JP2023100569A - 造形液、造形用キット、及び造形物の製造方法 - Google Patents

造形液、造形用キット、及び造形物の製造方法 Download PDF

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晃司 瀧本
Koji Takimoto
慎一郎 佐藤
Shinichiro Sato
圭将 柴
Yoshimasa Shiba
祐樹 新谷
Yuki Shintani
典晃 岡田
Noriaki Okada
雄司 長友
Yuji Nagatomo
巴樹 甲斐
Tomoki Kai
悠貴 高木
Hisataka Takagi
陽一 伊東
Yoichi Ito
剛志 荒生
Tsuyoshi Arao
貴志 松村
Takashi Matsumura
智美 秋枝
Tomomi Akieda
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Abstract

【課題】寸法精度に優れる造形物が得られる造形液等の提供。【解決手段】無機粒子を含む粉体の層に対して付与される造形液であって、前記金属粒子との粉体接触角θが50°以上であり、かつ、次式、γcosθ/η≦1.5(m/s)、を充たす造形液である。前記式中、θは造形液の無機粒子との粉体接触角(°)、γは造形液の23℃における表面張力(mN/m)、ηは造形液の25℃における粘度(mPa・s)を表す。【選択図】なし

Description

本発明は、造形液、造形用キット、及び造形物の製造方法に関する。
近時、金属などからなる複雑で微細な造形物を生産するニーズが高まってきている。このニーズに対応するための技術として、特に高生産性の観点から、バインダージェッティング方式(以下、「BJ方式」と称することもある)で造形した焼結前駆体を粉末冶金法によって焼結し緻密化する方式がある。
BJ方式では一般的に水系の造形液が使用されており、アルミニウム又はマグネシウムのような水との接触を嫌う金属粒子を含む粉体を適用することが困難である。このため、水との接触を嫌う金属粒子の造形液として有機溶剤系の造形液の検討が進められている。しかし、一般的に有機溶剤系の造形液は水系の造形液に比べて金属粒子表面への濡れ性が高いので、狙いの寸法精度の造形物が得られないという問題がある。
この問題を解決するため、有機溶剤系の造形液の金属粒子表面への濡れ性を制御する方法として、例えば、金属粒子を樹脂被覆する方法(例えば、特許文献1参照)、造形液中に有機物粒子を添加する方法(例えば、特許文献2参照)などが提案されている。
本発明は、寸法精度に優れる造形物が得られる造形液を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための手段としての本発明の造形液は、無機粒子を含む粉体の層に対して付与される造形液であって、無機粒子との粉体接触角θが50°以上であり、かつ、次式、γcosθ/η≦1.5(m/s)、を充たす。
ただし、式中、θは造形液の無機粒子との粉体接触角(°)、γは造形液の23℃における表面張力(mN/m)、ηは造形液の25℃における粘度(mPa・s)を表す。
本発明によると、寸法精度に優れる造形物が得られる造形液を提供することができる。
図1Aは、狙い寸法に造形された状態の一例を示す模式図である。 図1Bは、狙い寸法から非造形部への造形液の染み出しが生じた状態の一例を示す模式図である。 図1Cは、狙い寸法から局所的な染み出しが生じた状態の一例を示す模式図である。 図2は、付与する造形液量と造形物の曲げ強度との関係を示すグラフである。 図3Aは、立体造形物の製造装置の動作の一例を示す概略図である。 図3Bは、立体造形物の製造装置の動作の他の一例を示す概略図である。 図3Cは、立体造形物の製造装置の動作の他の一例を示す概略図である。 図3Dは、立体造形物の製造装置の動作の他の一例を示す概略図である。 図3Eは、立体造形物の製造装置の動作の他の一例を示す概略図である。 図4は、立体造形物の製造装置の全体構成を示す装置の正面図(横から見た図)である。 図5は、液滴の吐出によって被吐出媒体がノズル面に付着しうる条件について説明する図である。 図6は、ノズル面を洗浄液へジャボ漬けした実施形態の一例を説明する図である。 図7は、ノズル面を洗浄液噴出機構で洗浄した実施形態の一例を説明する図である。 図8Aは、吐出線のぼやけがないパターン状態(混色していない状態:〇)を示す図である。 図8Bは、吐出線のぼやけがあるパターン状態(混色状態:△)を示す図である。 図8Cは、吐出線のぼやけがかなりあるパターン状態(混色状態:×)を示す図である。 図9は、実施例で用いたノズル面洗浄液噴出機構の一例を示す概略図である。 図10Aは、清掃されたノズル面の状態を示す写真である。 図10Bは、ノズル面に粉体が付着した状態を示す写真である。 図10Cは、移動速度10mm/sで洗浄メンテナンス後のノズル面の状態を示す写真である。 図10Dは、移動速度30mm/sで洗浄メンテナンス後のノズル面の状態を示す写真である。 図10Eは、移動速度50mm/sで洗浄メンテナンス後のノズル面の状態を示す写真である。
(造形液)
本発明の造形液は、無機粒子を含む粉体の層に対して付与される造形液であって、無機粒子との粉体接触角θが50°以上であり、かつ、次式、γcosθ/η≦1.5(m/s)、を充たす。
ただし、式中、θは造形液の無機粒子との粉体接触角(°)、γは造形液の23℃における表面張力(mN/m)、ηは造形液の25℃における粘度(mPa・s)を表す。
ここで、造形液の無機粒子との粉体接触角θの測定に用いる無機粒子としては、造形に用いる無機粒子の種類がわかっている時はその無機粒子を用いる。一方、造形に用いる無機粒子の種類がわからない時にはアルミニウム粒子を用いる。これにより、造形に用いる無機粒子の種類が不明な場合(無機粒子を特定できない場合)であっても、造形液が特定できれば、無機粒子としてアルミニウム粒子を用いて「粉体接触角θ」、及び「γcosθ/η≦1.5」を求めることができる。なお、アルミニウム粒子としては、例えば、東洋アルミニウム株式会社製のALSI3-30Bなどを用いることができる。
従来の金属粒子を樹脂被覆する方法及び造形液中に有機物粒子を添加する方法では、有機溶剤系の造形液を用いると、造形液を乾燥させる工程で発生した有機溶剤の蒸気が造形液を付与していない非造形部における金属粒子の被覆樹脂及び有機物粒子を溶解し、非造形部まで固化してしまい、寸法精度が悪化してしまうという問題がある。
本発明の造形液は、BJ方式に用いられる有機溶剤系の造形液であり、「造形液の無機粒子との粉体接触角θ」と、「造形液の25℃における粘度γ」と、「造形液の23℃における表面張力η」と、「γcosθ/η」とを適正な範囲となるように制御することによって、吐出性が良好であり、非造形部への造形液の染み出しを抑制でき、狙いの寸法精度で曲げ強度の高い造形物を得ることができる。
<造形液の粘度η>
造形液の25℃における粘度ηは、6mPa・s以上が好ましく、12mPa・s以上がより好ましく、15mPa・s以上が更に好ましい。また、50mPa・s以下が好ましく、30mPa・s以下がより好ましく、25mPa・s以下が更に好ましく、21mPa・s以下がより更に好ましく、19mPa・s以下が特に好ましく、18.5mPa・s以下がより特に好ましい。
造形液の粘度ηが、上記範囲であると、インクジェットヘッド等の造形液付与手段からの吐出が安定化し、造形液の正確な吐出により、固化物及び固化物に由来するグリーン体等の焼結前の造形物における曲げ強度がより向上し、造形物の寸法精度が向上する。
造形液の25℃における粘度ηは、例えば、東機産業株式会社製のコーンプレート型粘度計VISCOMETER TV-25を用いて、25℃で測定することができる。
<造形液の表面張力γ>
造形液の23℃における表面張力γは、20mN/m以上が好ましく、22mN/m以上がより好ましく、25mN/m以上が更に好ましく、27mN/m以上が特に好ましい。また、40mN/m以下が好ましく、35mN/m以下がより好ましく、31mN/m以下が更に好ましく、30mN/m以下が特に好ましい。
表面張力γが、上記範囲であると、インクジェットヘッド等の造形液付与手段からの吐出が安定化し、正確な造形液の吐出により、固化物及び固化物に由来するグリーン体等の焼結前の造形物における曲げ強度がより向上し、造形物の寸法精度が向上する。
造形液の23℃における表面張力γは、例えば、協和界面科学株式会社製の自動表面張力計DY-300を用いて、Wilhelmy法(吊り板法)により、23℃で測定することができる。
<造形液の接触角θn(プレート法)>
一般的に有機溶剤系の造形液は水系の造形液に比べて無機粒子表面への濡れ性が高く、造形液の接触角θn(プレート法)は、実質的に15°以下となる。
造形液と金属プレートとの接触角θnは、例えば、協和界面科学株式会社製の接触角計DMs-301を用いて、液滴法により25℃で測定することができる。
金属プレートとしては、ミスミ株式会社製アルミフリープレート A 6061 LNQ-25-10-5を用いる。シリンジに造形液を充填し、自動液滴形成機能を使用して約2.0マイクロリットルの液滴を金属プレート上に滴下し、20秒後の液滴形状からθ/2法で得られた値を接触角θn(プレート法)とする。
<造形液の無機粒子との粉体接触角θ>
造形液の無機粒子との粉体接触角θは50°以上であり、52°以上が好ましく、55°以上がより好ましく、60°以上が更に好ましく、65°以上が特に好ましい。また、80°以下が好ましく、76°以下がより好ましく、75°以下が更に好ましく、70°以下がより更に好ましく、69°以下が特に好ましく、68°以下がより特に好ましい。粉体接触角θが50°以上であると、非造形部への造形液の染み出しを抑制でき、狙いの寸法精度の造形物を安定に得ることができる。
造形液の無機粒子との粉体接触角θは、無機粒子を含む粉体を充填したカラムに造形液を浸透させたときの浸透速度から計算される値であり、例えば、協和界面科学株式会社製の自動表面張力計DY-500を用い、以下のようにして測定することができる。
無機粒子としては、造形に用いる無機粒子の種類がわかっている時はその無機粒子を用いる。一方、造形に用いる無機粒子の種類がわからない時にはアルミニウム粉体(東洋アルミニウム株式会社製、ALSI3-30B)を用いる。
カラムに無機粒子を含む粉体5gを充填し、粉体圧縮機で空隙率を35.6%~35.8%に調整した。
無機粒子を含む粉体に対して十分に濡れ性のよい液体としてアセトンを用い、アセトンの粉体接触角θが0度と仮定して毛管半径を求める。「毛管半径」はカラムに金属粒子を充填した時の無機粒子の隙間の半径を意味し、協和界面科学株式会社製の自動表面張力計DY-500で測定することができる。
続いて、協和界面科学株式会社製の自動表面張力計DY-500を用い、測定開始から150秒から180秒の範囲での無機粒子を含む粉体への造形液の浸透速度を測定する。無機粒子を含む粉体への造形液の浸透速度は、下記数式(1)のLucas-Washburn式で表される。
ただし、数式(1)中、l(t)wettedは時刻tにおける造形液の浸透距離、tは測定時間、rは平均毛管半径、γは造形液の23℃における表面張力、θは造形液の無機粒子との粉体接触角、ηは造形液の25℃における粘度をそれぞれ表す。
得られた毛管半径、浸透速度、造形液の25℃における粘度γ、及び造形液の23℃における表面張力ηから、上記数式(1)に基づき、造形液の無機粒子との粉体接触角θを算出する。造形液での測定は3回行い、最も小さい粉体接触角θを採用する。
<γcosθ/η>
本発明の造形液は、次式、γcosθ/η≦1.5(m/s)、を充たし、次式、γcosθ/η≦1(m/s)、を充たすことが好ましく、次式、γcosθ/η≦0.8(m/s)、を充たすことがより好ましい。また、γcosθ/ηは0.1(m/s)以上が好ましく、0.3(m/s)以上がより好ましく、0.4(m/s)以上が更に好ましく、0.5(m/s)以上がより更に好ましく、0.6(m/s)以上が特に好ましい。
造形液が、次式、γcosθ/η≦1.5(m/s)、を充たすことにより、非造形部への造形液の染み出しを抑制でき、狙いの寸法精度を安定に得ることができる。
造形液の無機粒子に対する浸透速度を表す指標として「γcosθ/η」を算出する。
ただし、式中θは造形液の無機粒子との粉体接触角(°)、γは造形液の23℃における表面張力(mN/m)、ηは造形液の25℃における粘度(mPa・s)をそれぞれ表す。
本発明の一態様において、付与する造形液量は0.033μl/mm以上0.33μl/mm以下が好ましく、0.148μl/mm以上0.33μl/mm以下がより好ましい。
付与する造形液量が0.033μl/mm以上0.33μl/mm以下であると、局所的な造形液の染み出しを生じなくすることができる。また付与する造形液量が0.148μl/mm以上0.33μl/mm以下であると、造形物の曲げ強度を高くすることができる。
付与する造形液量が0.033μl/mm未満であると、造形物が崩壊してしまうことがある。付与する造形液量が0.33μl/mmを超えると、局所的に造形液が染み出してしまうことがある。
付与する造形液量は、例えば、以下の手順により求めることができる。インクジェットヘッドから所望の滴数を重量測定済のOHPシート上に滴下し、滴下前重量との差分により滴下した総造形液重量を求める。その後、総造形液重量から滴下に使ったノズル数、滴数及び造形液の比重で除算することで1ノズル1滴あたりの造形液体積を算出する。1ノズル1滴あたりの造形液体積を1ボクセルに吐出する滴数で乗算し1ボクセルへ滴下する造形液体積量を求めた後、1mmあたりの造形液体積へと換算することにより付与する造形液量を求めることができる。1ボクセルの大きさは、主走査方向及び副走査方向の解像度及び積層厚みによって算出できる。
ここで、本発明の造形液において、「造形液の金属粒子との粉体接触角θ」と、「造形液の25℃における粘度γ」と、「造形液の23℃における表面張力η」と、「γcosθ/η」とを適正な範囲となるように制御することによって、図1A及び図1Bに示すように、狙い寸法1から非造形部への造形液の染み出し2を抑制でき、狙いの寸法精度の造形物が得られる。
