JP2023059655A - ペプチド及びその応用 - Google Patents

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Mitsuo Yamashita
彰 三浦
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Abstract

【課題】本開示は、銅鉱石を分離する方法を提供することを目的とする。【解決手段】一側面において、本開示は、以下のアミノ酸配列を含むペプチドを提供する。(Thr、Ser)-(Thr、Ser)-(Leu、Ile、Val、Ala)-Pro-His-Tyr-(Arg、Lys)-(Leu、Ile、Val、Ala)-Gly-(Asp、Glu)-Gly{ただし、上記式の()中の少なくとも1種のアミノ酸のいずれか1つが選択される}【選択図】なし

Description

本開示は、ペプチド及びその応用に関する。より具体的には、本開示は、新規ペプチド及び、当該ペプチドを利用して特定の鉱物を分離することを目的とした応用に関する。
銅鉱石は、酸化銅鉱、二次硫化銅鉱、一次硫化銅鉱などに分類することができる。酸化銅鉱は、硫酸に溶けやすい性質を有する。二次硫化銅鉱は、例として、以下の物を含むことができる:輝銅鉱(Chalcocite)、銅藍(Covellite)等。二次硫化銅鉱は、シアン化ナトリウム溶液に溶けやすい性質を有する。また、二次硫化銅鉱は、鉄(III)イオンを含む溶液に溶けやすい性質を有する。一次硫化銅鉱は、例として、以下の物を含むことができる:斑銅鉱(Bornite)、黄銅鉱(Chalcopyrite)、硫砒銅鉱(Enargite)等。一次硫化銅鉱は、難溶性の鉱物として知られており、上述した硫酸、シアン化ナトリウム溶液、鉄(III)イオンを含む溶液には溶けにくい。その代り、一次硫化銅鉱は、硝酸及び過塩素酸を含む溶液に溶けやすい性質を有する。また、一次硫化銅鉱は、鉄(III)イオンとヨウ化物イオンとを含む溶液に溶けやすい性質を有する。
特許文献1では、黄銅鉱に結合するペプチドが開示されており、これを用いて、硫砒銅鉱と黄銅鉱とを分離することを開示している。
特許文献2では、硫砒銅鉱等に結合するペプチドが開示されており、これを用いて、ヒ素を含む鉱物を効率的に分離することが開示している。
特開2018-135279号公報 国際公開第2020/085219号
上述したように、銅鉱石は沢山の種類がある。鉱床から採掘される際には、様々な種類の鉱石の混合物として採掘される。そして、硫化鉱の中には、ヒ素を含む鉱物がある(例えば、硫砒銅鉱)。黄銅鉱は、硫砒銅鉱とともに混合された状態で採掘されることが多い。しかし、硫砒銅鉱は環境に有害なヒ素を含むという理由から、黄銅鉱と硫砒銅鉱とを分離する技術が必要とされる。その一方で、黄銅鉱と硫砒銅鉱は浮遊特性が似ている。例えば、浮遊選鉱した場合、黄銅鉱と硫砒銅鉱は、両方とも浮鉱として分配される傾向がある。特許文献1では、黄銅鉱に特異的に結合するペプチドが開示されているが、依然として改良の余地があった。
以上の事情に鑑み、本開示は、新たなペプチドを用いて銅鉱石を分離する方法を提供することを目的とする。
本発明者が鋭意検討したところ、特許文献1に記載されたペプチドとは異なる新たなペプチドを見出した。より具体的には、新たなペプチドでは、黄銅鉱に特異的に結合する性質があることを見出した。
上記知見に基づいて発明が完成され、本開示は、一側面において、以下の発明を包含する。
(発明1)
以下のアミノ酸配列を含むペプチド。
(Thr、Ser)-(Thr、Ser)-(Leu、Ile、Val、Ala)-Pro-His-Tyr-(Arg、Lys)-(Leu、Ile、Val、Ala)-Gly-(Asp、Glu)-Gly
{ただし、上記式の()中の少なくとも1種のアミノ酸のいずれか1つが選択される}
(発明2)
以下のアミノ酸配列、又は、当該配列から、1~2個のアミノ酸が挿入、欠失、置換及び/若しくは付加されることによって生じる配列を含むペプチド。
Ser-Ser-Ala-Pro-His-Tyr-Arg-Val-Gly-Asp-Gly(配列番号1)
(発明3)
発明2のペプチドであって、上記配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも90%同一である配列を含むペプチド。
(発明4)
発明2のペプチドであって、上記配列番号1のアミノ酸配列を、以下から選択される1又は2の置換に従って置換することによって生じる配列を含むペプチド。
・Ser⇒Thr
・Ala⇒Leu、Ile、Valのうちいずれか1つ
・Arg⇒Lys
・Val⇒Leu、Ile、Alaのうちいずれか1つ
・Asp⇒Glu
(発明5)
発明2のペプチドであって、上記配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチド。
(発明6)
発明5のペプチドであって、上記配列番号1のアミノ酸配列で表されるペプチド。
(発明7)
発明1~6のいずれか1つに記載のペプチドであって、N末端及び/又はC末端にアルキル基が付加されたペプチド。
(発明8)
発明7のペプチドであって、N末端にアルキル基が付加されたペプチド。
(発明9)
発明7又は8のペプチドであって、前記アルキル基の炭素数がC6~C18であるペプチド。
(発明10)
発明9のペプチドであって、前記アルキル基の炭素数がC10~C14であるペプチド。
(発明11)
発明1~10のいずれか1つに記載のペプチドであって、鉄と銅を含む鉱物に結合することができる、ペプチド。
(発明12)
鉄と銅を含む鉱物を選別するための組成物であって、発明1~11のいずれか1つに記載のペプチドを含む、該組成物。
(発明13)
鉄と銅を含む鉱物を選別するための、発明1~11のいずれか1つに記載のペプチドの使用。
(発明14)
