JP2023069278A - 入れ子の固定方法および入れ子の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】安定して入れ子を金型に固定することが可能な入れ子の固定方法および入れ子の製造方法を提供する。【解決手段】入れ子を金型に固定する入れ子の固定方法であって、入れ子は、焼結工程を含む積層造形法により固定用孔を有して造形されており、係合孔を有する被係合部材を、係合孔が露出するように固定用孔に挿入して固定する被係合部材固定工程と、係合孔に係合可能な係合部材を、金型を介して係合孔に挿入して固定することにより、入れ子を金型に固定する入れ子固定工程と、を備える。【選択図】図1
Description
本開示は、入れ子の固定方法および入れ子の製造方法に関する。
従来、例えば特許文献1に記載されるように、積層造形法を用いて、ダイカスト用部品を製造する技術が知られている。積層造形法には、材料押出法や、インクジェット方式などがある。例えば、材料押出法では、熱可塑性樹脂を熱で溶融し、溶融した樹脂をノズルから吐出して層を形成し、その繰り返しによって一層ずつ積み重ねて造形する。その後、造形物の余分なバインダーを脱脂した後、造形物を炉に入れ、焼結処理を行う。
上記焼結処理を伴う積層造形法は、種々の技術分野に適用されており、例えば、金型の入れ子の製造にも用いられる。入れ子は、金型に入れ子を固定するためのボルトが挿入される固定用孔を有する。しかし、固定用孔を有する入れ子を上記焼結処理を伴う積層造形方法により製造すると、焼結処理によって入れ子が収縮してしまい、その結果、固定用孔の形状が変形してしまう。このため、固定用孔の収縮の程度によっては、ボルトを正確に固定用孔に挿入できないという問題が生じていた。したがって、安定して入れ子を金型に固定することが可能な技術が望まれる。
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
(1)本開示の一形態によれば、入れ子の固定方法が提供される。この入れ子の固定方法は、入れ子を金型に固定する入れ子の固定方法であって、前記入れ子は、焼結工程を含む積層造形法により固定用孔を有して造形されており、係合孔を有する被係合部材を、前記係合孔が露出するように前記固定用孔に挿入して固定する被係合部材固定工程と、前記係合孔に係合可能な係合部材を、前記金型側から前記係合孔に挿入して固定することで、前記入れ子を前記金型に固定する入れ子固定工程と、を備える。
この形態によれば、被係合部材固定工程において、焼結工程を経て造形された入れ子の固定用孔に被係合部材が挿入される。そして、入れ子固定工程において、被係合部材に形成される係合孔に係合部材が挿入されることで入れ子が金型に固定される。このため、係合部材が挿入される係合孔は、入れ子の造形時における焼結工程の影響を受けず、収縮により形状が変形することがない。換言すると、被係合部材は、焼結後に組み付けられるため、被係合部材の係合孔は歪むことなく維持される。このため、係合部材を被係合部材の係合孔に確実に挿入することができ、入れ子を金型に安定して固定することができる。
(2)上記形態において、前記係合孔の内周には、ねじ溝が形成されており、前記係合部材の外周には、前記ねじ溝と螺合するねじ山が形成されていてもよい。この形態によれば、ねじ溝が形成される被係合部材と、ねじ山が形成される係合部材との螺合により入れ子を金型に固定できる。このため、簡易な構成部材で容易に入れ子を金型に固定することができる。
(3)上記形態において、前記被係合部材は、筒状をなす軸部と、前記軸部の先端に外側へ突出して設けられるフランジ部と、を有して構成され、前記固定用孔は、前記フランジ部が挿通可能に形成される第1孔部と、前記フランジ部が挿入された状態で前記フランジ部が前記軸部まわりに回転可能に形成される第2孔部と、を有し、前記被係合部材への前記係合部材の挿入方向に沿った順序で前記第1孔部と前記第2孔部とが連続して配置され、前記被係合部材固定工程は、前記被係合部材を前記フランジ部側から前記第1孔部に挿入し、前記フランジ部を前記第2孔部まで到達させる到達工程と、前記到達工程の後、前記フランジ部を前記第2孔部内で前記軸部まわりに回転させることにより、前記軸部の軸方向において前記被係合部材を前記固定用孔に係合させる係合工程と、を含んでもよい。
