JP2023098448A - 金属水素化物電池のバイポーラ電極、及びそのバイポーラ電極を備えた金属水素化物電池 - Google Patents

金属水素化物電池のバイポーラ電極、及びそのバイポーラ電極を備えた金属水素化物電池 Download PDF

Info

Publication number
JP2023098448A
JP2023098448A JP2021215214A JP2021215214A JP2023098448A JP 2023098448 A JP2023098448 A JP 2023098448A JP 2021215214 A JP2021215214 A JP 2021215214A JP 2021215214 A JP2021215214 A JP 2021215214A JP 2023098448 A JP2023098448 A JP 2023098448A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
current collector
active material
phosphorus
metal hydride
layer
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2021215214A
Other languages
English (en)
Inventor
祐貴 中條
Yuki Nakajo
佑太朗 川畑
Yutaro Kawahata
周平 吉田
Shuhei Yoshida
耕二郎 田丸
Kojiro Tamaru
佳浩 中垣
Yoshihiro Nakagaki
貴之 弘瀬
Takayuki Hirose
素宜 奥村
Motoyoshi Okumura
裕之 海谷
Hiroyuki Kaiya
慎一郎 堀江
Shinichiro Horie
裕介 橋本
Yusuke Hashimoto
啓志 桂
Keiji Katsura
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toyota Industries Corp
Toyo Kohan Co Ltd
Toyota Motor Corp
Original Assignee
Toyota Industries Corp
Toyo Kohan Co Ltd
Toyota Motor Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toyota Industries Corp, Toyo Kohan Co Ltd, Toyota Motor Corp filed Critical Toyota Industries Corp
Priority to JP2021215214A priority Critical patent/JP2023098448A/ja
Publication of JP2023098448A publication Critical patent/JP2023098448A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E60/00Enabling technologies; Technologies with a potential or indirect contribution to GHG emissions mitigation
    • Y02E60/10Energy storage using batteries

Landscapes

  • Cell Electrode Carriers And Collectors (AREA)
  • Battery Electrode And Active Subsutance (AREA)

Abstract

【課題】電圧低下現象を低減して長期信頼性が向上された金属水素化物電池のバイポーラ電極及びバイポーラ電極を備えた金属水素化物電池を提供する。【解決手段】集電体と、集電体の第1面に設けられる負極活物質層と、集電体の第2面に設けられる正極活物質層と、を備え、前記負極活物質層は金属水素化物を含み、前記集電体は、鋼板と、鋼板の少なくとも一方の面に形成されたリン含有ニッケル層と、を有することを特徴とする、金属水素化物電池のバイポーラ電極。【選択図】図1(a)

