JP2023060403A - スポット溶接部の検査システムおよびスポット溶接部の検査方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】スポット溶接部の不良の検出に関して、非破壊・非接触で、かつ、ロボットアームに搭載可能な大きさで検査を行う方法がなかった。【解決手段】パルスレーザ光源と撮像画像によりスポット溶接部を認識しスポット溶接部の周囲に高精度にレーザ照射を行うレーザ照射ユニットを用いて加振し、その振動音を周波数解析することによりスポット溶接部の検査を非破壊・非接触で行う方法を提供する。励起レーザ光源あるいは電源装置と屈曲性のある光ファイバーにて接続可能なパルスレーザ光源を用いることにより、ロボットアームに搭載可能な小型のスポット溶接部検査ヘッドとする。【選択図】図5
Description
スポット溶接は、自動車のシャーシを組み立てる際に薄板材料の組み立ての手法として一般的に用いられている手法である。近年、エネルギ問題、および、環境問題により自動車のシャーシには軽量化が求められる。その反面、運転者および同乗者の安全性の観点で自動車のシャーシには剛性も求められる。これらの要求により自動車のシャーシを組み立てる際に薄板材料の組み立ての手法として一般的に用いられているスポット溶接においては、高い信頼性が要求されることとなる。
図1から図3を用いて、板材1のスポット溶接の工程を示す。まず図1に示すように、スポット溶接を行う板材1aおよび板材1bの溶接を行う部分にスポット溶接機の電極7、8を配置する。次に図2に示すように、電極7、電極8により板材1aと1bを挟むとともに、電極7および電極8間に電流を注入するスポット溶接工程を実施する。電流注入により板材1aと1bが電極材7、8に押し当てられた部分が温度上昇により溶融したラゲット部分5を図3に示すように形成し、板材1aと1bは接合された構造体となる。ここで、板材1の電極7、8が押し当てられ部分にはその痕跡3、4が形成される。
図1から図3を用いて、板材1のスポット溶接の工程を示す。まず図1に示すように、スポット溶接を行う板材1aおよび板材1bの溶接を行う部分にスポット溶接機の電極7、8を配置する。次に図2に示すように、電極7、電極8により板材1aと1bを挟むとともに、電極7および電極8間に電流を注入するスポット溶接工程を実施する。電流注入により板材1aと1bが電極材7、8に押し当てられた部分が温度上昇により溶融したラゲット部分5を図3に示すように形成し、板材1aと1bは接合された構造体となる。ここで、板材1の電極7、8が押し当てられ部分にはその痕跡3、4が形成される。
図2に示したスポット溶接工程において、2つの板材1aおよび1bの表面に形成されている酸化膜が通常よりも厚い、あるいは、ごみが挟まるなどの事象、あるいは電極7、8に加える圧力あるいは電流が何等かの原因により低下するなどの事象が生じると図4に示すように想定よりも小さいラゲット部6となる場合がある。板材1aおよび1bの間に形成されるラゲット部6が、図3に示す通常のラゲット5の状態よりも小さい場合には、板材1aと1bの間の強度が不足し、シャーシの剛性の低下を生じさせることとなるので、ラゲット部6の大きさが許容範囲よりも小さい場合には不良品となる。
スポット溶接部の不良による接合部の強度低下を防止するためには、図4に示したようにラゲット部の大きさが小さいスポット溶接部を非破壊で発見できることが望ましい。
非特許文献1に示す方法においては、超音波の発振子と超音波の測定子をスポット溶接部の周囲に接触させ、スポット溶接部を透過する超音波の減衰特性を測定することによりスポット溶接部のラゲット径の測定を行っているが、多くの測定点にて超音波の測定を行う必要がある。超音波の発振子と超音波の測定子を薄板材料に安定させて接触するためには、薄板材料の変形を防止するために、薄板材料の背面に支え部材を配置する必要がある。したがって、接触式の測定を短時間で行うことは困難であるので、量産の製品のスポット溶接部の検査は非破壊・非接触の検査方法が望ましい。
非特許文献1に示す方法においては、超音波の発振子と超音波の測定子をスポット溶接部の周囲に接触させ、スポット溶接部を透過する超音波の減衰特性を測定することによりスポット溶接部のラゲット径の測定を行っているが、多くの測定点にて超音波の測定を行う必要がある。超音波の発振子と超音波の測定子を薄板材料に安定させて接触するためには、薄板材料の変形を防止するために、薄板材料の背面に支え部材を配置する必要がある。したがって、接触式の測定を短時間で行うことは困難であるので、量産の製品のスポット溶接部の検査は非破壊・非接触の検査方法が望ましい。