一方、付与する造形液量を0.033μl/mm以上0.33μl/mm以下とすることにより、造形液が溢れにくくなり、図1Cに示すように、狙い寸法1から局所的に造形液が染み出る局所的な染み出し3を防止できる。
本発明の一態様において、解像度は600dpi以上が好ましく、600dpi以上1200以下が好ましい。同じ造形量であっても、解像度を高くすることで、隣接する液滴との距離が近くなりマージしやすくなる。液滴同士の結合が強くなることにより造形物の曲げ強度が高くなる。
解像度は、例えば、吐出周波数とヘッドの走査速度を制御することで主走査方向の解像度を調整することができる。加えて、走査毎にヘッドを主走査方向とは垂直方向に所望の距離動かすことで副走査方向の解像度を調整することができる。
本発明の一態様において、造形液を吐出するノズルが設けられたノズル面を洗浄する洗浄液を付与する際に、ノズルにかかる圧力が0mmaq以上となるように制御する。洗浄メンテナンス中において、ノズルにかかる圧力が0mmaq以上となるように制御することにより、ノズル内に洗浄液が入ることを防ぐことができ、ノズル内の造形液が洗浄液と混ざり、造形液の特性が損なわれてしまったり、造形液の吐出が不安定になることを防止できる。
造形液を吐出するノズルが設けられたノズル面を洗浄する洗浄液を付与する際に、前記ノズルにかかる圧力は、0mmaq以上25mmaq以下であることが好ましい。
ノズルにかかる圧力が0mmaq以上25mmaq以下となるように制御する方法としては、例えば、造形液が供給されているタンク内の圧力をポンプ等で制御することでできる。
洗浄液としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水系や有機溶剤系の洗浄液などを用いることができる。特に、造形液に用いられている有機溶剤と同様の有機溶剤を洗浄液に使用すれば、混色によって造形液の物性が変化するリスクを減らすことができる。
本発明の一態様において、ノズル面に洗浄液を付与する時間が1秒以上2秒以下であることが好ましい。この態様によると、ノズル面に付着した粉体を除去でき、かつ混色が発生しないという利点がある。
本発明の造形液は、造形物の製造に用いられ、無機粒子を含む粉体の層に対して付与される液体組成物である。
造形物の製造は、無機粒子を含む粉体の層を形成する粉体層形成工程と、造形液を粉体の層に対して付与する造形液付与工程と、粉体層形成工程及び造形液付与工程を順次繰り返すことで積層物を形成する積層工程と、を含む造形物の製造方法により実行される。
また、造形物の製造は、上記の積層工程に加えて、積層物を加熱することで固化物を形成する加熱工程、固化物に付着している粉体である余剰粉体を除去してグリーン体を得る余剰粉体除去工程、グリーン体を乾燥させてグリーン体中に残存する液体成分を除去する乾燥工程、グリーン体を加熱して付与された造形液に由来する樹脂等を除去することで脱脂体を得る脱脂工程、脱脂体を加熱して焼結体を得る焼結工程、及び焼結体に対して後処理を行う後処理工程を含む造形物の製造方法により実行されることが好ましい。
本発明において「造形物」とは、一定の立体形状が保たれている立体物の総称を表し、例えば、固化物又は固化物に由来する構造体であり、具体的には、固化物、グリーン体、脱脂体、及び焼結体などを表す概念である。
また、本発明においては、「粉体」は「粉末」又は「粉末材料」と称することもある。「造形液」は「硬化液」又は「反応液」と称することもある。また、「固化物」は「硬化物」と称することもある。また、固化物が積層した立体造形物を「グリーン体」、「焼結体」、「成形体」、又は「造形物」と称することもある。「グリーン体」を熱処理して脱脂したものを「脱脂体」と称することもある。「グリーン体」と「脱脂体」とを合わせて「焼結前駆体」と称することもある。
本発明の造形液は、樹脂、有機溶剤、及び界面活性剤を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
<樹脂>
造形液は、下記構造式(1)で表される構造単位を有する樹脂を含有する。
-構造式(1)で表される構造単位を有する樹脂-
構造式(1)で表される構造単位を有する樹脂は、造形液が無機粒子を含む粉体の層に対して付与されることで粉体の層中に配置され、樹脂の軟化点に応じた適切な加熱工程を経ることで、造形液が付与された領域における無機粒子同士を結着させるバインダーとして機能し、固化物及び固化物に由来するグリーン体等の焼結前の造形物を形成させる。これらの焼結前の造形物は、柔軟性を付与する構造式(1)で表される構造単位を有する樹脂により形成されるため、曲げ強度が向上する。なお、「構造単位」とは、1つ以上の重合性化合物に由来する樹脂中の部分構造を表す。
また、構造式(1)で表される構造単位を有する樹脂は、熱分解性に優れるため、脱脂工程で適切に除去され、これに続く焼結工程を経て作製された焼結体における密度が向上する。従って、造形物を形成する材料として、焼結を前提とした又は焼結されることが好ましい材料である金属粒子を用いた場合、得られる効果が顕著になる。具体的には、構造式(1)で表される構造単位を有する樹脂は、30℃~550℃まで昇温した場合に95質量%以上熱分解されることが好ましく、97質量%以上熱分解されることがより好ましい。なお、「樹脂が熱分解する」とは、主鎖のランダム分解又は分子鎖末端での解重合等が起き、気化、酸化分解、燃焼などによって樹脂が除去されることを表す。また、熱分解性はTG-DTA(示差熱・熱重量同時測定装置)を用いることで測定することができる。具体的には、大気又は窒素雰囲気中で30℃~550℃までを10℃/分で昇温させ、更に550℃到達後2時間温度保持した時において、昇温前後の重量減少率を求める。
更に、構造式(1)で表される構造単位を有する樹脂は、構造式(1)で表される構造単位が疎水性を有することにより、樹脂の有機溶剤に対する溶解性が向上する。そのため、造形液が有機溶剤を含む場合、構造式(1)で表される構造単位を有する樹脂の溶解性が向上する。これに伴って造形液の粘度を低下させることができ、例えば、インクジェット方式で造形液を適切に吐出することができる。なお、構造式(1)で表される構造単位を有する樹脂は、造形液の有機溶剤に可溶であり、水に不溶であることが好ましい。
構造式(1)で表される構造単位を有する樹脂のガラス転移温度(Tg)は、0℃以上が好ましく、10℃以上がより好ましく、20℃以上が更に好ましい。また、100℃以下が好ましく、90℃以下がより好ましく、80℃以下が更に好ましい。
構造式(1)で表される構造単位を有する樹脂の軟化点は、70℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましく、90℃以上が更に好ましい。また、150℃以下が好ましく、140℃以下がより好ましく、130℃以下が更に好ましい。
構造式(1)で表される構造単位を有する樹脂の数平均分子量(Mn)は、5,000以上50,000以下が好ましく、10,000以上30,000以下がより好ましい。数平均分子量(Mn)が上記範囲であることで、強度及び造形精度の向上と、造形液の粘度低下及び造形液中の樹脂含有量の向上とを両立することができる。
構造式(1)で表される構造単位を有する樹脂は、構造式(1)以外で表される構造単位を有する樹脂及び構造式(1)以外で表される構造単位を有さない樹脂のいずれであってもよい。構造式(1)以外で表される構造単位としては、例えば、下記構造式(3)で表される構造単位及び/又は下記構造式(4)で表される構造単位などが好ましい。
構造式(1)で表される構造単位に加えて構造式(3)で表される構造単位を有する樹脂は、固化物及び固化物に由来するグリーン体等の焼結前の造形物における曲げ強度を向上させる。
また、構造式(3)で表される構造単位も、構造式(1)で表される構造単位と同様に疎水性を有することにより、樹脂の有機溶剤に対する溶解性が向上する。
これらの観点から、樹脂において、構造式(1)で表される構造単位及び構造式(3)で表される構造単位の合計量は、構造式(1)で表される構造単位、構造式(3)で表される構造単位、及び構造式(4)で表される構造単位の合計量に対して60mol%以上が好ましく、65mol%以上がより好ましく、70mol%以上が更に好ましく、75mol%以上が特に好ましく、80mol%以上が最も好ましい。なお、樹脂が構造式(3)及び/又は構造式(4)で表される構造単位を有さない場合も同様であり、有さない構造単位の量を0として上記割合を算出すればよい。
構造式(1)で表される構造単位に加えて構造式(4)で表される構造単位を有する樹脂は、構造式(4)で表される構造単位における水酸基により、造形液が付与される粉体の層における無機粒子との親和性を向上させる。これにより、固化物及び固化物に由来するグリーン体等の焼結前の造形物における曲げ強度がより向上し、焼結前の造形物における密度及び焼結後の造形物における密度もより向上する。これらの観点から、樹脂において、構造式(4)で表される構造単位の量は、構造式(1)で表される構造単位、構造式(3)で表される構造単位、及び構造式(4)で表される構造単位の合計量に対して5mol%以上が好ましく、15mol%以上がより好ましく、25mol%以上が更に好ましい。
しかし、構造式(4)で表される構造単位は親水性を有するため、構造式(4)で表される構造単位の割合が増加すると、造形液が有機溶剤を含む場合において、構造式(1)で表される構造単位を有する樹脂の溶解性の向上が抑制され、これに伴って造形液の粘度低下が抑制される。この観点から、樹脂において、構造式(4)で表される構造単位の量は、構造式(1)で表される構造単位、構造式(3)で表される構造単位、及び構造式(4)で表される構造単位の合計量に対して40mol%以下が好ましく、35mol%以下がより好ましく、30mol%以下が更に好ましく、25mol%以下が特に好ましく、20mol%以下が最も好ましい。なお、樹脂が構造式(3)で表される構造単位を有さない場合も同様であり、有さない構造単位の量を0として上記割合を算出すればよい。
構造式(1)で表される構造単位を有する樹脂の具体例としては、例えば、ポリ酢酸ビニル樹脂、部分けん化ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂などが挙げられる。これらの中でも、造形液の粘度を低下させることができる点から、ポリ酢酸ビニル樹脂、部分けん化ポリ酢酸ビニル樹脂が好ましい。
ここで、部分けん化ポリ酢酸ビニル樹脂とは、構造式(1)で表される構造単位の量が、構造式(1)で表される構造単位及び構造式(4)で表される構造単位の合計量に対して75mol%以上である部分けん化ポリ酢酸ビニル樹脂を表し、80mol%以上である部分けん化ポリ酢酸ビニル樹脂を表すことが好ましい。なお、これら樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、市販品及び合成品のいずれも使用することができる。
ポリ酢酸ビニル樹脂は、構造式(1)で表される構造単位を有し、構造式(3)で表される構造単位及び構造式(4)で表される構造単位を実質的に有さない樹脂である。
部分けん化ポリ酢酸ビニル樹脂は、構造式(1)で表される構造単位と構造式(4)で表される構造単位とを有し、構造式(3)で表される構造単位を実質的に有さない樹脂である。
ポリビニルブチラール樹脂は、構造式(1)で表される構造単位と構造式(3)で表される構造単位とを有する樹脂、又は構造式(1)で表される構造単位と構造式(3)で表される構造単位と構造式(4)で表される構造単位とを有する樹脂である。
なお、部分けん化ポリ酢酸ビニル樹脂とは、ポリ酢酸ビニル樹脂を部分的にけん化することで得られる樹脂である。また、部分けん化ポリ酢酸ビニル樹脂は、構造式(4)で表される構造単位の量が、構造式(1)で表される構造単位及び構造式(4)で表される構造単位の合計量に対して40mol%以下が好ましく、35mol%以下がより好ましく、30mol%以下が更に好ましく、25mol%以下が特に好ましく、20mol%以下が最も好ましい。言い換えると、部分けん化ポリ酢酸ビニル樹脂のけん化度は40以下が好ましく、35以下がより好ましく、30以下が更に好ましく、25以下が特に好ましく、20以下が最も好ましい。
構造式(1)で表される構造単位を有する樹脂の含有量は、造形液の全量に対して、5質量%以上が好ましく、7質量%以上がより好ましく、10質量%以上が更に好ましく、11質量%以上が特に好ましい。また、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましい。樹脂の含有量が5質量%以上であることで、固化物及び固化物に由来するグリーン体等の焼結前の造形物における曲げ強度がより向上する。また、樹脂の含有量が30質量%以下であることで、造形液の粘度がより低下し、例えば、インクジェット方式で造形液を適切に吐出することができる。
なお、構造式(1)で表される構造単位及び構造式(3)で表される構造単位の合計量が、構造式(1)で表される構造単位、構造式(3)で表される構造単位、及び構造式(4)で表される構造単位の合計量に対して95mol%以上である樹脂は、樹脂の有機溶剤に対する溶解性が向上し、造形液の粘度が低下するため、高質量(造形液の全量に対して例えば、15質量%以上又は20質量%以上)含有させることもできる。これにより、固化物及び固化物に由来するグリーン体等の焼結前の造形物における曲げ強度が更に向上する。
なお、樹脂中の各構造式で表される構造単位の量(mol%)は、例えば、JIS-K6276-1994に記載のポリビニルアルコール試験方法などによって求めることができる。
本発明の造形液においては、構造式(1)で表される構造単位を有する樹脂以外にも、必要に応じて、下記構造式(2)で表される構造単位を有する樹脂、ポリビニルアルコール樹脂を含有することができる。
-構造式(2)で表される構造単位を有する樹脂-
構造式(2)で表される構造単位を有する樹脂は、造形液が金属粒子を含む粉体の層に対して付与されることで粉体の層中に配置され、樹脂の軟化点に応じた適切な加熱工程を経ることで、造形液が付与された領域における金属粒子同士を結着させるバインダーとして機能し、固化物及び固化物に由来するグリーン体等の焼結前の造形物を形成させる。これらの焼結前の造形物は、金属との親和性が高い5員環ラクタム構造を有する構造式(2)で表される構造単位を有する樹脂により形成されるため、金属粒子間が強固に結着され、曲げ強度が向上する。
