JP2023087571A - 除草剤中間体の製造方法 - Google Patents

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啓 川本
Hiroshi Kawamoto
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Abstract

【課題】除草剤及びその中間体の工業的に好ましい製造方法を提供する。【解決手段】式(4)の化合物の製造方法であって、以下の工程iiを含む方法:(工程ii)式(2)の化合物を、還元剤を用いて、式(3)の化合物と反応させて、式(4)の化合物を製造する工程JPEG2023087571000027.jpg37149(式中、R1、R2、R3、R4及びR5は、それぞれ独立して、1以上の置換基により置換されていてもよい(C1-C6)アルキルであり、nは2以上の整数であり、X2は、ハロゲン原子である。)。【選択図】なし

Description

本発明は、一般式(4):
Figure 2023087571000001
(式中、R、R、R、R及びRは、本明細書中に記載の通りである。)の化合物の製造方法に関する。
上記一般式(4)の化合物は、除草剤およびその製造中間体として有用である(WO2002/062770A1(特許文献1)参照)。
WO2004/013106A1(特許文献2)には、式(4-a)の化合物の製造方法が記載されている。しかしながら、WO2004/013106A1(特許文献2)に記載の方法には、工業的な実施において課題があった。例えば、中間体の精製の機会及び方法が限られていた。
一方で、式(4-a)の化合物の調製は、WO2005/095352A1(特許文献3)及びWO2005/105755A1(特許文献4)にも開示されており、これらを以下に示す。
Figure 2023087571000002
式(4-a)の化合物の製造方法は、WO2005/095352A1(特許文献3)とWO2005/105755A1(特許文献4)にも記載されている。この方法は優れた方法である。一方、中間体(上図中のISHP)の感作性のために特殊な製造装置(密閉系の装置)を必要とするため、及び後述のように、この方法には未だ改善の余地がある。
さらにはWO2021/002484A1(特許文献5)に記載の式(4-a)の化合物の製造方法は、特許文献3に記載の式(4-a)の化合物の調製における問題を解決した、優れた方法である。しかし、工業的規模での製造では、後述のようにさらなる改善の余地があった。
含硫黄有機化合物は一般的に特徴的な悪臭を有する場合が多く、この悪臭の防除も工業的規模での製造に際しては配慮する必要がある。このような状況に加え、医薬・農薬化合物及びそれらの合成中間体は、活性・安全性及び安定性の面から高品質な目的化合物を製造することが要求される。製造工程で得られる中間体化合物が液体である場合、化合物の単離方法及び/又は精製方法には蒸留の選択肢しかない。含硫黄有機化合物の蒸留を工業的規模で行う際には、悪臭の周囲への拡散を防ぐための特殊な設備や複雑な操作が必要である。製造工程で得られる中間体化合物が固体であれば、単離方法及び/又は精製方法としてろ過及び/又は再結晶という選択肢が提供され、中間体化合物の品質向上及び保存安定性も期待される。
国際公開第2002/062770号 国際公開第2004/013106号 国際公開第2005/095352号 国際公開第2005/105755号 国際公開第2021/002484号
本発明の目的は、式(4)の化合物の製造方法であって、安全に式(4)の化合物を製造でき、工業的に好ましい製造方法を提供することである。
本発明の他の目的は、工業的に好ましい性質を有した原料を用いる式(4)の化合物の新規な製造方法を提供することにある。
本発明者らは、鋭意研究の結果、下記工程iiに示す通り、還元剤の存在下で、式(2)の化合物を式(3)の化合物と反応させることにより式(4)の化合物を製造できることを見出した。この知見に基づき、本発明者らは本発明を完成させた。
Figure 2023087571000003
(式中、R、R、R、R、R、X2及びnは、本明細書中に記載の通りである。)
本発明は、除草剤およびその製造中間体として有用である式(4)の化合物の有用な製造方法であって、安全に式(4)の化合物を製造でき、製造方法を提供する。
さらに本発明によれば、工業的に好ましい性質を有した原料、すなわちイソオキサゾリン誘導体ジスルフィドを原料として用いることができる。イソオキサゾリン誘導体ジスルフィドは、ほとんど悪臭を有さない。さらに、イソオキサゾリン誘導体ジスルフィドは十分に融点が高い固体である。高い融点は、その化合物が保存に好ましいこと、並びに単離方法および/または精製方法として再結晶という選択肢が提供されること意味する。本発明では、このような複数の利点を同時に持つイソオキサゾリン誘導体ジスルフィドを原料として用いることが可能であることが見出されたのである。
本発明の方法は、特殊な製造装置、特殊な反応条件及び特殊な高価な試薬を使うことなく、製造できるため、工業的製造に適している。
本発明は以下の通りである。
〔1〕
式(4)の化合物の製造方法であって、以下の工程iiを含む方法:
(工程ii) 式(2)の化合物を、還元剤を用いて、式(3)の化合物と反応させて、式(4)の化合物を製造する工程
Figure 2023087571000004
(式中、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、1以上の置換基により置換されていてもよい(C1-C6)アルキルであり、
nは2以上の整数であり、
Xは、ハロゲン原子である。)。
〔2〕
〔1〕に記載の方法であって、工程iiの還元剤がアルカリ金属ヒドロキシメタンスルフィン酸塩である方法。
〔3〕
〔1〕に記載の方法であって、工程iiの還元剤がヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム・二水和物である方法。
〔4〕
〔1〕から〔3〕に記載の方法であって、工程iiの反応が塩基の存在下で行われる方法。
〔5〕
〔4〕に記載の方法であって、工程iiの塩基がアルカリ金属炭酸塩である方法。
〔6〕

〔4〕に記載の方法であって、工程iiの塩基が炭酸カリウムである方法。
〔7〕
〔1〕から〔6〕に記載の方法であって、
が(C1-C4)アルキルであり、
が(C1-C4)パーフルオロアルキルであり、
が1~9個のフッ素原子により置換されていてもよい(C1-C4)アルキルであり、
が(C1-C4)アルキルであり、
が(C1-C4)アルキルである方法。
〔8〕
〔1〕から〔6〕に記載の方法であって、
がメチルであり、
がトリフルオロメチルであり、
がジフルオロメチルであり、
がメチルであり、
がメチルである方法。
〔9〕
〔1〕から〔8〕に記載の方法であって、
が塩素原子である方法。
〔10〕式(5)の化合物の製造方法であって、
(工程ii) 式(2)の化合物を、還元剤を用いて、式(3)の化合物と反応させて、式(4)の化合物を製造する工程
Figure 2023087571000005
(式中、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、1以上の置換基により置換されていてもよい(C1-C6)アルキルであり、