発明1~11のいずれか1つに記載のペプチドをコードする核酸、又は、当該核酸の配列と少なくとも90%以上同一の配列を有する核酸。
(発明15)
発明1~11のいずれか1つに記載のペプチドをコードする核酸の相補配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸。
(発明16)
発明1~11のいずれか1つに記載のペプチドを表面に含む、及び/又は、発明14又は15の核酸を含む微生物。
(発明17)
発明1~11のいずれか1つに記載のペプチドを表面に有する沈降用粒子。
(発明18)
発明1~11のいずれか1つに記載のペプチドを含むクロマトグラフィー用カラム。
(発明19)
発明1~11のいずれか1つに記載のペプチドを含む浮遊選鉱用抑制剤。
(発明20)
発明17の沈降用粒子を使用する、鉄と銅を含む鉱物を回収するための方法であって、前記方法は、
前記沈降用粒子を、分散液に添加するステップであって、前記分散液は、ヒ素を含む鉱物と、鉄と銅を含む鉱物とを含む、ステップと、
前記鉄と銅を含む鉱物を沈降させるステップと、
沈降物を回収するステップと、
前記沈降物を固液分離して、固体側を回収するステップと、
を含む方法。
(発明21)
発明18のクロマトグラフィー用カラムを使用する、鉄と銅を含む鉱物を回収するための方法であって、前記方法は、
分散液を前記カラムに通過させるステップであって、前記分散液は、ヒ素を含む銅鉱物と、鉄と銅を含む鉱物とを含む、ステップ
を含む方法。
(発明22)
発明19の浮遊選鉱用抑制剤を使用する、鉄と銅を含む鉱物を回収するための方法であって、前記方法は、
ヒ素を含む鉱物と鉄と銅を含む鉱物との混合物を提供するステップと、
前記浮遊選鉱用抑制剤を提供するステップと、
前記混合物と前記浮遊選鉱用抑制剤を浮遊選鉱槽に投入するステップと、
前記浮遊選鉱槽から尾鉱を回収するステップと、
を含む方法。
(発明23)
発明22の方法であって、前記方法は、前記浮遊選鉱槽に投入するステップの前に、脱離処理を行うステップを更に含む方法。
(発明24)
発明23の方法であって、前記脱離処理を行うステップが、無機塩で処理することを含む、方法。
(発明25)
発明24の方法であって、前記脱離処理における前記無機塩の濃度が、3~5Mである、方法。
(発明26)
発明24又は25の方法であって、前記無機塩がNaClである、方法。
(発明27)
発明22~26のいずれか1つに記載の方法であって、前記方法は、捕収剤を投入するステップを更に含む方法。
(発明28)
発明27の方法であって、前記浮遊選鉱槽における前記捕収剤の濃度が、30~60g/t oreである、方法。
(発明29)
発明27又は28の方法であって、前記捕収剤が、PAX(Potassium Amyl Xanthate)である、方法。
(発明30)
発明22~29のいずれか1つに記載の方法であって、前記浮遊選鉱槽における前記ペプチドの濃度が、5~500g/t oreである、方法。
(発明31)
発明20~30のいずれか1つに記載の方法であって、
前記ヒ素を含む銅鉱物が、硫砒銅鉱を含み、
前記鉄と銅を含む鉱物が、黄銅鉱とを含む、
方法。
一側面において、上記発明は、以下のアミノ酸配列を含むペプチドである。
(Thr、Ser)-(Thr、Ser)-(Leu、Ile、Val、Ala)-Pro-His-Tyr-(Arg、Lys)-(Leu、Ile、Val、Ala)-Gly-(Asp、Glu)-Gly
ここで、上記式の()中の少なくとも1種のアミノ酸のいずれか1つが選択される。
別の一側面において、上記発明は、以下のアミノ酸配列を含むペプチドである。
Ser-Ser-Ala-Pro-His-Tyr-Arg-Val-Gly-Asp-Gly(配列番号1)
更に別の一側面において、上記発明は、上記配列番号1のアミノ酸配列から、1~2個のアミノ酸が挿入、欠失、置換及び/若しくは付加されることによって生じる配列を含むペプチドである。
これらのペプチドによって、ヒ素を含む銅鉱物と鉄と銅を含む鉱物とを良好に分離することができる。
ハリモンドチューブを用いた試験における硫砒銅鉱と黄銅鉱の分離効率の結果を示す。横軸は、時間(分)を表し、縦軸は分離効率(%)を表す。 ハリモンドチューブを用いた試験における硫砒銅鉱と黄銅鉱の分離効率の結果を示す。横軸は、時間(分)を表し、縦軸は分離効率(%)を表す。 ハリモンドチューブを用いた試験における硫砒銅鉱と黄銅鉱の分離効率の結果を示す。横軸は、時間(分)を表し、縦軸は分離効率(%)を表す。 ハリモンドチューブを用いた試験において、フロス及び尾鉱で回収された鉱物をSEM-EDXで分析した結果を示す。 カラム浮遊選鉱試験において、フロスで回収された元素の量を示す。条件は以下の3通り:(1)脱離処理なし、添加ペプチド0g/t ore;(2)脱離処理あり、添加ペプチド0g/t ore;(3)脱離処理あり、添加ペプチド5g/t ore。 カラム浮遊選鉱試験において、フロスで回収された元素の量と、尾鉱で回収された元素の量とに基づいて算出された分離効率を示す。条件は以下の3通り:(1)脱離処理なし、添加ペプチド0g/t ore;(2)脱離処理あり、添加ペプチド0g/t ore;(3)脱離処理あり、添加ペプチド5g/t ore。
以下、発明を実施するための具体的な実施形態について説明する。以下の説明は、発明の理解を促進するためのものである。即ち、発明の範囲を限定することを意図するものではない。
1.適用対象の物質
一実施形態において、本開示はペプチドに関する。本開示のペプチドは、一実施形態において、特定の物質を分離する方法に適用することができる。特定の物質として、銅を含む鉱物が挙げられる(例えば、硫化銅鉱)。更に具体的には、ヒ素を含まない銅鉱物が挙げられる。ヒ素を含まない銅鉱物としては、鉄と銅を含む鉱物が含まれ、具体的な例としては、黄銅鉱等が含まれる。好ましくは、本開示は、ヒ素を含む銅鉱物とヒ素を含まない銅鉱物との混合物から、ヒ素を含まない銅鉱物を分離する方法に適用することができる。