非接触で物体に振動を与える手法として、非特許文献2に示すレーザ加振技術がある。このレーザ加振技術はパルス時間5ナノ秒で出力が650mJというパルスレーザを物体に照射することにより、ハンマーで振動を与える方法と同様に、物体の振動特性を把握することができる方法である。そのため、非接触で物体に振動を与えることができる優れた方法であるが、レーザ光源が大型である。シャーシにおけるスポット溶接がなされている箇所は一般的に複数箇所であるため、複数個所のスポット溶接部の検査を行うためには、レーザ光源を含む測定器あるいはシャーシである測定試料のどちらかを移動させる必要があるが、測定器および測定試料がともに大型である場合は、高速測定を行うことが容易でない。さらには、スポット溶接部の検査に際してはスポット溶接部の位置を認識する必要があるが、非特許文献2に示すレーザ加振方法においては、作業者がハンマーで加振する程度の位置精度しか有していないので、レーザ光の照射位置をスポット溶接部の位置に精度よく制御することは困難である。
高田一、広瀬智行、"スポット溶接部の非破壊検査技術"、JFE技報、No.15、pp.46-49(2007年)
宮本大資、梶原逸朗、細矢直基、西留千晶、"レーザー加振技術を用いた高周波帯域の特性変動検知に基づくヘルスモニタリング"、日本機械学会論文集(C編)77巻777号、pp.1760-1771(2011年)
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、スポット溶接部の不良の検出に関して、非破壊・非接触でかつ高速に行う方法がないという課題の解決手法を提供するものである。さらには、スポット溶接部の不良の検出に際して、スポット溶接部の位置を光学カメラにより認識しレーザ光を照射することにより、個々のスポット溶接部の評価を高精度に行うことを可能にする。
かかる課題を解決するため本発明のスポット溶接部の検査システムおよびスポット溶接部の検査方法においては、電源および励起用レーザ光源部とパルスレーザ光源部が屈曲性を有する光ファイバーにより接続された構成でありパルスレーザ光源のみを検査ヘッドに配置することが可能な小型パルスレーザ光源と、スポット溶接部を光学的に認識することが可能な撮像系とレーザ光の照射位置を制御するレーザ走査系が一体化されたユニットを用いる。そして、スポット溶接部付近にパルスレーザ光を照射することによりスポット溶接がなされた板材を加振し、その加振されたことにより振動する振動音を収音機により収音し、周波数解析を行うことにより、スポット溶接部の検査システムおよびスポット溶接部の検査方法である。
本発明のスポット溶接部の検査システムおよびスポット溶接部の検査方法は、電源および励起用レーザ光源部とパルスレーザ光源部が屈曲性を有する光ファイバーにより接続された構成でありパルスレーザ光源のみを検査ヘッドに配置することが可能な小型パルスレーザ光源を用いるとともに、スポット溶接部を光学カメラにより検出し、その検出したスポット溶接部にパルスレーザ光を位置制御して照射し、スポット溶接部の加振評価を行うことから、検査を行うことができるスポット溶接部検査ヘッドの小型化と、パルスレーザ照射位置の高精度な制御が可能となっている。スポット溶接部検査ヘッドの小型化により、検査対象であるシャーシ部材を固定した状態で、スポット溶接部検査ヘッドをロボットに搭載し、順次スポット溶接個所を移動させることによりシャーシ部材のすべてのスポット溶接部の評価を行うことが可能となる。また、スポット溶接部検査ヘッド内に、パルスレーザの照射位置の制御を行う走査系を有していることから、ロボットを動かすことなく高速・高精度にパルスレーザ光を検査対象とするスポット溶接部に照射することができる。
本発明のスポット溶接部の検査システムの概略構成図を図5に示す。
本発明のスポット溶接部検査システム102は、板材1に配置されているスポット溶接部の検査を非破壊・非接触にて行うシステムである。スポット溶接部検査システム102は、スポット溶接部検査ヘッド100と、コントローラー65と、レーザ電源60と、励起レーザ光源35よりなり、コントローラー65はスポット溶接部検査ヘッド100内の各部品およびレーザ電源60と接続されてそれら部品の制御とモニターを行う。また励起レーザ光源35は、レーザ電源60より供給される電力により波長809nmの励起用レーザ光を発光し、光ファイバー34により送出することにより特許文献1に示されているように波長1064nmのパルスレーザ光源21をパルス発振させる受動Qスイッチレーザを用いる。より具体的には、このパルスレーザ光源21はパルス幅0.5ナノ秒で1パルス当たり20mJの出力であり最大繰り返し周波数20Hzのレーザを用いる。光源としていわゆるナノ秒レーザを採用する理由は、フェムト秒レーザに比較して1パルス当たりの出力が大きくレーザ加振に有利なためである。また一般的にナノ秒レーザは0.1ナノ秒から10ナノ秒までのパルス幅のレーザが多い。ここで、光ファイバー34は屈曲性を有することから、励起レーザ光源35およびレーザ電源60と、スポット溶接部検査ヘッド100とは光ファイバー34の屈曲性と長さが許す範囲で、遠隔に配置することができる。また、コントローラー65もコントローラー65とスポット溶接部検査ヘッド100内の各部品とを接続する配線の屈曲性と長さが許す範囲で、遠隔に配置することができる。