Description

本発明は、金属水素化物電池のバイポーラ電極及びそのバイポーラ電極を備えた金属水素化物電池に関する。
金属水素化物電池は、例えば、正極活物質として水酸化ニッケルなどのニッケル水酸化物を有する正極と、負極活物質として水素吸蔵合金を有する負極と、アルカリ金属水溶液からなる電解液とを具備する二次電池が一般的である。
従来の蓄電モジュールとして、電極板の一方の面に正極が形成され、他方の面に負極が形成されたバイポーラ電極を備えるバイポーラ電池が知られている(例えば、下記特許文献1参照)。バイポーラ電池は、バイポーラ電極とセパレータとが積層方向に沿って交互に積層された積層体を備えている。積層方向における積層体の両端には、正極または負極の一方のみを備える終端電極が位置している。電極間に形成された内部空間には、電解液が収容されている。
特開2005-135764号公報
コスト、電解液への耐反応性などの観点から、金属水素化物電池のバイポーラ電極を構成する集電体には、めっき鋼板が用いられる。本発明者らが、めっき鋼板からなる集電体と、水素吸蔵合金を含有する負極と正極を用いてバイポーラ電極を製造し、当該バイポーラ電極を用いた水素化物電池を組み立てて保存試験を行ったところ、原因不明の電圧低下(自己放電)現象が確認された。
本発明の目的は、自己放電を低減することのできる金属水素化物電池のバイポーラ電極及びバイポーラ電極を備えた金属水素化物電池を提供することである。
本発明の発明者らは、鋭意検討の結果、バイポーラ電極の集電体を介して対極に水素が移動する現象が自己放電に関与していると考え、特定の材料を含む層によって水素透過を低減させる着想を得た。そして、特定の材料を含む層を備える集電体は、自己放電を低減する事が可能であることを見出し、本発明を完成させた。
上記目的を達成するため、本実施形態に係る金属水素化物電池のバイポーラ電極は、集電体と、集電体の第1面に設けられる負極活物質層と、集電体の第2面に設けられる正極活物質層と、を備え、前記負極活物質層は金属水素化物を含み、前記集電体は、鋼板と、鋼板の少なくとも一方の面に形成されたリン含有ニッケル層と、を有することを特徴とする。
本発明によれば、電圧低下現象を低減して長期信頼性が向上された金属水素化物電池のバイポーラ電極を提供することができる。また、そのバイポーラ電極を備えた金属水素化物電池を提供することができる。
本実施形態の金属水素化物電池のバイポーラ電極の断面を示す模式図である。 本実施形態の金属水素化物電池のバイポーラ電極の断面を示す模式図である。 電気化学的水素透過法の説明図である。 他の実施形態の金属水素化物電池のバイポーラ電極の断面を示す模式図である。 他の実施形態の金属水素化物電池のバイポーラ電極の断面を示す模式図である。 他の実施形態の金属水素化物電池のバイポーラ電極の断面を示す模式図である。 本実施形態の金属水素化物電池のバイポーラ電極が適用される蓄電装置の一例を示す概略断面図である 図4における蓄電モジュールの内部構成を示す概略断面図である。 本実施形態の金属水素化物電池のバイポーラ電極を適用した評価用電池の模式図である。 本実施形態の金属水素化物電池のバイポーラ電極の効果を示すバブルチャートである。
以下に、本発明の金属水素化物電池のバイポーラ電極、金属水素化物電池、及び、当該金属水素化物電池のバイポーラ電極を製造可能な方法、当該金属水素化物電池のバイポーラ電極を用いた金属水素化物電池を製造可能な方法について、順を追って詳細に説明する。
以下、必要に応じて、本発明の金属水素化物電池のバイポーラ電極を製造可能な方法を、本発明の電極製造方法と称する場合がある。また、本発明の金属水素化物電池を製造可能な方法を、本発明の電池製造方法と称する場合がある。本発明の金属水素化物電池のバイポーラ電極を、本発明の電極、又は本発明のバイポーラ電極と称する場合がある。なお、特に断らない限り、本明細書に記載された数値範囲「x~y」は、下限xおよび上限yをその範囲に含む。そして、これらの上限値および下限値、ならびに実施例中に列記した数値も含めてそれらを任意に組み合わせることで数値範囲を構成し得る。さらに数値範囲内から任意に選択した数値を上限、下限の数値とすることができる。
<金属水素化物電池のバイポーラ電極:第1実施形態>
まず、本発明の金属水素化物電池のバイポーラ電極について、以下の実施形態と図を用いて詳細に説明する。図1(a)に示すように本実施形態の金属水素化物電池のバイポーラ電極100は、集電体10と、集電体10の第1面(10A)に設けられる負極活物質層20と、集電体10の前記第1面(10A)とは異なる第2面(10B)に設けられる正極活物質層30とを備え、負極活物質層20は金属水素化物を含み、集電体10は、鋼板13と鋼板13の少なくとも一方の面に備えられたリン含有ニッケル層15を含むことを特徴とする。
本実施形態の金属水素化物電池のバイポーラ電極100は、基本的に集電体10の第1面(10A)に負極活物質(金属水素化物)を備え、第1面(10A)と反対側の第2面(10B)に正極活物質を備えるバイポーラ電極として機能するが、これに限られるものではない。すなわち本発明の電極は、金属水素化物を備える第1の集電体と正極活物質を備える第2の集電体とが接合されてバイポーラ電極を構成するものであっても良い。
集電体10は、鋼板13の表面にリン含有ニッケル層15を備える。鋼板13としては、例えば炭素量が0.25重量%未満の低炭素鋼、炭素量が0.01重量%未満の極低炭素鋼、極低炭素鋼にTiやNbなどを添加してなる非時効性極低炭素鋼等の炭素鋼が挙げられる。低炭素鋼としては、低炭素アルミキルド鋼(炭素量0.01~0.15重量%)、JIS G 3141:2005にて規定される冷間圧延鋼板(SPCC等)等が挙げられる。圧延性と経済性から、低炭素アルミキルド鋼(炭素量0.01~0.15重量%)を採用するのが好ましい。鋼板13の主たる材料はFeであり、Fe以外の金属元素を含んでいてもよい。なお、鋼板13中のFe以外の金属元素の割合は10wt%以下が好ましく、5wt%以下がより好ましく、2wt%以下がさらに好ましく、1wt%以下が特に好ましい。集電体10の厚みとしては、5μm~1000μmを例示できる。
鋼板13の少なくとも一方の面に形成されたリン含有ニッケル層15は、実質的に、ニッケル(Ni)及びリン(P)からなる合金が含まれる合金層(ニッケル-リン合金層)である。本実施形態におけるリン含有ニッケル層15は、ニッケル(Ni)及びリン(P)を含有していればよく、各成分がどのような状態で含まれているかは特に限定されるものではない。
なお本実施形態においてリン含有ニッケル層15中に含まれる金属元素としては、ニッケルとリンに制限されず、本発明の課題を解決し得る限り、他の金属元素を含んでいてもよい。例えば、リン含有ニッケル層15中には、コバルト(Co)、モリブデン(Mo)等の金属元素や、不可避の不純物が含まれていてもよい。なお、リン含有ニッケル層15中のニッケル及びリン以外の金属元素の割合は10wt%以下が好ましく、5wt%以下がより好ましく、1wt%以下がさらに好ましく、0.5wt%以下が特に好ましい。
本実施形態において、リン含有ニッケル層15による水素透過低減の効果について説明する。すなわち、本実施形態の金属水素化物電池のバイポーラ電極は、その集電体中に含まれるリン含有ニッケル層15により、水素透過低減の効果を有する。
ニッケル金属水素化物電池の放電反応は以下のように表される。
正極:NiOOH + HO + e → Ni(OH) + OH
負極:MH + OH → M + HO + e
さらに、負極における反応は以下の2つの反応からなる。
MH = M + H + e
H + OH = HO
反応の際、バイポーラ電極では、電子 eは集電体を介して負極から正極に移動する。水酸イオンOHは、電解液を介して正極から隣り合うバイポーラ電極の負極に移動する。電池の外では、負極から外部回路(負荷)を介して電子が正極に移動する。
一方、バイポーラ電極の集電体が水素透過を許容する場合、外部回路に接続されていない状態でも、正極及び負極で以下の反応が生じる。
正極:NiOOH + H + e → Ni(OH)
H → H + e
負極:H + e → H
MH → M + H + e
負極活物質層(金属水素化物MH)と正極活物質層との間に生じる水素濃度勾配によって、負極活物質層では上記反応により水素原子[H]が生じる。水素原子[H]は負極活物質層から集電体を介して、対極である正極活物質層に移動する。正極に移動した水素原子[H]は、上記反応式のように正極で消費されることから、常に負極活物質層と正極活物質層との間に、水素濃度勾配が生じる。結果として、この反応サイクルが繰り返し起こり、正極の電位は低下し続け、かつ負極の電位は上昇し続けることで、電池電圧の低下を引き起こす。上記反応は、通常の放電時に正極及び負極で生じる反応とは異なるものの、活物質の反応結果としては同じであり、反応によって正極及び負極のそれぞれの電位は低下する。金属水素化物による水素の放出は吸熱反応であり、また電位が高いほど活物質の反応性は高いため、上述の反応は、高電位、高温にて顕著となる。反応の際、バイポーラ電極では、電子eの集電体を介した移動は生じない。
そこで、本発明者は、集電体を構成する鋼板に、対極への水素透過を低減する被覆を形成させることを想起した。具体的には、鋼板の少なくとも一方の面にリン含有ニッケル層を形成することを想起した。
鉄鋼の遅れ破壊現象(水素脆性)が水素の拡散によって支配されていることが従来知られている。これらの従来技術は、鋼中に水素が留まることによる鋼そのものの機械特性への影響を検証する技術である。
一方で、本発明のバイポーラ電極のように、鋼板の両面において生じる水素濃度勾配を前提として、鋼板中の水素透過を低減させる技術は知られていない。本発明者らが鋭意検討した結果、鋼板の少なくとも一方の面にリン含有ニッケル層を形成させることにより、バイポーラ電極の集電体材料となる鋼板中の水素透過の低減が可能であることを見いだした。
リン含有ニッケル層による鋼板中の水素透過の低減効果について、以下のように電気化学的水素透過法を用いて評価することが可能である。評価に用いられる水素透過試験装置を図2に模式的に示す。水素透過試験装置は、2つの電解槽EC及びECが試験片Wを挟んで対向して配置されている。図2中左側の電解槽ECは、カソード側(水素侵入側)であり、右側の電解槽ECがアノード側(水素検出側)である。電解槽ECで水素を発生させ、試験片Wを透過して電解槽ECまで到達した水素が酸化される時のアノード電流を検出する。図中、RE1、RE2は参照電極、CE1、CE2は対極、WEは作用電極としての試験片Wであり、それぞれポテンショスタットPS、ポテンショ・ガルバノスタットPS/GSに接続されている。参照電極RE1、RE2はHg/HgO又はカロメル電極を用いることができる。対極CE1、CE2は白金を用いることができる。電解液Eaは、KOH、NaOH、LiOHを含むアルカリ電解液を用いることができる。
水素侵入側の電位が-0.6V、-0.45V、-0.3V(vsRHE(可逆水素電極))となるように、ポテンショ・ガルバノスタットPS/GSにより対極CE1に電圧を印加し、水素検出側の電流変化を測定する。また、水素検出側の電位は+1.45V(vsRHE)、に保持する。液温は65℃に保持し、試験中はNガスで脱気する。種々の試験片Wの水素透過電流を測定して比較することにより、集電体を模した試験片の水素透過低減の効果について考察することが可能となる。
上記のような現象を理由として、本実施形態においては、リン含有ニッケル層15は特に鋼板13の負極活物質層20側の面に設けられることが好ましい。
上記のような水素透過現象の推定メカニズムを理由として、リン含有ニッケル層15は、図1(a)に示すように少なくとも鋼板13の負極活物質層20側の面に設けられることが好ましい。すなわち、負極活物質層20と鋼板13との間に形成されたリン含有ニッケル層15が、負極活物質層20(すなわち、水素吸蔵合金:金属水素化物)により放出される水素が鋼板13を透過することを妨げるため、水素透過をより低減し得る。
一方で、電位の関係から、負極活物質層20側において、金属水素化物電池の作動環境によっては、リン含有ニッケル層15からリンが電解液に、微量、溶出しやすい場合があるため、このような溶出を抑制するという観点からは、リン含有ニッケル層15は正極活物質層30側の面に設けられることが好ましい。
またリン含有ニッケル層15は、図1(b)に示されるように、鋼板13の両面に設けられるのがさらに好ましい。すなわち図1(b)においては、鋼板13の第1面にニッケル-リン合金層15aが設けられ、反対側の第2面にリン含有ニッケル層15bが設けられている。このような構成により、仮に負極活物質層20(すなわち、水素吸蔵合金:金属水素化物)により放出される水素がリン含有ニッケル層15a及び鋼板13を透過した場合でも、正極活物質層30に到達する前にリン含有ニッケル層15bに捕捉されると考えられるため、上述した電圧低下の問題を回避できる。なお、鋼板13の第1面は、集電体の第1面(10A)と同じ側である。鋼板13の両面とは、第1面及び第1面とは反対側の第2面を指す。
リン含有ニッケル層15の厚みが0.1μm以上である場合、リン含有ニッケル層15による水素透過低減の十分な効果が得られると考えられる。すなわち、集電体におけるリン含有ニッケル層15の厚みが0.1μm以上である場合、電池における電圧低下を効果的に低減できると考えられる。リン含有ニッケル層15の厚みが0.1μm未満である場合、目的とする水素透過低減の効果が得られないおそれがある。
また、リン含有ニッケル層15の厚みが0.2μm以上であるのが更に好ましく、0.3μm以上であるのがより好ましく、0.6μm以上であるのがさらにより好ましい。さらにリン含有ニッケル層15は鋼板13の第1面及び第2面の両方に設けることが好ましい。リン含有ニッケル層15の厚みの上限に関して、生産性の観点から、3.0μm以下であるのが好ましく、2.0μm以下であるのが更に好ましく、1.0μm以下であるのがより好ましい。
なお、リン含有ニッケル層15の厚みは、例えば断面SEM像において任意の10点の厚みの平均値を採用することが可能である。なお本実施形態においてリン含有ニッケル層15の厚みは、鋼板13の第1面及び第2面の両方にリン含有ニッケル層が設けられたと仮定した場合の、片面の平均値(二面で除した値)と定義される。したがって、例えば鋼板13の第1面のみに0.2μmのリン含有ニッケル層が形成された場合と、鋼板13の第1面及び第2面の両方に各々0.1μmのリン含有ニッケル層が形成された場合とは、本実施形態ではいずれも、リン含有ニッケル層15の厚みが0.1μmと定義するものとする。
リン含有ニッケル層15におけるリン含有比率が9.0wt%以上である場合、リン含有ニッケル層15による水素透過低減の十分な効果が得られると考えられる。すなわち、集電体におけるリン含有ニッケル層15のリン含有比率が9.0wt%以上である場合、電池における電圧低下を効果的に低減できると考えられる。リン含有ニッケル層15の厚みが9.0wt%未満である場合、目的とする水素透過低減の効果が得られないおそれがある。なお、リン含有ニッケル層15におけるリン含有比率の上限値は、水素透過低減の効果の観点からは特に制限がないが、リン含有ニッケル層の生産効率の観点からはリン含有比率が15.0wt%以下であることが好ましい。
なお、リン含有ニッケル層15のリン含有比率は、例えばICP(Inductively Coupled Plasma)質量分析により得ることが可能である。
リン含有ニッケル層15がリン化ニッケルを含む場合、リン含有ニッケル層15による水素透過低減の十分な効果が得られると考えられる。すなわち、集電体におけるリン含有ニッケル層15がリン化ニッケルを含む場合、電池における電圧低下を効果的に低減できると考えられる。なお、ニッケル-リン合金を熱処理することによりリン化ニッケルとしてNiP、NiP、NiP、準安定結晶相等が生成されることが文献により報告されている。このうち、水素透過低減の効果の観点から、少なくともNiP又は準安定結晶相が形成されていることが好ましい。(伊藤清 et al. 電析Ni-P合金めっき膜の微細構造と熱平衡状態図との関係. 日本金属学会誌. 2001, vol. 65, no. 6, p. 495-501、松岡政夫 et al. 無電解ニッケルめっきのリン含有率と皮膜特性. 近畿アルミニウム表面処理研究会. 1989, no. 136, p. 4-9、増井寛二et al. 電析Ni-P合金の加熱にともなう構造変化. 日本金属学会誌. 1977, vol. 41, no. 11, p. 1130-1136など)