ヒ素を含む銅鉱物は、特に限定されないが、例えば、砒四面銅鉱、ルゾン銅鉱、硫砒銅鉱が挙げられる。砒四面銅鉱、ルゾン銅鉱、硫砒銅鉱は、ヒ素を含まない銅鉱物(例えば、黄銅鉱)とともに採掘されることが多い。従って、黄銅鉱を、ヒ素を含む銅鉱物から分離することが望まれる。
なお、本明細書で述べる鉱物は、特に限定されず、粗鉱(Ore)であってもよく、精鉱(Concentrate)であってもよい。また、本明細書で述べる鉱物は、加工が行われていない原材料であってもよく、或いは、破砕などの加工が行われた材料であってもよい。
2.ペプチド
上述した物質を分離するため、本開示のペプチドは、少なくとも以下の配列を含むペプチドを用いることができる。典型的には、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20のうちから選択される2つの数で規定される範囲(例:1以上10以下、5以上20以下)のアミノ酸を下記のアミノ酸配列のN末端側及び/又はC末端側に付加することができる。
(1)(Thr、Ser)-(Thr、Ser)-(Leu、Ile、Val、Ala)-Pro-His-Tyr-(Arg、Lys)-(Leu、Ile、Val、Ala)-Gly-(Asp、Glu)-Gly
{ただし、上記式の()中の少なくとも1種のアミノ酸のいずれか1つが選択される}
後述する実施例においては、以下のアミノ酸配列のペプチドを用いて、黄銅鉱を硫砒銅鉱から分離した例が示されている。
(2)Ser-Ser-Ala-Pro-His-Tyr-Arg-Val-Gly-Asp-Gly(配列番号1)
上記(1)に記載のアミノ酸配列と、上記(2)に記載のアミノ酸配列とを対比させると以下の通りとなる。
Figure 2023059655000001
表1に示すように、配列(2)1番目はセリンである。セリンは、アミノ酸の側鎖として、ヒドロキシメチル基を有する。そして、スレオニンは、アミノ酸の側鎖として、ヒドロキシエチル基を有する。したがって、セリンとスレオニンは、アミノ酸の側鎖の構造が類似している。よって、セリンとスレオニンを相互に変換しても同様の効果が得られる蓋然性が高い。配列(2)2番目のセリンも同様の理論が当てはまる。
配列(2)3番目はアラニンである。アラニンは、疎水性の側鎖(より具体的にはメチル基)を有する。従って同様の性質を持つ、ロイシン(側鎖としてイソブチル基)、イソロイシン(側鎖としてsec-ブチル基)、バリン(側鎖としてイソプロピル基)に置換しても同様の効果を有すると考えられる。配列(2)8番目のバリンも同様の理論が当てはまる。
配列(2)7番目は、アルギニンである。アルギニンは、塩基性の側鎖を有する。従って、塩基性アミノ酸としての観点から、リシンに置換しても同様の効果が得られる蓋然性が高い。
配列(2)の10番目は、アスパラギン酸である。アスパラギン酸は、アミノ酸の側鎖として、メチルカルボキシル基を有する。そして、グルタミン酸は、アミノ酸の側鎖として、エチルカルボキシル基を有する。したがって、アスパラギン酸とグルタミン酸は、アミノ酸の側鎖の構造が類似している。よって、アスパラギン酸とグルタミン酸を相互に変換しても同様の効果が得られる蓋然性が高い。
また、本開示は、一実施形態において、以下のアミノ酸配列を含むペプチドに関する。
(2)Ser-Ser-Ala-Pro-His-Tyr-Arg-Val-Gly-Asp-Gly(配列番号1)
アミノ酸配列(2)のN末端側及び/又はC末端側には、任意の数のアミノ酸が付加されてもよい。典型的には、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20のうちから選択される2つの数で規定される範囲(例:1以上10以下、5以上20以下)のアミノ酸をN末端側及び/又はC末端側に付加することができる。
また、本開示は、一実施形態において、以下のアミノ酸配列で表されるペプチドを包含する。
(2)Ser-Ser-Ala-Pro-His-Tyr-Arg-Val-Gly-Asp-Gly(配列番号1)
上記したアミノ酸配列(2)については、軽微な改変(例:アミノ酸の挿入、置換、付加、欠失)を行ったとしても、アミノ酸配列(2)と同様の機能を発揮することができる。例えば、アミノ酸配列(2)と90%以上同一であるペプチド又は該同一性を有する配列を含むペプチドも同様の機能を発揮することができる。
配列の同一性の数値の算出方法については、当分野で公知の手法を用いることができる。例えば、BLAST(登録商標)が提供するアミノ酸(又はタンパク質)のホモロジー検索で用いるBlastpなどで判定される数値に基づいてもよい。
また、本開示は、一実施形態において、以下のアミノ酸配列において、1~2個のアミノ酸が挿入、置換、付加、及び/又は欠失された配列を含むペプチドを包含する。
(2)Ser-Ser-Ala-Pro-His-Tyr-Arg-Val-Gly-Asp-Gly(配列番号1)
アミノ酸を置換する場合、例として、以下のバリエーションが挙げられる。
・Ser⇒Thr
・Ala⇒Leu、Ile、Valのうちいずれか1つ
・Arg⇒Lys
・Val⇒Leu、Ile、Alaのうちいずれか1つ
・Asp⇒Glu
上述の置換でも同様の効果が得られる理由は、上述した通り、アミノ酸の側鎖の性質又は構造の類似性による。
一実施形態において、本開示のペプチドは、化学修飾が行われてもよい。例えば、ペプチドのN末端及び/又はC末端にアルキル基が付加されてもよい。アルキル基で修飾することで、分離効率が向上する。好ましくは、N末端にアルキル基を付加してもよい。アルキル基は、直鎖状であってもよく、或いは、分岐状であってもよい。アルキル基の炭素数は、特に限定されないが、C6~C18、好ましくは、C10~C14である。こうした化学修飾を行うことで分離効率が更に上昇する。
