JP2023089681A - ムスカリン性アセチルコリン受容体を活性化するための組成物 - Google Patents

ムスカリン性アセチルコリン受容体を活性化するための組成物 Download PDF

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【課題】対象のムスカリン性アセチルコリン受容体を活性化するための組成物を提供する。【解決手段】スルフォラファン、グルコラファニン、スルフォラフェン及びグルコラフェニンからなる群より選択される1以上の化合物を、ムスカリン性アセチルコリン受容体を活性化させるための組成物の寄与成分として含有させる。【選択図】なし

Description

本発明は、ムスカリン性アセチルコリン受容体を活性化するための組成物に関する。
神経変性疾患のひとつである認知症は、進行性の疾患であり、発症の原因についていくつかの可能性が示されているものの、根本的な治療法はまだ見つかっていない。代表的な認知障害であるアルツハイマー病(AD)の患者において、認知機能の低下が脳内のアセチルコリンの機能障害に関連するという、アルツハイマー病のアセチルコリン仮説が提唱された(非特許文献1)。実際に、ムスカリン性アセチルコリン受容体阻害薬をラットに投与して、アセチルコリン機能に障害を有する動物モデルを構築したところ、十分に訓練された認知行動、すなわち、長期記憶から想起される認知行動が阻害されることが示された。すなわち、ムスカリン性アセチルコリン受容体の活性化が、認知機能のうち、特に長期記憶の想起に重要であることが明らかにされた(非特許文献2)。
スルフォラファン(SFN)は天然化合物であり、ブロッコリー及びその新芽には前駆体であるグルコラファニン(別名スルフォラファングルコシノレート(SGS))として含まれている。ヒトがブロッコリーを摂取すると、植物体や腸内細菌が有する酵素であるミロシナーゼによりSGSが加水分解され、スルフォラファンが生成される。特許文献1はブロッコリー等のアブラナ科植物の抽出物やスルフォラファンに、皮脂産生促進作用があることを報告している。特許文献2はブロッコリー等のアブラナ科植物の抽出物やスルフォラファンに、メラニン産生抑制作用があることを報告している。また、スルフォラファンは経口投与等した場合の人体への安全性も確認されている成分である。
スルフォラファンは、マウスに経口摂取させた場合、体内の組織に広く分布し、前立腺以外の組織(脳を含む)において、摂取量に依存的にスルフォラファン濃度が増加することが明らかにされた。特に、脳のスルフォラファン濃度は、血液中のスルフォラファン濃度と相関することが示された(非特許文献3)。
特開2009-114152号公報 特開2007-031297号公報
Bartus RT, et al., Science, Vol. 217, pp. 408-417 (1982) Soma S, et al., Frontiers in Aging Neuroscience, Vol. 6, Article 63 (2014) Clarke JD, et al., Pharm. Res. 28(12) pp. 3171-3179 (2011)
上記より、認知症を含む神経変性疾患、中でも、ADの予防又は治療において、特に長期記憶からの想起において、ムスカリン性アセチルコリン受容体の活性を高めることが有用であるといえる。一方、近年の消費者の健康志向の高まりから、日常の食事等で健康を管理したい、或いは認知症を予防したい、その発症や進行を遅延させたり食い止めたりしたい、という需要があり、セルフメディケーションに有用なサプリメントや機能性食品などが注目されていることから、食品として摂取した成分により、ムスカリン性アセチルコリン受容体の活性が高められることが望まれる。しかしながら、現在のところ、ムスカリン性アセチルコリン受容体の活性を高める作用を有する、食品として使用される成分については報告されていない。
かかる状況、また、上記の問題点に鑑み、本発明は、対象のムスカリン性アセチルコリン受容体を活性化するための組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決するべく鋭意研究を重ねた結果、一例として、スルフォラファン又はその類縁体により、上記課題を少なくとも部分的に解決し得ることを見出し、これを一実施形態として包含する本発明を完成させた。
本発明は、以下の実施形態を包含する。
[1]スルフォラファン、グルコラファニン、スルフォラフェン及びグルコラフェニンからなる群より選択される1つ以上の寄与成分を含有する、対象のムスカリン性アセチルコリン受容体を活性化するための組成物。
[2]前記ムスカリン性アセチルコリン受容体が、M1ムスカリン性アセチルコリン受容体である、[1]に記載の組成物。
[3]前記活性化が、ムスカリン性アセチルコリン受容体遺伝子の発現量の増加である、[1]又は[2]に記載の組成物。
[4]前記活性化が、M1ムスカリン性アセチルコリン受容体遺伝子(chrm1)の発現量の増加である、[3]に記載の組成物。
[5]対象のアセチルコリンを介した神経伝達を増強するための、[1]~[4]のいずれかに記載の組成物。
[6]対象の長期記憶からの想起の機能を増強するための、[1]~[5]のいずれかに記載の組成物。