また、構造式(2)で表される構造単位を有する樹脂は、昇温プロファイルを適切に制御すれば、熱分解性に優れるため、脱脂工程で適切に除去され、これに続く焼結工程を経て作製された焼結体における密度が向上する。従って、造形物を形成する材料として、焼結を前提とした又は焼結されることが好ましい材料である金属粒子を用いた場合、得られる効果が顕著になる。具体的には、構造式(2)で表される構造単位を有する樹脂は、30℃から550℃まで昇温した場合に95質量%以上熱分解されることが好ましく、97質量%以上熱分解されることがより好ましい。
ただし、構造式(2)で表される構造単位を有する樹脂は、温度条件(例えば、160℃以上の加熱条件)によっては架橋構造を形成し、高い熱分解性の効果が抑制される場合がある。そのため、造形物を形成する材料として、焼結を前提とした又は焼結されることが好ましい材料である金属粒子を用いる場合、取り扱い性が容易な観点に基づいて、構造式(2)で表される構造単位を有する樹脂より構造式(1)で表される構造単位を有する樹脂を用いることが好ましいことがある。
更に、構造式(2)で表される構造単位を有する樹脂は、5員環ラクタム構造を有することで、特定の有機溶剤(主に極性溶媒)に対する溶解性が向上し、これに伴って造形液の粘度を低下させることができ、例えば、インクジェット方式で造形液を適切に吐出することができる。また、構造式(2)で表される構造単位を有する樹脂は、有機溶剤として成分1(環状エステル(ラクトン)類等)及び成分2(グリコールジエーテル類等)などと併用した場合、より造形液の粘度を低下させることができる。このように、造形液の粘度を低下させることができるため、構造式(2)で表される構造単位を有する樹脂は、造形液中に高質量(造形液の全量に対して、例えば15質量%以上)含有させることもできる。これにより固化物及び固化物に由来するグリーン体等の焼結前の造形物における曲げ強度が更に向上する。
構造式(2)で表される構造単位を有する樹脂の軟化点は、70℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましく、90℃以上が更に好ましい。また、180℃以下が好ましく、170℃以下がより好ましく、160℃以下が更に好ましい。
構造式(2)で表される構造単位を有する樹脂の数平均分子量(Mn)は、3,000以上50,000以下が好ましく、5,000以上40,000以下がより好ましい。数平均分子量(Mn)が上記範囲であることで、強度及び造形精度の向上と、造形液の粘度低下及び造形液中の樹脂濃度の向上とを両立することができる。
構造式(2)で表される構造単位を有する樹脂の具体例としては、例えば、ポリビニルピロリドン樹脂などが挙げられる。また、市販品及び合成品のいずれも使用することができる。
-ポリビニルアルコール樹脂-
ポリビニルアルコール樹脂は、造形液が無機粒子を含む粉体の層に対して付与されることで粉体の層中に配置され、樹脂の軟化点に応じた適切な加熱工程を経ることで、造形液が付与された領域における無機粒子同士を結着させるバインダーとして機能し、固化物及び固化物に由来するグリーン体等の焼結前の造形物を形成させる。
ポリビニルアルコール樹脂は、ポリビニルアルコール樹脂の他、ビニルアルコールを構成単位として含むポリマー、又はこれらのケン化物などを含む。
ポリビニルアルコールの平均重合度、及びけん化度としては、原料となる酢酸ビニルを適宜調整することにより、平均重合度、及びけん化度を適宜調整することができる。
ポリビニルアルコール樹脂の平均重合度(JIS K6726に準拠して測定)は、100以上2,000以下が好ましく、100以上1,000以下がより好ましい。平均重合度が高すぎると、溶融粘度が高くなり、造形性又は成形性が低下する傾向がある。一方、平均重合度が低すぎると、造形物又は成形物の機械的強度が不足する傾向がある。
ポリビニルアルコール樹脂のケン化度(JIS K 6726に準拠して測定)は、特に制限されず、使用目的、溶解性、耐湿性などに応じて適宜選択することができるが、0モル%以上100モル%以下が好ましく、完全ケン化型よりも、80モル%以下の部分ケン化型がより好ましい。
<有機溶剤>
有機溶剤は、造形液を常温において液体の状態とするために用いられる液体成分である。
また、造形液は、有機溶剤を含有することにより、非水系の造形液であることが好ましい。「非水系の造形液」とは、造形液の液体成分として有機溶剤を含み、かつ液体成分において最大の質量を有する成分が有機溶剤であるものを表し、更に、造形液中の液体成分の含有量に対する有機溶剤の含有量は90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましい。
非水系の造形液であると、特に、構造式(1)で表される構造単位を有する樹脂において溶解性が向上し、造形液の粘度が低下するためである。また、非水系の造形液は、例えば、実質的に水を含有しない造形液と言い換えることができる場合がある。これにより、無機粒子としての金属粒子を構成する材料が高活性金属、言い換えると禁水材料(例えば、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、又はこれらの合金など)であっても造形液を適用することがでとしてのきる。一例として、アルミニウムは、水と接触することで水酸化アルミニウムの皮膜を形成するため、造形液中における水の含有量が多いと焼結体の焼結密度が低下する課題があるが、水を含有しない造形液を用いることで本課題は抑制される。別の例として、アルミニウムは、水と接触することで水素を発生させるため取り扱いが困難な課題があるが、水を含有しない造形液を用いることで本課題も抑制される。
有機溶剤としては、例えば、n-オクタン、m-キシレン、ソルベントナフサ、ジイソブチルケトン、3-ヘプタノン、2-オクタノン、アセチルアセトン、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸n-ヘキシル、酢酸n-オクチル、酪酸エチル、吉草酸エチル、カプリル酸エチル、オクタン酸エチル、アセト酢酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジエチル、コハク酸ジエチル、アジピン酸ジエチル、マレイン酸ビス2-エチルヘキシル、トリアセチン、トリブチリン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジブチルエーテル、1,2-ジメトキシベンゼン、1,4-ジメトキシベンゼン、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、酢酸2-メトキシ-1-メチルエチル、γ-ブチロラクトン、炭酸プロピレン、シクロヘキサノン、ブチルセロソルブなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
構造式(1)で表される構造単位を有する樹脂を用いる場合、併用する有機溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、アルコキシ基、エーテル結合、及びエステル結合からなる群より選択される少なくとも1種の構造を有する有機溶剤を用いることが好ましく、エーテル結合を有する有機溶剤を用いることがより好ましく、アルキレングリコールジアルキルエーテル化合物であることが更に好ましい。これら有機溶剤を用いた場合、造式(1)で表される構造単位を有する樹脂の溶解性がより向上し、これに伴って造形液の粘度をより低下させることができ、例えば、インクジェット方式で造形液を適切に吐出することができる。
「アルキレングリコールジアルキルエーテル化合物」とは、R-(O-R-ORで表され、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1以上5以下のアルキル基であり、直鎖状であっても分岐状であってもよく、炭素数1又は2であることが好ましい。Rは炭素数2以上5以下のアルキレン基であり、直鎖状であっても分岐状であってもよく、炭素数2又は3であることがより好ましい。mは1以上5以下の整数を示し、2又は3であることがより好ましい。
アルキレングリコールジアルキルエーテル化合物の具体例としては、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテルなどが挙げられる。これらの中でも、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテルが好ましく、トリエチレングリコールジメチルエーテルがより好ましい。
構造式(2)で表される構造単位を有する樹脂を用いる場合、併用する有機溶剤としては極性溶媒であることが好ましい。具体的には、環状エステル(ラクトン)類、環状ケトン類、及びアルキレングリコールモノアルキルエーテル類からなる群である成分1より選択される少なくとも1種を用いることが好ましく、成分1より選択される少なくとも1種に加えてアルキレングリコールジアルキルエーテル類からなる群である成分2より選択される少なくとも1種を更に用いることがより好ましい。これら有機溶剤を用いた場合、構造式(2)で表される構造単位を有する樹脂の溶解性がより向上し、これに伴って造形液の粘度をより低下させることができ、例えば、インクジェット方式で造形液を適切に吐出することができる。なお、構造式(2)で表される構造単位を有する樹脂の溶解性がより向上する観点から、成分1は、環状エステル(ラクトン)類、及び環状ケトン類からなる群であることが好ましい。
構造式(2)で表される構造単位を有する樹脂を用い、有機溶剤として、成分1より選択される少なくとも1種及び成分2より選択される少なくとも1種の両方を用いる場合、成分1の合計量及び成分2の合計量の質量比(成分1/成分2)は、60/40~100/0が好ましい。質量比(成分1/成分2)が60/40~100/0であることにより、構造式(2)で表される構造単位を有する樹脂の溶解性がより向上し、これに伴って造形液の粘度をより低下させることができる。
環状エステル(ラクトン)類、環状ケトン類、及びアルキレングリコールモノアルキルエーテル類からなる群である成分1に含まれる具体例としては、例えば、γ-ブチロラクトン、炭酸プロピレン、シクロヘキサノンなどが挙げられる。
アルキレングリコールジアルキルエーテル類からなる群である成分2に含まれる具体例としては、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテルなどが挙げられる。これらの中でも、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテルが好ましい。
「アルキレングリコールモノアルキルエーテル類」とは、R-(O-R-OHで表され、Rは炭素数1以上5以下のアルキル基であり、直鎖状であっても分岐状であってもよい。Rは炭素数2以上5以下のアルキレン基であり、直鎖状であっても分岐状であってもよい。nは1以上5以下の整数を示す。
なお、造形液の粘度をより低下させたい場合、構造式(1)で表される構造単位を有する樹脂を用いたときより、構造式(2)で表される構造単位を有する樹脂を用いたときの方が、併用する有機溶剤の種類の影響を受けるため、上記のような有機溶剤(成分1及び成分2)を選択的に使用することが求められる。そのため、造形液を作製する際の材料選択の幅を広げることができる観点から、構造式(2)で表される構造単位を有する樹脂より構造式(1)で表される構造単位を有する樹脂を用いることが好ましい。
有機溶剤の粘度は、低粘度であることが好ましく、具体的には、25℃で、5mPa・s以上50mPa・s以下が好ましく、8mPa・s以上30mPa・s以下がより好ましい。有機溶剤の粘度が、上記範囲であると、有機溶剤を含有する造形液の粘度も低粘度化しやすく、これによりインクジェットヘッドなどの造形液付与手段からの吐出が安定化し、正確な造形液の吐出により、固化物及び固化物に由来するグリーン体等の焼結前の造形物における曲げ強度がより向上し、更に、寸法精度も向上する。
なお、粘度は、例えば、JIS K7117に準拠して測定することができる。
有機溶剤の沸点は、高沸点であることが好ましく、具体的には、150℃以上がより好ましく、180℃以上が更に好ましい。造形液をインクジェット方式などで吐出する場合に有機溶剤の沸点が高沸点であると、ノズル又はノズル近傍において造形液が乾燥することが抑制され、析出した樹脂によってノズル詰まりが生じることを抑制できるためである。高沸点の有機溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上記のγ-ブチロラクトン(沸点:204℃)、炭酸プロピレン(沸点:242℃)、シクロヘキサノン(沸点:155.6℃)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(沸点:162℃)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(沸点:216℃)などが挙げられる。
有機溶剤の含有量は、造形液の全量に対して、60質量%以上95質量%以下が好ましく、70質量%以上95質量%以下がより好ましい。有機溶剤の含有量が60質量%以上95質量%以下であると、樹脂の溶解性がより向上し、これに伴って造形液の粘度をより低下させることができ、例えば、インクジェット方式で造形液を適切に吐出することができる。また、造形液付与手段において造形液が乾燥することが抑制され、吐出安定性に優れた造形液を提供できる。
有機溶剤の含有量及び樹脂の含有量の質量比(有機溶剤/樹脂)は、75/25以上95/5以下が好ましい。質量比(有機溶剤/樹脂)が75/25以上であると、樹脂の溶解性がより向上し、これに伴って造形液の粘度をより低下させることができ、例えば、インクジェット方式で造形液を適切に吐出することができる。また、質量比(有機溶剤/樹脂)が95/5以下であると、固化物及び固化物に由来するグリーン体等の焼結前の造形物における曲げ強度がより向上する。