なおリン含有ニッケル層15は、後述する負極終端電極にも設けられるのが好ましい。負極終端電極にリン含有ニッケル層を形成することで、負極終端電極を含むセル(単電池)において、水素が負極終端電極を透過して電池外部に漏れることで生じる放電リザーブの減少を低減することが出来る。
次に、本実施形態の活物質層(負極活物質層20及び正極活物質層30)について説明する。なお本実施形態において、負極活物質層20は、負極活物質を含み、必要に応じて負極添加剤、結着剤及び導電助剤を含む。また正極活物質層30は、正極活物質を含み、必要に応じて正極添加剤、結着剤及び導電助剤を含む。以下、正極活物質層と負極活物質層の両者に関する事項は、両者を総じて活物質層として説明する。
本実施形態において負極活物質層20に含まれる負極活物質としては、ニッケル金属水素化物電池の負極活物質、すなわち水素吸蔵合金(金属水素化物)として用いられるものであれば限定されない。水素吸蔵合金とは、基本的に、容易に水素と反応するものの、水素の放出能力に劣る金属Aと、水素と反応しにくいものの、水素の放出能力に優れる金属Bとの合金である。Aとしては、Mgなどの第2族元素、Sc、ランタノイドなどの第3族元素、Ti、Zrなどの第4族元素、V、Taなどの第5族元素、複数の希土類元素を含有するミッシュメタル(以下、Mmと略すことがある。)、Pdなどを例示できる。また、Bとしては、Fe、Co、Ni、Cr、Pt、Cu、Ag、Mn、Zn、Alなどを例示できる。
具体的な水素吸蔵合金として、六方晶CaCu型結晶構造を示すAB型、六方晶MgZn型若しくは立方晶MgCu型結晶構造を示すAB型、立方晶CsCl型結晶構造を示すAB型、六方晶MgNi型結晶構造を示すAB型、体心立方晶構造を示す固溶体型、並びに、AB型及びAB型の結晶構造が組み合わされたAB型、A型及びA19型のものを例示できる。水素吸蔵合金は、以上の結晶構造のうち、1種類を有するものでもよいし、また、以上の結晶構造の複数を有するものでもよい。
AB型水素吸蔵合金として、LaNi、CaCu、MmNiを例示できる。AB型水素吸蔵合金として、MgZn、ZrNi、ZrCrを例示できる。AB型水素吸蔵合金として、TiFe、TiCoを例示できる。AB型水素吸蔵合金として、MgNi、MgCuを例示できる。固溶体型水素吸蔵合金として、Ti-V、V-Nb、Ti-Crを例示できる。AB型水素吸蔵合金として、CeNiを例示できる。A型水素吸蔵合金として、CeNiを例示できる。A19型水素吸蔵合金として、CeCo19、PrCo19を例示できる。上記の各結晶構造において、一部の金属を、他の1種類若しくは複数種類の金属又は元素で置換してもよい。
負極活物質の表面は公知の方法で処理されてもよい。特に、負極活物質としては、アルカリ処理された水素吸蔵合金を採用するのが好ましい。アルカリ処理とは、水素吸蔵合金を、アルカリ金属水酸化物を溶解したアルカリ水溶液で処理することを意味する。
例えば、希土類元素とNiを含む水素吸蔵合金を、アルカリ金属水酸化物を溶解したアルカリ水溶液で処理すると、アルカリ水溶液に対して溶解性の高い希土類元素が水素吸蔵合金の表面から溶出することになる。ここで、Niはアルカリ水溶液に対して溶解性が低いため、結果的に、水素吸蔵合金の表面のNi濃度は、水素吸蔵合金の内部と比較して高くなる。以下、水素吸蔵合金において、Ni濃度が内部と比較して高い部分を、Ni濃縮層という。Ni濃縮層の存在に因り、負極活物質の性能が向上すると考えられる。
アルカリ金属水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムを例示でき、中でも、水酸化ナトリウムが好ましい。アルカリ水溶液として水酸化ナトリウム水溶液を用いることで、アルカリ水溶液として水酸化リチウムや水酸化カリウムを用いる場合と比較して、本発明のニッケル金属水素化物電池の電池特性が好適化する場合がある。
アルカリ水溶液としては強塩基性のものが好ましい。アルカリ水溶液におけるアルカリ金属水酸化物の濃度として、10~60質量%、20~55質量%、30~50質量%、40~50質量%を例示できる。
アルカリ処理は、水素吸蔵合金をアルカリ水溶液に浸ける方法で行うのが好ましい。その際には、撹拌条件下で行うのが好ましく、また、加熱条件下で行うのが好ましい。加熱温度の範囲としては、50~150℃、70~140℃、90~130℃を例示できる。加熱時間は、アルカリ水溶液の濃度や加熱温度に応じて適宜決定すればよいが、0.1~10時間、0.2~5時間、0.5~3時間を例示できる。
以上のアルカリ処理の観点からは、水素吸蔵合金としては、希土類元素とNiを含むものが好ましい。
負極活物質は粉末状態が好ましく、また、その平均粒子径としては1~100μmの範囲内が好ましく、3~50μmの範囲内がより好ましく、5~30μmの範囲内がさらに好ましい。
負極活物質層には、負極活物質が負極活物質層全体の質量に対して、85~99質量%で含まれるのが好ましく、90~98質量%で含まれるのがより好ましい。
負極添加剤は、ニッケル金属水素化物電池の電池特性を向上させるために負極に添加されるものである。負極添加剤としては、ニッケル金属水素化物電池の負極添加剤として用いられるものであれば限定されない。具体的な負極添加剤として、CeF及びYFなどの希土類元素のフッ化物、Bi及びBiFなどのビスマス化合物、In2O及びInFなどのインジウム化合物、並びに、正極添加剤として例示した化合物を挙げることができる。
負極活物質層には、負極添加剤が負極活物質層全体の質量に対して、0.1~10質量%で含まれるのが好ましく、0.5~5質量%で含まれるのがより好ましい。
次に、本実施形態の正極活物質層30に含まれる正極活物質としては、ニッケル金属水素化物電池の正極活物質として用いられるニッケル水酸化物であれば良く、その一部に他の金属がドープされていても良い。具体的な正極活物質として、水酸化ニッケル、金属をドープした水酸化ニッケルを例示できる。水酸化ニッケルにドープする金属として、マグネシウム、カルシウムなどの第2族元素、コバルト、ロジウム、イリジウムなどの第9族元素、亜鉛、カドミウムなどの第12族元素を例示できる。
正極活物質の表面は公知の方法で処理されてもよい。正極活物質は粉末状態が好ましく、また、その平均粒子径としては1~100μmの範囲内が好ましく、3~50μmの範囲内がより好ましく、5~30μmの範囲内がさらに好ましい。なお、本明細書において、平均粒子径とは、一般的なレーザー回折式粒度分布計を用いた測定におけるD50の値を意味する。
正極活物質層には、正極活物質が正極活物質層全体の質量に対して、75~99質量%で含まれるのが好ましく、80~97質量%で含まれるのがより好ましく、85~95質量%で含まれるのがさらに好ましい。
正極添加剤は、ニッケル金属水素化物電池の電池特性を向上させるために正極に添加されるものである。正極添加剤としては、ニッケル金属水素化物電池の正極添加剤として用いられるものであれば限定されない。具体的な正極添加剤として、Nbなどのニオブ化合物、WO、WO、LiWO、NaWO及びKWOなどのタングステン化合物、Ybなどのイッテルビウム化合物、TiOなどのチタン化合物、Yなどのイットリウム化合物、ZnOなどの亜鉛化合物、CaO、Ca(OH)及びCaFなどのカルシウム化合物、並びに、その他の希土類酸化物を例示できる。
正極活物質層には、正極添加剤が正極活物質層全体の質量に対して、0.1~10質量%で含まれるのが好ましく、0.5~5質量%で含まれるのがより好ましい。
本実施形態において、活物質層に必要に応じて含まれる結着剤及び導電助剤について以下に説明する。
結着剤は活物質などを集電体の表面に繋ぎ止める役割を果たすものである。結着剤としては、ニッケル金属水素化物電池の電極用結着剤として用いられるものであれば限定されない。具体的な結着剤として、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン及びフッ素ゴムなどのフッ素含有樹脂、ポリプロピレン及びポリエチレンなどのポリオレフィン樹脂、ポリイミド及びポリアミドイミドなどのイミド系樹脂、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース誘導体、スチレンブタジエンゴムなどの共重合体、並びに、(メタ)アクリル酸誘導体をモノマー単位として含有する、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸及びポリメタクリル酸エステルなどの(メタ)アクリル系樹脂を例示できる。
活物質層には、結着剤が活物質層全体の質量に対して、0.1~15質量%で含まれるのが好ましく、1~10質量%で含まれるのがより好ましく、2~7質量%で含まれるのがさらに好ましい。結着剤が少なすぎると電極の成形性が低下し、また、結着剤が多すぎると電極のエネルギー密度が低くなるためである。
導電助剤は、電極の導電性を高めるために添加される。そのため、導電助剤は、電極の導電性が不足する場合に任意に加えればよく、電極の導電性が十分に優れている場合には加えなくても良い。導電助剤は、粉末状態で活物質層に添加されてもよいし、活物質粒子の表面を被覆した状態で用いられてもよい。導電助剤としては化学的に不活性な電子伝導体であれば良い。具体的な導電助剤としては、コバルト、ニッケル、銅などの金属、コバルト酸化物などの金属酸化物、及びコバルト水酸化物などの金属水酸化物、カーボンブラック、黒鉛、炭素繊維などの炭素材料が例示される。
負極活物質層20には、導電助剤が負極活物質層全体の質量に対して、0.1~5質量%で含まれるのが好ましく、0.2~3質量%で含まれるのがより好ましく、0.3~1質量%で含まれるのがさらに好ましい。
正極活物質層30には、導電助剤が正極活物質層全体の質量に対して、0.1~10質量%で含まれるのが好ましく、0.2~7質量%で含まれるのがより好ましく、0.3~5質量%で含まれるのがさらに好ましい。
<金属水素化物電池のバイポーラ電極:第2実施形態>
次に以下の第2実施形態を用いて、本発明の金属水素化物電池のバイポーラ電極をさらに詳細に説明する。なお本実施形態は、集電体10の少なくとも一方の最表面にニッケル層17が形成されている点において上述の第1実施形態と相違する。そのためこれら相違点について主に説明し、上記した第1実施形態の構成と同一の機能を有する部材については、同一の参照番号を付してその説明は適宜省略する。
図3(a)に示すように、本実施形態の金属水素化物電池のバイポーラ電極200は、集電体10の一方面(第1面)10Aと同じ側の最表面に、リンを含まないニッケル層17が形成されている。すなわち、リン含有ニッケル層15と負極活物質層20との間にさらに、リンを含まないニッケル層17が形成されている。なお本実施形態においては、図3(b)に示すように、集電体10の一方面(第1面)10Aと同じ側の最表面にニッケル層17aが形成されると共に、他方面(第2面)10Bと同じ側の最表面にニッケル層17bが形成されている構成でもよい。なお図3(b)では、リン含有ニッケル層15aと負極活物質層20との間にさらにニッケル層17aが形成されており、リン含有ニッケル層15bと正極活物質層30との間にさらにニッケル層17bが形成されている。
リン含有ニッケル層15と負極活物質層20または/および正極活物質層30との間にさらにニッケル層17を形成する、つまり、リン含有ニッケル層15の表面にニッケル層17を形成することにより、あるいは、集電体10の最表面にニッケル層17を形成することにより、得られる効果は次の通りである。
リン含有ニッケル層15は耐電解液性を有するが、金属水素化物電池の作動環境によっては、リン含有ニッケル層15からリンが、微量、電解液に溶出する場合があることが想定される。リン含有ニッケル層15の表面に、リンを含まないニッケル層17を形成することにより、リン含有ニッケル層15からリンが電解液に溶出するのを効果的に低減できると考えられる。特に、負極活物質層20側は電位の関係からリンが溶出しやすいと考えられるため、集電体10の負極活物質層20側にリン含有ニッケル層15が形成されている場合は、ニッケル層17がその表面に設けられていることが好ましい。
また、前述の通り、リン含有ニッケル層15は負極終端電極にも設けられるのが好ましいが、この場合にも、リン含有ニッケル層15からリンが電解液に溶出するのを抑制するために、負極終端電極はその表面にリンを含まないニッケル層17を備えることが好ましい。
なお、リン含有ニッケル層15からのリンの溶出を低減し、より効果的に、水素透過低減の効果を得るという観点からは、集電体10の少なくとも正極活物資層30側にリン含有ニッケル層15を形成することが好ましく、より効果的に溶出を低減できるという理由から、リン含有ニッケル層15の表面にニッケル層17を備える構成がより好ましい。さらには、集電体10の両面の最表面にニッケル層17を備えることが特に好ましい。
ニッケル層17の厚みとしては特に限定されるものではないが、例えば0.2μm以上であることが好ましく、0.3μm以上であるのが更に好ましく、0.5μm以上であるのがより好ましい。すなわち、集電体におけるニッケル層17の厚みが0.2μm以上である場合、集電体の比抵抗を効果的に低減できると考えられる。ニッケル層17の厚みが0.2μm未満である場合、集電体の比抵抗低減の効果が得られないおそれがある。一方でニッケル層17の厚みの上限に関して、生産性の観点から、3.0μm以下であるのが好ましく、2.0μm以下であるのが更に好ましく、1.0μm以下であるのがより好ましい。
ニッケル層17中に含まれる金属元素としては、ニッケル(Ni)に制限されず、他の金属元素を含んでいてもよい。例えば、ニッケル層17中には、コバルト(Co)、モリブデン(Mo)等の金属元素が含まれていてもよい。なお、ニッケル層17中のニッケル以外の金属元素の割合は10wt%以下が好ましく、より好ましくは5wt%以下が好ましく、さらに好ましくは1wt%以下、特に好ましくは0.5wt%以下が好ましい。
なお、ニッケル層17の形成方法としては、リン含有ニッケル層15を形成した後にニッケルめっきを行う方法が挙げられる。ニッケルめっき方法としては、例えば電解めっき、無電解めっき等の方法が挙げられる。このうち、コストや膜厚制御等の観点より特に電解めっきによる方法が好ましい。
なお、本実施形態においてさらに、上述のニッケル層17は粗化ニッケル層17cであってもよい。なお粗化ニッケル層17cとは、負極活物質層20又は正極活物質層30と接する側の表面において、リン含有ニッケル層15あるいは鋼板13よりも大きい表面粗さを有するニッケル層であることを意味する。ニッケル層17を粗化ニッケル層17cとすることにより、集電体10と接合する部材との間の結合強度を向上させることができる。例えば、集電体10と後述するシール部との接合界面では、溶融状態の樹脂が複数の突起間に入り込み、アンカー効果が発揮される。これにより、本実施形態のバイポーラ電極とシールとの間の結合強度を向上させることができる。
粗化ニッケル層17cの表面粗さの数値としては、公知のパラメータ等を用いて表すことができる。パラメータとしては、例えば十点平均粗さRzjisにより規定可能であり、Rzjisが2.0μm~16.0μmであることが好ましい。十点平均粗さRzjisはJISB0601:2013に準拠して測定され、レーザー顕微鏡を用いて測定することが好ましい。
粗化ニッケル層17cを形成する際には、図3(c)に示すように、リン含有ニッケル層15と粗化ニッケル層17cとの間に、適宜、下地ニッケル層17dを形成してもよい。0.1μm~10μm程度の下地ニッケル層17dを設けることにより粗化ニッケル層17cの密着性を向上させる、ピンホールの発生を抑制する、等の効果が得られる。
