JP2023102177A - 絶縁電線、コイル、回転電機および電気・電子機器 - Google Patents

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Abstract

【課題】乾燥条件下における部分放電開始電圧を効果的に高めることができる絶縁電線、及び、この絶縁電線を用いたコイル、回転電機及び電気・電子機器を提供する。【解決手段】平角導体と、当該平角導体の外周を被覆する絶縁皮膜とを有する絶縁電線であって、前記絶縁電線の少なくとも1面において、前記絶縁皮膜が次の(a)~(c)を満たし:(a)厚さの最小値が75μm以上350μm以下、(b)厚さの最大値と最小値の差が10μm以下、(c)厚さの最小値を最大値で除した値が0.900越え1.000以下、前記(a)~(c)を満たす面同士を重ね合わせたときに生じる空隙の大きさが20μm以下である、絶縁電線。【選択図】なし

Description

本発明は、絶縁電線、コイル、回転電機および電気・電子機器に関する。
高速スイッチング素子、インバータモーター、変圧器等の電気・電子機器用コイルには、マグネットワイヤとして、線状金属導体の外周面に樹脂製の絶縁皮膜を備えた絶縁電線が用いられている。絶縁電線の絶縁皮膜は、熱硬化性樹脂を塗布・焼付けしたり、熱可塑性樹脂を押出被覆したり、あるいはこれらを組み合わせたりして形成されている。
特に近年、エネルギー資源の枯渇や環境問題を背景にハイブリッド自動車や電気自動車など、電気モータを動力とした車両や輸送機が急速に普及している。これらの動力性能や燃費向上などの観点から、搭載される電気モータには高出力化と小型化が要求されている。
導体を被覆する絶縁皮膜の視点から、絶縁電線の性能や使い勝手を改良する技術は、古くから多数報告されている。例えば特許文献1には、断面矩形導体上に、被覆層として、少なくとも1層の熱硬化性樹脂層および少なくとも1層の熱可塑性樹脂層をこの順に有する絶縁電線であって、該被覆層の厚さが、該断面矩形導体上の4つの辺部上に形成される各々の辺において、最大値と最小値の差がいずれも20μm以下であって、かつ全ての辺の被覆層の厚さの最も大きな値を最も小さな値で除した値が1.3以上であることを特徴とする絶縁電線が開示されている。特許文献1記載の技術によれば、ステータのスロット断面積に対する導体の断面積の比率(占積率)を高めることができ、また、高い圧力でコイル成型した場合にも皮膜形状の変化が生じにくい絶縁電線を提供できるとされる。
また特許文献2には、扁平な断面形状を有する平角導線と、前記平角導線の外周面を被覆するポリアミドイミド樹脂で形成された厚さが1.5μm以上5μm以下の樹脂絶縁層と、を備えた絶縁電線であって、前記絶縁電線をJISC3216-3:2011に基づいて急激伸張試験した後の側面視での破断点から長さ4mmの所定幅の部分における前記平角導線の露出率が7%以下であり、且つ微小硬度計により求められる前記樹脂絶縁層のヤング率が9.0×10N/mm以上であり、前記樹脂絶縁層の厚さにおいて、長辺中央対応部分、長辺端対応部分、角対応部分、及び短辺対応部分の部分間の厚さの差が3μm以下である絶縁電線が開示されている。特許文献2記載の技術によれば、平角導線への樹脂絶縁層の密着性に優れ、樹脂絶縁層の厚さの均一性が高く、且つ耐外傷性に優れる絶縁電線が提供できるとされる。
国際公開第2017/142036号 特開2020-155421号公報
自動車などに搭載される電気モータは、通常はエンジンルームに搭載され、厳しい高温環境に晒される。また、電気モータの高出力化と小型化も、電気モータを高温にする一因となる。本発明者は、このような高温環境では空気が乾燥状態となり、絶縁皮膜も乾燥状態となることに着目し、絶縁電線の乾燥環境下における部分放電開始電圧をより効果的に高めることができれば、電気モータのさらなる性能の向上に貢献できるとの着想に至った。
本発明は、乾燥条件下における部分放電開始電圧を効果的に高めることができる絶縁電線、及び、この絶縁電線を用いたコイル、回転電機及び電気・電子機器を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく検討を重ねた。その結果、平角導体を用いた絶縁電線において、絶縁皮膜の厚さを所定範囲内で厚膜に制御した上で、絶縁電線を重ね合わせたときに生じる絶縁皮膜間の空隙の大きさについては、従来よりも格段に抑えることにより、乾燥条件下における部分放電開始電圧を効果的に高めることができることを見出した。
本発明は、これらの知見に基づきさらに検討を重ね、完成されるに至ったものである。
すなわち、本発明の上記課題は、以下の手段によって解決された。
〔1〕
平角導体と、当該平角導体の外周を被覆する絶縁皮膜とを有する絶縁電線であって、
前記絶縁電線の少なくとも1面において、前記絶縁皮膜が次の(a)~(c)を満たし:
(a)厚さの最小値が75μm以上350μm以下、
(b)厚さの最大値と最小値の差が10μm以下、
(c)厚さの最小値を最大値で除した値が0.900越え1.000以下、
前記(a)~(c)を満たす面同士を重ね合わせたときに生じる空隙の大きさが20μm以下である、絶縁電線。
〔2〕