また、本開示は、一実施形態において、上述したペプチドを含有する組成物を包含する。即ち、上述したペプチドを単独で用いるのみならず、他の成分を含めた組成物でも、同様の機能を発揮することができる。当該組成物は、上述したペプチドの機能を損なわない範囲で任意の成分を含有することができる(例えば、緩衝剤、塩化ナトリウム、糖類など)。
3.ペプチドをコードする核酸
本開示は、一実施形態において、上述したペプチドをコードする核酸を包含する。核酸は、DNAでもRNAでもよい。また、本開示は、一実施形態において、上述したペプチドをコードする核酸のセンス鎖に対して相補的な配列を有する核酸であってもよい。
更に、本開示は、一実施形態において、上述したペプチドをコードする核酸をコードする核酸配列と、少なくとも90%以上、又は、95%以上同一の配列を有する核酸を包含する。配列の同一性の算出方法については、上述したアミノ酸配列と同様、公知技術を用いて算出できる。例えば、BLASTのBlastn等で検索したときに判定される数値に基づいてもよい。
更に、本開示は、一実施形態において、上述したペプチドをコードする核酸のセンス鎖に対して相補的な配列と、ハイブリダイズすることができる核酸を包含する。より具体的には、ストリンジェントな条件でハイブリダイズすることができる核酸を包含する。ストリンジェントな条件とは、当分野で公知の基準を用いることができる。例えば、特開2015-023831号公報に記載されているような基準を条件にしてもよい。具体的には、DNAを固定化したフィルターを用いて、0.7~1.0Mの塩化ナトリウム存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1~2倍濃度のSSC(saline-sodium citrate)溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM 塩化ナトリウム、15mM クエン酸ナトリウムである)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できる条件を意味する。
上述したいずれの核酸も、遺伝子工学的な手法を通して、目的とするペプチドを製造するのに有用である。例えば、上述したいずれの核酸も、発現ベクターに組み込んで目的のペプチドを大量に発現させることができる。あるいは後述するファージディスプレイ法を用いて、表面に目的のペプチドを有するファージを製造することができる。
4.ペプチド及び/又は核酸を利用した物
上述したペプチド及び/又は核酸は、様々な形で応用することができる。
4-1.微生物
例えば、遺伝子工学的な手法を用いて(例えば、微生物の遺伝子に上述した核酸を導入して)、微生物に目的のペプチドを大量に生成させることができる。あるいは、微生物の表面に目的のペプチドを発現させて、該微生物を利用して、目的の物質を分離することができる。本明細書で述べる「微生物」には、五界説で述べるところの菌界、モネラ界、又は原生生物界に属する生物が含まれる。また、厳密な意味では生物には該当しないものの、本明細書で述べる「微生物」には、ウイルスも含まれる。典型的には、真菌、細菌、ウイルスを用いる。特に好ましいのは、遺伝子工学的な手法が確立された物である(例:酵母、E.coli、乳酸菌、バクテリオファージなど)。本開示は、一実施形態において、このような微生物を包含する。
4-2.沈降用粒子
本開示は、一実施形態において、ペプチドを表面に有する粒子に関する。ペプチドは、上述したペプチドを用いることができる。また、粒子は、ビーズ(例:磁気ビーズ、ガラスビーズ、樹脂ビーズ、高分子ビーズなど)、担体等が挙げられる。粒子の大きさについては、特に限定されず、ナノ粒子であってもよく(例えば、粒径10nm~1000nm)、マイクロ粒子であってもよく(例えば、粒径1μm~1000μm)、ミリサイズの粒子であってもよく(例えば、粒径1mm~1000mm)、用途に応じて適宜調整すればよい。また、粒子の表面にペプチドを結合させる手法については、当分野で公知の手法を用いることができる。
本開示のペプチドを粒子上に担持させて、目的の物質を分離することができる。例えば、後述する方法を用いて、目的の物質を、ペプチドに結合させて沈降させることにより、分離することができる。
4-3.クロマトグラフィー用カラム
本開示は、一実施形態において、クロマトグラフィー用カラムに関する。目的の物質を分離する方法としてカラムクロマトグラフィーが挙げられる。カラムクロマトグラフィーは、カラム内の充填剤(例えば、担体)が特定の物質に選択的に結合する性質を持つことを利用する。本開示の一実施形態では、上述したペプチドをカラムに担持させることができる。こうしたカラムを使用することにより、目的の物質を分離することができる。
4-4.浮遊選鉱の抑制剤
一実施形態では、本開示のペプチドは、特定の鉱物の表面を親水化させる。これにより、浮遊選鉱の際に、特定の鉱物が浮遊するのを抑制することができる。従って、本開示のペプチドは、抑制剤として使用することができる。この際に、ペプチド単独で用いてもよいし、微生物に結合した態様で使用してもよいし、特定の化合物と結合した形で使用してもよい。特に好ましいのは上述したように、ペプチドをアルキル化することである。これにより、抑制剤としての効果が良好となり、効率的な分離に寄与することができる。
5.応用形態(分離方法)
上述した応用形態に関する方法を以下に具体的に説明する。
5-1.分離対象
上述した応用形態はいずれも所定の物質を分離することに関する。例えば、所定の物質の例として、鉄と銅を含む鉱物(例えば、黄銅鉱)を分離することができる。より具体的には、ヒ素を含む銅鉱物(例えば、硫砒銅鉱)と、ヒ素を含まず、鉄と銅を含む鉱物(例えば、黄銅鉱)との混合物において、本開示のペプチドは、鉄と銅を含む鉱物(例えば、黄銅鉱)へ選択的に結合することができる。
5-2.微生物を用いた分離方法
