JP2023094439A - アルミニウム合金鍛造品 - Google Patents

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Abstract

【課題】常温における機械的特性と耐食性とに優れたアルミニウム合金鍛造品を提供する。【解決手段】Cuの含有率が0.3質量%以上1.0質量%以下の範囲内、Mgの含有率が0.63質量%以上1.30質量%以下の範囲内、Siの含有率が0.45質量%以上1.45質量%以下の範囲内にあり、残部がAlおよび不可避不純物からなるアルミニウム合金鍛造品であって、[Mgの含有率]×1.587≧-4.1×[Cuの含有率]2+7.8×[Cuの含有率]-1.9と[Siの含有率]×2.730≧-4.1×[Cuの含有率]2+7.8×[Cuの含有率]-1.9とを満足し、視野面積が8000μm2の断面組織における長径が0.1μm以上の析出物から結晶粒界までの最短距離の平均値が0.1μm以上2.0μm以下の範囲内にあるアルミニウム合金鍛造品。【選択図】図1

Description

本発明は、アルミニウム合金鍛造品に関する。
近年、アルミニウム合金は、軽量性を生かして各種製品の構造部材としての用途が拡大しつつある。例えば、自動車の足廻りやバンパー部品は今まで高張力鋼が用いられてきたが、近年は高強度アルミニウム合金材が用いられるようになっている。自動車部品、例えば、サスペンション部品は専ら鉄系材料が使用されていたが、軽量化を主目的としてアルミニウム材料またはアルミニウム合金材料に置き換えられることが多くなってきた。
これらの自動車部品では優れた耐食性、高強度および優れた加工性が要求されることから、アルミニウム合金材料としてAl-Mg-Si系合金、特にA6061が多用されている。そして、このような自動車部品は強度の向上を図るため、アルミニウム合金材料を加工用素材として塑性加工の1つである鍛造加工を行って製造される。
また、最近ではコストダウンを図る必要があるため、押出をせずに鋳造部材をそのまま素材として鍛造した後、溶体化処理と人工時効処理を行う処理(T6処理)して得たサスペンション部品が実用化され始めており、さらなる軽量化を目的として、従来のA6061に代わる高強度合金の開発が進められている(特許文献1~3参照)。
特開平5-59477号公報 特開平5-247574号公報 特開平6-256880号公報
近年のCO排出量削減の観点より、自動車の軽量化が求められている中、アルミニウムの需要は増加傾向にある。ただし、鉄鋼材からの代替としては更なる高強度化が必要となる。高強度化の1つの手法としてCuの添加が知られている。しかし、Cuを添加すると耐食性が低下するために多量添加することができなかった。
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、常温における機械的特性と耐食性とに優れたアルミニウム合金鍛造品を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
(1)Cuの含有率が0.3質量%以上1.0質量%以下の範囲内、Mgの含有率が0.63質量%以上1.30質量%以下の範囲内、Siの含有率が0.45質量%以上1.45質量%以下の範囲内にあり、残部がAlおよび不可避不純物からなるアルミニウム合金鍛造品であって、下記の式(1)および(2)を満足し、
[Mgの含有率]×1.587≧-4.1×[Cuの含有率]+7.8×[Cuの含有率]-1.9・・・(1)
[Siの含有率]×2.730≧-4.1×[Cuの含有率]+7.8×[Cuの含有率]-1.9・・・(2)
視野面積が8000μmの断面組織における長径が0.1μm以上の析出物から結晶粒界までの最短距離の平均値が0.1μm以上2.0μm以下の範囲内にあることを特徴とするアルミニウム合金鍛造品。
(2)前記Mgの含有率が0.63質量%以上1.25質量%以下の範囲内にあって、前記Siの含有率が0.60質量%以上1.45質量%以下の範囲内にあり、前記Mgの含有率に対する前記Siの含有率の比Si/Mgがモル比で0.5以上である上記(1)に記載のアルミニウム合金鍛造品。
(3)前記Mgの含有率が0.85質量%以上1.30質量%以下の範囲内にあって、前記Siの含有率が0.45質量%以上0.69質量%以下の範囲内にあり、
前記Mgの含有率に対する前記Siの含有率の比Si/Mgがモル比で0.5未満である上記(1)に記載のアルミニウム合金鍛造品。
(4)更にMnの含有率が0.03質量%以上1.0質量%以下、Feの含有率が0.2質量%以上0.7質量%以下、Crの含有率が0.03質量%以上0.4質量%以下、Tiの含有率が0.012質量%以上0.035質量%以下、Bの含有率が0.001質量%以上0.03質量%以下の範囲内にあり、Zn含有率が0.25質量%以下、Zr含有率が0.05質量%以下である上記(1)から(3)に記載のアルミニウム合金鍛造品。
本発明によれば、常温における機械的特性と耐食性とに優れたアルミニウム合金鍛造品を提供することが可能となる。
本発明の実施形態に係るアルミニウム合金鋳造品の視野面積が8000μmの断面組織の一例を示す概念図である。 本発明の実施形態に係るアルミニウム合金鋳造品を製造するための水平連続鋳造装置の鋳型付近の一例を示す断面図である。 図2の冷却水キャビティ付近を示す要部拡大断面図である。 水平連続鋳造装置の冷却壁部の熱流束を説明する説明図である。 実験例および実施例で作製したアルミニウム合金鍛造品の斜視図である。 実験例で作製したアルミニウム合金鍛造品のCu含有率と、MgSi換算含有率と、耐食性との関係を示すグラフである。
以下、本発明の一実施形態に係るアルミニウム合金鍛造品およびその製造方法について説明する。なお、以下に示す実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
本発明の一実施形態に係るアルミニウム合金鍛造品は、Cuの含有率が0.3質量%以上1.0質量%以下の範囲内、Mgの含有率が0.63質量%以上1.30質量%以下の範囲内、Siの含有率が0.45質量%以上1.45質量%以下の範囲内にあり、残部がAlおよび不可避不純物から構成されている。