前記絶縁皮膜がエナメル層を含む、〔1〕に記載の絶縁電線。
〔3〕
前記エナメル層がポリアミドイミド及び/又はポリイミドを含む熱硬化性樹脂層である、〔2〕に記載の絶縁電線。
〔4〕
前記絶縁皮膜が押出層を含む、〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載の絶縁電線。
〔5〕
前記押出層がポリフェニレンスルフィド及び/又はポリエーテルエーテルケトンを含む熱可塑性樹脂層である、〔4〕に記載の絶縁電線。
〔6〕
前記絶縁皮膜が、前記導体を被覆するエナメル層と、当該エナメル層を被覆する押出層とを有する、〔1〕に記載の絶縁電線。
〔7〕
前記エナメル層がポリアミドイミド及び/又はポリイミドを含む熱硬化性樹脂層であり、前記押出層がポリフェニレンスルフィド及び/又はポリエーテルエーテルケトンを含む熱可塑性樹脂層である、〔6〕に記載の絶縁電線。
〔8〕
〔1〕~〔7〕のいずれか1項に記載の絶縁電線を用いたコイル。
〔9〕
前記絶縁電線が、前記(a)~(c)を満たす面同士を重ね合わせて配される、〔8〕に記載のコイル。
〔10〕
〔8〕又は〔9〕に記載のコイルを有する回転電機、電気・電子機器。
本発明ないし明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本発明の絶縁電線、コイル、回転電機および電気・電子機器は、絶縁電線が上記の構造的特徴を有し、乾燥条件下における部分放電開始電圧が効果的に高められる。
図1は、本発明の絶縁電線の一実施形態を示す概略断面図である。 図2は、本発明の絶縁電線の別の実施形態を示す概略断面図である。 図3は、実施例で評価した部分放電開始電圧(PDIV)、及び空隙の測定における2つの絶縁電線の模式的な配置図である。 図4は、本発明の電気・電子機器に用いられるステータの好ましい形態を示す概略斜視図である。 図5は、本発明の電気・電子機器に用いられるステータの好ましい形態を示す概略分解斜視図である。
[絶縁電線]
本発明の絶縁電線は、平角導体と、該導体の外周を覆う絶縁皮膜とを有する。
図1に、本発明の絶縁電線の一実施形態における断面図を示す。絶縁電線1は、平角導体11と、平角導体11の外周面に形成された熱硬化性樹脂層(エナメル層)12とを有する。
また図2に、本発明の絶縁電線の別の実施形態における断面図を示す。この絶縁電線2は、平角導体21と、平角導体21の外周面に形成された熱硬化性樹脂層(エナメル層)22と、当該熱硬化性樹脂層の外周面に形成された熱可塑性樹脂層(押出層)23とを有する。図1、2に示されるように、本発明の絶縁電線の断面形状は、平角導体の断面形状と実質的に相似形である。
なお、本発明ないし本明細書では、絶縁電線の長手方向と直交する断面形状で、導体及び絶縁皮膜を含めた絶縁電線の形状を、単に断面形状と称する場合がある。本発明における断面形状の説明は、単に切断面のみが特定の形状をしていることを意味するのでなく、絶縁電線全体の長手方向に、この断面形状が連続してつながっており、特段の断りがない限り、絶縁電線の長手方向のいずれの部分に対しても、この方向と直交する断面形状は実質的に同じであることを意味する。
(空隙の大きさ)
本発明の絶縁電線は、当該絶縁電線を、後述する(a)~(c)を満たす面同士を重ね合わせたときに生じる空隙の大きさが20μm以下である。当該空隙の大きさを20μm以下にすることにより、乾燥環境下において、空隙に由来する部分放電を十分に抑制することができ、部分放電開始電圧を向上させることができる。上記と同様の観点から、前記空隙の大きさは15μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、7μm以下がさらに好ましく、6μm以下がさらに好ましい。また、前記空隙は無くてもよいが、通常は0.1μm以上であり、0.2μm以上とするのが実際的である。空隙の大きさは、上記の面同士を重ね合わせた絶縁電線の断面観察において、当該面に対して垂直方向における空隙の長さが最大になる当該長さを意味する。この空隙の大きさは、上記の面同士を重ね合わせた絶縁電線の長手方向に沿って、実質的に同じである。前記空隙の大きさは、後述する[実施例]の項に記載の方法により決定される。
本発明ないし本明細書において「絶縁電線の面」とは、絶縁電線の断面形状における長辺又は短辺が絶縁電線の長手方向に連続してつながって形成される面を意味する。したがって、本発明の絶縁電線は4つの面を持つ。また、「面同士を重ね合わせる」とは、面同士を水平ないし略水平に重ね合わせて接触させることを意味する。「面同士を重ね合わせる」形態としては、絶縁電線の断面形状における長辺に対応する面同士を重ね合わせてもよく、短辺に対応する面同士を重ね合わせてもよく、長辺に対応する面と短辺に対応する面とを重ね合わせもよい。後述する(a)~(c)を満たすのが、少なくとも、2つの長辺に対応する2面であり、これら2面同士を重ね合わせたときに、生じる空隙の大きさが20μm以下であることが好ましい。
<導体>
本発明に用いる平角導体としては、従来、絶縁電線で用いられているものを使用することができ、銅線、アルミニウム線等の金属導体が挙げられる。本発明では、銅の平角導体が好ましい。この銅は、溶接時のボイドの発生を防ぐ観点から、酸素含有量が30ppm以下の低酸素銅が好ましく、20ppm以下の低酸素銅または無酸素銅がより好ましい。
