JP2023088532A - 車両制御システムおよび車両制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 接地荷重変動を小さくして、車両の安定性を高めることができる車両制御システムおよび車両制御装置を提供する。【解決手段】 車両制御システムは、車両の車体1と4つの車輪2との間にそれぞれ設けられ、発生力がソフトとハードの間で調整可能な複数の可変ダンパ6と、可変ダンパ6の発生力を可変に制御するECU21と、を備えている。ECU21は、4つの車輪2を独立に制駆動する制駆動判断部31からの信号が入力されたとき、可変ダンパ6による路面への接地荷重変動が小さくなるよう、可変ダンパ6の発生力を調整する。【選択図】 図3
Description
本開示は、車体と車輪間の相対変位を抑制する力を可変するアクチュエータを制御する車両制御システムおよび車両制御装置に関する。
特許文献1に開示された制御装置は、輪荷重を増加させる車輪側に設けられたダンパの減衰力特性を、縮み行程中の初期をハード側とし後期をソフト側に切替える縮み行程ハード・ソフト切替制御と、伸び行程中の初期をソフト側とし後期をハード側に切替える伸び行程ソフト・ハード切替制御とのいずれかを実行する。これにより、輪荷重増減の応答性と絶対量を制御することができ、車両をより安全に運転制御することができる。
ところで、特許文献1に開示された制御装置では、縮み行程ハード・ソフト切替制御と伸び行程ソフト・ハード切替制御とのいずれかを実行する。しかしながら、このような制御を行うと、接地荷重変動が大きくなる傾向があり、例えばABS(Anti-lock Breake System)などの作動時に、車両の安定性が低下する虞れがある。
本発明の一実施形態の目的は、接地荷重変動を小さくして、車両の安定性を高めることができる車両制御システムおよび車両制御装置を提供することにある。
本発明の一実施形態による車両制御システムは、車両の車体と4つの車輪との間にそれぞれ設けられ、発生力がソフトとハードの間で調整可能な複数の力発生機構と、該力発生機構の発生力を可変に制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、4つの前記車輪を独立に制駆動する制駆動判断部からの信号が入力されたとき、前記力発生機構による路面への接地荷重変動が小さくなるよう、前記力発生機構の前記発生力を調整することを特徴としている。
本発明の一実施形態による車両制御装置は、車両の車体と4つの車輪との間にそれぞれ設けられ、前記車体と前記車輪との間の発生する力を可変するアクチュエータを制御する車両制御装置であって、4つの前記車輪を独立に制駆動する制駆動判断部からの信号が入力されたとき、前記アクチュエータの発生力による前記車輪と路面間の接地荷重変動が小さくなるよう、前記アクチュエータを制御することを特徴としている。
本発明の一実施形態によれば、接地荷重変動を小さくして、車両の安定性を高めることができる。
以下、本発明の実施形態による車両制御システムおよび車両制御装置を、例えば4輪自動車に適用した場合を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
ここで、図1ないし図5は本発明の第1の実施形態を示している。図1および図2において、車体1は、車両のボディを構成している。車体1の下側には、例えば左,右の前輪と左,右の後輪(以下、総称して車輪2という)が設けられている。これらの車輪2は、タイヤ3を含んで構成されている。タイヤ3は、路面の細かい凹凸を吸収するばねとして作用する。車体1と車輪2は、車両を構成している。
サスペンション装置4は、車体1と車輪2との間に介装して設けられている。サスペンション装置4は、懸架ばね5(以下、スプリング5という)と、スプリング5と並列関係をなして車体1と車輪2との間に介装して設けられた減衰力調整式緩衝器(以下、可変ダンパ6という)とにより構成される。
サスペンション装置4の可変ダンパ6は、車両の車体1と4つの車輪2との間にそれぞれ設けられている。可変ダンパ6は、車体1と車輪2間の相対変位を抑制する力を可変するアクチュエータである。可変ダンパ6は、車体1と車輪2との間の発生する力を可変する。また、可変ダンパ6は、車両の車体1と車輪2との間の力を調整する力発生機構でもある。可変ダンパ6は、発生力がソフトとハードの間で調整可能である。
可変ダンパ6は、減衰力調整式の油圧緩衝器を用いて構成されている。図2に示すように、可変ダンパ6には、発生減衰力の特性(即ち、減衰力特性)をハードな特性(硬特性)からソフトな特性(軟特性)に連続的に調整するため、減衰力調整バルブ等からなる減衰力可変アクチュエータ7が付設されている。減衰力可変アクチュエータ7は、供給される電流(駆動電流)に応じて減衰力が調整される減衰力調整部である。
なお、減衰力可変アクチュエータ7は、減衰力特性を必ずしも連続的に調整する構成でなくてもよく、例えば2段階以上の複数段階で減衰力を調整可能なものであってもよい。また、可変ダンパ6は、圧力制御タイプでもよく、流量制御タイプであってもよい。
CAN8(controller area network)は、車体1に搭載されたシリアル通信部である。CAN8は、車両に搭載された多数の電子機器とECU21との間で車載向けの多重通信を行う。CAN8は、シリアル信号からなるCAN信号によって車両運転情報を伝送する。この場合、CAN8を伝送する車両運転情報には、例えばヨーレイト、操舵角、車速、前後加速度、ブレーキ液圧、エンジントルク等が含まれる。
これに加え、CAN8を伝送する車両運転情報には、制駆動判断部31からの信号も含まれる。制駆動判断部31は、4つの車輪2を独立に制動または駆動する。制駆動判断部31には、例えばABS、TCS(Traction Control System)、ECS(Electronic Stability Control)が含まれる。制駆動判断部31からの信号は、例えばABS、TCS、ECSのいずれかが動作したことを示すABS/TCS/ECS作動フラグである。
ばね上加速度センサ9は、車体1に設けられ、ばね上側となる車体1側で上下方向の振動加速度を検出する。ばね上加速度センサ9は、ばね上の振動を検出するばね上状態検出手段を構成している。ばね上状態検出手段は、ばね上の振動を検出するものに限らず、例えばCAN信号に含まれる車両運転情報に基づいて、ばね上の振動を推定するものでもよい。
