JP2023088816A - 炭化珪素半導体装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】簡易に形成可能でかつ所定耐圧を安定して確保可能な耐圧構造を備えた信頼性の高い炭化珪素半導体装置を提供すること。【解決手段】エッジ終端領域2において、半導体基板40のおもて面から離れた深さ位置に、空間変調JTE構造30を構成する複数のp型領域31および複数のp-型領域32がそれぞれ選択的に設けられている。p型領域31およびp-型領域32の各底部は、活性領域1の外周部1bのp型外周領域24の底部よりも半導体基板40のおもて面から深い位置にある。p型外周領域24の底部の外側コーナー部24bは、最も内側のp型領域31に囲まれ、エッジ終端領域2のn-型ドリフト領域12に接しない。【選択図】図2

Description

この発明は、炭化珪素半導体装置に関する。
従来、パワー半導体装置の耐圧構造は、活性領域と半導体基板(半導体チップ)の端部との間のエッジ終端領域に配置されており、エッジ終端領域において半導体基板のおもて面に露出するn-型ドリフト領域の表面領域に選択的に設けられた複数のp型領域で構成される。パワー半導体装置の半導体材料が炭化珪素(SiC)である場合、耐圧構造として、空間変調接合終端拡張(JTE:Junction Termination Extension)構造を配置することが公知である。
JTE構造は、複数のp型領域(以下、JTE領域とする)を、内側(半導体基板の中央部(チップ中央)側)から外側(半導体基板の端部(チップ端部)側)へ離れるほど不純物濃度の低いJTE領域が配置されるように、活性領域の周囲を囲む同心状に隣接して配置した構造である。電界強度は活性領域から外側へ離れるにつれて小さくなる傾向にある。電界強度分布の傾向に合わせて、活性領域から外側へ離れた位置に配置されるほどJTE領域の不純物濃度を低くすることで、エッジ終端領域の所定耐圧が安定して確保される。
空間変調JTE構造は、JTE構造の改良構造であり、互いに隣り合うJTE領域(1つのJTE領域のみで構成される場合は、1つのJTE領域とその外側のn-型ドリフト領域)間に、これら2つの領域の不純物濃度の中間の不純物濃度と空間的に等価な不純物濃度分布を有する空間変調領域を配置して、全体のp型不純物濃度を内側から外側へ向って緩やかに減少させた構造である。空間変調領域は、自身の両側それぞれに隣接する領域と略同じ不純物濃度の2つの小領域を所定パターンで交互に繰り返し隣接して配置してなる。
空間変調領域全体の空間的な不純物濃度分布は2つの小領域の幅および不純物濃度比で決まる。空間変調JTE構造は、空間変調領域を有していない一般的なJTE構造と比べて、エッジ終端領域の所定耐圧をより安定して確保可能である。このように、エッジ終端領域に所定の耐圧構造を配置して、エッジ終端領域の電界を緩和または分散させることで、エッジ終端領域の耐圧を向上させて、半導体装置全体の耐圧を向上させている。従来の炭化珪素半導体装置の構造について説明する。
図13は、従来の炭化珪素半導体装置の構造を示す断面図である。図13に示す従来の炭化珪素半導体装置110は、炭化珪素からなる半導体基板(半導体チップ)140のエッジ終端領域102に、空間変調JTE構造130を備えたトレンチゲート構造の縦型MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor:金属-酸化膜-半導体の3層構造からなる絶縁ゲート(MOSゲート)を備えたMOS型電界効果トランジスタ)である。
半導体基板140は、炭化珪素からなるn+型出発基板141上にn-型ドリフト領域112となるn-型炭化珪素層142をエピタキシャル成長させてなる。半導体基板140は、n-型炭化珪素層142側の主面をおもて面とし、n+型出発基板141側の主面を裏面とする。半導体基板140のおもて面は全域にわたって平坦面であり、活性領域101とエッジ終端領域102との間に段差は生じていない。活性領域101の中央部101aに、MOSFETの複数の単位セル(素子の機能単位)が隣接して設けられている。
活性領域101の外周部101bにおいて半導体基板140のおもて面とn-型ドリフト領域112との間の全域に、半導体基板140のおもて面側から順に深さ方向に隣接して、p++型コンタクト延在部115a、p型ベース延在部113aおよびp+型延在部122aが設けられている。p++型コンタクト延在部115aは、半導体基板140のおもて面に露出され、半導体基板140のおもて面上の絶縁層(フィールド酸化膜125および層間絶縁膜119)に接する。
++型コンタクト延在部115a、p型ベース延在部113aおよびp+型延在部122aは、それぞれ、活性領域101の中央部101aの最も外側の単位セルのp++型コンタクト領域115、p型ベース領域113およびp+型領域122の延在部であり、活性領域101の中央部101aの周囲を囲む。p++型コンタクト延在部115a、p型ベース延在部113aおよびp+型延在部122aともに外側の端部は内側から外側へ向かう法線方向に同じ位置で終端し、半導体基板140のおもて面に垂直な同一面上にある。
エッジ終端領域102は、活性領域101の周囲を囲む。エッジ終端領域102には、耐圧構造として、空間変調JTE構造130が設けられている。空間変調JTE構造130は、半導体基板140のおもて面とn-型ドリフト領域112との間に選択的に設けられた複数のp型領域131および複数のp-型領域132で構成される。これらすべてのp型領域131およびp-型領域132は、半導体基板140のおもて面に露出され、半導体基板140のおもて面上の絶縁層に接する。
複数のp型領域131は、活性領域101の周囲を囲む同心状に互いに離れて配置されている。最も内側のp型領域131は、p++型コンタクト延在部115aの外側に、p++型コンタクト延在部115aに隣接して配置されている。複数のp-型領域132は、活性領域101の周囲を囲む同心状に互いに離れて配置されている。最も内側のp-型領域132は、互いに隣り合うすべてのp型領域131間に設けられ、法線方向に両側のp型領域131に隣接する。
最も内側のp-型領域132は、最も外側のp型領域131よりも外側へ延在している。すべてのp型領域131および最も内側のp-型領域132は、p++型コンタクト延在部115aを介してソース電極120の電位に固定される。最も内側のp-型領域132以外のp-型領域132は、p型領域131よりも外側に配置される。n-型ドリフト領域112は、互いに隣り合うすべてのp-型領域132間に設けられ、互いに隣り合うp-型領域132間において半導体基板140のおもて面に露出される。
符号113~118は、それぞれ活性領域101における半導体基板140のおもて面側に設けられてトレンチゲート構造を構成するp型ベース領域113、n+型ソース領域114およびp++型コンタクト領域115、トレンチ116、ゲート絶縁膜117およびゲート電極118である。符号111,123,126,133は、それぞれn+型ドレイン領域111、ドレイン電極123、ゲートポリシリコン配線層126およびn+型チャネルストッパ領域133である。符号121,122は、トレンチ116の底面のゲート絶縁膜117にかかる電界を緩和するp+型領域121,122である。
従来の半導体装置として、耐圧構造を構成するp型領域を、底部(半導体基板の裏面側端部)が活性領域の主接合(pn接合)の最外周端(以下、主接合端とする)を形成するp型領域の底部と同じ深さ位置になるように、半導体基板のおもて面から離れた深さ位置に配置した装置が提案されている(例えば、下記特許文献1~3参照。)。下記特許文献1では、活性領域の主接合端を形成するp型領域の外側に底部同士の深さ位置を揃えて隣接するJTE構造のp型領域によって、活性領域の主接合端への電界集中を抑制している。
また、下記特許文献1では、半導体基板のおもて面を全域にわたって平坦面とした構造において、活性領域のp型領域とJTE構造を構成するp型領域とを半導体基板のおもて面から同じ深さ位置に形成することで、フォトリソグラフィによる位置合わせ精度を向上させている。下記特許文献2では、半導体基板のおもて面と耐圧構造との間に配置した低不純物濃度なn-型またはp-型の炭化珪素層によって、耐圧構造を保護するとともに、半導体基板のおもて面の表(ひょう)面の電界を緩和させている。
下記特許文献3では、耐圧構造を構成するフローティング(浮遊)電位のp型領域であるフィールドリミッティングリング(FLR:Field Limiting Ring)に、半導体基板の裏面側で相対的に不純物濃度を低くし、かつ半導体基板のおもて面側で相対的に不純物濃度を高くした不純物濃度分布を形成することで、耐圧を向上させている。また、下記特許文献2,3では、耐圧構造を構成するp型領域と活性領域のp型領域とを同じ深さに同時に形成することで、工程数を低減させている。
また、従来の別の半導体装置として、活性領域の主接合端を形成するp型領域の底部の外側コーナー部やエッジ終端領域のFLRの底部の外側コーナー部などの電界集中が起きやすい部分をそれぞれ個別に囲むように、半導体基板のおもて面から離れた深さ位置に埋め込まれるように埋め込みFLRを選択的に設けた装置が提案されている(例えば、下記特許文献4参照。)。下記特許文献4では、埋め込みFLRによって、電界集中が起きやすい部分での局所的な電界集中を抑制している。
従来の別の半導体装置として、ドリフト層を、n型領域とp型領域とを半導体基板のおもて面に平行な方向に交互に繰り返し配置した並列pn層とした超接合(SJ:Super Junction)構造であり、エッジ終端領域における並列pn層のp型領域を、半導体基板のおもて面から離れた深さ位置に配置し、かつ外側に配置されるほど深さ方向の長さを短くした装置が提案されている(例えば、下記特許文献5参照。)。下記特許文献5では、エッジ終端領域での等電位線の曲率半径を大きくして高耐圧を実現している。
特開2020-202404号公報 特開2021-048423号公報 特開2007-173705号公報 特開2008-004643号公報 特開2000-183350号公報
活性領域にのみp型ベース領域となるp型炭化珪素層をエピタキシャル成長によって設けた構造(不図示)では、半導体基板のおもて面に、半導体基板のおもて面を活性領域よりもエッジ終端領域でドレイン電極側に低くした段差が形成される。この段差よりも外側において半導体基板のおもて面に露出されたn-型炭化珪素層(n-型ドリフト領域)の表面領域に耐圧構造が形成される。活性領域の主接合端を形成するp型領域は、段差よりも外側まで延在して半導体基板のおもて面に露出され、底部の外側コーナー部を耐圧構造に囲まれる。
しかしながら、従来の炭化珪素半導体装置110(図13参照)では、半導体基板のおもて面が全域にわたって平坦面となる。このため、活性領域101にトレンチゲート構造などの半導体基板140のおもて面から深い位置に達する素子構造が形成されると、活性領域101の主接合端を形成するp型領域の底部(p+型延在部122aの底部)の深さ位置に対して、耐圧構造(p型領域131およびp-型領域132)の底部(半導体基板140の裏面側端部)の深さ位置が半導体基板140のおもて面から浅くなってしまう。
耐圧構造を構成するp型領域の底部の深さ位置が浅いことで、活性領域101の主接合端を形成するp型領域の底部の外側コーナー部122bがn-型ドリフト領域112に囲まれた構造となる。このため、当該部分122bに電界が集中して当該部分122bでアバランシェ降伏しやすく、エッジ終端領域102の耐圧が活性領域101の耐圧よりも低くなる。エッジ終端領域102の耐圧で炭化珪素半導体装置110の全体の耐圧が決まってしまうため、信頼性が低下する。
仮に、エッジ終端領域102の耐圧を活性領域101の耐圧よりも高く確保できたとしても、その耐圧差は小さく、他の要因で活性領域101の耐圧が高く確保された場合に、エッジ終端領域102の耐圧が活性領域101の耐圧よりも低くなる虞がある。このようなエッジ終端領域の耐圧低下を抑制するため、上記特許文献1~4のように、耐圧構造を構成するp型領域を、底部が活性領域の主接合端を形成するp型領域の底部と同じ深さ位置となるように配置して、局所的な電界集中を抑制した装置が提案されている。
また、一般的な耐圧構造では、耐圧構造を構成するp型領域を、活性領域における同じ不純物濃度および同じ深さのp型領域と同時に同一のイオン注入によって形成することで工程数を低減し、コストを低減させている。このため、上記特許文献2,3のように、活性領域のp型領域と同じ不純物濃度および同じ深さの複数のp型領域(FLR)で耐圧構造を構成する場合には、工程数を低減させるとともに、活性領域のp型領域の底部と、耐圧構造を構成するp型領域の底部と、を同じ深さ位置に容易に合わせることができる。
しかしながら、上記特許文献1のJTE構造のように活性領域のp型領域の不純物濃度と耐圧構造を構成するp型領域の不純物濃度とが異なる場合、活性領域のp型領域と、耐圧構造を構成するp型領域と、はそれぞれ異なるイオン注入工程で形成される。これらp型領域の不純物濃度をそれぞれ適宜設定された異なる条件(段数やドーズ量)でのイオン注入で調整するため、耐圧構造を構成するp型領域の底部と、活性領域の最も外側のp型領域の底部と、を同じ深さ位置に合わせることが困難である。
また、上記特許文献1~5では、エッジ終端領域において半導体基板のおもて面と耐圧構造(上記特許文献5ではSJ構造)との間にn-型ドリフト領域を残した構造となっている。このため、半導体装置の長時間動作によってエッジ終端領域における半導体基板のおもて面上の絶縁層がマイナスに帯電(マイナス電荷が蓄積)すると、当該絶縁層に蓄積されたマイナス電荷による悪影響を大きく受けて、エッジ終端領域の耐圧が変動し、経時的に信頼性が低下するという問題がある。