なお、導体がアルミニウムの場合、必要な機械強度を考慮したうえで、用途に応じて様々なアルミニウム合金を用いることができる。例えば回転電機のような用途に対しては、高い電流値を得られる純度99.00%以上の純アルミニウムが好ましい。
本発明で使用する平角導体は、長手方向と直交する断面形状が矩形(正方形を含む)である。平角導体を使用することで、巻線時にステータコアのスロットに対する占積率を高めることができる。
平角導体のサイズは用途に応じて設定すればよく特に制限はない。例えば、幅(断面形状における長辺)は1.0~5.0mmとすることができ、1.4~4.0mmとしてもよく、厚み(断面形状における短辺)は0.4~3.0mmとすることができ、0.5~2.5mmとしてもよい。また、平角導体は、断面正方形よりも、断面長方形が一般的である。用途が回転電機の場合には、断面の4隅の面取り(曲率半径r)は、ステータのスロット内での導体占積率を高める観点から、小さい方が好ましい。他方、4隅への電界集中による部分放電現象を抑制する観点からは、曲率半径rは大きい方が好ましい。例えば、曲率半径rは0.6mm以下とすることができ、0.2~0.4mmがより好ましい。
また、複数の導体を撚り合わせ、あるいは、組合せて平角導体を形成してもよい。
<絶縁皮膜>
導体の周囲には絶縁皮膜が形成される。この絶縁皮膜は単層でもよく、2層以上の複層構造であってもよい。本発明の絶縁電線における絶縁皮膜は、ワニスを焼付けてなるエナメル層を含むことが好ましい。また、熱可塑性樹脂を押出被覆した押出層を含むことも好ましい。
前記絶縁皮膜が複層構造である場合、導体と接する内側の層(最内層)をエナメル層(好ましくは熱硬化性樹脂層)とし、当該エナメル層の外周上に熱可塑性樹脂の押出層を設けることが好ましい。特に最内層がイミド結合を有する熱硬化性樹脂を含むことで、導体との密着性および層間密着性をより向上させることができる。
本発明の絶縁電線は、4面のうち少なくとも1面において(好ましくは2面のそれぞれにおいて、より好ましくは長辺に対応する2面又は短辺に対応する2面において、さらに好ましくは3面のそれぞれにおいて、さらに好ましく4面のそれぞれにおいて)、絶縁皮膜が次の(a)~(c)を満たす。
(a)厚さの最小値が75μm以上350μm以下。
(b)厚さの最大値と最小値の差が10μm以下。
(c)厚さの最小値を最大値で除した値が0.900越え1.000以下。
絶縁皮膜の厚さは、絶縁電線の長手方向に直行する面について、マイクロスコープを用いて断面画像を解析することにより決定することができる。絶縁皮膜の厚さの測定では、平角導体の断面形状において、4隅の面取り部分(カーブする部分)は考慮せずに、4つの真っ直ぐな辺に沿った直線を基準として、当該辺に対して垂直方向の、絶縁皮膜の厚さを測定する。
上記(a)の絶縁皮膜の厚さの最小値は、乾燥条件下の部分放電開始電圧をより高め、占積率も向上させる観点から、80~330μmが好ましく、100~320μmがより好ましく、120~310μmがさらに好ましく、140~300μmがさらに好ましい。
上記(b)の、絶縁皮膜の厚さの最大値と最小値の差は、乾燥条件下の部分放電開始電圧をより高める観点から、9μm以下であることが好ましく、8μm以下がより好ましく、7μm以下がさらに好ましく、6μm以下がさらに好ましく、5μm以下がさらに好ましく、4μm以下がさらに好ましく、3μm以下がさらに好ましい。
上記(c)の、絶縁皮膜の厚さの最小値を最大値で除した値は、乾燥条件下の部分放電開始電圧をより高める観点から、0.920以上1.000以下が好ましく、0.930以上1.000以下がより好ましく、0.940以上1.000以下がさらに好ましく、0.950以上1.000以下がさらに好ましく、0.960以上1.000以下がさらに好ましく、0.970以上1.000以下がさらに好ましく、0.980以上1.000以下がさらに好ましく、0.985以上0.999以下がさらに好ましく、0.985以上0.998以下がさらに好ましい。
本発明の絶縁電線は、長手方向と直交する断面形状がドッグボーン形状(エナメル層の形成において発生する形状であり、4隅のコーナー部分の絶縁皮膜が厚膜化した形状、図3参照)であることも好ましい。
また、絶縁皮膜全体において、厚さの最大値を最小値で除した値は、1.3未満であることが好ましく、1.2以下であることがより好ましい。なお、上記絶縁皮膜全体における厚さの最大値と最小値は、同一面における厚さの最大値と最小値であることに限定されず、それぞれ異なる面における厚さの最大値及び最小値であってもよい。また、上記絶縁皮膜全体における厚さの最大値と最小値は、コーナー部を除いた平坦部(例えばドッグボーン形状であれば、コーナー部の盛り上がり部分を除いた平坦部)の絶縁皮膜の厚さの最大値を、同じくコーナー部を除いた平坦部の絶縁皮膜の厚さの最小値で除した値である。
