JP2023098142A - クラッチアクチュエータ - Google Patents
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Abstract
【課題】設計自由度が高く消費電力の低いクラッチアクチュエータを提供する。【解決手段】コネクタモジュール17は、ハウジング12に設けられ、電動モータ20に電力を供給する。締結部材18は、磁性材料により形成され、ハウジング12とコネクタモジュール17とを締結する。ステータ21は、磁性材料により形成され、筒状のステータコア211、および、ステータコア211から径方向内側へ突出するようステータコア211の周方向に所定の間隔をあけて複数設けられたティース212を有している。締結部材18は、ハウジング12の軸方向から見て、ステータコア211の周方向において複数のティース212の間に位置するよう設けられている。【選択図】図6
Description
本発明は、クラッチアクチュエータに関する。
従来、相対回転可能な第1伝達部と第2伝達部との間に設けられ、第1伝達部と第2伝達部との間のトルクの伝達を許容する係合状態と、第1伝達部と第2伝達部との間のトルクの伝達を遮断する非係合状態とに状態が変化するクラッチの状態を変更可能なクラッチアクチュエータが知られている。
例えば、特許文献1のクラッチアクチュエータは、ハウジングに固定されたステータ、および、ステータに対し相対回転可能に設けられたロータを有し、電力の供給によりロータからトルクを出力可能な電動モータを備えている。
特許文献1には、ステータコアの周方向の特定の範囲においてティース間に疑似スロットを設けたクラッチアクチュエータが開示されている。これにより、ロータとステータとの間に生じるコギングトルクを、ロータがステータに対し任意の回転位置で静止可能な程度の大きさに設定し、電動モータに通電しなくてもクラッチの状態を維持可能としている。
しかしながら、特許文献1のクラッチアクチュエータでは、コギングトルクの大小によりバリエーションを展開する場合、疑似スロットの有無、位置、大きさ等、積層鋼鈑のステータでバリエーションを設定する必要がある。また、ティース間の疑似スロットが設けられた箇所には他の部品等を配置できないため、設計自由度が低下するおそれがある。
本発明の目的は、設計自由度が高く消費電力の低いクラッチアクチュエータを提供することにある。
本発明は、相対回転可能な第1伝達部(61)と第2伝達部(62)との間において、第1伝達部と第2伝達部との間のトルクの伝達を許容する係合状態と、第1伝達部と第2伝達部との間のトルクの伝達を遮断する非係合状態とに状態が変化するクラッチ(70)を備えるクラッチ装置(1)に用いられるクラッチアクチュエータであって、ハウジング(12)と電動モータ(20)とコネクタモジュール(17)と減速機(30)と回転並進部(2)と状態変更部(80)と締結部材(18)とを備える。
電動モータは、ハウジングに固定されたステータ(21)、および、ステータに対し相対回転可能に設けられたロータ(23)を有し、電力の供給によりロータからトルクを出力可能である。コネクタモジュールは、ハウジングに設けられ、電動モータに電力を供給する。減速機は、電動モータからのトルクを減速し出力可能である。
回転並進部は、減速機から出力されたトルクが入力されるとハウジングに対し相対回転する回転部(40)、および、回転部がハウジングに対し相対回転するとハウジングに対し軸方向に相対移動する並進部(50)を有する。状態変更部は、並進部から軸方向の力を受け、ハウジングに対する並進部の軸方向の相対位置に応じてクラッチの状態を係合状態または非係合状態に変更可能である。締結部材は、磁性材料により形成され、ハウジングとコネクタモジュールとを締結する。
ステータは、磁性材料により形成され、筒状のステータコア(211)、および、ステータコアから径方向内側へ突出するようステータコアの周方向に所定の間隔をあけて複数設けられたティース(212)を有している。締結部材は、ハウジングの軸方向から見て、ステータコアの周方向において複数のティースの間に位置するよう設けられている。
そのため、電動モータに発生するコギングトルクの大きさを、ロータがステータに対し所定の回転位置で静止可能な程度の大きさに設定できる。これにより、例えばクラッチの状態が係合状態のとき、電動モータへの電力の供給を停止等することで、減速機を経由して回転並進部側から電動モータにトルクが伝達されても、電動モータの回転を規制することができる。これにより、電動モータの消費電力を抑えつつ、クラッチの状態を係合状態に維持できる。
また、本発明では、従来技術のようにステータのティース間に疑似スロットを設ける必要がないため、ティース間に他の部品等を配置でき、設計自由度を高めることができる。
以下、複数の実施形態によるクラッチアクチュエータを図面に基づき説明する。なお、複数の実施形態において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
(第1実施形態)
第1実施形態によるクラッチアクチュエータを適用したクラッチ装置を図1、2に示す。クラッチ装置1は、例えば車両の内燃機関と変速機との間に設けられ、内燃機関と変速機との間のトルクの伝達を許容または遮断するのに用いられる。
第1実施形態によるクラッチアクチュエータを適用したクラッチ装置を図1、2に示す。クラッチ装置1は、例えば車両の内燃機関と変速機との間に設けられ、内燃機関と変速機との間のトルクの伝達を許容または遮断するのに用いられる。
クラッチ装置1は、クラッチアクチュエータ10、クラッチ70、「制御部」としての電子制御ユニット(以下、「ECU」という)100、「第1伝達部」としての入力軸61、「第2伝達部」としての出力軸62等を備えている。
クラッチアクチュエータ10は、ハウジング12、「原動機」としての電動モータ20、減速機30、「回転並進部」または「転動体カム」としてのトルクカム2、状態変更部80、コネクタモジュール17、締結部材18等を備えている。
ECU100は、演算手段としてのCPU、記憶手段としてのROM、RAM等、入出力手段としてのI/O等を有する小型のコンピュータである。ECU100は、車両の各部に設けられた各種センサからの信号等の情報に基づき、ROM等に格納されたプログラムに従い演算を実行し、車両の各種装置および機器の作動を制御する。このように、ECU100は、非遷移的実体的記録媒体に格納されたプログラムを実行する。このプログラムが実行されることで、プログラムに対応する方法が実行される。
ECU100は、各種センサからの信号等の情報に基づき、内燃機関等の作動を制御可能である。また、ECU100は、後述する電動モータ20の作動を制御可能である。
入力軸61は、例えば、図示しない内燃機関の駆動軸に接続され、駆動軸とともに回転可能である。つまり、入力軸61には、駆動軸からトルクが入力される。
内燃機関を搭載する車両には、固定フランジ11が設けられる(図2参照)。固定フランジ11は、筒状に形成され、例えば車両のエンジンルームに固定される。固定フランジ11の内周壁と入力軸61の外周壁との間には、ボールベアリング141が設けられる。これにより、入力軸61は、ボールベアリング141を介して固定フランジ11により軸受けされる。
ハウジング12は、固定フランジ11の端部の内周壁と入力軸61の外周壁との間に設けられる。ハウジング12は、ハウジング内筒部121、ハウジング板部122、ハウジング外筒部123、ハウジングフランジ部124、ハウジング段差面125、ハウジング側スプライン溝部127等を有している。
ハウジング内筒部121は、略円筒状に形成されている。ハウジング板部122は、ハウジング内筒部121の端部から径方向外側へ延びるよう環状の板状に形成されている。ハウジング外筒部123は、ハウジング板部122の外縁部からハウジング内筒部121と同じ側へ延びるよう略円筒状に形成されている。ハウジングフランジ部124は、ハウジング外筒部123のハウジング板部122とは反対側の端部から径方向外側へ延びるよう環状の板状に形成されている。ここで、ハウジング内筒部121とハウジング板部122とハウジング外筒部123とハウジングフランジ部124とは、例えば金属により一体に形成されている。
ハウジング段差面125は、ハウジング内筒部121の径方向外側においてハウジング板部122とは反対側を向くよう円環の平面状に形成されている。ハウジング側スプライン溝部127は、ハウジング段差面125に対しハウジング板部122とは反対側において軸方向に延びるようハウジング内筒部121の外周壁に形成されている。ハウジング側スプライン溝部127は、ハウジング内筒部121の周方向に複数形成されている。
ハウジング12は、外壁の一部が固定フランジ11の壁面に当接するよう固定フランジ11に固定される(図2参照)。ハウジング12は、図示しないボルト等により固定フランジ11に固定される。ここで、ハウジング12は、固定フランジ11および入力軸61に対し同軸に設けられる。ここで、「同軸」とは、2つの軸が厳密に一致する同軸の状態に限らず、僅かに偏心している状態または傾いている状態を含むものとする(以下、同じ)。また、ハウジング内筒部121の内周壁と入力軸61の外周壁との間には、略円筒状の空間が形成される。
電動モータ20は、ステータ21、コイル22、ロータ23等を有している。ステータ21は、例えば積層鋼板により環状に形成され、ハウジング外筒部123の内側に固定されている。コイル22は、ボビン221、巻線222を有している。ボビン221は、例えば樹脂により筒状に形成され、ステータ21の周方向に等間隔で複数設けられている。巻線222は、ボビン221に巻き回されている。
ロータ23は、ロータ筒部231、ロータ板部232、ロータ筒部233、マグネット230を有している。ロータ筒部231は、略円筒状に形成されている。ロータ板部232は、ロータ筒部231の端部から径方向内側へ延びるよう環状の板状に形成されている。ロータ筒部233は、ロータ板部232の内縁部からロータ筒部231とは反対側へ延びるよう略円筒状に形成されている。ここで、ロータ筒部231とロータ板部232とロータ筒部233とは、例えば鉄系の金属により一体に形成され、ロータコア234を構成している。
マグネット230は、ロータ筒部231の外周壁に設けられている。マグネット230は、磁極が交互になるようロータ筒部231の周方向に等間隔で複数設けられている。ハウジング内筒部121のハウジング段差面125に対しハウジング板部122側の外周壁には、ボールベアリング151が設けられている。ボールベアリング151は、内周壁がハウジング内筒部121の外周壁に嵌合している。ロータ23は、ロータ筒部231の内周壁がボールベアリング151の外周壁に嵌合するよう設けられている。これにより、ロータ23は、ボールベアリング151を介してハウジング内筒部121により回転可能に支持されている。
ここで、ロータ23は、ステータ21の径方向内側において、ステータ21に対し相対回転可能に設けられている。電動モータ20は、インナロータタイプのブラシレス直流モータである。
ECU100は、コイル22の巻線222に供給する電力を制御することにより、電動モータ20の作動を制御可能である。コイル22に電力が供給されると、ステータ21に回転磁界が生じ、ロータ23が回転する。これにより、ロータ23からトルクが出力される。このように、電動モータ20は、ステータ21、および、ステータ21に対し相対回転可能に設けられたロータ23を有し、電力の供給によりロータ23からトルクを出力可能である。