有機溶剤の含有量及び樹脂の含有量の合計含有量は、造形液の全量に対して、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、99質量%以上が更に好ましく、99.5質量%以上が特に好ましい。また、有機溶剤及び樹脂以外の成分を実質的に含有しなくてもよい。なお、造形液が実質的に有機溶剤及び樹脂以外の成分を含有しないとは、造形液の製造時における材料として積極的に有機溶剤及び樹脂以外の成分を用いていないこと又は造形液における有機溶剤及び樹脂以外の成分の含有量が公知かつ技術常識の手法を用いた場合において検出限界以下であることを表す。
有機溶剤の含有量及び樹脂の含有量の合計含有量が、造形液の全量に対して90質量%以上であることで、造形液に含まれる樹脂の含有量が多くなり、固化物及び固化物に由来するグリーン体等の焼結前の造形物における曲げ強度がより向上する。また、有機溶剤及び樹脂以外の成分(例えば、金属粒子などの造形液中において非溶解性の材料)の含有量が少なくなる又は実質的に含有しなくなることで、造形液の粘度が低下し、造形液の吐出安定性が向上し、造形液の保存安定性も向上する。
<界面活性剤>
界面活性剤は、造形液の無機粒子との粉体接触角θを大きくし、得られる造形物の寸法精度を向上させるために添加される。
界面活性剤としては、例えば、フッ素界面活性剤及びシリコーン界面活性剤の少なくともいずれかが好ましい。このようなフッ素界面活性剤及びシリコーン界面活性剤を造形液に用いることにより、非造形部への造形液の染み出しを抑制し、狙いの寸法精度の造形物を安定に得ることができる。
このようなフッ素界面活性剤としては、市販品を用いることができ、該市販品としては、サーフロンS-693(AGCセイケミカル株式会社製)、KF-353(信越化学工業株式会社製)などが挙げられる。
このようなシリコーン界面活性剤としては、市販品を用いることができ、該市販品としては、例えば、シルフェイスSAG020(日信化学工業株式会社製)などが挙げられる。
界面活性剤の含有量は、造形液の全量に対して、0.001質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましく、0.05質量%以上が更に好ましく、0.1質量%以上が特に好ましく、0.3質量%以上が最も好ましい。また、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、1質量%以下が更に好ましく、0.5質量%以下が特に好ましい。
界面活性剤の含有量が、上記範囲であると、造形液の無機粒子との粉体接触角θを大きくすることができ、造形物の寸法精度が良好となる。
<その他の成分>
その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、乾燥防止剤、粘度調整剤、浸透剤、消泡剤、pH調整剤、防腐剤、防黴剤、着色剤、保存剤、安定化剤などが挙げられる。
-水-
造形液において、水は実質的に含有されない。本発明において「水を実質的に含有しない」とは、水の含有量が造形液の全量に対して10質量%以下であることを表し、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、1質量%以下が更に好ましく、造形液が水を含有しないことが特に好ましい。造形液が水を実質的に含有しないことにより、上記樹脂の溶解性がより向上し、これに伴って造形液の粘度をより低下させることができる。また、樹脂の周囲に多くの水を包含したヒドロゲルの形成が抑制され、これに伴う造形液の粘度の増大が抑制される。このため、例えば、インクジェット方式で造形液を適切に吐出することができる。なお、「造形液が実質的に水を含有しない」とは、造形液の製造時における材料として積極的に水を用いていないこと又は造形液における水の含有量が公知かつ技術常識の手法を用いた場合において検出限界以下であることを表す。
また、造形液が水を実質的に含有しないことで、無機粒子を構成する材料が高活性金属、言い換えると禁水材料(例えば、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、又はこれらの合金など)であっても造形液を適用することができる。一例として、アルミニウムは、水と接触することで水酸化アルミニウムの皮膜を形成するため、造形液中における水の含有量が多いと焼結体の焼結密度が低下する課題があるが、造形液が水を含有しないことで本課題は抑制される。別の例として、アルミニウムは、水と接触することで水素を発生させるため取り扱いが困難な課題があるが、造形液が水を含有しないことで本課題も抑制される。
<造形液の製造方法>
造形液の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上記材料を混合撹拌する方法などが挙げられる。
<無機粒子>
無機粒子は、粉体乃至粒子の形態を有する限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属、セラミックス、カーボン、砂、磁性材料などが挙げられるが、極めて高強度な立体造形物を得る観点から、最終的に焼結処理(工程)が可能な金属、セラミックスが好ましい。
セラミックスとしては、例えば、酸化物、炭化物、窒化物、水酸化物などが挙げられる。
酸化物としては、例えば、金属酸化物などが挙げられる。金属酸化物としては、例えば、シリカ(SiO)、アルミナ(Al)、ジルコニア(ZrO)、チタニア(TiO)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
金属粒子としては、構成材料として金属を含有する粒子である。なお、金属粒子の構成材料は、金属を含有する限り特に限定されず、金属以外の材料を含んでいてもよいが、主材料が金属であることが好ましい。主材料が金属であるとは、金属粒子に含まれる金属の質量が、金属粒子の質量に対して50質量%以上であることを表し、60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましく、90質量%以上が特に好ましい。
金属粒子における構成材料である金属としては、例えば、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、鉛(Pd)、銀(Ag)、インジウム(In)、錫(Sn)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、ネオジウム(Nd)、又はこれら金属の合金などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ステンレス(SUS)鋼、鉄(Fe)、銅(Cu)、銀(Ag)、チタン(Ti)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、又はこれら金属の合金が好ましく、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、又はこれら金属の合金がより好ましく、アルミニウム合金が特に好ましい。
アルミニウム合金としては、例えば、AlSi10Mg、AlSi12、AlSiMg0.6、AlSiMg、AlSiCu、Scalmalloy、ADC12、AlSiなどが挙げられる。
金属粒子は、特に制限はなく、従来公知の方法を用いて製造することができる。金属粒子を製造する方法としては、例えば、固体に圧縮、衝撃、摩擦等を加えて細分化する粉砕法、溶湯を噴霧して急冷粉体を得るアトマイズ法、液体に溶解した成分を沈殿させる析出法、気化させて晶出させる気相反応法などが挙げられる。これらの中でも、球状の形状が得られ、粒径のバラツキが少ない点からアトマイズ法が好ましい。アトマイズ法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水アトマイズ法、ガスアトマイズ法、遠心アトマイズ法、プラズマアトマイズ法などが挙げられる。
金属粒子は、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、純Al(東洋アルミニウム株式会社製、A1070-30BB)、純Ti(大阪チタニウムテクノロジーズ社製)、SUS316L(山陽特殊製鋼株式会社製、商品名:PSS316L)、AlSi10Mg(東洋アルミニウム株式会社製、Si10MgBB)、SiO(株式会社トクヤマ製、商品名:エクセリカSE-15K)、AlO(大明化学工業株式会社製、商品名:タイミクロンTM-5D)、ZrO(東ソー株式会社製、商品名:TZ-B53)、アルミニウム粉体(東洋アルミニウム株式会社製、ALSI3-30B)などが挙げられる。
金属粒子の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、2μm以上100μm以下が好ましく、8μm以上50μm以下がより好ましい。金属粒子の体積平均粒径が2μm以上であると、金属粒子の凝集が抑制され、造形物の製造効率の低下、及び金属粒子の取扱性の低下を抑制することができる。また、金属粒子の体積平均粒径が100μm以下であると、金属粒子同士の接点の減少及び空隙の増加を抑制することができ、造形物の強度が低下することを抑制することができる。
金属粒子の粒度分布としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、粒度分布はよりシャープである方が好ましい。
金属粒子の体積平均粒径及び粒度分布は、公知の粒径測定装置を用いて測定することができ、例えば、粒子径分布測定装置(マイクロトラックMT3000IIシリーズ、マイクロトラックベル株式会社製)などが挙げられる。
なお、金属の基材及び当該基材を被覆する被覆樹脂を有する金属粒子を用い、金属粒子に液体を付与することで被覆樹脂におけるバインダー機能を発揮させて造形物を製造する方法が従来から知られているが、本発明においては、造形液にバインダー機能を有する樹脂が含有されている。従って、金属粒子は、樹脂により表面が被覆されていなくてもよい。樹脂により表面が被覆されてない金属粒子を用いることで、例えば、造形液を付与されていない粉体の領域(言い換えると、非造形領域)であるにも関わらず、加熱工程を経ることで被覆樹脂が金属粒子同士を結着させ、意図しない固化物が形成されてしまうことを抑制することができる。
ここで、樹脂により表面が被覆されていないとは、例えば、金属粒子の表面積に対する樹脂の表面積の割合(表面被覆率)が15%未満であることを表し、表面被覆率は0%であってもよい。表面被覆率は、例えば、金属粒子の写真を取得し、二次元の写真に写る範囲において、金属粒子の表面の全面積に対する、樹脂で被覆された部分の面積の割合(%)を測定することで求めることができる。なお、樹脂で被覆された部分の判断においては、例えば、SEM-EDS等のエネルギー分散型X線分光法による元素マッピングの手法などを用いることができる。
<無機粒子を含む粉体>
上記の無機粒子は、複数の無機粒子を含む集合体である粉体として用いられ、当該粉体の層に対して造形液が付与されることで造形物が製造される。
粉体は、無機粒子に加え、必要に応じて用いられるその他の成分を含むことができる。
その他の成分としては、例えば、フィラー、レベリング剤、焼結助剤、高分子樹脂粒子などが挙げられる。
フィラーは、無機粒子の表面に付着させたり、無機粒子間の空隙に充填させたりするのに有効な材料である。フィラーを用いることで、例えば、粉体の流動性を向上させることができ、また、無機粒子同士の接点が増え、空隙を低減できることから、造形物の強度や寸法精度を高めることができる。
レベリング剤は、粉体の層の表面における濡れ性を制御するのに有効な材料である。レベリング剤を用いることで、例えば、粉体の層への造形液の浸透性が高まり、造形物の強度を高めることができる。
焼結助剤は、造形物を焼結させる際、焼結効率を高める上で有効な材料である。焼結助剤を用いることで、例えば、造形物の強度を向上でき、焼結温度を低温化でき、焼結時間を短縮できる。
高分子樹脂粒子は、無機粒子の表面に付着させるのに有効な材料であり、有機物外添剤とも称する。高分子樹脂粒子の平均粒径は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1μm以上10μm以下が好ましく、0.1μm以上1μmがより好ましい。
(造形用キット)
本発明の造形用キットは、本発明の造形液と、無機粒子とを有し、必要に応じて、粉体除去液等のその他の構成を有してもよい。また、造形用キットは、無機粒子及び造形液がそれぞれ独立した状態で存在していればよく、造形液が収容されている造形液収容部及び無機粒子が収容されている無機粒子収容部が一体化している場合などに限られない。例えば、造形液及び無機粒子がそれぞれ独立した収容部に収容されていたとしても、無機粒子及び造形液が併用されることを前提としている場合、無機粒子及び造形液が併用されることを実質的に誘導している場合などは造形用キットに含まれる。
造形用キットにおける無機粒子としては、造形液における上記の無機粒子と同様のものを用いることができる。
無機粒子が金属粒子であり、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、及びこれらの合金から選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。無機粒子は、樹脂により表面が被覆されていないことが好ましい。
(造形物の製造方法)
本発明の造形物の製造方法は、無機粒子を含む粉体の層を形成する粉体層形成工程と、造形液を粉体の層に対して付与する造形液付与工程と、粉体層形成工程及び造形液付与工程を順次繰り返すことで積層物を形成する積層工程と、を含む。
また、造形物の製造方法は、積層物を加熱することで固化物を形成する加熱工程、固化物に付着している粉体である余剰粉体を除去してグリーン体を得る余剰粉体除去工程、グリーン体を乾燥させてグリーン体中に残存する液体成分を除去する乾燥工程、グリーン体を加熱して付与された造形液に由来する樹脂等を除去することで脱脂体を得る脱脂工程、脱脂体を加熱して焼結体を得る焼結工程、及び焼結体に対して後処理を行う後処理工程などを更に含んでもよい。
<粉体層形成工程>
粉体層形成工程は、無機粒子を含む粉体の層を形成する工程であり、粉体層形成手段により実施される。
