確認された。この結果は、NAZOがZrOの高い酸素イオン伝導性によって、メタン改質における酸素の移動及び反応が促進される効果(プロモーターの効果)を有することを示唆している。
試験例5(NAZOの木質ガス化活性評価)
複合酸化物としてRNAO、及び1:3:3NAZOを用意した。各複合酸化物は、Hガスを30分以上供給することにより還元して木質ガス化触媒とした。また、従前の木質ガス化触媒としてPt/γ-Alを用意した(Pt/γ-Alはγ-Al担体へのPt担持触媒である)。
各木質ガス化触媒を活性金属量が等しくなるように管状炉に充填し、850℃に加熱後、ヒノキチップを原料としガス化剤に空気を用いた外部加熱により温度制御した条件で木質ガス化活性を調査した。具体的には、温度は850℃~350℃の所定の温度において、空気流量:180ml/min、バイオマス:6gh-1の条件でヒノキチップをガス化し、生じたガスの組成を分析することで木質ガス化活性を調査した。
各木質ガス化触媒、及び触媒なしのガス化(C転化)速度のアレニウスプロットを図10に示す。図10より、NAZOはNAOと同等の木質ガス化活性(タール改質活性)を有することが確認された。

Claims (10)

  1. NiAlとγ-AlとZrOとが複合化した複合酸化物であって、還元することにより活性材料となることを特徴とする複合酸化物。
  2. γ-AlとZrOとが複合化した複合酸化物の表面に少なくともNi粒子が分散していることを特徴とするNi/(γ-Al・ZrO)系活性材料。
  3. 更に白金族粒子Mが分散しているNi,M/(γ-Al・ZrO)系活性材料である、請求項2に記載の活性材料。
  4. 前記白金族粒子Mは、Ru粒子である、請求項3に記載の活性材料。
  5. 更に金属元素Mが酸化物の状態で複合化したNi,M/(γ-Al・ZrO・M)系活性材料(但し、xは金属元素Mに対応する酸素量を示す)である、請求項3又は4に記載の活性材料。
  6. 前記Mは、Ti、Hf、Ce、Se、Y、La、Sm、Ca、Mg、Sr、及びBaからなる群から選択される少なくとも一種である、請求項5に記載の活性材料。
  7. 炭化水素改質用触媒、メタン化用触媒、木質ガス化用触媒及び固体酸化物型燃料電池(SOFC)の燃料極材料からなる群から選択される少なくとも一種である、請求項2~6のいずれかに記載の活性材料。
  8. 失活材料から活性材料を再生する方法であって、
    前記活性材料は、γ-AlとZrOとが複合化した複合酸化物の表面に少なくともNi粒子が分散しているNi/(γ-Al・ZrO)系活性材料であり、
    前記失活材料は、前記活性材料に少なくとも熱が加わることによって前記γ-Al・ZrOの表面に前記Ni粒子の凝集が生じている材料であり、
    (1)前記失活材料を酸化することにより、NiAl構造を有するスピネル酸化物を生じさせる工程1、
    (2)前記スピネル酸化物を還元することにより、前記活性材料を得る工程2、
    を有することを特徴とする活性材料の再生方法。
  9. 前記酸化は、700℃以上の温度で行う、請求項8に記載の再生方法。
  10. 前記還元は、500℃以上且つ1分以上の条件で行う、請求項8又は9に記載の再生方法。
JP2022007756A 2022-01-21 2022-01-21 NiAl2O4とγ-Al2O3とZrO2とが複合化した複合酸化物、当該複合酸化物の還元物である活性材料、及び当該活性材料の再生方法 Pending JP2023106808A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2022007756A JP2023106808A (ja) 2022-01-21 2022-01-21 NiAl2O4とγ-Al2O3とZrO2とが複合化した複合酸化物、当該複合酸化物の還元物である活性材料、及び当該活性材料の再生方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2022007756A JP2023106808A (ja) 2022-01-21 2022-01-21 NiAl2O4とγ-Al2O3とZrO2とが複合化した複合酸化物、当該複合酸化物の還元物である活性材料、及び当該活性材料の再生方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2023106808A true JP2023106808A (ja) 2023-08-02

Family

ID=87473712

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2022007756A Pending JP2023106808A (ja) 2022-01-21 2022-01-21 NiAl2O4とγ-Al2O3とZrO2とが複合化した複合酸化物、当該複合酸化物の還元物である活性材料、及び当該活性材料の再生方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2023106808A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Zhang et al. A review of CH4CO2 reforming to synthesis gas over Ni-based catalysts in recent years (2010–2017)
KR101994152B1 (ko) 탄소 침적의 감소를 위해, 금속이온이 치환된 페로브스카이트 금속산화물 촉매 및 이의 제조 방법, 그리고 이를 이용한 메탄 개질 반응 방법
JP4988552B2 (ja) 炭化水素の蒸気改質によって水素を生成するための触媒
CN108654592B (zh) 一种钙钛矿催化剂及其制备方法和原位测试方法
CN104080530B (zh) 用于重整烃的含六铝酸盐的催化剂和重整方法
US20100298131A1 (en) Catalyst For Hydrogen Production By Autothermal Reforming, Method Of Making Same And Use Thereof
Yin et al. Double adjustment of Co and Sr in LaMnO3+ δ perovskite oxygen carriers for chemical looping steam methane reforming
US7001586B2 (en) CO-free hydrogen from decomposition of methane
US10010876B2 (en) Catalyst for high temperature steam reforming
Li et al. Design of active and stable bimodal nickel catalysts for methane reforming with CO2
Zeng et al. Ni–Ce–Al composite oxide catalysts synthesized by solution combustion method: Enhanced catalytic activity for CO methanation
JP6187282B2 (ja) 炭化水素改質触媒
Al-Fatesh et al. Barium-promoted yttria–zirconia-supported Ni catalyst for hydrogen production via the dry reforming of methane: role of barium in the phase stabilization of cubic ZrO2
EP4129920A1 (en) Reducing agent, and method for producing gas
WO2015103591A1 (en) Mixed-conductor enhanced composite and core-shell oxides for cyclic redox production of fuels and chemicals
KR102035714B1 (ko) 탄화수소 개질용 니켈 촉매
EP1449581B1 (en) Catalyst for steam reforming containing nickel, magnesium and aluminium, process for producing the catalyst, and process for producing hydrogen using the catalyst
US20220288568A1 (en) Mesoporous support-immobilized metal oxide-based nanoparticles
CN111604045A (zh) 一种镍基氧空位载体催化剂及其制备方法和应用
Wang et al. Double adjustment of Ni and Co in CeO2/La2Ni2-xCoxO6 double perovskite type oxygen carriers for chemical looping steam methane reforming
Tu et al. Synthesis of flowerlike ceria–zirconia solid solution for promoting dry reforming of methane
Namvar et al. Effect of the Rare Earth Metals (Tb, Nd, Dy) addition for the modification of nickel catalysts supported on alumina in CO2 Methanation
Rao et al. A nickel-modified perovskite-supported iron oxide oxygen carrier for chemical looping dry reforming of methane for syngas production
US6995115B2 (en) Catalyst for the generation of CO-free hydrogen from methane
KR102092736B1 (ko) 탄소 침적을 감소시킬 수 있는, 금속이온이 치환된 페로브스카이트 금속산화물 촉매의 제조 방법 및 이를 이용한 메탄 개질 반응 방법