JP2023081609A - 空気処理装置及びその処理方法 - Google Patents

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Koji Sumiya
克礼 松田
Katsunori Matsuda
照雄 野々村
Teruo Nonomura
義浩 瀧川
Yoshihiro Takigawa
秀吉 豊田
Hideyoshi Toyoda
眞一 草刈
Shinichi Kusakari
隆博 園田
Takahiro Sonoda
和隆 藤本
Kazutaka Fujimoto
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SONODA SEISAKUSHO KK
Kinki University
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Abstract

【課題】本発明は、空気中に浮遊する気体、エアロゾル、飛粒体やウイルス性病原体を容易に捕集するための空気処理装置及びその処理方法を提案することを目的とする。【解決手段】本発明の空気処理装置は、被捕集成分を含む空気が通過すると該被捕集成分を捕集する装置で、導電性液体を収容し上面が開放された捕集槽と、複数の孔を備えた金属板に複数の突起部を固定した電極板とを備え、該電極板は、突起部の先端が該導電性液体の上面に対向するように捕集槽の上縁面に載せ置かれ、突起部に電荷を供給して静電場が発生すると、静電誘導で捕集槽に収容された導電性液体は、突起部に供給された電荷とは逆の電荷を帯電し、突起部の先端から導電体液体の上面に向かってイオン風が生起し、被捕集成分が前記導電性液体の側に捕集されることを特徴とする。【選択図】図3

Description

新規性喪失の例外適用申請有り
本発明は、静電場を発生させて形成した静電場スクリーン(静電場の幕)の原理を適用し、空気中に浮遊する気体、エアロゾル、飛粒体を回収したり、ウイルス性病原体の飛沫感染を排除したりするための空気処理装置及びその処理方法に関する。
近年、コロナウイルス感染症(COVID-19)の大流行を受けて、世界保健機関(WHO)は、環境の浄化と消毒が最も重要であること、また、手指衛生、呼吸器系のエチケット、物理的な距離、発熱や呼吸器系の症状がある人との無防備な接近接触を避けることの重要性を継続的に強調している。
呼吸器系の感染症は、さまざまな大きさの飛沫を介して感染する。直径5~10μm以上の飛沫は呼吸器飛沫と呼ばれ、直径5μm未満の飛沫はエアロゾル(飛沫核)と呼ばれています。最近の研究では、COVID-19ウイルスは、空気感染ではなく、主に呼吸器系の飛沫や接触経路を介して人と人との間で感染することが報告されている。飛沫は、人が咳をしたり、くしゃみをしたり、話したりしたときに発生するので、病原体を含んだこれらの呼吸器系の飛沫を捕捉することができれば、人から人への感染の拡大を防ぐことができると思われる。
一般的に空気清浄機は電気集塵装置の仕組みを利用したものであり、電極間でコロナ放電を発生させて塵埃を帯電させる帯電部と、この帯電部により帯電された塵埃をクーロン力で集塵板に付着させる集塵部とで構成される。
例えば、特許文献1に係る電気集塵装置は、放電電極と対向電極との間でコロナ放電を発生させて空気中の塵埃を帯電させる帯電部と、この帯電部で帯電された塵埃を捕集する高圧電極と集塵電極とからなる集塵部とを備えたものであって、対向電極と集塵電極とを一体化した共用対向電極を空気の流れに沿って平行に複数配列すると共に、これらの共用対向電極間に平板状の半絶縁性樹脂からなる高圧電極を配置し、この高圧電極の上流側端部にその長手方向に沿って所定間隔毎に半絶縁性樹脂からなる複数の電極支持部を設け、ワイヤーで構成される放電電極を電極支持部で支持し、共用対向電極と対向するように配置している。このような空気清浄機においては、浮遊ウイルスをコロナ放電により正又は負の電荷を与え帯電させ、帯電したウイルスを逆の極性に帯電させた導体で捕集することになる。なお、捕集したウイルスは紫外線やオゾン、クレベリンを使用して不活化する。
また、特許文献2、3及び非特許文献1には、米国のエアドッグ社製の空気清浄機の構成が示されている。当該空気清浄機には「TPAフィルタ」と呼ばれる特殊なフィルタが搭載されている。「TPAフィルタ」は、プレフィルタとイオン化ワイヤーフレームと集塵フィルタとオゾン除去フィルタとからなり、該イオン化ワイヤーフレームに電磁場をつくることにより有害物質をプラスイオンで帯電させ、磁石のようにフィルタに汚れを吸着して除去する仕組みである。この仕組みにより、一般的な空気清浄機に使用されている紙フィルタ「HEPAフィルタ」では除去が困難な、ウイルスより細かい0.1μm以下の微細粒子0.0146μmの除去を実現できるとしている。
特許第3702726号公報 米国特許9868123B2 米国特許9735568B
エアドッグ社(日本法人)ホームページhttps://airdogjapan.com/
しかしながら、従来の空気清浄機や特許文献1に係る電気集塵装置は、フィルタの目詰まりに対する清掃のわずらわしさやフィルタそのものの定期的な交換が必要である。また、特許文献2、3及び非特許文献1に記載されている米国のエアドッグ社製の空気清浄機は、従来の空気清浄機等に比較して、フィルタの目詰まりは起きにくいとしているものの、フィルタのメンテナンスは必要であり、装置そのものは複雑な構造であり高価である。
そこで、上記問題に鑑み、本発明は、空気中に浮遊する気体、エアロゾル、飛粒体やウイルス性病原体を容易に捕集するための空気処理装置及びその処理方法を提案することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の空気処理装置は、被捕集成分を含む空気が通過すると該被捕集成分を捕集する装置で、導電性液体を収容し上面が開放された捕集槽と、複数の孔を備えた金属板に複数の突起部を固定した電極板とを備え、該電極板は、突起部の先端が該導電性液体の上面に対向するように捕集槽の上縁面に載せ置かれ、突起部に電荷を供給して静電場が発生すると、静電誘導で捕集槽に収容された導電性液体は、突起部に供給された電荷とは逆の電荷を帯電し、突起部の先端から導電体液体の上面に向かってイオン風が生起し、被捕集成分が前記導電性液体の側に捕集されることを特徴とする。