[7]対象の海馬における、長期記憶からの想起の機能を増強するための、[6]に記載の組成物。
[8]神経細胞の機能低下を抑制するための、[1]~[7]のいずれかに記載の組成物。
[9][1]~[8]の何れかに記載の組成物を使用することを含む、非ヒト動物のムスカリン性アセチルコリン受容体の活性化方法。
[10][1]~[8]の何れかに記載の組成物を使用することを含む、ヒトのムスカリン性アセチルコリン受容体の活性化方法。
本発明によれば、対象のムスカリン性アセチルコリン受容体を活性化するための組成物を提供することが可能である。
各濃度のスルフォラファン(SFN)を添加した培養液でインキュベートした神経細胞におけるChrm1とGapdhのmRNA量比を示すグラフである。
1.ムスカリン性アセチルコリン受容体を活性化するための組成物
本発明のムスカリン性アセチルコリン受容体を活性化するための組成物(以下、「本発明の組成物」とも称する)は、スルフォラファン、グルコラファニン、スルフォラフェン及びグルコラフェニンからなる群より選択される1つ以上の寄与成分を含有する、ことを特徴とする。本発明の組成物は、これを投与された対象において、そのムスカリン性アセチルコリン受容体を活性化することが可能であり、これにより、AD等の認知障害を有する対象において、認知機能、特に長期記憶からの想起機能の維持又は改善に寄与し得る。また、本発明の組成物(又は剤)は、機能性表示食品や特定保健用食品として消費者の健康志向や健康管理にアピールするものとなり得る。
本発明の組成物は、スルフォラファン又はその類縁体からなる群より選択される1つ以上の化合物を寄与成分として含有し得る。スルフォラファンの類縁体としてはグルコラファニン、スルフォラフェン及びグルコラフェニンが挙げられるがこれに限られない。ある実施形態ではスルフォラファン又はその公知の類縁体の均等物を使用し得る。
本明細書において「対象」とは、本発明の組成物を経口投与等で摂取する個体を指し、具体的には、ヒト又は非ヒト動物が挙げられる。非ヒト動物としては、マウス、ラット、及びモルモットなどの実験動物、ウシ、ウマ、ヒツジなどの家畜動物、及びイヌやネコ等のペット動物が挙げられるがこれに限らない。本明細書において、対象は、好ましくはヒトである。
本発明の組成物は、ムスカリン性アセチルコリン受容体、好ましくは、M1ムスカリン性アセチルコリン受容体を活性化する。本明細書において、「ムスカリン性アセチルコリン受容体」とは、アセチルコリン受容体のなかでも、ムスカリンに対して感受性のある受容体を指す。GTP結合タンパク質に共役した代謝型受容体(GPCR)の一種であり、副交感神経末梢の節後節で、器官側細胞の受容体として存在する受容体である。副交感神経が刺激されると、末梢にある受容体からのアセチルコリンの放出が促進され、臓器細胞の興奮又は抑制が生じる。ムスカリン受容体にはM1からM5までの5つのサブタイプが存在する。本明細書において「M1ムスカリン性アセチルコリン受容体」は、M1サブタイプのムスカリン性アセチルコリン受容体であり、特に、脳の皮質、海馬に存在することが知られる受容体である。
本明細書において、ムスカリン性アセチルコリン受容体の「活性化」とは、対象におけるムスカリン性アセチルコリン受容体の活性が、未処置の場合と比較して亢進されていればよい。実際の効果としては、対象におけるムスカリン性アセチルコリン受容体の生合成量の増加であってもよく、ムスカリン性アセチルコリン受容体の遺伝子発現量の増加であってもよく、ムスカリン性アセチルコリン受容体を介して神経伝達されるアセチルコリン量の増加であってもよい。あるいは、本明細書における前記「活性化」は、未処置の対象では神経細胞の機能低下により低下傾向にあった、前記の生合成量若しくは遺伝子発現量又はアセチルコリン量の維持(低下抑制)であってもよい。
ここでいうムスカリン性アセチルコリン受容体の生合成量若しくは遺伝子発現量、又はアセチルコリン量の維持(低下抑制)とは、認知障害等によるムスカリン性アセチルコリン受容体の活性(生合成量、遺伝子発現量又はアセチルコリン量を指標とする)の低下が抑制された状態になることをいう。特にムスカリン性アセチルコリン受容体の活性が低下する疾患や性質を有する個体に対して本発明の組成物を対象に投与した場合又は摂取させた場合、寄与成分を含まない対照組成物を投与した場合又は摂取させた場合と比較して、ある期間におけるムスカリン性アセチルコリン受容体の活性低下が予防されていることを言う。例えば第1時間点における対象のムスカリン性アセチルコリン受容体の活性を100%とし、第2時間点における対象のムスカリン性アセチルコリン受容体の活性を100%-Δ%(式中、Δ>0)とする。この期間中のムスカリン性アセチルコリン受容体の活性の低下はΔ%である。同期間中に対照組成物を投与した場合(Δ%)と比較して、本発明の組成物を対象に投与する若しくは摂取させた場合、ムスカリン性アセチルコリン受容体の活性の低下が前記Δ%よりも小さければ、ムスカリン性アセチルコリン受容体の活性の低下が予防されていると言える。