この形態によれば、被係合部材は、そのフランジ部が第2孔部に軸方向において係合するため、被係合部材が固定用孔から軸方向に抜けることを抑制できる。また、固定用孔は、フランジ部が挿通可能に形成される第1孔部と、フランジ部が挿入されて軸部まわりに回転可能に形成される第2孔部と、を有する構成である。このため、到達工程後の係合工程において、フランジ部を第2孔部内で軸部まわりに回転させるという簡単な動作により、容易に被係合部材を固定用孔に軸方向において係合させることができる。
(4)上記形態において、前記入れ子は、前記固定用孔を複数有して造形されており、前記入れ子固定工程は、複数の前記固定用孔のうちの第1固定用孔に固定された前記被係合部材に、前記金型を介して前記係合部材である第1係合部材を挿入して固定する工程と、複数の前記固定用孔のうちの第2固定用孔に、前記金型を介して第2係合部材を、前記被係合部材を介することなく挿入して固定する工程と、を有し、前記第2固定用孔は、前記第1固定用孔に比べて、前記入れ子が焼結された際の焼結収縮の中心寄りに位置してもよい。
この形態によれば、入れ子が焼結された際の焼結収縮の中心寄りに位置する第2固定用孔では、被係合部材を介することなく、直接的に第2係合部材を、金型を介して挿入できる。焼結収縮の中心寄りに位置する部位は、入れ子を焼結した際に、熱による収縮の影響を受けにくい。このため、焼結収縮の中心寄りに位置する固定用孔は、焼結により内径の変形を生じにくいため、直接的に第2係合部材による固定が可能となる。焼結収縮の中心寄りに位置する第2固定用孔では、被係合部材を介することがないため、部材点数を削減でき、コストを低減できる。また、焼結収縮の中心から離れた位置にあり、焼結工程での熱による収縮の影響を受けやすい第1固定用孔では、第1固定用孔に固定された被係合部材に、金型を介して第1係合部材を挿入して固定できるため、入れ子を金型に安定して固定することができる。
(5)本開示の第2形態によれば、入れ子の製造方法が提供される。この入れ子の製造方法は、金型に固定される入れ子の製造方法であって、前記入れ子は、係合孔を有し前記入れ子に固定される被係合部材と、金型側から前記係合孔に挿入される係合部材と、の係合により、金型に固定されるものであり、前記被係合部材が挿入される固定用孔を有し、前記入れ子の外形形状をなす造形体を積層造形する造形工程と、前記造形工程において積層造形された前記造形体を焼結する焼結工程と、を備える。
この形態によれば、造形工程と、焼結工程とを経ることで、安価に入れ子を製造できる。そして、この入れ子を、係合孔を有し入れ子に固定される被係合部材と、金型側から係合孔に挿入される係合部材と、の係合により、容易に金型に固定することができる。
この形態によれば、被係合部材固定工程において、焼結工程を経て造形された入れ子の固定用孔に被係合部材が挿入される。そして、入れ子固定工程において、被係合部材に形成される係合孔に係合部材が挿入されることで入れ子が金型に固定される。このため、係合部材が挿入される係合孔は、入れ子の造形時における焼結工程の影響を受けず、収縮により形状が変形することがない。換言すると、被係合部材は、焼結後に組み付けられるため、被係合部材の係合孔は歪むことなく維持される。このため、係合部材を被係合部材の係合孔に確実に挿入することができ、入れ子を金型に安定して固定することができる。
(2)上記形態において、前記係合孔の内周には、ねじ溝が形成されており、前記係合部材の外周には、前記ねじ溝と螺合するねじ山が形成されていてもよい。この形態によれば、ねじ溝が形成される被係合部材と、ねじ山が形成される係合部材との螺合により入れ子を金型に固定できる。このため、簡易な構成部材で容易に入れ子を金型に固定することができる。