また、アルミニウム合金鍛造品のMgの含有率とCuの含有率は下記の式(1)を満足し、Siの含有率とCuの含有率は下記の式(2)を満足するようにされている。
[Mgの含有率]×1.587≧-4.1×[Cuの含有率]+7.8×[Cuの含有率]-1.9・・・(1)
[Siの含有率]×2.730≧-4.1×[Cuの含有率]2+7.8×[Cuの含有率]-1.9・・・(2)
更に、アルミニウム合金鍛造品は、上述した成分に加えて、Mnの含有率が0.03質量%以上1.0質量%以下、Feの含有率が0.2質量%以上0.7質量%以下、Crの含有率が0.03質量%以上0.4質量%以下、Tiの含有率が0.012質量%以上0.035質量%以下、Bの含有率が0.001質量%以上0.03質量%以下の範囲内にあってもよい。また、Znの含有率は0.25質量%以下、Zrの含有率は0.05質量%以下であってもよい。本実施形態のアルミニウム合金鍛造品は、MgとSiを含む点で6000系アルミニウム合金の鍛造品に相当する。
(Cu:0.3質量%以上1.0質量%以下)
Cuは、アルミニウム合金中でMg-Si系化合物を微細に分散させる作用や、Q相を始めとするAl-Cu-Mg-Si系化合物として析出することでアルミニウム合金の引張強さを向上させる作用を有する。Cuの含有率が上記の範囲内にあることによって、アルミニウム合金鍛造品の常温における機械的特性を向上させることができる。
(Mg:0.63質量%以上1.30質量%以下)
Mgは、アルミニウム合金の引張強さを向上させる作用を有する。アルミニウム母相へMgが固溶する、あるいは、β”相などのMg-Si系化合物(MgSi)、またはQ相を始めとするAl-Cu-Mg-Si系化合物(AlCuMgSi)として析出することで、アルミニウム合金の強化に寄与する。また、MgSiは、アルミニウム合金中でのCuAl相の生成を抑制する作用がある。CuAl相の生成が抑制されることによって、アルミニウム合金鍛造品の耐食性が向上する。Mgの含有率が上記の範囲内にあることによって、アルミニウム合金鍛造品の常温における機械的特性とともに耐食性を向上させることができる。
(Si:0.45質量%以上1.45質量%以下)
Siは、Mgと同様にアルミニウム合金鍛造品の常温における機械的特性とともに耐食性を向上させる作用を有する。ただし、アルミニウム合金にSiを過剰に添加すると、粗大な初晶Si粒が晶出することにより、アルミニウム合金の引張強さが低下するおそれがある。Siの含有率が上記の範囲内にあることによって、初晶Siの晶出を抑えつつ、アルミニウム合金鍛造品の常温における機械的特性とともに耐食性を向上させることができる。
(Mn:0.03質量%以上1.0質量%以下)
Mnは、アルミニウム合金中でAl-Mn-Fe-SiやAl-Mn-Cr-Fe-Siなどの金属間化合物を晶出物あるいは析出物として生成することで、アルミニウム合金の引張強さを向上させる作用を有する。Mnの含有率が上記の範囲内にあることによって、アルミニウム合金鍛造品の常温における機械的特性を向上させることができる。
(Fe:0.2質量%以上0.7質量%以下)
Feは、アルミニウム合金中でAl-Fe-Si、Al-Fe-Cr、Al-Mn-Fe-Si、Al-Mn-Cr-Fe-Si、Al-Cu-Fe、Al-Mn-Feなどの金属間化合物を晶出物あるいは析出物として生成することで、アルミニウム合金の引張強さを向上させる作用がある。Feの含有率が上記の範囲内にあることによって、アルミニウム合金鍛造品の常温における機械的特性を向上させることができる。
(Cr:0.03質量%以上0.4質量%以下)
Crは、アルミニウム合金中でAl-Cr-Si、Al-Mn-Cr-Fe-Si、Al-Fe-Crなどの金属間化合物を晶出物あるいは析出物として生成することで、アルミニウム合金の引張強さを向上させる作用を有する。Crの含有率が上記の範囲内にあることによって、アルミニウム合金鍛造品の常温における機械的特性を向上させることができる。
(Ti:0.012質量%以上0.035質量%以下)
Tiは、アルミニウム合金の結晶粒を微細化し、展伸加工性を向上させる作用を有する。Ti含有率が0.012質量%未満の場合、結晶粒の微細化効果が十分に得られないおそれがある。一方、Ti含有率が0.035質量%を超えると、粗大な晶出物あるいは析出物を生成し、展伸加工性が低下するおそれがある。また、アルミニウム合金鍛造品にTiを含む粗大な晶出物あるいは析出物が多量に混入すると靭性が低下する場合がある。したがって、Tiの含有率は0.012質量%以上0.035質量%以下とする。Tiの含有率は、好ましくは0.015質量%以上0.030質量%以下である。
(B:0.001質量%以上0.03質量%以下)
Bは、アルミニウム合金の結晶粒を微細化し、展伸加工性を向上させる作用を有する。前述のTiとともにBをアルミニウム合金に添加することによって、結晶粒の微細化効果が向上する。Bの含有率が0.001質量%未満では、結晶粒の微細化効果が十分に得られないおそれがある。一方、Bの含有率が0.03質量%を超えると、粗大な晶出物あるいは析出物を生成し、介在物としてアルミニウム合金鍛造品に混入するおそれがある。また、アルミニウム合金の最終製品にBを含む粗大な晶出物あるいは析出物が多量に混入すると靭性が低下する場合がある。したがって、Bの含有率は0.001質量%以上0.03質量%以下の範囲内とする。Bの含有率は、好ましくは0.005質量%以上0.025質量%以下の範囲内である。
(Zn:0.25質量%以下)
Znは、0.25質量%以下であれば固溶強化としてアルミニウム合金鍛造品の強度の向上に寄与する。ただし、Znの含有率が0.25質量%を超えるとアルミニウム母相にMgZnとして析出することによって、アルミニウム合金鍛造品の耐食性の低下につながるおそれがある。このため、Znの含有率は、0.25質量%以下とすることが好ましい。また、Znの含有率は、0.005質量%以上であることが好ましい。
(Zr含有率:0.05質量%以下)
