JP2023087720A - プレコート液、インクセット、インクジェット記録方法及びインクジェット記録システム - Google Patents

プレコート液、インクセット、インクジェット記録方法及びインクジェット記録システム Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の課題は、高顔料濃度インクを用いる画像形成プロセスにおいて、当該インクの埋まり不足や意図しない混色及び画像形成時の白スジの発生を防止することのできるプレコート液及びインクセットを提供することである。【解決手段】少なくとも界面活性剤、有機溶剤、凝集剤、樹脂及び水を含有し、前記界面活性剤が、下記一般式(1)で表される構造を有し、前記有機溶剤が、3つ以上のヒドロキシ基を有する化合物を含有することを特徴とするプレコート液。TIFF2023087720000012.tif26165(R1~R3は、水素原子又は炭素数が8~18のアシル基を表す。R1~R3はのうち少なくとも1つはアシル基である。R1~R3の炭素数の総和は、8~100の範囲内である。nは、1~10の自然数を表す。)【選択図】図1

Description

本発明は、プレコート液、インクセット、インクジェット記録方法及びインクジェット記録システムに関する。より詳しくは、高顔料濃度インクを用いる画像形成プロセスにおいて、当該インクの埋まり不足や意図しない混色及び画像形成時の白スジの発生を防止することのできるプレコート液、インクセット、インクジェット記録方法及びインクジェット記録システムに関する。
近年、インクジェット記録方式は簡便・安価に画像を作成出来るため、写真、各種印刷、マーキング、カラーフィルター等の特殊印刷など、様々な印刷分野に応用されてきている。
特に、微細なインク液滴の出射、及びインクドットの形成を制御するインクジェット記録装置や、色再現域、耐久性、出射適性等を改善したインク及びインクの吸収性、色材の発色性、表面光沢などを飛躍的に向上させた専用紙を用い、銀塩写真に匹敵する画質を得ることも可能となっている。
しかしながら、専用紙を必要とするインクジェット画像記録システムでは、用いることのできる記録媒体が制限されること、記録媒体のコストアップ等が問題となる。
一方、オフィスにおいては、記録媒体(例えば、普通紙、コート紙、アート紙等)の制約を受けずに高速でフルカラー印字が行えるシステムのニーズが益々高まりつつある。
例えば普通紙に関するインクジェット記録方法に関し、高速で印字でき、文字再現性がよく、印字の際の裏抜け(印字したインクが記録媒体を通過し、裏面にその画像が映る現象)、フェザリング、画像滲みの発生がない等の観点で種々の検討が行われてきた。
その一つの方法として、インクジェット用インクとして、水性インクジェット用インクが広く用いられているが、インクが紙に吸収されることによる滲みによりドットの鮮鋭性が損なわれたり、インクどうしが接触する際にカラーブリード(色滲み)が発生したりといった問題が発生していた。
特許文献1では、顔料濃度を高くして水の比率を少なくすることにより、インクに速乾性を付与することで上記の問題を解決する技術が示されている。
しかしながら、前記特許文献1に記載されている実施例と同様の条件を採用した場合、インクの液滴が12pLと大きいため、高顔料濃度化したことによる水分量の低減効果、すなわちドットの鮮鋭性が損なわれることの防止効果やカラーブリードの抑制効果が得られないのと同時に、インクドット内の顔料付量が多いことにより画像の色域が狭くなる(例えばシアンがブルーになる。)という問題が残されている。
特開2018-114751号公報
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、高顔料濃度インクを用いる画像形成プロセスにおいて、当該インクの埋まり不足や意図しない混色及び画像形成時の白スジの発生を防止することのできるプレコート液、インクセット、インクジェット記録方法及びインクジェット記録システムを提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討した結果、インクジェット・プリント方式による画像形成に下記一般式(1)で表される構造を有する界面活性剤と、3つ以上のヒドロキシ基を有する化合物を含有する有機溶剤とを含有するプレコート液を用いることによって上記課題を解決できることを見いだし本発明に至った。
Figure 2023087720000002
(R~Rは、それぞれ独立に、炭素数が8~18の範囲内の水素原子又はアシル基を表す。R~Rはのうち少なくとも1つはアシル基である。また、nが2以上となり、Rが複数ある場合には、各Rは同一であっても同一でなくてもよい。R~Rの炭素数の総和は、8~100の範囲内である。nは、1~10の範囲内の自然数を表す。)
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.インクジェット・プリント方式による画像形成に用いるプレコート液であって、少なくとも界面活性剤、有機溶剤、凝集剤、樹脂及び水を含有し、前記界面活性剤が、上記一般式(1)で表される構造を有し、前記有機溶剤が、3つ以上のヒドロキシ基を有する化合物を含有することを特徴とするプレコート液。
2.前記一般式(1)におけるR~Rの炭素数の総和が、8~59の範囲内であることを特徴とする第1項に記載のプレコート液。
3.前記一般式(1)におけるnが、6~10の範囲内の自然数であることを特徴とする第1項又は第2項に記載のプレコート液。
4.前記界面活性剤が、前記プレコート液全量に対し0.05~5.00質量%の範囲内であることを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載のプレコート液。
5.前記3つ以上のヒドロキシ基を有する前記有機溶剤が、前記プレコート液全量に対し1~10質量%の範囲内であることを特徴とする第1項から第4項までのいずれか一項に記載のプレコート液。
6.前記凝集剤が、前記プレコート液全量に対し3~20質量%の範囲内であることを特徴とする第1項から第5項までのいずれか一項に記載のプレコート液。
7.前記凝集剤が、多価金属塩であることを特徴とする第1項から第6項までのいずれか一項に記載のプレコート液。
8.前記多価金属塩の金属元素が、カルシウム又はマグネシウムであることを特徴とする第7項に記載のプレコート液。
9.前記多価金属塩が、有機酸塩であることを特徴とする第7項又は第8項に記載のプレコート液。
10.前記多価金属塩が、有機スルホン酸塩であることを特徴とする第7項から第9項までのいずれか一項に記載のプレコート液。
11.第1項から第10項までのいずれか一項に記載のプレコート液と、顔料濃度が3~15質量%の範囲内のインクとを組み合わせたセットであることを特徴とするインクセット。
12.プレコート液を用いるインクジェット記録方法であって、前記プレコート液として、第1項から第10項までのいずれか一項に記載のプレコート液又は第11項に記載のインクセットを用いることを特徴とするインクジェット記録方法。
13.プレコート液を用いるインクジェット記録システムであって、前記プレコート液として、第1項から第10項までのいずれか一項に記載のプレコート液又は第11項に記載のインクセットを用いることを特徴とするインクジェット記録システム。
本発明の上記手段により、高顔料濃度インクを用いる画像形成プロセスにおいて、当該インクの埋まり不足や意図しない混色及び画像形成時の白スジの発生を防止することのできるプレコート液、インクセット、インクジェット記録方法及びインクジェット記録システムを提供することができる。
本発明の効果の発現機構ないし作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
本発明は、インクジェット・プリント方式による画像形成に用いるプレコート液であって、少なくとも界面活性剤、有機溶剤、凝集剤、樹脂及び水を含有し、前記界面活性剤が、前記一般式(1)で表される構造を有し、前記有機溶剤が、3つ以上のヒドロキシ基を有する化合物を含有することを特徴とする。
前述したように、従来技術のように、インクに含有される顔料濃度を高くすることによりドットの鮮鋭性の損失やカラーブリード(色滲み)の発生を抑制する技術においては、インク液滴が大きいことによる弊害により、ドットの鮮鋭性の損失やカラーブリード(色滲み)の発生の抑制効果が十分でないことや、色域が狭くなるといった問題が残されている。
本発明は、高顔料濃度の水性インクジェットインクをインク微小液滴で射出し印画する場合においても、記録媒体表面に、ある特定のプレコート液を用いた処理を施すことによってインクが十分に記録媒体上に濡れ広がらせ、印画されたインクドット内の顔料付量が多くなりすぎないように適切な量に制御することができ、これによって画像の色域が狭くなるという問題を解消し、様々な記録媒体に対して、ドット真円性、画像の均質性や画像濃度に優れ、かつ、混色や埋まり不足といった画像欠陥のない、高画質が画像を提供することが可能となると推察される。
本発明に好ましい画像記録装置の一例を示した模式図
本発明のプレコート液は、インクジェット・プリント方式による画像形成に用いるプレコート液であって、少なくとも界面活性剤、有機溶剤、凝集剤、樹脂及び水を含有し、前記界面活性剤が、前記一般式(1)で表される構造を有し、前記有機溶剤が、3つ以上のヒドロキシ基を有する化合物を含有することを特徴とする。
この特徴は、下記各実施形態(態様)に共通する又は対応する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、前記一般式(1)におけるR~Rの炭素数の総和が、8~59の範囲内であることが界面活性剤の水への分散性の観点から好ましい。
前記一般式(1)におけるnが、6~10の範囲内の自然数であることが、界面活性剤の水への分散性の観点からより好ましい。
前記界面活性剤が、前記プレコート液全量に対し0.05~5.00質量%の範囲内であることが、インクの濡れ性とのバランスの観点から好ましい。