本発明のスポット溶接部検査システム102は、板材1に配置されているスポット溶接部の検査を非破壊・非接触にて行うシステムである。スポット溶接部検査システム102は、スポット溶接部検査ヘッド100と、コントローラー65と、レーザ電源60と、励起レーザ光源35よりなり、コントローラー65はスポット溶接部検査ヘッド100内の各部品およびレーザ電源60と接続されてそれら部品の制御とモニターを行う。また励起レーザ光源35は、レーザ電源60より供給される電力により波長809nmの励起用レーザ光を発光し、光ファイバー34により送出することにより特許文献1に示されているように波長1064nmのパルスレーザ光源21をパルス発振させる受動Qスイッチレーザを用いる。より具体的には、このパルスレーザ光源21はパルス幅0.5ナノ秒で1パルス当たり20mJの出力であり最大繰り返し周波数20Hzのレーザを用いる。光源としていわゆるナノ秒レーザを採用する理由は、フェムト秒レーザに比較して1パルス当たりの出力が大きくレーザ加振に有利なためである。また一般的にナノ秒レーザは0.1ナノ秒から10ナノ秒までのパルス幅のレーザが多い。ここで、光ファイバー34は屈曲性を有することから、励起レーザ光源35およびレーザ電源60と、スポット溶接部検査ヘッド100とは光ファイバー34の屈曲性と長さが許す範囲で、遠隔に配置することができる。また、コントローラー65もコントローラー65とスポット溶接部検査ヘッド100内の各部品とを接続する配線の屈曲性と長さが許す範囲で、遠隔に配置することができる。
スポット溶接部検査ヘッド100は、特許文献2に示されているイメージガイドレーザ照射ユニット101と光学レンズ33と収音機12を有し、板材1におけるスポット溶接時に電極が押し当てられた痕跡3の位置を認識し、図6に示すようにレーザ光束11を板材1に板材のほぼ法線方向より照射位置20に照射することにより加振し、振動音を収音機12により収音し、コントローラー65内で解析することによりラゲット5の大きさを推定し、スポット溶接部の検査を行う。
イメージガイドレーザ照射ユニット101には、光学レンズ33と組み合わせることにより板材1の表面状態の画像取得を行う撮像素子31が配置されている。撮像素子31により撮影光学系の光束範囲13内の板材1の表面の画像が撮影可能となっている。またイメージガイドレーザ照射ユニット101は、パルスレーザ光源21を有し、パルスレーザ光源21より出力された波長1064nmのパルスレーザ光はレンズ22および23により例えば3mmの平行ビームとされた後、ミラー36を介して、可動ミラー27に照射される。可動ミラー27は、コントローラー65から出力される電圧信号により角度が変化し、スキャンレンズ28との組み合わせにより、ミラー29により反射した後、光学レンズ33の結像位置39におけるスポット位置の調整がなされる構成である。光学レンズ33と撮像素子31との間に配置されている分光ミラーは800nmよりも短い波長を透過し、800nmよりも長い波長を反射する分光ミラー30が配置されており、パルスレーザ光源21より出射されるレーザ光は反射され可視光は透過する構成となっている。そのため、結像位置39においてスポットが形成されたパルスレーザ光は、分光ミラー30により反射した後、光学レンズ33により板材1上にスポットを形成する。板材1上に形成されるパルスレーザ光束11の位置は、コントローラー65から出力される信号により制御される可動ミラー27の角度により制御される。イメージガイドレーザ照射ユニット101内において、撮像素子31、可動ミラー27、スキャンレンズ28は、位置決め固定されており、可動ミラー27に入射するレーザ光の位置も固定されているので、結像位置39におけるスポット位置の調整がなされる可動ミラー27の位置をコントローラーが把握していれば、撮像素子31の画素との関係さらには、撮像素子31により観察される板材1の位置との関係が既知となるので撮像素子31により観察される画像からレーザ照射位置を選定することが可能となり、例えば図7に示すように、板材1におけるスポット溶接時に電極が押し当てられた痕跡3の位置を認識し、その周囲に例えば8点のパルスレーザ照射位置20を指定し、パルスレーザ照射による加振を行うことが可能となる。
また、パルスレーザ21より出力されるレーザ光は、平行光路中に配置された1/2波長板24と偏光ビームスプリッタ25により板材1に照射されるパルスレーザ光のエネルギを調整することが可能となっている。撮像素子31と分光ミラー30との間にはパルスレーザ光を吸収するフィルター32が配置されている。