本実施形態では、クラッチ装置1は、基板101、プレート102、センサマグネット103、回転角センサ104を備えている。基板101は、ハウジング内筒部121の外周壁のハウジング板部122近傍に設けられている。プレート102は、例えば略円筒状に形成され、一端の内周壁がロータ筒部231のロータ板部232とは反対側の端部の外周壁に嵌合し、ロータ23と一体に回転可能なよう設けられている。センサマグネット103は、略円環状に形成され、内周壁がプレート102の他端の外周壁に嵌合し、プレート102およびロータ23と一体に回転可能なよう設けられている。センサマグネット103は、磁束を発生させる。
回転角センサ104は、センサマグネット103のロータ23とは反対側の面に対向するよう基板101に実装されている。回転角センサ104は、センサマグネット103から発生する磁束を検出し、検出した磁束に応じた信号をECU100に出力する。これにより、ECU100は、回転角センサ104からの信号に基づき、ロータ23の回転角および回転数等を検出することができる。また、ECU100は、ロータ23の回転角および回転数等に基づき、ハウジング12および後述する従動カム50に対する駆動カム40の相対回転角度、ハウジング12および駆動カム40に対する従動カム50および状態変更部80の軸方向の相対位置等を算出することができる。
減速機30は、サンギヤ31、プラネタリギヤ32、キャリア33、第1リングギヤ34、第2リングギヤ35等を有している。
サンギヤ31は、ロータ23と同軸かつ一体回転可能に設けられている。より詳細には、サンギヤ31は、例えば金属により略円筒状に形成され、一方の端部の外周壁がロータ筒部233の内周壁に嵌合するようロータ23に固定されている。サンギヤ31は、「歯部」および「外歯」としてのサンギヤ歯部311を有している。サンギヤ歯部311は、サンギヤ31の他方の端部の外周壁に形成されている。サンギヤ31には、電動モータ20のトルクが入力される。ここで、サンギヤ31は、減速機30の「入力部」に対応する。
プラネタリギヤ32は、サンギヤ31の周方向に沿って複数設けられ、サンギヤ31に噛み合いつつ自転しながらサンギヤ31の周方向に公転可能である。より詳細には、プラネタリギヤ32は、例えば金属により略円筒状に形成され、サンギヤ31の径方向外側においてサンギヤ31の周方向に等間隔で4つ設けられている。プラネタリギヤ32は、「歯部」および「外歯」としてのプラネタリギヤ歯部321を有している。プラネタリギヤ歯部321は、サンギヤ歯部311に噛み合い可能なようプラネタリギヤ32の外周壁に形成されている。
キャリア33は、プラネタリギヤ32を回転可能に支持し、サンギヤ31に対し相対回転可能である。より詳細には、キャリア33は、例えば金属により略円環状に形成され、サンギヤ31に対し径方向外側に設けられている。キャリア33は、ロータ23およびサンギヤ31に対し相対回転可能である。
キャリア33には、ピン331、ニードルベアリング332、キャリアワッシャ333が設けられている。ピン331は、例えば金属により略円柱状に形成され、プラネタリギヤ32の内側を通るようキャリア33に設けられている。ニードルベアリング332は、ピン331の外周壁とプラネタリギヤ32の内周壁との間に設けられている。これにより、プラネタリギヤ32は、ニードルベアリング332を介してピン331により回転可能に支持されている。キャリアワッシャ333は、例えば金属により環状の板状に形成され、ピン331の径方向外側において、プラネタリギヤ32の端部とキャリア33との間に設けられている。これにより、プラネタリギヤ32は、キャリア33に対し円滑に相対回転可能である。
第1リングギヤ34は、プラネタリギヤ32に噛み合い可能な歯部である第1リングギヤ歯部341を有し、ハウジング12に固定されている。より詳細には、第1リングギヤ34は、例えば金属により略円環状に形成されている。第1リングギヤ34は、外周壁がハウジング外筒部123の内周壁に嵌合するよう圧入によりハウジング12に固定されている。ここで、第1リングギヤ34は、ハウジング12、ロータ23、サンギヤ31に対し同軸に設けられている。「歯部」および「内歯」としての第1リングギヤ歯部341は、プラネタリギヤ32のプラネタリギヤ歯部321の軸方向の一方の端部側に噛み合い可能なよう第1リングギヤ34の内縁部に形成されている。
第2リングギヤ35は、プラネタリギヤ32に噛み合い可能な歯部であり第1リングギヤ歯部341とは歯数の異なる第2リングギヤ歯部351を有し、後述する駆動カム40と一体回転可能に設けられている。より詳細には、第2リングギヤ35は、例えば金属により略円環状に形成されている。ここで、第2リングギヤ35は、ハウジング12、ロータ23、サンギヤ31に対し同軸に設けられている。「歯部」および「内歯」としての第2リングギヤ歯部351は、プラネタリギヤ32のプラネタリギヤ歯部321の軸方向の他方の端部側に噛み合い可能なよう第2リングギヤ35の内縁部に形成されている。本実施形態では、第2リングギヤ歯部351の歯数は、第1リングギヤ歯部341の歯数よりも多い。より詳細には、第2リングギヤ歯部351の歯数は、第1リングギヤ歯部341の歯数よりも、プラネタリギヤ32の個数である4に整数を乗じた数分だけ多い。
また、プラネタリギヤ32は、同一部位において2つの異なる諸元をもつ第1リングギヤ34および第2リングギヤ35と干渉なく正常に噛み合う必要があるため、第1リングギヤ34および第2リングギヤ35の一方もしくは両方を転位させて各歯車対の中心距離を一定にする設計としている。
上記構成により、電動モータ20のロータ23が回転すると、サンギヤ31が回転し、プラネタリギヤ32のプラネタリギヤ歯部321がサンギヤ歯部311と第1リングギヤ歯部341および第2リングギヤ歯部351とに噛み合いつつ自転しながらサンギヤ31の周方向に公転する。ここで、第2リングギヤ歯部351の歯数が第1リングギヤ歯部341の歯数より多いため、第2リングギヤ35は、第1リングギヤ34に対し相対回転する。そのため、第1リングギヤ34と第2リングギヤ35との間で第1リングギヤ歯部341と第2リングギヤ歯部351との歯数差に応じた微小差回転が第2リングギヤ35の回転として出力される。これにより、電動モータ20からのトルクは、減速機30により減速されて、第2リングギヤ35から出力される。このように、減速機30は、電動モータ20のトルクを減速して出力可能である。本実施形態では、減速機30は、3k型の不思議遊星歯車減速機を構成している。
第2リングギヤ35は、後述する駆動カム40と一体に形成されている。第2リングギヤ35は、電動モータ20からのトルクを減速して駆動カム40に出力する。ここで、第2リングギヤ35は、減速機30の「出力部」に対応する。
トルクカム2は、「回転部」としての駆動カム40、「並進部」としての従動カム50、「転動体」としてのボール3を有している。
駆動カム40は、駆動カム本体41、駆動カム内筒部42、駆動カム板部43、駆動カム外筒部44、駆動カム溝400等を有している。駆動カム本体41は、略円環の板状に形成されている。駆動カム内筒部42は、駆動カム本体41の外縁部から軸方向に延びるよう略円筒状に形成されている。駆動カム板部43は、駆動カム内筒部42の駆動カム本体41とは反対側の端部から径方向外側へ延びるよう略円環の板状に形成されている。駆動カム外筒部44は、駆動カム板部43の外縁部から駆動カム内筒部42と同じ側へ延びるよう略円筒状に形成されている。ここで、駆動カム本体41と駆動カム内筒部42と駆動カム板部43と駆動カム外筒部44とは、例えば金属により一体に形成されている。
駆動カム溝400は、駆動カム本体41の駆動カム内筒部42側の面から凹みつつ周方向に延びるよう形成されている。駆動カム溝400は、駆動カム本体41の周方向に等間隔で5つ形成されている。駆動カム溝400は、駆動カム本体41の周方向における一端から他端に向かうに従い深さが浅くなるよう駆動カム本体41の駆動カム内筒部42側の面に対し溝底が傾斜して形成されている。
駆動カム40は、駆動カム本体41がハウジング内筒部121の外周壁とサンギヤ31の内周壁との間に位置し、駆動カム板部43がキャリア33に対しロータ23とは反対側に位置し、駆動カム外筒部44が第1リングギヤ34に対しステータ21とは反対側かつハウジングフランジ部124の内側に位置するよう設けられている。駆動カム40は、ハウジング12に対し相対回転可能である。
第2リングギヤ35は、駆動カム外筒部44の内縁部と一体に形成されている。すなわち、第2リングギヤ35は、「回転部」としての駆動カム40と一体回転可能に設けられている。そのため、電動モータ20からのトルクが、減速機30により減速されて、第2リングギヤ35から出力されると、駆動カム40は、ハウジング12に対し相対回転する。すなわち、駆動カム40は、減速機30から出力されたトルクが入力されるとハウジング12に対し相対回転する。
従動カム50は、従動カム本体51、従動カム筒部52、従動カム段差面53、カム側スプライン溝部54、従動カム溝500等を有している。従動カム本体51は、略円環の板状に形成されている。従動カム筒部52は、従動カム本体51の外縁部から軸方向に延びるよう略円筒状に形成されている。ここで、従動カム本体51と従動カム筒部52とは、例えば金属により一体に形成されている。
従動カム段差面53は、従動カム筒部52の径方向外側において従動カム本体51とは反対側を向くよう円環の平面状に形成されている。カム側スプライン溝部54は、従動カム本体51の内周壁において軸方向に延びるよう形成されている。カム側スプライン溝部54は、従動カム本体51の周方向に複数形成されている。
従動カム50は、従動カム本体51が駆動カム本体41に対しハウジング段差面125とは反対側かつ駆動カム内筒部42の内側に位置し、カム側スプライン溝部54がハウジング側スプライン溝部127とスプライン結合するよう設けられている。これにより、従動カム50は、ハウジング12に対し、相対回転不能、かつ、軸方向に相対移動可能である。
従動カム溝500は、従動カム本体51の従動カム筒部52とは反対側の面から凹みつつ周方向に延びるよう形成されている。従動カム溝500は、従動カム本体51の周方向に等間隔で5つ形成されている。従動カム溝500は、従動カム本体51の周方向における一端から他端に向かうに従い深さが浅くなるよう従動カム本体51の従動カム筒部52とは反対側の面に対し溝底が傾斜して形成されている。
なお、駆動カム溝400と従動カム溝500とは、それぞれ、駆動カム本体41の従動カム本体51側の面側、または、従動カム本体51の駆動カム本体41側の面側から見たとき、同一の形状となるよう形成されている。
ボール3は、例えば金属により球状に形成されている。ボール3は、5つの駆動カム溝400と5つの従動カム溝500との間のそれぞれにおいて転動可能に設けられている。すなわち、ボール3は、合計5つ設けられている。
本実施形態では、クラッチアクチュエータ10は、保持器4を備えている。保持器4は、例えば金属により略円環の板状に形成され、駆動カム本体41と従動カム本体51との間に設けられている。保持器4は、ボール3の外径よりやや大きな内径の穴部を有している。当該穴部は、保持器4の周方向に等間隔で5つ形成されている。ボール3は、5つの穴部のそれぞれに設けられている。そのため、ボール3は、保持器4により保持され、駆動カム溝400および従動カム溝500における位置が安定する。