導電性液体が水である場合で、被捕集成分が水溶性であるときは被捕集成分が水内に溶けこんで捕集されるし、他方、被捕集成分が非水溶性であるときは被捕集成分が水の上面に捕集されることになる。
また、導電性液体は、液体保持材に保持されて捕集槽に収容されるようにしてもよいし、ゲル状で捕集槽に収容されるようにしてもよい。
さらに、導電性液体が水性である場合は、上述の水の場合と同様に、被捕集成分が水溶性である場合は被捕集成分が導電性液体内に捕集され、被捕集成分が非水溶性である場合は被捕集成分が導電性液体の上面に捕集されることになる。そして、導電性液体は油性である場合は、被捕集成分が油溶性である場合は被捕集成分が導電性液体内に溶け込んで捕集され、被捕集成分が非油溶性である場合は被捕集成分が導電性液体の上面に捕集されることになる。
電極板は、使用する金属板をパンチング加工金型やレーザー加工で孔を穿って形成し、釘のような尖頭突起状の金属棒を複数固定することで構成することができる。なお、突起部は先端が尖頭であることが望ましい。また、突起部の先端と水の水面との距離が該先端に印加する電圧と比例して変動して離隔するように調整するとよい。より詳細には、当該距離が5~15mm程度に調整するとよい。
被捕集成分は、病原体、農薬、煙草の煙、二酸化炭素、アンモニア、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドのほか、空気中に含まれる気体、エアロゾル、飛粒体である。
本発明の空気処理方法は、被捕集成分を含む空気が通過すると該被捕集成分を捕集する方法であって、導電性液体を収容し上面が開放された捕集槽と、複数の孔を備えた金属板に複数の突起部を固定した電極板とを備えた空気処理装置において、電極板が突起部の先端が該導電性液体の上面に対向するように捕集槽の上縁面に載せ置かれ、突起部に電荷を供給して静電場が発生すると、静電誘導で捕集槽に収容された導電性液体は、突起部に供給された電荷とは逆の電荷を帯電し、突起部の先端から導電体液体の上面に向かってイオン風が生起し、被捕集成分が導電性液体の側に捕集されることを特徴とする。
また、本発明は、上述の空気処理方法を用いて導電性溶液に回収された被捕集成分を、導電性溶液からサンプリングすることにより一定量の空気に存在している量を定量し、連続的にモニタリングする方法であることを特徴とする。
本発明の空気処理装置及び空気処理方法によれば、静電場スクリーンの原理を適用し、導電性液体を電極とすることで、帯電した病原体を水やその他導電性液体に容易に捕集することができるほか、空気中に含まれる農薬、煙草の煙、二酸化炭素、アンモニア、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドのほか、空気中に含まれる気体、エアロゾル、飛粒体を捕集することができる。フィルタが不要であり、メンテナンスは水の入れ替えだけで済むので利便性が高い。また、例えば水にクレベリン等任意の不活剤を添加ができ、水に溶ける極性の高い物質であれば回収も可能となり、不活化のリサイクルが可能である。さらに、捕集した病原体を生きた状態で回収でき、モニタリングも可能となるという効果がある。
本発明に係る空気処理装置1を示す斜視図である。 本発明に係る空気処理装置1の電極板10を示す図である。 本発明に係る空気処理装置1の基本原理を示すための図である。 本発明に係る空気処理装置1において、イオン風が生起する状態を示すための図である。 本発明に係る空気処理装置1において、イオン風が生起することで、被捕集成分Xを導電性液体Fに捕集する様子を示す概念図である。 本発明の実施例2に係る空気処理装置2を示す図である。 空気処理装置2の電界中での印加電圧とコロナ放電(a)、マイナスイオン発生(b)、イオン風の体積流量(c)の関係を示すグラフである。 (a)は、 異なる電圧で負に帯電させた空気処理装置2の接地水に捕捉されたFITCを示すグラフで、(b)は、 空気処理装置2の電界中でのFITCの捕捉とマイナスイオンの発生について示すグラフである。 互いに連結された3台の空気処理装置とオゾン発生装置(OG)を含むトータルシステムTSの模式図である。 実施例3に係るトータルシステムに使用されるオゾン発生器の模式図である。 実施例3に係るトータルシステムに使用されるオゾン発生器において、オゾンの生産性とオゾン発生器への印加電圧との間の正の相関関係(a)と、オゾン発生器で発生したマイクロバブルにさらされたファージの致死率の時間変化(b)を示すグラフである。 (a)は、 実施例3に係るトータルシステムに使用される空気処理装置のうち1台~3台を用いて空気中に噴霧したファージの捕捉について示すグラフである。 公知技術での静電場スクリーン発生装置の静電場及び静的電場の形成を簡単に説明する図である。
以下、本発明の実施例を図面に基づき詳細に説明する。各図において、同一部分には同一番号を付し、重複する説明は省略する。また、図面は、本発明を理解するために誇張して表現している場合もあり、必ずしも縮尺どおり精緻に表したものではないことに留意されたい。なお、本発明の技術的範囲は以下の実施形態に示した具体的な用途や形状・寸法などには限定されるものではない。以下、図面を参照しつつ、本発明の空気処理装置の実施形態を説明する。
本発明は、本願発明者が以前に開発した、特にSD-スクリーン(単印加・双極型静電場スクリーン)と呼ばれる静電場スクリーン発生装置の原理を利用してさらに改良し発明に至ったものである。実施例を説明する前に、図13を参照しながら、公知技術(特許第5252449号)に示されるSD-スクリーンの原理について説明する。被覆体01は、軟質塩化ビニル01bに鉄棒01aを通して作製される。この被覆体1の片側には、ステンレス製のアース網(アース電極)02がある。被覆体01とアース網02(アース電極)の間隔は3mmとして、各層面が平行になるように配置する。まず、被覆体01に電圧を印加すると各被覆体の周りに静電場が形成される。この静電場にアース網02(アース電極)を挿入するのである。そうすると、例えば被覆体01にマイナス電圧を印加すると、アース網02(アース電極)の被覆体に対向する側がプラスに分極する。すなわち、静電場にアース網02(アース電極)を挿入することにより、静電場空間に正負一対の電極を作り、静電場の内部に電場(以下、「静的電場」という。)を形成させるのである。この静的電場には、常に可動電荷をマイナス極(被覆体01)からプラス極(アース網02)に押しやる力が働き、虫等が入ると虫等の持つ電荷が押し出され、押し出された電荷はアース網02(アース電極)に吸収される。そうすると、電荷を奪われた虫等はプラスに帯電し、マイナス極(被覆体01)に強く誘引・捕捉される原理であり、「電界発生方式」ともいわれる。