パルスレーザ光の照射による加振によりスポット溶接部のラゲットの大きさの違いを検出する原理について図8、図9を用いて説明を行う。図8は良品としての十分な大きさをラゲット部5が形成された板材1にパルスレーザ拘束11を照射位置20に照射した場合である。スポット溶接により板材1aと1bはラゲット5により接合されているので、レーザ照射部20にパルスレーザ光が照射されることによるレーザ加振により生じる振動の振幅は111に示すように、レーザ加振部20において振幅が大きい腹部となり、ラゲット5により変位が拘束される節部となるので、波長は113に示す大きさとなる。
一方、図9は図8に示す十分な大きさのラゲット部5に比較して小さく不良とされるラゲット部6を有する板材1にパルスレーザ拘束11を照射位置20に照射した場合である。スポット溶接により板材1aと1bはラゲット6により接合されているので、レーザ照射部20にパルスレーザ光が照射されることによるレーザ加振により生じる振動の振幅は112に示すように、レーザ加振部20において振幅が大きい腹部となり、ラゲット6により変位が拘束される節部となるので、波長は114に示す大きさとなる。図8と図9とを比較すると、ラゲットの縮小に応じて波長が長くなることとなる。波長の違いは音の周波数が違うことを意味するので、レーザ加振により生成する振動音を収集し、その周波数の違いから波長の違いがあること検出する。
図10は、収音機12により検出した振動音から周波数の違いを検出し、良品かどうかの判定を行うブロック図である。まず収音機12により収集された振動音はコントローラー65内のA/D変換器51によりデジタル信号とされた後、高速フーリエ変換機FFT52により周波数情報とされ判定装置53に転送される。
図7に示すレーザ照射位置20にパルスレーザ光を照射しレーザ加振を行った場合において判定装置53内での判定例を図11に示す。電極痕3の周囲に電極痕3からの距離が均等なレーザ照射位置20とした場合に、ラゲット5の形状が円形であり、かつ電極痕3の直下に形成されているとすると、検出される振動音の周波数は同一となるはずであるが、ばらつきは存在するので、同一条件の材質およびスポット溶接条件にて製作した試験片から計測した振動音およびラゲットサイズの情報から求めた良品としての周波数の下限値FC1と上限値FC2の間に計測された振動音が入っていれば良品と判定する。
ラゲットのサイズが小さい試料を計測した際には、図9に示したように波長の長い成分が存在するので、図12に示すように良品としての周波数の下限値FC1よりも低い周波数の成分が出現するので、不良と判定する。
ラゲットのサイズが小さい試料を計測した際には、図9に示したように波長の長い成分が存在するので、図12に示すように良品としての周波数の下限値FC1よりも低い周波数の成分が出現するので、不良と判定する。
図7においては、レーザ光の照射位置20を電極痕3の周囲の8か所とした例を示したが、図13に示すように電極痕3の上にレーザ光の照射位置20を加えることも可能である。この場合には電極痕3の上にレーザ光を照射しレーザ加振を行う場合の周波数は、電極痕3の周囲にレーザ加振を行った場合の周波数とは異なるので、別の判定基準となる。
本発明のスポット溶接部の検査システムおよびスポット溶接部の検査方法においては、レーザ光の照射位置20の指定が重要であるので、電極痕3の位置の認識方法について説明を行う。電極痕3の位置の認識は、図5に示すLED光源41、42およびLEDレンズ43、44を用いた斜光照明を行うLED照明光束45、46を用いる。ここで、LED41およびLED42による照明は、電極痕3に対して対向する位置に配置されているとともに、可視光の波長である。
まず、図14に示すように第1のLEDアームに搭載されている第1のLED41を発光させ、レンズ43によりLED照明光束45を電極痕3部分の斜めからの照明となるようにする。この状態において撮像素子31により画像を撮影すると図15に示すように、電極痕3の上側が電極痕3の周囲部分87の明るさよりも明るい領域81となり電極痕3の下側が電極痕3の周囲部分87の明るさよりも暗い領域83となる。また電極痕3のほぼ中心には、電極痕3の周囲部分87の明るさとほぼ同等の明るさの領域85が出現する。
図16を用いて電極痕3の部分に明るさの明暗ができる理由を説明する。電極痕3の周囲の部分は無垢の状態であるため、板材1aの素材としてのある程度荒れた面からの乱反射光50が光学レンズ33を介して撮像素子31に入射しある程度の輝度となる。電極痕3は図16の示すように曲率を有する形状であるので、電極痕3の上側の部分、第1のLED41よりも遠い側の部分である3aは、LED照明光束45に対して電極痕3の周囲の部分に比較して大きな角度をもっているので、その部分から発生する乱反射光49は電極痕3の周囲の部分からの反射光50よりも明るくなり撮像素子31に入射することとなるので、明るい領域81として撮像素子に撮影される。次に電極痕3の下側の部分、第1のLED41に近い側の部分である3bは、LED照明光束45に対して電極痕3の周囲の部分に比較してより浅い角度をもっているので、この例においては、LED照明光束45とほぼ平行となっているので、その部分から発生する乱反射光はほとんどないため、電極痕3の周囲の部分に比較して暗い領域83となる。