前記3つ以上のヒドロキシ基を有する前記有機溶剤が、前記プレコート液全量に対し1~10質量%の範囲内であることが、インクの浸透を抑制し、インクのドット径の拡大を促進する観点から好ましい。
前記凝集剤が、前記プレコート液全量に対し3~20質量%の範囲内であることが、インクの凝集性と濡れ性のバランスの観点から好ましい。
前記凝集剤が、多価金属塩であることが、インクの凝集性及び保存安定性の観点から好ましい。
前記多価金属塩の金属元素が、カルシウム又はマグネシウムであることが、インクの凝集性の観点からより好ましい。
前記多価金属塩が、有機酸塩であることが、インクの凝集性の観点からさらに好ましい。
前記多価金属塩が、有機スルホン酸塩であることが、インク中の顔料と樹脂の両方を混和しながらバランスよく凝集させることができる観点から好ましい。
本発明のインクセットは、上記プレコート液と、顔料濃度が3~15質量%の範囲内のインクとを組み合わせたセットであることを特徴とする。これにより、本発明のプレコート液の効果がより増大する。
本発明のインクジェット記録方法は、プレコート液を用いるインクジェット記録方法であって、前記プレコート液として、上記プレコート液又は上記インクセットを用いることを特徴とする。これによって、本発明に係る前記課題を解決した高画質の画像を得ることができる。
本発明のインクジェット記録システムは、プレコート液を用いるインクジェット記録システムであって、前記プレコート液として、上記プレコート液又は上記インクセットを用いることを特徴とする。これによって、本発明に係る前記課題を解決した高画質の画像を得ることができる。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
1.プレコート液
本発明のプレコート液は、インクジェット・プリント方式による画像形成に用いるプレコート液であって、少なくとも界面活性剤、有機溶剤、凝集剤、樹脂及び水を含有し、前記界面活性剤が、下記一般式(1)で表される構造を有し、前記有機溶剤が、3つ以上のヒドロキシ基を有する化合物を含有することを特徴とする。
プレコート液は、インクジェットインクを付与する前に基材上に付与され、乾燥した後に、前記基材上にてインクジェットインクと混ざり合うことでインク凝集層を形成する。
また、本発明のプレコート液が乾燥する前にインクジェットインクを付与することもでき、その場合はインクジェットインクが均一に凝集及び増粘する。
高顔料濃度の水性インクジェットインクをインク微小液滴で射出し印画する場合において、インク着弾前に本発明のプレコート液を用いた処理を記録媒体表面に施すことによって、インクが十分に記録媒体上に濡れ広がり、着弾したインクドット内の顔料付量を適切な量に制御される。
これにより、着弾したインクのドット径が通常より大きくなり、印画物中の当該インクの埋まり不足や意図しない混色及び画像形成時の白スジの発生を防止することができる。
(1.1)界面活性剤
本発明のプレコート液は、少なくとも界面活性剤を含有し、前記界面活性剤が下記一般式(1)で表される構造を有していることを特徴とする。
Figure 2023087720000003
(R~Rは、それぞれ独立に、炭素数が8~18の範囲内の水素原子又はアシル基を表す。R~Rのうち少なくとも1つはアシル基である。また、nが2以上となり、Rが複数ある場合には、各Rは同一であっても同一でなくてもよい。R~Rの炭素数の総和は、8~100の範囲内である。nは、1~10の範囲内の自然数を表す。)
一般的には、プレコート液は、界面活性剤を含有することにより、例えば当該プレコート液のノズルからの出射安定性の向上や、記録媒体に着弾した液滴の広がり(ドット径の拡大)を制御することができる。
本発明のプレコート液は、一般式(1)で表されるようなグリセリン系の構造を有する界面活性剤を含有するため、表面張力及び粘度が高く、特に高速・高記録解像度の印刷時には、印刷基材に均一に塗布できないおそれがあり、画質の低下や乾燥性不良が生じてしまうおそれが出てくる。
しかし、一般式(1)で表されるようなグリセリン系の構造を有する界面活性剤と親和性の高い有機溶剤、すなわち3つ以上のヒドロキシ基を有する化合物を含有する有機溶剤を当該界面活性剤とともにプレコート液が含有することにより、表面張力や粘度が適切に制御され印刷基材に均一に塗布されることで、画質の低下や乾燥性不良を抑制することができる。
したがって、上述のようなプレコート液を用いることにより、プレコート液上に高顔料濃度の水系インクを微小液滴で射出し印刷基材に着弾させる場合においても適切な表面張力と粘度を保つことができ、インクが十分に印刷基材上に均一に濡れ広がり、インクの着弾によって形成されたインクドット内の顔料付量が過多になることを防止することができ、また、これにより印刷画像の色域が狭くなることを抑制することができる。
よって、本発明によれば、様々な記録媒体に対して、ドット真円性、画像の均質性及び画像濃度に優れ、かつ、混色や埋まり不足といった画像欠陥のない高画質な画像を提供することができる。
本発明の実施態様としては、前記一般式(1)におけるR~Rの炭素数の総和が、8~59の範囲内であることが界面活性剤の水への分散性の観点から好ましい。
前記界面活性剤が、前記一般式(1)で表される構造を有し、当該一般式(1)におけるR~Rの炭素数の総和が、8~59の範囲内であるものとしては、例えば阪本薬品工業社製の「ML-750」(デカグリセリンモノラウリル酸エステル R~Rの炭素数の総和が12)、「ML-500」(ヘキサグリセリンモノラウリル酸エステル R~Rの炭素数の総和が12)、「TS-7S」(デカグリセリントリステアリン酸エステル R~Rの炭素数の総和が54)、「TS-5S」(ヘキサグリセリントリステアリン酸エステル R~Rの炭素数の総和が54)、「ML-310」(テトラグリセリンモノラウリル酸エステル R~Rの炭素数の総和が12)、「MM-750」(デカグリセリンモノミリスチン酸エステル R~Rの炭素数の総和が14)、「MCA-750」(デカグリセリンモノカプリル酸エステル R~Rの炭素数の総和が8)及び「MSW-7S」(デカグリセリンモノステアリン酸エステル R~Rの炭素数の総和が18)等が挙げられる。
前記一般式(1)におけるnが、6~10の範囲内の自然数であることが、界面活性剤の水への分散性の観点からより好ましい。
前記界面活性剤が、前記一般式(1)で表される構造を有し、当該一般式(1)におけるnが、6~10の範囲内の自然数であるものとしては、例えば阪本薬品工業社製の「ML-750」(デカグリセリンモノラウリル酸エステル nが10)、「ML-500」(ヘキサグリセリンモノラウリル酸エステル nが6)、「TS-7S」(デカグリセリントリステアリン酸エステル nが10)、「TS-5S」(ヘキサグリセリントリステアリン酸エステル nが6)、「PS-5S」(ヘキサグリセリンペンタステアリン酸エステル nが6)、「MM-750」(デカグリセリンモノミリスチン酸エステル nが10)、「MCA-750」(デカグリセリンモノカプリル酸エステル nが10)及び「MSW-7S」(デカグリセリンモノステアリン酸エステル nが10)等が挙げられる。
前記界面活性剤が、前記プレコート液全量に対し0.05~5.00質量%の範囲内であることが、インクの濡れ性とのバランスの観点から好ましい。
(1.2)有機溶剤
本発明のプレコート液は、少なくとも前述の界面活性剤に加えて有機溶剤をも含有する。
有機溶剤は、本発明のプレコート液の均一塗布性確保のために添加され、これにより記録媒体の濡れ性が向上する。
本発明のプレコート液は、少なくとも3つ以上のヒドロキシ基を有する化合物を含有する有機溶剤を含有する。
ヒドロキシ基を3つ以上有する有機溶剤としては、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン(混合物)、ブタントリオール、ペンタントリオール、ヘキサントリオール、トリエタノールアミンが挙げられる。
トリエタノールアミンは塩基性であり、前処理のpHが塩基性よりになることから、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン(混合物)、ブタントリオール、ペンタントリオール、ヘキサントリオールが好ましい。
一方、ペンタントリオールとヘキサントリオールは、常圧で揮発しないため記録媒体に残存してしまうこと、トリグリセリンは粘度が高くなりすぎる。
また、グリセリン、ジグリセリン、ブタントリオールは、親水性が高く、一般式に記載の界面活性剤との親和性が高く、常圧で沸点を持つため、記録媒体に残留しにくいため有機溶剤としては更に好ましい。
<ヒドロキシ基を3つ以上有する有機溶剤のプレコート液全量に対する割合>
前記3つ以上のヒドロキシ基を有する化合物である前記有機溶剤が、前記プレコート液全量に対し1~10質量%の範囲内であることが、インクの浸透を抑制し、インクのドット径の拡大を促進する観点から好ましい。
本発明のプレコート液には、前述のヒドロキシ基を3つ以上有する化合物である有機溶剤以外にもその他の有機溶剤から選ばれる一種又は二種以上を組み合わせて含有することができる。
その他の有機溶剤としては、例えばアルコール類、多価アルコール類、アミン類、アミド類、グリコールエーテル類、炭素数が4以上である1,2-アルカンジオール類などが挙げられる。
具体的には、例えばグリセリン、プロピレングリコール(PG)、1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール(1,2-HD)、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-メチルペンタン-2,4-ジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、デカグリセリル、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘプタンジオール、1,2-オクタンジオール、1,2,6-ヘキサントリオール、2-ピロリジノン、ジメチルイミダゾリジノン等が挙げられる。
<その他の有機溶剤のプレコート液全量に対する割合>