は、ハロゲン原子であり、
nは2以上の整数である。)及び
(工程iii)金属触媒の存在下で、式(4)の化合物を過酸化水素と反応させて、式(5)の化合物を製造する工程
Figure 2023087571000006
(式中、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、1以上の置換基により置換されていてもよい(C1-C6)アルキルである。)を含む、式(5)の化合物の製造方法。
本明細書に記載された記号及び用語について説明する。
本明細書中、以下の略語及び接頭語が使用されることがあり、それらの意味は以下の通りである。
Me:メチル
n-:ノルマル
s-及びsec-:セカンダリー
i-及びiso-:イソ
t-及びtert-:ターシャリー
c-及びcyc-:シクロ
用語「ニトロ」は置換基「-NO」を意味する。
用語「シアノ」は置換基「-CN」を意味する。
用語「ヒドロキシ」は置換基「-OH」を意味する。
用語「アミノ」は置換基「-NH」を意味する。
本明細書中、「アルキル」のような一般的用語は、ブチル及びtert-ブチルのような直鎖及び分岐鎖の両方を含むと解釈する。一方で、例えば、具体的用語「ブチル」は、直鎖の「ノルマルブチル」を意味し、分岐鎖の「tert-ブチル」を意味しない。そして「tert-ブチル」のような分岐鎖異性体は、意図した場合に具体的に言及される。
ハロゲン原子の例は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子を含む。
(C1-C6)アルキルは、1~6個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖のアルキルを意味する。(C1-C6)アルキルの例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル等を含むが、これらに限定されない。
(C1-C4)アルキルは、1~4個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖のアルキルを意味する。(C1-C4)アルキルの例は、上記の(C1-C6)アルキルの例のうちの適切な例を含む。
本明細書中、用語「1以上の置換基により置換されていてもよい」における「置換基」については、それらが化学的に許容され、本発明の効果を示す限りは、特に制限はない。
本明細書中、「1以上の置換基により置換されていてもよい」との用語における「1以上の置換基」の例は、置換基群(a)から独立して選択される1以上の置換基(好ましくは1~3個の置換基)を含むが、これらに限定されない。
置換基群(a)は、ハロゲン原子、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、(C1-C6)アルキル及びフェニルからなる群である。
加えて、置換基群(a)から独立して選択される1以上の置換基(好ましくは1~3個の置換基)は、それぞれ独立して、置換基群(b)から独立して選択される1以上の置換基(好ましくは1~3個の置換基)により置換されていてもよい。ここで、置換基群(b)は置換基群(a)と同じである。
「1以上の置換基により置換されていてもよい(C1-C6)アルキル」の例は、1~9個のフッ素原子により置換されていてもよい(C1-C4)アルキルを含み、好ましくは(C1-C4)パーフルオロアルキルを含むが、これらに限定されない。
1~9個のフッ素原子により置換されていてもよい(C1-C4)アルキルの例は、フルオロメチル(すなわち、-CHF)、ジフルオロメチル(すなわち、-CHF)、トリフルオロメチル(すなわち、-CF)、2-フルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、ペンタフルオロエチル、3-フルオロプロピル、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル、2,2,2-トリフルオロ-1-トリフルオロメチルエチル、ヘプタフルオロプロピル、1,2,2,2-テトラフルオロ-1-トリフルオロメチルエチル、4-フルオロブチル、2,2,3,3,4,4,4-へプタフルオロブチル、ノナフルオロブチル、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-トリフルオロメチルプロピル、2,2,2-トリフルオロ-1,1-ジ(トリフルオロメチル)エチルを含むが、これらに限定されない。
(C1-C4)パーフルオロアルキルは、全ての水素原子がフッ素原子により置換されている、1~4個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖のアルキルを意味する。(C1-C4)パーフルオロアルキルの例は、トリフルオロメチル(すなわち、-CF)、ペンタフルオロエチル(すなわち、-CFCF)、ヘプタフルオロプロピル(すなわち、-CFCFCF)、1,2,2,2-テトラフルオロ-1-トリフルオロメチルエチル(すなわち、-CF(CF)、ノナフルオロブチル、(すなわち、-CFCFCFCF)、1,2,2,3,3,3-ヘキサフルオロ-1-トリフルオロメチルプロピル(すなわち、-CF(CF)CFCF)、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-トリフルオロメチルプロピル(すなわち、-CFCF(CF)及び2,2,2-トリフルオロ-1,1-ジ(トリフルオロメチル)エチル(すなわち、-C(CF)である。
本明細書中、置換基(例えば、R、R、R、R、R、X及びX等)に言及するときの用語「本明細書中に記載の通り」及び類似の用語は、本明細書中の置換基の全ての定義並びにもしあれば全ての例、好ましい例、より好ましい例、更に好ましい例及び特に好ましい例等を参照することにより取り込む。
(工程i)
工程iについて説明する。
工程iは、式(2)の化合物の製造方法の一つである。
工程iは、式(1)の化合物を酸化剤と反応させて、式(2)の化合物を製造する工程である。
Figure 2023087571000007
(ここで、R、R及びnは本明細書中に記載の通りであり、Xはハロゲン原子である。)
(工程iの原料:式(1)の化合物)
工程iの原料として、式(1)の化合物を用いる。
式(1)の化合物は公知の化合物であるか、又は公知の化合物から公知の方法に準じて製造することができる。
式(1)中、R及びRは、それぞれ独立して、1以上の置換基により置換されていてもよい(C1-C6)アルキルであり、好ましくは(C1-C4)アルキルであり、より好ましくはメチルある。
はハロゲン原子であり、好ましくは塩素原子または臭素原子であり、より好ましくは塩素原子である。
式(1)の化合物の好ましい具体的な例は以下を含むが、これらに限定されない:
Figure 2023087571000008
式(1)の化合物中のイソチオウロニウム基は、対応するチオール基及び/又はその塩(例えば、一般的に、-SNa又は-S)、及び/又はその類縁体であってもよい。式(1)の化合物に対応する、チオール基及び/又はその塩、及び/又はその類縁体を有する化合物は、式(1)の化合物の均等物であり、それら均等物を用いる方法は、本発明の範囲内である。例えば、式(1)の化合物に対応する、チオール基を有する化合物は、下記式(5)の化合物の均等物である。