このように、駆動カム40と従動カム50とボール3とは、「転動体カム」としてのトルクカム2を構成している。駆動カム40がハウジング12および従動カム50に対し相対回転すると、ボール3は、駆動カム溝400および従動カム溝500においてそれぞれの溝底に沿って転動する。
図1に示すように、ボール3は、第1リングギヤ34および第2リングギヤ35の径方向内側に設けられている。より詳細には、ボール3は、第1リングギヤ34および第2リングギヤ35の軸方向の範囲内に設けられている。
上述のように、駆動カム溝400は、一端から他端にかけて溝底が傾斜するよう形成されている。また、従動カム溝500は、一端から他端にかけて溝底が傾斜するよう形成されている。そのため、減速機30から出力されるトルクにより駆動カム40がハウジング12および従動カム50に対し相対回転すると、ボール3が駆動カム溝400および従動カム溝500において転動し、従動カム50は、駆動カム40およびハウジング12に対し軸方向に相対移動、すなわち、ストロークする。
このように、従動カム50は、駆動カム40がハウジング12に対し相対回転すると駆動カム40およびハウジング12に対し軸方向に相対移動する。ここで、従動カム50は、カム側スプライン溝部54がハウジング側スプライン溝部127とスプライン結合しているため、ハウジング12に対し相対回転しない。また、駆動カム40は、ハウジング12に対し相対回転するものの、軸方向には相対移動しない。
本実施形態では、クラッチアクチュエータ10は、リターンスプリング55、リターンスプリングワッシャ56、Cリング57を備えている。リターンスプリング55は、例えばウェーブスプリングであり、ハウジング内筒部121のハウジング板部122とは反対側の端部の外周壁と従動カム筒部52の内周壁との間に設けられている。リターンスプリング55は、一端が従動カム本体51の従動カム筒部52側の面の内縁部に当接している。
リターンスプリングワッシャ56は、例えば金属により略円環状に形成され、ハウジング内筒部121の径方向外側においてリターンスプリング55の他端に当接している。Cリング57は、リターンスプリングワッシャ56のリターンスプリング55とは反対側の面を係止するようハウジング内筒部121の外周壁に固定されている。
リターンスプリング55は、軸方向に伸びる力を有している。そのため、従動カム50は、駆動カム40との間にボール3を挟んだ状態で、リターンスプリング55により駆動カム本体41側へ付勢されている。
出力軸62は、軸部621、板部622、筒部623、摩擦板624を有している(図2参照)。軸部621は、略円筒状に形成されている。板部622は、軸部621の一端から径方向外側へ環状の板状に延びるよう軸部621と一体に形成されている。筒部623は、板部622の外縁部から軸部621とは反対側へ略円筒状に延びるよう板部622と一体に形成されている。摩擦板624は、略円環の板状に形成され、板部622の筒部623側の端面に設けられている。ここで、摩擦板624は、板部622に対し相対回転不能である。
入力軸61の端部は、ハウジング内筒部121の内側を通り、従動カム50に対し駆動カム40とは反対側に位置している。出力軸62は、ハウジング12に対し固定フランジ11とは反対側、すなわち、従動カム50に対し駆動カム40とは反対側において、入力軸61と同軸に設けられる。軸部621の内周壁と入力軸61の端部の外周壁との間には、ボールベアリング142が設けられる。これにより、出力軸62は、ボールベアリング142を介して入力軸61により軸受けされる。入力軸61および出力軸62は、ハウジング12に対し相対回転可能である。
クラッチ70は、出力軸62の筒部623の内側において、入力軸61と出力軸62との間に設けられている。クラッチ70は、内側摩擦板71、外側摩擦板72、係止部701を有している。内側摩擦板71は、略円環の板状に形成され、入力軸61と出力軸62の筒部623との間において、軸方向に並ぶよう複数設けられている。内側摩擦板71は、内縁部が入力軸61の外周壁とスプライン結合するよう設けられている。そのため、内側摩擦板71は、入力軸61に対し相対回転不能、かつ、軸方向に相対移動可能である。
外側摩擦板72は、略円環の板状に形成され、入力軸61と出力軸62の筒部623との間において、軸方向に並ぶよう複数設けられている。ここで、内側摩擦板71と外側摩擦板72とは、入力軸61の軸方向において交互に配置されている。外側摩擦板72は、外縁部が出力軸62の筒部623の内周壁とスプライン結合するよう設けられている。そのため、外側摩擦板72は、出力軸62に対し相対回転不能、かつ、軸方向に相対移動可能である。複数の外側摩擦板72のうち最も摩擦板624側に位置する外側摩擦板72は、摩擦板624に接触可能である。
係止部701は、略円環状に形成され、外縁部が出力軸62の筒部623の内周壁に嵌合するよう設けられる。係止部701は、複数の外側摩擦板72のうち最も従動カム50側に位置する外側摩擦板72の外縁部を係止可能である。そのため、複数の外側摩擦板72、複数の内側摩擦板71は、筒部623の内側からの脱落が抑制される。なお、係止部701と摩擦板624との距離は、複数の外側摩擦板72および複数の内側摩擦板71の板厚の合計よりも大きい。
複数の内側摩擦板71および複数の外側摩擦板72が互いに接触、つまり係合した状態である係合状態では、内側摩擦板71と外側摩擦板72との間に摩擦力が生じ、当該摩擦力の大きさに応じて内側摩擦板71と外側摩擦板72との相対回転が規制される。一方、複数の内側摩擦板71および複数の外側摩擦板72が互いに離間、つまり係合していない状態である非係合状態では、内側摩擦板71と外側摩擦板72との間に摩擦力は生じず、内側摩擦板71と外側摩擦板72との相対回転は規制されない。
クラッチ70が係合状態のとき、入力軸61に入力されたトルクは、クラッチ70を経由して出力軸62に伝達される。一方、クラッチ70が非係合状態のとき、入力軸61に入力されたトルクは、出力軸62に伝達されない。
このように、クラッチ70は、入力軸61と出力軸62との間でトルクを伝達する。クラッチ70は、係合している係合状態のとき、入力軸61と出力軸62との間のトルクの伝達を許容し、係合していない非係合状態のとき、入力軸61と出力軸62との間のトルクの伝達を遮断する。
本実施形態では、クラッチ装置1は、通常、非係合状態となる、所謂常開式(ノーマリーオープンタイプ)のクラッチ装置である。
状態変更部80は、「弾性変形部」としての皿ばね81、Cリング82、スラストベアリング83を有している。状態変更部80は、2つの皿ばね81を有している。2つの皿ばね81は、従動カム筒部52の径方向外側において、軸方向に重なった状態で従動カム段差面53に対し従動カム本体51とは反対側に設けられている。
スラストベアリング83は、従動カム筒部52と皿ばね81との間に設けられている。スラストベアリング83は、ローラ831、内輪部84、外輪部85を有している。内輪部84は、内輪板部841、内輪筒部842を有している。内輪板部841は、略円環の板状に形成されている。内輪筒部842は、内輪板部841の内縁部から軸方向の一方に延びるよう略円筒状に形成されている。内輪板部841と内輪筒部842とは、例えば金属により一体に形成されている。内輪部84は、内輪板部841が従動カム段差面53に当接し、内輪筒部842の内周壁が従動カム筒部52の外周壁に当接するよう設けられている。
外輪部85は、外輪板部851、外輪筒部852、外輪筒部853を有している。外輪板部851は、略円環の板状に形成されている。外輪筒部852は、外輪板部851の内縁部から軸方向の一方に延びるよう略円筒状に形成されている。外輪筒部853は、外輪板部851の外縁部から軸方向の他方に延びるよう略円筒状に形成されている。外輪板部851と外輪筒部852と外輪筒部853とは、例えば金属により一体に形成されている。外輪部85は、内輪部84に対し従動カム段差面53とは反対側において、従動カム筒部52の径方向外側に設けられている。ここで、2つの皿ばね81は、外輪筒部852の径方向外側に位置している。外輪筒部852の内周壁は、従動カム筒部52の外周壁と摺動可能である。
ローラ831は、内輪部84と外輪部85との間に設けられている。ローラ831は、内輪板部841と外輪板部851との間で転動可能である。これにより、内輪部84と外輪部85とは、相対回転可能である。
2つの皿ばね81のうち一方の皿ばね81は、軸方向の一端すなわち内縁部が外輪板部851に当接している。Cリング82は、2つの皿ばね81のうち他方の皿ばね81の軸方向の一端および外輪筒部852の端部を係止可能なよう従動カム筒部52の外周壁に固定されている。そのため、2つの皿ばね81およびスラストベアリング83は、Cリング82により従動カム筒部52からの脱落が抑制されている。皿ばね81は、軸方向に弾性変形可能である。
ボール3が駆動カム溝400および従動カム溝500の一端に位置するとき、駆動カム40と従動カム50との距離は、比較的小さく、2つの皿ばね81のうち他方の皿ばね81の軸方向の他端すなわち外縁部とクラッチ70との間には、隙間Sp1が形成されている(図1参照)。そのため、クラッチ70は非係合状態であり、入力軸61と出力軸62との間のトルクの伝達は遮断されている。
ここで、ECU100の制御により電動モータ20のコイル22に電力が供給されると、電動モータ20が回転し、減速機30からトルクが出力され、駆動カム40がハウジング12に対し相対回転する。これにより、ボール3が駆動カム溝400および従動カム溝500の一端から他端側へ転動する。そのため、従動カム50は、リターンスプリング55を圧縮しながら駆動カム40に対し軸方向に相対移動、すなわち、クラッチ70側へ移動する。これにより、皿ばね81は、クラッチ70側へ移動する。
従動カム50の軸方向の移動により皿ばね81がクラッチ70側へ移動すると、隙間Sp1が小さくなり、2つの皿ばね81のうち他方の皿ばね81の軸方向の他端は、クラッチ70の外側摩擦板72に接触する。皿ばね81がクラッチ70に接触した後さらに従動カム50が軸方向に移動すると、皿ばね81は、軸方向に弾性変形しつつ、外側摩擦板72を摩擦板624側へ押す。これにより、複数の内側摩擦板71および複数の外側摩擦板72が互いに係合し、クラッチ70が係合状態となる。そのため、入力軸61と出力軸62との間のトルクの伝達が許容される。
このとき、2つの皿ばね81は、スラストベアリング83の外輪部85とともに従動カム筒部52に対し相対回転する。また、このとき、ローラ831は、皿ばね81からスラスト方向の荷重を受けつつ、内輪板部841と外輪板部851との間で転動する。このように、スラストベアリング83は、皿ばね81からスラスト方向の荷重を受けつつ、皿ばね81を軸受けする。
ECU100は、クラッチ伝達トルクがクラッチ要求トルク容量に達すると、電動モータ20の回転を停止させる。これにより、クラッチ70は、クラッチ伝達トルクがクラッチ要求トルク容量に維持された係合保持状態となる。このように、状態変更部80の皿ばね81は、従動カム50から軸方向の力を受け、ハウジング12および駆動カム40に対する従動カム50の軸方向の相対位置に応じてクラッチ70の状態を係合状態または非係合状態に変更可能である。
出力軸62は、軸部621の板部622とは反対側の端部が、図示しない変速機の入力軸に接続され、当該入力軸とともに回転可能である。つまり、変速機の入力軸には、出力軸62から出力されたトルクが入力される。変速機に入力されたトルクは、変速機で変速され、駆動トルクとして車両の駆動輪に出力される。これにより、車両が走行する。
次に、本実施形態の減速機30が採用する3k型の不思議遊星歯車減速機について説明する。
