JP2023081768A - 脂肪肝治療剤、医薬組成物、治療方法、及びスクリーニング方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】脂肪肝治療剤、脂肪肝治療剤を適用した医薬組成物、脂肪肝治療剤のスクリーニング方法を提供する。【解決手段】受容体型プロテインチロシンホスファターゼOの阻害剤を有効成分とする、脂肪肝治療剤。【選択図】なし
Description
本発明は、脂肪肝治療剤、医薬組成物、治療方法、及びスクリーニング方法に関する。
近年、先進諸国において、肥満者が増加し、肥満により引き起こされる疾患の治療が大きな問題となっている。肥満は、メタボリックシンドローム、II型糖尿病、脂質異常症、高血圧症、脂肪肝、脂肪肝炎、動脈硬化症等の疾患や病態の原因となる。
肥満者においては、継続した過栄養状態により脂肪組織は拡大し、体重が増加する。脂肪組織の脂肪蓄積量には限界があり、蓄積しきれなくなった脂肪は、脂肪組織以外の肝臓、筋肉等に沈着し、いわゆる異所性脂肪となる。
異所性脂肪の沈着は、インスリンが効きにくくなるインスリン抵抗性を誘導し、メタボリックシンドローム等の様々な疾患の要因となっている。
これに対し、特許文献1には、非アルコール性脂肪肝炎マーカー、及びそれを用いた治療薬のスクリーニング方法が記載されている。
これに対し、特許文献1には、非アルコール性脂肪肝炎マーカー、及びそれを用いた治療薬のスクリーニング方法が記載されている。
しかしながら、脂肪肝の治療方法としては、食餌療法及び運動療法が一般的であり、脂肪肝に有効な治療剤は知られていない。そこで、本発明は、脂肪肝治療剤、脂肪肝治療剤を適用した医薬組成物、脂肪肝治療剤のスクリーニング方法を提供することを目的とする。
本発明は、以下の態様を含む。
本発明の第1の態様は、受容体型プロテインチロシンホスファターゼOの阻害剤を有効成分とする、脂肪肝治療剤である。
本発明の第1の態様は、受容体型プロテインチロシンホスファターゼOの阻害剤を有効成分とする、脂肪肝治療剤である。
前記第1の態様において、前記阻害剤は、前記受容体型プロテインチロシンホスファターゼOのホスファターゼ活性を低下させる低分子化合物であることが好ましい。
この場合、前記阻害剤は、AKB9778(CAS番号1008510-37-9)であってもよい。
この場合、前記阻害剤は、AKB9778(CAS番号1008510-37-9)であってもよい。
前記第1の態様において、前記阻害剤は、前記受容体型プロテインチロシンホスファターゼOの発現量を低下させるものであってもよい。
この場合、前記阻害剤は、前記受容体型プロテインチロシンホスファターゼOを標的としたsiRNA又はshRNAであってもよい。
この場合、前記阻害剤は、前記受容体型プロテインチロシンホスファターゼOを標的としたsiRNA又はshRNAであってもよい。
また、本発明の第2の態様は、前記第1の態様に記載の脂肪肝治療剤若しくはその塩又はそれらの溶媒和物の有効量、及び薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物である。
また、本発明の第3の態様は、前記第2の態様に記載の医薬組成物を、治療を必要とするヒト以外の動物に投与することを含む、治療方法である。
また、本発明の第4の態様は、脂肪肝治療剤のスクリーニング方法であって、被験物質の存在下における受容体型プロテインチロシンホスファターゼOのホスファターゼ活性を測定する工程を含み、前記被験物質の存在下における前記受容体型プロテインチロシンホスファターゼOのホスファターゼ活性が、前記被験物質の非存在下における前記受容体型プロテインチロシンホスファターゼOのホスファターゼ活性と比較して低いことが、前記被験物質が、脂肪肝を治療する作用を有することを示す、スクリーニング方法である。
本発明によれば、脂肪肝治療剤、脂肪肝治療剤を適用した医薬組成物、脂肪肝治療剤のスクリーニング方法を提供することができる。
受容体型プロテインチロシンホスファターゼ(RPTPs)は、タンパク質のチロシン残基に結合したリン酸基を加水分解する酵素群である。RPTPは、プロテインチロシンキナーゼと拮抗的に機能することで、チロシンリン酸化を介した情報伝達において重要な役割を果たしている。
ヒトゲノムには21種類のRPTPsが存在し、これらは構造上の相同性から8つのサブファミリーに分類される。発明者らは、R3サブファミリーに属する受容体型プロテインチロシンホスファターゼOに着目した。
発明者らは、受容体型プロテインチロシンホスファターゼOが、脂肪組織において高発現していることを見出した。また、発明者らは、受容体型プロテインチロシンホスファターゼO遺伝子ノックアウトマウスは、野生型マウスに比べて、高脂肪・高ショ糖食で飼育した場合に、脂肪組織が著しく拡大することも見出した。
また、発明者らは、受容体型プロテインチロシンホスファターゼO遺伝子ノックアウトマウスは、野生型マウスに比べて、高脂肪・高ショ糖食で飼育した場合に、脂肪組織における脂質蓄積量が増加するとともに、肝臓における脂質蓄積量が減少することにより、脂肪組織での炎症、肝機能、血糖値維持能及びインスリン抵抗性が改善することも見出した。
また、発明者らは、肥満状態のマウスに対して、受容体型プロテインチロシンホスファターゼOの活性を阻害するAKB9778を投与すると、受容体型プロテインチロシンホスファターゼO遺伝子ノックアウトマウスと同様に、脂肪組織における脂質蓄積量が増加するとともに、肝臓における脂肪蓄積量が減少することにより、脂肪組織での炎症、肝機能、血糖値維持能、インスリン抵抗性が改善することも見出した。
[脂肪肝治療剤]
一実施形態において、本発明は、受容体型プロテインチロシンホスファターゼOの阻害剤を有効成分とする、脂肪肝治療剤を提供する。
一実施形態において、本発明は、受容体型プロテインチロシンホスファターゼOの阻害剤を有効成分とする、脂肪肝治療剤を提供する。
本明細書において、受容体型プロテインチロシンホスファターゼOの阻害剤とは、受容体型プロテインチロシンホスファターゼOの活性を阻害する物質、又は、受容体型プロテインチロシンホスファターゼOの発現を抑制する物質であれば、どのようなものであってもよい。
(第1実施形態)
一実施形態において、受容体型プロテインチロシンホスファターゼOの阻害剤は、受容体型プロテインチロシンホスファターゼOの活性阻害剤であってもよい。
一実施形態において、受容体型プロテインチロシンホスファターゼOの阻害剤は、受容体型プロテインチロシンホスファターゼOの活性阻害剤であってもよい。
前記活性阻害剤としては、受容体型プロテインチロシンホスファターゼOの活性を阻害する限り特に限定されず、天然化合物、合成化合物、既存薬、代謝物等の低分子化合物、受容体型プロテインチロシンホスファターゼOのドミナントネガティブ変異体、抗体、抗体断片、又はアプタマー等が挙げられる。
低分子化合物としては、例えば、AKB9778が挙げられる。AKB9778は、Razuprotafibとも呼ばれる。AKB9778のCAS番号は、1008510-37-9である。
AKB9778は、下記式(1)で表される化合物である。
AKB9778は、下記式(1)で表される化合物である。
AKB9778は、PTPRBの阻害剤であることが知られている。これに対し、実施例において後述するように、発明者らは、AKB9778が、受容体型プロテインチロシンホスファターゼB以外に、受容体型プロテインチロシンホスファターゼJ及び受容体型プロテインチロシンホスファターゼOに対して高い阻害活性を示し、これらの中でも、受容体型プロテインチロシンホスファターゼOに対して、最も高い阻害活性を示すことを明らかにした。また、AKB9778は、血管新生を阻害することが知られている。マウスモデルにおいて、AKB9778は、加齢による網膜黄斑変性、虚血による網膜血管新生を抑制することが知られている(例えば、米国特許第10220048号明細書を参照)。
(第2実施形態)
一実施形態において、受容体型プロテインチロシンホスファターゼOの阻害剤は、受容体型プロテインチロシンホスファターゼOの発現量を低下させるものであってもよい。
一実施形態において、受容体型プロテインチロシンホスファターゼOの阻害剤は、受容体型プロテインチロシンホスファターゼOの発現量を低下させるものであってもよい。
受容体型プロテインチロシンホスファターゼOの発現量を低下させる物質としては、PRTROに対するsiRNA、shRNA等が挙げられる。siRNA、shRNAの配列は、当業者であれば適宜設計することができる。
上記実施形態にかかる脂肪肝治療剤は、塩又はそれらの溶媒和物であってもよい。
塩としては、脂肪肝治療剤が効果を発揮する限り特に制限されず、例えば、塩酸塩、硫酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、燐酸塩、硝酸塩、安息香酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、酢酸塩、プロパン酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、グルタル酸塩、アジピン酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、フマール酸塩、リンゴ酸塩、マンデル酸塩等が挙げられる。これらの中でも、塩は、薬学的に許容される塩であることが好ましい。
塩としては、脂肪肝治療剤が効果を発揮する限り特に制限されず、例えば、塩酸塩、硫酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、燐酸塩、硝酸塩、安息香酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、酢酸塩、プロパン酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、グルタル酸塩、アジピン酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、フマール酸塩、リンゴ酸塩、マンデル酸塩等が挙げられる。これらの中でも、塩は、薬学的に許容される塩であることが好ましい。
溶媒和物としては、脂肪肝治療剤が効果を発揮する限り特に制限されず、例えば、水和物、有機溶媒和物等が挙げられる。これらの中でも、溶媒和物としては、薬学的に許容される溶媒和物であることが好ましい。
(投与対象)
上記実施形態にかかる受容体型プロテインチロシンホスファターゼOの阻害剤を、投与する対象、又は接触させる対象としては、例えば、動物個体、前記動物の組織、前記動物の細胞であってもよい。
上記実施形態にかかる受容体型プロテインチロシンホスファターゼOの阻害剤を、投与する対象、又は接触させる対象としては、例えば、動物個体、前記動物の組織、前記動物の細胞であってもよい。
投与対象の動物個体としては、受容体型プロテインチロシンホスファターゼOを有する動物であれば特に限定されない。前記動物としては、例えば、哺乳動物、爬虫類、鳥類、両生類、魚類等の脊椎動物等が挙げられる。
前記動物の組織としては、例えば、前記動物から分離された組織であってもよいし、オルガノイド等の人工的に作製された組織であってもよい。前記組織としては、例えば、肝臓等が挙げられるが、これに限定されない。
前記動物の細胞としては、例えば、前記動物から分離された細胞、前記動物から作製された培養細胞等が挙げられる。培養細胞としては、例えば、初代培養細胞、株化された細胞等が挙げられる。
株化された細胞は、一般的には不死化した細胞であり、癌細胞であってもよい。株化された細胞としては、公知の細胞を用いることができる。
株化された細胞は、例えば、多分化能を有する細胞、組織幹細胞、それらの細胞から分化させた細胞であってもよい。多分化能を有する細胞としては、例えば、胚性幹細胞(ES細胞)、人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cells、iPS細胞)等が挙げられる。
株化された細胞は、例えば、多分化能を有する細胞、組織幹細胞、それらの細胞から分化させた細胞であってもよい。多分化能を有する細胞としては、例えば、胚性幹細胞(ES細胞)、人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cells、iPS細胞)等が挙げられる。