別の実施形態においては、ムスカリン性アセチルコリン受容体の活性が低下する疾患や性質を有する個体に対して寄与成分を含まない対照組成物を投与した場合又は摂取させた場合と比較して、本発明の組成物を対象に投与した場合又は摂取させた場合、対象のムスカリン性アセチルコリン受容体の活性がΔ%低下するのにかかる期間が長いことをいう。例えば本発明の組成物を対象に投与する若しくは摂取させた場合、ムスカリン性アセチルコリン受容体の活性の低下が前記Δ%となるのにかかる時間が対照組成物についてかかる期間よりも1.1倍以上、1.2倍以上、1.5倍以上、例えば2倍以上の時間であれば、ムスカリン性アセチルコリン受容体の活性の低下が予防されていると言える。
本発明の組成物は、対象のムスカリン性アセチルコリン受容体の遺伝子発現量を増加させるための組成物であることが好ましい。特に、M1ムスカリン性アセチルコリン受容体の遺伝子発現量を増加させるための組成物であることが好ましいが、これに限定されるものではない。M1ムスカリン性アセチルコリン受容体遺伝子は、配列番号1(ヒトM1ムスカリン性アセチルコリン受容体、NCBI Reference Sequence:NP_000729.2)で示されるアミノ酸配列、又は配列番号1で示されるアミノ酸配列と70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上若しくは99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする遺伝子、あるいは、配列番号2(ラットM1ムスカリン性アセチルコリン受容体、NCBI Reference Sequence:NP_542951.1)で示されるアミノ酸配列、又は配列番号2で示されるアミノ酸配列と70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上若しくは99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする遺伝子を指す。
本明細書において「配列同一性」とは、2つのアミノ酸配列にギャップを導入して、またはギャップを導入しないで整列させた場合の、最適なアラインメントにおいて、オーバーラップする全アミノ酸配列(翻訳開始点となるアミノ酸を含む)に対する同一アミノ酸の割合(パーセンテージ)を意味し、式(1)によって算出する。配列同一性は、この分野で汎用されているアルゴリズムであるBLAST(Basic Local Alignment Search Tool)を用いて容易に調べることができる。例えばBLASTは、NCBI(National Center for Biotechnology Information)やKEGG(Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes)などのウェブサイトから誰でも利用可能であり、デフォルトのパラメーターを用いて容易に配列同一性を調べることができる。
配列同一性(%)=一致数(ギャップ同士は無視する)/短いほうの配列長(ギャップを含まない長さ)×100・・・式(1)
ムスカリン性アセチルコリン受容体の遺伝子発現量は、定量PCR(以下、qPCR)などの慣用方法により測定し得る。ムスカリン性アセチルコリン受容体の活性、すなわち当該受容体を介して神経伝達されるアセチルコリン量を直接測定することが困難であることがあり得る。そこで本明細書では便宜上、ムスカリン性アセチルコリン受容体、特にM1ムスカリン性アセチルコリン受容体の遺伝子発現量をもって、ムスカリン性アセチルコリン受容体の活性の指標とする。
あるいは、ムスカリン性アセチルコリン受容体の活性は、例えば、対象におけるムスカリン性アセチルコリン受容体の生合成量を指標とすることができる。ムスカリン性アセチルコリン受容体の生合成量は、例えば、ムスカリン性アセチルコリン受容体と特異的に結合可能な抗体を用いるイムノアッセイ(EIA、RIA、ウェスタンブロット等)、マススペクトル等の公知の方法を用いて測定することができる。
本発明の組成物は、ある実施形態において、ムスカリン性アセチルコリン受容体を活性化することにより、対象のアセチルコリンを介した神経伝達を増強することを可能とする組成物であり得る。非特許文献2に開示されるように、ムスカリン性アセチルコリン受容体は、長期記憶からの想起の機能に関与する受容体であり、これを活性化することで、長期記憶からの想起の機能が増強される可能性がある。脳内において長期記憶からの想起に関与する部位は海馬であり、ムスカリン性アセチルコリン受容体、特にM1ムスカリン性アセチルコリン受容体は海馬に存在することが知られる。これらのことから、ある実施形態において、本発明の組成物は、長期記憶の想起の機能を増強し得るものであり、当該機能は、本発明の組成物により、特に海馬において増強され得る。なお、ここでいう「増強」は、本発明の組成物の投与前よりも当該機能が改善することに加え、本発明の組成物の投与前において低下傾向にあった当該機能の低下を抑制し、維持することも含むものとする。
本発明の組成物は、ある実施形態において、ムスカリン性アセチルコリン受容体の活性化を介して、神経細胞の機能低下を抑制し得る。本発明の組成物は、ある実施形態において、認知障害等により低下傾向にある神経細胞の機能のうち、少なくともムスカリン性アセチルコリン受容体が関与する機能についてその低下を抑制し得る。