次に図17に示すように第2のLEDアーム48に搭載されている第2のLED42を発光させ、レンズ44によりLED照明光束46を電極痕3部分の斜めからの照明となるようにする。この状態において撮像素子31により画像を撮影すると図18に示すように、電極痕3の上側が電極痕3の周囲部分88の明るさよりも暗い領域84となり電極痕3の下側が電極痕3の周囲部分88の明るさよりも明るい領域82となる。また電極痕3のほぼ中心には、電極痕3の周囲部分88の明るさとほぼ同等の明るさの領域86が出現する。したがって、図15と図18を比較すると電極痕3の部分において明るくなる領域と暗くなる領域が入れ替わっている。図18において電極痕3の上側が暗い領域84となり電極痕3の下側が明るい領域82となる理由は、図16に示した理由と同等であるので説明を省略する。
ここで、図15に示した画像と図18に示した画像の比較を行い、輝度の増加あるいは輝度の減少が大きい部分を斜線で塗りつぶした画像を図19に示すが、輝度の増加あるいは輝度の減少が生じたエリアはいずれも電極痕3の内部であるので、斜線でしめされた部分89の外形をつなげることにより電極痕3の外形を高精度に得ることができる。
本発明のスポット溶接部の検査システムおよびスポット溶接部の検査方法においては、図14から図18に示した方法により、電極痕3の外形を高精度に得ることができ、図7および図13に示すようにパルスレーザ光の照射位置20を高精度に指定することができることとなる。パルスレーザ光の照射位置20を電極痕3の位置に対して高精度に指定し照射できることから、スポット溶接部が良品である場合の振動音の周波数のばらつきを小さくすることができ、スポット溶接が良品である場合と不良である場合の差異を明確に得ることができることとなる。
本発明のスポット溶接部の検査システムおよびスポット溶接部の検査方法において、電極痕3の位置情報を図18に示すように撮像素子にて取得した後に、パルスレーザ光源21とパルスレーザの照射位置の制御を行う可動ミラー27およびレーザ照射により生成する振動音の収音を行う収音機12が連携して動作するので、これらデバイスの制御方法の説明を行う。
図20には、これらデバイスの制御方法のブロック図を示す。まず、図18に示したLED光源の斜光照明により得た電極痕3の外形位置情報からスポット溶接中心位置情報として電極痕3の外形位置情報から電極痕3の中心位置を取得する工程91を行う。電極痕3の外形位置情報から電極痕3の中心位置を取得する演算方法は、単純に外形稜線の画素位置情報を平均化する方法などによっても求めることができる。次にレーザ光照射位置のピクセル位置を求める工程92を行う。本発明のスポット溶接部の検査システムおよびスポット溶接部の検査方法においては、光学レンズの焦点調整工程を省略すること、および、斜光照明の条件を一定にすることを目的としてスポット溶接部検査ヘッド100と試料1との距離は一定として状態で使用しているため、レーザ光照射位置の各ピクセル位置は、工程91で求めた電極痕3の中心位置座標に所定の数値の加算および減算工程で求めることができる。次に各レーザ光照射位置のピクセル位置座標に応じた可動ミラー27の電圧値の算出工程93を行う。前述したようにイメージガイドレーザ照射ユニット101内において、撮像素子31、可動ミラー27、スキャンレンズ28は、位置決め固定されており、可動ミラー27に入射するレーザ光の位置も固定されているので、撮像素子31の画素情報と可動ミラーに加える信号値との関係さらには、撮像素子31により観察される板材1の位置との関係は既知であるので、その関係により可動ミラー27のX軸方向およびY軸方向の電圧信号値を求めることができる。
次に、可動ミラー27を制御する電圧値およびパルスレーザ21の発光タイミング、収音機12の信号取得開始、終了のタイミングを時間波形として得る工程94を行う。図21に示す9個のレーザ照射位置20a~20iにレーザ照射を行う場合の時間波形の例を図22に示す。