上記動物の種類としては、哺乳動物であることが好ましい。前記哺乳動物としては、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット等のげっ歯類;ウサギ等のウサギ目;ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジ等の有蹄目;イヌ、ネコ等のネコ目;ヒト、サル、アカゲザル、カニクイザル、マーモセット、オランウータン、チンパンジーなどの霊長類等が挙げられる。
(その他の成分)
上記実施形態にかかる脂肪肝治療剤は、その他の成分を含んでもよい。
その他の成分としては、脂肪肝治療剤が効果を発揮する限り特に制限されず、例えば、後述する、賦形剤、増量剤、結合剤、湿潤化剤、崩壊剤、界面活性化剤、滑沢剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、溶解補助剤、防腐剤、矯味矯臭剤、無痛化剤、安定化剤、pH調整剤、抗酸化剤、防腐剤、保存剤、保湿剤、皮膚保護剤、清涼化剤、香料、着色剤、キレート剤、角質軟化剤、血行促進剤、収斂剤、組織修復促進剤、制汗剤、植物抽出成分、動物抽出成分、油性基剤、乳化剤、乳化安定剤、粉末成分、高分子成分、粘着性改良剤、被膜形成剤、保型剤、潤沢剤等が挙げられる。
上記実施形態にかかる脂肪肝治療剤は、その他の成分を含んでもよい。
その他の成分としては、脂肪肝治療剤が効果を発揮する限り特に制限されず、例えば、後述する、賦形剤、増量剤、結合剤、湿潤化剤、崩壊剤、界面活性化剤、滑沢剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、溶解補助剤、防腐剤、矯味矯臭剤、無痛化剤、安定化剤、pH調整剤、抗酸化剤、防腐剤、保存剤、保湿剤、皮膚保護剤、清涼化剤、香料、着色剤、キレート剤、角質軟化剤、血行促進剤、収斂剤、組織修復促進剤、制汗剤、植物抽出成分、動物抽出成分、油性基剤、乳化剤、乳化安定剤、粉末成分、高分子成分、粘着性改良剤、被膜形成剤、保型剤、潤沢剤等が挙げられる。
(含有量)
上記実施形態にかかる脂肪肝治療剤に含まれる受容体型プロテインチロシンホスファターゼOの阻害剤の含有量は、脂肪肝治療剤が本発明の効果を発揮する限り特に制限されず、脂肪肝治療剤の総質量(100質量%)に対して、例えば、0.01~50質量%であってもよく、0.1~30質量%が好ましく、1~10質量%であることがより好ましい。
上記実施形態にかかる脂肪肝治療剤に含まれる受容体型プロテインチロシンホスファターゼOの阻害剤の含有量は、脂肪肝治療剤が本発明の効果を発揮する限り特に制限されず、脂肪肝治療剤の総質量(100質量%)に対して、例えば、0.01~50質量%であってもよく、0.1~30質量%が好ましく、1~10質量%であることがより好ましい。
上記実施形態にかかる脂肪肝治療剤の用途は、特に限定されず、例えば、治療用医薬組成物、予防用医薬組成物等の医薬組成物、実験用組成物等であってもよいし、食品組成物等に配合して使用してもよい。
これらの中でも、医薬組成物に配合して用いることが好ましく、治療用医薬組成物に配合して用いることがより好ましい。
これらの中でも、医薬組成物に配合して用いることが好ましく、治療用医薬組成物に配合して用いることがより好ましい。
上記実施形態にかかる脂肪肝治療剤の使用方法及び使用量は、本発明の効果を発揮する限り特に制限されず、当業者であれば、適宜設定可能である。
以上説明した実施形態にかかる脂肪肝治療剤によれば、投与対象又は接触対象において受容体型プロテインチロシンホスファターゼOの活性又は発現量を低下させることが可能である。これにより、肝臓及び血液における脂質量の減少、肝機能障害マーカーの低下、肝臓、血液及び脂肪組織における炎症反応の減弱、血糖値維持能及びインスリン応答性を改善することが可能である。
上記実施形態にかかる脂肪肝治療剤を、脂肪肝の症状を呈している対象動物に投与することにより、脂肪肝の症状を改善することができる。
上記実施形態にかかる脂肪肝治療剤によれば、例えば、メタボリックシンドローム、脂肪肝・脂肪肝炎、脂質異常症、II型糖尿病、動脈硬化症等の症状を改善することが可能である。これにより、肥満状態の動物個体において、健康を増進することが可能である。
[医薬組成物]
一実施形態において、本発明は、上記実施形態の脂肪肝治療剤若しくはその塩又はそれらの溶媒和物の有効量、及び薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物を提供する。
一実施形態において、本発明は、上記実施形態の脂肪肝治療剤若しくはその塩又はそれらの溶媒和物の有効量、及び薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物を提供する。
本実施形態にかかる医薬組成物が含み得る、脂肪肝治療剤の塩としては、医薬組成物が効果を発揮する限り特に制限されず、例えば、塩酸塩、硫酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、燐酸塩、硝酸塩、安息香酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、酢酸塩、プロパン酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、グルタル酸塩、アジピン酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、フマール酸塩、リンゴ酸塩、マンデル酸塩等が挙げられる。これらの中でも、塩は、薬学的に許容される塩であることが好ましい。
本実施形態にかかる医薬組成物が含み得る、脂肪肝治療剤又はその塩の溶媒和物としては、医薬組成物が効果を発揮する限り特に制限されず、例えば、水和物、有機溶媒和物等が挙げられる。これらの中でも、溶媒和物としては、薬学的に許容される溶媒和物であることが好ましい。
(剤型)
本実施形態の医薬組成物は、本発明の効果が奏される限り特に限定されず、経口的に使用される剤型であってもよく、非経口的に使用される剤型であってもよい。経口的に使用される剤型としては、例えば錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤等が挙げられる。非経口的に使用される剤型としては、例えば注射剤、吸入剤、坐剤、皮膚外用剤、貼付剤等が挙げられる。
本実施形態の医薬組成物は、本発明の効果が奏される限り特に限定されず、経口的に使用される剤型であってもよく、非経口的に使用される剤型であってもよい。経口的に使用される剤型としては、例えば錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤等が挙げられる。非経口的に使用される剤型としては、例えば注射剤、吸入剤、坐剤、皮膚外用剤、貼付剤等が挙げられる。
(薬学的に許容される担体)
薬学的に許容される担体としては、例えば、ショ糖、デンプン、マンニット、ソルビット、乳糖、グルコース、セルロース、タルク、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム等の賦形剤、セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチン、アラビアゴム、ポリエチレングリコール、ショ糖、デンプン等の結合剤;デンプン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、ナトリウム-グリコール-スターチ、炭酸水素ナトリウム、リン酸カルシウム、クエン酸カルシウム等の崩壊剤;ステアリン酸マグネシウム、エアロジル、タルク、ラウリル硫酸ナトリウム等の滑沢剤;クエン酸、メントール、グリチルリチン・アンモニウム塩、グリシン、オレンジ粉等の芳香剤;安息香酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、メチルパラベン、プロピルパラベン等の保存剤、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酢酸等の安定剤;メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ステアリン酸アルミニウム等の懸濁剤;界面活性剤等の分散剤;水、緩衝液、生理食塩水等の希釈剤;カカオ脂、ポリエチレングリコール、白灯油等のベースワックス等が挙げられる。
薬学的に許容される担体としては、例えば、ショ糖、デンプン、マンニット、ソルビット、乳糖、グルコース、セルロース、タルク、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム等の賦形剤、セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチン、アラビアゴム、ポリエチレングリコール、ショ糖、デンプン等の結合剤;デンプン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、ナトリウム-グリコール-スターチ、炭酸水素ナトリウム、リン酸カルシウム、クエン酸カルシウム等の崩壊剤;ステアリン酸マグネシウム、エアロジル、タルク、ラウリル硫酸ナトリウム等の滑沢剤;クエン酸、メントール、グリチルリチン・アンモニウム塩、グリシン、オレンジ粉等の芳香剤;安息香酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、メチルパラベン、プロピルパラベン等の保存剤、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酢酸等の安定剤;メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ステアリン酸アルミニウム等の懸濁剤;界面活性剤等の分散剤;水、緩衝液、生理食塩水等の希釈剤;カカオ脂、ポリエチレングリコール、白灯油等のベースワックス等が挙げられる。
(その他の成分)
本実施形態にかかる医薬組成物は、その他の成分を含んでもよい。
その他の成分としては、例えば、pH調整剤、抗酸化剤、防腐剤、保存剤、保湿剤、皮膚保護剤、清涼化剤、香料、着色剤、キレート剤等が挙げられる。
本実施形態にかかる医薬組成物は、その他の成分を含んでもよい。
その他の成分としては、例えば、pH調整剤、抗酸化剤、防腐剤、保存剤、保湿剤、皮膚保護剤、清涼化剤、香料、着色剤、キレート剤等が挙げられる。
pH調整剤としては、例えば、クエン酸、乳酸、酒石酸、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸等の有機酸類、ピロリン酸ナトリウム等の有機酸塩類、水酸化ナトリウム等の無機塩基類、ジイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン類等が挙げられる。
抗酸化剤としては、例えばジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、α-トコフェロール、エリソルビン酸、ピロ亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム等が挙げられる。安定化剤としてはEDTA-2Na等が挙げられる。
防腐剤又は保存剤としてはメチルパラベン等のパラベン類、ベンジルアルコール、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸等が挙げられる。
清涼化剤としてはハッカ(l-メントール)、カンフル、エタノール、ユーカリ油等が挙げられる。
清涼化剤としてはハッカ(l-メントール)、カンフル、エタノール、ユーカリ油等が挙げられる。
着色剤としては、例えば、赤色202号、酸化鉄等が挙げられる。
キレート剤としては、例えば、EDTA-2Na(エデト酸塩)、エチドロン酸4Na、三リン酸5Na、ペンテト酸5Na等が挙げられる。
キレート剤としては、例えば、EDTA-2Na(エデト酸塩)、エチドロン酸4Na、三リン酸5Na、ペンテト酸5Na等が挙げられる。
医薬組成物は、上記の担体及び添加剤を適宜組み合わせて、一般に認められた製薬実施に要求される単位用量形態で混和することによって製剤化することができる。
本実施形態にかかる治療用医薬組成物が経口的に投与されるものである場合、治療用医薬組成物の製剤は経口剤のために通常用いられている賦形剤、増量剤、結合剤、湿潤化剤、崩壊剤、界面活性化剤、滑沢剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、溶解補助剤、防腐剤、矯味矯臭剤、無痛化剤、安定化剤等の添加剤を用いて、常法により製造することができる。