本開示は、一実施形態において、微生物の使用に関する。より具体的には、微生物を用いて、物質(具体的には、鉄と銅を含む鉱物、より具体的には黄銅鉱)を分離することができる。微生物としては、上述した微生物であれば、いずれも用いることができる。典型的にはバクテリオファージが挙げられる。
方法としては、まず、公知の遺伝子工学的な手法により、上述したペプチドをコードする核酸配列を微生物に導入し、微生物の表面に発現させることができる。その後、鉱物粒子が分散した液に、微生物を添加することができる。
微生物の添加量については、溶液中に分散している鉱物粒子の量などの諸条件を考慮しながら適宜決定することができる。
例えば、ファージ量(pfu/mL)/鉱物量(g/L)の比率が、0.13×108~5×108、より好ましくは0.33×108~1×108である。
微生物を添加した後、暫く放置すると、微生物表面にあるペプチドが鉱物粒子と結合し、凝集が起こる。そして、溶液の底に沈降する。その後、底に沈降した鉱物を回収することができる。
5-3.カラムクロマトグラフィーを用いた分離方法
本開示は、一実施形態において、ペプチドを含むクロマトグラフィー用カラムの使用に関する。より具体的には、カラムクロマトグラフィーを用いた分離方法に関する。前記方法は以下のステップを含むことができる。
・分散液をカラムに通過させるステップであって、分散液は、ヒ素を含む鉱物と、鉄と銅を含む鉱物とを含む、ステップ
カラムを準備する際には、まず、上述したペプチドを、公知の手法により、担体に固定させることができる。その後、その担体を充填剤として精製用のカラムに導入することができる。前記カラムが準備できたら、分散液を、前記カラムの中に通す。すると、鉄と銅を含む鉱物(例えば、黄銅鉱)は、カラム内に結合するか、又は溶出が遅れる。これにより、それ以外の鉱物(例えば、ヒ素を含む鉱物、例えば、硫砒銅鉱)が優先的に溶出される。そして、遅れて溶出された鉱物(例えば、鉄と銅を含む鉱物、例えば、黄銅鉱)を含む分散液を回収することができる。また、カラム内に結合した鉱物を溶離するために、適宜溶離液を使用してもよい。
5-4.粒子を用いた分離方法
本開示は、一実施形態において、ペプチドを表面に有する沈降用粒子に関する。より具体的には、ペプチドを表面に有する沈降用粒子を用いた分離方法に関する。前記方法は以下のステップを含むことができる。
・沈降用粒子を、分散液に添加するステップであって、分散液は、ヒ素を含む鉱物と、鉄と銅を含む鉱物とを含む、ステップ
・鉄と銅を含む鉱物を沈降させるステップ
・沈降物を回収するステップ
・沈降物を固液分離して、固体側を回収するステップ
沈降用粒子を準備する際に、まず、上述したペプチドを、公知の手法により、微粒子表面に固定させることができる。その後、分散液に、微粒子を添加することができる。微粒子を添加した後、暫く放置すると、微粒子表面にあるペプチドが、鉄と銅を含む鉱物と結合し、凝集が起こる。そして、溶液の底に沈降する。その後、底に沈降した鉱物を回収することができる。粒子を用いる別の実施形態においては、粒子として磁気ビーズを用いることができ、沈降することを待つことなく、磁力を用いて、結合した鉱物粒子を除去することができる。
5-5.浮選を用いた分離方法
本開示は、一実施形態において、ペプチドを使用した浮遊選鉱に関する。より具体的には、一実施形態における本開示のペプチドは、浮遊選鉱の抑制剤として使用することができる。抑制剤とは、浮遊選鉱工程において、特定の鉱物の浮遊性を抑制する試薬である。
また、一実施形態における本開示のペプチドは微生物と一体化させて使用してもよい。より具体的には、本開示のペプチドは、微生物の表面にペプチドを提示させるような形態で使用することができる。微生物については、「4-1.微生物」の項で述べた微生物を使用することができる。好ましい微生物はファージであり、より好ましい微生物はM13バクテリオファージである。
ペプチドを使用した浮遊選鉱の方法は、以下のステップを含むことができる。
・ヒ素を含む鉱物と鉄と銅を含む鉱物との混合物を提供するステップ
・浮遊選鉱用抑制剤を提供するステップ
・混合物と抑制剤を浮遊選鉱槽に投入するステップ
・浮遊選鉱槽から尾鉱を回収するステップ
以下の説明は発明の範囲を限定することを意図しないが、一実施形態における本開示のペプチドは鉄と銅を含む鉱物(例えば、黄銅鉱)の表面を親水化する性質があり、これにより、鉄と銅を含む鉱物が泡にトラップされることを抑制すると考えられる。結果として、鉄と銅を含む鉱物は尾鉱に分配される傾向になる。一方で、ヒ素を含む鉱物は、浮鉱に分配される。
浮遊選鉱用抑制剤としてのペプチドの濃度は特に限定されないが、1g/t ore以上であってもよく、3g/t ore以上が好ましく、5~500g/t oreが更に好ましく、5~200g/t oreが更に好ましい。
好ましい実施形態において、前記方法は、浮遊選鉱槽に投入するステップの前に、脱離処理を行うステップを更に含む。この技術的意義は以下のとおりである。まず、ヒ素を含む鉱物と鉄と銅を含む鉱物との混合物が、浮遊選鉱用抑制剤と接触したときに、抑制剤が鉱物の表面に結合する。一実施形態における本開示のペプチドは、理論上は、鉄と銅を含む鉱物に結合する傾向が強い。しかしながら、実際には、部分的には、非特異的な結合も発生する。非特異的な結合の発生量は少ないため、それでも十分な分離は可能ではある。しかし、更に脱離処理を行うことで、非特異的に鉱物に結合したペプチドを脱離させることができる。これにより、更に、分離効率を向上させることができる。
脱離処理の具体的な手順としては、ヒ素を含む鉱物と鉄と銅を含む鉱物との混合物が、浮遊選鉱用抑制剤と接触した後、遠心分離を行い、上清を取りのぞく。残った沈殿に対して、超音波処理を行ってもよく、或いは、脱離試薬を添加してもよい。この脱離試薬の存在により、非特異的に結合したペプチドが脱離する。脱離試薬は、無機塩、RO水、Glycine-HClバッファ、界面活性剤(例えば、Tween20等)などが挙げられる。好ましいのは無機塩である。無機塩は、特に限定されず、NaCl、KCl、MgCl2などが挙げられ、特に好ましいのは、NaClである。無機塩の濃度については、0.3M以上であってもよく、3~5Mが好ましく、3.5M以上が更に好ましい。0.3Mを下回ると脱離効果が不十分となる。また、無機塩の種類にもよるが、飽和濃度を考慮すると、5M程度が限界となる。