この発明は、上述した従来技術による課題を解消するため、簡易に形成可能でかつ所定耐圧を安定して確保可能な耐圧構造を備えた信頼性の高い炭化珪素半導体装置を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、次の特徴を有する。半導体基板は、炭化珪素からなり、全面にわたって平坦な第1主面を有する。活性領域および終端領域は、前記半導体基板に設けられている。前記終端領域は、前記活性領域の周囲を囲む。前記活性領域から前記終端領域にわたって前記半導体基板の内部に、第1導電型の第1半導体領域が設けられている。前記活性領域において前記第1主面と前記第1半導体領域との間に、第2導電型の第2半導体領域が設けられている。素子構造は、前記第1半導体領域と前記第2半導体領域とのpn接合を含む。前記素子構造には、前記pn接合を通過する電流が流れる。前記素子構造と前記終端領域との間において前記第1主面と前記第1半導体領域との間に、第2導電型外周領域が設けられている。前記第2導電型外周領域は、前記素子構造の周囲を囲む。
第1電極は、前記第1主面に設けられ、前記第2半導体領域および前記第2導電型外周領域に電気的に接続されている。第2電極は、前記半導体基板の第2主面に設けられ、前記第1半導体領域に電気的に接続されている。前記終端領域において前記第1半導体領域の内部に、前記第1主面から離れた深さ位置で、前記活性領域の周囲を囲む同心状に互いに離れて、複数の第2導電型耐圧領域が設けられている。耐圧構造は、複数の前記第2導電型耐圧領域で構成されている。前記耐圧構造の全体の第2導電型不純物濃度は内側から外側へ向って緩やかに減少している。前記第2導電型外周領域の外側の端部は、前記第1主面に対して垂直面である。前記第2導電型耐圧領域の底部は、前記第2導電型外周領域の底部よりも前記第1主面から深い位置にある。複数の前記第2導電型耐圧領域のうちの最も内側の第1の第2導電型耐圧領域は、前記第2導電型外周領域の底部の外側コーナー部を囲む。
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記素子構造は、第1導電型の第3半導体領域、トレンチ、ゲート電極および第2導電型高濃度領域を備える。前記第3半導体領域は、前記第1主面と前記第2半導体領域との間に選択的に設けられ、前記第1電極に電気的に接続されている。前記トレンチは、前記第3半導体領域および前記第2半導体領域を貫通して前記第1半導体領域に達する。前記ゲート電極は、前記トレンチの内部にゲート絶縁膜を介して設けられている。前記第2導電型高濃度領域は、前記第1半導体領域と前記第2半導体領域との間において、前記トレンチの底面よりも前記第2主面側に選択的に設けられている。前記第2導電型高濃度領域は、前記第2半導体領域よりも不純物濃度が高い。
前記第2導電型外周領域は、第1外周領域、第2外周領域および第3外周領域を有する。前記第1外周領域は、前記第2半導体領域の前記素子構造よりも外側に配置された部分である。前記第2外周領域は、前記第2導電型高濃度領域の前記素子構造よりも外側に配置された部分であり、前記第1外周領域と前記第1半導体領域との間に、前記第1外周領域および前記第1半導体領域に接して設けられている。前記第3外周領域は、前記第1主面と前記第1外周領域との間に、前記第1外周領域に接して設けられている。前記第3外周領域は、前記第1外周領域よりも不純物濃度が高い。前記第1の第2導電型耐圧領域は、前記第2外周領域の底部の外側コーナー部を囲むことを特徴とする。
また、上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、次の特徴を有する。半導体基板は、炭化珪素からなり、全面にわたって平坦な第1主面を有する。活性領域および終端領域は、前記半導体基板に設けられている。前記終端領域は、前記活性領域の周囲を囲む。前記活性領域から前記終端領域にわたって前記半導体基板の内部に、第1導電型の第1半導体領域が設けられている。前記活性領域において前記第1主面と前記第1半導体領域との間に、第2導電型の第2半導体領域が設けられている。素子構造は、前記第1半導体領域と前記第2半導体領域とのpn接合を含む。前記素子構造には、前記pn接合を通過する電流が流れる。
前記素子構造と前記終端領域との間において前記第1主面と前記第1半導体領域との間に、第2導電型外周領域が設けられている。前記第2導電型外周領域は、前記素子構造の周囲を囲む。第1電極は、前記第1主面に設けられ、前記第2半導体領域および前記第2導電型外周領域に電気的に接続されている。第2電極は、前記半導体基板の第2主面に設けられ、前記第1半導体領域に電気的に接続されている。前記終端領域において前記第1半導体領域の内部に、前記第1主面から離れた深さ位置で、前記活性領域の周囲を囲む同心状に互いに離れて、複数の第2導電型耐圧領域が設けられている。耐圧構造は、複数の前記第2導電型耐圧領域で構成されている。前記耐圧構造の全体の第2導電型不純物濃度は内側から外側へ向って緩やかに減少している。
前記第2導電型外周領域の外側の端部に、深さ方向に前記第1主面から離れるほど段階的に内側に所定幅で凹んだ複数段の段差が形成され、当該段差に応じて法線方向に外側に延在して前記第1主面に近いほど外側で終端する複数の延在部を有する。前記第2導電型耐圧領域の底部は、前記第2導電型外周領域の底部よりも前記第1主面側に浅い深さ位置にある。前記第2導電型耐圧領域の上面は、複数の前記延在部のうちの最も前記第1主面側の第1延在部の底部と同じ深さ位置か、または前記第1延在部の底部よりも前記第1主面側に浅い深さ位置にある。複数の前記第2導電型耐圧領域のうちの最も内側の第1の第2導電型耐圧領域は、前記第1延在部の底部の外側コーナー部に接するか、または前記第1延在部の底部の外側コーナー部を囲む。
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記所定幅は、2μm以上であることを特徴とする。
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記第2導電型外周領域の、前記耐圧構造よりも前記第2主面側に深い部分の第2導電型不純物濃度は、1×1019/cm3以下であることを特徴とする。
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記素子構造は、第1導電型の第3半導体領域、トレンチ、ゲート電極および第2導電型高濃度領域を備える。前記第3半導体領域は、前記第1主面と前記第2半導体領域との間に選択的に設けられ、前記第1電極に電気的に接続されている。前記トレンチは、前記第3半導体領域および前記第2半導体領域を貫通して前記第1半導体領域に達する。前記ゲート電極は、前記トレンチの内部にゲート絶縁膜を介して設けられている。前記第2導電型高濃度領域は、前記第1半導体領域と前記第2半導体領域との間において、前記トレンチの底面よりも前記第2主面側に選択的に設けられている。
前記第2導電型高濃度領域は、前記第2半導体領域よりも不純物濃度が高い。前記第2導電型外周領域は、第1外周領域、第2外周領域および第3外周領域を有する。前記第1外周領域は、前記第2半導体領域の前記素子構造よりも外側に配置された部分である。前記第2外周領域は、前記第2導電型高濃度領域の前記素子構造よりも外側に配置された部分であり、前記第1外周領域と前記第1半導体領域との間に、前記第1外周領域および前記第1半導体領域に接して設けられている。前記第3外周領域は、前記第1主面と前記第1外周領域との間に、前記第1外周領域に接して設けられている。
前記第3外周領域は、前記第1外周領域よりも不純物濃度が高い。前記第2導電型外周領域の外側の端部の前記段差は、前記第1外周領域が前記第3外周領域よりも内側で終端し、前記第2外周領域が前記第1外周領域よりも内側で終端していることで形成されている。前記第2導電型外周領域の外側の端部の前記第1延在部は、前記第3外周領域のうち前記第1外周領域よりも外側に位置する部分である。前記第1の第2導電型耐圧領域は、前記第3外周領域の底部の外側コーナー部に接するか、または前記第3外周領域の底部の外側コーナー部を囲むことを特徴とする。
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記第1主面と前記耐圧構造との間に、前記第1半導体領域よりも不純物濃度の高い第1導電型の第4半導体領域が設けられていることを特徴とする。
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記第2導電型耐圧領域のキャリア濃度は、前記第2半導体領域のキャリア濃度以上で、前記第2導電型高濃度領域のキャリア濃度よりも低いことを特徴とする。
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記耐圧構造は、前記第1の第2導電型耐圧領域と、複数の第2の第2導電型耐圧領域と、第3の第2導電型耐圧領域と、複数の第4の第2導電型耐圧領域と、を有する。前記耐圧構造は、第1空間変調領域および第2空間変調領域を配置することで、全体の第2導電型不純物濃度を内側から外側へ向って緩やかに減少させた構造である。前記第2の第2導電型耐圧領域は、複数の前記第2導電型耐圧領域のうち、前記第1の第2導電型耐圧領域の外側に隣り合う領域である。前記第2の第2導電型耐圧領域は、前記第1の第2導電型耐圧領域と同じ不純物濃度を有する。
第3の第2導電型耐圧領域は、複数の前記第2導電型耐圧領域のうち、前記第1の第2導電型耐圧領域の外側に隣接し、互いに隣り合うすべての前記第2の第2導電型耐圧領域間に位置し、最も外側の前記第2導電型耐圧領域よりも外側まで延在する領域である。前記第3の第2導電型耐圧領域は、前記第1の第2導電型耐圧領域よりも不純物濃度が低い。前記第4の第2導電型耐圧領域は、複数の前記第2導電型耐圧領域のうちの前記第1の第2導電型耐圧領域、前記第2の第2導電型耐圧領域および前記第3の第2導電型耐圧領域を除く残りの領域であり、前記第3の第2導電型耐圧領域の外側に隣り合う。前記第4の第2導電型耐圧領域は、前記第3の第2導電型耐圧領域と同じ不純物濃度を有する。
前記第1空間変調領域は、前記第1の第2導電型耐圧領域の外側に、前記第1の第2導電型耐圧領域に隣接する。前記第1空間変調領域は、前記第1の第2導電型耐圧領域の不純物濃度と前記第3の第2導電型耐圧領域の不純物濃度との中間の不純物濃度と空間的に等価な不純物濃度分布を有する。前記第2空間変調領域は、前記第3の第2導電型耐圧領域の外側に、前記第3の第2導電型耐圧領域に隣接する。前記第2空間変調領域は、前記第3の第2導電型耐圧領域の不純物濃度と前記第1半導体領域の不純物濃度との中間の不純物濃度と空間的に等価な不純物濃度分布を有する。前記第1空間変調領域は、前記第2の第2導電型耐圧領域と前記第3の第2導電型耐圧領域の一部とを所定パターンで交互に繰り返し隣接して配置してなる。前記第2空間変調領域は、前記第4の第2導電型耐圧領域と前記第1半導体領域とを所定パターンで交互に繰り返し隣接して配置してなることを特徴とする。
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記第4半導体領域の表面領域に、前記第4半導体領域よりも不純物濃度の高い第1導電型の第5半導体領域が設けられていることを特徴とする。
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記第1主面と前記第1半導体領域との間において、前記第4半導体領域よりも外側に設けられた、前記第1半導体領域よりも不純物濃度の高い第1導電型の第6半導体領域をさらに備える。前記第5半導体領域の厚さは、前記第6半導体領域の厚さよりも薄いことを特徴とする。
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記第5半導体領域の厚さは、0.1μm以上であることを特徴とする。
上述した発明によれば、炭化珪素半導体装置のオフ時に、第1の第2導電型耐圧領域の底部に電界を集中させ、当該第1の第2導電型耐圧領域から外側へ向かって耐圧構造の全体に分散して緩和することができる。これによって、p型外周領域の底部の外側コーナー部でのアバランシェ降伏の発生を抑制することができるため、エッジ終端領域の耐圧低下を抑制することができ、エッジ終端領域の耐圧が活性領域の耐圧よりも低くなることを抑制することができる。これにより、活性領域の耐圧で炭化珪素半導体装置の全体の耐圧を決めることができる。
上述した発明によれば、活性領域の素子構造の形成方法を変えることなく、第2導電型耐圧領域を形成するためのイオン注入を所定のタイミングで行うことで、耐圧構造を簡易に形成することができる。また、活性領域の第2導電型領域の形成と異なるタイミングで、当該第2導電型領域と不純物濃度の異なる第2導電型耐圧領域を形成して耐圧構造を構成することができる。このとき、第2導電型耐圧領域を形成するためのイオン注入のマスクパターンやドーズ量を適宜設定することで、エッジ終端領域の所定耐圧を確保することができる。
本発明にかかる炭化珪素半導体装置によれば、簡易に形成可能でかつ所定耐圧を安定して確保可能な耐圧構造を備えた信頼性の高い炭化珪素半導体装置を提供することができるという効果を奏する。