使用可能な添加剤としては、例えば、乳糖、果糖、ブドウ糖、デンプン、ゼラチン、メチルセルロース、アラビアゴム、ポリエチレングリコール、クエン酸、亜硫酸ソーダ、リン酸ナトリウム、β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン等が挙げられる。
本実施形態にかかる治療用医薬組成物が経口的に投与されるものである場合、その治療用医薬組成物は、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、散剤、丸剤、細粒剤、トローチ剤等の経口投与に適した剤形に調製されたものであってもよい。
使用可能な添加剤としては、例えば、乳糖、果糖、ブドウ糖、デンプン、ゼラチン、メチルセルロース、アラビアゴム、ポリエチレングリコール、クエン酸、亜硫酸ソーダ、リン酸ナトリウム、β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン等が挙げられる。
本実施形態にかかる治療用医薬組成物が経口的に投与されるものである場合、その治療用医薬組成物は、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、散剤、丸剤、細粒剤、トローチ剤等の経口投与に適した剤形に調製されたものであってもよい。
本実施形態にかかる医薬組成物が、非経口的投与に用いられる場合、前記医薬組成物は、抗酸化剤、緩衝液、制菌剤、等張化剤懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定化剤、防腐剤等を含んでもよい。
本実施形態にかかる医薬組成物が、非経口的投与に用いられる場合、前記医薬組成物は、アンプル、バイアル、注射器のカートリッジ等に、単位投与量又は複数回投与量ずつ容器に封入されてもよい。
本実施形態にかかる医薬組成物が、非経口的投与に用いられる場合、前記医薬組成物は、アンプル、バイアル、注射器のカートリッジ等に、単位投与量又は複数回投与量ずつ容器に封入されてもよい。
(治療の対象)
本実施形態にかかる医薬組成物の治療対象の疾患は、脂肪肝である。
本実施形態にかかる医薬組成物の治療対象の疾患は、脂肪肝である。
投与対象の動物個体としては、受容体型プロテインチロシンホスファターゼOを有する動物であれば特に限定されない。前記動物としては、例えば、哺乳動物、爬虫類、鳥類、両生類、魚類等の脊椎動物等が挙げられる。
上記動物の種類としては、哺乳動物であることが好ましい。前記哺乳動物としては、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット等のげっ歯類;ウサギ等のウサギ目;ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジ等の有蹄目;イヌ、ネコ等のネコ目;ヒト、サル、アカゲザル、カニクイザル、マーモセット、オランウータン、チンパンジーなどの霊長類等が挙げられる。
(有効量)
本実施形態の医薬組成物は、脂肪肝治療剤若しくはその塩又はそれらの溶媒和物の治療的有効量を含んでいてもよい。
本実施形態の医薬組成物は、脂肪肝治療剤若しくはその塩又はそれらの溶媒和物の治療的有効量を含んでいてもよい。
「治療的有効量」とは、対象疾患の治療又は予防のために有効な薬剤の量を意味する。例えば、前記治療的有効量は、治療又は予防の対象となる疾患を治療又は予防できる量であり得る。本実施形態の医薬組成物における、脂肪肝治療剤若しくはその塩又はそれらの溶媒和物の含有量は、前記治療的有効量に応じて適宜選択することができる。
(投与方法)
動物個体への投与は、非経口投与であってもよいし。経口投与であってもよい。
動物個体への投与は、非経口投与であってもよいし。経口投与であってもよい。
非経口投与としては、例えば、静脈内投与、動脈内投与等の全身投与、筋肉内投与、皮下投与、腹腔投与、脳室内投与、髄腔内投与、経皮投与、眼内投与、鼻腔内投与等の局所投与等、全身投与が挙げられる。
(投与量)
動物個体への投与量は、当業者であれば適当な投与量を適宜選択することが可能である。
例えば、ヒトに対する脂肪肝治療剤の経口投与量は、脂肪肝治療剤の種類、脂肪肝の症状等により変動するが、一般的に成人(体重60kgとして)においては、1日あたり約0.1~500mg、好ましくは約1.0~250mg、より好ましくは約1.0~100mg程度を、1日1回、又は数回に分けて投与することが適切であると考えられる。
動物個体への投与量は、当業者であれば適当な投与量を適宜選択することが可能である。
例えば、ヒトに対する脂肪肝治療剤の経口投与量は、脂肪肝治療剤の種類、脂肪肝の症状等により変動するが、一般的に成人(体重60kgとして)においては、1日あたり約0.1~500mg、好ましくは約1.0~250mg、より好ましくは約1.0~100mg程度を、1日1回、又は数回に分けて投与することが適切であると考えられる。
ヒトに対する脂肪肝治療剤の経口投与量は、脂肪肝治療剤の種類、脂肪肝の症状等により変動するが、全身投与を行う場合は、一般的に成人(体重60kgとして)においては、1日あたり約0.1~500mg、好ましくは約1.0~250mg、より好ましくは約1.0~100mg程度を、1日1回、又は数回に分けて投与することが適切であると考えられる。局所投与を行う場合は、一般的に成人(体重60kgとして)においては、1日あたり約0.001~10mg、好ましくは約0.01~5mg、より好ましくは約0.02~2mg程度を、1日1回、又は数回に分けて投与することが適切であると考えられる。
本実施形態にかかる医薬組成物によれば、投与対象において受容体型プロテインチロシンホスファターゼOの活性又は発現量を低下させることが可能である。これにより、肝臓及び血液における脂質量の減少、肝機能障害マーカーの低下、肝臓、血液及び脂肪組織における炎症反応の減弱、血糖値維持能及びインスリン応答性を改善することが可能である。
本実施形態にかかる医薬組成物を、脂肪肝の症状を呈している対象動物に投与することにより、脂肪肝の症状を改善することができる。
本実施形態にかかる医薬組成物によれば、例えば、メタボリックシンドローム、脂肪肝・脂肪肝炎、脂質異常症、II型糖尿病、動脈硬化症等の症状を改善することが可能である。これにより、肥満状態の動物個体において、健康を増進することが可能である。
[治療方法]
本発明は、一実施形態において、上記実施形態にかかる医薬組成物を、治療を必要とするヒト以外の動物に投与することを含む、治療方法を提供する。本実施形態にかかる医薬組成物の治療対象の疾患は、脂肪肝である。
本発明は、一実施形態において、上記実施形態にかかる医薬組成物を、治療を必要とするヒト以外の動物に投与することを含む、治療方法を提供する。本実施形態にかかる医薬組成物の治療対象の疾患は、脂肪肝である。
ヒト以外の動物としては、例えば、受容体型プロテインチロシンホスファターゼOを有する動物であれば特に限定されない。前記動物としては、例えば、ヒト以外の哺乳動物、爬虫類、鳥類、両生類、魚類等の脊椎動物等が挙げられる。
上記動物の種類としては、ヒト以外の哺乳動物であることが好ましい。前記哺乳動物としては、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット等のげっ歯類;ウサギ等のウサギ目;ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジ等の有蹄目;イヌ、ネコ等のネコ目;サル、アカゲザル、カニクイザル、マーモセット、オランウータン、チンパンジー等のヒト以外の霊長類等が挙げられる。
本実施形態にかかる治療方法において、有効量及び投与方法としては、[医薬組成物]において上述したものが挙げられる。
本実施形態にかかる治療方法によれば、投与対象において受容体型プロテインチロシンホスファターゼOの活性又は発現量を低下させることが可能である。これにより、肝臓及び血液における脂質量の減少、肝機能障害マーカーの低下、肝臓、血液及び脂肪組織における炎症反応の減弱、血糖値維持能及びインスリン応答性を改善することが可能である。
本実施形態にかかる治療方法によれば、脂肪肝の症状を改善することができる。本実施形態にかかる治療方法によれば、例えば、メタボリックシンドローム、脂肪肝・脂肪肝炎、脂質異常症、II型糖尿病、動脈硬化症等の症状を改善することが可能である。これにより、肥満状態の動物個体において、健康を増進することが可能である。
[スクリーニング方法]
一実施形態において、本発明は、脂肪肝治療剤のスクリーニング方法であって、被験物質の存在下における受容体型プロテインチロシンホスファターゼOのホスファターゼ活性を測定する工程を含み、前記被験物質の存在下における前記受容体型プロテインチロシンホスファターゼOのホスファターゼ活性が、前記被験物質の非存在下における前記受容体型プロテインチロシンホスファターゼOのホスファターゼ活性と比較して低いことが、前記被験物質が、脂肪肝を治療する作用を有することを示す、スクリーニング方法を提供する。
一実施形態において、本発明は、脂肪肝治療剤のスクリーニング方法であって、被験物質の存在下における受容体型プロテインチロシンホスファターゼOのホスファターゼ活性を測定する工程を含み、前記被験物質の存在下における前記受容体型プロテインチロシンホスファターゼOのホスファターゼ活性が、前記被験物質の非存在下における前記受容体型プロテインチロシンホスファターゼOのホスファターゼ活性と比較して低いことが、前記被験物質が、脂肪肝を治療する作用を有することを示す、スクリーニング方法を提供する。
被験物質としては特に制限されず、例えば、天然化合物ライブラリ、合成化合物ライブラリ、既存薬ライブラリ、代謝物ライブラリ等に由来する物質が挙げられる。
AKB9778は、受容体型プロテインチロシンホスファターゼOのホスファターゼ活性を低下させる化合物であり、脂肪肝を治療する作用を有する。そこで、受容体型プロテインチロシンホスファターゼOのホスファターゼ活性を有意に低下させる被験物質は、脂肪肝を治療する作用を有するということができる。
本実施形態において、受容体型プロテインチロシンホスファターゼOのホスファターゼ活性の測定方法は特に限定されず、例えば、受容体型プロテインチロシンホスファターゼOに対して、ホスファターゼ人工基質を用いて測定する方法が挙げられる。人工基質としては、例えば、DiFMUP(thermofisher)等の蛍光基質であってもよい。
本実施形態において、スクリーニングに用いられる受容体型プロテインチロシンホスファターゼOは、組換えタンパク質であってもよいし、野生型の動物細胞から分離したものであってもよい。
組換えタンパク質を発現させる細胞としては特に限定されず、例えば、大腸菌、酵母、昆虫細胞、動物細胞、植物細胞等であってもよい。あるいは、組換えタンパク質は、無細胞タンパク質合成系で合成されてものであってもよい。
[その他の実施形態]
1実施形態において、本発明は、受容体型プロテインチロシンホスファターゼOの阻害剤の有効量を、治療を必要とする患者に投与する工程を含む、治療方法が挙げられる。
1実施形態において、本発明は、受容体型プロテインチロシンホスファターゼOの阻害剤の有効量を、治療を必要とする患者に投与する工程を含む、治療方法が挙げられる。
1実施形態において、本発明は、脂肪肝の治療のための受容体型プロテインチロシンホスファターゼOの阻害剤を提供する。
1実施形態において、本発明は、脂肪肝の治療剤を製造するための受容体型プロテインチロシンホスファターゼOの阻害剤を提供する。
上記の各実施形態において、受容体型プロテインチロシンホスファターゼOの阻害剤は、受容体型プロテインチロシンホスファターゼOのホスファターゼ活性を低下させるものであってもよいし、受容体型プロテインチロシンホスファターゼOの発現量を低下させるものであってもよい。
受容体型プロテインチロシンホスファターゼOの阻害剤は、低分子化合物であってもよく、AKB9778(CAS番号1008510-37-9)であってもよい。
受容体型プロテインチロシンホスファターゼOの阻害剤は、受容体型プロテインチロシンホスファターゼOを標的としたsiRNA又はshRNAであってもよい。
上記実施形態において、有効量、投与量、投与方法としては、[医薬組成物]において上述したものが挙げられる。