その他の有機溶剤の総含有量は、プレコート液の総質量100質量%に対し、5~40質量%の範囲内が好ましく、10~40質量%の範囲内がより好ましい。
(1.3)凝集剤
本発明のプレコート液に含有される凝集剤は、インク中に含有される色材(顔料及び染料)や樹脂等の固体成分を意図的に凝集させ、画像形成時にインク液滴間のにじみや色ムラを防止することで画質を向上させるものである。
凝集剤を含有するプレコート液を用いる際には、特に高速・高記録解像度の印刷時には、凝集剤を用いたことによりプレコート液やインクの乾燥性が低下し、塗工装置内にプレコート液やインクが付着したり、印刷後に記録媒体を重ねると裏移りが起きてしまうため、プレコート液を均一に記録媒体に塗布することが重要であり、そのために本発明のプレコート液には前述の有機溶剤が添加されている。
<有機酸>
「有機酸」とは、酸性をもつ有機化合物全体の総称であり、カルボン酸、スルホン酸、スルフィン酸、フェノール、エノール、チオフェノール、イミド、オキシム、芳香族スルフォンアミド、第一級及び第二級ニトロ化合物などの官能基や骨核を持つ有機化合物である。
前記プレコート液の凝集剤が有機酸塩であると、pH変動によって前記インク中のアニオン性の成分を凝集させることができる。
以下に代表的な有機酸を挙げるが本発明はこれらに限定されるものではない。
例えばシュウ酸、酒石酸、安息香酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、クメンスルホン酸、ベンゼンスルフィン酸、p-トルエンスルフィン酸、フェノール、ピクリン酸などである。
(多価金属塩)
本発明のプレコート液が含有する凝集剤は、多価金属塩であることが、インクの凝集性及び保存安定性の観点から好ましい。
金属イオンの中でも多価金属イオンは、一価金属イオンと比べて、アニオン-カチオン間相互作用や吸着平衡移動の反応速度が大きく、またその能力も高い。
多価金属塩として無機酸塩(無機金属塩)と有機酸塩(有機金属塩)が挙げられる。
プレコート液に含まれる無機酸塩(無機金属塩)及び/又は有機酸塩(有機金属塩)は、水や、分子構造中にヒドロキシ基を1個以上含む化合物の存在下にて電離し、水性インクジェットインクが印刷されるプレコート液層には高濃度の金属カチオン成分が存在することとなる。
この金属カチオン成分が、インクジェットインク中に溶解及び/又は分散された状態で存在する顔料や樹脂などのアニオン電荷を帯びた固体成分に対し、アニオン-カチオン間相互作用や吸着平衡移動を引き起こすことにより、溶解及び/又は分散機能を低下させ、顔料どうしの混色を抑制する。
前記多価金属塩としては、二価以上の価数をもつ金属の塩を用いることができる。
多価金属塩を構成する金属(カチオン)の種類は特に限定されないが、例えばCa2+、Cu2+、Ni2+、Mg2+、Zn2+、Ba2+などの二価金属イオン、Al3+、Fe3+、Cr3+、Y3+などの三価金属イオン及びZr4+などの四価金属イオン等が挙げられる。
多価金属塩を構成する塩の種類は特に限定されないが、例えば炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、塩酸塩、有機酸塩、ホウ酸塩及びリン酸塩などの公知の塩を使用できる。
特に好ましい多価金属塩の具体例としては、例えば塩化カルシウムや塩化マグネシウム、硝酸カルシウムや硝酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウムや乳酸マグネシウム、パントテン酸カルシウムのようなカルボン酸のカルシウム塩又はマグネシウム塩などが挙げられる。
前記多価金属塩の含有量は、プレコート液の総質量100質量%に対し、0.5~20質量%の範囲内が好ましく、1~10質量%の範囲内がより好ましい。
これにより、色材含有インク中のアニオン性の成分を効果的に凝集させることができ、画像品質と耐熱水性のバランスを調整することができる。
水溶液中の多価金属塩の含有量は、公知の方法で測定することができ、例えばICP発光分析等が挙げられる。
<無機酸塩(無機金属塩)>
本発明に係る無機酸は、インク中に含まれうる顔料を凝集し得るものである。
本発明のプレコート液に含有される無機酸塩(無機金属塩)としては特に制限はないが、例えば硫酸塩、塩化物、硝酸塩等が挙げられる。
インクジェットインク中の多価金属イオンの含有量を、上記で規定した量とすることにより、高い分散安定性を有するインクを得ることができる。
<有機酸塩(有機金属塩)>
本発明に係る有機酸は、前記インク中に含まれうる顔料を凝集し得るものである。
有機酸塩としては、前述の有機酸を、二価以上の価数をもつ金属で中和した塩を用いることができる。
有機酸塩を構成する金属(カチオン)の種類は特に限定されないが、例えばCa2+、Cu2+、Ni2+、Mg2+、Zn2+、Ba2+などの二価金属イオン、Al3+、Fe3+、Cr3+、Y3+などの三価金属イオン及びZr4+などの四価金属イオン等が挙げられる。
前記多価金属塩が、有機酸塩であることが、インクの凝集性の観点から更に好ましい。
前記多価金属塩が、有機スルホン酸塩であることが、インク中の顔料と樹脂の両方を混和しながらバランスよく凝集させることができる観点から好ましい。
有機酸を含有させる場合には、有機酸の含有量は、プレコート液の全量100質量%に対し、0.1~10質量%の範囲内が好ましく、1~3質量%の範囲内がより好ましい。
なお、有機酸を用いる場合、有機酸の付量は、インクに含まれるアニオン成分の中和当量以下にプレコート液のpHを調整する量であることが好ましい。
水溶液中の有機酸の含有量は、公知の方法で測定することができ、例えば高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等を挙げることができる。
前記凝集剤が、前記プレコート液全量に対し3~20質量%の範囲内であることが、インクの凝集性と濡れ性のバランスの観点から好ましい。
(1.4)樹脂
本発明のプレコート液は、印刷塗工紙上に塗布される点から、組み合わせて用いられるインクに含有される色材の定着性を上げるなどの目的で樹脂を含有することを特徴とする。
樹脂は水に分散又は溶解可能であれば、特に限定されるものではないが、エマルジョン状態で分散されていることが好ましい。
ただし、その場合インクジェットによる射出性を損なわないという観点から、300nm以下の粒径であることが好ましい。
溶解性樹脂の場合、組成や分子量は特に限定はないが、重合度の高い樹脂ほど射出性が悪化する傾向があるため、樹脂の組成にもよるが好ましい分子量50000以下であることが好ましい。
(1.5)水
本発明のプレコート液に使用可能な水については、特に限定されるものではなく、イオン交換水、蒸留水、又は純水であり得る。
(1.6)その他
本発明のプレコート液は、本発明の効果を損なわない範囲で、その他、架橋剤、防黴剤、殺菌剤等、他の成分を適宜配合することができる。
さらに、例えば特開昭57-74193号公報、同57-87988号公報及び同62-261476号公報に記載の紫外線吸収剤、特開昭57-74192号公報、同57-87989号公報、同60-72785号公報、同61-146591号公報、特開平1-95091号公報及び同3-13376号公報等に記載の退色防止剤、アニオン、カチオン又は非イオンの各種界面活性剤、特開昭59-42993号公報、同59-52689号公報、同62-280069号公報、同61-242871号公報及び特開平4-219266号公報等に記載の蛍光増白剤、消泡剤、ジエチレングリコール等の潤滑剤、防腐剤、増粘剤、帯電防止剤等、公知の各種添加剤を含有させることもできる。
本発明のプレコート液を記録媒体に塗布する方法としては公知の方法によりすることができ、特に制限はないが、例えばロールコーティング方式による塗布、インクジェットによる塗布、バーコーターによる塗布方法を挙げることができ、特にロールコーティング方式による塗布が、使用するプレコート液の汎用性の観点から好ましい。
2.インクセット
(2.1)プレコート液とインク
本発明のインクセットは、前述の本発明のプレコート液と、顔料濃度が3~15質量%の範囲内のインクとを組み合わせたセットであることを特徴とする。
これにより、本発明のプレコート液の効果がより増大する。
また、インクドット内に適切な顔料付量を施すことができ、画像の色域が狭くなる(例えばシアンがブルーになる)ことを抑制することができる。
本発明のプレコート液については、前述のとおりである。インクについては、以下において詳述する。
(2.2)インク
本発明のプレコート液と組み合わせて用いることに適したインクは、高濃度の顔料を含有する水性インクジェットインクであり、本発明のプレコート液と、顔料濃度が3~15質量%の範囲内のインクとを組み合わせたセットであることが、インクドット内の適切な顔料付量の観点から好ましい。
ここで、「水性インクジェットインク」とは、混入や吸湿などによらない意図的に添加された水を少なくともインク溶媒に含んでいるインクのことをさし、具体的には10質量%以上の水を含むインクであると定義する。
さらに、インクジェットにより吐出可能である点からインクの粘度が0.5~60cPの範囲内であることを特徴とする。
水性インクジェットインクを使用するメリットとしては、環境安全性に加え、印刷物に残留したインク溶媒が滲みブロッキングなどの悪さをしにくいこと、画像の風合いや彩度を出しやすいこと、一般的な油系インクに比べ乾燥にかかる負荷が小さいこと、などが上げられる。
(2.2.1)色材
本発明のプレコート液と組み合わせて用いられるインクとしては、顔料を用いることができる。
顔料としては、従来公知のものを特に制限なく使用でき、例えば不溶性顔料、レーキ顔料等の有機顔料及び、酸化チタン等の無機顔料を好ましく用いることができる。
不溶性顔料としては、特に限定するものではないが、例えばアゾ、アゾメチン、メチン、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、キナクリドン、アントラキノン、ペリレン、インジゴ、キノフタロン、イソインドリノン、イソインドリン、アジン、オキサジン、チアジン、ジオキサジン、チアゾール、フタロシアニン、ジケトピロロピロール等が好ましい。