実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置を半導体基板のおもて面側から見たレイアウトを示す平面図である。 図1の切断線A-A’における断面構造を示す断面図である。 実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その1)。 実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その2)。 実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その3)。 実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す断面図である。 実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その1)。 実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その2)。 実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その3)。 実施例1の耐圧特性をシミュレーションした結果を示す特性図である。 比較例の耐圧特性をシミュレーションした結果を示す特性図である。 比較例の耐圧構造を示す断面図である。 従来の炭化珪素半導体装置の構造を示す断面図である。 実施の形態3にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す断面図である。 実施例2の耐圧特性をシミュレーションした結果を示す特性図である。
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる炭化珪素半導体装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。本明細書および添付図面においては、nまたはpを冠記した層や領域では、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。また、nやpに付す+および-は、それぞれそれが付されていない層や領域よりも高不純物濃度および低不純物濃度であることを意味する。なお、以下の実施の形態の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
(実施の形態1)
実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の構造について説明する。図1は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置を半導体基板のおもて面側から見たレイアウトを示す平面図である。図2は、図1の切断線A-A’における断面構造を示す断面図である。図1,2に示す実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置10は、炭化珪素(SiC)からなる半導体基板(半導体チップ)40の活性領域1にトレンチゲート構造(素子構造)を備え、エッジ終端領域2に空間変調JTE構造30を備えた縦型MOSFETである。
活性領域1は、MOSFETのオン時に主電流(ドリフト電流)が流れる領域である。活性領域1は、略矩形状の平面形状を有し、半導体基板40の略中央(チップ中央)に配置される。活性領域1は、後述するp++型コンタクト延在部15aの外側(半導体基板40の端部(チップ端部)側)の端部から内側(半導体基板40の中央側)の部分である。活性領域1の中央部1aには、MOSFETの並列接続された同一のトレンチゲート構造の複数の単位セル(素子の機能単位)が隣接して配置されている。
エッジ終端領域2は、活性領域1とチップ端部との間の領域であり、活性領域1の周囲を略矩形状に囲む。耐圧とは、pn接合でアバランシェ降伏が起きたことでドレイン・ソース間電流が増加してもそれ以上ドレイン・ソース間電圧が増加しない限界の電圧である。エッジ終端領域には、耐圧構造として、空間変調JTE構造30が設けられている。空間変調JTE構造30は、活性領域1とエッジ終端領域2との境界付近の電界を緩和して耐圧を保持する機能を有する。空間変調JTE構造30の構成については後述する。
半導体基板40は、炭化珪素からなるn+型出発基板41のおもて面上にn-型ドリフト領域(第1半導体領域)12となるn型の炭化珪素層42をエピタキシャル成長させてなる。半導体基板40は、炭化珪素層42側の主面をおもて面(第1主面)とし、n+型出発基板41側の主面を裏面(第2主面)とする。半導体基板40のおもて面は全域にわたって略平坦面であり、活性領域1とエッジ終端領域2との間に段差は生じていない。略平坦とは、プロセスばらつきによる許容誤差を含む範囲で水平面であることを意味する。
+型出発基板41はn+型ドレイン領域11である。炭化珪素層42は、n-型ドリフト領域12となるn-型炭化珪素層42a,42bと、第1n型表面領域(第4半導体領域)34となるn型炭化珪素層42cと、を順に積層したn型のエピタキシャル層である。n-型ドリフト領域12は、n-型炭化珪素層42a,42bの、イオン注入による拡散領域が形成されずにエピタキシャル成長時の不純物濃度のまま残る部分である。n-型ドリフト領域12は、n+型出発基板41に接し、活性領域1からエッジ終端領域2にわたって設けられている。
トレンチゲート構造は、p型ベース領域(第2半導体領域)13、n+型ソース領域(第3半導体領域)14、p++型コンタクト領域15、トレンチ16、ゲート絶縁膜17およびゲート電極18で構成され、活性領域1の中央部1aにおいて半導体基板40のおもて面側に設けられている。p型ベース領域13、n+型ソース領域14およびp++型コンタクト領域15は、n型炭化珪素層42cの内部にイオン注入により形成された拡散領域である。p型ベース領域13は、活性領域1において半導体基板40のおもて面とn-型ドリフト領域12との間に設けられている。
+型ソース領域14およびp++型コンタクト領域15は、半導体基板40のおもて面とp型ベース領域13との間にそれぞれ選択的に設けられ、底部(下面:半導体基板40の裏面側端部)でp型ベース領域13に接し、上面(半導体基板40のおもて面側端部)で半導体基板40のおもて面に露出されている。活性領域1において半導体基板40のおもて面に露出とは、層間絶縁膜19のコンタクトホールにおいてソース電極20に接することである。n+型ソース領域14は、活性領域1の中央部1aにのみ設けられている。
最も外側の単位セルのp型ベース領域13およびp++型コンタクト領域15は、活性領域1の外周部1bへ延在して、活性領域1とエッジ終端領域2との境界で終端している。活性領域1の外周部1bにのみp++型コンタクト領域15(すなわちp++型コンタクト延在部15a)が設けられてもよい。この場合、活性領域1の中央部1aにおいては、p++型コンタクト領域15に代えて、p型ベース領域13が半導体基板40のおもて面まで達して、半導体基板40のおもて面に露出される。
活性領域1の中央部1aにおいてn-型ドリフト領域12とp型ベース領域13との間に、n型電流拡散領域(不図示)が設けられてもよい。n型電流拡散領域は、キャリアの広がり抵抗を低減させる、いわゆる電流拡散層(CSL:Current Spreading Layer)である。n型電流拡散領域は、n-型炭化珪素層42a,42bの内部にイオン注入により形成された拡散領域である。n型電流拡散領域は、トレンチ16の底面よりもn+型ドレイン領域11側(半導体基板40の裏面側)に深い位置に達する。
n型電流拡散領域は、上面でp型ベース領域13に接し、底部でn-型ドリフト領域12に接する。n型電流拡散領域を設けない場合は、n-型ドリフト領域12の上面がp型ベース領域13に達する。また、n型電流拡散領域(n型電流拡散領域を設けない場合はn-型ドリフト領域12)は、半導体基板40のおもて面に平行な方向にトレンチ16まで達して、ゲート絶縁膜17に接する。n型電流拡散領域は、空間変調JTE構造30に達しない程度に、活性領域1の外周部1bへ延在してもよい。
-型ドリフト領域12とp型ベース領域13との間において、トレンチ16の底面よりもn+型ドレイン領域11側に深い位置に、p+型領域(第2導電型高濃度領域)21,22がそれぞれ選択的に設けられている。p+型領域21,22は、n-型炭化珪素層42a,42bの内部にイオン注入により形成された拡散領域である。p+型領域21,22は、トレンチ16の底面のゲート絶縁膜17にかかる電界を緩和させる機能を有する。p+型領域21,22は、n型電流拡散領域およびn-型ドリフト領域12に接する。
+型領域21は、p型ベース領域13と離れて設けられ、深さ方向にトレンチ16の底面に対向する。p+型領域21は、トレンチ16の底面でゲート絶縁膜17に接してもよい。p+型領域22は、互いに隣り合うトレンチ16間に、p+型領域21およびトレンチ16と離れて設けられ、かつ上面でp型ベース領域13に接する。最も外側の単位セルのp+型領域22は、活性領域1の外周部1bへ延在して、活性領域1とエッジ終端領域2との境界で終端している。
トレンチ16は、深さ方向にn+型ソース領域14およびp型ベース領域13を貫通してn-型ドリフト領域12に(n型電流拡散領域を設けた場合はn型電流拡散領域)に達する。トレンチ16は、例えば、半導体基板40のおもて面に平行な方向にストライプ状に延在して、活性領域1の外周部1bに達する。互いに隣り合うトレンチ16間において、p型ベース領域13、n+型ソース領域14、p++型コンタクト領域15およびp+型領域22は、トレンチ16の長手方向に平行に直線状に延在している。
互いに隣り合うトレンチ16間において、p++型コンタクト領域15は、トレンチ16の長手方向に点在していてもよい。p+型領域21は、トレンチ16の底面に対向する位置において、トレンチ16の長手方向に平行に直線状に延在している。トレンチ16の内部には、ゲート絶縁膜17を介してゲート電極18が設けられている。すべてのゲート電極18は、ゲートポリシリコン配線層26およびゲート金属配線層(不図示)を介してゲートパッド(電極パッド:不図示)に電気的に接続されている。
活性領域1の外周部1bは、活性領域1の中央部1aの周囲を略矩形状に囲む。トレンチ16の長手方向において、活性領域1の外周部1bとは、n+型ソース領域14の最も外側の端部から、活性領域1とエッジ終端領域2との境界までの部分である。トレンチ16の短手方向において、活性領域1の外周部1bとは、最も外側のトレンチ16の外側の側壁から、活性領域1とエッジ終端領域2との境界までの部分である。
活性領域1の外周部1bには、半導体基板40のおもて面とn-型ドリフト領域12との間の全域に、半導体基板40のおもて面側から順に深さ方向に隣接して、p++型コンタクト延在部(第3外周領域)15a、p型ベース延在部(第1外周領域)13aおよびp+型延在部(第2外周領域)22aが設けられている。p++型コンタクト延在部15a、p型ベース延在部13aおよびp+型延在部22aは、炭化珪素層42の内部にイオン注入により形成された拡散領域である。
++型コンタクト延在部15a、p型ベース延在部13aおよびp+型延在部22aは、それぞれ、活性領域1の中央部1aの最も外側の単位セルのp++型コンタクト領域15、p型ベース領域13およびp+型領域22の延在部であり、活性領域1の中央部1aの周囲を略矩形状に囲む。p++型コンタクト延在部15a、p型ベース延在部13aおよびp+型延在部22aともに外側の端部は内側から外側へ向う法線方向に略同じ位置(具体的には活性領域1とエッジ終端領域2との境界)で終端している。
p型ベース延在部13aは、半導体基板40のおもて面とn-型ドリフト領域12との間に、n-型ドリフト領域12に接して設けられている。p++型コンタクト延在部15aは、半導体基板40のおもて面とp型ベース延在部13aとの間に、p型ベース延在部13aに接して設けられている。p++型コンタクト延在部15aは、半導体基板40のおもて面に露出され、半導体基板40のおもて面上の絶縁層(フィールド酸化膜25および層間絶縁膜19をこの順に積層した絶縁層)に接する。
+型延在部22aは、p型ベース延在部13aとn-型ドリフト領域12との間に、これらの領域に接して設けられている。p+型延在部22aには、すべてのp+型領域21,22の長手方向の端部が連結されている。これらp++型コンタクト延在部15a、p型ベース延在部13aおよびp+型延在部22aで、活性領域1の外周部1bにおいて半導体基板40のおもて面とn-型ドリフト領域12との間の全域に1つのp型外周領域(第2導電型外周領域)24が構成される。
上述したようにp型外周領域24を構成するp++型コンタクト延在部15a、p型ベース延在部13aおよびp+型延在部22aともに外側の端部が法線方向に略同じ位置で終端し、半導体基板40のおもて面に垂直な同一面上にある。すなわち、p型外周領域24の外側の端部は、深さ方向の全域にわたって、半導体基板40のおもて面に対して略垂直面である。p型外周領域24は、活性領域1の外周部1bにおける半導体基板40のおもて面の面内での電界を均一にする機能を有する。
また、p型外周領域24は、MOSFET(炭化珪素半導体装置10)のオフ時にエッジ終端領域2のn-型ドリフト領域12で発生して活性領域1へ向かって流れるホール(正孔)電流をソース電極20へ引き抜くための領域であり、ソース電極20に電気的に接続されている。MOSFETのオフ時にエッジ終端領域2のn-型ドリフト領域12で発生したホール電流がp型外周領域24を介してソース電極20へ引き抜かれることで、エッジ終端領域2でのアバランシェ降伏時の正孔電流集中が抑制される。
層間絶縁膜19は、半導体基板40のおもて面の全面に設けられ、ゲート電極18およびゲートポリシリコン配線層26を覆う。活性領域1の外周部1bおよびエッジ終端領域2において半導体基板40のおもて面と層間絶縁膜19との間に、フィールド酸化膜25が設けられている。ゲートポリシリコン配線層26は、活性領域1の外周部1bにおいてフィールド酸化膜25と層間絶縁膜19との間に配置されている。ゲートポリシリコン配線層26は、活性領域1の中央部1aの周囲を囲む。
ゲートポリシリコン配線層26の上には、層間絶縁膜19のコンタクトホールを介してゲート金属配線層(不図示)が設けられている。ゲートポリシリコン配線層26およびゲート金属配線層は、ゲートランナーを構成する。ゲートランナー直下は同一構造であることが好ましく、ゲートランナー直下において半導体基板40のおもて面とn-型ドリフト領域12との間には、p型外周領域24のみが配置されている。ゲートランナーは、エッジ終端領域2の空間変調JTE構造30よりも内側に配置されている。