図22には上より、可動ミラー27のX軸方向の電圧値の時間的変化、可動ミラー27のY軸方向の電圧値の時間的変化、パルスレーザ21の発光タイミング、収音機12の信号取得タイミングを記載した例であるとともに破線a~破線iは、それぞれ図21に示すレーザ照射位置20aから20iにレーザを照射するタイミングを示したものである。可動ミラー27の移動には2ミリ秒程度の移動時間が必要なため、可動ミラー27のX軸方向の電圧値の時間的変化、可動ミラー27のY軸方向の電圧値の時間的変化はパルスレーザの発光時よりも前に移動が開始され、レーザ発光時にはそれぞれの位置でミラーが停止しているように制御がなされる。また収音機12は、最初の点である20aのレーザパルスが発光される前に収音開始とされ、最後の点である20iのレーザパルスが発光されその振動音の取得が終了した後に収音停止がなされるようなタイミングとしている。本発明のスポット溶接部の検査システムおよびスポット溶接部の検査方法においては、ラゲットの不良情報は、スポット溶接部ごとに得られればよく、ラゲットの不良時の方向情報は不要であり、スポット溶接部の不良が発見できれば良いので、収音機12は、最初の点である20aのレーザパルスが発光される前に収音開始とされ、最後の点である20iのレーザパルスが発光されその振動音の取得が終了した後に収音停止がなされるようなタイミングとした。
図22には上より、可動ミラー27のX軸方向の電圧値の時間的変化、可動ミラー27のY軸方向の電圧値の時間的変化、パルスレーザ21の発光タイミング、収音機12の信号取得タイミングを記載した例であるとともに破線a~破線iは、それぞれ図21に示すレーザ照射位置20aから20iにレーザを照射するタイミングを示したものである。可動ミラー27の移動には2ミリ秒程度の移動時間が必要なため、可動ミラー27のX軸方向の電圧値の時間的変化、可動ミラー27のY軸方向の電圧値の時間的変化はパルスレーザの発光時よりも前に移動が開始され、レーザ発光時にはそれぞれの位置でミラーが停止しているように制御がなされる。また収音機12は、最初の点である20aのレーザパルスが発光される前に収音開始とされ、最後の点である20iのレーザパルスが発光されその振動音の取得が終了した後に収音停止がなされるようなタイミングとしている。本発明のスポット溶接部の検査システムおよびスポット溶接部の検査方法においては、ラゲットの不良情報は、スポット溶接部ごとに得られればよく、ラゲットの不良時の方向情報は不要であり、スポット溶接部の不良が発見できれば良いので、収音機12は、最初の点である20aのレーザパルスが発光される前に収音開始とされ、最後の点である20iのレーザパルスが発光されその振動音の取得が終了した後に収音停止がなされるようなタイミングとした。
図23には、スポット溶接部検査ヘッド100をロボット62のロボットアーム61に搭載した例を示す。LED搭載アーム47、48、および収音機12、およびイメージガイドレーザ照射ユニット101よりなるスポット溶接部検査ヘッド100をロボットアーム61に搭載することにより板材1に広く形成されている各スポット溶接部を個別に検査することができる。図23は、スポット溶接部3aの評価ができるようにロボットアーム61が移動後に停止している状態を示しており、スポット溶接部検査ヘッド100における撮像素子31による撮影範囲14がスポット溶接部3aを撮影できる位置となっている。本発明の本発明のスポット溶接部の検査システムおよびスポット溶接部の検査方法においては、レーザ照射位置の指定と、スポット溶接部検査ヘッド100における撮像素子31により撮影された画像情報を用い可動ミラー27により行うので、ロボットアーム61による位置精度に高精度な位置決め精度が要求されないという特徴がある。しかし、スポット溶接部検査ヘッド100と板材1aとの間の距離が変化すると、光学レンズの焦点状態の変化、および、撮影倍率に変化が生じるので、ロボットアームの位置精度が十分でない場合には、スポット溶接部検査ヘッド100と板材1aとの間の距離を一定にするために、測距ユニット63を用いて補正アクチュエーター64を動作し、スポット溶接部検査ヘッド100と板材1aとの間の距離を一定にすることが望ましい。測距ユニット63には、例えば特許文献3に示すTOFセンサーなどを採用する。
図24、図25にロボットアーム61に搭載される部材を示す。図24はロボットアーム61を上面から見た図であり、図25はロボットアーム61を側面から見た図である。ロボットアーム61上にはLED搭載アーム47、48、および収音機12、およびイメージガイドレーザ照射ユニット101、測長ユニット63および補正アクチュエーター64が搭載されているが、4つの収音機12a~12dが搭載されている。収音機12dは、上面図図24においては12bと重なり、側面図図25においては12cと重なっているために、指示はできていない。4つの収音機を採用している理由は、レーザ照射位置が光学レンズ33の正面にあるとは限らないためであり、位置がシフトすることによる収音特性の低下を防ぐためである。収音機を4つとした場合においても検出した振動音から周波数の違いを検出し、良品かどうかの判定を行うフローは図10に示したブロック図変わらないが、図26に示すように、4つの収音機12により収集された振動音はコントローラー65内のA/D変換器51a~51dによりデジタル信号をされた後、高速フーリエ変換機FFT52a~52dにより周波数情報とされ判定装置54に転送されるフローとなっている。