本発明の組成物は特定の作用機序に限定されるものではないが、ある実施形態において、本発明の組成物は、ムスカリン性アセチルコリン受容体の遺伝子発現量を増大、維持、またはその発現量の低下を抑制することにより、ムスカリン性アセチルコリン受容体の生合成量の低下を予防し得る、又はムスカリン性アセチルコリン受容体を介して神経伝達されるアセチルコリン量を維持し得る。また、ある実施形態において、これは認知症、AD、又はPDの発症を遅延させたり、その症状を緩和したり、重症度を軽減したり、又はその進行を低減若しくは停止させるために使用され得る。
ところで、グルコラファニンを摂取すると生体内でミロシナーゼによりスルフォラファンに変換されるため、グルコラファニンを含有するアブラナ科植物等を含有する本発明の組成物を投与又は摂取した場合、生体内でグルコラファニンが代謝され、その代謝産物であるスルフォラファンが活性を発揮すると考えられる。したがって本発明の組成物が例えばスルフォラファン及びグルコラファニンを含有する場合であってグルコラファニンが生体内でスルフォラファンに変換され、活性を発揮するのがスルフォラファンであるときは、便宜上、有効量は、変換後に生じる合計スルフォラファンの量を意味し得る。
スルフォラファン又はその類縁体は、精製された状態で剤や組成物に含有されてもよく、アブラナ科植物、その抽出物又はその分画、及びその粉砕物から選択される一以上の状態で含有されてもよい。本明細書において、「組成物」の用語には、上記の抽出物が包含されるものとする。
グルコラファニン及びグルコラフェニンは、グルコシノレートの一種であり、グルコラファニンはスルフォラファンの前駆体、グルコラフェニンはスルフォラフェンの前駆体である。酵素ミロシナーゼにより加水分解され、グルコラファニンはスルフォラファンとなり、グルコラフェニンはスルフォラフェンとなる。また、ヒト等の哺乳動物がグルコラファニン又はグルコラフェニンを摂取した場合においても、グルコラファニンはスルフォラファンに、グルコラフェニンはスルフォラフェンに変換されて腸管から吸収される。グルコラファニンとグルコラフェニン、及び、スルフォラファンとスルフォラフェンは構造的に非常によく類似しているため、グルコラフェニンにはグルコラファニンと同様の作用・効果が、スルフォラフェンにはスルフォラファンと同様の作用・効果が期待される。
アブラナ科植物としては、例えば、ブロッコリー、ケール、カリフラワー、キャベツ、高菜、アブラナ、カラシナ、大根、大根葉、小松菜、野沢菜、白菜、芽キャベツ、プチヴェール(ケールと芽キャベツの交配品)等が挙げられるが、これに限らない。植物の部分としては特に制限されず、植物の成長体(芽、葉、茎、根又は花等)でも、スプラウト(発芽体)でもよく、又は種子でもよい。ある実施形態においてアブラナ科植物は、アブラナ科アブラナ属(Brassica)、例えばブロッコリー(Brassica oleraceavar. italica)であり得る。ある実施形態において植物の部分はブロッコリーのスプラウト又は種子であり得る。ブロッコリーのスプラウト又は種子はスルフォラファン及び/又はグルコラファニンの含有量が高い。また、大根、大根葉及び大根種子は、スルフォラファン及び/又はグルコラフェニンの含有量が高い。
ブロッコリースプラウトからスルフォラファン及び/又はその類縁体を抽出する場合は、例えば発芽後1~10日後、好ましくは1~3日後のスプラウトを使用し得る。また、スルフォラファン及び/又はその類縁体の含有量が、例えば50~350mg/100g(湿重量)、好ましくは150~330mg/100g(湿重量)、より好ましくは250~300mg/100g(湿重量)のブロッコリースプラウトを使用し得る。
アブラナ科植物からのスルフォラファン及び/又はその類縁体の抽出は、慣用されている方法により行うことができる。例えば、グルコラファニンは、植物の一部または全体をそのまま又は乾燥粉砕したものを溶媒等で抽出して取得することができる。抽出用の溶媒としては、水、低級1価アルコール(メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール等)、液状多価アルコール(グリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール等)、低級エステル(酢酸エチル等)、炭化水素(ベンゼン、ヘキサン、ペンタン等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、エーテル類(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジプロピルエーテル等)、アセトニトリル、及びこれらの組み合わせが挙げられる。抽出方法の例としては、例えば熱水(90~100℃)で、10~30分間抽出する方法や、0~100体積%の含水エタノールで室温又は加温して1~10日間抽出する方法が挙げられる。得られた抽出液はそのまま使用してもよく、さらに分画及び/又は精製してもよい。また、超臨界抽出によりグルコラファニンを抽出してもよい。
グルコラファニンからスルフォラファンを得る方法としては、例えばグルコラファニンをミロシナーゼと反応させる方法が挙げられる。例えば、グルコラファニンを含むアブラナ科植物を、加熱せずに破砕、摩砕、粉砕、せん断、搾汁等することでグルコラファニンと内在のミロシナーゼを反応させて、スルフォラファンに代謝させる方法や、グルコラファニンにミロシナーゼを添加してスルフォラファンに代謝させる方法等が挙げられる。スルフォラファンは、これらの方法にてグルコラファニンから代謝されたスルフォラファンを含有する原料から、グルコラファニンと同様の方法(例えば、上記の抽出方法等)にて取得し得る。なお、グルコラフェニンからスルフォラフェンを得る方法は、前述のグルコラファニンからスルフォラファンを得る方法と同様である。