粉体の層は、支持体上(造形ステージ上)に形成される。粉体を支持体上に配置させて粉体の薄層を形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特許第3607300号公報に記載の選択的レーザー焼結方法に用いられる公知のカウンター回転機構(カウンターローラー)などを用いる方法、粉体をブラシ、ローラ、ブレード等の部材を用いて拡げる方法、粉体の表面を押圧部材により押圧して拡げる方法、及び公知の積層造形装置を用いる方法などが挙げられる。
カウンター回転機構(カウンターローラー)、ブラシ、ブレード、押圧部材などの粉体層形成手段を用いて、粉体の層を形成する場合、例えば、以下のよう方法で実行できる。
即ち、外枠(「型」、「中空シリンダー」、「筒状構造体」などと称されることもある)の内壁に摺動しながら昇降可能に配置された支持体上にカウンター回転機構(カウンターローラー)、ブラシ、ローラ、ブレード、又は押圧部材を用いて粉体を載置する。このとき、支持体として外枠内を昇降可能なものを用いる場合、支持体を外枠の上端開口部よりも少し下方の位置に配し(言い換えると、粉体の層の一層分の厚みだけ下方に位置させておき)、支持体上に粉体を載置する。以上により、支持体上に粉体の薄層を載置させることができる。
粉体の層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、一層当たりの平均厚みで、30μm以上500μm以下が好ましく、60μm以上300μm以下がより好ましい。
平均厚みが、30μm以上であると、粉体に造形液を付与することで形成される固化物の強度が向上し、焼結工程等のその後の工程において生じ得る型崩れ等を抑制することができる。また、平均厚みが、500μm以下であると、粉体に造形液を付与することで形成される固化物に由来する造形物の寸法精度が向上する。
なお、平均厚みは、特に制限はなく、公知の方法に従って測定することができる。
なお、粉体層形成手段で供給される粉体は、粉体収容部に収容されていてもよい。粉体収容部は粉体が収容されている容器等の部材であり、例えば、貯留槽、袋、カートリッジ、タンクなどが挙げられる。
<造形液付与工程>
造形液付与工程は、粉体層形成工程で形成した粉体の層に対して造形液を付与する工程であり、造形液付与手段により実施される。
粉体の層に造形液を付与する方法としては、造形液を吐出する方法が好ましい。造形液を吐出する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ディスペンサ方式、スプレー方式、インクジェット方式などが挙げられる。これらの中でも、ディスペンサ方式は、液滴の定量性に優れるが、塗布面積が狭くなる。また、スプレー方式は、簡便に微細な吐出物を形成でき、塗布面積が広く、塗布性に優れるが、液滴の定量性が悪く、スプレー流による造形液の飛散が発生する。このため、インクジェット方式であることが好ましい。インクジェット方式は、スプレー方式に比べ、液滴の定量性が良く、ディスペンサ方式に比べ、塗布面積が広くできる利点があり、複雑な造形物を精度良くかつ効率的に形成し得る点で好ましい。
インクジェット法を用いる場合、造形液を吐出することで付与する造形液付与手段は、造形液を吐出するノズルを有するインクジェットヘッドである。インクジェットヘッドとしては、公知のインクジェットプリンターにおけるインクジェットヘッドを好適に使用することができる。なお、インクジェットプリンターにおけるインクジェットヘッドとしては、例えば、株式会社リコー製の産業用インクジェットRICOH MH/GH SERIESなどが挙げられる。また、インクジェットプリンターとしては、例えば、株式会社リコー製のSG7100などが挙げられる。
なお、造形液付与手段に供給される造形液は、造形液収容部に収容されていてもよい。造形液収容部は造形液が収容されている容器等の部材であり、例えば、貯留槽、袋、カートリッジ、タンクなどが挙げられる。
<積層工程>
積層工程は、粉体層形成工程及び造形液付与工程を順次繰り返すことで積層物を形成する工程であり、積層手段により実施される。
「積層物」とは、造形液が付与された領域を有する粉体の層が複数積層された構造体である。このとき、構造体は、内部に一定の立体的形状が保たれている立体物を含まないものであってもよいし、内部に一定の立体的形状が保たれている立体物が含まれているものであってもよい。
積層工程は、粉体を薄層に載置させる工程(粉体層形成工程)と、薄層上に造形液を付与する工程(造形液付与工程)と、を含む。これにより粉体の層のうち造形液が付与された領域を形成させる。更に、積層工程は、造形液が付与された領域を有する粉体の層である薄層上に、上記と同様にして、粉体を薄層に載置(積層)させる工程(粉体層形成工程)と、薄層上に造形液を付与する工程(造形液付与工程)と、を含む。これにより新たに積層させた粉体の層において造形液が付与された領域を形成させる。なお、このとき、最上部の積層した粉体の薄層において生じる造形液が付与された領域は、その下に存在する粉体の薄層における造形液が付与された領域と連続する。その結果、粉体の層の二層分の厚みを有する造形液が付与された領域が得られる。
<加熱工程>
加熱工程は、積層工程で形成された積層物を加熱することで固化物を形成する工程であり、加熱手段により実施される。
「固化」とは、一定の形状が保たれるようになることを表す。「固化物」とは、一定の立体形状が保たれている立体物を有する構造体である。また、固化物は、立体物を構成しない粉体である余剰粉体を除去する余剰粉体除去工程を経ていないものを表す。
加熱工程における加熱温度は、樹脂の軟化点より高いことが好ましい。これにより、上記樹脂は、造形液が付与された領域における無機粒子同士を結着させるバインダーとして機能し、固化物及び固化物に由来するグリーン体等の焼結前の造形物を形成できる。
加熱手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、乾燥機、恒温恒湿槽などが挙げられる。
<余剰粉体除去工程>
余剰粉体除去工程は、固化物に付着している粉体である余剰粉体を除去してグリーン体を得る工程であり、余剰粉体除去手段により実施される。
「グリーン体」とは、一定の立体形状が保たれている立体物であって、固化物を構成しない粉体である余剰粉体を除去する余剰粉体除去工程を経たものを表し、好ましくは余剰粉体が実質的に付着していない立体物を表す。
また、余剰粉体除去工程は、エアーブローにより固化物から余剰粉体を除去する工程、及び除去液に浸漬させることにより固化物から余剰粉体を除去する工程から選ばれる少なくとも1つの工程を含むことが好ましく、両方の工程を含むことがより好ましい。
加熱工程後の固化物は、造形液が付与されていない粉体である余剰粉体に埋没した状態である。この埋没した状態から固化物を取り出すと、固化物の表面や内部には余剰粉体が付着しており、簡便にこれらを除去することは困難である。また、固化物の表面形状が複雑な場合や、固化物の内部構造が流路のようなものである場合は一層困難である。一般的なバインダージェッティング方式で造形された焼結前の造形物は強度が高くないため、送風手段によるエアーブローの圧力を高くすると、当該造形物が崩壊する恐れがある。
一方で、本発明の造形液を用いて形成された固化物は、上記樹脂により形成されるため、曲げ強度が向上し、エアーブローの圧力に耐えうる強度を有する。このとき、固化物の曲げ強度は3点曲げ応力で3MPa以上が好ましく、5MPa以上がより好ましい。
-除去液-
除去液は、有機溶剤を含有し、更に必要に応じてその他成分を含有する。なお、造形液に含まれる有機溶剤と除去液に含まれる有機溶剤を区別するために、造形液に含まれる有機溶剤を第一の有機溶剤と称し、除去液に含まれる有機溶剤を第二の有機溶剤と称してもよい。
有機溶剤としては、例えば、ケトン、ハロゲン、アルコール、エステル、エーテル、炭化水素、グリコール、グリコールエーテル、グリコールエステル、ピロリドン、アミド、アミン、炭酸エステルなどが挙げられる。
ケトンとしては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、アセトフェノン、ダイアセトンアルコールなどが挙げられる。
ハロゲンとしては、例えば、メチレンクロライド、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、HCFC141-b、HCFC-225、1-ブロモプロパン、クロロホルム、オルトジクロロベンゼンなどが挙げられる。
アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、イソブタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、ターシャリーブタノール、セカンダリーブタノール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-エチルヘキサノール、ベンジルアルコールなどが挙げられる。
エステルとしては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸secブチル、酢酸メトキシブチル、酢酸3-メトキシブチル、3-メトキシ-3メチルブチルアセテート、エチル-3-エトキシプロピオネート、酢酸アミル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸イソプロピル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、3-エトキシプロピオン酸エチル、二塩基酸エステル(DBE)などが挙げられる。
エーテルとしては、例えば、ジメチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチレンオキシド、テトラヒドロフラン、フラン、ベンゾフラン、ジイソプロピルエーテル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、1,4-ジオキサン、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどが挙げられる。
炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ、ノルマルヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘキセン、シクロヘプタン、シクロペンタン、ヘプタン、ペンタメチルベンゼン、ペンタン、メチルシクロペンタン、ノルマルヘプタン、イソオクタン、ノルマルデカン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ミネラルスピリット、ジメチルスルホキシド、リニアアルキルベンゼンなどが挙げられる。
グリコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジメトキシテトラエチレングリコールなどが挙げられる。
グリコールエステルとしては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどが挙げられる。
グリコールエーテルとしては、例えば、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、メチルトリグリコールなどが挙げられる。
ピロリドンとしては、例えば、2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドンなどが挙げられる。
アミドとしては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ホルムアミドなどが挙げられる。
アミンとしては、例えば、テトラメチルエチレンジアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、エチレンジアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、アニリン、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、ピロール、ピリジン、ピリダジン、オキサゾール、チアゾール、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンなどが挙げられる。
炭酸エステルとしては、例えば、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル、炭酸プロピレン、炭酸エチルメチルなどが挙げられる。
除去液におけるその他の成分としては、例えば、界面活性剤、消泡剤、防腐防黴剤、pH調整剤、キレート剤、防錆剤などが挙げられる。
<乾燥工程>
乾燥工程は、グリーン体を乾燥させてグリーン体中に残存する除去液等の液体成分を除去する工程であり、乾燥手段により実施される。
乾燥工程は、グリーン体中に含まれる除去液等の液体成分のみならず、有機物を除去してもよい。
乾燥手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知の乾燥機、恒温恒湿槽などが挙げられる。
<脱脂工程>
脱脂工程は、グリーン体を加熱することで樹脂が除去された脱脂体を形成する工程であり、脱脂手段により実施される。
「脱脂体」とは、グリーン体から上記樹脂等の有機成分を脱脂することにより得られる立体物である。
脱脂工程は、脱脂手段を用い、上記樹脂等の有機成分の熱分解温度以上であって且つ金属粒子を構成する材料(金属)の融点又は固相線温度(例えば、AlSi10Mgの粒子を用いる場合であれば約570℃)より低い温度でグリーン体を一定時間(例えば、1~10時間)加熱することで有機成分を分解して除去する。
脱脂手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知の焼結炉、電気炉などが挙げられる。
<焼結工程>
焼結工程は、脱脂工程で形成された脱脂体を加熱することで焼結体を形成する工程であり、焼結手段により実施される。
「焼結体」とは、無機粒子としての金属粒子を構成する金属材料が一体化して形成される立体物であって、脱脂体を焼結することにより形成されるものである。
焼結工程は、焼結手段を用い、無機粒子としての金属粒子を構成する金属材料の固相線温度(例えば、AlSi10Mgの粒子を用いる場合であれば約570℃)以上であって且つ液相線温度(例えば、AlSi10Mgの粒子を用いる場合であれば約600℃)以下の温度で脱脂体を一定時間(例えば、1~10時間)加熱することで金属粒子を構成する金属材料を一体化させる。