ソース電極(第1電極)20は、層間絶縁膜19のコンタクトホールを埋め込むように、層間絶縁膜19上に設けられている。ソース電極20は、活性領域1の中央部1aにおいて層間絶縁膜19に設けられたコンタクトホールを介してn+型ソース領域14およびp++型コンタクト領域15(p++型コンタクト領域15を設けない場合はp型ベース領域13)にオーミック接触し、n+型ソース領域14、p++型コンタクト領域15、p型ベース領域13およびp+型領域21,22に電気的に接続されている。
ソース電極20は、活性領域1の外周部1bにおいて層間絶縁膜19に設けられたコンタクトホールを介してp++型コンタクト延在部15aにオーミック接触し、p++型コンタクト延在部15a、p型ベース延在部13aおよびp+型延在部22aに電気的に接続されている。ドレイン電極(第2電極)23は、半導体基板40の裏面(n+型出発基板41の裏面)全面に設けられて、n+型ドレイン領域11(n+型出発基板41)にオーミック接触し、n+型ドレイン領域11に電気的に接続されている。
エッジ終端領域2には、半導体基板40のおもて面から離れた深さ位置において、半導体基板40のおもて面とn-型ドリフト領域12との間に、空間変調JTE構造30を構成する複数のp型領域(第2導電型耐圧領域)31および複数のp-型領域(第2導電型耐圧領域)32がそれぞれ選択的に設けられている。半導体基板40のおもて面と空間変調JTE構造30との間は第1n型表面領域34である。半導体基板40のおもて面とn-型ドリフト領域12との間において、第1n型表面領域34よりも外側に、n+型チャネルストッパ領域(第6半導体領域)33が選択的に設けられている。
p型領域31およびp-型領域32は、n-型炭化珪素層42aの内部に(もしくは深さ方向にn-型炭化珪素層42a,42bに跨ってn-型炭化珪素層42aの内部に)イオン注入により形成された拡散領域である。図2には、p型領域31およびp-型領域32にそれぞれ異なるハッチングを付している。複数のp型領域31は、活性領域1の周囲を囲む同心状に互いに離れて配置されている。外側に配置されたp型領域31ほど、幅(法線方向の幅)が狭く、かつ内側に隣り合うp型領域31との間隔が広い。
最も内側のp型領域(第1の第2導電型耐圧領域)31は、p+型延在部22aの外側に、p+型延在部22aに隣接して配置される。最も内側のp型領域31は、p型外周領域24の底部の外側コーナー部24b(すなわちp+型延在部22aの底部の外側コーナー部22b)を囲む。最も内側のp型領域31の内側の端部は、ゲートポリシリコン配線層26よりも外側で終端していることがよい。最も内側のp型領域31の内側の端部は、p+型延在部22aに重なるように、p+型延在部22aの外側の端部よりも内側へ延在し、p+型延在部22aの底部の外側部分を囲んでもよい。
複数のp-型領域32は、活性領域1の周囲を囲む同心状に互いに離れて配置されている。外側に配置されたp-型領域32ほど、幅(法線方向の幅)が狭く、かつ内側に互いに隣り合うp-型領域32との間隔が広い。最も外側のp-型領域32の幅は、内側に隣り合うp-型領域32の幅よりも広くてもよい。最も内側のp-型領域32は、互いに隣り合うすべてのp型領域31間に配置され、法線方向に両側のp型領域31に隣接して、すべてのp型領域31の底部のコーナー部を囲む。
最も内側のp-型領域32の内側の端部は、最も内側のp型領域31の内側の端部と同じ位置か、または最も内側のp型領域31の内側の端部よりも外側で終端している。最も内側のp-型領域32は、最も外側のp型領域31よりも外側へ延在している。最も内側のp-型領域32以外のp-型領域32は、p型領域31よりも外側に配置される。互いに隣り合うすべてのp-型領域32間にn-型ドリフト領域12が延在し、法線方向に両側のp-型領域32に隣接する。
すべてのp型領域31および最も内側のp-型領域32は、p型外周領域24を介してソース電極20の電位に固定される。最も内側のp型領域31(JTE領域30a)と、最も内側のp-型領域32のうちの最も外側のp型領域31よりも外側部分(JTE領域)30cと、でダブルゾーンJTE構造が構成される。JTE領域30a以外のp型領域(第2の第2導電型耐圧領域)31と、最も内側のp-型領域(第3の第2導電型耐圧領域)32と、でJTE領域30a,30c間の空間変調領域(第1空間変調領域)30bが構成される。最も内側のp-型領域32以外のp-型領域(第4の第2導電型耐圧領域)32と、n-型ドリフト領域12と、でJTE領域30cの外側に隣接する空間変調領域(第2空間変調領域)30dが構成される。
空間変調領域30bは、自身の両側それぞれに隣接する領域(JTE領域30a,30c)と略同じ不純物濃度の2つの小領域(p型領域31およびp-型領域32)を所定パターンで交互に繰り返し隣接して配置してなる。空間変調領域30dは、自身の両側それぞれに隣接する領域(JTE領域30cおよびn-型ドリフト領域12)と略同じ不純物濃度の2つの小領域(p-型領域32およびn-型ドリフト領域12)を所定パターンで交互に繰り返し隣接して配置してなる。空間変調領域30b,30d全体の空間的な不純物濃度分布は2つの小領域の幅および不純物濃度比で決まる。
空間変調JTE構造30は、互いに隣り合うJTE領域30a,30c間に、これら2つの領域の不純物濃度の中間の不純物濃度と空間的に等価な不純物濃度分布を有する空間変調領域30bを配置し、JTE領域30cとその外側のn-型ドリフト領域12との間に、これら2つの領域の不純物濃度の中間の不純物濃度と空間的に等価な不純物濃度分布を有する空間変調領域30dを配置して、全体のp型不純物濃度を内側から外側へ向って緩やかに減少させた構造である。空間変調JTE構造30は、n-型炭化珪素層42a(もしくはn-型炭化珪素層42a,42b)の内部に埋め込まれるように配置される。
具体的には、p型領域31およびp-型領域32の各上面は、p+型延在部22aの上面よりも半導体基板40のおもて面から深い位置(n+型ドレイン領域11側に深い位置)にある。p型領域31の上面とp-型領域32の上面とは略同じ深さ位置である。略同じ深さ位置とは、プロセスばらつきによる許容誤差を含む範囲で半導体基板40のおもて面に平行な同一面上に位置することを意味する。例えば、p型領域31およびp-型領域32の各上面の深さ位置は、p+型延在部22aの下部(n+型ドレイン領域11側の部分)52(後述する図3~5参照)の上面の深さ位置と略同じであってもよい。
p型領域31およびp-型領域32の各上面とp+型延在部22aの下部52の上面とを略同じ深さ位置にすると、n-型炭化珪素層42bに形成されるp型領域は、p+型領域22の上部(n+型ソース領域14側の部分)およびp+型延在部22aの上部53(図3~5参照)のみであり、これらの領域と同じ不純物濃度の他のp+型領域は形成されない。このため、従来構造(図13参照)のp+型領域122の上部およびp+型延在部122aの上部の形成と同じイオン注入用マスクパターンを用いて、実施の形態1のp+型領域22の上部およびp+型延在部22aの上部53を形成することができる。
また、p+型領域22の上部およびp+型延在部22aの上部53を形成するためのイオン注入用マスクパターンは、p+型領域22の下部およびp+型延在部22aの下部52を形成するためのイオン注入用マスクパターンと比べて単純パターンである。このため、p+型領域22の上部およびp+型延在部22aの上部53は、他の領域を形成するためのイオン注入用マスクパターンを適宜用いてセルフアライン(自己整合)に形成可能である。p+型領域22の上部およびp+型延在部22aの上部53をセルフアラインに形成することで、マスクパターン枚数を減らすことができる。
+型領域22の上部をセルフアラインに形成すると、p+型延在部22aの外側の端部は、法線方向にp++型コンタクト延在部15aおよびp型ベース延在部13aの外側の端部と同じ位置となる。このため、これらの領域のうち、半導体基板40のおもて面から最も深い位置に配置されたp+型延在部22aの底部の外側コーナー部22bが電界集中箇所となる。本実施の形態1においては、後述するように当該部分22bを囲むように最も内側のp型領域31を配置することができる。
p型領域31およびp-型領域32の各底部は、p型外周領域24の底部よりも半導体基板40のおもて面から深い位置にある。p型外周領域24の底部の外側コーナー部24b(すなわちp+型延在部22aの底部の外側コーナー部22b)は、最も内側のp型領域31に囲まれ、エッジ終端領域2のn-型ドリフト領域12に接しない。このため、MOSFETのオフ時にp型外周領域24の底部の外側コーナー部24bに局所的に電界が集中することを抑制することができる。p型領域31の底部とp-型領域32の底部とは略同じ深さ位置である。
p型領域31のキャリア濃度(活性化した不純物の濃度)は、p型ベース延在部13a(すなわちp型ベース領域13)のキャリア濃度よりも高く、p+型延在部22a(すなわちp+型領域21,22)のキャリア濃度よりも低い。具体的には、炭化珪素を半導体材料として用いた一般的なMOSFETにおいて、p++型コンタクト延在部15a(すなわちp++型コンタクト領域15)のキャリア濃度は、例えば1×1020/cm3程度である。p型ベース領域13のキャリア濃度は、例えば1×1017/cm3程度である。
+型領域21,22のキャリア濃度は、例えば1×1019/cm3以下程度であり、概ね1018/cm3台程度である。p型領域31のキャリア濃度は、例えば、1017/cm3台前半から後半程度であり、より具体的には1.4×1017/cm3以上1.0×1018/cm3未満程度である。p-型領域32のキャリア濃度は、p型ベース領域13のキャリア濃度と同程度である。p型領域31のキャリア濃度を適宜調整することで、エッジ終端領域2の耐圧を活性領域1の耐圧以上の耐圧で安定して確保することができる。
エッジ終端領域2の耐圧が安定しているとは、炭化珪素半導体装置10の長時間動作によってエッジ終端領域2における半導体基板40のおもて面上の絶縁層(フィールド酸化膜25および層間絶縁膜19)が正(プラス)または負(マイナス)に帯電した状態になったとしても、エッジ終端領域2の耐圧が変動せず、当該絶縁層にプラス電荷およびマイナス電荷のいずれも蓄積していない通常時(電荷ゼロ)のエッジ終端領域2の耐圧と同程度にエッジ終端領域2の耐圧が維持されることである。
一般的に炭化珪素層にイオン注入された不純物の活性化率(=[活性化した不純物の濃度]/[イオン注入した不純物の濃度]×100)は70%以上80%以下程度であるため、各領域にイオン注入された不純物の濃度は、自身のキャリア濃度よりも高い。具体的には、例えば不純物の活性化率が70%である場合、p型領域31のキャリア濃度を1.4×1017/cm3以上とするには、イオン注入によるp型領域31の狙いの不純物濃度を2.0×1017/cm3以上程度(概ねキャリア濃度の1.4倍程度)とすればよい。
+型チャネルストッパ領域33は、n型炭化珪素層42cの表面領域にイオン注入により形成された拡散領域である。n+型チャネルストッパ領域33は、空間変調JTE構造30よりも外側に、空間変調JTE構造30と離れて設けられている。n+型チャネルストッパ領域33は、半導体基板40のおもて面に露出され、エッジ終端領域2における半導体基板40のおもて面上の絶縁層に接する。n+型チャネルストッパ領域33は、チップ端部に露出される。
+型チャネルストッパ領域33とp型外周領域24との間は第1n型表面領域34である。n+型チャネルストッパ領域33の底部は、n-型ドリフト領域12に接していてもよい。n+型チャネルストッパ領域33は、フローティング(浮遊)電位を有する。エッジ終端領域2における半導体基板40のおもて面に、フィールドプレート(FP:Field Plate)やチャネルストッパ電極は設けられていない。n+型チャネルストッパ領域33に代えて、p+型チャネルストッパ領域が設けられてもよい。
第1n型表面領域34は、n型炭化珪素層42cの、n+型チャネルストッパ領域33とp型外周領域24との間の部分をエピタキシャル成長時の不純物濃度のまま残した部分である。第1n型表面領域34は、半導体基板40のおもて面に露出され、半導体基板40のおもて面上の絶縁層に接する。第1n型表面領域34は、深さ方向に空間変調JTE構造30の全域に対向する。第1n型表面領域34と空間変調JTE構造30との間は、炭化珪素層42をエピタキシャル成長時の不純物濃度のまま残したn-型ドリフト領域12である。
第1n型表面領域34は、n型炭化珪素層42cに代えてエピタキシャル成長させたn-型ドリフト領域12となるn-型炭化珪素層の表面領域にイオン注入により形成された拡散領域であってもよい。この場合、第1n型表面領域34のイオン注入深さ(厚さ)は、p++型コンタクト延在部15aのイオン注入深さよりも浅くてもよい。第1n型表面領域34の厚さt1は、例えば0.1μm以上0.2μm以下程度の範囲内であることがよく、可能な限り薄いことがよい。
第1n型表面領域34の不純物濃度は、n-型ドリフト領域12の不純物濃度よりも高く、例えば、n型電流拡散領域の不純物濃度や空間変調JTE構造30のp型領域31またはp-型領域32の不純物濃度と略同じであってもよい。略同じ不純物濃度とは、プロセスばらつきによる許容誤差を含む範囲で同じ不純物濃度であることを意味する。第1n型表面領域34の不純物濃度をn-型ドリフト領域12の不純物濃度よりも高くすることによって、エッジ終端領域の耐圧を安定化させることができる。