好ましく用いることのできる具体的な有機顔料としては、以下の顔料が挙げられる。
マゼンタ又はレッド用の顔料としては、例えばC.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントレッド222、C.I.ピグメント・バイオレット19等が挙げられる。
オレンジ又はイエロー用の顔料としては、例えばC.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー15:3、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー155等が挙げられる。特に色調と耐光性のバランスにおいて、C.I.ピグメントイエロー155が好ましい。
グリーン又はシアン用の顔料としては、例えばC.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
また、ブラック用の顔料としては、例えばC.I.ピグメントブラック1、C.I.ピグメントブラック6、C.I.ピグメントブラック7等が挙げられる。
なお、インク吐出安定性と密着性の確保が一般に困難な酸化チタンにおいて、本発明により特に好適に滲みを生じにくくし、かつ、密着性を高めることができる。
酸化チタンには、アナターゼ型、ルチル型及びブルーカイト型の三つの結晶形態があるが、汎用なものとしてはアナターゼ型とルチル型に大別できる。
特に限定するものではないが、屈折率が大きく隠蔽性が高いルチル型が好ましい。
具体的には、富士チタン工業株式会社のTRシリーズ、テイカ株式会社のJRシリーズや石原産業株式会社のタイペークなどが挙げられる。
本発明に係るインクは、前記顔料を分散させるための顔料分散剤を含有することが好ましい。
前記顔料分散剤は、格別限定されないがアニオン性基を有する高分子分散剤が好ましく、分子量が5000~200000の範囲内のものを好適に用いることができる。
高分子分散剤としては、例えばスチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン誘導体、アクリル酸、アクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマル酸、フマル酸誘導体から選ばれた二種以上の単量体に由来する構造を有するブロック共重合体、ランダム共重合体及びこれらの塩、ポリオキシアルキレン、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等を挙げることができる。
高分子分散剤は、アクリロイル基を有することが好ましく中和塩基で中和して添加することが好ましい。
ここで中和塩基は特に限定されないが、アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン等の有機塩基であることが好ましい。
特に、顔料が酸化チタンであるとき、酸化チタンは、アクリロイル基を有する高分子分散剤で分散されていることが好ましい。
また、高分子分散剤の添加量は、顔料に対して、10~100質量%の範囲内であることが好ましく、10~40質量%の範囲内がより好ましい。
顔料は、顔料を上記高分子分散剤で被覆した、いわゆるカプセル顔料の形態を有することが特に好ましい。
顔料を高分子分散剤で被覆する方法としては、公知の種々の方法を用いることができるが、例えば転相乳化法、酸析法、又は、顔料を重合性界面活性剤により分散し、そこへモノマーを供給し、重合しながら被覆する方法などを好ましく例示できる。
特に好ましい方法として、水不溶性樹脂を、メチルエチルケトンなどの有機溶剤に溶解し、さらに塩基にて樹脂中の酸性基を部分的、若しくは完全に中和後、顔料及びイオン交換水を添加し、分散したのち、有機溶剤を除去し、必要に応じて加水して調製する方法を挙げることができる。
前記インク中における顔料の分散状態の平均粒径は、50nm以上、200nm未満であることが好ましい。
これにより、顔料の分散安定性を向上でき、前記インクの保存安定性を向上できる。
顔料の粒子径測定は、動的光散乱法、電気泳動法等を用いた市販の粒径測定機器により求めることができるが、動的光散乱法による測定が簡便で、かつ該粒子径領域を精度よく測定できる。
顔料は、分散剤及びその他所望する諸目的に応じて必要な添加物とともに、分散機により分散して用いることができる。
分散機としては、従来公知のボールミル、サンドミル、ラインミル、高圧ホモジナイザー等を使用できる。
中でもサンドミルによって顔料を分散させると、粒度分布がシャープとなるため好ましい。
また、サンドミル分散に使用するビーズの材質は、格別限定されないが、ビーズ破片の生成やイオン成分のコンタミネーションを防止する観点から、ジルコニア又はジルコンであることが好ましい。
さらに、このビーズ径は、0.3~3mmの範囲内であることが好ましい。
前記インクにおける顔料の含有量は格別限定されないが、酸化チタンについては、7~18質量%の範囲内が好ましく、有機顔料については0.5~7質量%の範囲内が好ましい範囲である。
(2.2.2)樹脂微粒子
本発明に係るインクに含有される樹脂微粒子(以下、単に「樹脂」ともいう。)は、水不溶性樹脂微粒子であることが好ましい。
また、樹脂微粒子のガラス転移温度(Tg[℃])が40~90℃の範囲内であることが好ましい。
前記ガラス転移温度は、DSC(示差走査熱量測定装置)を用いて-30~200[℃]の範囲内の温度域で昇温速度10[℃/分]の条件で昇温させたときの吸熱ピークから、ガラス転移温度(Tg[℃])を読み取ることによって特定することができる。
本発明で好ましく用いられる水不溶性樹脂は、インクを受容でき、当該インクに対して溶解性又は親和性を示す水不溶性樹脂である。
水不溶性樹脂微粒子とは、本来水不溶性であるが、ミクロな微粒子として樹脂が水系媒体中に分散する形態を有するものであり、乳化剤等を用いて強制乳化させ水中に分散している非水溶性樹脂、又は、分子内に親水性の官能基を導入して、乳化剤や分散安定剤を使用することなくそれ自身で安定な水分散体を形成する自己乳化できる非水溶性樹脂である。
これらの樹脂は通常、水又は水/アルコール混合溶媒中に乳化分散させた状態で用いられる。
なお、本発明において、「水不溶性」とは、樹脂を105℃で2時間乾燥させた後、25℃の水100gに溶解させたときに、その溶解量が10g以下、好ましくは5g以下、さらに好ましくは1g以下である樹脂をいう。
ただし、樹脂が塩生成基を有する場合、溶解量は、その種類に応じて、樹脂の塩生成基を酢酸又は水酸化ナトリウムで100%中和したときの溶解量である。
前記ガラス転移温度が40~90℃の範囲内の樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂又はウレタン樹脂とアクリル樹脂の複合樹脂のいずれかであることが好ましく、特にアクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂又はウレタン樹脂とアクリル樹脂の複合樹脂であり、これら樹脂の樹脂粒子の平均粒径が200nm以下であることが好ましい。
特に、前記平均粒径は、100~150nmの範囲内であることが好ましい。
上記ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂又はウレタン樹脂とアクリル樹脂の複合樹脂微粒子は、アニオン性又はノニオン性であることが好ましい。
中でも、インク含有される樹脂微粒子は、酸構造を有することが好ましく、界面活性剤の添加量が少なくても、水中に分散させることが可能となり、耐水性が向上する。
これを、自己乳化型といい、界面活性剤を使用することなく分子イオン性のみで、水中に樹脂が分散安定化しうることを意味する。
酸構造の例には、カルボキシ基(-COOH)、スルホン酸基(-SOH)等の酸基等が含まれる。
酸構造は、樹脂において側鎖に存在していてもよく、末端に存在していてもよい。
本発明に係るインクは、特にスルホン酸基を有する水分散性ポリエステル樹脂を含有することが好ましい。
これより、基材に対する高い密着性が得られる。
上記酸構造の一部又は全部は、中和されていることが好ましい。
酸構造を中和することにより、樹脂の水分散性を向上させることができる。
酸構造を中和する中和剤の例には、有機アミン類が好ましく、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、N-メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミンを用いることが好ましい。
また、本発明に係るインクは、0.15質量%の酢酸カルシウム水溶液との凝集性が0.2以下である樹脂微粒子を、3~15質量%の範囲内で含有することが好ましい。
このように凝集性の低い樹脂微粒子を用いることにより、基材への高い濡れ性を確保しつつ高い射出安定性を得られ、より高画質で、基材密着性に優れる。
本発明において、「凝集性」の値は、以下の手順で残量を計測した後、下記式により算出した値である。
(i)樹脂微粒子を含有する樹脂微粒子水溶液(固形分10質量%)5gと、0.3質量%の酢酸カルシウム・1水和物水溶液5gを混合する。
(ii)混合した混合液を遠心分離する。
(iii)遠心分離により分離した上澄み液2gを採取する。
(iV)採取した上澄み液2gを150℃で30分間乾燥した後の固形分の質量(残量[g])を計測する。
(V)下記式により凝集性の値を算出する。
式:凝集性=1-(固形分の質量[g]/(採取した上澄み液の質量[g]×5[%])
前記凝集性が0.2以下である樹脂微粒子としては、例えば東洋紡社製のバイロナールMD2000、ジャパンコーティングレジン社製のモビニール6969D、日華化学社製のエバファノールHA-560等が挙げられる。
以下、各樹脂について説明する。
水不溶性樹脂粒子として用いられるポリエステル骨格を有するポリエステル樹脂は、多価アルコール成分と多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸エステル等の多価カルボン酸成分とを用いて得ることができる。