電界発生方式は、公衆衛生上の問題を引き起こす生物的・非生物的な空気中の有害物質を制御する画期的な技術である。ウイルスや細菌、カビの胞子などの感染性粒子、花粉症の原因となる花粉粒、通常の防虫ネットを通過する小型飛翔性害虫、一部のアレルゲン、受動喫煙の原因となるタバコの煙などが含まれる。既存の電界発生方式は、いずれも電界中に被捕集成分を直接捕捉する方法であった。
本発明では、上述の原理を利用し、かつ、水を電極とするとともに帯電した被捕集成分を水等の導電性液体そのものに捕集する仕組みであり、コストの低減化を図ることを目的として提案されていることが理解されるであろう。
実施例1においては、空気処理装置1の基本的構造と被捕集成分の捕集の基本的原理を図面に基づき説明する。
まず、空気処理装置1の基本的構造を説明する。図1は、本発明に係る空気処理装置1を示す斜視図である。図2は、本発明に係る空気処理装置1の電極板10を示す図で、(a)は平面図であり、(b)は下方から斜めに見上げた状態を示す斜視図である。図3は、本発明に係る空気処理装置1の基本原理を説明するための図である。
図1ないし3を参照する。図1ないし3に示すとおり、本発明の空気処理装置1は、導電性液体Fを収容し上面が開放された捕集槽11と、複数の孔102を備えた金属板100に複数の突起部101を固定した電極板10とを備える。被捕集成分を含む空気が捕集槽11を通過すると該被捕集成分を捕集し、通過した空気Aは浄化されることになる。
電極板10は、突起部101の先端が導電性液体Fの上面に対向するように捕集槽11の上縁面に載せ置かれている。電極板10には電圧印加装置12からリード線Lを介して電荷が印加される。また、捕集槽11に収容されている導電性液体Fにはリード線Lを介した接地がなされる。電極板10は、使用する金属板をパンチング加工金型やレーザー加工で孔102を穿って形成して基板100とし、釘のような尖頭突起状の金属棒を突起部101として複数固定することで構成することができる。なお、突起部101は先端が尖頭であることが望ましい。また、突起部101の先端と導電性液体Fの液面との距離が該先端に印加する電圧と比例して変動して離隔するように調整するとよい。より詳細には、当該距離が5~15mm程度に調整するとよい。過度の放電を防止するためである。
次に、空気処理装置1による、被捕集成分Xの捕集の基本的原理を図面に基づき説明する。図4は、本発明に係る空気処理装置1において、イオン風が生起する状態を示すための図であり、図5は、本発明に係る空気処理装置1において、イオン風が生起することで、被捕集成分Xを導電性液体Fに捕集する様子を示す概念図である。
図4を参照する。図4は、本発明に係る空気処理装置1において、イオン風が生起する状態を示すための図であり、(a)は電極板10に電荷が印加される前の状態を示す図であり、(b)は電極板10に電荷が印加された状態を示す図であり、(c)はイオン風Iが生起した状態を示す図である。実施例1においては、図4(b)に示すとおり、電圧印加装置12から電極板10に負の電荷を供給しているが、突起部101と導電性液体Fとの間に静電場が発生する。すなわち、静電誘導で捕集槽11に収容された導電性液体Fは、突起部101に供給された電荷とは逆の電荷、すなわち正の電荷を帯電することになる。そうすると、図4(c)に示すとおり、突起部101の先端から導電体液体Fの上面に向かってイオン風Iが生起することになる。なお、ここでは、誘電被覆体11は負極として負極誘電被覆体としたが、その極性を逆にして、正極誘導被覆体とする構成も可能である。極性を入れ替える点以外は同じ原理であるので、極性が逆の構成の説明は省略する。
図5は、本発明に係る空気処理装置1において、イオン風が生起することで、被捕集成分Xを導電性液体Fに捕集する様子を示す概念図であり、(a)は被捕集成分Xを含む空気Aが捕集槽内に入ってくる様子を示す図であり、(b)は被捕集成分Xが導電性液体Fに捕集された様子を示す図である。図5(a)は図4(c)と同じ状態を示しており、この状態で被捕集成分Xを含む空気Aが電極板10に設けられた複数の孔102を通過して捕集槽内に入ると、イオン風Iの生起に伴い、被捕集成分Xは導電性液体Fの側に捕集されることになる。そうすると、空気Aは被捕集成分Xが捕集され空気Acに処理され、イオン風の発生により溶液Fの水面を跳ね返り捕集槽11から矢印に示すとおり出ることになる。
なお、導電性液体Fが水である場合で、被捕集成分Xが水溶性であるときは被捕集成分Xは水内に溶けこんで捕集されるし、他方、被捕集成分Xが非水溶性であるときは被捕集成分Xは水の上面に捕集されることになる。
また、導電性液体Fは、例えば、スポンジ等液体保持材に保持されて捕集槽11に収容されるようにしてもよいし、寒天のようなゲル状で捕集槽11に収容されるようにしてもよい。
さらに、導電性液体Fが水性である場合は、上述の水の場合と同様に、被捕集成分Xが水溶性である場合は被捕集成分Xが導電性液体Fに溶け込んで捕集され、被捕集成分Xが非水溶性である場合は被捕集成分Xは導電性液体Fの上面に捕集されることになる。水性の導電性液体とは、例えば水性アルコール等である。
導電性液体Fは油性である場合は、被捕集成分Xが油溶性である場合は被捕集成分Xが導電性液体Fに溶け込んで捕集され、被捕集成分Xが非油溶性である場合は被捕集成分Xが導電性液体Fの上面に捕集されることになる。油性の導電性液体とは、例えば油性アルコール等である。