Figure 2023087571000009
式(5)中、R及びRは、式(1)で定義した通りである。式(5)中、R及びRの例、好ましい例及びより好ましい例は、それぞれ上記した式(1)中のそれらと同じである。
(工程iの生成物:式(2)の化合物)
工程iの生成物は、原料として用いた式(1)の化合物に対応する式(2)の化合物である。
式(2)中、R及びRは、式(1)で定義した通りである。式(2)中、R及びRの例、好ましい例及びより好ましい例は、それぞれ上記した式(1)中のそれらと同じである。
nは1以上の整数であり、好ましくは2から5の整数であり、より好ましくは2又は3であり、さらに好ましくは2であるが、これらに限定されない。
工程iにおいて製造される生成物は、式(2)のポリスルフィド化合物である。例えば、式(2)におけるn=2のジスルフィド化合物である。加えて、n=3以上のポリスルフィド化合物が生成してもよい。すなわち、工程iにおいて製造される生成物は、式(2)におけるn=2以上の化合物の混合物として得られてもよい。
n=2のジスルフィド化合物だけではなくn=3以上のポリスルフィド化合物も、次工程の工程iiにより同じ生成物である式(4)の化合物(例えば、ISFP)を与えるであろう。従って、n=2のジスルフィド化合物及びn=3以上のポリスルフィド化合物は混合物のまま、それぞれを単離精製せずに、次の工程iiの原料として使用してもよい。
式(2)のジスルフィド化合物の具体的な例は、以下を含むが、これに限定されない;
Figure 2023087571000010
(工程iの酸化剤)
工程iの反応は、酸化剤の存在下で行われる。反応が進行する限りは、酸化剤はいずれの酸化剤でも良い。工程iの酸化剤の例は、ヨウ素、ヨウ素化合物、過酸化水素、酸素などを含むが、これらに限定されない。
工程iの反応は、ヨウ素化合物の存在下で行われることが好ましい。反応が進行する限りは、ヨウ素化合物はいずれのヨウ素化合物でもよい。工程iのヨウ素化合物の例は、以下を含むが、これらに限定されない:
ヨウ素、1,3-ジヨード-5,5-ジメチルヒダントイン(DIH)、N-ヨードスクシンイミド、N-ヨードサッカリン、N-ヨードフタルイミドなどが挙げられる。
工程iのヨウ素化合物の使用量は、反応が進行する限りは、いずれの量でもよい。工程iのヨウ素化剤の使用量は、当業者が適宜調整することができる。しかしながら、収率、副生成物抑制、経済効率等の観点から、工程iのヨウ素化剤の使用量は、例えば、式(1)の化合物(原料)1モルに対して、0(ゼロ)~5モル、好ましくは0.3~2モルである。
(工程iの塩基)
工程iの反応は、ヨウ素化合物を酸化剤として用いる場合は、塩基の存在下で行われることが好ましい。反応が進行する限りは、塩基はいずれの塩基でもよい。塩基の例は、以下を含むが、これらに限定されない:
アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)、アルカリ土類金属水酸化物(例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム)、アルカリ金属炭酸塩(例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム)、アルカリ土類金属炭酸塩(例えば、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム)、アルカリ金属炭酸水素塩(例えば、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム)、アルカリ土類金属炭酸水素塩(例えば、炭酸水素カルシウム)、リン酸塩(例えば、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウム)、リン酸水素塩(例えば、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素カリウム、リン酸水素カルシウム)等、及びそれらの混合物。好ましい工程iの塩基の例は、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウム、より好ましくは炭酸カリウムを含む。
工程iの塩基は、単独で又は任意の割合の2種以上の組み合わせで使用してもよい。工程iの塩基の形態は、反応が進行する限りは、いずれの形態でもよい。工程iの塩基の形態の例は、塩基のみの固体及び任意の濃度の水溶液等を含む。塩基の形態の具体的な例は、フレーク、ペレット、ビーズ、パウダー及び10~50%水溶液、好ましくは20~50%水溶液(例えば、25%水酸化ナトリウム水溶液及び48%水酸化ナトリウム水溶液、好ましくは48%水酸化ナトリウム水溶液)等を含むが、これらに限定されない。工程iの塩基の形態は、当業者が適切に選択することができる。
工程iの塩基の使用量は、反応が進行する限りは、いずれの量でもよい。工程iの塩基の使用量は、当業者が適宜調整することができる。しかしながら、収率、副生成物抑制、経済効率等の観点から、工程iの塩基の使用量は、例えば、式(1)の化合物(原料)1モルに対して、0(ゼロ)~15モル、好ましくは2~10モルである。
(工程iの反応溶媒)
工程iの反応は、溶媒の非存在下又は存在下で行うことができる。工程iの反応で溶媒を用いるか否かは、当業者が適切に決定することができる。工程iの反応で溶媒を使用する場合は、反応が進行する限りは、溶媒はいずれの溶媒でもよい。工程iの反応の溶媒は当業者が適切に選択することができる。工程iの反応の溶媒の例は、以下を含むが、これらに限定されない:水、芳香族炭化水素誘導体類(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、ニトロベンゼン)、ハロゲン化脂肪族炭化水素類(例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン(EDC))、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、2-プロパノール、ブタノール、tert-ブタノール(tert-ブタノールはtert-ブチルアルコールとも言う))、ニトリル類(例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル)、エーテル類(例えば、テトラヒドロフラン(THF)、1,4-ジオキサン、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジ-tert-ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、メチル-tert-ブチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン(DME)、ジグリム(diglyme))、アミド類(例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)、N-メチルピロリドン(NMP))、ウレア類(例えば、N,N’-ジメチルイミダゾリジノン(DMI)、テトラメチル尿素)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO))、及び任意の割合のそれらの任意の組み合わせ。