本実施形態のような電動のクラッチ装置では、クラッチとアクチュエータとの初期隙間(隙間Sp1に相当)を詰める初期応答に要する時間を短くすることが求められる。初期応答を速くするには、回転運動方程式から、入力軸周りの慣性モーメントを小さくすればよいことがわかる。入力軸が中実円筒部材の場合の慣性モーメントは、長さと密度一定で比較したとき、外径の4乗に比例して大きくなる。本実施形態のクラッチ装置1では、ここでいう「入力軸」に対応するサンギヤ31は中空円筒部材であるが、この傾向は変わらない。
図3の上段に、2kh型の不思議遊星歯車減速機の模式図を示す。また、図4の上段に、3k型の不思議遊星歯車減速機の模式図を示す。ここで、サンギヤをA、プラネタリギヤをB、第1リングギヤをC、第2リングギヤをD、キャリアをSとする。2kh型と3k型とを比較すると、3k型は、2kh型にサンギヤAを加えた構成である。
2kh型の場合、入力軸周りの慣性モーメントが最も小さくなるのは、構成要素の中で最も径方向内側に位置するキャリアSを入力要素とする場合である(図3の下段の表参照)。
一方、3kh型の場合、入力軸周りの慣性モーメントが最も小さくなるのは、構成要素の中で最も径方向内側に位置するサンギヤAを入力要素とする場合である(図4の下段の表参照)。
慣性モーメントの大きさは、2kh型においてキャリアSを入力要素とした場合の方が、3k型においてサンギヤAを入力要素とした場合よりも大きい。したがって、初期応答の速さが要求される電動のクラッチ装置において、その減速機に不思議遊星歯車減速機を採用する場合、3k型で、かつ、サンギヤAを入力要素とすることが望ましい。
また、電動のクラッチ装置では必要荷重が数千~10数千Nと非常に大きく、高応答と高荷重を両立させるためには、減速機の減速比を大きくとる必要がある。2kh型と3k型において、同一歯車諸元でそれぞれの最大減速比を比較すると、3k型の最大減速比が2kh型の最大減速比に対し約2倍となり、大きい。また、3k型において大減速比が取り出せるのは、慣性モーメントが最も小さくなる、サンギヤAを入力要素としたときである(図4の下段の表参照)。したがって、高応答と高荷重を両立させる上で最適な構成は、3k型で、かつ、サンギヤAを入力要素とする構成であるといえる。
本実施形態では、減速機30は、サンギヤ31(A)を入力要素、第2リングギヤ35(D)を出力要素、第1リングギヤ34(C)を固定要素とする3k型の不思議遊星歯車減速機である。そのため、サンギヤ31周りの慣性モーメントを小さくできるとともに、減速機30の減速比を大きくすることができる。したがって、クラッチ装置1において高応答と高荷重を両立させることができる。
次に、状態変更部80が弾性変形部としての皿ばね81を有することによる効果について説明する。
図5に示すように、従動カム50の軸方向の移動、すなわち、ストロークとクラッチ70に作用する荷重との関係について、軸方向に弾性変形し難い剛体でクラッチ70を押す構成(図5の一点鎖線参照)と、本実施形態のように軸方向に弾性変形可能な皿ばね81でクラッチ70を押す構成(図5の実線参照)とを比較すると、ストロークのばらつきが同じとき、皿ばね81でクラッチ70を押す構成の方が、剛体でクラッチ70を押す構成よりも、クラッチ70に作用する荷重のばらつきが小さいことがわかる。これは、剛体でクラッチ70を押す構成と比較し、皿ばね81を介することにより、合成ばね定数を低減できるため、アクチュエータ起因の従動カム50のストロークのばらつきに対する荷重のばらつきを低減することができるからである。本実施形態では、状態変更部80が弾性変形部としての皿ばね81を有するため、従動カム50のストロークのばらつきに対する荷重のばらつきを低減でき、クラッチ70に狙い荷重を容易に作用させることができる。
以下、本実施形態の各部の構成について、より詳細に説明する。
本実施形態では、クラッチ装置1は、Oリング401、Oリング402を備えている。Oリング401、Oリング402は、例えばゴム等の弾性材料により環状に形成されている。Oリング401は、ハウジング側スプライン溝部127とハウジング段差面125との間のハウジング内筒部121の外周壁に形成された環状の溝部に設けられている。Oリング402は、駆動カム外筒部44の外周壁に形成された環状の溝部に設けられている。駆動カム本体41の内周壁は、Oリング401の外縁部と摺動可能である。Oリング401は、ハウジング内筒部121と駆動カム本体41の内周壁との間を液密にシールしている。ハウジング外筒部123の内周壁は、Oリング402の外縁部と摺動可能である。Oリング402は、駆動カム外筒部44とハウジング外筒部123の内周壁との間を液密にシールしている。これにより、駆動カム40に対し電動モータ20とは反対側の水、油および埃等が駆動カム40とハウジング内筒部121との間、または、駆動カム40とハウジング外筒部123との間を経由して、電動モータ20および減速機30等が収容されたハウジング12の内側へ侵入することを抑制できる。
また、本実施形態では、クラッチアクチュエータ10は、スラストベアリング161、スラストベアリングワッシャ162を備えている。スラストベアリングワッシャ162は、例えば金属により略円環の板状に形成され、一方の面がハウジング段差面125に当接するよう設けられている。スラストベアリング161は、スラストベアリングワッシャ162の他方の面と駆動カム本体41の従動カム50とは反対側の面との間に設けられている。スラストベアリング161は、駆動カム40からスラスト方向の荷重を受けつつ駆動カム40を軸受けする。本実施形態では、クラッチ70側から従動カム50を経由して駆動カム40に作用するスラスト方向の荷重は、スラストベアリング161およびスラストベアリングワッシャ162を経由してハウジング段差面125に作用する。そのため、ハウジング段差面125により駆動カム40を安定して軸受けできる。
図1に示すように、駆動カム本体41は、駆動カム外筒部44および第2リングギヤ35のクラッチ70とは反対側の面よりもクラッチ70とは反対側に位置している。また、従動カム本体51は、駆動カム外筒部44、第2リングギヤ35および駆動カム内筒部42の径方向内側に位置している。さらに、サンギヤ31のサンギヤ歯部311、キャリア33およびプラネタリギヤ32は、駆動カム本体41および従動カム本体51の径方向外側に位置している。これにより、減速機30およびトルクカム2を含むクラッチ装置1の軸方向の体格を大幅に小さくできる。
図1に示すように、駆動カム本体41の軸方向において、駆動カム本体41とサンギヤ31とキャリア33とコイル22のボビン221および巻線222とは、一部が重複するよう配置されている。言い換えると、コイル22は、一部が、駆動カム本体41、サンギヤ31およびキャリア33の軸方向の一部の径方向外側に位置するよう設けられている。これにより、クラッチ装置1の軸方向の体格をさらに小さくできる。
次に、電動モータ20の構成、コネクタモジュール17の構成、および、ECU100による電動モータ20の制御等について、詳細に説明する。
図6に示すように、ステータ21は、ステータコア211、ティース212を有している。
ステータ21は、例えば積層鋼板等の磁性材料により環状に形成されている。ステータコア211は、略円筒状に形成されている。ティース212は、ステータコア211から径方向内側へ突出するようステータコア211の周方向に所定の間隔をあけて複数設けられている。具体的には、ティース212は、ステータコア211の周方向に等間隔で15個設けられている(図6参照)。
図6に示すように、ロータ23は、ロータコア234、および、マグネット230を有している。ロータコア234は、上述のロータ筒部231、ロータ板部232、ロータ筒部233からなる(図1参照)。
マグネット230は、ロータコア234の径方向においてティース212と対向可能なようロータコア234の周方向に所定の間隔をあけて複数設けられている。具体的には、マグネット230は、ロータコア234の外周壁に固定されるようにして、ロータコア234の周方向に等間隔で20個設けられている(図6参照)。
上述したコイル22は、ステータ21の複数のティース212のそれぞれに設けられている。具体的には、コイル22は、ステータコア211の周方向に等間隔で15個設けられている(図6参照)。より具体的には、コイル22の筒状のボビン221が複数のティース212のそれぞれに設けられ、ボビン221のそれぞれに巻線222が巻き回されている(図6参照)。
図1に示すように、コネクタモジュール17は、モジュール本体171、コネクタ部172、モジュール穴部173、筒部材174を有している。
モジュール本体171は、例えば樹脂により円環の板状に形成されている。コネクタ部172は、モジュール本体171の外縁部から径方向外側へ突出するようモジュール本体171と一体に形成されている。モジュール穴部173は、モジュール本体171を板厚方向に貫くよう形成されている。モジュール穴部173は、モジュール本体171の周方向に3つ形成されている。筒部材174は、例えば金属により筒状に形成され、インサート成型によりモジュール本体171の3つのモジュール穴部173のそれぞれに設けられている。
ハウジング板部122には、ハウジング板部122を板厚方向に貫くハウジング穴部128が形成されている。ハウジング穴部128は、ハウジング板部122の周方向に3つ形成されている。ハウジング穴部128の内周壁には、ねじ溝が形成されている。
締結部材18は、軸部181、頭部182を有している。
軸部181は、例えば金属により円柱状に形成されている。頭部182は、軸部181の一端に接続するよう軸部181と一体に形成されている。頭部182の外径は、軸部181の外径より大きい。軸部181の外周壁のうち少なくとも頭部182側の端部には、ねじ山が形成されている。
コネクタモジュール17は、モジュール本体171の一方の端面がハウジング板部122に当接するようハウジング12に設けられている。締結部材18は、軸部181がモジュール穴部173およびハウジング穴部128を通り、軸部181のねじ山がハウジング穴部128のねじ溝に螺合するようにしてハウジング12とコネクタモジュール17とを締結している。
ここで、頭部182は、筒部材174をハウジング板部122に押し付けている。また、頭部182は、モジュール穴部173内に位置し、モジュール本体171のハウジング12とは反対側の端面から突出していない(図1参照)。
<1>締結部材18は、ハウジング12の軸方向から見て、ステータコア211の周方向において複数のティース212の間に位置するよう設けられている(図6参照)。本実施形態では、締結部材18は、ステータコア211の周方向の所定の位置に3つ設けられている。
<2>締結部材18は、軸方向の一部が、ステータコア211の周方向において複数のティース212の間に位置するよう設けられている。
より具体的には、軸部621の頭部182とは反対側の端部は、ティース212間に位置している(図1、6参照)。
コネクタ部172には、ECU100からのハーネスおよび図示しないバッテリからのハーネスが接続される。これにより、ECU100は、回転角センサ104からの信号を受信できる。また、バッテリからのハーネスを経由して電動モータ20に電力を供給できる。このように、コネクタモジュール17は、ハウジング12に設けられ、電動モータ20に電力を供給する。