ばね上加速度センサ9は、例えば車体1に合計3個設けられている。この場合、ばね上加速度センサ9は、例えば左右の前輪側の可変ダンパ6の上端側近傍となる位置で車体1に取付けられると共に、左右の後輪間の中間位置で車体1に取付けられている。ばね上加速度センサ9は、ばね上側となる車体1側で上下方向の振動加速度を検出し、その検出信号をECU21に出力する。
ばね下加速度センサ10は、車両の車輪2側に設けられている。ばね下加速度センサ10は、車両に合計2個設けられている。具体的には、ばね下加速度センサ10は、例えば車両の右側の前輪と左側の前輪にそれぞれ設けられている。ばね下加速度センサ10は、ばね下側となる車輪2側で上下方向の振動加速度を検出し、その検出信号をECU21に出力する。
ECU21は、サスペンション装置4を制御する車両制御装置を構成している。ECU21は、車体1と車輪2との間に発生する力を可変する可変ダンパ6を制御する。ここで、ECU21は、可変ダンパ6(力発生機構)の発生力を制御する制御手段である。
ECU21は、コントロール部としてのプロセッサ22を備えている。プロセッサ22は、マイクロコンピュータ等によって構成されている。ECU21は、ROM、RAM、不揮発性メモリ等からなる記憶部(図示せず)を備えている。プロセッサ22は、記憶部に格納されたプログラムを実行することによって、可変ダンパ6の減衰力を制御する。
図2に示すように、ECU21は、入力側がCAN8、ばね上加速度センサ9、ばね下加速度センサ10等に接続され、出力側は可変ダンパ6の減衰力可変アクチュエータ7等に接続されている。プロセッサ22は、CAN8から車両運転情報をシリアル通信により読込む。プロセッサ22は、ばね上加速度センサ値(ばね上加速度)を、ばね上加速度センサ9からの検出信号により読込む。プロセッサ22は、ばね下加速度センサ値(ばね下加速度)を、ばね下加速度センサ10からの検出信号により読込む。
図3に示すように、ECU21は、ばね上とばね下との間の相対速度、相対加速度等のような車両挙動を求めるオブザーバ23を備えている。これに加え、ECU21は、後述する乗り心地制御部24と、姿勢安定性制御部25と、ABS/TCS/ECS協調制御部29と、制御指令選択部30とを有している。
オブザーバ23は、ばね上加速度センサ9から入力されるばね上加速度と、ばね下加速度センサ10から入力されるばね下加速度とに基づいて、車両挙動を求める。オブザーバ23は、減算器および積分器(いずれも図示せず)を備えている。オブザーバ23には、ばね上加速度とばね下加速度が入力される。減算器は、ばね上加速度からばね下加速度を減算し、これらの差である相対加速度を求める。積分器は、ばね上加速度を積分し、ばね上速度を求める。また、他の積分器は、相対加速度を積分し、相対速度を求める。オブザーバ23は、ばね上速度、相対速度、相対加速度を出力する。
なお、第1の実施形態では、オブザーバ23は、ばね上加速度とばね下加速度から相対速度を取得した。例えば各輪のサスペンション装置4にストロークセンサを備える場合には、ストロークセンサの検出値に基づいて相対速度、相対加速度等を取得してもよい。また、CAN8から入力される情報(車両運転情報)に基づいて、相対速度、相対加速度等を推定してもよい。
乗り心地制御部24は、車両の乗り心地を向上させるための乗り心地制御指令を出力する。乗り心地制御部24は、入力された車両のばね上振動に応じて、可変ダンパ6を制御するための乗り心地制御指令値を出力する。車両のばね上振動には、例えばばね上速度と相対速度が含まれる。車両のばね上振動は、センサ等によって直接的に検出してもよく、例えばばね上加速度等に基づいて推定してもよい。乗り心地制御部24は、オブザーバ23からばね上速度と、ばね上とばね下との間の相対速度(ピストン速度)とを取得する。乗り心地制御部24は、各輪のばね上速度と相対速度とに基づいて、乗り心地制御指令を出力する。このとき、乗り心地制御指令は、例えば減衰力可変アクチュエータ7への電流の指令信号となる制御指令値(電流値)となっている。乗り心地制御部24は、例えばスカイフック制御則に基づいて、ばね上速度と相対速度とからばね上の上下振動を低減するための乗り心地制御指令値を出力する。
なお、第1の実施形態では、乗り心地制御部24は、スカイフック制御に基づいて乗り心地制御指令を出力するものとした。本発明はこれに限らず、乗り心地制御部は、例えば双線形最適制御やH∞制御に基づいて乗り心地制御指令を出力してもよい。
姿勢安定性制御部25は、車両の姿勢安定性(操縦安定性)を向上させるための姿勢安定性制御指令を出力する。姿勢安定性制御部25には、CAN8から送信される前後加速度と横加速度とが入力される。姿勢安定性制御部25は、前後加速度と横加速度とに基づいて、姿勢安定性制御指令を出力する。姿勢安定性制御部25は、入力された車両の姿勢変化に応じて、可変ダンパ6を制御するための姿勢安定性制御指令値を出力する。
姿勢安定性制御部25は、車両の姿勢変化が所定値以上となったときに、可変ダンパ6がハードな特性となるような姿勢安定性制御指令を出力する。車両の姿勢変化には、例えば旋回、加速、減速等が含まれる。このとき、車両の旋回は、例えば操舵角、横加速度に基づいて検出、推定してもよい。車両の加速または減速は、例えばブレーキ液圧、エンジンモータトルクに基づいて検出、推定してもよい。
姿勢安定性制御部25には、前後加速度および横加速度が入力される。図3に示すように、姿勢安定性制御部25は、アンチダイブスクオット制御部26と、アンチロール制御部27と、予備制御指令選択部28とを備えている。
アンチダイブスクオット制御部26は、車両の加速または減速による車両の前後方向の傾きを抑制するためのアンチダイブスクオット制御指令を出力する。アンチダイブスクオット制御部26には、前後加速度が入力される。図4に示すように、アンチダイブスクオット制御部26は、微分器26A、フロントゲイン乗算部26B、反転部26C、リアゲイン乗算部26D、相対速度算出部26Eおよび減衰力特性処理部26Fを備えている。
微分器26Aは、前後加速度を微分して車両の前後方向に対する加加速度(前後加加速度)を算出する。フロントゲイン乗算部26Bは、前後加加速度に対してフロントゲインを乗算し、フロント側の目標減衰力を出力する。リアゲイン乗算部26Dは、反転部26Cによって「-1」が乗算された前後加加速度に対してリアゲインを乗算し、リア側の目標減衰力を出力する。