焼結手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知の焼結炉などが挙げられる、なお、焼結手段は上記の脱脂手段と同一の手段であってもよい。また、脱脂工程と焼結工程は、連続して実行されてもよい。
<後処理工程>
造形物の製造方法は、焼結体に対して後処理を行う後処理工程を含むことが好ましい。後処理工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、表面保護処理工程及び塗装工程などが挙げられる。
表面保護処理工程は、固化物形成工程において形成した固化物が積層した立体造形物(グリーン体)に保護層を形成する工程である。この表面保護処理工程を行うことにより、固化物を例えばそのまま使用等することができる耐久性等を固化物の表面に与えることができる。保護層の具体例としては、耐水性層、耐候性層、耐光性層、断熱性層、光沢層などが挙げられる。
表面保護処理手段としては、公知の表面保護処理装置、例えば、スプレー装置、コーティング装置などが挙げられる。
塗装工程は、固化物形成工程において形成した固化物が積層した立体造形物(グリーン体)に塗装を行う工程である。塗装工程を行うことにより、グリーン体を所望の色に着色させることができる。
塗装手段としては、公知の塗装装置、例えば、スプレー、ローラ、刷毛等による塗装装置などが挙げられる。
<造形の流れ>
ここで、本発明の造形物の製造方法における造形の流れについて図3A~図3Eを参照して説明する。図3A~図3Eは、造形物の製造装置の動作の一例を示す概略図である。
造形物の製造装置は、供給槽21と造形槽22と余剰粉体受け槽29とを有し、供給槽21と造形槽22は、それぞれ上下に移動可能な供給ステージ23、造形ステージ24を有する。造形槽22に設けられた造形ステージ24上に立体造形用の粉体20を載置し、粉体20からなる粉体層31を形成する。
まず、造形槽22の造形ステージ24上に、1層目の造形液被付与層30が形成されている状態から説明する。1層目の造形液被付与層30上に次の無機粒子を含む粉体の層を形成するときには、図3Aに示すように、供給槽21の供給ステージ23を上昇させ、造形槽22の造形ステージ24を下降させる。このとき、造形槽22における粉体の層の上面と平坦化ローラ12の下部(下方接線部)との間隔(積層ピッチ)がΔt1となるように造形ステージ24の下降距離を設定する。間隔Δt1は、特に制限されるものではないが、数十μm~100μm程度であることが好ましい。
平坦化ローラ12は供給槽21及び造形槽22の上端面に対してギャップが生じるように配置している。したがって、造形槽22に無機粒子を含む粉体20を移送供給して平坦化するとき、無機粒子を含む粉体の層の上面は供給槽21及び造形槽22の上端面よりも高い位置になる。これにより、平坦化ローラ12が供給槽21及び造形槽22の上端面に接触することを確実に防止できて、平坦化ローラ12の損傷が低減する。平坦化ローラ12の表面が損傷すると、造形槽22に供給した粉体の層31(図3D参照)の表面にスジが発生して平坦性が低下しやすくなる。平坦化ローラ12には、平坦化ローラ12の周面に接触して、平坦化ローラ12に付着した粉体20を除去するための粉体除去部材である粉体除去板13が配置されている。
次いで、図3Bに示すように、供給槽21の上端面よりも高い位置に配置した無機粒子を含む粉体20を、平坦化ローラ12を矢印方向に回転しながら造形槽22側に移動することで、無機粒子を含む粉体20を造形槽22へと移送供給する(粉体供給)。更に、図3Cに示すように、平坦化ローラ12を造形槽22の造形ステージ24のステージ面と平行に移動させ、造形ステージ24の造形槽22上で所定の厚さΔt1になる粉体の層31を形成する(平坦化)。このとき、粉体の層31の形成に使用されなかった余剰の無機粒子を含む粉体20は余剰粉体受け槽29に落下する。粉体の層31を形成後、平坦化ローラ12は、図3Dに示すように、供給槽21側に移動されて初期位置(原点位置)に戻される(復帰される)。
ここで、平坦化ローラ12は、造形槽22及び供給槽21の上端面との距離を一定に保って移動できるようになっている。一定に保って移動できることで、平坦化ローラ12で粉体20を造形槽22の上へと搬送させつつ、造形槽22上又は既に形成された造形液被付与層30の上に均一厚さh(積層ピッチΔt1に相当)の粉体の層31を形成できる。なお、以下、粉体の層31の厚みhと積層ピッチΔt1とを区別せずに説明することがあるが、特に断りのない限り、同じ厚みであり、同じ意味である。また、粉体の層31の厚みhを実際に測定して求めてもよく、この場合、複数箇所の平均値とすることが好ましい。
その後、図3Eに示すように、液体吐出ユニットのヘッド52から造形液の液滴10を吐出して、次の粉体の層31に所望の形状の造形液被付与層30を積層形成する。次いで、上述した粉体層形成工程及び造形液付与工程を繰り返して新たな造形液被付与層30を形成して積層する。このとき、新たな造形液被付与層30とその下層の造形液被付与層30は一体化する。以後、更に粉体層形成工程及び造形液付与工程を繰り返し行い、積層物を完成させる。
ここで、図4は、立体造形物の製造装置の全体構成を示す装置の正面図(横から見た図)である。図4の構成では、ノズル面状態検出手段107は光源108を伴った光学カメラで造形槽101の外に配置している。また、このノズル面状態検出手段107の目的のひとつにノズルを塞ぐ状態の液や被吐出媒体102を検出することがあるので、光学カメラを使う場合にはある程度拡大して観察する必要があるため視野が狭くなり吐出ヘッド110全体(すべてのノズル)を一度に捉えることができない。そのため、吐出ヘッド110が光学カメラ上を走査することで複数の画像でノズル全体を観察している。ただし、吐出ヘッド110を走査させないで複数の光学カメラで撮像する方法でもよい。またノズル面観察は光学カメラではなくレーザー変位計などで形状を立体的に捉える手段を用いてもよい。また光学カメラにともなう光源はノズル面と被吐出媒体を区別できるような波長の光源を用いたり、確度を付けた状態で配置するなどの方法を用いたりすることができる。更に光学カメラでノズル面に付着した被吐出媒体を立体的に捉えるために、複数の幅の縞模様の光を当てて観察する方法なども用いることができる。
図5は、造形液の液滴111の吐出によって被吐出媒体102がノズル面116に付着しうる条件について説明する図である。
図5を用いて、造形液の液滴111の吐出によって被吐出媒体102がノズル面116に付着しうる条件について説明する。図5は、図4とは違い、吐出ヘッド110が造形槽内の被吐出媒体102に吐出している状態を示している。また、造形液の液滴111の吐出によって被吐出媒体102がノズル面116に付着しうる条件を説明するために吐出ヘッド110が造形液の液滴111を吐出しているところを拡大表示している。
被吐出媒体102に精度良く造形液の液滴111を着弾させたいことから造形液の液滴の吐出速度は一定以上の速度を持たせたい。これは、造形液の液滴111の実際の速度ベクトルは吐出速度(Vj)にキャリッジの移動速度(Vc)が乗るため斜め方向に造形液の液滴111は飛んでいる。そのためキャリッジ109の速度変動とノズル面116と被吐出媒体間の吐出GAP(Dt)の偏差によっても造形液の液滴111の着弾場所に誤差が生じる。このVcとDtの偏差(誤差)が着弾位置に与える影響は、Vjが早いほど(大きいほど)小さくなるためである。またVjが大きいほど着弾までの時間が短くなり気流(キャリッジ移動などで気流が発生する)が着弾位置に与える影響も小さくなる。同じ理由で、吐出GAP(Dt)も一定以下に収めたい。
また、立体を積層する生産性(速度)を向上させたいことから、造形液の液滴111の大きさ(Mj)も一定以上大きくしたい。またMjが大きいほど気流(キャリッジ移動などで気流が発生する)が着弾位置に与える影響も小さくなる。更に造形物の解像度(表面性や精度)を高めるために粉体の大きさ(粒径)を一定以上小さくしたい。
このような条件下では、ノズル面116に粉体が付着しやすくなり、そのことにより造形液の吐出不良を起こし信頼性が低下することがわかっている。このとき、ノズル面116の清掃が必要であるが、粉体が付着したノズル面116をワイパーブレード等で払拭メンテナンスすると、粉体をノズルに入り込ませてしまい、ノズルを詰まらせてしまう。これに対して、ノズル面116を洗浄液で洗浄することで付着した粉体を洗い流す洗浄メンテナンスを行うことで、ノズルに粉体を入り込ませることなくノズル面116を清掃することができる。
洗浄メンテナンスの例を図6と図7に示す。
図6は、ノズル面を洗浄液へジャボ漬けした実施形態について説明する図である。
図6は、ノズル面116の清掃の例として、ノズル面116を洗浄液112で満たした洗浄漕113に漬けることで、汚れを除去している。
図6では、洗浄液を満たした洗浄漕113が、ノズル面116に向け上昇することで、ノズル面116を洗浄液112に漬けている。
この実施形態は、一例であり、ノズル面116が洗浄漕113に下降する方式であってもよい。
洗浄漕113に洗浄液112を貯めることで、洗浄液を多く使用し、また、洗浄液の定期的な交換が必要となる。
洗浄漕113には、洗浄効果を高めるため、超音波等の外力を加える装置が付くこともある。
洗浄後には、造形液のメニスカスを作るために、ワイパークリーニングを入れることもある。
図7は、ノズル面を洗浄液噴出機構で洗浄した実施形態について説明する図である。
図7は、ヘッド面116の清掃の例として、ノズル面116に向け、洗浄液112を噴出させることで、汚れを除去している。
図7では、ステージ115上に載った洗浄液噴出機構114を用い、洗浄液112を噴出させることで、ノズル面116の清掃を行う。
ノズル面116全面に洗浄液112を付けるよう、ステージ115が移動し、洗浄液112を付ける。
この実施形態は、一例であり、ノズル面全面をカバーする洗浄液噴出機構であってもよい。
洗浄液噴出機構114は、水頭差であってもよいし、ポンプを使用してもよい。
洗浄後には、造形液のメニスカスを作るために、ワイパークリーニングを入れることもある。
ノズル面116には、撥水処理がされているため、洗浄液112は、滴化しやすい。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1~19及び比較例1~6)
<造形液の調製>
表1から表5に示す材料を混合し、80℃で加温しながら2時間マグネチックスターラーで撹拌し、2時間撹拌後、加温を停止してから室温(25℃)になるまで撹拌を続けることにより、実施例1~19及び比較例1~6の造形液を調製した。
なお、表1から表5における各材料の含有量を示す数値の単位は質量%である。また、各含有量は、固形分量ではなく全量を表す。
次に、得られた各造形液について、以下のようにして、各物性値を測定した。結果を表1~表5に示した。
<造形液の粘度η>
各造形液の25℃における粘度ηを、東機産業株式会社製のコーンプレート型粘度計VISCOMETER TV-25を用いて、25℃で測定した。
<造形液の表面張力γ>
各造形液の23℃における表面張力γを、協和界面科学株式会社製の自動表面張力計DY-300を用いて、Wilhelmy法(吊り板法)により、23℃で測定した。
<接触角θn(プレート法)>
各造形液と金属プレートとの接触角θnを、協和界面科学株式会社製の接触角計DMs-301を用いて、液滴法により、25℃で測定した。
金属プレートとしては、ミスミ株式会社製アルミフリープレート A 6061 LNQ-25-10-5を用いた。シリンジに造形液を充填し、自動液滴形成機能を使用して約2.0マイクロリットルの液滴を金属プレート上に滴下し、20秒後の液滴形状からθ/2法で得られた値を接触角θn(プレート法)とした。
<粉体接触角θ>
造形液の無機粒子との粉体接触角θを、協和界面科学株式会社製の自動表面張力計DY-500を用いて測定した。
無機粒子を含む粉体としては、アルミニウム粉体(東洋アルミニウム株式会社製、ALSI3-30B)を用いた。
カラムに無機粒子を含む粉体5gを充填し、粉体圧縮機で空隙率を35.6%~35.8%に調整した。
無機粒子を含む粉体に対して十分に濡れ性のよい液体としてアセトンを用い、アセトンの粉体接触角θが0度と仮定して毛管半径を求めた。「毛管半径」はカラムに金属粒子を充填した時の無機粒子の隙間の半径を意味し、協和界面科学株式会社製の自動表面張力計DY-500で測定した。
続いて、協和界面科学株式会社製の自動表面張力計DY-500を用い、測定開始から150秒から180秒の範囲での無機粒子を含む粉体への造形液の浸透速度を測定した。無機粒子を含む粉体への造形液の浸透速度は、下記数式(1)のLucas-Washburn式で表される。
ただし、数式(1)中、l(t)wettedは時刻tにおける造形液の浸透距離、tは測定時間、rは平均毛管半径、γは造形液の23℃における表面張力、θは造形液の無機粒子との粉体接触角、ηは造形液の25℃における粘度をそれぞれ表す。
得られた毛管半径、浸透速度、造形液の25℃における粘度γ、及び造形液の23℃における表面張力ηから、上記数式(1)に基づき、造形液の無機粒子との粉体接触角θを算出した。なお、造形液での測定は3回行い、最も小さい粉体接触角θを採用した。
<γcosθ/η>
浸透速度を表す指標としてγcosθ/η(m/s)を算出した。θは造形液の無機粒子との粉体接触角(°)、γは造形液の23℃における表面張力(mN/m)、ηは造形液の25℃における粘度(mPa・s)をそれぞれ表す。
<造形物の製造方法>
各造形液と無機粒子としてアルミニウム粉体(東洋アルミニウム株式会社製、ALSI3-30B)を用い、以下のようにして、積層造形を行い、各造形物を得た。
(1)まず、図3A~図3Eに示したような造形物の製造装置を用いて、供給槽21から造形槽22にアルミニウム粉体を移送させ、造形ステージ24上に平均厚みが84μmのアルミニウム粉体による薄層を形成した。