Zrは、0.05質量%以下ではAlZrおよびAl-(Ti,Zr)という形で析出することで、再結晶抑制効果や析出強化によりアルミニウム合金鍛造品の強度の向上に寄与する。ただし、Zrの含有率が0.05質量%を超えると粗大なZr化合物として晶出することによって、アルミニウム合金鍛造品の耐食性の低下につながるおそれがある。このため、Zrの含有率は、0.05質量%以下とすることが好ましい。また、Zrの含有率は、0.005質量%以上であることが好ましい。
(不可避不純物)
不可避不純物は、アルミニウム合金鍛造品の原料または製造工程から不可避的にアルミニウム合金に混入する不純物である。不可避不純物の例としては、Ni、Sn、Beなどを挙げることができる。これらの不可避不純物の含有率は0.1質量%を超えないことが好ましい。
(Mg含有率とCu含有率、Si含有率とCu含有率)
Mg含有率とCu含有率は、上記の式(1)を満足するようにされている。式(1)の左辺である「[Mgの含有率]×1.587」は、アルミニウム合金鍛造品のMg含有率をMgSi含有率に換算した値に相当する。すなわち、上記の式(1)は、アルミニウム合金鍛造品のMg含有率から換算したMgSi換算含有率とCu含有率との関係を示している。
Si含有率とCu含有率は、上記の式(2)を満足するようにされている。式(2)の左辺である「[Siの含有率]×2.730」は、アルミニウム合金鍛造品のSi含有率をMgSi含有率に換算した値に相当する。すなわち、上記の式(2)は、アルミニウム合金鍛造品のSi含有率から換算したMgSi換算含有率とCu含有率との関係を示している。
上記の式(1)および(2)は、実験的に求めた式である。すなわち、後述の実験例で作成したアルミニウム合金鍛造品のCu含有率と、MgSi換算含有率と、耐食性との関係を示すグラフ(図6)により求めた式である。上記の式(1)と式(2)とを満足することによって、アルミニウム合金中でのCuAl相の生成を抑制することができる。式(1)および式(2)で換算されたMgSi換算含有率のうちの低い方の値は、1.0質量%以上2.0質量%以下の範囲内にあることが好ましい。
(Mg含有率に対するSi含有率の比(Si/Mgモル比))
Mg含有率に対するSi含有率の比Si/Mgは、モル比(Si/Mgモル比)で0.5以上とされていてもよいし、0.5モル未満であってもよい。
Si/Mgモル比が0.5以上である場合、Mg含有率は0.63質量%以上1.25質量%以下の範囲内にあって、Si含有率は0.60質量%以上1.45質量%以下の範囲内にあることが好ましい。Si/Mgモル比が0.5以上であると、MgSiやAlCuMgSiを形成しないSiの含有量が多くなり、アルミニウム合金鍛造品中にSiリッチの析出物が生成する。このSiリッチの析出物はアルミニウム合金鍛造品の強度の向上に寄与する。Si/Mgモル比が0.5以上である場合は、Si/Mgモル比は0.60以上1.20以下の範囲内にあることが好ましい。
Si/Mgモル比が0.5未満である場合、Mg含有率は0.85質量%以上1.30質量%以下の範囲内にあって、Si含有率は0.45質量%以上0.69質量%以下の範囲内にあることが好ましい。Si/Mgモル比が0.5未満であると、MgSi(β”相)やAlCuMgSi(Q相)の生成量が多くなり、アルミニウム合金鍛造品は固溶/析出強化に優れたものとなる。Si/Mgモル比が0.5未満である場合は、Si/Mgモル比は0.48以上0.40以下の範囲内にあることが好ましい。
図1は、本発明の実施形態に係るアルミニウム合金鋳造品の視野面積が8000μmの断面組織の一例を示す概念図である。
図1に示すように、アルミニウム合金鍛造品1は複数の結晶1a、1b、1c、1dを有する多結晶体である。アルミニウム合金鍛造品1は、これらの結晶1a~1dの内部に、析出物3が存在していてもよい。析出物3は、鋳造以降の熱履歴で生成される生成物である。析出物3は、例えば、Mg-Si系化合物(MgSi)、Al-Cu-Mg-Si系化合物(AlCuMgSi)、Al-Mn-Fe-Si、Al-Mn-Cr-Fe-Si、Al-Cu-Fe、Al-Mn-Fe、Al-Cr-Si、AlZr、Al-(Ti,Zr)、CuAlである。ただし、本実施形態においては、視野面積が8000μm(例えば、横100μm×縦80μm)の断面組織における長径が0.1μm以上の析出物3から結晶粒界2までの最短距離の平均値が0.1μm以上2.0μm以下の範囲内とされている。析出物3の長径は、1μm未満であってもよい。析出物3から結晶粒界2までの最短距離は、結晶粒界2から最も近い析出物(図1において、析出物3a)から結晶粒界2までの距離(図1において、距離D)である。析出物3から結晶粒界2までの最短距離は、FE-SEM(電界放出形走査電子顕微鏡)による観察と、EDS(エネルギー分散型X線分析装置)による元素分析とによって測定することができる。最短距離の平均値は、8箇所の断面組織(視野面積:8000μmmm)で測定された析出物3から結晶粒界2までの最短距離の平均値である。本実施形態のアルミニウム合金鍛造品1は、結晶粒界2近傍での析出物3が少ないことよって、耐食性が向上すると考えられる。析出物3から結晶粒界2までの最短距離の平均値が0.1μm未満であると、析出物3によって結晶粒界2近傍の硬度が高くなり過ぎて、衝撃を受けたときの伸びが小さくなり、脆性破壊が起こる衝撃値が低下するおそれがある。また、析出物3から結晶粒界2までの最短距離の平均値が0.1μm未満であると、析出物3によって結晶粒界2近傍が硬くなり過ぎて、衝撃を受けたときの伸びが小さくなり、脆性破壊が起こる衝撃値が低下するおそれがある。一方、析出物3から結晶粒界2までの最短距離の平均値が2.0μmを超えると、結晶粒界2近傍の硬度が低くなり過ぎて、応力腐食割れが起こりやすくなるおそれがある。析出物3から結晶粒界2までの最短距離の平均値は、0.5μm以上であることが好ましく、1.0μm以上であることがより好ましい。
次に、本実施形態のアルミニウム合金鍛造品の製造方法について説明する。