「制御部」としてのECU100は、電動モータ20へ供給する電力を制御し、ステータ21に対するロータ23の相対回転を制御し、電動モータ20の作動を制御可能である。具体的には、ECU100は、ステータ21に回転磁界が生じるよう、各コイル22の巻線222に電力を供給する。これにより、ステータ21に対しロータ23が相対回転し、ロータ23からトルクが出力される。ECU100は、コイル22に供給する電力を制御することにより、ロータ23が正回転または逆回転するよう、あるいは、ロータ23の回転速度が変化するよう等電動モータ20の作動を制御可能である。
次に、電動モータ20に生じるコギングトルクについて、詳細に説明する。
本実施形態では、ロータ23とステータ21との間に、コギングトルクTcogが生じる。コギングトルクTcogは、下記式1を満たすよう設定されている。
Tcog≧Pload・(ηr´/u)・(ηc´/K)・SF ・・・式1
Tcog≧Pload・(ηr´/u)・(ηc´/K)・SF ・・・式1
式1において、コギングトルクTcogは、コギングトルク波形の片振幅に対応する。Ploadは、クラッチ70の締結力に対応する。ここで、クラッチ70の締結力は、クラッチ70の状態が係合状態のときにクラッチ70側から従動カム50側へ軸方向に作用する力に相当する。ηr´は、減速機30の逆効率に対応する。uは、減速比に対応する。ηc´は、トルクカム2の逆効率に対応する。Kは、トルクと推力との変換比に対応する。SFは、安全率に対応する。
ここで、トルク推力変換比K[N/Nm]は、下記式2により表される。
K=P/T=(2/Dpittanγ)×103 ・・・式2
K=P/T=(2/Dpittanγ)×103 ・・・式2
式2において、Pは、従動カム50を軸方向に押す力、すなわち、推力に対応する。Tは、駆動カム40を回転させる力、すなわち、トルクに対応する。Dpitは、駆動カム40を軸方向から見たとき、駆動カム溝400の溝底を通る円、すなわち、ピッチ円の直径に対応する。γは、駆動カム本体41の従動カム本体51側の面に対する駆動カム溝400の溝底の傾斜角、すなわち、リード角に対応している(図7参照)。
ここで、駆動カム40の回転角1[rad]あたりの従動カム50の軸方向の移動量、すなわち、ストローク量[mm/rad]は、下記式3により表される。
πDpittanγ/2π=Dpittanγ/2 ・・・式3
πDpittanγ/2π=Dpittanγ/2 ・・・式3
また、トルクカム2の効率ηcは、下記式4により表される。
ηc=(1-μtanγ)/(1+μ/tanγ) ・・・式4
ηc=(1-μtanγ)/(1+μ/tanγ) ・・・式4
式4において、μ=0.005とする。
本実施形態では、式1に示すように、コギングトルクTcogは、Pload・(ηr´/u)・(ηc´/K)・SF以上となるよう設定されている。そのため、ロータ23は、ステータ21に対し任意の回転位置で静止可能である。すなわち、本実施形態では、ロータ23とステータ21との間に生じるコギングトルクは、クラッチ70の状態が係合状態のときにクラッチ70側から従動カム50側へ軸方向の力が作用しても、ロータ23がステータ21に対し任意の回転位置で静止可能な程度の大きさに設定されている。これにより、例えばクラッチ70の状態が係合状態のとき、電動モータ20への電力の供給を停止等することで、減速機30を経由してトルクカム2側から電動モータ20にトルクが伝達されても、電動モータ20の回転を規制することができる。これにより、電動モータ20の消費電力を抑えつつ、クラッチ70の状態を係合状態に維持できる。
<14>締結部材18のステータコア211に対する周方向の位置(図6参照)、締結部材18のステータコア211に対する径方向の位置(図6参照)、または、締結部材18の軸部181の軸方向の長さ(図1参照)を変更することにより、電動モータ20に生じるコギングトルクの大きさを変更可能である。
次に、クラッチアクチュエータ10の作動等について、図8に基づき説明する。
図8の上段に実線で示すように、時刻t1~t2にかけて電動モータ20が回転すると、従動カム50および状態変更部80がクラッチ70側へ移動し、クラッチ70の締結荷重が上昇する。このとき、図8の中段に実線で示すように、電動モータ20への通電量が上昇する。
図8の上段に実線で示すように、時刻t2において、クラッチ伝達トルクがクラッチ要求トルク容量に達すると、クラッチ70の締結荷重は最大値となる。ECU100が時刻t3において電動モータ20への通電を停止しても、ロータ23は、ロータ23とステータ21との間に生じるコギングトルクにより、ステータ21に対する相対回転が規制されているため、従動カム50は、駆動カム40側へ移動することなく、クラッチ70の締結荷重は、時刻t3以降も最大値に維持される。そのため、クラッチ70の状態は、係合状態に維持される。図8の中段に実線で示すように、時刻t3以降、電動モータ20への通電量は、0になる。
図8の中段に実線で示すように、ECU100が時刻t4において電動モータ20への通電を開始すると、電動モータ20が時刻t1~t2のときとは反対方向に回転し、従動カム50が駆動カム40側へ移動する。そのため、図8の上段に実線で示すように、時刻t5以降、クラッチ70の締結荷重は減少し、時刻t6で0になる。
次に、従来のクラッチアクチュエータの作動について説明する。
ここで、従来のクラッチアクチュエータは、作動油をクラッチに供給し、クラッチの状態を係合状態または非係合状態に変更可能な油圧制御式のクラッチアクチュエータである。従来のクラッチアクチュエータは、作動油をクラッチに供給する油圧ポンプ、油圧ポンプからクラッチに供給される作動油の油圧を一定に保つレギュレータ、および、油圧ポンプとクラッチとの間の油路を切り替えるソレノイド等を備えている。
図8の中段に破線で示すように、時刻t1~t2にかけて油圧ポンプ、レギュレータおよびソレノイドが作動し、クラッチに作動油が供給されると、クラッチの締結荷重は上昇する。このとき、図8の中段に破線で示すように、ソレノイドへの通電量が上昇する。
図8の上段に示すように、時刻t2において、クラッチ伝達トルクがクラッチ要求トルク容量に達すると、クラッチの締結荷重は最大値となる。従来のクラッチアクチュエータでは、クラッチへの作動油の供給を停止すると、クラッチの係合が解除されるため、クラッチの状態を係合状態に維持するには、クラッチに作動油を供給し続ける必要がある。そのため、油圧ポンプ、ソレノイドを作動させ続ける必要がある。したがって、図8の中段に破線で示すように、時刻t2以降、ソレノイドへの通電量は、0より大きい所定値に維持される。
図8の上段に示すように、時刻t5以降、クラッチの状態が係合状態から非係合状態になるようクラッチに作動油を供給すると、クラッチの締結荷重は減少し、時刻t6で0になる。図8の中段に破線で示すように、時刻t5以降、ソレノイドへの通電量は減少し、時刻t6で0になる。
次に、本実施形態のクラッチアクチュエータ10の作動に必要な動力と従来のクラッチアクチュエータの作動に必要な動力とについて比較する。
図8の中段および下段に実線で示すように、本実施形態のクラッチアクチュエータ10の作動に必要な動力は、電動モータ20への通電量に対応して増減する。そのため、図8の下段に実線で示すように、時刻t3~t4では、クラッチアクチュエータ10の作動に必要な動力は0になる。
図8の中段および下段に破線で示すように、従来のクラッチアクチュエータの作動に必要な動力は、ソレノイドへの電力と油圧ポンプの動力との和に対応して増減する。そのため、図8の下段に破線で示すように、従来のクラッチアクチュエータの作動に必要な動力は、時刻t1~t2においては本実施形態のクラッチアクチュエータ10より大きく、時刻t2~t5においては0より大きな所定の値を維持し、時刻t5~t6においては本実施形態のクラッチアクチュエータ10より大きい。
そのため、クラッチの係合状態の期間が比較的長い場合等、図9に破線で示すように、従来のクラッチアクチュエータの作動に必要な動力の平均値は、比較的大きい。一方、図9に実線で示すように、本実施形態のクラッチアクチュエータ10の作動に必要な動力の平均値は、従来のクラッチアクチュエータと比べて、大幅に小さい。このように、本実施形態では、例えばクラッチ70の状態が係合状態のときに、電動モータ20への通電を停止することで、クラッチアクチュエータ10の作動に必要な動力を低減できる。
また、本実施形態では、従来の油圧制御式のクラッチアクチュエータと比べ、機能集約による搭載性の向上を図ることができる。さらに、クラッチアクチュエータ10の非作動時の動力損失を低減し、燃費の向上を図ることができる。
なお、仮に、電動モータ20に生じるコギングトルクが、ロータ23がステータ21に対し任意の回転位置で静止可能な程度の大きさに設定されていない場合、クラッチ70の状態が係合状態のときに、電動モータ20への通電を停止すると、クラッチ70からの反力等によりステータ21に対しロータ23が相対回転し、クラッチ70の係合状態が解除されるおそれがある。そのため、コギングトルクがこのように設定されている場合は、クラッチアクチュエータの作動に必要な動力が増大する。
一方、本実施形態では、電動モータ20に生じるコギングトルクは、ロータ23がステータ21に対し任意の回転位置で静止可能な程度の大きさに設定されている。そのため、クラッチ70の状態が係合状態のときに、電動モータ20への通電を停止しても、ロータ23はステータ21に対し相対回転せず、クラッチ70の状態を係合状態に維持できる。したがって、上述のように、クラッチ70の状態が係合状態のときに電動モータ20への通電を停止することが可能となり、クラッチアクチュエータ10の作動に必要な動力を低減できる。
次に、ECU100の機能等について詳細に説明する。
<7>上述のように、ECU100は、回転角センサ104からの信号に基づき、ステータ21に対するロータ23の回転角を検出可能である。ここで、回転角センサ104およびECU100は、「回転角検出部」に対応している。
<8>図1に示すように、クラッチアクチュエータ10は、ストロークセンサ105を備えている。ストロークセンサ105は、例えば状態変更部80の径方向外側に位置するよう出力軸62に設けられ、ハウジング12に対する状態変更部80の軸方向の相対位置に応じた信号をECU100に出力する。これにより、ECU100は、ストロークセンサ105からの信号に基づき、ハウジング12に対する状態変更部80の軸方向の相対位置である軸方向位置を検出可能である。ここで、ストロークセンサ105およびECU100は、「軸方向位置検出部」に対応している。
<9>ECU100は、電動モータ20の作動を制御することで、状態変更部80の皿ばね81とクラッチ70との間の隙間Sp1の大きさを制御可能である。ここで、隙間Sp1は、「クラッチ間隙間」に対応している。
図1に示すように、ECU100は、概念的な機能部として学習部5、係合予測部6を有している。
<10>学習部5は、状態変更部80とクラッチ70とが当接するときのハウジング12に対する状態変更部80の位置であるタッチングポイントを学習する。具体的には、例えば車両のイグニッションスイッチがオンになると、ECU100が起動し、学習部5は、電動モータ20に通電する。これにより、電動モータ20が回転し、従動カム50および状態変更部80がクラッチ70側へ移動し、状態変更部80の皿ばね81とクラッチ70との間の隙間Sp1が徐々に小さくなる。