(2)次に、形成したアルミニウム粉体による薄層の表面に、造形物の製造装置におけるインクジェット吐出ヘッド(株式会社リコー製の産業用インクジェットRICOH MH5421)のノズルから各造形液を付与した。造形液の量は、1層に対して300dpiの解像度換算で140ピコリットルとした。造形液の吐出領域は54mm×10mmの長方形及び28mm×10mmの長方形とした。
(3)次に、上記(1)及び上記(2)の操作を54mm×10mmの長方形は2mmの総平均厚み、28mm×10mmの長方形は3mmの総平均厚みになるまで繰返し、アルミニウム粉体による薄層を順次積層して積層物を形成した(積層工程)。
(4)次に、積層物を真空下で加熱乾燥し、固化物を得た(加熱工程)。
(5)次に、固化物に対し、エアーブローにより余剰粉体を除去した(余剰粉体除去工程)。
以上により、54mm×10mmの長方形の造形物は寸法精度の評価に用い、28mm×10mmの長方形の造形物は曲げ強度の評価に用いた。
<寸法精度の評価>
得られた54mm×10mmの長方形の各造形物の寸法をノギスで測定し、以下の評価基準に基づき、寸法精度を評価した。
[評価基準]
◎:造形データの寸法との誤差が0.5mm以下であり、輪郭まではっきりしている
〇:造形データの寸法との誤差が0.5mm以下であるが、輪郭がややぼやけたり、余剰粉体除去工程にて容易に除去できるレベルの染み出し部が発生したりする(除去できるのでここでは〇としている)
×:造形データ寸法との誤差が0.5mmよりも大きかったり、余剰粉体除去工程にて容易に除去できない染み出し部が発生したりする
<曲げ強度の評価>
得られた28mm×10mmの長方形の各造形物の曲げ強度を、株式会社島津製作所製の万能試験機オートグラフAG-Iを用いて測定した。具体的には、1kN用ロードセル、及び3点曲げ治具を用い、支点間距離24mm、荷重点を1mm/分間の速度で各造形物を変位させた際の応力を歪量に対してプロットし、破断点の応力を曲げ強度(MPa)とし、以下の評価基準に基づき、評価した。
[評価基準]
◎:曲げ強度が5MPa以上
〇:曲げ強度が3MPa以上5MPa未満
×:曲げ強度が3MPa未満
<吐出性の評価>
各造形液を造形に用いた造形物の製造装置におけるインクジェット吐出ヘッド(株式会社リコー製の産業用インクジェットRICOH MH5421)のノズルから2kHz及び24kHzの吐出条件で3秒間吐出、10秒間休止を100回繰り返したときの100ノズル当たりの抜けノズル数をカウントし、以下の評価基準に基づき、吐出性を評価した。
[評価基準]
◎:2kHz及び24kHzの吐出にて抜けノズル数が2以下
〇:2kHzの吐出では抜けノズル数が2以下であるが、24kHzの吐出では抜けノズル数が2より大きい
×:2kHz及び24kHzの吐出にて抜けノズル数が2より大きい
Figure 2023100569000007
Figure 2023100569000008
Figure 2023100569000009
Figure 2023100569000010
Figure 2023100569000011
表1~表5において、各種材料の詳細については、以下のとおりである。
-樹脂-
・樹脂A:日本酢ビ・ポバール株式会社製、JMR-10LL、部分けん化ポリ酢酸ビニル樹脂
・樹脂B:積水化学工業株式会社製、エスレックBL-10、ポリビニルブチラール樹脂
-有機溶剤-
・triglyme:三協化学株式会社製、トリエチレングリコールジメチルエーテル
・DESU:東京化成工業株式会社製、こはく酸ジエチル
・TG/Tac:三協化学株式会社製トリグライムと東京化成工業株式会社製トリアセチンとを質量比60:40で混合したもの
-界面活性剤-
・S-693、AGCセイケミカル株式会社製、サーフロンS-693、フッ素界面活性剤
・BYK333、ビックケミー・ジャパン株式会社製、BYK-333、シリコーン界面活性剤
・BYK378、ビックケミー・ジャパン株式会社製、BYK-378、シリコーン界面活性剤
・S-611、AGCセイケミカル株式会社製、サーフロンS-611、フッ素界面活性剤
・S-647、AGCセイケミカル株式会社製、サーフロンS-647、フッ素界面活性剤
・SAG020、日信化学工業株式会社製、シルフェイスSAG020、シリコーン界面活性剤
・KF353、信越化学工業株式会社製、フッ素界面活性剤
表1では、実施例1~5及び比較例1は、樹脂の含有量を変化させて造形液を作製した。
樹脂の含有量が少なくなると、造形液の25℃での粘度が小さくなり、浸透速度が速くなり(「γcosθ/η」が大きくなる)、造形物の曲げ強度が低下することがわかった。
また、「γcosθ/η」が1.5以下であると、寸法精度が良好であり、「γcosθ/η」が1以下であると、寸法精度がより良好であることがわかった。
また、造形液の25での粘度が6mPa・s以上であると、造形物の曲げ強度が良好であり、造形液の25での粘度が12mPa・s以上であると、造形物の曲げ強度がより良好となることがわかった。
表2では、比較例2及び実施例6~11は、界面活性剤の含有量を変化させて造形液を作製した。
造形液が界面活性剤を含有しない場合は粉体接触角θが小さくなり、造形物の寸法精度が不良となることがわかった。
造形液が界面活性剤を含有する場合は粉体接触角θが大きくなり、界面活性剤の含有量が多いと粉体接触角θが大きい傾向となり、粉体接触角θが50°以上であると、造形物の寸法精度が良好であることがわかった。「γcosθ/η」が1.0以下であると寸法精度が更に優れることがわかった。
また、造形液の23℃での表面張力が22mN/m以上であると、造形液の吐出性が優れることがわかった。
表3及び表5では、比較例3~6及び実施例15~19は、界面活性剤の種類を変えて造形液を作製した。
比較例3~6の界面活性剤(「BYK333」、「BYK378」、「S-611」、「S-647」)は、いずれも粉体接触角θが50°未満であり、寸法精度が不良であることがわかった。
実施例15~19の界面活性剤(「SAG020」、「KF353」)は、いずれも寸法精度、曲げ強度、及び吐出性が良好であることがわかった。
表4では、実施例12~13は、有機溶剤の種類を変えて造形液を作製した。実施例12~13の有機溶剤(「DESU」、「TG/TAc」)は、いずれも寸法精度、曲げ強度、及び吐出性が良好な結果が得られた。
また、表4中実施例14は、樹脂の種類を変えて造形液を作製した。実施例14の樹脂(樹脂B)は、寸法精度、曲げ強度、及び吐出性が良好であることがわかった。
<造形液の付与量>
実施例2において、1ノズル1滴あたりの造形液体積、解像度、又は1ボクセルあたりに滴下する滴数を調整することにより造形液の付与量を変化させて、実施例1~19及び比較例1~6と同様にして、下記の表6に示す、30mm×10mm×3mmの直方体の造形物No.1~14を作製した。
次に、得られた造形物No.1~14について、以下のようにして、局所的な染み出しの有無を評価し、曲げ強度を測定し、総合評価を行った。結果を表6及び図2に示した。
<局所的な染み出しの有無の評価>
30mm×10mm×3mmの直方体の各造形物に、局所的な染み出しと呼称する箇所の有無を目視で確認し、下記基準で評価した。局所的な染み出しの特徴として、狙いの寸法よりも大きく、側面に生じることが挙げられる。この特徴となる原因は、平坦化ローラで粉体を造形槽の上へと搬送する際に造形液被付与層が押されて造形液が粉面上に広がることに起因する。局所的な染み出しは、造形物周囲の粉を除去する際の衝撃によって簡単に除去でき製品としては問題にはならない。
[評価基準]
〇:局所的な染み出し無し
×:局所的な染み出し有り
<曲げ強度>
30mm×10mm×3mmの直方体の各造形物の曲げ強度を、株式会社島津製作所製の万能試験機オートグラフAG-Iを用いて測定した。具体的には、1kN用ロードセル、及び3点曲げ治具を用い、支点間距離24mm、荷重点を1mm/分間の速度で各造形物を変位させた際の応力を歪量に対してプロットし、破断点の応力を曲げ強度(MPa)とし、以下の評価基準に基づき、評価した。
[評価基準]
〇:曲げ強度が3MPa以上
△:曲げ強度が0.5MPa以上3MPa未満
×:曲げ強度が0.5MPa未満
<総合評価>
局所的染み出しの評価結果と曲げ強度の評価結果に基づき、以下の基準により、総合評価を行った。
[評価基準]
〇:局所的染み出し及び曲げ強度の評価がいずれも〇の場合
△:局所的染み出し及び曲げ強度の評価のいずれかが△の場合
×:局所的染み出し及び曲げ強度の評価のいずれかが×又は両方とも×の場合
Figure 2023100569000012
表6及び図2の結果から、付与する造形液量が0.033μl/mm以上0.33μl/mm以下である図2のAの範囲では、平坦化ローラで粉体を造形槽の上へと搬送する際に造形液被付与層が押されても各液滴の両側に濡れ広がるスペースの余裕があり、局所的な造形液の染み出しが発生しないことがわかった。また、付与する造形液量が0.033μl/mm以下であると、造形物が崩壊することがわかった。
また、付与する造形液量が0.148μl/mm以上0.33μl/mm以下である図2のBの範囲では、造形物を支持する樹脂量が増加することにより、造形物の曲げ強度が3MPa以上となることがわかった。造形物の曲げ強度が3MPa以上であると、30mm×10mm×3mmの直方体の造形物を100mmの高さから落下させても破損しない強度を有している。
<洗浄メンテナンスの評価>
洗浄メンテナンスについて、ノズル面に洗浄液が付与されている最中にノズルから洗浄液を吸ってしまい、ノズル内の造形液が洗浄液と混ざってしまうことがある。ここでは、造形液と洗浄液が混ざることを混色と呼ぶことにする。洗浄メンテナンスでは、図9に示したノズル面洗浄液噴出機構を用い、洗浄液としてトリエチレングリコールジメチルエーテルを用いた。
実施例2の造形液を透明シート(OHPシート VF-1420N、コクヨ社製)に吐出した後に、吐出された個所を可視化できるようにアルミニウム粉体(東洋アルミニウム株式会社製、ALSI3-30B)をふりかけ、図8A~図8Cのようなパターンを形成した。このように造形液が着弾した箇所にアルミニウム粉体が付着し、パターンが形成されている。
図8Aのように正常時は吐出された線がはっきりと出ているのに対し、図8B及び図8Cのように洗浄メンテナンス後に吐出された線はぼやけている。即ち造形液が着弾した位置が狙いの位置からずれている、あるいは、一つの造形液の液滴でなく複数の液滴に分かれて着弾していることがわかる。この原因は、洗浄メンテナンスによって、ノズル内の造形液が洗浄液と混ざり、造形液特性が変化し、吐出が不安定になったためだと考えられる。このように造形液特性が変化したり、造形液の吐出が不安定であると、造形物の強度や寸法精度などの品質に悪影響を及ぼす。
そこで、洗浄メンテナンスを行っている最中のノズルにかける圧力(ここでは、「制御圧」と呼ぶことにする)を制御することにより、ノズル内の造形液が洗浄液と混ざってしまうことを防ぐことを目的とする。
通常、吐出ヘッドから造形液を吐出するためには、ヘッド内にいる造形液に対し適切な負圧をかけて維持する必要がある。通常、かける負圧は-25mmaq~-10mmaq程度である。本発明においては、吐出ヘッド内の造形液にかける圧力(制御圧)を制御する。
次に、洗浄液(トリエチレングリコールジメチルエーテル)、図9に示したノズル面洗浄液噴出機構を用い、移動ステージの移動速度10mm/sで、表7に示すように制御圧を変えた状態で洗浄メンテナンスを行った。その後、透明シート(OHPシート VF-1420N、コクヨ社製)に実施例2の造形液を吐出した後に、アルミニウム粉体(東洋アルミニウム株式会社製、ALSI3-30B)をふりかけ、図8A~図8Cに示すようにパターンを印字し、下記の基準により吐出線のぼやけ度合い(混色)を判定した。結果を表7に示した。
[評価基準]
図8Bのように吐出線のぼやけがあれば(混色状態:△)、図8Cのように吐出線のぼやけがかなりあれば(混色状態:×)、図8Aのように吐出線のぼやけがなければ(混色していない状態:〇)とした。
Figure 2023100569000013
表7の結果から、通常の制御圧-25mmaq~-10mmaqに維持した状態で洗浄メンテナンスすると混色が発生するのに対し、制御圧を0mmaq以上にすることで混色が発生しないことがわかった。即ち、洗浄メンテナンス中にヘッド内の造形液にかかる圧を正圧側にすることで、洗浄液がノズル内に引き込まれなくなり、混色を防ぐことができる。更に制御圧が0mmaq~25mmaqではノズルから造形液の液滴が出てこない状態であるにもかかわらず、混色が発生していないことがわかった。
制御圧が25mmaqを超えると、ノズルから造形液の液滴が出てくる状態(パージ状態)であるので、洗浄メンテナンス終了後にはノズル面に造形液の液滴が残る。そのため、残った造形液の液滴を払拭メンテナンス等で除去する必要がある。固着しやすい造形液であると、払拭メンテナンスでノズル面に造形液が残り、その造形液が固着してしまう可能性がある。
一方、制御圧が0mmaq~25mmaqでは造形液がパージされないので、洗浄メンテナンス終了後にノズル面に残るのは洗浄液のみである。よって、制御圧25mmaqを超えて設定するよりも、ノズル面に造形液が固着する可能性が低くなる。又は、後述するように、洗浄メンテナンスの条件次第でノズル面に洗浄液が残らなくすることもでき、その場合は払拭メンテナンス等が必要なく、払拭メンテナンスによるノズル面の撥水膜の劣化等を防ぐことができる。
<粉体除去性、洗浄液の残り、及び混色の評価>
粉が付着した状態のノズル面を洗浄メンテナンスし、洗浄メンテナンス前後のノズル面の様子をカメラで撮影し、画像を比較することで粉の除去性、洗浄液の残り、混色具合を評価した。洗浄メンテナンスには、図9に示したノズル面洗浄液噴出機構を用い、表8に示すように洗浄液噴出機構の移動速度を変化させ、制御圧は、-25mmaq、+25mmaqに変えた状態でそれぞれ評価した。洗浄メンテナンスには、洗浄液(トリエチレングリコールジメチルエーテル)、実施例2の造形液、アルミニウム粉体(東洋アルミニウム株式会社製、ALSI3-30B)を用いた。混色状態は、洗浄メンテナンス後に透明シート(OHPシート VF-1420N、コクヨ社製)に実施例2の造形液を吐出した後に、アルミニウム粉体(東洋アルミニウム株式会社製、ALSI3-30B)をふりかけ、図8A~図8Cに示すようにパターンを印字し、下記の基準により吐出線のぼやけ度合い(混色)を判定した。