本実施形態のアルミニウム合金鍛造品は、例えば、溶湯形成工程、鋳造工程、均質化熱処理工程、鍛造工程、溶体化処理工程、焼き入れ処理工程、時効処理工程を含む方法によって製造することができる。
(溶湯形成工程)
湯形成工程は、原料を溶解して組成を調製したアルミニウム合金溶湯を得る工程である。アルミニウム合金溶湯の組成は、アルミニウム合金鍛造品の組成と同じである。アルミニウム合金溶湯は、アルミニウム合金を加熱して溶融させることによって得ることができる。また、アルミニウム合金の原料となる元素の単体もしくは元素を2種以上含む化合物を、目的のアルミニウム合金を生成する割合で含む混合物を溶融させることによって成形してもよい。例えば、鋳造工程で生成させるアルミニウム合金の結晶粒径を制御する目的で、TiやBをAl-Ti-Bロッドなどの結晶粒微細化材として混合してもよい。
(鋳造工程)
鋳造工程では、アルミニウム合金の溶湯(液相)を冷却して固体(固相)に凝固させて、アルミニウム合金鋳造品を得る。鋳造工程は、例えば、水平連続鋳造法を用いることができる。図2は、本実施形態のアルミニウム合金鋳造品の製造に用いることができる水平連続鋳造装置の一例を示す断面図であり、図2に示す水平連続鋳造装置の冷却水キャビティ付近を示す要部拡大断面図である。
図2および図3に示す水平連続鋳造装置10は、溶湯受部(タンディッシュ)11と、中空円筒状の鋳型12と、この鋳型12の一端側12aと溶湯受部11との間に配される耐火物製板状体(断熱部材)13と、を有している。
溶湯受部11は、上記の溶湯形成工程で得られたアルミニウム合金溶湯Mを受ける溶湯流入部11a、溶湯保持部11b、鋳型12の中空部21への流出部11cから構成されている。溶湯受部11は、アルミニウム合金溶湯Mの上液面のレベルを鋳型12の中空部21の上面よりも高い位置に維持し、かつ、多連鋳造の場合には、それぞれの鋳型12にアルミニウム合金溶湯Mを安定的に分配するものである。
溶湯受部11内の溶湯保持部11bに保持されたアルミニウム合金溶湯Mは、耐火物製板状体13に設けられた注湯用通路13aから鋳型12の中空部21内に注湯される。そして、中空部21内に供給されたアルミニウム合金溶湯Mは、後述する冷却装置23によって冷却されて固化し、凝固鋳塊であるアルミニウム合金棒Bとして、鋳型12の他端側12bから引き出される。
鋳型12の他端側12bには、鋳造されたアルミニウム合金棒Bを一定速度で引き出す引出駆動装置(図示略)が設置されていればよい。また、連続して引き出されたアルミニウム合金棒Bを任意の長さに切断する同調切断機(図示略)が設置されていることも好ましい。
耐火物製板状体13は、溶湯受部11と鋳型12との間の熱移動を遮断する部材であり、例えば、ケイ酸カルシウム、アルミナ、シリカ、アルミナとシリカの混合物、窒化珪素、炭化珪素、グラファイト等の材料で構成されていてもよい。こうした耐火物製板状体13は、互いに構成材料の異なる複数の層から構成することもできる。
鋳型12は、本実施形態では中空円筒状の部材であり、例えば、アルミニウム、銅、もしくはそれらの合金から選ばれる1種または2種以上の組み合わせた材料から形成されている。こうした鋳型12の材料は、熱伝導性、耐熱性、機械強度の点から最適な組み合わせを選択すればよい。
鋳型12の中空部21は、鋳造するアルミニウム合金棒Bを円筒棒状にするために断面円形に形成されており、この中空部21の中心を通る鋳型中心軸(中心軸)Cがほぼ水平方向に沿うように鋳型12が保持されている。
鋳型12の中空部21の内周面21aは、アルミニウム合金棒Bの鋳造方向に向けて鋳型中心軸Cに対して0度~3度(より好ましくは0度~1度。)の仰角で形成されている。すなわち、内周面21aは鋳造方向に向かってコーン状に開いたテーパー状に構成されている。そしてそのテーパーのなす角度が仰角である。
仰角が0度未満では、アルミニウム合金棒Bが鋳型12から引き出される際に鋳型出口である他端側12bで抵抗を受けるために鋳造が困難になるおそれがある。一方、仰角が3度を越えると、内周面21aのアルミニウム合金溶湯Mへの接触が不十分になり、アルミニウム合金溶湯Mやこれが冷却固化した凝固殻から鋳型12への抜熱効果が低下することによって凝固が不十分になるおそれがある。その結果、アルミニウム合金棒Bの表面に再溶融肌が生じ、または、アルミニウム合金棒Bの端部から未凝固のアルミニウム合金溶湯Mが噴出するなどの鋳造トラブルにつながるおそれがあるので好ましくない。
なお、鋳型12の中空部21の断面形状(鋳型12の中空部21を他端側から見たときの平面形状)は、本実施形態の円形以外にも、例えば、三角形や矩形断面形状、多角形、半円、楕円もしくは対称軸や対称面を持たない異形断面形状を有した形状など、鋳造するアルミニウム合金棒の形状に合わせて選択されればよい。
鋳型12の一端側12aには、鋳型12の中空部21内に潤滑流体を供給する流体供給管22が配置されている。流体供給管22から供給される潤滑流体としては、気体潤滑材、液体潤滑材から選ばれるいずれか1種または2種以上の潤滑流体とすることができる。気体潤滑材と液体潤滑材を両方供給する場合には、それぞれ流体供給管を別々に設けることが好ましい。流体供給管22から加圧供給された潤滑流体は、環状の潤滑材供給口22aを通って鋳型12の中空部21内に供給される。
本実施形態では、圧送された潤滑流体が潤滑材供給口22aから鋳型12の内周面21aに供給される。なお、液体潤滑材は加熱されて分解気体となって、鋳型12の内周面21aに供給される構成であってもよい。また、潤滑材供給口22aに多孔質材料を配して、この多孔質材料を介して潤滑流体を鋳型12の内周面21aに滲出させる構成であってもよい。
鋳型12の内部には、合金溶湯Mを冷却、固化させる冷却手段である冷却装置23が形成されている。本実施形態の冷却装置23は、鋳型12の中空部21の内周面21aを冷却するための冷却水Wを収容する冷却水キャビティ24と、この冷却水キャビティ24と鋳型12の中空部21とを連通させる冷却水噴射通路25とを有している。
冷却水キャビティ24は、鋳型12の内部で中空部21の内周面21aよりも外側に、中空部21を取り巻くように環状に形成され、冷却水供給管26を介して冷却水Wが供給される。