図27は、図23に示した位置からロボットアーム61が移動し、スポット溶接部3bの評価ができる位置に停止している状態を示している。スポット溶接が複数なされた部材のスポット溶接部の検査を行うフローを図28に示す。スポット溶接がなされる個所の位置情報を、図面データより入手し、ロボットアーム61を各スポット溶接部の検査が可能なように移動させる工程71がなされる。本発明のスポット溶接部の検査システムおよびスポット溶接部の検査方法において、可動ミラー27によりレーザ照射位置の精密調整がなされるので、ロボットアーム61の位置精度にはさほどの高精度な位置合わせは要求されない。次に測距ユニットの信号を用いた距離の調整工程72が行われる。次に図14~図19に示した斜光照明を用いたスポット溶接個所の認識工程73がなされたのち、可動ミラー27、パルスレーザ21、収音機12が連携して動作するレーザ光照射により加振と振動音の収音工程74がなされる。その後収集した振動音の周波数解析工程75がなされ、その解析結果から良品であるか不良品であるのかの判定工程76がなされ、1つのスポット溶接部の検査が終了する。
図29~図32にLED照明光束45、46を用いたスポット溶接部の認識方法の他の例を示す。スポット溶接部に形成されるラゲット部は、スポット溶接を行う材質およびそのスポット溶接条件により板材の表面に至るとともに光沢部があるラゲット部9が表面に形成される場合がある。この場合においては、スポット溶接部の認識方法が図14~図18に示した方法と異なり、図29に示すように第1のLED41を発光させた場合における撮像素子31の画像の概略図を図30に示すが、光沢を有している部分はLED光を反射してしまうので、撮像素子31に光が入射しない場合があるので、電極痕3の部分95は、電極痕3の周囲部分87の輝度よりも暗くなる場合がある。また、図31に示すように第2のLED42を発光させた場合における撮像素子31の画像の概略図を図31に示すが、この場合においても同様に光沢を有している部分はLED光を反射してしまうので、撮像素子31に光が入射しない場合があるので、電極痕3の部分96は、電極痕3の周囲部分88の輝度よりも暗くなる場合がある。このようにスポット溶接の電極痕3の部分がどのような輝度で観察されるかは材料条件およびスポット溶接の条件により異なるので、電極痕3の認識における判定方法は材料条件およびスポット溶接の条件によりそれぞれの条件に適した方法を選択する必要がある。
本発明は、スポット溶接がその製造工程に用いられる自動車産業あるいは航空機産業などにおける品質検査工程に適応可能であり、この安全性能の向上などに貢献する。
1……板材、7、8……電極、5、9……ラゲット、6……ラゲット(不良)、3、4……くぼみ(電極痕)、 11……レーザ光束、12……収音機、13……撮影光学系の光束、14……撮影範囲、20……レーザ照射位置、21……光源、22、23、28……レンズ、24……波長板、25……PBS、26、29……ミラー、27……可動ミラー、30……分光ミラー、31……撮像素子、32……吸収フィルター、33……撮像レンズ、34……光ファイバー、35……励起レーザ光源、39……結像位置、41、42……LED、43、44……LEDレンズ、45、46……LED照明光束、47、48……LED搭載アーム、49、50……撮像素子に入射するLEDの反射光、51……A/D変換装置、52……FFT、53、54……判定装置、60……レーザ電源、61……ロボットアーム、62……ロボット、63……測距ユニット、64……補正アクチュエーター,65……コントローラー、71……ロボットアーム移動工程、72……ロボットアーム距離調整工程、73……スポット溶接位置認識工程、74……レーザ照射による加振と振動音の収音工程、75……収音データの周波数解析、76……良品/不良判定、81、82……LED照明時に明るい部分、83、84、95、96……LED照明時に暗い部分、85、86、87、88……LED照明時に中間輝度部分、89……輝度差の多い部分、90……輝度差の少ない部分、91……溶接部中心位置算出工程、92……レーザ照射位置算出工程、93……可動ミラー電圧算出工程、94……時系列信号生成工程、100……スポット溶接部検査ヘッド、101……イメージガイドレーザ照射ユニット、102……スポット溶接部検査システム、111、112……振動の振幅、113、114……振動の波長
Claims (15)
- スポット溶接がなされた板状試料のスポット溶接部の不良を検出する検査システムにおいて、
画像情報を取得する撮像素子と、