(3)上記形態において、前記被係合部材は、筒状をなす軸部と、前記軸部の先端に外側へ突出して設けられるフランジ部と、を有して構成され、前記固定用孔は、前記フランジ部が挿通可能に形成される第1孔部と、前記フランジ部が挿入された状態で前記フランジ部が前記軸部まわりに回転可能に形成される第2孔部と、を有し、前記被係合部材への前記係合部材の挿入方向に沿った順序で前記第1孔部と前記第2孔部とが連続して配置され、前記被係合部材固定工程は、前記被係合部材を前記フランジ部側から前記第1孔部に挿入し、前記フランジ部を前記第2孔部まで到達させる到達工程と、前記到達工程の後、前記フランジ部を前記第2孔部内で前記軸部まわりに回転させることにより、前記軸部の軸方向において前記被係合部材を前記固定用孔に係合させる係合工程と、を含んでもよい。
この形態によれば、被係合部材は、そのフランジ部が第2孔部に軸方向において係合するため、被係合部材が固定用孔から軸方向に抜けることを抑制できる。また、固定用孔は、フランジ部が挿通可能に形成される第1孔部と、フランジ部が挿入されて軸部まわりに回転可能に形成される第2孔部と、を有する構成である。このため、到達工程後の係合工程において、フランジ部を第2孔部内で軸部まわりに回転させるという簡単な動作により、容易に被係合部材を固定用孔に軸方向において係合させることができる。
(4)上記形態において、前記入れ子は、前記固定用孔を複数有して造形されており、前記入れ子固定工程は、複数の前記固定用孔のうちの第1固定用孔に固定された前記被係合部材に、前記金型を介して前記係合部材である第1係合部材を挿入して固定する工程と、複数の前記固定用孔のうちの第2固定用孔に、前記金型を介して第2係合部材を、前記被係合部材を介することなく挿入して固定する工程と、を有し、前記第2固定用孔は、前記第1固定用孔に比べて、前記入れ子が焼結された際の焼結収縮の中心寄りに位置してもよい。
この形態によれば、入れ子が焼結された際の焼結収縮の中心寄りに位置する第2固定用孔では、被係合部材を介することなく、直接的に第2係合部材を、金型を介して挿入できる。焼結収縮の中心寄りに位置する部位は、入れ子を焼結した際に、熱による収縮の影響を受けにくい。このため、焼結収縮の中心寄りに位置する固定用孔は、焼結により内径の変形を生じにくいため、直接的に第2係合部材による固定が可能となる。焼結収縮の中心寄りに位置する第2固定用孔では、被係合部材を介することがないため、部材点数を削減でき、コストを低減できる。また、焼結収縮の中心から離れた位置にあり、焼結工程での熱による収縮の影響を受けやすい第1固定用孔では、第1固定用孔に固定された被係合部材に、金型を介して第1係合部材を挿入して固定できるため、入れ子を金型に安定して固定することができる。
(5)本開示の第2形態によれば、入れ子の製造方法が提供される。この入れ子の製造方法は、金型に固定される入れ子の製造方法であって、前記入れ子は、係合孔を有し前記入れ子に固定される被係合部材と、金型側から前記係合孔に挿入される係合部材と、の係合により、金型に固定されるものであり、前記被係合部材が挿入される固定用孔を有し、前記入れ子の外形形状をなす造形体を積層造形する造形工程と、前記造形工程において積層造形された前記造形体を焼結する焼結工程と、を備える。
この形態によれば、造形工程と、焼結工程とを経ることで、安価に入れ子を製造できる。そして、この入れ子を、係合孔を有し入れ子に固定される被係合部材と、金型側から係合孔に挿入される係合部材と、の係合により、容易に金型に固定することができる。
A.第1実施形態:
A1.金型の構成:
以下、本開示の第1実施形態について、図1~図5を参照して説明する。図1は、本開示の第1実施形態の入れ子2aの固定方法により、鋳造金型1aに入れ子2aを固定した状態を模式的に示す断面図である。金属製の入れ子2aは、図1に示すように、複数(本実施形態では2つ)の固定用孔10と、固定用孔10に挿入されるインサートナット20と、を有している。