前記多価アルコール成分としては、二価のアルコール(ジオール)、具体的には炭素数2~36の範囲内のアルキレングリコール(エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール等)、炭素数4~36の範囲内のアルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等)、炭素数6~36の範囲内の脂環式ジオール(1,4-シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等)、前記脂環式ジオールの炭素数2~4の範囲内のアルキレンオキシド(エチレンオキシド(以下、EOと略記する。)、プロピレンオキシド(以下、POと略記する。)、ブチレンオキシド(以下、BOと略記する。))付加物(付加モル数1~30の範囲)又はビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等)の炭素数2~4の範囲内のアルキレンオキシド(EO、PO、BO等)付加物(付加モル数2~30の範囲)等が挙げられる。
これらは、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
前記多価カルボン酸成分としては、二価のカルボン酸(ジカルボン酸)、具体的には炭素数4~36の範囲内のアルカンジカルボン酸(コハク酸、アピジン酸、セバシン酸等)、アルケニルコハク酸(ドデセニルコハク酸等)、炭素数4~36の範囲内の脂環式ジカルボン酸(ダイマー酸(2量化リノール酸)等)、炭素数4~36の範囲内のアルケンジカルボン酸(マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸等)、又は炭素数8~36の範囲内の芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸又はこれらの誘導体、ナフタレンジカルボン酸等)等が挙げられる。
これらは、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
前記ポリエステル樹脂としては、分子内にアニオン性基を有するポリエステル樹脂が好ましく、中でもスルホン酸基を含有するポリエステル樹脂が好ましい。
スルホン酸基を含むポリエステルを得る公知の合成法としては、例えばスルホン酸基を有するジカルボン酸とジオールとの重縮合反応等の方法によって得ることもできるし、ジカルボン酸とスルホン酸塩を有するジオールとの重縮合反応等の方法により得ることもできる。
スルホン酸基を有するジカルボン酸成分としては、例えば2-スルホテレフタル酸、5-スルホイソフタル酸、4-スルホナフタレンイソフタル酸-2,7-ジカルボン酸及び5-(4-スルホフェノキシ)イソフタル酸、又はそれらのアルカリ金属塩等を挙げられる。
スルホン酸基を有するジオールとしては、例えば2-スルホ-1,4-ブタンジオール、2,5-ジメチル-3-スルホ-2,5-ヘキサンジオール、又はそれらのアルカリ金属塩等が挙げられる。
前記ポリエステル樹脂の数平均分子量としては、1000~50000の範囲内が好ましく、2000~20000の範囲内がより好ましい。
前記ポリエステル樹脂としては、市販品を使用してもよく、スルホン酸基を有する水分散性ポリエステル樹脂の市販品としては、例えば東洋紡社製バイロナールMD-1100、MD-1200、MD-1245、MD-1480、MD-1500、MD-2000、互応化学社製プラスコートZ-221、Z-446、Z-561、Z-880、Z-3310、高松油脂社製ペスレジンA-520、A-613D、A-615GE、A-640、A-645GH、A-647GEX、A-110F、A-160Pなどが挙げられる。
前記の中でも、ガラス転移温度が40~90℃の樹脂が特に好ましく、例えば東洋紡社製バイロナールMD-1100、MD-1200、MD-1245、MD-1500、MD-2000、互応化学社製プラスコートZ-221、Z-446、Z-561、高松油脂社製ペスレジンA-520、A-613D、A-615GE、A-640、A-645GH、A-647GEXなどが挙げられる。
これらは、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
水不溶性樹脂粒子として用いられるウレタン樹脂としては、親水基を有するものを用いることができる。
上記ウレタン樹脂は、その分子内に水溶性官能基すなわち親水基を有する自己乳化型ウレタンを分散させた水分散体、又は界面活性剤を併用して強力な機械剪断力の下で乳化した強制乳化型ウレタンの水分散体であることが好ましい。
上記水分散体におけるウレタン樹脂は、ポリオールと有機ポリイソシアネート及び親水基含有化合物との反応により得ることができる。
上記ウレタン樹脂の水分散体の調製に使用し得るポリオールの例には、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、及びポリオレフィン系ポリオールなどが含まれる。
ポリエステルポリオールの例には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-及び1,3-プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-及び1,4-ブタンジオール、3-メチルペンタンジオール、ヘキサメチレングリコール、1,8-オクタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、トリメチロールプロパン、シクロヘキサンジメタノール等の低分子ポリオール;コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、テトラヒドロフラン酸、エンドメチンテトラヒドロフラン酸、及びヘキサヒドロフタル酸などの多価カルボン酸との縮合物が含まれる。
ポリエーテルポリオールの例には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレンポリテトレメチレングリコール、及びポリテトラメチレングリコールなどが含まれる。
ポリカーボネートポリオールの例には、ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート又はホスゲン等の炭酸誘導体と、ジオールとの反応により得ることができる。
上記ジオールの例には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-及び1,3-プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-及び1,4-ブタンジオール、3-メチルペンタンジオール、ヘキサメチレングリコール、1,8-オクタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、トリメチロールプロパン、及びシクロヘキサンジメタノールなどが含まれる。
また、ウレタン樹脂の水分散体の調製に使用し得る有機ポリイソシアネートの例には、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメリックMDI、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)などの芳香族イソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)などの脂肪族イソシアネート;イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4′-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI、H12MDI)などの脂環族イソシアネートが含まれる。
これらは、一種類のみを単独で使用してもよく、二種類以上を併用してもよい。
また、ウレタン樹脂の水分散体の調製に使用し得る親水基含有化合物の例には、2,2-ジメチロールプロピオン酸、2,2-ジメチロールブタン酸、2,2-ジメチロール酪酸、2,2-ジメチロール吉草酸、グリシンなどのカルボン酸含有化合物、及びそのナトリウム塩、カリウム塩、アミン塩などの誘導体;タウリン(すなわち、アミノエチルスルホン酸)、エトキシポリエチレングリコールスルホン酸などのスルホン酸含有化合物、及びそのナトリウム塩、カリウム塩、アミン塩等の誘導体が含まれる。
ウレタン樹脂は、公知の方法により得ることができる。
例えば上述したポリオールと有機ポリイソシアネートと、親水基含有化合物とを混合し、30~130℃の範囲内で30分~50時間反応させることにより、ウレタンプレポリマーを得ることができる。
上記ウレタンプレポリマーは、鎖伸長剤により伸長してポリマー化することで、親水基を有するウレタン樹脂となる。
鎖伸長剤としては、水及び/又はアミン化合物であることが好ましい。
鎖伸長剤として水やアミン化合物を用いることにより、遊離イソシアネートと短時間で反応して、イソシアネート末端プレポリマーを効率よく伸長させることができる。
鎖伸長剤としてのアミン化合物の例には、エチレンジアミン、トリエチレンジアミンなどの脂肪族ポリアミン;メタキシレンジアミン、トルイレンジアミンなどの芳香族ポリアミン;ヒドラジン、アジピン酸ジヒドラジド等のポリヒドラジノ化合物等が含まれる。
上記アミン化合物には、上記ポリアミンとともに、ポリマー化を大きく阻害しない程度で、ジブチルアミンなどの一価のアミンやメチルエチルケトオキシム等を反応停止剤として含んでいてもよい。
なお、ウレタンプレポリマーの合成においては、イソシアネートと不活性であり、ウレタンプレポリマーを溶解しうる溶媒を用いてもよい。
これらの溶媒の例には、ジオキサン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、N-メチル-2-ピロリドン、トルエン、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が含まれる。
反応段階で使用されるこれらの親水性有機溶剤は、最終的に除去されるのが好ましい。