例えば前後加速度の微分値(前後加加速度)がマイナスの場合、ダイブ挙動が予測されるため、フロント側はダンパの縮みに備えた目標減衰力の導出が必要であり、リア側はダンパの伸びに備えた目標減衰力の導出が必要である。この点を考慮して、反転部26Cは、リアゲインを掛ける前に前後加加速度に「-1」を乗算する。即ち、ここでは、ダンパの伸び側をプラスとし、ダンパの縮み側をマイナスとした。
相対速度算出部26Eは、前後加加速度から相対速度を算出する。減衰力特性処理部26Fは、例えば目標減衰力および相対速度と可変ダンパ6へ出力する指令値(制御指令)との関係性を示す減衰力マップによって構成されている。減衰力特性処理部26Fは、フロント側の目標減衰力と相対速度に基づいてフロント側の可変ダンパ6を制御するための制御指令を出力する。減衰力特性処理部26Fは、リア側の目標減衰力と相対速度に基づいてリア側の可変ダンパ6を制御するための制御指令を出力する。これらの制御指令は、アンチダイブスクオット制御指令であり、例えば減衰力可変アクチュエータ7への電流の指令信号となる制御指令値(電流値)となっている。
アンチロール制御部27は、車両のロール挙動を抑制するためのアンチロール制御指令を出力する。アンチロール制御部27には、横加速度が入力される。図5に示すように、アンチロール制御部27は、微分器27A、左輪ゲイン乗算部27B、反転部27C、右輪ゲイン乗算部27D、ゲイン乗算部27E、ピッチ制御処理部27F、相対速度算出部27G、加算器27Hおよび減衰力特性処理部27Jを備えている。
微分器27Aは、横加速度を微分して車両の横方向(左右方向)に対する加加速度(横加加速度)を算出する。左輪ゲイン乗算部27Bは、横加加速度に左輪ゲインを乗算し、左輪側の目標減衰力を出力する。右輪ゲイン乗算部27Dは、反転部27Cによって「-1」が乗算された横加加速度に対して右輪ゲインを乗算し、右輪側の目標減衰力を出力する。
例えば横加速度の微分値(横加加速度)がプラスの場合、車体は右輪側に沈むことが予測されるため、左輪側はダンパの伸び側に備える必要があり、右輪側はダンパの縮み側に備える必要がある。この点を考慮して、反転部27Cは、右輪ゲインを掛ける前に横加加速度に「-1」を乗算する。
アンチロール制御部27は、走行性を高めるGベクタリングの基本概念である「横運動に合わせて前後運動を制御する」を拡張し、横運動に合わせてピッチ運動を制御する。このため、ゲイン乗算部27Eは、横加加速度にゲインを乗算する。ピッチ制御処理部27Fは、ゲインが乗算された横加加速度に基づいて、Gベクタリングの拡張概念にかなうピッチ制御用の目標減衰力を導出する。
相対速度算出部27Gは、横加加速度から相対速度を算出する。加算器27Hは、ロール抑制用の左輪側の目標減衰力にピッチ制御用の左輪側の目標減衰力を加算し、ロールとピッチを制御するための左輪側の目標減衰力を出力する。加算器27Hは、ロール抑制用の右輪側の目標減衰力にピッチ制御用の右輪側の目標減衰力を加算し、ロールとピッチを制御するための右輪側の目標減衰力を出力する。
減衰力特性処理部27Jは、例えば目標減衰力および相対速度と可変ダンパ6へ出力する指令値(制御指令)との関係性を示す減衰力マップによって構成されている。減衰力特性処理部27Jは、左輪側の目標減衰力と相対速度に基づいて左輪側の可変ダンパ6を制御するための制御指令を出力する。減衰力特性処理部27Jは、右輪側の目標減衰力と相対速度に基づいて右輪側の可変ダンパ6を制御するための制御指令を出力する。これらの制御指令は、アンチロール制御指令であり、例えば減衰力可変アクチュエータ7への電流の指令信号となる制御指令値(電流値)となっている。
図3に示すように、予備制御指令選択部28には、アンチダイブスクオット制御指令とアンチロール制御指令とが入力される。予備制御指令選択部28は、アンチダイブスクオット制御指令とアンチロール制御指令とを比較して、大きい値(ハード側の値)の制御指令を選択する。予備制御指令選択部28は、選択した制御指令の値を姿勢安定性制御指令値として出力する。
ABS/TCS/ECS協調制御部29は、目標減衰力算出部29Aと減衰力マップ29Bとを備えている。ABS/TCS/ECS協調制御部29には、相対速度がオブザーバ23から入力され、制駆動判断部31からの信号としてABS/TCS/ECS作動フラグがCAN8を介して入力される。
目標減衰力算出部29Aは、ABS/TCS/ECS作動フラグによってABS、TCS、ECSのいずれかの作動を検出した場合、減衰比ζopt、係数Ccおよび相対速度に基づいて、接地荷重変動抑制に最適な目標減衰力を以下の数1の式により算出する。具体的には、目標減衰力算出部29Aは、減衰比ζopt、係数Ccおよび相対速度の乗算によって、接地荷重変動抑制に最適な目標減衰力を求める。一方、目標減衰力算出部29Aは、ABS/TCS/ECS作動フラグによってABS、TCS、ECSの全ての作動を検出しない場合、目標減衰力を0(零)にする。
このとき、減衰比ζoptは、荷重変動抑制に最適な減衰比である。係数Ccは、臨界減衰係数である。減衰比ζoptおよび係数Ccは、例えば実際の車両を用いた実験やシミュレーション等によって予め得られる。
減衰力マップ29Bには、減衰力特性を予め記憶されている。減衰力マップ29Bには、目標減衰力算出部29Aから目標減衰力が入力されると共に、相対速度が入力される。減衰力マップ29Bは、目標減衰力と相対速度に基づいて、これらに応じた協調制御指令を出力する。このとき、協調制御制御指令は、例えば減衰力可変アクチュエータ7への電流の指令信号となる制御指令値(電流値)となっている。
制御指令選択部30は、乗り心地制御指令と、姿勢安定性制御指令と、協調制御指令とを比較して、大きい値の制御指令を選択する。制御指令選択部30は、選択した制御指令を最終的な制御指令として出力する。具体的には、制御指令選択部30は、乗り心地制御指令と、姿勢安定性制御指令と、協調制御指令とのうちハード側となる値を選択する。このとき、制御指令選択部30は、4輪それぞれの制御指令について同じ処理を実行する。可変ダンパ6の減衰力可変アクチュエータ7には、最終的な制御指令に基づく駆動電流が供給される。これにより、可変ダンパ6の減衰力はECU21によって制御される。
第1の実施形態によるECU21は、上述の如き構成を有するもので、次に、その作動について説明する。