空間変調JTE構造30が半導体基板40のおもて面から離れて配置されることで、エッジ終端領域2における半導体基板40のおもて面の表(ひょう)面の電界が緩和され、半導体基板40のおもて面上の高電界に対する耐性の低い例えばポリイミドを材料とする表(ひょう)面保護膜等の各部の信頼性を向上させることができる。半導体基板40のおもて面と空間変調JTE構造30との間のn型領域の厚さt1を薄くするほど、エッジ終端領域2の耐圧を高くすることができる。
実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置10の動作について説明する。ソース電極20に対して正の電圧(順方向電圧)がドレイン電極23に印加された状態で、ゲート電極18にゲート閾値電圧以上の電圧が印加されると、p型ベース領域13のトレンチ16に沿った部分にチャネル(n型の反転層)が形成される。それによって、n+型ドレイン領域11からn-型ドリフト領域12およびチャネルを通ってn+型ソース領域14へ向かう電流が流れ、MOSFET(炭化珪素半導体装置10)がオンする。
一方、ソース・ドレイン間に順方向電圧が印加された状態で、ゲート電極18にゲート閾値電圧未満の電圧が印加されると、p型ベース領域13、p+型領域21,22およびp+型延在部22aとn-型ドリフト領域12とのpn接合(活性領域1の主接合)が逆バイアスされ、MOSFETはオフ状態を維持する。このとき、当該pn接合からn-型ドリフト領域12内に空乏層が広がることで、トレンチ16の底面のゲート絶縁膜17にかかる電界が緩和される。
また、MOSFETのオフ時、空乏層がエッジ終端領域2のn-型ドリフト領域12内を外側(チップ端部側)へ向かって延びた分だけ、炭化珪素の絶縁破壊電界強度および空乏層幅(法線方向の幅)に基づく所定耐圧が確保される。また、空間変調JTE構造30のp型領域31のおよびp-型領域32の各底部がp型外周領域24の底部よりも半導体基板40のおもて面から深い位置にあることで、MOSFETのオフ時に空間変調JTE構造30の最も内側のp型領域31の底部に電界を集中させることができる。
最も内側のp型領域31に集中した電界は、外側へ向かって空間変調JTE構造30の全体に分散されて緩和される。したがって、MOSFETのオフ時に活性領域1の主接合の最外周端(以下、主接合端とする)に局所的に電界が集中することを抑制することができる。活性領域1の主接合端とは、p型外周領域24の底部の外側コーナー部24bである。これによって、活性領域1の主接合端でのアバランシェ降伏耐量が向上するため、エッジ終端領域2の耐圧低下を抑制することができる。
また、半導体基板40のおもて面から離れた深さ位置に空間変調JTE構造30が配置されていることで、MOSFETのオフ時に、半導体基板40のおもて面の表(ひょう)面の電界が緩和される。また、空間変調JTE構造30のp型領域31の不純物濃度を適宜設定することで、炭化珪素半導体装置10の長時間動作によってエッジ終端領域2における半導体基板40のおもて面上の絶縁層に電荷が蓄積されたとしても、当該電荷の悪影響を受けにくくすることができる。
次に、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置10の製造方法について説明する。図3~5は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。図3~5には、半導体ウエハ50の複数のチップ領域50aのうちの1つのチップ領域50aを示す。図3~5には、図2の活性領域1の外周部1bおよびエッジ終端領域2のみを示す。活性領域1の中央部1aについては図2を参照する。半導体ウエハ50の複数のチップ領域50aには、同一の素子構造の炭化珪素半導体装置10が作製される。
チップ領域50aは、半導体ウエハ50をダイシングライン(切断線)50bに沿ってダイシング(切断)した後に半導体チップ(半導体基板40)となる略矩形状の平面形状の領域であり、半導体ウエハ50の中央部に例えばマトリクス状に複数配置されている。各チップ領域50aの周囲は、半導体ウエハ50のおもて面に形成された溝状のダイシングライン50bに囲まれている。ダイシングライン50bは、各チップ領域50aの周囲をそれぞれ囲む格子状に形成されている。
まず、図3に示すように、n+型出発基板41となるn+型出発ウエハ51のおもて面に、n-型ドリフト領域12となるn-型炭化珪素層42aをエピタキシャル成長させる。次に、フォトリソグラフィおよびp型不純物のイオン注入により、各チップ領域50aにおいてn-型炭化珪素層42aの表面領域に、活性領域1の中央部1aのp+型領域21と、活性領域1の中央部1aのp+型領域22の下部と、活性領域1の外周部1bのp+型延在部22aの下部52と、を同時にそれぞれ選択的に形成する。
フォトリソグラフィおよびp型不純物のイオン注入により、各チップ領域50aのエッジ終端領域2においてn-型炭化珪素層42aの表面領域に、空間変調JTE構造30の複数のp型領域31を選択的に形成する。フォトリソグラフィおよびp型不純物のイオン注入により、各チップ領域50aのエッジ終端領域2においてn-型炭化珪素層42aの表面領域に、空間変調JTE構造30の複数のp-型領域32を選択的に形成する。p型領域31およびp-型領域32は、p+型延在部22aの下部52よりも深く形成する。
p型領域31およびp-型領域32は、活性領域1におけるn-型炭化珪素層42a内のイオン注入による拡散領域(p+型領域21、p+型領域22の下部およびp+型延在部22aの下部52)の形成と異なるタイミングで形成する。p型領域31とp-型領域32とは異なるタイミングで形成する。活性領域1におけるn-型炭化珪素層42a内の拡散領域の形成と、p型領域31の形成と、p-型領域32の形成と、を行う順序は適宜変更可能である。
次に、図4に示すように、n-型炭化珪素層42a上に、n-型ドリフト領域12となるn-型炭化珪素層42bをエピタキシャル成長させる。次に、フォトリソグラフィおよびp型不純物のイオン注入により、各チップ領域50aにおいてn-型炭化珪素層42bに、p+型領域22の上部と、p+型延在部22aの上部53と、を同時にそれぞれ選択的に形成する。このとき、深さ方向にp+型領域22の上部と下部とを連結させる。深さ方向にp+型延在部22aの上部53と下部52とを連結させる。
エッジ終端領域2におけるn-型炭化珪素層42bにはイオン注入を行わない(何も形成しない)。n-型炭化珪素層42a,42bのイオン注入されずにエピタキシャル成長時の不純物濃度のまま残る部分がn-型ドリフト領域12となる。エッジ終端領域2にn-型ドリフト領域12として残るn-型炭化珪素層42bですべてのp型領域31およびすべてのp-型領域32が覆われる。p+型領域22の上部およびp+型延在部22aの上部53は、他の領域を形成するためのイオン注入用マスクを用いてセルフアラインに形成してもよい。
次に、図5に示すように、n-型炭化珪素層42b上に、第1n型表面領域34となるn型炭化珪素層42cをエピタキシャル成長させる。ここまでの工程で、n+型出発ウエハ51上にn型の炭化珪素層42(42a~42c)を積層した所定厚さの半導体ウエハ50が完成する。n型電流拡散領域(不図示)を形成する場合、n-型炭化珪素層42a,42bをエピタキシャル成長させるごとに、活性領域1の全域にわたって、n-型炭化珪素層42a,42bにそれぞれn型電流拡散領域の下部および上部を形成すればよい。
次に、フォトリソグラフィおよびp型不純物のイオン注入により、各チップ領域50aの活性領域1においてn型炭化珪素層42cに、p型ベース領域13およびp型ベース延在部13aを同時に形成する。p型ベース領域13およびp型ベース延在部13aは、それぞれ深さ方向にp+型領域22およびp+型延在部22aに連結させる。フォトリソグラフィおよびn型不純物のイオン注入により、各チップ領域50aの活性領域1においてn型炭化珪素層42cの表面領域に、n+型ソース領域14を選択的に形成する。
フォトリソグラフィおよびp型不純物のイオン注入により、各チップ領域50aの活性領域1においてn型炭化珪素層42cの表面領域に、p++型コンタクト領域15およびp++型コンタクト延在部15aを同時にそれぞれ選択的に形成する。これによって、各チップ領域50aの活性領域1の外周部1bにおいて半導体ウエハ50のおもて面とn-型ドリフト領域12との間の全域に、p++型コンタクト延在部15a、p型ベース延在部13aおよびp+型延在部22aによるp型外周領域24が形成される。
フォトリソグラフィおよびn型不純物のイオン注入により、各チップ領域50aのエッジ終端領域2においてn型炭化珪素層42cの表面領域に、互いに隣り合うチップ領域50aの端部間に跨ってn+型チャネルストッパ領域33を選択的に形成する。n+型チャネルストッパ領域33は、n+型ソース領域14と同時に形成してもよい。n型炭化珪素層42cのイオン注入されずにエピタキシャル成長時の不純物濃度のまま残る部分が第1n型表面領域34となる。
n型炭化珪素層42cに代えて、n-型ドリフト領域12となるn-型炭化珪素層をエピタキシャル成長させて、当該n-型炭化珪素層へのn型不純物のイオン注入により第1n型表面領域34を形成してもよい。次に、炭化珪素層42にイオン注入した不純物を活性化させるための熱処理を行う。この不純物活性化のための熱処理は、炭化珪素層42a~42cに不純物をイオン注入するごとに行ってもよい。
次に、一般的な方法により、各チップ領域50aの活性領域1の中央部1aに、トレンチ16、ゲート絶縁膜17およびゲート電極18を形成する。一般的な方法により、各チップ領域50aの活性領域1の外周部1bに、フィールド酸化膜25およびゲートポリシリコン配線層26を形成する。ゲート電極18とゲートポリシリコン配線層26とを同時に形成してもよい。次に、半導体ウエハ50のおもて面の全面に層間絶縁膜19を形成する。
次に、一般的な方法により、ソース電極20、ゲートパッド、ゲート金属配線層(不図示)、パッシベーション膜(表面保護膜:不図示)およびドレイン電極23を形成する。次に、パッシベーション膜の、ダイシングライン50b上の部分を除去する。その後、半導体ウエハ50をダイシングライン50bに沿ってダイシングしてチップ領域50aを個々の半導体チップ(半導体基板40)に個片化することで、図1,2の炭化珪素半導体装置10が完成する。
以上、説明したように、実施の形態1によれば、エッジ終端領域に、耐圧構造として空間変調JTE構造が設けられている。空間変調JTE構造は、上面を半導体基板のおもて面から離れた深さ位置とし、n-型ドリフト領域を構成するn-型炭化珪素層の内部に埋め込むように配置される。これによって、半導体基板のおもて面の表面の電界が緩和され、半導体基板のおもて面上の高電界に対する耐性の低い各部にかかる電界が抑制されるため、信頼性を向上させることができる。また、炭化珪素半導体装置の長時間動作によって半導体基板のおもて面上の絶縁層に蓄積される電荷による耐圧変動が抑制される。
また、空間変調JTE構造の底部は、活性領域の外周部のp型外周領域の底部よりも半導体基板のおもて面から深い位置にある。このため、活性領域の主接合端付近で最もn+型ドレイン領域側に深い位置に、空間変調JTE構造の最も内側のp型領域が配置される。空間変調JTE構造の最も外側のp型領域は、p型外周領域の底部の外側コーナー部(活性領域の主接合端)を囲む。これによって、炭化珪素半導体装置のオフ時に、空間変調JTE構造の最も内側のp型領域の底部に電界を集中させることができ、当該p型領域の底部に集中した電界は外側へ向かって空間変調JTE構造の全体に分散され緩和される。
したがって、活性領域の外周部のp型外周領域の外側の端部が深さ方向の全域にわたって半導体基板のおもて面に対して略垂直面であっても、空間変調JTE構造によって、p型外周領域の底部の外側コーナー部(活性領域の主接合端)でのアバランシェ降伏の発生を抑制することができる。これにより、エッジ終端領域の耐圧低下を抑制することができ、エッジ終端領域の耐圧が活性領域の耐圧よりも低くなることを抑制することができる。このため、活性領域の耐圧で炭化珪素半導体装置の全体の耐圧を決めることができ、信頼性を向上させることができる。
また、実施の形態1によれば、n-型ドリフト領域となるn-型炭化珪素層を多段にエピタキシャル成長させるごとに適宜イオン注入を行って活性領域の素子構造を形成する。このとき、エッジ終端領域において、空間変調JTE構造と同じ深さ位置となるn-型炭化珪素層に適宜イオン注入を行うことで、活性領域の素子構造の形成方法を変えることなく、空間変調JTE構造を簡易に形成することができる。また、活性領域のp型領域の形成と異なるタイミングで、当該p型領域と不純物濃度の異なるp型領域を形成して空間変調JTE構造を構成することができる。
また、空間変調JTE構造を構成するp型領域の法線方向の位置、法線方向の幅、厚さおよび深さ位置を適宜調整することで、エッジ終端領域の所定耐圧を確保可能である。空間変調JTE構造を構成するp型領域において、法線方向の位置および法線方向の幅はイオン注入用マスクパターンを適宜設定することで容易に調整可能であり、厚さおよび深さ位置は空間変調JTE構造と同じ深さ位置となるn-型炭化珪素層に適宜イオン注入を行うことで容易に調整可能である。したがって、簡易に形成可能でかつ所定耐圧を安定して確保可能な耐圧構造を備えた信頼性の高い炭化珪素半導体装置を提供することができる。
(実施の形態2)
次に、実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置の構造について説明する。図6は、実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す断面図である。実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置60を半導体基板40のおもて面側から見たレイアウトは図1と同様である。図6には、図1の切断線A-A’における断面構造を示す。実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置60が実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置10(図2参照)と異なる点は、次の2点である。