また、ウレタンプレポリマーの合成においては、反応を促進させるために、アミン触媒(例えばトリエチルアミン、N-エチルモルフォリン、トリエチルジアミン等)、スズ系触媒(例えばジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、オクチル酸スズ等)、及びチタン系触媒(例えばテトラブチルチタネート等)などの触媒を添加してもよい。
ウレタン樹脂の数平均分子量は、分岐構造や内部架橋構造を導入して可能な限り大きくすることが好ましく、数平均分子量50000~10000000であることが好ましい。
分子量を上記範囲内にすることにより、ウレタン樹脂が溶媒に溶けにくくなるので、耐候性、耐水性に優れた塗膜が得られるからである。
なお、数平均分子量(Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定される値であり、例えば株式会社島津製作所製「RID-6A」(カラム:東ソー株式会社製「TSK-GEL」、溶媒:テトラヒドロフラン(THF)、カラム温度:40℃)を用いて、ポリスチレン標準試料で作成した検量線から求めることができる。
また、上記ウレタン樹脂は市販品を用いてもよい。
上記ウレタン樹脂のガラス転移温度が40~90℃の範囲内の市販品の例には、楠本化成社製のNeorez R-967、R-600、R-9671、日華化学社製のエバファノールHA-560、第一工業製薬社製のSF870などが含まれる。
水不溶性樹脂粒子として用いられるアクリル樹脂は、アクリル酸エステル成分、メタクリル酸エステル成分、またスチレン成分等との共重合体を用いて得ることができる。
アクリル酸エステル成分、メタクリル酸エステル成分の例には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸-4-ヒドロキブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸、ジ(メタ)アクリル酸(ジ)エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸-1,4-ブタンジオ-ル、ジ(メタ)アクリル酸-1,6-ヘキサンジオ-ル、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロ-ルプロパン、ジ(メタ)アクリル酸グリセリン、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、及びアクリルアミド等が含まれる。
スチレン成分の例には、スチレン、4-メチルスチレン、4-ヒドロキシスチレン、4-アセトキシスチレン、4-アセチルスチレン及びスチレンスルホン酸などが含まれる。
これらの成分は、一種類のみを単独で使用してもよく、二種類以上を併用してもよい。
上記アクリル樹脂の数平均分子量(Mn)は、1000~50000の範囲内であることが好ましく、2000~20000の範囲内であることがより好ましい。
上記アクリル樹脂の数平均分子量(Mn)が1000以上であると、塗膜の凝集力が強くなり、密着性が向上し、50000以下であると、有機溶剤に対する溶解性が良く、乳化分散体の粒子径の微小化が促進されるからである。
なお、数平均分子量(Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定される値であり、例えば株式会社島津製作所製「RID-6A」(カラム:東ソー株式会社製「TSK-GEL」、溶媒:テトラヒドロフラン(THF)、カラム温度:40℃)を用いて、ポリスチレン標準試料で作成した検量線から求めることができる。
また、上記アクリル樹脂としては、市販品を用いてもよい。
上記アクリル樹脂のガラス転移温度が40~90℃の範囲内の市販品の例には、ジャパンコーティングレジン社製モビニール6899D、6969D、6800、トーヨーケム社製TOCRYL W-7146、W-7147、W-7148、W-7149、W-7150などのアクリル系エマルジョン等が含まれる。
インクに含有しうる複合樹脂微粒子は、アクリル樹脂が、ウレタン樹脂に乳化されてなる複合樹脂微粒子であることが好ましい。
すなわち、アクリル樹脂から構成される内部層、及びウレタン樹脂から構成される表面層を有する複合樹脂微粒子であることが好ましい。
ここで、上記ウレタン樹脂は、水不溶性樹脂粒子としてのアクリル樹脂と連続相である水との界面に存在して、水不溶性樹脂粒子を保護する樹脂と異なる水不溶性樹脂粒子層として機能する。
このようにアクリル樹脂をウレタン樹脂により乳化させてなる複合樹脂微粒子とすることで、アクリル樹脂とウレタン樹脂とをそれぞれ乳化させて混合するのと比べて、画像(塗膜)の物性を向上させることができるとともに、複合樹脂微粒子の貯蔵安定性も改善することができる。
上記アクリル樹脂がウレタン樹脂に乳化されてなる複合樹脂微粒子において、ウレタン樹脂(U)とアクリル樹脂(A)との質量比率の値(U/A)は、40/60~95/5であることが好ましい。
ウレタン樹脂(U)の存在割合が上記範囲内であると、分散剤との相溶性が向上し、耐溶媒性も向上する。
また、アクリル樹脂(A)の存在割合が上記範囲であると、アクリル系フィルムに対する密着性に優れる。
上記存在割合において、ウレタン樹脂(U)とアクリル樹脂(A)との質量比率の値(U/A)は、40/60~80/20の範囲内であることが好ましい。
複合樹脂微粒子中におけるアクリル樹脂とウレタン樹脂とを合わせた合計の樹脂濃度は、特に限定されないが、5.0質量%以上であることが好ましく、10.0~70.0質量%の範囲内であることがより好ましい。
上記樹脂濃度が上記範囲内であると、インクの記録媒体への定着性が良好となる。
また、ウレタン樹脂によるアクリル樹脂の乳化においては、上記ウレタン樹脂とともに、乳化剤として作用する界面活性剤を用いることができる。
ここで、乳化剤を添加することにより、複合樹脂微粒子の貯蔵安定性を向上させることができる。
上記乳化剤としては、アニオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤を用いることができる。
前記複合樹脂微粒子の平均粒径は、特に限定されないが、10~500nmの範囲内であることが好ましく、10~300nmの範囲内であることがより好ましく、10~200nmの範囲内であることがさらに好ましい。
平均粒径の測定は、動的光散乱法、電気泳動法等を用いた市販の粒径測定機器により求めることができるが、動的光散乱法による測定が簡便で、かつ当該粒子径領域を精度よく測定できる。
アクリル樹脂が、ウレタン樹脂に乳化されてなる複合樹脂微粒子を用いることにより、吸収性基材又は非吸収性基材に対する画像(塗膜)の定着性を向上させることができる。
(2.2.3)界面活性剤
上記インクが含有することができる界面活性剤として前述のプレコート液と同様のものを用いることもできるが、前述のように、例えばインクが含有することができる活性剤は、ウレタン樹脂によるアクリル樹脂の乳化において、上記ウレタン樹脂とともに、乳化剤として作用するものを用いることができる。
そして、乳化剤を添加することにより、複合樹脂微粒子の貯蔵安定性を向上させることができる。
上記乳化剤としては、アニオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤はそのいずれか一方を用いることが好ましく、両方を用いることがより好ましい。
ここで、上記アニオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤の合計配合量は、全樹脂質量100質量部に対して、1.0~20.0質量部であることが好ましい。
また、アニオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤の合計配合量を20.0質量部以下とすることにより、耐水性及び耐溶媒性を向上させることができる。
また、アニオン界面活性剤(X)とノニオン界面活性剤(Y)との配合質量比(X/Y)の値は、100/0~50/50であることが好ましい。
アニオン界面活性剤の配合量を上記範囲とすることにより、乳化性や貯蔵安定性をより向上させることができる。
ここで、乳化に用いることができるアニオン界面活性剤の例には、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、スルホコハク酸塩、アルファオレフィンスルホン酸塩、N-アシルアミノ酸塩、カルボン酸塩、及びリン酸エステル等が含まれる。
これらの中では、スルホコハク酸塩、アルファオレフィンスルホン酸塩であることが好ましい。
また、塩の種類の例には、特に限定されないが、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩などの金属塩、及びトリエタノールアミン塩などが含まれる。
また、乳化に用いることができるノニオン界面活性剤の例には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアミンエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等が含まれる。
これらの中では、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、及びポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類であることが好ましい。
(2.2.4)有機溶剤
本発明に係るインクには、吐出性を高める等の目的でさらに有機溶剤を添加しても構わない。
使用できる有機溶剤としては、水に可溶な有機溶剤であればどのようなものを添加しても構わない。
溶媒としては、上記の低表面張力の溶剤と同様のものに加えさらに以下のような溶媒を加えることが可能である。
例えばグリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、デカグリセリル、1,4ブタンジオール、1,3ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-ヘプタンジオール、1,2-オクタンジオール、1,2,6-ヘキサントリオール、2-ピロリジノン、ジメチルイミダゾリジノンなどが挙げられる。