車両の走行時に路面の凹凸等により上下方向の振動が発生すると、ECU21には、CAN8、ばね上加速度センサ9およびばね下加速度センサ10から各種の車両運転情報、ばね上加速度、ばね下加速度等が入力される。このとき、オブザーバ23は、ばね上加速度とばね下加速度に基づいて、ばね上速度および相対速度を求める。
ECU21の乗り心地制御部24は、ばね上速度と相対速度に基づいて、車両の乗り心地を向上させるための乗り心地制御指令を出力する。ECU21の姿勢安定性制御部25は、CAN8から入力される横加速度および前後加速度に基づいて、車両の姿勢安定性を向上させるための姿勢安定性制御指令を出力する。このとき、姿勢安定性制御指令は、ダイブ・スクオットとロールを抑制する値になっている。
ECU21のABS/TCS/ECS協調制御部29は、ABS、TCS、ECSの全ての作動を検出しない場合、0(零)の目標減衰力に応じた協調制御指令を出力する。この場合、協調制御指令は、ソフト側の値となる。このとき、ECU21の制御指令選択部30は、乗り心地制御指令と、姿勢安定性制御指令とのうちハード側となる値を選択する。この結果、ECU21は、乗り心地と姿勢安定性の両立を図ることができる。
一方、ECU21のABS/TCS/ECS協調制御部29は、ABS、TCS、ECSのいずれかの作動を検出した場合、接地荷重変動抑制に最適な目標減衰力を求めて、この目標減衰力に応じた協調制御指令を出力する。このとき、ECU21の制御指令選択部30は、乗り心地制御指令と、姿勢安定性制御指令と、協調制御指令とのうちハード側となる値を選択する。この結果、ECU21は、ABS、ECS、TCSのいずれかが作動するときには、接地荷重変動を小さくして、車両の安定性を高めることができる。
次に、ECU21による制振効果を確認するために、比較例による制御としてABS/TCS/ECS協調制御部29を省いた制御と、第1の実施形態による制御とについて、車両のシミュレーションによって制振性能等を比較した。シミュレーション結果を、図6ないし図8に示す。図6に示すように、第1の実施形態では、比較例に比べて、ABSが作動しながら減速している状態で、指令値(電流値)が上昇している。また、第1の実施形態では、比較例に比べて、前後加速度が0(零)になるタイミングも早くなっている。このことから、第1の実施形態では、比較例に比べて、車両が早く停止できていることが分かる。また、図7に示すように、第1の実施形態では、比較例に比べて、指令値が上昇しているタイミングで減衰力が大きくなっている。さらに、図8に示すように、第1の実施形態では、比較例に比べて、輪荷重の変動も小さくなっており、接地荷重変動も低減できていることが分かる。
かくして、第1の実施形態の車両制御システムは、車両の車体1と4つの車輪2との間にそれぞれ設けられ、発生力がソフトとハードの間で調整可能な複数の可変ダンパ6(力発生機構)と、可変ダンパ6の発生力を可変に制御するECU21(制御手段)と、を備えている。ECU21は、4つの車輪2を独立に制駆動(制動または駆動)する制駆動判断部31(ABS、ECS、TCS)からの信号が入力されたとき、可変ダンパ6による路面への接地荷重変動が小さくなるよう、可変ダンパ6の発生力を調整する。
即ち、ECU21(車両制御装置)は、車両の車体1と4つの車輪2との間にそれぞれ設けられ、車体1と車輪2との間の発生する力を可変する可変ダンパ6(アクチュエータ)を制御する。ECU21は、4つの車輪2を独立に制駆動する制駆動判断部31(ABS、ECS、TCS)からの信号が入力されたとき、可変ダンパ6の発生力による車輪2と路面との間の接地荷重変動が小さくなるよう、可変ダンパ6を制御する。
これにより、ABS、ECS、TCSのいずれかが作動するときには、ECU21は、可変ダンパ6の発生力による車輪2と路面との間の接地荷重変動が小さくなるよう、可変ダンパ6を制御する。この結果、ABS、ECS、TCSのいずれかが作動するときには、接地荷重変動を小さくして、車両の安定性を高めることができる。また、第1の実施形態では、悪路入力路面において、路面入力起因の接地荷重変動を抑制できるため、制動距離の短縮を図ることができる。即ち、第1の実施形態では、ABS、ECS、TCSのいずれかが作動するような安定性が最重要視される場合に、接地荷重変動を最小化する減衰比に設定し、接地性を最優先させる。この結果、第1の実施形態では、加減速性能、旋回性能を向上させることができる。
次に、図1、図2および図9は本発明の第2の実施形態を示している。第2の実施形態の特徴は、ABS/TCS/ECS協調制御部は、制駆動判断部からの信号が入力されたときに、目標減衰力を算出することなく、予め設定した接地荷重変動抑制に最適な電流指令値を算出することにある。なお、第2の実施形態では、前述した第1の実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略する。
第2の実施形態によるECU41は、第1の実施形態によるECU21とほぼ同様に構成されている。ECU41は、サスペンション装置4を制御する車両制御装置(制御手段)を構成している。ECU41は、可変ダンパ6(力発生機構)の発生力を制御するコントローラである。図2に示すように、ECU41は、コントロール部としてのプロセッサ42を備えている。プロセッサ42は、マイクロコンピュータ等によって構成されている。プロセッサ42は、記憶部(図示せず)に格納されたプログラムを実行することによって、可変ダンパ6の減衰力を制御する。ECU41は、入力側がCAN8、ばね上加速度センサ9、ばね下加速度センサ10等に接続され、出力側は可変ダンパ6等に接続されている。
ECU41は、第1の実施形態によるECU21と同様に、乗り心地制御部24と、姿勢安定性制御部25と、ABS/TCS/ECS協調制御部43と、制御指令選択部30とを有している。
図9に示すように、ABS/TCS/ECS協調制御部43には、制駆動判断部31からの信号としてABS/TCS/ECS作動フラグがCAN8を介して入力される。ABS/TCS/ECS協調制御部43は、ABS/TCS/ECS作動フラグによってABS、TCS、ECSのいずれかの作動を検出した場合、以下の数2の式により予め設定された電流Ifoptを前輪指令値として算出し、電流Iroptを後輪指令値として算出する。このとき、ABS/TCS/ECS協調制御部43は、前輪指令値および後輪指令値を協調制御指令として出力する。