脱離試薬で処理した後は、遠心分離、上清除去、RO水洗浄の3ステップを数回(例えば、3回以上)繰り返し、脱離試薬を除去する。これにより、後工程の浮遊選鉱における脱離試薬の影響を排除することができる。
別の好ましい実施形態において、捕収剤を投入するステップを更に含むことができる。これにより分離効率がさらに向上する。捕収剤とは、浮遊選鉱工程において、鉱物表面を疎水性にして泡に付着し易くする性質を与える試薬である。捕収剤の種類は特に限定されないが、SIBX(sodium isobutyl xanthate)、SEX(sodium ethyl xanthate)、PAX(Potassium Amyl Xanthate)などが挙げられ、好ましいのは、PAX(Potassium Amyl Xanthate)である。捕収剤の濃度は、特に限定されないが、10~100g/t oreであってもよく、30~60g/t oreが好ましく、35~45g/t oreがさらに好ましい。
その他、浮遊選鉱の条件は特に限定されないが、典型的には以下の条件で実施することができる。
パルプ濃度 30~200(dry-g/L)
浮選時間 5~30分
浮選pH 5以上12以下(より好ましくは、7~11)
鉄と銅を含む鉱物(例:黄銅鉱)は、尾鉱に分配される傾向があり、ヒ素を含む鉱物(例えば、硫砒銅鉱)は、浮鉱に分配される傾向があるので、尾鉱を回収し、ヒ素の存在を監視しながら、銅鉱石を回収することができる。尾鉱から銅を回収するには、例えば、浸出処理などで銅を銅鉱石から溶液中に浸出させてもよい。
6.鉱物との結合における選択性
上述したペプチドは、特定の鉱物に特に強く結合し、他の鉱物には結合しないという選択性を有する。より具体的には、鉄と銅を含む鉱物(例:黄銅鉱)には強く結合し、ヒ素を含む鉱物(例えば、硫砒銅鉱)には、結合しない(又は、鉄と銅を含む鉱物の場合と比べて結合度合いが著しく低い)という性質を有する。従って、鉄と銅を含む鉱物の中に、ヒ素を含む鉱物が含まれた混合物であっても、上述した方法を用いることにより、ヒ素を含む鉱物を分離・除去することができる。
7.ペプチドの作成方法
上述したペプチドは、様々な方法で製造することができる。上述したペプチドをコードするDNAを、発現ベクターに組み込んで、微生物等に導入し、大量にペプチドを発現させて回収することができる。あるいは、遺伝子工学的な手法のほか、有機化学的な方法により合成してもよい。
あるいは、表面に上述したペプチドを提示したファージ(例えばM13ファージ)を製造する場合には、ファージディスプレイ法を用いることができる。目的のペプチドを表面に提示した微生物については、公知の遺伝子工学的手法により製造することが可能である。
実施例1(ペプチド濃度)
以下の化学構造を有するペプチド(Lauroyl-C48P)を準備した。ペプチドのN末端にはLauroyl基を付加した。
Figure 2023059655000002
ここで、R1~R11は、アミノ酸の側鎖を表す。
上記のペプチド部分は、以下の式で表される。
Ser-Ser-Ala-Pro-His-Tyr-Arg-Val-Gly-Asp-Gly(配列番号1)
黄銅鉱/硫砒銅鉱を9:1の比率で含む試料500mgを準備した。試料は粒径約45~75μmの範囲になるように粉砕・篩分けした。これをRO水(pH9)7.5mLに懸濁した。次に上記のLauroyl化ペプチドを濃度100g/t ore、200g/t ore、又は、500g/t oreになるように添加した。5分後に、試料をハリモンドチューブに移した。RO水を添加して全量が150mLになるように調整した。25mL/minで空気を供給した。その後、ハリモンドチューブ内のフロスの鉱物を回収した。
そして、回収した鉱物中のAs、Cu、FeをICP-OES(iCAP6300 Duo)により定量し、その結果から、硫砒銅鉱および黄銅鉱がそれぞれどの程度フロス側に分配されたかを求めた。以下の式に従って分離効率を算出した。

分離効率=100×((フロス側に分配された硫砒銅鉱の量(g))/(元の試料に含まれていた硫砒銅鉱の量(g))-(フロス側に分配された黄銅鉱の量(g))/(元の試料に含まれていた黄銅鉱の量(g)))
なお、硫砒銅鉱の量については、上記で定量したAsの量に基づいて算出した。また、算出した硫砒銅鉱の量に基づいて、硫砒銅鉱のCu量も算出した。一方で、黄銅鉱の量は、全体のCu量から硫砒銅鉱のCu量を差し引いたCu量に基づいて算出した。
結果を図1に示す。ペプチド最終濃度200g/t oreの試料の分離効率が最も高かった。いずれの例でも、ペプチドを添加していないBlankと比べると分離効率は高くなっていた。
実施例2(脱離試薬の種類)
実施例1と同様の試験を実施した。ただし、ペプチドの最終濃度は200g/t oreにした。また、あらかじめ脱離処理を行った。具体的には、試料にペプチドを添加してから2時間後、遠心分離(6000×g、1min)を行い、上清を除去した。その後、7.5mLの脱離試薬を添加した。脱離試薬は、4MNaCl、RO水、0.1MのGlycine-HClバッファの3種類を使用した。1時間後に、洗浄を行った。具体的には、遠心分離(6000×g、1min)、上清除去、RO水7.5mL添加の3ステップを3回繰り返した。
結果を図2に示す。NaClの脱離試薬が最も分離効率に優れていた。
実施例3(補収剤の効果)
実施例2と同様の試験を実施した。ただし、脱離試薬は4MのNaClにした。また、ペプチドを最終濃度100g/t ore、200g/t ore、又は、500g/t oreになるように添加した。また、補収剤であるPAXの濃度を40g/t oreになるように添加した。補収剤は脱離処理後に添加した。