本発明の組成物に含まれるグルコラファニンの濃度測定は公知の方法により行うことができる。例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法を用いることができ、具体的な方法としては、Faheyらの方法(Fahey et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA,94, 10367-10372, 1997)等に従って行うことができる。なお、グルコラフェニンの濃度測定もグルコラファニンと同様の方法により行うことができる。
本発明の組成物に含まれるスルフォラファンの濃度測定は公知の方法により行うことができる。例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法を用いることができ、具体的な方法としては、Hanらの方法(Han et al., Int. J. Mol. Sci., 12, 1854-1861, 2011)等に従って行うことができる。なお、スルフォラフェンの濃度測定もスルフォラファンと同様の方法により行うことができる。
本発明の組成物の形態としては、サプリメント、錠剤、被覆錠剤、顆粒剤、散剤、溶液、乳液、カプセル剤、注射剤若しくは液剤、ドライシロップ剤、シロップ剤などの各種剤形が挙げられるがこれに限らない。ある実施形態において、本発明の組成物は、経口摂取用とし得る(経口投与剤)。別の実施形態において、本発明の組成物は、経腸投与形態、経管投与形態又は経胃瘻投与形態等とし得る。例えば認知症が進行した対象において、経口摂取が困難であったり、コンプライアンスの問題があり得る場合において、経口投与の代わりに経胃瘻投与形態を使用し得る。この場合、経胃瘻投与形態は液状又は液体の流動食若しくは栄養組成物とし得る。
ある実施形態において、本発明の組成物は、経口摂取用組成物、経腸投与組成物、経管投与組成物又は経胃瘻投与組成物に通常含まれる他の成分、例えば賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、着色剤、矯味矯臭剤、懸濁化剤、溶解補助剤、コーティング剤、補助剤、保存料、香料、ビタミン剤、pH調整剤、乳化剤、増粘剤、等張化剤、酸化防止剤、キレート剤、甘味剤、風味剤等を含み得るが、追加成分はこれに限らない。ある実施形態において本発明の組成物は食品組成物又は飼料組成物であり得る。ある実施形態において本発明の組成物は医薬組成物、医薬品又は医薬部外品であり得る。ある実施形態において、本発明の組成物は高齢者用、例えば後期高齢者用であり得る。この場合、高齢者の咀嚼力や嚥下力を考慮して、組成物の粘度や流動性を調整し得る。
上記の食品組成物としては、例えば、飲料(ジュース、紅茶、茶、コーヒー、炭酸飲料、スポーツ飲料、清涼飲料水等)、菓子類(ガム、キャラメル、キャンディー、チョコレート、クッキー、ビスケット、スナック、ゼリー、グミ、錠菓等)、麺類(そば、うどん、ラーメン等)、乳製品(ミルク、アイスクリーム、ヨーグルト等)、調味料(味噌、醤油、ドレッシング等)、スープ類、をはじめとする一般食品や加工食品、健康食品(錠剤、カプセル等)、栄養補助食品(サプリメント、栄養ドリンク等)が挙げられるがこれに限らない。
これら食品組成物には、その種類に応じて種々の成分を配合することができ、例えば、ブドウ糖、果糖、ショ糖、マルトース、ラフィノース、ソルビトール、ステビオサイド、コーンシロップ、乳糖、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、L-アスコルビン酸、dl-α-トコフェロール、エリソルビン酸ナトリウム、グリセリン、プロピレングリコール、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、アラビアガム、カラギーナン、カゼイン、ゼラチン、ペクチン、寒天、ビタミンB類、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム、アミノ酸類、カルシウム塩類、色素、香料、保存剤等の食品添加物を任意に使用し得る。
寄与成分とは、物質であって、その影響する先が身体の生理学的機能であるものをいう。医薬品及び医薬部外品における寄与成分に相当するのは、いわゆる「有効成分」である。特定保健用食品及び機能性表示食品における寄与成分に相当するのは、いわゆる「関与成分」及び「機能性関与成分」である。