前輪指令値は、接地荷重変動を抑制するための最適な前輪用の電流指令値である。後輪指令値は、接地荷重変動を抑制するための最適な後輪用の電流指令値である。このとき、電流Ifoptと電流Iroptは、例えば可変ダンパ6の減衰力特性マップと、接地荷重変動が発生する代表的な相対速度(例えば0.6m/s)の値とに基づいて、決定される。この場合、数1の式に、接地荷重変動が発生する代表的な相対速度(例えば0.6m/s)の値を代入して、目標減衰力を求めた後に、この目標減衰力と減衰力特性マップとに基づいて電流Ifoptと電流Iroptを決定してもよい。なお、前輪と後輪では、減衰比ζoptや係数Ccが異なる傾向がある。このため、電流Ifoptと電流Iroptは、一般的に異なる値になる。
一方、ABS/TCS/ECS協調制御部43は、ABS/TCS/ECS作動フラグによってABS、TCS、ECSの全ての作動を検出しない場合、減衰力がソフトとなるような電流値を協調制御指令として出力する。
かくして、このように構成される第2の実施形態でも、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。また、第2の実施形態では、ABS/TCS/ECS協調制御部43は、ABS、TCS、ECSが作動したか否かに応じて、予め設定された電流値を協調制御指令として出力する。このため、協調制御指令を算出するときに、演算処理の負荷を低減することができる。従って、ABS、TCS、ECSのいずれかが作動したときには、簡易な演算処理によって荷重変動を抑制することができる。
なお、第2の実施形態では、接地荷重変動が発生する代表的な相対速度の値に基づいて、協調制御指令の電流指令値を決定した場合を例示した。本発明はこれに限らず、例えば車両に搭載した可変ダンパ6について、荷重変動が最も減少する電流指令値を実験的に求めてもよい。図10および図11は、前輪、後輪の電流値と輪荷重変動RMS(Root Mean Square)値との関係の一例を示している。接地荷重変動RMS値は、接地荷重変動に対応している。なお、図10および図11は、左前輪FLおよび左後輪RLの特性の一例を示したが、右前輪FRおよび右後輪RRの特性も同様である。また、図12および図13は、前輪、後輪の可変ダンパ6のピストン速度と減衰力との関係の一例を示している。
図10に示すように、前輪では、例えば0.9Aの指令値で接地荷重変動が最も小さくなることが分かる。また、後輪では、1.6Aの指令値で接地荷重変動が最も小さくなることが分かる。この結果から、消費電力量とばね下接地性を考慮し、前輪では0.9A、後輪は1.3Aが適正値であると考えられる。そこで、ABS/TCS/ECS協調制御部43は、ABS、TCS、ECSのいずれかが作動したときに、協調制御指令の前輪指令値を0.9Aに設定し、協調制御指令の後輪指令値を1.3Aに設定してもよい。
次に、図1、図2および図14は本発明の第3の実施形態を示している。第3の実施形態の特徴は、ばね下制振制御部は、制駆動判断部からの信号が入力されたときに、接地荷重変動抑制に最適な電流指令値を出力することにある。なお、第3の実施形態では、前述した第1の実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略する。
第3の実施形態によるECU51は、第1の実施形態によるECU21とほぼ同様に構成されている。ECU51は、サスペンション装置4を制御する車両制御装置(制御手段)を構成している。ECU51は、可変ダンパ6(力発生機構)の発生力を制御するコントローラである。図2に示すように、ECU51は、コントロール部としてのプロセッサ52を備えている。プロセッサ52は、マイクロコンピュータ等によって構成されている。プロセッサ52は、記憶部(図示せず)に格納されたプログラムを実行することによって、可変ダンパ6の減衰力を制御する。ECU51は、入力側がCAN8、ばね上加速度センサ9、ばね下加速度センサ10等に接続され、出力側は可変ダンパ6等に接続されている。
ECU51は、第1の実施形態によるECU21と同様に、乗り心地制御部24と、姿勢安定性制御部25と、制御指令選択部30とを有している。これに加え、ECU51は、ばね下制振制御部53を有している。
図14に示すように、ばね下制振制御部53は、ばね下の振動を抑制するためのばね下制振制御指令を出力する。具体的には、ばね下制振制御部53は、オブザーバ23から出力される相対加速度を用いて、突起乗り越しの判定を行う。図16中の相対加速度を示す特性曲線の傾斜正、負の部分がそれぞれ、大略、可変ダンパ6の伸び行程、縮み行程に対応している。ばね下制振制御部53は、前記判定処理で用いる閾値として、相対加速度第1~4閾値Kα1~Kα4を用いている。
ばね下制振制御部53は、前記判定処理を行うときに、相対加速度対応基準状態Jα0、および相対加速度対応第1~3状態Jα1~Jα3を用いている(図15参照)。ここで、相対加速度対応基準状態Jα0、及び相対加速度対応第1~3状態Jα1~Jα3は以下の状態をいう。
相対加速度対応基準状態Jα0は、車両の走行が開始され可変ダンパ6の作動行程の伸びと縮みの大きさが所定値未満である状態(初期状態)をいう。相対加速度対応基準状態Jα0では、ばね下制振制御部53は、可変ダンパ6の減衰力特性をソフトにするばね下制振制御指令を出力する制御(以下、指令値ソフト制御という)を行う。なお、相対加速度対応基準状態Jα0とは、突起に関する制御を行わない初期状態を示すもので、説明の便宜上ソフトとしているが、これに限るものではない。
相対加速度対応第1状態Jα1は、(i)第1タイマが計時を行い(カウントし)、(ii)指令値ソフト制御を行う(指令値=ソフトにする)という状態をいう。
相対加速度対応第2状態Jα2は、(i)第2タイマが計時を行い(カウントし)、(ii)指令値ソフト制御を行う(指令値=ソフトにする)状態をいう。
相対加速度対応第3状態Jα3は、(i)第3タイマが計時を行い(カウントし)、(ii)可変ダンパ6の減衰力特性を接地荷重変動が抑制される特性とするばね下制振制御指令(協調制御指令)を出力する制御を行う(指令値=接地荷重変動抑制の電流値にする)状態をいう。
相対加速度対応第2状態Jα2は、(i)第2タイマが計時を行い(カウントし)、(ii)指令値ソフト制御を行う(指令値=ソフトにする)状態をいう。
相対加速度対応第3状態Jα3は、(i)第3タイマが計時を行い(カウントし)、(ii)可変ダンパ6の減衰力特性を接地荷重変動が抑制される特性とするばね下制振制御指令(協調制御指令)を出力する制御を行う(指令値=接地荷重変動抑制の電流値にする)状態をいう。