工程iの反応の溶媒の使用量は、反応系の撹拌が十分にできる限りは、特に制限されない。しかしながら、収率、副生成物抑制、経済効率等の観点から、工程iの反応の溶媒の使用量は、例えば、式(1)の化合物(原料)1モルに対して、0(ゼロ)L~10L、好ましくは0.2L~10L、より好ましくは0.5L~5Lである。2種以上の溶媒の組み合わせを用いるときは、2種以上の溶媒の割合は、反応が進行する限りは、いずれの割合でもよい。
(工程iの反応温度)
工程iの反応温度は、特に制限されない。しかしながら、収率、副生成物抑制、経済効率等の観点から、工程iの反応温度は、例えば、-10℃(マイナス10℃)~100℃、好ましくは0(ゼロ)℃~80℃、より好ましくは10℃~70℃である。
(工程iの反応時間)
工程iの反応時間は、特に制限されない。しかしながら、収率、副生成物抑制、経済効率等の観点から、工程iの反応時間は、例えば、0.5時間~48時間、好ましくは1時間~24時間である。反応時間は、当業者が適切に調整することができる。
(工程iの後処理;単離及び/又は精製)
工程iの生成物である式(2)の化合物、とりわけ化合物(2-a)は、工程iiの原料として使用することができる。工程iで得られる一般式(2)の化合物は、単離及び/又は精製して次工程に用いてもよく、または単離することなく次工程に用いてもよい。
(工程ii)
工程iiについて説明する。
工程iiは、還元剤の存在下で、式(2)と式(3)の化合物を反応させて、式(4)の化合物を製造する工程である;
Figure 2023087571000011
(ここで、R、R、R、R、R、X2及びnは、本明細書中に記載の通りである。)
工程iiの反応は、好ましくは還元剤及び塩基の存在下で行われる。
(工程iiの原料:式(2)の化合物)
工程iiにおいて使用される原料は、式(2)のポリスルフィド化合物であり、上記の通りである。式(2)のポリスルフィド化合物は、工程iにおいて製造される生成物を使用することができる。例えば、式(2)におけるn=2のジスルフィド化合物である。加えて、n=2のジスルフィド化合物だけではなくn=3以上のポリスルフィド化合物も、工程iiにおいて同じ生成物である式(4)の化合物を与えるであろう。従って、n=2のジスルフィド化合物及びn=3以上のポリスルフィド化合物は混合物のまま、それぞれを単離精製せずに、工程iiの原料として使用してもよい。一方、一般的に、精製が必要な場合に、塩にはその水溶性のために、水洗による精製がしにくいとの難点ある。しかしながら、式(2)の化合物は水洗による精製が可能である。さらに、一般的に塩には保存時における潮解性の懸念があるが、式(2)の化合物にはそのような懸念がないという利点がある。加えて、抽出、結晶洗浄などの当業者によく知られた後処理操作により、すなわち、簡単な操作により、高い純度の式(2)の化合物は得ることができる。つまり、本発明では、工業的に好ましい性質を有したイソオキサゾリン誘導体ジスルフィドを原料として用いることが可能である。
(工程iiの原料:式(3)の化合物)
工程iiの原料として、式(3)の化合物を用いる。
式(3)の化合物は公知の化合物であるか、又は公知の化合物から公知の方法に準じて製造することができる。例えば、式(3)の化合物の調製は、WO2004/013106A1に記載されているか、又は類似の方法で行うことができる。
化合物の有用性の観点から、式(3)中、Rは、1以上の置換基により置換されていてもよい(C1-C6)アルキルであり、好ましくは(C1-C4)アルキルであり、より好ましくはメチルである。
は、1以上の置換基により置換されていてもよい(C1-C6)アルキルであり、好ましくは(C1-C4)パーフルオロアルキルであり、より好ましくはトリフルオロメチルである。
は、1以上の置換基により置換されていてもよい(C1-C6)アルキルであり、好ましくは1~9個のフッ素原子により置換されていてもよい(C1-C4)アルキルであり、より好ましくジフルオロメチルである。
はハロゲン原子であり、好ましくは塩素原子または臭素原子であり、より好ましくは塩素原子である。
生成物の有用性等の観点から、式(3)の化合物の好ましい具体的な例は、以下を含むが、これらに限定されない;4-クロロメチル-5-ジフルオロメトキシ-1-メチル-3-トリフルオロメチルピラゾール(3-a、CMTP)、4-ブロモメチル-5-ジフルオロメトキシ-1-メチル-3-トリフルオロメチルピラゾール(3-b、BMTP)等。収率、経済効率等、反応性等の観点から、4-クロロメチル-5-ジフルオロメトキシ-1-メチル-3-トリフルオロメチルピラゾール(3-a、CMTP)がより好ましい。
(工程iiの原料:式(3)の化合物の使用量)
工程iiの式(3)の使用量は、反応が進行する限りは、いずれの量でもよい。工程iiの式(3)の使用量は、当業者が適宜調整することができる。しかしながら、収率、副生成物抑制、経済効率等の観点から、工程iiの式(3)の化合物の使用量は、例えば、式(2)の化合物(原料)1モルに対して、1.5~4.0モル以上、好ましくは1.5~2.5モルである。
(工程iiの生成物:式(4)の化合物)
工程iiの生成物は、原料として用いた式(2)の化合物及び式(3)の化合物に対応する式(4)の化合物である。
式(4)中、R、R及びRは、式(3)で定義した通りである。式(4)中、R4及びRは、式(1)で定義した通りである。式(4)中、R、R、R、R4及びR5の例、好ましい例及びより好ましい例は、それぞれ上記した式(1)及び式(3)中のそれらと同じである。
式(4)の化合物の特に好ましい具体的な例は下記の通りである:
Figure 2023087571000012
(工程iiの還元剤)
工程iiにおいて使用される還元剤は、反応が進行する限りはいずれの還元剤でもよい。工程iiにおいて使用される還元剤としては、例えば、水素化ホウ素試薬(例えば、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム、水素化トリ(sec-ブチル)ホウ素リチウム、水素化トリエチルホウ素リチウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素テトラメチルアンモニウム)、アルカリ金属硫化物(例えば、硫化ナトリウム、硫化カリウム)、アルカリ金属亜硫酸塩(例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム)、アルカリ金属亜硫酸水素塩(例えば、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム)、アルカリ金属ヒドロキシメタンスルフィン酸塩(例えば、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム)、次亜硫酸塩(例えば、亜ジチオン酸ナトリウム)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましい工程iiの還元剤の例は、アルカリ金属ヒドロキシメタンスルフィン酸塩、より好ましくはヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウムを含む。
ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウムは、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートともいう。ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウムは、反応が進行する限りは無水物であっても水和物であってもよいが、反応性、入手性及び取り扱いの容易さ等の観点から、二水和物のヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム・二水和物(商品名:ロンガリット)が好ましい。
工程iiの還元剤は、単独で又は任意の割合の2種以上の組み合わせで使用してもよい。工程iiの還元剤の形態は、反応が進行する限りはいずれの形態でもよい。当業者は、還元剤の形態を適宜に選択できる。
(還元剤の使用量)
工程iiの還元剤の使用量は、反応が進行する限りはいずれの量でもよい。収率、副生成物抑制及び経済効率等の観点から、例えば、式(2)の化合物1.0モルに対して、通常0.1~10.0当量、好ましくは0.2~6.0当量、より好ましくは0.3~3.0当量である。
(工程iiの塩基)
工程iiの反応は、塩基の存在下で行われることが好ましい。反応が進行する限りは、塩基はいずれの塩基でもよい。工程iiの塩基の例は、以下を含むが、これらに限定されない:
アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)、アルカリ土類金属水酸化物(例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム)、アルカリ金属炭酸塩(例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム)、アルカリ土類金属炭酸塩(例えば、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム)、アルカリ金属炭酸水素塩(例えば、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム)、アルカリ土類金属炭酸水素塩(例えば、炭酸水素カルシウム)、リン酸塩(例えば、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウム)、リン酸水素塩(例えば、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素カリウム、リン酸水素カルシウム)等、アミン類(例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデカ-7-エン(DBU)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、ピリジン、4-(ジメチルアミノ)-ピリジン(DMAP))、アンモニア等、及びそれらの混合物。好ましい工程iiの塩基の例は、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウム、より好ましくは炭酸カリウムを含む。
工程iiの塩基は、単独で又は任意の割合の2種以上の組み合わせで使用してもよい。工程iiの塩基の形態は、反応が進行する限りは、いずれの形態でもよい。工程iiの塩基の形態の例は、塩基のみの固体及び任意の濃度の水溶液等を含む。塩基の形態の具体的な例は、フレーク、ペレット、ビーズ、パウダー及び10~50%水溶液、好ましくは20~50%水溶液(例えば、25%水酸化ナトリウム水溶液及び48%水酸化ナトリウム水溶液、好ましくは48%水酸化ナトリウム水溶液)等を含むが、これらに限定されない。工程iiの塩基の形態は、当業者が適切に選択することができる。
工程iiの塩基の使用量は、反応が進行する限りは、いずれの量でもよい。工程iiの塩基の使用量は、当業者が適宜調整することができる。しかしながら、収率、副生成物抑制、経済効率等の観点から、工程iiの塩基の使用量は、例えば、式(2)の化合物(原料)1モルに対して、0(ゼロ)~15モル、好ましくは1.5~5モル、より好ましくは1.5~3.0モルである。
(工程iiの仕込み方法)
原料、還元剤、塩基、溶媒等を仕込む順番は、特に制限されない。反応が進行する限りは、それらの添加順序は、いずれの順序でもよい。
(工程iiの反応溶媒)
反応の円滑な進行等の観点から、工程iiの反応は溶媒の存在下で行うことが好ましい。
工程iiの反応の溶媒は、反応が進行する限りは、いずれの溶媒でもよい。
工程iiの反応の溶媒の例は、以下を含むが、これらに限定されない:
芳香族炭化水素誘導体類(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、ニトロベンゼン)、ハロゲン化脂肪族炭化水素類(例えば、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン(EDC))、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、2-プロパノール、ブタノール、tert-ブタノール(tert-ブタノールはtert-ブチルアルコールとも言う))、ニトリル類(例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル)、カルボン酸エステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル及びその異性体、酢酸ペンチル及びその異性体)、エーテル類(例えば、テトラヒドロフラン(THF)、1,4-ジオキサン、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジ-tert-ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、メチル-tert-ブチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン(DME)、ジグリム(diglyme))、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、メチルイソブチルケトン(MIBK))、アミド類(例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)、N-メチルピロリドン(NMP))、ウレア類(例えば、N,N’-ジメチルイミダゾリジノン(DMI)、テトラメチル尿素)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO))、スルホン類(例えば、スルホラン)、水、及び任意の割合のそれらの任意の組み合わせ。好ましくはN,N-ジメチルホルムアミドを含む。
還元剤として水素化ホウ素試薬を使用する際は、アルコール類が好ましい。
いずれの場合も、反応が進行する限りは、溶媒は単層でもよく、2層に分離してもよい。
工程iiの反応の溶媒の使用量は、例えば、式(2)の化合物(原料)1モルに対して、0(ゼロ)L~10L、好ましくは0.2L~10L、より好ましくは0.4L~7.0Lである。