A1.金型の構成:
以下、本開示の第1実施形態について、図1~図5を参照して説明する。図1は、本開示の第1実施形態の入れ子2aの固定方法により、鋳造金型1aに入れ子2aを固定した状態を模式的に示す断面図である。金属製の入れ子2aは、図1に示すように、複数(本実施形態では2つ)の固定用孔10と、固定用孔10に挿入されるインサートナット20と、を有している。
図2は、インサートナット20を示す平面図であり、インサートナット20を後述する軸部21側から見た図である。インサートナット20は、「被係合部材」に相当する。以下、インサートナット20を、単に「ナット20」ともいう。図1,図2に示すように、インサートナット20は、軸部21と、軸部21の先端に外側に突出して一体に設けられるフランジ部22と、を有しており、ナット20の中心軸C1を通る断面形状がT字形状をなす。軸部21は、円筒形状である。軸部21の中心には、係合孔23が、軸方向に延びて貫通して形成されている。係合孔23の内周には、ねじ溝24(図2参照)が形成されている。フランジ部22は、薄板状をなし、平面視における外形形状は、軸部21に対応する中心部が貫通した略楕円形状をなす。ナット20は、例えばステンレス等の金属材料により切削等によって製造され、焼結工程を含む積層造形法ではない方法で作られている。すなわち、ナット20の形状精度は高い。
固定用孔10は、入れ子2aの端面3(図1参照)に形成された孔である。固定用孔10は、インサートナット20を、フランジ部22側から挿入可能である。固定用孔10は、第1孔部11と、第2孔部12と、をナット20が挿入される入れ子2aの端面3側から順に有して構成されている。第1孔部11と第2孔部12とは、ナット20の挿入方向に沿った順序で連続して同軸上に配置されている。
第1孔部11は、ナット20の軸部21を収容する部位であり、軸部21の外形形状に対応する形状をなしている。第1孔部11の軸に垂直な断面形状は、ナット20のフランジ部22の外形形状と略同一形状をなす(図2参照)。第1孔部11は、フランジ部22が挿通可能に形成される。なお、図2において実線で示すナット20は、第1孔部11を通過するときの態様である。
第2孔部12は、ナット20のフランジ部22を収容する部位である。第2孔部12の中心軸C1に直交する面での断面形状は、フランジ部22の長径と略同じ長さを直径とする円形状をなしている(図2参照)。第2孔部12は、フランジ部22が挿入されて、軸部21まわりに回転可能に形成される。第2孔部12は、第1孔部11の開口に垂直な方向に投影したとき、開口と重ならない部分を備える。
固定用孔10は、インサートナット20のフランジ部22側から第1孔部11へ挿入可能であり、フランジ部22が第2孔部12まで挿入されたのち、ナット20が軸部21まわりに回転可能に形成されている。第2孔部12の軸方向高さは、フランジ部22が回転可能な程度の寸法公差にて設計されている。図2において、回転後のナット20を二点鎖線にて図示している。なお、ナット20が例えば矢印A方向へ所定角度回転した後には、所定角度以上の回転が規制され、ナット20が固定用孔10内に固定されるようになっている。ナット20の所定角度以上の回転を規制する回り止め構造としては、例えば、第2孔部12内の所定部位に図示しない突起部を設け、回転後のナット20のフランジ部22の側面が、突起部に当接するようにしてもよい。
再び図1を参照する。金型1aにおいて、入れ子2aが固定されるキャビティ4に対応する外壁5には、ボルト30が挿入される挿入孔6が外壁5を貫通して形成されている。なお、入れ子2aに形成される固定用孔10の位置と、金型1aに形成されるボルト30の挿入孔6の位置とはそれぞれ対応しており、キャビティ4に入れ子2aを設置した際には、金型1aの端面3を介して対応する固定用孔10と挿入孔6とが連通する。入れ子2aは、入れ子2aに固定されたナット20と、金型1aの外壁5の外側から挿入孔6を経由して係合孔23まで挿入されたボルト30と、の締結によって、金型1aのキャビティ4内に強固に固定される。ボルト30は、外周にねじ山32が形成され、係合孔23に係合可能な「係合部材」に相当する。