結果を図3に示す。分離効率の観点から、実施例1と大きな差はないものの、最大の分離効率を達成できる時間が更に早くなっている。
実施例4(他の条件の検討)
実施例1~3と同様に、ペプチド、NaCl及びPAXの濃度を変更しながら、分離効率を測定した。ただし、ハリモンドチューブの尾鉱を時々攪拌しながら浮遊選鉱を実施した。
Figure 2023059655000003
番号1の条件が、最も分離効率が良かった。
番号1の条件で得られた尾鉱及びフロスをSEM-EDXマッピングで分析した。結果を図4に示す。フロスにおいて、赤い色で表示されている部分の割合が多く、硫砒銅鉱が多くなっていることが示された。一方で、尾鉱では、緑の色で表示されている部分の割合が多く、黄銅鉱が多くなっていることが示された。以上の結果から、上記ペプチドによって、黄銅鉱と硫砒銅鉱を分離できることが示された。
実施例5(カラム浮遊選鉱)
実際の銅鉱山で採取されたヒ素を含む銅鉱石として、以下の化学組成及び鉱物組成を有する銅精鉱サンプルを準備した。
Figure 2023059655000004
Figure 2023059655000005
試料は粒径約45~75μmの範囲になるように粉砕・篩分けした。そして、試料をアセトンで洗浄した。その後、試料15gを、50mL遠沈管に投入した。イオン交換水(NaOH溶液を用いてpH9に調整した)20mLを遠沈管に投入した。チューブローテーターを用いて遠沈管を連続回転した(30分、12.5rpm、室温)。試料を遠心分離し(6,000×g、室温、1分)、上清を取り除いた。イオン交換水(pH9)20mLを試料に加えた。ボルテックスミキサーで試料を攪拌した。再度、遠心分離(6,000×g、室温、1分)し、上清を取り除いた。これを計3回繰り返した。
その後、以下の「(1)ペプチド処理及び脱離処理」及び「(2)カラム浮遊選鉱」を行った。コントロールとしては、「(1)ペプチド処理及び脱離処理」を実施することなく、「(2)カラム浮遊選鉱」を実施した。
(1)ペプチド処理及び脱離処理
洗浄した試料にイオン交換水(pH9、20mL)と、Lauroyl化ペプチド溶液(Dimethyl sulfoxide(DMSO)溶解)を目的の濃度になるように加えた。その後、全ての試料において、DMSOが合計で100μL添加されるように、DMSOの量を調整した。試料をボルテックスミキサーで攪拌した。チューブローテーターで試料を連続回転した(2時間、12.5rpm、室温)。試料に対して遠心分離を行い(6,000×g、室温、1分間)、上清を取り除いた。脱離処理として4MNaCl溶液22.5mLを試料に加え、試料をボルテックスミキサーで攪拌した。チューブローテーターで試料を連続回転した(1時間、12.5rpm、室温)。試料に対して遠心分離を行い(6,000×g、室温、1分間)、上清を取り除いた。脱離処理後、イオン交換水(pH9、20mL)を試料に加えて、試料をボルテックスミキサーで攪拌した。試料に対して遠心分離を行い(6,000×g、室温、1分間)、上清を取り除いた。これを計3回繰り返して、試料から脱離剤を除去した。
(2)カラム浮遊選鉱
遠沈管内の試料を、イオン交換水(pH9、60mL)を用いて、数回に分けて洗浄した後、試料全量をビーカーへ移した。攪拌しながら、試料に溶液を添加した。溶液のpHは、NaOHを用いてpH9に調整した。また、溶液は、以下の成分を含む物を使用した:PAX:20g/t(ton of mineral);MIBC(Methyl Iso Butyl Calbinol):30g/t。2分間攪拌した後、浮選試験を実施する直前、もう一度、試料を含む液のpHを、NaOHを用いてpH9に調整した。カラム型浮選器にビーカー内容物を全量移した。イオン交換水(pH9、25mL)を用いて、パルプ濃度15%になるようにフィルアップした。マグネチックスターラーを用いて、カラム内容物を攪拌した(450rpm)。その後、エアーコンプレッサーを用いて、カラム内容物に対して、0.6L/minで通気した。通気を開始してからの時間を計測した。Lauroyl化ペプチドを添加していない場合には、2分後に、フロス及び尾鉱を回収した。Lauroyl化ペプチドを添加した場合には、12分後にフロス及び尾鉱を回収した。回収した試料は吸引瓶を用いて定性ろ紙(No.1)上に回収した。そして、一晩以上50℃で試料を乾燥し、乾燥重量を測定した。定性ろ紙はあらかじめ重量を秤量しておき、乾燥重量から定性ろ紙の重量を減算することでフロス及び尾鉱への鉱物の回収量とした。
(3)分析結果
フロスへ回収された元素に関する分析結果を図5に示す。Asについては、脱離処理による影響はほとんどみられないものの、Lauroyl化ペプチドを添加することで、フロスへの分配が多少抑制されていた。具体的には、ペプチド添加によりヒ素を含む銅鉱のフロスへの分配が、Blankと比べると約20%程度抑制されていた。一方で、Feについては、脱離処理により、フロスへの分配がある程度抑制され、更には、Lauroyl化ペプチドを添加することで、フロスへの分配が大きく抑制されていた。具体的には、無砒素銅の浮遊が約30%程度抑制されていた。
実施例4で用いた分離効率の計算に基づいて、実施例5での分離効率を算出した。結果を図6に示す。ペプチドの分量は5g/tであるが、当該ペプチドを添加することで、分離効率が39.8%となった。
以上、発明の具体的な実施形態について説明してきた。上記実施形態は、具体例に過ぎず、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、上述の実施形態の1つに開示された技術的特徴は、他の実施形態に適用することができる。また、特記しない限り、特定の方法については、一部の工程を他の工程の順序と入れ替えることも可能であり、特定の2つの工程の間に更なる工程を追加してもよい。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって規定される。