2種以上の有機溶媒の組み合わせを用いるときは、2種以上の有機溶媒の割合は、反応が進行する限りは、いずれの割合でもよい。
(工程iiの反応温度)
工程iiの反応温度は、特に制限されない。しかしながら、収率、副生成物抑制、経済効率等の観点から、工程iiの反応温度は、例えば、-10(マイナス10)℃~100℃、好ましくは0(ゼロ)℃~90℃、より好ましくは10℃~70℃である。
(工程iiの反応時間)
工程iiの反応時間は、特に制限されない。しかしながら、収率、副生成物抑制、経済効率等の観点から、工程iiの反応時間は、例えば0.5時間~48時間、好ましくは0.54時間~24時間である。反応時間は、当業者が適切に調整することができる。
(工程iii)
工程iiiについて説明する。
工程iiiは、式(5)の化合物の製造方法の一つであり、式(4)の化合物から公知の方法(WO2021/0002484A1)に準じて製造することができる。例えば、工程iiiは以下の通りである。
(工程iii) 金属触媒の存在下で、式(4)の化合物を過酸化水素と反応させて、式(5)の化合物を製造する工程
Figure 2023087571000013
(式中、R、R、R、R及びRは、本明細書中に記載の通りである。)
(工程iiiの原料:式(4)の化合物)
工程iiiの原料として、式(4)の化合物を用いる。式(4)の化合物は上記のとおりである。
式(4)中、R、R及びRは、式(1)で定義した通りである。式(4)中、R4及びRは、式(3)で定義した通りである。式(4)中、R、R、R、R4及びR5の例、好ましい例、より好ましい例及び特に好ましい例は、もしあれば、それぞれ上記した式(1)及び式(3)中のそれらと同じである。
式(4)の化合物の特に好ましい具体的な例は下記の式(4-a)である。
Figure 2023087571000014
(工程iiiの生成物:式(5)の化合物)
工程iiiの生成物は、原料として用いた式(4)の化合物に対応する式(5)の化合物である。
式(5)中、R、R及びRは、式(1)で定義した通りである。式(5)中、R4及びRは、式(3)で定義した通りである。式(5)中、R、R、R、R4及びRの例、好ましい例、より好ましい例及び特に好ましい例は、それぞれ上記した式(1)及び式(3)中のそれらと同じである。
式(5)の化合物の特に好ましい具体的な例は下記の通りである:
Figure 2023087571000015
(工程iiiの酸化剤:過酸化水素)
工程iiiの反応では、酸化剤として次亜塩素酸塩、過酸化物、過マンガン酸塩、二酸化マンガン、クロム酸等を用いることができる。好ましくは、過酸化水素を用いる。
工程iiiの過酸化水素の形態は、安全性、危険性、経済効率等を考慮して、過酸化水素の形態の好ましい例は、10~70wt%過酸化水素水溶液、より好ましくは25~65wt%過酸化水素水溶液を含む。
工程iiiの過酸化水素の使用量は、収率、副生成物抑制、経済効率、安全性、危険性等の観点から、例えば、式(4)の化合物(原料)1モルに対して、2モル以上、好ましくは2~8モルである。
(工程iiiの触媒:金属触媒)
工程iiiの反応は、金属触媒の存在下で行われる。反応が進行する限りは、金属触媒はいずれの金属触媒でもよい。工程iiiの金属触媒の例は、以下を含むが、これらに限定されない:タングステン触媒(例えば、タングステン酸、タングステン酸塩(例えば、タングステン酸ナトリウム(タングステン酸ナトリウム二水和物等を含む)、タングステン酸カリウム、タングステン酸アンモニウム)、金属タングステン、酸化タングステン、炭化タングステン、塩化タングステン)、モリブデン触媒(例えば、モリブデン酸、モリブデン酸塩(例えば、モリブデン酸ナトリウム(モリブデン酸ナトリウム二水和物を含む)、モリブデン酸カリウム、モリブデン酸アンモニウム(モリブデン酸アンモニウム四水和物を含む))、金属モリブデン、酸化モリブデン、塩化モリブデン)、ニオブ触媒(例えば、炭化ニオブ、塩化ニオブ(V)、ニオブ(V)ペンタエトキシド)。好ましい金属触媒の例は、タングステン触媒、モリブデン触媒であり、より好ましい例はタングステン酸ナトリウム、モリブデン酸アンモニウムである。
工程iiiの金属触媒の使用量は、反応が進行する限りは、いずれの量でもよい。収率、副生成物抑制、経済効率等の観点から、その使用量は、例えば、式(4)の化合物(原料)1モルに対して、0.001~0.1モル、好ましくは0.01~0.05モルである。
工程iiiの反応は、硫酸又はリン酸フェニル等の酸触媒の存在下で行ってもよい。更に、工程iiiの反応は、硫酸水素テトラブチルアンモニウム等の相間移動触媒の存在下で行ってもよい。
反応の円滑な進行等の観点から、工程iiiの反応は有機溶媒の存在下で行うことが好ましい。工程iiiの反応の有機溶媒の例は、以下を含むが、これらに限定されない:
アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、2-プロパノール、ブタノール、tert-ブタノール(tert-ブタノールはtert-ブチルアルコールとも言う))、ニトリル類(例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル)、カルボン酸エステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル及びその異性体、酢酸ペンチル及びその異性体)、アミド類(例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)、N-メチルピロリドン(NMP))、及び任意の割合のそれらの任意の組み合わせ。加えて、工程iiiの反応は有機溶媒と水溶媒の存在下で行うことがより好ましい。有機溶媒は、原料溶液中及び反応剤溶液中の有機溶媒を含む。水溶媒は、原料溶液中及び反応剤溶液中の水(例えば、過酸化水素水溶液中の水)を含む。
いずれの場合も、反応が進行する限りは、溶媒は単層でもよく、2層に分離してもよい。
工程iiiの反応の溶媒の全使用量は、反応系の撹拌が十分にできる限りは、特に制限されない。しかしながら、収率、副生成物抑制、経済効率等の観点から、工程iiiの反応の溶媒の使用量は、例えば、式(4)の化合物(原料)1モルに対して、0.1L~10L、好ましくは0.3L~5Lである。2種以上の溶媒の組み合わせを用いるときは、2種以上の溶媒の割合は、反応が進行する限りは、いずれの割合でもよい。
(工程iiiの反応温度)
工程iiiの反応温度は、特に制限されない。しかしながら、収率、副生成物抑制、経済効率等の観点から、工程iiiの反応温度は、例えば、0(ゼロ)℃~100℃、好ましくは50℃~90℃である。
(工程iiiの反応時間)
工程iiiの反応時間は、特に制限されない。しかしながら、収率、副生成物抑制、経済効率等の観点から、工程iiiの反応時間は、例えば1時間~48時間、好ましくは4時間~24時間である。反応時間は、当業者が適切に調整することができる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら限定されない。
本明細書中、実施例の収率の測定には、次の機器及び条件を用いた。
(HPLC分析:高速液体クロマトグラフィー分析)