A2.入れ子の製造方法:
次に、入れ子2aの製造方法について説明する。図3は、入れ子2aの製造方法の手順を示すフローチャートである。本実施形態では、材料押出法により入れ子2aを製造する。図3に示すように、入れ子2aの製造方法では、まず、ステップ10(以下、ステップを「S」と略す)において、造形工程が実行され、次に、S20において焼結工程が実行される。造形工程(S10)では、固定用孔10を有し、入れ子2aの外形形状をなす造形体を積層造形する。焼結工程(S20)では、造形工程(S20)において積層造形された造形体を炉に入れて焼結する。
次に、入れ子2aの製造方法について説明する。図3は、入れ子2aの製造方法の手順を示すフローチャートである。本実施形態では、材料押出法により入れ子2aを製造する。図3に示すように、入れ子2aの製造方法では、まず、ステップ10(以下、ステップを「S」と略す)において、造形工程が実行され、次に、S20において焼結工程が実行される。造形工程(S10)では、固定用孔10を有し、入れ子2aの外形形状をなす造形体を積層造形する。焼結工程(S20)では、造形工程(S20)において積層造形された造形体を炉に入れて焼結する。
A3.入れ子の固定方法:
次に、上記入れ子の製造方法によって製造された入れ子2aを金型1aに固定する固定方法について説明する。第1実施形態の入れ子2aの固定方法では、入れ子2aに形成された固定用孔10に、ナット20を挿入して固定用孔10内に固定し、ナット20にボルト30を締結することで入れ子2aを金型1aに固定する。
次に、上記入れ子の製造方法によって製造された入れ子2aを金型1aに固定する固定方法について説明する。第1実施形態の入れ子2aの固定方法では、入れ子2aに形成された固定用孔10に、ナット20を挿入して固定用孔10内に固定し、ナット20にボルト30を締結することで入れ子2aを金型1aに固定する。
図4は、第1実施形態の入れ子2aの固定方法の手順を示すフローチャートである。図4に示すように、入れ子2aの固定方法では、まず、S30においてナット固定工程が実行され、次に、S40において入れ子固定工程が実行される。ナット固定工程(S30)では、ナット20を、係合孔23が露出するように固定用孔10に挿入し、入れ子2aに固定する。入れ子固定工程(S40)では、ボルト30により、入れ子2aを金型1aに固定する。ナット固定工程(S30)は、「被係合部材固定工程」に相当する。
図5は、ナット固定工程(S30)の詳細手順を示すフローチャートである。図5に示すように、ナット固定工程(S30)では、まず、ステップS31において到達工程が実行され、次に、S32において係合工程が実行される。到達工程(S31)では、ナット20をフランジ部22側から第1孔部11に挿入し、フランジ部22を第2孔部12まで到達させる。係合工程(S32)では、ナット20を軸部21まわりに回転させることで、フランジ部22を第2孔部12に軸方向において係合させる。ナット20を回転させると、図2において二点鎖線で示すように、フランジ部22の長手方向の端部25が、第2孔部12の端面3側の面13(図1参照)に軸方向に当接する。このため、ナット20が軸方向に抜け落ちることが抑制される。
上記焼結工程(S20)に伴い、造形物は収縮する。ここで、固定用孔10も熱影響を受けて収縮する。ただし、固定用孔10の収縮は、ナット20を挿入することができない程度まで収縮することはない。この固定用孔10が、例えばナット20の挿入用ではなく、ボルト30が直接螺合される孔であると、ナット20の挿入用の孔と比較して径が小さくなり、また、ねじ溝などの微細な形状を有するため、熱による影響をより顕著に受けて、孔の変形度合いがボルト30を挿入できない程度にまで大きくなってしまうことがある。すなわち、固定用孔10が、ボルト30が直接螺合される孔である場合、ある程度の高い形状精度が要求される。