第3の実施形態では、第1タイマ、第2タイマ、第3タイマのカウント値および相対加速度に基づいて、各状態Jα0、Jα1、Jα2、Jα3の遷移が行われる。
ばね下制振制御部53は、相対加速度に基づいて突起乗り越し判定処理を行い、この判定処理結果に基づいてばね下制振制御指令を出力する。ばね下制振制御部53は、相対加速度対応基準状態Jα0で、可変ダンパ6の減衰力特性をソフトにするばね下制振制御指令を出力する。ここで、ばね下制振制御部53の演算内容を、図15および図16に基づいて、説明する。
図15および図16において、ばね下制振制御部53は、ECU51を搭載した車両が相対加速度対応基準状態Jα0で走行している際、この車両が突起を走行する状態になったか否か〔ひいては突起走行であるか否か〕を判定している。
そして、突起走行であると判定すると、縮み行程(相対加速度<0)であるか否か、および相対加速度が予め定めた閾値(以下、相対加速度縮み側第1閾値という)Kα1より小さい(相対加速度<相対加速度縮み側第1閾値Kα1)〔換言すれば相対加速度縮み側第1閾値Kα1を超える大きさの縮み行程を検出する〕という条件Aが満たされるか否かを判定する。条件Aが満たされた、即ち、相対加速度縮み側第1閾値Kα1を超える大きさの縮み行程を検出した場合には、相対加速度対応第1状態Jα1に遷移すると共に、タイマ(相対加速度第1タイマ)による計時(この計時により得られる値を第1タイマ値Tα1という)をスタートさせる。
また、ばね下制振制御部53には、制駆動判断部31からの信号としてABS/TCS/ECS作動フラグがCAN8を介して入力される。ばね下制振制御部53は、ABS/TCS/ECS作動フラグがONとなってABS、TCS、ECSのいずれかの作動を検出したという条件Bが満たされるか否かを判定する。条件Bが満たされた、即ち、ABS、TCS、ECSのいずれかの作動を検出した場合には、相対加速度対応第3状態Jα3に遷移する。
条件Aと条件Bのいずれも満たさない(相対加速度≧相対加速度縮み側第1閾値Kα1、かつ、ABS/TCS/ECS作動フラグがOFF)場合には、相対加速度対応基準状態Jα0を保持する。
相対加速度対応第1状態Jα1では、相対加速度が伸び行程(相対加速度>0)で定められた所定の閾値(以下、相対加速度第2閾値という)Kα2より大きいことを示す条件(この条件を相対加速度対応第1条件という)を満たすか否かを判断して、この相対加速度対応第1条件を満たす(相対加速度>相対加速度第2閾値Kα2)場合には、相対加速度対応第2状態Jα2に遷移すると共に、タイマ(相対加速度第2タイマ)による計時(この計時により得られる値を第2タイマ値Tα2という)をスタートさせる。一方、第1タイマ値Tα1が設定時間を超える(Tα1>設定時間)という条件(以下、相対加速度対応第2条件という)が満たされた場合には相対加速度対応基準状態Jα0に遷移する。2つの条件(相対加速度対応第1、第2条件)のいずれもが満たされない(相対加速度≦相対加速度第2閾値Kα2である、かつ、Tα1≦設定時間である)場合には、相対加速度対応第1状態Jα1を保持する。
相対加速度対応第2状態Jα2では、相対加速度が予め定めた閾値(以下、相対加速度第3閾値という)Kα3未満となった〔換言すれば相対加速度に対応する相対速度の大きさが相対加速度第3閾値Kα3に対応する大きさの相対速度の閾値を超える大きさの縮み行程を検出する〕ことを示す条件(以下、相対加速度対応第3条件という)が満たされた場合に、相対加速度対応第3状態Jα3に遷移すると共に、タイマ(相対加速度第3タイマ)による計時(この計時により得られる値を第3タイマ値Tα3という)をスタートさせる。一方、第2タイマ値Tα2が設定時間を超えたことを示す条件(以下、相対加速度対応第4条件という)が満たされた場合には相対加速度対応基準状態Jα0に遷移する。2つの条件(相対加速度対応第3、第4条件)のいずれもが満たされない(相対加速度がゼロ以下でない、かつ、Tα2≦設定時間である)場合には、相対加速度対応第2状態Jα2を保持する。
相対加速度対応第3状態Jα3では、乗り越し初期のばね上加速度の悪化防止とばね下ばたつき抑制を両立する最適なタイミングであるので、指令値を、接地荷重変動を抑制するための最適な電流指令値とする。具体的には、指令値を、第2の実施形態で用いた前輪電流指令値(電流Ifopt)と後輪電流指令値(電流Iropt)にする。また、第3タイマ値Tα3が設定時間を超えた(Tα3>設定時間)ことを示す条件C、または、ABS/TCS/ECS作動フラグがOFFになっている条件D(以下、条件C,Dを含めて相対加速度対応第5条件という)を満たす場合には相対加速度対応基準状態Jα0に遷移して制御を終了する。相対加速度対応第5条件を満たさない(Tα3≦設定時間、かつ、ABS/TCS/ECS作動フラグがON)場合には、相対加速度対応第3状態Jα3を保持し、指令値を、接地荷重変動を抑制するための最適な電流指令値に保持する。
さらに、相対加速度が閾値(以下、相対加速度第4閾値という)Kα4を超えた(相対加速度>Kα4)ことを示す条件E、または、ABS/TCS/ECS作動フラグがONになっている条件F(以下、条件E,Fを含めて相対加速度対応第6条件という)を満たす場合には、相対加速度第3タイマを一旦クリアし、再スタートさせる。相対加速度対応第5条件および相対加速度対応第6条件を満たさない場合には、相対加速度対応第3状態Jα3を保持し、指令値を、接地荷重変動を抑制するための最適な電流指令値に保持する。
上述したように、ばね下制振制御部53は、相対加速度が相対加速度第2閾値Kα2(相対加速度を示す特性曲線の傾斜正の部分に対応して定められている。)より大きいことを示す相対加速度対応第1条件を満たした上で、相対加速度が相対加速度第3閾値Kα3という)未満となった〔相対加速度に対応する相対速度の大きさが相対加速度第3閾値Kα3に対応する大きさの相対速度の閾値を超える大きさの縮み行程を検出する〕ことを示す相対加速度対応第3条件が満たされた場合に、相対加速度対応第3状態Jα3に遷移して、接地荷重変動を抑制する減衰力特性にする。このため、突起乗り越しの際、車体1ひいては搭乗者に作用する衝撃を低減でき、これに伴い乗り心地および姿勢安定性を向上できる。