絶縁電線の表面上に金属粉の付着、繊維、樹脂、ボイド(風船状に膨らんで皮膜表面上に凸形状の状態で存在するもの)等の異物が存在する場合、前記(a)~(c)を満たす面同士を重ね合わせると、異物によって絶縁皮膜間に空隙が生じ、乾燥条件下の部分放電開始電圧が低下する要因となり得る。そのため、本発明の絶縁電線の表面上には、高さ20μm以上の異物を全範囲にわたって実質的に含まないことが好ましく、高さ10μm以上の異物を全範囲にわたって実質的に含まないことがより好ましい。
(エナメル層)
前記絶縁皮膜がエナメル層を有する場合、このエナメル層は熱可塑性樹脂層でもよく、熱硬化性樹脂層でもよく、熱硬化性樹脂層であることが好ましい。エナメル層の形成に用いる樹脂は特に限定されない。例えば、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、及びポリエステルイミド(PEsI)などのイミド結合を有する熱硬化性樹脂、ポリウレタン(PU)、熱硬化性ポリエステル(PEst)、H種ポリエステル(HPE)、ポリイミドヒダントイン変性ポリエステル、ポリヒダントイン、ポリベンゾイミダゾール、メラミン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。エナメル層は、ポリイミド、ポリアミドイミド、及びポリエーテルイミドの少なくとも1種を含むことがより好ましく、ポリアミドイミド及び/又はポリイミドを含む熱硬化性樹脂層であることがより好ましい。
前記ポリイミド(PI)の種類は特に限定されず、全芳香族ポリイミドまたは熱硬化性芳香族ポリイミドなど、通常のポリイミドを用いることができる。また、常法により、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミン化合物を極性溶媒中で反応させて得られるポリアミド酸溶液を用い、焼付け時の加熱処理によってイミド化させることによって得られるものを用いることができる。
商業的に入手可能なポリイミド(PI)としては、例えば、Uイミド(商品名、ユニチカ社製)、U-ワニス(商品名、宇部興産社製)等が挙げられる。
前記ポリアミドイミド(PAI)は、他の樹脂に比べ熱伝導率が低く、絶縁破壊電圧が高く、焼付け硬化が可能である。本発明に用い得るポリアミドイミドの種類は特に限定されず、例えば極性溶媒中でトリカルボン酸無水物とジイソシアネート化合物を直接反応させて得たもの、または、極性溶媒中でトリカルボン酸無水物にジアミン化合物を先に反応させて、最初にイミド結合を導入し、次いでジイソシアネート化合物でアミド化して得られるものが挙げられる。
商業的に入手可能なポリアミドイミド(PAI)としては、例えば、HI-406又はHCIシリーズ(いずれも、商品名、日立化成社製)等が挙げられる。
前記ポリエーテルイミド(PEI)の種類は特に限定されず、分子内にエーテル結合とイミド結合を有するポリマーであればよい。
また、ポリエーテルイミドは、例えば、芳香族テトラカルボン酸二無水物と分子内にエーテル結合を有する芳香族ジアミン類を極性溶媒中で反応させて得られるポリアミド酸溶液を用い、被覆する際の焼き付け時の加熱処理によってイミド化させることによって得られるものを用いることもできる。
商業的に入手可能なポリエーテルイミド(PEI)としては、例えば、ULTEM(商品名、SABIC社製)等が挙げられる。
(押出層)
また、絶縁皮膜が押出層を有することも好ましい。押出層は、熱可塑性樹脂を押出被覆してなる絶縁層である。押出層に用いる熱可塑性樹脂は特に限定されず、結晶性であってもよく、非晶性であってもよい。例えば、ポリアミド(PA)(ナイロン)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンエーテル(変性ポリフェニレンエーテルを含む)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、超高分子量ポリエチレン等の汎用エンジニアリングプラスチックの他、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリアリレート(Uポリマー)、ポリアミドイミド、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)(変性ポリエーテルエーテルケトン(変性PEEK)を含む)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、熱可塑性ポリイミド樹脂(TPI)、液晶ポリエステル等のスーパーエンジニアリングプラスチックが挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。押出層はポリフェニレンスルフィド及び/又はポリエーテルエーテルケトンを含む熱可塑性樹脂層であることが好ましい。
商業的に入手可能なポリフェニレンスルフィド(PPS)としては、例えばFZ-2100(商品名、DIC社製)等が挙げられる。また、商業的に入手可能なポリエーテルエーテルケトン(PEEK)としては、例えばキータスパイアKT-820(商品名、ソルベイスペシャルティポリマーズ社製)等が挙げられる。
なお、絶縁皮膜は上述した樹脂の他に、必要に応じて、気泡化核剤、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線防止剤、光安定剤、蛍光増白剤、顔料、染料、相溶化剤、滑剤、強化剤、難燃剤、架橋剤、架橋助剤、可塑剤、増粘剤、減粘剤およびエラストマーなどの各種添加剤を含有してもよい。