なお、上述した被捕集成分は、病原体、農薬、煙草の煙、二酸化炭素、アンモニア、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドのほか、空気中に含まれる気体、エアロゾル、飛粒体である。
実施例2を図面に基づき説明する。実施例2に示す空気処理装置2は、空気中に含まれる病原体を捕集するための病原体捕集装置として説明する。
図6は、尖頭突起部201を備えた多孔ステンレス板20と水容器21からなる空気処理装置2の模式図(a)と、尖頭突起部201の先端と接地された水Fの水面の間の電界(断面図)(b)である。図6(b)の矢印は、電界中で発生するイオン風Iの方向を表している。
図6(a)に示すとおり、実施例2に用いた空気処理装置2は、一定の間隔で複数の丸い孔202を穿ったステンレス製の金属板200(4×20cm2、厚さ0.5mm)からなる電極板20と、捕集槽21として水を入れる容器(底面積24×6cm2、壁の高さ6cm)とからなる。より具体的に、金属板200に20本のピン(ピンヘッドの直径5mm、針の長さ8mm)を導電性両面テープで貼り付けて、電極板20を構築した。そして、図6(b)に示すとおり、電極板20は、4本の脚を持つ四角い筐体部23(4×20cm2、高さ10cm)の開いた下端に取り付けている。
電極板20を装着した筐体部23を、水(100mL)を入れた捕集槽21に被せて尖頭突起部201の尖頭が水中に浸るように設置し、水にはアース線を挿入した。また、電極板20には接着テープの端を直流の電圧印加装置22(電流制限10mA)(AMA-20K10NKBX1、 Max-Electronics、 Tokyo、 Japan)にリード線Lを介して接続し、異なる電圧で負帯電させた。
実施例2において、電極板20の尖頭突起部201の尖頭の負の表面電荷が水中で静電誘導を起こし、接地された水には反対の表面電荷が発生する(水の正帯電)。この互いに正負逆の電荷の間には電界(静電場)が形成される。電極板20側から水側の接地への自由電子の移動は、接地線に組み込まれた2つのガルバノメータG(PC7000;三和電気計器、東京、日本)を用いて測定した。
実施例2においては、上述の空気処理装置2を用いて、本願発明に係る基本的な原理を証明するための実験を行なったので詳細に説明する。
ウイルスや細菌を含む流体試料は、適切なネブライザを用いて霧状の粒子にすることができることから、実施例2において、本願発明者等は、質量メジアン径(MMD)が5μmのミスト粒子を生成するネブライザを用いて、水や微生物のサンプルを霧化し、当該霧化したサンプルを、本発明に係る空気処理装置2で捕集できることを実証した。なお、生成されたミスト粒子のサイズ範囲は1~10μmであり、50%以上の生成粒子の直径は~5 μmであった。このサイズ範囲は、呼吸器系の飛沫(5~10μm)やエアロゾル(≦5μm)のサイズに対応している。また、本実験では、COVID-19ウイルスのモデルとして、Pseudomonas syringae var. syringaeの病原性バクテリオファージ(ファージ)φ6を用いた。これは、このファージが脂質エンベロープとスパイクを備えた、COVID-19ウイルスに類似する六角二十面体構造を有しているためである。
ウイルス性ファージφ6(NBRC105899)および宿主細菌P. syringae var. syringae(MAFF810047)は、独立行政法人製品評価技術基盤機構(東京都)から購入した。このファージは、宿主細菌細胞に溶解感染して増殖させ、ポリエチレングリコールで沈殿させた後、既述の方法に従って遠心分離法で精製した。最終的に得られたファージ粒子のペレットを滅菌水に溶解し、異なる希釈を行って、二重層寒天法による1mlあたりのプラーク形成単位(PFU)を測定した。具体的には、ファージ溶液を宿主細菌細胞の一晩培養液と混合した。次に、この混合物を溶かしたアガロース(0.6% w/v)と混合し、最後にペトリ皿に入れた寒天(1.2% w/v)で固めたSSE培地の上に流し込んだ。一晩インキュベートした後、プラークを数えた。ファージ液を106、107、108PFU/mLに調製し、後述の霧化に使用した。
電極板20の尖頭突起部201の尖頭から常時発生するコロナ放電(連続コロナ電流)は、-1~-10kVの電圧範囲で測定され、ミスト粒子に吸引力を及ぼしていた。コロナ放電による電流を内蔵のガルバノメータで記録し、コロナ放電の光芒を暗視野で長時間露光して撮影した。また、高感度風速計(Climomaster 6533; Kanomax、Tokyo、Japan)を用いて、コロナ放電により発生した電極板20の尖頭突起部201の尖頭から水面への気流(イオン風I)の速度を空気処理装置2の上部出口で測定し、Q(m3/min)=V(m2)×A(m/s)×60(s)の式で体積流量(m3/min)を算出した。さらに、吹出口の外側に設置したゲルディエン社製大気イオンカウンタ(NKMH-103;北斗電子、兵庫県)を用いて、気流に含まれるマイナスイオンの数を推定した。
この実験では、コンプレッサ式ネブライザ(アトマイザ)(NE-C-28;オムロン株式会社、京都、日本)(内蔵水タンクの容量、7 mL;ミスト発生速度、0.35 mL/min;MMD、5 μm)を用いて、フルオレセインイソチオシアネート(以下、「FITC」という。)(富士フィルム和光純薬株式会社、大阪、日本)またはファージ粒子を含む液体試料を霧化した。ネブライザのノズルは、空気処理装置2から20cmの高さに設置し、ミストは四角い筐体部23内に向かって噴出させた。
第1回目の実験では、帯電していない空気処理装置2に向けてFITC水(100 μg/mL)を連続的に噴出させ、ミスト粒子が水面から跳ね返り、噴出力によって空気処理装置2外に弾かれることを目視で確認した。次に、異なる電圧(-1~-10kV)で空気処理装置2の電極板20を負に帯電させ、FITC水を30秒間噴出させて、各電圧で水面に捕捉されたミスト粒子の量(ミスト粒子から水面に移行したFITCの量)を測定した。水中のFITC量は、あらかじめ形成した光学濃度ベースの検量線から推定した。FITCミストの捕捉の様子は、青色発光ダイオード(旭電機、大阪)の照明下でビデオ撮影した。