1つ目の相違点は、活性領域1の外周部1bのp型外周領域65の外側の端部に、深さ方向に半導体基板40のおもて面から離れるほど段階的に内側に所定幅w1,w2,w3で凹んだ複数段の段差が形成されている点である。p型外周領域65は、半導体基板40のおもて面とn-型ドリフト領域12との間で深さ方向に隣接するp++型コンタクト延在部15a、p型ベース延在部64およびp+型延在部61で構成される。p++型コンタクト延在部15aの外側の端部は、活性領域1とエッジ終端領域2との境界に位置する。
p型ベース延在部64の外側の端部は、p++型コンタクト延在部15aの外側の端部よりも内側で終端している。p+型延在部61の上部63の外側の端部は、p型ベース延在部64の外側の端部よりも内側で終端している。p+型延在部61の下部62の外側の端部は、p+型延在部61の上部63の外側の端部よりも内側で終端している。p型ベース延在部64およびp+型延在部61の、外側の端部の位置以外の構成は、それぞれ実施の形態1のp型ベース延在部13aおよびp+型延在部22aと同様である。
p型ベース延在部64の外側の端部の段差の幅w1,w2,w3は例えば2μm以上程度であることがよい。p型ベース延在部64の外側の端部の段差の幅w1,w2,w3とは、それぞれ、p++型コンタクト延在部15aの外側の端部からp型ベース延在部64の外側の端部までの法線方向の幅、p型ベース延在部64の外側の端部からp+型延在部61の上部63の外側の端部までの法線方向の幅、および、p+型延在部61の上部63の外側の端部からp+型延在部61の下部62の外側の端部までの法線方向の幅である。
2つ目の相違点は、空間変調JTE構造70を構成する複数のp型領域71および複数のp-型領域72の各底部の深さ位置がp型外周領域65の底部(すなわちp+型延在部61の底部)の深さ位置よりも浅い点である。空間変調JTE構造70のp型領域71およびp-型領域72を半導体基板40のおもて面側から見たレイアウト(すなわち法線方向の位置や法線方向の幅)は、それぞれ実施の形態1の空間変調JTE構造30のp型領域31およびp-型領域32と同様である。
空間変調JTE構造70は、実施の形態1と同様に内側から外側へ向かって法線方向にJTE領域70a、空間変調領域70b、JTE領域70cおよび空間変調領域70dを順に配置して、全体のp型不純物濃度を内側から外側へ向って緩やかに減少させた構造である。空間変調JTE構造70のJTE領域70a,70cおよび空間変調領域70b,70dの深さ位置以外の構成は、それぞれ実施の形態1の空間変調JTE構造30のJTE領域30a,30cおよび空間変調領域30b,30dと同様である。
空間変調JTE構造70は、n型炭化珪素層42cの内部か、もしくはn型炭化珪素層42cおよびn-型炭化珪素層42bに跨って、炭化珪素層42の内部に埋め込まれるように配置される。空間変調JTE構造70のp型領域71およびp-型領域72は、エッジ終端領域2において半導体基板40のおもて面から離れた深さ位置に配置され、かつ底部がp型外周領域65の底部よりも半導体基板40のおもて面から浅い深さ位置にある。最も内側のp型領域71は、底部がp型外周領域65に接するように内側に延在する。
上述したように、活性領域1の外周部1bにおいてp型外周領域65を構成するp++型コンタクト延在部15a、p型ベース延在部64およびp+型延在部61のうち、最も半導体基板40のおもて面側のp++型コンタクト延在部15aを最も外側まで延在させる。このようにして、p++型コンタクト延在部15aの底部の外側コーナー部15bを電界集中箇所とし、当該部分15bにかかる電界を、p++型コンタクト延在部15aの底部の外側コーナー部15bの外側に隣接する空間変調JTE構造70によって緩和させる。
具体的には、最も内側のp型領域71は、p++型コンタクト延在部15aおよびp型ベース延在部64の外側に、これらの領域に隣接して配置される。最も内側のp型領域71は、p++型コンタクト延在部15aの底部の外側コーナー部15bに接するか、またはp++型コンタクト延在部15aの底部の外側コーナー部15bを囲む。p++型コンタクト延在部15aの底部の外側コーナー部15bにかかる電界はその外側に隣接する最も内側のp型領域71から外側へ向かって空間変調JTE構造70の全体に分散される。
最も内側のp型領域71は、さらにp型ベース延在部64の底部の外側コーナー部を囲んでもよい。この場合、最も内側のp型領域71は、p++型コンタクト延在部15a、p型ベース延在部64およびp+型延在部61の外側に、これらの領域に隣接して配置される。最も内側のp型領域71の内側の端部は、p++型コンタクト延在部15aおよびp型ベース延在部64(最も内側のp型領域71がp型ベース延在部64の底部の外側コーナー部を囲む場合はさらにp+型延在部61)に重なるように内側へ延在してもよい。
p型領域71およびp-型領域72の各上面は、p++型コンタクト延在部15aの底部と略同じ深さ位置(すなわちp++型コンタクト延在部15aの底部と略面一(つらいち))か、または半導体基板40のおもて面から離れた深さ位置で、かつp++型コンタクト延在部15aの底部よりも半導体基板40のおもて面から浅い深さ位置にある。p型領域71の上面の深さ位置と、p-型領域72の上面の深さ位置と、は略同じである。半導体基板40と空間変調JTE構造70との間は第1n型表面領域34である。
p型外周領域65の、空間変調JTE構造70よりも半導体基板40のおもて面から深い部分の不純物濃度は、例えば1×1019/cm3以下程度である。具体的には、p型領域71およびp-型領域72の各底部は、p型外周領域65の底部(すなわちp+型延在部61の下部62の底部)よりも半導体基板40のおもて面から浅い深さ位置にある。p+型延在部61の下部62の底部の外側コーナー部は、n-型ドリフト領域12に囲まれている。
p型領域71およびp-型領域72の各底部は、p+型延在部61の上部63の底部よりも半導体基板40のおもて面から浅い深さ位置にあってもよい。この場合、さらに、p+型延在部61の上部63の底部の外側コーナー部がn-型ドリフト領域12に囲まれる。p型領域71およびp-型領域72の各底部は、p型ベース延在部64の底部よりも半導体基板40のおもて面から浅い深さ位置にあってもよい。この場合、さらに、p型ベース延在部64の底部の外側コーナー部がn-型ドリフト領域12に囲まれる。
p型領域71の底部の深さ位置とp-型領域72の底部の深さ位置とは略同じである。上述したように、p+型延在部61の下部62は、空間変調JTE構造70よりも半導体基板40のおもて面から深い位置にあるが、p+型延在部61の下部62の直上(半導体基板40おもて面側)に隣接するp+型延在部61の上部63の外側の端部よりも内側で終端している。このため、p+型延在部61の下部62の底部の外側コーナー部に局所的に電界がかかることを抑制することができる。
+型延在部61の上部63が空間変調JTE構造70よりも半導体基板40のおもて面から深い位置にある場合であっても、上述したように、p+型延在部61の上部63は、p+型延在部61の上部63の上層に隣接するp型ベース延在部64の外側の端部よりも内側で終端している。このため、p+型延在部61の上部63の底部の外側コーナー部に局所的に電界がかかることを抑制することができる。
p型ベース延在部64が空間変調JTE構造70よりも半導体基板40のおもて面から深い位置にある場合であっても、上述したように、p型ベース延在部64は、p型ベース延在部64の上層に隣接するp++型コンタクト延在部15aの外側の端部よりも内側で終端している。このため、p型ベース延在部64の底部の外側コーナー部に局所的に電界がかかることを抑制することができる。
実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置60の製造方法について説明する。図7~9は、実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。図7~9には、半導体ウエハ50の複数のチップ領域50aのうちの1つのチップ領域50aを示す。図7~9には、図6の活性領域1の外周部1bおよびエッジ終端領域2のみを示す。活性領域1の中央部1aについては図6を参照する。半導体ウエハ50の複数のチップ領域50aには、同一の素子構造の炭化珪素半導体装置60が作製される。
実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置60の製造方法は、空間変調JTE構造70を形成するタイミングが実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置10の製造方法と異なる。ここでは、空間変調JTE構造70のp型領域71およびp-型領域72は、上面をp++型コンタクト延在部15aの底部よりも半導体基板40のおもて面から浅い深さ位置とし、底部を半導体基板40のおもて面からp型ベース延在部64の底部よりも深く、かつp+型延在部61の上部63の底部よりも浅い深さ位置とする。
具体的には、図7に示すように、実施の形態1と同様に、n-型ドリフト領域12となるn-型炭化珪素層42aをエピタキシャル成長させる工程から、n-型炭化珪素層42aに活性領域1のp+型領域21およびp+型領域22の下部を形成するまでの工程を順に行う。また、p+型領域21およびp+型領域22の下部と同時に、n-型炭化珪素層42aにp+型延在部61の下部62を形成する。p+型延在部61の下部62の外側の端部は、活性領域1とエッジ終端領域2との境界よりも内側で終端させる。エッジ終端領域2におけるn-型炭化珪素層42aにはイオン注入を行わない(何も形成しない)。
次に、図8に示すように、n-型ドリフト領域12となるn-型炭化珪素層42bのエピタキシャル成長させる工程から、n-型炭化珪素層42bに活性領域1のp+型領域22の上部を形成するまでの工程を順に行う。また、p+型領域22の上部と同時に、n-型炭化珪素層42bにp+型延在部61の上部63を形成する。p+型延在部61の上部63の外側の端部は、p+型延在部61の下部62の外側の端部よりも外側へ延在させて(延在部)、p+型延在部61の下部62の外側の端部との間に内側に所定幅w3で凹んだ1段の段差を形成する。
また、フォトリソグラフィおよびp型不純物のイオン注入により、各チップ領域50aのエッジ終端領域2においてn-型炭化珪素層42bの表面領域に、空間変調JTE構造70の複数のp型領域71の下部71aを選択的に形成する。フォトリソグラフィおよびp型不純物のイオン注入により、各チップ領域50aのエッジ終端領域2においてn-型炭化珪素層42bの表面領域に、空間変調JTE構造70の複数のp-型領域72の下部72aを選択的に形成する。
p型領域71の下部71aおよびp-型領域72の下部72aは、活性領域1におけるn-型炭化珪素層42b内のイオン注入による拡散領域の形成と異なるタイミングで形成し、p+型延在部61の上部63よりも浅くする。p型領域71の下部71aとp-型領域72の下部72aとは異なるタイミングで形成する。活性領域1におけるn-型炭化珪素層42b内の拡散領域の形成と、p型領域71の下部71aの形成と、p-型領域72の下部72aの形成と、を行う順序は適宜変更可能である。
次に、図9に示すように、実施の形態1と同様に、n-型炭化珪素層42b上に第1n型表面領域34となるn型炭化珪素層42cをエピタキシャル成長させて、半導体ウエハ50を完成させる。次に、実施の形態1と同様に、n型炭化珪素層42cの表面領域に、活性領域1のp型ベース領域13、p型ベース延在部13a、n+型ソース領域14、p++型コンタクト領域15およびp++型コンタクト延在部15aと、エッジ終端領域2のn+型チャネルストッパ領域33と、をそれぞれ選択的に形成する。
p型ベース延在部13aの外側の端部は、p+型延在部61の上部63の外側の端部よりも外側へ延在させて(延在部)、p+型延在部61の上部63の外側の端部との間に内側に所定幅w2で凹んだ1段の段差を形成する。p++型コンタクト延在部15aの外側の端部は、活性領域1とエッジ終端領域2との境界で終端させて(第1延在部)、p型ベース延在部13aの外側の端部との間に内側に所定幅w1で凹んだ1段の段差を形成する。p++型コンタクト延在部15aの外側の端部からp型ベース延在部64の外側の端部までを所定幅w1とする。
これによって、各チップ領域50aの活性領域1の外周部1bにおいて半導体ウエハ50のおもて面とn-型ドリフト領域12との間に、p++型コンタクト延在部15a、p型ベース延在部64およびp+型延在部61によるp型外周領域65が形成される。p型外周領域65の外側の端部には、深さ方向に半導体基板40のおもて面から離れるほど段階的に内側に所定幅w1,w2,w3で凹んだ段差が形成される。
また、フォトリソグラフィおよびp型不純物のイオン注入により、各チップ領域50aのエッジ終端領域2においてn型炭化珪素層42cの内部に、空間変調JTE構造70の複数のp型領域71の上部71bを選択的に形成する。最も内側のp型領域71の上部71bで、p++型コンタクト延在部15aの底部の外側コーナー部を囲む。フォトリソグラフィおよびp型不純物のイオン注入により、各チップ領域50aのエッジ終端領域2においてn型炭化珪素層42cの内部に、空間変調JTE構造70の複数のp-型領域72の上部72bを選択的に形成する。
空間変調JTE構造70のp型領域71の上部71bおよびp-型領域72の上部72bは、半導体ウエハ50のおもて面から離れた深さ位置に形成し、それぞれ深さ方向に下層のp型領域71の下部71aおよびp-型領域72の下部72aに連結させる。n型炭化珪素層42cの、半導体基板40のおもて面と空間変調JTE構造70との間にイオン注入されずにエピタキシャル成長時の不純物濃度のままで残る所定厚さt2の部分が第1n型表面領域34となる。