本発明の組成物は、スルフォラファン、グルコラファニン、スルフォラフェン及び/又はグルコラフェニンを0.1mg/kg体重以上、0.2mg/kg体重以上、0.5mg/kg体重以上、1mg/kg体重以上、2mg/kg体重以上、5mg/kg体重以上、10mg/kg体重以上、20mg/kg体重以上、50mg/kg体重以上、100mg/kg体重以上、200mg/kg体重以上、500mg/kg体重以上、例えば1000mg/kg体重以上、例えば0.1~1000mg/kg体重以上、0.1~500mg/kg体重以上、0.1~100mg/kg体重以上、0.1~50mg/kg体重以上、0.1~20mg/kg体重以上、例えば0.1~10mg/kg体重以上となるよう含み得る。別の実施形態において本発明の組成物は、スルフォラファン、グルコラファニン、スルフォラフェン及び/又はグルコラフェニンを合計で0.01重量%以上、0.05重量%以上、0.10重量%以上、0.20重量%以上、0.5重量%以上、1重量%以上、2重量%以上、2.2重量%以上、3重量%以上、4重量%以上、5重量%以上、10重量%以上、20重量%以上、20重量%以下、10重量%以下、5重量%以下、例えば3重量%以下含有し得る。
本発明の組成物の摂取量は、対象がヒトである場合、その年齢、性別、症状、投与方法によって異なり得るが、スルフォラファン、グルコラファニン、スルフォラフェン及び/又はグルコラフェニンが通常、成人(体重60kg程度)1日当たり1mg以上、5mg以上、10mg以上、20mg以上、例えば30mg以上とし得る。なお、「1日当たり30mg以上」とは、組成物の形態によって異なり得るが、表示される1日の摂取目安量や、通常1度で消費する飲みきりタイプの飲料であれば1本当たりに含まれる量を指すものとする。1日当たりの量は、単回投与又は複数回投与(摂取)により実現され得る。投与又は摂取のタイミングは、食前、食後、又は食間であり得る。投与又は摂取の期間は特に限定されないが、ある実施形態において、本発明の組成物剤は、長期摂取又は継続摂取され得る。長期摂取又は継続摂取とは、例えば1か月間以上、2か月間以上、3か月間以上、4か月間以上、5か月間以上、例えば6か月間以上摂取することを言う。ある実施形態において、本発明の組成物は、長期摂取又は継続摂取するのに適した包装形態とし得る。また、当業者であれば、本発明の組成物の摂取量又は投与量を適宜設定し得る。
特定の実施形態において、本発明の食品組成物は、上記の機能性や生体に対する有用な作用に基づいて、機能性表示食品や特定保健用食品とすることができる。
本発明の組成物の有する有用性や機能性に関しては、製品化の際に次のような表示を付してもよいが表示はこれに限らない。例えば、「ムスカリン性アセチルコリン受容体を活性化させる機能性」、「ムスカリン性アセチルコリン受容体の遺伝子発現量を増加させる機能性」「ムスカリン性アセチルコリン受容体の活性低下を予防する機能性」、「ムスカリン性アセチルコリン受容体の遺伝子発現量減少を予防する機能性」及びこれらに類する表示等が挙げられる。なお、これらの表示は、公知の方法で容器包装手段に付すこと、製品に関する広告・価格表もしくは取引書類に上記説明を表示して展示もしくは頒布すること、またはこれらを内容とする情報を電磁気的(インターネットなど)方法により提供すること等ができる。
2.ムスカリン性アセチルコリン受容体の活性化方法
本発明のムスカリン性アセチルコリン受容体の活性化方法(以下、「本発明の方法」とも称する)は、「1.ムスカリン性アセチルコリン受容体を活性化するための組成物」の項に記載の組成物を使用することを含む、非ヒト動物又はヒトのムスカリン性アセチルコリン受容体の活性化方法である。本発明の方法は、非ヒト動物又はヒトに、スルフォラファン、グルコラファニン、スルフォラフェン及びグルコラフェニンからなる群より選択される1つ以上の寄与成分を含有する組成物を経口摂取等により投与することで、投与対象のムスカリン性アセチルコリン受容体の活性化させ、認知機能、特に長期記憶からの想起機能の維持又は改善に寄与し得る。
ある実施形態において、本発明の方法は、非ヒト動物のムスカリン性アセチルコリン受容体の活性化方法である。非ヒト動物としては、マウス、ラット、及びモルモットなどの実験動物、ウシ、ウマ、ヒツジなどの家畜動物、及びイヌやネコ等のペット動物が挙げられるがこれに限らない。
本明細書は、上記実施形態とは別に、ヒト、特にAD等の認知障害を有するヒトのムスカリン性アセチルコリン受容体の活性化方法を開示する。
本発明の方法における、使用される組成物の成分、調製方法、投与形態、作用機序、投与対象等は、特に矛盾のない限り、「1.ムスカリン性アセチルコリン受容体を活性化するための組成物」の項に記載の通りである。
下記の実施例は、例示のみを意図したものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。材料や試薬は特に断らない限り、市販されているか、又は当技術分野で慣用の手法、公知文献の手順に従って入手又は調製したものである。なお、qPCR用プライマーはユーロフィンジェノミクスより購入した。
[実施例1]
1.PC12細胞の培養
液体窒素保存した凍結細胞を含むクライオバイアル(PC12細胞、ラット由来、ACC No.:88022401)を、37℃の水浴中で素早く融解し、細胞を培地A(10.0% 牛胎児血清、50U/mL ペニシリン、50μg/mL ストレプトマイシンを含むDMEM培地)10mLを含む50mL遠心チューブにクライオチューブの内容量の全量を添加して混合した。200×gで5分間遠心分離した後、上清を除き、ペレットを培地A 5mLに再懸濁して、細胞培養用25cmフラスコに播種した。