[絶縁電線の製造方法]
本発明の絶縁電線は、平角導体の外周面に、絶縁皮膜を形成する工程を経て製造される。絶縁皮膜の形成は、基本的には、絶縁電線の絶縁皮膜の形成において通常用いられる方法を適宜に適用することができる。例えば、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を含有するワニスを塗布・焼付けしてエナメル層を形成することができる。また、熱可塑性樹脂を押出被覆して押出層を形成することもできる。その際に、後述のように、所望の面の絶縁皮膜が上記(a)~(c)を満たすように制御することにより、目的の絶縁電線を得ることができる。
(エナメル層の形成)
絶縁皮膜の一部又は全部をエナメル層とする場合、当該エナメル層は、目的の樹脂のワニス(絶縁ワニス)を調製し、当該ワニスを塗布し、焼付けて形成することができる。その際、平角導体の断面形状と非相似形をしたワニス塗布用ダイスを用いる方法が挙げられる。非相似形とすることにより、目的の面の樹脂流れ等を相殺するように、上記(b)及び(c)を満たす面を作り出すことができる。
ワニス塗布後の焼付けは、常法により行うことができ、例えば焼付け炉で焼付けすることができる。具体的な焼付け条件は、その使用される炉の形状等に左右され一義的に決定できないが、およそ8mの自然対流式の竪型炉であれば、例えば、炉内温度400~650℃にて通過時間を10~90秒とする条件が挙げられる。また、ワニス塗布後のワニスの流れ(ワニスが流動して不均一に分布すること)を抑制することでエナメル層の膜厚差をより確実に抑える観点から、製造スピード(線速)を高く設定することも好ましい。
また、絶縁皮膜を形成するための塗布、焼付けの繰り返し数は、35回以下であることが好ましく、16回以上35回以下であることがより好ましく、15回以上30回以下であることがさらに好ましく、18回以上27回以下であることがさらに好ましい。塗布、焼付けの繰り返し数を上記の範囲内とすることにより、適度な焼付状態を達成でき、また各絶縁層の機械特性を向上できるため、絶縁電線の可とう性が向上すると考えられる。
(樹脂ワニス)
前記樹脂ワニスは、高粘度の樹脂ワニスであることが好ましい。このような高粘度の樹脂ワニスを用いることで、塗布後のワニスの流れを抑制することができ、各面内において、より膜厚差の小さいエナメル層とすることができる。
また前記樹脂ワニスは、樹脂をワニス化させるために有機溶媒(有機溶剤)等を含有する。有機溶媒として、例えば、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)等のアミド系溶媒、N,N-ジメチルエチレンウレア、N,N-ジメチルプロピレンウレア、テトラメチル尿素等の尿素系溶媒、γ-ブチロラクトン、γ-カプロラクトン等のラクトン系溶媒、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート、エチルセロソルブアセテート、エチルカルビトールアセテート等のエステル系溶媒、ジグライム、トリグライム、テトラグライム等のグライム系溶媒、トルエン、キシレン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒、クレゾール、フェノール、ハロゲン化フェノールなどのフェノール系溶媒、スルホラン等のスルホン系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)などが挙げられる。
これらのうち、焼付け時の蒸発を促進させてワニスを素早く硬化させる観点から、前記樹脂ワニスには低沸点の有機溶媒(有機溶剤)が混合されていることが好ましい。
またこれらのうち、加熱による架橋反応の阻害を防ぐ観点から、DMAc、NMP、DMF、N,N-ジメチルエチレンウレア、N,N-ジメチルプロピレンウレア、テトラメチル尿素、及びDMSOなどの非プロトン性溶媒が好ましい。
上記有機溶媒等は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記樹脂ワニスは、必要により、密着助剤、気泡形成用発泡剤、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線防止剤、光安定剤、蛍光増白剤、顔料、染料、相溶化剤、滑剤、強化剤、難燃剤、架橋剤、架橋助剤、可塑剤、増粘剤、減粘剤およびエラストマーなどの各種添加剤を含有してもよい。
(押出層の形成)
平角導体、又は平角導体とその周囲を覆うエナメル層からなる絶縁電線を心線とし、これらと相似形の押出ダイ及び押出機のスクリューを用いて熱可塑性樹脂を押出被覆することにより、押出層を形成することができる。押出被覆の温度は、例えば、200~450℃とすることができる。平角導体とその周囲を覆うエナメル層からなる絶縁電線を心線とする場合は、当該エナメル層においてエナメル層の最大値と最小値の差が所望の小さな差に抑えられていることが好ましい。
また押出被覆に用いるダイスの内部の形状は、ウエルドラインやドッグボーンの形成を抑制すべく、押出被覆される際の樹脂流れを考慮して決定することができる。