学習部5が、電動モータ20への通電を継続すると、状態変更部80の皿ばね81がクラッチ70に当接する。学習部5が、電動モータ20への通電をさらに継続すると、電動モータ20の負荷が上昇し、負荷に比例する電動モータ20への電流値も上昇する。ここで、学習部5は、電動モータ20への電流値が上昇し始めたとき、すなわち、電流値の変化率である傾きが変化したときのステータ21に対するロータ23の回転角、および、状態変更部80の軸方向位置を「タッチングポイント」として記憶、すなわち、学習する。
ECU100は、学習部5により学習したタッチングポイントに基づき、状態変更部80の皿ばね81とクラッチ70との間の隙間Sp1が、状態変更部80とクラッチ70との引き摺りが発生しない程度の大きさになるよう電動モータ20の作動を制御する。
その後、ECU100は、電動モータ20への通電を停止する。このとき、ボール3は、駆動カム溝400および従動カム溝500の一端以外の位置、すなわち、傾斜する駆動カム溝400と従動カム溝500との間にある。本実施形態では、ロータ23とステータ21との間に生じるコギングトルクは、ロータ23がステータ21に対し任意の回転位置で静止可能な程度の大きさに設定されている。そのため、電動モータ20への通電を停止しても、ハウジング12に対する従動カム50および状態変更部80の軸方向の相対位置が変動するのを抑制できる。これにより、隙間Sp1の大きさの変動を抑制できる。
学習部5によるタッチングポイントの学習時の作動例を図10に示す。車両のイグニッションスイッチがオンになったとき、ボール3は、駆動カム溝400および従動カム溝500の一端に位置する。このときのハウジング12に対する状態変更部80の軸方向の相対位置である軸方向位置はSt0であり、状態変更部80とクラッチ70との隙間Sp1(クラッチ間隙間)は最大の大きさである。
学習部5が電動モータ20への通電を開始すると、電動モータ20が回転し、状態変更部80の軸方向位置が変化する。状態変更部80の軸方向位置の変化に伴い、電動モータ20の負荷に比例する電動モータ20への電流値も変化する。
状態変更部80の軸方向位置がSt1に達すると、電動モータ20への電流値の傾きが変化する。そのため、学習部5は、このときの状態変更部80の軸方向位置St1を「タッチングポイント」として学習する。
ECU100は、学習部5により学習したタッチングポイント(St1)に基づき、状態変更部80の皿ばね81とクラッチ70との間の隙間Sp1が、状態変更部80とクラッチ70との引き摺りが発生しない程度の大きさになるよう電動モータ20の作動を制御する。これにより、状態変更部80の軸方向位置がSt2になる。
次に、学習部5によるタッチングポイントの学習の効果について説明する。
クラッチ70の状態を非係合状態から係合状態に変更するときのクラッチ装置1の作動例について、学習部5によるタッチングポイントの学習をしない場合を図11の(A)に示し、学習部5によるタッチングポイントの学習をする場合を図11の(B)に示す。ここで、学習部5による学習をしない場合の状態変更部80の初期位置(軸方向位置)は、図10に示すSt0である。また、学習部5による学習をする場合の状態変更部80の初期位置(軸方向位置)は、図10に示すSt2である。
図11の(A)に示すように、学習部5による学習をしない場合、状態変更部80が初期位置(St0)からクラッチ70に当接する位置(St1)まで移動するのに、時間T01(=t02-t01)かかる。また、変速ショックを抑制する係合制御時間は、時間T02(=t03-t02)かかる。
一方、図11の(B)に示すように、学習部5による学習をする場合、状態変更部80が初期位置(St2)からクラッチ70に当接する位置(St1)まで移動するのに、時間T11(=t12-t11)かかる。また、変速ショックを抑制する係合制御時間は、時間T12(=t13-t12)かかる。
ここで、T01+T02またはT11+T12で変速軸(入力軸61と出力軸62と)の回転数差がなくなるため、T01+T02、T11+T12を変速時間とする。変速ショックを抑制する係合制御時間は、学習部5による学習の有無にかかわらず同等のため、T02=T12である。学習部5による学習をする場合の状態変更部80の初期位置(St2)とクラッチ70に当接する位置(St1)との距離は、学習部5による学習をしない場合の状態変更部80の初期位置(St0)とクラッチ70に当接する位置(St1)との距離より小さい。そのため、T01>T11である。したがって、T01+T02>T11+T12である。
以上より、学習部5によりタッチングポイントの学習を行い、状態変更部80の初期位置を、状態変更部80とクラッチ70との引き摺りが発生しない程度のクラッチ70に近い位置に設定した場合、学習部5による学習をしない場合と比べ、変速時間を短縮することができる。
本実施形態では、ECU100は、環境温度に応じてクラッチ間隙間(隙間Sp1)の大きさが変化するよう電動モータ20の作動を制御可能である。
<11>具体的には、ECU100は、環境温度が所定温度より低いとき、クラッチ間隙間(隙間Sp1)が所定の大きさになるよう電動モータ20の作動を制御し、環境温度が前記所定温度以上のとき、クラッチ間隙間(隙間Sp1)が前記所定の大きさより小さくなるよう電動モータ20の作動を制御可能である。
<12>係合予測部6は、クラッチ70が非係合状態から係合状態になるのを予測可能である。具体的には、係合予測部6は、例えば車両の速度、エンジンや車軸のトルクの変化等に基づき、クラッチ70が非係合状態から係合状態になるのを予測可能である。
ECU100は、係合予測部6によりクラッチ70が係合状態になるのを予測したとき、クラッチ間隙間(隙間Sp1)が、クラッチ70が非係合状態のときの大きさよりも小さくなるよう電動モータ20の作動を制御可能である。
<13>ECU100は、入力軸61と出力軸62との相対回転差が所定値以下のとき、クラッチ間隙間(隙間Sp1)が所定の大きさになるよう電動モータ20の作動を制御し、前記相対回転差が前記所定値より大きいとき、クラッチ間隙間(隙間Sp1)が前記所定の大きさより大きくなるよう電動モータ20の作動を制御可能である。
以上説明したように、<1>本実施形態では、コネクタモジュール17は、ハウジング12に設けられ、電動モータ20に電力を供給する。締結部材18は、磁性材料により形成され、ハウジング12とコネクタモジュール17とを締結する。ステータ21は、磁性材料により形成され、筒状のステータコア211、および、ステータコア211から径方向内側へ突出するようステータコア211の周方向に所定の間隔をあけて複数設けられたティース212を有している。ロータ23は、ステータコア211の径方向内側に設けられたロータコア234、および、ロータコア234の周方向に所定の間隔をあけて複数設けられたマグネット230を有している。電動モータ20は、複数のティース212に設けられたコイル22を有している。締結部材18は、ハウジング12の軸方向から見て、ステータコア211の周方向において複数のティース212の間に位置するよう設けられている。
そのため、電動モータ20に発生するコギングトルクの大きさを、ロータ23がステータ21に対し所定の回転位置で静止可能な程度の大きさに設定できる。これにより、例えばクラッチ70の状態が係合状態のとき、電動モータ20への電力の供給を停止等することで、減速機30を経由してトルクカム2側から電動モータ20にトルクが伝達されても、電動モータ20の回転を規制することができる。これにより、電動モータ20の消費電力を抑えつつ、クラッチ70の状態を係合状態に維持できる。
また、本実施形態では、従来技術のようにステータのティース間に疑似スロットを設ける必要がないため、ティース212間に他の部品等を配置でき、設計自由度を高めることができる。
また、<2>本実施形態では、締結部材18は、軸方向の一部が、ステータコア211の周方向において複数のティース212の間に位置するよう設けられている。
そのため、電動モータ20に発生するコギングトルクをより大きくでき、例えばクラッチ70の状態が係合状態のとき、電動モータ20への電力の供給を停止等することで、減速機30を経由してトルクカム2側から電動モータ20にトルクが伝達されても、電動モータ20の回転を確実に規制することができる。これにより、電動モータ20の消費電力を抑えつつ、クラッチ70の状態を係合状態に確実に維持できる。
また、<3>本実施形態では、減速機30は、サンギヤ31、プラネタリギヤ32、キャリア33、第1リングギヤ34、第2リングギヤ35を有する。サンギヤ31には、電動モータ20のトルクが入力される。プラネタリギヤ32は、サンギヤ31に噛み合いつつ自転しながらサンギヤ31の周方向に公転可能である。
キャリア33は、プラネタリギヤ32を回転可能に支持し、サンギヤ31に対し相対回転可能である。第1リングギヤ34は、ハウジング12に固定され、プラネタリギヤ32に噛み合い可能である。第2リングギヤ35は、プラネタリギヤ32に噛み合い可能、かつ、第1リングギヤ34とは歯部の歯数が異なるよう形成され、駆動カム40にトルクを出力する。
本実施形態では、減速機30は、数ある不思議遊星歯車減速機の構成および入出力パターンの中で最も高応答かつ高荷重の構成に対応している。そのため、減速機30の高応答と高荷重とを両立することができる。
また、<4>本実施形態では、ロータ23は、ステータ21の径方向内側においてサンギヤ31と一体に回転するよう設けられている。そのため、ロータ23と一体回転可能に設けられたサンギヤ31周りの慣性モーメントを小さくでき、クラッチアクチュエータ10を高応答化することができる。
また、<5>本実施形態では、「回転並進部」の「回転部」は、軸方向の一方の面に形成された複数の駆動カム溝400を有する駆動カム40である。「並進部」は、軸方向の一方の面に形成された複数の従動カム溝500を有する従動カム50である。「回転並進部」は、駆動カム40、従動カム50、および、駆動カム溝400と従動カム溝500との間で転動可能に設けられたボール3を有するトルクカム2である。
そのため、「回転並進部」が例えば「すべりねじ」により構成される場合と比べ、「回転並進部」の効率を向上できる。また、「回転並進部」が例えば「ボールねじ」により構成される場合と比べ、コストを低減できるとともに、「回転並進部」の軸方向の体格を小さくでき、クラッチアクチュエータをより小型にできる。
また、<6>本実施形態では、状態変更部80は、軸方向に弾性変形可能な弾性変形部としての皿ばね81を有している。そのため、従動カム50のストロークのばらつきに対する、クラッチ70に作用する荷重のばらつきを低減することができる。これにより、高精度な荷重制御が可能となり、クラッチアクチュエータ10を高精度に制御することができる。
また、<7>本実施形態は、「回転角検出部」をさらに備える。「回転角検出部」としての回転角センサ104およびECU100は、ステータ21に対するロータ23の回転角を検出可能である。そのため、電動モータ20を高精度に制御でき、クラッチ70の状態を高精度に制御できる。
また、<8>本実施形態は、「軸方向位置検出部」をさらに備える。「軸方向位置検出部」としてのストロークセンサ105およびECU100は、ハウジング12に対する状態変更部80の軸方向の相対位置である軸方向位置を検出可能である。そのため、状態変更部80の軸方向位置を高精度に制御でき、クラッチ70の状態をより高精度に制御できる。
また、<9>本実施形態は、「制御部」としてのECU100を備える。ECU100は、電動モータ20へ供給する電力を制御し、ステータ21に対するロータ23の相対回転を制御し、電動モータ20の作動を制御可能である。
ECU100は、電動モータ20の作動を制御することで、状態変更部80とクラッチ70との隙間であるクラッチ間隙間(隙間Sp1)の大きさを制御可能である。