p型領域71の上部71bおよびp-型領域72の上部72bは、活性領域1におけるn型炭化珪素層42c内のイオン注入による拡散領域の形成と異なるタイミングで形成する。p型領域71の上部71bとp-型領域72の上部72bとは異なるタイミングで形成する。活性領域1におけるn型炭化珪素層42c内の拡散領域の形成と、p型領域71の上部71bの形成と、p-型領域72の上部72bの形成と、を行う順序は適宜変更可能である。
その後、実施の形態1と同様に、不純物活性化のための熱処理以降の工程を順に行うことで、図6の炭化珪素半導体装置60が完成する。
以上、説明したように、実施の形態2によれば、活性領域の外周部のp型外周領域の外側の端部に半導体基板のおもて面から離れるほど段階的に内側に所定幅で凹んだ段差が形成されていることで、空間変調JTE構造の底部がp型外周領域の底部よりも半導体基板のおもて面から浅い深さ位置であったとしても、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
(実施例1)
上述した実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置60(以下、実施例1とする:図6参照)の耐圧特性について検証した。図10,11は、それぞれ実施例1および比較例の耐圧特性をシミュレーションした結果を示す特性図である。図10,11の横軸は、それぞれ実施例1および比較例の空間変調JTE構造70,200のp型領域71,201を形成するためのアルミニウム(Al)のイオン注入ドーズ量(JTEドーズ量)である。図10,11の縦軸は、それぞれ実施例1および比較例のエッジ終端領域2の耐圧である。
図10,11には、MOSFET(実施例1および比較例)の長時間動作によって半導体基板40のおもて面上の絶縁層(フィールド酸化膜25および層間絶縁膜19)がプラスに帯電(プラス電荷が蓄積)した場合、MOSFETの長時間動作によって当該絶縁層がマイナスに帯電(マイナス電荷が蓄積)した場合、および、当該絶縁層が帯電していない通常時(電荷ゼロ)の3つの結果を示す。図12は、比較例の耐圧構造を示す断面図である。
実施例1では、空間変調JTE構造70の上面(p型領域71およびp-型領域72の各上面)をp++型コンタクト延在部15aの底部と同じ深さ位置とし、空間変調JTE構造70の底部をp+型延在部61の下部62の底部よりも半導体基板40のおもて面から浅く、かつp型ベース延在部64の底部よりも半導体基板40のおもて面から深い位置とした。活性領域1の耐圧を1600Vに設定した。
図12に示す比較例210が実施例1と異なる点は、第1n型表面領域34を設けずに、空間変調JTE構造200の上面(p型領域201およびp-型領域202の各上面)を半導体基板40のおもて面に露出させた点である。比較例210の空間変調JTE構造200を半導体基板40のおもて面側から見たレイアウト(すなわち法線方向の位置や法線方向の幅)は、実施例1の空間変調JTE構造70と同様である。
従来の炭化珪素半導体装置110(以下、従来例とする:図13参照)は、活性領域101の外周部101bのp++型コンタクト延在部115a、p型ベース延在部113aおよびp+型延在部122aによるp型外周領域の外側の端部が半導体基板140のおもて面に対して垂直面であり、かつ半導体基板140のおもて面に上面(p型領域131およびp-型領域132の各上面)を露出させた空間変調JTE構造130を備える。
従来例の空間変調JTE構造130を半導体基板140のおもて面側から見たレイアウトは、実施例1の空間変調JTE構造70と同様である。従来例のシミュレーション結果は図示省略するが、従来例では、p+型領域122の底部の外側コーナー部122b(p型外周領域の底部の外側コーナー部)に電界が集中して、エッジ終端領域102の耐圧が低下し、活性領域101の耐圧よりも低くなることが確認された。
一方、図11に示す結果から、比較例では、活性領域1の外周部1bのp型外周領域65の外側の端部に、深さ方向に半導体基板40のおもて面から離れるほど段階的に内側に所定幅w1,w2,w3で凹んだ段差を形成したことで、従来例で生じた問題を解消(エッジ終端領域2の耐圧低下を抑制)することができ、エッジ終端領域2の耐圧を活性領域1の耐圧よりも若干高くすることができることが確認された。空間変調JTE構造200のp型領域201のキャリア濃度が1×1017/cm3以上2.8×1017/cm3以下の範囲B2であるときに、半導体基板40のおもて面上の絶縁層の帯電の有無によらず、エッジ終端領域2の耐圧が活性領域1の耐圧以上の耐圧で安定した。
しかしながら、比較例では、エッジ終端領域2の耐圧と活性領域1の耐圧との差が小さく、他の要因で活性領域1の耐圧が高く確保された場合に、エッジ終端領域2でアバランシェ降伏が起きて、エッジ終端領域2の耐圧が活性領域1の耐圧よりも低くなる虞がある。このため、アバランシェ降伏に対して信頼性に劣る。上述した空間変調JTE構造200のp型領域201のキャリア濃度の数値範囲は、p型領域201を形成するためにイオン注入されたアルミニウムの活性化率が100%である場合の数値範囲である。ここでは、p型領域201のキャリア濃度[/cm3]について、JTEの厚さを概ね0.5μmとしているため、図11の横軸のJTEドーズ量[/cm2]を2×104倍した数値と概ね同じとしている。
それに対して、図10に示す結果から、実施例1においては、比較例と比べて、エッジ終端領域2の耐圧を活性領域1の耐圧よりも十分に高くすることができ、アバランシェ降伏に対して十分な信頼性を見込めることが確認された。空間変調JTE構造70のp型領域71のキャリア濃度が1.4×1017/cm3以上2.0×1017/cm3以下の範囲B1であるときに、半導体基板40のおもて面上の絶縁層の帯電の有無によらず、エッジ終端領域2の耐圧が活性領域1の耐圧以上の耐圧で安定した。このため、p型領域71の狙いのキャリア濃度を上記キャリア濃度範囲B1の平均値である1.7×1017/cm3とすることで、p型領域71のキャリア濃度のばらつきが約±20%程度許容される。
一般的に、イオン注入の不純物濃度ばらつきの範囲は狙いの不純物濃度から±10%未満程度である。このため、実施例1においては、空間変調JTE構造70のp型領域71のキャリア濃度のばらつきの許容範囲を、イオン注入の不純物濃度ばらつきの範囲よりも広い範囲で確保することができることがわかる。上述した空間変調JTE構造70のp型領域71のキャリア濃度の数値範囲は、p型領域71を形成するためにイオン注入されたアルミニウムの活性化率が100%である場合の数値範囲である。ここでは、p型領域71のキャリア濃度[/cm3]について、JTEの厚さを概ね0.5μmとしているため、図10の横軸のJTEドーズ量[/cm2]を2×104倍した数値と概ね同じとしている。
上述したように、一般的に炭化珪素層にイオン注入された不純物の活性化率(=活性化した不純物の濃度/イオン注入した不純物の濃度×100)は70%以上80%以下程度である。このため、例えば不純物の活性化率が70%である場合、p型領域71のキャリア濃度を1.7×1017/cm3とするには、イオン注入によるp型領域71の狙いの不純物濃度を2.4×1017/cm3以上程度(概ねキャリア濃度の1.4倍程度)とすればよい。このように、実施例1においては、空間変調JTE構造70のp型領域71の不純物濃度をシミュレーションにより得ることができ、p型領域71の不純物濃度に基づいて従来方法により空間変調JTE構造70を設計すればよい。
図示省略するが、上述した実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置10においても、実施例1と同様に、エッジ終端領域2の耐圧を活性領域1の耐圧よりも十分に高くすることができ、アバランシェ降伏に対して十分な信頼性を見込めることが発明者により確認されている。
(実施の形態3)
次に、実施の形態3にかかる炭化珪素半導体装置の構造について説明する。図14は、実施の形態3にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す断面図である。実施の形態3にかかる炭化珪素半導体装置80を半導体基板40のおもて面側から見たレイアウトは図1と同様である。図14には、図1の切断線A-A’における断面構造を示す。実施の形態3にかかる炭化珪素半導体装置80が実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置60(図6参照)と異なる点は、エッジ終端領域2の第1n型表面領域34の表面領域に、第1n型表面領域34およびn-型ドリフト領域12よりも不純物濃度の高い第2n型表面領域(第5半導体領域)81を設けた点である。
第2n型表面領域81は、第1n型表面領域34(n型炭化珪素層42c)の内部にイオン注入により形成された拡散領域である。第2n型表面領域81は、p++型コンタクト延在部15aとn+型チャネルストッパ領域33との間においてエッジ終端領域2の全域に、p++型コンタクト延在部15aおよびn+型チャネルストッパ領域33に接して設けられている。第2n型表面領域81は、エッジ終端領域2における半導体基板40のおもて面上の絶縁層(フィールド酸化膜25および層間絶縁膜19)に接する。第2n型表面領域81の厚さt3は、n+型チャネルストッパ領域33の厚さよりも薄いことがよい。第2n型表面領域81の厚さt3は、例えば0.1μm以上程度である。第2n型表面領域81は、空間変調JTE構造70(p型領域71およびp-型領域72)に接しない深さで、かつ可能な限り薄いことがよい。
第2n型表面領域81は、半導体基板40のおもて面上の絶縁層に蓄積される電荷による第1n型表面領域34への悪影響を緩和する機能を有する。例えば、パッシベーション膜(不図示)と層間絶縁膜19との間にマイナス電荷が蓄積されると、第1n型表面領域34の表面領域にホールが集まってp型の反転層が形成される虞がある。第1n型表面領域34の表面領域がp型に反転すると、耐圧特性への悪影響が大きくなり、急激に耐圧が低下する。実施の形態3において、第2n型表面領域81は、半導体基板40のおもて面上の絶縁層に蓄積されたマイナス電荷によって第1n型表面領域34の表面領域がp型の反転することを抑制する。例えば、第2n型表面領域81の不純物濃度をn型電流拡散領域(不図示)や空間変調JTE構造70の不純物濃度と略同程度(例えば1017/cm3台程度)にすることで、耐圧特性をより安定させることができる。
実施の形態3にかかる炭化珪素半導体装置80の製造方法は、実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置60の製造方法に、第2n型表面領域を形成するためのイオン注入工程を追加すればよい。
以上、説明したように、実施の形態3によれば、第2n型表面領域を設けることで、炭化珪素半導体装置の長時間動作によって半導体基板のおもて面上の絶縁層に蓄積される電荷による悪影響を緩和して、実施の形態1,2と同様の効果(耐圧変動を抑制して信頼性を向上させる)をさらに得ることができる。また、実施の形態3によれば、半導体基板のおもて面上の絶縁層に蓄積される電荷による悪影響が第2n型表面領域によって緩和されることで、空間変調JTE構造の不純物濃度の製造ばらつきが大きくなっても、耐圧変動を抑制することができる。
(実施例2)
上述した実施の形態3にかかる炭化珪素半導体装置80(以下、実施例2とする:図14参照)の耐圧特性について検証した。図15は、実施例2の耐圧特性をシミュレーションした結果を示す特性図である。図15の横軸は、それぞれ実施例2の空間変調JTE構造70のp型領域71を形成するためのアルミニウムのイオン注入ドーズ量(JTEドーズ量)である。図15の縦軸は、実施例2のエッジ終端領域2の耐圧である。
図15には、MOSFET(実施例2)の長時間動作によって半導体基板40のおもて面上の絶縁層(フィールド酸化膜25および層間絶縁膜19)がプラスに帯電(プラス電荷が蓄積)した場合、MOSFETの長時間動作によって当該絶縁層がマイナスに帯電(マイナス電荷が蓄積)した場合、および、当該絶縁層が帯電していない通常時(電荷ゼロ)の3つの結果を示す。実施例2が実施例1と異なる点は、エッジ終端領域2の第1n型表面領域34の表面領域に、第2n型表面領域81を設けた点である。
図15に示す結果から、実施例2においても、上述した比較例(図11参照)と比べて、エッジ終端領域2の耐圧を活性領域1の耐圧よりも十分に高くすることができ、アバランシェ降伏に対して十分な信頼性を見込めることが確認された。また、実施例2においては、空間変調JTE構造70のp型領域71のキャリア濃度が1.6×1017/cm3以上3.8×1017/cm3以下の範囲C1であるときに、半導体基板40のおもて面上の絶縁層の帯電の有無によらず、エッジ終端領域2の耐圧が活性領域1の耐圧以上の耐圧で安定した。
したがって、実施例2においては、空間変調JTE構造70のp型領域71のキャリア濃度の範囲C1を実施例1の空間変調JTE構造70のp型領域71のキャリア濃度の範囲B1(図10参照)よりも広くすることができる。すなわち、実施例2においては、実施例1よりも空間変調JTE構造70(p型領域71およびp-型領域72)の不純物濃度の製造ばらつきが大きくなっても、エッジ終端領域2の耐圧を活性領域1の耐圧以上の耐圧で安定して確保することができることが確認された。