上述したように制御することで、突起乗り越し時の1回目の伸びから縮みへの行程反転時よりも早く制御開始することになるが、ECU51や可変ダンパ6のダイナミクスにより、実際に減衰力が切替わるのが遅れるため、相対加速度第3閾値Kα3の値を適切に設定することで伸びから縮みへの行程反転のタイミングに同期させて減衰力特性を切替えることができる。よって初期のばね上加速度を保持し、その後のばたつきを抑制することが可能となる。
また、ばね下制振制御部53は、ABS/TCS/ECS作動フラグがONとなったときには、相対加速度対応第3状態Jα3に遷移して、接地荷重変動を抑制する減衰力特性にする。これにより、ABS、ECS、TCSのいずれかが作動するときには、接地荷重変動を小さくして、車両の安定性を高めることができる。
かくして、このように構成される第3の実施形態でも、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。また、第3の実施形態では、ECU51は、ばね下の振動を抑制するためのばね下制振制御部53を備え、ばね下制振制御部53は、制駆動判断部31からの信号が入力されたとき、可変ダンパ6による路面への接地荷重変動が小さくなるよう、協調制御指令値としてのばね下制振制御指令を出力する。具体的には、ばね下制振制御部53は、ABS、TCS、ECSが作動したときには、ばね下の振動を抑制するため制御処理を用いて、協調制御指令値として、接地荷重変動を抑制するための最適な電流指令値をばね下制振制御指令として出力する。このため、ABS、TCS、ECSのいずれかが作動したときには、ばね下制振制御指令を用いて荷重変動を抑制することができる。
なお、第3の実施形態では、ばね下制振制御部53は、ABS、TCS、ECSが作動したときには、第2の実施形態によるABS/TCS/ECS協調制御部43と同様に、接地荷重変動を抑制するための制御指令値として、予め設定された電流指令値(前輪電流指令値、後輪電流指令値)を出力するものとした。しかしながら、本発明はこれに限らない。例えば、ばね下制振制御部53は、ABS、TCS、ECSが作動したときには、第1の実施形態によるABS/TCS/ECS協調制御部29と同様に、接地荷重変動抑制に最適な目標減衰力に基づく制御指令値を出力してもよい。
第3の実施形態では、ばね下制振制御部53は、ばね上とばね下との間の相対加速度に基づいて状態遷移するものとした。しかしながら、本発明はこれに限らない。例えば、特開2010-235019号公報に開示されているように、ばね下制振制御部53は、ばね上とばね下との間の相対速度に基づいて状態遷移してもよい。
次に、図1、図2および図17は本発明の第4の実施形態を示している。第4の実施形態の特徴は、協調制御指令優先選択部は、制駆動判断部からの信号が入力されたときに、可変ダンパによる路面への接地荷重変動が小さくなるような協調制御指令を優先して選択することにある。なお、第4の実施形態では、前述した第2の実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略する。
第4の実施形態によるECU61は、第2の実施形態によるECU41とほぼ同様に構成されている。ECU61は、サスペンション装置4を制御する車両制御装置(制御手段)を構成している。ECU61は、可変ダンパ6(力発生機構)の発生力を制御するコントローラである。図2に示すように、ECU61は、コントロール部としてのプロセッサ62を備えている。プロセッサ62は、マイクロコンピュータ等によって構成されている。プロセッサ62は、記憶部(図示せず)に格納されたプログラムを実行することによって、可変ダンパ6の減衰力を制御する。ECU61は、入力側がCAN8、ばね上加速度センサ9、ばね下加速度センサ10等に接続され、出力側は可変ダンパ6等に接続されている。
ECU61は、第2の実施形態によるECU41と同様に、乗り心地制御部24と、姿勢安定性制御部25と、ABS/TCS/ECS協調制御部43と、制御指令選択部63と、協調制御指令優先選択部64とを有している。
図17に示すように、制御指令選択部63は、乗り心地制御指令と、姿勢安定性制御指令とを比較して、大きい値の制御指令を選択する。具体的には、制御指令選択部63は、乗り心地制御指令と、姿勢安定性制御指令とのうちハード側となる値を選択する。このとき、制御指令選択部63は、4輪それぞれの制御指令について同じ処理を実行する。
協調制御指令優先選択部64には、制駆動判断部31からの信号としてABS/TCS/ECS作動フラグがCAN8を介して入力される。ABS/TCS/ECS作動フラグがOFFとなり、ABS、TCS、ECSのいずれも作動を検出しない場合、協調制御指令優先選択部64は、制御指令選択部63から出力された制御指令を選択する。この場合、協調制御指令優先選択部64は、選択した制御指令を最終的な制御指令として出力する。このとき、可変ダンパ6の減衰力可変アクチュエータ7には、乗り心地制御指令と、姿勢安定性制御指令とのうちいずれかの制御指令に基づく駆動電流が供給される。これにより、可変ダンパ6の減衰力はECU61によって制御される。
一方、ABS/TCS/ECS作動フラグがONとなり、ABS、TCS、ECSのいずれかの作動を検出した場合、協調制御指令優先選択部64は、ABS/TCS/ECS協調制御部43から出力された協調制御指令を選択する。このとき、可変ダンパ6の減衰力可変アクチュエータ7には、協調制御指令に基づく駆動電流が供給される。これにより、可変ダンパ6の減衰力はECU61によって制御される。
かくして、このように構成される第4の実施形態でも、第1,第2の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。また、第4の実施形態では、ECU61は、入力された車両の姿勢変化に応じて、可変ダンパ6を制御するための姿勢安定性制御指令値を出力する姿勢安定性制御部25と、入力された車両のばね上振動に応じて、可変ダンパ6を制御するための乗り心地制御指令値を出力する乗り心地制御部24と、を備えている。ECU61は、制駆動判断部31からの信号が入力されたとき、協調制御指令値を優先させて、可変ダンパ6の発生力を制御する。
具体的には、ECU61の協調制御指令優先選択部64は、制駆動判断部31からの信号が入力されたとき(ABS/TCS/ECS作動フラグがONのとき)に、可変ダンパ6による路面への接地荷重変動が小さくなるような協調制御指令を優先して選択する。このため、ABS、ECS、TCSのいずれかが作動するときには、ECU61は、可変ダンパ6の発生力による車輪2と路面との間の接地荷重変動が小さくなるよう、可変ダンパ6を制御する。この結果、ABS、ECS、TCSのいずれかが作動するときには、乗り心地制御指令、姿勢安定性制御指令に拘わらず、接地荷重変動を小さくして、車両の安定性を高めることができる。