(HPLC分析条件)
機器:株式会社島津製作所製LC2010シリーズ又はこれに準ずるもの
カラム:YMC-Pack, ODS-A, A-312 (150mmx6.0mmID, S-5μm, 120A)
溶離液:
Figure 2023087571000016
流速:1.0 ml/min
検出:UV 230nm
カラム温度:40℃
注入量:5 μL
HPLC分析方法に関しては、必要に応じて、以下の文献を参照することができる。
文献(a):(社)日本化学会編、「新実験化学講座9 分析化学 II」、第86~112頁(1977年)、発行者 飯泉新吾、丸善株式会社
文献(b):(社)日本化学会編、「実験化学講座20-1 分析化学」第5版、第130~151頁(2007年)、発行者 村田誠四郎、丸善株式会社
本明細書中、実施例における原料、中間体及び目的物は、公知化合物であり、当業者に知られた常法により同定された。
(収率及び純度)
特に指定しない限り、本発明における収率は、原料化合物(出発化合物)のモル数に対する、得られた目的化合物のモル数から計算することができる。
すなわち、用語「収率」は、「モル収率」を意味する。
従って、収率は、以下の式により表される:
収率(%)=(得られた目的化合物のmol数)/(出発化合物のmol数)×100
しかしながら、例えば、目的物の反応収率、不純物の収率、及び生成物の純度等の評価においては、HPLC面積百分率分析又はGC面積百分率分析を用いてもよい。
本明細書中、室温及び常温は10℃から30℃である。
本明細書中、用語「一晩(over night)」は、8時間から16時間を意味する。
本明細書中、「熟成(age/aged/aging)」の操作は、当業者に知られた常法により、混合物が撹拌されていることを含む。
[実施例1]
3-[(5-ジフルオロメトキシ-1-メチル-3-トリフルオロメチルピラゾール-4-イル)メチルチオ]-4,5-ジヒドロ-5,5-ジメチル-イソオキサゾール(化合物4-a、ISFP)の製造
Figure 2023087571000017
窒素気流下、反応フラスコに1,2-ビス(5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロイソオキサゾール-3-イル)ジスルフィド(2-a-ジスルフィド化合物、0.071g、純度:91%、0.25mmol、イソオキサゾール部分として200mol%)を加え、ジメチルホルムアミド1.0mlに溶解し、炭酸カリウム(0.069g、0.50mmol、201mol%)及びロンガリット(0.077g、0.50mmol、201mol%)を室温で順次加え撹拌した。氷冷した後、4-クロロメチル-5-ジフルオロメトキシ-1-メチル-3-トリフルオロメチルピラゾールのジメチルホルムアミド溶液(3-a、CMTP、0.782g、純度:17%、0.50mmol、ジメチルホルムアミド0.650gを含む、202mol%)を3分間かけて滴下し、室温で1時間30分撹拌した。
反応混合物のHPLC分析の結果、目的生成物である、3-[(5-ジフルオロメトキシ-1-メチル-3-トリフルオロメチルピラゾール-4-イル)メチルチオ]-4,5-ジヒドロ-5,5-ジメチル-イソオキサゾール(化合物4-a、ISFP)は、収率91.0%(HPLC絶対検量線法)であった。
[実施例2]
1,2-ビス(5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロイソオキサゾール-3-イル)ジスルフィド(化合物2-a)の製造
Figure 2023087571000018
反応フラスコに[5,5-ジメチル(4,5-ジヒドロイソオキサゾロ-3-イル)]チオカルボキサジン塩酸塩(0.701g、純度:98%、3.28mmol、100mol%)を加え、メタノール7.1mlに溶解し、炭酸カリウム(1.35g、9.77mmol、298mol%)を室温で加え撹拌した。続いて、ヨウ素(0.410g、1.62mmol、49mol%)を室温で少しずつ加え、室温で2時間撹拌した。
反応混合物をろ過した後、ろ液から半分の溶媒を減圧留去した。ビーカー中で塩酸(0.341g、純度36%、3.37mmol、103mol%)を水20mlに希釈し、トルエン40mlを加えて撹拌した。そのビーカー中にろ液を滴下し撹拌した。有機層を分離した後、水10mlで洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた有機層を減圧留去し、目的生成物である、1,2-ビス(5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロイソオキサゾール-3-イル)ジスルフィド(化合物2-a、0.304g、純度:83%)を淡黄色結晶として得た。
得られた結晶をヘキサン-酢酸エチル混合溶媒(9:1)で洗浄した。ジスルフィド化合物(0.220g、純度:90%(HPLC面積百分率分析)、0.760mmol、収率46.4%)を得た。
[実施例3]
3-[(5-ジフルオロメトキシ-1-メチル-3-トリフルオロメチルピラゾール-4-イル)メチルスルホニル]-4,5-ジヒドロ-5,5-ジメチルイソオキサゾール(化合物5-a)の製造
Figure 2023087571000019
窒素気流下、反応フラスコに化合物(4-a)の酢酸ブチル溶液(87.2g、純度:41%、100mmol、100mol%、酢酸ブチル51.3g(0.6L/mol)を含む)、水10ml(0.1L/mol)及びタングステン酸ナトリウム二水和物(1.6g、5mmol、5mol%)を加えた。混合物を内温70℃~80℃に加温した。そこに35%過酸化水素水溶液(27.2g、280mmol、280mol%、水17.7g(0.2L/mol)を含む)を内温70℃~80℃で1時間かけて滴下し、混合物を内温75℃~80℃に保ちながら7時間熟成した。
反応混合物に20%亜硫酸ナトリウム水溶液(31.5g、50mmol、50mol%)を加え、混合物を内温60℃~70℃で30分間撹拌した。得られた混合物を有機層と水層に分離した。得られた有機層に水50ml(0.5L/mol)を加え、減圧下で濃縮した。得られた粗生成物にイソプロパノール133.5ml(1.7L/mol)を加え、室温で結晶を濾別した。得られた結晶をイソプロパノール12.4ml(0.2L/mol)及び水10ml(0.1L/mol)で順次洗浄した。その結果、収率93%で目的物(化合物5-a)の結晶を得た。
H-NMR値(CDCl/TMS δ(ppm)):6.83(1H,t,J=71.9Hz)、4.60(2H,s)、3.88(3H,s)、3.11(2H,s)、1.52(6H,s)
[実施例4]
(工程iii)
3-[(5-ジフルオロメトキシ-1-メチル-3-トリフルオロメチルピラゾール-4-イル)メチルスルホニル]-4,5-ジヒドロ-5,5-ジメチルイソオキサゾール(化合物5-a)の製造
Figure 2023087571000020
窒素気流下、反応フラスコに化合物(4-a)(3.05g、純度:100%、8.5mmol、100mol%)、メタノール6.7g(1.0L/mol))、水0.9ml(0.1L/mol)及びタングステン酸ナトリウム二水和物(0.084g、0.3mmol、3mol%)、硫酸(0.087g、0.85mmol、10mol%)を加えた。混合物を内温65℃~70℃に加温した。そこに35%過酸化水素水溶液(4.13g、42.5mmol、500mol%、水2.7g(0.3L/mol)を含む)を内温65℃~70℃で1時間かけて滴下し、混合物を内温65℃~70℃に保ちながら6時間熟成した。