2回目の実験では、ファージサンプル(105-107PFU/mL)を、異なる電圧(-3~-10kV)で帯電させた空気処理装置2に1分間射出した。水面に捕集されたファージ粒子の量は、上述の二重層寒天法で測定した。
ここで、放電とは、電界中の気体の絶縁破壊により、対向する極の間に電位差に応じた電流が発生することと定義されている。一方の極(電気を受ける側)に接地された導体があると、この導体が無制限(この実験では電圧印加装置の最大電流10mA)に電気を受けるので、放電が起こりやすくなる。電界中では、まずコロナ放電が発生し、印加電圧が高くなるか、あるいは極間の距離が短くなると、グロー放電(または表面放電)からブラシ状の放電へと変化し、両極間でアーク放電が発生して放電が停止する。本実施例の焦点は、電界中でのグロー・コロナ放電の発生であり、複数の負電荷を帯びた金属の尖頭突起部が、既報の原理に従って水面に向けてマイナスイオンとイオン風Iを発生させることである。
図6(b)に示すとおり、空気処理装置2の静電構成では、電圧印加装置22のコッククロフト回路で作られた高電圧が地面から電気を拾って電極板20の尖頭突起部201の先端に供給され、その負の表面電荷が水の自由電子を地面に押し付けて反対の極、すなわち正の極を作るという仕組みになっている。
本発明に係る空気処理装置2では、負の極(尖頭突起部の先端)の放電が起こると、電気(自由電子)が地面から地面へと移動する電気回路を形成した。コロナ放電は、先の尖った金属導体の周囲の電界の強さ(電位勾配)が、導電性領域を形成するのに十分な強さでありながら、近くの物体に電気的破壊やアーク放電を引き起こすのに十分でない場合に発生する。実施例2に係る静電デバイスである空気処理装置2では、帯電した尖頭突起部201の先端と水面が向き合い、電界が発生するように構成されている。この電界の中で、電極板20の尖頭突起部201の先端から水面に向けて、常にコロナ放電が発生している。
次に空気処理装置2に係る実験について説明する。
実験日: 令和3年2月
実験場所:近畿大学薬学総合研究所
すべての実験は5回繰り返し、データは平均値と標準偏差で示した。解析は、EZRソフトウェアバージョン1.54(自治医科大学、日本、埼玉)を用いて行い、条件間の有意差や因子間の相関関係を明らかにした。図7は、空気処理装置の電界中での印加電圧とコロナ放電(a)、マイナスイオン発生(b)、イオン風の体積流量(c)の関係。(d)イオン風Iの体積流量とマイナスイオン発生量の関係を示す。
図7(a)は、印加電圧とコロナ放電の発生量の関係を示したものであるが、実施例2に係る空気処理装置2では、印加電圧が-6~-10kVの範囲では、コロナ放電の発生電流が印加電圧に比例して大きくなっている。
図7(b)に示すとおり、イオン検出器を用いた測定では、電圧が大きいほど大量のマイナスイオンが発生することが確認された。ここで、イオン風Iとは、地面に対して高電圧をかけた鋭利な導体(ポイントやブレードなど)の先端で発生するコロナ放電に連動した静電気力によって引き起こされる気流と定義される。
図7(c)に示すとおり、印加電圧とイオン風Iの発生量に明確な相関関係があり、印加電圧に比例して発生量が増加することが判明した。
また、図7(d)に示すとおり、イオン風Iの体積流量と、イオン風Iに含まれるマイナスイオンの数に正の相関があることを示している。イオン風は、電極板20の尖頭突起部201の尖った先端か水面に向けて吹いた。空気処理装置2で発生したイオン風Iは、外気を空気処理装置2の電界に取り込むのに十分な強さ(1.5~2.0m/s)であった。
コロナ放電発生電界では、適切に帯電された非絶縁導体極は、適切な距離に置かれた反対側の極に対してコロナ放電を発生させ、二次的に周囲の空気中に多数の電荷を発生させ、これらの電荷は被捕集成分Xに付与され、その被捕集成分Xを帯電させることができる。この電界の中で、帯電した被捕集成分Xは反対側の電極に引き寄せられる。空気処理装置2の構成では、水面が正の電荷を持つ捕集極として機能したといえる。
図8のグラフを説明する。図8(a)は、異なる電圧で負に帯電させた空気処理装置2の接地水に捕捉されたFITCを示すグラフである。FITCを含むミストを30秒間噴出させた。平均値と標準偏差は、5回の実験を繰り返して算出した。各列の文字(a-c)は、Tukey法による有意差(p<0.05)を示す。図8(b)は、 空気処理装置2の電界中でのFITCの捕捉とマイナスイオンの発生について示すグラフである。空気処理装置2の電界中でのFITCの捕捉とマイナスイオンの発生については正の相関がある。
ファージフリーのミスト粒子を捕らえる最初のアッセイでは、FITCを含んだ水をアトマイザから噴出させた。アトマイザからのミスト粒子を目視で確認することができた。実際に、ミスト粒子は水面に到達し、その表面から跳ね返ってきたのである。この方法により、ミストの跳ね返りを止めるために空気処理装置2にかけるべき最適な電圧を簡単かつ効果的に決定することができた。この方法では、ミストの跳ね返りを止めるために空気処理装置2に印加すべき最適な電圧を、簡単かつ効果的に決定することができた。本実施例においては、空気処理装置2にかける電圧が-8kVになると、ミスト粒子の跳ね返りが抑えられることがわかる。さらに、この電圧で空気処理装置2にFITCミストを連続的に注入すると、水に溶け込んだFITCの量が連続的に増加することがわかった。
図8(a)に示すとおり、異なる電圧で負に帯電させた空気処理装置2において捕集槽21の水面に統合されたFITCの量の変化を示している。これらの結果は、水面がミスト粒子の捕集極として機能し、印加する電圧に正比例してミスト粒子の捕集能力が高まることを強く示している。
また、図8(b)に示すとおり、-6~-10kVの電圧範囲において、マイナスイオンの発生量とFITCミストの捕捉量に正の相関があることを示している。これらの結果は、空気処理装置2の電界中での粒子の静電引力にマイナスイオンが関与していることを強く示唆している。このように、マイナスイオンがミスト粒子をイオン化することで、水面上の反対側の電荷に向かって引力を発生させることができるという予想に合致した結果が得られた。
下記の表1を説明する。表1は、空気処理装置2の接地水から回収されたファージφ6粒子によって生成されたプラークの数である。