60%コンフルエントな状態まで培養した後、培養液の3分の2を75cmフラスコに移して継代培養を行い、残りの3分の1を凍結保存した。継代培養は、フラスコ中の細胞を0.25%トリプシン/EDTA溶液で剥離し、PBSで洗浄した後、新しいフラスコに新鮮培地と共に入れることで実施した。継代培養開始2日後に培地交換を行って培養を継続し、さらに3日後に新しい75cmフラスコに移して継代培養を行った。継代培養開始2日後に培地交換を行い、さらに2日度にコンフルエントな状態を確認した後、トリプシン溶液を用いて細胞を剥離し、遠心分離により細胞を回収した。回収した細胞は、CELLBANKER(登録商標)1plus 4mLに再懸濁し、1mLずつクライオチューブに分注した後、液体窒素中で凍結保存した。同様の工程を2回以上繰り返し、使用する細胞のストックを作製した。
凍結保存した細胞懸濁液1mLを37℃の水浴で解凍し、15mL遠心チューブ中の培地A6mLに添加した。培地を混合した後、200×g、5分間遠心分離し、上清を除いた。培地Aを10mL添加した後、全量を100mmディッシュに播種して、37℃でインキュベートした。80%コンフルエントを確認後、細胞液を50mL遠心チューブに回収し、さらにPBSでディッシュを洗浄後、その洗浄液を細胞液を回収した50mLチューブへ回収した。200×g、5分間遠心分離した後、上清を除き残ったペレット状の細胞塊に新鮮な培地B(5.0% 牛胎児血清、10.0% 馬血清、50U/mL ペニシリン、50μg/mL ストレプトマイシンを含むDMEM培地)を加えて再懸濁し、2~3枚の100mmディッシュに播種し、神経細胞様分化に使用する細胞継代を実施した。
2.PC細胞の神経細胞様分化・SFN刺激
6ウェルプレートにコラーゲン用溶液(新田ゼラチン社製Cellmatrix Type IVを1mM希塩酸で20倍希釈したもの)を1mL/ウェル添加し、満遍なく行きわたらせた後、コラーゲン溶液を破棄し、30分間クリーンベンチ内で乾燥させ、30分間以上紫外線滅菌し、コラーゲンコーティング6ウェルプレートを作製した。なお、コラーゲンコーティング6ウェルプレートは細胞液の添加前に培地で2回洗浄した後、使用した。
スルフォラファン(SFN(CAYMAN社より入手#10496))5mgをDMSO(TOCRIS BIOSCIENCE社製3176)を用いてSFN 10mMとなるように希釈して、ストック溶液を調製した。10mM SFNストック溶液を培地Bで100μMとなるように希釈後、アドバンテック社製DISMIC 25CS020ASを用いて滅菌してSFN100μM溶液を作製した。併せて、対照として、上記のSFN/DMSO溶液に代えて、DMSOを培地Bを用いて100倍希釈したSFN 0μM溶液を作製した。
培養したPC12細胞を、80%コンフルエントを確認後、細胞液を50mL遠心チューブに回収し、さらにPBSでディッシュを洗浄後、その洗浄液を細胞液を回収した50mLチューブへ回収した。200×g、5分間遠心分離した後、上清を除き残ったペレット状の細胞塊にトリプシン溶液を添加してインキュベートすることで細胞集塊を離散させた後、トリプシン溶液と同量の新鮮な培地Bを添加してトリプシン反応を停止させた。200×g、5分間遠心分離した後、上清を除き残ったペレット状の細胞塊に培地Bを添加して1×10細胞/mLとなるように再懸濁し、洗浄済みコラーゲンコーティング6ウェルプレートに細胞を1mL/ウェル播種して、プレートを200×g、5分間遠心して細胞を沈降させ、一晩静置した。一晩静置後、1μg/mL NGF(神経成長因子、SIGMA社製N2513)溶液(0.1%牛血清アルブミンを含むPBS溶液)を、10μL/ウェル添加した(終濃度10ng/mL)。さらにSFN100μM溶液またはSFN0μM溶液を各ウェルに添加することでSFN刺激下での神経細胞様分化を実施した。なお、刺激条件は、SFN0、0.1、0.5、2.5、5.0、10.0μMであり、各条件のn数は、表2に示す通りとした。
各条件の細胞を72時間インキュベートした後、セルスクレーパーを用いてフラスコから細胞を剥離し、培地ごと細胞を15mL遠心チューブに回収し、さらにプレートをPBSで洗浄し、その洗浄液ごと細胞を同15mL遠心チューブに回収し、200×g、5分間遠心して細胞を回収した。
3.mRNA抽出
各条件下で培養した神経細胞(1×10細胞)について、RNA抽出を実施した。抽出には、Thermo Fisher Scientific社製TRIzolTMReagent(カタログ番号15596018)を用いた。回収した細胞へTRIzolTMReagentを800μL加え、ピペッティングし、室温で5分間インキュベートした。160μLのクロロホルムを加えて、ボルテックスで攪拌混合した後、室温で3分間静置した。4℃で、12000×g、15分間遠心分離して、上層約400μLを回収した。2-プロパノールを400μL加えてボルテックスで攪拌混合した後、室温で10分間静置した。4℃で、12000×g、10分間遠心分離して、上清を除去した。75%エタノールを800μL加えて、ボルテックスで攪拌混合した後、4℃で、7500×g、5分間遠心分離して、上清を除去した。室温で5~10分間沈殿物を乾燥させて、RNaseフリー水40μLを加えてRNAを溶解した。溶出したRNAはcDNA合成まで-80℃で保管した。
4.遺伝子発現解析