鋳型12は、冷却水キャビティ24に収容される冷却水Wによって内周面21aが冷却されることにより、鋳型12の中空部21内に充満した合金溶湯Mの熱を鋳型12の内周面21aに接触する面から奪って、合金溶湯Mの表面に凝固殻を形成させる。
また、冷却水噴射通路25は、中空部21に臨むシャワー開口25aから、鋳型12の他端側12bにおいてアルミニウム合金棒Bに向けて直接、冷却水を当ててアルミニウム合金棒Bを冷却する。こうした冷却水噴射通路25の縦断面形状は、本実施形態の円状以外にも、例えば、半円、洋ナシ形状、馬蹄形状であってもよい。
なお、本実施形態では、冷却水供給管26を介して供給される冷却水Wをまず冷却水キャビティ24に収容して鋳型12の中空部21の内周面21aの冷却を行い、さらに冷却水キャビティ24の冷却水Wを冷却水噴射通路25からアルミニウム合金棒Bに向けて噴射しているが、これらをそれぞれ別系統の冷却水供給管によって供給する構成にすることもできる。
冷却水噴射通路25のシャワー開口25aの中心軸の延長線が、鋳造されたアルミニウム合金棒Bの表面に当る位置から、鋳型12と耐火物製板状体13との接触面までの長さを有効モールド長Lと称し、この有効モールド長Lは、例えば、10mm以上40mm以下であるのが好ましい。この有効モールド長Lが、10mm未満では、良好な皮膜が形成されない等から鋳造不可となり、40mmを超えると、強制冷却の効果が低くなり、鋳型壁による凝固が支配的になって、鋳型12と合金溶湯Mもしくはアルミニウム合金棒Bとの接触抵抗が大きくなって、鋳肌に割れが生じたり、鋳型内部で千切れたりする等、鋳造が不安定になるおそれがあるので好ましくない。
これら冷却水キャビティ24への冷却水の供給や、冷却水噴射通路25のシャワー開口25aからの冷却水の噴射は、制御装置(図示略)からの制御信号によってそれぞれ動作を制御できることが好ましい。
冷却水キャビティ24は、鋳型12の中空部21寄りの内底面24aが、鋳型12の中空部21の内周面21aに対して、互いに平行面になるように形成されている。なお、ここでいう平行とは、冷却水キャビティ24の内底面24aに対して、鋳型12の中空部21の内周面21aが0度~3度の仰角で形成されている場合、すなわち、内底面24aが内周面21aに対して0度を超えて3度まで傾斜している場合も含む。
図3に示すように、こうした冷却水キャビティ24の内底面24aと鋳型12の中空部21の内周面21aとが対向する部分である鋳型12の冷却壁部27は、中空部21の合金溶湯Mから冷却水キャビティ24の冷却水Wに向かう単位面積当たりの熱流束値が10×10W/m以上、50×10W/m以下の範囲内になるように形成されている。
こうした鋳型12の冷却壁部27の厚みt、即ち冷却水キャビティ24の内底面24aと鋳型12の中空部21の内周面21aとの間隔が、例えば、0.5mm以上3.0mm以下、好ましくは0.5mm以上2.5mm以下の範囲内になるように鋳型12が形成されていればよい。また、鋳型12の少なくとも冷却壁部27の熱伝導率が100W/m・K以上400W/m・K以下の範囲内になるように、鋳型12の形成材料が選択されればよい。
図3において、溶湯受部11中の合金溶湯Mは、耐火物製板状体13を経て鋳型中心軸Cがほぼ水平になるように保持された鋳型12の一端側12aから供給され、鋳型12の他端側12bで強制冷却されてアルミニウム合金棒Bとなる。アルミニウム合金棒Bは鋳型12の他端側12b近くに設置された引出駆動装置(図示略)によって一定速度で引き出されるため、連続的に鋳造されて長尺のアルミニウム合金棒Bが形成される。引き出されたアルミニウム合金棒Bは、例えば、同調切断機(図示略)によって所望の長さに切断される。
なお、鋳造されたアルミニウム合金棒Bの組成比は、例えば、JIS H 1305に記載されているような光電測光式発光分光分析装置(装置例:日本島津製作所製PDA-5500)による方法で確認できる。
溶湯受部11内に貯留された合金溶湯Mの液面レベルの高さと、鋳型12の上側の内周面21aとの高さの差は、0mm~250mm(より好ましくは50mm~170mm。)とするのが好ましい。こうした範囲にすることで、鋳型12内に供給される合金溶湯Mの圧力と潤滑油および潤滑油が気化したガスとが好適にバランスするために鋳造性が安定する。
液体潤滑材は、潤滑油である植物油を用いることができる。例えば、菜種油、ひまし油、サラダ油を挙げることができる。これらは環境への悪影響が小さいので好ましい。
潤滑油供給量は0.05mL/分~5mL/分(より好ましくは0.1mL/分以上1mL/分以下。)であるのが好ましい。供給量が過少だと、潤滑不足によってアルミニウム合金棒Bの合金溶湯が固まらずに鋳型から漏れるおそれがある。供給量が過多だと、余剰分がアルミニウム合金棒B中に混入して内部欠陥となるおそれがある。
鋳型12からアルミニウム合金棒Bを引抜く速度である鋳造速度は200mm/分以上1500mm/分以下(より好ましくは400mm/分以上1000mm/分以下。)であるのが好ましい。それは、この範囲内の鋳造速度であれば、鋳造で形成される晶出物のネットワーク組織が均一微細となり、高温下でのアルミニウム生地の変形に対する抵抗が増し、高温機械的強度が向上するためである。
冷却水噴射通路25のシャワー開口25aから噴射される冷却水量は鋳型当り10L/分以上50L/分以下(より好ましくは25L/分以上40L/分以下。)であるのが好ましい。冷却水量がこれよりも少ないと、合金溶湯が固まらずに鋳型から漏れるおそれがある。また、鋳造したアルミニウム合金棒Bの表面が再溶融して不均一な組織が形成され、内部欠陥として残存するおそれがある。一方、冷却水量がこの範囲よりも多い場合、鋳型12の抜熱が大き過ぎて途中で凝固してしまうおそれがある。
溶湯受部11内から鋳型12へ流入する合金溶湯Mの平均温度は、例えば、650℃以上750℃以下(より好ましくは680℃以上720℃以下。)であるのが好ましい。合金溶湯Mの温度が低すぎると、鋳型12およびその手前で粗大な晶出物を形成してアルミニウム合金棒Bの内部に内部欠陥として取り込まれるおそれがある。一方、合金溶湯Mの温度が高すぎると、合金溶湯M中に大量の水素ガスが取り込まれやすく、アルミニウム合金棒B中にポロシティーとして取り込まれ、内部の空洞となるおそれがある。