<バイポーラ電極の製造方法>
次に、本発明の金属水素化物電池のバイポーラ電極を製造可能な方法について、以下の実施形態により説明する。本実施形態にかかる金属水素化物電池のバイポーラ電極の製造方法は、集電体形成工程(ステップ1)と、活物質層形成工程(ステップ2)と、を含む。
そして、集電体形成工程(ステップ1)は、鋼板の少なくとも一方の面にリン含有ニッケル層を設ける工程(ステップ1a)を含む。
集電体形成工程(ステップ1)は、前記リン含有ニッケル層を設けた鋼板を熱処理することにより前記リン含有ニッケル層中にリン化ニッケルを形成する工程(ステップ1b)を含んでいてもよい。
集電体形成工程(ステップ1)は、前記リン含有ニッケル層と前記負極活物質層又は前記正極活物質層との間のニッケル層を形成する、ニッケル層形成工程(ステップ1c)を含んでいてもよい。
集電体形成工程(ステップ1)はさらに、粗化ニッケル層形成工程(ステップ1d)を含んでいてもよい。
そして活物質層形成工程(ステップ2)は、集電体の第1面に負極活物質層を形成する工程(ステップ2a)と、集電体の第2面に正極活物質層を設ける工程(ステップ2b)と、を含む。
ステップ1aについて説明すると、例えば電解めっきにより、ニッケル-リン合金めっき浴を用いて、鋼板の表面にニッケル-リン合金めっき層を形成する。ニッケル-リン合金めっき浴としては、公知のめっき浴を用いることができる。例えば、ニッケル-リン合金めっき層は、下記めっき条件で形成することができる。
[ニッケル-リン合金めっき浴及び電解めっき条件の一例]
浴組成
硫酸ニッケル六水和物:150~250g/L
塩化ニッケル六水和物:5~50g/L
ホウ酸:20~50g/L
クエン酸三ナトリウム(無水):1~100g/L
亜リン酸:5~100g/L
亜リン酸水素二ナトリウム:5~200g/L
・温度:25~80℃
・pH:1.0~6.0
・撹拌:空気撹拌又は噴流撹拌
・電流密度:1~40A/dm
リン含有ニッケル層(ニッケル-リン合金めっき層)の厚みは、0.1μm以上であるのが好ましい。一方でリン含有ニッケル層(ニッケル-リン合金めっき層)の厚み上限として、生産性の観点から、3.0μm以下であるのが好ましく、2.0μm以下であるのが更に好ましく、1.0μm以下であるのがより好ましい。
ステップ1bについて説明すると、熱処理は、連続焼鈍法、または箱型焼鈍法(バッチ焼鈍)のいずれで行なってもよい。また、熱処理条件は、リン含有ニッケル層にリン化ニッケルが形成される条件を適宜選択すればよい。熱処理温度と熱処理時間の例として、400℃で1時間の熱処理によりリン含有ニッケル層にNiPとしてリン化ニッケルが形成されることや、20℃/minの昇温速度で加熱し360℃に達したときに準安定結晶相が形成され始めることが知られている。
ステップ1cについて説明すると、ステップ1bにより形成されたリン含有ニッケル層上に、電気めっき等の方法を用いてニッケルめっきを行うことでニッケル層を形成することができる。すなわち、ニッケル層が、リン含有ニッケル層と負極活物質層又は正極活物質層との間に存在することとなる。なお、ステップ1cにおいてニッケル層を形成する方法としては、電気めっき以外にも、無電解めっき等の方法を適用し得る。
なお、めっき後に乾燥工程が入る場合において、乾燥後の前記めっき層の上層に再度めっき層を形成する場合においては、例えば以下に示すストライクニッケルめっきを施して、上層と下層間のめっき密着性を確保するのが好ましい。
<ストライクニッケルめっき条件>
・浴組成:
硫酸ニッケル六水和物:100~300g/L
硫酸:10~150g/L
・浴温:60℃
・電流密度:5~40A/dm
・めっき時間:1~60秒間
ステップ1dについて説明すると、ステップ1bにより形成されたリン含有ニッケル層上、又は、ステップ1cにより形成されたニッケル層上に、電気めっき等の方法を用いてニッケル粒状物を凝集させた状態で析出させることで粗化ニッケル層を形成することができる。すなわち、粗化ニッケル層が、リン含有ニッケル層と負極活物質層又は正極活物質層との間に存在することとなる。ステップ1dにより形成される粗化ニッケル層は、後述の活物質層形成工程(ステップ2)において形成される負極活物質層20又は正極活物質層30と接する側の表面において、リン含有ニッケル層あるいは鋼板よりも大きい表面粗さを有する。なお、ステップ1dにおいて粗化ニッケル層を形成する方法としては、電気めっき以外にも、スパッタや粗面を備えたロールプレス等の方法を適用し得る。また、このステップ1dにおいて粗化ニッケル層を形成する前に下地ニッケル層を形成する工程が含まれていてもよい。
ステップ2について説明すると、集電体の表面に活物質層を形成させるには、ロールコート法、ダイコート法、ディップコート法、ドクターブレード法、スプレーコート法、カーテンコート法などの従来から公知の方法を用いて、集電体の表面に活物質を塗布すればよい。具体的には、活物質、溶剤、並びに必要に応じて結着剤、導電助剤及び添加剤を混合してスラリーにしてから、当該スラリーを集電体の表面に塗布後、乾燥する。溶剤としては、N-メチル-2-ピロリドン、メタノール、メチルイソブチルケトン、水を例示できる。電極密度を高めるべく、乾燥後のものを圧縮しても良い。
なお、集電体の表面に活物質層を形成する順番としては、負極活物質層を設けた後に正極活物質層を設けることとしてもよいし、その逆の順で設けることとしてもよい。また、負極活物質層と正極活物質層を同時に設けることとしてもよい。すなわち活物質層形成工程(ステップ2)は、集電体の第1面に負極活物質層を形成する工程(ステップ2a)と、集電体の第2面に正極活物質層を設ける工程(ステップ2b)とが含まれていれば、その順番は制限されない。
<金属水素化物電池及びその製造方法>
本発明の金属水素化物電池は、本発明のバイポーラ電極が積層されてなることを特徴とする。それ以外の構成については、例えば特開2020-140773等の文献に開示される構成を適用することができる。すなわち本発明の金属水素化物電池は、集電体の第1面に負極活物質層を備え、第2面に正極活物質層を備えるバイポーラ電極を備える。集電体は、上述のとおり、鋼板と鋼板の少なくとも一方の面に設けられたリン含有ニッケル層を備えるものである。本発明の金属水素化物電池においてバイポーラ電極の数は1以上であればよく、所望する容量に応じて、バイポーラ電極の数を増減できる。バイポーラ電極間にはセパレータを介すると共に、電解液を注入した後に気密に密閉することで、本発明の金属水素化物電池を製造することができる。本発明の金属水素化物電池は、例えばニッケル金属水素化物電池である。
以下、実施形態としてニッケル金属水素化物電池を例にして本発明の金属水素化物電池について説明するが、本発明はこれに限られるものではない。
図4は、蓄電装置の一実施形態を示す概略断面図である。蓄電装置1は、積層された複数の蓄電モジュール4を含むモジュール積層体2と、モジュール積層体2に対してモジュール積層体2の積層方向Dに拘束荷重を付加する拘束部材3とを備えている。
モジュール積層体2は、複数の蓄電モジュール4と、複数の冷却板5とを含む。本実施形態では、3つの蓄電モジュール4と4つの冷却板5が、蓄電モジュール4の両側に冷却板5が位置するように交互に積層されている。以下、蓄電モジュール4が積層する方向を「積層方向D」とする。また、積層方向Dに交差もしくは直交する方向を水平方向とする。
蓄電モジュール4は、バイポーラ型の金属水素化物電池であり、積層方向Dから見て矩形状である。以下の説明では、蓄電モジュール4として、ニッケル金属水素化物電池を例示する。積層方向Dに互いに隣り合う蓄電モジュール4は、冷却板5を介して電気的に接続されている。モジュール積層体2において、積層方向Dの一端に位置する冷却板5には、負極端子6が接続されている。積層方向Dの他端に位置する冷却板5には、正極端子7が接続されている。負極端子6及び正極端子7は、例えば冷却板5の縁部から積層方向Dに交差する方向に引き出されている。負極端子6及び正極端子7は図示しない車両等の外部回路に接続されており、外部回路によって蓄電装置1の充放電が行われる。冷却板5は、アルミニウムからなる。
なお、本実施形態では、モジュール積層体2の最外層(スタック最外層)は冷却板5だが、モジュール積層体2の最外層は蓄電モジュール4であってもよい。この場合、スタック最外層を構成する蓄電モジュール4に、負極端子6もしくは正極端子7が接続される。
冷却板5の内部には、空気等の冷媒を流通させる複数の流路5aが設けられており、蓄電モジュール4において発生した熱を蓄電装置1外に放出する。流路5aは、例えば積層方向Dと、負極端子6及び正極端子7の引き出し方向とにそれぞれ交差(直交)する方向に沿って延在している。冷却板5は、導電性で、蓄電モジュール4同士を電気的に接続する接続部材としての機能を有している。また、冷却板5は、これらの流路5aに冷媒を流通させることにより、蓄電モジュール4で発生した熱を放熱する放熱板としての機能を併せ持っている。本実施形態では、積層方向Dから見た平面視において、冷却板5の面積は、蓄電モジュール4の面積よりも小さい。しかし、放熱性の向上の観点から、積層方向Dから見た平面視において、冷却板5の面積は、蓄電モジュール4の面積と同じでもよく、蓄電モジュール4の面積よりも大きくてもよい。また、流路5aに高温の冷媒を流通させて、蓄電モジュール4の加温を行なっても良い。
拘束部材3は、積層方向Dにおいてモジュール積層体2を挟む一対のエンドプレート8と、エンドプレート8同士を締結する締結ボルト81及びナット82とを有する。エンドプレート8は、積層方向Dから見た平面視において、蓄電モジュール4及び冷却板5よりも一回り大きい金属板であり、矩形状である。エンドプレート8とモジュール積層体2側との間には、絶縁性のフィルムFが配置されている。フィルムFにより、エンドプレート8とモジュール積層体2との間は絶縁されている。
エンドプレート8の縁部には、積層方向Dから見て、モジュール積層体2よりも外側となる位置に挿通孔8aが設けられている。締結ボルト81は、一方のエンドプレート8の挿通孔8aから他方のエンドプレート8の挿通孔8aに向かって通されている。他方のエンドプレート8の挿通孔8aから突出した締結ボルト81の先端部分には、ナット82が螺合されている。これにより、蓄電モジュール4及び冷却板5が2枚のエンドプレート8によって挟み込まれ、モジュール積層体2としてユニット化されている。また、モジュール積層体2に対し、拘束荷重が積層方向Dに付加されている。
次に、蓄電モジュール4の構成について詳細に説明する。図5は、図4に示された蓄電モジュールの内部構成を示す概略断面図である。図5に示されるように、蓄電モジュール4は、電極積層体(セルスタック)11、積層方向Dにおいて電極積層体11の両外側に位置する導電板40、及び、電極積層体11と導電板40とを一体化する樹脂製のシール部12を備える。
電極積層体11は、セパレータSPを介して蓄電モジュール4の積層方向Dに沿って積層された複数の電極によって構成されている。これらの電極は、複数のバイポーラ電極100(200)の積層体と、負極終端電極18と、正極終端電極19とを含む。バイポーラ電極100(200)及びセパレータSPは、積層方向Dから見て矩形状である。
バイポーラ電極100(200)は、一方面(第1面)10A及び一方面10Aの反対側の他方面(第2面)10Bを含む集電体10と、一方面10Aに設けられた負極活物質層20と、他方面10Bに設けられた正極活物質層30とを有している。正極活物質層30は、正極活物質が集電体10に塗工されることにより形成される。負極活物質層20は、負極活物質が集電体10に塗工されることにより形成される。電極積層体11において、一のバイポーラ電極100(200)の正極活物質層30は、セパレータSPを挟んで積層方向Dの一方に隣り合う別のバイポーラ電極100(200)の負極活物質層20と対向している。電極積層体11において、一のバイポーラ電極100(200)の負極活物質層20は、セパレータSPを挟んで積層方向Dの他方に隣り合う別のバイポーラ電極100(200)の正極活物質層30と対向している。
負極終端電極18は、集電体10と、集電体10の一方面10Aに設けられた負極活物質層20とを有している。負極終端電極18は、一方面10Aが電極積層体11における積層方向Dの中央側を向くように、積層方向Dにおける電極積層体11の一端に配置されている。負極終端電極18の集電体10の他方面10Bは、電極積層体11の積層方向Dにおける外側面を構成し、蓄電モジュール4に隣接する一方の冷却板5(図6参照)と導電板40を介して電気的に接続されている。負極終端電極18の負極活物質層20は、セパレータSPを介して、バイポーラ電極100(200)の正極活物質層30と対向している。
正極終端電極19は、集電体10と、集電体10の他方面10Bに設けられた正極活物質層30とを有している。正極終端電極19は、他方面10Bが電極積層体11における積層方向Dの中央側を向くように、積層方向Dにおける電極積層体11の他端に配置されている。正極終端電極19の正極活物質層30は、セパレータSPを介して、バイポーラ電極100(200)の負極活物質層20と対向している。正極終端電極19の集電体10の一方面10Aは、電極積層体11の積層方向Dにおける外側面を構成し、蓄電モジュール4に隣接する他方の冷却板5(図6参照)と導電板40を介して電気的に接続されている。
集電体10は、めっき処理が施された鋼板である。集電体10の縁部10Cは、正極活物質及び負極活物質が塗工されない未塗工領域であり、矩形枠状となっている。正極活物質層30を構成する正極活物質としては、上述のものを用いることができる。負極活物質層20を構成する負極活物質は、上述のものを用いることができる。本実施形態では、集電体10の一方面10Aにおける負極活物質層20の形成領域は、集電体10の他方面10Bにおける正極活物質層30の形成領域に対して一回り大きくなっている。
導電板40は、電極積層体11の劣化抑制のために設けられる導電性の板状部材である。導電板40は、両面において活物質層が形成されていない未塗工箔である。導電板40は、例えば、ニッケルよりなる。導電板40は、冷却板5に接する中央部41と、中央部41を囲む矩形枠状の縁部42とを有する。縁部42は、封止体(シール部)12に保持される部分である。導電板40の厚さは、例えば0.1μm以上1000μm以下である。導電板40は、積層方向Dの両端において、蓄電モジュール4の外壁を構成している。なお、導電板40を設けない場合は、負極終端電極18及び正極終端電極19が外壁を構成する。
シール部12は、例えば絶縁性の樹脂によって、全体として矩形の枠状に形成されている。シール部12は、集電体10の縁部10Cと、導電板40の縁部42とを包囲するように、電極積層体11の側面11aに沿って設けられている。シール部12は、集電体10の縁部10Cと、導電板40の縁部42とを保持している。シール部12は、集電体10の縁部10C及び導電板40の縁部42に結合された複数の第1シール部21と、側面11aに沿って第1シール部21を外側から包囲し、第1シール部21のそれぞれに結合された第2シール部22とを有している。第1シール部21及び第2シール部22の構成材料は、例えばポリプロピレンである。
第1シール部21は、導電板40の縁部42の全周、もしくは集電体10の他方面10Bにおいて縁部10Cの全周にわたって連続的に設けられ、積層方向Dから見て矩形枠状をなしている。負極終端電極18及び正極終端電極19では、集電体10の一方面10A及び他方面10Bの双方の縁部10Cに第1シール部21が設けられている。