結果を表8に示した。図10Aは清掃されたノズル面の状態を示す写真である。図10Bはノズル面に粉が付着した状態を示す写真である。図10Cは移動速度10mm/sで洗浄メンテナンス後のノズル面の状態を示す写真である。図10Dは移動速度30mm/sで洗浄メンテナンス後のノズル面の状態を示す写真である。図10Eは移動速度50mm/sで洗浄メンテナンス後のノズル面の状態を示す写真である。
[評価基準]
(i)粉体除去性については、ノズル面に付着した粉体を90%以上除去できていれば○、粉体を90%未満しか除去できていなければ×、と評価した。
(ii)洗浄液の残りについては、洗浄メンテナンス後にノズル面に洗浄液が残っていなければ○、洗浄液が少し残っていれば△、洗浄液がかなり残っていれば×と評価した。
(iii)洗浄メンテナンスする際に、制御圧を通常時と同じ-25mmaqのままで洗浄メンテナンスし、その後、図8A~図8Cのように混色判定した結果を示す。図8Bのように混色が発生していれば△、図8Cのように混色が発生していれば×、図8Aのように混色が発生していなければ○、と評価した。
(iv)洗浄メンテナンスする際に、制御圧を+25mmaqに制御し、(iii)と同様に混色判定を行った。
Figure 2023100569000014
表8の結果から、ノズル面に付着した粉体を除去するためには、移動速度20mm/s以下である必要があることがわかった。
混色については、移動速度が遅くなればなるほど、洗浄液がノズル面に接している時間が長くなるため、混色のリスクが増える。実際に制御圧-25mmaqのままで洗浄メンテナンスした場合は移動速度が遅くなるにつれて、混色の度合いがひどくなる傾向がみられた。これに対し、制御圧+25mmaqで洗浄メンテナンスすると混色が抑えられることを確認した。しかし、移動速度5mm/sの場合には、制御圧+25mmaqとしても混色が少し残ってしまう結果であった。
よって、洗浄メンテナンスにおいて、ノズル面に付着した粉体を除去し、かつ混色を発生させないためには、洗浄液噴出機構の移動速度10mm/s~20mm/sであることが望ましい。本実験における洗浄液噴出機構について、洗浄液がノズル面と接触している距離が20mmであるため(図9参照)、即ちノズル面の一点について1秒~2秒間洗浄液が付与されていればよいことがわかった。
更に、洗浄メンテナンス後に、造形液や洗浄液の液滴がノズル面に残るかを評価した結果、10mm/s以下であれば液滴が残らないことがわかった。ノズル面に液滴が残った場合は、払拭メンテナンス等でこれを除去する必要があるが、移動速度10mm/sにすればこれが必要なくなる。払拭メンテナンスが不要になれば、払拭メンテナンスにかかる時間を減らせるとともに、払拭メンテナンスによる撥水膜の劣化等を防ぐことができる。
また、移動速度5mm/sのときのように混色が少し残ってしまった場合でも、洗浄メンテナンスの後に空吐出でノズルにいる造形液を排出すれば、混色が解消される(吐出線のぼやけがなくなる)ことがわかった。
本発明の態様としては、例えば、以下のとおりである。
<1> 無機粒子を含む粉体の層に対して付与される造形液であって、
前記無機粒子との粉体接触角θが50°以上であり、かつ、次式、γcosθ/η≦1.5(m/s)、を充たすことを特徴とする造形液である。
ただし、前記式中、θは造形液の無機粒子との粉体接触角(°)、γは造形液の23℃における表面張力(mN/m)、ηは造形液の25℃における粘度(mPa・s)を表す。
<2> 無機粒子を含む粉体の層に対して付与される造形液であって、
アルミニウム粒子との粉体接触角θが50°以上であり、かつ、次式、γcosθ/η≦1.5(m/s)、を充たすことを特徴とする造形液である。
ただし、前記式中、θは造形液のアルミニウム粒子との粉体接触角(°)、γは造形液の23℃における表面張力(mN/m)、ηは造形液の25℃における粘度(mPa・s)を表す。
<3> 前記粉体接触角θが50°以上80°以下である、前記<1>から<2>のいずれかに記載の造形液である。
<4> 次式、γcosθ/η≦1(m/s)、を充たす、前記<1>から<3>のいずれかに記載の造形液である。
<5> 25℃での粘度ηが6mPa・s以上である、前記<1>から<4>のいずれかに記載の造形液である。
<6> 25℃での粘度ηが12mPa・s以上である、前記<1>から<5>のいずれかに記載の造形液である。
<7> 23℃での表面張力γが22mN/m以上である、前記<1>から<6>のいずれかに記載の造形液である。
<8> 付与する造形液量が0.033μl/mm以上0.33μl/mm以下である、前記<1>から<7>のいずれかに記載の造形液である。
<9> 付与する造形液量が0.148μl/mm以上0.33μl/mm以下である、前記<8>に記載の造形液である。
<10> 解像度が600dpi以上である、前記<1>から<9>のいずれかに記載の造形液である。
<11> 造形液を吐出するノズルが設けられたノズル面を洗浄する洗浄液を付与する際に、前記ノズルにかかる圧力が0mmaq以上25mmaq以下となるように制御する、前記<1>から<10>のいずれかに記載の造形液である。
<12> 前記ノズル面に洗浄液を付与する時間が1秒以上2秒以下である、前記<11>に記載の造形液である。
<13> 無機粒子を含む粉体の層に対して付与される造形液であって、
下記構造式(1)で表される構造単位を有する樹脂、有機溶剤、及び界面活性剤を含有することを特徴とする造形液である。
<14> 前記界面活性剤が、フッ素界面活性剤及びシリコーン界面活性剤の少なくともいずれかである、前記<13>に記載の造形液である。
<15> 前記界面活性剤の含有量が0.001質量%以上1質量%以下である、前記<13>から<14>のいずれかに記載の造形液である。
<16> 前記構造式(1)で表される構造単位を有する樹脂が、ポリ酢酸ビニル樹脂、部分けん化ポリ酢酸ビニル樹脂、及びポリビニルブチラール樹脂から選択される少なくとも1種を含む、前記<13>から<15>のいずれかに記載の造形液である。
<17> 前記構造式(1)で表される構造単位を有する樹脂の含有量が5質量%以上20質量%以下である、前記<13>から<16>のいずれかに記載の造形液である。
<18> 前記有機溶剤が、アルコキシ基、エーテル結合、及びエステル結合から選択される少なくとも1種の構造を有する、前記<13>から<17>のいずれかに記載の造形液である。
<19> 前記有機溶剤がアルキレングリコールジアルキルエーテル化合物を含む、前記<18>に記載の造形液である。
<20> 実質的に水を含有しない、前記<13>から<19>のいずれかに記載の造形液である。
<21> 前記無機粒子との粉体接触角θが50°以上であり、かつ、次式、γcosθ/η≦1.5(m/s)、を充たす、前記<13>から<20>のいずれかに記載の造形液である。
ただし、前記式中、θは造形液の無機粒子との粉体接触角(°)、γは造形液の23℃における表面張力(mN/m)、ηは造形液の25℃における粘度(mPa・s)を表す。
<22> 前記<1>から<21>のいずれかに記載の造形液と、無機粒子とを有することを特徴とする造形用キット。
<23> 前記無機粒子が金属粒子であり、前記金属粒子がアルミニウム、亜鉛、マグネシウム、及びこれらの合金から選択される少なくとも1種を含む、前記<22>に記載の造形用キットである。
<24> 前記無機粒子が樹脂により表面が被覆されていない、前記<20>から<21>のいずれかに記載の造形用キットである。
<25> 無機粒子を含む粉体の層を形成する粉体層形成工程と、
前記粉体の層に対して前記<1>から<21>のいずれかに記載の造形液を付与する造形液付与工程と、
前記粉体層形成工程及び前記造形液付与工程を順次繰り返すことで積層物を形成する積層工程と、
を含むことを特徴とする造形物の製造方法である。
<26> 前記造形液付与工程が、前記粉体の層に対して前記造形液をインクジェット方式で吐出する、請求項23に記載の造形物の製造方法。
<27> 前記積層物を加熱することで固化物を形成する加熱工程と、
前記固化物に付着している前記粉体である余剰粉体を除去してグリーン体を得る余剰粉体除去工程と、
を更に含む、前記<25>から<26>のいずれかに記載の造形物の製造方法である。
<28> 前記グリーン体を加熱することで樹脂が除去された脱脂体を形成する脱脂工程と、
前記脱脂体を加熱することで焼結体を形成する焼結工程と、
を更に含む、前記<27>に記載の造形物の製造方法である。
前記<1>から<21>のいずれかに記載の造形液、前記<22>から<24>のいずれかに記載の造形用キット、及び前記<25>から<28>のいずれかに記載の造形物の製造方法によると、従来における諸問題を解決し、本発明の目的を達成することができる。
1 狙い寸法
2 非造形部への染み出し
3 局所的な染み出し
10 造形液の液滴
12 平坦化ローラ
13 粉体除去板
20 無機粒子を含む粉体
21 供給槽
22 造形槽
23 供給ステージ
24 造形ステージ
29 余剰粉体受け槽
30 造形液被付与層
31 粉体の層
52 液体吐出ユニットのヘッド
特開2016-107465号公報 特開2018-154074号公報

Claims (26)

  1. 無機粒子を含む粉体の層に対して付与される造形液であって、
    前記無機粒子との粉体接触角θが50°以上であり、かつ、次式、γcosθ/η≦1.5(m/s)、を充たすことを特徴とする造形液。
    ただし、前記式中、θは造形液の無機粒子との粉体接触角(°)、γは造形液の23℃における表面張力(mN/m)、ηは造形液の25℃における粘度(mPa・s)を表す。
  2. 無機粒子を含む粉体の層に対して付与される造形液であって、
    アルミニウム粒子との粉体接触角θが50°以上であり、かつ、次式、γcosθ/η≦1.5(m/s)、を充たすことを特徴とする造形液。
    ただし、前記式中、θは造形液のアルミニウム粒子との粉体接触角(°)、γは造形液の23℃における表面張力(mN/m)、ηは造形液の25℃における粘度(mPa・s)を表す。
  3. 前記粉体接触角θが50°以上80°以下である、請求項1から2のいずれかに記載の造形液。
  4. 次式、γcosθ/η≦1(m/s)、を充たす、請求項1から3のいずれかに記載の造形液。
  5. 25℃での粘度ηが6mPa・s以上である、請求項1から4のいずれかに記載の造形液。
  6. 付与する造形液量が0.033μl/mm以上0.33μl/mm以下である、請求項1から5のいずれかに記載の造形液。
  7. 付与する造形液量が0.148μl/mm以上0.33μl/mm以下である、請求項6に記載の造形液。
  8. 解像度が600dpi以上である、請求項1から7のいずれかに記載の造形液。
  9. 造形液を吐出するノズルが設けられたノズル面を洗浄する洗浄液を付与する際に、前記ノズルにかかる圧力が0mmaq以上25mmaq以下となるように制御する、請求項1から8のいずれかに記載の造形液。
  10. 前記ノズル面に洗浄液を付与する時間が1秒以上2秒以下である、請求項9に記載の造形液。
  11. 無機粒子を含む粉体の層に対して付与される造形液であって、
    下記構造式(1)で表される構造単位を有する樹脂、有機溶剤、及び界面活性剤を含有することを特徴とする造形液。
  12. 前記界面活性剤が、フッ素界面活性剤及びシリコーン界面活性剤の少なくともいずれかである、請求項11に記載の造形液。
  13. 前記界面活性剤の含有量が0.001質量%以上1質量%以下である、請求項11から12のいずれかに記載の造形液。
  14. 前記構造式(1)で表される構造単位を有する樹脂が、ポリ酢酸ビニル樹脂、部分けん化ポリ酢酸ビニル樹脂、及びポリビニルブチラール樹脂から選択される少なくとも1種を含む、請求項11から13のいずれかに記載の造形液。
  15. 前記構造式(1)で表される構造単位を有する樹脂の含有量が5質量%以上20質量%以下である、請求項11から14のいずれかに記載の造形液。
  16. 前記有機溶剤が、アルコキシ基、エーテル結合、及びエステル結合から選択される少なくとも1種の構造を有する、請求項11から15のいずれかに記載の造形液。
  17. 前記有機溶剤がアルキレングリコールジアルキルエーテル化合物を含む、請求項16に記載の造形液。
  18. 実質的に水を含有しない、請求項11から17のいずれかに記載の造形液。
  19. 前記無機粒子との粉体接触角θが50°以上であり、かつ、次式、γcosθ/η≦1.5(m/s)、を充たす、請求項11から18のいずれかに記載の造形液。
    ただし、前記式中、θは造形液の無機粒子との粉体接触角(°)、γは造形液の23℃における表面張力(mN/m)、ηは造形液の25℃における粘度(mPa・s)を表す。
  20. 請求項1から19のいずれかに記載の造形液と、無機粒子とを有することを特徴とする造形用キット。
  21. 前記無機粒子が金属粒子であり、前記金属粒子がアルミニウム、亜鉛、マグネシウム、及びこれらの合金から選択される少なくとも1種を含む、請求項20に記載の造形用キット。
  22. 前記無機粒子が樹脂により表面が被覆されていない、請求項20から21のいずれかに記載の造形用キット。
  23. 無機粒子を含む粉体の層を形成する粉体層形成工程と、
    前記粉体の層に対して請求項1から19のいずれかに記載の造形液を付与する造形液付与工程と、
    前記粉体層形成工程及び前記造形液付与工程を順次繰り返すことで積層物を形成する積層工程と、
    を含むことを特徴とする造形物の製造方法。
  24. 前記造形液付与工程が、前記粉体の層に対して前記造形液をインクジェット方式で吐出する、請求項23に記載の造形物の製造方法。
  25. 前記積層物を加熱することで固化物を形成する加熱工程と、
    前記固化物に付着している前記粉体である余剰粉体を除去してグリーン体を得る余剰粉体除去工程と、
    を更に含む、請求項23から24のいずれかに記載の造形物の製造方法。
  26. 前記グリーン体を加熱することで樹脂が除去された脱脂体を形成する脱脂工程と、
    前記脱脂体を加熱することで焼結体を形成する焼結工程と、
    を更に含む、請求項25に記載の造形物の製造方法。

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