なお、第4の実施形態では、ABS/TCS/ECS協調制御部43は、ABS/TCS/ECS作動フラグのONとOFFに応じて、電流指令値を切替えるものとした。しかしながら、本発明はこれに限らない。第4の実施形態によるABS/TCS/ECS協調制御部は、ABS/TCS/ECS作動フラグのONとOFFに拘わらず、予め設定した接地荷重変動抑制に最適な電流指令値を出力してもよい。この場合でも、協調制御指令優先選択部64は、ABS/TCS/ECS作動フラグがONのときだけ、協調制御指令を優先して選択し、出力する。
第4の実施形態では、第2の実施形態に協調制御指令優先選択部64等を適用した場合を例に挙げて説明したが、第1,第3の実施形態に適用してもよい。
前記各実施形態では、アクチュエータ(力発生機構)である可変ダンパ6によってセミアクティブサスペンションを構成した場合を例に説明した。本発明はこれに限らず、アクチュエータは、車体と車輪との間に上下方向の力を発生させるアクティブサスペンションを構成してもよい。具体的には、アクチュエータは、車体と車輪との間に伸長方向または縮小方向の力を発生させる電気アクチュエータ、油圧アクチュエータ等によって構成される。
前記各実施形態では、車体1と車輪2との間で調整可能な力を発生するアクチュエータ(力発生機構)を、減衰力調整式の可変ダンパ6により構成する場合を例に挙げて説明した。本発明はこれに限らず、例えばアクチュエータを液圧緩衝器の他に、エアサスペンション、スタビライザ(キネサス)、電磁サスペンション等により構成してもよい。
前記各実施形態では、姿勢安定性制御部25は、アンチダイブスクオット制御指令とアンチロール制御指令の両方を考慮した姿勢安定性制御指令を出力するものとした。本発明はこれに限らず、姿勢安定性制御部は、アンチダイブスクオット制御指令とアンチロール制御指令のうちいずれか一方である姿勢安定性制御指令を出力してもよい。即ち、姿勢安定性制御指令は、アンチダイブスクオット制御指令でもよく、アンチロール制御指令でもよい。このため、姿勢安定性制御部は、アンチダイブスクオット制御部とアンチロール制御部とのうちいずれか一方を省いた構成でもよい。
前記各実施形態では、ECU21,41,51,61は、乗り心地制御部24、姿勢安定性制御部25を備えるものとした。本発明はこれに限らず、ECUは、乗り心地制御部と姿勢安定性制御部とのうちいずれか一方を省いたものでもよい。また、ECUは、乗り心地制御部と姿勢安定性制御部の両方を省き、他の制御部を備えたものでもよい。
前記各実施形態では、4輪自動車に用いるサスペンションシステムを例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば2輪、3輪自動車、または作業車両、運搬車両であるトラック、バス等にも適用できる。
前記各実施形態は例示であり、異なる実施形態や変形例で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能である。
1:車体、2:車輪、4:サスペンション装置、6:可変ダンパ(減衰力調整式緩衝器、アクチュエータ、力発生機構)、7:減衰力可変アクチュエータ、8:CAN、9:ばね上加速度センサ、10:ばね下加速度センサ、21,41,51,61:ECU(制御手段、車両制御装置)、24:乗り心地制御部、25:姿勢安定性制御部、29,43:ABS/TCS/ECS協調制御部、30,63:制御指令選択部、31:制駆動判断部、53:ばね下制振制御部、64:協調制御指令優先選択部
Claims (6)
- 車両の車体と4つの車輪との間にそれぞれ設けられ、発生力がソフトとハードの間で調整可能な複数の力発生機構と、該力発生機構の発生力を可変に制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、4つの前記車輪を独立に制駆動する制駆動判断部からの信号が入力されたとき、前記力発生機構による路面への接地荷重変動が小さくなるよう、前記力発生機構の前記発生力を調整する車両制御システム。 - 前記制御手段は、ばね下の振動を抑制するためのばね下制振制御部を備え、
前記ばね下制振制御部は、4つの前記車輪を独立に制駆動する制駆動判断部からの信号が入力されたとき、前記力発生機構による路面への接地荷重変動が小さくなるよう、協調制御指令値を出力する請求項1に記載の車両制御システム。 - 前記制御手段は、入力された前記車両の姿勢変化に応じて、前記力発生機構を制御するための姿勢安定性制御指令値を出力する姿勢安定性制御部と、
入力された前記車両のばね上振動に応じて、前記力発生機構を制御するための乗り心地制御指令値を出力する乗り心地制御部と、を備え、
前記制御手段は、4つの前記車輪を独立に制駆動する制駆動判断部からの信号が入力されたとき、前記協調制御指令値を優先させて、前記力発生機構の前記発生力を制御する請求項2に記載の車両制御システム。 - 車両の車体と4つの車輪との間にそれぞれ設けられ、前記車体と前記車輪との間の発生する力を可変するアクチュエータを制御する車両制御装置であって、
4つの前記車輪を独立に制駆動する制駆動判断部からの信号が入力されたとき、前記アクチュエータの発生力による前記車輪と路面間の接地荷重変動が小さくなるよう、前記アクチュエータを制御する車両制御装置。 - ばね下の振動を抑制するためのばね下制振制御部を備え、
前記ばね下制振制御部は、4つの前記車輪を独立に制駆動する制駆動判断部からの信号が入力されたとき、前記アクチュエータの発生力による前記車輪と路面間の接地荷重変動が小さくなるよう、協調制御指令値を出力する請求項4に記載の車両制御装置。 - 入力された前記車両の姿勢変化に応じて、前記アクチュエータを制御するための姿勢安定性制御指令値を出力する姿勢安定性制御部と、
入力された前記車両のばね上振動に応じて、前記アクチュエータを制御するための乗り心地制御指令値を出力する乗り心地制御部と、を備え、
4つの前記車輪を独立に制駆動する制駆動判断部からの信号が入力されたとき、前記協調制御指令値を優先させて、前記アクチュエータを制御する請求項5に記載の車両制御装置。
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