また、<10>本実施形態では、状態変更部80は、クラッチ70に当接またはクラッチ70から離間するよう従動カム50とともにハウジング12に対し軸方向に相対移動する。
ECU100は、状態変更部80とクラッチ70とが当接するときのハウジング12に対する状態変更部80の位置であるタッチングポイントを学習する学習部5を有する。
ECU100は、学習部5により学習したタッチングポイントに基づき、クラッチ間隙間(隙間Sp1)が、状態変更部80とクラッチ70との引き摺りが発生しない程度の大きさになるよう電動モータ20の作動を制御可能である。そのため、変速時間を短縮することができる。
また、本実施形態では、ECU100は、環境温度に応じてクラッチ間隙間(隙間Sp1)の大きさが変化するよう電動モータ20の作動を制御可能である。
また、<11>本実施形態では、ECU100は、環境温度が所定温度より低いとき、クラッチ間隙間(隙間Sp1)が所定の大きさになるよう電動モータ20の作動を制御し、環境温度が前記所定温度以上のとき、クラッチ間隙間(隙間Sp1)が前記所定の大きさより小さくなるよう電動モータ20の作動を制御可能である。
一般に、環境温度、すなわち、ATF温度が低いとき、クラッチ70の引き摺りトルクが大きくなり、同温度が高いとき、クラッチ70の引き摺りトルクが小さくなる。そのため、ECU100が、上述のように環境温度に基づき、クラッチ間隙間(隙間Sp1)の大きさを制御することで、引き摺りトルクを低減できる。
また、<12>本実施形態では、ECU100は、クラッチ70が非係合状態から係合状態になるのを予測可能な係合予測部6を有する。
ECU100は、係合予測部6によりクラッチ70が係合状態になるのを予測したとき、クラッチ間隙間(隙間Sp1)が、クラッチ70が非係合状態のときの大きさよりも小さくなるよう電動モータ20の作動を制御可能である。
そのため、変速時間をさらに低減でき、ドライバビリティを向上させることができる。
また、<13>本実施形態では、ECU100は、入力軸61と出力軸62との相対回転差が所定値以下のとき、クラッチ間隙間(隙間Sp1)が所定の大きさになるよう電動モータ20の作動を制御し、前記相対回転差が前記所定値より大きいとき、クラッチ間隙間(隙間Sp1)が前記所定の大きさより大きくなるよう電動モータ20の作動を制御可能である。
一般に、入力軸61と出力軸62との相対回転差が大きいほど、クラッチ70の引き摺りトルクが大きくなる。そのため、ECU100が、上述のように入力軸61と出力軸62との相対回転差に基づき、クラッチ間隙間(隙間Sp1)の大きさを制御することで、引き摺りトルクを低減できる。
また、<14>本実施形態では、締結部材18のステータコア211に対する周方向の位置、締結部材18のステータコア211に対する径方向の位置、または、締結部材18の軸方向の長さを変更することにより、電動モータ20に生じるコギングトルクの大きさを変更可能である。
そのため、様々なコギングトルクの要求仕様に対し、締結部材18の位置や長さを変更するだけで対応可能である。
(第2実施形態)
第2実施形態によるクラッチアクチュエータを適用したクラッチ装置を図12に示す。第2実施形態は、クラッチや状態変更部の構成等が第1実施形態と異なる。
第2実施形態によるクラッチアクチュエータを適用したクラッチ装置を図12に示す。第2実施形態は、クラッチや状態変更部の構成等が第1実施形態と異なる。
本実施形態では、固定フランジ11の内周壁と入力軸61の外周壁との間には、ボールベアリング141、143が設けられる。これにより、入力軸61は、ボールベアリング141、143を介して固定フランジ11により軸受けされる。
ハウジング12は、外壁の一部が固定フランジ11の壁面に当接するよう固定フランジ11に固定される。ハウジング12は、図示しないボルト等により固定フランジ11に固定される。ここで、ハウジング12は、固定フランジ11および入力軸61に対し同軸に設けられる。
ハウジング12に対する電動モータ20、減速機30、トルクカム2等の配置は、第1実施形態と同様である。
本実施形態では、出力軸62は、軸部621、板部622、筒部623、カバー625を有している。軸部621は、略円筒状に形成されている。板部622は、軸部621の一端から径方向外側へ環状の板状に延びるよう軸部621と一体に形成されている。筒部623は、板部622の外縁部から軸部621とは反対側へ略円筒状に延びるよう板部622と一体に形成されている。出力軸62は、ボールベアリング142を介して入力軸61により軸受けされる。
クラッチ70は、出力軸62の筒部623の内側において、入力軸61と出力軸62との間に設けられている。クラッチ70は、支持部73、摩擦板74、摩擦板75、プレッシャプレート76を有している。支持部73は、出力軸62の板部622に対し従動カム50側において、入力軸61の端部の外周壁から径方向外側へ延びるよう略円環の板状に形成されている。
摩擦板74は、略円環の板状に形成され、支持部73の外縁部において出力軸62の板部622側に設けられている。摩擦板74は、支持部73に固定されている。摩擦板74は、支持部73の外縁部が板部622側に変形することにより、板部622に接触可能である。
摩擦板75は、略円環の板状に形成され、支持部73の外縁部において出力軸62の板部622とは反対側に設けられている。摩擦板75は、支持部73に固定されている。
プレッシャプレート76は、略円環の板状に形成され、摩擦板75に対し従動カム50側に設けられている。
摩擦板74と板部622とが互いに接触、つまり係合した状態である係合状態では、摩擦板74と板部622との間に摩擦力が生じ、当該摩擦力の大きさに応じて摩擦板74と板部622との相対回転が規制される。一方、摩擦板74と板部622とが互いに離間、つまり係合していない状態である非係合状態では、摩擦板74と板部622との間に摩擦力は生じず、摩擦板74と板部622との相対回転は規制されない。
クラッチ70が係合状態のとき、入力軸61に入力されたトルクは、クラッチ70を経由して出力軸62に伝達される。一方、クラッチ70が非係合状態のとき、入力軸61に入力されたトルクは、出力軸62に伝達されない。
カバー625は、略円環状に形成され、プレッシャプレート76の摩擦板75とは反対側を覆うよう出力軸62の筒部623に設けられている。
本実施形態では、クラッチ装置1は、第1実施形態で示した状態変更部80に代えて状態変更部90を備えている。状態変更部90は、「弾性変形部」としてのダイアフラムスプリング91、リターンスプリング92、レリーズベアリング93等を有している。
ダイアフラムスプリング91は、略円環の皿ばね状に形成され、軸方向の一端すなわち外縁部がプレッシャプレート76に当接するようカバー625に設けられている。ここで、ダイアフラムスプリング91は、外縁部が内縁部に対しクラッチ70側に位置するよう形成され、内縁部と外縁部との間の部位がカバー625により支持されている。また、ダイアフラムスプリング91は、軸方向に弾性変形可能である。これにより、ダイアフラムスプリング91は、軸方向の一端すなわち外縁部によりプレッシャプレート76を摩擦板75側へ付勢している。これにより、プレッシャプレート76は、摩擦板75に押し付けられ、摩擦板74は、板部622に押し付けられている。すなわち、クラッチ70は、通常、係合状態となっている。
本実施形態では、クラッチ装置1は、通常、係合状態となる、所謂常閉式(ノーマリークローズタイプ)のクラッチ装置である。
リターンスプリング92は、例えばコイルスプリングであり、一端が従動カム段差面53に当接するよう従動カム段差面53に対し従動カム本体51とは反対側に設けられている。
レリーズベアリング93は、リターンスプリング92の他端とダイアフラムスプリング91の内縁部との間に設けられている。リターンスプリング92は、レリーズベアリング93をダイアフラムスプリング91側へ付勢している。レリーズベアリング93は、ダイアフラムスプリング91からスラスト方向の荷重を受けつつダイアフラムスプリング91を軸受けする。なお、リターンスプリング92の付勢力は、ダイアフラムスプリング91の付勢力より小さい。
図12に示すように、ボール3が駆動カム溝400および従動カム溝500の一端に位置するとき、駆動カム40と従動カム50との距離は、比較的小さく、レリーズベアリング93と従動カム50の従動カム段差面53との間には、隙間Sp2が形成されている。そのため、ダイアフラムスプリング91の付勢力により摩擦板74が板部622に押し付けられ、クラッチ70は係合状態であり、入力軸61と出力軸62との間のトルクの伝達は許容されている。
ここで、ECU100の制御により電動モータ20のコイル22に電力が供給されると、電動モータ20が回転し、減速機30からトルクが出力され、駆動カム40がハウジング12に対し相対回転する。これにより、ボール3が駆動カム溝400および従動カム溝500の一端から他端側へ転動する。そのため、従動カム50は、ハウジング12および駆動カム40に対し軸方向に相対移動、すなわち、クラッチ70側へ移動する。これにより、レリーズベアリング93と従動カム50の従動カム段差面53との間の隙間Sp2が小さくなり、リターンスプリング92は、従動カム50とレリーズベアリング93との間で軸方向に圧縮される。
従動カム50がクラッチ70側にさらに移動すると、リターンスプリング92が最大限圧縮され、レリーズベアリング93が従動カム50によりクラッチ70側へ押圧される。これにより、レリーズベアリング93は、ダイアフラムスプリング91の内縁部を押圧しつつ、ダイアフラムスプリング91からの反力に抗してクラッチ70側へ移動する。
レリーズベアリング93がダイアフラムスプリング91の内縁部を押圧しつつクラッチ70側へ移動すると、ダイアフラムスプリング91は、内縁部がクラッチ70側へ移動するとともに、外縁部がクラッチ70とは反対側へ移動する。これにより、摩擦板74が板部622から離間し、クラッチ70の状態が係合状態から非係合状態に変更される。その結果、入力軸61と出力軸62との間のトルクの伝達が遮断される。
ECU100は、クラッチ伝達トルクが0になると、電動モータ20の回転を停止させる。ここで、ECU100は、電動モータ20への通電を停止する。本実施形態においても、電動モータ20、すなわち、ロータ23とステータ21との間に生じるコギングトルクは、クラッチ70の状態が非係合状態のときにクラッチ70側から従動カム50側へ軸方向の力が作用しても、ロータ23がステータ21に対し任意の回転位置で静止可能な程度の大きさに設定されている。そのため、クラッチ70の状態が非係合状態のとき、電動モータ20への電力の供給を停止することで、減速機30を経由してトルクカム2側から電動モータ20にトルクが伝達されても、電動モータ20の回転を規制することができる。これにより、電動モータ20の消費電力を抑えつつ、クラッチ70の状態を非係合状態に維持できる。
状態変更部90のダイアフラムスプリング91は、従動カム50から軸方向の力を受け、駆動カム40に対する従動カム50の軸方向の相対位置に応じてクラッチ70の状態を係合状態または非係合状態に変更可能である。
このように、本発明は、常閉式のクラッチ装置にも適用可能である。
(他の実施形態)
上述の実施形態では、締結部材は、軸方向の一部が、ステータコアの周方向において複数のティースの間に位置するよう設けられる例を示した。これに対し、他の実施形態では、締結部材は、軸方向の一部が、ステータコアの周方向において複数のティースの間に位置していなくてもよい。すなわち、締結部材の先端は、ハウジングの軸方向においてティースの位置まで延びるよう形成されていなくてもよい。