実施例2においては、p型領域71の狙いのキャリア濃度を上記キャリア濃度範囲C1の平均値である2.7×1017/cm3とすることで、p型領域71のキャリア濃度のばらつきが約±40%程度許容される。上述した空間変調JTE構造70のp型領域71のキャリア濃度の数値範囲は、p型領域71を形成するためにイオン注入されたアルミニウムの活性化率が100%である場合の数値範囲である。ここでは、p型領域71のキャリア濃度[/cm3]について、JTEの厚さを概ね0.5μmとしているため、図15の横軸のJTEドーズ量[/cm2]を2×104倍した数値と概ね同じとしている。
以上において本発明は、上述した各実施の形態に限らず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、空間変調JTE構造は、シングルゾーンJTE構造を構成するJTE領域(第1の第2導電型耐圧領域)の外側(JTE領域とその外側のn-型ドリフト領域との間)に、JTE領域に隣接して、JTE領域の不純物濃度とn-型ドリフト領域の不純物濃度との中間の不純物濃度と空間的に等価な不純物濃度分布を有する空間変調領域を配置した構造であってもよい。この場合、空間変調領域は、JTE領域と同じ不純物濃度のp型領域と、n-型ドリフト領域と、を所定パターンで交互に繰り返し隣接して配置してなる。また、本発明は、導電型(n型、p型)を反転させても同様に成り立つ。
以上のように、本発明にかかる炭化珪素半導体装置は、電力変換装置や種々の産業用機械などの電源装置などに使用されるパワー半導体装置に有用である。
1 活性領域
1a 活性領域の中央部
1b 活性領域の外周部
2 エッジ終端領域
10,60,80 炭化珪素半導体装置
11 n+型ドレイン領域
12 n-型ドリフト領域
13 p型ベース領域
13a,64 p型ベース延在部
14 n+型ソース領域
15 p++型コンタクト領域
15a p++型コンタクト延在部
15b p++型コンタクト延在部の底部の外側コーナー部
16 トレンチ
17 ゲート絶縁膜
18 ゲート電極
19 層間絶縁膜
20 ソース電極
21,22 p+型領域
22a,61 p+型延在部
22b p+型延在部の底部の外側コーナー部
23 ドレイン電極
24,65 p型外周領域
24b p型外周領域の底部の外側コーナー部
25 フィールド酸化膜
26 ゲートポリシリコン配線層
30,70 空間変調JTE構造
30a,30c JTE領域
30b、30d 空間変調領域
31,71 空間変調JTE構造のp型領域
32,72 空間変調JTE構造のp-型領域
33 n+型チャネルストッパ領域
34 エッジ終端領域の第1n型表面領域
40 半導体基板
41 n+型出発基板
42,42a,42b,42c n型の炭化珪素層
50 半導体ウエハ
50a チップ領域
50b ダイシングライン
51 n+型出発ウエハ
52,62 p+型延在部の下部
53,63 p+型延在部の上部
71a 空間変調JTE構造のp型領域の下部
72a 空間変調JTE構造のp-型領域の下部
71b 空間変調JTE構造のp型領域の上部
72b 空間変調JTE構造のp-型領域の上部
81 エッジ終端領域の第2n型表面領域
t1,t2 エッジ終端領域の第1n型表面領域の厚さ
t3 エッジ終端領域の第2n型表面領域の厚さ
w1,w2,w3 p型外周領域の外側の端部の段差の幅

Claims (12)

  1. 炭化珪素からなり、全面にわたって平坦な第1主面を有する半導体基板と、
    前記半導体基板に設けられた活性領域と、
    前記半導体基板に設けられ、前記活性領域の周囲を囲む終端領域と、
    前記活性領域から前記終端領域にわたって前記半導体基板の内部に設けられた第1導電型の第1半導体領域と、
    前記活性領域において前記第1主面と前記第1半導体領域との間に設けられた第2導電型の第2半導体領域と、
    前記第1半導体領域と前記第2半導体領域とのpn接合を含み、前記pn接合を通過する電流が流れる素子構造と、
    前記素子構造と前記終端領域との間において前記第1主面と前記第1半導体領域との間に設けられ、前記素子構造の周囲を囲む第2導電型外周領域と、
    前記第1主面に設けられ、前記第2半導体領域および前記第2導電型外周領域に電気的に接続された第1電極と、
    前記半導体基板の第2主面に設けられ、前記第1半導体領域に電気的に接続された第2電極と、
    前記終端領域において前記第1半導体領域の内部に、前記第1主面から離れた深さ位置で、前記活性領域の周囲を囲む同心状に互いに離れて設けられた複数の第2導電型耐圧領域と、
    複数の前記第2導電型耐圧領域で構成され、全体の第2導電型不純物濃度を内側から外側へ向って緩やかに減少させた耐圧構造と、
    を備え、
    前記第2導電型外周領域の外側の端部は、前記第1主面に対して垂直面であり、
    前記第2導電型耐圧領域の底部は、前記第2導電型外周領域の底部よりも前記第1主面から深い位置にあり、
    複数の前記第2導電型耐圧領域のうちの最も内側の第1の第2導電型耐圧領域は、前記第2導電型外周領域の底部の外側コーナー部を囲むことを特徴とする炭化珪素半導体装置。
  2. 前記素子構造は、
    前記第1主面と前記第2半導体領域との間に選択的に設けられ、前記第1電極に電気的に接続された第1導電型の第3半導体領域と、
    前記第3半導体領域および前記第2半導体領域を貫通して前記第1半導体領域に達するトレンチと、
    前記トレンチの内部にゲート絶縁膜を介して設けられたゲート電極と、
    前記第1半導体領域と前記第2半導体領域との間において、前記トレンチの底面よりも前記第2主面側に選択的に設けられた、前記第2半導体領域よりも不純物濃度の高い第2導電型高濃度領域と、
    を備え、
    前記第2導電型外周領域は、
    前記第2半導体領域の前記素子構造よりも外側に配置された部分である第1外周領域と、
    前記第2導電型高濃度領域の前記素子構造よりも外側に配置された部分であり、前記第1外周領域と前記第1半導体領域との間に、前記第1外周領域および前記第1半導体領域に接して設けられた第2外周領域と、
    前記第1主面と前記第1外周領域との間に、前記第1外周領域に接して設けられた、前記第1外周領域よりも不純物濃度の高い第3外周領域と、を有し、
    前記第1の第2導電型耐圧領域は、前記第2外周領域の底部の外側コーナー部を囲むことを特徴とする請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
  3. 炭化珪素からなり、全面にわたって平坦な第1主面を有する半導体基板と、
    前記半導体基板に設けられた活性領域と、
    前記半導体基板に設けられ、前記活性領域の周囲を囲む終端領域と、
    前記活性領域から前記終端領域にわたって前記半導体基板の内部に設けられた第1導電型の第1半導体領域と、
    前記活性領域において前記第1主面と前記第1半導体領域との間に設けられた第2導電型の第2半導体領域と、
    前記第1半導体領域と前記第2半導体領域とのpn接合を含み、前記pn接合を通過する電流が流れる素子構造と、
    前記素子構造と前記終端領域との間において前記第1主面と前記第1半導体領域との間に設けられ、前記素子構造の周囲を囲む第2導電型外周領域と、
    前記第1主面に設けられ、前記第2半導体領域および前記第2導電型外周領域に電気的に接続された第1電極と、
    前記半導体基板の第2主面に設けられ、前記第1半導体領域に電気的に接続された第2電極と、
    前記終端領域において前記第1半導体領域の内部に、前記第1主面から離れた深さ位置で、前記活性領域の周囲を囲む同心状に互いに離れて設けられた複数の第2導電型耐圧領域と、
    複数の前記第2導電型耐圧領域で構成され、全体の第2導電型不純物濃度を内側から外側へ向って緩やかに減少させた耐圧構造と、
    を備え、
    前記第2導電型外周領域の外側の端部に、深さ方向に前記第1主面から離れるほど段階的に内側に所定幅で凹んだ複数段の段差が形成され、当該段差に応じて法線方向に外側に延在して前記第1主面に近いほど外側で終端する複数の延在部を有し、
    前記第2導電型耐圧領域の底部は、前記第2導電型外周領域の底部よりも前記第1主面側に浅い深さ位置にあり、
    前記第2導電型耐圧領域の上面は、複数の前記延在部のうちの最も前記第1主面側の第1延在部の底部と同じ深さ位置か、または前記第1延在部の底部よりも前記第1主面側に浅い深さ位置にあり、
    複数の前記第2導電型耐圧領域のうちの最も内側の第1の第2導電型耐圧領域は、前記第1延在部の底部の外側コーナー部に接するか、または前記第1延在部の底部の外側コーナー部を囲むことを特徴とする炭化珪素半導体装置。
  4. 前記所定幅は、2μm以上であることを特徴とする請求項3に記載の炭化珪素半導体装置。
  5. 前記第2導電型外周領域の、前記耐圧構造よりも前記第2主面側に深い部分の第2導電型不純物濃度は、1×1019/cm3以下であることを特徴とする請求項3または4に記載の炭化珪素半導体装置。
  6. 前記素子構造は、
    前記第1主面と前記第2半導体領域との間に選択的に設けられ、前記第1電極に電気的に接続された第1導電型の第3半導体領域と、
    前記第3半導体領域および前記第2半導体領域を貫通して前記第1半導体領域に達するトレンチと、
    前記トレンチの内部にゲート絶縁膜を介して設けられたゲート電極と、
    前記第1半導体領域と前記第2半導体領域との間において、前記トレンチの底面よりも前記第2主面側に選択的に設けられた、前記第2半導体領域よりも不純物濃度の高い第2導電型高濃度領域と、
    を備え、
    前記第2導電型外周領域は、
    前記第2半導体領域の前記素子構造よりも外側に配置された部分である第1外周領域と、
    前記第2導電型高濃度領域の前記素子構造よりも外側に配置された部分であり、前記第1外周領域と前記第1半導体領域との間に、前記第1外周領域および前記第1半導体領域に接して設けられた第2外周領域と、
    前記第1主面と前記第1外周領域との間に、前記第1外周領域に接して設けられた、前記第1外周領域よりも不純物濃度の高い第3外周領域と、を有し、
    前記第2導電型外周領域の外側の端部の前記段差は、前記第1外周領域が前記第3外周領域よりも内側で終端し、前記第2外周領域が前記第1外周領域よりも内側で終端していることで形成され、
    前記第2導電型外周領域の外側の端部の前記第1延在部は、前記第3外周領域のうち前記第1外周領域よりも外側に位置する部分であり、
    前記第1の第2導電型耐圧領域は、前記第3外周領域の底部の外側コーナー部に接するか、または前記第3外周領域の底部の外側コーナー部を囲むことを特徴とする請求項3~5のいずれか一つに記載の炭化珪素半導体装置。
  7. 前記第1主面と前記耐圧構造との間に、前記第1半導体領域よりも不純物濃度の高い第1導電型の第4半導体領域が設けられていることを特徴とする請求項1~6のいずれか一つに記載の炭化珪素半導体装置。
  8. 前記第2導電型耐圧領域のキャリア濃度は、前記第2半導体領域のキャリア濃度以上で、前記第2導電型高濃度領域のキャリア濃度よりも低いことを特徴とする請求項2または6に記載の炭化珪素半導体装置。
  9. 前記耐圧構造は、
    前記第1の第2導電型耐圧領域と、
    複数の前記第2導電型耐圧領域のうち、前記第1の第2導電型耐圧領域の外側に隣り合う、前記第1の第2導電型耐圧領域と同じ不純物濃度の複数の第2の第2導電型耐圧領域と、
    複数の前記第2導電型耐圧領域のうち、前記第1の第2導電型耐圧領域の外側に隣接し、互いに隣り合うすべての前記第2の第2導電型耐圧領域間に位置し、最も外側の前記第2導電型耐圧領域よりも外側まで延在する、前記第1の第2導電型耐圧領域よりも不純物濃度の低い第3の第2導電型耐圧領域と、
    複数の前記第2導電型耐圧領域のうちの前記第1の第2導電型耐圧領域、前記第2の第2導電型耐圧領域および前記第3の第2導電型耐圧領域を除く残りの、前記第3の第2導電型耐圧領域の外側に隣り合う、前記第3の第2導電型耐圧領域と同じ不純物濃度の複数の第4の第2導電型耐圧領域と、を有し、
    前記第1の第2導電型耐圧領域の外側に、前記第1の第2導電型耐圧領域に隣接して、前記第1の第2導電型耐圧領域の不純物濃度と前記第3の第2導電型耐圧領域の不純物濃度との中間の不純物濃度と空間的に等価な不純物濃度分布を有する第1空間変調領域を配置し、
    かつ前記第3の第2導電型耐圧領域の外側に、前記第3の第2導電型耐圧領域に隣接して、前記第3の第2導電型耐圧領域の不純物濃度と前記第1半導体領域の不純物濃度との中間の不純物濃度と空間的に等価な不純物濃度分布を有する第2空間変調領域を配置することで、全体の第2導電型不純物濃度を内側から外側へ向って緩やかに減少させた構造であり、
    前記第1空間変調領域は、前記第2の第2導電型耐圧領域と前記第3の第2導電型耐圧領域の一部とを所定パターンで交互に繰り返し隣接して配置してなり、
    前記第2空間変調領域は、前記第4の第2導電型耐圧領域と前記第1半導体領域とを所定パターンで交互に繰り返し隣接して配置してなることを特徴とする請求項1~8のいずれか一つに記載の炭化珪素半導体装置。
  10. 前記第4半導体領域の表面領域に、前記第4半導体領域よりも不純物濃度の高い第1導電型の第5半導体領域が設けられていることを特徴とする請求項7に記載の炭化珪素半導体装置。
  11. 前記第1主面と前記第1半導体領域との間において、前記第4半導体領域よりも外側に設けられた、前記第1半導体領域よりも不純物濃度の高い第1導電型の第6半導体領域をさらに備え、
    前記第5半導体領域の厚さは、前記第6半導体領域の厚さよりも薄いことを特徴とする請求項10に記載の炭化珪素半導体装置。
  12. 前記第5半導体領域の厚さは、0.1μm以上であることを特徴とする請求項10または11に記載の炭化珪素半導体装置。
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