Claims (31)

  1. 以下のアミノ酸配列を含むペプチド。
    (Thr、Ser)-(Thr、Ser)-(Leu、Ile、Val、Ala)-Pro-His-Tyr-(Arg、Lys)-(Leu、Ile、Val、Ala)-Gly-(Asp、Glu)-Gly
    {ただし、上記式の()中の少なくとも1種のアミノ酸のいずれか1つが選択される}
  2. 以下のアミノ酸配列、又は、当該配列から、1~2個のアミノ酸が挿入、欠失、置換及び/若しくは付加されることによって生じる配列を含むペプチド。
    Ser-Ser-Ala-Pro-His-Tyr-Arg-Val-Gly-Asp-Gly(配列番号1)
  3. 請求項2のペプチドであって、上記配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも90%同一である配列を含むペプチド。
  4. 請求項2のペプチドであって、上記配列番号1のアミノ酸配列を、以下から選択される1又は2の置換に従って置換することによって生じる配列を含むペプチド。
    ・Ser⇒Thr
    ・Ala⇒Leu、Ile、Valのうちいずれか1つ
    ・Arg⇒Lys
    ・Val⇒Leu、Ile、Alaのうちいずれか1つ
    ・Asp⇒Glu
  5. 請求項2のペプチドであって、上記配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチド。
  6. 請求項5のペプチドであって、上記配列番号1のアミノ酸配列で表されるペプチド。
  7. 請求項1~6のいずれか1項に記載のペプチドであって、N末端及び/又はC末端にアルキル基が付加されたペプチド。
  8. 請求項7のペプチドであって、N末端にアルキル基が付加されたペプチド。
  9. 請求項7又は8のペプチドであって、前記アルキル基の炭素数がC6~C18であるペプチド。
  10. 請求項9のペプチドであって、前記アルキル基の炭素数がC10~C14であるペプチド。
  11. 請求項1~10のいずれか1項に記載のペプチドであって、鉄と銅を含む鉱物に結合することができる、ペプチド。
  12. 鉄と銅を含む鉱物を選別するための組成物であって、請求項1~11のいずれか1項に記載のペプチドを含む、該組成物。
  13. 鉄と銅を含む鉱物を選別するための、請求項1~11のいずれか1項に記載のペプチドの使用。
  14. 請求項1~11のいずれか1項に記載のペプチドをコードする核酸、又は、当該核酸の配列と少なくとも90%以上同一の配列を有する核酸。
  15. 請求項1~11のいずれか1項に記載のペプチドをコードする核酸の相補配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸。
  16. 請求項1~11のいずれか1項に記載のペプチドを表面に含む、及び/又は、請求項14又は15の核酸を含む微生物。
  17. 請求項1~11のいずれか1項に記載のペプチドを表面に有する沈降用粒子。
  18. 請求項1~11のいずれか1項に記載のペプチドを含むクロマトグラフィー用カラム。
  19. 請求項1~11のいずれか1項に記載のペプチドを含む浮遊選鉱用抑制剤。
  20. 請求項17の沈降用粒子を使用する、鉄と銅を含む鉱物を回収するための方法であって、前記方法は、
    前記沈降用粒子を、分散液に添加するステップであって、前記分散液は、ヒ素を含む鉱物と、鉄と銅を含む鉱物とを含む、ステップと、
    前記鉄と銅を含む鉱物を沈降させるステップと、
    沈降物を回収するステップと、
    前記沈降物を固液分離して、固体側を回収するステップと、
    を含む方法。
  21. 請求項18のクロマトグラフィー用カラムを使用する、鉄と銅を含む鉱物を回収するための方法であって、前記方法は、
    分散液を前記カラムに通過させるステップであって、前記分散液は、ヒ素を含む銅鉱物と、鉄と銅を含む鉱物とを含む、ステップ
    を含む方法。
  22. 請求項19の浮遊選鉱用抑制剤を使用する、鉄と銅を含む鉱物を回収するための方法であって、前記方法は、
    ヒ素を含む鉱物と鉄と銅を含む鉱物との混合物を提供するステップと、
    前記浮遊選鉱用抑制剤を提供するステップと、
    前記混合物と前記浮遊選鉱用抑制剤を浮遊選鉱槽に投入するステップと、
    前記浮遊選鉱槽から尾鉱を回収するステップと、
    を含む方法。
  23. 請求項22の方法であって、前記方法は、前記浮遊選鉱槽に投入するステップの前に、脱離処理を行うステップを更に含む方法。
  24. 請求項23の方法であって、前記脱離処理を行うステップが、無機塩で処理することを含む、方法。
  25. 請求項24の方法であって、前記脱離処理における前記無機塩の濃度が、3~5Mである、方法。
  26. 請求項24又は25の方法であって、前記無機塩がNaClである、方法。
  27. 請求項22~26のいずれか1項に記載の方法であって、前記方法は、捕収剤を投入するステップを更に含む方法。
  28. 請求項27の方法であって、前記浮遊選鉱槽における前記捕収剤の濃度が、30~60g/t oreである、方法。
  29. 請求項27又は28の方法であって、前記捕収剤が、PAX(Potassium Amyl Xanthate)である、方法。
  30. 請求項22~29のいずれか1項に記載の方法であって、前記浮遊選鉱槽における前記ペプチドの濃度が、5~500g/t oreである、方法。
  31. 請求項20~30のいずれか1項に記載の方法であって、
    前記ヒ素を含む銅鉱物が、硫砒銅鉱を含み、
    前記鉄と銅を含む鉱物が、黄銅鉱とを含む、
    方法。
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