第1シール部21は、例えば超音波又は熱圧着によって導電板40の縁部42もしくは集電体10の他方面10Bに溶着され、気密に接合されている。第1シール部21は、例えば積層方向Dに所定の厚さを有するフィルムである。第1シール部21は、樹脂シートを打ち抜き加工することによって形成されてもよいし、複数の樹脂シートを枠状に配置して形成されてもよいし、金型を用いた射出成形によって形成されてもよい。本実施形態では、第1シール部21は、樹脂シートを打ち抜き加工することによって形成される。第1シール部21の厚さは、例えば50μm以上250μm以下である。第1シール部21の内側は、積層方向Dにおいて互いに隣り合う集電体10の縁部10C同士の間に位置している。第1シール部21の外側は、集電体10の縁よりも外側に張り出しており、その先端部分は、第2シール部22によって保持されている。積層方向Dに沿って互いに隣り合う第1シール部21同士は、互いに離間していてもよく、接していてもよい。また、第1シール部21の外縁部分同士は、例えば熱板溶着などによって互いに結合していてもよい。
第2シール部22は、電極積層体11及び第1シール部21の外側に設けられ、蓄電モジュール4の外壁(筐体)を構成している。第2シール部22は、例えば樹脂の射出成型によって形成され、積層方向Dに沿って電極積層体11の全長にわたって延在している。第2シール部22は、積層方向Dを軸方向として延在する矩形の枠状である。第2シール部22は、例えば射出成型時の熱によって第1シール部21の外表面に溶着されている。
第1シール部21及び第2シール部22は、隣り合う電極の間に内部空間Vを形成すると共に内部空間Vを封止する。より具体的には、第2シール部22は、第1シール部21と共に、積層方向Dに沿って互いに隣り合うバイポーラ電極100(200)の間、積層方向Dに沿って互いに隣り合う負極終端電極18とバイポーラ電極100(200)との間、及び積層方向Dに沿って互いに隣り合う正極終端電極19とバイポーラ電極100(200)との間をそれぞれ封止している。これにより、隣り合うバイポーラ電極100(200)の間、負極終端電極18とバイポーラ電極100(200)との間、及び正極終端電極19とバイポーラ電極100(200)との間には、それぞれ気密に仕切られた内部空間Vが形成されている。この内部空間Vには、電解液(不図示)が収容されている。電解液は、セパレータSP、正極活物質層30、及び負極活物質層20内に含浸されている。
積層方向Dに互いに隣り合うバイポーラ電極100(200)とシール部12、負極終端電極18と隣り合うバイポーラ電極100(200)とシール部12、正極終端電極19と隣り合うバイポーラ電極100(200)とシール部12は、それぞれセル(単電池)を構成する。
次に、本実施形態に係る蓄電モジュールの製造方法の一例について説明する。まず、バイポーラ電極100(200)、負極終端電極18、正極終端電極19、及び導電板40に対して第1シール部21を結合する(第1工程)。第1工程では、まず、バイポーラ電極100(200)、負極終端電極18、正極終端電極19、及び導電板40を準備する。続いて、集電体10の他方面10Bと、導電板40の一方面40aとに、第1シール部21を溶着する。これにより、バイポーラ電極100(200)、負極終端電極18、正極終端電極19、及び導電板40のそれぞれに対して第1シール部21が結合する。さらに、正極終端電極19の集電体10の一方面10Aにも第1シール部21を溶着する。
次に、電極積層体11を形成する(第2工程)。第2工程では、まず、第1シール部21が結合されたバイポーラ電極100(200)、及びセパレータSPを積層方向Dに沿って交互に積層することによって積層体Sを形成する。続いて、積層方向Dにおける積層体Sの一端に負極終端電極18を配置すると共に、積層方向Dにおける積層体Sの他端に正極終端電極19を配置する。これにより、バイポーラ電極100(200)、セパレータSP、負極終端電極18、及び正極終端電極19を有する電極積層体11を形成する。このとき、積層された第1シール部21が、電極積層体11に含まれる電極間に内部空間Vを形成すると共に当該内部空間Vを封止する。
次に、第1シール部21が結合された導電板40を、電極積層体11に重ねる(第3工程)。第3工程では、導電板40に結合された第1シール部21を、積層方向Dにおいて負極終端電極18及び正極終端電極19の隣に配置する。
次に、各第1シール部21を結合する第2シール部22を形成する(第4工程)。第4工程では、例えば金型を用いて、各第1シール部21の外周面に対して樹脂を射出成形する。そして、当該樹脂を冷却等により硬化することによって、第2シール部22を形成する。これにより、第1シール部21及び第2シール部22を有するシール部12を形成する。このとき、導電板40が負極終端電極18、正極終端電極19に結合する各第1シール部21に溶着してもよい。図示はしないが、第4工程後、各内部空間V内に電解液を注入する。以上の工程を経て、蓄電モジュール4が製造される。
本実施形態のニッケル金属水素化物電池は、公知のニッケル金属水素化物電池に配置される種々の部材を備えているのが好ましい。以下、正極終端電極、バイポーラ電極、負極終端電極及びセパレータで構成される電池単位を電池モジュールという。本発明のニッケル金属水素化物電池は、単一の電池モジュールを具備してもよいし、複数の電池モジュールを直列に組み合わせて具備してもよい。
セパレータとしては、公知のものを採用すればよく、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアラミド(Aromatic polyamide)、ポリエステル、ポリアクリロニトリル等の合成樹脂、セルロース、アミロース等の多糖類、フィブロイン、ケラチン、リグニン、スベリン等の天然高分子、セラミックスなどの電気絶縁性材料を1種若しくは複数用いた多孔体、不織布、織布などを挙げることができる。また、セパレータは多層構造としてもよい。セパレータは、表面に親水化処理が施されていることが好ましい。親水化処理としては、スルホン化処理、コロナ処理、フッ素ガス処理、プラズマ処理を例示できる。
電解液は、ニッケル金属水素化物電池用の電解液として一般に用いられる強塩基水溶液を用いれば良い。強塩基水溶液として、具体的には、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液が挙げられる。電解液としては、一種のみの強塩基水溶液を用いても良いし、複数種の強塩基水溶液を混合して用いても良い。また、電解液には、ニッケル金属水素化物電池用電解液に採用される公知の添加剤が添加されていてもよい。
本発明のニッケル金属水素化物電池の電極間には、電解液の漏れを防止し、電極間の電解液が相互に混ざり合うことを抑制し、かつ、電解液や正極活物質層及び負極活物質層が外気と接触するのを抑制するシール部が設けられる。シール部は、隣り合う2枚の集電体に密着して配置され、かつ、電解液や正極活物質層及び負極活物質層が存在する箇所の全体を取り囲む状態で配置される。シール部は、電解液や正極活物質層及び負極活物質層が存在する箇所の周りに、2重や3重に配置されてもよい。
シール部の材料としては、ポリプロピレン、ポリフェニレンサルファイド、変性ポリフェニレンエーテルなどの耐アルカリ性を有する絶縁性の樹脂を挙げることができる。また、一般にガスケットやパッキンと称されるものを、シール部として採用してもよい。 シール部は、シール部の材料を集電体に圧着することで形成してもよいし、集電体に熱圧着することで形成してもよく、また、接着剤を用いて集電体に接着することで形成してもよい。
電極の周縁には、電気を通さない絶縁性の外枠が配置されるのが好ましい。外枠は電極の形状を維持する役割と、電極同士の短絡を防止する役割を担う。上述したシール部は、外枠の内側に配置される。外枠がシール部を兼ねてもよい。外枠の材料としては、合成樹脂、又は、絶縁性の酸化物若しくは絶縁性のセラミックスを含有する合成樹脂を例示できる。
本発明のニッケル金属水素化物電池は、充放電に伴う発熱を放熱する冷却板を備えるのが好ましい。冷却板は、電池モジュールの外側に、電極の面に沿って配置されるのが好ましい。複数の電池モジュールが存在する場合には、それぞれの電池モジュールの間に配置されてもよい。
冷却板は、アルミニウムなどの熱伝導性に優れる金属製が好ましい。冷却板の形状としては、電池モジュールの面と積層可能な板状体が好ましく、さらには、板状体に空冷可能な貫通孔が設けられているものがより好ましい。
本発明のニッケル金属水素化物電池の電池モジュールは、拘束具により、厚み方向すなわち電極の積層方向に拘束されるのが好ましい。電池モジュールを積層方向に拘束することにより、正極活物質層及び負極活物質層への電解液の浸透を万遍なく行うことができるとともに、充放電に伴う電極の膨張の偏りを抑制でき、さらに、電池の抵抗変動を抑制することができる。また、シール部のシール効果を好適に維持することもできる。
拘束部材は、一の電池モジュールを拘束してもよいし、複数の電池モジュールを拘束してもよい。拘束部材としては、2枚の拘束板と、2枚の拘束板を締結する締結部材とを用いるのが好ましい。締結部材としては、ボルト及びナットを例示できる。拘束部材の材質としては、強アルカリに対して耐性の高いものが好ましい。拘束部材の材質の具体例としては、合成樹脂及び絶縁性のセラミックスを例示できる。また、電池モジュールを収容する電池容器を、拘束部材として用いてもよい。
電池容器は、電池モジュールを収容する容器である。電池容器としては、公知のニッケル金属水素化物電池の電池容器として用いられるものを採用すればよい。電池容器の形状は特に限定されるものでなく、角型、円筒型、コイン型、ラミネート型等、種々の形状を採用することができる。電池容器の材質としては、強アルカリに対して耐性の高いものが好ましい。電池容器の具体例としては、ニッケル製容器、樹脂製容器、内表面がニッケルめっきされた金属容器、内表面に樹脂コーティング層を具備する金属容器を例示できる。
拘束部材や電池容器には、排ガス弁が配置されてもよく、また、電解液を補充するための注液口が配置されてもよい。
本発明のニッケル金属水素化物電池は、車両や産業用車両に搭載してもよい。車両は、その動力源の全部あるいは一部にニッケル金属水素化物電池による電気エネルギーを使用している車両であればよく、例えば、電気車両、ハイブリッド車両などであるとよい。車両にニッケル金属水素化物電池を搭載する場合には、ニッケル金属水素化物電池を複数直列に接続して組電池とするとよい。ニッケル金属水素化物電池を搭載する機器としては、車両以外にも、パーソナルコンピュータ、携帯通信機器など、電池で駆動される各種の家電製品、オフィス機器、産業機器などが挙げられる。さらに、本発明のニッケル金属水素化物電池は、風力発電、太陽光発電、水力発電その他電力系統の蓄電装置及び電力平滑化装置、船舶等の動力及び/又は補機類の電力供給源、航空機、宇宙船等の動力及び/又は補機類の電力供給源、電気を動力源に用いない車両の補助用電源、移動式の家庭用ロボットの電源、システムバックアップ用電源、無停電電源装置の電源、電動車両用充電ステーションなどにおいて充電に必要な電力を一時蓄える蓄電装置に用いてもよい。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
本発明に係る蓄電モジュールは、上記実施形態に限定されず、他に様々な変形が可能である。上記実施形態及び各変形の内容は、適宜抽出して組み合わせてもよい。
上記実施形態では、リン含有ニッケル層15はバイポーラ電極100(200)、負極終端電極18及び正極終端電極19を構成する集電体10の両面に形成しているが、集電体10の片方の面のみに形成しても良い。集電体10の片方の面にリン含有ニッケル層15を設ける場合は、一方面(第1面)10Aに設けるのが好ましい。また、正極終端電極19を構成する集電体10にリン含有ニッケル層15を設けなくてもよい。
上記実施形態では、バイポーラ電極に含まれる集電体10における他方面10Bが粗面化されているが、これに限らない。例えば、当該他方面10Bのうち、第1シール部21との結合領域に含まれる箇所のみが粗面化されてもよい。また、導電板40の一方面40aのうち、第1シール部21との結合領域に含まれる箇所のみが粗面化されてもよい。
上記実施形態では、集電体及び導電板のそれぞれは、平面視にて矩形状であるが、これに限らない。集電体及び導電板のそれぞれは、平面視にて多角形状でもよいし、円形状でもよいし、楕円形状でもよい。同様に、エンドプレートと、セパレータと、シール部(具体的には、第1シール部及び第2シール部)とのそれぞれもまた、平面視にて矩形枠形状でなくてもよい。
以下に、実施例及び比較例などを示し、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
(実施例1)
<集電体の製造>
まず鋼板として下記に示す化学組成を有する低炭素アルミキルド鋼の冷間圧延箔(厚さ50μm)を準備した。
C:0.04重量%、Mn:0.32重量%、Si:0.01重量%、P:0.012重量%、S:0.014重量%、残部:Feおよび不可避的不純物
次に、準備した鋼板に対して電解脱脂、硫酸浸漬の酸洗を行った後、下記条件にてニッケル-リン合金めっきを行って、リン含有比率が13.0wt%、厚みが0.75μmのニッケル-リン合金層を形成した(リン含有ニッケル層形成工程)。なお、ニッケル-リン合金めっきの条件は以下の通りとした。
<ニッケル-リン合金めっき条件>
浴組成:
硫酸ニッケル六水和物:190g/L
塩化ニッケル六水和物:20g/L
ホウ酸:30g/L
クエン酸三ナトリウム(無水):10g/L
亜リン酸:65g/L
亜リン酸水素二ナトリウム:50g/L
・温度:60℃
・pH:1.5~3.0
・撹拌:空気撹拌又は噴流撹拌
・電流密度:1~40A/dm
なお実施例1の電流密度は5A/dmであり、他の実施例及び比較例については電流密度を上記範囲内で変動させることにより、リン含有比率を制御した。
なお、リン含有比率はICP(Inductively Coupled Plasma)質量分析装置を用いて得た。また、ニッケル-リン合金層の厚さは、断面SEM像において任意の10点の厚みの平均値を取得した。なお本実施例及び以下の実施例において、ニッケル-リン合金層を集電体の片面にのみ形成した実施例は、両面に形成したと仮定し二面で除した平均値をニッケル-リン合金層の厚さとした。一方でニッケル-リン合金層を集電体の両面に形成した実施例は、各々の面の任意の10点の厚みの平均値をニッケル-リン合金層の厚さとした。
次いで、以下のめっき条件によって0.5μmのニッケル層を形成した(ニッケル層形成工程)。
<ニッケルめっき条件>
・浴組成:
硫酸ニッケル六水和物:250g/L
塩化ニッケル六水和物:45g/L
ほう酸:30g/L
・pH:4.0~5.0
・浴温:60℃
・電流密度:10A/dm
さらに、以下のめっき条件によって粗化ニッケル層を設けて(粗化ニッケル層形成工程)、集電体を得た。粗化ニッケル層は、下記の粗化ニッケルめっき条件によるめっき工程を経た後、鋼板と粗化ニッケル層との密着性向上のために、下記の被覆ニッケルめっき条件による被覆ニッケルめっき処理を施して形成した。
<粗化ニッケルめっき条件>
・浴組成:
めっき浴中の硫酸ニッケル六水和物濃度:10g/L
めっき浴中の塩化ニッケル六水和物濃度:10g/L
めっき浴の塩化物イオン濃度:3g/L
めっき浴中のニッケルイオンとアンモニウムイオンとの比:
ニッケルイオン/アンモニウムイオン(重量比)=0.17
・pH:6
・浴温:50℃
・電流密度:12A/dm
・めっき時間:80秒間
<被覆ニッケルめっき条件>
・浴組成:
硫酸ニッケル六水和物:250g/L
塩化ニッケル六水和物:45g/L
ほう酸:30g/L
・pH:4.2
・浴温:60℃
・電流密度:5A/dm
・めっき時間:36秒間
すなわち上記のように製造した実施例1における集電体は、ニッケル-リン合金層、ニッケル層、及び、粗化ニッケル層を備える。鋼板は、集電体の基材である。ニッケル層は、集電体の一方面(第1面)にのみ形成されている。ニッケル-リン合金層と粗化ニッケル層は、集電体の他方面(第2面)にのみ形成されている。
[バイポーラ電極の製造]
正極活物質として水酸化ニッケル粉末を94.3質量部、導電助剤としてコバルト粉末を1質量部、結着剤としてアクリル系樹脂エマルションを固形分として3.5質量部、結着剤としてカルボキシメチルセルロースを0.7質量部、正極添加剤としてYを0.5質量部、及び、適量のイオン交換水を混合して、正極スラリーを製造した。