反応混合物にアセトニトリルを加え均一とした。HPLC外部標準法により分析した結果、収率96%で目的物(5-a)を得た。
[実施例5]
(工程iii)
3-[(5-ジフルオロメトキシ-1-メチル-3-トリフルオロメチルピラゾール-4-イル)メチルスルホニル]-4,5-ジヒドロ-5,5-ジメチルイソオキサゾール(化合物5-a)の製造
Figure 2023087571000021
窒素気流下、反応フラスコに化合物(4-a)のアセトニトリル溶液(86.2g、純度:42%、100mmol、100mol%、アセトニトリル50.3g(0.6L/molを含む))、水10ml(0.1L/mol)及びタングステン酸ナトリウム二水和物(1.6g、5mmol、5mol%)を加えた。混合物を内温70℃~80℃に加温した。そこに35%過酸化水素水溶液(24.3g、250mmol、250mol%、水15.8g(0.2L/mol)を含む)を内温70℃~80℃で1時間かけて滴下し、混合物を内温75℃~80℃に保ちながら5時間熟成した。
反応混合物に20%亜硫酸ナトリウム水溶液(31.5g、50mmol、50mol%)を加え、混合物を内温60℃~70℃で30分間撹拌した。得られた混合物を有機層と水層に分離した。得られた有機層に水50ml(0.5L/mol)を加え、減圧下で濃縮した。得られた粗生成物にイソプロパノール117.8ml(1.5L/mol)を加え、室温で結晶を濾別した。得られた結晶をイソプロパノール12.4ml(0.2L/mol)及び水10ml(0.1L/mol)で順次洗浄した。その結果、収率95%で目的物(化合物5-a)の結晶を得た。
[実施例6]
(工程iii)
3-[(5-ジフルオロメトキシ-1-メチル-3-トリフルオロメチルピラゾール-4-イル)メチルスルホニル]-4,5-ジヒドロ-5,5-ジメチルイソオキサゾール(化合物5-a)の製造
Figure 2023087571000022
窒素気流下、反応フラスコに化合物(4-a)(0.9g、純度:100%、2.5mmol、100mol%、)、ジメチルホルムアミド2mL(0.8L/mol)及びタングステン酸ナトリウム二水和物(41mg、0.125mmol、5mol%)を加えた。混合物を内温75℃~80℃に加温した。そこに35%過酸化水素水溶液(0.85g、8.75mmol、300mol%、水0.55g(0.2L/mol)を含む)を加え6時間熟成した。
この時点で分析した結果、収率97%(HPLC面積百分率;230nm)であった。
[実施例7]
(工程iii)
3-[(5-ジフルオロメトキシ-1-メチル-3-トリフルオロメチルピラゾール-4-イル)メチルスルホニル]-4,5-ジヒドロ-5,5-ジメチルイソオキサゾール(化合物5-a)の製造
Figure 2023087571000023
窒素気流下、反応フラスコに化合物(4-a)(100.1g、純度:35%、100mmol、100mol%、2-プロパノール62.5g(0.8L/mol)を含む))、水10ml(0.1L/mol)及びモリブデン酸アンモニウム四水和物(1.23g、1mmol、1mol%)を加えた。混合物を内温75℃~80℃に加温した。そこに35%過酸化水素水溶液(29.2g、300mmol、300mol%、水12.8g(0.12L/mol)を含む)を内温75℃~80℃で1時間かけて滴下し、混合物を内温75℃~80℃に保ちながら5時間熟成した。さらに、35%過酸化水素水溶液(19.5g、200mmol、200mol%、水19g(0.19L/mol)を含む)を滴下し、混合物を内温75℃~80℃に保ちながら5時間熟成した。
反応混合物を撹拌し室温まで冷却し、室温で結晶を濾別した。得られた結晶をイソプロパノール10ml(0.1L/mol)及び水10ml(0.1L/mol)で順次洗浄した。その結果、収率93%で目的物(5-a)の結晶を得た。


Claims (10)

  1. 式(4)の化合物の製造方法であって、以下の工程iiを含む方法:
    (工程ii) 式(2)の化合物を、還元剤を用いて、式(3)の化合物と反応させて、式(4)の化合物を製造する工程
    Figure 2023087571000024
    (式中、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、1以上の置換基により置換されていてもよい(C1-C6)アルキルであり、
    nは2以上の整数であり、
    Xは、ハロゲン原子である。)。
  2. 請求項1に記載の方法であって、工程iiの還元剤がアルカリ金属ヒドロキシメタンスルフィン酸塩である方法。
  3. 請求項1に記載の方法であって、工程iiの還元剤がヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム・二水和物である方法。
  4. 請求項1から3に記載の方法であって、工程iiの反応が塩基の存在下で行われる方法。
  5. 請求項4に記載の方法であって、工程iiの塩基がアルカリ金属炭酸塩である方法。
  6. 請求項4に記載の方法であって、工程iiの塩基が炭酸カリウムである方法。
  7. 請求項1から6に記載の方法であって、
    が(C1-C4)アルキルであり、
    が(C1-C4)パーフルオロアルキルであり、
    が1~9個のフッ素原子により置換されていてもよい(C1-C4)アルキルであり、
    が(C1-C4)アルキルであり、
    が(C1-C4)アルキルである方法。
  8. 請求項1から6に記載の方法であって、
    がメチルであり、
    がトリフルオロメチルであり、
    がジフルオロメチルであり、
    がメチルであり、
    がメチルである方法。
  9. 請求項1から8に記載の方法であって、
    が塩素原子である方法。
  10. 式(5)の化合物の製造方法であって、
    (工程ii) 式(2)の化合物を、還元剤を用いて、式(3)の化合物と反応させて、式(4)の化合物を製造する工程
    Figure 2023087571000025
    (式中、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、1以上の置換基により置換されていてもよい(C1-C6)アルキルであり、
    は、ハロゲン原子であり、
    nは2以上の整数である。)及び
    (工程iii)金属触媒の存在下で、式(4)の化合物を過酸化水素と反応させて、式(5)の化合物を製造する工程
    Figure 2023087571000026
    (式中、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、1以上の置換基により置換されていてもよい(C1-C6)アルキルである。)を含む、式(5)の化合物の製造方法。


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