その点、本実施形態のように、ナット20が挿入される固定用孔10は、ねじ溝などの微細な形状を有しておらず、上記ボルト挿入用の孔と比較するとそこまで高い形状精度が要求されない。すなわち、ナット20を挿入することができない程度にまで収縮することはなく、その後のナット固定工程(S30)において、ナット20の固定用孔10への挿入が可能である。
(1)上記第1実施形態の入れ子2aの固定方法によれば、ナット固定工程(S30)において、焼結工程(S20)を経て造形された入れ子2aの固定用孔10にナット20が挿入される。そして、入れ子固定工程(S40)において、ナット20に形成される係合孔23にボルト30が挿入されることで入れ子2aが金型1aに固定される。すなわち、ボルト30が挿入される係合孔23は、入れ子2aの造形時における焼結工程(S20)の影響を受けないため、収縮により形状が変形することがない。換言すると、ナット20は、焼結工程(S20)後に組み付けられるため、ナット20の内径は歪むことなく維持される。このため、ボルト30をナット20の係合孔23に確実に挿入することができ、入れ子2aを金型1aに安定して固定することができる。
(2)また、焼結工程(S20)を有する比較的安価な積層造形法により製造された入れ子2aを用いるため、コストを低減できる。例えば、ナット20を用いずに直接的にボルトが挿入される固定用孔を有する入れ子を、安価に製造可能な積層造形法により製造しても、固定用孔が収縮により変形することにより、焼結処理後に固定用孔の精度を出すために再度加工をする必要が生じてしまうと、結局コストアップしてしまう。その点、上記第1実施形態では、焼結工程(S20)後に固定用孔10の再加工をする必要がないため、コスト低減を安定して実現できる。特に、少量生産の鋳造部品を製造する際に有用である。
(3)上記第1実施形態の入れ子2aの固定方法によれば、被係合部材としてナット20を用い、係合部材としてボルト30を用いている。このため、簡易な構成部材で容易に入れ子2aを金型1aに固定することができる。
(4)上記第1実施形態の入れ子2aの固定方法によれば、ナット固定工程(S30)では、到達工程(S31)が実行され、次に、係合工程(S32)が実行される。係合工程(S32)により、フランジ部22の長手方向の端部25が、第2孔部12の端面3側の面13に軸方向に係合するため、ナット20が軸方向に抜け落ちることを抑制できる。
B.第2実施形態:
次に、本開示の第2実施形態の入れ子2bの固定方法について、図6を参照して説明する。なお、上記第1実施形態と実質的に同一の構成については同一の符号を付し、説明を省略する。図6は、本開示の第2実施形態の入れ子2bの固定方法により、鋳造金型1bに入れ子2bを固定した状態を模式的に示す断面図である。
次に、本開示の第2実施形態の入れ子2bの固定方法について、図6を参照して説明する。なお、上記第1実施形態と実質的に同一の構成については同一の符号を付し、説明を省略する。図6は、本開示の第2実施形態の入れ子2bの固定方法により、鋳造金型1bに入れ子2bを固定した状態を模式的に示す断面図である。
図6に示すように、第2実施形態の入れ子2bは、ナット20が挿入される2つの第1固定用孔41,42に加えて、ナット20を介することなくボルト31が直接螺合する第2固定用孔43を有している。第1固定用孔41,42の構成は、上記第1実施形態の固定用孔10の構成と同様である。第2固定用孔43の内周にはねじ溝44が形成されている。
入れ子2bが焼結工程(S20)にて焼結された際の焼結収縮の中心を、図6において、収縮中心C2として図示している。この収縮中心C2は、入れ子2bの形状や炉での設置環境に応じて異なり、予めシミュレーション解析や実験等により把握される。なお、収縮中心C2は、炉内での設置状態において入れ子に均一に熱が加わる場合、入れ子の炉内での設置面に投影された入れ子の外形平面形状の図心と略一致することもある。第1固定用孔41,42は、収縮中心C2から離れた部位に位置する。第2固定用孔43は、第1固定用孔41,42と比較して、収縮中心C2寄りに位置する。