負極活物質としてA型水素吸蔵合金を97.8質量部、結着剤としてアクリル系樹脂エマルションを固形分として1.5質量部、結着剤としてカルボキシメチルセルロースを0.7質量部、及び、適量のイオン交換水を混合して、負極スラリーを製造した。
集電体の第1面に、上記負極スラリーを膜状に塗布した。集電体の第2面に、上記正極スラリーを膜状に塗布した。スラリーが塗布された集電体を乾燥して水を除去し、プレスして、集電体上に正極活物質層と負極活物質層とが形成されたバイポーラ電極を製造した。
上記集電体の第1面に負極スラリーを塗布しなかったこと以外は、上記バイポーラ電極と同様にして、第2面に正極活物質層が形成された正極終端電極を製造した。上記集電体の第2面に正極スラリーを塗布しなかったこと以外は、上記バイポーラ電極と同様にして、第1面に負極活物質層が形成された負極終端電極を製造した。
[評価用電池の製造]
電解液として、水酸化カリウムの濃度が5.4mol/Lであり、水酸化ナトリウムの濃度が0.8mol/Lであり、水酸化リチウムの濃度が0.5mol/Lであり、塩化リチウムの濃度が0.05mol/Lである水溶液を準備した。
セパレータSPとして、スルホン化処理が施された厚さ104μmのポリオレフィン繊維製不織布を準備した。バイポーラ電極100を正極終端電極19と負極終端電極18とで挟み込み、極板群とした。電極間にはセパレータSPを介した。
バイポーラ電極100と正極終端電極19との間及びバイポーラ電極100と負極終端電極18との間それぞれに樹脂製の筐体(シール部)12を配置して、熱圧着で接合した。バイポーラ電極100と正極終端電極19との間及びバイポーラ電極100と負極終端電極18との間それぞれに上記電解液を注入した後に気密に密閉することで、実施例1の評価用電池を製造した。本実施例では、バイポーラ電極100と正極終端電極19、及びバイポーラ電極100と負極終端電極18とでそれぞれ1つのセル(単電池)が構成され、合計で2つのセルを備える。この評価用電池の構成の模式図を図6に示す。
(実施例2)
集電体の製造工程において、リン含有ニッケル層形成工程でニッケル-リン合金層の厚みを1.5μmとした。また、ニッケル層形成工程でニッケル層の厚みを1.0μmとした。それ以外は実施例1と同様にして集電体、バイポーラ電極及び評価用電池の製造を行った。
上記のように製造した実施例2における集電体は、ニッケル-リン合金層、ニッケル層、及び、粗化ニッケル層を備える。ニッケル-リン合金層とニッケル層は、集電体の両面に形成されている。粗化ニッケル層は、集電体の他方面(第2面)にのみ形成されている。
(実施例3)
集電体の製造工程において、リン含有ニッケル層形成工程でニッケル-リン合金層の厚みを0.1μmとした。それ以外は実施例1と同様にして集電体、バイポーラ電極及び評価用電池の製造を行った。
上記のように製造した実施例3における集電体は、ニッケル-リン合金層、ニッケル層、及び、粗化ニッケル層を備える。ニッケル-リン合金層は、集電体の一方面(第1面)にのみ形成されている。ニッケル層は、集電体の両面に形成されている。粗化ニッケル層は、集電体の他方面(第2面)にのみ形成されている。
(実施例4)
集電体の製造工程において、リン含有ニッケル層形成工程でニッケル-リン合金層の厚みを0.25μmとした以外は実施例3と同様にして集電体、バイポーラ電極及び評価用電池の製造を行った。
(実施例5)
集電体の製造工程において、リン含有ニッケル層形成工程でニッケル-リン合金層の厚みを0.5μmとした以外は実施例3と同様にして集電体、バイポーラ電極及び評価用電池の製造を行った。
(実施例6)
集電体の製造工程において、リン含有ニッケル層形成工程でニッケル-リン合金層の厚みを0.75μmとした以外は実施例3と同様にして集電体、バイポーラ電極及び評価用電池の製造を行った。
(実施例7)
集電体の製造工程において、リン含有ニッケル層形成工程でニッケル-リン合金層の厚みを0.75μmとし、リン含有比率を10.0wt%とした以外は実施例3と同様にして集電体、バイポーラ電極及び評価用電池の製造を行った。
(実施例8)
集電体の製造工程において、リン含有ニッケル層形成工程でニッケル-リン合金層の厚みを0.25μmとし、リン含有比率を15.0wt%とした以外は実施例3と同様にして集電体、バイポーラ電極及び評価用電池の製造を行った。
(実施例9)
集電体の製造工程において、リン含有ニッケル層形成工程でニッケル-リン合金層の厚みを0.6μmとし、リン含有比率を15.0wt%とした以外は実施例3と同様にして集電体、バイポーラ電極及び評価用電池の製造を行った。
(実施例10)
集電体の製造工程において、リン含有ニッケル層形成工程でニッケル-リン合金層の厚みを0.6μmとし、リン含有比率を12.0wt%とした以外は実施例2と同様にして集電体、バイポーラ電極及び評価用電池の製造を行った。
(実施例11)
集電体の製造工程において、リン含有ニッケル層形成工程でニッケル-リン合金層の厚みを1.0μmとし、リン含有比率を12.0wt%とした以外は実施例2と同様にして集電体、バイポーラ電極及び評価用電池の製造を行った。
(実施例12)
集電体の製造工程において、リン含有ニッケル層形成工程でニッケル-リン合金層の厚みを0.2μmとし、リン含有比率を14.0wt%とした以外は実施例2と同様にして集電体、バイポーラ電極及び評価用電池の製造を行った。
(実施例13)
集電体の製造工程において、リン含有ニッケル層形成工程でニッケル-リン合金層の厚みを0.6μmとし、リン含有比率を14.0wt%とした以外は実施例2と同様にして集電体、バイポーラ電極及び評価用電池の製造を行った。
(比較例1)
実施例1の鋼板を用いて、実施例1と同様の方法で下地ニッケルめっき工程及び粗化ニッケルめっき工程を行うことにより、下地ニッケル層、及び粗化ニッケル層を設けた集電体を製造した。下地ニッケル層の厚みは1μmとした。ニッケル-リン合金層を設けるためのニッケル-リン合金めっきは行わなかった。前記集電体に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、バイポーラ電極及び評価用電池の製造を行った。
(比較例2)
実施例1の鋼板を用いて、実施例1と同様の方法で下地ニッケルめっき工程及び粗化ニッケルめっき工程を行うことにより、下地ニッケル層、及び粗化ニッケル層を設けた集電体を製造した。下地ニッケル層の厚みは5μmとした。ニッケルリン合金層を設けるためのニッケルリン合金めっきは行わなかった。前記集電体に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、バイポーラ電極及び評価用電池の製造を行った。
[ニッケル-リン合金層の有無、厚み及びリン含有比率の変化に伴う漏電流の変化試験]
上記のようにして製造した評価用電池を用いて、集電体のニッケル-リン合金層の有無及び厚みの変化による漏電流の変化を試験評価した。
すなわち、上記実施例1~13及び比較例1~2の各評価用電池に対して、充放電を繰り返し、活性化処理を行った。
活性化後の各評価用電池をSOC(State of Charge)85%に調整した後SOC0%まで放電させて、保存前の放電容量を測定した。再度、活性化後の各評価用電池をSOC85%に調整し、65℃の恒温槽で65時間保存した。保存後の各評価用電池をSOC0%まで放電させて、保存後の放電容量を測定した。なお、比較例は350時間保存したこと以外は実施例と同様に保存後の放電容量を測定した。漏電流を以下の式で算出した。
(保存前の放電容量-保存後の放電容量)/保存時間=漏電流
各々の単位面積あたりの漏電流の値を表1に示す。
比較例及び実施例1を対比すると、漏電流がニッケル-リン合金層により低減されたことが示された。また実施例1~実施例5によれば、ニッケル-リン合金層の厚みを増加させることが漏電流低減に有効であることが示された。実施例6及び実施例7によれば、ニッケル-リン合金層におけるリン含有比率を増加させることが漏電流低減に有効であることが示された。
ニッケル-リン合金層の厚み、リン含有比率、及び漏電流の値の関係を示すバブルチャートを図7に示す。バブルの大きさが漏電流値の大きさを表す。
Figure 2023098448000002
(実施例14)
集電体の製造工程において、リン含有ニッケル層形成工程でニッケル-リン合金層の厚みを0.1μmとし、リン含有比率を11.0wt%とした。また、ニッケル層形成工程でニッケル層の厚みを0.2μmとした。リン含有ニッケル層形成工程後であって、ニッケル層形成工程前に、ニッケル-リン合金層に対して400℃・4時間の条件で熱処理を行った。それ以外は実施例2と同様にして集電体、バイポーラ電極及び評価用電池の製造を行った。
(実施例15)
集電体の製造工程において、リン含有ニッケル層形成工程でニッケル-リン合金層の厚みを0.3μmとし、リン含有比率を11.0wt%とした。また、ニッケル層形成工程でニッケル層の厚みを0.2μmとした。それ以外は実施例14と同様にして集電体、バイポーラ電極及び評価用電池の製造を行った。
(実施例16)
集電体の製造工程において、リン含有ニッケル層形成工程でニッケル-リン合金層の厚みを0.5μmとし、リン含有比率を11.0wt%とした。また、ニッケル層形成工程でニッケル層の厚みを0.2μmとした。それ以外は実施例14と同様にして集電体、バイポーラ電極及び評価用電池の製造を行った。
(実施例17)
集電体の製造工程において、リン含有ニッケル層形成工程でニッケル-リン合金層の厚みを0.1μmとし、リン含有比率を13.0wt%とした。また、ニッケル層形成工程でニッケル層の厚みを0.2μmとした。それ以外は実施例14と同様にして集電体、バイポーラ電極及び評価用電池の製造を行った。
(実施例18)
集電体の製造工程において、リン含有ニッケル層形成工程でニッケル-リン合金層の厚みを0.3μmとし、リン含有比率を13.0wt%とした。また、ニッケル層形成工程でニッケル層の厚みを0.2μmとした。それ以外は実施例14と同様にして集電体、バイポーラ電極及び評価用電池の製造を行った。
[ニッケル-リン合金層におけるリン化ニッケル(NiP)有無に伴う漏電流の変化試験]
上記のようにして製造した評価用電池を用いて、集電体のニッケル-リン合金層におけるリン化ニッケル(NiP)の有無による漏電流の変化を試験評価した。
すなわち、上記実施例14~18の各評価用電池に対して、充放電を繰り返し、活性化処理を行った。
活性化後の各評価用電池をSOC(State of Charge)85%に調整した後SOC0%まで放電させて、保存前の放電容量を測定した。再度、活性化後の各評価用電池をSOC85%に調整し、65℃の恒温槽で65時間保存した。保存後の各評価用電池をSOC0%まで放電させて、保存後の放電容量を測定した。漏電流を以下の式で算出した。
(保存前の放電容量-保存後の放電容量)/保存時間=漏電流
各々の単位面積あたりの漏電流の値を表2に示す。
例えば実施例14及び実施例3を対比すると、ニッケル-リン合金層の厚みが同じ場合、低リン含有比率であってもリン化ニッケル(NiP)の存在が漏電流低減に有効であることが示された。また実施例17と実施例4を対比すると、ニッケル-リン合金層のリン含有比率が同じ場合、ニッケル-リン合金層の厚みが薄くてもリン化ニッケル(NiP)の存在が漏電流低減に有効であることが示された。
Figure 2023098448000003
[蓄電モジュールにおける漏電流試験]
(実施例19)
実施例1と同様の集電体の製造工程により、表3に示す厚み及びリン含有比率を有するニッケル-リン合金層、ニッケル層、及び、粗化ニッケル層を備える集電体及びバイポーラ電極を製造した。なお集電体においてニッケル-リン合金層は両面に形成されており、ニッケル層は集電体の一方面(第1面)にのみ形成されており、粗化ニッケル層は、集電体の他方面(第2面)にのみ形成されている。その後、上述の評価用電池と同様のセパレータ、活物質等を用いて図6に示すような蓄電モジュールを作製した。なおこの蓄電モジュールは、積層個数23個のバイポーラ電極に加えて正極及び負極の終端電極を含むものとした。得られた蓄電モジュールに対して充放電を繰り返し、活性化処理を行った。活性化後の蓄電モジュールをSOC(State of Charge)85%に調整した後、SOC0%まで放電させて、保存前の放電容量を測定した。再度、活性化後の蓄電モジュールをSOC85%に調整し、65℃の恒温槽で1680時間保存した。保存後の蓄電モジュールをSOC0%まで放電させて、保存後の放電容量を測定した。漏電流を以下の式で算出した。
(保存前の放電容量-保存後の放電容量)/保存時間=漏電流
単位面積あたりの漏電流を表3に示す。
(実施例20)
集電体におけるニッケルリン合金層の厚み及びリン含有比率を表3の通りとした以外は、実施例19と同様に蓄電モジュールを作製し、漏電流を算出した。
(実施例21)
集電体におけるニッケルリン合金層の厚み及びリン含有比率を表3の通りとした以外は、実施例19と同様に蓄電モジュールを作製し、漏電流を算出した。
(比較例4)
集電体形成工程において、ニッケルリン合金層を設けるためのニッケルリン合金めっき(リン含有ニッケル層形成工程)を行わなかったこと、及び、蓄電モジュールの恒温槽での保存時間を170時間としたこと以外は実施例19と同様にして、蓄電モジュールを作製し漏電流を算出した。得られた単位面積あたりの漏電流を表3に示す。
Figure 2023098448000004
(実施例22)
集電体の製造工程において、リン含有ニッケル層形成工程でニッケル-リン合金層の厚みを0.5μmとし、リン含有比率を13.0wt%とした。また、ニッケル層形成工程でニッケル層の厚みを0.2μmとした。粗化ニッケル層は形成しなかった。それ以外は実施例14と同様にして集電体、バイポーラ電極及び評価用電池の製造を行った。
(実施例23)
集電体の製造工程において、リン含有ニッケル層形成工程でニッケル-リン合金層の厚みを0.5μmとし、リン含有比率を13.0wt%とした。また、ニッケル層形成工程でニッケル層の厚みを1.5μmとした。それ以外は実施例14と同様にして集電体、バイポーラ電極及び評価用電池の製造を行った。
[ニッケル層の厚みの変化に伴う内部抵抗(直流抵抗)の変化試験]
上記のようにして製造した評価用電池を用いて、ニッケル-リン合金層を有する集電体において、ニッケル層の厚みの変化による内部抵抗(直流抵抗)の変化を試験評価した。すなわち、上記実施例22~23の各評価用電池に対して、IV試験法により内部抵抗(直流抵抗)を計測し、ニッケル-リン合金層を有しない集電体を用いた評価用電池の内部抵抗(直流抵抗)と比較した値(相対値)を得た。なおIV試験では、充電率(SOC)60%の条件で、電流値が1Cの場合(条件1)、2Cの場合(条件2)、5Cの場合(条件3)、10Cの場合(条件4)、でそれぞれ5秒間充電および放電した際の電流と電圧の測定結果から抵抗を算出し、ニッケル-リン合金層を有しない集電体を用いた評価用電池の内部抵抗(直流抵抗)を100とした場合の相対値として評価した。
各々の内部抵抗(直流抵抗)の相対値を表4に示す。
Figure 2023098448000005
実施例22及び実施例23を対比すると、ニッケル層の厚みの増加が集電体の内部抵抗(直流抵抗)の低減に有効であることが示された。
以上に説明した本実施形態に係るバイポーラ電極、及び蓄電モジュールによって奏される作用効果について説明する。すなわち本実施形態におけるバイポーラ電極及び蓄電モジュールは、バイポーラ電極の集電体を透過する水素を低減することで、蓄電モジュールの電圧低下を低減できる。したがって本発明によれば、蓄電モジュール及び金属水素化物電池の長期信頼性を向上させることができる。
100:金属水素化物電池のバイポーラ電極
200:金属水素化物電池のバイポーラ電極
10: 集電体
10A:集電体の第1面
10B:集電体の第2面
13: 鋼板
15: リン含有ニッケル層
20: 負極活物質層
30: 正極活物質層