(2.2.5)水
本発明に係るインクに使用可能な水については、特に限定されるものではなく、イオン交換水、蒸留水、又は純水であり得る。
(2.2.6)その他の成分
本発明に係るインクは、前述の前処理液と同様、本発明の効果を損なわない範囲で、その他、架橋剤、防黴剤、殺菌剤等、他の成分を適宜配合することができる。
3.インクジェット記録方法
本発明のインクジェット記録方法は、プレコート液を用いるインクジェット記録方法であって、前記プレコート液として、本発明の前記プレコート液又は本発明のインクセットを用いることを特徴とする。これによって、本発明に係る前記課題を解決した高画質の画像を得ることができる。
以下、前記した本発明のプレコート液とインクを含むインクセットを用い、画像を記録するインクジェット記録方法について説明する。
このインクセットを用いる方法であれば、例えば、1台のインクジェットプリンタを用いて、基材の表面に、前記インクセットを構成するプレコート液の塗布と、インクによる印刷とを連続して効率よく行うことができる。
そして高顔料濃度インクを用いる画像形成プロセスにおいて、当該インクの埋まり不足や意図しない混色及び画像形成時の白スジの発生を防止することができる。
具体的には、前記プレコート液を基材に付与した後、加熱乾燥を行ってもよく、前記インクを前記プレコート液が付与された領域に付与する。
また、インク付与後に基材上に付与されたプレコート液及びインクを加熱して乾燥させてプレコート液層及びインク層を形成するインク加熱乾燥を行ってもよい。
また、プレコート液付与後、10秒以内に前記インク付与を行うことが好ましく、0.1~5秒以内でインク付与を行うことがより好ましい。
インク加熱乾燥工程において、インクが付与された領域の加熱温度は、60~200℃の範囲内であることが好ましい。
インクの加熱時間は、記録媒体の種類とインク付量に合わせて適宜調整される。
このようにインクが付与された領域を加熱することにより、プレコート液及びインクの溶媒成分である水や水溶性溶媒などを除去すると同時に、特に金属基材においては多価金属塩を熱分解温度以上の温度で乾燥して熱分解する。
また、画像耐擦性及び基材への密着性が良好となる。
また、加熱乾燥は、例えば、乾燥炉や熱風送風機などのような非接触加熱型の乾燥装置を用いて行ってもよいし、ホットプレートや熱ローラーなどのような接触加熱型の乾燥装置を用いて行ってもよい。
乾燥温度は、(a)乾燥炉や熱風送風機等のような非接触加熱型の乾燥装置を用いる場合には、炉内温度又は熱風温度などのような雰囲気温度、(b)ホットプレートや熱ローラーなどのような接触加熱型の乾燥装置を用いる場合には、接触加熱部の温度、又は、(c)被乾燥面の表面温度から選ばれるいずれか1つをプレコート液の乾燥の全期間において測定することで得ることができ、測定場所としては(c)被乾燥面の表面温度を測定することがより好ましい。
本発明のプレコート液を記録媒体に塗布する方法としては公知の方法によりすることができ、特に制限はないが、例えばロールコーティング方式による塗布、インクジェットによる塗布、バーコーターによる塗布方法を挙げることができ、特にロールコーティング方式による塗布が、使用するプレコート液の汎用性の観点から好ましい。
基材である記録媒体の搬送速度は、例えば1~120m/minの範囲内で設定することができる。
搬送速度が速いほど画像形成速度が速まる。
本発明において、印刷に使用される記録媒体としてはインクの吸収速度が0.05[ml/mms1/2]以上1[ml/mms1/2]以下である印刷用塗工紙である。
本発明における印刷用塗工紙とは、木材のパルプなどの植物の繊維などを原料に作成された紙上にカオリンなどの無機顔料と高分子などの接着剤からなる塗工層を設けたものである。
具体的にはアート紙、コート紙、軽量コート紙、マットコート紙など、紙の風合いや価格から一般的なフライヤー、チラシなどで最も良く使われる印刷用塗工紙が挙げられ、表面にエンボス処理等の加工が行われていてもかまわない。
印刷用塗工紙の形状は枚葉型でもRoll-to-Roll方式でもかまわない。
4.インクジェット記録システム
本発明のインクジェット記録システムは、プレコート液を用いるインクジェット記録システムであって、前記プレコート液として、本発明の前記プレコート液又は前記インクセットを用いることを特徴とする。これによって、本発明に係る前記課題を解決した高画質の画像を得ることができる。
図1は、本発明に好ましい記録装置の模式図である。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
記録装置1は、主に、プレコート液付与部10、インク付与部20から構成されている。
プレコート液付与部10において、基材F上にプレコート液層Cが形成され、必要に応じて第1乾燥部13によって、プレコート液が付与された領域を、加熱し乾燥する。
その後、インク付与部20によってインク層Rが形成される。
プレコート液付与部10は、プレコート液を基材に塗布できる構成であれば特に限定されるものではないが、本発明ではロールコーター11であることが好ましい。
ロールコーター11以外に、例えばインクジェットヘッド等であってもよいがロールコーターが好ましい。
インク付与部20は、インクを吐出可能なインクジェットヘッド21である。
このような記録装置1において、送り出しローラー30から繰り出された基材F上に、ロールコーター11によりプレコート液12が塗布されて、プレコート液層Cが形成される。
次いで、プレコート液層C上に、インクジェットヘッド21によりインク22が塗布されて、インク層Rが形成され、第2乾燥部23によって、インクが付与された領域を、加熱し乾燥する。
その後、巻取りローラー40によってプレコート液層Cとインク層Rとが形成された基材Fが巻き取られ画像記録物が得られる。
なお、図1では、基材Fがフィルム基材である場合を示したが、金属基材などの場合は、搬送ベルト上に金属基材を配置し、ベルトを搬送しながらプレコート液層C及びインク層Rをワンパスで塗布形成することができる。
さらに、図1で示す記録装置以外の装置として、フラットベッドタイプのプリンタをプレコート液及びインクの塗布に用いることも好ましい。
フラットベッドタイプのプリンタは、基材が固定され、インクジェットヘッドを主走査方向と、主走査方向と交差する副走査方向に動かすことが可能で、基材を搬送せずに印刷を行うことが可能である。
ブリキなどの金属基材では、樹脂フィルム機材のように、ロールtoロール搬送ができないために、基材を搬送する必要のない、フラットベッドタイプのプリンタを用いることが好ましい。
このようなフラットベッドタイプのプリンタとしては、特開2015-74161号公報の図1や特開2017-177578号公報の図1に記載されているプリンタを一例として挙げることができる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。
A.プレコート液の調製
(A.1)プレコート液〔1〕の調製
凝集剤として硝酸カルシウム10.00質量%、界面活性剤として「ML-750」(デカグリセリンモノラウリル酸エステル 阪本薬品工業社製)0.10質量%、樹脂としてエマルジョン状態のポリエステル樹脂12.50質量%、3つ以上のヒドロキシ基を有する化合物を含有する有機溶剤としてグリセリン(Gly)2.00質量%、その他の有機溶剤としてプロピレングリコール(PG)10.00質量%と1,2-ヘキサンジオール(1,2-HDO)8.00質量%、防黴剤として「Proxel GXL(S)」(1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン ;ロンザ社製)0.05質量%及びイオン交換水(残量;全量が100質量%なる量)57.35質量%を撹拌しながら添加し、得られた混合液を1μmのフィルターにより濾過してプレコート液〔1〕を得た。
(A.2)プレコート液〔2〕~〔38〕の調製
前記プレコート液No.1の調製において、凝集剤、界面活性剤、樹脂、3つ以上のヒドロキシ基を有する化合物を含有する有機溶剤、有機溶剤及びイオン交換水の添加量を、下記表I及び表IIに記載のとおりに変更した以外は同様にして、各プレコート液〔2〕~〔38〕を調製した。
また、プレコート液〔1〕~〔38〕が含有する凝集剤と界面活性剤のNo、種類、その他等を表III及び表IVに示す。
Figure 2023087720000004
なお、表I~表IV中の略称及び用語は以下のとおりである。
「PES」:ポリエステル(エマルジョン状態)
「PG」:プロピレングリコール
「1,2-HD」:1,2-ヘキサンジオール
「Proxel GXL(S)」:1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン
*1:「3-OH有機溶剤」は、3つ以上のヒドロキシ基を有する有機溶剤をさす。
*2:凝集剤が多価金属塩である場合には「○」、そうでない場合には「×」。
*3:多価金属塩の金属元素がCa又はMgである場合には「○」、そうでない場合には「×」。
*4:多価金属塩が有機酸塩である場合には「○」、そうでない場合には「×」。
*5:多価金属塩が有機スルホン酸塩である場合には「○」、そうでない場合には「×」。
*6:一般式(1)の構造をもつ界面活性剤は「○」、構造をもたない界面活性剤は「×」。
*7:一般式(1)におけるnが6~10の自然数である場合には「○」、そうでない場合には「×」。
*8:一般式(1)における炭素数の総和が)8~59である場合には「○」、そうでない場合には「×」。
Figure 2023087720000005
Figure 2023087720000006
Figure 2023087720000007
B.インクの調製
(B.1)インクに用いる顔料分散液の調製
(マゼンタ顔料分散液MAの調製)