[絶縁電線の特性]
本発明の絶縁電線は、乾燥条件下でも部分放電を生じにくく、乾燥条件下における部分放電開始電圧が十分に高い。本発明の絶縁電線において、乾燥条件下における部分放電開始電圧は、1000~3000Vpが好ましく、1200~3000Vpがより好ましく、1250~3000Vpがさらに好ましく、1300~3000Vpが特に好ましい。なお、部分放電開始電圧は、例えば実施例に記載の方法によって測定することができ、また乾燥条件も実施例に記載の条件を用いることができる。
[コイル、回転電機および電気・電子機器]
本発明の絶縁電線は、コイルとして、回転電機、各種電気・電子機器など、電気特性(耐電圧性)と耐熱性を必要とする分野に利用可能である。例えば、本発明の絶縁電線はモーターやトランス等に用いられ、高性能の回転電機、電気・電子機器を構成できる。特にハイブリッド自動車(HV)や電気自動車(EV)などの駆動モーター用の巻線として好適に用いられる。
本発明のコイルは、本発明の絶縁電線をコイル加工して形成したもの、本発明の絶縁電線を曲げ加工した後に所定の部分を電気的に接続してなるもの等が挙げられる。
本発明の絶縁電線をコイル加工して形成したコイルとしては、特に限定されず、長尺の絶縁電線を螺旋状に巻き回したものが挙げられる。このようなコイルにおいて、絶縁電線の巻線数等は特に限定されない。通常、絶縁電線を巻き回す際には鉄芯等が用いられる。
本発明のコイルにおいて、本発明の絶縁電線が前記(a)~(c)を満たす面同士を重ね合わせて配されることが好ましい。当該面同士は、長辺に対応する面同士、又は短辺に対応する面同士であることが好ましい。
本発明の絶縁電線を曲げ加工した後に所定の部分を電気的に接続してなるものとして、回転電機等のステータに用いられるコイルが挙げられる。このようなコイルは、例えば、図4に示されるように、本発明の絶縁電線を所定の長さに切断してU字形状等に曲げ加工して複数の電線セグメント34を作製し、各電線セグメント34のU字形状等の2つの開放端部(末端)34aを互い違いに接続して、作製されたコイル33(図4、図5参照)が挙げられる。
このコイルを用いてなる電気・電子機器としては、特に限定されない。このような電気・電子機器の好ましい一態様として、トランスが挙げられる。また、例えば、図4、図5に示されるステータ30を備えた回転電機(特にHV及びEVの駆動モーター)が挙げられる。この回転電機は、ステータ30を備えていること以外は、従来の回転電機と同様の構成とすることができる。
ステータ30は、電線セグメント34が本発明の絶縁電線で形成されていること以外は従来のステータと同様の構成とすることができる。すなわち、ステータ30は、ステータコア31と、例えば図4に示されるように本発明の絶縁電線からなる電線セグメント34がステータコア31のスロット32に組み込まれ、開放端部34aが電気的に接続されてなるコイル33とを有している。このコイル33は、隣接する融着層同士、あるいは融着層とスロット32とが固着されて固定化された状態となっている。ここで、電線セグメント34は、スロット32に1本で組み込まれてもよいが、好ましくは図4に示されるように2本1組として組み込まれる。このステータ30は、上記のように曲げ加工した電線セグメント34を、その2つの末端である開放端部34aを互い違いに接続してなるコイル33が、ステータコア31のスロット32に収納されている。このとき、電線セグメント34の開放端部34aを接続してからスロット32に収納してもよく、また、絶縁セグメント34をスロット32に収納した後に、電線セグメント34の開放端部34aを折り曲げ加工して接続してもよい。
以下に、本発明を実施例に基づいて、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらの形態に限定されるものではない。
下記の方法により、導体と絶縁皮膜からなる各絶縁電線を作製した。なお、下記に記載する絶縁皮膜の「平均厚さ」は、重ね合わせた面における絶縁皮膜の厚さの最大値と最小値に基づき、[厚さの最大値+厚さの最小値]/2で算出される値とした。
[実施例1]
導体として、断面平角(長辺3.5mm×短辺2.0mmで、四隅の面取りの曲率半径r=0.3mm)の平角導体(酸素含有量15ppmの銅)を用いた。
ポリアミドイミド(PAI)ワニス(型番:HI-406、日立化成社製)を、断面形状が導体と非相似形のダイスを使用して導体の表面に塗布し、炉内温度600℃に設定した炉長8mの自然対流式焼付炉内を、通過時間25秒となる速度で通過させ、これを複数回繰り返すことで、平均厚さ80μmの熱硬化性樹脂層(第1の層)を形成した。こうして、エナメル層からなる絶縁皮膜を有する絶縁電線を得た。この絶縁電線は、4面のうち断面の長辺に対応する1面が、下表に示す絶縁皮膜の状態(上記(a)~(c)を満たす状態)にあった。
[実施例2]
樹脂ワニスをポリイミド(PI)ワニス(型番:Uイミド、ユニチカ社製)として、得られる熱硬化性樹脂層の平均厚さを100μmとした以外は、実施例1と同様にしてエナメル層からなる絶縁皮膜を有する絶縁電線を作製した。この絶縁電線は、4面のうち断面の長辺に対応する1面が、下表に示す絶縁皮膜の状態(上記(a)~(c)を満たす状態)にあった。