撮像素子により板状試料におけるスポット溶接部の位置を認識する画像を撮影する際に用いる光学レンズと、
パルスレーザ光源と、
パルスレーザ光源より出射されたパルスレーザ光の板状試料における照射位置を調整することが可能な可動ミラー装置と、
パルスレーザ光の板状試料への照射により生じる振動音を収集する収音装置と、
収音装置により収集された振動音の周波数を取得する周波数解析装置と、
周波数情報からスポット溶接部の不良を検出する解析装置よりなるスポット溶接部の検査システム。 - 上記スポット溶接部の検査システムにおいて、斜光照明を行う照明装置を有することを特徴とする請求項1に記載のスポット溶接部の検査システム。
- 上記スポット溶接部の検査システムにおいて、上記パルスレーザ光源から上記板状試料に至るパルスレーザ光の光路に、上記光学レンズを含むことを特徴とする請求項1あるいは請求項2に記載のスポット溶接部の検査システム。
- 上記スポット溶接部の検査システムにおいて、上記可動ミラーの制御は、上記撮像素子により撮影された画像より生成された情報により制御がなされることを特徴とする請求項1より3のいずれかに記載のスポット溶接部の検査システム。
- 上記スポット溶接部の検査システムにおいて、上記パルスレーザ光源は、パルス発光時間が0.1ナノ秒から10ナノ秒の範囲であるナノ秒パルスレーザであることを特徴とする
請求項1より4のいずれかに記載のスポット溶接部の検査システム。 - 上記スポット溶接部の検査システムにおいて、上記パルスレーザ光源は、励起用光源とパルスレーザ発振部が屈曲性を有する光ファイバーにより接続された光源であることを特徴とする請求項1より5のいずれかに記載のスポット溶接部の検査システム。
- 上記スポット溶接部の検査システムにおいて、上記撮像素子と、上記光学レンズと、上記パルスレーザ光源と、上記可動ミラー装置と、上記収音装置と、上記照明装置は、3次元的に移動が可能な可動部に搭載されていることを特徴とする請求項1より6のいずれかに記載のスポット溶接部の検査システム。
- スポット溶接がなされた板状試料のスポット溶接部の検査方法において、
撮像素子と光学レンズにより、スポット溶接がなされた板状試料のスポット溶接部の位置情報を取得し、
スポット溶接部の位置情報からパルスレーザ光の照射位置を決定し、
パルスレーザ光をスポット溶接がなされた板状試料の略法線方向より照射し、
パルスレーザ照射により生じる振動音を収集し、
収集した振動音の周波数情報を解析することにより、
スポット溶接の不良を検出することを特徴とするスポット溶接部の検査方法。 - 上記スポット溶接部の検査方法において、上記撮像素子と上記光学レンズにより、スポット溶接がなされた板状試料のスポット溶接部の位置情報の取得は、斜光照明を用いた撮影により取得することを特徴とする請求項8に記載のスポット溶接部の検査方法。
- 上記スポット溶接部の検査方法において、上記斜光照明を用い撮像素子と光学レンズにより、スポット溶接がなされた板状試料のスポット溶接部の位置情報の取得は、異なる斜光照明光源により撮影した複数の画像の比較により取得することを特徴とする請求項8あるいは請求項9に記載のスポット溶接部の検査方法。
- 上記スポット溶接部の検査方法において、上記パルスレーザ光をスポット溶接がなされた板状試料への照射位置の制御は、上記可動ミラーの角度を制御することによりなされることを特徴とする請求項8より10のいずれかに記載のスポット溶接部の検査方法。
- 上記スポット溶接部の検査方法において、上記パルスレーザ光は、スポット溶接がなされた板状試料のスポット溶接部の位置情報を取得する際に用いる上記光学レンズを介して、板状試料への照射がなされることを特徴とする請求項8より11のいずれかに記載のスポット溶接部の検査方法。
- 上記スポット溶接部の検査方法において、上記パルスレーザは、パルス発光時間が0.1ナノ秒から10ナノ秒の範囲であるナノ秒パルスレーザであることを特徴とする請求項8より12のいずれかに記載のスポット溶接部の検査方法。
- 上記スポット溶接部の検査方法において、上記パルスレーザ光のスポット溶接がなされた板状試料への照射位置は、板状試料のスポット溶接部の周囲の複数個所を含む照射位置であることを特徴とする請求項8より13のいずれかに記載のスポット溶接部の検査方法。
- 上記スポット溶接部の検査方法において、上記撮像素子と、上記光学レンズと、上記パルスレーザ光源と、上記可動ミラー装置と、上記収音装置と上記照明装置は、3次元的に移動が可能な可動部に搭載され、3次元的に移動が可能な可動部を可動させることにより、スポット溶接がなされた板状試料における検査を順次行うことを特徴とする請求項8より14のいずれかに記載のスポット溶接部の検査方法。
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