Claims (18)

  1. 集電体と、
    集電体の第1面に設けられる負極活物質層と、
    集電体の第2面に設けられる正極活物質層と、
    を備え、
    前記負極活物質層は金属水素化物を含み、
    前記集電体は、鋼板と、鋼板の少なくとも一方の面に形成されたリン含有ニッケル層と、
    を有する、
    ことを特徴とする、金属水素化物電池のバイポーラ電極。
  2. 前記リン含有ニッケル層がニッケル-リン合金を含む、請求項1に記載の金属水素化物電池のバイポーラ電極。
  3. 前記リン含有ニッケル層の厚みが0.1μm以上である、請求項1又は請求項2に記載の金属水素化物電池のバイポーラ電極。
  4. 前記リン含有ニッケル層におけるリン含有比率が9.0wt%~15.0wt%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の金属水素化物電池のバイポーラ電極。
  5. 前記リン含有ニッケル層中にリン化ニッケルを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の金属水素化物電池のバイポーラ電極。
  6. 前記リン含有ニッケル層が、前記集電体の第1面と同じ側に形成される、請求項1~5のいずれかに記載の金属水素化物電池のバイポーラ電極。
  7. 前記リン含有ニッケル層が、前記集電体の第2面と同じ側に形成される、請求項1~5のいずれかに記載の金属水素化物電池のバイポーラ電極。
  8. 前記リン含有ニッケル層が、前記集電体の第1面と同じ側及び第2面と同じ側の両方に形成される、請求項1~7のいずれか一項に記載の金属水素化物電池のバイポーラ電極。
  9. 前記集電体は、前記リン含有ニッケル層と、前記負極活物質層又は前記正極活物質層との間に、さらにニッケル層を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の金属水素化物電池のバイポーラ電極。
  10. 前記ニッケル層の前記負極活物質層又は前記正極活物質層と接する表面が、前記リン含有ニッケル層あるいは前記鋼板よりも大きい表面粗さを有する、請求項9に記載の金属水素化物電池のバイポーラ電極。
  11. 前記ニッケル層の表面粗さが、十点平均粗さRzjisにおいて、Rzjis=2.0μm~16.0μmである、請求項10に記載の金属水素化物電池のバイポーラ電極。
  12. 請求項1~11のいずれか一項に記載の金属水素化物電池のバイポーラ電極が積層されてなることを特徴とする、金属水素化物電池。
  13. 請求項12に記載の金属水素化物電池において、前記正極活物質層がニッケル水酸化物を含む、ニッケル金属水素化物電池。
  14. 集電体形成工程と、活物質層形成工程と、を含む金属水素化物電池のバイポーラ電極の製造方法であって、
    前記集電体形成工程が、鋼板の少なくとも一方の面にリン含有ニッケル層を設ける工程を含み、
    前記活物質層形成工程が、集電体の第1面に負極活物質層を形成する工程と、集電体の第2面に正極活物質層を設ける工程と、を含む、
    ことを特徴とする、金属水素化物電池のバイポーラ電極の製造方法。
  15. 前記集電体形成工程はさらに、前記リン含有ニッケル層を設けた鋼板を熱処理することにより前記リン含有ニッケル層中にリン化ニッケルを形成する工程と、を含む、請求項14に記載の金属水素化物電池のバイポーラ電極の製造方法。
  16. 前記集電体形成工程はさらに、前記リン含有ニッケル層と前記負極活物質層又は前記正極活物質層との間のニッケル層を形成する、ニッケル層形成工程を含む、請求項14又は請求項15に記載の金属水素化物電池のバイポーラ電極の製造方法。
  17. 前記集電体形成工程はさらに、粗化ニッケル層形成工程を含み、
    前記粗化ニッケル層形成工程により形成される粗化ニッケル層が、前記リン含有ニッケル層あるいは前記鋼板よりも大きい表面粗さを有する、請求項14~16のいずれか一項に記載の金属水素化物電池のバイポーラ電極の製造方法。
  18. 請求項14~17のいずれか一項に記載の製造方法でバイポーラ電極を製造する工程、
    前記バイポーラ電極を用いて金属水素化物電池を製造する工程、
    を有する金属水素化物電池の製造方法。
JP2021215214A 2021-12-28 2021-12-28 金属水素化物電池のバイポーラ電極、及びそのバイポーラ電極を備えた金属水素化物電池 Pending JP2023098448A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2021215214A JP2023098448A (ja) 2021-12-28 2021-12-28 金属水素化物電池のバイポーラ電極、及びそのバイポーラ電極を備えた金属水素化物電池