[実施例3]
実施例2と同様にしてポリイミド(PI)ワニスの塗布、焼付けを複数回繰り返し、導体の外周上に平均厚さ130μmの熱硬化性樹脂層(第1の層)を形成した。
次いで、第1の層の外周上に、ポリアミドイミド(PAI)ワニス(型番:HI-406、日立化成社製)を、断面形状が導体と非相似形のダイスを使用して塗布し、炉内温度600℃に設定した炉長8mの自然対流式焼付炉内を、通過時間25秒となる速度で通過させ、これを複数回繰り返すことで、平均厚さ20μmの熱硬化性樹脂層(第2の層)を形成した。このようにして、平均厚さが150μmのエナメル層からなる絶縁皮膜を有する絶縁電線を得た。この絶縁電線は、4面のうち断面の長辺に対応する1面が、下表に示す絶縁皮膜の状態(上記(a)~(c)を満たす状態)にあった。
[実施例4]
導体として、断面平角(長辺3.5mm×短辺2.0mmで、四隅の面取りの曲率半径r=0.3mm)の平角導体(酸素含有量15ppmの銅)を用いた。
該平角導体を芯線とし、30mmフルフライトスクリュー(スクリューL/D=25、スクリュー圧縮比=3)を備えた押出機を用いて、押出ダイの温度を400℃として、芯線の外側に、平均厚さ200μmの熱可塑性樹脂層(第1の層)を形成した。熱可塑性樹脂としてはポリエーテルエーテルケトン(商品名:キータスパイアKT-820、ソルベイスペシャルティポリマーズ社製)を使用した。こうして、押出層からなる絶縁皮膜を有する絶縁電線を得た。この絶縁電線は、4面のうち断面の長辺に対応する1面が、下表に示す絶縁皮膜の状態(上記(a)~(c)を満たす状態)にあった。
[実施例5]
実施例1と同様にしてポリアミドイミド(PAI)ワニスの塗布、焼付けを複数回繰り返し、導体の外周上に平均厚さ50μmの熱硬化性樹脂層(第1の層)を形成した。
次いで、第1の層の外周上に、実施例4における押出層の形成と同様にして、ポリフェニレンスルフィド(商品名:FZ-2100、DIC社製)を押出被覆し、平均厚さ150μmの熱可塑性樹脂層(第2の層)を形成した。こうして、平均厚さが200μmの絶縁皮膜(熱硬化性樹脂層及び熱可塑性樹脂層)を有する絶縁電線を得た。この絶縁電線は、4面のうち断面の長辺に対応する1面が、下表に示す絶縁皮膜の状態(上記(a)~(c)を満たす状態)にあった。
[実施例6]
樹脂ワニスをポリエーテルイミド(PEI)ワニス(型番:ULTEM、SABIC社製)として、得られる熱可塑性樹脂層(エナメル層)の平均厚さを5μmとした以外は、実施例1と同様にしてエナメル層(第1の層)を形成した。
次いで、第1の層の外周上に、実施例4における押出層の形成と同様にして、ポリエーテルエーテルケトン(商品名:キータスパイアKT-820、ソルベイスペシャルティポリマーズ社製)を押出被覆し、平均厚さ295μmの熱可塑性樹脂層(第2の層)を形成した。こうして、平均厚さが300μmの絶縁皮膜(熱可塑性樹脂層及び熱可塑性樹脂層)を有する絶縁電線を得た。この絶縁電線は、4面のうち断面の長辺に対応する1面が、下表に示す絶縁皮膜の状態(上記(a)~(c)を満たす状態)にあった。
[実施例7]
樹脂ワニスをポリイミド(PI)ワニス(型番:Uイミド、ユニチカ社製)として、得られる熱硬化性樹脂層(エナメル層)の平均厚さを50μmとした以外は、実施例6と同様にしてエナメル層(第1の層)を形成した。
次いで、第1の層の外周上に、実施例4における押出層の形成と同様にして、ポリエーテルエーテルケトン(商品名:キータスパイアKT-820、ソルベイスペシャルティポリマーズ社製)を押出被覆し、平均厚さ250μmの熱可塑性樹脂層(第2の層)を形成した。こうして、平均厚さが300μmの絶縁皮膜(熱硬化性樹脂層及び熱可塑性樹脂層)を有する絶縁電線を得た。この絶縁電線は、4面のうち断面の長辺に対応する1面が、下表に示す絶縁皮膜の状態(上記(a)~(c)を満たす状態)にあった。
[比較例1]
断面形状が導体と相似形のダイスを使用し、エナメル層の厚さの最大値、最小値、平均厚さを表1に示す通りとしたこと以外は、実施例1と同様にして、エナメル層からなる絶縁皮膜を有する絶縁電線を得た。この絶縁電線は、長辺に対応する2面が下表に示す絶縁皮膜の状態にあった。
[比較例2]
エナメル層の厚さの最大値、最小値、平均厚さを表1に示す通りとしたこと以外は、実施例1と同様にして、エナメル層からなる絶縁皮膜を有する絶縁電線を得た。この絶縁電線は、長辺に対応する2面のすべてが下表に示す絶縁皮膜の状態にあった。
上記で作製した各絶縁電線に対して、下記のようにして、部分放電開始電圧(PDIV)の評価、及び空隙の測定を行った。得られた結果を、下記表1にまとめて示す。
なお、上記で作製した実施例1~7の絶縁電線において、絶縁皮膜全体の厚さの最大値を最小値で除した値は、いずれも1.2以下であった。
<空隙の大きさの測定>