第2実施形態の入れ子2bの固定方法では、入れ子固定工程(S40)において、上記第1実施形態と同様に、金型1bの挿入孔6から金型1bを介して係合孔23まで挿入されたボルト30と、第1固定用孔41,42に固定されたナット20との締結によって入れ子2bを金型1bに固定する工程に加えて、ナット20を介することなく、第2固定用孔43に直接的に螺合するボルト30を金型1bの挿入孔6から金型1bを介して挿入して固定する工程、を含む。第2実施形態において、第1固定用孔41,42に挿入されるボルト30が、「第1係合部材」に相当し、第2固定用孔43に挿入されるボルト31が、「第2係合部材」に相当する。
例えば、入れ子2bのサイズが100mm以上のような大物であるときには、入れ子2bの収縮中心C2に近い第2固定用孔43と、収縮中心C2から遠い2つの固定用孔(第1固定用孔41,42)とでは、焼結工程(S20)を経たときの変形度合いが異なる。収縮中心C2の近傍部位と、収縮中心C2から離れた遠方部位とでは、遠方部位の方が中心近傍部位と比較して収縮率が高いためである。
よって、入れ子2bの収縮中心C2の近傍に形成される第2固定用孔43は、焼結による収縮率が小さく、変形度合いを許容範囲内に収めやすいため、ナット20を用いずに、第2固定用孔43に形成されたねじ溝24とボルト31との締結による固定手段が適用可能である。他方、収縮率が高く、ナット20を用いない固定手段の適用が困難な遠方部位については、ナット20とボルト30とを用いた固定手段を適用することが好ましい。
上記第2実施形態の入れ子2bの固定方法では、上記第1実施形態と同様の効果を奏する。さらに、上記のように、収縮の影響が少ない入れ子2bの収縮中心C2の近傍部位にある第2固定用孔43ではナット20を使用しないため、部材点数を削減でき、さらにコストを低減することができる。
C.他の実施形態:
(C1)上記各実施形態では、被係合部材として、フランジ部22と軸部21とを有するナット20を用いたが、フランジ部22を有していなくてもよく、上記形状のナット20に限られない。また、固定用孔10,41,42の形状についても、挿入されるナット20の形状に対応して固定用孔内にナット20を固定できればよく、適宜変更可能である。例えば、第2孔部12は正円形状をなすものとしたが、正円でなくてもよい。ナット20のフランジ部22が第2孔部12内で所定角度回転でき、第2孔部12から抜け落ちなければよい。
(C1)上記各実施形態では、被係合部材として、フランジ部22と軸部21とを有するナット20を用いたが、フランジ部22を有していなくてもよく、上記形状のナット20に限られない。また、固定用孔10,41,42の形状についても、挿入されるナット20の形状に対応して固定用孔内にナット20を固定できればよく、適宜変更可能である。例えば、第2孔部12は正円形状をなすものとしたが、正円でなくてもよい。ナット20のフランジ部22が第2孔部12内で所定角度回転でき、第2孔部12から抜け落ちなければよい。
(C2)さらに、固定用孔10,41,42とナット20との他の構成例としては、上記各実施形態のように、2つの孔部11,12を有し、第2孔部12内でナット20を回転させる構成に代えて、次のように構成してもよい。例えば、固定用孔10,41,42の内周に、軸方向に延びるスリット状の溝部を形成し、ナット20のフランジ部22が溝部内を挿入されて、溝部内の挿入先の端部にてナット20が係止するようにしてもよい。ここで、溝部を、ナット20の挿入先の端部へ向かうほど、深さを浅く形成しておき、ある程度ナット20が挿入された段階で徐々に溝部内でかしめられるようにして固定されるようにしてもよい。この構成によれば、回り止め機能を奏すると共に軸方向への抜けを抑制できる。また、固定用孔の内部に形成され、上記のように深さが変化する溝部を切削加工により形成するのは難しいが、積層造形では容易に製造可能である。