上述の実施形態では、締結部材は、軸方向の一部が、ステータコアの周方向において複数のティースの間に位置するよう設けられる例を示した。これに対し、他の実施形態では、締結部材は、軸方向の一部が、ステータコアの周方向において複数のティースの間に位置していなくてもよい。すなわち、締結部材の先端は、ハウジングの軸方向においてティースの位置まで延びるよう形成されていなくてもよい。
また、他の実施形態では、電動モータに生じるコギングトルクは、ロータがステータに対し任意の回転位置で静止可能な程度、すなわち、ステータに対するロータの相対回転を規制可能な程度であれば、どのような大きさに設定されていてもよい。
また、他の実施形態では、締結部材のステータコアに対する周方向の位置、締結部材のステータコアに対する径方向の位置、または、締結部材の軸部の軸方向の長さを変更することにより、電動モータに生じるコギングトルクの大きさを所望の大きさに変更することができる。
また、他の実施形態では、締結部材は、3つに限らず、いくつ設けてもよい。
また、上述の実施形態では、ステータの径方向内側にロータを設けるインナロータタイプのモータを示した。これに対し、他の実施形態では、モータは、ステータの径方向外側にロータを設けるアウタロータタイプのモータであってもよい。
また、上述の実施形態では、回転並進部が、駆動カム、従動カムおよび転動体を有する転動体カムである例を示した。これに対し、他の実施形態では、回転並進部は、ハウジングに対し相対回転する回転部、および、回転部がハウジングに対し相対回転すると回転部およびハウジングに対し軸方向に相対移動する並進部を有するのであれば、例えば、「すべりねじ」または「ボールねじ」等により構成されていてもよい。
また、他の実施形態では、状態変更部の弾性変形部は、軸方向に弾性変形可能であれば、例えばコイルスプリングまたはゴム等であってもよい。また、他の実施形態では、状態変更部は、弾性変形部を有さず、剛体のみで構成されていてもよい。
また、他の実施形態は、ステータに対するロータの回転角を検出可能な回転角検出部を備えていなくてもよい。
また、他の実施形態は、ハウジングに対する状態変更部の軸方向の相対位置である軸方向位置を検出可能な軸方向位置検出部を備えていなくてもよい。
また、他の実施形態では、制御部(ECU100)は、学習部5を有していなくてもよい。また、他の実施形態では、制御部(ECU100)は、係合予測部6を有していなくてもよい。また、他の実施形態は、制御部(ECU100)を備えていなくてもよい。
また、他の実施形態では、駆動カム溝400および従動カム溝500は、それぞれ、3つ以上であれば、5つに限らず、いくつ形成されていてもよい。また、ボール3も、駆動カム溝400および従動カム溝500の数に合わせ、いくつ設けられていてもよい。
また、上述の実施形態では、回転並進部の回転部と並進部とが別体に形成され、それぞれ、ハウジングに対し相対回転、ハウジングに対し軸方向に相対移動する例を示した。これに対し、他の実施形態では、回転部と並進部とが一体に形成され、ハウジングに対し相対回転および軸方向に相対移動する回転並進部であってもよい。
また、本発明は、内燃機関からの駆動トルクによって走行する車両に限らず、モータからの駆動トルクによって走行可能な電気自動車やハイブリッド車等に適用することもできる。
また、他の実施形態では、第2伝達部からトルクを入力し、クラッチを経由して第1伝達部からトルクを出力することとしてもよい。また、例えば、第1伝達部または第2伝達部の一方を回転不能に固定した場合、クラッチを係合状態にすることにより、第1伝達部または第2伝達部の他方の回転を止めることができる。この場合、クラッチ装置をブレーキ装置として用いることができる。
このように、本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施可能である。
本開示に記載の制御装置及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御装置及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御装置及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
1 クラッチ装置、2 トルクカム(回転並進部)、10 クラッチアクチュエータ、12 ハウジング、17 コネクタモジュール、18 締結部材、20 電動モータ、21 ステータ、23 ロータ、30 減速機、40 駆動カム(回転部)、50 従動カム(並進部)、61 入力軸(第1伝達部)、62 出力軸(第2伝達部)、70 クラッチ、80 状態変更部、211 ステータコア、212 ティース
Claims (14)
- 相対回転可能な第1伝達部(61)と第2伝達部(62)との間において、前記第1伝達部と前記第2伝達部との間のトルクの伝達を許容する係合状態と、前記第1伝達部と前記第2伝達部との間のトルクの伝達を遮断する非係合状態とに状態が変化するクラッチ(70)を備えるクラッチ装置(1)に用いられるクラッチアクチュエータであって、
ハウジング(12)と、
前記ハウジングに固定されたステータ(21)、および、前記ステータに対し相対回転可能に設けられたロータ(23)を有し、電力の供給により前記ロータからトルクを出力可能な電動モータ(20)と、
前記ハウジングに設けられ、前記電動モータに電力を供給するコネクタモジュール(17)と、
前記電動モータからのトルクを減速し出力可能な減速機(30)と、
前記減速機から出力されたトルクが入力されると前記ハウジングに対し相対回転する回転部(40)、および、前記回転部が前記ハウジングに対し相対回転すると前記ハウジングに対し軸方向に相対移動する並進部(50)を有する回転並進部(2)と、
前記並進部から軸方向の力を受け、前記ハウジングに対する前記並進部の軸方向の相対位置に応じて前記クラッチの状態を係合状態または非係合状態に変更可能な状態変更部(80)と、
磁性材料により形成され、前記ハウジングと前記コネクタモジュールとを締結する締結部材(18)と、を備え、
前記ステータは、磁性材料により形成され、筒状のステータコア(211)、および、前記ステータコアから径方向内側へ突出するよう前記ステータコアの周方向に所定の間隔をあけて複数設けられたティース(212)を有し、
前記締結部材は、前記ハウジングの軸方向から見て、前記ステータコアの周方向において複数の前記ティースの間に位置するよう設けられているクラッチアクチュエータ。 - 前記締結部材は、軸方向の一部が、前記ステータコアの周方向において複数の前記ティースの間に位置するよう設けられている請求項1に記載のクラッチアクチュエータ。
- 前記減速機は、
前記電動モータからのトルクが入力されるサンギヤ(31)、
前記サンギヤに噛み合いつつ自転しながら前記サンギヤの周方向に公転可能なプラネタリギヤ(32)、
前記プラネタリギヤを回転可能に支持し、前記サンギヤに対し相対回転可能なキャリア(33)、
前記ハウジングに固定され、前記プラネタリギヤに噛み合い可能な第1リングギヤ(34)、および、
前記プラネタリギヤに噛み合い可能、かつ、前記第1リングギヤとは歯数が異なるよう形成され、前記回転並進部にトルクを出力する第2リングギヤ(35)を有する請求項1または2に記載のクラッチアクチュエータ。 - 前記ロータは、前記ステータの径方向内側において前記サンギヤと一体に回転するよう設けられている請求項3に記載のクラッチアクチュエータ。
- 前記回転部は、一方の面に形成された複数の駆動カム溝(400)を有する駆動カム(40)であり、
前記並進部は、一方の面に形成された複数の従動カム溝(500)を有する従動カム(50)であり、
前記回転並進部は、前記駆動カム、前記従動カム、および、前記駆動カム溝と前記従動カム溝との間で転動可能に設けられた転動体(3)を有する転動体カム(2)である請求項1~4のいずれか一項に記載のクラッチアクチュエータ。 - 前記状態変更部は、軸方向に弾性変形可能な弾性変形部(81、91)を有している請求項1~5のいずれか一項に記載のクラッチアクチュエータ。
- 前記ステータに対する前記ロータの回転角を検出可能な回転角検出部(100、104)をさらに備える請求項1~6のいずれか一項に記載のクラッチアクチュエータ。
- 前記ハウジングに対する前記状態変更部の軸方向の相対位置である軸方向位置を検出可能な軸方向位置検出部(100、105)をさらに備える請求項1~7のいずれか一項に記載のクラッチアクチュエータ。
- 前記電動モータへ供給する電力を制御し、前記ステータに対する前記ロータの相対回転を制御し、前記電動モータの作動を制御可能な制御部(100)をさらに備え、
前記制御部は、前記電動モータの作動を制御することで、前記状態変更部と前記クラッチとの隙間であるクラッチ間隙間(Sp1)の大きさを制御可能である請求項1~8のいずれか一項に記載のクラッチアクチュエータ。 - 前記状態変更部は、前記クラッチに当接または前記クラッチから離間するよう前記並進部とともに前記ハウジングに対し軸方向に相対移動し、
前記制御部は、
前記状態変更部と前記クラッチとが当接するときの前記ハウジングに対する前記状態変更部の位置であるタッチングポイントを学習する学習部(5)を有し、
前記学習部により学習した前記タッチングポイントに基づき、前記クラッチ間隙間が、前記状態変更部と前記クラッチとの引き摺りが発生しない程度の大きさになるよう前記電動モータの作動を制御可能である請求項9に記載のクラッチアクチュエータ。 - 前記制御部は、
環境温度が所定温度より低いとき、前記クラッチ間隙間が所定の大きさになるよう前記電動モータの作動を制御し、
環境温度が前記所定温度以上のとき、前記クラッチ間隙間が前記所定の大きさより小さくなるよう前記電動モータの作動を制御可能である請求項9または10に記載のクラッチアクチュエータ。 - 前記制御部は、
前記クラッチが非係合状態から係合状態になるのを予測可能な係合予測部(6)を有し、
前記係合予測部により前記クラッチが係合状態になるのを予測したとき、前記クラッチ間隙間が、前記クラッチが非係合状態のときの大きさよりも小さくなるよう前記電動モータの作動を制御可能である請求項9~11のいずれか一項に記載のクラッチアクチュエータ。 - 前記制御部は、
前記第1伝達部と前記第2伝達部との相対回転差が所定値以下のとき、前記クラッチ間隙間が所定の大きさになるよう前記電動モータの作動を制御し、
前記相対回転差が前記所定値より大きいとき、前記クラッチ間隙間が前記所定の大きさより大きくなるよう前記電動モータの作動を制御可能である請求項9~12のいずれか一項に記載のクラッチアクチュエータ。 - 前記締結部材の前記ステータコアに対する周方向の位置、前記締結部材の前記ステータコアに対する径方向の位置、または、前記締結部材の軸方向の長さを変更することにより、前記電動モータに生じるコギングトルクの大きさを変更可能である請求項1~13のいずれか一項に記載のクラッチアクチュエータ。
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JP2021214715A JP2023098142A (ja) | 2021-12-28 | 2021-12-28 | クラッチアクチュエータ |
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