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[材料と方法]
(マウスの飼育並びに体重と摂食量の測定)
実験に用いた全てのマウスは、設定温度:24℃(許容範囲:23~26℃)、設定湿度:55%(許容範囲:40~70%)、明暗各12時間(照明:8:00~20:00)に維持された動物飼育室で飼育した。受容体型プロテインチロシンホスファターゼOの遺伝子欠損マウスと野生型マウスは、高脂肪・高ショ糖食(F2HFHSD,オリエンタル酵母;エネルギー比率がタンパク質:脂肪:炭水化物=17.2:54.5:28.3)を自由摂食させて飼育した。
(マウスの飼育並びに体重と摂食量の測定)
実験に用いた全てのマウスは、設定温度:24℃(許容範囲:23~26℃)、設定湿度:55%(許容範囲:40~70%)、明暗各12時間(照明:8:00~20:00)に維持された動物飼育室で飼育した。受容体型プロテインチロシンホスファターゼOの遺伝子欠損マウスと野生型マウスは、高脂肪・高ショ糖食(F2HFHSD,オリエンタル酵母;エネルギー比率がタンパク質:脂肪:炭水化物=17.2:54.5:28.3)を自由摂食させて飼育した。
体重および摂餌量は、毎週定日の8:00から9:00の間に測定した。ob/obマウスは、普通食(CA-1,クレアジャパン)を自由摂食させて飼育した。体重及び摂餌量は、毎週定日の8:00から9:00の間に測定した。飼育終了後に解剖を行い、目的とする臓器・組織を切除し、重量を測定した。
(薬剤の投与)
AKB9778(Sundia MediTech Company,Chinaに合成を依頼)は、5mg/mlとなるように10%HPCD(2-hydroxypropyl-β-cyclodextrin,ナカライテスク)に溶解し、マウス1匹あたり10mg/kg体重の量を、毎日8:00から9:00に腹腔内に投与した。Vehicle群には10%HPCDだけを同量投与した。
AKB9778(Sundia MediTech Company,Chinaに合成を依頼)は、5mg/mlとなるように10%HPCD(2-hydroxypropyl-β-cyclodextrin,ナカライテスク)に溶解し、マウス1匹あたり10mg/kg体重の量を、毎日8:00から9:00に腹腔内に投与した。Vehicle群には10%HPCDだけを同量投与した。
(肝臓組織切片のBodipy染色)
肝脂質の蓄積を調べるために、凍結肝切片をBodipy493/503(Invitrogen)で染色した。マウスを10%ホルムアルデヒドで還流固定した後、肝臓を取り出し、10%ホルムアルデヒド中で後固定した。次いで、凍結切片を作成し、PBSで2回洗浄した後、PBS中に1μg/mlの濃度に希釈したBodipy493/503中に室温で20分間インキュベートした。その後、PBSで2回洗浄した後、Fluoromount(Diagnostic BioSystems)で封入処理した。キーエンス蛍光顕微鏡BZ-X810で蛍光画像を取得し、Photoshop v22.5.1(Adobe Systems)を用いて処理を行った。
肝脂質の蓄積を調べるために、凍結肝切片をBodipy493/503(Invitrogen)で染色した。マウスを10%ホルムアルデヒドで還流固定した後、肝臓を取り出し、10%ホルムアルデヒド中で後固定した。次いで、凍結切片を作成し、PBSで2回洗浄した後、PBS中に1μg/mlの濃度に希釈したBodipy493/503中に室温で20分間インキュベートした。その後、PBSで2回洗浄した後、Fluoromount(Diagnostic BioSystems)で封入処理した。キーエンス蛍光顕微鏡BZ-X810で蛍光画像を取得し、Photoshop v22.5.1(Adobe Systems)を用いて処理を行った。
(肝臓からの脂質の抽出とトリグリセリドとコレステロールの定量解析)
肝組織からの脂質の抽出はクロロホルム/メタノール抽出法で行った。肝組織を秤量し、3倍量のクロロホルム/メタノール(2:1 v/v)を加えてテフロン(登録商標)ホモジナイザーでホモジナイズした後、1倍量のメタノール、1倍量のクロロホルムと1倍量の0.73%NaClを混合しながら加えた。
肝組織からの脂質の抽出はクロロホルム/メタノール抽出法で行った。肝組織を秤量し、3倍量のクロロホルム/メタノール(2:1 v/v)を加えてテフロン(登録商標)ホモジナイザーでホモジナイズした後、1倍量のメタノール、1倍量のクロロホルムと1倍量の0.73%NaClを混合しながら加えた。
次いで、これを750×gで10分間遠心して、二相に分離させた。脂質を含む下相を回収し、窒素気流下で蒸発させて脂質抽出物を得た。この抽出物の重量を測定し、「Liver total lipid」とした。また、脂質抽出物をイソプロパノールに溶解して、ラボアッセイトリグリセリド(Fujifilm Wako)とラボアッセイコレステロール(Fujifilm Wako)を用いて、トリグリセリド量とコレステロール量を測定した。
(RNAの抽出と定量PCR)
Total RNAの抽出と精製はTRIzol Reagent(Life Technologies)を用いて行った。PrimeScript RT Reagent Kit with gDNA Eraser(Takara)を用いて、ゲノムDNAの除去とともにmRNAからcDNAへの逆転写を行った。
Total RNAの抽出と精製はTRIzol Reagent(Life Technologies)を用いて行った。PrimeScript RT Reagent Kit with gDNA Eraser(Takara)を用いて、ゲノムDNAの除去とともにmRNAからcDNAへの逆転写を行った。
定量PCR解析では、cDNAの増幅にSYBR Premix Ex TaqII(Takara)を使用し、StepOnePlus Real-Time PCR thermocycler(Applied Biosystems)を用いて定量解析を行った。PCR反応は、95℃で30秒の初期変性の後、95℃で5秒と60℃で30秒のセットを40サイクル行った。各遺伝子の発現量は、Gapdhに対する相対値として算出した。それぞれのcDNAの増幅には以下のプライマーセットを用いた。
Mcp1の解析には、配列番号1及び配列番号2のプライマーセットを用いた。
Tnfaの解析には、配列番号3及び配列番号4のプライマーセットを用いた。
IL6の解析には、配列番号5及び配列番号6のプライマーセットを用いた。
CD11cの解析には、配列番号7及び配列番号8のプライマーセットを用いた。
Tgfb1の解析には、配列番号9及び配列番号10のプライマーセットを用いた。
Fasnの解析には、配列番号11及び配列番号12のプライマーセットを用いた。
Gapdhの解析には、配列番号13及び配列番号14のプライマーセットを用いた。
Tnfaの解析には、配列番号3及び配列番号4のプライマーセットを用いた。
IL6の解析には、配列番号5及び配列番号6のプライマーセットを用いた。
CD11cの解析には、配列番号7及び配列番号8のプライマーセットを用いた。
Tgfb1の解析には、配列番号9及び配列番号10のプライマーセットを用いた。
Fasnの解析には、配列番号11及び配列番号12のプライマーセットを用いた。
Gapdhの解析には、配列番号13及び配列番号14のプライマーセットを用いた。
(血清中のTNF、IL6、アディポネクチンの測定)
マウスより血液を採取し、氷上に30分間置いたのち、1200×gで20分間遠心分離して血清を得た。血清サンプルについて、Mouse TNF-alpha Quantikine ELISA Kit(R&D Systems)、Mouse IL-6 Quantikine ELISA Kit(R&D Systems)、レビスアディポネクチン-マウス/ラットELISAキット(Fujifilm WAKO)を用いて、それぞれTNFα、IL6、アディポネクチンの定量解析を行った。
マウスより血液を採取し、氷上に30分間置いたのち、1200×gで20分間遠心分離して血清を得た。血清サンプルについて、Mouse TNF-alpha Quantikine ELISA Kit(R&D Systems)、Mouse IL-6 Quantikine ELISA Kit(R&D Systems)、レビスアディポネクチン-マウス/ラットELISAキット(Fujifilm WAKO)を用いて、それぞれTNFα、IL6、アディポネクチンの定量解析を行った。
(血清中のALT、AST、トリグリセリド(TG)、トータル コレステロール(T-Cho)の測定)
マウスより血液を採取し、氷上に30分間置いたのち、1200×gで20分間遠心分離して血清を得た。血清サンプル中のALT、AST、トリグリセリド、トータル コレステロールの測定は、オリエンタル酵母工業株式会社に依頼した。
マウスより血液を採取し、氷上に30分間置いたのち、1200×gで20分間遠心分離して血清を得た。血清サンプル中のALT、AST、トリグリセリド、トータル コレステロールの測定は、オリエンタル酵母工業株式会社に依頼した。
(糖負荷試験とインスリン負荷試験)
糖負荷試験では、マウスを一晩(12時間)絶食させた後、ブドウ糖(2g/kg体重)を腹腔内に注射した。インスリン負荷試験では、6時間の絶食後、インスリン(2.0U/kg体重)を腹腔内に注射した。その後、グラフに示された時刻(0~120分)に、尾部先端から血液を採取し、グルコメーター(Aventir Biotech,USA)を用いて血糖値を測定した。
糖負荷試験では、マウスを一晩(12時間)絶食させた後、ブドウ糖(2g/kg体重)を腹腔内に注射した。インスリン負荷試験では、6時間の絶食後、インスリン(2.0U/kg体重)を腹腔内に注射した。その後、グラフに示された時刻(0~120分)に、尾部先端から血液を採取し、グルコメーター(Aventir Biotech,USA)を用いて血糖値を測定した。
(脂肪細胞の大きさの定量化)
マウスを10%ホルムアルデヒドで還流固定した後、精巣周囲の脂肪組織を取り出し、10%ホルムアルデヒド中で後固定した。脱水処理後、パラフィンに包埋し、切片を作成した。切片を脱パラフィン処理後、Mayer’s Hematoxylin Solution(Fujifilm Wako)で染色した。
マウスを10%ホルムアルデヒドで還流固定した後、精巣周囲の脂肪組織を取り出し、10%ホルムアルデヒド中で後固定した。脱水処理後、パラフィンに包埋し、切片を作成した。切片を脱パラフィン処理後、Mayer’s Hematoxylin Solution(Fujifilm Wako)で染色した。
次いで、切片を0.3%エオシン溶液で染色し、エタノールで洗浄後、脱水処理を行い、PARA mount N(Falma)で封入した。キーエンス蛍光顕微鏡BZ-X810で画像を取得し、Photoshop v22.5.1(Adobe Systems)を用いて処理を行った。また、Image Jソフトウェアを用いて1匹のマウスあたり400個の脂肪細胞の直径を測定した。
(ウエスタンブロッティング)
脂肪組織を4倍量のRIPA緩衝液(10 mM Hepes,pH7.4,120mM NaCl,0.1%SDS,0.5%デオキシコール酸、1%ノニデットP-40、10%グリセロール、5mM EDTA,50mM NaF、0.5mM Na3VO4、10μg/mLロイペプチン、1μg/mlペプスタチンA、1mMフェニルスルホニルフルオリド)中で、テフロン(登録商標)ホモジナイザーを用いてホモジナイズした。
脂肪組織を4倍量のRIPA緩衝液(10 mM Hepes,pH7.4,120mM NaCl,0.1%SDS,0.5%デオキシコール酸、1%ノニデットP-40、10%グリセロール、5mM EDTA,50mM NaF、0.5mM Na3VO4、10μg/mLロイペプチン、1μg/mlペプスタチンA、1mMフェニルスルホニルフルオリド)中で、テフロン(登録商標)ホモジナイザーを用いてホモジナイズした。
次いで、15000×gで15分間遠心分離した上清について、BCAマイクロアッセイキット(Life Technologies社)を用いて、タンパク質濃度を測定した。この抽出液をSDSサンプルバッファーと混合し、75℃で15分間熱処理した。