マゼンタ顔料(ピグメント・レッド122とピグメント・バイオレット19の混晶)に、顔料分散剤として「Joncryl 819」(アニオン性高分子分散剤、ジメチルアミノエタノール中和されたカルボキシ基を有するアクリル系分散剤、酸価75[mgKOH/g]、固形分20質量% BASF社製)8質量%、溶媒としてプロピレングリコール(PG)20質量%、防黴剤として1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン(Proxel GXL(S) ロンザ社製)0.1質量%、イオン交換水(残部;全量が100質量%となる量)を加えた混合液をプレミックスした。
その後、0.3mmのジルコニアビーズを体積率で50%充填したビーズミルを用いて分散し、顔料の含有量が顔料分散液全量に対して20質量%のマゼンタ顔料分散液MAを調製した。
(シアン顔料分散液CIの調製)
マゼンタ顔料の代わりにシアン顔料(ピグメントブルー15)を用いること以外は、マゼンタ顔料と同様にして、顔料の含有量が顔料分散液全量に対して20質量%のシアン顔料分散液CIを調製した。
(B.2)インク〔M-1〕の調製
マゼンタ顔料分散液MA15.00質量%に、樹脂微粒子分散液として樹脂の含有量が樹脂微粒子分散液全量に対して40質量%のバイロナールMD2000(ポリエステル樹脂、樹脂のみのガラス転移温度Tg:67℃ 東洋紡社製)4.50質量%、その他の有機溶剤としてプロピレングリコール(PG)8.50質量%、1,2-ヘキサンジオール(1,2-HDO)8.50質量%、界面活性剤としてシリコーン変性界面活性剤KF-351A(信越シリコーン社製)0.50質量%、防黴剤として1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン(Proxel GXL(S))0.05質量%、イオン交換水(残部;全量が100質量%なる量)62.95質量%を撹拌しながら添加し、得られた混合液を1μmのフィルターにより濾過してインク〔M-1〕を調製した。
濾過前後で実質的な組成変化はなかった。
(B.3)インク〔M-2〕~〔M-5〕及びインク〔C-1〕~〔C-5〕の調製
顔料分散液、樹脂微粒子分散液、その他の有機溶剤、界面活性剤の種類、防黴剤及びイオン交換水の量を表Vのように変更した以外はインク〔M-1〕と同様にしてインク〔M-2〕~〔M-5〕及びインク〔C-1〕~〔C-5〕を調製した。
インク〔M-1〕~〔M-5〕及びインク〔C-1〕~〔C-5〕の顔料濃度は表Vに示したものとなった。
Figure 2023087720000008
なお、表V中の略称及び用語は以下のとおりである。
「PG」:プロピレングリコール
「1,2-HD」:1,2-ヘキサンジオール
「KF-351A」:シリコーン変性界面活性剤KF-351A(信越シリコーン社製)
「Proxel GXL(S)」:1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン
C.印字試験(評価方法及び評価)
前述のように調製したプレコート液及びインクを、表VI及び表VIIの組み合わせとしたインクセットを用いて、以下の方法で印字試験を実施した。
評価結果を表VI及び表VIIに示す。
(プレコートを塗布した記録媒体の準備)
記録媒体に、表VI及び表VIIに示す通りに、バーコーターを用いてプレコート液の付量が3g/mとなるように塗布し、80℃の送風乾燥機を用いて5分間乾燥させ、プレコートを塗布した記録媒体を作製した。
記録媒体には、OKトップコート128g/m(王子製紙株式会社製)を用いた。
(ドット径)
画像記録装置に、各記録媒体を600mm/sで搬送し、2.5pLの液滴を用い、10枚の30cm×30cmのベタ画像及び10%濃度のハーフトーン像を形成し、ハーフトーン部のドット径をキーエンス社製デジタルマイクロスコープ VHX-8000を用いて観察し、以下の評価基準にて評価した。
記録媒体には、OKトップコート128g/m(王子製紙株式会社製)を用いた。
〔評価基準〕
◎:ドット径が42.5μmより大きく、47.5μm未満。
○:ドット径が40~42.5μmの範囲内又は47.5~50μmの範囲内。
×:ドット径が40μm未満、又は50μmより大きい。
(ドットの鮮鋭性)
画像記録装置に、各記録媒体を600mm/sで搬送し、2.5pLの液滴を用い、10枚の30cm×30cmのベタ画及び10%濃度のハーフトーン像を形成し、ハーフトーン部のドットの形状を目視にて観察し、以下の評価基準にて評価した。
記録媒体には、OKトップコート128g/m(王子製紙株式会社製)を用いた。
〔評価基準〕
○:ドットの輪郭が鮮明である。
△:ドットの輪郭がぼやけているが実用上問題がない。
×:ドットの輪郭が不鮮明であり実用上問題がある。
(画像の色:ベタ部の画像濃度)
画像記録装置に、各記録媒体を600mm/sで搬送し、2.5pLの液滴を用い、10枚の30cm×30cmのベタ画像及び10%濃度のハーフトーン像を形成し、ベタ部の画像濃度を分光濃度計FD-7(コニカミノルタ社製)にて測定し、以下の評価基準にて評価した。
記録媒体には、OKプリンス81.4g/m(王子製紙株式会社製)を用いた。
〔評価基準〕
○:シアンの画像濃度が、1.2以上。
△:シアンの画像濃度が、1.0以上1.2未満。
×:シアンの画像濃度が1.0未満。
(カラーブリード)
画像記録装置に、各記録媒体を600mm/sで搬送し、インク〔C-1〕~〔C-5〕のインクを用いて、シアンの3dotライン(1200dpi×1200dpiにおける、隣接する3dotで細線を描画)を形成した上に、表VI及び表VIIのようにプレコート液とインク〔M-1〕~〔M-5〕のインクをそれぞれ組み合わせ、マゼンタのベタ画像を形成し、シアン3dotラインの拡大率を測定し、以下の評価基準にて評価した。
記録媒体には、OKトップコート128g/m、及びOKプリンス81.4g/mを用いた。
〔評価基準〕
◎:シアン3dotラインの拡大率が、5%未満である。
○:シアン3dotラインの拡大率が、5%以上10%未満である。
△:シアン3dotラインの拡大率が、10%以上20%未満である。
×:シアン3dotラインの拡大率が、20%以上である。
Figure 2023087720000009
Figure 2023087720000010
表VI及び表VIIから明らかなように、実施例が比較例より優れていることが分かる。
1 記録装置
10 プレコート液付与部
11 ロールコーター
12 プレコート液
13 第1乾燥部
20 インク付与部
21 インクジェットヘッド
22 インク
23 第2乾燥部
30 送り出しローラー
40 巻取りローラー
C プレコート液層
F 基材
R インク層

Claims (13)

  1. インクジェット・プリント方式による画像形成に用いるプレコート液であって、
    少なくとも界面活性剤、有機溶剤、凝集剤、樹脂及び水を含有し、
    前記界面活性剤が、下記一般式(1)で表される構造を有し、
    前記有機溶剤が、3つ以上のヒドロキシ基を有する化合物を含有する
    ことを特徴とするプレコート液。
    Figure 2023087720000011
    (R~Rは、それぞれ独立に、炭素数が8~18の範囲内の水素原子又はアシル基を表す。R~Rはのうち少なくとも1つはアシル基である。また、nが2以上となり、Rが複数ある場合には、各Rは同一であっても同一でなくてもよい。R~Rの炭素数の総和は、8~100の範囲内である。nは、1~10の範囲内の自然数を表す。)
  2. 前記一般式(1)におけるR~Rの炭素数の総和が、8~59の範囲内である
    ことを特徴とする請求項1に記載のプレコート液。
  3. 前記一般式(1)におけるnが、6~10の範囲内の自然数である
    ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のプレコート液。
  4. 前記界面活性剤が、前記プレコート液全量に対し0.05~5.00質量%の範囲内である
    ことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のプレコート液。
  5. 前記3つ以上のヒドロキシ基を有する前記有機溶剤が、前記プレコート液全量に対し1~10質量%の範囲内である
    ことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のプレコート液。
  6. 前記凝集剤が、前記プレコート液全量に対し3~20質量%の範囲内である
    ことを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載のプレコート液。
  7. 前記凝集剤が、多価金属塩である
    ことを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載のプレコート液。
  8. 前記多価金属塩の金属元素が、カルシウム又はマグネシウムである
    ことを特徴とする請求項7に記載のプレコート液。
  9. 前記多価金属塩が、有機酸塩である
    ことを特徴とする請求項7又は請求項8に記載のプレコート液。
  10. 前記多価金属塩が、有機スルホン酸塩である
    ことを特徴とする請求項7から請求項9までのいずれか一項に記載のプレコート液。
  11. 請求項1から請求項10までのいずれか一項に記載のプレコート液と、顔料濃度が3~15質量%の範囲内のインクとを組み合わせたセットである
    ことを特徴とするインクセット。
  12. プレコート液を用いるインクジェット記録方法であって、
    前記プレコート液として、請求項1から請求項10までのいずれか一項に記載のプレコート液又は請求項11に記載のインクセットを用いる
    ことを特徴とするインクジェット記録方法。
  13. プレコート液を用いるインクジェット記録システムであって、
    前記プレコート液として、請求項1から請求項10までのいずれか一項に記載のプレコート液又は請求項11に記載のインクセットを用いる
    ことを特徴とするインクジェット記録システム。
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