上記各実施例1~7、並びに比較例1及び2の絶縁電線を各2本用意し(1本の絶縁電線を切断して2本とし)、1%伸長した状態で長手方向に、断面形状における長辺に対応する面(各実施例では上記(a)~(c)を満たす面)同士を平行に重ね合わせ、2つのクリップ(商品名:ダブルクリップ、品番:クリ-34、コクヨ社製)を用いて、クリップ間の距離が25mmとなる位置で把持し、重ね合わせた絶縁電線を固定した。上記クリップ間をエポキシ樹脂に包埋し、回転研磨機(ラボポール-30(研磨機)、ラボフォース-100(試料回転装置)、いずれもストルアス社製)を用いて絶縁電線の断面形状の短辺に対応する面側を、当該面に平行に研磨して、上記クリップ間に位置する2本の絶縁電線の断面を露出させた。この断面をマイクロスコープ(品名:DVM5000HD、Leica社製)を用い、倍率400倍で観察して絶縁電線間の距離を測定した。研磨と絶縁電線間の距離の測定を繰り返し、絶縁電線間の距離が最大となったときの当該距離を、空隙の大きさとした。
なお、上記測定に用いたクリップの把持力はおよそ2kgであった。
<部分放電開始電圧(PDIV)の評価>
製造した各絶縁電線の部分放電開始電圧の測定には、部分放電測定器「DAC-PD-3」(総研電気株式会社製、商品名)を用いた。上記各実施例1~7、並びに比較例1及び2の絶縁電線を各2本用意し(1本の絶縁電線を切断して2本とし)、長手方向に、断面形状における長辺に対応する面(各実施例では上記(a)~(c)を満たす面)同士を長さ150mmに亘って重ね合わせた試料を作製した。この2本の導体間に電極を繋ぎ、1kHz正弦波の交流電圧を印加することで測定した。10V/秒で昇圧し、100pC以上の部分放電が1秒当たり1000回以上発生した時点の電圧波高値(ピーク電圧、Vp)を部分放電開始電圧として記録した。
測定環境の温度と湿度は、乾燥条件(25℃、20%RH(相対湿度))とした。ここで、部分放電開始電圧は絶縁皮膜の膜厚と皮膜材料の誘電率にも依存することから、湿潤条件(25℃、65%RH)における部分放電開始電圧も同様に測定し、乾燥条件での部分放電開始電圧を湿潤条件での部分放電開始電圧で除することにより、乾燥環境による部分放電開始電圧の上昇率を算出した。得られた部分放電開始電圧の上昇率を、下記評価基準に基づき評価した。下記評価基準において、「X」とは25℃、20%RHの条件下(乾燥条件下)で測定した部分放電開始電圧を、「Y」とは25℃、65%RHの条件下(湿潤条件下)で測定した部分放電開始電圧を、「X/Y」は乾燥環境による部分放電開始電圧の上昇率をそれぞれ示す。上記のいずれも測定条件においても、測定に用いた各絶縁電線は、測定直前に絶縁電線を110℃に保持した恒温槽内で60分間静置させて絶縁皮膜を乾燥させ(絶縁皮膜中の水分を除去し)、絶縁電線が常温程度に冷えてから速やかに部分放電開始電圧を測定した。
なお、実施例1~7の乾燥条件下における部分放電開始電圧は、いずれも十分に高い値であった。

-評価基準-
A+:X/Yの値が1.1以上
A :X/Yの値が1.06以上、1.1未満
B :X/Yの値が1.03以上、1.06未満
C :X/Yの値が1.03未満
Figure 2023102177000001
上記表1に示されるように、本発明の規定を全て満たす絶縁電線(実施例1~7)は、湿潤条件に比べて乾燥条件において、より高い部分放電開始電圧を示すことがわかった。
1,2 絶縁電線
11,21 平角導体
12,22 熱硬化性樹脂層(エナメル層)
23 熱可塑性樹脂層(押出層)
14 膜厚の最大値
15 膜厚の最小値
16 空隙の大きさ(ギャップ距離)
30 ステータ
31 ステータコア
32 スロット
33 コイル
34 電線セグメント
34a 開放端部

Claims (10)

  1. 平角導体と、当該平角導体の外周を被覆する絶縁皮膜とを有する絶縁電線であって、
    前記絶縁電線の少なくとも1面において、前記絶縁皮膜が次の(a)~(c)を満たし:
    (a)厚さの最小値が75μm以上350μm以下、
    (b)厚さの最大値と最小値の差が10μm以下、
    (c)厚さの最小値を最大値で除した値が0.900越え1.000以下、
    前記(a)~(c)を満たす面同士を重ね合わせたときに生じる空隙の大きさが20μm以下である、絶縁電線。
  2. 前記絶縁皮膜がエナメル層を含む、請求項1に記載の絶縁電線。
  3. 前記エナメル層がポリアミドイミド及び/又はポリイミドを含む熱硬化性樹脂層である、請求項2に記載の絶縁電線。
  4. 前記絶縁皮膜が押出層を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の絶縁電線。
  5. 前記押出層がポリフェニレンスルフィド及び/又はポリエーテルエーテルケトンを含む熱可塑性樹脂層である、請求項4に記載の絶縁電線。
  6. 前記絶縁皮膜が、前記導体を被覆するエナメル層と、当該エナメル層を被覆する押出層とを有する、請求項1に記載の絶縁電線。
  7. 前記エナメル層がポリアミドイミド及び/又はポリイミドを含む熱硬化性樹脂層であり、前記押出層がポリフェニレンスルフィド及び/又はポリエーテルエーテルケトンを含む熱可塑性樹脂層である、請求項6に記載の絶縁電線
  8. 請求項1~7のいずれか1項に記載の絶縁電線を用いたコイル。
  9. 前記絶縁電線が、前記(a)~(c)を満たす面同士を重ね合わせて配される、請求項8に記載のコイル。
  10. 請求項8又は9に記載のコイルを有する回転電機、電気・電子機器。
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