次いで、各サンプル10μgを7.5% SDS-PAGEゲル電気泳動で分離した後、タンパク質をImmobilon-Pメンブレン(Merck Millipore)に転写した。このメンブレンを3% BSA溶液でブロッキング後、同液で1/1000に希釈した抗リン酸化AKT抗体(CST, #4060)及びペルオキシダーゼ結合二次抗体(GE Healthcare)とインキュベートした後、Western Lightning ECL Pro(PerkinElmer)を用いて化学発光による検出を行った。検出にはルミノイメージアナライザーLuminoGraph II(ATTO)を用いた。検出が終わったメンブレンはWB剥離溶液(ナカライテスク)で処理して抗体を除去した後、新たに抗AKT抗体(CST,#4691)を用いて抗リン酸化AKT抗体と同様に検出を行った。
(AKB9778の各PTPに対する阻害活性の解析)
受容体型プロテインチロシンホスファターゼO,受容体型プロテインチロシンホスファターゼJ,受容体型プロテインチロシンホスファターゼBの細胞内領域は、大腸菌の発現系を用いて調製した。受容体型プロテインチロシンホスファターゼC,受容体型プロテインチロシンホスファターゼD,プロテインチロシンホスファターゼ-1Bの細胞内領域はカイコの発現系を用いて調製した。Hepes緩衝液(50mM Hepes,100mM NaCl,2mM EDTA,1mM DTT,pH7.0)に、PTPタンパク質及び様々な濃度のAKB9778を加えた溶液に、ホスファターゼの人工基質であるDiFMUP(Thermo Fisher)を最終濃度が10mMになるように添加することで反応を開始した。反応は37℃で30分間行った。コロナ マルチグレーティング マイクロプレートリーダ SH-9000Lab(日立ハイテクサイエンス)を使用して、350/455nmの励起/発光波長を用いて蛍光値を測定することでAKB9778の阻害活性を解析した。
受容体型プロテインチロシンホスファターゼO,受容体型プロテインチロシンホスファターゼJ,受容体型プロテインチロシンホスファターゼBの細胞内領域は、大腸菌の発現系を用いて調製した。受容体型プロテインチロシンホスファターゼC,受容体型プロテインチロシンホスファターゼD,プロテインチロシンホスファターゼ-1Bの細胞内領域はカイコの発現系を用いて調製した。Hepes緩衝液(50mM Hepes,100mM NaCl,2mM EDTA,1mM DTT,pH7.0)に、PTPタンパク質及び様々な濃度のAKB9778を加えた溶液に、ホスファターゼの人工基質であるDiFMUP(Thermo Fisher)を最終濃度が10mMになるように添加することで反応を開始した。反応は37℃で30分間行った。コロナ マルチグレーティング マイクロプレートリーダ SH-9000Lab(日立ハイテクサイエンス)を使用して、350/455nmの励起/発光波長を用いて蛍光値を測定することでAKB9778の阻害活性を解析した。
(3T3-L1細胞中の受容体型プロテインチロシンホスファターゼOの基質分子(Vimentin)の単離)
マウス3T3-L1線維芽細胞はATCCから入手した。細胞は増殖培地(10% FBS-DMEM/F-12)で密集成長(コンフルエント)になるまで増殖させた後、培養液を分化培地(増殖培地に1μM dexamethasone,0.5mM 3-isobutyl-1-methylxanthine,20μg/ml insulinを加えた培地)に変換して分化誘導を行った。分化開始の3日後から、脂肪細胞培地(増殖培地に20μg/ml insulinを加えた培地)に変換し、新鮮な培地を1日おきに与えた。分化誘導から14日後に細胞を解析に使用した。
マウス3T3-L1線維芽細胞はATCCから入手した。細胞は増殖培地(10% FBS-DMEM/F-12)で密集成長(コンフルエント)になるまで増殖させた後、培養液を分化培地(増殖培地に1μM dexamethasone,0.5mM 3-isobutyl-1-methylxanthine,20μg/ml insulinを加えた培地)に変換して分化誘導を行った。分化開始の3日後から、脂肪細胞培地(増殖培地に20μg/ml insulinを加えた培地)に変換し、新鮮な培地を1日おきに与えた。分化誘導から14日後に細胞を解析に使用した。
AKB9778を10μMの濃度で培地に添加して10分間インキュベートした3T3-L1と未添加の3T3-L1について、RIPA緩衝液を用いて抽出を行った。15000×gで15分間遠心分離した上清から40μlのAnti Phosphotyrosine Affinity Beads(CYT Cytoskeleton)を用いて、チロシンリン酸化されたタンパク質を回収した。回収したタンパク質は10%トリクロロ酢酸・アセトンで沈殿させた後、アセトンで洗浄し乾燥させた。
次いで、サンプルをサンプル緩衝液(7M urea,2M thiourea,5% CHAPS,1.5% DTT,1% IPG buffer(GE Healthcare))に溶解し、7cm長のpH3-11 NL Immobiline DryStrip(GE Healthcare)に添加した。DryStripはIPGphor focusing unit (GE Healthcare, Uppsala, Sweden)を用いて等電点電気泳動を行った。泳動後、平衡緩衝液1(2% DTT, 6M尿素, 30%グリセロール, 4% SDS, 50mM Tris, pH8.8)で20分間平衡処理を行い、さらに、DTTの代わりに2.5%のヨードアセトアミドを含む平衡緩衝液2中で、さらに20分間DryStripを平衡化した。DryStripを7.5%SDS-PAGEゲル上に置き、2次元目の電気泳動を行った。
泳動分離後、ゲルを銀染色MSキット(Fujifilm Wako)で染色し、AKB9778処理でリン酸化比が亢進したスポットに対応するスポット(赤丸の部分)を切り出した。ゲル中のタンパク質の同定は日本プロテオミクスに委託した(トリプシン処理後、LC-MS/MSで解析した)。
以下に示す実験例において、*は、p<0.05を示し、**は、p<0.01を示す。
図10~図17において、Vehは対照群を示し、AKBは、投与群を示す。
図10~図17において、Vehは対照群を示し、AKBは、投与群を示す。
[実験例1]
(ノックアウトマウスの解析1)
受容体型プロテインチロシンホスファターゼO遺伝子を欠損する(Ptpro-KO)マウスの表現型について解析を行った。本明細書において、Ptpro-KOマウスは、RBRC01235(RIKEN Bio-Resource Research Center)を用いた。
(ノックアウトマウスの解析1)
受容体型プロテインチロシンホスファターゼO遺伝子を欠損する(Ptpro-KO)マウスの表現型について解析を行った。本明細書において、Ptpro-KOマウスは、RBRC01235(RIKEN Bio-Resource Research Center)を用いた。
まず、野生型雄マウス(以下、単にWTマウスという場合がある)、及びPtpro-KO雄マウス(以下、単にKOマウスという場合がある)を、普通食を給餌して長期間飼育し、この間の体重を測定した。その結果、野生型マウスとPtpro-KOマウスとの間では、体重に有意な差は認められなかった。
次いで、WT雄マウス及びKO雄マウスに対して、高脂肪・高ショ糖食(HF・HSD)を給餌して長期間飼育し、この間の体重、及び食餌摂取量を測定した。体重及び食餌摂取量は、WT雄マウス及びKO雄マウス、それぞれ8匹ずつについて測定した。
結果を図1A、図1Bに示す。
結果を図1A、図1Bに示す。
図1Aは、高脂肪・高ショ糖食(HF・HSD)で飼育した、WTマウス及びKOマウスの体重の変化を示すグラフである。
図1Bは、HF・HSDで飼育した、15週齢及び25週齢におけるWTマウス及びKOマウスの、1日の食事摂取量を示すグラフである。
図1Bは、HF・HSDで飼育した、15週齢及び25週齢におけるWTマウス及びKOマウスの、1日の食事摂取量を示すグラフである。
図1Aに示されるように、HF・HSD飼育下では、WTマウスでは、20週齢以降に体重増加が鈍化した。これに対し、KOマウスでは、継続した体重の増加が観察された。
図1Bに示されるように、HF・HSD飼育下では、KOマウスは、WTマウスに比べて、摂食量が有意に多かった。
[実験例2]
(ノックアウトマウスの解析2)
Ptproノックアウトマウスの肝臓と脂肪組織における、脂肪の蓄積の表現型について、解析した。
(ノックアウトマウスの解析2)
Ptproノックアウトマウスの肝臓と脂肪組織における、脂肪の蓄積の表現型について、解析した。
実験例1と同様に、WTマウス及びKOマウスを、高脂肪・高ショ糖食(HF・HSD)で飼育した。24週齢の各マウスについて、腹部臓器の形状、中性脂肪蓄積量、肝臓重量、肝臓の総脂質、肝臓トリグリセリド値、肝臓コレステロール値を解析した。腹部臓器の形状以外の測定結果は、いずれも、8匹のマウスで得られた結果を平均したものである。結果を図2A~図2Fに示す。
図2Aは、高脂肪・高ショ糖食(HF・HSD)で飼育した、WTマウス及びPtpro-KOマウスの腹部を解剖した後、撮影した写真である。
図2Bは、HF・HSDで飼育した、WTマウス及びKOマウスの肝臓における中性脂肪をBodipy染色により可視化した写真である。
図2Bは、HF・HSDで飼育した、WTマウス及びKOマウスの肝臓における中性脂肪をBodipy染色により可視化した写真である。
図2Cは、HF・HSDで飼育した、WTマウス及びKOマウスの肝臓の重量を示すグラフである。
図2Dは、HF・HSDで飼育した、WTマウス及びKOマウスの肝臓の総脂質を示すグラフである。
図2Eは、HF・HSDで飼育した、WTマウス及びKOマウスの肝臓トリグリセリド値を示すグラフである。
図2Fは、HF・HSDで飼育した、WTマウス及びKOマウスの肝臓コレステロール値を示すグラフである。
図2Dは、HF・HSDで飼育した、WTマウス及びKOマウスの肝臓の総脂質を示すグラフである。
図2Eは、HF・HSDで飼育した、WTマウス及びKOマウスの肝臓トリグリセリド値を示すグラフである。
図2Fは、HF・HSDで飼育した、WTマウス及びKOマウスの肝臓コレステロール値を示すグラフである。
図2Aに示されるように、HF・HSD飼育下では、KOマウスにおいては、野生型マウスに比べて、脂肪組織が著しく増大していた。
図2Aに示されるように、HF・HSD飼育下であっても、KOマウスの肝臓の大きさは、野生型マウスとは異なり、小さいままであった。WTマウスの肝臓は白っぽく見える脂肪肝の様相を呈していたが、KOマウスの肝臓は赤色の正常な外観を示していた。
図2Bに示されるように、WTマウスの肝臓では、大量の中性脂肪が蓄積されている様子が観察された。これに対し、KOマウスの肝臓では、中性脂肪の蓄積が大きく抑制されていることが明らかになった。
図2Cに示されるように、HF・HSD飼育下であっても、KOマウスは、WTマウスよりも、肝臓の肥大化が抑制され、KOマウスの肝臓の重量は、WTマウスの肝臓の重量の半分程度であった。
図2D~Fに示されるように、KOマウスは、WTマウスに比べて、肝臓における、トリグリセリド、コレステロール等の脂質蓄積量が有意に少ないことが明らかになった。
[実験例3]
(ノックアウトマウスの解析3)
Ptproノックアウトマウスの肝臓における、炎症マーカーについて解析した。
(ノックアウトマウスの解析3)
Ptproノックアウトマウスの肝臓における、炎症マーカーについて解析した。
実験例1と同様に、WTマウス及びKOマウスを、普通食(ND)又は高脂肪・高ショ糖食(HF・HSD)で飼育した。各マウスの肝臓における炎症マーカーの発現量の変化を定量PCRによって比較した。各発現量は、Gapdhの発現量によって正規化した。結果は、いずれも、8匹のマウスで得られた結果を平均したものである。結果を図3A~図3Cに示す。
図3Aは、普通食(ND)又は高脂肪・高ショ糖食(HF・HSD)で飼育した、WTマウス及びPtpro-KOマウスの肝臓における、Mcp1のmRNAの発現量を解析した結果を示すグラフである。
図3Bは、ND又はHF・HSDで飼育した、WTマウス及びKOマウスの肝臓における、IL6のmRNAの発現量を解析した結果を示すグラフである。
図3Cは、ND又はHF・HSDで飼育した、WTマウス及びKOマウスの肝臓における、TnfaのmRNAの発現量を解析した結果を示すグラフである。
図3Bは、ND又はHF・HSDで飼育した、WTマウス及びKOマウスの肝臓における、IL6のmRNAの発現量を解析した結果を示すグラフである。
図3Cは、ND又はHF・HSDで飼育した、WTマウス及びKOマウスの肝臓における、TnfaのmRNAの発現量を解析した結果を示すグラフである。