(C3)また、上記各実施形態では、被係合部材としてナット20を用い、係合部材としてボルト30を用いて入れ子2a,2bを金型1a,1bに固定するものとしたが、ナット20とボルト30との締結でなくてもよい。固定用孔10,41,42に挿入される被係合部材に、金型1a,1bを介して係合部材を係合させることで、入れ子2a,2bを金型1a,1bに固定できればよい。
(C4)上記各実施形態において、固定用孔10,41,42,43の個数や形成位置は上記形態に限られない。
本開示は、上記各実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する各実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
1a、1b…鋳造金型、2a、2b…入れ子、3…端面、4…キャビティ、5…外壁、6…挿入孔、10…固定用孔、11…第1孔部、12…第2孔部、13…面、20…インサートナット(被係合部材)、21…軸部、22…フランジ部、23…係合孔、24…ねじ溝、25…端部、30…ボルト(第1係合部材)、31…ボルト(第2係合部材)、32…ねじ山、41,42…第1固定用孔、43…第2固定用孔、44…ねじ溝、C1…中心軸、C2…焼結収縮の中心
Claims (5)
- 入れ子を金型に固定する入れ子の固定方法であって、
前記入れ子は、焼結工程を含む積層造形法により固定用孔を有して造形されており、
係合孔を有する被係合部材を、前記係合孔が露出するように前記固定用孔に挿入して固定する被係合部材固定工程と、
前記係合孔に係合可能な係合部材を、前記金型を介して前記係合孔に挿入して固定することにより、前記入れ子を前記金型に固定する入れ子固定工程と、
を備える入れ子の固定方法。 - 前記係合孔の内周には、ねじ溝が形成されており、
前記係合部材の外周には、前記ねじ溝と螺合するねじ山が形成されている請求項1に記載の入れ子の固定方法。 - 前記被係合部材は、筒状をなす軸部と、前記軸部の先端に外側へ突出して設けられるフランジ部と、を有して構成され、
前記固定用孔は、前記フランジ部が挿通可能に形成される第1孔部と、前記フランジ部が挿入された状態で前記フランジ部が前記軸部まわりに回転可能に形成される第2孔部と、を有し、前記被係合部材への前記係合部材の挿入方向に沿った順序で前記第1孔部と前記第2孔部とが連続して配置され、
前記被係合部材固定工程は、
前記被係合部材を前記フランジ部側から前記第1孔部に挿入し、前記フランジ部を前記第2孔部まで到達させる到達工程と、
前記到達工程の後、前記フランジ部を前記第2孔部内で前記軸部まわりに回転させることにより、前記軸部の軸方向において前記被係合部材を前記固定用孔に係合させる係合工程と、
を含む請求項2に記載の入れ子の固定方法。 - 前記入れ子は、前記固定用孔を複数有して造形されており、
前記入れ子固定工程は、
複数の前記固定用孔のうちの第1固定用孔に固定された前記被係合部材に、前記金型を介して前記係合部材である第1係合部材を挿入して固定する工程と、
複数の前記固定用孔のうちの第2固定用孔に、前記金型を介して第2係合部材を、前記被係合部材を介することなく挿入して固定する工程と、
を有し、
前記第2固定用孔は、前記第1固定用孔に比べて、前記入れ子が焼結された際の焼結収縮の中心寄りに位置する、請求項1~請求項3のうちいずれか一項に記載の入れ子の固定方法。 - 金型に固定される入れ子の製造方法であって、
前記入れ子は、係合孔を有し前記入れ子に固定される被係合部材と、前記金型を介して前記係合孔に挿入される係合部材と、の係合により、前記金型に固定されるものであり、
前記被係合部材が挿入される固定用孔を有し、前記入れ子の外形形状をなす造形体を積層造形する造形工程と、
前記造形工程において積層造形された前記造形体を焼結する焼結工程と、
を備える入れ子の製造方法。
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