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2021215214A JP2023098448A (ja) 2021-12-28 2021-12-28 金属水素化物電池のバイポーラ電極、及びそのバイポーラ電極を備えた金属水素化物電池

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2023098448A true JP2023098448A (ja) 2023-07-10

Family

ID=87071964

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2021215214A Pending JP2023098448A (ja) 2021-12-28 2021-12-28 金属水素化物電池のバイポーラ電極、及びそのバイポーラ電極を備えた金属水素化物電池

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2023098448A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR20210022074A (ko) 전착 동박, 및 이를 포함하는 전극 및 리튬 이온 이차 전지
US9065139B2 (en) Fiber electrode for lithium secondary battery, fabrication method therefor, and lithium secondary battery including fiber electrode
TWI532235B (zh) 銅包鋼箔、負極、負極集電體之製法暨電池
US9118087B2 (en) Electrode for lithium secondary battery
US20100266898A1 (en) Electrode for electrochemical device
JP3191752B2 (ja) ニッケル−水素二次電池およびその電極の製造方法
US10218005B2 (en) Secondary battery, battery pack, and vehicle
WO1999056332A1 (fr) Pile secondaire au lithium
EP3792993A1 (en) Separator, electrode group, secondary battery, battery pack, vehicle, and stationary power supply
JP5544576B2 (ja) 燃料電池正極およびこれを用いた燃料電池
JP2023133607A (ja) 亜鉛電池用電解液及び亜鉛電池
KR20190069485A (ko) 전지용 집전체 및 전지
WO2022230931A1 (ja) 金属水素化物電池のバイポーラ電極、バイポーラ電極を備えた金属水素化物電池、金属水素化物電池のバイポーラ電極の製造方法、及び金属水素化物電池の製造方法
WO2016045622A1 (zh) 电池、电池组和不间断电源
JP2023098448A (ja) 金属水素化物電池のバイポーラ電極、及びそのバイポーラ電極を備えた金属水素化物電池
WO2020012891A1 (ja) ニッケル金属水素化物電池
JP2020047445A (ja) ニッケル金属水素化物電池
CN111755757A (zh) 镍锌电池的制造方法
JP7489948B2 (ja) 電極構造体、二次電池、電池パック、車両、及び定置用電源
WO2023074846A1 (ja) リチウム二次電池
US20230078710A1 (en) Secondary battery, battery pack, vehicle, and stationary power supply
JP7140054B2 (ja) ニッケル金属水素化物電池
US20220069336A1 (en) Electrode structure, secondary battery, battery pack, vehicle, and stationary power supply
WO2023195233A1 (ja) 亜鉛電池用負極及び亜鉛電池
WO2019193972A1 (ja) アルカリ蓄電池及びその製造方法