2回目のアッセイでは、ファージ濃度の異なるサンプル溶液を、-3~-10kVの範囲で帯電させた空気処理装置2に射出し、G-WTのアリコート(100μL)を採取して、水面に捕捉されたファージの濃度を測定した。その結果、水面はファージを担持したミスト粒子を捕捉しており、捕捉したファージの数は印加電圧の増加とともに段階的に増加し、-8~-10kVの間で高原状態に達した。これらの結果から、空気処理装置は8kV以上の負電圧で帯電させれば、ファージを含むミスト粒子を十分に捕捉できると結論づけた。
また、今回の結果から、空気処理装置2によるミスト粒子の捕捉は、ミスト粒子に含まれるファージの濃度とは無関係に起こることがわかった。
以上のように、ミスト粒子の捕獲は、ミスト粒子の表面がマイナスイオンでイオン化され、それに続いて反対の極に引き寄せられることに依存していた。これらの結果から、空気処理装置2は、飛沫感染による各種細菌性疾患(ジフテリア、百日咳、髄膜炎、ペスト、肺炎)、ウイルス性疾患(インフルエンザ、髄膜炎、おたふく風邪、風疹、肺炎)、マイコプラズマなどの病原体に適用できることが示唆された。
Figure 2023081609000002
実施例3を図面に基づき説明する。実施例3に示す空気処理装置を含むトータルシステムTSは、実施例2と同様に、空気に含まれる病原体を捕集するためのシステムとして説明する。
図9は、互いに連結された3台の空気処理装置4とオゾン発生装置OGを含むトータルシステムの模式図である。図9に記載の符号で、後述の符号欄に記載されていないものは下記のとおりである。WST:給水タンク、PVG:正電圧印加装置。WDT:ウォータードレンタンク、P1:給水タンクから各空気処理装置の水容器までの配管、P2:空気処理装置の水容器からウォータードレンタンクまでの配管である。
図10は、接地した水に捕捉したファージを殺菌するために考案されたオゾン発生装置OGの模式図である。矢印は軸流ファンAFからの風の方向を示す。なお、図8に示される符号については、下記のとおりである。
PCCはポリ塩化ビニル製の円筒、AFは軸流ファン、PVGは正電圧印加装置、S-SPは尖頭突起部付き電極板、G-SPは接地したステンレス板、FSFは漏斗状の管継手、OETはオゾン放出管、CFは活性炭フィルタ、AEPは空気排気口、WVは水バルブ、WIは水入口、MBはマイクロバブラ、WDTは排水タンク、WDPは排水口である。
図9は、3台の空気処理装置3A、3B、3Cと1台のオゾン発生装置OGで構成されたトータルシステムである。3台の同一の空気処理装置3A、3B、3C(長さ1m、尖頭突起部数50)は、互いに連結され、負の電圧印加装置32に連結され、捕集槽31内の水は接地線Lに連結されている。各捕集槽31A、31B、31Cには、給水タンクと排水タンクWDTからの2本のパイプが接続されています。オゾン発生装置OGのオゾン放出管OETはマイクロバブラMBに接続され、排水タンクWDTに挿入されている。空気処理装置3A、3B、3Cの各電極板30A、30B、30Cは-10kVで帯電させ、霧化されたファージを含むミスト粒子を捕捉し、オゾン発生装置OGの尖頭突起部付きの電極板S-SPは+10kVで正に帯電させてオゾンを発生させる。
まず、オゾン発生装置OGの構造を説明する。
図10に示すとおり、オゾン発生装置OGは、5枚の同一サイズのステンレスプレート(10×20cm2;厚さ2mm)を用いて構成され、うち2枚のステンレスプレートは、50本の金属ピンを導電性粘着テープで両面に貼り付け尖頭突起部とし、直流正電圧発生装置(電流制限、10mA)(AMF-10K1PNX2/100、Max-Electronics、Tokyo、Japan)に連結した電極板とし、他の3枚のステンレスプレートは、接地しただけの誘電板とした。そして、2つの電極板と、3つの誘電板を、17mmの間隔で交互に水平に配置した(二重層法;尖頭突起部の先端と誘電板の面の間隔は9mm)。上述のとおり配置されたステンレスプレートをポリプロピレン製のフレームで固定し、アクリル製の透明な円筒(直径10cm、長さ30cm)の中に入れた。円筒の片側には同サイズの塩化ビニル製の筒を接続し、その反対側には軸流ファンを取り付け、円筒の反対側には漏斗状の管継手を取り付けたチューブ(直径2cm、厚さ0.5mm)を接続した。
ファージ殺菌のアッセイでは、オゾン発生装置OGをS-SPとG-SPの間で機械的放電(アーク放電)を起こさない最高電圧(+10kV)で正帯電させ、オゾン噴出管の先端に微細な泡(直径0.5~20μm)を発生させるマイクロバブラ(日本アズー、神奈川県)を接続し、水切りタンクのファージ含有水(108PFU/mL)に挿入した。タンクからの排気は、溶液から漏出したオゾンを捕捉するために活性炭吸着材に通した。水中のすべてのファージを不活性化するための最適なバブリング時間を決定するため、異なる時間(5~40分)、オゾンバブリングを続けた。バブリング後、オゾンでバブリングされた水のアリコートを採取し、前述の二重層法によるファージの生存率を調べた。
また、本システムの実用化の可能性を評価するために、二つの実験を行った。
実験日: 令和3年2月
実験場所:近畿大学薬学総合研究所
第1の実験では、-10 kVの電圧を印加した3連装の空気処理装置3A、3B、3Cを無換気の立方体キャビネット(辺の長さ2m)に設置し、5mLのファージサンプル(108 PFU/mL)を5分間空中に噴霧している間とその後に空気処理装置3A、3B、3Cを連続的に作動させた(30分間)。ファージトラップの成功は、30分間のトラップ操作終了後、空気処理装置3A、3B、3Cから排出された水からアリコートを採取して確認した。この実験では、1台のみの空気処理装置、2台連装空気処理装置を同様に動作させて、ファージトラップの効果を比較した。
第2の実験では、同様にファージサンプル(5mL、 108 PFU/mL)をキャビネットの空気中に放出し、特定の時間(15分から120分)が経過した後、3連装の空気処理装置3A、3B、3C(-10kVチャージ)を30分間連続運転した。空気処理装置3A、3B、3Cの捕集槽31A、31B、31C内の水を水切りタンクに移し、各トラップ操作で得られたファージ数を測定した。ファージ数は上述の方法で測定した。