そして、鋳型12の冷却壁部27において、中空部21の合金溶湯Mから冷却水キャビティ24の冷却水Wに向かう単位面積当たりの熱流束値は、10×10W/m以上50×10W/m以下の範囲内にすることによって、アルミニウム合金棒Bの焼き付きが発生することを防止できる。
鋳型12の冷却壁部27は、合金溶湯Mからの抜熱によって熱を受け、この熱を冷却水キャビティ24に収容される冷却水Wで冷却することで熱交換を行っているが、この熱交換の状態について、図4に示す説明図のように、単位面積あたりの熱流束に着目した。単位面積あたりの熱流束は、フーリエの法則にて以下の式で表される。
Q=-k×(T1-T2)/L
Q:熱流束
k:熱を通過する箇所(本実施形態では鋳型12の冷却壁部27)の熱伝導率(W/m・K)
T1:熱が通過する箇所の低温側温度(本実施形態では冷却水キャビティ24の内底面24a)
T2:熱が通過する箇所の高温側温度(本実施形態では鋳型12の中空部21の内周面21a)
L:熱が通過する箇所の区間長さ(mm)(本実施形態では鋳型12の冷却壁部27の厚みt)
鋳造時に潤滑油量を減らしても良好な結果が得られた鋳型材質、厚み、測温データに基づいて、単位面積当たりの熱流束値が10×10W/m以上になるように鋳型12の冷却壁部27を構成することで、鋳造したアルミニウム合金棒Bの焼き付きを防止することができる。また、単位面積当たりの熱流束値が50×10W/m以下にすることが好ましい。
鋳型12の冷却壁部27をこうした熱流束値の範囲にするために、鋳型12の冷却壁部27の厚みtを例えば、0.5mm以上、3.0mm以下の範囲になるように鋳型12を形成すればよい。また、鋳型12の少なくとも冷却壁部27の熱伝導率を100W/m・K以上、400W/m・K以下の範囲にすればよい。
本実施形態のアルミニウム合金棒を製造する際には、上述した水平連続鋳造装置10を用いて、溶湯受部11内に貯留された合金溶湯Mを、鋳型12の一端側12aから中空部21内に連続して供給する。また、冷却水キャビティ24に冷却水Wを供給するとともに、流体供給管22から潤滑流体、例えば潤滑油を供給する。
そして、中空部21内に供給された合金溶湯Mを、冷却壁部27における単位面積当たりの熱流束値が10×10W/m以上の条件で冷却、凝固させてアルミニウム合金棒Bを鋳造する。また、アルミニウム合金棒Bを鋳造時において、冷却水Wによって冷却される鋳型12の冷却壁部27の壁面温度を100℃以下にすることが好ましい。
こうして得られるアルミニウム合金棒Bは、冷却壁部27における単位面積当たりの熱流束値が10×10W/m以上の条件で冷却、凝固させることによって、潤滑油のガスと合金溶湯Mとの接触による反応生成物、例えば炭化物の固着が抑制される。これにより、アルミニウム合金棒Bの表面の炭化物等を切削除去する必要がなく、高収率でアルミニウム合金棒Bを製造することができる。
アルミニウム合金溶湯から鋳造品を得る鋳造工程は、上述の水平連続鋳造法に限定されるものではなく、垂直連続鋳造法など公知の連続鋳造法を用いることができる。垂直連続鋳造法は、アルミニウム合金溶湯のモールド(鋳型)への供給方式によってフロート法やホットトップ法に分類されるが、以下では、ホットトップ法を用いる場合について簡単に説明する。ホットトップ法に用いられる鋳造装置は、モールド、溶湯受容器(ヘッダー)等を具備している。溶湯受部へ供給された溶湯は出湯口を通り、ヘッダーを通ることで流速を調整され、ほぼ水平に設置された筒状鋳型内に入り、ここで強制冷却されて溶湯の外表面に凝固殻が形成される。さらに鋳型から引き出された鋳造品に冷却水が直接放射され、鋳造品内部まで金属の凝固が進行しつつ鋳造品が連続的に引き出される。一般的にモールドは熱伝導性の良い金属部材が用いられ、内部に冷媒を導入するための中空構造を有している。使用する冷媒は工業的に利用可能なものから適宜選べばよいが、利用しやすさの観点から水が推奨される。本実施形態で使用するモールドは、溶湯との接触部における伝熱性能および耐久性の観点から銅やアルミニウムなどの金属、もしくはグラファイトから適宜選択する。ヘッダーは、一般に耐火物製であり、モールドの上側に設置されている。ヘッダーの材料やサイズは鋳造する合金の成分範囲や鋳造品の寸法によって適宜選択すればよく、特に制約されるものではない。鋳造時の平均冷却速度は、例えば10~300℃/秒の範囲内にあり、好ましくは100~200℃/秒の範囲内にある。鋳造速度は水平連続鋳造において一般的な範囲から適宜選択すればよく、例えば200~600mm/分の範囲から適宜選定すればよい。以上に記載した鋳造方法によって、中型~大型の鋳造品であっても、均一な金属組織が得られるようになる。対象とする鋳造品の直径は特に制限されるものでなく、直径30~100mmの棒材に対して好適に用いられる。
(均質化熱処理工程)
均質化熱処理工程は、鋳造工程で得られたアルミニウム合金鋳造品に対して均質化熱処理を行うことによって、凝固によって生じたミクロ偏析の均質化、過飽和固溶元素の析出および準安定相の平衡相への変化を行う工程である。
本実施形態では、鋳造工程で得られたアルミニウム合金鋳造品を370℃以上560℃以下の温度で、4時間から10時間の間保持する均質化熱処理を行う。この温度範囲で均質化熱処理を施すことにより、アルミニウム合金鋳造品の均質化と溶質原子の溶入化が十分になされる。このため、この後の時効処理によって必要とされる十分な強度が得られるものとなる。アルミニウム合金鋳造品を均質化熱処理する際の昇温速度は、例えば、1.5℃/分以上であり、好ましくは4.5℃/分である。
(鍛造工程)
鍛造工程は、均質化熱処理工程後のアルミニウム合金鋳造品を所定のサイズに成形して鍛造用素材を得て、得られた鍛造用素材を所定の温度に加熱し、その後プレス機で圧力をかけて鍛造加工する工程である。