抽出したRNAを用いて、RT-qPCR法による遺伝子発現解析を実施した。すなわち抽出したRNAよりcDNAを合成し、合成したcDNAを用いたqPCRを実施した。上記で調製したRNA溶液10μLを、5×PrimeScript(商標)RT Master Mix(Perfect Real Time)(TaKaRa、#RR036A)4μL、RNaseフリー水6μLと混同して、反応液20μLを得た。サーマルサイクラー(BIO-RAD、T100サーマルサイクラー)を使用して反応液を反応(37℃15分、85℃5秒、4℃まで降温)させ、cDNAを得た。手順は、メーカープロトコールに従って実施した。
qPCRには、TB Green(登録商標)Premix ExTaq(商標)II(Tli RNaseH Plus)(TaKaRa、#RR820S)を試薬として用いた。鋳型cDNA量は20ngとし、Applied Biosystems TM 7500 Fast(Thermo Fisher Scientific、#7500-03)を解析機器として用いた。qPCRプロトコールは、pre増幅ステップ(95℃30秒間)、増幅ステップ(95℃ 5秒間、60℃ 34秒間×45サイクル)、融解ステップ(95℃ 15秒間、60℃ 1分間、95℃まで昇温)とした。
mRNA解析を行った対象遺伝子は、M1ムスカリン性アセチルコリン受容体遺伝子であるChrm1遺伝子である。また、内部標準として、グリセルアルデヒド3-リン酸脱水素酵素遺伝子であるGapdh遺伝子を解析した。各遺伝子について、qRT-PCRに使用したプライマーの配列は、表1に示す通りとした。
Figure 2023089681000001
各条件下の細胞について、Chrm1/Gapdh発現量比を求めた。結果を表2及び図1に示す。表2及び図1に示される値は、SFN濃度0μMの条件における平均値を1.0とした場合の相対値を示す。表2及び図1に示される通り、培養液中にSFNを0.1~5μM添加した試験区において、SFNを添加した試験区と比較して明らかにChrm1/Gapdh発現量比が増大していた。また、各条件下のChrm1/Gapdh発現量比の値についてヨンクヒール=タプストラ検定を用いて上昇傾向の有無を解析した結果、P=0.0001336となり、細胞培養液に添加したSFN量に伴うChrm1/Gapdh発現量比に有意な上昇傾向があることが示された。
Figure 2023089681000002
本実施例においては、神経細胞において、SFNとの接触によってムスカリン性アセチルコリン受容体の遺伝子発現量が増大することが示された。これにより、SFNの作用によって、ムスカリン性アセチルコリン受容体の生合成量が増加すること、また、ムスカリン性アセチルコリン受容体の活性が全体として亢進されることが示されたといえる。本実施例は、神経細胞の培養液にSFNを添加したものであるが、非特許文献3に示される通り、経口摂取で体内に取り入れられたSFNは脳に移行されることから、SFNを経口摂取したヒト等の対象においても、ムスカリン性アセチルコリン受容体の活性化が生じ得ることが示されている。上記した通り、ムスカリン性アセチルコリン受容体は、長期記憶の想起に関与する受容体であり、SFNの経口摂取が、その機能の維持・改善に寄与し得ることも示されている。
本明細書において、学術論文を含め、複数の文書が引用されている。これらの文書の開示は、本発明の特許性に関連するとはみなされないが、その全体を参照により本明細書に組み入れることとする。より詳細には、全ての参照文書を、各個の文書が参照により組み入れられると具体的かつ個別に示されている場合と同様に、参照により本明細書に組み入れることとする。
本発明の組成物は、認知機能の維持・改善を目的として経口摂取等を行うための組成物として、食品分野、医薬品分野、化粧品分野等において利用可能である。

Claims (9)

  1. スルフォラファン、グルコラファニン、スルフォラフェン及びグルコラフェニンからなる群より選択される1つ以上の寄与成分を含有する、対象のムスカリン性アセチルコリン受容体を活性化するための組成物。
  2. 前記ムスカリン性アセチルコリン受容体が、M1ムスカリン性アセチルコリン受容体である、請求項1に記載の組成物。
  3. 前記活性化が、ムスカリン性アセチルコリン受容体遺伝子の発現量の増加である、請求項1又は2に記載の組成物。
  4. 前記活性化が、M1ムスカリン性アセチルコリン受容体遺伝子(chrm1)の発現量の増加である、請求項3に記載の組成物。
  5. 対象のアセチルコリンを介した神経伝達を増強するための、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
  6. 対象の長期記憶からの想起の機能を増強するための、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
  7. 対象の海馬における、長期記憶からの想起の機能を増強するための、請求項6に記載の組成物。
  8. 神経細胞の機能低下を抑制するための、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
  9. 請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物を使用することを含む、非ヒト動物のムスカリン性アセチルコリン受容体の活性化方法。
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