図3A~図3Cに示されるように、WTマウスは、HF・HSDで飼育されることにより、Mcp1、IL6、Tnfaの炎症マーカーの数値が大きく上昇していた。これに対し、KOマウスでは、WTマウスと比較して、HF・HSDで飼育することにより炎症マーカーの発現量の増加が、大きく抑制されることが明らかになった。
[実験例4]
(ノックアウトマウスの解析4)
Ptproノックアウトマウスの血液中における肝機能障害のマーカー、脂質量、抗炎症物質量の値を解析した。
(ノックアウトマウスの解析4)
Ptproノックアウトマウスの血液中における肝機能障害のマーカー、脂質量、抗炎症物質量の値を解析した。
実験例1と同様に、WTマウス及びKOマウスを、高脂肪・高ショ糖食で飼育した。各マウスの血清中における、肝機能障害のマーカー、脂質量、抗炎症物質量の値を比較した。肝機能障害のマーカーとして、ALT(alanine aminotransferase)活性、AST(aspartate aminotransferase)活性を測定した。脂質量として、TG(triglyceride)量、T-Cho(total cholesterol)量を測定した。抗炎症物質量として、アディポネクチン量を測定した。結果は、いずれも、8匹のマウスで得られた結果を平均したものである。結果を図4A~図4Eに示す。
図4Aは、高脂肪・高ショ糖食(HF・HSD)で飼育した、WTマウス及びPtpro-KOマウスの血清における、ALT活性を解析した結果を示すグラフである。
図4Bは、高脂肪・高ショ糖食で飼育した、WTマウス及びKOマウスの血清における、AST活性を解析した結果を示すグラフである。
図4Cは、高脂肪・高ショ糖食で飼育した、WTマウス及びKOマウスの血清における、TG量を解析した結果を示すグラフである。
図4Dは、高脂肪・高ショ糖食で飼育した、WTマウス及びKOマウスの血清における、T-Cho量を解析した結果を示すグラフである。
図4Eは、高脂肪・高ショ糖食で飼育した、WTマウス及びKOマウスの血清における、アディポネクチン量を解析した結果を示すグラフである。
図4Bは、高脂肪・高ショ糖食で飼育した、WTマウス及びKOマウスの血清における、AST活性を解析した結果を示すグラフである。
図4Cは、高脂肪・高ショ糖食で飼育した、WTマウス及びKOマウスの血清における、TG量を解析した結果を示すグラフである。
図4Dは、高脂肪・高ショ糖食で飼育した、WTマウス及びKOマウスの血清における、T-Cho量を解析した結果を示すグラフである。
図4Eは、高脂肪・高ショ糖食で飼育した、WTマウス及びKOマウスの血清における、アディポネクチン量を解析した結果を示すグラフである。
図4A~Bに示されるように、KOマウスでは、WTマウスと比較して、HF・HSDで飼育した場合の肝機能障害のマーカーの値が低下し、脂質量が低下し、抗炎症物質量が増加していた。
[実験例5]
(ノックアウトマウスの解析5)
Ptpro ノックアウトマウスの血糖値維持能とインスリン応答性を解析した。
(ノックアウトマウスの解析5)
Ptpro ノックアウトマウスの血糖値維持能とインスリン応答性を解析した。
実験例1と同様に、WTマウス及びKOマウスを、高脂肪・高ショ糖食で飼育した。
耐糖能試験として、各マウスにブドウ糖を投与した後、血糖値の上昇を測定した。
インスリン負荷試験として、各マウスにインスリンを投与した後、血糖値の低下を測定した。結果を図5A~図5Bに示す。
耐糖能試験として、各マウスにブドウ糖を投与した後、血糖値の上昇を測定した。
インスリン負荷試験として、各マウスにインスリンを投与した後、血糖値の低下を測定した。結果を図5A~図5Bに示す。
図5Aは、高脂肪・高ショ糖食(HF・HSD)で飼育した、WTマウス及びPtpro-KOマウスにおける、ブドウ糖投与後の血糖値を示すグラフである。
図5Bは、HF・HSDで飼育した、WTマウス及びKOマウスにおける、インスリン投与後の血糖値を示すグラフである。
図5Bは、HF・HSDで飼育した、WTマウス及びKOマウスにおける、インスリン投与後の血糖値を示すグラフである。
図5Aに示されるように、KOマウスでは、WTマウスと比較して、HF・HSDで飼育した場合に、ブドウ糖投与後の血糖値上昇が有意に抑制されており、その後の血糖値はより迅速に低下した。
この結果は、KOマウスでは、WTマウスと比較して、血糖値維持能が亢進していることを示している。
この結果は、KOマウスでは、WTマウスと比較して、血糖値維持能が亢進していることを示している。
図5Bに示されるように、KOマウスでは、WTマウスと比較して、HF・HSDで飼育した場合に、インスリン投与後に、より顕著に血糖値が低下した。
この結果は、KOマウスでは、WTマウスと比較して、インスリンシグナルが亢進していることを示している。
この結果は、KOマウスでは、WTマウスと比較して、インスリンシグナルが亢進していることを示している。
[実験例6]
(ノックアウトマウスの解析6)
Ptpro ノックアウトマウスの脂肪組織を解剖学的に解析した。
(ノックアウトマウスの解析6)
Ptpro ノックアウトマウスの脂肪組織を解剖学的に解析した。
実験例1と同様に、WTマウス及びKOマウスを、高脂肪・高ショ糖食で飼育した。
各マウスについて、精巣周囲脂肪組織の重量、精巣周囲脂肪組織の脂肪細胞の形態を解析した。結果を図6A~図6Cに示す。
各マウスについて、精巣周囲脂肪組織の重量、精巣周囲脂肪組織の脂肪細胞の形態を解析した。結果を図6A~図6Cに示す。
図6Aは、高脂肪・高ショ糖食(HF・HSD)で飼育した、WTマウス及びPtpro-KOマウスにおける、精巣周囲脂肪組織の重量を測定した結果を示すグラフである。
図6Bは、HF・HSDで飼育した、WTマウス及びKOマウスにおける、精巣周囲脂肪組織の脂肪細胞の形態を顕微鏡観察した結果を示す写真である。
図6Cは、HF・HSDで飼育した、WTマウス及びKOマウスにおける、精巣周囲脂肪組織の脂肪細胞の平均直径を測定した結果を示すグラフである。
図6Bは、HF・HSDで飼育した、WTマウス及びKOマウスにおける、精巣周囲脂肪組織の脂肪細胞の形態を顕微鏡観察した結果を示す写真である。
図6Cは、HF・HSDで飼育した、WTマウス及びKOマウスにおける、精巣周囲脂肪組織の脂肪細胞の平均直径を測定した結果を示すグラフである。
図6Aに示されるように、KOマウスでは、WTマウスと比較して、精巣周囲脂肪組織の重量が有意に増大していることが明らかになった。
図6Bに示されるように、KOマウスでは、WTマウスと比較して、より多くの肥大化した脂肪細胞が観察された。
図6Cに示されるように、KOマウスでは、WTマウスと比較して、脂肪細胞の平均直径が約1.3倍であった。
図6Bに示されるように、KOマウスでは、WTマウスと比較して、より多くの肥大化した脂肪細胞が観察された。
図6Cに示されるように、KOマウスでは、WTマウスと比較して、脂肪細胞の平均直径が約1.3倍であった。
以上の結果から、高脂肪・高ショ糖食で飼育した場合、KOマウスでは、WTマウスと比較して、脂肪細胞がより大きくなる。これにより、脂肪組織における脂肪蓄積量が増大する。その結果、肝臓組織等の脂肪組織以外の組織における、脂肪の蓄積が抑制される、と推測された。
[実験例7]
(ノックアウトマウスの解析7)
高脂肪・高ショ糖食での飼育による、Ptpro ノックアウトマウスの精巣周囲脂肪組織における、炎症マーカー、代謝マーカーの発現量の変化を解析した。
(ノックアウトマウスの解析7)
高脂肪・高ショ糖食での飼育による、Ptpro ノックアウトマウスの精巣周囲脂肪組織における、炎症マーカー、代謝マーカーの発現量の変化を解析した。
WTマウス及びKOマウスを、普通食(ND)又は高脂肪・高ショ糖食(HF・HSD)で飼育した。各マウスの肝臓における炎症マーカー、代謝マーカーの発現量の変化を定量した。
炎症マーカーとして、Mcp1、Tnfa、IL6を解析した。炎症性マクロファージのマーカーとして、CD11cを解析した。また、組織の繊維化に働く遺伝子であるTgfb1、脂肪合成に働く遺伝子であるFasnを解析した。定量PCRによって比較した各発現量は、Gapdhの発現量によって正規化した。結果を図7A~図7Fに示す。
図7Aは、普通食(ND)又は高脂肪・高ショ糖食(HF・HSD)で飼育した、WTマウス及びPtpro-KOマウスの脂肪組織における、Mcp1のmRNAの発現量を解析した結果を示すグラフである。
図7Bは、ND又はHF・HSDで飼育した、WTマウス及びKOマウスの脂肪組織における、TnfaのmRNAの発現量を解析した結果を示すグラフである。
図7Cは、ND又はHF・HSDで飼育した、WTマウス及びKOマウスの脂肪組織における、CD11cのmRNAの発現量を解析した結果を示すグラフである。
図7Bは、ND又はHF・HSDで飼育した、WTマウス及びKOマウスの脂肪組織における、TnfaのmRNAの発現量を解析した結果を示すグラフである。
図7Cは、ND又はHF・HSDで飼育した、WTマウス及びKOマウスの脂肪組織における、CD11cのmRNAの発現量を解析した結果を示すグラフである。
図7Dは、ND又はHF・HSDで飼育した、WTマウス及びKOマウスの脂肪組織における、IL6のmRNAの発現量を解析した結果を示すグラフである。
図7Eは、ND又はHF・HSDで飼育した、WTマウス及びKOマウスの脂肪組織における、TgfbのmRNAの発現量を解析した結果を示すグラフである。
図7Fは、ND又はHF・HSDで飼育した、WTマウス及びKOマウスの脂肪組織における、FasnのmRNAの発現量を解析した結果を示すグラフである。
図7Eは、ND又はHF・HSDで飼育した、WTマウス及びKOマウスの脂肪組織における、TgfbのmRNAの発現量を解析した結果を示すグラフである。
図7Fは、ND又はHF・HSDで飼育した、WTマウス及びKOマウスの脂肪組織における、FasnのmRNAの発現量を解析した結果を示すグラフである。
図7A~図7Dに示されるように、WTマウスは、HF・HSDで飼育されることにより、精巣周囲脂肪組織において、Mcp1、Tnfa、CD11c、IL6の炎症マーカーの数値が大きく上昇していた。これに対し、KOマウスでは、WTマウスと比較して、HF・HSDで飼育することによる炎症マーカーの発現量の増加が、大きく抑制されていた。
図7Eに示されるように、WTマウスは、HF・HSDで飼育されることにより、精巣周囲脂肪組織において、組織の繊維化に働く遺伝子であるTgfb1の発現量が顕著に上昇していた。これに対し、KOマウスでは、WTマウスと比較して、HF・HSDで飼育することによるTgfb1の発現量の増加が、大きく抑制されていた。
図7Fに示されるように、KOマウスは、WTマウスと比較して、NDで飼育した場合でも、脂肪組織におけるFasnの発現量が約1.5倍であった。KOマウスは、WTマウスと比較して、HF・HSDで飼育された場合、脂肪組織におけるFasnの発現量が約4倍であった。
[実験例8]
(ノックアウトマウスの解析8)
高脂肪・高ショ糖食での飼育による、Ptpro ノックアウトマウスの精巣周囲脂肪組織における、糖代謝、脂質代謝を制御するシグナル伝達経路の活性の変化を解析した。
(ノックアウトマウスの解析8)
高脂肪・高ショ糖食での飼育による、Ptpro ノックアウトマウスの精巣周囲脂肪組織における、糖代謝、脂質代謝を制御するシグナル伝達経路の活性の変化を解析した。
WTマウス及びKOマウスを、HF・HSDで飼育した。各マウスの精巣周囲脂肪組織における、AKTの活性化を解析した。
図8Aは、普通食(ND)又は高脂肪・高ショ糖食(HF・HSD)で飼育した、WTマウス及びPtpro-KOマウスの精巣周囲脂肪組織における、AKTのリン酸化をウェスタンブロッティングにより解析した結果を示す図である。
図8Aは、WTマウス8匹及びKOマウス8匹についての解析結果を示している。
図8Aは、WTマウス8匹及びKOマウス8匹についての解析結果を示している。
図8Bは、ND又はHF・HSDで飼育した、WTマウス及びKOマウスの精巣周囲脂肪組織における、AKTのリン酸化レベルを測定した結果を示すグラフである。
図8A~図8Bに示されるように、KOマウスは、WTマウスと比較して、精巣周囲脂肪組織において、HF・HSDで飼育した場合に、AKTが活性化していることが明らかになった。
以上示したように、KOマウスは、WTマウスと比較して、HF・HSDで飼育した場合に、脂肪組織への脂肪蓄積量が顕著に増大し、脂肪組織以外の臓器への脂肪の蓄積が抑制される。これにより、KOマウスは、WTマウスと比較して、肝機能障害、インスリン抵抗性が低く抑えられている、と推測される。