本実施形態では、鍛造用素材を、450℃以上560℃以下の温度に加熱し、その後鍛造加工を開始して鍛造品(例えば自動車のサスペンションアーム部品等)を得ることが好ましい。鍛造加工の開始温度が450℃未満になると変形抵抗が高くなって十分な加工ができなくなるおそれがあり、一方、鍛造加工の開始温度が560℃を超えると鍛造割れや共晶融解等の欠陥が発生し易くなるおそれがある。鍛造用素材を鍛造加工する際の昇温速度は、例えば、1.5℃/分以上であり、好ましくは4.5℃/分である。
(溶体化処理工程)
溶体化処理工程は、鍛造工程で得られた鍛造品を加熱して溶体化させることにより、鋳造品に導入された歪みを緩和し、溶質元素の固溶を行う工程である。
本実施形態では、鍛造品を530℃以上560℃以下の処理温度で0.3時間から3時間以内保持することにより溶体化処理を行うことが好ましい。室温から上記の処理温度で加熱するまでの昇温速度は、5.0℃/分以上であることが好ましい。処理温度が530℃未満であると溶質元素の固溶が不十分となり、溶体化が進まず時効析出による高強度化を実現しにくくなるおそれがある。一方、処理温度が560℃を超えると溶質元素の固溶がより促進されるものの、共晶融解や再結晶が生じ易くなるおそれがある。また、昇温速度が5.0℃/分未満である場合はMgSiが粗大析出するおそれがある。
(焼き入れ処理工程)
焼き入れ処理工程は、溶体化処理工程によって得られた固溶状態の鍛造品を急速に冷却せしめて、過飽和固溶体を形成する工程である。
本実施形態では、水(焼き入れ水)が貯留された水槽に鍛造品を投入して、鍛造品を水没させることによって焼き入れ処理を行う。水槽内の水温は、20℃以上60℃以下であることが好ましい。鍛造品の水槽への投入は、溶体化処理後5秒から60秒以内に鍛造品の全ての表面が水に接触するように行うことが好ましい。鍛造品の水没時間は、鋳造品のサイズによっても異なるが、例えば、5分を超え40分以内の間である。
(時効処理工程)
時効処理工程は、鍛造品を比較的低温で加熱保持し過飽和に固溶した元素を析出させて、適度な硬さを付与する工程である。
本実施形態では、焼き入れ処理工程後の鍛造品に180℃以上220℃以下の温度に加熱し、その温度で0.5時間から7.0時間の間保持することにより時効処理を行う。加熱温度が180℃未満あるいは保持時間が0.5時間未満では引張強度を向上させるMgSiが十分に成長できなくなるおそれがあり、処理温度が220℃を超えるとMgSiが粗大になり過ぎて引張強度を十分に向上させることができなくなるおそれがある。
本実施形態のアルミニウム合金鍛造品は、Cu、MgおよびSiの含有率が上記の範囲内にあるので、常温における機械的特性に優れたものとなる。また、視野面積が8000μmの断面組織における長径が0.1μm以上の析出物3から結晶粒界2までの最短距離の平均値が0.1μm以上2.0μm以下の範囲内にあるので、耐食性に優れたものとなる。また、本実施形態のアルミニウム合金鍛造品はMn、Fe、Crの含有率が上記の範囲内にあると、常温における機械的特性がより向上する。さらに、Ti、Bの含有率が上記の範囲内にあると展伸加工性が向上する。
次に、本発明の具体的実施例について説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<実験例>
MgとSiとをMgSi換算含有率として1.0質量%~1.9質量%の範囲で含み、Cuを0.3質量%~1.0質量%を含むアルミニウム合金を用意した。用意したアルミニウム合金を、図2に示す水平連続鋳造装置を用いて鋳造して、直径49mmの断面円形の連続鋳造品を作製した。なお、連続鋳造品作製時のアルミニウム合金溶湯の冷却速度は、120℃/秒とした。
得られた連続鋳造品に対して、均質化熱処理、鍛造加工、溶体化処理、焼き入れ処理、人工時効処理をこの順で行って、図5に示す形状のアルミニウム合金鍛造品100を得た。均質化熱処理、鍛造加工、溶体化処理、焼き入れ処理、人工時効処理の条件を下記の表1に示す。
Figure 2023094439000002
得られたアルミニウム合金鍛造品からCリングの試験片を採取し、応力腐食割れ試験(耐食性評価)を行った。応力腐食割れ試験の条件は、前記Cリング試験片を用いてASTM G47の連続浸漬法の規定に準じて行った。具体的には、Cリング試験片に、試験片の0.2%耐力の90%の応力を負荷し、その状態を維持したまま、95℃以上に保温した塩化ナトリウムとクロム酸ナトリウムの混合液中に80時間浸漬させた。その後、Cリング試験片を混合液から取り出して、Cリング試験片の応力腐食割れ発生の有無を目視で確認した。その結果、Cリング試験片に応力腐食割れや粒界腐食が発生していないものを耐食性OKとし、Cリング試験片に応力腐食割れ又は粒界腐食が発生しているものを耐食性NGとした。
耐食性評価の結果を、図6に示す。図6のグラフにおいて、横軸は、Cu含有率を表し、縦軸はMgSi換算含有率を表し、黒丸は、耐食性OKであることを表し、×は耐食性OKであることを表す。各Cu含有率において、最もMgSi換算含有率が低い位置にある黒丸を結んだ破線の関数を求めた。得られた関数は、[MgSi換算含有率]=-4.1×[Cuの含有率]+7.8×[Cuの含有率]-1.9であった。この結果から、[MgSi換算含有率]≧-4.1×[Cuの含有率]+7.8×[Cuの含有率]-1.9を満足するアルミニウム合金鍛造品は、耐食性に優れることがわかる。
<実施例1~5および比較例1~2>
下記の表2に示す合金組成のアルミニウム合金を用意した。用意したアルミニウム合金を用いて、上記の実験例と同様に鋳造して、直径49mmの断面円形の連続鋳造品を作製した。表2には、式(1)の左辺を用いて算出したMg含有率に基づくMgSi換算含有率と、式(2)の左辺を用いて算出したSi含有率に基づくMgSi換算含有率と、式(1)と式(2)の右辺である下記の式(3)を用いて算出した値とを記載した。
-4.1×[Cuの含有率]+7.8×[Cuの含有率]-1.9・・・(3)
Figure 2023094439000003
得られた連続鋳造品に対して、上記の実験例と同様に、均質化熱処理、鍛造加工、溶体化処理、焼き入れ処理、人工時効処理をこの順で行って、図5に示す形状のアルミニウム合金鍛造品100を得た。