捕集した病原体の殺菌は、空気中の病原体を沈殿させる最終段階である。この目的のために、ガンマ線、紫外線、オゾン、プラズマの使用や、様々な抗菌性化学試薬の塗布など、様々な物理的・物理化学的方法が用いられてきた。本発明では、空気処理装置の構造に簡単な改良を施すことでオゾン発生装置OGを容易に製作できたため、閉じ込められた病原体を殺すための簡単で安価な方法としてオゾンを使用した。実際、オゾン発生装置OGはシンプルな構造であるため、実用上、製造が容易で経済的である。市販のオゾン発生装置は、高電圧放電方式のバリエーションが主流であるが、本願に記載するオゾン発生装置OGも同じ物理的原理に基づく。正電荷を帯びた尖頭突起部の極と、逆の負電荷を帯びて接地された金属板との間で、効果的にオゾンを発生させることができる。
オゾンは抗菌剤として、水中のウイルスや細菌、真菌などを効果的に殺菌する。病原体がはびこっている溶液を殺菌するには、一定濃度のオゾンを含むオゾン空気のバブリングと適切な暴露時間が必要である。本願に係るシステムでは、マイクロバブラを用いてオゾン発生装置OGからオゾン空気の微細な泡(~20μm径)を発生させた。連続曝気を行う現在の条件では、運転中にわずかに減少するだけで、小さな気泡がオゾン処理液中に持続した。
図11を参照する。図11は、オゾンの生産性とオゾン発生器への印加電圧との間の正の相関関係(a)と、オゾン発生器で発生したマイクロバブルにさらされたファージの致死率の時間変化(b)を示す。図11(b)の平均値と標準偏差は、5回の実験を繰り返して算出した。各列の文字(a-d)は、Tukey's法による有意差(p<0.05)を示す。
図11(a)に示すとおり、機械的な放電が起こらない電圧範囲(+7~+10kV)でのオゾン生成量と印加電圧の間に明確な相関関係がある。すなわち、当該電圧範囲で印加した電圧に正比例してオゾンの生産性が向上している。
また、図11(b)に示すとおり、水中のファージ粒子を不活性化するために、オゾン発生装置OGを+10kVで帯電させた。ファージを完全に殺菌するために必要かつ最適なオゾンバブリング時間を示している。この結果から、安全な排水のためにファージを完全に死滅させるには、30分のバブリングで十分であることがわかった。
トータル空気処理装置システムTSは、空気中に噴霧されたミスト粒子中のファージを捕捉・不活性化するための実用的なツールである。呼吸器系の飛沫は、人が咳やくしゃみをしたり話したりしたときに形成され、通常は短い距離(通常は1m以下)を移動した後に沈降する。この飛沫は通常、大きすぎて長時間空気中に浮遊することはなく、すぐに下方に沈む。実証結果によると、COVID-19ウイルスは主に呼吸器系の飛沫と接触経路によって感染する。本実施例における本願発明者等の主要な関心事は、浮遊するミスト粒子を空気処理装置3で捕捉できるかどうかを判断することでもある。
図12を参照する。図12 (a)は、1台のみの空気処理装置、2台連装及び3台連装空気処理装置を用いた場合の空気中に噴霧したファージのそれぞれの捕捉について示すグラフである。ネガティブコントロールとして、電荷を持たない空気処理装置を単独で使用した。捕捉時間は30分である。図12(b)は、3台連装空気処理装置を用いて空気中に噴霧したファージの捕捉の時間関係を示すグラフである。
図12(a)に示すとおり、空気処理装置3A、3B、3Cのうち、1台のみ使用した場合、2台連装した場合、3台連装した場合のファージ捕獲効率を比較したデータである。帯電した空気処理装置は、空気中に噴霧されたファージを効果的に捕捉した。この結果は、空気処理装置がイオン風Iを発生させ、外気を空気処理装置内に取り込むのに有効であるためと考えられる。実際、2台連装及び3台連装の空気処理装置は、より大量の空気、つまりより多くのファージ粒子を吸引するのに効果的であった。
いずれの実験でも、5 mLのファージ溶液(108 PFU/mL)を5分間霧化し、-10 kVで荷電した空気処理装置(複数)で30分間回収した。ファージトラップ効率は二重層寒天法で測定した。図12(b)に示す平均値と標準偏差は、5回の実験を繰り返して算出した。グラフ中の(a-d)の文字は、Tukey's法による有意差(p<0.05)を示す。
また、本実施例の課題として、現在のサイズ(1~10μm)の霧状のファージミストが、換気されていない密閉されたキャビネットの空気中で、どのくらいの時間浮遊できるかを確認することであった。これについては、3連装した空気処理装置3A、3B、3Cを用いてタイムコース・トラッピング・アッセイを行った。
図12(b)によれば、捕捉されたファージの数は、最初の捕捉操作で最も多く、その後時間の経過とともに減少した。噴霧後35分以降では、捕捉操作によってファージは得られなかった。これらの結果から、少なくとも換気していないキャビネット内では、ファージを含むミスト粒子が空気中に浮遊し続けていたことが示唆された。
本実施例では、空気処理装置3A、3B、3Cが空気中に噴霧されたファージ粒子を捕集させる強い能力を持っていることを示した。しかし、懸濁した液滴は、温度や相対湿度によっては数秒で蒸発する。したがって、アトマイザから噴出された病原体は、ミスト粒子が空気処理装置3A、3B、3Cの電界に入る前と後に、懸濁中のミスト水を失ったと考えられる。
また、本システムTSでは、捕捉されたファージを含む水をウォータードレンタンクに回収して殺菌することに成功した。30分のオゾンバブリング処理ですべてのファージを死滅させることができた。このように、本空気処理装置システムTSは、ウイルス性病原体を含む感染性呼吸器飛沫を沈殿させるための実用的なアプローチとして適用可能である。
このように、空気処理装置は、φ6のような膜状のファージだけでなく、大腸菌のT7ファージやλファージのような非膜状のファージ、さらにはグラム陰性菌(大腸菌)や陽性菌(枯草菌)の細胞も捕捉できることを予備的に確認している。これらの結果から判断すると、空気処理装置は、被捕集成分の表面電荷がどのような状態であっても、本来の表面電荷を上回るほどの豊富なマイナスイオンを生成できると考えられる。