更に、KOマウスにおいては、WTマウスと比較して、炎症反応及び繊維化が抑制されることに加えて、脂質合成が活性化する。これにより、KOマウスは、WTマウスと比較して、HF・HSDで飼育した場合に、脂肪組織への脂肪蓄積量が顕著に増大することが示唆された。
[実験例9]
(受容体型プロテインチロシンホスファターゼO阻害剤を用いた解析1)
受容体型プロテインチロシンホスファターゼOのフォスファターゼ活性に対する、AKB9778の阻害効果を解析した。
(受容体型プロテインチロシンホスファターゼO阻害剤を用いた解析1)
受容体型プロテインチロシンホスファターゼOのフォスファターゼ活性に対する、AKB9778の阻害効果を解析した。
AKB9778は、PTPRBの活性阻害剤として知られている。PTPRBは、血管新生に関与することが知られている。AKB9778は、網膜や脈絡膜の血管新生を抑制することが知られている。
人工蛍光基質DiFMUPを用いたin vitro解析により、PTPRファミリーに対するAKB9778の阻害活性を解析した。解析では、受容体型プロテインチロシンホスファターゼO、受容体型プロテインチロシンホスファターゼJ、受容体型プロテインチロシンホスファターゼB、受容体型プロテインチロシンホスファターゼC、受容体型プロテインチロシンホスファターゼD、プロテインチロシンホスファターゼ1Bを対象とした。結果を図9及び表1に示す。
図9は、PTPファミリーの活性に対する、AKB9778の用量反応曲線を示すグラフである。
図9は、PTPファミリーの活性に対する、AKB9778の用量反応曲線を示すグラフである。
その結果、AKB9778は、受容体型プロテインチロシンホスファターゼB以外に、受容体型プロテインチロシンホスファターゼJ及び受容体型プロテインチロシンホスファターゼOに対して高い阻害活性を示した。これらの中でも、AKB9778は、受容体型プロテインチロシンホスファターゼOに対して、最も高い阻害活性を示すことが明らかになった。
[実験例10]
(受容体型プロテインチロシンホスファターゼO阻害剤を用いた解析2)
ob/obマウスに対し、AKB9778を投与し、形質の変化を解析した。
(受容体型プロテインチロシンホスファターゼO阻害剤を用いた解析2)
ob/obマウスに対し、AKB9778を投与し、形質の変化を解析した。
ob/obマウスは、高度肥満モデルマウスとして知られている。ob/obマウスに対し、16週齢から4週間にわたり、毎日10mg/kg体重のAKB9778又はビークルを腹腔投与した。ob/obマウスは、16週齢において、定常的な高度肥満状態に至っており、体重増加はほぼ停止している。AKB9778の投与期間中、摂食量と体重について、AKB9778投与群と対象群との間に有意な差は認められなかった。
AKB9778又はビークルの投与開始から4週間後、投与群及び対照群のマウスにおいて、肝臓重量、肝臓における脂肪の蓄積量を解析した。結果を図10A~図10Eに示す。
図10Aは、AKB9778投与群及び対照群のob/obマウスの肝臓の重量を計測した結果を示すグラフである。
図10Bは、AKB9778投与群及び対照群のob/obマウスにおける、肝臓切片のBodipy色素染色の結果を示す写真である。
図10Bは、AKB9778投与群及び対照群のob/obマウスにおける、肝臓切片のBodipy色素染色の結果を示す写真である。
図10Cは、AKB9778投与群及び対照群のob/obマウスの肝臓における、総脂質量を測定した結果を示すグラフである。
図10Dは、AKB9778投与群及び対照群のob/obマウスの肝臓における、トリグリセリド量を測定した結果を示すグラフである。
図10Eは、AKB9778投与群及び対照群のob/obマウスの肝臓における、コレステロール量を測定した結果を示すグラフである。
図10Dは、AKB9778投与群及び対照群のob/obマウスの肝臓における、トリグリセリド量を測定した結果を示すグラフである。
図10Eは、AKB9778投与群及び対照群のob/obマウスの肝臓における、コレステロール量を測定した結果を示すグラフである。
図10Bに示されるように、投与群の肝臓では、対照群に比べて、中性脂肪の蓄積が抑制されている様子が観察された。
図10C~図10Eに示されるように、投与群の肝臓では、対照群に比べて、総脂質、トリグリセリド、コレステロールの蓄積量が低減されている様子が観察された。
図10C~図10Eに示されるように、投与群の肝臓では、対照群に比べて、総脂質、トリグリセリド、コレステロールの蓄積量が低減されている様子が観察された。
[実験例11]
(受容体型プロテインチロシンホスファターゼO阻害剤を用いた解析3)
ob/obマウスに対し、AKB9778を投与し、肝臓における炎症マーカーと代謝マーカーの発現量の変化を定量PCRによって解析した。
(受容体型プロテインチロシンホスファターゼO阻害剤を用いた解析3)
ob/obマウスに対し、AKB9778を投与し、肝臓における炎症マーカーと代謝マーカーの発現量の変化を定量PCRによって解析した。
実験例10と同様にして、ob/obマウスに対し、AKB9778又はビークルを腹腔投与した。次いで、各マウスについて、炎症マーカーであるMcp1、Tnfa、IL6、脂肪合成に働くFasnのmRNAの発現量を定量PCRにより解析した。
図11Aは、AKB9778投与群及び対照群のob/obマウスの肝臓における、Mcp1のmRNAの発現量を解析した結果を示すグラフである。
図11Bは、AKB9778投与群及び対照群のob/obマウスの肝臓における、TnfaのmRNAの発現量を解析した結果を示すグラフである。
図11Cは、AKB9778投与群及び対照群のob/obマウスの肝臓における、IL6のmRNAの発現量を解析した結果を示すグラフである。
図11Dは、AKB9778投与群及び対照群のob/obマウスの肝臓における、FasnのmRNAの発現量を解析した結果を示すグラフである。
図11Bは、AKB9778投与群及び対照群のob/obマウスの肝臓における、TnfaのmRNAの発現量を解析した結果を示すグラフである。
図11Cは、AKB9778投与群及び対照群のob/obマウスの肝臓における、IL6のmRNAの発現量を解析した結果を示すグラフである。
図11Dは、AKB9778投与群及び対照群のob/obマウスの肝臓における、FasnのmRNAの発現量を解析した結果を示すグラフである。
図11A~図11Dに示されるように、投与群の肝臓では、対照群に比べて、炎症マーカー、脂肪合成に働く遺伝子のmRNAの発現量が低下することが明らかになった。
[実験例12]
(受容体型プロテインチロシンホスファターゼO阻害剤を用いた解析4)
ob/obマウスに対し、AKB9778を投与し、血液における、炎症マーカー、肝機能障害マーカー、脂質量、及び抗炎症マーカーを解析した。
(受容体型プロテインチロシンホスファターゼO阻害剤を用いた解析4)
ob/obマウスに対し、AKB9778を投与し、血液における、炎症マーカー、肝機能障害マーカー、脂質量、及び抗炎症マーカーを解析した。
実験例10と同様にして、ob/obマウスに対し、AKB9778又はビークルを腹腔投与した。次いで、各マウスについて、血液の炎症マーカーであるTNFα及びIL6、肝機能障害マーカーであるALT及びASTレベル、中性脂肪(TG)量及び総コレステロール量(T-Cho)量、並びに、抗炎症マーカーであるアディポネクチンレベルを解析した。結果は、いずれも、8匹のマウスで得られた結果を平均したものである。結果を図12A~図12Gに示す。
図12Aは、AKB9778投与群及び対照群のob/obマウスの血清における、TNFαレベルを解析した結果を示すグラフである。
図12Bは、AKB9778投与群及び対照群のob/obマウスの血清における、IL6レベルを解析した結果を示すグラフである。
図12Bは、AKB9778投与群及び対照群のob/obマウスの血清における、IL6レベルを解析した結果を示すグラフである。
図12Cは、AKB9778投与群及び対照群のob/obマウスの血清における、ALTレベルを解析した結果を示すグラフである。
図12Dは、AKB9778投与群及び対照群のob/obマウスの血清における、ASTレベルを解析した結果を示すグラフである。
図12Dは、AKB9778投与群及び対照群のob/obマウスの血清における、ASTレベルを解析した結果を示すグラフである。
図12Eは、AKB9778投与群及び対照群のob/obマウスの血清における、TGレベルを解析した結果を示すグラフである。
図12Fは、AKB9778投与群及び対照群のob/obマウスの血清における、T-Choレベルを解析した結果を示すグラフである。
図12Gは、AKB9778投与群及び対照群のob/obマウスの血清における、アディポネクチンレベルを解析した結果を示すグラフである。
図12Fは、AKB9778投与群及び対照群のob/obマウスの血清における、T-Choレベルを解析した結果を示すグラフである。
図12Gは、AKB9778投与群及び対照群のob/obマウスの血清における、アディポネクチンレベルを解析した結果を示すグラフである。
図12A~図12Fに示されるように、投与群の血液では、対照群に比べて、炎症マーカー及び肝機能障害マーカーのレベル、脂肪量が低下することが明らかになった。
図12Gに示されるように、投与群の血液では、対照群に比べて、抗炎症マーカーのレベルが上昇することが明らかになった。
図12Gに示されるように、投与群の血液では、対照群に比べて、抗炎症マーカーのレベルが上昇することが明らかになった。
[実験例13]
(受容体型プロテインチロシンホスファターゼO阻害剤を用いた解析5)
ob/obマウスに対し、AKB9778を投与し、血糖値維持能とインスリン応答性を解析した。
(受容体型プロテインチロシンホスファターゼO阻害剤を用いた解析5)
ob/obマウスに対し、AKB9778を投与し、血糖値維持能とインスリン応答性を解析した。
実験例10と同様にして、ob/obマウスに対し、AKB9778又はビークルを腹腔投与した。
次いで、各マウスについて、耐糖能試験として、各マウスにブドウ糖を投与した後、血糖値の上昇を測定した。
インスリン負荷試験として、各マウスにインスリンを投与した後、血糖値の低下を測定した。結果を図13A~図13Bに示す。
次いで、各マウスについて、耐糖能試験として、各マウスにブドウ糖を投与した後、血糖値の上昇を測定した。
インスリン負荷試験として、各マウスにインスリンを投与した後、血糖値の低下を測定した。結果を図13A~図13Bに示す。
図13Aは、AKB9778投与群及び対照群のob/obマウスにおける、ブドウ糖投与後の血糖値を示すグラフである。
図13Bは、AKB9778投与群及び対照群のob/obマウスにおける、インスリン投与後の血糖値を示すグラフである。
図13Bは、AKB9778投与群及び対照群のob/obマウスにおける、インスリン投与後の血糖値を示すグラフである。
図13Aに示されるように、投与群のマウスでは、対照群のマウスと比較して、ブドウ糖投与後の血糖値上昇が有意に抑制されており、その後の血糖値はより迅速に低下した。
この結果は、投与群のマウスでは、対照群のマウスと比較して、血糖値維持能が向上していることを示している。
この結果は、投与群のマウスでは、対照群のマウスと比較して、血糖値維持能が向上していることを示している。
図13Bに示されるように、投与群のマウスでは、対照群のマウスと比較して、インスリン投与後に、より顕著に血糖値が低下した。
この結果は、投与群のマウスでは、対照群のマウスと比較して、インスリンシグナルが亢進していることを示している。
この結果は、投与群のマウスでは、対照群のマウスと比較して、インスリンシグナルが亢進していることを示している。
[実験例14]
(受容体型プロテインチロシンホスファターゼO阻害剤を用いた解析6)
ob/obマウスに対し、AKB9778を投与し、脂肪組織を解剖学的に解析した。
(受容体型プロテインチロシンホスファターゼO阻害剤を用いた解析6)
ob/obマウスに対し、AKB9778を投与し、脂肪組織を解剖学的に解析した。
実験例10と同様にして、ob/obマウスに対し、AKB9778又はビークルを腹腔投与した。
次いで、各マウスについて、精巣周囲脂肪組織の重量、精巣周囲脂肪組織の脂肪細胞の形態を解析した。結果を図14A~図14Cに示す。