<評価>
上記のようにして得られた各アルミニウム合金鍛造品について下記評価法に基づいて評価を行った。その結果を、下記の表3に示す。
[常温での耐力の評価法]
アルミニウム合金鍛造品から、標点間距離25.4mm、平行部直径6.4mmの引張試験片を採取し、得られた引張試験片の常温(25℃)引張試験を行うことによって、耐力を測定した。得られた耐力を、下記の判定基準に基づいて評価した。
(判定基準)
「〇」…常温での耐力が370MPa以上である。
「×」…常温での耐力が370MPa未満である。
[耐食性の評価法]
アルミニウム合金鍛造品からCリングの試験片を採取し、上記の実験例と同様に応力腐食割れ試験を行った。Cリング試験片の応力腐食割れ発生の有無を、下記の判定基準に基づいて評価した。
(判定基準)
「×」…Cリング試験片に応力腐食割れが発生している。
「△(やや不良)」…Cリング試験片に応力腐食割れではないが、応力腐食割れに至る可能性の高い粒界腐食が発生している。
「○(良好)」…Cリング試験片に応力腐食割れや粒界腐食が発生していない。
[金属組織(析出物から結晶粒界までの最短距離の平均値)]
各アルミニウム合金鍛造品から縦7mm×横7mm×厚さ3mmの大きさの組織観察用サンプル片を切り出し、このサンプル片を断面試料作製装置(Cross section polisher)を用いて研磨した。研磨後の組織観察用サンプル片について、FE-SEMを用いて、視野面積が8000μm(横100μm×縦80μm)となる領域の断面組織を撮影した。次いで、FE-SEM写真を撮影した領域について、EDSによる元素の線分析を実施してその領域内に存在する化合物を定性分析した。得られたFE-SEM写真とEDSによる元素分析の結果から、長径が0.1μm以上の析出物を抽出し、析出物と結晶粒界の距離を測定し、析出物から結晶粒界までの最短距離を得た。析出物から結晶粒界までの最短距離の測定は8箇所について行い、その平均を、析出物から結晶粒界までの最短距離の平均値とした。析出物から結晶粒界までの最短距離の平均値を、下記の判定基準に基づいて評価した。
(判定基準)
「〇」…析出物から結晶粒界までの最短距離の平均値が0.1μm以上2.0μm以下の範囲内にある。
「×」…析出物から結晶粒界までの最短距離の平均値が0.1μm未満又は2.0μmを超える。
[総合評価]
常温での耐力、耐食性および金属組織の3つの評価結果を、下記の判定基準に基づいて評価した。
(判定基準)
「〇」…3つの評価の全てが〇である。
「×」…3つの評価のうち1つ以上が×である。
Figure 2023094439000004
表3の結果から、Cu、Mg、Siを本発明の範囲内で含み、MgSi換算含有率に対するCuの含有率が本発明の範囲内にあるアルミニウム合金の鍛造品は、視野面積が8000μmの断面組織における長径が0.1μm以上の析出物から結晶粒界までの最短距離の平均値が0.1μm以上2.0μm以下の範囲内にあり、常温での耐力と耐食性とに優れることが確認された。これに対して、MgSi換算含有率に対するCuの含有率が本発明の範囲を超える比較例1、2のアルミニウム合金の鍛造品は、析出物から結晶粒界までの最短距離の平均値が2.0μmを超えており、耐食性が低下することがわかる。
1 アルミニウム合金鍛造品
1a、1b、1c、1d 結晶
2 結晶粒界
3 析出物
10…水平連続鋳造装置
11…溶湯受部(タンディッシュ)
11a…溶湯流入部
11b…溶湯保持部
11c…流出部
12…鋳型
12a…一端側
12b…他端側
13…耐火物製板状体(断熱部材)
13a…注湯用通路
21…中空部
21a…内周面
22…流体供給管
22a…潤滑材供給口
23…冷却装置
24…冷却水キャビティ
24a…内底面
25…冷却水噴射通路
25a…シャワー開口
26…冷却水供給管
27…冷却壁部
B…アルミニウム合金棒
M…合金溶湯
W…冷却水
100…アルミニウム合金鍛造品

Claims (4)

  1. Cuの含有率が0.3質量%以上1.0質量%以下の範囲内、Mgの含有率が0.63質量%以上1.30質量%以下の範囲内、Siの含有率が0.45質量%以上1.45質量%以下の範囲内にあり、残部がAlおよび不可避不純物からなるアルミニウム合金鍛造品であって、下記の式(1)および(2)を満足し、
    [Mgの含有率]×1.587≧-4.1×[Cuの含有率]+7.8×[Cuの含有率]-1.9・・・(1)
    [Siの含有率]×2.730≧-4.1×[Cuの含有率]+7.8×[Cuの含有率]-1.9・・・(2)
    視野面積が8000μmの断面組織における長径が0.1μm以上の析出物から結晶粒界までの最短距離の平均値が0.1μm以上2.0μm以下の範囲内にあることを特徴とするアルミニウム合金鍛造品。
  2. 前記Mgの含有率が0.63質量%以上1.25質量%以下の範囲内にあって、前記Siの含有率が0.60質量%以上1.45質量%以下の範囲内にあり、
    前記Mgの含有率に対する前記Siの含有率の比Si/Mgがモル比で0.5以上である請求項1に記載のアルミニウム合金鍛造品。
  3. 前記Mgの含有率が0.85質量%以上1.30質量%以下の範囲内にあって、前記Siの含有率が0.45質量%以上0.69質量%以下の範囲内にあり、
    前記Mgの含有率に対する前記Siの含有率の比Si/Mgがモル比で0.5未満であ
    る請求項1に記載のアルミニウム合金鍛造品。
  4. 更にMnの含有率が0.03質量%以上1.0質量%以下、Feの含有率が0.2質量%以上0.7質量%以下、Crの含有率が0.03質量%以上0.4質量%以下、Tiの含有率が0.012質量%以上0.035質量%以下、Bの含有率が0.001質量%以上0.03質量%以下の範囲内にあり、Zn含有率が0.25質量%以下、Zr含有率が0.05質量%以下である請求項1から3のいずれか1項に記載のアルミニウム合金鍛造品。
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