以上、本発明の空気処理装置及び空気処理方法の実施例を説明してきたが、本発明の技術的範囲を逸脱することなく種々の変更が可能であることは理解されるであろう。
本発明は、特に人混みや風通しの悪い場所で、感染性の飛沫を捕集するのに有効である。また、装置そのものは、どこにでもある材料で簡単に構成でき、必要に応じて様々な方法と組み合わせて、病原体を含む水の殺菌を行うことができる。すなわち、製造コストが低く、電力消費量も少ないため、特に経済発展途上国において、空気中の病原菌の感染を阻止するために利用しやすいという産業上の利用可能性が広い。
また、実施例において、COVID-19ウイルスのモデルとして、形態的な類似性と実験上の安全性からφ6ファージを用いたが、空気感染や飛沫感染する病原体を捕集させるためには、どのような種類の微生物であっても適用可能である。さらに、活性を保持した状態で溶液中に回収できることから空気中の存在量を定量化でき、連続的にモニタリングすることも可能である。
1 2 3 空気処理装置
10 20 30 電極板
100 200 基体
101 201 301 突起部
102 孔
11 21 31 捕集槽
12 22 32 電圧印加装置
F 導電性液体
Fw 水
I イオン風
L 接地線
X 被捕集成分
A 空気
Ac 処理後の空気
TS 空気処理装置を含むトータルシステム
OG オゾン発生器
CT 導電性両面接着テープ
GM ガルバノメータ
EF 電界
QF 四角いフード

Claims (14)

  1. 被捕集成分を含む空気が通過すると該被捕集成分を捕集する空気処理装置であって、
    アースに接地された導電性液体を収容し上面が開放された捕集槽と、複数の孔を備えた金属板に複数の突起部を固定した電極板とを備え、前記電極板は、前記突起部の先端が該導電性液体の上面に対向するように前記捕集槽の上縁面に載せ置かれ、
    前記突起部に電荷を供給して静電場が発生すると、静電誘導で前記捕集槽に収容された前記導電性液体は、前記突起部に供給された電荷とは逆の電荷を帯電し、前記突起部の先端から前記導電体液体の上面に向かってイオン風が生起し、前記被捕集成分が前記導電性液体の側に捕集されることを特徴とする空気処理装置。
  2. 前記導電性液体は水であって、前記被捕集成分が水溶性であるときは前記被捕集成分が該水内に溶けこんで捕集され、前記被捕集成分が非水溶性であるときは前記被捕集成分が該水の上面に捕集されることを特徴とする請求項1に記載の空気処理装置。
  3. 前記導電性液体は、液体保持材に保持されて前記捕集槽に収容されたものであることを特徴とする請求項1に記載の空気処理装置。
  4. 前記導電性液体は、ゲル状で前記捕集槽に収容されたものであることを特徴とする請求項1に記載の空気処理装置。
  5. 前記導電性液体は水性であって、前記被捕集成分が水溶性である場合は前記被捕集成分が前記導電性液体内に捕集され、前記被捕集成分が非水溶性である場合は前記被捕集成分が前記導電性液体の上面に捕集されることを特徴とする請求項1のいずれかに記載の空気処理装置。
  6. 前記導電性液体は油性であって、前記被捕集成分が油溶性である場合は前記被捕集成分が前記導電性液体内に溶け込んで捕集され、前記被捕集成分が非油溶性である場合は前記被捕集成分が前記導電性液体の上面に捕集されることを特徴とする請求項1に記載の空気処理装置。
  7. 前記突起部の先端と前記導電性液体の上面との距離は、該先端に印加する電圧と比例して変動して離隔したものであることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の空気処理装置。
  8. 前記突起部は尖頭であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の空気処理装置。
  9. 被捕集成分は、病原体、農薬、煙草の煙、二酸化炭素、アンモニア、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドのほか、空気中に含まれる気体、エアロゾル、飛粒体であることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の空気処理装置。
  10. 被捕集成分を含む空気が通過すると該被捕集成分を捕集する空気処理方法であって、
    導電性液体を収容し上面が開放された捕集槽と、複数の孔を備えた金属板に複数の突起部を固定した電極板とを備えた空気処理装置において、前記電極板が、前記突起部の先端が該導電性液体の上面に対向するように前記捕集槽の上縁面に載せ置かれ、
    前記突起部に電荷を供給して静電場が発生すると、静電誘導で前記捕集槽に収容された前記導電性液体は、前記突起部に供給された電荷とは逆の電荷を帯電し、前記突起部の先端から前記導電体液体の上面に向かってイオン風が生起し、前記被捕集成分が前記導電性液体の側に捕集されることを特徴とする空気処理方法。
  11. 前記導電性液体は水性であって、前記被捕集成分が水溶性である場合は前記被捕集成分が前記導電性液体内に捕集され、前記被捕集成分が非水溶性である場合は前記被捕集成分が前記導電性液体の上面に捕集されることを特徴とする請求項10に記載の空気処理方法。
  12. 前記導電性液体は油性であって、前記被捕集成分が油溶性である場合は前記被捕集成分が前記導電性液体内に溶け込んで捕集され、前記被捕集成分が非油溶性である場合は前記被捕集成分が前記導電性液体の上面に捕集されることを特徴とする請求項10に記載の空気処理方法。
  13. 被捕集成分は、病原体、農薬、煙草の煙、二酸化炭素、アンモニア、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドのほか、空気中に含まれる気体、エアロゾル、飛粒体であることを特徴とする請求項10ないし12のいずれかに記載の空気処理方法。
  14. 請求項10ないし13のいずれかに記載の空気処理方法を用いて前記導電性溶液に回収された前記被捕集成分を、前記導電性溶液からサンプリングすることにより一定量の空気に存在している量を定量し、連続的にモニタリングする方法。
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