次いで、各マウスについて、精巣周囲脂肪組織の重量、精巣周囲脂肪組織の脂肪細胞の形態を解析した。結果を図14A~図14Cに示す。
図14Aは、AKB9778投与群及び対照群のob/obマウスにおける、精巣周囲脂肪組織の重量を測定した結果を示すグラフである。
図14Bは、AKB9778投与群及び対照群のob/obマウスにおける、精巣周囲脂肪組織の脂肪細胞の形態を顕微鏡観察した結果を示す写真である。
図14Cは、AKB9778投与群及び対照群のob/obマウスにおける、精巣周囲脂肪組織の脂肪細胞の平均直径を測定した結果を示すグラフである。
図14Bは、AKB9778投与群及び対照群のob/obマウスにおける、精巣周囲脂肪組織の脂肪細胞の形態を顕微鏡観察した結果を示す写真である。
図14Cは、AKB9778投与群及び対照群のob/obマウスにおける、精巣周囲脂肪組織の脂肪細胞の平均直径を測定した結果を示すグラフである。
図14Aに示されるように、投与群のマウスでは、対照群のマウスと比較して、精巣周囲脂肪組織の重量が有意に増大していることが明らかになった。
図14Bに示されるように、投与群のマウスでは、対照群のマウスと比較して、より多くの肥大化した脂肪細胞が観察された。
図14Cに示されるように、投与群のマウスでは、対照群のマウスと比較して、脂肪細胞の平均直径が約1.2倍であった。
図14Bに示されるように、投与群のマウスでは、対照群のマウスと比較して、より多くの肥大化した脂肪細胞が観察された。
図14Cに示されるように、投与群のマウスでは、対照群のマウスと比較して、脂肪細胞の平均直径が約1.2倍であった。
[実験例15]
(受容体型プロテインチロシンホスファターゼO阻害剤を用いた解析7)
ob/obマウスに対し、AKB9778を投与した後、精巣周囲脂肪組織における、炎症マーカー、代謝マーカーの発現量の変化を解析した。
(受容体型プロテインチロシンホスファターゼO阻害剤を用いた解析7)
ob/obマウスに対し、AKB9778を投与した後、精巣周囲脂肪組織における、炎症マーカー、代謝マーカーの発現量の変化を解析した。
投与群及び対照群のob/obマウスの肝臓における炎症マーカー、代謝マーカーの発現量の変化を定量した。
炎症マーカーとして、Mcp1、Tnfa、IL6を解析した。炎症性マクロファージのマーカーとして、CD11cを解析した。また、組織の繊維化に働く遺伝子であるTgfb1、脂肪合成に働く遺伝子であるFasnを解析した。定量PCRによって比較した各発現量は、Gapdhの発現量によって正規化した。結果を図15A~図15Fに示す。
図15Aは、投与群及び対照群のob/obマウスの脂肪組織における、Mcp1のmRNAの発現量を解析した結果を示すグラフである。
図15Bは、投与群及び対照群のob/obマウスの脂肪組織における、TnfaのmRNAの発現量を解析した結果を示すグラフである。
図15Cは、投与群及び対照群のob/obマウスの脂肪組織における、CD11cのmRNAの発現量を解析した結果を示すグラフである。
図15Bは、投与群及び対照群のob/obマウスの脂肪組織における、TnfaのmRNAの発現量を解析した結果を示すグラフである。
図15Cは、投与群及び対照群のob/obマウスの脂肪組織における、CD11cのmRNAの発現量を解析した結果を示すグラフである。
図15Dは、投与群及び対照群のob/obマウスの脂肪組織における、IL6のmRNAの発現量を解析した結果を示すグラフである。
図15Eは、投与群及び対照群のob/obマウスの脂肪組織における、TgfbのmRNAの発現量を解析した結果を示すグラフである。
図15Fは、投与群及び対照群のob/obマウスの脂肪組織における、FasnのmRNAの発現量を解析した結果を示すグラフである。
図15Eは、投与群及び対照群のob/obマウスの脂肪組織における、TgfbのmRNAの発現量を解析した結果を示すグラフである。
図15Fは、投与群及び対照群のob/obマウスの脂肪組織における、FasnのmRNAの発現量を解析した結果を示すグラフである。
図15A~Cに示されるように、投与群のマウスでは、対照群のマウスと比較して、炎症マーカーの発現量が有意に低下していることが明らかになった。また、脂肪合成に働く遺伝子であるFasnの発現量が上昇していることが明らかになった。
[実験例16]
(受容体型プロテインチロシンホスファターゼO阻害剤を用いた解析8)
ob/obマウスに対し、AKB9778を投与した後、精巣周囲脂肪組織における、糖代謝、脂質代謝を制御するシグナル伝達経路の活性の変化を解析した。
(受容体型プロテインチロシンホスファターゼO阻害剤を用いた解析8)
ob/obマウスに対し、AKB9778を投与した後、精巣周囲脂肪組織における、糖代謝、脂質代謝を制御するシグナル伝達経路の活性の変化を解析した。
図16Aは、投与群及び対照群のob/obマウスの精巣周囲脂肪組織における、AKTのリン酸化をウェスタンブロッティングにより解析した結果を示すグラフである。
図16Aは、WTマウス8匹及びKOマウス8匹についての解析結果を示している。
図16Aは、WTマウス8匹及びKOマウス8匹についての解析結果を示している。
図16Bは、投与群及び対照群のob/obマウスの精巣周囲脂肪組織における、AKTのリン酸化レベルを測定した結果を示すグラフである。
[実験例17]
(受容体型プロテインチロシンホスファターゼO阻害剤を用いた解析9)
3T3-L1脂肪細胞に対して、AKB9778を作用させた後、タンパク質を電気泳動することにより、チロシンリン酸化が亢進するタンパク質として、Vimentinを同定した。
(受容体型プロテインチロシンホスファターゼO阻害剤を用いた解析9)
3T3-L1脂肪細胞に対して、AKB9778を作用させた後、タンパク質を電気泳動することにより、チロシンリン酸化が亢進するタンパク質として、Vimentinを同定した。
受容体型プロテインチロシンホスファターゼOの基質分子を明らかにする目的で、脂肪細胞のモデル細胞である成熟した3T3-L1細胞に対して、Vehicle又はAKB9778を作用させた。次いで、各細胞の抽出物を二次元電気泳動に供した。結果を図17A及び図17Bに示す。
図17Aは、Vehicleを作用させた3T3-L1細胞の抽出物を二次元電気泳動で展開した後の泳動像である。
図17Bは、AKB9778を作用させた3T3-L1細胞の抽出物を二次元電気泳動で展開した後の泳動像である。
図17Bは、AKB9778を作用させた3T3-L1細胞の抽出物を二次元電気泳動で展開した後の泳動像である。
次いで、2個の二次元電気泳動像を比較し、AKB9778によりリン酸化が亢進したスポット(図17B中、矢じりが指すスポット)を切り出した。次いで、質量分析により、スポットに含まれたタンパク質を解析した結果、Vimentinを同定した。
この結果は、AKB9778により、受容体型プロテインチロシンホスファターゼOの活性が抑制され、Vimentinのチロシンリン酸化が亢進することを示している。Vimentinは、脂肪細胞において油滴の形成に働くことが知られている。AKB9778が脂肪細胞に作用してVimentinのチロシンリン酸化の亢進させることにより、脂肪組織への脂肪蓄積が増大する、と推測された。
以上示したように、AKB9778をob/obマウスに投与することにより、肝臓及び血液における脂質量の減少、肝機能障害マーカーの低下、肝臓、血液及び脂肪組織における炎症反応の減弱、血糖値維持能及びインスリン応答性の改善が観察された。
AKB9778による上述の現象は、受容体型プロテインチロシンホスファターゼOノックアウトマウスにおいてみられた現象と同様のものである。すなわち、AKB9778は、主に受容体型プロテインチロシンホスファターゼOの活性を阻害することにより、上述の効果を引き起こした、と考えられる。
AKB9778を肥満状態のマウスに投与することにより、脂肪組織への中性脂肪の蓄積能が増大し、肝臓等の脂肪組織以外の臓器にあった脂肪が脂肪組織へ移行したものと推測される。また、肝臓での脂質合成が減少すると同時に脂肪組織での炎症が抑制されることにより、肝機能が改善するとともに、血糖値維持能及びインスリン抵抗性の改善につながったと考えられる。
この結果は、肥満状態のマウスに対してAKB9778を投与することにより、“健康的な肥満”という状態が作り出されたとも言える。
また、受容体型プロテインチロシンホスファターゼOを阻害することにより、メタボリックシンドローム、脂肪肝・脂肪肝炎、脂質異常症、II型糖尿病、動脈硬化症等の症状を改善できることが示唆された。
また、受容体型プロテインチロシンホスファターゼOを阻害することにより、メタボリックシンドローム、脂肪肝・脂肪肝炎、脂質異常症、II型糖尿病、動脈硬化症等の症状を改善できることが示唆された。
[実験例18]
(受容体型プロテインチロシンホスファターゼOの発現解析)
各組織における受容体型プロテインチロシンホスファターゼO mRNAの発現量を解析した。
(受容体型プロテインチロシンホスファターゼOの発現解析)
各組織における受容体型プロテインチロシンホスファターゼO mRNAの発現量を解析した。
各組織における受容体型プロテインチロシンホスファターゼO mRNAの発現量を、定量PCRにより解析した。具体的には、腎臓、精巣周囲脂肪組織、後肢筋肉、心臓、肝臓における発現量を解析した。発現量はGapdhで正規化し、相対値を算出した。結果を図18Aに示す。
図18Aは、各組織における受容体型プロテインチロシンホスファターゼO mRNAの発現量を定量PCRにより解析した結果を示すグラフである。
図18Aに示すように、精巣周囲脂肪組織において、受容体型プロテインチロシンホスファターゼO mRNAの高い発現量が認められた。
図18Aに示すように、精巣周囲脂肪組織において、受容体型プロテインチロシンホスファターゼO mRNAの高い発現量が認められた。
次いで、精巣周囲脂肪組織における受容体型プロテインチロシンホスファターゼOの発現を、in situ hybridizationにより解析した。結果を図18Bに示す。
図18Bは、受容体型プロテインチロシンホスファターゼOの発現をin situ hybridizationにより解析した結果を示す写真である。図18B中、スケールバーは、200μmを示す。
図18Bに示すように、精巣周囲脂肪組織において、受容体型プロテインチロシンホスファターゼO mRNAの発現が認められた。
図18Bに示すように、精巣周囲脂肪組織において、受容体型プロテインチロシンホスファターゼO mRNAの発現が認められた。
本発明によれば、脂肪肝治療剤、脂肪肝治療剤を適用した医薬組成物、脂肪肝治療剤のスクリーニング方法を提供することができる。本発明の脂肪肝治療剤は、メタボリックシンドロームの治療剤として好適に用いることができる。
Claims (8)
- 受容体型プロテインチロシンホスファターゼOの阻害剤を有効成分とする、脂肪肝治療剤。
- 前記阻害剤は、前記受容体型プロテインチロシンホスファターゼOのホスファターゼ活性を低下させる低分子化合物である、請求項1に記載の脂肪肝治療剤。
- 前記阻害剤は、AKB9778(CAS番号1008510-37-9)である、請求項2に記載の脂肪肝治療剤。
- 前記阻害剤は、前記受容体型プロテインチロシンホスファターゼOの発現量を低下させるものである、請求項1に記載の脂肪肝治療剤。
- 前記阻害剤は、前記受容体型プロテインチロシンホスファターゼOを標的としたsiRNA又はshRNAである、請求項4に記載の脂肪肝治療剤。
- 請求項1~5のいずれか一項に記載の脂肪肝治療剤若しくはその塩又はそれらの溶媒和物の有効量、及び薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
- 請求項6に記載の医薬組成物を、治療を必要とするヒト以外の動物に投与することを含む、治療方法。
- 脂肪肝治療剤のスクリーニング方法であって、
被験物質の存在下における受容体型プロテインチロシンホスファターゼOのホスファターゼ活性を測定する工程を含み、
前記被験物質の存在下における前記受容体型プロテインチロシンホスファターゼOのホスファターゼ活性が、前記被験物質の非存在下における前記受容体型プロテインチロシンホスファターゼOのホスファターゼ活性と比較して低いことが、前記被験物質が、脂肪肝を治療する作用を有することを示す、スクリーニング方法。
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